100年俳句計画 2018年12月号(No.253)


100年俳句計画 2018年12月号(No.253)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。






目次


巻頭リレーエッセイ
武井かま猫

特集
生まれてから現在までの代表三句による
代表句集



好評連載


作品

百年百花
 片野瑞木/きむらけんじ/三津浜わたる/八神てんきゅう

新 100年の旗手
 さとし/薄荷光

新 100年への軌跡
 俳句 村上海斗/輪違典子
 評  都築まとむ/山澤香奈


読み物

美術館吟行/恋衣

小西昭夫の愛誦百句/小西昭夫

JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭

らくさぶろうの呑む呑め呑もう句/らくさぶろう

mhm通信/小田寺登女

近代俳句史超入門/青木亮人

鑑(み)るという冒険/猫正宗

岡田一実の句集の本棚/岡田一実

The HAIKU's Glass/古川千栄子

クロヌリハイク/黒田マキ


読者のページ

100年投句計画
 選者三名による雑詠俳句計画/桜井教人、阪西敦子、関悦史
 自由律俳句計画/きむらけんじ
 詰め俳句計画/マイマイ
 100年投句計画 投句方法

短歌の窓/渡部光一郎

百人百様E-haiku/菅紀子

100年公募計画

疑似俳句対局/美杉しげり

THE BEATLES 213 PROJECT/夜市

100年俳句計画 掲示板

鮎の友釣り

告知

編集後記

次号予告





巻頭リレーエッセイ



サンタが参ります
武井かま猫

 ここ8年ほどクリスマスイブにはサンタ代行なるものを数人の仲間とやっている。
 親御さんからあらかじめプレゼントを預かっておきサンタに扮装して暗くなってから配るのである。
 子供達の反応は様々で驚いて泣き出す子、興奮して駆け回る子、質問攻めにする子。
 親御さんからの要望も凝っていて二階の窓から子供に見せるので後ろ姿だけ見せて欲しいなどなど。
 偽サンタも子供達の夢を壊さないよう緊張の一瞬である。
 プレゼントを届ける先は子供達だけでなく、例えば田舎に母親をひとり残し上京している息子から、などの依頼もある。
 冬枯れた小さな町で誰かが誰かを思うクリスマスイブを過ごすことで私も仲間も幸せを貰っているのだなあと思う。


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特集

生まれてから現在までの代表三句による

代表句集



 俳句マガジン「100年俳句計画」251号、252号にて募集し、読者の皆様からお寄せいただいた、自選による生まれてから現在(2018年11月4日まで)に作った俳句の中からの「代表句三句」を一挙掲載!
 掲載順番はコンピュータでシャッフルし、ランダムにしてあります。
 各コメント中の数字(1)(2)(3)はそれぞれ、一句目、二句目、三句目を示しています。


元旦(60)
おばちゃんのちゃっちゃっちゃっと夏料理
原爆忌死は生よりも永く在り
正論は本音にあらず薔薇を剪る

毎年、代表句とはなんぞやと悩みます。自分で代表句と言う恥かしさもあります。人に選ばれて初めて代表句を名乗れるのか?選ばれなかった代表句というのはあるのか?などとしょーもないことを考えた結果の3句です。


灰色猫(63)
風一閃雉始めて鳴く高台寺
赤く白くためらいもなく曼珠沙華
敦煌の僧坊深く月入りぬ


河野しんじゆ(63)
香水や飛び立つやうに辞職せり
牡丹の芽鳥になりたき日の血潮
からまつの子の泣くやうに落葉せり

人生に節目が3つあるとしたら3つめが今年かも知れない。


久我恒子(59)
閨の月翅あるものは逝き易く
サブレーのすげなくくづれ夏の果
底深く紫根の水脈や牡丹焚く


斎乃雪(56)
薄氷光を放しつつ溶けて
ニュートリノ原初高天原を出ず
月天心清らに尖る呱々の声


有瀬こうこ(45)
お隣の花見て今日の暮れにけり
囀や前方後円墳の空
堆く錦市場の夏大根

とは言え、句歴1年10か月なので。


薄荷光(43)
CQCQ時鳥鉄塔の上
おひさまが凸なら凹のきんせんか
犬よ目を貸して桜は全て赤

拙いながらも俳句という17音を通して世界を見られる事、その美しさを伝えられる事に感謝しています。


美和子(51)
Shall we dance?恋も一刻春の宵
つひと来て恋な語りそつばめども
貝の殻耳に寄せては夏の果

初めて参加します。自薦に迷いましたが、今回はモテモテと勘違いしていた頃の句をまとめました。よろしくお願いします。


谷口詠美(55)
英国の薔薇忌ドレスを鳩に替へ
生徒待つ花の蕾のひしめきて
月まどか√を開く筆の先

俳句α秋号、花の歳時記、月の歳時記より。


ぴいす(53)
じいちゃんは庭のプールの監視員
初燕ハウスで唸る耕運機
かけっこの子供の像や夏木立

何年かぶりに燕が来て、無事に2回とも巣立ちできました身近な事を句にしていきたいと思います。


ひでやん(50)
田を植える農夫砂鉄のような鬚
志立てて百花の種を蒔く
八千草や海については黙秘権

初心忘れずの気持ちで去年と同じにしました。


あつむら恵女(51)
月尖ることをあきらめ鳩飛ばす
薄暑光会釈してさて誰かしら
川涸れてあら桃太郎まだそこに

(1)「月の歳時記」特選句。美しい写真と一緒に載せていただき感動しました。(2)俳句ポスト365地選。(3)一句一遊金曜句の中で一番好きで一番私らしいと思える句です。


千子(60)
しゃぼん玉空咳一つ嘘三つ
あれがオリオン座君の指ばかり見る
星月夜母さんより父さんが好き

小さい頃母に父さんと母さんとどっちが好きと聞かれました。入院中の母に、本当は母さんが好きよ、と言いたいです。


ミセスコナン(69)
車イスくるっとまわして六月を歩く
草を食む愛犬の尻のどかなり
木耳や聞く耳持たぬ女です

(3)新しく加えました。私の中ではお気に入りの傑作です。


キム チャンヒ(50)
街の落葉がすべてハートのA
なくしてはいけないものに団栗も
水玉の象は泣きます春の昼

(1)句集『COSMOS』より。(2)句集『少年期』より。(3)本誌三月号に掲載した「百年百花」より。


クラウド坂の上(55)
母はまた無月の街の猫となる
砲弾はすべてキャベツになればいい
磐座の紙垂は四枚蕨狩

認知症の母を施設に入れ、心の整理をつけて詠んだ句なので一生忘れないと思います。


テツコ(43)
稲妻や人は獣のごとく産む
凧めがけてランニングマシン
ごふごぶとひと掻きごとに泣くな雪

今年は大雪から始まった受難の年でした。それを何とか乗り越え、今の自分があるのも俳句とそれを研鑽できるいつき組の存在でした。本当にありがとうございました。


24516(44)
水涸るや月の匂ひのする小石
万愚説正しい顔で仕事せる
ジャカルタの渋滞マンゴー色の月

もう二度とないであろう1年で天を3回も頂く事が出来たので記念に選びました。


どんぐりばば(66)
山アザミ鬼になりたい日ばかりで
秋の山鬼王丸が鬼鬼し
栗拾い森のささやき聞こえてる

私は南海放送ラジオ 一句一遊を、聞き俳句を始めました。いろいろな所に投句して入選した句、3句です。


かのん(64)
屠蘇散を浸して終わる年一夜
大股で歩く賢治よ花人参
スプーンに残る滴や後の月


竜胆(71)
海岸にへばりつく町湿雪
鬼の塚従へ深山桜かな
湖の月櫓の音は神々を起こす

「雪、花、月、の歳時記」のグラビアページに掲載いただいた句としました。


彩楓(65)
飽かず見る月の雫の甘さうな
花のかげ料紙に散らす大和文字
鑑真の漂着の浜卯波立つ


黒田マキ(47)
 雪の中 温泉 つかる  モンキーと
屋上でかじるレモンの味…。  激 情
ももクロが ぽむぽむと跳ね 夏になる


山の雪(76)
無患子や四十九日の不意の雨
老優の指さす先に烏瓜
銀河よりKenji見守る砂漠の子

今回は既に亡くなった人を思い出しながら選んでみました。これまで代表句として選んだ句の中から印象的な、そして考えさせられた句です。(1)敬愛する兄、(2)今年は樹木希林さんと高倉拳さんがダブッて思い出され、(3)安田順平さんは無事救出されましたが後藤けんじさんは……と。


内藤羊皐(54)
夕立や脚の忙しき新生児
月光に腐葉土匂ふ理容店
百穴に死者の百たり鳥交る

三句、いずれもNHK文化センターで行われた、「まのあたり句会」の選者選に入った作品です。冒頭の句は、今年4月に生まれた初孫の様子を句としたもの。生れた直後は新生児集中治療室に入院ということもありましたが、元気に育ってくれています。


すりいぴい(50)
タンバリン鳴らし向日葵やつて来る
いらん子はおらんかと花わらひけり
ほととぎす彗星つかめさうな湖

本年の組長誕生日への挨拶、プレゼント句。もう僕の手を離れたともいえますが。(2)(3)組長企画、選の「花」「時鳥」の歳時記の特選、カラー頁掲載句。


須賀風車(32)
試験官だけ爽籟へ顔向ける
星涼し父の部屋よりビートルズ
千匹の磯蟹台北の夕陽

俳号「野良古」と並行して「須賀風車」とも名乗っています。句歴はもうすぐ二年。昨年から、3句とも更新することができました。


三島ちとせ(30)
死に場所を探せば海のある雑煮
屋上に赤の落書き返り花
湯豆腐のことこと海へ行く切符

高校時代から含めて一番好きな句を集めてみました。


七草(68)
早仕舞します流星見てきます
街ぢゆうの影を盗まれ春驟雨
終点はひまはり廃線のレール


ミセウ愛(55)
原爆忌今まだ身から出るガラス
時鳥きっとあの子は転校生
鹿の目に映る弥山の赤深し

俳句を始めて2年。少しずつでもよいから常に前進していきたいと思っています。


洒落神戸(51)
原っぱの昼寝や空の王となる
外つ国の冒険譚や月青し
一面に眩暈のごとき秋桜

今年一年で詠んだ句から選んでみました。去年の三句より成長してるかなあ。


旧重信のタイガース(47)
猟期終わる今年も奴は現れず
栗虫や母の指紋は黒いんだ
瘤雲は萎み行水名残かな

三句とも、一句一遊で「天」を戴いた句です。どれも、それぞれに思い入れがあります。最近、水曜日どころか、採用すら困難となりましが、初投句以来皆勤は続けております。Twitterも始めたので、Facebook共々宜しくお願いいたします。


三P未悠(18)
百合咲いて百合を忘れぬ水となる
造船の町を朝焼揺れている
島内放送秋風錆びている


南亭骨太(68)
冬耕の排気の低く滞る
ハナミズキ白増すごとに風変はる
息づかひ優しき人の冬帽子

(1)(2)100年俳句計画に揚げたものです。(3)ジャズ句会でサックス奏者の会に揚げたものですが、イメージはトランペット奏者のケニー ドーハムでした。


俳菜裕子(65)
桜散る玄界灘へ原子炉へ
蛍火の東大寺湯屋越えゆけり
結願のコーヒー甘し秋遍路

(1)玄海原発を初めて見学したときの句。福島の事故が頭を離れません。(2)作句一ケ月後に兄が急逝し、あの蛍は兄だったのかと。(3)足掛け三年で歩いた遍路道、結願の感謝の気持ちで頂いたコーヒーの味。


大槻税悦(51)
天窓の月はいつでも味方なり
青空を撃ち抜きさうなボブスレー
ふくませる乳房ふくよか春の土手

(1)夏井先生の「月の歳時記」掲載句。(2)一句一遊金曜日に読まれた句。(3)愚陀佛庵の特選句。


天玲(49)
水の秋記憶入れ替わらぬ躰


すみ(60)
冬の雨先に逝くのが君なんて
木犀や渡り廊下に二人きり
月皓皓いらねえこんなはしたがね

「俳句に救われる」ということを実感する一年でした。


青海也緒(37)
潜る子を残る暑さへ引き上ぐる
やわらかな胡麻の香りの首を拭く
無花果やいのちの数のかぞえかた

(1)は上の子を、(2)は下の子を詠んだ、それぞれに思い出深い句です。(3)は、自分の気に入っている句を選びました。


冬のおこじょ(65)
秋うらら夫の尻置く妻の膝
新蕎麦の大盛にしては少ない
鳴呼鳴呼と残暑の鴉鳩毟る

俳句を始めて間もないので、「あなたの生まれてから現在までの代表3句」と言われるとお恥ずかしい限りですが、最近の吟行句も含めて、俳味のあるものを。


みやこまる(57)
遺品みな〈検閲済〉や晩夏光
花火果て江戸前の水匂ひけり
好文木金色夜叉は未完なり

今年一年で夏井いつき先生に選んでいただいた句を代表句に選びました。来年も自分らしさを探しながら俳句を詠んでいきたいと思います。


紫式部(88)
夏兆す手づかみで盛る生野菜
茄子を煮てをり一日暮れたる平凡に
眠られぬ夜半を灯せり遠蛙

(1)今年の子規顕彰全国俳句大会、村上鞆彦入選
(2)NHK全国俳句大会入選
(3)子規顕彰全国俳句大会 村上鞆彦入選


もね(64)
光年や眦ふかき藍浴衣
湯婆のしづかに冷めてゆく余生
おにぎりはひかりの礫若葉風


鯨木ヤスカ(24)
向日葵の骨をきのふに水葬す
逃げ水を追ひて眩暈の中にゐる
在りし日の春泥に馬右左


星埜黴円(57)
死せる猫叩く卯の花腐しかな
湖の船の分けゆくもみぢかな
離れには子の骨壷や日短か

いずれも、40代の時の句です。10年以上、進歩していません……むしろ、退化しているような。(2)初めて公共の場で天(ニジラー)を戴いた句。美人社長、ありがとうございます。


レモングラス(71)
プーさんの歌つららからこぼれ行く
一とはさい先良き名揚花火
バラライカ遥かにきこゆ木下闇


喜多輝女(69)
紅梅や毘沙門坂の上の雲
桜井の白砂青松大夕焼
矯正の前歯ニコリと夏休み

今年は三句とも入れ替えました。(1)マガジンの4月号の表紙に載せて頂きました。(2)NTTの電話帳に載りました。(3)第29回「おーいお茶全国新俳句大賞」佳作。佳作はペットボトルには載らないそうです。残念!


西原みどり(45)
子を抱くや急患室の夜の雪
短夜や血の味の歯の抜けさうな
すすきすすきこの肩先に触れただけ


山澤香奈(35)
熱の子に春満月は歌うだろう
海静か秋の向日葵骨めきぬ
青葉あおば一遍さんがゆするのだ


てん点(70)
点字器に波打つ紙や六花
星の入東風真珠は揺れて生まれたる
日日草点字タイプのベルちさし


あいむ李景(67)
蚋膨る淋しき人の血は甘し
白薔薇を這わせ独りのパンを焼く
三日目にやうやう細る蟻の列

(1)一句一遊「天」
(2)いつき組新聞「薔薇の座」ノミネート
(3)俳句ポスト「地」


彼方ひらく(38)
無限花序のぼりつみたる蟻の空
虹消えて折れたヒールを許しけり
爛漫と童女はねたり花軍

出来不出来はともあれ、想像で遠くまで行きたいと願ってつけたペンネーム兼俳号なので、蟻の掲句がひとまずの代表句。俳句三年生になります。俳句もそろそろ、帰って来れなくなるところまで来たところ。


花紋(43)
水始氷生まれてくれて恩に着る
天道虫ひとりあそびが上手なの
桜東風僕は海賊になります


ちゃうりん(51)
ラジオ消す夏鶯だった気がして
残る花ベッドがひとつ空きました
教会は祈りの時間風花す

自分なりにいろいろ工夫して作ってみたものを選びました。評価が高いわけではないですが気に入っている句です。


七瀬ゆきこ(60)
うぶゆせんれいひけししにみず井戸さらへ
麦秋躅んで鉄橋の味がする
噴水の破れて周りは人さらひ

語れば語るほど、真理からかけ離れていく。1年目は、ひたすら気づきの年。2年目は、語らない俳句を目指します。


れんげ畑(67)
葛の葉やそこは電柱降りなさい
八幡宮の石段高し花曇
矢車草の水色揺れる駅ホーム

一句一遊に投句した句から選びました。


佐藤香珠(55)
返されし本むねに抱く初ざくら
紅梅やちあきなおみのB面を
口角を上げるレッスン冬に入る

あれこれ考えあぐねて苦心した句よりも、反射のようにひょいと飛び出した句の方が記憶に残るように思います。毎年、同じ時季に同じような句しか浮かばず、もっと広い場に出て、知識や経験を積む必要を感じています。


十姉妹(58)
溢蚊や沈んで浮いて膝のうえ
侘助に触れないように歩く庭
五年目の半ズボンなり無地ライン

初参加です。一句一遊に投句し始め、いつの間にか7年経っていました。「天」には手が届きません。


小市(68)
敷石を五ミリ沈めて蟻の国
鍋破友の持ち来る鬼ころし
殴られている人がいます沖縄


鯉城(82)
四月馬鹿鏡に金婚過ぎし顔
城山の四百年の青大将
真夏日や先祖の墓は爆心地


中山月波(55)
胡桃割る面対称のけなげなる
山肌は赤サフランは夜明け色
フラフープ回して春に溺れをり

今年のお気に入り句です。


小川めぐる(51)
黒髪をするりと束ね夏料理
ころろんと黒電話鳴る薔薇の家
六月の雑巾ぎゆうと絞りけり

「〜〜〜と」という句が多いのでどれか替えようと思いましたが、つまり私らしさだ、それでこそ代表句だという気になりました。来年はもっと多彩な詠みをしたいです。


小野更紗(60)
選ぶ道まちがえました海鼠噛む
木と皮と花の匂いの製靴店
古井戸に居並ぶ列よ炎天よ

娘の東京での披露宴には宇和島のブラッドオレンジを配ったのですが……7月の豪雨災害。この穏やかな地が柑橘畑がこんな酷いことになるとはととても悲しかったです。皆さまのご支援に心より感謝いたします。


ともぞう(64)
AIに問うアインシュタインのアッカンベー
三歳のドミソドミソに秋がおり
縁側の陽に溶けてゆく日向ぼこ


むめも(64)
一点に向かう眩暈やボブスレー
新しいドアは空色夏季手当
宿坊の朝行清し島みかん

今年は一句一遊の金曜日が3句になりました。嬉し、めでたし。


次郎の飼い主(36)
次郎といふ次郎がわらふパンジーや
みづうみのやうな人逝く鱗雲
月呑みし木乃伊の肺の煌煌と

偶々ですが、3句共、生きている人間が出て来ない句になってしまいました……。


ヤッチー(70)
鏡花の忌玉三郎の喉仏
柏餅玉三郎の喉仏
雪女郎玉三郎の喉仏


三瀬あき(50)
桃ゼリーのような静かな入り江にて
萩の風東京はもう暮れている
島に雪あまたの角を眠らせて


南行ひかる(64)
月ぬくし鎖骨の窪の淡き陰
新庵の柾目は清し月涼し
マイルスの暗闇を射る冬の弦


越智空子(63)
賽銭のことりと鳴るよ囀るよ
我が角は涼しき繊月のごとく
荒星百年ケシケシ山の魂へ降る

自選は考えれば考えるほどわからなくなり、結局毎年自分の好きな句を選ぶ。でも、好きな句が毎年変わるのだ。結局、代表句は、今の私の気持ちなのかも。


西条の針屋さん(57)
塾帰り夕焼け背にし赤電話
寄宿舎の窓のきしみや風祭
秋の雲珠のはじける珠算塾


藍植生(74)
父母眠る無住の寺の帰り花
句は不器男詩はみすゞや流れ星
親父似の頑固一徹唐辛子

(1)夏井いつき句会ライブ名古屋(二十七年)
(2)第六十二回不器男忌俳句大会
(3)100年俳句計画初投稿(227号)


桂奈(48)
芝桜紙飛行機は一直線
トコトコと蒙古斑の子木の実降る
美しき嘘やはらかく薔薇閉じており


桜井教人(59)
蹄鉄を打つ音月光割れる音
水の澄むやうな別れをたつた今
どこからも桜の降つて来る朝


かま猫(59)
水涸れて伐採の香の甘やかに
配球にまだ頷かぬ日焼の眼
コッヘルの蓋鳴り始む櫨紅葉

2017年の松山俳句ポスト365に投句させて頂いたものです。(1)ちょうど墓直しのため巨木を何本も切り細かくして何日もかけて運び積み上げる作業に疲れていた頃で思わぬ地選に苦労も報われた思いでした。


睡花(55)
残暑閉じ込めたままの電話ボックス
小春日の縁側にほどけゆく猫
残る虫ビバークの耳さとくなる


緑の手(63)
飛ぶ雲を繋ぐさるとりいばらかな
段畑の鳥威とらへたのは木霊
凍鶴や月のたまごをかくまへる


宙蝉(50)
雲掃きし蜻蛉流れしみ空かな
熱れ風ぴゅうぴゅう秋桜飄々たれ
音冴ゆる珈琲の湯気の素粒子も

10年ほど前にブログ仲間で俳句のグループを結成するも、数ヶ月で頓挫。宙蝉の俳号は長い冬眠に。この秋再び俳句を再開しました。音楽、映画オタクです。代表句を出すのは早すぎかも。


笑松(62)
真ん中に金次郎像猫の恋 
蟻運ぶ蟲のパーツの2から6
無花果の噛みつきさうな尻の穴 

めでたく全句更新!


豊田すばる(39)
初染めやすふすふ藍の息聞こゆ
銅滴は魂の集きや月渡る
不如帰怒りの声の色は紅


安(44)
鵙やむや紙を離るる筆の先
音読やことばのかたち光る春
秋の声墨の粒子を溶かす指


渡辺瀑(58)
輿入れの狐に続く蝶千頭
太陽の震えは風に大花野
蟹刺しの花の如くを笑う喉


紗蘭(20)
スプーンの中の世界の日永かな
サクソフォンケース引っ提げ蝶の道
おとといのきみとみつめるはるのほし

(1)5年前の句ですが、今の時代にも当てはまる気がします。(2)今年の目標だった毎週のバンド練習皆勤賞、目前です。(3)いろんな人間関係について色々考えさせられた1年でした。


花節湖(49)
うぶごゑやあかごのごときはなのいろ
昨晩の雨を忘れて日記買ふ
真珠色の折鶴レディダイアナ忌


柊月子(47)
囀や空を耳から取り出せぬ
夕映や桜は解を知らず散る
捩じ切れる麒麟の首のごと野分


一斤染乃(55)
フーコーの振り子を止めよ冬夕焼
「桜見えます、こちらユーリィ ガガーリン」
この星の芯に五千度蝉時雨

プレバトがきっかけで、俳句を始めて2年と少しになります。初めての自選代表句、地球をイメージしたこの3句にしました。


有谷まほろ(42)
新涼や影の下地に塗る紫
桔梗の折鶴ほどに尖るかな
煙突や凍星数えても数えても


凡鑽(53)
みんなに付いて行ったら枯野だった
樫の木は無口な木です風薫る
「帰りたい」と母「帰ろう」と家二周


樹朋(74)
木霊吸ひ蛍袋の揺れやまず
死して後一色加へ玉虫は
水風呂にかすかな油膜年惜しむ


三重野とりとり(61)
ごきぶりでなければ美しい茶色
ひかるもの咥えて春の鳥となる
隕石に黒き凸凹風薫る


明惟久里(55)
戌年のおほきな望の二日かな
たひらけしひとひはちがつじゆうごにち
折鶴は友禅紙や千代尼の忌

二〇一九年、俳号と二度目の年越し。結社の尊敬する先輩からも「もう新入生とは呼ばれなくなるね。」と言われた。それでも不馴れな私、きっとぼちぼちとしか進めない。俳句への想いだけは深くなった気がしている。


ほろよい(69)
春の海たゆん弁天さまのあし
雪渓の影痩せていくコルに空
渋取の甕百年の深き艶

今年の作品の中で好きな句です。


徳三郎(53)
仮払いつか費用に変わる夏
あなたの子ですよと言われそぞろ寒
春の雪降りつむ朝に生まれけり

(1)監事をしているNPOで、総会のとき俳句を交えて監事監査の個別意見を述べるのを、毎年楽しみにして頂いてます。6月なので季語は夏。仮払金は資産ですが、内容を確認すると本来は費用で処理しておくべき勘定科目なので、きちんとしてくださいよという意味です。(2)編集長が講師をされた東温市アートラボで、名画と俳句の新しい楽しみ方を学んだときにうけた句です。


亜桜みかり(57)
枯蓮を金色と言ひ海と言ふ
柵に顔あづけ春日の芦毛の仔
身動きのとれず暮春の鯰なり


人日子(72)
十二個の大酒樽や宮相撲
青梅の時の岸辺に置かれけり
泥猫の水のんで去る赤のまま


一走人(68)
ブルースの部屋満たしゆく無月かな
レモン切る夜を深酒してみたし
月光や尻に破水の腥き

今年は夜のシリーズで……。


野ばら(59)
月光や黒鍵の一音沈む
タオル二千届く溽暑の避難所へ
春の水アンダンテよりやや遅く

「月の歳時記」に載せていただいた句。月光に燻されるかのような深い音色でピアノを奏でたいと思います。


でらっくま(45)
潔き体言止めの冬星座
龍を漕ぐ猛者ら鳴瀬の風涼し
先鋒の奇襲俳句甲子園

人生大波小波、大胆にかつこつこつと好きな俳句を増やしていきたいです。


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美術館吟行


第49回


愛媛県美術館
石本藤雄展 マリメッコの花から陶の実へ 吟行会

文 恋衣


取材協力
「石本藤雄展」実行委員会(愛媛県、南海放送)、砥部町、愛媛県美術館
12月16日(日)まで開催中。(砥部町文化会館にて同時開催)


 行く秋のお堀を眺めながら橋を渡る日曜の朝。今日は、楽しみにしていた石本藤雄展。マリメッコの黒と赤やオレンジの色の取り合わせに魅かれる。生活の中に取り入れたら、華やかになりそうで。
 そのマリメッコのデザイナーであったという愛媛県砥部町出身の石本藤雄氏。フィンランドに想いを馳せる。
 ほぼいつものメンバーに美術館吟行初参加のティーダさん。7人が午前10時に集合。わくわくと二階の展示室へ、ゆったりとした階段を上る。
 先ずは、マリメッコの大きなファブリックの迎える特別展示室へ。ホールには、アメリカのハウスウェアブランドのために描き起こしたという4作品。マリメッコの提案によるリプロダクションの実現で、デザイナー Ishimotoの名の記載あり。

 「Onni」(訳、幸せ)
白き尾と赤きくちばし鳥つるむ  恋衣
雪の夜を少女はハートの夢をみた  チャンヒ

 見る者の心を優しくしてくれる。包まれたい。


特別展示室1
 大きな短冊のような作品には、ほとんどフィンランド語の素敵な名前がつけられている。

 「ケサスタ ケサアン 」
水面のゆがみぬ秋の草ゆらぐ  マーペー
フィンランドの森黒黒と凍る夜を  ひかる

 黒とグレーの色使いの「ヤマ」
膝カックン粧う山に葛折  日暮屋又郎

 同じデザインでカラフルな「スモウ」
いきなりの張手秋場所も優勝  日暮屋又郎

 狼が飛びつきそうな「 スデンマリヤ(オオカミのイチゴ)」
嘘つきな狼のベロひっこ抜く  日暮屋又郎

 色違いのパターンに
12色入りクレヨンの描く枯野  チャンヒ
冬星や十二配色という人生  猫正宗


特別展示室2
 作品を完成させるまでの軌跡がありありと。
 原画は、画廊のように展示されて、そして「レポ(休息)」というロングセラーは、布のお店のようにかけられている。ファブリック張りの椅子に座り石本藤雄の映像を鑑賞できる贅沢な空間と時間がここにある。


特別展示室3
 全ての作品が筒状に飾られていて銀河の中にいるような感動。ずっといたくなるような。

北欧の森あわ色の罌粟ひらく  ティーダ
落書の優しきリズム木の実降る  ひかる

 誰かがかくれんぼしているような。
まあだだよ兎の耳が見えてゐる  恋衣

 美しき非日常を抜けて常設展示室へ。
 愛媛県美術館コレクションと石本藤雄作品との「取り合わせ」による展示。

 陶の実の世界へ
 現在、フィンランドの老舗窯、アラビアのアート部門に所属する陶芸家としての作品が、壁一面に。

 「オオイヌノフグリ」
陶磁器のイヌフグリ咲く館の壁   ティーダ
おちこちにやさしいひかりいぬふぐり  マーペー
犬陰嚢とおい記憶に障子山  日暮屋又郎

 「陶器の冬瓜と三輪田米山の書」
薄味の冬瓜苦手だと言えず  ティーダ
鬱屈の固まり冬瓜の不動  ひかる

 「海」
白鯨の出てくる気して白い海  マーペー
空白むまで見ていたよ冬波濤  猫正宗
波の凍てつく静けさにこの部屋は  チャンヒ

 「河東碧梧桐の俳句と書」
 「温泉巡りして戻りし部屋の桃の活けてある」
碧梧桐
床の間の桃の花つみ簪に  恋衣

 「山」
連山に初雪裾野とは美しき  恋衣

 「池田遙邨の絵と俳句」
 「蚊帳の中までまん丸い月昇る」山頭火
真青なる月を蚊帳より見上ぐれば  マーペー

 同じデザインでも、色が違うと全く違う。
同じ作品でも展示の仕方で違ってくる、展示の妙も味わった。其々がお気に入りの一品に出逢う幸せを堪能。

 この日の夜、隣接する県立図書館の時間外返却ポストへ本を返却。美術館の大玻璃が光った。
狼が苺食む夜の美術館  恋衣


オオイヌフグリ Chikako Harada / Fujiwo Ishimoto
ふるさとはとほくやさしく犬ふぐり  恋衣

Onni(訳、幸せ)
冬の森ハートがふたつ遊んでる  南行ひかる

冬瓜
冬瓜を枕に十七人雑魚寝 猫正宗



恋衣
JAZZと絵画を愛する俳人

参考文献 石本藤雄展チラシ、出品リスト


次回吟行会 12月2日(日)
愛媛県美術館コレクション展「コレクションが語る20年 ―これまで、そしてこれから」吟行会
昼1時現地集合
参加費無料(入館料は別途)
事前に100年俳句計画編集室までお申し込み下さい。
TEL 089-906-0694


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百年俳句賞選考会員4名による4ヶ月間競詠

百年百花


2018年度 第三期
第一回


記憶
片野瑞木

金秋を白いヒールの七センチ
黒猫のさやか二番町二の三
会場は三階秋薔薇のブーケ
銀文字の綺麗な表紙小鳥来る
平服のとりどり銀杏切りの檸檬
爽やかやマイクの位置が高すぎる
佳き夫のいて佳き妻や赤ワイン
髪切った話隼見た話
龍淵に潜むやニョッキはイタリアのパスタ
そそがれて秋のビールの記憶めく
秋思捩れて青い栞紐になったか
星月夜沼はチョコレートのスープ

1963年愛媛県生まれ。さえずり句会所属。少し前のことですが、岡田一実さんの句集出版記念パーティに参加してきました。


自由律雑詠A
きむらけんじ

介護ベッド解体して父を失う
裏庭で死んだ椅子が鳥乗せている
ひとり家に居て家電に喋られた
こんぺい糖のような女でやや突起ある
溝に落ちた足を叱る
ざんねんな手相をごしごしこする
入れるのは塩ひとつまみ愛などいらぬ
青春は馬鹿々しくて老いは陳腐で
マッサージチェアにおばさん付着すヤマダ電機
夜深ければ押入れよりおばやんが出て
熱湯を注いで3分叔母が来た
四球選んで母は玄関より出て行った

なんだか記憶に残る自由律俳句
 「シャツ雑草にぶっかけておく」(栗林一石路)
 「いちりん挿しの椿いちりん」(種田山頭火)
 「追つかけて追い付いた風の中」(尾崎放哉)


待ち人来ず
三津浜わたる

贈呈のレリーフ重し冬うらら
オリオンの傾ぐ角度に吾の首も
トンネルとトンネルの間のしぐれかな
土佐電過ぐしぐるる町の軒先を
ダウンロード終へ連山の眠りたる
鳶啼いて宇和島城の風花す
マドラーに秘事まざりゆく年忘
源氏名の名刺を捨てて冬の星
ボヘミアン ラプソディ小さき聖樹のレジ台に
駐車場の猫の瞳の聖夜の灯
マスクして三越に聴く第九かな
待ち人来ず画面をなぞる指へ雪

第21回俳句甲子園実行委員長。建具職人。


羊の瞼
八神てんきゅう

やはきもの羊の瞼狐の尾
虫食ひの落葉は星の転写とも
立ち漕ぎの列寒暁の赤橋渡る
冬ざれの鉄路に錆びてゆく矜持
足袋の干し方人生のたたみ方
おみなごの声に艶ある近松忌
寒星の鳴れば卵管先細る
病める身のバーコードより月冴ゆる
着ぶくれてLEDの森やら海やら
独り寝のくじらは愛を歌ひそむ
好きだつたけど、けどつて何よマスクして
しはぶきや程よき距離にあれやこれ

苗字は八神、てんきゅうは天使とキューピッドの造語です。
俳号は無敵、句は隙だらけ。でも、好きだらけ。


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読者投稿による3ヶ月連載作品集

新 100年の旗手


(2018年10月号 〜 2018年12月号 3/3回目)


赫奕たる街にて
さとし

丑紅の語る言葉やジュレ光る
露店商も糖質制限年迎ふ
くすり指だけが深づめ聖誕祭
冬銀河錆びたままゆく背中かな
ノンシリコン入りのシャンプー年の市
朝練の霜焼猫のふやけたる
ヴェイダーのマスクに結露無かりけり
ルールの内側で待つ暮れやすき日
ネッスンドルマ冬眠かに釵を截て
密閉に近き寒さやピザの箱

岡山県出身。舞台映画「ミネルヴァの梟」舞台監督。
俳句同人「燻」所属。



薄荷光

小春日のコパルのやうな魚卵かな
妖精と語らふ夫の日向ぼこ
帰り花誰そ彼が吾を笑ひよる
眠り入る蛇は目高の骨に遭ふ
薄雲に口説かれてゐる冬の月
寒北斗フィルターの水音清か
ベタの赤寒オリオンの肩の赤
可燃物ごみは月、木日脚伸ぶ
アメイジンググレイス工事灯の雪
降誕祭シーラカンスとなりて吾は

 石川県金沢市出身。現在、加賀千代女出身地の白山市在住。メダカの飼育と俳句に明け暮れる日々です。


2019年度 第1期連載者募集中
締切 2019年2月15日(金)
応募内容
 2019年4月号に掲載できるタイトル付の10句
応募先
 Eメール magazine@marukobo.com
 件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
      (郵送またはFAXでも受け付けております。詳しくは編集室までお問い合わせ下さい。)


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新 100年への軌跡


2018年度 第三期
第一回


脈打つ
村上海斗

春浅しなるべく衣から食べる
春の宵顔によく出る血のかたち
吸う息を空の一つとして朧
桜散る飛行機の吐くカルマとは
踏切を待つ行く春を追うために
不揃いのこころ集いて夕凪げる
夕立のぶんだけおまけされた嘘
スーツまだぎこちなく夏駆け回る
夕焼や平気なふりは底をつき
流星の湖深くまで落ちた匂い
月眩し鼓動を森に聞かれけり
手短に唸る温め冬銀河
猫舌を演じる両手山眠る
心臓の隙間に時雨当てはまり
オリオンは孤独脈打つ四肢を持ち

村上海斗(むらかみ かいと)
 一九九八年北海道生まれ。北海学園大学人文学部在学中。札幌琴似工業高校在学時より句作を始める。俳句集団【itak】所属。


泥までひかる
輪違典子

締切をすこし延ばして冬に入る
納豆食う星になるはずだったのに
ブロッコリ兄のデートに鉢合わす
蕪ざっと炒めて母を待ちわびる
くるぶしに傷のまっすぐ残り鷺
枇杷の花作業着のみな背伸びして
吾が町に入る角から冬田面
長靴の泥までひかる十二月
島の子のおつかい海鼠買いに行く
牡蠣殻を叔父の小皿に重ねおり
ラーメンは季語じゃないです冬の月
図書館の窓に石鎚山眠る
ふゆうらら麦色のいぬ三歳に
急に切れる電話みたいに冬の濤
本当は忘れるための日記買う

輪違典子(わちがい のりこ)
 一九九八年生まれ。愛媛大学社会共創学部在学中。愛大俳句研究会所属。



感じる 考える 観察する
都築まとむ

 村上さんは身体感覚で詩を掴もうとしている。輪違さんは日常が俳句に。次回からもお二人の句楽しみです。

吸う息を空の一つとして朧  村上海斗
 いま口から鼻から入ってくる空気は「空の一つ」だという把握が楽しい。朧の空気は重たい。春は空が垂れ下がってくるから重たいのかもしれない。その重たい空の一片を、私たちは吸って生きているのだ。
流星の湖深くまで落ちた匂い  村上海斗
 最後の「匂い」という言葉に引き寄せられた。その匂いを想像してみる。鼻の奥がツンとするような涙が出てくるようなそんな感じ。匂いは記憶なのかもしれない。

納豆食う星になるはずだったのに  輪違典子
 納豆の糸が口から箸へと伸びる。箸をタクトのように振って切る。毎日納得がいかないことばかり起こる。これが現実。納豆はかき混ぜられて光っている。これも現実。いや、かき混ぜられたからこそ光ったのだとしたら……。
牡蠣殻を叔父の小皿に重ねをり  輪違典子
 末っ子の叔父と私は年が近い。父よりも叔父の方が遠慮なく話ができる。今日も就職の相談に乗ってもらった。叔父はアルコールに弱い。私はもう少し飲んでもいいけど、この一杯でやめておくことにする。

都築まとむ(つづき まとむ)
 1961年愛媛県八幡浜市生まれ。第3回選評大賞優秀賞。


出発点はそれぞれ
山澤香奈

春の宵顔によく出る血のかたち  村上海斗
 血のかたちが、少し掴みにくいけれど、私は頬にさす赤みを思った。血のかたちとしたことで、皮膚の下に触れられているような感覚。
月眩し鼓動を森に聞かれけり  村上海斗
 月光に騒ぎ出す身体、誰にも聞かせるつもりのない鼓動は、森に聞かれてしまう。この森は、鼓動が聞こえるくらい、深くしんとしている。月と私と森だけの世界。
オリオンは孤独脈打つ四肢を持ち  村上海斗
 不思議な感覚。四肢はオリオンか、わたくしのものか。そこに「ある」のに、寂しい。

ブロッコリ兄のデートに鉢合わす  輪違典子
 うわ、気まずい、なんて挨拶したら、買い物袋からブロッコリ見えてるし、なんて景を想像した。さくっと詠んでいるなかにも、おかしみが伝わってくる。
枇杷の花作業着のみな背伸びして  輪違典子
 一人くらいは、足がプルプルしているのかもしれない。農作業の景でもいいけど、私は枇杷の花咲くお宅での一コマ(大工さんとか)を想像した。枇杷の花が優しい。
急に切れる電話みたいに冬の濤  輪違典子
 寂しさや理不尽さや、そういったものを冬の濤は抱えてくれるのかもしれない。

 村上さんの作品は、肉体感覚や感情を詠み込むことで景を描き、輪違さんの作品は、景を描くことで、その向こうにある思いを捉えようとしている、そんな風に思いました。

山澤香奈(やまざわ かな)
 1983年愛媛県生まれ。伯方高校在学中、第3回俳句甲子園優勝。句集シングル『線路とぶらんこ』 (マルコボ.コム)。


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小西昭夫の愛誦百句


第6回


柿の実の中より光さすごとし  川本臥風

 この句を見ると、子規が碧梧桐の「赤い椿白い椿と落ちにけり」の句を「印象明瞭」として強く押し出したことを思い出す。子規は「これを小幅の油画に写しなば地上に落ちたる白花の一団と赤花の一団とを並べて画けばすなわち足れり」と書き、椿の樹の形、場所はなにも告げない。しかし、「吾人もまたこれがなきために不満足を感ぜずしてただ紅白二団の花を眼前に観るがごとく感ずるところに満足するなり。」と書いた。
 臥風のこの句からも、個人的にはサムホールサイズの画布に柿の実が描かれた油絵の静物画を連想する。はっきりと光が描かれているが、それは柿の実の中よりさす光でもある。この比喩に臥風の主観が輝いている。
 川本臥風は一八九九年岡山県生まれ。旧制三高在学中に「石楠」(臼田亜浪主宰)に投句。旧制松山高校教授(のち愛媛大学教授)となり、林原耒井と共に「松高俳句会」を興し指導、機関誌「星丘」を発行した。一九五〇年「いたどり」を創刊主宰。句集に『樹心』『城下』『持田』『梅本』『雪嶺』。他の著書に『芬泉』等。愛媛県教育文化賞、愛媛新聞社賞受賞。一九八二年没。


十二月友にふとん屋こんにゃく屋  内田美紗

 まずリズムがいいので読んで楽しい。いわゆる師走の慌しさの中で、ホッと一息つける句であり、一読、愛誦句になった。
一年の終りの十二月。その月にことさら友を意識するのはどんな時だろう。趣味の集りだろうか、その忘年会だろうか、あるいは年賀状を書いているのかもしれない。
 ふとん屋とこんにゃく屋の友人なのだから職場の集まりではない。生活に直結した仕事がらみの友人ではないのだ。同級生や趣味の集りならふとん屋もこんにゃく屋もいるかもしれない。それが肩の力を抜いてくれるのだ。
 友として選ばれたのがふとん屋とこんにゃく屋であるのが実にいい。ふとんもこんにゃくもわれわれの生活に不可欠なものでありながらそれがわれわれの生活の全てではない。その距離感が抜群なのだ。一年が楽しく暮れてゆく喜びが感じられる。『浦島草』所収。
 内田美紗は一九三六年兵庫県西宮市生まれ。一九八五年、「船団」(坪内稔典代表)創刊と同時に参加。一九九四年から二〇〇二年六月まで編集スタッフ。一九八七年、「門」(当時は鈴木鷹夫主宰)創刊と同時に入会、のち同人、「門賞」受賞。園田学園女子大学、生涯学習俳句講座担当。句集に『浦島草』『誕生日』『魚眼石』など。大阪府堺市在住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文 白方雅博(俳号 蛇頭)

第93話
小島のり子トリオ ライヴ at JAZZ BLEND 2018


フルートに冬三日月を尖らせる  小野更紗

 ニュー・アルバム「anytime」は、小島のり子のフルートと天野丘のギター「のりキュー DUO」プラスゲストという形で収録した。正式リリースは11月5日だけど、このツアーで先行発売。で、このCDの1曲目「グリーンスリーヴス」はイギリス民謡で賛美歌にもなった。「緑の袖」という意味のこの名曲を、まずお届けする。

爪弾けば冬星を生み夜を生み  猫正宗

 次はベースの巨人、チャールズ ミンガスが作曲した「直立猿人」。とてもこげ茶色のブルースを感じさせる名曲で、今回のCDにも収録した。英タイトルは「ピテカントロプス エレクタス」。

木枯しにデュオがモンクを弾ませる  チャンヒ

 澁谷盛良のベースと天野丘のデュオでセロニアス モンクの「アスク ミー ナウ」と「リズマニング」を。

そのベース歩調にすれば雪男  蛇頭

 この曲は新潟の魚沼にある青木酒造「鶴齢」というお酒の醸造元が、若い人向けにお酒を紹介したいという思いがあって立ち上げた銘柄「清酒 雪男」に由来する。魚沼には「雪男」伝説があり背丈は180センチほどで毛深く目がくりっとしてる。旅人がおにぎりを食べていると、欲しそうに見ている。旅人が「食べる!?」って言うとパクッと食べる。と、頼まれてもいないのに旅人の荷物をパッと持って、そのまま一緒に歩いて村まで届けてくれる。そんな良い雪男が歩いて村までたどり着く様子をお酒の味わいとともに曲に綴った。日本酒ジャズのオリジナル曲「雪男ウォーキン」をどうぞ。
 曲が終わり雪男は無事村までたどり着いた様子。でも、着くとすぐ帰っちゃう。これは鈴木牧之という江戸後期の民俗学者が、当時の雪国の生活を活写した「北越雪譜」の中に載っている物語。

冬ぬくしベースは今を肯定す  サテンドール

 ジョー・ヘンダーソンの「インナー アージ」は以前からずっと演奏したかった曲。今回のツアーで実現した。意味は「内なる情熱」。

小春日の笛はたやすく恋に落つ    八神てんきゅう

 久々参戦の彼女が今回の一番人気句を詠んでくれた。勿論そのJAZZ俳句はチャンヒ氏の描く大型俳画に収まった。曲は「アイ フォール イン ラヴ トゥー イージリー」。

冬銀河リズムとる手の甲白し  光海

 ラスト ナンバーは、小島のり子が秋田の西馬音内盆踊りとそのお囃子にインスピレーションを受けて作曲した。盆踊りとジャズ ブルースのトランス感を一緒に味わえる「盆踊りブルース」。


Today's Turntable
『エニタイム』2018年/whisper


「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は月曜日の21時〜22時。

次回JAZZ句会のお知らせ
12月16日(日)13時より、JAZZ BLENDにて開催。
テーマミュージシャンはグレンミラーです。アルバムは「グレンミラー オリジナルベストコレクション」をメインとします。参加希望の方は、本誌の句会カレンダーを参照してください。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU』vol.1〜vol.4(マルコボ.コム)を発売中。


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らくさぶろうの

呑む呑め呑もう句


第5回

選句、文 らくさぶろう


今月のお品書き
割り箸

よく割り箸は環境保護に反していると言われますが、国産の割り箸は主に他の使用方法のない間伐材や廃材から作られているものが多く、むしろ積極的に使いたいと思っています。ただし国内産、ね。
 昔は風呂の焚きつけによく使ってたなあ。あれはどこからもらって来てたのかと考えます。
 今回もバラエティに富んだ投稿をありがとうございます。お便りもすべてうれしく読んでいます。

割り箸のぱりんと新酒のきりりと  空山
 まあ何とも気持ちの良い句ではありませんか。きっちり割れたときの爽快感。そして新酒独特のフレッシュなあの味。肴はあまりたくさん要りません。小鉢でもあれば上等。

割り箸をのの字に回し芋焼酎  斎乃雪
 「焼酎」は夏の季語ですが、この句は冬の、焼酎の湯割りを思わせます。マドラーなんて必要ない、自分の割り箸の持つ方で湯割りをくるくる回し、ごくり。薄かろうが濃かろうが自己責任。えーと、もう何杯目?

乱暴に割り箸を割り雪催  24516
 別にむしゃくしゃしてる訳でもないんだけど、割り箸って優しく割ってもつまらない。乱暴くらいが丁度良い。鍋でも食べ始めるのでしょうかね。あれ、外はもうすぐ雪が舞いそうな、そんな夜の一コマ。

はし袋はし置きにしてぼたん鍋  ソラ
 はし袋をうまく折ってはし置きにしてる人がたまにいます。僕はテキトーに折ってやるんだけど、そのうちどっか行ってます。落としてるのか、手が当たって飛んだのか。もっと困るのがおしぼりの袋の置きどころ。あれ案外ジャマね。

割り箸真っ二つ夜鷹蕎麦二つ  青柘榴
 落語の「時そば」を思い出しますね。うまい蕎麦屋とまずい蕎麦屋が出てきますが、うまい方はちゃんと割り箸使って、まずい方は塗り箸。おまけに前の人が使ってたやつで、ネギが付いてたり。
 噺家さんが扇子を箸に見立て、口でパキッと割る仕草が見えるような句でございました。

割り箸を囃子に唄へおでん酒  久我恒子
割り箸へ口紅移し柚味噌酒  冬のおこじょ
割り箸をしがむ新酒を注ぐ度  奈月
割り箸の豊かに運ぶ初鰹  柊月子


今月の呑(どん)!!
※このコーナーでは「天」じゃなく「呑」です!

寝落ちして割り箸撥ねる夜長かな  フラゴナール
 僕の午後十一時ごろの姿を見られているような一句。馬鹿っ話をしながら機嫌良く呑んでいると急に黙り、コクリコクリ。皿にのせといた割り箸に身体のどこかが当たり、ポーンと撥ねる……まだ夜は長いので周りは「ほっとこう」となるんですねこれが。
 実感のある句(笑)

 今回は題材が「割り箸」でしたが、さすが皆さん、「呑む」句を作っていただいておりました。


募集の兼題「河豚」
2月号掲載予定
呑みたくなるような一句をお待ちしております!!

 今月の「呑」に選ばれた方には「ハタダ金時のさぶ」をプレゼント!! 投句に俳号、本名、住所、電話番号を書き添えて、編集室「呑む呑め呑もう句」係までお寄せください。
メール nomu@marukobo.com
フォーム http://www.marukobo.com/nomu/
投稿締切 12月20日


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mhm通信


第92回

文 小田寺登女


mhm日帰り懇親旅行記

 素晴らしい秋晴れの10月20日、年に一度のmhm日帰り懇親旅行として岡山へ行ってきました。
 行き先を決めるとき、メンバーの気持ちをグッと惹きつけた「千屋牛と松茸暴れ食い食べ放題」というキャッチコピー。「よっしゃ、暴れるでぇ!」とやる気満々で集結!かと思いきや、若狹会長とあねごさんが集合時刻になかなか現れずやきもきしましたが、無事に揃ってツアーバスに乗り込み、出発です。
 途中休憩のSAでいきなりソフトクリームを食べ始めるメンバーたち。若いなぁ。
 そして(おしゃべりに夢中になりすぎて私登女は瀬戸大橋を渡ったことにも気づきませんでしたが)最初の目的地、鯉ヶ窪湿原へ。
 オンシーズンではないため湿地性の花は見られませんでしたが、薊、吾亦紅、薄などの秋の草花が我々を出迎えてくれました。
 アキアカネもたくさん飛んでいたのですが、なんと日暮屋さんが「指をグルグルし、蜻蛉の目をまわして捕らえる」技を見せてくれました。
 この技が本当に使えるなんて知りませんでした! アキアカネの目玉がグリッと動く瞬間にびっくり。
 続いて昼食の千屋牛のすきやき。ガイドさんから「あんまり(牛肉は)たくさんはありません……」とあらかじめ釘を刺されていたため、小さめの牛肉が5〜6枚だったことにも大して落胆はしませんでした、ええ。千屋牛は柔らかくておいしかったです。
 この後、恒例の皆で百句を詠むためのLINEグループが立ち上がりました。前句から漢字一字、自立語、ひらがな3文字のいずれかをいただいて繋いでいく俳句対局スタイルです。
 それまで姦しかったグループが急に静かになり、一斉にスマホを見つめだす様はさぞかし異様だったでしょう。
まず一巡目。

鯉ヶ窪湿原野薊は残る  イリス
原稿に猫を乗せたる日向ぼこ  若狹
十月を僕らを乗せたバスは今  日暮屋
千屋牛の五枚十枚秋ビール  キム
秋うららガイドの眠るお土産屋  しんじゆ
社長夫人より土くれの枝豆  あねご
土色の蟷螂孫は昼寝中  恵女
秋天を繕う蜘蛛の浅黄色  登女

 やはり吟行しながらだと詠みやすい。
 もちろん、詠みながらもツアーは続いています。
 次は日本一の親子孫水車。大中小三つの水車が並んだ水路。紙漉き体験ができる施設もありましたが、今回のツアーには入っていませんでした。残念。
 そして北房コスモス街道へ。ここには百万本のコスモスが植えられているそうですが、今がまさに見ごろ!天気にも恵まれ、インスタ映えの美しい光景に夢中になってシャッターを切りました。
 さて、この時点でLINEグループはまだ二巡しかしていません。十六句。まずい。間に合うのか!?
 お次は日本三大稲荷のひとつと云われる最上稲荷。ボタンを押すとライトアップされる巨大狛狐(?)などに感心しつつ参拝し、お待ちかねの松茸暴れ食い食べ放題へ!
 ところがここでもガイドさんから「あまり期待しすぎるとね……」とのお言葉。暴れる前にしょぼんとしながら食事会場へ。まあ、たしかに松茸一本丸ごとみたいなメニューはありませんでしたが、松茸の天ぷら、寿司、お吸い物、パスタと焼き秋刀魚などお腹いっぱい食べました。葡萄も甘かった!
 旅程をすべて終え、あとはバスで帰るだけ。
 復路二時間半を詠み継ぎ、半分の五十句になったところで時間切れとなりました。
 今年は百句達成ならず。来年リベンジですね。
 互選して今年の一番句はこれに決定!

柿干すや隘路の果ての大社殿  イリス


 mhmでは松山市内外問わず会員を募集中です。原則、毎月最終金曜日19時からマルコボ.コムにて定例会を行います。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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会話形式でわかる

近代俳句史超入門


近代俳句史超入門
第33回

 大学で俳句を研究する青木先生と、その教え子で俳句甲子園の出場経験もある大学生の俳子さんが雑談を交えながらの近代俳句史超入門。


尾崎放哉(2) 作品


 青木先生と俳子さんが大学教室で話しています。


孤独と客観

青木先生(以下青) では、放哉の句を見てみましょう。
俳子(以下俳) 〈せきをしても一人〉(1)は知っていますが、他は知らなくて。この句、孤独のどん底感があって大好きです。
青 晩年の小豆島時代の句ですね。病気や風邪といった心細い時、心配してくれる人や看病してくれる人もいない。咳をしない時も、咳が出る状況でも一人。これまでも、これからも……と孤独すぎる句です。
俳 聞いていられないわ、酒よ! マスター、一番濃いやつをお願い!
青 教室の後ろを勢いよく振り向いても誰もいませんよ。確かに絶望感満載ですが、放哉は酒絡みの失敗続きで自業自得に近く、その点、自虐ネタに近い雰囲気がある。こんな境遇なのも自分のせいだ、そんなことは分かりきっている、でも淋しい、独りだなあ……と感傷に浸りつつ、ダメな自分を冷静に客観視しているフシがある。微苦笑気味のユーモアが漂うのが放哉句の凄いところです。


自虐ネタ

俳 自虐ネタのヒロシさん(2)みたいな感じ? 
青 なるほど、意外ですがそうかも。ホスト風の格好でネガティブな一言を呟く芸人さんですよね。「ヒロシです……何もしていないのに手から草の匂いがします」、あるいは「一日過ごして万歩計が二七歩でした」とか。独りネガティブ呟きという点で似ていますね。
俳 弱音を吐く男、大好きです。ヒロシさんの「『そのまま食べるカルシウム』を噛んだら、歯が欠けました」あたりもステキ。放哉さんの弱音律、楽しみになってきました。
青 妙なご趣味ですね。〈犬よちぎれるほど尾をふつてくれる〉は如何。
俳 いい! 人間社会からのけ者にされた放哉さんにも犬は無邪気に慕ってくれる。それは嬉しいけれど、尾を振ってくれる犬に喜びを感じる俺って……と微苦笑めいた嬉しさと切なさの美しい交錯。社会不適合者の微苦笑自虐律が迫ってきます、ゾクゾクします。
青 興奮のポイントがずれているような。「尾をふる、ふつた」ではなく「尾をふつてくれる」がポイントですよね。次の句も似ています。〈何にもない机の引き出しをあけてみる〉。
俳 ステキ。あまりの暇にすることもなく、机の引き出しに何も入っていないのが分かっていながら開けてみた、と。「あける」より「あけてみる」の方が、分かっていながらあえて開けた雰囲気があります。
青 「〜あけてみた」はそんな過去の自身を感傷的に振り返る感じが漂いますが、「〜あけてみる」は今まさにしている動作がプツッと唐突に終わる感じがある。〈壁の新聞の女はいつも泣いて居る〉もそうで、感傷に覆われてしまう前に、そういう発見自体をポンと投げ出す雰囲気がある。〈畳を歩く雀の足音を知つて居る〉も孤独感がありますが、それにしては雀の足音の発見が無意味に近い。孤独な感傷と「雀の足音を知つて居る」こと自体の発見にズレが生じてしまい、その結果、単なる孤独や絶望といった悲劇的な余韻より妙なユーモアが醸成される感じがあります。


ヘンな把握

俳 孤独ではあるものの、「だから?」と感じる小さな発見の仕方がヘンということでしょうか。
青 ええ。〈爪切つたゆびが十本ある〉とか。
俳 ヘンだ……何でそんなものを見つめているんでしょう。ヒマすぎたのかしら……。
青 マメに爪を切る生活ではなかったはずなので、爪を切った指が新鮮だったのかも。とはいえ、爪を切った自分の指を眺め、「爪切った指が十本あるなあ」と感慨に耽る孤独感はヘン。〈傘干して傘のかげある一日〉も妙で、それはそうでしょうよ、と当然すぎて誰も句にしないような状況を詠むので、妙なユーモアがある。
俳 性格破綻的鬱中年の独り遊び?
青 そんな感じですね。〈わがからだ焚火にうらおもてあぶる〉〈道を教へてくれる煙管から煙が出てゐる〉とか、ヘンですよ。
俳 自分の体を「うらおもてあぶる」と把握したり、道を教えてくれる人間より「煙管から煙が出てゐる」ことに注目したり、確かに……こういうことを面白がる人は、堅気の保険業界とかムリそう。
青 生活上、全く必要のないことに気付いてしまうタイプかも。例えば……〈打ちそこねた釘が首を曲げた〉。
俳 こういう発見をどこか楽しみつつ、不吉感も漂っているような。
青 なるほど。〈蟻が出ぬやうになつた蟻の穴〉〈口あけぬ蜆が死んでゐる〉は?
俳 死に絶えたか、使われなくなった蟻の穴をじっと見つめたり、「口あけぬ蜆」を黙って見ている放哉さん、少し淋しそう……あと、引っ張られている感じがします。
青 引っ張られている?
俳 風水や四柱椎命とかであるじゃないですか。掃除の行き届いた部屋や身ぎれいな格好の方が幸運が訪れやすいとか、玄関が暗いと悪い運気が集まってくるとか。放哉さんは見ない方がいいものを次々に見てしまって、悪い運気を集めてしまっている気がします。
青 そのスピリチュアル解釈、面白いですね。 〈蛍光らない堅くなつてゐる〉〈山に登れば淋しい村がみんな見える〉もそうかも。
俳 特に蛍句はそんな感じです。堅くなった蛍に自分の姿を重ねつつ、そういう未来を引き寄せてしまったような。おいたわしい……。
青 〈墓のうらに廻る〉もそうでしょうか。
俳 掃除?
青 話の流れを読みましょうよ。風水云々と力説するのでこの句も不吉な将来を暗示したのかと。墓掃除で裏に回ったとは、軽いなあ。


抜群の言語センス

俳 あ、放哉さんの凄さが分かった!
青 借りた金を返さない?
俳 そんなことは当たり前すぎます。そうじゃなくて、言葉の見つけ方が凄い。〈墓のうしろに廻る〉ならば掃除だったり、墓の後ろに由来が書かれているのでは……とふと回った感じがありますが、〈墓のうらに廻る〉は一気に負のイメージが膨らみます。墓の裏あたりのぼんやりした空間に負のオーラが漂っていて、そこにスルリと入りこむ感じ。でも無邪気に遊んでいる感じもあり、深刻に不幸で絶望的なのに、そういう状況でも本人はそれなりに楽しんでいる風があるのが真剣にマズイ。それを「うしろ」「うら」の少しの違いで示すのが凄いなあ、と。
青 なるほど。〈とんぼの尾をつかみそこねた〉も「〜そこねた」が絶妙で、〈こんなによい月を一人で見て寝る〉でいえば「〜寝る」の急展開ぶりが凄い、と。
俳 ええ。人生はグダグダですが、言葉の使い方や律の整え方が超的確なのかも……さすが東大法学部ね。孤独すぎる絶望と先生仰るところの妙なユーモアをこれだけ表現できるのはただ者ではないです。友人になりたくないタイプですが…。
青 〈一日物云はず蝶の影さす〉の作者ですからね。
俳 無言でうつむいたまま一日作業をしていたのかもしれませんが、個人的には無言の体育座りで一日を過ごしてほしい。現代の引きこもりさんやニートさんの鉄板ソングね。
青 絶望や孤独感だけならば単純ですが、ウィットめいた笑いが生じているのが凄い。あまりに狷介で破綻した性格で、気付けば俺の人生、笑えるほど孤独になったなあ、と空を仰ぐ放哉の表情は妙に晴れやかで、眼には涙が浮んでいる……そんな感じでしょうか。〈肉がやせて来る太い骨である〉。
俳 そんな断定……切ない、でも凄い。(放哉、了)


解説
(1)没後に刊行された句集『大空』(春秋社、昭和2年)より。紹介の句群はいずれも『大空』所収。
(2)ヒロシ(一九七二〜)=九州出身のお笑い芸人。「ヒロシです……」と自虐ネタを呟く芸風で二〇〇五年頃にブレイクしたが、極度の上がり症で仕事が激減。一発屋とされたが近年復活しつつある。


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100年投句計画

選者三名による 雑詠俳句計画



先選者 阪西敦子

 少し面倒な爪のつきかたをしていて、あまり最後まで切ることができないため、季節の変わり目に少しあわただしくすると、手の爪を割りやすい。キーボードでの入力は意外に全部の指をまんべんなく使う。割れている人差し指がキーに触れると気持ちが悪く軽く押そうとすると調子が狂い、仕事の効率が相当落ちる。変な力を入れて腱鞘炎になる。少しでも早く始めようと思って早起きをするから眠い。爪一本でこんなにも不都合が起こるとは。




赤色の靴下履いて柿つるす  ぺぷちど
 柿を吊るす動作は高いところへ手を伸ばし、全身を高みへ集中させる。つま先立ちをすることもあるだろう。ふとその伸ばした足先の靴下が赤いことに気づく。柿を吊るす動作で服が上がってよく見えたものかもしれないなどとも思う。本人や隣に立つ人というよりは少し離れた距離から手の先の柿の赤さと足先の靴下の赤さをともに視界に入れられる人の描写だろう。柿を吊るすという繰り返されてきた作業に、新たな体の伸びと色合いを加える句となった。




横になり風邪の子の口垂れてをり  青海也緒
 風邪をひいていて早く休めと言うのになかなか休まなかった子がとうとう眠った。具合を知ろうと顔を覗くと口がだらりと垂れているというのだ。風邪の疲れの見える様子を口という部位の描写で淡々と伝えて新鮮だ。

浜に咲く草を栞に秋夕焼  野中克歩
 「秋夕焼」というなんにしても雰囲気の出てしまう、かえって動きやすい季題。本に栞を指す景も、また、俳句ではよく取り上げられる仕草だ。浜に咲いている草の花というところまで迫り、海に夕暮を迎えた作者が表れた。
咳をする子の小さき背やテディベア  桂奈
 咳をする子供は気の毒であわれ、その細い背中はなおさらである。誰でも思うそんな感慨に、隣に寝るテディベアはこれまで句の中に入ってきたことはなかったように思う。抱かれるでもなく唐突に下の句を独占したテディベア、存在と子にとっての大きさがよく見える。

逃したる獲物しづもる鷹の空  プリマス妙
 急な降下で獲物を襲う鷹にも時々は失敗がある。それを誤魔化す様な何もなかったかのような鷹の姿の一方、命を取り留めた獲物の側へ作者の視線は導かれる。慌てず騒がず、しんとしてひたすらに姿を隠す獲物とならなかったものへ鷹の空はどのように見えるものか。

たま結びたま止めまでの秋思かな  西原みどり
 縫物の最初に糸を玉結びしておき、縫い終えて玉止め。その間はものを縫っているわけだけれど、慣れた者にとってそれは思考の空白の生まれる時間。そこへ秋思が入り込んだ。「たま」の表記もやわらかだが、どこにでも入り込む秋思の難儀さがわかる。




着膨れてスナックのママ奪い合う  中山月波
明日もまた今日のような日納豆汁  ちゃうりん
秋風に鞄膨らむ朝かな  内藤羊皐
蛇笏忌や山は泣きたるごと崩れ  ひでやん
十尺の脚立上がれば秋気かな  人日子
紙よりも薄き木屑や秋高し  彩楓
氾濫の臨時ニュースや秋の虹  青柘榴
破荷を描く金色尽くるまで  土井探花
コンタクトレンズは水面秋の虹  西原みどり
足跡は猪罠よけて山に向く  空山

阪西敦子(さかにし あつこ)
 1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。



先選者 関悦史

 この一年間、小澤實さん、村上鞆彦さんと「俳句」の合評鼎談を担当していたので、毎月「俳句」に掲載されている句をひとつ残らず読み通しては、飯田橋の角川ビルの会議室に日暮れ時に集まり、評し合うという生活が続いていましたが、それが十月の収録を最後に終わってしまったので、やや気が抜けています。どうもまだあの会議室に行かなければならないような気がする。この気分、学校の卒業後に似ているかもしれません。




樹木希林のゆるき語りや寝待月  すみ
 この句は樹木希林の訃報に接して、「死す」とか「忌」とかで性急に片づけず、当人の存在感や雰囲気を具体化しているのがいい。「ゆるき語り」という把握に、樹木希林とはどういう俳優であったのかについての批評的な把握があり、それが「寝待月」につながっていく辺りにも、樹木希林の声に生々しくよりそわれつつ、個別の死者としての彼女の面影が、まだ自然界に解消されきっていない境界面に触れているようで、独特の快感あり。




凸凹の頭蓋骨触れ祝聖夜  冬のおこじょ
 「凸凹の頭蓋骨触れ」という大まかな捉え方で異物感が出ているのが面白く、そのために「聖夜」と組み合わされても平板なイラストに終わっていません。ただし「祝」は言わないで抑えた方がよかったのでは。

山眠る浮世全ては山の夢  立志
 「山眠る」に対して、この世全てがその山が見ている夢にすぎないというのは見たことのないアイデア。「浮世」が通俗に見えるのですが、「この世」「世界」では理が勝ちすぎになるので言葉の選択が難しいところ。
睾丸も虎も眠れる冬日向  薄荷光
 この「睾丸」、虎のそれがまず目について、その後に眠っている虎の全体像把握にいたったということか、あるいは自分の睾丸なのかは曖昧ですが、その曖昧な宙吊り感も冬日向の睾丸を介して虎と通じあう豊かさに帰着。

秋の水潜らせて研ぐ刃かな  ひでやん
 「潜らせて」の一語があるので句になっています。「秋の水」等の季語で刃物を研ぐ句はおそらく無数に詠まれてきているので、「潜らせて」の、呪力を吹き込むような重みがなかったら只事に終始していたでしょう。

たま結びたま止めまでの秋思かな  西原みどり
 「秋思」「春愁」は、はっきりと原因のある心配事や不安には使えないので、この句は適切な使い方。無関係な裁縫の一工程が完結すると同時に消えてしまったことで、かえってそれまで漂っていた秋思に重みが出ます。




星月夜吊り革いつから三角  クラウド坂の上
秋冷や背にファスナーのワンピース  ヤッチー
鮭を打つ腕に鮭の刺青あり  風来松
秋の風子どもを焼いて喰ふ話  和音
劉生の少女は一重秋牡丹  凡鑽
月光へジュゴンの親子消えゆけり  洒落神戸
秋晴れやパフェにエスプレッソかけ  ぴいす
ぬか混ぜを真似してをるや冬の蝿  明惟久里
鈴虫の電池を分けて呉れますか  土井探花
雨後の土甘くにほふや虫時雨  緑の手

関悦史(せき えつし)
 1969年茨城県生。「翻車魚」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。2017年第二句集『花咲く機械状独身者たちの活造り』、評論集『俳句という他界』刊行。共著『新撰21』『俳コレ』他。



後選者 桜井教人

 特技という程ではないが、拍手の音が普通の人よりは少し大きい。両手を合わせる瞬間に空気を閉じ込めるのがコツだ。しかしこの方法は速く連打することができないという欠点がある。特技といえば中学生の頃、牛乳の早飲みが得意だった。牛乳瓶を口に当て、下から真上に百八十度回転させる間に飲み干すことができた。時間にして三秒ほどだ。しかし程なく給食の牛乳は紙パックに換わり、この特技で注目されることは無くなった。もちろん各種書類の特技欄に書いたことはない。


特選

透明になるまで歩く冬の月  のり茶づけ
 中七の表現によって不思議な世界観が描かれている。透明と冬の月がやや近いが、近いからこそ成立する句。透明が周囲の景なのか、それとも心の景なのかが分からないが、いずれも冬の月に帰着する。冷たい空気感がとても心地よい。

医師教師牧師地面師神の留守  うに子
 個人的に時事句は余り好きでは無いのだがこの句は上手い。前三つの職業と地面師とを対比させているように見せかけて、実は四つとも共通しているのではないかという作者の暗示が読み取れる。季語「神の留守」がこれまた絶妙だ。

鳩を吹く風来坊の叔父が好き  ラーラ
 鳩を吹くことだけは長けている風来坊の叔父。仕事はしないが人は良いのかも知れない。
 多分親族の中での評判はそれほどよくはないのだろう。そんな叔父に鳩の吹き方を教えてもらう。昭和とはそんな時代だった。


並選

銀杏散る色褒めたるは三日前  藍植生
就活はゲーム寄鍋つつきけり  或人
知らぬこと不幸と決めて闇夜汁  青海也緒
風のはらくすぐり返し秋遍路  野中克歩
白杖のよこがお秋を聞いている  中山月波
解けたる恋の結び目曼殊沙華  クラウド坂の上
重ね着を楽しんでをるモノトーン  レモングラス
敵襲ぞ団栗騎兵隊前へ  藍人
風が巻く金木犀の色も香も  花伝
長き夜や一緒に見たかった映画  すみ
自転車の篭冬草で満たしたき  桂奈
離婚への顛末全て炬燵かな  冬のおこじょ
冬銀河果てはウラジオストクより  奈月
母さんにほどかせるため編む毛糸  小川めぐる
隧道を秋蝶残す黄の軌跡  斎乃雪
一葉落つ誰の魂降りくるか  ゆき
窓越しに装ひもなく今日の月  ハルノ花柊
風雨去り零し敷き詰む木犀花  ヤッチー
朽つる口ひらく掩体壕に月  一斤染乃
叱る人少なくなりて冬に入る  次郎の飼い主
じふにぐわつやうか蛇口の縊る音  久我恒子
秋澄むや人体模型のあばら骨  小市
忘れ路の米寿の祝ひ一重菊  かのん
秋茄子やミートソースとチーズの香  とべのひさの
秋薔薇の香や欲しいのは銀の箱  あいむ李景
仏壇に団栗三つ載せた皿  笑松
小春日は猫の貌して黄昏るる  南亭骨太
酒の字の印半纏菊日和  24516
釣り人にはべる野良猫ひなたぼこ  立志
樫の実の落つれば星の欠片堕つ  風来松
秋夕焼窓にピアスの忘れ物  松田夜市
銀木犀星のかけらの匂ひして  一走人
朝焼けや湖畔の宿と新松子  ぺぷちど
秋晴や眺望二百七十度  和音
月光の雲呑麺にふるふると  くらげを
今年米炊き上がる音軽きかな  おせろ
冴ゆる夜の煮物めきたる死んだ魚  薄荷光
清流の巨石に跳ねる竜田姫  プリマス妙
さわさわと踝を這う虫の闇  みやこまる
コスモスの昼野カオスの七十余  さより
沈黙の侭の片耳かまど猫  鯨木ヤスカ
金曜の夜から初む竹の春  柊月子
初時雨今も貴女の息子です  凡鑽
桜紅葉さくさく踏みてのぼる城  喜多輝女
秋の山琵琶湖一面映る空  大槻税悦
バス停の距離また延びて柿の秋  洒落神戸
街燈の下にブランコ秋さびし  ぐずみ
クリスマス花屋の前の酔っ払い  ちゃうりん
境内で遊んだ記憶とろろ汁  ぴいす
平凡は非凡な日々よ秋深し  元旦
変わりゆくもの見送って冬の雷   七瀬ゆきこ
凍鶴や地の一点を措いて空  彼方ひらく
地球儀をまはせばこぼる秋の星  でらっくま
瀬戸の秋波をまたいで朱の鳥居  どんぐりばば
ぬか混ぜを真似してをるや冬の蝿  明惟久里
たわわとしか言いようのないマスカット  花紋
粗大ごみすべて処理して秋高し  北川谷戸乃
再検の採血室を蚯蚓鳴く  内藤羊皐
弔電の定型文や葉鶏頭  有瀬こうこ
地軸かしぐや落雷の二万回  八かい
鹿の恋闇切り裂きて静寂かな  ちろりん
田の実らぬ花になりにけり  人日子
冬瓜に美ら海の風まといけり  ケンケン
ふとよぎる呼び名面影実紫  哲白
朝顔や心経となえ明日のこと  りんご逝く
敬老の日夫の理髪を終りとす  巴
午後のカフェスマホ見切れば冬の雨  童夢U世
色鳥は水琴窟の音に眠る  彩楓
床下の泥掬い終え麦酒干す  青柘榴
歯科医師のマスクの下の皓歯かな  ゆりかもめ
一茶忌や今度は誰と遊ぼうか  大阪野旅人
草の実のやさしげな人選びけり  小木さん
豊かなる大気片手に秋の昼  アンリルカ
秋桜の揺れる木陰に犬眠る  カシオペア
茹で上げて黒枝豆の誘惑  空山
山門へ透き通る風初紅葉  あおい
かはたれを利酒の爺まかりこす  緑の手
ことごとく電車を止めて野分晴れ  まんぷく
嫁入りの話の席の栗御飯  ミセスコナン
股引がズボンをあふれ格闘す  未貫
永眠の日付吉日秋の風  遊人
寒晴やペンキ塗り立て木の白馬  坊太郎

桜井教人(さくらい きょうと)
 1958年愛媛県生まれ。愛媛県公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回、29回俳壇賞候補。


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100年投句計画

自由律俳句計画


きむらけんじ

 先日久しぶりに会ったマンション住まいの友人から、名前をつけて3年飼った金魚が死にかけてる。死んだら遺体はどうすればよいか聞かれた。庭があるなら埋葬すればよいが、やっぱり生ごみと一緒に……と言えば、それ以外にないかと言う。焼き魚にして食うわけにもいかず犬猫のように葬儀屋さんに引き取ってももらえないし、金魚の剥製なんか聞いたことはない、となればやっぱり生ごみと一緒にしか方法がないと思うが……まあとりあえずこんなことで悩める平和な国でよかった。




東京タワーの横に成り上がりの月  ちゃうりん
 「成り上がりの月」が強烈なインパクトを与えています。素直に読めば、大都市東京を象徴する東京タワーに無理やり対抗するように、本来の月らしからぬ仰々しいまでに光溢れた月が上がっている……ということになるのでしょう。しかしうがった見方をすれば、地方から東京へ出て成り上がった人々の右往左往する魔界……その東京一極集中の今の世の不均衡を激しく揶揄している、みごとな隠喩の句と読み取ることもできます。定型で収めていてはこのインパクトは出せない、まさに自由律ならではの味わい。矢沢永吉よりも、この月の成り上がりが気にかかります。




独り身の屋根に秋天  有瀬こうこ
 極論すれば「独り身」「屋根」「秋天」の三つの単語を取り合わせただけ。しかしこの三つの要素の間合いが絶妙です。目線はいま存在する空間から屋根へ、さらにそのはるか上の秋空へとみごとに空間移動させられます。

梨は水の記憶抱きしめて胃へ落ちる  桂奈
 梨があれだけ水分たっぷりなのは「水の記憶」を抱きしめていたからという解釈がなかなか詩的です。胃へ落ちてから、その水の記憶は一体どうなるのか……とよけいな詮索が生まれるのも句のちからです。
しがらみに生きてしんどうなってきた芒  大阪野旅人
 最後にとってつけたような「芒」が不思議に生きているのは、前半と丁度よい距離感が保たれているから。「芒」無しでも成立するのですが月並みの域を出ません。「しんどうなってきた」という方言的口語調も良い味を出しています。

保育器にねむる子の名に月の文字  うに子
 最近は凝った名前が多いですが、生まれたばかりの無垢の赤ちゃんに「月」という名はよく同気した選択です。はっきり名前を表示してしまうことなく、あくまで月だけを匂わせておくことで想像をかきたてているところが上手い。

団体行動は苦手で日向ぼこ  中山月波
 老人の団体行動をみているとやっぱり苦手な人はいるもので、その光景としては納得感があります。「団体行動」「日向ぼこ」の取り合わせが素直で、句材として肩肘張らない感覚でまとめているところがなによりです。




いつだってワレはトーキョーにいて冷えている  藍人
シュークリームの皮さくさくに焼けてはつふゆの朝  奈月
覗けば葡萄の奥にジュラ紀  一斤染乃
尻といふ尻へ被さつて焚火  久我恒子
愁思に繋がる雨の公衆電話  凡鑚
あの栗を拾えば良かった  七瀬ゆきこ
茂み歩けば茂みへ秋の蛇  青柘榴
昔不良かりんの実  小木さん
獣の匂い潜める台風前夜  多満
秋鳥きんきんかなしびしんしん  緑の手


並選

柿一つ乞ひて両手で受く  藍植生
林檎一個分の二の腕  青海也緒
ネットインして謝るの不遜  クラウド坂の上
句仲間ついに終の棲家へ去る明日  レモングラス
秋深しコンビニ駐車場の朝餉  すみ
頭蓋骨弄ぶ凹凹と聖夜が唸りだす  冬のおこじょ
ラジオからBBキングもう少し頑張れる  小川めぐる
秋の声聞こえる森へ  ゆき
東京都下の門扉にシーサー  ヤッチー
ビルの背の夕焼見たくて車走らす  のり茶づけ
体温計軋ませるインフルエンザの狂騒  次郎の飼い主
海を見ながら食べるたこ焼き  小市
花愛でる犬月愛でる猫  とべのひさの
やたら警告音の鳴る新車  南亭骨太
セロハンテープ剥がれ冬  24516
冬の朝袖をはみ出す袖をはみ出す袖  立志
無骨な鎧剥ぎ銀杏の翡翠  風来松
鰯雲販売人求む  松田夜市
釣り竿たれて海を吊り上げる  一走人
すぐ暮れるちょっとだけ寒気する  ぺぷちど
息を吸う吸う吸う金木犀  和音
キャンピングカーの灯りは酒樽のよう  薄荷光
法華経に靡く吾亦紅の二、三本  みやこまる
老い猫も鳴きたい夜の秋  さより
なまこなまこのたくつてなまこ  鯨木ヤスカ
熟れすぎた柿はごめんなさい  喜多輝女
右腕を上げれば五十年の重み  洒落神戸
欠けたる月が六時の空へと話かける  ぐずみ
冬三日月呼び出しの空吹かし  元旦
炬燵「強」の子帰り来る  彼方ひらく
どちらにしやうかなAIの言ふとほり  でらっくま
あと何年季語やベランダ  明惟久里
うさぎはその場所にはいない  花紋
遺失物の定期券跨ぎ秋の暮  内藤羊皐
花野に置きしかの恋は今もかげろへる  八かい
コニャックはチョコレートと結婚せよ  ちろりん
芋虫の落つき顔の糞  人日子
ジョギングの先の紫式部  ケンケン
月明の海へと小舟  彩楓
暗い所で若いと言われ黙っている  ゆりかもめ
柘榴は媚薬だよと囁いた、嘘  ラーラ
開戦日なければ生まれていない  空山
裸木の淋しさよ荒波よ  きさらぎ恋衣
赤き酒、気高く澄む酒夜長明けくる  まんぷく
玄関に青虫を飼っている  ミセスコナン
百舌の声から鵙の現われる  遊人
やたら目に付く背高泡立草  坊太郎


自由律で再挑戦を!

チャリ乗って笑って吸って綿虫ら  鯨木ヤスカ
柿の木にひとつ残ってさみしそう  どんぐりばば
うつせみや樹木にしがみ抜けいたり  どんぐりばば
赤い羽根つけらるる待つ息とめて  みつよ
ハロウィンのお菓子の好きな魔女ばかり  みつよ


きむらけんじ
 1948年生まれ。第一回放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』『あしたも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。



自由律を動かせ
第二回尾崎放哉賞
作品募集

応募締切
2018年11月30日(金)必着

投句料
 一般の部 2千円(2句1組、何組でも可)
 高校生の部 無料(2句1組まで)


 一般の部 大賞 賞状、10万円 ほか
 高校生の部 最優秀賞 賞状、クオカード5千円分 ほか

送り先
 〒825-0005 福岡県田川市糒1908-6 高木 架京 宛

主催
 自由律俳句結社「青穂(せいほ)」

詳細は http://www.hosai-seiho.net/


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100年俳句計画

詰め俳句計画


選者、問題作成 マイマイ


今月の問題
次の(   )の中に共通する冬の季語を入れてください。

ミキサーにミルク奔るや(   )
シャッターを漏れて(   )の灯 


ミキサーにミルク奔るやイオマンテ
シャッターを漏れてイオマンテの灯
 明惟久里さん。前句、フレーズとアイヌの熊送りの神事との関連がさっぱり分かりません。後句も何故この儀式をシャッターを閉め切って行わないといけないのか??? 6級。奈月さんは神迎え、ねもじさんは神迎。前句、この行事とは関係なく自分用のジュースを作っている? 後句、これもシャッターを閉め切ってやる儀式なのだろうか? 5級。喜多輝女さんは年の市。前句、本来この季語は正月に必要な品々を買い揃えるための市のことなのでやや本意からは外れる気がするが、雑多な物売りの雰囲気は良く掴んでいる。後句、魚河岸のようなところを想像した。ややリズムが悪い。その分析は後述。3級。

ミキサーにミルク奔るや冬苺
シャッターを漏れて冬苺の灯
 斎乃雪さん。前句、旨そう。後句、ケーキなどに乗っている苺を灯に見立てることはあり得るが、そうだとすると「シャッターを漏れて」が分からない。4級。次郎の飼い主さんの返り花、小木さんの石蕗の花も前句は取り合わせとして成立しているが、後句の「灯」で分からなくなる。同じく4級。

ミキサーにミルク奔るや霜柱
シャッターを漏れて霜柱の灯
 七瀬ゆきこさん、青柘榴さん。前句、動と静の魅力的な取り合わせ。後句、「霜柱の灯」とは何か分かりにくい。4級。久我恒子さんの横時雨は前句、窓の内と外で類似する動きのあるものが取り合わせられていて面白いが、後句やはり分かりにくい。同じく4級。猫楽さんは雪月夜。前句、窓の内外の取り合わせで白さという共通項がある。後句、「灯」とあるのでシャッターを漏れてくるのは月の光ではなく室内の灯りだと解釈できるが、二つの光の重なりはこの場合損だと思う。同じく4級。24516さんは雪をんな。前後句ともに生活感の強いフレーズだと思うのだが、そこにこのファンタジー季語を強引に入れてくる感覚が新鮮。3級。みやこまるさん、土井探花さんは冬銀河。前句、英語で天の川のことを「ミルキーウェイ」と言うので、この取り合わせは分かる。後句、シャッターから銀河の光が漏れてくるとは少し考えにくい。同じく3級。とべのひさのさんの細雪、童夢U世さんの雪しぐれは前句、きれいな取り合わせ。後句、雪で外が明るくなるのを「灯」とまで言っていいのかややためらいはあるが、言いたいことは分かる。2級。

ミキサーにミルク奔るや注連作
シャッターを漏れて注連作の灯
 坊太郎さん。前句、この季語はその動作に焦点が合う季語なので別の動作と取り合わせるとごちゃごちゃする。後句はガレージなどでやっていそうで臨場感がある。4級。のり茶づけさん、ミセウ愛さん、きさらぎ恋衣さんは。冬館。前句いかにも洋館風のおしゃれ感。後句は、「館」なのでかっこいい景になりそうなところなのに裏側を詠んだようで意外。3級。レモングラスさん、元旦さん、一走人さん、薄荷光さんは年用意。北川谷戸乃さんは春支度。前句、忙しい中の一コマか。後句は実感あり。2級。小市さんはラッセル車。前句は小さな機械に大きな機械を取り合わせる力業。同じように回転して白いものを跳ね飛ばしていて可笑しみがある。後句は出動前のラッセル車なのか、あるいはラッセル車が通るところをシャッターの内側から見ているのか分からないが、いずれにしろ迫力がある。同じく2級。

ミキサーにミルク奔るや日脚伸ぶ
シャッターを漏れて日脚伸ぶの灯
 大阪野旅人さん。前句は春の近づいてきた実感との取り合わせでいいですが、後句、終止形から「の」に繋がるのは文法的に無理がある。内容も変。5級。桃子ママさんは結氷期。前句、室内の液体としてのミルクと外の固体となった水の対比だろうか。後句、季語がぼんやりしすぎていてどう鑑賞すればよいか悩む。4級。中山月波さん、クラウド坂の上さん、立志さんは冬の朝。内容的には前後句とも破綻なく自然。しかし後句を声に出して読んでみるとリズムがぎこちない。これは「冬の朝」の「の」のところで一旦切れる感じになって五、六、六のリズムになってしまうためだろう。人日子さんの冬の暮、ジュミーさんの年の暮、ちろりんさんの年の夜も同様。同じく4級。空山さんは討入の日。前句、生活感の強いフレーズと大時代な季語のギャップが楽しい。後句、シャッターの奥で何かが進行しているような……。面白かったが、字余りでややリズムが悪いのが傷。3級。プリマス妙さんは漱石忌。前後句ともリズムも整って内容もそれなりの感慨はあるのだが、忌日で詠む場合にはもう少し故人を偲ばせるような踏み込んだ表現が欲しい気もする。2級。藍人さん、笑松さん、河原撫子さん、ひでやんさんは十二月。前句、十二月の異称「師走」とフレーズの「奔る」が響き合う。後句、悪くないが季語としては薄味なのでややぼんやりするか。同じく2級。ヤッチーさん、柊月子さん、花節湖さんは大晦日。前句、大晦日の慌ただしい感じが「奔る」に出ている。後句、いかにも大晦日の夜らしい実感がある。1級。桂奈さんは神無月。前句、神様も旅をする月で疾走感のあるフレーズと合う。後句、月の異称を用いることで「灯」にある種のイメージを付加することができる。同じく1級。

ミキサーにミルク奔るや春隣 
シャッターを漏れて春隣の灯
 小川めぐるさん。前句、うきうきと春を待つ気分がよく出ている。後句、春の近づいた「灯」に希望と喜び。初段。藍植生さん、しげこさん、青海也緒さん、すみさん、冬のおこじょさん、一斤染乃さん、うに子さん、あいむ李景さん、ほろよいさん、鯨木ヤスカさん、洒落神戸さん、ちゃうりんさん、きなこもちさん、美和子さん、矢野リンドさん、内藤羊皐さん、八かいさん、彩楓さん、ゆりかもめさん、遊人さんはクリスマス。前句、わくわくしてミルクも奔るか。後句、パーティーの楽しそうな声も聞こえてきそうです。二段。


今月の正解

ミキサーにミルク奔るや小晦日
シャッターを漏れて小晦日の灯
 或人さん、ゆきさん。前後句ともまだ日常っぽさが残っていながらも年末のせわしさもある小晦日の感じがよく出ていると自画自賛。初段。


解答募集中!
次の(   )の中に共通する冬または春の季語を入れてください。

その肩に揺れてお座敷犬(   )
うしろ手に眺めて(   )らしさかな

このコーナーは『新日本大歳時記』(講談社)を参考にして、選者が勝手にランク付けをしています。
新しい季語などを投稿される際は、歳時記、季寄せ名を併せて明記していただけると助かります!

12月20日締切 結果は2月号に掲載


マイマイ
 2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人だったが、最近は?? 第1回、第4回百年俳句賞(旧大人コン)優秀賞受賞。2013年句集シングル『翼竜系統樹』上梓。将棋推定初段。棋友募集中。宇宙と生命を題材に詠んだ句集『宇宙開闢以降』マルコボオンラインショップにて発売中。


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100年投句計画 投句方法



雑詠俳句計画
自由律俳句計画
詰め俳句計画

 「雑詠俳句計画」では、寄せられた投句を一括して、各選者が選句します。各選者に宛てて個別の投句を行うものではありません。

2月号掲載分締切 12月20日(木)

投句方法

 投句先コーナー名
 俳号(無ければ本名の名前のみ)
 本名
 電話番号
 住所

 以上の必要事項を書き添えて、編集室「100年投句計画」係までお寄せください。メールの場合は、件名を「100年投句計画」としてください。
 「雑詠俳句計画」「自由律俳句計画」はそれぞれ2句ずつまで投句できます。また、「詰め俳句計画」は季語1つのみを投稿できます。
 各コーナーの投句は、ひとつにまとめて送っていただいても構いません。

メール宛先
magazine@marukobo.com

投稿専用ページ
http://marukobo.com/toukou/

さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(「100年公募計画」のコーナー参照)


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短歌の窓


選者
歌人 渡部光一郎


特選

重曹であれこれ磨く話題なら家に帰れと思う女子会  有瀬こうこ
 笑ってしまう。結局そんなことを話すのなら帰れという作者のするどいツッコミ。女子会なるものがいつ頃発生、定着したのかよく分からないが、もう少ししたら「女子会」も死語になるのだろうか。


並選

繋ぐ手を失くした街の淋しさは木下利玄冬がまた来る  きさらぎ恋衣
 上句に(街の淋しさ)とあるのでちょっと複雑なのだが、やはりこの淋しさも人間のものだろう。淋しかったのは利玄か、作者か、それとも両方か。それにしても「木下利玄」の人名をまるまる放り込んでくるあたりは大胆というか乱暴というか、面白い。玄冬の言葉遊びもあって野心的な作。冬はそれでなくとも人恋しい。

シンバルの響く空より黄落は始まりそうでまだ十代  ぽちょ
 いい素材をキャッチしている。初句から四句(シンバルの〜始まりそうで)までがとてもよく、詩的な説得力もある。ただ、結句の二音節足らないのがおしい。五、七、五、七、七の短歌のりズムにのせてみてください。一気によくなると思います。

気に入らぬ奴にストレス溜めぬ技ハウツー本は「許せ」と言うが  フラゴナール
 気持はわかる。無責任に「許せ」という自己啓発本。そんなことが簡単にできるくらいなら苦労せんわい。それにしても世の人の悩みはたいていおんなじだなあ。


評のみ

後継ぎの無きまま老いの草を刈る新しき鎌さくさく音させ  ケンケン
 (後継ぎの無きまま老いの草を刈る)さびしさはわかるが、(新しき鎌さくさく音させ)というのは何だか気持ちよさそうで、結局どういう感情をこの歌からひろいあげればよいのか迷ってしまう。歌はとりあえずひとつの感情を前面に打ち出すことを考えた方がよい。

実篤の野菜はどれもぽってりと憩う水鳥たちに似ている  久我恒子
 実篤の描く野菜より、それがどれも「憩う水鳥たちに似ている」と気付く作者の感覚のほうが、ずっと詩的な気がする。

病院のソファに座る三時間皆同じほう向き同じドア見る  24516
 複数の人間が同じほうを向いて同じ場所を見てじっとしている変な時間。以前は公共の乗り物のなかでもよくこういう変な時間があったが、今はめいめいスマホの画面ばかり見ている。歌としては、二句目の字足らずなところをととのえてもいい。

歩かない夫をなだめて駐車場ここにいてねと秋寒の夕  和音
 「ここにいてね」と夫に言う作者。いたわりを感じるが、作者が一度「歩かない夫」をなだめて歩かせた行為があったのかどうか、ちょっと読者が混乱しそうなつくりになっているのがおしい。

三匹の猫とダンナの居る家にNICU帰りの嬰児  広木虎之進
 NICUでがんばった赤ちゃんが家に帰ってくる。おかえり。よくがんばったね。それぞれ違う条件のもとに生まれてくる子供たち。ゆっくりと元気に育ってほしい。

かけっこは一番になるきっとなる結果は五番うなだれる吾子  ゆき
 きっと一番になるからね!と約束して結果は五番、でもうなだれなくていい。りっぱだよ。一番になる!という気持ちとそれを宣言するというのはすごいことだ。評者はかけっこが遅く、万年ビリでそれをあたりまえだと思っていたから、この歌に出てくる子をほんとうにすごいと思う。

昭和とは母の笑顔で朝が来て母の笑顔でおやすみなさい  ミセスコナン
 昭和とは何だろう。ひとりひとりの昭和がありそうだ。この作者にとって昭和とは「母の笑顔」だった。しかしそういってる間にもう平成が終ってしまう。いったい平成とは何だったのか。評者には全く分からない。

図書館に職場体験中学生精一杯の笑顔を見せて  彩楓
 職場体験に中学生が図書館を選んだのだろう。図書館にもいろいろなお客が来るので、中学生が窓口に立つのはけっこう大変だと思う。一生懸命に笑顔で対応した一日、お疲れさまと言いたい。


自作の短歌(2首まで)を下記までお送り下さい。締切は毎月20日。
専用フォーム
http://www.marukobo.com/tanka/
専用Email
tanka@marukobo.com


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自作の俳句を英語に訳そう!

百人百様 E-haiku



文、訳例 菅 紀子


マラソンのゴールのあとの栗おこわ
Ate the chestnut rice after the marathon of goal.
ケンケン

紀訳
a marathon
sticky rice with chestnuts
after the goal


鰯雲水面に映ゆる余呉湖かな  
Lake Yogo, cierro-cumulus shine on the surface of the water.
ケンケン

紀訳
mackerel sky
reflected on the surface of the water,
Lake Yogo


海鳴りは肚すり抜けて雪女
sea rumbling
slip through the womb-
snow fairy
久我恒子

紀訳
the sea rumbling
slipping through my womb
the snow specter


コンビニはいのちのよるべ寒昴
convenience store
is a resort of life-
Pleiades in winter
久我恒子

紀訳
a convenience store
the anchorage of life,
the winter Pleiades


冬の水豚の眼の無心癖
winter of water,a pig of an eyeball,
detachment.
KIYOAKI FILM

紀訳
winter water
eyes of a pig
a begging habit


岸越えて真直ぐ帰る初霰
A bank go over,straight comeback home, new a hailstone.
KIYOAKI FILM

お便り
KIYOAKI FILM 英訳聖書、長すぎて、読破は困難!

紀訳
over the hill
heading straight for home,
the first hail


せせらぎをはしゃぐ錦木紅葉かな
Euonymus fallen leaves
frolicking
in the music of a stream
ほろよい

お便り
ほろよい 紅葉には散りゆく紅葉(落葉)も含めたいので fallen leaves を使ってみました。

紀訳
in the bubble stream
scarlet colored maple leaves
bubbling over


まだ森は光に気づかずに眠る
the forest still sleeps 
without noticing
the light
チャンヒ

紀訳
the forest still asleep
without noticing
the light


ゆれるのは水鳥のゆくただ水面
wavering thing is
the water surface only
that the waterfowls has left
チャンヒ

紀訳
the water stirs
only around the waterfowls
as they advance


折鶴は友禅紙や千代尼の忌
the origami crane
the yuuzen paper
the deathday of Chiyojo
明惟久里

紀訳
origami cranes
of Yuzen-dyed paper,
memorial of monk Chiyo


新米の上手に炊けぬこともあり
rice of new crop,
may not be able
to cook it well
明惟久里

紀訳
newly harvested rice
sometimes hard
to cook well


電波塔光る山頂色鳥来
various kinds of migratory bird come
radio wave tower shines
on the top of a mountain
彩楓

紀訳
a mountain top
with a shining radio tower
called on by migratory birds


水草の影の小魚秋の水
water of the autumn
small fish swimming
in the shadow of the waterweed
彩楓

紀訳
small fish
behind the waterweed,
a stream in autumn


K先生ふわり明治へ飛んだ秋
Mrs.K flow into meiji era in autummn
すずき徳三郎

お便り
すずき徳三郎 原句は「N夫人ふわりと夏の脚を組む」坪内念典。

紀訳
Ms. K
wafted into the time of Meiji,
this autumn


秋や豪華8人の食べる女かな
autummn 8 gorgeous eating women
すずき徳三郎

お便り
すずき徳三郎 映画『食べる女』豪華女優陣の豊かな食事と色っぽいシーン満載の美味しい作品でした。

紀訳
gorgeous autumn
eight women
eating



NORICOLUMN ノリコラム

倒置について

 倒置法をご存知ですね。意図的に言葉をひっくり返して記述する事です。倒置は文の中の句(2、3の単語)を倒置した場合、倒句となります。ついでに文と文をひっくり返せば「倒置文」(ex.お腹がすいた。ご飯が食べたい。→ご飯が食べたい! お腹空っぽだ。)、文字と文字をひっくり返せば「倒語」(ex.たね→ネタ)というわけです。
 俳句とはいわば「俳味のある句」ですから、その俳句の中で倒句することはよくあります。
 ではどんな時にその手法を使うのでしょうか。典型的なのは強調をしたい時でしょう。言いたい事を先に提示して残りを後につけることにより作者の意図がより伝わります。(ex.君恋し→恋しや君)この例だと自然に詠嘆の切れ字“や”が入り強調が明確になります。
 次に調子を整えたい時でしょうか。韻を踏ませてリズム感を良くする際には効果的です。押韻までしなくとも、詠んだ時に座りがいいな、と思ったら自然に5、7、5の5同士をひっくり返して仕上げていたりしませんか。
 英語俳句でも使えます。しかも日本語俳句を英語に訳す段階で、直訳すると修飾の関係でフレーズが長くなってしまったり、同じ句なのに英語にすると頭でっかちになったりしたら、「倒置」が効果的です。
 あまり細工をしなくてもすっと訳せる俳句は、あ、という瞬間(モーメント)を切り取ってそのまま言語化しその言葉を載せたタイプのものです。つまりそれが「写生」に成功している句なのかもしれません。


菅 紀子(かん のりこ)
(有)クラパムコモンカンパニー代表。通 翻訳、メディアによる姉妹都市交流コーディネーター。社名は夏目漱石が下宿したロンドンの地名から。歩道短歌会同人。人文学修士、翻訳修士。松山大学非常勤講師。(Hailstone Haiku Circle blog ICEBOX Contributor)(漱石と彼のライバル重見周吉、日系移民研究)


自作の俳句と、それを英語俳句にしたもの(2句まで)を募集!
応募先
 WEB http://www.marukobo.com/eigo/
 Email eigo@marukobo.com
2月号掲載分締切 12月20日(木)


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今回のお題句に対する投句から次のお題句を選び繋げてゆく

疑似俳句対局


選者 美杉しげり


今回のお題句
月皓皓いらねえこんなはしたがね  すみ


候補句

十六夜やはしたがねでもかねはかね  八かい
 今月最初の投句。お題句から、素直に「はしたがね」をいただきました。
 どうやら、今回はひらがな三文字でトライした方が多かったようです。

崇高な理想したがへ懐手  桂奈
寒椿をんなは嘘で身を覆ふ  ちゃうりん
おいらねこ尻尾の先の冷たくて  佐藤香珠
 まずは「よくその三文字を見つけたよね〜」と感心した三句から。
 桂奈さんの「したが」、ちゃうりんさんの「んなは」、佐藤香珠さんの「いらね」。
 (えーと、お題句のどこをいただいたの?)と、咄嗟には分かりませんでした。お題句にひらがなが多いと、こんな技も使えますね。

「くだらねえ」バレンタインの日の鼓動  一斤染乃
今日買ったブーツが棚に入らねえ  青海也緒
やらねえか父の言ってた夜鳴きそば  青柘榴
 続いては「らねえ」をいただいた三句。それぞれ「くだらねえ」「入らねえ」「やらねえか」……と、ちょっと荒っぽい口語を活かした句となりました。

狼の声はしたたか風の森  誉茂子
冬虹や雲の切れ間にはした色  花節湖
 続いて「はした」二句。誉茂子さんの句の「は」の使い方、なるほどこういうやり方もありましたねぇ。花節湖さんの「はした色」は、いかにも日本的な紫系の中間色。お題の「はしたがね」から、ぐっと雅な句への転換が楽しい。
狼はたがねで頸を刺されけり  冬のおこじょ
初霜の皓く月ヶ瀬たがねめく  七瀬ゆきこ
八月の木偶のつぺりとたがね痕  久我恒子
ばあ様の焼くたがね餅凍てる夜  斎乃雪
「聞いたがね」「聞いてないがね」除夜の鐘  星埜黴円
 「たがね」をいただいた句、意外に多かったですね。冬のおこじょさんの「狼」、七瀬ゆきこさんの「初霜」、久我恒子さんの「八月」は、それぞれ工具としてのたがねの質感と季語がうまく響き合っていると思います。
 斎乃雪さんの「たがね餅」、初めて知りました。うるち米を混ぜるのですね。海苔を混ぜ込むレシピもあるようでした。美味しそう。
 そして、星埜黴円さんの句! 思わず笑ってしまいました。確かにお題から「たがね」いただいてますよね! こういう会話、実際にありそう。

月並みな月日鞣して日向ぼこ  凡鑽
年の暮れ月賦で買ひしテレビジヨン  すみ
日月を日記にしまひ冬菫  中山月波
 お題から漢字をいただくとなると「月」「皓」の二択。
 こちらは「月」の皆さん。凡鑽さん、すみさん、中山月波さんは(お題句の月が季語ですから)季語になるのを上手く回避しました。
 実は「月天心カッカと笑う好好爺」という投句もありまして……。楽しい句なのですが、季語から季語というわけで、実際の俳句対局ですと、減点対象になってしまいますね。ああ残念!

めづらしき亥のお題菓子皓き皿  明惟久里
振り向けば明眸皓歯除夜詣  本田恭三
四条練る皓歯へ声や秋麗  あいむ李景
傷秋や明眸皓歯は人妻  ひでやん
君が持つ鱶は明眸皓歯よな  薄荷光
 そして「皓」を選んだ皆さん。明惟久里さんは「皓き」と詠みました。他の皆さんは「皓歯」ですね。除夜詣の闇にちらりと微笑をこぼした女性の美しさ。四条(京都でしょうね)の練る人の皓歯の健やかさ。
 人妻の皓歯となると、どこか上品な艶を感じます。傷秋という季語、ほとんどお目にかかったことがないのですが、何だかドラマがありそうな一句。
 そして、薄荷光さんの句は何と鱶が明眸皓歯!確かに皓歯といえば皓歯です(笑)意表をついてくれました。

ねえこんな顔で死にたい冬薔薇  奈月
 奈月さんの句、最初に読んだ時は「自己陶酔的ねー」と思ったのですが、いや待て、作者ではない誰かが「ねえこんな顔で死にたい」と言っているのだとすれば、違う味わいになるなと。冬薔薇が美しすぎるといえば美しすぎるけれど、どうせなら、ここまで言うのもありではないでしょうか。


次回お題句

ねえこんな狐が夜を吐いてます  土井探花
 迷いましたが、今月はこんな謎めいた一句を選びました。とにかく「狐が夜を吐く」という発想に惹かれます。これが狸なら「無い、無い」で終わってしまいますが、狐なら有り得そうに思えるのが不思議。「ねえこんな」「〜ます」という語り口も、この句を童話めいた味わいにしています。この狐、もしかしたら銀狐かも……個人的な好みですが。
 このお題句なら、いろいろなパターンで詠めそうですね。次回もよろしくお願い致します。


美杉しげり
 第8回俳句界賞受賞。数年前から小説も書き始め、短編「瑠璃」で第21回やまなし文学賞佳作。美杉しげりはその時からのペンネーム。


毎月25日頃に、投句フォームにてお題句を発表します。投句締切は毎月末日。

疑似俳句対局投句フォームアドレス
http://marukobo.com/taikyoku/


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THE BEATLES 213 PROJECT


第15回
「ハピネス! ザ ビートルズ 」

文 夜市


 折りしも今年の11月22日に発売50周年を迎えた2枚組のアルバム「ザ ビートルズ」(通称ホワイトアルバム)。前回のポール編に引き続き、今月はジョンの作品5曲をピックアップしてみました。


グラス オニオン

秋思詰めこむパンドラの箱は玻璃  きさらぎ恋衣
 パンドラの箱を開けたらビートルズの曲がいっぱい飛び出してきたってことでしょうか。バンドが解散に向かってしまうのもそのせいだったのかもしれないなあ。

雪よ硝子のタマネギを割るドラム  ロックアイス
始まりは冬雷どこへかは知らない  猫正宗
 終始この曲をリードするのはパワフルなリンゴのドラムス。イントロから最後までまったく緩むところがありません。

薄氷や光の歪む世に生きて  斎乃雪
初氷たくみな節にのる言葉  明惟久里


ハピネス イズ ア ウォーム ガン

天狼や愛ありつたけぶつぱなす  久我恒子
 意味深でたいそうエロティックなタイトル(と歌詞)。それにしても銃ではなく愛をぶっぱなすなんて、なかなか言えるもんじゃないよなあと脱帽です。

どのメロでイカせるつもり七変化  ツバメ号
 まったくテイストの違う3つ(4つかな)のメロディーから成るこの曲。最後のパートのシャウトのようなファルセットのような絶唱は、ジョンのボーカルの中でもベストプレイのひとつじゃないでしょうか。

しあわせは銃のごとくに暖かし  暮井戸
引き金に添えたる指や月氷る  立志


ジュリア

不器用な恋小春日のロックスター  猫正宗
 スタジオでべったりとジョンに寄り添うヨーコの姿には、正直ずいぶんと違和感を抱いたもの。しかしそこに不器用なロックスターの恋を見たという。作者の優しい視線を感じさせられる一句です。

愛しき名リフレインする秋の風  花伝
 ジュリアは18歳の時に亡くした母親の名前。さらにオーシャンチャイルドという歌詞にヨーコの名前もひそかに折りこんでジョンが歌います。

小春そら三つの指で撫づるもの  井玉
 スリーフィンガーによるジョンの引き語り。「ブラックバード」のポールによるツーフィンガー奏法と聴き比べてみるのも一興です。

朝の月髪は空へと吹き上ぐる  冬のおこじょ


ヤー ブルース

ワナダイと泣きに来たのか冬鴎  ツバメ号
 ワナダイはwanna dieのことでしょう。朝も昼も夜も死にたいという何ともやりきれない歌詞。やはりブルースには演歌が似合うのか、寂しい雰囲気の句をたくさん寄せていただきました。

プログレとマージーの間に消ゆ時雨  井玉
 マージーはマージービートのことでしょう。シングル「プリーズ プリーズ ミー」が初のナンバーワンヒットに駆け上がったのが1963年の1月。わずか5年でビートルズはなんと遠くまで来てしまったことでしょう。

黄落や僕はこの木に逢ひに来た  きさらぎ恋衣
北へ行く列車の黙や鎌鼬  久我恒子
凍鶴の身じろぎもせぬ立ち姿  暮井戸
寒暁や一人ホームにミスタージョーンズ  風十六九


エヴリボディーズ ゴット サムシング トゥ ハイド エクセプト ミーアンド マイ モンキー

猿酒のパーティーハッピーカモンカモン  ロックアイス
 何ともハイテンションなロックンロール。ポールの「バースデイ」もなかなかのものですが、はっちゃけ振りでは断然こちらの方が上でしょう。それにしても何回カモンと言ってるんだろう。

ハンドベルひとりよがりな冬の夜  越境島
 この曲のジョンに一言ありそうな越境島さんの一句です。

タイトルの長い曲だね暮の秋  れんげ畑



第17回 兼題曲 初期でもスゴいんです、オリジナル特集

アスク ミー ホワイ
P.S.アイ ラブ ユー
オール マイ ラビング
テル ミー ホワイ
ジス ボーイ

兼題曲を詠んだ俳句を左記までお送り下さい。


専用フォーム http://marukobo.com/beatles/
専用Email beatles@marukobo.com
締め切り 12月20日


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100年俳句計画編集室セレクト

100年公募計画



掲載は応募締切順。
選者は順不同、掲載名は敬称略。
各公募情報の詳細につきましては、主催者発表の最新情報ならびに問い合わせ先でご確認ください。


第18回 石田波郷記念「はこべら」俳句大会
主催 公益財団法人江東区文化コミュニティ財団
募集内容 波郷を偲ぶ俳句1句、雑詠1句、計2句一組1000円。何組でも可。
宛先 〒136ー0073 東京都江東区北砂5ー1ー7 江東区砂町文化センター「はこべら」俳句大会 係
締切 平成30年12月10日(月)必着
選者 石田郷子、上田日差子、鈴木しげを、コ田千鶴子、能村研三
賞 石田波郷記念「はこべら」賞1名、石田波郷記念館賞1名、各選者特選3句、入選10句
詳細問合先 電話03-3640-1751(公益財団法人江東区文化コミュニティ財団 江東区砂町文化センター 石田波郷記念館)

市制施行130周年記念事業 つばきの俳句募集
主催 松山市
募集内容 つばきにちなんだ俳句。一人3句まで。
宛先 松山市ホームページ記載の専用投句フォームを使用、またはハガキで、〒790ー8571 松山市役所 シティプロモーション推進課「つばき俳句」係。
締切 平成30年12月16日(日)当日消印有効
選者 夏井いつき
賞 大賞、特選、市制130周年特別賞。ライブペインティングで受賞作品を絵にしてプレゼント。
イベント 日時=平成31年1月27日(日)/場所=松山市立子規記念博物館
詳細問合先 電話089-948-6705(松山市役所 シティプロモーション推進課)

第65回 不器男忌俳句大会
主催 松野町教育委員会、松野町文化協会、葛句会
募集内容 未発表雑詠3句一組1000円。一人一組まで。
宛先 〒798ー2192 愛媛県北宇和郡松野町大字松丸343 松野町教育委員会 教育課内「不器男忌俳句大会」事務局
締切 平成30年12月21日(金)当日消印有効
選者 谷さやん、井上論天、大崎康代、谷岡城、谷口波詞雄、平岡千代子、松森向陽子、谷きよし
賞 愛媛新聞社賞、松野町長賞、松野教育長賞、松野文化協会長賞、葛句会長賞、愛媛県文化協会長賞(各1名)
大会 日時=平成31年2月24日(日)/場所=松野町コミュニティセンター/当日句募集(森の国俳句ウォーク)あり
詳細問合先 電話0895-42-1118(不器男忌俳句大会事務局)

第8回 瀬戸内 松山 国際写真俳句コンテスト
主催 松山はいく運営委員会、松山市
募集内容 写真と俳句を組み合わせた作品。【自由句部門(日本語、英語)】お題「海」を写真または俳句で連想させるもの。【課題句部門(日本語、英語)】課題写真に対して、俳句のみを応募。
締切 平成31年1月14日(月)必着
審査員【日本語部門】森村誠一、夏井いつき、キム チャンヒ、山口亜希子 【英語部門】デビッド マクマレイ、キット ナガムラ
賞 【自由句部門】日本語、英語それぞれ、最優秀賞1点=3万円分相当賞品、優秀賞2点=3千円分相当賞品 【課題句部門】日本語、英語それぞれ、最優秀賞1点=1万円分相当賞品、優秀賞2点=3千円分相当賞品
詳細問合先 電話06-6222-5224(朝日カルチャーセンター 瀬戸内 松山国際写真俳句事務局)
メール matsuyamahaiku@gmail.com(松山はいく事務局)
http://matsuyamahaiku.jp/contest/

右城暮石顕彰 吉野川全国俳句大会
主催 本山町
募集内容 未発表の四季雑詠2句一組1000円。規定の投句用紙(コピー可)を用い、何組でも可。
宛先 〒781ー3601 高知県長岡郡本山町本山568ー2 本山町立大原富枝文学館内「右城暮石顕彰吉野川全国俳句大会」事務局
締切 平成31年1月31日(木)当日消印有効
選者 辻桃子
賞 右城暮石賞、高知県知事賞、高知県文化財団理事長賞、選者賞(特選3句、入選20句)。応募者全員に入選句集進呈。
表彰式 平成31年4月14日(日)/本山町プラチナセンター ふれあいホール(当日句会あり)。
詳細問合先 電話0887-76-2837(「右城暮石顕彰吉野川全国俳句大会」事務局)

春夏秋冬笑顔まつやま福祉五七五《冬》
主催 松山市社会福祉協議会、マルコボ.コム(ふくし句会、ハイクライフマガジン「100年俳句計画」)選句
募集内容 福祉をテーマにした秋季の句を、専用フォーム(http://www.marukobo.com/egao/)より応募。
締切 平成31年2月3日(日)
賞 「松山トリコ」 大賞(松山市社協会長賞)1点=道後温泉湯玉トートバッグ、優秀賞3点=ブックカバー、入賞4点=紙の湯カードケース
詳細問合先 電話 089-921-2111(松山市社会福祉協議会)


夏井いつきの一句一遊

協力 南海放送

南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句宛先
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/

投句募集中の兼題
12月2日 漢字「本」、クリスマスカクタス
12月16日 小晦日、去年今年
12月27日 漢字「食」、寒猿
年末につき締切が通常より早まっております。

10月度「天」獲得句

江鮭
江鮭に岩塩叡山よりの使者  一阿蘇鷲二

渋取
渋取や分家の渋はなまぬるし  小泉岩魚

漢字「坊」
坊つちやんのそれから糸瓜の花に聞け  めいおう星

サフランの花
山肌は赤サフランは夜明け色  中山月波

掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとにしたものです。俳句ならびに俳号が実際とは異なっている場合がありますのでご了承ください。


俳都松山
俳句ポスト365

協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/

12月の兼題
投句期間
11月29日〜12月12日 鮃 

2017年12月31日〜2018年1月4日は、年末年始につき、結果発表は休載となります。
詳しい日程は公式サイトでご確認ください。


10月度「天」獲得句

無花果
いちじくに刺さる西太后の爪  花屋

色鳥
色鳥来しずかなしずかな家族葬  あいだほ


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鑑(み)るという冒険


映画篇 演劇篇

文&俳句 猫正宗


第七十四回
 『第1回 生(ライブ)演奏付松山無声映画上映会愛媛映画人編』&『誓いはスカーレット』

 かつて本欄が演劇だけのコーナーであったことを覚えている方も少ないだろうが、映画について書くようになったのは「本欄を読んだ後でも観ることができる」よう、編集長から厳命が下ったためであった。にもかかわらず今回取り上げるのは、まさかの二夜限りの上映会。『第1回 生(ライブ)演奏付松山無声映画上映会 愛媛映画人編』だ。無声映画には弁士という解説役が、映画の内容を語りによって補完するが、もともと欧米では解説はなく、生演奏による音楽の伴奏がついていたのだそう。言われてみれば、古い映画で銀幕(スクリーン)の前のオーケストラピットで演奏している場面を観たことが。本上演会で演奏を務めるのは、'95年より無声映画の伴奏をしてきた柳下美恵と、『あまちゃん』の音楽ですっかり一般知名度を高めた大友良英。選ばれた映画はスタッフやキャストで愛媛縁の映画人がかかわった『狂った一頁』『御誂(おあつらえ)次郎吉格子』『国士無双』(断片)『浪人街』(断片)。それぞれが伴奏する映画を初日と二日目で入れ替えて担当。私は二日目しか参加できなかったのだが、大友氏のものが、先ず音楽としての主張が感じられたのに対して、柳下氏のものは、良い意味でBGMとして作品に寄り添っていたように思えた。当たり前ではあるが、付く音楽によって映画の手触りがまるで違うものになってしまうのがダイレクトに感じられ興味深かった。それだけ、初日に参加できず同じ映画がそれぞれの音楽によってどう変わるか確認できなかったことが悔やまれる。特に、ノイズ、前衛音楽、フリージャズでも名をはせる大友氏が、今の目から見ても前衛的(アヴァンギャルド)な『狂った一頁』に、一体どんな音楽をつけたのか……。
 因みに他の映画もとてもモダン。当時の邦画は随分と尖った表現だったようだ。

声なくば奏でよモノクロームの秋

 二夜限りのお楽しみといえば、今年もやってきました「旅するテント芝居」劇団どくんご。今公演『誓いはスカーレット』(出演:五月うか、2B、他、'18年10月17日、18日、道後公園グラウンド特設“犬小屋”テント劇場)には'14年公演の地元ゲストだった泰山咲美が参加しており、凱旋公演でもありました。さて、ここ数年来観続けているためか、やや物足りなさも感じた今公演ですが、舞台の床板を外すと水が張ってあるシーンの美しさなどは、まさにテント(というか仮設小屋)ならではの企み。また、個人的想いと重なり琴線に触れたところや、観る機会を逸していた、ゲストの操り人形(マリオネット)のラブリーノと出会えたことも僥倖でした。
 本劇団は、各パートを演じる役者が自分がやりたいことをつくり、それを、演出、構成のどいのが纏めるという方法をとっているそう。それでも一貫しているものがあるように感じます。今回感じたのは「喪失」。そういったテーマが初めに与えられているのか、結果として、自ずと浮かびあがってきたものなのか、打ち上げで聞きそびれたのは残念でした。
 ところで某氏曰く「全国ツアーを名乗っていい劇団は、『楽市楽座』(野外劇で全国を回る家族劇団)と『どくんご』だけ」とのこと。あなたのすぐ隣でも、あなたの観たこともない世界が繰り広げられているはずなのですよ。

鵙の贄でもいかなくちゃいかなくちゃ


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岡田一実の

句集の本棚




金輪際
池田瑠那 著

発行 ふらんす堂(2018年初版)
70ページ
定価 本体1700円+税

 著者の第一句集。リアリティ溢れるモノとの交歓の中にロマンチシズムが漂う。
野菊に日当たりぬ花芯のみなれど
秋澄むや立てば畳まれチャペルの椅子
 映画館などでよくある立つと座席が上がるタイプの椅子を想像した。「チャペル」を去ろうとしたときだろうか、はたまた聖歌を歌うときか、立つとすぐに座席が上がるという仄かな俳諧味。「チャペルの」という聖なる属性が「秋澄む」と響き合い晴れやかで安らかな気持ちになる。
花散るや金輪際のそこひまで
梅雨晴や文字より落つるチョークの粉
桜紅葉が自転車の籠の中
戛戛と猟犬囓る鹿の骨
木製ベンチ水着の尻の痕ふたつ
地球儀叩けば紙の音せり秋燈
水圧にホースの固き青葉かな
葉桜や鋲に閉ぢたる検死創
可燃ゴミ袋に透けて盆のもの
 「夫、輪禍に遭ひ、二日後に他界。二十二句」という連作から二句。前句、「検死創」の生々しさ。後句、「盆」に魂を迎え送ったそのあとの空しさ。率直な哀切感が伝わる。
 「澤」同人。


馥郁
日下野由季 著

発行 ふらんす堂(2018年初版)
166ページ
定価 本体2500円+税

 著者の第二句集。透明感のある明るい世界。
揺れやむは泣きやむに似て藤の花
金木犀己が香りの中に散る
淡海いま雨の中なる秋燕
菖蒲湯の余りの束は立てかけて
一音をもて地にひらく落椿
音立つるかに一山の花ふぶき
 「一山」全てが桜。満開を過ぎて散りかけだろうか。風を浴びて「花ふぶき」となっている。「音立つるかに」とはそのように感じたが無音、ということなのだろう。視覚的な情報から「音立つ」という聴覚的な詩的認識を引き出している。
夏果ての雨に打たるる亀の首
秋風やチェロに凭れてチェロ奏者
雨粒の大きく百合の蕊伝ふ
春の雪存分に降り降りやまず
ふつくらと硬き封書よ鳥の恋
 沢山書かれた手紙を封筒に入れると「ふつくらと」でありながら「硬」くなる。この「封書」のしっとりと厚いぴんとした質感が「鳥の恋」と取り合わされることで一層の華やぎを得た。手紙の内容に想像が膨らむ。
切れてまた豆名月に次の雲
 「海」同人、編集長。


岡田一実(おかだ かずみ)
 第3回芝不器男俳句新人賞にて城戸朱理奨励賞。第32回現代俳句新人賞。「らん」同人。句集に『境界 border』(2014)『新装丁版小鳥』(2015)。2018年8月30日新句集『記憶における沼とその他の在処』(青磁社)上梓。


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今月の俳句カクテル

The HAIKU's Glass


文&カクテル 古川千栄子
協力 Riff


水引草風が触っていくばかり   礎沙絵

カクテルのベースには、暖かな香りのするオレンジのリキュールを使用。少し寂しげな、でも風と水引草が戯れている風景をブルーキュラソーとミントリキュール、ライムジュースで引き締まった甘さを表現した。
忙しい年の瀬に身体に沁みる強めの1杯


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新聞記事に隠された俳句を発掘する

クロヌリハイク


黒田マキ


マッカートニー ビー ル と カ ニ で ハードデイズナイト (2018年11月5日 愛媛新聞より)

秋 の朝 いつもより1時間 早く起き (2018年11月7日 デイリースポーツ)

新ソバの出回り時期を迎え、 雨 (2018年11月8日 日本経済新聞より)

ズワイ ガニ オス、メスともに いなくな り (2018年11月6日 朝日新聞より)


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100年俳句計画 掲示板



テレビ、ラジオ

NHK Eテレ
『俳句王国がゆく』(福岡県岡垣町)
12月16日(日)14時30分〜15時30分
 夏井いつきが主宰です。

NHK 総合テレビ(四国四県域)
「四国 おひるのクローバー」内 隔週火曜
『夏井いつきのムービー俳句!』
12月4日(火)、18日(火)11時30分〜

TBS系列局 全国ネット
『プレバト!!』
毎週木曜 19時〜
 夏井いつきがゲスト出演者の俳句ランキング付けで出演! 放送日の番組欄を要チェック!

南海放送
松山市政広報番組『大好き!まつやま しあわせ実り庵』
毎週火曜 20時54分〜21時(再放送 日曜11時40分〜11時45分)
 夏井いつきがナビゲーターとして出演

南海放送ラジオ
『夏井いつきの一句一遊』
毎週月〜金曜 10時〜10時10分
 投句募集の詳細は「100年公募計画」のページを参照。

FMラヂオバリバリ
『俳句チャンネル』
毎週火曜 10時30分〜11時00分(再放送 水曜22時〜22時30分)
投句募集兼題
「冬の波、ブロッコリー」12月9日締切
「冬菫、白鳥」12月23日締切
 WEB http://www.baribari789.com/
 mail radio@baribari789.com
 FAX 0898(33)0789
 投句には本名、住所をお忘れなく!
 「天」の句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。

各番組の放送予定は変更される場合がございます。新聞やWEBなどで最新情報をご確認ください。


選句、執筆

松山市『俳句ポスト365』
http://haikutown.jp/post/
 投句募集の詳細は「100年公募計画」のページを参照。

テレビ大阪俳句クラブ
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
「集まれ俳句キッズ」(夏井いつき選)
毎週日曜タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井いつき選)
投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。
朝日新聞松山総局(〒790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。


講演、イベント等

百年俳句賞表彰式&100年俳句計画大忘年会
12月1日(土)18時30分〜21時
 いよてつ高島屋 9階ローズホール(愛媛県)
 申込受付は終了しております。

内海地区3校合同句会ライブ
12月5日(水)13時30分〜
 愛南町立内海中学校(愛媛県)

平成30年度 全地婦連 四国ブロック会議 兼 第68回えひめ婦人大会
 夏井いつき講演会「俳句を創る 人を創る 街を創る」
12月6日(木) 15時10分〜
 ひめぎんホール サブホール(愛媛県)
  
愛媛新聞カルチャースクール特別講座 夏井いつき句会ライブ
12月9日(日)
(1)10時〜12時 (2)14時〜16時
 愛媛新聞社 1階ホール(愛媛県)
申込 はがき又はFAXに郵便番号、住所、氏名(ふりがな)、電話番号、希望時間(1、2)を明記。(1枚で複数人申込可)
定員  各120名(先着順)
受講料 一回2500円
申込先 〒790ー8511(住所不要)愛媛新聞社 愛媛新聞カルチャースクール「夏井いつき句会ライブ」係
問合先 愛媛新聞カルチャースクール 電話 089(935)2361

平成30年度文化講演会 夏井いつき「100年俳句計画」
12月12日(水)18時30分〜
 須賀川市文化センター(福島県)
入場料 1000円(全席自由)
 座席数には限りがあります。
問合先 須賀川市中央公民館 電話 0248(73)4407

長崎県平戸高校 家藤正人句会ライブ
12月12日(水) 10時〜12時
 平戸市中部ふれあいセンター(長崎県)
問合先 長崎県立平戸高校 電話 0950(28)0744

皆野中学校 夏井いつき句会ライブ
12月15日(土)10時〜
 皆野中学校(埼玉県)

秩父第6回文化 芸術体験事業
 夏井いつき講演会「俳句を創る 人を育てる」
12月15日(土)14時〜
 皆野町文化会館大ホール(埼玉県)
入場無料 要入場整理券。満席になり次第配布終了。
問合先 皆野町教育委員会(皆野町文化会館) 電話 0494(62)4563

夏井いつき句会ライブ in亀山
12月21日(金)18時30分〜
 亀山市文化会館大ホール(三重県)
入場料 2000円(全席指定)
 未就学児入場不可
問合先 亀山市文化会館 電話 0595(82)7111
 
夏井いつきの「吉野」句会ライブ
12月22日(土)13時30分〜
 吉野町中央公民館 大ホール(奈良県)
入場料 2000円(全席自由)
定員 300名 満席になり次第受付終了。
問合先 一般社団法人 吉野ビジターズビューロー 電話 0746(34)2522


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鮎の友釣り


第245回


俳号 大槻税悦(おおつきぜいえつ)

俳号について 「大槻」は旧姓です。何らか形で旧姓での自分を残そうと思い、俳号の名字には旧姓を付けました。「税悦」は職業である税理士の「税」と名前「悦子」の「悦」です。俳号に「税」なんて縁起の悪い漢字を付ける人はなかなかいませんよね〜(笑)

前回 谷口詠美さんへのラヴレター 俳句甲子園応援句会に応募いただき交流開始。観劇のために宝塚にお越しになり初対面。共通の趣味である宝塚と俳句でお会いすれば毎回大いに盛り上がります。詠美さんの俳句は、言葉遣いがとても繊細で優雅です。私は本人も句も雑なので、本当に見習わなくてはいけないと思うことしばしばです。

写真について 最近の写真が無くて、5年ほど前の岸和田のだんじり会館での写真です。今はもう少し太ってます(笑)(テキスト版では写真割愛)

次回 小川めぐるさんへのラヴレター めぐるさんは関西地区仲間で、吟行や句会でご一緒している仲良しさんです。私たちは学年は違いますが、同じ年生まれなので、小さいころからの幼馴染のような感覚です。めぐるさんの俳句は、とてもダイナミックです。そしてリアルなオノマトペが読み手へ景を突き付けます。私もオノマトペは好きで使いますが、天性の才能の違いを実感させらる瞬間です。


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告知



JAZZ HAIKU Vol.4 ドラム編

蛇頭こと白方雅博さんのエッセイとJAZZ句会メンバーの俳句、マミコンこと堤宏文さんの写真で誘うJAZZの世界。マルコボ.コムオンラインショップにて発売中。
ISBN978-4-904904-39-8 C0092 ¥700E 定価 本体 700円+税
仕様 135mm×135mm、36ページ、オンデマンド印刷、表紙PP加工

http://shop.marukobo.com/


あなたの句集を 20,000円〜 制作します
 完全デジタル入稿、30冊制作の場合。価格は税別。

仕様 135mm×135mm、36ページ、オンデマンド印刷、表紙PP加工

2018年 第4期 11月30日 (金) 申し込み締切 (原稿締切12月5日)

詳しくは http://www.marukobo.com/style/
通常の句集Styleの倍のページ数による「句集Style-W」の募集も行っております。
お気軽にご相談下さい。





春夏秋冬(しき)笑顔まつやま福祉五七五

福祉をテーマにした秋の五七五
結果発表

主催
松山市社会福祉協議会
有限会社マルコボ.コム(ふくし句会、ハイクライフマガジン『100年俳句計画』選句)

協賛
ITTO個別指導学院


会長賞
赤い羽根つけて母子のえくぼかな  佐藤トラエ(松山市)

優秀賞
花梨の実母の自慢は骨密度  野ばら(兵庫県)
町消えて仮設の先に彼岸花  弘子(松山市)
アンカーは元引き籠り運動会  砂山恵子(西条市)

入賞
リハビリの成果を試す栗ごはん  ルーキー(山梨県)
小児科の看護師魔女となるハロウィン  藍人(徳島県)
桔梗の哀しくないと云えば嘘  青萄(栃木県)
三人の支援学級小鳥来る  西原みどり(新居浜市)





1月号特集
帰ってきた! 俳書道の部屋
作品募集

応募締切 12月2日(日)(必着)

「俳書道の部屋」は、2009年7月号から12月号まで連載された人気コーナー。ハガキ(またはハガキサイズの用紙に)お題の俳句を独創的な書で書き、その書を競う企画です。選者は天玲さん。多数の応募お待ちしております。

お題「初日さす硯の海に波もなし  子規」

応募方法
 ハガキ大の紙にお題の俳句を筆で書き、宛名欄に郵便番号、住所、俳号、本名、電話番号を明記して本誌「俳書道の部屋」宛にお送りください。

送り先
 〒790-0022 愛媛県松山市永代町16-1
 有限会社マルコボ.コム 100年俳句計画「俳書道の部屋」係





勝ったら酒だ! 負けても酒だ!(有瀬こうこさん作)
第17回 高校生以外のための まる裏俳句甲子園

日時
2019年1月13日(日)
予選 9時30分 集合、本戦 13時00分〜 (12時30分開場)

場所
松山市立子規記念博物館(松山市道後公園1-30)

入場料 500円

エントリー料 700円(エントリーには別途入場料500円が必要です)

事前に当日お弁当と懇親会の仮申し込みを受け付けしています。
ご希望の方は、mhmホームページ(http://e-mhm.com/)にアクセスし「第17回まる裏俳句甲子園お弁当&懇親会仮受付のお知らせ」にお進みください。
Eメールの場合は、氏名、俳号、電話番号、お弁当の有無、懇親会の有無、(あれば)チーム名を mhm_info@e-mhm.com 宛にお送りください。

当日パンフレット広告募集中(1口3000円〜)
お問い合わせ
 Eメール mhm_info@e-mhm.com
 電話 (089)906-0694 マルコボ.コム内(担当 キム)





市制施行130周年記念事業
つばきの俳句募集

1月28日「いい、つばきの日」に合わせて、「つばき」をテーマにした俳句を募集します。
また、平成31年1月27日(日)に松山市立子規記念博物館で記念イベントを開催いたします。
俳句をご応募いただいた上で、ぜひ当日のイベントにもご参加ください。


応募期間
 平成30年11月15日(木)〜12月16日(日)(消印有効)

選者
 夏井いつき

募集内容
 「つばき」にちなんだ俳句を募集(1人3句まで。本人が制作した未発表句に限る)


 「大賞」「特選」「市制130周年特別賞」を決定し、賞に選ばれた人には、ライブペインティングで受賞作品を絵にしてプレゼントします。なお、入賞者は平成31年1月27日(日)記念イベントにも参加をお願いします。

投句方法
 松山市ホームページ(シティプロモーション推進課)に記載の専用投句フォーム(外部リンク)に俳句を入力し応募。もしくは、はがきに俳句と必要事項(住所、氏名、年齢(学年)、電話番号)を記入して、〒790-8571 シティプロモーション推進課「つばき俳句」係へ

投句先 https://www.city.matsuyama.ehime.jp/shisei/citybrand/pr/tsubakikinen.html

問合先
 松山市役所 シティプロモーション推進課
 電話 089-948-6705


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編集後記


キム チャンヒ

 僕にとって一番の先生は手塚治虫さんだった。
 兄や姉の影響で、小さい頃から空気のようにテレビアニメを見ていたし、小、中学生の頃は「火の鳥」や「ブラックジャック」を、大学生になってからも「アドルフに告ぐ」、遺作となった「ルードウィヒB」まで、手塚治虫さんの作品から頂いたものは計り知れない。
 それら作品の他にとても影響を受けた本が中学生の頃手に入れた『マンガの描き方―似顔絵から長編まで』だった。
 マンガを描くテクニックだけではなく、物語の作り方や発想の生み出し方など、分かりやすく深く語られている。「マンガとはこういう事だ」「表現とはこういう事だ」というメッセージがひしひしと伝わってくる一冊である。
 今月号の特集は、1ヶ月早めの「生まれてから現在までの代表句集」。俳句初心者にとっては、無条件で作品を発表できる嬉しい企画。しかし俳句上級者にとっては、過去の自分の作品と戦わねばならず、「俳句」という文芸について深く考えざるを得ない企画でもある。そんな創作への精神こそ、手塚治虫さんから学んだ事だと今さらに思う。


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次号予告


254号 1月1日発行予定

発表! 第8回百年俳句賞!



お得で便利なマルコボ.コム直販定期購読! 巻末の案内をご覧ください
お申し込みの方へ、毎月末頃に最新号を送料無料でお届けいたします!
(住所変更の際は必ず編集室までご連絡ください)

『HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画』は以下の書店でもお買い求め頂けます。

愛媛県
 明屋書店(一部店舗のみ)
 ゆらり内海(愛南町)
 原田書房(今治市)
 子規記念博物館(松山市)
 紀伊國屋書店松山店
 ジュンク堂書店松山店


HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画
2018年12月号(No.253)

2018年12月1日発行

編 集 水谷雅子
    有谷まほろ
    松本昌子
    山澤香奈

編集長 キム チャンヒ

発行人 三瀬明子