100年俳句計画 2018年7月号(No.248)


100年俳句計画 2018年7月号(No.248)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。






目次


巻頭リレーエッセイ
香雪蘭

特集
作品集を作ろう!
連作入門

レポート 脇々(愛媛大学俳句研究会四回生)


好評連載


作品

百年百花
 ふづき/中村阿昼/津田美音/鈴木牛後

新 100年の旗手
 天野姫城/みつよ

新 100年への軌跡
 俳句 若林哲哉/樫本由貴
 評  とりとり/亜桜みかり


読み物

美術館吟行/川嶋健佑

小西昭夫の愛誦百句/小西昭夫

Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳 朗善)

JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭

ラクゴキゴ。/らくさぶろう

mhm通信/若狹昭宏

近代俳句史超入門/青木亮人

鑑(み)るという冒険/猫正宗

岡田一実の句集の本棚/岡田一実

クロヌリハイク/黒田マキ


読者のページ

100年投句計画
 選者三名による雑詠俳句計画/桜井教人、阪西敦子、関悦史
 自由律俳句計画/きむらけんじ
 詰め俳句計画/マイマイ
 100年投句計画 投句方法

短歌の窓/渡部光一郎

百人百様E-haiku/菅紀子

100年公募計画

疑似俳句対局/美杉しげり

THE BEATLES 213 PROJECT/夜市

100年俳句計画 掲示板

魚のアブク

鮎の友釣り



告知

編集後記

次号予告





巻頭リレーエッセイ



夏の扉
香雪蘭

 事務所の場所が変わり通勤に片道30分以上かかるようになって一年。朝の時間は運転しながらロングブレス的な複式呼吸に励み、体重に変化はないものの最近何やら腹筋が割れてきた(と思う)。そして、私の髪はウエストを超えて腰に届くくらいに伸びている。
 へアドネーションという言葉を知ったのが何年か前に同じくらいの長さの髪を切ったあと。闘病している子供たちのウィッグの一部にできたのにと大変残念に思い、何となく伸ばしていた髪もそろそろ切ってもいい頃だ。50pあればロングのものができるらしいので「大阪まで行くぜ」と鼻息荒く考えていたら、松山にもそういう美容室があるらしい。少し前に句友から割引券も頂いた。
 この号がでる頃には夏の扉を開けて「髪を切った私に」なっているに違いない。
 フレッシュな夏が来る!

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作品集を作ろう!

連作入門


レポート 脇々(愛媛大学俳句研究会四回生)


初めに

 「連作ってどうやるんだ?」
 大学生になって俳句をするにあたり、よくぶち当たる問題である。波郷新人賞、鬼貫青春俳句大賞、角川俳句賞、百年俳句賞……etc. 何句か応募して、そこから一句選ばれるような賞ではなく、何十句がまとめて評価される賞に向けて準備する時、私たちはその準備の仕方すら明確に知らないのである。
 今回は、その初歩、連作としての作品集を作る時の俳句の並べ方を、キム・チャンヒさん指導のもと行うことになった。
 今回集まったのは愛媛大学俳句研究会のメンバー五人。動物園のガチャガチャに金をつぎ込む柚乃、リケジョ瑠璃、関西人留学生あゆ、超辛党板尾奈々美、就活生脇々。
 句風も性格も学年もばらばらな学生俳人が、10句の作品集作りに挑む。
 今回、講座を経験した脇々がレポートする。どんな作品集が出来上がるやら。


準備

短冊に書いた自分の句を二十〜三十句。それぞれの俳句に季節(春の句ならば、三春、初春、仲春、晩春など)を記入しておいた。


講座前談議

チャンヒ「俳句は本来一句一句が独立して存在するものですが、俳句の賞には二十句〜多いものでは百句を超えた句にタイトルをつけて提出する賞があります。実際は一句一句読むのに、何故作品集を編むのか、というところだと思います。」
 初めて俳句を並べた時は完全に手探りで、なんでタイトルなんてつけなくてはならないのか、と思ったものである。
チャンヒ「タイトルを付けて俳句をまとめる意味はいろいろありますが、その中の一つの意味として、『読者に俳句を届きやすくする』ということがあると思います。また、一つ一つ独立している俳句をまとめることで、一句とは異なった世界を表現できます。今回は作品集の初歩、俳句の並べ方について、みんなでやっていきたいと思います。」
一同「よろしくお願いします。」


講座開始

チャンヒ「持ってきた句を、絶対に使いたい! という句と、それ以外を一軍と二軍に分けてみてください。絶対使いたい句は作品集構成の柱にします。」
 こいつはスタメン、こいつはベンチかなぁ、こいつは強い。エースだ。と考えながら自分の句を分けていく。季節ごとに分けていくと、脇々の場合、夏の句が多く、春と秋の句が微妙な数。構成の柱にしたい句も夏の句が多い。
 なんやかんや言いながら各自が設定した構成の柱は次の通り。

脇々
航海のはじめて春になる日誌
鉢植えに土が黙つて夏終はる
水底へ泳ぐすこしあかるき底へ
心臓は勝手に動く蓮の花

板尾奈々美
振り向いて梨を月曜日にあげる
元カノの名前検索してキャベツ
リリーリリーもう小舟では行けぬよ

あゆ
天道虫隠すいい子になるために
フルートの聞こえない夜髪洗う

柚乃
軽トラを吸い込んでゆく大夕焼

瑠璃
1センチの関係蜜蜂振り向かず
木陰の水牛絵のやうに午睡
夏の雨まどろむ窓を揺らしたる
ガーベラに秘密となれる朱唇かな

 瑠璃が使いたい句として選んだ句以外に「パンジー突き出す決闘書のごとし」という句が発掘され、すごいインパクトだ! ということで採用することに。自分の作品集に客観視が入ることによって、作品集に幅が出そうだ。


構成開始

チャンヒ「柱の句が決まったら、最初と最後の句を決めていきます。作品集の最初と最後は印象が強いので、作品集の方向性を決める上でも重要なところになってきます。」
 たしかに、最初の一句目の印象で読者を引き込めるかどうかで、最後まで読ませられるかどうかが変わってくる。
チャンヒ「作品集の編み方は、その考え方で多様にあります。例えば、連句のように一句一句を緩やかに関連づけて並べる方法や、ガッツリ一つのテーマに沿って構成方法など。あるいは一つの季語だけで作品集を作ることも可能です。
 でもどのやり方にも共通するのは、読者は前の句から次の句へと、無意識に時間の流れやイメージを引きずって読んでしまうということ。俳句の構成はそのことを踏まえて行います。」
チャンヒ「以前に、季節を逆行させて、つまり冬秋夏春〜という風に並べられないかと挑んだことがありますが、とても読みづらくなってしまって。一句として独立しつつも読者は、句の並んだ時間の流れを感じてしまいます。」
 む、難しいことをおっしゃる。一句として独立して読ませながらも、作品集としては流れを持たせながら読ませなくてはならない。前後のバランス等も見ながら並べていかなくてはならないのだろう。スムーズに次の句その次の句を読ませていけるように構成していく必要がある。


泣く泣く捨てる

 各々が作品集の構成に入る中、脇々の作品集では、最初に「航海のはじめて春になる日誌」、最後に「心臓は勝手に動く蓮の花」としたい! と決めた。絶対使いたい句四句を並べてみると、初春一句、晩夏三句と偏りまくり。その中の「鉢植えに土が黙つて夏終はる」に向き合ってみた時に、「終わりって言う句をわざわざ最後の方に持っていきたくないな……」という思考になり、泣く泣く没にした。「航海……」の句と「心臓は……」の句の間に流れを作るにあたって、その中でそぐわないような句は使いたかろうがなんだろうが切り捨てる必要があるのだ。……と、「鉢植えに……」の短冊を言い訳がましく二軍の短冊の束に混ぜた。その横で板尾奈々美は「この句だけギャルっぽくて暴れているんですよねえ……」と句を切り捨てていた。判断基準は微妙に分からなかったが、構成の柱を決めたおかげでやりやすくなっているようだ。
 一方、持ってきた句の季節が思った以上にバラバラで、十句の作品集では、季節を絞ったほうがいいけれど絞ったら句がなくなる! と何人かから声が上がる。あゆが「なければ作ります」と言い出し、後輩瑠璃がそうか! 作ればいいのか! みたいな顔をして作り始める。根性があるやつらである。


ストーリーでは繋がない

チャンヒ「構成する時に、ストーリーで繋ぐのは得策ではないです。」
 えーっさっき前の句の雰囲気とか全体の流れとか言ってたじゃないですか!
チャンヒ「流れはあります。それでも俳句は一句独立が基本なので、前の句の登場人物が次の句ではこうなって、というようなストーリーが作られてしまうことは、読みを限定させ過ぎてしまうことになってしまってもったいないです。」
 近すぎず、しかし流れを意識しつつ……。「読者がどのように読み進めていくのか」を意識しながら句を並べていく。客観的に句を取捨選択できるかどうかが、作品集の質に繋がってきそうだ。


そもそも文語、口語……??

あゆ「そもそも、作品集の中に文語俳句と口語俳句を混ぜても大丈夫なんでしょうか?」
 と、素朴な疑問を口にしたのは大学入学と共に俳句を始めたあゆ。部内では興味が向くまま自由に作品を作っている部員だが、編む時のルールが気になった様子。
チャンヒ「まあ、混ざっちゃうものです。こだわる人もいますが、どちらかというと現代仮名遣いと歴史的仮名遣いだけはちゃんと使いわけるのがいいと思います。」
 確かに、古典と現代小説の仮名遣いが混ぜこぜになったら読みづらそうだ。ふと自分の並べている句を見ると文語と口語が混ざっている。自分の世界観を構成する時にどこまでこだわるか、というところなのかもしれない。


クッション

 なんとなく形になってきたが、俳句の順番等の細かいところで悩ましくなる。煮詰まっていると、チャンヒさんが助けにきてくれる。

航海のはじめて春になる日誌
脱力は鱗粉になる蝶になる
ふとここはつばめの王国であつた
猫の子を抱へ第三講義棟
蜂が出て蜂が入つてゆく穴だ

チャンヒ「『航海の』の後の『脱力は』が、視点を絞るような句なので、その二句の飛び方がちょっと唐突。その間に『ふとここは』を入れてスムーズに読み下せるようにするといいと思います。」
 
航海のはじめて春になる日誌
ふとここはつばめの王国であつた
脱力は鱗粉になる蝶になる

 と、やってみると、最初の句からの読みづらさが緩和されている感じがする。次は夏。

半袖長袖チャラいやつはチャラい
蝶の夏見ながら怒られてゐるたぶん
水底へ泳ぐすこしあかるき底へ
倒木の倒木のまま万緑へ
心臓は勝手に動く蓮の花

チャンヒ「『水底へ』と、『倒木の』の終わり方が『へ』で、韻を踏む面白さがあれば別だけれど、この場合は単にバリエーションが少なく見えてもったいない。文末や型が似ている句など、字面も見ながら調整してみてください。」
 よく見ればそうだ! とか言いながら、「倒木の」の代わりの句を探し始める。「半袖長袖」もちょっと浮き過ぎている印象があったので春から上手く繋がりそうな句も探した。作品集の中での句の並べ替えだけではなく、句を他の句にまるまる入れ替えてしまい、調整していく必要もある。今回、脇々は晩夏の句が多かったのでその流れのバランスも見ながら調整した。
 なるほど、大体完成に近づいてきた。と思っているとタイトルを考えていない。考えることは多い。タイトルは連作の句の中の言葉を何か取って来る、のがよくあるパターンだが、ちらりと部員の手元を見ると、それに限らず色々な方法でタイトルを考えているのが分かる。タイトルの付け方一つ取っても色々できそうだ。
 各々、悪戦苦闘しながらも、ちゃんとタイトルをつけた作品集が完成した。各自が最終的に完成させた作品集は以下の通りである。


各々の作品集

「蜂の穴」 脇々
航海のはじめて春になる日誌
ふとここはつばめの王国であつた
脱力は鱗粉になる蝶になる
猫の子を抱へ第三講義棟
蜂が出て蜂が入つてゆく穴だ
流木に泥ぐつさりと夕立晴
なんにんも麦藁帽が通る家
蝶の夏見ながら怒られてゐるたぶん
水底へ泳ぐすこしあかるき底へ
心臓は勝手に動く蓮の花

「昼寝する人」 板尾奈々美
小さき子の靴裏蟻の小さな死
昼寝する人を見ていて昼寝かな
リリーリリーもう小舟では行けぬよ
五月果つ魚は草を避けながら
羊抱く子の目の色をして四葩
いつも誰かのうしろ朝顔ならぶ
夕野分はじめてきみの手がこわい
壊すだけ壊してしまう林檎煮る
受話器持ちかえて話そう九月尽
振り向いて梨を月曜日にあげる

「夜溶ける」 あゆ
天道虫隠すいい子になるために
甘藍を切り下ろす真昼のリズム
人ごみへ溶けていったらかき氷
ふとふとと頭痛のような五月雨
噴水の夜生き返ってくださる?
カブトムシ空の重量測りけり
風鈴は魂奪う音を出し
青嵐や電波に従ってヒト科
偏愛なる教壇触れて桜の実
フルートの聞こえない夜髪洗う

「青かった昨日」 柚乃
キャラメルのほどける温度春うらら
髪の色抜いた帰りの穀雨かな
石鹸玉吹いて海の色深く
菜の花や父の濃いコーヒーを飲む
春愁やとろ火の加減教えらる
母となる従姉熟れきらぬ苺
夏めいてテトラポットの群れておる
トビウオの腹のごとくに真白でいたい
アシカ鳴いて五月の終わりたる
軽トラを吸いこんでゆく大夕焼

「絵のやうに」 瑠璃
パンジー突き出す決闘書のごとし
猫の子のはねてくづして積み木城
一センチの関係密蜂ふりむかず
夏近し雨の廃墟に眠りたい
深呼吸一つ山の香夏きざす
木陰の水牛絵のやうに午睡
夏の雨まどろむ窓を揺らしたる
耳すまし心しづかに梅雨かな
短夜やふつと窓辺に誘はるる
ガーベラに秘密となれる朱唇かな

 俳句を集めて構成して一つの作品集にすることは試行錯誤の繰り返しで、大変な作業であった。だがタイトルを付け、一つの作品集として完成したものを見るとなんだか誇らしく、達成感を得た。講座に同席した後輩も何か掴んでいた様子。自分の世界観の表現の一つとして、作品集を編むことは非常にアリだと実感した。自分だけの作品集、自分だけの世界観、みなさんも是非作ってみてはいかがだろうか。


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美術館吟行


第44回


愛媛県美術館「コレクション展」吟行会

文 川嶋健佑

取材協力 愛媛県美術館


 雨の多かった五月だったが、この日は晴天に恵まれた。
 この四月から私は芝不器男記念館で働いている。芝不器男は松野町出身の夭折の俳人。その芝不器男記念館がある松野町から愛媛県美術館までは松山道を通って約一時間半かかった。
 アートとして成立している作品を自分自身のフィルターを通して俳句に再構成する作業は初めての経験だった。 
 今回は私と同じ松野町地域おこし協力隊の杉本聖も参加。彼は作句初挑戦で「緊張する」としきりに言っていた。
 学芸員さんから説明を受けたのは杉浦非水『雨』と下村為山『為山俳画帳』。
 杉浦非水は商業デザイナーで三越のポスターデザインを手掛けた。今回の作品は大きな余白と右上に配置された紫陽花が特徴。背景に灰色が使われているが、これが雨ということなのだろうか。

 杉浦非水『雨』
紫陽花でなく雨を見ていた昼間  チャンヒ
雨吸ふてあぢさゐの紺くづれゆく  ひかる
あぢさゐを生みたる雨のやさしけり  マーペー
最後の日翠雨世界をさらに濃く  猫正宗
あぢさゐは淋しがりては色を変へ  恋衣
雨掴み宝石実季節かな  杉本聖
紫陽花が咲いて豪雨を待っている  川嶋健佑

 この「雨」は非水最晩年の作品。非水の眼にはどのように世界が映っていたのだろうか。カラフルな紫陽花が目を引くが、チャンヒが捉えたように非水が見ていたのは紫陽花ではなく雨だった。
 対してモノクロの下村為山の作品はどことなく寂しい。為山はもともと洋画家だったが正岡子規の影響で俳画を描くようになった。

 『為山俳画帳』下村為山
階の果て見ぬままに蝸牛  マーペー
がんばることの棄て場所に蝸牛  日暮屋又郎
あかときに天にとどくかかたつむり  恋衣
まいまいがいつしか空に着く日まで  猫正宗
学芸員眠らす蝸牛俳画帳  ひかる

 今回鑑賞した作品は和紙の左側に俳句、右側に蝸牛が配置されて悲しい雰囲気だが恋衣が捉えたように蝸牛が天に登って行くのがこの絵の中で救いか。
 また参加者の多くが句材にした楳崎洙雀の『白猫』は白猫が蝶々を狙っている様子がいきいきと描かれていた。

 楳崎洙雀『白猫』
もふもふがひらひら狙う夏の庭  猫正宗
白猫のブルーの瞳に黒蝶が  ひかる
迷い込む黒き阿修羅戯れよ  杉本聖
夏蝶をどんどん遠くして歩行  川嶋健佑

 猫と蝶のシンプルな構図だけに俳句にするにはなかなか難しい。猫正宗のもふもふとひらひらは感覚的に絵の質感を捉えているが、吟行に行ってない人の想像をどこまで掻き立てるか。
 今回の吟行はいい句が多く出たねとみんな言っていたので成功だったようだ。松野町から1時間半かけて来た甲斐があった。最後にいいなと思った句を挙げておく。

 石崎重利『牡丹』
ぼうたんの蕊の深みにあげは墜つ  ひかる
 橋本興家『昼寝』
チューリップ踏まなきゃ昼寝してていい  チャンヒ
 真鍋博『蝶』
海原をひとつ飼ひたる鳳蝶  恋衣
 `島伸彦『Birds』
この闇の闇より暗き瑠璃鶲  恋衣
 松本秀一『蟷螂T』
逆光を捉え蟷螂尖りおり  日暮屋又郎

杉浦非水『雨』
雨は斜に絶筆として紫陽花  日暮屋又郎

下村為山『為山俳画帖』
かたつむりきて少年に晩年期  川嶋健佑


川嶋健佑
松野町立芝不器男記念館で働く地域おこし協力隊


次回吟行会 7月21日(土)
町立久万美術館「H30久万美コレクション展1
 生誕100年記念 デッサンの虫 古茂田守介」吟行会
(学芸員による解説を受けて作句します)
朝10時現地集合
参加費無料(入館料は別途)
事前に100年俳句計画編集室までお申し込み下さい。
TEL 089-906-0694


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大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠

百年百花


2018年度 第一期 最終回


背よ海よ
ふづき

土払う首夏の須恵器を掘り出して
七色のドロップ金魚草咲う
象の子のころがすタイヤ夏の雲
サーカスの子熊は百合の香に眠る
星涼し垂直に刺す昆虫針
友達という距離ゼリーくずさるる
芥子揺れて揺れて少年兵自爆
頬杖つく遺影や河骨へ水輪
語り部の涼しく縮む背よ海よ
大陸より手紙白さるすべりかな
蜻蛉生れます雨後の森香ります
猫抱けば沈むひかりのハンモック

何とか四回の連載を終えることが出来てホッとしています。
皆さま、ありがとうございました。


どこまでも
中村阿昼

つる薔薇のシアターねこにようこそと
つる薔薇のつるに膨らむ二雫
罪のやうに蔓薔薇の尖折れてゐる
レタスより草へと放つなめくぢら
シャツ畳む指に羽虫の潰れをり
三人で座る電車や麦の秋
もの忘ればかり夏蝶黒ばかり
草原はどこまでも昼ソーダ水
虫かごに帽子にアメンボ採りの泥
草いきれ鹿の角めく枝跨ぎ
夏蝶の降りる古墳の蓋の石
夏草に還せる土器の欠片かな

1966年2月生まれ。「童子」所属。
句集『でこぽん』(マルコボ.コム)。
俳句は難しい。そして楽しい。


NDC480
津田美音

ピッコロをかまえ薄暑を行進す
亀の子の未来き寄せたる手足
告知待つ椅子の背堅き芒種かな
白玉の影という影掬いたる
月を背に載せ蝸牛眠りけり
宿坊の下駄しっぽりと青葉木菟
河鹿笛喉やわらかく乾きけり
万緑を身構え馬の息荒し
保険屋の来て金魚屋の来て夕餉なり
短夜の日の丸たたむしめりかな
恍惚と鉛筆つかむ黄金虫
花火の夜明け汽水湖の無口なる

香川県さぬき市生まれ、愛媛県松山市在住。
きっかけはRNBラジオ「夏井いつきの一句一遊」への投句。
その当時の俳号はピアノフォルテ。


廃墟
鈴木牛後

いづくまで逃水をゆく鹿の群
落し角とほくへ投げて孤に似た弧
緑さす廃墟に残る雪の刻
荊棘線の食ひこんでゐる新樹かな
ルピナスや水に日溜り日に水溜り
襤褸狐夕焼に尾を引き摺らず
毛虫這ひゐるいしぶみとその欠片
切株の古色に坐る涼しさよ
サイロ一基つひに夏野に還らざる
万緑の触手舗道の割れ目より
極彩の抜け殻として夏の雲
蛇舅母の奔るいしずゑまでが空

1961年生まれ、北海道在住。第1回「大人コン」(現「百年俳句賞」)最優秀賞。
句集スタイル「根雪と記す」「暖色」。そろそろ一番牧草の収穫が始まります。
7月には「藍生」の全国のつどいが北海道であるので、それまでには終わらせたい!


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読者投稿による3ヶ月連載作品集

新 100年の旗手


(2018年7月号 〜 2018年9月号 1/3回目)


生きものの空
天野姫城

鈍行の優先席を薫る風
首長竜の名を言えた山開きの空
恐竜の卵からりとアイスティー
デモ隊のいちばん仕舞い蝿叩
生きものの記録壊れる夏休
青き空戻らぬ子らの飯饐える
驟雨の高架下ひとさらいのいる
記憶から乖離金の蜻蛉生る
巻貝は入道雲の音のする
終着駅途切れる線路続く夏

 天の川銀河句会総長、街俳句会会員。今村昌平監督作品を思い出しました。人もまた生きものなり。「黒い雨」「人間蒸発」好きな方、ご連絡ください!


若葉風
みつよ

あんぱんの皮艶々と若葉風
風薫るすべての部屋を開けはなつ
新聞で折りしかぶとや誰も来ず
夫と居て昔を語る端午かな
ひさびさに会ふ友達と豆御飯
ふるさとの花みかん径乾きたる
耳ピンと立てて風きく仔馬かな
シャボン玉流れて来たる散歩道
母の日を共に過して娘の帰る
母の日の花のリボンをしまふ夜

 昭和12年、福岡県八女郡福島町生まれ。花鶏俳句会所属。平成29年度、第19回NHK全国俳句大会入選。


2018年度 第3期連載者募集中
締切 2018年8月15日(水)

応募内容
 2018年10月号に掲載できるタイトル付の10句
応募先
 Eメール magazine@marukobo.com 件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
 郵送またはFAXでも受け付けております。詳しくは編集室までお問い合わせ下さい。


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新 100年への軌跡


2018年度 第一期
最終回


己が名の
若林哲哉

文字は街をあふれて夏の来りけり
はつ夏の人避けあつて避けきれず
にせものの月朔太郎忌の鏡面に
ひざらしや蟻をまつれるありの群れ
しかうして夏野は死骸積むところ
明易の紙ナプキンが吸ふ涙
梅雨冷やツナの油をしぼりきる
宮司の家その雨樋の苔の花
顎を血の流れてカサブランカリリー
夏燕いよよ直さぬ蔵の窓
己が名の切字を離れゆく螢
万緑やまばゆき白の献血車
ねぢり花とは地へ向かふ螺旋やも
朝の来ぬ窓朝の来ぬ濃紫陽花
APAホテル社長の顔おそろしや日の盛

若林哲哉(わかばやし てつや)
 一九九八年生まれ。金沢大学人間社会学域人文学類在学中。
 「萌」、「奎」、「金沢大学俳句会」所属。


なべてならずも
樫本由貴

朝涼し半白降りし市営バス
なま白き塔を孕めり夏霞
夏つばめ子ははゆさうに重湯吸ひ
生家の時計いづれも遅しこひのぼり
皿も狭にたまご盛らるゝ冷さうめん
夏つばめ塀越ゆるとき首ちゞみ
陰見えん初夏の嫗の立膝に
先生の蔵書もらうて初夏暑し
大学やなべてならずも青葉窓
青葉して椅子置きて部屋らしきかな
カンバスより筆を離して薔薇の雨
青葉してピアノ途切れぬ隣家かな
はつ夏や橋より暮るゝ川の町
打水にわつと伸びたる子のかひな
老鶯の木透の疎にてさてもあり

樫本由貴(かしもと ゆき)
 一九九四年生まれ。広島県在住。「小熊座」所属。



チャレンジ
とりとり

文字は街をあふれて夏の来りけり  若林哲哉
 香港を思いましたが、東京でも大阪でもいいですね。文字の看板だらけの活気のある大都会。上五の字余りがまさしくあふれる感じです。夏の湿度やエネルギーが伝わってきます。

しかうして夏野は死骸積むところ  若林哲哉
 「しかうして」の前に何があったのか。想像がひろがりますが、結果は「死骸」。夏野という季語は残酷な本意ももっていたんですね。

万緑やまばゆき白の献血車  若林哲哉
 緑と白と血の赤。生を意味する万緑に対し不吉な死の匂いのする血。美しいコントラストのなかに不穏が隠されています。ただ美しいだけではない世界をさらりと描いて秀逸です。

 「己が名の」は、さわやかななかに不吉なにおいがする夏が描かれていて、独特の魅力があると思いました

生家の時計いづれも遅しこひのぼり  樫本由貴
 生家はいつも懐かしく暖かいけれど、今の自分とは何かがずれています。遅れた時計とこいのぼりと。

夏つばめ塀越ゆるとき首ちゞみ  樫本由貴
 つばめをよく見てみました。たしかに首が縮むように見える。発見ですね。

 「なべてならずも」は、「はゆさうに」「なべてならずも」「さてもあり」等意識的に古い言葉を使い、韻文を駆使して現代を詠もうとする意欲作でした。

 楽しい作品をみせていただきました。お二人の今後の活躍を期待しています。

とりとり
 1957年生まれ。三重県在住女性。第1回選評大賞優秀賞。


はつ夏、しこうして
亜桜みかり

にせものの月朔太郎忌の鏡面に  若林哲哉
 夏の到来を詠んだ二句に続いての三句目。「にせものの月」「朔太郎忌」「鏡面」と読み手を不穏な気配の中へさりげなく誘導する。

明易の紙ナプキンが吸ふ涙  若林哲哉
梅雨冷やツナの油をしぼりきる  若林哲哉
 「蟻をまつれるありの群れ」や「死骸をつむところ」であると断定する「夏野」を見せた後、ふと日常へ引き戻す二句。「明易」と「涙」、「梅雨冷」と「しぼりきる」がうまく響き合って不穏さを静かに継続している。

APAホテル社長の顔おそろしや日の盛  若林哲哉
 締めくくりとなる最終句の大胆な上五字余りと「や」の切れ字の効果と「日の盛」の押さえ。思い切った語りに唸った。

夏つばめ塀越ゆるとき首ちゞみ  樫本由貴
 よく目の利いた句。親しみや慈しみの気持ちをもって見つめているのだろう。普段の生活で無意識に首をすくめてしまっている自分に身体感覚として伝わってきた。

大学やなべてならずも青葉窓  樫本由貴
 大学にはいったいいくつの窓があるのか。なみなみでない青葉で覆われている窓、青葉風の吹き込んでいる窓……と想像をかき立てられる。

カンバスより筆を離して薔薇の雨  樫本由貴
 湿気をおびたかすかな薔薇の香りの感じられる素敵な一句。集中がふと途切れ、「筆を離して」目を移すと「薔薇の雨」。ああ、雨の薔薇も描いてみたいなあ……と。

 最終回のお二人の句群は、古語を自在に遣いつつ読者の脳内にさまざまな光景を描く。作者の作品世界にどっぷり浸らせていただいた。ありがとうございました。

亜桜みかり(あさくら みかり)
 1961年俳都松山市生まれ。今治市在住。第2回、第7回、第8回選評大賞優秀賞受賞。第3回大人のための句集を作ろう!コンテスト優秀賞受賞。


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小西昭夫の愛誦百句


第1回


人間へ塩ふるあそび桃の花  あざ蓉子

 日常生活に即して考えれば、人間に塩を振るのは葬儀に出席して自宅に帰った時くらいだろうか。それを遊びとは言わないし、早い話がこの句の意味はよく分からない。
 しかし、この句を絵に例えれば、十七文字のキャンバスに「人間」、「塩振る」、「遊び」、「桃の花」という言葉を素材に作り上げたコラージュであると言えるだろう。そのことによって、あざさんは日常の言葉の意味を揺さぶっているのだ。人間が蛞蝓に塩を振るように神が人間に塩を振っているのだろうか。神の連想と桃の花が原初的な世界を思わせるが、それはぼくの読み。読者の数だけの読みがあるだろう。それがこの句の魅力である。季語「桃の花(春)」。『ミロの鳥』所収。
 あざ蓉子は一九四七(昭和二二)年熊本県生まれ。本名此口蓉子。「天籟通信」、「豈」、「船団」で活躍。「花組」(現在休刊中)を創刊、主宰した。「天籟通信賞」「九州俳句賞」「熊日文学賞」「中新田俳句大賞スウェーデン賞」「現代俳句協会賞」等を受賞。句集に『夢数へ』『ミロの鳥』『猿楽』『天気雨』がある。草枕交流館館長も務めた。熊本県玉名市在住。


一皿は土筆でありぬ膳のもの  阿部里雪

 ぼくの場合、土筆には目がないので膳のものに一皿の土筆があるというのは最高である。この句は自宅でも外出先でもいいだろうが、食卓を用意してくれた人のもてなしへの感謝の句でもあると読める。
 碧梧桐の誘いで赤羽へ土筆を摘みに行った妹の律の様子を子規は生き生きと伝えている。「こんなに節の長い土筆なら、袴を取るというても誠に世話がない、などとかつ袴をむぎかつ独りごちながら、何となく愉快そうな調子で居る彼を見ると、平生の不愛嬌には似もつかぬ如何にも嬉しそうに見えるので、それを病床から見て居る予は更に嬉しく感じた」(「病床苦語」)。律の喜びは子規の喜び。その喜びをぼくも共有できることが嬉しい。季語「土筆(春)」。『里雪句集』所収。
 阿部里雪は、一八九三(明治二十六)年愛媛県生まれ。一九七三(昭和四十八)年没。本名は利行。柳原極堂の「伊予日々新聞」に勤め廃刊後上京。五百木瓢亭の「日本及日本人」の記者になる。極堂主宰の俳誌「鶏頭」の編集に従事。愛媛新聞賞、愛媛県教育文化賞受賞。著書に『子規門下の人々』、没後『里雪句集』。


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳 朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.60 (FINAL)

Rainy season battery charge
More haiku later
If I am old and smart

梅雨来る充電の時来たりけり

(直訳)
梅雨期は充電期
もっと俳句を また後で
私が老いて賢くなったなら


 We are leaving home for 3 weeks - concerts and travel to Russia and Turkey. We shall see many things and share excitement. Hooray.

 我々は三週間、我が家を離れる……演奏会と、そしてロシアとトルコへの旅に。たくさんの物を見て、興奮を分かち合うのだ。万歳!


当コーナーの作品をまとめた句集Style第2弾の制作を準備中です。
第1弾『Letter from Spider Garden』は好評発売中!


ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文 白方雅博(俳号 蛇頭)

第88話
ウィズ・マル  与世山澄子


 3年目の野外JAZZフェス、と銘打って「久万高原町JAZZPICNIC2009」のポスターには沖縄の伝説のヴォーカリスト与世山澄子が大きく紹介されていた。山崎洋靖実行委員長とJAZZ句会の重鎮マミコンさんこと堤宏文氏のコラボからスタートした3年目の企画に集ったミュージシャンは、同じく沖縄から香村英文(ピアノ)と当時、シカゴから沖縄に移住していたフランク・ゴードン(トランペット)。そして初回から連続出演の村田浩(トランペット)にアンディ・ウルフ(テナーサックス)。地元愛媛からは吉岡英雄(ベース)と渡部由紀(ピアノ)。もちろんドラムはマミコンさん。

黒百合の濡れて一途になりたがる  蛇頭

 2009年9月12日(土)その前日、「明日は沖縄ジャズ堪能や」などとほくそ笑みながら会場の千本高原キャンプ場に設営するテントを車に積み込んでいる時、マミコンさんから電話で僕に大役が飛んできた。何とその伝説の歌姫を送迎するという役得である。多分、僕のランドクルーザーに白羽の矢が当たったのだろう。歌姫は気さくな美人で緊張の車中を和やかな空気に変えてくれたが、調子に乗って僕は彼女に未だ果たせていない約束をしてしまった。

行く夏の海の深さを思う声  チャンヒ

 で、今回のメインテーマのアルバム「ウィズ・マル」3曲目「ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン」。8曲目の「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」もそうだが、ピアノのマル・ウィルドロンとのデュオとなると、当然ビリー・ボリディの歌唱が重なってしまう。

ピアノへと絡みつく歌熱き蛇  南行ひかる

 が、それで良いのである。ビリーとは似て非なる彼女の個性を見いだし味わうのも面白い。

慟哭のごときピアノや夜の秋  加藤いろは

 「私の宝物」とEメールでマルのサインを写真データで送ってくださった加藤いろはさんは、6曲目「ラウンド・ミッドナイト」を一句に。

That's Life 仏桑華は震える  葉っぱ

 7曲目「ザッツ・ライフ」は一転。キュートに人生の移ろいを歌い上げる。彼女の声紋に震える花は沖縄のハイビスカス。なるほど。

ボーカル黒く闇をうかがう壁虎の目  サテンドール

 「インタリュード・ミュージック・ラウンジ」は那覇市安里にある老舗ジャズスポットである。階段を上って左のドアを開けると30名ほどのイス席が広がり、その奥左にアップライトピアノ。ピアニストを背に譜面台と一人分のスペース。そこが店の経営者でもある与世山澄子のステージだ。

この声は争わぬ声沖縄忌  南亭骨太

 今回のサブテーマ「インタリュード」の帯には「かつてそこはアメリカだった。沖縄が生んだ伝説のジャズシンガー与世山澄子、再臨」とある。
 「あれから9年。与世山さんはもうお忘れのことと思いますが『殿様ケンちゃん俳句カルタ』にこの冊子を添えてお贈りいたします」


Today's Turntable
『ウィズ・マル』1983年/imperial records
『インタリュード』2005年/tuff beats


「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は月曜日の21時〜22時。

次回JAZZ句会のお知らせ
7月21日(土)13時より、JAZZ BLENDにて。
テーマ・ミュージシャンは男性ヴォーカリストの大物メル・トーメです。アルバムは「ニューヨーク・マイ・ハート」をメインとします。参加希望の方は、本誌の句会カレンダーを参照してください。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU』vol.1〜vol.4(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ。


第八十八話
文、俳句 らくさぶろう


鰻(うなぎ)の幇間(たいこ)
 ゴチになります!

 幇間(たいこもち)の一八(いっぱち)、今日もお客の機嫌を取ってごちそうにでもなろうかと企んでいるが、真夏はどうもいけない。なぜかというと金持ちのダンナは、避暑に出かけていて江戸に残っている人は少ない。
 もうこうなったら手当たり次第に声をかけようと決めたところ、向こうからどこかで見かけたようなダンナが歩いてくる。
 どこで会ったか分からないが、こうなったら仕方ない、「よっダンナ、その節はお酒をありがとうございました。」「はて、お前とどこで呑んだ?」「えーと、向島で」「何を言ってやがる、麻布の寺じゃねえか」
 話がどうもズレている。でも、ダンナが「せっかく会ったんだから鰻でも食っていくか」と誘ってくれたので一八は大喜び。
 誰だったか思い出せないまま鰻をごちそうになる。
 まずは出されたお酒をほめたおす。そして誰か思い出すために「ダンナのお宅はどこでしたかねえ?」「先のとこだ」
……結局分からない。
 香の物をかじりながらヨイショを続けていると、いよいよ鰻のかば焼が出てくる。
 ダンナ、ちょっとはばかりへ行ってくると言って席を立ってしまった。
 一八、その間妄想をふくらませ、ご祝儀はいくらもらえるか、家に行って奥方をほめるとまた何か……などと考えるがなかなかダンナが戻ってこない。
 心配して便所をのぞくとモヌケのから。
 一八、「えらいダンナだ、芸人を遊ばせて勘定すませてスーッと帰るなんて」
 しかし仲居が「お勘定お願いします」と一八に持ってくる。
 びっくりして尋ねると、「連れが払うから先に帰る、おまけに土産で六人前を持って帰ったからその分も……」と。
 大金を払わされてしまった一八、なけなしの十円札を失い、泣く泣く帰ろうとするとゲタが無い。
「あれもお連れさんが履いて帰られました。」


 幇間という生き方。客にこびへつらい、それでお金になるという風に描かれがちですが、なんのその裏にはきちんとした“芸”が無ければ生きていけません。何しろ男が男を喜ばせるんですから、それだけでも大変なこと。
 現在も数名幇間芸を伝えている方もいらっしゃるようですが、僕が子供のころテレビの演芸番組で観た「ふすま芸」には感動しました。ふすま芸に感動するような子供ですから推して知るべしですが(笑)
 独りなのにまるでふすまの向こうに誰か居るように見える芸。スマートさまで感じられました。
 「幇間みたいな生き方」と「幇間という生き方」では全く違います。前者だと言われないように精進します。

ほめられて怒る男と鰻喰ふ


新企画!!
 次号から「らくさぶろうの呑む呑め呑もう句」を連載します。
 酒場や肴など、酒にまつわる兼題を出しますのでみなさんからの投句をお願いします。9月号の兼題は「枝豆(月見豆)」です。
 秀逸に選ばれた方には「ハタダ金時のさぶ」をプレゼント!!

投句に俳号・本名・住所・電話番号を書き添えて、編集室「呑む呑め呑もう句」係までお寄せください。
 専用メール nomu@marukobo.com
 専用フォーム http://www.marukobo.com/nomu/
 投稿締切 7月20日


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mhm通信


第88回
文 若狹昭宏


Blend Clubまちなか交流会

 5月12日、マルコボ・コムの三瀬社長や恋衣さんと共に、“地域発のまちづくり”に参加、支援するネットワーク「Blend Club」の交流会に出席してきました。松山市地域包括センター、終活サポート協会、松山聖陵高校高校野球部後援会に並び、mhmからも簡単ではございますが活動の報告と今後の目標を発表させて頂きました。他県の者から見ても、俳都松山の地域資源である俳句には大変魅力があり、俳句のために移住を考える人がいることや、古川の久兵衛会夕涼み大会や市民劇場の祭りなど色々な地域、集まりの中に俳句の需要があることなどお話させてもらい、交流会に参加された皆様からとても肯定的に受け止めてもらいました。


久兵衛会夕涼み会

 昨年数々の笑いを生んだ古川夕涼み会が今年も7月14日(土)に開かれます! 俳句の企画は句会ライブではなく、投句と入賞者の発表だけですので、投句ではなくトークに自信のない方でも気軽に参加していただけるかと思います。
 昨年のmhm通信でも書きましたが、子どものフリをした大人が入賞してしまったり、優勝を繰り返すので殿堂入りということにしようと言っていた元町内会長をまた優勝させてしまったりと、地元の祭りらしいハプニングが立て続けに起こっていました。今年の内容についてはこれから詰めていきますが、昨年優勝者は審査委員長として参加してもらうことになっているので今年は狙い目かもしれません。また、投句から表彰式までの時間が長かったので、式を早めるか子どもの部と大人の部に分けて開くか出来たら良いかなと思っています。(夜の8時を過ぎたら良い子は寝る時間ですからね!!)


mhm芋炊き句会開催!!

 会も大きくなって、ついつい100名規模のイベントをいつもイメージしてしまうのですが、今回は最大20名程度で和気藹々と楽しめる企画になっています。というのも、蕎麦企画の際に最も活躍した日暮屋さんや、いつもコスプレで盛り上げてくださるノムオーさんという、知る人ぞ知るこだわり派が会の中核になってくれたため、「手抜きをせず、本気で美味い!芋炊きをしよう!」ということに。今後は本気で美味い○○シリーズが生まれそうで楽しみです。

9月1日(土)16時〜開始
場所 石手川公園近くの河川敷(雨天時 末広橋の下)
参加費 1000円(芋炊き代)
ドリンクは持ち寄りです

 句会ライブ(形式未定)を予定しています。
 参加申し込みは8月25日(土)までに以下のアドレスにメールをお願いします。
 mhm_info@-mhm.com
 今回は、参加者多数の場合、早めに締め切らせていただく場合がありますので、ご了承ください。


 mhmでは松山市内外問わず会員を募集中です。原則、毎月最終金曜日19時からマルコボ.コムにて定例会を行います。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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会話形式でわかる

近代俳句史超入門


近代俳句史超入門
第28回

文、構成 青木亮人


 大学で俳句を研究する青木先生と、その教え子で俳句甲子園の出場経験もある大学生の俳子さんが雑談を交えながらの近代俳句史超入門。


原石鼎 2 作品

 青木先生と俳子さんが大学教室で話しています。

吉野時代 1

青木先生(以下青) 今回は石鼎の句を見ていきましょう。まずは彼のキャリアで有名な吉野時代から。
俳子(以下俳) 知っています! 「高々と蝶越ゆる谷の深さかな」(1)。この句、大好きなんです。
青 どんなところが?
俳 景色デカい、取り合せもイイ、「高々と」の出だしイカシて谷底見えない深さタマラナイ!
青 石鼎句をラップで語るとは。蝶が高々と飛んでいるのは頭の中ですな。
俳 まさに「頭の中で白い夏野となつてゐる」(2)ね。
青 話ズレてる、夏野になってる、ファンタジーかマジ分かる、いつか抽象重ねたイメージのビックバン(3)、
青、俳 YO!
青 (我に返る)はっ、俳子さんのフロウに煽られてラップしてしまった。石鼎句に戻ると、壮大な自然を高揚した調子で詠みきったのが吉野時代の石鼎句で、次のような句もあります。「風呂の戸にせまりて谷の朧かな」(1)。
俳 私のフロウを返すとは……いつかバトルMCで勝負よ。それはそうと、石鼎さんの句が凄い! こんな獰猛な朧、見たことないです。
青 春夜のしっとりした情趣を湛えた朧が巨大な生命のように息づき、人間界を脅かすような迫力がある。吉野時代の彼は「月さすや谷をさまよふ蛍どち」「谷杉の紺折り畳む霞かな」(以上、1)等も詠んでいます。一般的な蛍や霞と違う、畏怖めいた谷の闇や深さへの驚きに満ちた一句です。
俳 「谷をさまよふ」「紺折り畳む」……人の気配が全くない自然の怖さですね。「紺折り畳む」という把握、真似できないッス。
青 人間社会から逃れるように山深い吉野へたどり着いた石鼎は、山中の風光に心底感動したらしい。自分を否定する他者がどこにも居ないし、自然の無償の美に自分勝手に没入できる一方、寂しさは募るばかり。吉野の石鼎句は自然の畏怖や美、感動や孤独、よるべなさや鋭敏な感性が渾然一体となっていて、自然の荘厳さと石鼎のまなざしのシンクロ率が高い。
俳 他句も知りたいです!
青 「山の色釣り上げし鮎に動くかな」(1)。
俳 釣り上げられた直後の鮎のピチピチ感がいいですね。ムッチリした感触、水の滴り……おいしそう。
青 生命力溢れる鮎に、山全体の躍動に満ちた色彩を看るなど、よほど高揚していた感じがある。「動くかな」の破天荒さも凄い。俳句甲子園ならばディベートで叩かれまくる箇所ですね。
俳 その前に顧問の先生が添削しそうで、大会に出句されない気が。
青 確かに。


吉野時代 2

青 吉野時代の石鼎はとにかく高揚感が凄い。ハッとした瞬間、全神経が一気に膨れるように対象と同化する、というより対象が石鼎の目に飛び込んでくる感じがある。「頂上や殊に野菊の吹かれをり」(1)の上五、「蔓踏んで一山の露動きけり」(1)の中七等、何か体験した瞬間に感情がブワッと膨張し、それを言葉で表現できたところが天才的。
俳 「秋風や」とか季語と切字の上五は定番ですが、「頂上や」は珍しい。「ここがまさに頂上ォォォ ウリィィィィ」という心の声がしみじみ聞こえます。
青 それ、マンガ『ジョジョの奇妙な冒険』(4)の化け物の台詞じゃないですか。
俳 「蔓踏んで」句は世界中の露がザアッと動いた感じで、露の生命感というより山全体が生きている雰囲気が濃くて、少し怖い。
青 「杣が頬に触るゝ真葛や雲の峰」(1)、「短夜や梁にかたむく山の月」(1)等々、石鼎自身というより山奥の暮らしそのものが息づき、そこかしこに偏在し、石鼎を囲みつつ浸食してゆくようで、飯田蛇笏のビシッとした自然の霊威とは異なる濃厚さがあります。


吉野時代の後

俳 でも、石鼎さんが吉野にいたのは二年足らずなんですよね。山を出たら作風も変わったのかしら。
青 吉野時代後で有名なのは次の句。「秋風や模様のちがふ皿二つ」(1)。親に勘当され、人妻と関係を持って出奔し、無為無職で不如意な人生をかこつ男のあり様が「模様のちがふ皿二つ」というちぐはぐさに滲み出ている。虚子や蛇笏、永田耕衣らが感嘆した傑作です。
俳 秋風だからより寂しさがありますが、皿の模様が色彩を帯びて少しだけ華やかさもあり、でもそれはちぐはぐな華やぎで、それを発見してしまう神経症的な細かさがあるような。
青 よく気づきましたね。あと、見えている風景を病的に把握してしまう鋭さと同時に、句自体は細かく詠もうとしていない。日本画のように思いきった様式化というか、情報の捨て方が潔いので日常の些事でありながら人生の象徴と感じさせる詠みぶりになっている。
俳 日常に必要な判断力が作句能力に集まりすぎたのかも。だから白褌を垂らして歩くことになったのね。
青 芸術家にありがちなアンバランスさでしょう。「でゝ虫の腸さむき月夜かな」(1)等、このレベルの句を量産しているので、作句能力が抜群なのは事実。
俳 「腸さむき」の俳句的な把握! 青い月明かりがカタツムリの殻や身を透かすようで、妙に質感が伝わってきて、しかも幻想的。ゾクゾクします。
青 トイレですか? 教室を出て、左に行くと……
俳 芸術的に感動しているんです! 
青 それは失敬。お詫びに、「切株に鴬とまる二月かな」(1)。
俳 お、不思議な句。普通、鴬は鳴き声を詠んだりしますよね。二月の切株が妙に生々しいのもウケます。シュール感もあります。


その他の佳句

青 微妙なユーモアでいえば、次の句は如何。「蒼天に髻とけし相撲かな」(1)。
俳 吸い込まれそうな青空、アッという脱力じみた可笑しさと、空虚な感じもなぜかあります。「蒼天」が見事。
青 「白魚の小さな顔をもてりけり」(1)。
俳 石鼎さんらしい……白魚のように儚くて小さな魚に人間のような「顔」を見てしまうなんて。どこか可哀想な人に感じてきました。でも、そんな白魚が可愛らしくもあり、顔の発見を楽しんでいる風もあり。
青 俳子さん、繊細ですね。「白魚」句に哀れさと楽しさを同時に感じるなど、人間社会の表裏を味わった人みたいですよ。その調子で行きましょう。「夏帽やあらゆる顔に濃き影す」(5)。
俳 微妙な褒め方ね。人の表情が最も出る「顔」に濃く黒い影が……しかもあらゆる「顔」に発見してしまうとは。神経衰弱ですね。
青 「青天や白き五弁の梨の花」(1)。
俳 おお? 「晴天」ではなく「青天」、梨の花を「白き五弁」とまで細かく詠むなんて珍しい。あと、ビリビリ「色」を感じます。先生がさっき仰った一言が分かった気がしました。
青 「ファンタジーかマジ分かる」?
俳 ちゃいますがな。対象を眺めるというより、対象が目にズドンと飛び込んでくる感じ。梨の花が一気に目と心に飛び込んできて、「白き五弁」がクッキリ見えた、そういう気がします。「青天」も、色に対する感度が高いから詠めたのでは。
青 日本画のような色彩感覚と様式化があり、巧まずして得た傑作という句ですよね。石鼎は「暁の蜩四方に起りけり」「夕月に七月の蝶のぼりけり」(以上、5)等々、吉野時代の後にも秀句が多い。傑作の数の多さは圧倒的で、史上屈指の俳人だったといえるでしょう。
(石鼎、了)


解説
(1)は全て自選句集『花影』(改造社、昭和12年)に収録。
(2)昭和期新興俳句の雄、高屋窓秋の句(昭和8年)。
(3)TABOO1と志人のヒップホップ「禁断の惑星」(2012)の一節。
(4)荒木飛呂彦の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する悪役ディオの口癖。
(5)『花影』未収録句で、「暁の」句は大正15年、「夏帽や」句は昭和12年、「夕月に」句は昭和25年作。


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100年投句計画

選者三名による 雑詠俳句計画




先選者 桜井教人

 先月書いたように、愛馬が日本ダービーに出走した。パドックでの歩様が少し固い気がしたが、少し明るめの鹿毛は輝いて見えた。レースが始まった。予想通り集団の後ろに付け最終コーナーを回った。ここから外に出て光のような末脚を繰り出すはずだったが、なぜかこれまでのレースのようには走らなかった。レース後競走馬にとっては比較的重い故障を発生していたことが判明した。ダービーに出るという奇跡を起こした馬だ。一年半後に奇跡の復活を果たすに違いない。
ダービーの日確かに君はそこにいた  教人




ころもがへ風を詠む人謳ふ人  久我恒子
 「風の谷のナウシカ」に出てくる「風使い」という表現にとても興味をもって以来、風が好きになった。俳句を始めてからも風を感じる句を詠みたいといつも思っている。そんな私の気持ちを代弁してくれるような句に出会った。単に詠むだけでなく謳うを並列にしたことにより句の世界が広がっている。なにより効果的なのが季語「更衣」。更衣によって正に風の受け方感じ方が変わるという視点がすばらしい。平仮名表記にしたことにより字面からも風を感じる。




皺に効くクリーム補充夏来たる  かのん
 実体をもたない季語には具体物というのが基本だが、それが「皺に効くクリーム」といわれるともう俳諧味を通り越している。日常生活の中の非日常的な写生はお見事。多少の胡散臭さがよいスパイスになっている。

薄紅の薔薇空色のヘアサロン  すみ
 色と物との対句表現としてしっかりとした型をもっている。二つの色合と修飾される物の比較のバランスがとてもいい。何だかこのヘアサロンは今どきの少しおしゃれなお店を想像してしまう。
赤屋根の先を新樹の地平線  笑松
 北海道の美瑛あたりのペンションからの景を想像した。どこまでも続く地平線、その地平線の全てが濃い新樹。空の青さ、空気の透明感、いろいろな映像が次々と飛び込んで来る。そうさせるのは動きを感じさせる句のつくりになっているからだ。

短夜の文字化けが詩になつてゐる  土井探花
 文字化けが俳句になるとは……。しかし妙に納得してしまう。呪文のような文字化けの映像から詩を感じる作者の感性はすごいとしか言いようがない。今度文字化けに出会うのが楽しみになって来た。季語も適切。

やはらかな音を重ねて薔薇ひらく  アンリルカ
 開くときの音の表現ともとれるし、薔薇の花びらを音に例えたともとれる。どちらにしても詩としてとても美しい表現だ。特に動詞「重ねて」が上手い。重ねたからこその目の前の美しい薔薇なのだ。




太刀持ちは無表情なり雲の峰  藍人
正直に語る辛さよ水を打つ  砂山恵子
地鎮祭の祓いを受くる蟻の列  斎乃雪
雨降りやキュウリ竹輪に刺す儀式  くらげを
五月雨の水車生き生き動く山  和音
蜘蛛の糸ひかる雫のはじけては  更紗ゆふ
水無月は重しと女霊媒師  小川めぐる
夏雲のクリームパンを半分こ  すりいぴい
房咲きの薔薇無造作に束ねをり  小雪
三才児を抱き大滝に至りけり  鯉城


桜井教人(さくらい きょうと)
 1958年愛媛県生まれ。愛媛県公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回、29回俳壇賞候補。



先選者 阪西敦子

 去年今ごろ、6年住んだ町から引っ越しをして、職場も移った。今年また職場が移った。去年までの家の最寄に1軒、職場の周りに3軒あったコンビニはすべてファミリーマート、引っ越して家の最寄りと、職場の最寄のコンビニはセブンイレブンになった。今年、職場が代わっても、職場の下にはセブンイレブン。不思議な囲い込みにあっている。




うづもるる靴下の象青芝生  明惟久里
 靴下に編みこまれた象の柄も、脚も投げ出して芝生に横たわる。芝にうもれた私自身とともに、靴下の柄の象も芝にまみれている。柄なのだけれど、芝に置けば象は生き生きとして嬉しそうである。きっとその心地よさは、それを見つけた人間のもの。脚の一部である靴下を描き、その柄によって象を引き出し、芝生にある象によってその脚の主である人の心地よさや、芝生の生命感もあらわす。




体操着ぬぐ南風はらませて  更紗ゆふ
 汗ばんで素早く、力強く脱ぐ体操着。体が入っていた体操着に、体にかわって入るのは南風、「はらませて」によって躍動感ある強い風が思われる。体操着と風の描写といいながら、どこかに「人」を感じさせる

蝶入る車の窓は空の色  しのたん
 蝶がふと開いた車のウィンドウに吸い込まれていった。よく反射する硝子は空の色そのもの。どこまでを空というのか、そんなことまで揺さぶられてしまう。ありふれた景色に宿る根本的な疑問。

行く道に雲雀の声の付きまとふ  柊月子
 繰り返し繰り返し鳴きかける雲雀、広々と揚がる声は最初は良いのだけれど、すこし倦むようなところもあるのかもしれない。「行く道に」と道の長さを出し、広さとともにどこまでも続く反復をさらりと伝える。

入口の吠える老犬青嵐  有瀬こうこ
 「入口の」は何の入口かは知れない。建物かもしれないし門かもしれない。ただ、そこに老犬の吠えていることが知らされるばかり。そこを青嵐が吹き、声は風に混ざり、毛は風に吹かれる。読む人それぞれの記憶の中にある、ある景色を引き出す。

あわあわとベリーショートの髪洗う  ラーラ
 「あわあわ」は「泡」、だとすれば、拍子抜け、「淡淡」でもあり、他の擬音かもしれない。なんとなく長い髪と思われる「髪洗う」にベリーショートを洗わせた。短い髪にはそれを洗う重さも、劇的なこともなくて、だけれどもそのふわりとした感覚は十分に詩的なのだ。




骨折の脚を浮かせる更衣  野良古
蛍烏賊食べる女の目に灯る  風来松
撞球のすでに始まり夏館  すりいぴい
ビー玉のごと猿の眼に躑躅燃ゆ  テツコ
蜜豆や喉にひっかかっている名  一斤染乃
新緑や地図の略した道に入る  風海桐
おはじきのじゃらり放ちて額の花  ゆりかもめ
湧き水の映す緋鯉と図書館と  あおい
母の忌の近し蜜柑の花匂う  空山
きんいろの夜雨のなごりや薔薇のかげ  緑の手


阪西敦子(さかにし あつこ)
 1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。



後選者 関悦史

 うちの最寄りのブックオフが五月末で閉店してしまったもので、散歩のときに寄る場所がなくなってしまいました。土浦では、狭い店舗一軒で神保町全体並みの品揃えと回転率と安値と美品ぶりを誇っていた「あやめ書房」が大分前に閉店し、平成不況の九十年代に増えた新古書店群も全滅、老舗の「古書ドリーム」もマンガ専門の「まんがらんど」も既にないので残るは「つちうら古書倶楽部」のみとなりました。息が詰まることこの上ない。


特選

冷麦や赤奪ひ合ふ姉妹  小市
 作り事めいた句材のようにも見えますが、その点も含めて古拙な絵といった趣きあり。
 「赤」以外の色では成り立たないところも要点は押さえているといった感があります。

新緑や三婆の夢プチ家出  笑酔
 「プチ家出」という語の通俗性が気にならないでもありませんが、下敷きになった西東三鬼の〈緑陰に三人の老婆わらへりき〉に格調を担保されたような格好。三婆の夢がプチ家出という内容は面白い。

会長はポークカレーや夏暖簾  花 節湖
 「夏暖簾」なので蕎麦屋か料亭のようですが、「会長」が食べているのはさして値の張りそうにないポークカレー。全体に昭和の喜劇映画のような、おっとりした慕わしさあり。


並選

夏の星大学院生の初恋  或人
花茣蓙に碁盤の足の窪みかな  ヤッチー
竹林の根方明かるしシャガの花  藍植生
青き空友よ癒えよと苺買う  ゆき
山頭火打ちし夕立の匂ひかな  藍人
まっすぐにトマトふたやま買ってまう  七瀬ゆきこ
酩酊の蟻掬ひ出す砂糖壺  あいむ李景
夏館時計の鳩が出てこない  不耳男
次々とミミズ這い出す釣り準備  レモングラス
黒帯の彼はやさしく蚊を潰す  でらっくま
青葉潮半裸少女の白い顔  KIYOAKI FILM
ひとしきり風なき中を竹落葉  芳香
海老の背の細き黒ずみ夏来る  砂山恵子
花卯木刺青の針に吹く血玉  凡鑽
原爆忌真黒き石の爆ぜる音  桂奈
いささかのいさかいもなくなすびづけ  中山月波
海風と水薙鳥は海に棲む  暮井戸
夏休み短冊切りを覚えたり  柊の花
初夏の打ち抜きの水汲みにゆく  波野
黄昏し細き純白や浜木綿  冬のおこじょ
長崎忌軍事機密祖父沈黙  松浦麗久
虫めがねでのぞくなつやすみの空  天野姫城
知らぬ間に蟻を一匹だけ殺す  小木さん
さみだるる短調のモーツァルトなり  花伝
青嵐見下ろす海は瀬戸と宇和  とべのひさの
十台も随へてゆく耕運機  松田夜市
まいまいはまいまいの背に乗りたがる  蓼科川奈
初夏を50cc煙吐く  南亭骨太
教室に白きカーテン揺れ薄暑  さより
牛糞の十七の山ひばり鳴く  一走人
庭園の茶席を跳ねる青蛙  のり茶づけ
じゃりじゃりと骨切りのおと夏料理  みやこまる
麦秋の運ぶ黄色い孫の声  ぺぷちど
あぢさゐや茂子の涙はじきをり  次郎の飼い主
薔薇園を白馬めく風渡りけり  24516
ハイハイの動画のお尻青リンゴ  ぎんなん
病名を告げられており青嵐  ちゃうりん
老犬の背骨数うや針槐  薄荷光
山肌のあちらこちらに夏霞  立志
生命の繋がる印こいのぼり  おせろ
打ち水や紐ぶらさげた赤きアメ  洒落神戸
新緑や見え隠れする丹の社  喜多輝女
額の花賞罰なしと記しけり  うに子
雨粒を落とさぬやうに凛と薔薇  かま猫
思春期の井戸端会議更衣  ぐずみ
負くまじと薔薇はしづくの化粧せり  大槻税悦
ビル溶けて電線縺れ風死せり  元旦
サワディ カーとあいさつをする四月かな  ケンケン
燧灘日和つゞきの鰆網  人日子
フライパン開かぬアサリの三箇あり  ちろりん
白き花名を山梔子として香り  台所のキフジン
人口の動態を脚色河童忌  ねもじ
いたどりや食べ頃ポキポキ帰り道  花紋
森閑と影を育む罌粟の花  内藤羊皐
万緑やボケるひまなし今日も又  柊つばき
雷やフォルテの曲にマッチする  巴
この空を縄張りとして夏雲雀  坊太郎
雨雫見つめ返すや鉄線花  未貫
夏草の狭き庭にもおいでたり  青柘榴
ゆつくりと衰へてゆく父や夏  ひでやん
単線の蒸気機関車麦の秋  彩楓
梅雨の晴喜び見せぬマリア像  クラウド坂上
胡瓜食む音だけ響く昼下がり  ミセウ愛
八人は麦酒二人は烏龍茶  花節湖
預言カフェ主の預言聴き聖五月  マカロン星人
病葉や雨下にけやけき玻璃の艶  童夢U世
いごっその髭面光る青葉潮  哲白
鯊と鯊出会ひの貌を夢見たる  遊人
豆飯の二合ばかりの家族なり  ミセスコナン


関悦史(せき えつし)
 1969年茨城県生。「翻車魚」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。2017年第二句集『花咲く機械状独身者たちの活造り』、評論集『俳句という他界』刊行。共著『新撰21』『俳コレ』他。


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100年投句計画

自由律俳句計画


きむらけんじ

 突然顔や首や手に発疹ができて熱をもって腫れて痒い。医者に行ったら紫外線アレルギーだと言われた。ステロイド塗ったり飲んだりしても一進一退で、出かけるときは覆面は無理でもUVカットできる日焼け止めを塗って、夕方以降外出するようにいわれている。獣神サンダーライガーの仮面かぶって俳句詠んでるおっさんがいたら、それはワタシです。




「帰りたい」と母「帰ろう」と家二周  凡鑚
 すっと素直に理解しづらい構成の句。それだけに理解の域に踏み込めば作者の深い思いがじんわり伝わって絡めとられる。おそらくは認知症を患っている母親が、なにを間違えたのか自分の家に居ながら「帰りたい」と言っている。仕方なく介護者である自分は、母を連れ家の周りを回って行き場のない母の不安、不満をなだめているのだろう。「帰りたい」「帰ろう」ということばがうまく対比されて散文に流れそうなところを自由律俳句としてしっかりとどまっている。




どこまでのびる浅蜊の管は  和音
 浅蜊の砂抜きは、どこの家庭でもよく見かける光景です。貝の大きさにもよるのでしょうが、思ってる以上に長い水管を出していてびっくり……みたいなことはだれでも経験があることです。俳句はこねくり回すものではない……それあるある的共感の句。

巴旦杏幼き日の想ひ出の円し  蓼科川奈
 巴旦杏は、すもものことか。巴旦杏とともにある幼いころの思い出は、どこかほのぼのとして優しい……それを「円し」と一言で掴みとったところがこの句のすべて。ちょっと酸っぱい感もあればなお良いけれど。

どこへでも行けるつもりでどこへも行けないあめんぼう  藍人
 25文字の長律の句。これを17文字の定型に収めたとしたら、このあめんぼうのこのユルイ感覚は表現できない。一見無駄な言葉の羅列のようだが、独特の世界観を形成している。

先頭は先生や蟻の列  鯉城
 「先生や」の、「や」は感嘆でも疑問でもよい。この蟻の列の先頭は先生だったのか! あるいは先生なのか? ……どちらにせよ蟻の列の見方が創造的です。

詣でたき墓碑がない  緑の手
 あらゆることを削り落して、極端に言えば墓碑がないというだけの句。その分詣でたきという言葉が、じわりと浮き上がってくる。いったいどんな理由で詣でたいのだろうか……短律特有の想像力の刺激。




蕎麦屋の芍薬崩れゆく真昼  すみ
老鶯一声白山聳え立つ  風来松
咲いた時だけ見逃す  小川めぐる
ガラス一枚割れば自由だのに  薄荷光
お玉杓子尾が消ゆる夜  人日子
一円単位で割る男  有瀬こうこ
破水の娘 月を抱けず  内藤羊皐
蛙田を通る前補聴器ははずす  マカロン星人
炎天を登りつめる蟻  きさらぎ恋衣
もてあまし居て己という字蛇に似る  まんぷく


並選

瑞西の避暑と安楽死  ヤッチー
パソコンの画面にも黄沙  藍植生
雨男まとわりつく雨  ゆき
額紫陽花の場所おしえたい少年  七瀬ゆきこ
小言にも梃子でもめげないゲーム脳  レモングラス
母から敬語のメールきて母の日  でらっくま
夏坐す庭で犬の花  KIYOAKI FILM
青い匂いが突き抜けた  芳香
放課後の餡蜜秘密結社  桂奈
落し物係へラブレター  中山月波
チャグチャグ馬コ耳楽し  暮井戸
からだはあたまに逆らって  小市
静かなる喧噪八月の日  冬のおこじょ
麦畑へ農薬散布のドローンがゆく  松浦麗久
そう深刻でもない雨脚  小木さん
新緑は老犬の白き眼にも  とべのひさの
捨てねばと思えば惜しくなる不用品  南亭骨太
ドクダミも愛してしまう白花が好き  さより
母の日のワイン浴びるほど  一走人
居留守を決めても鳴り続くチャイム  のり茶づけ
薔薇の棘掴む子には勝てぬ  みやこまる
薫風に誘われてついついとついついと足痛し  ぺぷちど
金魚玉に沈む空想  次郎の飼い主
ナイターを観ている見合いは断った  ちゃうりん
白玉へ黒蜜  立志
スキップスキップ靴底にガム  洒落神戸
八分の一切れの西瓜買ふ  喜多輝女
衰えるときも全力  うに子
吸うて吐いて蛍袋  かま猫
二十歳の原点読む児に入梅  ぐずみ
炎昼の雑踏ハンズフリーのひとり言  元旦
打球転々烈風に追いつけず  ケンケン
これは吉凶虹がさかさま  ちろりん
義理の親にすててこで会ふひと  明惟久里
夫婦阿鼻叫喚を笑いこけ  台所のキフジン
血糖値下げる理明らかに春蚕  ねもじ
秘密を聞く前から口止めされる  花紋
荒風に唸る幟竿  坊太郎
処分したはずのたくましきオオキンケイ  青柘榴
仔牛の立ち上がるまでを見ている  彩楓
猫がくれた贈り物は雨蛙  ゆりかもめ
香水を買う土に吸わせる為に  ラーラ
五十本の薔薇を妻の枕元へ  花節湖
新緑の森へバスの突進中  あおい
昭和への鍵はラムネの栓  空山
松山発五月の空を何処へ  ミセスコナン


自由律で再挑戦を!

雨激しく宮の梅の実青々し  みつよ
仕上りし夏鶯の声なりし  みつよ
蔦若葉まはるまはる風見鶏  更紗ゆふ


きむらけんじ 1948年生まれ。第一回放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。


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100年俳句計画

詰め俳句計画


選者、問題作成 マイマイ


今月の問題
次の(  )の中に共通する夏の季語を入れてください。

美醜そを(   )あますところなし
(   )につぎつぎ雨の礫かな


美醜そを夏醜あますところなし
夏醜につぎつぎ雨の礫かな
 KIYOAKI FILMさん。手持ちの歳時記、インターネットも調べましたが、この言葉を見つけられませんでした。「夏」の字は入っているものの、この言葉自体の意味が分からないので級外とさせて下さい。マカロン星人さんはプールサイド。このコーナーは歳時記記載の季語をそのまま引用(傍題は可)するのがルールですので、季語「プール」の季語アレンジとして減点いたします。内容は結構面白いのですが、前句が無理矢理音を詰め込んだようで変。6級(-2)。

美醜そを花の日あますところなし
花の日につぎつぎ雨の礫かな
 立志さん。日曜学校の行事で教会を持ち寄った花で飾ったり、花を持って病院を訪問したりするらしい。決まった日はないが、六月の第二日曜日の場合が多いと歳時記にある。前句「美」は分かるが「醜」が分からない。後句、「に」の助詞が変だがそこが面白いともいえる。5級。野良古さんは赤潮。赤潮に「美」を感じる人は少ないと思うがそこがいかにも俳人らしいか。後句水面の泡立つ様子が見えてきて独特の味わいあり。4級。小市さんは巴里祭。前後句とも季語が大掴み過ぎてちょっと漠然としている。同じく4級。でらっくまさんは白靴。前句、白靴自体の「美醜」なのか、白靴を履いたことによってその人の「美醜」が露わになるのかちょっと句意がわかりにくい。後句は視点が絞られていて良い。3級。更紗ゆふさんは夏帯。着物だと露わではないので、前句「あますところなし」に違和感あり。後句は、せっかくの着物が大変なことに……。同じく3級。桂奈さん、中山月波さん、人日子さんは早乙女。前句、早乙女には「美」を感じるが「醜」をそこに見るのはある意味リアル。後句は労働の辛くも美しい情景。同じく3級。さとしさんはクロール。前句、これはプールで一斉に泳いでいる景でしょうか。把握が変で面白い。後句、クロール(の人)が省略されているやや強引なつくりだがそれが俳句的ともいえる。同じく3級。しげこさんの薄衣、 藍人さん、うに子さんの夏服、柊月子さんの白服は前句確かに「美醜」をさらけ出す感じがある。後句、ささやかなエロチシズム。2級。砂山恵子さんは行水。前句、たしかに「あますところなし」です。後句、確かに子供の頃の行水ではこんなことがあったかも。1級。

美醜そをごきぶりあますところなし
ごきぶりにつぎつぎ雨の礫かな
 喜多輝女さん。前句、個人的には「美」とか言われても「ウエッ」。後句は野外のゴキブリ? 5級。青柘榴さんはぼうふら。前句「美醜」といわれても……。後句、水中なので直接は当たらないと思う。同じく5級。すりいぴいさん、遊人さんは蛞蝓。これも個人的には「ウエッ」。後句、雨と蛞蝓は近いが近さ故の現場感、臨場感がある。4級。小川めぐるさん、ちろりんさんは蟇。前句、一音多いのが詰め込んだ感じがして損。内容的には前後句とも納得できる。同じく4級。笑松さんは亀の子。夜店などで売られる亀の子の「美醜」? 後句は夜店の一光景。同じく4級。小木さん、ひでやんさんは尺蠖。前句、「美醜」というよりも滑稽さの方を感じるのだがどうか。後句、雨に慌てふためく尺蠖も見えてくるようで面白かった。3級。薄荷光さんは水馬。前句、水面に浮かぶ機能美と虫独特のグロテスクさを「美醜」と捉えたのだろうか。後句は近さのよろしさあり。2級。洒落神戸さんはででむし。蛞蝓よりも親近感がある(勝手な言い分だが)。後句、雨とかたつむりは近いが、質感の違う殻と胴体?に雨粒がぶつかる様子がスローモーションで再生されるような面白さがある。2級。笑酔さんは斑猫。ジュミーさん、24516さんは玉虫。どちらも鮮やかな色の昆虫で前句、「美」「醜」を併せ持つ感じがすぐに伝わる。後句、水を弾くキチン質。1級。

美醜そを蓮の花あますところなし
蓮の花につぎつぎ雨の礫かな
 冬のおこじょさん。まず特に前句字余りが気になる。また蓮の花は「美」しいイメージで「醜」は? 後句、蓮の花にも池にも落ちる雨粒。5級。あいむ李景さん、蓼科川奈さんは蓮の葉。リズムは良くなったが前句、やはり「醜」が分からなかった。後句は水が葉の上で玉になったりするのが見えて面白い。一斤染乃さんの蓮池、のり茶づけさんの睡蓮も同様。まとめて3級。久我恒子さんの鬼蓮も大きな葉には圧倒されるが「美醜」と言われると?? 同じく3級。藍植生さんの河骨、芳香さんの沢瀉はひっそり咲くイメージで「美醜」をあからさまにする感じではないと思う。同じく3級。河原撫子さんの昼顔、天野姫城さん、彩楓さんの夕顔、一走人さん、猫楽さん、坊太郎さんの卯の花、みやこまるさんの十薬、きさらぎ恋衣さんのドクダミも結局「美醜」「あますところなし」という前句の表現とこれらの季語のイメージとの間にやや違和感があった。いずれも3級。レモングラスさん、唯萬圓さん、ねもじさんの葉桜、内藤羊皐さんの夏草、カシオペアさんの新緑は生命力を感じる季語で、前句「美醜」という視点では捉えにくい。後句は命を育む水の力が思われて良い。同じく3級。ちゃうりんさんは蚕豆、ゆりかもめさんは青梅。前句、醜い汚れた実もあるとしても、「あますところなし」は言い過ぎか。後句、夏の豊かな実りにも雨粒。同じく3級。矢野リンドさんは仙人掌。前句、「あますところなし」の感じがする。後句、本来砂漠の植物なのにそこに雨粒がぶつかるのは痛々しい気もした。2級。ミセウ愛さんは芍薬。前句、「醜」の部分がやや疑問だが、咲き崩れている様子を思うと納得は出来る。花が派手なので「あますところなし」と自己を誇示するような措辞も合う。後句は危うい美しさ。同じく2級。斎乃雪さん、松浦麗久さん、和音さん、きなこもちさん、花節湖さんは紫陽花、ほろよいさんはあぢさゐ。紫陽花は同じ株でも土壌の状態等によって色が変わり、それが「美醜」に繋がる気がする。後句、近さのよろしさあり。同じく2級。ゆきさん、とべのひさのさん、かま猫さん、童夢U世さんは病葉。明惟久里さんはわくら葉。前句、いかにも「美醜」と納得。後句、病葉に止めを刺すがごとき雨の粒。1級。

美醜そを筍あますところなし
筍につぎつぎ雨の礫かな
 元旦さん。前句、筍の艶々とした美しさと獣を思わせる野性味が「美醜」でうまく表現されている。後句、あのビロードのような表面に雨粒がぶつかる光景は官能的とも。初段。ヤッチーさん、次郎の飼い主さんは空蝉。前句、空蝉の透ける質感は「美」しくもありグロテスクで「醜」くもある。後句、水を弾いたり、空洞に水が溜まったりする景も見えて面白かった。同じく初段。七瀬ゆきこさんは蜘蛛の圍、すみさんは蜘蛛の囲。前句、納得の「美醜」。空間を広がっているところも「あますところな」い気分がある。後句、雨粒に撓んだり、水滴がついたりいろいろな動態を想像できる。二段。


今月の正解

美醜そを鬼百合あますところなし
鬼百合につぎつぎ雨の礫かな
 正解者無し。前句、美しいが、ある種の不気味さも感じられる花。咲き方も己をさらけ出すようで「あますところなし」という措辞と合う。後句、「鬼」と「礫」という強い言葉どうしが響き合う。自画自賛にて二段。


解答募集中!
次の(  )の中に共通する秋の季語を入れてください。

単線に沿つて草ある(   )かな
開けはなち(   )の窓の宇宙まで

このコーナーは『新日本大歳時記』(講談社)を参考にして、選者が勝手にランク付けをしています。新しい季語などを投稿される際は、歳時記・季寄せ名を併せて明記していただけると助かります!

7月20日締切 結果は9月号に掲載


マイマイ
 2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人だったが、最近は?? 第1回、第4回百年俳句賞(旧大人コン)優秀賞受賞。2013年句集シングル『翼竜系統樹』上梓。将棋推定初段。棋友募集中。宇宙と生命を題材に詠んだ句集『宇宙開闢以降』マルコボオンラインショップにて発売中。


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100年投句計画 投句方法



雑詠俳句計画
自由律俳句計画
詰め俳句計画

 「雑詠俳句計画」では、寄せられた投句を一括して、各選者が選句します。各選者に宛てて個別の投句を行うものではありません。

8月号掲載分締切 7月20日(金)

投句方法

 投句先コーナー名
 俳号(無ければ本名の名前のみ)
 本名
 電話番号
 住所

 以上の必要事項を書き添えて、編集室「100年投句計画」係までお寄せください。メールの場合は、件名を「100年投句計画」としてください。
 「雑詠俳句計画」「自由律俳句計画」はそれぞれ2句ずつまで投句できます。また、「詰め俳句計画」は季語1つのみを投稿できます。
 各コーナーの投句は、ひとつにまとめて送っていただいても構いません。

メール宛先
magazine@marukobo.com

投稿専用ページ
http://marukobo.com/toukou/

さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(「100年公募計画」のコーナー参照)


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短歌の窓


選者
短歌誌『未来』会員 渡部光一郎


並選

ねえだから天丼食べて帰ろうよ越谷からも富士は見えるし  ラーラ
 会話調が巧み。上の句と下の句の内容をうまくねじっている。普段のやりとりに論理的整合性はとくにいらないのだ。じつは何気に「天丼」を選んでいるところがミソなのである。

バーは島なんだよと言う奴だからアイラの酒を飲んでいたのか  暮井戸
 評者は酒のことを知らないが、「バーは島なんだよと言う奴だから」の句またがりと破調は、なかなかよく酒飲みの感じを出している。そういえば酩酊感の中で妙なことが腑に落ちる時はあるなあ。


コメント

頑張れの言葉禁句の病みし友ただ生き抜けと神に祈りし  ゆき
 頑張りたい、とは本人が一番そう思っているのだから、そう言えないし、言わない方がいい。作者はただ神様に祈る。そういう優しさは必ずどこかで役に立っているのだ。

これは嫌あれも着ないと駄々をこねたかがコンビニ行くだけなのに  凡鑽
 コンビニに行くのに服をえらぶというこっけいさ。しかし夜にパジャマでコンビニへ買い物に来ている人を見かけると、さすがに違和感をおぼえることがあるなあ。

菜の花は光の中に群れ咲きて鎮魂の碑へ道はひとすじ  風
 菜の花はこの歌のような光景にもよく似合う。ひとをつつむような菜の花の性質に触れた作品。

芒種近し色とりどりの種広げ縁側に干す祖母の懐かし  藍植生
 「色とりどりの種」で思い出すのは、トウキビの類だ。昔よく軒にそれこそ色とりどりの種をつけた黍が吊るされていた。種まきの季節というのはいいなあ。

バンコクの人とぬかるみ飛び込えてガイ ヤーンとか発音学ぶ  ケンケン
 この一首の中で「ぬかるみを飛び越える」という行為がどこから出てきたのか分からず、浮いてしまっているので、もう少しわかりやすく整理を。あと、ガイ ヤーンって何だろうとググッたらタイの焼き鳥のようだが、これも分かりづらい。もっとも、評者が知らないだけかもしれない。

南予路は蜜柑の花と鯛のめし「もんちきたか」と知り人の声  芳香
 「もんちきたか」は「戻って来たか」の意だろう。帰省の際の歌のようだが、上の句が何だか南予をはじめて旅行した人の作ったもののように思われるのが難。

早朝の玄関にある茱萸の枝一粒口に昭和の味を  一走人
 グミの実はよく熟れないと渋い。最近口にすることもなくなり確かになつかしいが、評者は「昭和の味」と思ったことはなかった。

〆切を三つ抱えて四苦八苦人気作家のようだと笑う  一走人
 何の原稿をかかえているのか、についての情報を入れてもよい。もう少し具体性を。

四、五人の学生傘を畳みつつコンビニに入る雨軽くなる  久我恒子
 雨が軽くなった、と本人が感じたのだろうか。それとも雨が小降りになったことをそう表現したのだろうか。その辺が分からない。「学生傘を」「雨軽くなる」と、かなり助詞を省略しているのも気になる。


選者より
 作者だけに分かっている、という作品をよくみかけます。もうすこし読者に伝わるように詠んでみてください。俳句と短歌のちがいは、そんなところにもあります。


自作の短歌(2首まで)を下記までお送り下さい。締切は毎月20日。
専用フォーム
http://www.marukobo.com/tanka/
専用Email
tanka@marukobo.com


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自作の俳句を英語に訳そう!

百人百様 E-haiku



文、訳例 菅 紀子


白夜なり目の奥触るイエス様
White night,
touch open my eyes,
Christ!
KIYOAKI FILM

紀訳
white night,
my inner eyes are touched
by Jesus Christ


青葉潮美しき婦人の繰り返し
Blue leaf wave,
beauteful woman,
rolling.
KIYOAKI FILM

紀訳
green leaves' tide
repetition of
a pretty woman

お便り 基礎英語聞いてます。辞書読書が一番、面白い。 (KIYOAKI FILM)


麦の波ランナーの背を押して風
sea of barley
pushing the runner's back
It's been a wind
ほろよい

紀訳
the sea of barley
pushing the runner's back
is the wind

お便り 麦の波=wave of barley とは思いましたが、wave よりも sea の方がさらに広がり感が出るのでは?と挑戦してみました。いつものジョギングコースの松前町は日本一の大麦の産地です。 (ほろよい)


缶ビールまたも不祥事発覚す
canned beer
scandals detected
again
久我恒子

紀訳
a can of beer
more scandals
uncovered again


七月の一手の指の碧さかな
July
greenish fingers
of a move
久我恒子

紀訳
July's board game
how green
the playing fingers are


道化師の涙は光らない蛍
the Clown's tear is
the firefly that
do not shine
チャンヒ

紀訳
a clown's tear
is a lightless firefly


死を待つひまわりに睨まれるじっと
I will be stared
at the sunflower
waiting for death
チャンヒ

紀訳
being faced
by a dying sunflower
standing still


三月の雪の戻りの近江かな
omi, return of the March snow
ケンケン

紀訳
Omi,
back to the snowy weather
in the month of March


ハンモック琵琶湖の風をまとひけり
hammock hung was dressed in wind, Lake Biwa
ケンケン

紀訳
a hammock
dressed in the winds
from Lake Biwa

お便り ボランティアで外国人に日本語を教えていて、上級者に俳句も教えています。日本語がほとんど分からない初級者に英語で俳句を教えたくて自作俳句の英訳に初挑戦です。 (ケンケン)


つり革の数のあくびや春の海
the sea of spring
as many yawns
as handstraps
明 惟久里

紀訳
the spring sea
yawns as many as
the hand-straps


耕園の七つのにほひあたたかし
warmly,
seven signs of spring
from a farm
明 惟久里

紀訳
from a farm
seven different smells
it's warm


薫風や家財は売ってしまいけり
a balmy breeze,I sold all household goods
すずき徳三郎

紀訳
a balmy breeze
they sold off all
their household goods

お便り 映画「武士の家計簿」より。なかなかモノを捨てることができず、また整頓が苦手な自分が見習うべき作品です。家の中も、身体も肥満状態で、断捨離を断行せねばいけません。 (すずき徳三郎)


借財も蓄財もなし風薫る
no debt no saving, cool light breeze
すずき徳三郎
紀訳
no debts
no savings
blessing of a breeze

お便り 映画「わたし出すわ」より。どちらも、故・森田芳光監督のお金をテーマにした作品。前者が財政緊縮型・後者が刺激型、主人公が男・女、時代が江戸・平成と対照的で面白いです。 (すずき徳三郎)

鴨の子のしんがり転びまた転ぶ
tail of the child
of the duck
fall down, fall down again
彩楓

紀訳
a procession of young ducks
the last one stumbles and falls
again and again


朽ちし木へ次々と蟻登る下りる
one after another
ants go up and down
to decayed tree
彩楓

紀訳
ants
busily climbing up and down
a decayed tree


Column「記号」

 先月の英語話者による俳句は、国連の初代理事会議長で今年2月にも松山へ来られたヘルマン・ファン=ロンパイさんの作でしたがお気づきになったでしょうか。ベルギー人政治家ですので英語ネイティヴではありませんが、英語運用にかけては日本語話者の私達よりはるかにハードルが低いですね。
 ロンパイさんの句の中に“ : ”が使われていました。そこで簡単に記号を見ておきましょう。

「:」コロン。一言でいうと「つまり」の意になり、何かを定義したり説明したりします。
「;」セミコロン。文を繋いだり語を並べたりします。
「-」ハイフン。連結語を作ったり、行末で単語が途切れる際繋がっていることを示すためつけます。
「―」ダッシュ。ハイフンより長く、長音を表す時に使います。音がない場合間とか余韻でしょうか。

 そこで今月は記号を使った俳句を選びました。

Sunset
as the wind dies, the supper-time
sounds of the town.

Judith E. Winston

「.」ピリオドは句点ですよね。想定外でした。


菅 紀子(かん のりこ)
(有)クラパムコモンカンパニー代表。通 翻訳、メディアによる姉妹都市交流コーディネーター。社名は夏目漱石が下宿したロンドンの地名から。歩道短歌会同人。人文学修士、翻訳修士。松山大学非常勤講師。(Hailstone Haiku Circle blog ICEBOX Contributor)(漱石と彼のライバル重見周吉、日系移民研究)


自作の俳句およびそれを英語俳句にしたもの(2句まで)を募集!

応募先
 WEB http://www.marukobo.com/eigo/
 Email eigo@marukobo.com

9月号掲載分締切 7月20日(金)


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今回のお題句に対する投句から次のお題句を選び繋げてゆく

疑似俳句対局


選者 美杉しげり


今回のお題句
躑躅つつじ木乃伊の眠り覚ましそう  あいむ李景


候補句

夏の月躑躅け崎の館跡  藍植生
躑躅ケ崎城址水無月祓かな  すみ
 躑躅ケ崎館跡は武田信玄ゆかりの地。なるほど、この手がありましたか!

父母の眠る寺にも青葉木菟  芳香
露涼し眠りゐる子の白き頬  蓼科川奈
四阿に眠るや五月雨の爆ぜて  野良古
夏の月眠れぬ獅子の独り言  桂奈
睡蓮の妖しき眠り青き空  斎乃雪
 父母、子、自分……人間だけじゃなく、獅子だって睡蓮だって眠ります。
蟻2割眠るがごとくさぼりおり  青柘榴
夕立や動き出したる眠り猫  薄荷光
 働き蟻の2割ほどは働いてないらしいですね。「眠り猫」は彫刻か本物か、どちらにも読めそう。
不幸せな飼犬眠る桜桃忌  24516
白靴の催眠術は本物か  中山月波
催眠に掛かりやすくて蛍籠  一斤染乃
沈黙の祈りの列や眠草  洒落神戸
 24516さんの「飼犬」は本物の犬かもしれないけれど、たとえば自嘲の「飼犬」と深読みもできそう。中山月波さんと一斤染乃さんの句は不思議な味わいさて、どう読み解くか? 洒落神戸さんの眠草はおじぎ草ですね。手堅い取合せ。

阿弗利加の木乃伊届きをる深き夏  ねもじ
Googleで「木乃伊」を検索梅雨の朝  すぎ本たかし
木乃伊とは復活の為初蛍  二宮鬼北
でで虫や木乃伊に薄らと埃  すりいぴい
 ねもじさんとすぎ本たかしさんの句は、「現代を詠んだ」句ですね。美術館で展示されたり、Googleで検索されたりする木乃伊。二宮鬼北さんとすりいぴいさんは動物との取合せ。蛍もでで虫も、それぞれ妙に木乃伊に似合います。

夏祭つつじ木目の根付買ふ  健次郎
 「つつじ」は季語でしょ? と一瞬思うのですが、つつじの面白い木目を根付にしたものなのでしょうね。季語ではないから、これはOK。面白い試みですね。

尼寺の木魚静かな愛鳥日  天野姫城
三越を出て真つ直ぐに冬木立  花節湖
 天野姫城さんの句、「静か」と詠みながら、同時に鳥たちの美しい鳴き声が聞こえてくるのがいいですね。花節湖さんの句もユニーク! 高島屋や西武じゃダメで、やっぱり三越がいい味出しているんですよねぇ。

夏薊書き殴られし覚書  冬のおこじょ
夏雲や河馬の目覚めを引連れて  柊 月子
 「覚」のお二人。それぞれ「夏薊」「夏雲」という季語が活かされてますね。

伊太利亜の深き祈りや秋の水  久我恒子
伊太利の船微睡みて日の盛  笑松
伊予弁のよもだ漏れくる夕簾  あいむ李景
不如帰伊勢伊賀紀伊と伊予で鳴く  ひでやん
紫陽花やドレスに相応う伊達男  大槻税悦
 同じ「伊」を使いながら、「伊太利(亜)」「伊予」「伊達」と、まったく違う味わいの言葉になるのが楽しいですね。更に、ひでやんさんはこれでもか!と「伊勢」「伊賀」「紀伊」……。あいむ李景さんの「よもだ」、愛媛県人にはお馴染みの言葉。

六月の那覇飛行機雲跼躅  ぐずみ
躑る子の目は白し木下闇  星埜黴円
カーネーション一輪ザヴィエル芳躅碑  小川めぐる
 「跼躅」「躑る」「芳躅碑」句会に出たら清記するのが嫌になること間違いなし、の漢字。この厄介な字を短い時間でちゃんと一句にするあたりが実力ですね。

打水や祇をん佳つ乃の左褄  凡鑽
若くあれば乃ち忘れ竹の秋  ちゃうりん
 凡鑽さんの句、何とも艶っぽくていいですね〜。打水を避ける仕草が見えてきます。
 ちゃうりんさんの句も「乃」をこういう形で使うのか、と意外でした。


次回お題句

麦秋躅んで鉄橋の味がする  七瀬ゆきこ
 この句、実は投句一番乗りの句でもあります。麦秋というのは時候の季語ですから、「麦秋という季節そのものを躅んだ」と読みました。「躅む」は一般的には使われませんが、この句の虚の世界を描くには効果的な文字ではないでしょうか。
 というわけで、次回お題はこの一句。皆さん、どんどん発想を飛ばしてくださいね。


俳句対局龍淵王決定戦のルール変更に伴い、次回投句分よりこのコーナーのルールも変わります。詳しくは「龍淵王決定戦」告知及び投句フォームをご覧ください。


美杉しげり
 第8回俳句界賞受賞。数年前から小説も書き始め、短編「瑠璃」で第21回やまなし文学賞佳作。美杉しげりはその時からのペンネーム。


毎月25日頃に、投句フォームにてお題句を発表します。投句締切は毎月末日。

疑似俳句対局投句フォームアドレス
http://marukobo.com/taikyoku/


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THE BEATLES 213 PROJECT


第10回
「ツアー! ザ ビートルズ」

文 夜市


 9枚目のアルバム「マジカル ミステリー ツアー」のA面特集です。1967年のクリスマスに英国のBBCで放映された同名のテレビ映画。そのサウンドトラック全6曲を収めたA面は、前作サージェント ペパーと同様いわゆるトータルコンセプトアルバムとなっています。逆にB面はこの年に発売されたシングル曲を集めてヒットパレードともいうべき構成です。


マジカル ミステリー ツアー

旅立ちのファンファーレ虹くぐり抜け  猫正宗

 ポールが書いたツアーの始まりを告げるテーマソングです。イントロのホーンセクションのみならず「ララーララー」と続く硬質なコーラスもファンファーレめいてワクワクとさせられます。現在でもテレビの旅行番組などで耳にする機会の多い曲なのではないでしょうか。

摩訶不思議珍道中な旅始  越境島
三光鳥地球一周半の夢  久我恒子
鈴の音とチャグチャグ馬コ道を行く  暮井戸


フール オン ザ ヒル

夏の丘笛吹けば世界は回る  花伝

 ボーカルはポール。哀愁に満ちた間奏のリコーダーもポールです。哲学的な歌詞はガリレオ ガリレイがモチーフとも、このあと彼らが傾倒を深めることになるマハリシ ヨギのことともいわれます。

黄落よそれでも回る星の人  ロックアイス
草笛の流れて丘に影独り  時計子
愚者に真実大衆に蜃気楼  斎乃雪
リコーダー調べはいつかアマリリス  マーチン


フライング

青葉木菟インストゥルメンタルで啼く  暮井戸

 ビートルズ唯一のインストゥルメンタルナンバー。劇中ではアイスランド上空からの空撮ともいわれる幻想的な光景が続きます。最後の句には砥部焼の文様を知っている人ならニヤリとさせられるのでは。

竜天に昇る歌詞カードを捨てて  ツバメ号
浮いてこいひとりぼつちの壁蒼し  久我恒子
砥部焼に雲渦なして鯛素麺  時計子


ブルー ジェイ ウェイ

千人に千の法悦カケス鳴く  ツバメ号

 インド音楽への傾倒甚だしいこの時期のジョージ。この曲は休暇中にヒッピームーブメント最盛期のカリフォルニア州で書かれたものだそうです。

霧の中ジョージのヒッピー七変化  越境島
輪廻する音を引きずり夏の霜  斎乃雪
人待つと云ふこと忘れ夕端居  萬穂


ユア マザー シュッド ノウ

雨やさしただ一輪の黒薔薇に  猫正宗

 白いタキシード姿の4人が階段を降りてくる有名なシーン。ポールだけが胸に黒いバラを挿していたことから後に死亡説が流布されたりしました。

優曇華やシフォンドレスを身にまとい  斎乃雪
母の日や軽やかな巻き毛のダンス  花伝
名曲に合わせ踊ろうアマリリス  れんげ畑


アイ アム ザ ウォルラス

セイウチの意味を悪夢の月に聞く  ロックアイス

 映画のためにジョンが書き下ろしたサイケデリックな一曲。セイウチのモチーフは「鏡の国のアリス」より。あえてチープなマイクを使用することでボーカルにディストーションをかけています。

セイウチもヨハネとなりぬ聖夜かな  マーチン
海象のびんたに目覚む午睡かな  萬穂
跣足刺す長い長い牙のいたづら  井玉
溢る虹ふるるルーシーインザウォルラス  風十六九


第12回 兼題曲
「リボルバー」より

タックスマン
エリナー リグビー
ヒア ゼア アンド エヴリホエア
アンド ユア バード キャン シング
トゥモロー ネバー ノウズ

 兼題曲を詠んだ俳句を以下までお送り下さい。

専用フォーム http://marukobo.com/beatles/
専用Email beatles@marukobo.com
締め切り 7月20日



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100年俳句計画編集室セレクト

100年公募計画



掲載は応募締切順。
選者は順不同、掲載名は敬称略。
各公募情報の詳細につきましては、主催者発表の最新情報ならびに問い合わせ先でご確認ください。


第53回子規顕彰全国俳句大会

主催 松山市教育委員会(子規記念博物館)
募集内容 雑詠2句一組500円。大会当日時点で未発表・未掲載であること。何組でも可。
宛先 〒790ー0857 愛媛県松山市道後公園1ー30 松山市立子規記念博物館内「子規顕彰全国俳句大会」係
締切 平成30年6月30日(土)必着
選者 稲畑汀子、井上康明、上田日差子、村上鞆彦、木下節子
賞 各選者が特選5句と入選40句選出。
大会 日時/平成30年9月23日(日・祝)、場所/松山市立子規記念博物館 4階講堂。当日句の募集有り。
詳細問合先 電話089-931-5566(松山市立子規記念博物館)、http://sikihaku.lesp.co.jp/


第10回 石田波郷俳句大会

主催 清瀬市石田波郷俳句大会実行委員会
募集内容 【一般の部】 2句一組1000円。「波郷・清瀬に思いを寄せる句」1句と自由題1句、または自由題2句。新作未発表句に限る。
 【ジュニアの部】小・中学生対象。投句料不要。1句単位で応募。
宛先 〒204ー0021 東京都清瀬市元町1ー2ー11 アミュー5F 清瀬市生涯学習センター「石田波郷俳句大会」係
締切 平成30年7月31日(火)当日消印有効
 ※ジュニアの部は、平成30年9月6日(木)必着
大会 日時/平成30年10月28日(日)、場所/清瀬けやきホール
詳細問合先 電話042-495-7001(清瀬市・石田波郷俳句大会実行委員会)


石田波郷新人賞

主催 清瀬市石田波郷俳句大会実行委員会
募集内容 30歳以下対象。投句料不要。未発表作品20句一組(表題を付ける)。宛先、締切等は「石田波郷俳句大会」に準じる。清瀬市ホームページからも応募可。
選者 岸本尚毅、甲斐由起子、齋藤朝比古、佐藤郁良
賞 新人賞5万円、準賞2万円、奨励賞(大山雅由賞)1万円
詳細問合先 電話042-495-7001(清瀬市・石田波郷俳句大会実行委員会)


平成30年度(第72回)芭蕉翁献詠俳句

主催 伊賀市、公益財団法人芭蕉翁顕彰会
募集内容 投句料無料。【一般の部】【テーマの部「雪」】【英語俳句の部】はがき1枚に2句、各部門10句まで。一般の部は希望選者名を併記。【児童・生徒の部】2句一組、二組4句まで。
※他に、連句と絵手紙の募集あり。
宛先 〒518ー8770 三重県伊賀市上野丸の内117ー13 「芭蕉翁献詠俳句 ○○の部」係(※英語俳句の部はEメールでの応募可。10句までをeigo@basho-bp.jpへ。)
締切 平成30年7月31日(火)必着
 ※児童・生徒の部は、平成30年9月4日(火)必着
選者 【一般の部】有馬朗人、稲畑汀子、茨木和生、宇多喜代子、小澤實、鍵和田子、黒田杏子、坂口緑志、塩田薮柑子、棚山波朗、西村和子、長谷川櫂、星野椿、正木ゆう子、三村純也、宮坂静生、宮田正和【テーマの部】片山由美子 【英語俳句の部】河原地英武【児童・生徒の部】伊賀市の俳人の方々
賞 特選=賞状・副賞、入選=賞状。
詳細問合先 電話0595-21-4081(公益財団法人芭蕉翁顕彰会)、http://www.basho-bp.jp/


春夏秋冬笑顔まつやま福祉五七五 夏

主催 松山市社会福祉協議会、マルコボ.コム(ふくし句会・ハイクライフマガジン「100年俳句計画」)選句
募集内容 福祉をテーマにした夏季の句を、専用フォーム(http://www.marukobo.com/egao/)より応募。
締切 平成30年8月5日(日)
賞 「松山トリコ」 大賞(松山市社協会長賞)1点=道後温泉湯玉トートバッグ、優秀賞3点=ブックカバー、入賞4点=紙の湯カードケース
詳細問合先 電話 089-921-2111(松山市社会福祉協議会)


ユネスコ無形文化遺産登録記念 那須烏山市山あげ俳句全国大会

主催 那須烏山市山あげ俳句全国大会実行委員会
募集内容 自作未発表の雑詠2句一組1000円。何組でも可。
宛先 〒321ー0595 栃木県那須烏山市大金240 那須烏山市教育委員会文化振興課内「那須烏山市山あげ俳句全国大会」実行委員会事務局
締切 平成30年8月6日(月)当日消印有効
選者 黒田杏子、今瀬剛一、山崎聰、速水峰邨
賞 選者毎に推薦1句、特選3句、秀逸8句、佳作50句
大会 日時/平成30年10月21日(日)、場所/那須烏山市烏山公民館。当日、席題の部の募集有り。
 (※「山あげ祭」は7月21日(金)〜29日(日)開催)
詳細問合先 電話 0287-88-6224(那須烏山市山あげ俳句全国大会実行委員会事務局)


第25回「壺の碑」全国俳句大会

主催 「壺の碑」全国俳句大会実行委員会
募集内容 【一般の部】当季雑詠未発表3句一組1000円。【小・中学生の部】未発表3句以内、投句無料。
宛先 〒985ー0835 宮城県多賀城市下馬3丁目7ー1ー1301 小松温美方 「壺の碑」全国俳句大会事務局
締切 平成30年9月1日(土)当日消印有効
 ※小・中学生の部は、平成30年9月20日(木)当日消印有効
選者 【一般の部】高橋睦郎、鈴木八洲彦、西山睦、高野ムツオ 【小・中学生の部】高野ムツオ、小松温美、熊谷山里
賞 【一般の部】特別選者賞(多賀城市観光協会長賞)、選者賞、他 【小・中学生の部】特別奨励賞=10名、佳作=若干名
大会 日時/平成30年10月14日(日)、場所/多賀城市文化センター小ホール
詳細問合先 電話022-365-0492(「壺の碑」全国俳句大会事務局)


夏井いつきの一句一遊

協力 南海放送

南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句宛先
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/

投句募集中の兼題
7月1日締切 蚋、かちわり
7月15日締切 漢字「井」、夏期講習会
7月29日締切 露草、俳句甲子園

5月度「天」獲得句

テーマ「サッカー」
ヘディングを競る肉が競る汗が競る  マイマイ

余花
光でも雲でもなくて余花なのです  一斤染乃

鴨の子
鴨の子の列や皇宮警護官  あっちゃん

蜜豆
朝廷の首尾や蜜豆注文す  のんしゃらん

掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとにしたものです。俳句ならびに俳号が実際とは異なっている場合がありますのでご了承ください。


俳句の街 まつやま
俳句ポスト365

協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/

7月の兼題
6月28日〜7月11日 踊
7月12日〜7月25日 鰯雲

5月度「天」獲得句


蟻吸ひつ蟻を放ちつ穴しづか  一阿蘇二鷲三ピーマン

初鰹
初鰹気の強さうな火の立ちぬ  蘭丸結動


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鑑(み)るという冒険


映画篇 演劇篇

文&俳句 猫正宗


第六十九回
『モリのいる場所』&『もやしの唄』

 今回、久々に空気を読んでみました。六月号、美術館吟行で取り上げられた、熊谷守一をモデルにした『モリのいる場所』。三十年間家を出ず、ひたすら庭とそこに生きる生き物を見つめ続けた画家モリの最晩年、九十四歳(昭和四十九年)のある夏の一日を、妻秀子を始め、彼を取り巻く人々とともに描きます。
 本作が描きたかったのは、まさに「モリのいる場所」である庭と、そしてその庭にいるモリだったのでしょう。ただ吟行で、彼がどこから来て、どこを通ってその場所にたどりついたかを観、また、絵に対してかなり理知的な時には、工学的、機械的とでも言っていいようなアプローチを行っていることを知ってしまったことからすれば、本作は「仙人と呼ばれた」(そう呼ばれることを嫌がっているという台詞がありますが)というイメージに寄り添い過ぎているようにも。
 しかしながら、庭の豊かさ、美しさ(なんと、この映画のために作られたロケセットだそう)。丹念に撮られたそこに生きる生き物たち。古民家を改装したという家や画室の佇まい。そして、意外なことに初共演だという、山崎努と樹木希林の緊張と脱力に満ちた存在感(個人的には「よく言うよ」という台詞がツボ)。部分で好みのわかれるところはあると思いますが、充実した小品でした。]

旅の果て全ての夏をこの庭に

 ところでみなさんは、もやし、お好きですか? 野菜高騰の折でも安価だった庶民の味方。その安さの一因は、工場によって安定的に生産できるからということもあるようです。いまや生産過程の多くが機械化され、それゆえの安全性も一つの売りともなっているもやしですが、かつては、手作業で一日も休まず、六時間おきに水やりをしなければならない、非常に手間のかかる作物だったそうです。もやし屋を営んでいた作者の父の実家をモデルにした『もやしの唄』(テアトルエコー公演、作、演出:小川未玲、出演:根本泰彦、吉川亜紀子、松澤太陽、他。18年5月8日、ひめぎんホール(県民文化会館)サブホール)は、高度成長期の折、あくまで手作業にこだわる、恵五郎を中心とした、家族+αの物語。過剰な説明がなく、抑制のきいた表現にもかかわらず、観ていればちゃんとわかる、とても品のいいお芝居でした。
 物語始まりから十数年後。当時の、全てがよい方向に変わっていく予兆に明るく湧く一家。その中で、おそらくは、この世界から半歩踏み出してしまっている義母がつぶやきます。「変わらないでも、よかったのにねえ……」それは、結果としての未来を知っている私たちの声でもあります。そこに今まで名前しか出ていなかった恵五郎の息子、幹太が(声だけ)登場します。それからの未来を生きるものとして。
 そう、過ぎ去ったものはいつでも美しい。でもそれは本当にそうなのでしょうか? 少なくともそれは、もう、決して手が届くことはないのです。だからこそ私たちは、未来への懐疑と希望の両方を持ちながら、現在をどうにかしていくしかないのでしょう。
 作者のホームページで、脚本が読めます。ご興味持たれた方がいましたら、ぜひ、もやしの唄の意味を確認してみてください。

夏星も知らねどもやし天目指す


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岡田一実の

句集の本棚



空にねる
谷さやん 著

発行 創風社出版(2018年初版)
161ページ
定価 本体1400円+税

 本書は俳句と愛媛新聞「四季録」に連載されていたエッセーとを併せて収録。軽やかな筆致で一抹の寂しさと豊かな詩的世界を描いている。

玉虫を包むハンカチになろうとは
よく晴れて滝は滝音より遠い
煙草出す岸辺のような冬の駅

 人気の無い「冬の駅」のプラットホームを思った。寂しい「岸辺」を列車は行き交う。行く列車来る列車、それらは仄かに波の満ち引きを感じさせる。孤独感が微かに漂い、小津映画のような風情がある。

桃の日のくるりとほどく本の帯
花火終ゆ海風に腕冷え切って

 「花火」を眺めていたときはその「腕」の「冷え」には気がつかない。忘我の淵から戻って初めて身体感覚が戻るのだ。海風に火薬の匂いがまだ残る夜闇の中、「腕」の「冷え」で「花火」の余韻を感じとっている。

おとといの葵祭の弟と
しろがねの旅の小鮎をさっと食う
囲碁の昼冬の波音しめ出して
雪だるまとのスープの冷めぬ距離
毛布の中滝の名前を言い合って
ぶらんこの長方形の冬日影
菓子箱の中をすべるよ蝉の殻
金魚らの中に釦がおちてゆく

 帯文を坪内稔典。「船団の会」会員、「いつき組」。


月球儀
山本掌 著

発行 DIPS.A(2018年初版)
211ページ
定価 本体2500円+税

 著者の第四句集。幻想的な世界から生々とした〈美〉を鮮やかに取り出す。

翼たためる馬かいまみし葡萄の木
さくらとて懶惰の夜を欲(ほ)るわいの
炙られて妬心炎(ほ)となり蛇(じゃ)となりぬ

 「妬心」が炙られる。そこに「炎」が生まれるところまでは比喩としての納得の展開であるが、それが「蛇」となり生命を与えられると急に異界めいてくる。次々と「妬心」が「炎」になりメドゥーサの髪のように蠢く「蛇」になっていく景色は恐ろしくもあり官能的でもある。

白馬(あおうま)のまなぶたをうつさくらかな
若鮎の骨美しき宇宙塵
兜虫どの宇宙より来たりしか
繭透けてうすむらさきのさざなみ
あきくさやきりぎしに影の痩せゆく

 「影」が「痩せゆく」。幻影としての「影」だろうか。句跨がりのリズムが句に不穏の気配を忍ばせている。

醜貌の兄かがよえる沐浴(ゆあみ)かな
月熟れて死の兄と睦むかな
嘔吐せり木の葉言の葉もみじなど
すきとおるつゆくさほどのねむりかな

 帯文を金子兜太、皆川博子。「海程」同人。「月球儀」主宰。「芭蕉座」代表。


岡田一実(おかだ かずみ)
 2014年「浮力」にて現代俳句新人賞受賞。現代俳句協会会員。「いつき組」所属。「らん」同人。第二句集『境界 border』(マルコボ.コム)。2018年新句集上梓予定。


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新聞記事に隠された俳句を発掘する

クロヌリハイク


黒田マキ


4タコに終わったものの 稲葉 か な (2018年6月7日 デイリースポーツ)

初 雷 や クロヌリハイクコンテスト (2018年6月1日 愛媛新聞より)

ワタリガニ ぬるぬるしたりガザガザしたり (2018年6月6日 愛媛新聞より)

経営陣 「きのこ」のノウハウ 「たけのこ」に (2018年6月6日 日本経済新聞)

引退後 北海道で種 馬 に (2018年6月7日 朝日新聞より)


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100年俳句計画 掲示板



テレビ、ラジオ

NHK Eテレ
『俳句王国がゆく(徳島県阿南市)』
7月15日(日)14時30分〜15時30分
 夏井いつきが主宰です。

NHK 総合テレビ(四国四県域)
「四国 おひるのクローバー」内
 隔週火曜『夏井いつきのムービー俳句!』
7月3日(火)、17日(火) 11時30分〜

TBS系列局 全国ネット
『プレバト!!』
毎週木曜 19時〜19時56分
 夏井いつきが俳句の査定を担当

南海放送
 松山市政広報番組『大好き!まつやま しあわせ実り庵』
毎週火曜 20時54分〜21時(再放送 日曜11時40分〜11時45分)
 夏井いつきがナビゲーターとして出演

南海放送ラジオ
 『夏井いつきの一句一遊』
毎週月〜金曜 10時〜10時10分
 投句募集の詳細は「100年公募計画」を参照。

FMラヂオバリバリ
 『俳句チャンネル』
毎週月曜 17時15分〜17時30分(再放送 火曜7時15分〜7時30分)
【投句募集兼題】
「プール、大暑」7月8日締切
「幽霊、逝く夏」7月22日締切
 WEB http://www.baribari789.com/
 mail radio@baribari789.com
 FAX 0898(33)0789
  投句には本名、住所をお忘れなく!
  「天」の句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。

 各番組の放送予定は変更される場合がございます。新聞やWEBなどで最新情報をご確認ください。


執筆

松山市『俳句ポスト365』
http://haikutown.jp/post/
 投句募集の詳細は「100年公募計画」のページを参照。

テレビ大阪俳句クラブ
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
「集まれ俳句キッズ」(夏井いつき選)
  毎週日曜タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井いつき選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。
 朝日新聞松山総局(〒790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。


イベント、講演等

平成30年度 仏教大講演会内 夏井いつき講演会
7月6日(金)12時〜
檀原文化会館(奈良県)
問合先 本願寺奈良教区布教団 電話 0742(44)5878

夏井いつき句会ライブ in コープこうべ
7月7日(土)13時〜
コープこうべ生活文化センター (兵庫県)
 好評につきチケット完売しました。
問合先 生活協同組合コープこうべ 電話 078(431)5273

東京四季出版 第17回七夕まつり内 夏井いつき講演会
7月8日(日)(講演会は17時頃〜)
アルカディア市ヶ谷(東京都)
問合先 東京四季出版 電話 042(399)2180

宇和島天神小学校句会ライブ
7月12日(木)13時〜
宇和島市立天神小学校(愛媛県)
 講師 家藤正人

AIのMIRAI、俳句の未来 俳句対局 in 北海道大学
7月13日(金)13時30分〜17時(予定)
北海道大学学術交流館 講堂(北海道)
 詳細は告知コーナーを参照
問合先 マルコボ.コム 電話 089(906)0694

第43期網走市民大学講座(平成30年度)第2講座
 夏井いつきの句会ライブ 今日からあなたも俳人です
7月13日(金)18時30分〜
オホーツク文化交流センター(北海道)
問合先 網走市民大学事務局 電話 0152(43)3705

第38回 itakイベント
イランカラプテ 藍生×itak 合同イベント
7月14日(土)13時〜
かるで2 7 大会議室(北海道)
 申込受付は終了しております。
問合先 俳句集団itak 電話 011(351)1879

JR四国 観光列車で巡る四福の物語
 夏清の章 ツアー内 夏井いつき句会ライブ
7月21日(土)13時〜
松山から八幡浜の電車内(愛媛県)
 申込受付は終了しております。
問合先 JR四国ツアー 電話 087(825)1677

第24回 全国「かまぼこ板の絵」表彰式
7月22日(日)10時30分〜12時
西予市立美術館 ギャラリーしろかわ(愛媛県)
 夏井いつきが審査員のひとりです。
問合先 ギャラリーしろかわ 電話 0894(82)1001

国際俳句交流協会総会内 夏井いつき講演会「100年俳句計画」
7月23日(月)15時〜
衆議院第一議員会館会議室(東京都)
問合先 国際俳句交流協会 電話 03(5228)9004

平成30年度 芭蕉講座
 夏井いつきの句会ライブ あなたも今日から俳人です
7月28日(土)14時〜
ハイトピア伊賀5階 多目的大研修室(三重県)
聴講料
 芭蕉翁顕彰会会員 500円
 一般 2000円
 高校生以下 500円
定員 200名(先着順)
予約開始 7月5日(木)8時30分〜(以降平日8時30分〜17時)
予約方法 (公財)芭蕉翁顕彰会へお電話でお申し込みください。(1回3名まで)
問合先 (公財)芭蕉翁顕彰会 電話 0595(21)4081


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魚のアブク



うに子 5月の運動会が増えてきました。秋の季語から初夏の季語に移動する日がくるかも……。

南亭骨太 俳号を元に戻し、丸安の仲間とも一緒に呑む場も得ました、丁度句作を始めて10年にもなります。楽しく俳句を続けてゆくことが出来そうです。


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鮎の友釣り


第240回

俳号 立志(りっし)

前回、天野姫城さんへ テツコさんと僕を引っ張ってチームを結成した頼れるアネゴです。総長、これからもよろしくお願いします!

写真 まつやま俳句でまちづくりの会に提供していただいた、今年のまる裏俳句甲子園での物です。元引きこもりで人前に出るのが超苦手だった僕も、俳句の力でこんな事ができるようになりました。(テキスト版では写真は割愛)

最近の取り組み 俳句の種蒔きと口下手克服のために、俳句をメインテーマにしたネットラジオを始めようと画策してます。この号が世に出る頃には形になってるかも? ブログなどもやっているので興味を持っていただけたら「立志 俳句」などで検索してみてくださいませ。

次回、彼方ひらくさんへ 俳句だけでなく小説も書き、同い年で句歴もほぼ同じと、共通点の多い句友さんです。こんなに気の合う友達とも俳句を始めてなければ知り合う事も無かったと思うと、本当に俳句に感謝です。ひらくさん、これからも良きライバルでいてください!


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告知



新聞を塗りつぶしたら五七五
クロヌリハイクコンテスト
作品募集

主催 愛媛新聞販売所協同組合
共催 愛媛新聞社、ウイークリーえひめリック、マルコボ.コム


 本紙を「後ろのページから開かせる」と評判の黒田マキさんによる「クロヌリハイク」。連載開始から丸5年、もっとクロヌリハイクを楽しんでいただこうとコンテストを開催します。
 入賞作品ほかを掲載した「クロヌリハイクカレンダー」を制作する予定です。
 多数の応募お待ちしております。 


募集内容

自由部門
愛媛新聞およびウイークリーえひめリックの紙面〈記事〉を使用したクロヌリハイク作品。

課題部門
課題紙面を使用したクロヌリハイク作品。


応募方法

専用の応募用紙に作品を貼り付けて、必要事項を記入し、 8月31日(金)必着で応募。
応募用紙は愛媛新聞エリアサービス(販売店)、本紙7月号(年間購読者のみ)、愛媛新聞ホームページから入手できます。
受賞作品は、10月中旬、愛媛新聞・ウィークリーえひめリック紙上及び『100年俳句計画』11月号にて発表予定。


審査員

審査委員長 黒田マキ(クロヌリハイク創案者)
審査委員  キム・チャンヒ(ハイクライフマガジン『100年俳句計画』編集長)ほか




自由部門
最優秀賞(1名)
 1万円の商品券+クロヌリハイクカレンダー
優秀賞(5名)
 5千円の商品券+クロヌリハイクカレンダー
佳作(15名)
 2千円の商品券+クロヌリハイクカレンダー

課題部門
最優秀賞(1名)
 5千円の商品券+クロヌリハイクカレンダー
優秀賞(3名)
 3千円の商品券+クロヌリハイクカレンダー


応募先

愛媛新聞販売所協同組合「クロヌリハイクコンテスト」係
〒790-0067 愛媛県松山市大手町1-12-1-1F


問い合わせ先

愛媛新聞エリアサービス石井南
電話 089-957-5613 (受付:平日 9:00 〜 17:00)


クロヌリハイクウェブサイト
https://www.ehime-np.co.jp/online/information/kuronuri_haiku/





春夏秋冬(しき)笑顔
まつやま福祉
五七五

主催
 松山市社会福祉協議会
 有限会社マルコボ.コム(ふくし句会・ハイクライフマガジン『100年俳句計画』選句)

共催
 株式会社ラコッタ 社会福祉協議会賛助会員


福祉をテーマにした
夏の五七五募集

年4回、福祉をテーマにした五七五を募集します。
人に優しくなれるような五七五をお待ちしています。


2017年度 夏の五七五 会長賞
相槌も介護の一つ花みかん  井上由美子


募集要項

応募方法
 インターネットの応募フォームにて応募してください。
 専用フォーム http://www.marukobo.com/egao/

締切
 2018年8月5日

賞品「松山トリコ」
 大賞(松山市社協会長賞) 道後温泉湯玉トートバッグ(1点)
 優秀賞 ブックカバー(3点)
 入賞 紙の湯カードケース(4点)

発表
 ハイクライフマガジン『100年俳句計画』9月号ほか

問い合わせ
 TEL 089-921-2111





AIのMIRAI、俳句の未来
俳句対局 in 北海道大学

7月13日(金)13:30〜17:00(終了予定)
北海道大学 学術交流会館 講堂

 今年2月、NHK総合「超絶 凄ワザ!」で、人間とAIが俳句をテーマに対決を行いましたが、このたび、AI一茶君を開発した北海道大学開発チームと、人類代表の1枠として出場した松山ドリームチームが、札幌の地で再び対決します。
今回の対決は「俳句対局 −しりとり対決−」。
 本イベントは、俳句対決のみならず、人工知能研究の第一人者であるはこだて未来大学 松原仁教授の基調講演をはじめ、NHK 仁木島ディレクター、俳人大塚凱さん他の講演もあります。聴講無料です。

会場
 北海道大学 学術交流会館 講堂(306席)
 北海道札幌市北区北8条西5丁目(JR「札幌駅」下車、徒歩7分)

入場料
 無料

参加方法
 下記URLから事前登録をお願いいたします。

北海道大学 調和系工学研究室のWEBページ内 http://harmo-lab.jp/?page_id=1959 にて、メールアドレス、お名前、ご所属、等を記載の上、登録をお願いいたします。

主催
 SAPPORO AI LAB、100年俳句計画(マルコボ.コム)、日本OR学会北海道支部

企画運営
 100年俳句計画(マルコボ.コム)、北海道大学大学院情報科学研究科 調和系工学研究室

企画協力
 俳句集団【itak】

お問い合わせ先
 有限会社マルコボ.コム
 〒790-0022 愛媛県松山市永代町16-1 tel:089-906-0694 fax:089-906-0695

メールでのお問い合わせ先
 E-mail: info.ai.haiku@gmail.com






にぎたつ連歌会 &100年俳句計画合同連歌体験会開催!

簡単に連歌のレクチャーを受け連歌を体験します。

日時
 7月22日(日)13時より
場所
 松山市男女共同参画推進センター(コムズ)
 愛媛県松山市三番町6丁目4番地20

参加費
 無料

問合せ先
 100年俳句計画編集室(担当 キム)





出場者募集
俳句対局 龍淵王決定戦

主催
 マルコボ.コム
 100年俳句計画編集室
共催
 松山市

8月5日(日)13時30分〜
会場
 坂の上の雲ミュージアム 2階ホール
 愛媛県松山市一番町三丁目20番地
   
出場・観覧ともに無料。
出場者募集中。なお希望者多数の場合は先着順となります。ご了承ください。
問合せ・申込みはマルコボ.コム
 電話 089(906)0694

本大会よりルールが変わります!
 前の句から頂く文字を「漢字、または、自立語」としておりましたが、複合語の判断の難しさや同じ音の言葉でも使い方によって「助動詞」や「助詞」となる単語があることから、本大会より「漢字、または、連続する仮名3文字以上」に改めます。

「俳句対局」作句ルール(改定版)
1 使用する季語は当季に限らない。(傍題可)
2 前の句から頂くのは、漢字、または、連続する仮名3文字以上。
3 前の句の表記を変えるのは、不可。
4 前の句の季語、および季語の一部を季語として頂くのは、不可。
5 上記の作句ルールから外れた句を作ってしまった場合、逸脱の程度(左記)により0.5〜3点の減点が科される。
6 全ての作句を終えた時点で残り時間による減点を行う。(「時間点」参照)
7 残り時間が0になった場合、それまでの得点に関わらず負けとなる。
8 歳時記・電子辞書の持ち込みは、可。
9 事前のメモなどの持ち込みは、不可。

減点項目一覧(改定版)
減点0.5 :前句の表記を変えて頂いている。
減点0.5 前句の季語もしくは季語の一部を、季語もしくは季語の一部として頂いているが、それとは別に、ルールに沿って前句から頂いている漢字または連続する仮名3文字以上がある。
減点1 前句の季語もしくは季語の一部を、季語もしくは季語の一部として頂いており、かつそれ以外の漢字または連続する仮名3文字以上を前句からいただいていない。
減点3 前句から漢字又は連続する仮名3文字以上を頂いていない。
*複数の減点項目に該当する場合は、最も大きい項目一つのみを適用する。ただし「時間による減点」は別途課される。





誰もが無料で参加できるインターネット句会

「百年百花」や「100年の旗手」など、本誌に作品集を連載される「俳句を増産したい方」も交え、毎週5句出しで4週間行う「本気モード全開」の句会です。もちろん一般参加も可能です。

次回は7月12日(木)一般募集開始!

詳しくはブログ「マルコボ通信」まで
http://info.marukobo.com/





俳句新聞いつき組

夏井いつきとともに俳句を楽しみ学ぶ季刊新聞
参加登録料 1000円(税込) 初回のみ
年間購読料 3500円(税込) 年4回発行
年1回、夏井いつきの句集の付録があります。

お申し込み、問合せは、マルコボ.コムまで
電話 089-906-0694
E-mail kumi@marukobo.com





第八回 百年俳句賞

主催 マルコボ.コム
共催 朝日新聞社(予定)


既作新作を問わず50句の作品集を募集
締切は8月31日!

 百年俳句賞は、「百年後の未来に残したい作品を、私たち自らが作り、自らが選ぶ」というコンセプトで毎年開催しております。
 8回目を迎える今回より、今まで以上にオープンな俳句賞として新たなスタートを切ります。多数の応募お待ちしております。


募集要項

応募資格
 15才以上(高校生以上)の方なら、本誌購読の有無に関係なく、どなたでも応募できます。

応募方法
(1)Eメールでの応募の場合
  応募用のエクセルファイルに必要事項を全て入力し、Eメールの添付ファイルにして、応募して下さい。
  応募用ファイルのダウンロード先 http://50ku.marukobo.com/
(2)郵送の場合
  B4判四百字詰め原稿用紙に50句とその表題、俳号、本名、年齢、住所、電話番号を必ず明記して応募して下さい。

スケジュール 
(1)9月中旬より特設サイトに応募作品を発表
  作者名を含め全句を発表します。規定を満たしてない作品など応募作品全てを発表するとは限りません。
(2)10月、百年俳句賞選考会員(選抜)により予選審査
  予選審査にて最優秀賞候補作品を決定します。最優秀賞候補作品は、本誌11月号にて発表予定。
(3)11月、百年俳句賞選考会員により本選審査
(4)12月1日、百年俳句賞表彰式にて最優秀賞を発表

応募期間
 2018年7月3日(火)〜2018年8月31日(金)必着


 賞状および応募作品による句集20冊
 賞品句集は縦横135o、36ページとなります。句集は本誌付録などとして配布します。

発表
 本誌2019年1月号誌上(予定)

送り先
 〒790-0022 愛媛県松山市永代町16-1
 有限会社マルコボ.コム
 月刊俳句マガジン『100年俳句計画』

 編集室Eメール 50ku@marukobo.com


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編集後記


キム チャンヒ

 裏表紙の「百年俳句賞」の告知を見て驚いた方も多いと思う。
 まず、応募俳句数が81句から50句に減ったこと。作品集としてのチャレンジの幅が広がるのでは無いかと思ってのことだ。
 次に審査方法の変更について。今回から応募作品をウェブ上に開示することにした。作品について広く議論が交わせる環境を整えた上で、百年俳句賞選考会員が審査できればと思っている。
 最後に大幅なスケジュールの見直しについて。毎年花見の時期に表彰式を行っていたのだが、今回からは大忘年会の場で行うことにした。しかも、最優秀賞は初めてその場で発表される。そして本賞の決定が一年の締めくくりとして大いに盛り上がることを期待している。
 かつていつき組長が本賞について「アカデミー賞のような賞を目指す」と仰っていた。それを一歩現実に近づける計画だと思って頂けると嬉しい。
 それを実現するには皆さんの応募が不可欠。今月号の特集は、改めて俳句の並べ方入門。応募される方の参考になれば嬉しい。
 ということで新しい百年俳句賞への多数の応募をお待ちしています。 


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次号予告


249号8月1日発行予定

AIのMIRAI、俳句の未来 俳句対局 in 北海道大学



お得で便利なマルコボ.コム直販定期購読! 巻末の案内をご覧ください
お申し込みの方へ、毎月末頃に最新号を送料無料でお届けいたします!
(住所変更の際は必ず編集室までご連絡ください)

『HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画』は以下の書店でもお買い求め頂けます。

愛媛県
 明屋書店(一部店舗のみ)
 ゆらり内海(愛南町)
 原田書房(今治市)
 子規記念博物館(松山市)
 紀伊國屋書店松山店
 ジュンク堂書店松山店


HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画
2018年7月号(No.248)

2018年7月1日発行

編 集 水谷雅子
    有谷まほろ
    松本昌子
    山澤香奈

編集長 キム チャンヒ

発行人 三瀬明子