100年俳句計画 2018年6月号(No.247)


100年俳句計画 2018年6月号(No.247)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。






目次


巻頭リレーエッセイ
谷さやん

特集1
雅に詠もう! 甦る中世の連歌
講座編

にぎたつ連歌会代表 宮武純一


特集2
第七回 百年俳句賞
優秀賞作品(下)


第七回百年俳句賞 優秀賞「水の花」
此花 悠

第七回百年俳句賞 優秀賞「黄色」
片野瑞木

第七回百年俳句賞 優秀賞「点景」
野風


好評連載


作品

百年百花
 中村阿昼/鈴木牛後/ふづき/津田美音

新 100年の旗手
 石川焦点/久野はすみ

新 100年への軌跡
 俳句 樫本由貴/若林哲哉
 評  樫の木/都築まとむ


読み物

美術館吟行/若狹昭宏

Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳 朗善)

JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭

ラクゴキゴ。/らくさぶろう

mhm通信/若狹昭宏

近代俳句史超入門/青木亮人

鑑(み)るという冒険/猫正宗

句集の本棚/岡田一実

クロヌリハイク/黒田マキ


読者のページ

100年投句計画
 選者三名による雑詠俳句計画/桜井教人、阪西敦子、関悦史
 自由律俳句計画/きむらけんじ
 詰め俳句計画/マイマイ
 100年投句計画 投句方法

短歌の窓/渡部光一郎

百人百様E-haiku/菅紀子

100年公募計画

疑似俳句対局/美杉しげり

THE BEATLES 213 PROJECT/夜市

100年俳句計画 掲示板

魚のアブク

鮎の友釣り



告知

編集後記

次号予告





巻頭リレーエッセイ



捻挫のあとさき
谷さやん

 捻挫の後遺症が、思いのほか長引いている。
 あれは、去年の暮れ、大塚桃ライスの掛軸展を見に行こうと、県立美術館を目指し、城山公園の中をスタコラ歩いていたときだ。
 仕事が終わって、閉館までに時間がなかったので、気も急いていたのだろう。ひねるのは、ときどきやらかすが、この時のは尋常でなかった。右足裏が、ほとんど左へ真横を向いた、すなわちくるぶしが地面についていた、と思う。行き交う人たちをちらちら見やりながら、必死で体制を立て直した。
 あれから、もう五ヶ月。句友渡辺瀑さんに、新緑の山に連れてってもらう目論見は敗れた。
 が、捻挫はしても、本はできた。俳句とエッセー『空にねる』(創風社出版 1400円+税)を上梓。第一句集以降2016年までの十年間の俳句とエッセーを収録した。どんなもんか読んでいただけると、うれしい。


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雅に詠もう! 甦る中世の連歌


講座編

にぎたつ連歌会代表 宮武純一


 瀬戸内しまなみ海道の大三島に鎮座する大山祇神社は、重要文化財(含:国宝)に指定されている甲冑など我が国武具類の八割が収蔵されていることでつとに有名である。一方、室町時代の文安二年(一四四五年)に巻かれた「遅さくら猶木高て葉も青し」を発句とする夢想百韻連歌から、江戸初期までの二一五年間に奉納された二七四帖にも及ぶ連歌懐紙が丸ごと重要文化財として保存されていることはあまり知られていないが、中世の類稀れなる文学遺産に違いない。
 宝物館にそっと佇むと、「こより」で束ねられた古い懐紙からは墨香がほのかに漂い、連歌座を囲む武家や僧侶に社家そして一般庶民たち連衆(連歌の詠み手)の息遣いが聞こえてきそうである。

一、連歌とは何か
 連歌は中世から近世にかけて多くの階層の人々にとって人気の文芸であり、当時は全国津々浦々で興行されていた。若し中世という時代に連歌なかりせば、我が国の文学史は無味なものとなったであろうし、大袈裟に言えば茶道も華道も香道もその寄合性は少し異質なものとして展開したかも知れない。
 もともと連歌は雅な遊び心に根ざした娯楽性の高い文芸であると同時に、戦勝 安産 病気平癒 旅中安全祈願や故人の追悼等を目的として、また国土安寧 万民和楽を祈る使命を持ちつつ、神仏をお慰めする法楽の精神性を宿し、連衆によって奉納されもした。
 現在まで四百年以上の長きにわたり脈々と連歌奉納を続けている福岡県行橋市の須佐神社連歌宗匠であられた故高辻安親宮司は、「連歌は産土神への最高の幣である」との言葉を遺しておられる。
 万葉集や和歌を源流として鎌倉中期には形を成した連歌は、数人で上の句(五 七 五)と下の句(七 七)を交互に且つ、連続的に詠み連ねたことから「連ね歌(連歌)」と呼ばれた。その句数は、主として「百韻(百句)」を一単位としてきたが、現代においては短縮化された形の「世吉(四十四句)」を巻くことが多い。連歌実作の具体的な付合いや妙味は割愛するが、出来上がった連歌一巻の中には森羅万象 花鳥風月が詠み込まれるのが良しとされている。

二、中世連歌の残滓
 ところで我々が連歌、連歌と言って復活を目指しているものは、和歌で使われていた大和言葉、歌語 雅語を基調としながら、唱和的に詠み込む「純正連歌」と呼ばれるものである。
 他方、室町中期以降、滑稽 風刺等極めて俗人的要素を詠んだ連歌、すなわち「俳諧之連歌」の隆盛により、連歌文芸は「純正」と「俳諧」に複線化して長く詠み継がれることとなったが、やがて「純正連歌」は「俳諧」に席巻され衰退の一途を辿り、様々な要因を抱えながら近代に入って全国あまねく廃れ果ててしまい、人々の頭からも忘れ去られていった。連歌の発句は、今や狭義の「俳諧」を経由して現代「俳句」となり、連歌の形態は主に「連句」といわれる文芸域に「連歌の残滓」を垣間見ることができる。

三、連歌復活の兆し
 最近は人様に「連歌」と言っても「煉瓦?」と返されることが少なくなったと感じる。現在、古河 武蔵野 三重 京都 大阪平野 山口 行橋 大宰府 八代や、ここ松山(にぎたつ)等で継続的に連歌会が開かれるようになったことと関係があるのかも知れない。
 とはいえ誤解を恐れず模型的に申せば、全国の俳句愛好者数十万人、連句愛好者数千人に対して、連歌座に着座せし経験ある者はまだ数百人程度といったスケール感覚の中にいる。こんな小さな塊ではあるが、平成の御代に復活の兆しを見せてきたのは、
1.昭和五十六年、福岡県行橋市須佐神社での奉納連歌シンポジウムが火付け役となって以降
2.各地の連歌興行(実作)に対して、連歌研究者や連歌先達による積極的な指導 啓蒙が継続され
3.俳句や連句とは些か趣を異にする、古式な「純正 俳諧之連歌」への関心が高まってきたこと
などが伴ってのことかと愚考している。

四、連歌会への誘い
 連歌会における連衆は、ほぼ終日「座」を共にしながら往昔の式目(ルール)や聞き慣れない大和言葉に苛まれつつも、愉楽と苦患を行き来する間に不思議なことながら、いつしか心地よい快感と共感に浸れる。連歌が巻き挙がると自然と座は拍手に包まれ、連歌一巻は連衆全員の共有物となるのである。我々はこうした連歌会において、せめて一句でも懐紙に名を留めんがため、全国でもユニークな月次の「お稽古塾」で研鑽を続けている。
 文学の里である伊予の地に連歌の輪を広げながら俳句 連句 連歌が共存し、双方向に交遊しあえる環境が出来れば、こんなに素晴らしいことはない。作句の経験の有無を問わず、是非とも塾を覗いて戴きたいものである。


宮武純一
 1947年、松山市生れ。1972年、日本長期信用銀行入行。2010年、松山南高校同期生を中心に、にぎたつ連歌会を興し、現在「お稽古塾」や「奉納連歌会」等を主宰している。



にぎたつ連歌会&100年俳句計画合同連歌体験会開催!

日時
 7月22日(日) 13時より

場所
 松山市男女共同参画推進センター(コムズ)
 愛媛県松山市三番町6丁目4番地20

参加費
 無料

問合せ先
 100年俳句計画編集室(担当 キム)


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第七回 百年俳句賞


優秀賞作品(下)

先月号に引き続き、第七回百年俳句賞優秀賞作品を選考会員のコメント(一部抜粋)と共にご紹介します。


水の花
此花 悠

  「乳臭く遍く」「ハナミズキ」のリズム、「星は研磨」「チェスの駒」「鎌鼬」「木枯しの夢」の意外性、「もの食う音」「彼岸花」「陶器市」の鋭さ、「露を鳴らさば」「総身の痛点」の面白さが良かった。

 一旦作者の体内に浸透させ、ひとつひとつ粗目、微細目の濾過器に点滴し、じっくり滲み出た季語をそれに応じた言葉に絡ませ皿に乗せた感じ。その言葉が吟味され時にストレートに、時にずらせた味付けで、油っこく腹が膨れたころに箸休めがあり、和食の後に洋食があり、かと言ってバラバラかと思えば統一感があり、きちんと筋が通っている。
 一句目は世間でパターン化された作りの句ではあるが「水のよな」で軽く裏切られる。全体を題であるところの「水」がテーマとなって流れており、程よい湿りが心地よい。そして「枯」で句群を締めくくる。俳句の勉強をするにあたり、この句群はいろいろな様式が並べられており、良い意味で本当に参考になる。

 絢爛と言ってよい作風の句が多く、堪能させてもらった。「星」の文字が頻出するが、またかという感じがなく、それぞれの句の中で息づき、全体を通しても輝きに通ずる。ごくごく普通の生活句もまた、なにかレトロなフィルターがかかったような感覚で読めてしまうような陶酔させる句群だった。

 「水の花」は現代と古代、日常と虚の世界を自在に行き来する作品。また、色彩感が豊かである。

 全体を通して光を表すのが巧みな作家であると思う。水のありようの中にもその光が生きている。繊細な描写と取り合わせの妙。美しく詩的でありながらもどっしりとした実感の強い句群に惹かれた。

 類想のない、作者ならではの特異な感性が煌めく句が多く、またバラエティーに富んで飽きさせない。繊細であったり、大胆な把握であったりと緩急もうまい。
 下五が緩い句が数句あるものの、粒のそろった句が揃っている。


黄色
片野瑞木

 鬱期で始まる作品に驚くが最後の句で納得。暗さの中にも希望の溢れる作品となっている。
 「たんぽぽは」の句はとても好きな句。日本中の根暗な人への応援歌かとも思えた。「アスファルトの」の句は暗さの中にも底抜けな明るさが効いている。この他にも各所に人の気づかない明るさがある。

 辛夷に始まり、辛夷に終わる構成に惹かれた。題材に身近な植物や小動物が多く登場し、それらを愛し心豊かに生きる作者の生きる姿勢が見える。

 作者が一人で遊びすぎている感じもしないではないが、作者が遊ばないと読者も楽しくない。しかめっ面を連想させる句ばかりを見せられたら、いくら世間で高名な俳人でも思わず引いてしまう。しかし遊び過ぎても、もっともっと残念になる。ぎりぎりが難しい。
 この句群にはカタカナが多い。カタカナでないほうが生きるはずの句もあると感じる。が、作者の対象に対する好奇心と愛がまっすぐで、読み進むうちにニンマリにんまりしてくるのを抑えられない。なによりも生活感に圧倒された。

 表題「黄色」は句集全体から見ると表題としては弱いのではと思う。また、いくつかの季語のカタカナ表記は意図が成功しているのか、季語の力を弱めるのでは、と思う。名詞止の句が五十句近くと多いのが気になる。
 いろいろマイナスな事を言ってきたが良い句 好きな句も多い。句の世界に共感しつつ、クスリと笑ってしまう。この作者の作品をもっと読みたくなった。

 日々の生活を大らかに楽しみながら、自由自在に季語と遊んでいるような作品。ユニークな発想の句が多く、飽きることなく一気に読むことができた。少し荒削りな表現がこの作品の魅力でもあり、一抹の課題でもあるように感じた。


点景
野風

 丁寧に四季の光景を詠んでいるところに好感が持てる。全体に作者自身に沿った生活観ではなくすこし距離を置いた立ち位置で光景を描いて季語に丁寧に寄り添っていると思う。

 物語の一場面一場面を想像させてくれる句が多く、読み飽きない。その点では、81句としてではなく、いくつかの句群に分かれている作品に向いているかも……。

 読んでいて読者にあまり負担をかけずに楽しませてくれる。身近な生活の切り取りから、大きな世界観まで句に幅があるのが魅力。テーマに押しつけ感がなく、読み手それぞれが楽しめる。

 風景が目に浮かぶ句が多く、読んでいて面白かった。
 ただ、途中パンの句が並ぶところがあり、そこが連作としてはもったいないと思った。句が悪いわけではなく、題材が被ってしまい、つい比較してしまう。


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第七回百年俳句賞 優秀賞

水の花


此花 悠

蛇穴を出て水のよな目蓋欲し
金色にほつるる初蝶の飛跡
貝寄風と記す龍涎香の欠片
日輪の方より来たり初燕
沈丁や水に記憶のやうな皺
鶯の遠音銀器の曇り初む
蛙らに水の花咲く山雨かな
日の原に群れて淋しき春鶫
花満ちて今日は鳴りたくないピアノ
花筏飾り羽めく魚の水脈
副流煙の時に甘やか花疲れ
つちふるや大学通り洋書店
永き日のプラネタリウム症候群
紫はななイコンの隠し場所秘密
朧夜を来て玄関の湖底めき
夜汽車てふ鉄のヴィヨロン春の夜叉
芝ざくら水の上にも咲きたくて
花虻やいつしか疎遠従姉妹どち
春愁よりゆふむらさきを抽出す
金平糖ばらまく如し遠足児
乳臭く遍くはつなつの原野
赤ハナミズキ白ハナミズキ金魚病む
ラッシュアワー天王星に懸る虹
大気圏膨らましゐる薔薇の呼気
金魚水葬手折りて流す野の花も
紫陽花をほぐさば水の屑ばかり
百万の蚕蛾飛び立つ暗夜かな
ほととぎす星は研磨に出しました
麦熟れ星泛べオカピの眸の濡るる
孕みたる蝶の体温南風吹く
蜘蛛奢る此処は鏡の無い世界
時計草見入ればまなこむづ痒し
夜盗虫もの喰ふ音の満る星
夜濯や人語を解す猫と星
日雷ピアノは沈黙の大器
蚊喰鳥聴くや金星硫酸雨
三日月の遠心力や合歓の花
プールサイド最後の乳歯ぐらぐらす
あの火の見櫓は夕焼け観測所
白玉を光らせてゐる無神論
瞬きを知らぬ桔梗や山雨急
とんぼ等は寄るとさはるとメロスのこと
複眼のひとつひとつの秋の空
きはやかに飢ゑてゐるなり彼岸花
思考てふ微弱電流黒葡萄
秋風は月の裏側より戦ぐ
ただ中に居てただ遠し天の川
ほとほとと厄日の鬼の叩く夜は
押し花のやうに蟷螂轢かれけり
流星雨螺旋階段みな未完
黄鶺鴒映して水の虚心かな
誰れ彼れのチェスの駒めく秋の苑
大菊や肖像権のありさうな
太陽光に微かな油分菊日和
万年青の実ピシリと家のどこぞ鳴る
居続けのセンセイ露地に焼く秋刀魚
いにしへにいにしへありき雁のこゑ
どの露を鳴らさばかの山のうごく
ビーカーへ試薬一滴夜寒咲く
見晴るかす潮の回廊神の旅
雑踏や今日二の酉と誰か言ふ
セールスマンはためき過ぐも師走かな
手から手へ硬貨の冷えも陶器市
おでん屋台犬の尾のふり千切れさう
寒夜食堂少年雑誌の捲り癖
北風真つ向総身の痛点輝かせ
ぬきん出て年の瀬を行くプラカード
ぢごゑ混沌聖夜の街の白鸚鵡
荒巻の仰天の貌並びけり
注連飾る磐くろぐろと垂水跡
白餅のひかりを結ぶたなごころ
國恋へば湯の混み合へる大晦日
初詣ぐんしゆうゆるやかにうごく
門松や娘二十歳の帯高し
美しき鰭ひらめかせ歌留多取る
四日には発つ子の前へ将棋盤
風花に立つや風花とは知らず
吹きに吹く野をきらきらと鎌鼬
水槽の魚木枯しの夢を見る
冬眠の多産黒点活動期
何処までが私何処からが枯野


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第七回百年俳句賞 優秀賞

黄色


片野瑞木

海未だ鬱期を抜けず花辛夷
駒返る草や何処かにドードー鳥
威嚇するように椿のみっしりと
たんぽぽはネクラを隠すため黄色
野うさぎの食べ残した木の芽が育つ
春の野に羽毛散らばっている現場
囀を押しこんでトランクに鍵
音高くブレーキかける汽車のどか
終点の先に線路やいぬふぐり
花びらの散ったチューリップを愛でる
ふらここや双子の姉に絆創膏
しゃぼん玉日和なれども喧嘩買う
ランドセルから金曜日の土筆
花冷えの頭皮ひたひたパーマ液
よせてはかえしよせてはかえす日永かな
猫の子のどっちもという選び方
ハルノノゲシの絮にまみれたまま帰る
春愁を緊急速報がビンタ
伸びすぎたギシギシ大地なる大地
卯の花腐し目薬のフタ失せたまま
落ちてきて這いだしそうな栗の花
臆病を今日の青葉が責めたてる
テントウムシはテントウムシに出会えたか
光らない時を蛍のうっとりと
苔むしちゃならぬ所に苔の花
田植機は二拍子風は六拍子
でで虫が指でつぶせるサイズ
草刈れば草は断末魔の匂い
あっちにもこっちにも尺取虫に似た小枝
木漏れ日やイソヒヨドリの卵は青
アスファルトの蛇にクラクション
続けざまに十三回カッコウと鳴いて沈黙
えら呼吸して金魚に見とれていた
破廉恥な色が美味しいかき氷
かろうじて噴水見えぬ木のベンチ
見舞いとはゆっくり食べる水羊羹
夏蝶の影が夏蝶を煽る
重そうに飛ぶ玉虫をわしづかみ
三億年後ミミズに進化するための今
八月の小鍋を満たす朝の水
早寝早起き朝顔がいつまでも咲く
右左右見て秋へ駆け出す子
知恵の輪を鳴らす遊びや草の花
症例のひとつコスモス避けること
せわしなく追跡妄想ある蜻蛉
今ひとつ足りぬ案山子の大胸筋
天高し最大積載量二トン
不等辺三角形なる鵙の声
除草剤の地べたに月の光
朝霧を来て珈琲はブラックで
隠すならこの芒野のあの辺り
椿の実投げても届かない相手
千歳飴の鶴が怖いと泣く子かな
シンメトリーな仏の乳房水の秋
十六夜のセグロコシビロダンゴムシ
真っ白なキノコに邪心のない毒
朝寒の山鳩一羽二羽一羽
たて笛のドシラソファミレ冬に入る
短日の飽きられやすき万華鏡
累々と冬服脱ぎ捨てられ雲梯
薄荷だけ残るドロップ冬夕焼
セーターに木端微塵のウエハース
着ぶくれて高く掲げる落とし物
冬晴のトラ亜種ベンガルドラ二頭
憂国のホットココアの溶け残る
十二月八日ここからは濡れた砂
風掴む形に夜の寒林は
故郷の海にも霙降りしきる
綿虫の端数がついて来る往路
鯛焼の尻尾が覚めてゆく復路
劇薬のような男と日向ぼこ
冬ざれのらせん階段とは無邪気
大根を洗えば昼の月の色
細雪喪服の黒は清き黒
見上げれば雪が連れ来る空の影
頬被して利き耳を休ませる
深爪の小指しくしく冬木の芽
魚の目の育つ建国記念の日
春の匂やスワンボートの十三艘
風光る光るトンビの急降下
辛夷開くや渾身の静けさで


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第七回百年俳句賞 優秀賞

点景


野風

初蝶へ微か光の乗る重さ
足掬ふリフト足下の春浅し
をらぬ亀の話などして梅日和
春一番襤褸の如く夕鴉
救急車避け料峭の左側
旧館に使はぬ暖炉君子蘭
乳母車の双子にひとつ春の月
光悦の美しき墨継ぎ初燕
春の潮出自聴きたき石拾ふ
赴任地は五輪の現場初桜
流線の空をささらぐつばくらめ
寒食や澄んで白磁のおそろしき
田鼠化すや に空の無限大
快晴の夜の青鈍や花の冷
養花天倍に膨るるパンの種
まぎれこむ鞄に月の吐息飛花
雨水溝埋みて花のかろがろし
ボサノヴァのゆるくミモザのゆるる雨
花は葉にフランスパンにある塩味
耳澄まし薔薇かぐヨハンシュトラウス
小満や風の卓布の貝尽し
芳ばしく焼けて清和のパンに耳
浜ひるがほ届く一握の潮騒
心臓へ鳥影降つてくる薄暑
モナリザに髭の生えたる芒種かな
懐石を煮梅にをはる鄙の風
つくばひの昏きががんぼ夜へ解くる
曇天や砂の女の如く夏至
首ほそし非業の妃めくガーベラは
ぢぢりぢり太陽系をゆく日傘
いるか宙へ館を涼しく夜の歓声
少年のバケツに虹を喰うたベラ
廃校に錆びつく遊具日雷
雷へ北進匍匐めく車列
着陸の沖を水母の無重力
灼くる海ナウマン象の駆くる原
天牛の客死す今朝の外階段
夕闇を屠り夕顔の純白
はじまりはをはるはじまり法師
初秋や阿修羅は皓歯かと思ふ
丘陵のごとき横臥へ処暑の風
荻戦ぐ風にさからふ淋しん坊
野分くるか闇を木槿のゆるる白
火難のがるる鐘や色なき風の端に
うまおひ来肩へ足湯の昼更けて
ブロンズの額ひろやか秋澄めり
竜笛の響む桟敷や月上げて
月今宵神事のごとく出汁を引く
凛凛と悟空のれそな月見豆
長老へ秋果旗日の動物園
水の秋馬の埴輪になきかんばせ
八千草を活ける六畳ひろらかに
先史期に貝の釣鉤秋気澄む
塩で食ふよさこい戻り鰹かな
葡萄酒醸す数多蔓めく古代文字
秋分の入り日巨石をまつぷたつ
敗荷や村吏の如く石灯籠
なんぴとの乗らん波の野きつりふね
風早を白き点景秋遍路
供されよ剥きし林檎の錆びぬまに
文机に団栗君の来た証し
旅鳥の霧の鉄塔越ゆる崎
末枯野シリウス啼いたやうな碧
溢るるは金星冬の鳴りはじむ
連山の水の手応へ大根引く
ささくれを沈め柚子湯へ呼気吸気
んのつくものの善きらし冬至粥
ほとけのざ口伝遠野につまびらか
歌がるた吾に脈脈と倭の血
宮中に百余の祭儀はや三日
水はじく御形すこしく獣めく
風紋や風と折り合ふ冬の鳥
チャイに射す冬日空耳のコーラン
ポトフ冷め古りし森の香セルリの香
止まり木へ漂着ホットウィスキー
金糸魚へワインたふたふマルセイユ
ごぼう削ぐ風に研がれし冬木見て
夜をしんしん熱燗もつと話さうか
ポロックの混沌霙ささる音
水は低きへ鶏初めて交む
城壁の古りてふくらむ冬の雲


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美術館吟行


第43回

愛媛県美術館 開館20周年記念
「没後40年 熊谷守一生きるよろこび」展
吟行会

文 若狹昭宏

取材協力 熊谷守一展実行委員会(愛媛県、愛媛新聞社)、日本経済新聞社
6月17日(日)まで開催中。


 吟行を開始する際、今回解説をして頂く学芸員さんから後ろを向くよう促された先―美術館中央の中庭に目を向けると数本の整った木々が青々とした葉をつけている。各々がそれを目に焼き付けたところで、「この葉の緑も実は一人ひとり見えている色が違っていて、全く同じ色で見えるということはないんです。熊谷守一という人は先ずそういった色のことに強い関心がありました」と説明があった。


闇の守一 1900〜10年代

 光と影の問題に関心を抱き、列車に飛び込んで亡くなった女性を描いた〈轢死〉、〈蝋燭〉、いずれも暗闇で対象がどのように見えるかというテーマを扱っている。今では経年劣化した絵具の油脂分が絵を暗色化させているが、暗がりに目が馴染んでいくように、少しずつ深い闇を知覚させる。

底なしの僕の闇より浮いてこい  恋衣

「蝋燭」
暗黙の了解を得し半夏雨  若狹昭宏


守一を探す守一 1920〜50年代

 荒いタッチの風景画や裸婦をよく描き、この頃から「守一様式」と呼ばれる赤い輪郭線が姿を現し始める。守一は女性の裸体も生涯描き続けていたが「景色をみてゐるでせう。そうすると、それが裸体になって見えるのです。」と言っており、実際に風景画と裸婦画を並べると全体に同じ輪郭線が浮かび上がることから、それらを区別していなかったことが分かる。

「谷ヶ岳」
山笑う裸婦横たわるようにある  マーペー

「夜の裸」
春の闇見つめ命の彩容  猫正宗

 また、私生活で五人の子をもうけるも、次男の陽、三女の茜は早世し、戦後まもなく長女の萬も21歳で亡くなる。〈陽の死んだ日〉、〈萬の像〉などは有名だが、横に並ぶ〈ヤキバノカエリ〉、〈たまご〉なども合わせて、命や家族を象徴した作品群となっていると見ることができる。

「ヤキバノカエリ」
子の骨を抱いて西日の家路かな  日暮屋

「たまご」
転がせば集まる卵夕端居  恋衣
僕達は肩寄せあって染卵  猫正宗

 守一も他の日本人作家と同じように、海外の作家に目を向けており、ジョルジュ ルオーは絵の具を重ねて塗り汚すので嫌い、パブロ ピカソが一番わかりやすいと述べている。魚と人、異なるモチーフを描いているにも関わらず、共通の構造を持っている描き方などはこの時期に海外から取り入れた。

「水仙」
コップにプリズム水仙の茎に赤  日暮屋

「ひまわり」
筆跡は風ひまわりのもう野生  チャンヒ

「ハルシヤ菊」
太陽はいくつもあるさハルシャ菊  チャンヒ
ゆるゆると蝸牛は菊の根に吸わる  ひかる

 守一は同じ図柄の作品が複数ある。「同じものを何度も描くうちよいものが生まれる」と語っていたようで、トレーシングペーパーで転写したものを一枚一枚変化を、新しい挑戦を交えて描いていた。


守一になった守一 1950〜70年代

 70歳を経て、赤い輪郭線の作風と、同じ下図に基づき同図柄の作品を複数作成する手法ができあがる。身体を壊して以後、自宅の庭の動植物を主題とし、人間の視覚でそれらが生き生きと動いて感じられるよう、色や形に高度な工夫を凝らした。
 スーパースローカメラで実際に捉えた雨滴はまさに描かれた雨滴と同じであったという。

「雨滴」
六月の雨滴にもある反抗期  日暮屋
一人静と雨滴の尽きるまで  若狹昭宏

 他のモチーフと比較した際、人間の脳がそう捉えるように主役の蟻を大きく描いた。

「蟻」
雨ありく規則正しき蟻の足  恋衣
殿の蟻の後ずさりもしやう  若狹昭宏

「白仔猫」
白日にさらされ子猫白きこと  マーペー

 猫を多く描いているが、チラシの表を飾る「猫」は十人が見て十人がその猫の感情を怒っていると感じる。単純化された中に特徴を敏感に捉えた動きがある。

「猫」
春昼の怒りは縦に丸くなる  チャンヒ
いかづちや猫は攻撃決断す  ひかる

「朝の日輪」
春暁の真中無色にひかりもつ  マーペー
命いとおしき炎天の日輪  ひかる

 如何にリアルに描写するかではなく、捉え方、第三者からの捉えられ方を生涯研究し尽くした、俳人に共通する部分を多く持つ画家であった。


若狹昭宏
まつやま俳句でまちづくりの会会長。


「たまご」 1959年 愛知県美術館 木村定三コレクション
仏前に危うきたまご五月闇  ひかる

「ハルシヤ菊」 1954年 愛知県美術館 木村定三コレクション
淋しがる夜との対話波斯菊  恋衣

「猫」 1963年 愛知県美術館 木村定三コレクション
夏星の目でいつだって見ておるぞ  猫正宗



次回吟行会
6月30日(土
愛媛県美術館「坊っちゃん展ー祖父江慎 梅佳代 浅田政志 三沢厚彦ー」吟行会
(学芸員による解説を受けて作句します)
朝10時現地集合
参加費無料(入館料は別途)
事前に100年俳句計画編集室までお申し込み下さい。
TEL 089-906-0694


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大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠

百年百花


2018年度 第一期 第三回


聖五月
中村阿昼

ああさうだ今日から五月の空なんだ
みどりの日とか昭和の日とかうぐひすとか
にはとりがじやぶじやぶ歩く蝌蚪の池
喰はれなかつたやつが蛙になるんだね
羊毛のかたまり干され聖五月
キャンプの火おこすアメンボ煙たいか
子ども来るアメンボの水濁らせに
瀬戸内の鯛も焼くなり春の山
木の花のこぼれ酸素の多すぎる
AIの少女と話すハンモック
父さんはおたまじやくしはいやだなあ
蝌蚪の国大きな茱萸の木の下に

1966年2月生まれ。「童子」所属。
句集『でこぽん』(マルコボ.コム)。
久万高原の由良野の森に行きました。
美味そうなニワトリとかわいい子ヒツジに癒されました。


牛らしく
鈴木牛後

うららかや牛の仔は啼く牛らしく
雪解野に埋まりしものと埋めしもの
白樺の樹心のゆるぶ雪解空
外したるタイヤチェーンに冬の澱
春泥や釣りを貰つて重き尻
廃タイヤの穴を伸びゆく蕗の花
風船のまつさかさまに上りけり
蜘蛛子蜘蛛出て来て春に巣を掛ける
憲法記念日先頭の牛の荒息
囀を寝かせて運ぶ板ガラス
スポーツ新聞きつく丸めて端午の日
どこまでも地べたに抱かれたる桜

1961年生まれ、北海道在住。第1回「大人コン」(現「百年俳句賞」)最優秀賞。句集スタイル「根雪と記す」「暖色」。農繁期になりました。仕事と俳句の両立はなかなかたいへんです(みなさんそうですよね)。


ざんざ
ふづき

ぷしゅうぷしゅうと気球へ空気桜咲く
青柳へ抱かれたる子は手を伸ばす
蜂の巣を避け瓦斯ボンベ運ばるる
鎌倉や皇子の牢へふぶく花
春深し厨子のとびらの半開に
寄せ書きの真中に師の書蜂ひかる
錨下ろせば夜のデッキを若葉の香
七つ道具のひとつに首夏の枝切る刃
ネジ山の潰れて青葉雨ざんざ
原書繰る指に蜥蜴の湿りあり
夕薔薇や閉じたるパソコンに余熱
キリンに角五つ卯の花曇かな

我が家の猫は17才。Max7キロ近くあった体重も
今は半分近くになり、寝ていることが多くなった。
だが魚を焼いているとトコトコやってくる。
まだまだ大丈夫のようだ。


紐ほどく
津田美音

地球儀の海と砂漠と春塵と
靴と靴叩き三和土のかぎろえる
春燈伏せて乾かす遊山箱
富士今朝も清し憲法記念の日
靴音の遠き地下道春行けり
羅生門くぐらば夏の蝶の骸
ハンカチの旗の崩るる砂の城
若葉風万葉仮名の墨薫る
霊峰の水さやさやと田植の夜
六月を水脈ゆるやかに鎌洗う
紐ほどくごとく梅雨入の体かな
髪洗う体正しく折りたたむ

香川県さぬき市生まれ、愛媛県松山市在住。
きっかけはRNBラジオ「夏井いつきの一句一遊」への投句。
その当時の俳号はピアノフォルテ。


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読者投稿による3ヶ月連載作品集

新 100年の旗手


(2018年4月号 〜 2018年6月号 3/3回目)


笑天
石川焦点

春塵を集め仙丹練り上げる
ミサイルの量産のごと蝿生る
AIに読み解かれたる蟻の列
これやこの築地最後の初鰹
青嵐ジープに乗ってやってくる
金魚売金魚と水を売っている
陽あたりの悪しき案山子や長生きの
ラグビーのパスいそぐなよいそぐなよ
マスクして買いたき本を買いにゆく
書初に素直と書いてみて癖字

 句ゼミ所属。俳句歴2年半。滑稽俳句協会会員。俳諧味のある句を今後も詠んでいきたいと思っております。 


きらら
久野はすみ

メルカトル図法の島に夏兆す
ちぎり絵の色はちりぢり傘雨の忌
ニッキ水たがひの舌を染めゆけり
革靴とサンダル左右に別れゆく
海に向く露台のことは語られず
をととひは君にあづけし麻の服
ルピナスの園の迷子となるために
白墨で描くべし遠き雲の峰
逃げおほすきららも二十面相も
豆植うやもらとりあむといふねむり

 未来短歌会所属、「遊子」同人の歌人です。挽歌は身近な人の死を悼みますが、忌日は遠い人の生を思うのですね。良い経験をさせていただきました。



 「100年の旗手」は、年齢や俳句の経歴に関わりなく、本誌にて作品の発表が出来る場です。
 そこで、毎月10句3回の連載に挑戦する方を募集します。10月号に掲載できるタイトル付きの10句の作品を、Eメール、または郵送 FAXにて本誌編集室までお送り下さい。
 編集室にて連載者を決定し、掲載いたします。
 多数の挑戦者をお待ちしております。

募集内容
 10月号に掲載できるタイトル付きの10句

応募先  
 Eメール magazine@marukobo.com
       件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
 郵送  〒790ー0022 愛媛県松山市永代町16ー1
     有限会社マルコボ.コム「100年の旗手」応募係 
 FAX  089ー906ー0695

締切 8月15日(水)


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新 100年への軌跡


2018年度 第一期
第三回


飛行機雲
樫本由貴

鳥の巣にしばらく幹の欅かな
川なかの瓶の空気や白山吹
花曇さても碑のある川の町
揃ふ葉のなべて立ちあり花水木
ひざしはも川をうごかず藤の花
あかるみに差せる西日や花筏
文鳥の雌雄わからぬのどけさよ
みづにふち映るコップやうららかに
大学の窓どこまでも花あざみ
みづうみの花の枝届かざるところ
藤の濃き陰りより出てをのこかな
躑躅燃ゆ路の輪郭くづしつゝ
海にみづ湧きつげるとき春の雁
つと始まる飛行機雲や笑ふ山
新緑につき水切りの先生ぞ

樫本由貴(かしもと ゆき)
 一九九四年生まれ。広島県在住。「小熊座」所属。


おほきく
若林哲哉

麗かやわらべ笑ふに草と言ひ
春の団栗を頭蓋の硬さとも
はらわたをみづめぐりをる朧かな
羽あればあをぞらを欲り紫木蓮
ははそはの母は無口の蕨餅
大学やうぐひすのすぐそこにゐる
つちふるの日よ大阪が手の向かう
春うれひルーズリーフに穴一列
雨に落ち雨を留むる椿かな
弥生尽烏の首のよくまはる
オルガンは四肢を使はせ藍微塵
旅に在り白詰草の夢を見む
春暑し松ぼつくりが杭のうへ
八重桜みづのよどめば光なる
花過ぎのパンをおほきくちぎりけり

若林哲哉(わかばやし てつや)
 一九九八年生まれ。金沢大学人間社会学域人文学類在学中。
 「萌」、「奎」、「金沢大学俳句会」所属。



光と陰と
樫の木

花曇さても碑のある川の町  樫本由貴
 「花曇」のぼんやりと明るい空の下を歩めば多くの「碑」に出会う。碑は記念碑、顕彰碑、歌碑、句碑など色々あるが作者が広島県在住であることから原爆の慰霊碑かも知れない。
 「川の町」は三角州の上に広々と開けた町だろう。ゆったりと流れる水面には桜花が映る穏やかな午後である。

藤の濃き陰りより出てをのこかな  樫本由貴
 「藤の濃き陰り」の「濃き」が密に垂れ下がった藤の花のむせ返るような香を想像させる。美しい女性かと思っていたのに実は「をのこ」だったという意外性が楽しい。

はらわたをみづめぐりをる朧かな  若林哲哉
 作者は自らの体内に意識が向かっていて「はらわたをみづめぐりをる」と把握するのだが、その感覚はやがてぼんやりとして終には外界と自身との隔てがなくなってしまう。読者がそう思ってしまうのは「朧」以外がひらがな表記の効果だろう。

春うれひルーズリーフに穴一列  若林哲哉
 何でもないことに「春うれひ」を感じる作者。「ルーズリーフ」は簡単に差し替えが出来てしまうから、「穴」が欠損を「一列」が同調圧力を感じさせるから……。
 本当の理由は作者にも分からないのかも。

樫の木(かしのき)
 1965年愛媛県生まれ。大分県在住の家具職人。第5回、第11回選評大賞優秀賞、第10回選評大賞最優秀賞。


「みづ」のある場所
都築まとむ

川なかの瓶の空気や白山吹  樫本由貴
 川に沈みきれずにある瓶の中の一部に空気が入っている。この川はそう深くはなく流れも急ではなさそうだ。その川辺には白山吹が咲いている。この瓶は透明な水色だと感じた。この川のみづも空気も白山吹も清らか。

みづにふち映るコップやうららかに  樫本由貴
 コップに水を注ぐ。ふと、コップの水に縁が映っていることに気づく。これは正に春の明るい光の中での発見。こんなことでもしあわせになれるのだ。

雨に落ち雨を留むる椿かな  若林哲哉
 椿の前に佇む。雨の中佇む。どれだけそこにいたのだろう。落ちる椿、そして咲き切った椿は雨の雫を溜めて行く。椿を詠もうとして、椿と向き合って、椿と時間を共有したからこそ生まれた句。「かな」の詠嘆も効いている。

八重桜みづのよどめば光なる  若林哲哉
 「みづのよどめば光なる」の光景が美しい。「みづのよどめば」というひらがな表記が八重桜のやわらかさと似合う。みづのある場所は光の集まる場所なのだ。

都築まとむ(つづき まとむ)
 1961年愛媛県八幡浜市生まれ。第3回選評大賞優秀賞。


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳 朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.59

Hailstorm with lightning
Powerful bouncing thunder
Peaceful smiling heart

安らかに霰雷弾みをり

(直訳)
電光と共に霰
力強く弾む雷
安らかに笑む心


 My colleagues arrived for concerts and recordings ---- from Holland, Portugal, Alaska and France. What a pleasure it is to play chamber music with old friends.

 僕の仲間達がコンサートと録音の為に、オランダ、ポルトガル、アラスカ、そしてフランスから来日した。旧友達と室内楽を弾くのは、何という大きな喜びだろう!


ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文 白方雅博(俳号 蛇頭)

第87話

ムーヴ トゥ スーン
 アーネスティン アンダーソン

 「JAZZ=インストルメンタル」という偏見じみた感覚が、そのまま僕のヴォーカル コレクションの景色となっている、と今回反省。我がJAZZ句会のメンバー、南行ひかるさんが役者に続くジャズ歌手デビューを果たしたこの機会に俄かヴォーカルファンを決意。「ジャズ・ヴォーカル決定盤」(山口弘滋著 音楽の友社)をリュックサックに放り込み街を徘徊しているのである。

地の歌を空に集めて棕櫚の花  時計子

 時計子さんとマミコンさんが決めてくれたヴォーカル研究テーマ第1弾がアーネスティン アンダーソンである。マミコンさんいわく歌唱力はサラ ヴォーンやカーメン マクレエと同格。確かにその証として「決定盤」の彼女の欄に限度枠の代表作5作がズラリと並んでいた。しかし、予想どおり僕のコレクションに1つのタイトルも無く、JAZZ句会を前に始まるレコード屋巡り。その一軒目の「トマト書房」で幸運にも3枚の代表作を入手できた。

あどけなきドレッドヘアのコマドリよ  蛇頭

 早速3枚を試聴したが、どれも甲乙付け難い出来栄えなので音質とジャケット デザインでメイン&サブテーマを決めるがよかろうと、ドレッドヘアとキュートなアーネスティンの表情が印象的な「サンシャイン」をサブ。将棋なら王手飛車取り的なチェス盤上の緊張感を採用した「ムーヴ トゥ スーン」をメインとした。

香をきくごと歌をきく夏の夕  暮井戸

 今回多く詠まれた嗅覚系の代表句がこれ。サブテーマのスローバラード「タイム アフター タイム」の芳しきアーネスティンの歌唱にこの句を重ねると、ひときわ優美で凛々しい。モンティ・アレキサンダー・トリオの余韻も心地良い。

哀しさは選んでしまう百合のこと  チャンヒ

 単純に僕は「選=チェス」「哀=百合」などと図式を描いてこの句を鑑賞した。つまり、ジャケットからインスピレーションを得たジャケ句と判断したのだが、その発想の源はメインテーマのB面3曲目「ホワイ ディッド アイ チューズ ユー」だった。「わたしはなぜあなたを選んだのだろう。静かに奥ゆかしいあなたに惚れた。もしもう一度選ぶとしてもあなたを選んだでしょう」という歌詞のラヴソング。後日、そのことを作者に尋ねてみたが、既に忘れていた。多作多捨の中の生き残り句。

歌姫の溶解液にひたる夏至  マミコン

 アーネスティンの処女作「ホット カーゴ」(1956年録音)が、あまりにも鮮烈だったので以降、彼女はセールス的に低迷してしまう。1965年の英国移住を経て1971年に帰米してからも長らく引退同様の生活を送った。この状況に手を差し伸べたのがベーシストのレイ・ブラウンだった。彼は1972年、カール ジェファーソンによって設立された「コンコード レコード」に彼女を紹介する。そして1976年に復帰第1作「ハロー ライク ビフォア」の好評を得て今回のメインテーマ アルバムまで年1作のペースのレコーディングを果たした。マミコンさんは彼女の最盛期を捉え、この一番人気句を詠んだ。


Today's Turntable
『ユア ムーヴ トゥ スーン』1980年/concord
『サンシャイン』1979年/concord


「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は月曜日の21時〜22時。

次回JAZZ句会のお知らせ
6月16日(土)13時より、JAZZ BLENDにて。
テーマ ミュージシャンは北欧の歌姫のカーリン クローグです。アルバムは「ハイ・フライ」をメインとします。参加希望の方は、本誌の句会カレンダーを参照してください。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU』vol.1〜vol.4(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ。


第八十七話
文、俳句 らくさぶろう


秘伝書
 儲け話にご注意

 何かの祭りか、夜店がずらりと並んでいる中にとっても怪しげな店が一軒。
 若い兄ちゃんを呼びとめ、「あんたモテんやろ」などと失礼なことを言いつつ客を集めるのはさすがプロの技。
 今日は商売をするつもりはない、うちの蔵を探してたら本が十冊見つかった。「秘伝書」という、この本さえあったら楽に生活が出来る。たとえば「この物価高の折、ひとつき百円で食える方法」「ただで飛行機に乗って外国へ行ける方法」「若い女の子にキャーキャーいわれる方法」極めつけは「元手少なくがっぽり儲ける方法」。どや、先着10人千円で売ってやると言う。
 「モテんやろ」と言われた兄ちゃんも千円出して買って帰ってワクワクして読んでみたところ、とんでもない内容だった。
「物価高の折、ひとつき百円で食える方法」答えは次のページ……「ところてんを食え。あれは一突き百円」。「一月と一突き、えらいちがいやがな。」あとも推して知るべし。
「ただで飛行機に乗って外国へ行ける方法」答え「パイロットになれ」
「若い女の子にキャーキャーいわれる方法」答え「女子高に全裸で入って行け」
「元手少なくがっぽり儲ける方法」最後のこれだけでも本当のことを書いてくれよと兄ちゃん答えのページをめくると……
答え「この本をコピーして千円で売れ」


 まあ何ともバカバカしい、しかし笑い処の多い短編です。
 古典ではありますが、「○○する方法」と答えは現代風にいくらでもアレンジのきく噺です。
 この季節、近所の朝日八幡神社で行われる輪越し(夏越し)に行くのが子供のころの楽しみでした。
 石段(かなりキツイ)を登り、前の晩に布団に敷いて寝た紙で出来た人形と一緒におさい銭をおさめ、輪をくぐって帰る。
 これだけなら子供にとっては面白くも何ともないのですが、にぎりしめた小遣いで帰りに夜店で何を買おうか、何を食べようかという、そんなことばかり考えて石段を登っていました。
 たこが入っているかどうか怪しいたこ焼き、スーパーボールくじ、綿菓子、絶対1等の当たらなそうなおもちゃくじ……
 夜店は決して健全であってはつまらない、怪しいくらいがちょうどいい、という僕の持論にピッタリな一席であります。

儲ける気無さそな顔の夜店かな


新企画!!
 次々号から「らくさぶろうの呑む呑め呑もう句」を連載します。
 酒場や肴など、酒にまつわる兼題を出しますのでみなさんからの投句をお願いします。初回8月号の兼題は「麦酒(ビール)」です。
 秀逸に選ばれた方には「ハタダ金時のさぶ」をプレゼント!!

投句に俳号 本名 住所 電話番号を書き添えて、編集室「呑む呑め呑もう句」係までお寄せください。
 専用メール nomu@marukobo.com
 専用フォーム 
 投稿締切 6月20日


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mhm通信


第87回

文 若狹昭宏


mhm総会

 5月に入ってからmhmの総会を行いました。フレッシュな運営をしていくため会員の役職変更もありますが、今年度も若狹が引き続き会長を務めることとなりましたので、皆様よろしくお願いいたします。
 会員のことと言えば、例年少ない人数で「まる裏俳句甲子園」を含め大小10を超えるイベントを運営しておりましたが、先日から妹のり子さん、誉茂子さん、あつむら恵女さん、日暮屋さん、マーペーさん、山田ノムオーさん、はすみさんと、多くの方に入会して頂き、定例会の時には椅子が足りなくなるほど賑やかで喜ばしい状態になりました。入会してくださった方からは大体「たったこれだけの人数で大きなイベントをやっていたんですか?!」と驚かれるのですが、ようやく規模に見合った人数を確保できたのかもしれません。以前、人手不足で「まる裏俳句甲子園」が中止になる恐れもあると口にしたことがありますが、一先ず中止は無さそうですので、県外の皆様も安心して松山に帰ってきてくださいね。
 前年度の活動報告や今年度の活動計画を立てる話し合いの際、人数が増えたことで本格的に新しいイベントを企画していけるのではないかと、早速ビアガーデンや芋炊き、餅つき、地方企業への吟行会、新元号に関する会などなど話が進んでいます。中学生対象の俳句イベントをはじめ、温めている企画もありますので、その時々に期待される活動が出来るようにしていけたら幸いです。句会ライブや俳画のライブペインティング、講習会などご要望の際にはご連絡ください。今年度も「俳句でまちづくり」を盛り上げていきましょう!

 余談ですが、昨年の小豆島日帰り旅行企画中全員で合計100句詠んだところから味をしめて、総会の後の懇親会でも突然句会を開きました。運営だけでなく実作者としても力のつく会になると良いなと思っています。今回は、一人一題好きな発想で席題を出し、その中からくじ引きで選ぶという流れで詠みました。今回は「黒」と「虫偏の漢字」。

黒番を恨む一手や短夜に  ノムオー
 囲碁で後手を得意としている。短夜のもつ「明け易し」の感覚を頼り、朝方振り返ることを詠んだ。

銀蠅や雇用契約破棄さるる  登女
 銀蠅のギラギラした感じ、しぶとい感じから、きっと雇用契約を破棄されてもへっちゃらで生きていくのだろう。相性の良い取り合わせ。

蝿のいる明日は消しゴムで消せよ  キム
 「消せよ」だと高慢かもしれない。「消せる」とすれば、些細なこと、うっとおしい日常も自力で乗り越えていける感じが出せるのではないかと盛り上がった。

眼鏡率高し蛙の目借時  若狹
 メガネ句会で出せば良いのに、いや向こうはメガネ率100%か。目を借りられてもメガネが本体!

 気が向いたら今後も通信に句会のことを載せるかもしれません。求む! 面白いお題!


 mhmでは松山市内外問わず会員を募集中です。原則、毎月最終金曜日19時からマルコボ.コムにて定例会を行います。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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会話形式でわかる

近代俳句史超入門


近代俳句史超入門
第27回

文、構成 青木亮人

 大学で俳句を研究する青木先生と、その教え子で俳句甲子園の出場経験もある大学生の俳子さんが雑談を交えながらの近代俳句史超入門。


原石鼎 1 経歴

 青木先生と俳子さんが大学教室で話しています。


石鼎の身なり

青木先生(以下青) 飯田蛇笏は終わりにして、次は原石鼎の話をしましょうか。俳子さんの好きなタイプです。
俳子(以下俳) えっ、どんなところが? ワクワク。
青 社会不適合者にして神経症、パンドポンという麻薬中毒にもなった天才俳人。
俳 キャー、かっこいい……ってなりますか! いっぺんド頭をぐっと胴にへこましてヘソの穴から世間覗かしたろか! でも、「天才俳人」はいい感じね。
青 落語家みたいな啖呵がよくとっさに出ますねえ。その口の悪さを句作に活かせるといいのですが。
俳 ホホ、口が滑りましたわ。あらいけない、私のシャネルのシャツの袖口が少しほつれて……。
青 そのシャツ、ユニクロにあった柄と同じですね。
俳 (目を泳がせながら)えーと、海の香りが素敵ね。
青 窓の向こうには自転車置き場しか見えないのですが……服でいえば石鼎は身なりに頓着しなかったようで、高浜虚子のホトトギス発行所で仕事をしていた頃、白いフンドシを垂らしながら外を歩いたり、独身時代は洗濯を全くせず、汚れた着物を押入に放り込んで放置するので部屋に異臭が立ちこめていたとか。
俳 昔の不精者は凄そう。石鼎さんの実家はどんな感じだったんですか?


出自、青春時代

青 島根県出雲市にあたる塩冶村の名家で、曾祖父母、祖父、父と医者を輩出した家に明治19(1886)年、三男として生まれます。本名は原鼎。
俳 ということは石鼎さんもお医者さんだった?
青 父は息子全員を医者にしたくて、長男、次男も医学を修めます。石鼎も医者の道が義務付けられましたが、学業が全然ダメ。
俳 麻薬中毒? トリップしながら三味線で都々逸を歌う不良少年だったとか。
青 中毒は中年になってからで、ハマッたのは芸術。中学生から文学や絵に熱中し、高校や医学専門校に落第し続け、22歳で京都医学専門学校に入学。勉強は相変わらず放置、句会に熱を入れ、翻訳小説を読み耽り、「明星」に短歌を投稿し、パレット倶楽部に入部して絵に明け暮れる。下宿近くの子爵家令嬢との噂が新聞に載り、試験も落第を重ねて放校処分。ちなみに体は柔道で鍛えたので超健康。
俳 自制心が低い感じかしら……私も俳句好きですが、さすがにテスト前や大学受験の時は勉強していました。
青 実家は落胆し、石鼎も「俺だけ落ちこぼれ……」と暗澹とします。懺悔の意を込めて坊主頭で帰郷するも相手にされず、徴兵検査も落ち、郷里に居られなくなり上京。歯科医を目指すも諦め、仕事を転々とし、ある時虚子に「記者になりたいので紹介状を一筆」と依頼すると断られる。折しも次兄が奈良吉野で開業医になるというので一緒に赴き、手伝いをするうち吉野が気にいった石鼎は次兄の下山後も留まり、医業のかたわら句作に猛烈に励みます。


吉野山時代

俳 知ってる! 「高々と蝶越ゆる谷の深さかな」(1)などで有名になったんですよね。
青 そう。石鼎は虚子の俳壇復帰を知り、「ホトトギス」に投句し始めるや虚子は句の斬新さに驚いて雑詠欄上位にドシドシ据え、「大正二年の俳句界に二の新人を得たり。曰く普羅、曰く石鼎」(2)と絶賛しました。後に吉野山時代と讃えられ、史上の傑作が次々に詠まれた時期です。
俳 よかった、安住の地を得られたのね。私は句作すらうまく行かず……シクシク。
青 そこは微妙で、石鼎は世捨て人に近い心境でした。実家や社会から見離され、山奥で世間と隔絶した日々を独り過ごす。周囲は木こりや農夫等、世界の違う人ばかりで語り合う人もいない。山を出て社会に戻ることもできず、「僕は社会不適合者なんだなあ」と相田みつを(3)調で自分を慰めるぐらいしかできない。
俳 石鼎さんも相田みつをファン? 良かった……失敗全てを「石鼎だもの」と自分に言い聞かせることで見て見ぬフリができますね。私も俳子だもの……。
青 例えばの話で、相田みつをは石鼎の吉野時代に生まれていませんし、彼の「にんげんだもの」の解釈もヘン。石鼎は人間社会で失敗続きだったからこそ人の居ない深吉野の風光が慰めになり、のびのびと自然を愛したように感じます。ただ、吉野は一時逃れの地に過ぎず、事態は変わらない。孤独は募り、絶望感がせり上がるにつれ俳句熱が高まり、一切を忘れようと句作に打ち込む日々だったのでは。


下山後

俳 吉野の山奥には何年ほどいたんですか?
青 二年足らずで下山。その後は九州の寺に仮寓して郷里の父の怒りを解こうとするも失敗。寺の和尚が留守中に奥さんと恋仲に陥り追放。帰郷後も実家に近づけず網小屋に隠れ住んだとか。放浪後にホトトギス発行所で働くことになります。
俳 その時期にフンドシ事件が起きたのね。
青 ええ。一般常識ゼロの石鼎は発行所内で無用の長物と笑われたりしたとか。二年ほど経つと、虚子から「他の雑誌社に世話をしよう」と突然言われ、クビ。
俳 ええっ、どうして?
青 虚子の真意は分かりません。後に関東大震災で石鼎が鬱病に陥った時、医学博士が彼を麻痺性痴呆症で余命二年と診断し、それについての噂も含めて虚子は周囲に吹聴し、石鼎は精神病扱いされます。虚子は時折こういうことをするので、怖いところがある。


ホトトギス退社後

俳 ブーブー、ひどい! 虚子さんを夜の路地奥で逆袈裟斬りにしてやりたいわ。
青 想像が具体的で怖い……その後、石鼎は東京日日新聞の選句や大阪毎日新聞の依頼で句会指導をしたりと生活が安定し、石鼎ファンの女性ともめでたく結婚。各地句会の招待やガス会社社長の句作指導、また新聞社の後援で大阪三越や銀座松屋で俳画展を成功させたりと、文士として暮らせるようになりました。
俳 それは安心。虚子さんの逆袈裟斬りはやめて、座敷牢に放り込んでおくわ。
青 彼の場合、「栄えるのも結構、滅びるのも結構」と呟きながら牢生活で黙々と句作に励みそうで、それも怖い。石鼎は学生時分から好きだった絵の才を活かした俳画が好評で、プロの日本画家より高値で売れたり、新聞社お抱えだったので収入面は安定します。彼に俳誌を持ってほしいと財界人等の後援で主宰誌「鹿火屋」が刊行されたりと、その才を愛する支援者は多かったようです。ある人は、「全て面倒を見るから今一度吉野の山中で暮らして句作してほしい」とお願いしたとか。石鼎はもちろん拒否。
俳 行きます! 一ヶ月百万円ほど振り込んでくれたらいいわ。で、ネットで欲しいものを買うの。まずは超高級の保湿クリームね……。
青 その前に傑作を詠みましょう。ただ、石鼎は体調や精神面がずっと不安定で、関東大震災後は強い神経症に陥り、牡蠣の食あたりの治療で使ったパンドポンという薬の中毒にもなってしまう。幻覚や幻聴に苛まれて虚空に怒鳴ったりするので入院治療したり、煙草の吸いすぎで大喀血したり、躁鬱病に近い感情の乱高下も続きます。日中戦争や太平洋戦争等の重苦しい戦時体制や空襲で気苦労は絶えず、神経衰弱に陥り、句作意欲も減退。最期はリューマチ関連の狭心症で亡くなりました(1951年)。
俳 いかにも芸術家ねえ。社会不適合の神経過敏な天才……句が気になります。
青 ええ。次回、彼の句群を見てみましょう。  (続く)


解説
(1)「ホトトギス」大正二年六月号臨時増刊号の雑詠欄巻頭句。深吉野の渓谷と可憐な蝶を取り合わせた傑作。
(2)「ホトトギス」大正三年一月号に虚子が寄せた一節で、石鼎は虚子公認の超大型新人として脚光を浴びた。
(3)相田みつを(1924-1991)=書家、詩人。独特な書体と詩集『にんげんだもの』等で人気を博した。


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100年投句計画

選者三名による 雑詠俳句計画




先選者 阪西敦子

 同じ本を二度買う、と同じ本を二冊買うは違う。前者はだいたい意識下でのこと。おいしい中華料理を食べに行く約束の昼間にラーメン屋に入る、神戸への土産に洋菓子を買う。何かを楽しみにし過ぎて、意識下でしてしまうこと。




万愚節正しい顔で仕事せる  24516
 エイプリルフールが気障に感じてしまう風潮、なのかどうかはわからないけれど、すっかりハロウィンの影に隠れて、外来習慣のなかでの順位を下げてしまった。しかし人々の心の中には少しばかりの警戒心があって、あるいはあわよくばという功名心もある。人物はどちらの立場かわからないけれど、案外虎視眈々とした、ここ最近のエイプリルフールの心理的参加者の横顔を描いている。正しい顔とは、決してその表情のままではないことのサインなのだ。




初燕ハウスで唸る耕運機  ぴいす
 軽やかにわたしたちの生活の視界に出現する初燕。率いて来るのはあらたな景色だ。それに従うべく重い腰を上げた耕運機、存在を主張するかのようでいじましい。

ハナミズキ白増すごとに風変はる  南亭骨太
 人の近くに植えられることも多い花見月は、印象に残る花。朝に夕に通る道の風も日々、新たになってゆく。高さ、明るさ、質感のいずれにも、この捉え方がぴったりくる。
桜蕊ふる灯籠に鳥の影  一走人
 桜蕊は「降る」とされているけれど、きちんと重みがあってそうはいっても風の抵抗はなくて、どちらかといえば「落ちる」とも思える。そのばらばらと落ち続ける桜蕊の中、灯籠には鳥の姿が。交差する二つの影と姿の質感の違いが楽しい。

逝く春や通勤定期荼毘に付す  元旦
 死はなんでもであるけれど、仕事の現役のうちの死、社会に強く所属するうちの死は、印象が濃い。その生前の姿を直前まで知っていた人の多さだろう。生活の道具、毎日の習慣の一つ、通勤定期を入れる。遠い旅の荷に職場と家を繋ぐ券を入れる哀感である。

風薫る教科書の角少し折れ  クラウド坂上
 殊に折ったわけではなくても、私がいつもそうなのだけれど、紙の右下隅がどうしても折れてしまったりする。やや慣れて、すこし身も入って、でも油断もあって、そんなころのふとした発見。




入学の写真へひかり花びらも  しのたん
さらさらと軽い寝息の夏帽子  冬のおこじょ
茅の輪くぐりて穫れたての野菜買ふ  八かい
鵜と人が並んで眺む倉敷川  ミセウ愛
社と寺と分かつ小道の額の花  誉茂子
蒲公英や仮寝の君の顎青し  あいむ李景
窓越しにひらりやっぱり黒揚羽  柊の花
天を指す土筆お昼にしましょうか  一斤染乃
ンで終わる薬名あまた春愁  一斤染乃
空っぽのぶらんこ夜の重みかな  ゆりかもめ


阪西敦子(さかにし あつこ)
 1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。



先選者 関悦史

 この十日間くらい、ほとんど記憶がなくなっています。第五回芝不器男俳句新人賞の特別賞の選考委員というのをやり、その公開選考会を無事に終えてから疲れて寝てばかりになっていました。何食って生存していたのかもよくわからない。不器男賞は百句一組で、今回は百四十篇の応募が来たので、合計一万四千句。これを期限に迫られながらひとつ残らず読んで評価するというのが、よほどこたえたようです。




いつもシャワー奨学金二百万  或人
 季語「シャワー」に「奨学金」という、あまり見かけない取り合わせ。奨学金といっても、受け取りっぱなしで済む給付型ではなく、返済義務を伴う借金となることが日本では多いようで、それを踏まえると、爽快なはずのシャワーも、途端に風呂代節約のためのものとなる。つまり内容的には悲惨なはずなのですが、句の口調は「いつも」から「奨学金二百万」まで妙に勢いがあり、若さや楽観が感じられます。型にはまらない社会詠。




春深し洋間に潜む青き闇  幸
 「深し」と「潜む」と「闇」がそれぞれ近すぎるのですが、「洋間」という昭和の一軒家を思わせる屋内空間の懐かしさと生気を感じさせます。不気味なものに転じる一歩手前の情感を日本家屋から引き出す「春深し」。

藤棚の端つこあたり例のもの  小木さん
 今回一番何を言っているのかわからなかった句。どうも藤棚の端によく現れる何かがあって、それが「例のもの」で通じてしまう話し相手も多分いる。異物があってもおかしくなさそうな場には思え、変な説得力あり。

信号は進め初燕は自由  青柘榴
 内容があまりに前向きだと句としては気恥ずかしい、上滑りしたものになることが少なくないのに、この「自由」は、いきなり出てきた抽象的な熟語の異物感がうまく働いて、句柄としては硬派な印象に。

花の下単細胞となりにけり  遊人
 「単細胞」が馬鹿の意味だった場合、あまり面白い句にはならないのですが、ものの喩えを通りこして、実際の原生生物に自分が浸透していくような変容と共感のイメージにまで踏み込むと「花の下」が生きます。

ヘディングのボールの行方夏きざす  花 節湖
 球技と時候、天文季語との組み合わせも、キラキラしすぎて空疎になることが多く、大概採れないのですが、ここでは「ヘディング」の体感から「行方」の広やかさへという転回、展開に「夏きざす」が効果的。




道草は花の雲間を泳ぐこと  桂奈
地下鉄のすべての駅に人や春  くらげを
遊ぶより見てるのが好き春の風  ぴいす
五月来るルドンの碧すきとおる  幸
筍の溢るるほどや鼻血吹く  ちろりん
たましひのるるるる濡るる夏野原  久我恒子
しりとりの滞空時間夏の蝶  中山月波
紫陽花は北極星の色たぶん  薄荷光
地球儀に月が上れば梅雨明くる  柊 月子
葉桜やフランスパンの紙袋  風海桐


関悦史(せき えつし) 
1969年茨城県生。「翻車魚」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。2017年第二句集『花咲く機械状独身者たちの活造り』、評論集『俳句という他界』刊行。共著『新撰21』『俳コレ』他。



後選者 桜井教人

 奇跡はときに起こるものだということを実感した。十二月号で念願の一口馬主になったことを書いた。その馬がデビュー戦、オープン特別戦を連勝し、なんとGTの皐月賞に出走した。そのレースでも奮闘し、なんとあの「日本ダービー」に出走することになったのだ。実質一万分の一の権利しかないが、とにかく自分の馬がダービーに出るのだ。正に奇跡としか言いようがない。もしかするとこのマガジンが届く頃に私の馬がダービー馬になっているかも知れない。この歳になっても面白いことはまだまだたくさん起こるものだ。


特選

竹の秋絵本の魔女と同い年  明惟久里
 魔女と言えば年齢不詳か数百歳かと思ってしまう。同い年と言われる意外性から何だか魔女が身近に思えてくる。季語が竹の秋なのできっと温かいストーリー、人のいい魔女が出てくる絵本なのだろう。

黒南風の鳥は異界にまたがらず  暮井戸
 暗く陰鬱な空模様、重く湿った南風。異界から吹いて来るような風の感覚。不思議な世界を醸し出す言葉の選択だ。下五の「またがらず」がくせ者だ。読み手に負担をかける句だが、その分黒南風の季感を映像として質感として十分に伝えるべく仕組まれた句だ。

影武者としての一生時鳥  みやこまる
 激情的な鳴き声が象徴的な時鳥と影に徹する影武者との対比が実に面白い。戦国時代を生き抜くための智恵は時鳥の托卵と相通じるのかも知れない。取り合わせとして読みが広がる魅力的な句だった。


並選

化粧筆頬に弧を描く春の虹  桂奈
白南風がぶわつと胃の腑もち上げぬ  くらげを
転生し今宵は猫に花おぼろ  砂山恵子
春ショール七つあります隠すもの  しのたん
全方位宇宙と語る葱坊主  冬のおこじょ
ひと葉にて膳の華やぐ木の芽かな  藍植生
じゃんけんや負けて楽しみつつ端居  レモングラス
亀鳴くや無言の街の赤い花  KIYOAKI FILM
スカートの花柄軽し風光る  すみ
青あらし一回裏の八得点  でらっくま
聞こえるは鬼女のタップか桜闇  藍人
揚雲雀帰還困難区域内  小市
逆打ちの脚絆の乱れ夏遍路  芳香
ままごとのご飯にもなる桜かな  波野
マラソンのジャージ姿の初句会  ケンケン
薄氷の芥つきたる阿弥陀池  人日子
舞鳴きの長き雲雀や恋上手  ちろりん
花冷えや出した辞表の撤回す  八かい
じいちやんよ桜鯛だよあーんして  えつの
夏きざす茶断ちの明くる躙り口  童夢U世
こぼれ桜にも似て鳥の糞かな  笑酔
絵踏みして師まで帰天をさすをんな  一円切手
燕飛ぶ空の雲切り十字なり  眞帆
夏の綺羅無尽幻想夜想曲  ひでやん
九相図の臓腑蕩々春の暮  内藤羊皐
夕暮れに川辺立たずむ鵜の愁い  ミセウ愛
ふんばつてふんばつて筍のあく  誉茂子
花冷の犬歯に苦きチョコレート  あいむ李景
少女産む無数の無邪気しゃぼん玉  風来松
春夕焼アールグレーに溶けてゆく  柝の音
大宰忌やいつかは国家公務員  或人
目借時ヘーゲルの文字背表紙に  不耳男
背表紙の褪せた詩集や春の燭  蓼科川奈
薄荷水かつて課長にディスコの夜  久我恒子
カナリアのゐぬ春暁のケージかな  凡鑽
ため息は青鬼灯かわたくしか  中山月波
愛撫さる為の形のダリアかな  薄荷光
朝もやけ汽笛二秒の鰹漁船  松浦麗久
おもちや扱いの兵隊葱坊主  小木さん
朝雨や風のかたちに花筏  とべのひさの
いつまでも放ちて四月の瑞光  かのん
見上ぐれば番いのとんび麗らけし  柊の花
著莪咲くや紙石鹸のしなう音   七瀬ゆきこ
深更をひとり呑みをる春の果  南亭骨太
席替えの悲喜交々や百千鳥  ヤッチー
茶柱にほほゑむ妻や桜餅  哲白
点滴の看護士笑ふ山笑ふ  鯉城
菜の花やまっすぐ生えた親不知  有瀬こうこ
うっかりと旧町名を亀の鳴く  彩楓
映画館出でて一人の薄暑光  のり茶づけ
ワンアンにワンシャンハオと春講座  さより
芥子の花川面に猫の骸かな  一走人
いいね!の手の胎児の写真若楓  斎乃雪
医者のひげ濃しあたたかな喫煙所  24516
おのづから桜吹雪となりて果つ  松田夜市
QRコードの迷路めく立夏  樫の木
ブラウスの袖膨らます聖五月  次郎の飼い主
教室にアロハシャツの転校生  天野姫城
恐がりの吾子眼をつむる石鹸玉  和音
青空と花の銀河を追う子らと  大槻税悦
散る花の真中に立ちて思ふこと  喜多輝女
鳴く気などさらさらなくて蛙の子  すりいぴい
君と観た映画の続き夏の夜  洒落神戸
風薫る口取式の厩務員  立志
ライラック医者の訛の聞き慣れず  野良古
ほんとうは腹黒なのよ霞草  テツコ
缶詰にして輸出せり花菜風  ぐずみ
亀鳴くや羽のかたちの香辛料  柊 月子
ぼんやりとただぼんやりと春逝けり  元旦
まだまだだ人見知りする風光る  ぺぷちど
引越しは線路を挟む側へ春  ゆりかもめ
晴天のミラーボールや八重桜  青柘榴
世は万緑さみしさわすれる祖母である  柊つばき
ピョンピョンと飛び石を飛ぶ春を飛ぶ  ミセスコナン
大股の一歩ぞ春の子連れ猿  風海桐
大鷭の加速度的に進みたる  遊人
桜蕊降り了へ日和の定まりぬ  まんぷく
車椅子三つ並んで花の下  坊太郎
春雨の旋律ジャズの小さき波  アンリルカ
彫像の男女しっぽり春時雨  クラウド坂上
夕暮れのゴールポストと君の汗  花 節湖
明確な答え求める暮の春  空山
杉の花外は怖いよ花粉症   カシオペア
雨にほふ千年杉の花にほふ  あおい


桜井教人(さくらい きょうと)
 1958年愛媛県生まれ。愛媛県公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回、29回俳壇賞候補。


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100年投句計画

自由律俳句計画


きむらけんじ

 ヒマなのでGWにこれを書いている。30年くらいまえ現役の広告屋だった頃、3日間ほぼ徹夜した。夜が白々明けたころ窓からビル下の幹線道路を見ると車が一台も走っていない。おかしいと思って同僚を呼んだら「今日から世間はGW!」と教えてくれた。あの時のなさけないような気持ちはいまでも覚えている。昨年某大手広告代理店でも社会問題になったが、働き方改革は果たして進んでるのか。広告屋など所詮、仕事を出す側の都合次第だ。表面は改革と言いつつ、問題は結局見えないところで違うカタチで深く静かに進行しているような気もするけど。




まだ転がったままかと見に行く白靴  のり茶づけ
 まさに想像の宝庫のような句。ここでは季語である「白靴」は季語としての趣を果たしているわけではないが、「経験の多さうな白靴だこと(櫂未知子)」的人物への妄想をかきたてている。いったいこの白靴は、どういう人物が履いていたのか、なぜあの場所に転がっているのか……気になってしようがないのでまた見に行くという念の入れようが、やや滑稽でありまた妙なシズル感さえ共有される。単に転がっている白靴ひとつでどこまでも想像力を揺すられ、勝手に物語を連想させる不思議な魅力があります。




百の蝶飛びたち妻の名を忘れけり  鯉城
 歳をとると人の名が出てこないことは珍しいことではないけれど、さすがに妻の名を忘れてしまうとはかなり重症あるいは認知症を患っているのか。妻の名を失念した刹那、無数の蝶が飛び立つという隠喩は、なかなかみごとで美しい。かぎりなく定型に近いけれど、組み立てを変えればもっと力のある自由律になります。

今打たんとす胴に花片  風来松
 現実描写かあるいは古い映画の一シーンなのか……。桜の樹の下で剣道をしている場面を、きれいに切り取って無駄はない。黒く硬い胴にやわらかい桜の花びらの対比が上手いと思う。静止画像ではなく、確かな動く画像になっている。

だって戦争が急に飛び出してきたんです  ちゃうりん
 「戦争が廊下の奥に立つてゐた(渡辺白泉)」を避けて語れない句ではありますが、これはこれで時代背景を超越した普遍のテーマとしてみればインパクトはあります。いま日本が戦争に巻き込まれれば、まさにこの句の通り。そうならないことを祈るのみ。

待つことに飽きて葱坊主でいる  みやこまる
 万物を擬人化するのはよくある句作法ですが、理屈ではなくそこに違和感があるかないかが全てです。畑でただただじっとしている葱坊主は、なるほど誰かを待つことに飽きている姿なのかも。そんな気がします。

駆け落ちの手に方位磁石  中山月波
 実際駆け落ちに方位磁石を持っていくような人がいるわけではないのでしょうが、それでもなるほどと思わせるような筋書きが妙味です。それにしても「駆け落ち」も「方位磁石」も懐かしい言葉になりつつあります。




紙飛行機のすうと揚羽蝶の脇  でらっくま
人間を1日やめていいですか  柝の音
せいぜい三ミリの春愁  小木さん
腰痛をゆっくりと飼いならす  南亭骨太
色のない土地に蝶が生まれる  鈴木牛後
アンパンマンマーチ流れる四月の柩  24516
蟻と蟻通貨はチヨコレイト  次郎の飼い主
リレーのバトンは春帽子  ゆりかもめ
藤ばかり見上げていた一日  遊人
40億年の先尖に居て花を愛でる  まんぷく


並選

つくし摘むときに折る膝  くらげを
ががんぼにちょっと息を吹いてみる  冬のおこじょ
闘いの相手は身の内にあり  藍植生
連弾の音少しづつづれつつ終わる  レモングラス
春の地面の魚泳ぐ  KIYOAKI FILM
大仏の掌に夏蝶  藍人
箒持ち大木の生理の後始末  小市
泥つけてベビーカー押して快走  ケンケン
風船の色夢の色  人日子
じつとしていては落花にうもれさふ  みつよ
百年なぞ屁地球だから  ちろりん
オープンカーで行く花散る土手  八かい
洗ひたてのシーツにこぼす新茶  明惟久里
軋むと毀す嫁泣いて春愁  ねもじ
七つになる子春の海が好きだという  うさの
初虹へ震はす龍の夢精  内藤羊皐
チーズ鱈噛んでささくれてる  暮井戸
き出しの鉄製の頭のゴリラ  誉茂子
夏の空こんなに揺るぎない  蓼科川奈
遠足の先頭に知らない先生  凡鑚
月が綺麗って貴方新月ですよ  薄荷光
打ち上げられしマンボウを脇目に自転車のペダル漕ぐ  松浦麗久
白いチューリップばかり咲く庭  とべのひさの
また烏賊と目が合う火曜日  七瀬ゆきこ
孕むものの母性本能  ヤッチー
集めていたのは砂でした  有瀬こうこ
つばめはひかりにひかりはつばめに  彩楓
右ポケットに石ころ左にダンゴ虫  さより
桜散るはしから人の死ぬ  一走人
花見の宿酔赤べこだった誰か  一斤染乃
猫の眼の涼しき水晶体  樫の木
花吹雪ありがとねありがとねと老女  和音
ステンドグラスは常連客をオレンジへ  大槻税悦
通勤電車眼前の臍ピアス  洒落神戸
アロハシャツを着る気分  立志
鯉こくの鍋こぼる花山椒  ぐずみ
春愁娘は三十路  元旦
20メートル上の春大魔も松明も踊る屹然たる柱松  ぺぷちど
園児ら去りてポツポツ落ちているイチゴ  青柘榴
一回200円春をつかみ取り  ミセスコナン
病院の独房差入れの丼  坊太郎
子離れやからつぽの冷蔵庫  花 節湖
筍は根っこの方が好きという生き方  空山
斑猫と塵界を離れん  きさらぎ恋衣
すみれのにあう河馬  緑の手


自由律で再挑戦を!

行く春も来る夏も良し四月尽  芳香
この青き空の下掃く花の屑  みつよ
あれがまあミカドヨシノと言う桜  彩楓
百千鳥物干し台のBGM  喜多輝女
麗らかや胸のチーフの桜色  あおい


きむらけんじ
 1948年生まれ。第一回放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技、妄想、泥酔。


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100年俳句計画

詰め俳句計画


選者、問題作成 マイマイ


次の(  )の中に共通する夏の季語を入れてください。

脚組めば軋む(   )のソファ
(   )その日輪を毀す波


脚組めば軋む夕立の後のソファ
夕立の後その日輪を毀す波
 藍植生さん。このコーナーは歳時記に記載されている季語を当てはめるのがルールとなっております。季語「夕立」に「の後」といった言葉を付け加える行為は「季語アレンジ」と呼んで減点取り締まり対象となっています。この場合かなり強引なケースと見受けられますのでマイナス3点。内容的にも「の後」がかなり説明的な気がしました。7級(-3)。

脚組めば軋むプールのソファ
プールその日輪を毀す波
 ゆりかもめさん。短い! 前句は自由律として読めばまずまずだが後句、上座をどこで切るか。リズム的には「プールその」で一拍置きたいが中座が字足らずになって気持ち悪い。7級。遊人さんは夏の日。これも短くて後句リズムに乗れない。KIYOAKI FILMさんの夏霧も同様。同じく7級。ちろりんさんの卯の花腐しは長すぎる。後句の上五の字余りは許容するとしても、前句がぐだぐだして着地しない感じ。内容的には、後句、雨なのに日輪?という疑問が残る。同じく7級。カシオペアさんは水無月。これも四音で短いのだが、国語辞典には「みずなしづき」という六音の読みも記されており、それなら前後句ともリズムが整う。水無月の持つややアンニュイな雰囲気が前後句とも合う。2級。

脚組めば軋む熱帯夜のソファ
熱帯夜その日輪を毀す波
 蓼科川奈さん、花 節湖さん、きさらぎ恋衣さん。前句はぴったりですが、後句、夜に日輪は無理がありますね。柊 月子さんの五月闇も日輪は見えなさそう。松浦麗久さんの雨休みも無理。しげこさん、ほろよいさんの大夕焼、24516さん、樫の木さんの夕焼雲も太陽が沈んでからの気象現象なので日輪はあり得ない。まとめて6級。砂山恵子さん、立志さんは雲の峰。すみさんは入道雲。喜多輝女さんは夏の雲。これらは前句、ソファの座り心地を表す比喩表現なのかもしれないが、前句の語順を変えて「脚組めば軋むソファや(  )」のように取り合わせにした方が状況を過不足無く詠めて読者に座り心地を想像させる句になる。同じく6級。笑酔さんはたかむしろ。そんな素材のソファがある? 後句、「たかむしろ」に寝転がっているイメージから空の日輪を思うところで、「波」ときて分からなくなる。同じく6級。

脚組めば軋む海水浴のソファ
海水浴その日輪を毀す波
 童夢U世さん。前句、海水浴にソファを持って行くその感覚がわからない。後句、海はいつも波立っているのでそもそも水面に日輪がない気がするがどうか。7級。冬のおこじょさん、人日子さん、八かいさんは砂日傘。芳香さんは浜日傘。こんなに来てますが、やっぱりあり得ないでしょう。同じく7級。薄荷光さんは船遊。前句、どんな豪華客船? 後句は湖など流れのないところならあり得るか。6級。小市さん、みやこまるさんは炎天下。レモングラスさん、鈴木牛後さん、青柘榴さんは油照。そんなとこに出したらソファの生地がだめになっちゃうじゃないですか。後句は分かるが、日輪と近すぎる。5級。以上どうしてもソファを外に出したいアウトドア派の方々でした。

脚組めば軋むバルコニーのソファ
バルコニーその日輪を毀す波
 幸さん、のり茶づけさん。これもバルコニーにソファは出さんだろと突っ込みたいが、雨の降らないアメリカ西海岸とかだと普通かもと思い直した。後句は「バルコニーその」と続くので当然降り注ぐ陽光を思うのだが、「波」ときて分からなくなる。5級。一走人さん、天野姫城さんは青嵐。小木さんは青あらし。これも前句、野外の感じもあるがソファなので窓辺から見ているのでしょうか。後句、青嵐によって波が起きるという因果が見えるのがやや不満。ヤッチーさんの青田風も同様。4級。あいむ李景さんは夏の湖。後句、このようにあえて情報量を少なくしてしっとりと情景を描くのも一つの手。前句は前述のように語順を変えた方がしっくりくる。同じく4級。元旦さんは夏座敷。前句、畳の間にソファ!という驚きがある。後句、「その」の現場感がこの季語では薄い。同じく4級。でらっくまさん、坊太郎さんは梅雨晴間。前句、ソファだけが晴れ間にあるような変な表現だが結構好き。後句、雨上がりの水たまりが見えてくる。3級。矢野リンドさんは夏休。前句、いかにも時間を持て余している雰囲気がよく出ている。後句少し不穏な感じでしょうか。2級。ねもじさん、河原撫子さんは大西日。前句、不快感が一気に増す季語。日除けを下ろしたい。後句は直接照りつける西日と水に写った日輪の両方を描いた不思議な句に仕上がっている。同じく2級。

脚組めば軋む竹落葉のソファ
竹落葉その日輪を毀す波
 次郎の飼い主さん。前句、竹落葉の見える窓辺のソファということなのだろうが、無理に繋げた感がある。後句落葉が水面を揺らしたのだろうか。内藤羊皐さんは蓮の花。前句はソファの柄? 斎乃雪さんの夏木立も前句、ベンチならわかるが、ソファを屋外には置かない気がするので違和感あり。植物系の方まとめて4級。

脚組めば軋む土用入のソファ
土用入その日輪を毀す波
 七瀬ゆきこさん。前後句とも土用との取り合わせは面白い。前句「土用入のソファ」という言い方に少しの違和感。猫楽さんの薄暑光も前句、同様の違和感あり。4級。とべのひさのさんとすりいぴいさんは夏の朝。自然だが季語が場面設定になっているようで物足りない気がした。空山さんの夏初めも同様。同じく4級。ちゃうりんさんの半夏生はしっとりとけだるいイメージが前後句とも合う。3級。ひでやんさんはみどりの冬。なんとこれは夏の季語で冷夏のことを指すそうです。前後句とも不吉な感じがそれはそれで味になっている。3級。ジュミーさんは水無月尽、藍人さんは青水無月。前句、水無月のけだるい一面がよく合う。後句も「水」の字が「波」と重なって良い感じ。2級。明惟久里さんは麦の秋。前句、ソファの前に一面の麦の秋が広がる。実感を担保しているのが「軋み」。後句、ゴッホの世界のような危うさが感じられて好き。1級。

脚組めば軋む鑑真忌のソファ
鑑真忌その日輪を毀す波
 久我恒子さん。忌日の季語だと後句の「その」という指示代名詞が臨場感を生む。前句、後年視力を失ってしまった鑑真に対して「軋み」という聴覚を取り合わせたものか。後句、渡航のイメージが「波」と響き合う。1級。誉茂子さんは北斎忌。前句、北斎の洒脱な感じが出ている。後句、北斎の雄大な波の絵と眼前の静かな波の対比を楽しめる。同じく1級。

脚組めば軋む三尺寝のソファ
三尺寝その日輪を毀す波
 桂奈さん。前句、上五で座っている景を思うので寝転ぶ姿勢に微かな意外性がある。後句、この季語は「日脚が三尺移るだけのわずかな昼寝」と歳時記にあるので「その」という言葉にも実感が宿る。初段。一斤染乃さんは沖縄忌。前句、「軋み」が死者の骨の軋みのようにも思えてきて、柔らかいソファとの対比がより鮮明になる。後句、日輪が平和の象徴のような気もして空恐ろしい。同じく初段。


今月の正解

脚組めば軋む桜桃忌のソファ
桜桃忌その日輪を毀す波
 彩楓さん。前句、太宰治の気取った感じ、貴族趣味がよく出ている。後句、入水自殺を遂げた彼の姿と重なる波。二段。


解答募集中!
 次の(  )の中に共通する夏または秋の季語を入れてください。

対岸を子も(   )も走るなり
(   )に終はる合宿一日目

このコーナーは『新日本大歳時記』(講談社)を参考にして、選者が勝手にランク付けをしています。新しい季語などを投稿される際は、歳時記、季寄せ名を併せて明記していただけると助かります!

6月20日締切 結果は8月号に掲載


マイマイ
 2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人だったが、最近は?? 第1回、第4回百年俳句賞(旧大人コン)優秀賞受賞。2013年句集シングル『翼竜系統樹』上梓。将棋推定初段。棋友募集中。宇宙と生命を題材に詠んだ句集『宇宙開闢以降』マルコボオンラインショップにて発売中。


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100年投句計画 投句方法



雑詠俳句計画
自由律俳句計画
詰め俳句計画

 「雑詠俳句計画」では、寄せられた投句を一括して、各選者が選句します。各選者に宛てて個別の投句を行うものではありません。

8月号掲載分締切 6月20日(水)

投句方法

 投句先コーナー名
 俳号(無ければ本名の名前のみ)
 本名
 電話番号
 住所

 以上の必要事項を書き添えて、編集室「100年投句計画」係までお寄せください。メールの場合は、件名を「100年投句計画」としてください。
 「雑詠俳句計画」「自由律俳句計画」はそれぞれ2句ずつまで投句できます。また、「詰め俳句計画」は季語1つのみを投稿できます。
 各コーナーの投句は、ひとつにまとめて送っていただいても構いません。

メール宛先
magazine@marukobo.com

投稿専用ページ
http://marukobo.com/toukou/

さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(「100年公募計画」のコーナー参照)


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短歌の窓


選者
短歌誌『未来』会員 渡部光一郎


並選

上野駅桜マップを手渡され異国の人と桜の中へ  彩楓
 上野の桜を見に来た外国人に道を尋ねられた。教えようとして一緒に歩き出した様子を「桜の中へ」と表現しているのが巧み。定型の感覚が身についている。

甘い物禁止令でた病院の帰り手がでるスーパーの棚  ミセスコナン
 病院であれを食べるな、これを食べるな、といわれる。でも好きなものは仕方がない。駄目と言われたその帰り、どうしても買ってしまう甘いもの。人情である。体言止めで言いおおせた。

ふたすじの飛行機雲の交差して栞をはさむ寺山修司  きさらぎ恋衣
 寺山修司の一冊から目をあげて飛行機雲を見上げた。寺山と青空はよく合うが、ここでは「飛行機雲の交差」を配合している。寺山の名を入れるとどうしても寺山的な世界に沿う歌になる。人名を詠みこむことの難しさを思うが、この一首はある意味俳句的な短歌といえるかもしれない。


コメント

どこまでも続く車窓の菜の花は上総の国のいすみ鉄道  藍植生
 「どこまでも続く」の詠みはじめがおもしろく、上総という国名、いすみ鉄道という固有名詞も魅力的。

長谷寺の牡丹回廊長ければ息整えて夫の手を取る  芳香
 牡丹が有名な桜井の長谷寺。「息整えて」がいい。

敷衍してようやく気付くものですね君の立ち位置僕の立ち位置  暮井戸
 抽象的なので、もう少し具体物に託して。

花という花を集めて咲いたようそれほどまでに桜はなやぐ  蓼科川奈
 桜以外の花をつかって、桜のはなやぎを表そうとした作品。めずらしい表現だが、やはり苦しい。桜の歌は難しく、どうしても観念的な方向に流れがちだ。いろいろと工夫してみてください。私もがんばります。

すべらかにひんやり触れるさくらの葉わが身の明日を占いおれば  久我恒子
 わが身の明日をに思いをめぐらせているとき、桜の葉が手に触れた。青い桜の葉はことさらにひんやりと感じる。花でなく葉をよんだところがよい。

桜散り花水木散り躑躅咲く主役は移り美しき今  青柘榴
 春から初夏にかけてはほんとうに色々な花が咲いてはその花期を終えてゆく。「主役」たちに眼をたのしませている作者の気持ちがよくわかる歌だ。最後に「美しき今」とあるのがややきずかもしれない。

三角のアップルパイを十個焼く明日は子が来る孫が来る   柝の音
 上句は具体的な数字が出ていてとてもよい。歌意もよくわかるのだが、あと二音節足りないのが残念。下の句を整えるといい歌になる。

十歳は若く見られる母はまず初対面には歳を告知す  和音
 お母様は初対面の相手にまず年を教えるということだろうか。若く見られるので教えないでおく人というのもいるだろう。ユーモアのある歌。

昨日まで枯木のごとき八重うつぎみっつの新芽やうやくの今朝  明 惟久里
 ウツギに新芽がでたことを材にした、自分だけの発見がある歌。「やうやくの今」とはあまり聞かない表現だが、ここではそれが活きている。

冷奴ほどの存在古亭主薬味添えてもメインにならず  有瀬こうこ
 冷ややっこほどの存在感があればじゅうぶんメインになると思って読んでしまった。まして薬味さえ添えられているのだ。


自作の短歌(2首まで)を下記までお送り下さい。締切は毎月20日。
専用フォーム
http://www.marukobo.com/tanka/
専用Email
tanka@marukobo.com


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自作の俳句を英語に訳そう!

百人百様 E-haiku



文、訳例 菅 紀子


赤い花緑の芝の静かさや
red flours
green of tree
and science
KIYOAKI TOYOHARA

紀訳
red flowers
green lawn
in tranquility


春の日のパソコン眺め足は宙
spring day
personal computer
my foot the sky
KIYOAKI TOYOHARA

紀訳
a spring day
looking at the PC screen
my feet swinging in the air

お便り
KIYOAKI TOYOHARA 基礎英語始めました。


炎昼や喫水線の蜥蜴色
Summer noon
the waterline
dyed lizard color
久我恒子

紀訳
mid-summer noon
the waterline
of lizard red


薫風やひかり散らせる馬の背
balmy breeze-
a glimmering
horse back
久我恒子

紀訳
a balmy breeze
rustles the glimmer
on a horse-back


手作りの餌台春のひよどり来
bulbul in spring has come
Handmade bird feeder
ほろよい

紀訳
spring
the handmade bird feeder
a bulbul flies in


簡単な歌しか歌わない百合は
that's only sings a simple song,
a lily
チャンヒ

紀訳
simple songs only
a lily sings


囁きが束縛となる遠花火
whisper become
ball and chain
at distant fireworks
チャンヒ

紀訳
a whisper
turns to a commitment
at distant fireworks


ふくふくと駅まで川とあさざくら
walking to the station
riverside with cherry blossoms
with joy in the morning
明 惟久里

紀訳
my happy companion
the river and cherry blossoms
to the station


乗り降りの鈴に寄りそふ夕桜
evening cherry blossoms
standing close to bells
getting on and off
明 惟久里

紀訳
evening cherry blossoms
share the sound of bells
people getting on and off

お便り
明 惟久里 今回は桜の2句でトライしてみましたが、難しいですね。日本語の奥行の深さを再認識します。


春愁の漆絵皿の軽きかな
spring depression
what slight
lacquer plate with a picture
彩楓

紀訳
spring blues
how light is a lacquer plate
with a picture


山吹の黄の奥にある昼の闇
a yellow deeps
of japanese rose
daytime darkness
彩楓

紀訳
daytime darkness
deep in the yellow of
a Japanese rose


忖度す課長案件春の宴
I read what manager is implying spring feast
すずき徳三郎

紀訳
along with
the wish of the section chief
spring feast

お便り
すずき徳三郎 県職員のFさんが異動で自分の職場に関連のある部署の課長にご栄転。昨夜一緒にお祝い会しました。ただ、本来の趣旨は会のメンバーEさんの退職慰労会で、幹事の課長の意向を忖度して自分が花束を準備させて頂きました。


飛び込みし2人の形水温む
jump into the sea shape of two warming water
すずき徳三郎

紀訳
jumping in
the figures of the two
water warms

お便り
すずき徳三郎 映画「シェイプ オブ ウォーター」、個性強すぎて、今一つでした。自分は同じような展開ながら、映画「スプラッシュ」が好みです。「水温む鯨が海を選んだ日」という名句がありますが、この作品だと、「水温む男が海を選んだ日」であり、さあどう訳しましょうか。


Column

切れ字

 「や」など切れ字はそこで語の流れを切り、詠嘆などの意味を添えます。これを英語で表現するにはどうすればいいでしょうか? 「や」自体を翻訳することはできませんから “ , ”(カンマ)によって切れ目をつけるのが無難な対処方法かと思います。また、日本語句に切れ字がなくとも英訳した言葉に意味の区切りをつけて整えたいところがあればそこにカンマをつけ明確にしても良いでしょう。むやみに感嘆符“!”はつけないことはいうまでもありません。

英語からできた英語俳句

 私は日本語俳句の英訳ともともと英語で作ったハイクとは大きく異なると考えます。なぜならば日本語俳句は必ず季語ありきで、長い年月をかけて編まれた歳時記から季語を選んで詠んだりしますが、英語(だけでなく日本語以外の言語)でハイクを創る場合、そもそもその言語に日本の文化に根ざした季語は存在しないので、その土地の季節感を表すことがあっても外国語ごとの季語はありません。だから、日本語俳句を英訳するのは難しいのだと言えましょう。
 そんなことを踏まえて、今月から外国人が詠んだ英語俳句を一句づつ紹介することにします。英訳との違いを味わってみてください。

A full choir of birds:
a string of music round the lake.
Suddenly a cock crows

Herman Van Rompuy


菅 紀子(かん のりこ)
(有)クラパムコモンカンパニー代表。通 翻訳、メディアによる姉妹都市交流コーディネーター。社名は夏目漱石が下宿したロンドンの地名から。歩道短歌会同人。人文学修士、翻訳修士。松山大学非常勤講師。(Hailstone Haiku Circle blog ICEBOX Contributor)(漱石と彼のライバル重見周吉、日系移民研究)


自作の俳句およびそれを英語俳句にしたもの(2句まで)を募集!

応募先
 WEB http://www.marukobo.com/eigo/
 Email eigo@marukobo.com

8月号掲載分締切 6月20日(水)


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今回のお題句に対する投句から次のお題句を選び繋げてゆく

疑似俳句対局


選者 美杉しげり


今回のお題句
嘘の数かぞえて嗤う白木蓮  斎乃雪

 今月も「初めて参加します」という方が。嬉しいですね! 


候補句

ゆうらりと蓮府の金魚透けており  七瀬ゆきこ

 今月の最速投句。雰囲気ありますね。自立語「蓮」を使った「蓮府」、これは季語ではないのでもちろんOK。別な方から「蓮の花極楽浄土で笑う人」という投句があったのですが、「白木蓮」も「蓮の花」も季語なので、残念ながら減点対象となります。

蓮芯茶静かに苦し月凉し  冬のおこじょ

 「蓮芯茶」も季語ではないので、こちらもOKですね。「静かに苦し」が「月涼し」と響き合います。

薄翅蜉蝣白蓮の夜会服  久我恒子
薫風や白木の位牌持つ我へ  すみ
白き歯を見せ嗤ふや夏の海  洒落神戸

 久我恒子さんは「白、蓮」、すみさんは「白と木」、洒落神戸さんは「白と嗤」。お題句から「2つの自立語をいただく」という技あり三句。こういう試みも楽しいですね。

 今回は「数」を使った句が目立ちました。投句順にどうぞ。

蛍火や数々の罪許されて  蓼科川奈
厄年や数えか満で悩む春  杉もとたかし
分数では割り切れない春の月  天野姫城
鉢植えの薔薇の蕾を数へをり  藍植生
沈丁の香の乱れくる数UB  一斤染乃
数へうた竜の唾と群雀  ぐずみ
郡上より鮎数匹の届きけり  健次郎
五月雨や片手で足るる幸の数  凡鑽
線の数これ見よがしに水泳帽  笑松
数式の浮いて蛙の目借り時  かま猫

 まだまだあります。こちら「数多」三句。

数多の雨粒息吹き返す春  青柘榴
母の日や数多の子知る分娩台  大槻税悦
水中花数多の罪を知らざりき  ちゃうりん

 そして理数系苦手の私には縁のない「虚数解」二句。木下闇に時鳥、意外と自然系と相性がいい言葉かも?

虚数解が隠れていさう木下闇  ひでやん
時鳥ノートを占める虚数解  星埜黴円

 つづいて「白」句。なかなか変化に富んでいます。

葉柳をおぼろにうつす白き雨  斎乃雪
再会の鱚のマリネと白ワイン  柝の音
古の白兵戦や夏の霜  小川めぐる
汗吸いてなほ石膏の白きかな  野良古
取り皿の小さし夏の月白し  花 節湖
油照しっぽ切られる白昼夢  中山月波

 中山月波さんの句、本当はないはずのしっぽを切られてしまう白昼夢? それとも自分が猫か犬になった気分? どちらとも読めて、ちょっと怖いところが魅力。

 俳句は上手な嘘をつかなきゃ、なんてことも言われますが。「嘘」句、どれも面白く読みました。

羅を着て嘘多き夜の街  芳香
嘘ついて押し入れの中夏休み  二宮鬼北
美しき嘘やはらかく薔薇閉じており  桂奈
雨蛙ほら嘘つきの色をして  すりいぴい

 芳香さんの「羅」を着た妖艶な女性は水商売の方でしょうか。対して、二宮鬼北さんの句の「押し入れの中」にいるのは少年のような気がします。 桂奈さんの句は薔薇という花にふさわしい、華やかさ。すりいぴいさんの句、雨蛙が嘘つきの色とも読めますし、「雨蛙」と「嘘つきの色」との取合せとも読めますね。

黒南風に濡れて嗤つてゐる女  薄荷光

 「嗤」は、なかなか使いづらい語だったようで、投句は少なかったですね。薄荷光さんの句、女はいったい何を「嗤つてゐる」のでしょうか。黒南風が何やら不穏な気配を漂わせて。


次回お題句
躑躅つつじ木乃伊の眠り覚ましそう  あいむ李景

 「木」を使った句も意外に無かったですね。そんな中、あいむ李景さんの「木乃伊」は、「躑躅つつじ」という漢字とひらがなの表記も面白く印象的でした。
 この躑躅は真っ赤な花のような気がします。木乃伊の眠りさえ覚ましてしまいそうな、鮮やかな赤。ぽつんと一本だけあるのではなくて、群れなして咲いている感じ。
 同作者の「ステンドグラスに嗤ふががんぼ愛誓ふ」も、どこか皮肉な視線が感じられて興味深い句でした。
 というわけで、次回はあいむ李景さんのこの句がお題。「躑躅」なんて、はたして季語以外で上手く使える言葉があるんでしょうか?


美杉しげり
 第8回俳句界賞受賞。数年前から小説も書き始め、短編「瑠璃」で第21回やまなし文学賞佳作。美杉しげりはその時からのペンネーム。


毎月25日頃に、投句フォームにてお題句を発表します。投句締切は毎月末日。

疑似俳句対局投句フォームアドレス
http://marukobo.com/taikyoku/


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THE BEATLES 213 PROJECT


第9回
「 ジョージ! ザ ビートルズ(初期編) 」

文 夜市


 デビューから5枚目のアルバム「ヘルプ」までの、ジョージをフューチャリングした楽曲を集めました。初期のビートルズで一番の人気者は、もしかしたらハンサムな最年少メンバーのジョージだったかもしれません。プレス会見等で見せた才気あふれる受け答えも忘れることができません。


ドゥ ユー ウォント トゥ ノウ ア シークレット

薔薇一片ほどの秘密を打ち明ける  猫正宗
 デビューアルバム「プリーズ プリーズ ミー」収録。ジョンが書いた甘いバラードです。秘密というほどの秘密ではないんですよね、たしかに。
瑠璃色の声こぼれをり春の鳥  斎乃雪
 決して上手ではないけれど初々しさにあふれたデビュー当時のジョージ。瑠璃色の声とは言い得て妙ですね。

秘めごとに粒をふるわせ青ぶどう  時計子
秘密分け二人しづかとなりにけり  萬穂


ドント バザー ミー

ほっとけと初の作曲風薫る  越境島
 アルバム「ウィズ ザ ビートルズ」収録。初めてアルバムに採用されたジョージのオリジナル曲です。シンプルなダンスナンバーながら、ちらほらと後のジョージ ハリソン節が垣間見える気もします。

草矢打つ上手な彼の足元に  時計子
 「上手な彼」とはジョンのことなのか、それともポールか。おそらくその両方ってことなんでしょうね。

蛞蝓の掴めぬ空の深さかな  久我恒子
 「ほっといてもらいたい状況」としてコレは最強なんじゃないかなあと思います。

ほっといてください梅雨の明けるまで  暮井戸


デヴィル イン ハー ハート

鉄壁のコーラスに百合咲きました  ロックアイス
 アルバム「ウィズ ザ ビートルズ」収録。コーラスバンドとしてのビートルズの魅力あふれる一曲です。ジョージのボーカルもデビュー直後より随分のびのびと歌っている気がします。

若夏や恋を感じるギターの音  越境島
 イントロのリードギターのお洒落なフレーズ。終盤では歌のバックに再登場して盛り上げます。

ためらはず声かけにけり蛇苺  久我恒子
 とりあえず彼女にチャレンジ。しかし季語の蛇苺がなんとも悪魔的ですよね。

陽炎や例えあの娘が悪魔でも  風十六九
振られたのは悪魔のせいさ桜東風  れんげ畑


みんないい娘

白き靴オールドスタイルで決めて  暮井戸
 アルバム「ビートルズ フォー セール」収録。オリジナルはカール パーキンス。ロックンロールのオールドヒーローへのリスペクトを感じさせるボーカル&ギターです。

囀りのひとつひとつが俺を呼ぶ  ツバメ号
 全員に告白されても困りもの。この手の曲はある意味コミックソングでもあったのでしょうか。

小次郎を恋ふて斬られてつばくらめ  萬穂


アイ ニード ユー

ふぉんふぉんと海霧に消えゆくギターかな  ツバメ号
 アルバム「ヘルプ」収録。ジョージ二作目のオリジナルナンバーです。エフェクターを駆使した哀愁のギターをバックにしっとりと歌い上げています。

この椅子に君がいなきゃ夏の日は  きさらぎ恋衣
 なぜかこの曲には夏の日のイメージ。ハインラインの「夏への扉」を思い浮かべたりもする恋衣さんの一句です。

夏めきてペダル踏んでも遠い空  井玉
 ギターのワウペダルと自転車のペダルをかけているのでしょうね、多分。

君が去り気怠く始まった夏よ  ロックアイス



第11回 兼題曲
「ビートルズ フォー セール」より

ノー リプライ
アイル フォロー ザ サン
ミスター ムーンライト
カンサス シティー ヘイ ヘイ ヘイ ヘイ
パーティーはそのままに

 兼題曲を詠んだ俳句を左記までお送り下さい。

専用フォーム http://marukobo.com/beatles/
専用Email beatles@marukobo.com
締め切り 6月20日


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100年俳句計画編集室セレクト

100年公募計画



掲載は応募締切順。
選者は順不同、掲載名は敬称略。
各公募情報の詳細につきましては、主催者発表の最新情報ならびに問い合わせ先でご確認ください。


ブリヂストンタイヤで五 七 GO!俳句コンテスト

主催 ブリヂストン タイヤの細道「俳句コンテスト」事務局
募集内容 「タイヤ」か「ドライブ」をテーマにした俳句。
 ツイッターで公式アカウントをフォローし、ハッシュタグ「#タイヤの細道」を付けて投稿、または、キャンペーンWEBサイトの応募フォームより応募。
締切 平成30年5月31日(木)
選者 夏井いつき
賞 グランプリ賞=東京2020オリンピック宿泊付き観戦ツアー1名(ペア)、優秀賞=10万円分VISAブランド商品券5名、Wチャンス(応募者から抽選)= 1000円分のVISAプリペイドカード 500名。
詳細問合せ 電話 0120-563-281(タイヤの細道「俳句コンテスト」事務局)
https://tire.bridgestone.co.jp/tire-hosomichi/campaign/


富山県黒部市俳句交流大会

主催 厚生労働省、富山県、一般財団法人長寿社会開発センター、ねんりんピック富山2018実行委員会、黒部市、ねんりんピック富山2018黒部市実行委員会
募集内容 未発表作品2句以内。投句料無料。
宛先 〒938ー8555 富山県黒部市三日市1301 黒部市市民生活部福祉課内 ねんりんピック富山2018黒部市実行委員会事務局
締切 平成30年6月15日(金)当日消印有効(海外からの応募の場合は必着)
選者 「高齢者部門、一般部門(一般の部)」稲畑汀子、大久保白村、大輪靖宏、中村和弘、寺井谷子、高野ムツオ、茨木和生、藤本美和子、蟇目良雨、中坪達哉 「一般部門(ジュニア般の部)」川上弥生、坂田直彦、野中多佳子、荒木かづを (当日句選者は割愛)
賞 「高齢者部門 一般部門(一般の部)」選者特選賞10句、その他上位句に正賞 准賞。
「一般部門(ジュニア般の部)」小、中、高校生各上位10句に優秀賞。
大会 日時/平成30年11月4日(日)、場所/黒部市宇奈月国際会館(セレネ)。当日句の募集有り。
詳細問合せ 電話 0765-54-2111(ねんりんピック富山2018黒部市実行委員会事務局)


第53回 子規顕彰全国俳句大会

主催 松山市教育委員会(子規記念博物館)
募集内容 雑詠2句一組500円。大会当日時点で未発表 未掲載であること。何組でも可。
宛先 〒790ー0857 愛媛県松山市道後公園1ー30 松山市立子規記念博物館内「子規顕彰全国俳句大会」係
締切 平成30年6月30日(土)必着
選者 稲畑汀子、井上康明、上田日差子、村上鞆彦、木下節子
賞 各選者が特選5句と入選40句選出。
大会 日時/平成30年9月23日(日 祝)、場所/松山市立子規記念博物館 4階講堂。当日句の募集有り。
詳細問合せ 電話089-931-5566(松山市立子規記念博物館)
http://sikihaku.lesp.co.jp/


第10回 石田波郷俳句大会

主催 清瀬市石田波郷俳句大会実行委員会
募集内容 「一般の部」 2句一組1000円。「波郷 清瀬に思いを寄せる句」1句と自由題1句、または自由題2句。新作未発表句に限る。「ジュニアの部」小、中学生対象。投句料不要。1句単位で応募。
宛先 〒204ー0021 東京都清瀬市元町1ー2ー11 アミュー5F 清瀬市生涯学習センター「石田波郷俳句大会」係
締切 平成30年7月31日(火)当日消印有効。 ジュニアの部は、平成30年9月6日(木)必着
選者 「一般の部」 石寒太、奥坂まや、鈴木しげを、高橋悦男、徳田千鶴子、西村和子、能村研三。「ジュニアの部」澤晶子、谷村鯛夢、永井潮、細見逍子
表彰式 日時/平成30年10月28日(日)、場所/清瀬けやきホール
詳細問合せ 電話042-495-7001(清瀬市 石田波郷俳句大会実行委員会)


石田波郷新人賞

主催 清瀬市石田波郷俳句大会実行委員会
募集内容 30歳以下対象。投句料不要。未発表作品20句一組(表題を付ける)。宛先、締切等は「石田波郷俳句大会」に準じる。清瀬市ホームページからも応募可。
選者 岸本尚毅、甲斐由起子、齋藤朝比古、佐藤郁良
賞 新人賞5万円、準賞2万円、奨励賞(大山雅由賞)1万円
詳細問合せ 電話042-495-7001(清瀬市 石田波郷俳句大会実行委員会)


平成30年度(第72回) 芭蕉翁献詠俳句

主催 伊賀市、公益財団法人芭蕉翁顕彰会
募集内容 投句料無料。【一般の部】【テーマの部「雪」】【英語俳句の部】はがき1枚に2句、各部門10句まで。一般の部は希望選者名を併記。【児童 生徒の部】2句一組、二組4句まで。
※他に、連句と絵手紙の募集あり。
宛先 〒518ー8770 三重県伊賀市上野丸の内117ー13 「芭蕉翁献詠俳句 ○○の部」係(※英語俳句の部はEメールでの応募可。10句までをeigo@basho-bp.jpへ。)
締切 平成30年7月31日(火)必着(児童 生徒の部は、平成30年9月4日(火)必着)
選者 【一般の部】有馬朗人、稲畑汀子、茨木和生、宇多喜代子、小澤實、鍵和田子、黒田杏子、坂口緑志、塩田薮柑子、棚山波朗、西村和子、長谷川櫂、星野椿、正木ゆう子、三村純也、宮坂静生、宮田正和【テーマの部】片山由美子 【英語俳句の部】河原地英武【児童 生徒の部】伊賀市の俳人の方々
賞 特選=賞状と副賞、入選=賞状。
詳細問合せ 電話0595-21-4081(公益財団法人芭蕉翁顕彰会)
http://www.basho-bp.jp/


春夏秋冬笑顔まつやま福祉五七五 夏

主催 松山市社会福祉協議会、マルコボ.コム(ふくし句会、ハイクライフマガジン「100年俳句計画」)選句
募集内容 福祉をテーマにした春季の句を、専用フォーム(http://www.marukobo.com/egao/)より応募。
締切 平成30年8月5日(日)
賞 「松山トリコ」 大賞(松山市社協会長賞)1点=道後温泉湯玉トートバッグ、優秀賞3点=ブックカバー、入賞4点=紙の湯カードケース
詳細問合せ 電話 089-921-2111(松山市社会福祉協議会)


夏井いつきの一句一遊

投句募集中の兼題

投句締切 6月3日
 人参の花、夏期手当
投句締切 6月17日
 漢字「原」、雪渓

4月度「天」獲得句

漢字「製」
木と皮と花の匂いの製靴店  小野更紗

八重桜
花四方の花にひしゃがる八重桜  一阿蘇二鷲三ピーマン
象のみな出づる月食八重桜  一阿蘇二鷲三ピーマン

蝌蚪の紐
蝌蚪の紐木屑のごとく淀みおり  やすお

聞茶
木更津の風きららかに聞茶かな  柝の音


俳句の街 まつやま
俳句ポスト365

6月の兼題

投句期間 5月31日〜6月13日
 海の日
投句期間 6月14日〜6月27日
 夏草

4月度「天」獲得句

三色菫
どの色の薬で眠い三色菫  多事

金盞花
おひさまが凸なら凹のきんせんか  薄荷光


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鑑(み)るという冒険


映画篇 演劇篇

文&俳句 猫正宗


第六十八回
『レディ プレイヤー1』&『楽屋 流れ去るものはやがてなつかしき』

 彼女とのデートに『バカルー バンザイの8次元ギャラクシー』の主役の服を選択する主人公。わかる、わかるよ。オタクだもんな。私のファッションの基準も、本郷猛とロボット刑事と宇宙刑事シリーズだよ。
 『レディ プレイヤー1』が描くのは、極限まで発達した仮想現実空間 オアシス。行き詰まった現実世界と違って、何にでもなれるし何でもできる。そこには、主に80〜90年代の古今東西の僕らの愛するもの『S W』からキティちゃんまでで溢れている。原作者は、僕たちと同様、そんな作品群を浴びるように育った世代だが、そんな世界を切り開いてしまった責任は俺が取ると言わんばかりに、監督として御大スピルバーグが登壇。彼でなければ、うんざりするような著作権の壁を、とても超えられなかっただろう。
 そのスピルバーグも明らかにモデルの一人の、オアシス創始者の死により起こった後継者争奪戦に挑む主人公。やがてそれは自分たちが愛するものを守るための戦いへ。
 本作は好きなものを好きでいること、そしてそんな人達を全力で認めてくれている。だから(知人曰く)「ゲームは一日一時間」みたいな結論じゃあ、ちょっと拍子抜ける。そりゃそうだ。でも、路上でオアシスにアクセスしている大勢の人のように、現実であんたみたいなチャンスに出会うことさえできない人間もいるんだぜ? それじゃ救われないよ。いや、でも多分それだけじゃない。じゃなきゃ原作にはない監督の敬愛するキューブリックパートをぶちこんだり、某大怪獣(じゃないけど)を嬉々として演出してみせるなんてことはないだろう。そうこれは継承の物語。「俺ら、こんなに面白いものをつくってきたし、愛してきたんだ。次は君だよ」って。
 因みに原作は、日本作品への愛がもっと濃かったりする。だから、いつか日本で作りましょうよ。レオパルドン(東映)とウルトラマン(円谷プロ)とミネルバ](東映 ダイナミックプロ)が機龍(東宝)と戦う『レディ プレイヤー1』を。

夢の死屍累々いつの日か月に

 永遠に出番を待つ女優たちが、古典名作の台詞を語り続けるという演劇『楽屋 流れ去るものはやがてなつかしき』(劇団だるまど〜る公演、作:清水邦夫、演出:前田浩和、出演:前田恵子、吉川美友紀、樋口時子、生部喜子、'18年5月5日、6日、シアターねこ)もまた、過去の作品の「蓄積」の上に意識的に立った作品といえるだろう。本作は、そんな引用される作品群までさらわなければいけないかなりの難物だと思うのだが。肝である女優陣も個性的な本劇団は果敢に挑戦していた。ぜひレパートリーにして、さらなる先を目指してもらいたい。その力がある劇団だと思うから。それにしても、第六十二回の『廃墟』の時も思ったが、かつて死んだとまで言われた新劇の名作を上演する劇団が増えてきているような気がする。そこには様々な理由があるのだろうが、その一つはやはり継承なのだろう。きっと、次に新たなものを生み出すための。そう、いつだって「過去が希望をくれる」(『仮面ライダー電王』より)のだ。

みな流れ去るとも夏の日のかもめ


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岡田一実の

句集の本棚



真清水
前澤宏光 著

発行 文學の森(2018年初版)
219ページ
定価 本体2667円+税

 著者の第四句集。抑制の利いた描写に確かな叙情がにじむ。
木の枝の影さしかはす春の土
軽く寄り軽く散つたる水馬
一枚の朴の落葉が水を堰く
 川だろうか、それとももう少し幅の狭い流れかもしれないが、たった一枚の「朴の落葉」で水が堰き止められている。「朴の落葉」にかかる水圧。広やかな「朴の落葉」の物質としてのリアリティが鮮やかである。
大年の欅の幹を日は離れ
押し寄する白浪も鳥帰る頃
秋の水小さき橋をくぐりけり
 川を「水」と表現した句では蕪村《春の水山なき国を流れけり》 が人口に膾炙しているが、ここでは「秋の水」である。澄んだその水が町などを走り「小さな橋」もくぐる。最小の表現の中で余情が深い。
春の雪どうだんは芽をたかぶらせ
水音に風音に鮎落ちゆけり
石榴咲く雨雲をまた近づけて
顔近づけて真清水を暗くせり
雨脚の見えはじめたる枯蓮
鳥の眼へ実は紫のねずみもち
ひたすらに八方瞠る冬の鵙
花びらの付きしままなる傘たたむ
すぐそこに鳥の尾のある梅の花
 「山暦」同人。


縄飛びの
新井竜才 著

発行 文學の森(2018年初版)
195ページ
定価:本体2500円+税

 著者の第三句集。大胆な比喩が一句に彩りを与える。
大花火一瞬空をつかひ切る
をどりの輪大きな月を掘り起こす
縄飛びの子が鞠になり鶴になり
蚊遣香抱き合ふ蛇のなりをして
兜煮の一の鰭撥ね春の雪
 「一の鰭」とは魚の胸びれについている「カマ」の部分のこと。一尾から二つしかとれない貴重な部位である。「兜煮」の艶艶した「一の鰭」が、「撥ね」ていることでより美味しそうな景となった。「春の雪」の重く大きな雪片を感じると情感が深まる。
人類の後をうかがふ蟾蜍
しつくりとゆかぬところが氷りけり
 「しつくりとゆかぬところ」とはどこだろうか。「しつくりと」感じるか感じないかは主観であるが、水分の多いものの「しつくりとゆかぬ」感じというのは共感できる感覚であろう。他は氷っていないのにそこだけ氷っている、その芯のような氷った部分だけを抽出していて面白い。
ゆふぞらや馬具一つなき瓜の馬
川も又山の眠りに倣ひけり
梨の花空は湾曲してをりぬ
落ちて添ふ日かげの椿日の椿
 「銀化」同人。


岡田一実(おかだ かずみ)
 2014年「浮力」にて現代俳句新人賞受賞。現代俳句協会会員。「いつき組」所属。「らん」同人。第二句集『境界 border』(マルコボ.コム)。2018年新句集上梓予定。


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新聞記事に隠された俳句を発掘する

クロヌリハイク


黒田マキ


雨に打たれ 腰をかがめて 田植え か な (2018年5月10日 朝日新聞より)

夏のような日差し 差し込む4月 か な (2018年5月10日 デイリースポーツより)

ブリやサケ 身を取った後に残る骨 (2018年5月10日 愛媛新聞より)

ゴールデンウイーク最終日の 執念 (2018年5月10日 愛媛新聞より)

駅へ向かう道の途中で、バラの花 (2018年5月10日 日本経済新聞より)


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100年俳句計画 掲示板



テレビ、ラジオ

NHK 総合テレビ(四国四県域)
「四国 おひるのクローバー」内 隔週火曜
『夏井いつきのムービー俳句!』
6月5日(火)、19日(火) 11時30分〜

TBS系列局 全国ネット
『プレバト!!』
毎週木曜 19時〜19時56分
 夏井いつきが俳句の査定を担当

南海放送
松山市政広報番組『大好き!まつやま しあわせ実り庵』
毎週火曜 20時54分〜21時(再放送 日曜11時40分〜11時45分)
 夏井いつきがナビゲーターとして出演

南海放送ラジオ
『夏井いつきの一句一遊』
毎週月〜金曜 10時〜10時10分
 投句募集の詳細は「100年公募計画」のコーナーを参照。

FMラヂオバリバリ
『俳句チャンネル』
毎週月曜 17時15分〜17時30分(再放送 火曜7時15分〜7時30分)
投句募集兼題
「冷麦、ダリア」6月12日締切
「蠅叩き、夕凪」6月26日締切
 WEB http://www.baribari789.com/
 mail radio@baribari789.com
 FAX 0898(33)0789
 投句には本名、住所をお忘れなく!
 「天」の句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。

 各番組の放送予定は変更される場合がございます。新聞やWEBなどで最新情報をご確認ください。


執筆

松山市『俳句ポスト365』
http://haikutown.jp/post/
 投句募集の詳細は「100年公募計画」のページを参照。

テレビ大阪俳句クラブ
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
「集まれ俳句キッズ」(夏井いつき選)
 毎週日曜タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井いつき選)
投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。
裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。
朝日新聞松山総局
〒790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル
まで。


イベント、講演等

平成30年度 近畿地方教化センター壇信徒大会
知恩院おてつぎ運動推進大会内 夏井いつき講演会
6月2日(土)
 総本山知恩院 法然上人御堂(京都府)

夏井いつきの一句一遊 17周年記念句会ライブ
楽しくないと俳句じゃないぜ!(公開生放送)
6月3日(日)13時〜15時30分(受付開始12時予定)
 宝厳寺(愛媛県)
 会場には駐車場がございませんので公共交通機関でお越しください。
 ご来場多数の場合は入場できない場合もございます。
問合先
 南海放送 営業部 電話 089(915)3850

公益財団法人 阿南法人会 第6回通常総会
夏井いつき講演会「100年俳句計画」
6月6日(水) 15時〜
 ホテル石松(徳島県)

NHK Eテレ
阿南市市制施行60周年記念事業
「俳句王国がゆく」公開収録
6月16日(土)13時30分〜15時30分
 阿南市文化会館(徳島県)
 夏井いつきが主宰をつとめます。
観覧申込
 入場無料。「郵便往復はがき(私製をのぞく)」に以下を記入してお申し込みください。
 往信用裏面 郵便番号、住所、名前、電話番号
 返信用表面 郵便番号、住所、名前
 返信用裏面 何も書かないでください。(抽選結果を印刷して返送します)
締め切り
 5月28日(月)必着
宛先
 〒790ー8501 NHK松山放送局「俳句王国がゆく」係
問合先
 NHKプラネット四国 電話 089(921)1181
 阿南市文化振興課 電話 0884(22)1798
 NHK徳島放送局WEBサイト http://www.nhk.or.jp/tokushima/

2018年度 五洋建設(株)四国支社 安全衛生環境推進大会
夏井いつき講演会
6月22日(金)15時10分〜
 ピュアフル松山(愛媛県)

啓林堂書店奈良店
夏井いつきミニトークショー及びサイン会
6月23日(土)18時〜
 株式会社啓林堂書店 奈良店(奈良県)

堺市美原文化会館
夏井いつき句会ライブ
6月24日(日)13時〜
 アルテベル(堺市立美原文化会館)(大阪府)
入場料
 前売 一般2000円、友の会1800円
 当日 共通 2000円
 未就学児童入場不可
問合先
 堺市立美原文化会館 電話 072(363)6868

桜蔭学園 夏井いつき句会ライブ
6月27日(水)10時40分〜
 桜蔭学園ホール(東京都)

NHK Eテレ
島田市民総合施設プラザおおるり開館35周年記念
「俳句王国がゆく」公開収録
6月30日(土)13時30分〜15時30分
 島田市民総合施設プラザおおるり ホール(静岡県)
 夏井いつきが主宰をつとめます。
観覧申込
 入場無料。「郵便往復はがき(私製をのぞく)」に以下を記入してお申し込みください。
 往信用裏面 郵便番号、住所、名前、電話番号
 返信用表面 郵便番号、住所、名前
 返信用裏面 何も書かないでください。(抽選結果を印刷して返送します)
締め切り
 6月6日(水)必着
宛先
 〒422ー8787 NHK静岡放送局「俳句王国がゆく」係
問合先
 NHK静岡放送局 電話 054(654)4000
 http://www.nhk.or.jp/shizuoka/
 島田市民総合施設プラザおおるり 電話 0547(36)7222


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魚のアブク



明惟久里 矢野リンドさんの「囀のまなか」とても良かったです。良質の絵本を大人が手にしたような読後感でまた読みたいなと思うぬくもりを感じました。いつかこんな作品をまとめられるようになりたいな。

でらっくま 新しい職場での勤務が始まりました。この歳にして新一年生、新入社員の気分です。

喜多輝女 急に暑くなりました。今年は春が短かったような気がします。今日、扇風機を出しました……四月中に扇風機出すなんて初めてかも……デス。


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鮎の友釣り


第239回

俳号 天野姫城(あまのひめしろ)

前回 テツコさんへ その俳号からやわな感じ(失礼!)がするのですが、災害にも負けない強い男であります。また、酔拳の使い手でもあり、酔うと名句ができるという……とはいえ、ほどほどに。

写真 (自転車の写真)私の愛車です。部品一つ一つ選んで完成させました。ポイントは、色! ……あ、モノクロだから分からないか(笑)

はまっていること 百均のマクロレンズで、花を撮影しています。望遠鏡のような画像が撮影でき、肉眼では見えないところまで見えます。「これで写生句もバッチリ!」とならない所が、悩みではありますが……(笑)

次回 立志さんへ 真面目で努力家。我が句会で一番年下なのに、頼れる軍師であり、良心でもあります。いつもありがとう! これからもよろしく!


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告知



AI vs 人類
俳句対局 in 北海道大学

7月13日(金)13:30〜17:00
北海道大学 学術交流会館 講堂


内容
AI関連の講演と、AI vs 人類、俳句対決第2弾「俳句対局」編
(1)講演者 松原仁先生(はこだて未来大学)他数名(予定)
  松原先生は、人工知能研究の第一人者
(2)俳句対局 北海道大学と札幌AIラボが開発したAI一茶君VS俳都松山からの俳人チーム数名

入場料
 未定

企画運営
 日本OR学会北海道支部、 札幌AIラボ 、北海道大学大学院情報科学研究科
 俳句ライフマガジン100年俳句計画(マルコボ.コム)

協力
 俳句集団itak  ほか

お問い合わせ先
 有限会社マルコボ.コム
 〒790-0022 愛媛県松山市永代町16-1 
 tel:089-906-0694
 fax:089-906-0695
 info@marukobo.com





俳句対局 龍淵王決定戦
出場者募集

8月5日(日)13時30分〜
会場 坂の上の雲ミュージアム 2階ホール
    愛媛県松山市一番町三丁目20番地
   
出場 観覧ともに無料。
出場者募集中。なお希望者多数の場合は先着順となります。ご了承ください。

問合 申込はマルコボコム 電話 089(906)0694





春夏秋冬(しき)笑顔
まつやま福祉
五七五

主催 松山市社会福祉協議会
   有限会社マルコボ.コム(ふくし句会 ハイクライフマガジン『100年俳句計画』選句)

福祉をテーマにした
春の五七五
結果発表


会長賞
春耕の段取り案じ父眠る  郁(愛南町)

優秀賞
スプーンの薬に添えて春の風  ほろよい(松山市)
寄り添いて母の爪切る豆の花  井上由美子(松山市)
車椅子デビューは今朝の苗木市  ふくろう悠々(神奈川県)

入賞
ゆつくりでいいと背中へ花菜風  輝(千葉県)
ながらへて桜の夜をたまはりぬ  岩宮 滋(松山市)
佐保姫とタンデムこいで海渡る  竹の子(松山市)
朝顔を蒔くゆつくりと育つ子と  野ばら(兵庫県)


年4回、福祉をテーマにした五七五を募集します。
人に優しくなれるような、五七五をお待ちしています。
夏の五七五募集中 8/5締切





6月2日(土)
100年俳句計画マラソン部主催
しまなみ海道を走ろう練習会

松山からはJRとバスでしまなみ海道来島海峡大橋馬島BSまで移動し、そこからは、ランニングやウォーキング、サイクリングなど、それぞれの体力に合わせて2時間ちょっと運動します。
多数の参加お待ちしております。

集合時間 7時00分
集合場所 JR松山駅
  9時30分〜11時50分までそれぞれランニング、ウォーキング、サイクリングなど
参加費 実費(JR代他3000円くらい?+打ち上げ代?)
申込先 100年俳句計画編集室(担当 キム)





にぎたつ連歌会&100年俳句計画合同連歌体験会開催!

簡単に連歌のレクチャーを受け連歌を体験します。
日時 7月22日(日) 13時より
場所 松山市男女共同参画推進センター(コムズ)
    愛媛県松山市三番町6丁目4番地20
参加費 無料
問合せ先 100年俳句計画編集室(担当 キム)





夏井いつきとともに俳句を楽しみ学ぶ季刊新聞
俳句新聞いつき組

参加登録料 1,000円(税込) 初回のみ
年間購読料 3,500円(税込) 年4回発行
 年1回、夏井いつきの句集の付録があります。

お申し込み、問合せは、マルコボ.コムまで
電話 089-906-0694
E-mail kumi@marukobo.com





新聞を塗りつぶしたら五七五
クロヌリハイク コンテスト 作品募集

 本紙を「後ろのページから開かせる」と評判の黒田マキさんによる「クロヌリハイク」。連載開始から丸5年、もっとクロヌリハイクを楽しんでいただこうとコンテストを開催します。
 入賞作品ほかを掲載した「クロヌリハイクカレンダー」を制作する予定です。
 多数の応募お待ちしております。 


募集内容

自由部門
愛媛新聞およびウイークリーえひめリックの紙面〈記事〉を使用したクロヌリハイク作品。

課題部門
課題紙面を使用したクロヌリハイク作品。


応募方法

専用の応募用紙に作品を貼り付けて、必要事項を記入し、 8月31日(金)必着で応募。
 応募用紙は愛媛新聞エリアサービス(販売店)、本紙7月号(年間購読者のみ)、愛媛新聞ホームページから入手できます。
クロヌリハイクウェブサイト
https://www.ehime-np.co.jp/online/information/kuronuri_haiku/
受賞作品は、10月中旬、愛媛新聞 ウィークリーえひめリック紙上及び『100年俳句計画』11月号にて発表予定。


審査員

審査委員長 黒田マキ(クロヌリハイク創案者)
審査委員  キム チャンヒ(ハイクライフマガジン『100年俳句計画』編集長)ほか




自由部門

最優秀賞(1名)
 1万円の商品券+クロヌリハイクカレンダー

優秀賞(5名)
 5千円の商品券+クロヌリハイクカレンダー

佳作(15名)
 2千円の商品券+クロヌリハイクカレンダー


課題部門

最優秀賞(1名)
 5千円の商品券+クロヌリハイクカレンダー

優秀賞(3名)
 3千円の商品券+クロヌリハイクカレンダー


応募先

愛媛新聞販売所協同組合
「クロヌリハイクコンテスト」係
〒790-0067 愛媛県松山市大手町1-12-1-1F


問い合わせ先

愛媛新聞エリアサービス石井南
電話 089-957-5613 (受付:平日 9:00 〜 17:00)


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編集後記


キム チャンヒ

 俳句に出会った頃、驚いたのが添削という行為。まるで自分の描いた絵に他人が筆を入れるような行為で、「添削してくれて嬉しい」とは全然思わなかった。それは私が絵を描くからかもしれないが、添削に対しては嫌悪の方が強く、「この作品はこうすればこう読まれる」程度のアドバイスだけで良いと思っている。
 そんな私でも添削されて嬉しい場面がある。それは今月号の特集で紹介したにぎたつ連歌会に参加したとき。発句から挙げ句まで参加者の議論によって作り上げる連歌は、作家個人の感情や表現よりも、作品集全体の調和や調べ、展開の方が大切。従って自分の句を他の方の提案により直されてゆくことは、チームとして当然の行為であり、作品集を作る上では当たり前のこと。また、自分の句が取られなかったとしても、作品集の生まれる瞬間に出会えるだけで幸せでもある。
 俳句を「座の文芸」と言う方もいらっしゃるが、連歌に参加すると俳句はつくづく「個の文芸」だと思う。そして連歌に関わることで、より深く俳句を知ることも出来る。連歌未体験の方は、是非とも体験して頂きたい。 


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次号予告


248号 7月1日発行予定

俳句を並べよう! 作品集を作ろう!



お得で便利なマルコボ.コム直販定期購読! 巻末の案内をご覧ください
お申し込みの方へ、毎月末頃に最新号を送料無料でお届けいたします!
(住所変更の際は必ず編集室までご連絡ください)

『HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画』は以下の書店でもお買い求め頂けます。

愛媛県
 明屋書店 ※一部店舗のみ
 ゆらり内海(愛南町)
 原田書房(今治市)
 子規記念博物館(松山市)
 紀伊國屋書店松山店
 ジュンク堂書店松山店


HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画
2018年6月号(No.247)

2018年6月1日発行

編 集 水谷雅子
    有谷まほろ
    松本昌子
    山澤香奈

編集長 キム チャンヒ

発行人 三瀬明子