100年俳句計画 2018年2月号(No.243)


100年俳句計画 2018年2月号(No.243)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。






目次


巻頭リレーエッセイ
まるにっちゃん


特集1
第11回 夏休み句集を作ろう!コンテスト 結果報告



好評連載


作品

百年百花
 松本だりあ/神楽坂リンダ/三島ちとせ/キム チャンヒ

新 100年の旗手
 矢野リンド/めならべ

新 100年への軌跡
 俳句 鈴木総史/松本千鶴
 評  平山南骨/十亀わら


読み物

美術館吟行/恋衣

Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳 朗善)

JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭

ラクゴキゴ。/らくさぶろう

mhm通信/小田寺登女

近代俳句史超入門/青木亮人

百年歳時記/夏井いつき

鑑(み)るという冒険/猫正宗

句集の本棚/岡田一実

クロヌリハイク/黒田マキ


読者のページ

100年投句計画
 選者三名による雑詠俳句計画/桜井教人、阪西敦子、関悦史
 自由律俳句計画/きむらけんじ
 詰め俳句計画/山澤香奈
 100年投句計画 投句方法

短歌の窓/渡部光一郎

百人百様E-Haiku/菅紀子

俳句ポスト365

一句一遊情報局

疑似俳句対局/美杉しげり

THE BEATLES 213 PROJECT/夜市

100年俳句計画 掲示板

鮎の友釣り



告知

編集後記

次号予告





巻頭リレーエッセイ



なぜ走る
まるにっちゃん 

 三十年前、父は六十の手習いでマラソン競技を始めた。
 五キロ十キロと、各地の大会に参加し五年後には、ハーフマラソンを完走する迄になっていた。
 平成八年、二ヶ月間の闘病生活の後、他界した。遺品整理の際、ホノルルマラソン等、有名な大会のパンフレットを残していた。夢は息子とフルマラソン完走、この言葉が心の片隅に残っていた。
 平成二十三年、愛媛マラソンの制限が四時間から六時間となる。「いつき組」きとうじんスポレク部長、ほろよい、一走人御夫妻に背中を押されて参加を決意した。
 当日は大会スタッフ、ボランティア、いつき組皆様の声援に後押しされ、完走することができた。
 後日、この企画の発起人は草心さんだと知り父の想いと重なった。以降毎年申込をしようと決めた。
 今年は走れる、父と一緒!
 また会いに来ましたよ草心さん!!

なぜ走る二月の風を聴きたくて

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第11回 夏休み句集を作ろう!コンテスト 結果報告



 小中学生を対象とした、「第11回夏休み句集を作ろう!コンテスト」(主催:朝日新聞社 マルコボ.コム 日本俳句教育研究会)。このコンテストは、一年間で作った俳句40句を、句集に仕上げて公募する企画です。今年は全国から、309作品(小学生276作品、中学生33作品)の応募がありました。
 審査は昨年11月、三浦和尚(愛媛大学副学長)、夏井いつき(俳人)、松山市立潮見小学校教諭の赤松聖則、松山市立栗井小学校教諭の兵頭俊昭、内屋敷敦(朝日新聞松山総局総局長)、キム チャンヒ(本誌編集長 装丁賞のみ)の計六名(敬称略)で行い、「最優秀賞」、「優秀賞」、「学校賞」、「装丁賞」、「一句賞」の各賞を決定しました。
 1月6日に松山市立子規記念博物館にて、表彰式を行い、夏井いつきによる句会ライブなどを楽しみました。


最優秀賞 小学生の部
『セナ』
広島大学附属三原小学校 3年 平木惺菜

まんぷくを家ぞくで見せ合うお正月
見たゆめを思い出せないお正月
とこの間にしん空パックのかがみもち
気づかないうちになくなるお年玉
ふくぶくろ急いで急いであと一つ
はしごのり見てられなくて空を見る
あやとりがくずれて終わる昼休けい
かぜひきの昼は長くてさみしくて
すきやきの玉子はちょっといい玉子
豆まきのおにはやさしい神主さん
校庭のどろにまみれた雪だるま
かけ算を習った夜に雪がふる
しもおりる土から頭出すきゅうこん
なわとびの息はハアハア新記ろく
三階のまどにもとどく落葉たき
マスクした人ばっかりの二番車両
サッカーの男子の強いけり止める
さざんかを見てあの歌を口ずさむ
つかめないボロボロゆどうふ食べれない
つめ先にのこるクレパス春の色
春の庭三歩あるいたとなりの子
のら犬がふみ切わたる春の風
春うらら止まってばかりの土手すべり
ゴミすて場空きカンつもる夏の朝
ポケットにあめ玉三つ山のぼり
お気に入りまくらにのこる昼ねあと
絵日記を今日から夏でうめつくす。
かき氷食べたいだけの野きゅうかんせん
せみしぐれ毎年同じ人気の木
リコーダーシの音出ない夏休み
母の日にせんたく物を姉とほす
ガラポンの五とうはもも色ソーダ水
母さんにせなかさすられ昼ねの子
しゅく題は、絵からはじめる夏休み
げんかんにひっくりかえるセミのしがい
ブリッジの逆さに見える雪のみね
姉ちゃんとそろいのくつで山のぼり
夏休みもう半分がすぎちゃった
ほおずきを鳴らすコツまだつかめない
落し物入れにやさしさつまる秋

作者より
 俳句はお姉ちゃんがしていたのをきっかけに幼稚園の年長組からはじめました。普段は寝る前にお姉ちゃんと作っています。
 今回の作品集は、面白いことや気になった事をメモしながら作りました。1つ作るのは大変だけど、40句集まったらとても嬉しかったです。
 一番気に入っている俳句は「ポケットにあめ玉三つ山のぼり」です。おじいちゃんと一緒に山登りをしたときの楽しい気持ちを思い出すからです。


最優秀賞 中学生の部
『展望台』
済美平成中等教育学校 3年  滝下真央

春の風ビーズの穴の見失う
紙風船指のかたちにつぶれたり
水温む駅のベンチを独占す
春の昼おやき屋台の長き列
やりきれぬ思ひ抱へていぬふぐり
赤錆びるガードレールやすみれ咲く
ベビーカーゆつくり押すと梅香る
水仙や隣の空き地何が建つ
窓側に頭傾むく春のバス
陽炎やスタートラインを引き直す
一行で終わる日記や麦青む
行く春や旅行みやげの花の種
ペンギンの白き腹見る立夏かな
ごま和への小鉢まよふや夏立ちぬ
五月晴端からくずすオムライス
カフェオレの底の苦きや青葉風
焼き鳥屋扇風機の羽鉛色
夕凪や陽気な船内アナウンス
夏蒲団ねじれて細くなりにけり
夏の暮酸味の効いた角煮かな
食パンに今日は何塗る秋の風
ボート漕ぐしぶきや秋の虹となる
ふるさとの地形模型や小鳥来る
湯上がりを待つ間に桃の変色す
兄の指蟷螂の生死支配す
秋の声曇の似合ふ美術室
母よりも祖母に似る娘や曼珠沙華
毒ガスの化学式より敗戦忌
駄菓子屋の小瓶に詰まる胡桃かな
古本屋巡る旅なり寒南天
冬夕焼電気料金請求書
凍星や徒歩十分の最寄駅
受験生頭の上のオリオン座
湯豆腐に菜箸の跡の残りけり
味噌汁のかぶらの角のくづれたる
飲み干して手もと冷たきスープ缶
冬晴るる少年の日の川辺かな
正月の凧や松山城下町
春待つや百科事典のインクの香
小春日のふたりに広き展望台

作者より
 昨年優秀賞だったので今年は一番を!!と思い応募しました。
 表紙とタイトルは締切前日まで悩みましたが、40句目の言葉がピンときたので、それをタイトルにしました。表紙は鹿島の展望デッキをイメージしています。
 小学生の頃から俳句にかかわっている子が最優秀をとっていて、中1ではじめた自分でもとれるか不安だったが、なんとか皆に追いついてとれたことに驚いたし、よかったと思いました。
 高校生になったら神奈川、龍谷俳句の最優秀を目指したいです。また、俳句甲子園全国大会にも出場し上位へいきたいです。


優秀賞 子規博特別賞
『耳朶(じだ)』
大阪市立玉津中学校 1年 馬場叶羽

ケイトウや猫のうすき耳朶の血管
ジェットコースター秋の波の光
秋のうみ階段跳んで旅終へる
静御前捕えられた山の蛾眉
焚火ぶすぶす消えた何か足りない日
冬青空フェレットの食ふ飴の赤
寒晴や古いエアコンのほこり
空風は無色透明無味無臭
冬雨の止みて家出を終らせる
ささめ雪やむ山寺の千社札
凍れくるこけしの眉は細く描く
老猫のひげのギグシャグ春北風
冴返る学級のトカゲの訃報
円周率と蛙子は回る回る
春きざすハエトリグモの目玉へと
入学や制服の猫の毛つまむ
若冲の亀の目線の先に春
クッションの春の日ざしの余香へ猫
朧夜や枕の飼猫のにほひ
野良猫のをさなき声や春の闇
龍天に登るカラスがクシャミする
薫風やうすみどりの蛍光ペン
校訓の石碑アゲハ蝶飛び立つ
新緑の公園雨吸う噴水
初や朝会のチャイム消えゆく
返り梅雨テスト返却日の下校
古墳の石室トカゲの尾が残る
ミンミンの雄黄色の腹静止
向日葵の種まく猫の一回忌
無欠なる死体のや夕日照る
糸通し二つこわした夏終わる
無月のサバンナ逃げ遅れたキリン
朝顔のねじれたつぼみ再テスト
オンドリが叫ぶカンナの花開く
ポケットの百円熱し処暑の昼
秋霖やジャズが流れる散髪屋
秋声や正倉院の笙の音
蔦がゆれる魔王の森の入口
秋つもりゆく石庭や龍安寺
秋服はビロード猫の耳朶に触る

作者より
 俳句は小学一年のとき「奥の細道」を読んで興味を持ち作り始めました。普段思ったこと、感じたことをノートに書いておき、時間があるときに一気に作っています。
 表紙は、本物をよく見ながら納得するまで何度も糸をほどいて刺しゅうをして苦労しましたが、情景がうかぶ句になるように心がけ、読んでいて楽しめる順番に並べた四十句とデザインや素材が合うように工夫しました。俳句と表紙どちらも今の自分の実力を出し切ったと思います。
 一番気に入っている俳句は「ケイトウや猫のうすき耳朶の血管」です。飼い猫の耳朶を上手く表現できたと思います。


優秀賞 朝日新聞松山総局長賞
『蒼 あお』
東温市立重信中学校 1年  伊葉小夏

読みかけの本を並べて初茜
制服のボタンを留めて大試験
鉛筆の先に集めし冬北斗
冬枯れの泥棒草や誰を待つ
冬の空白鉄骨の観覧車
不細工な蝶々結びや冬日和
長針は十二に向かっていて小春
様々な小言並べておでん食ふ
イヤホンに流れる鼓動春を待つ
芝色のリュックサックや春近し
子うさぎの拍動に似た恋心
彫刻刀は深く春の海浅く
理科室の春愁人体模型かな
黒板のざらつき指に残る春
春雷と教室に響く怒号
担任の前髪なびく春うらら
さよならと雪間の草の花言葉
卒業や心と真逆空は青
十二歳の線路は続く菜の花菜の花
蒼き日々の始まり入学の朝
長台詞覚えてアマリリス咲いて
額の花宇宙に散りばめた夜
制服に蒼いインクの滲む夏
髪洗う言いたい事は泡となり
五校時の数学ねむくなりて夏
負の数の減法五問夕立風
腐葉土の森林深く月涼し
夏蝶に弾圧されている私
昨日より校庭の蝉鳴いてをり
校庭ニミンミン蝉ノ恋ノ唄
たまには耳を塞ぎたくもなる晩夏
カーテンコールの涙と花ムクゲ
タンドールカリーは甘くない九月
通学路恋の話とねこじゃらし
三日月のざらざらは女子トイレの悪口
席替えの君は窓ぎわ桐一葉
我が心施錠されていて秋思
糸瓜忌の降る雨は星の如く
恩師に会ひにゆく秋夕焼素直
まだ何も答えが出ない柿落葉

作者より
 この『蒼─あお─』は、青春と日常生活をテーマに詠んだ句を集めた作品集で、その内容に合った「学校」というリアルな現場で撮った写真をもとに表紙をデザインしたいなと思い、実際に教室を借りて同じ演劇部の友達にも協力してもらって、表紙を仕上げました。
 この句集は小学校卒業 中学校入学という節にあたる、私の感情の変化や中学校入学後の日常生活を自分なりに表現した作品です。どの句も何度も推敲をくりかえして丁寧に仕上げることが出来たのではないかと自己満足しています(笑)。
 これからの目標としては、もっと俳句活動の幅を広げていきたいです。俳句はつらいとき苦しいとき楽しいとき……私のすべての感情に寄り添ってくれる1番大切な「友達」なのでこれからも共に過ごしていきたいです。


優秀賞
『一ねんせいのミッケ!!』
松山市立東雲小学校 1年  河村みなみ

いよかんととけいがほしいたんじょうび
一年生はやねはやおきチューリップ
だいすきなともだちできたさつきばれ
みなみかぜたしざんカードしんきろく
おんどくのしるしわすれたれもんじる
とじこめるろくろっくびのせんぷうき
なつやすみどこにもいけないランドセル
うずまきの貝の中までありのみち
じてんしゃのぺだるがいっしょはるのかわ
いしのやねはしっこ欠けてせみとまる
あおあらしジョーカーなんてあっちいけ
ぬけたはのかわりにさしたさくらんぼ
さらのうえトマトがかいた三かくけい
どんぐりと四まいならんだ一円だま
つゆぐもりおとなのちょっとはちょっとじゃない
はるのにじこどものちょっとは五びょうまえ
まえがみをちゃんととめとくなつのあさ
はやおきのかめにあいたいかぶとむし
なつのかわいしのすきまにあしはまる
ぬけたはのすきまにストローしゃぼんだま
かいがらがななめにたったなつのほし
びょういんのまどにはりつくあかとんぼ
げんかんでかまきりのあしふんずけた
えんぴつがノートのしたでひるねする
あきまつりいるかのふうせんほしくなる
ねったいぎょマガンダンハポンゆってきた
くさだらけはいりたくないなつのかわ
ミサンガをいとことつくるあきのほし
なつの雨チーフリングがなくなった
パレットであきのゆうやけまざってる
なつのなみびんにえいごがかいてある
へびであるたまごにかいたスクラッチ
三人ではいたつがかりあきのあさ
すずむしやいうこときかないドミソ
ミサンガをぬらしたくないあきの雨
かあさんとゆかたであるくつうがくろ
なつおわるむらさきファイルとどかない
げんかんのやもりのあしおとドレミファソ
てがすべるつりかんやめたうろこぐも
とどかないうさぎのあなはいしの上

作者より
 俳句は、お母さんにやってみたらと言われてはじめました。暇なときに作っています。
 今回は40句出来たのでコンテストに応募しました。
作品が出来上がってとても嬉しかったです。表紙を一番工夫しました。
 一番気に入っている俳句は「いよかんととけいがほしいたんじょうび」です。上手に出来たからです。


優秀賞
『夏の山』
今治市立常盤小学校 4年  杉本優馬

青葉風口を大きく歯科けんしん
子犬の毛服にからまる梅雨ぐもり
ハッカ味こっぱみじんに梅雨明ける
ヤマボウシ雨のしずくがあふれ出す
ポンプ車の水はまっすぐ夏の山
雷に向かうほうおう金閣寺
雨上がりレンと数える夏の星
空気でっぽうソレミでとんだ南風
夏ざしき宿題終えてねむくなる
けのびしてプールの中は無重力
ラジオ体操サンダルはいて公園へ
教会の庭はびしょぬれ水でっぽう
サメの歯の中に入った夏の旅
干し柿の種を口からはじき出す
コイントス高く上がったいわし雲
合しゅくでぬけた歯二本かきを食う
秋あかねだせよ出せよと飛びまわる
学級園ぼくをとびこえバッタとぶ
秋の風テストろう下へ宙返り
雨の中一等取った運動会
表しょうじょう呼ばれて立った秋うらら
木の葉まうはしごでザクザク植木屋さん
冬どなりまるめてのばす手話の歌
等カードぎゅっとにぎった冬の空
ぷるぷるとふるえるナナに毛布かけ
ローマ字で日本と書く十二月
クリスマス炎のごとき朝の空
初ごよみライオンキングの父強い
初空やなわとび百回とんでやる
初めての黒いグローブ小雪まう
六人でゲレンデすべるびゅんびゅんと
冬しばに陽気にねてるナナとぼく
だがし屋のガムは当たるよ冬ひばり
水仙の頭出ている庭のすみ
テーブルの下にねころぶ春月夜
しりとりをしながら見上げるおぼろ月
あったかいリリーをだっこ春よ来い
初桜ズバンとボールキャッチする
ランの花ぽとりと落ちる春の昼
コルクせんねじって開ける春うれい

作者より
 好きな食べ物は肉うどん
 好きな花はコスモス
 好きな魚はマグロ
 好きな教科は算数
 行ってみたい国はブラジル
 俳句を作るのはむずかしいけど楽しいです。
(句集プロフィールより)


優秀賞
『RED』
広島大学附属三原小学校 6年  平木結

体育の仮病見透す虎落笛
風邪薬飲む母に汲む温い水
雑音のカーラジオで知る明日の雪
出張の父と見つけるオリオン座
不安増す受験の朝の大渋滞
週明けの教室香るヒヤシンス
快晴や校舎見下ろす奴だこ
凍ついた車の下ににらむ猫
雪山のメイクは朝濃く昼薄く
迷ってる私の背を押す冬銀河
指先に感触のこるネコヤナギ
算数の難問解くや春がすみ
風光るやるのは今なんだと思う
釣り船に揺られて酔って桜鯛
春うらら瀬戸の波間に垂れる糸
図書館の新刊めくる春の風
冴返る野球場には人まばら
くつ下に穴があいてる卒業生
指先に息吐いて弾く卒業歌
エアコンの掃除完了夏が来る
母の愚痴スルーしてみた熱帯夜
七日後のセミと自分を想う朝
へばりつく水着と戦う更衣室
海霧にシャッターチャンス狙う人
夏休みガードレールの先は海
好物のメロン拒否する反抗期
外灯に寄りつく羽蟻ゾワゾワ
父と漕ぐ動物園の貸しボート
薫風や階段一気に駆け上る
湧くナイター九番打者の三塁打
むせかえる汗の匂いのエレベーター
先生のマシンガントーク稲妻
渡り鳥私の知らぬ国目指す
老犬と色なき風の散歩道
別名は今日知ったばかり曼珠沙華
優勝旗逃す最後の運動会
今日買った歳時記開く天高く
秋晴れや今日解き終えた問題集
休校の損な早起き台風圏
つゆ草の色が出せない六校時

作者より
 小学3年生の夏休みの宿題をきっかけに俳句をはじめました。普段は寝る前に母にお題を出してもらい、妹と作っています。
 今回の作品は、俳句は満足していますが、春夏秋冬のバランスをもっとよく考えればよかったです。また、たくさん作った句の中で40句にしぼるのが難しかったです。
 「指先に息吐いて弾く卒業歌」が気に入っています。オーディションで奏者には選ばれなかったけど、この俳句が代表の句に選ばれていてうれしかったからです。


装丁賞 優秀賞

『いなかぐらし』
宇和島市立番城小学校 3年
谷本悠斗

『思ひ出』
松山市立みどり小学校 6年
山崎志音

『あゆむ』
愛媛県立松山西中等教育学校 2年
山内真穂


装丁賞 入賞

『たんぽぽのわたげ』
東温市立北吉井幼稚園 年長
豊島佐菜

『キスピカリ』
新居浜市立船木小学校 1年
伴野詩

『悠宇の夏のひとりごと』
松山市立味酒小学校 2年
高田悠宇

『きょうりゅう』
砥部町立広田小学校 2年
中島寿太

『わたしの夏休み』
江東区立越中島小学校 4年
小谷結桜

『金色の流れ星』
愛南町立家串小学校 4年
織田拓海

『アンコールワットへの旅』
埼玉県寄居町立用土小学校 5年
橋遥香


一句賞 優秀賞

松山市立湯山小学校 1年 三浦弘太郎
かぜかおるくつをじぶんであらった日

愛南町立家串小学校 2年 浅野迦恋
むきげんのマッサージけん星月夜

松山市立堀江小学校 4年 武田琉里
ふみ切りを電車すぎれば赤とんぼ

今治市立桜井小学校 4年 野村颯万
母さんの留守は冷たい勝手口

江東区立越中島小学校 5年 小谷拓陸
遊覧船めざしウミネコ急降下

愛南町立家串小学校 5年 高魚璃空
冬北斗ぼくの心臓一つだけ

江東区立越中島小学校 6年 吉田小夏
お昼は一人夏雲は動かない

愛南町立家串小学校 6年 伊勢雅姫
図書室へこっそり入る春の暮

松山市立雄新中学校 1年 宇都宮駿介
プラゴミに昨日の猛暑捨ててきた

愛媛県立松山西中等教育学校 3年 岡ア唯
初雪と朝刊知らぬ間に届く


一句賞 入賞

東温市立北吉井幼稚園 年長 豊島佐菜
トクトクとしんぞうがなるふゆのあさ

愛南町立家串小学校 1年 村上彩夏
とれたてのひじきをもってがっこうへ

愛南町立家串小学校 1年 織田航平
かくれんぼ五にんかくれるせみのこえ

愛南町立家串小学校 1年 藤井龍汰
はんちょうがくちぶえふくよかぜひかる

愛南町立家串小学校 1年 松原翼
もしゃもしゃのかいそういっぱいはるのうみ

松山市立味生小学校 1年 平原紀香
こげだしたいちりんしゃのまえなつのちょう

松山市立久米小学校 1年 岸恵悟
おおじいじおおばあばのいえさるすべり

愛南町立家串小学校 2年 前田航輝
とれなかったボールとぼくのなつぼうし

砥部町立広田小学校 2年 窪田菜々望
ごしごしとバットをあらう冬の空

砥部町立広田小学校 2年 日野林一都
もんだいがぎょうれつになる春のゆき

砥部町立広田小学校 2年 前田しずく
秋たかしおもいっきりが大せつよ

宇和島市立番城小学校 3年 山口新太
さつきやみ作文いつも金曜日

愛南町立家串小学校 3年 兵頭海音
ゆりの花ゆっくりゆれるわたしたち

愛南町立家串小学校 3年 山本文太
決まり手は右上手なげセミの声

愛南町立家串小学校 3年 兵頭叶武
コブダイのむれがわしゃわしゃ夏の雲

愛南町立家串小学校 4年 織田拓海
満月や机の中のひみつの絵

愛南町立家串小学校 4年 伊勢小葉
自えいたいの船が光るクリスマス

愛南町立家串小学校 4年 松原琉也
おれの名はひみつにするぜ雲のみね

愛南町立家串小学校 4年 兵頭太嘉
すず虫の声だけのこる体育館

西予市立中川小学校 4年 亀岡一稀
ひだりからみぎむいたねこはるの雨

西予市立中川小学校 4年 河野将大
びょう室がやっとかわった秋晴や

愛南町立家串小学校 5年 末弘力也
黄金のタンポポひとつ島ひとつ

砥部町立広田小学校 5年 松本圭太
給食のスープあったかイチョウ散る

江東区立越中島小学校 6年 穂積華乃子
リコーダー高いレ出ない朝曇り

愛南町立家串小学校 6年 織田凜花
六匹の金魚花びらのように

愛南町立家串小学校 6年 高魚涼
夏あざみザクッと切れる石包丁

愛南町立家串小学校 6年 兵頭玲勇
逆立ちのイルカのおひれ夏の雲

愛南町立家串小学校 6年 小川大飛
宿題はフェリーの中で冬の雨

西予市立中川小学校 6年 山口涼
プール後選んだアメは青りんご

今治市立桜井小学校 6年 福田実桜
夏木立ゴムの短い星のシュシュ

松山市立みどり小学校 6年 山崎志音
右寄りの弁当の具や夏の空

今治市立日吉中学校 1年 曽我周海
離陸して黄河をさがす秋夕焼

江東区立深川第七中学校 1年 前田明楽
ラケットのガットで切れる玉の汗

沼田市立沼田中学校 3年 大橋弘典
戻り梅雨村のバス停乗車なく

愛媛大学教育学部附属中学校 3年 渡邉滉矢
首もとにたゆんだマフラー晴れわたる


学校賞

学校賞 最優秀賞
 愛南町立家串小学校

学校賞 優秀賞
 江東区立越中島小学校
 砥部町立広田小学校
 西予市立中川小学校

学校賞 奨励賞
 宇和島市立番城小学校
 広島大学附属三原小学校
 今治市立桜井小学校


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美術館吟行


愛媛県美術館 所蔵品展
「生誕140年記念 中川八郎」
吟行会

文 恋衣

取材協力 愛媛県美術館
 ご紹介した作品展は1月28日(日)まで開催中。
参考資料 愛媛県美術館 目録等


 クリスマスの前の日、いつものように美術館の楠を眺めながら入館する午前十時。ロビーに集合。大玻璃という額の中の大いなる三本の楠が迎える。
 本日は、愛媛県美術館所蔵品展生誕140年中川八郎の作品を主に鑑賞。
 先ずは、学芸員の喜安さんとともに二階へ。
 中川八郎の作品に立つ前に、経歴等を傾聴。
愛媛県喜多郡天神村生まれ。大阪で叔父の家業を手伝うために日本画を学んだ後、上京。
「1本の線にも神経を使え」という師、小山正太郎の教えに従い、線描を主体とする写生画を製作。アメリカへ、欧州へ。3度目の渡欧で病に倒れ、帰港地神戸にて没。
 油絵と水彩画の違いが分かるという(喜安さん談)八郎の世界へ、最初の展示作品はこちら。

「杏花の村」
遠山の白し杏の花ざかり  マーペー
縁うすき人のふるさと薄霞  猫正宗

 静かに迫りくる風景の中に私達も立っている。写生旅行をした日本各地の様々な「風景」へ。

「漁村風景」
魚屋の二階から見る遠かすみ  日暮屋

 いくつかの風景の前に少しずつ、それぞれに
足を止めて、そしてみんながとどまったのは、

「裾野残雪」
薄暮吸ふあさむらさきの雪野原  マーペー
もののあはれは残雪の裾の青  遊人
すべりっぱなしの人生に残雪の青さ  日暮屋
転がればうすむらさきの雪の空  恋衣
暁の裾野へ残雪沈めけり  ひかる

 美しく広がるむらさきの空と一面の雪の中に
広げられている緻密な風景、人の営み。
 美術展に行けば必ず誰もが、この日の、この
一作を持つ。逢えて良かったこの絵に。この作品に。

 小諸追分の地名としてしか知らなかった浅間。

「浅間之秋」
さはやかを喰みたる木々と牛の群れ 恋衣

 どちらかと言えば暗さを感じる絵。しかし、
その中にある息を呑むような美しさに触れる。

「風景(投網)」
ゆれるのは水鳥のゆくただ水面  チャンヒ
均等に水面も空も暮れる秋  マーペー
つとめてのしじま水面に浅き春  猫正宗
船上の投網見てゐる鳥六羽  遊人

 水彩画の運命は、退色。退色を防ぐために、
保存。2018年は、お目にかかれない作品で
あるらしい。

冬枯や山森沼の退色す  ひかる

 いくつかの「風景」を更に。
春はあけぼの鉛筆一本の景色  遊人
あきもせず日暮まで釣る花うぐい  日暮屋

 そして八郎の作品を締めくくるのは、海外
作品。

「アラブの母子」
見てるから見られる日盛りの母子に  チャンヒ
片蔭も消えて沙漠の民の母子  猫正宗

 そこに佇み、息遣いが聞こえそうな母子。
 生誕140年八郎の愛媛県美術館所蔵の全作品を堪能。

 終生の友人であった吉田博は、中川の遺作集に『彼の芸術は彼の性質そのままの厳粛穏健さを見せ、些かの衒気もなく、「真面目」そのもの一貫した表現であった』と寄せている。
そして、中川八郎と同時代を生きた画家の作品へ。

「丘の上の家」吉田博
終りは始まり冬雲の迫る家  チャンヒ

 松山の一景
「松山新立橋」大下藤次郎
草萌る新立橋に天秤棒  遊人
川面ピンクに染め朧あれっきり  日暮屋

 松山出身の杉浦非水の作品と非水が使用していた陶器製のパレットに残るかすかな色に注目。

「笑花園」大下藤次郎
笑花園春のうれひの女かな   遊人

「秋景」丸山晩霞
日の当たるはうより紅葉始まりぬ  遊人

 これを機に日本の美術と西洋の美術の相互の
影響も調べてみたい。と思う。
 愛媛県県美術館の所蔵品展の作品は、私の中にいつもいつの間にか静かに豊かに棲みつく。
 次回もまた、きっと。

ひかり断つ部屋に二月の水彩画   マーペー


中川八郎「裾野残雪」1920年 油彩、画布
残る青集めて未だ春遠き  猫正宗


中川八郎「風景(投網)」明治時代後期 水彩、紙
鳥のみる投網のゆくへ波しづか  恋衣



きさらぎ恋衣
絵画をJAZZをこよなく愛する俳人 。


次回吟行会 2月10日(土)
愛媛県美術館「所蔵品展」吟行会
朝10時現地集合
参加費無料(入館料は別途)
事前に100年俳句計画編集室までお申し込み下さい。
TEL 089-906-0694


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2017年度 第三期 第三回


寒晴の耳
松本だりあ

山眠りこけ獣らの眠りこけ
冬木の芽へ雫寄り添ふ払ひやらん
置き薬持つてきました大氷柱
白鳥の留守の水面へ寒月光
人日のホイルキャップの行方追ふ
寒晴の耳のひくひく河馬浮上
寒晴の空へかけ声杵の音
狛犬の破顔一笑牡丹雪
星を見るためのベンチよ日脚伸ぶ
馬の背の隆起なめらか春きざす
機織の音の強弱シクラメン
オムレツに匙深く入る春浅し

1942年生まれ。双子座。句集『ダリア』(編集アトリエまる工房)。句集『海に遊んで』、詩集『おばあちゃんの魔法の苺』(有限会社マルコボ.コム)。


花キャベツ
神楽坂リンダ

シャンプーの切れてフコフコ雪催
赤子より重き白菜抱いて来る
一斉にヰずまひ正す牡丹鍋
順風満帆波の音たて落葉掃く
もゝいろの冬日透けゐる猫の耳
鮟鱇の肝食うてから物語る
流木に意志あるごとし白千鳥
雪霏霏と明日のためのココア飲む
つつがなきひと日と記す花キャベツ
一枚は母の代筆賀状書く
黒豆の艶てふひかり舌に乗せ
あらたまの尻やもくもく蒙古斑

句集「りんご飴」(マルコボ.コム)を上梓してはや7年が来ようとしています。あれから4人の子供たちは皆結婚し、2018年2月には6人目の孫が生まれます。


燐寸箱
三島ちとせ

寒晴や互ひを探す馬の耳
霜枯の草舐めてゐる種牡馬かな
狐火や斜面に大き採石場
集落に伝はる苗字炭を買ふ
もち米を蒸すストーブの胴真つ赤
保養所の窓に明るき氷柱かな
大寒や名刺代はりの燐寸箱
お湯割りのコツプに曇り寒厳し
除雪車や椅子のちひさき仮眠室
咳喧し等間隔のあばら骨
息を手に冬暁の競技場
焼け残る薪の長さや寒稽古

昭和六十三年一月二十四日生まれ
北海道生まれ、北海道在住
三十歳になりました。


残像
キム チャンヒ

声に出す言葉は痛み、そんな雪
冬ざれを太った鳩がついてくる
水際に木の葉は疲れ寄り添って
愛の字の凍てつく教会の扉
寒月の刺さったビルの崩れだす
鴉らが鳩を啄む昼の冬
冬晴れを犀は寝ながら思案する
百年のうねりを翻る鯨
ゆっくりと閉じゆく冬のマンホール
知恵の輪の解けずに春の影となる
あらたまの春の野原に杭を打つ
蒲公英はメリーゴーランドの残像

1968年生まれ、愛媛県出身。本誌編集長。句集『COSMOS』(マルコボ.コム)。『桝形浩人とキム チャンヒの超俳句入門』(マルコボ.コム)


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読者投稿による3ヶ月連載作品集

新 100年の旗手


(2018年1月号 〜 2018年3月号 2/3回目)


すつぴん
矢野リンド

ひとりづつ持ち寄る寒き尻尾かな
卵管を通つて来たる寒卵 
寒施行次は獣になる予定
薄氷のほどけて水のとろりとす
すつぴんが好きなんて嘘金縷梅
革靴の降りゆく沢や蕗の薹
野火過ぎぬ鉄塔の影黒くして
傷舐むる舌はざらざら猫の恋
日に透けて水の形のレタスかな
逆光の重き椿を手にしたる

料理が好きです。兼題で変わった食材が出されると嬉々として買い求め調理し味わいます。



めならべ

皸やジャムを焦がしたのは私
ねんねこの声やわらかく春隣
枝ふるう初雷に歩を早め
ロボットの錆のゆるりや春の雪
冴え返るたどりし杖の音高く
病み告げる君に北窓ひらきけり
すりぬける風船の調べはカノン
猫の尾も高くとまりて野火消ゆる
青春の抜け殻にある花林檎
ごめんねと言えず背をむく朝寝かな

1974年、東京都八丈島生まれ。視力を失いつつもポジティブに日々奮闘中。俳句の成長はのんびりと「ふくし句会」に参加。


2018年度 第1期連載者募集中
締切 2018年2月15日(木)

応募内容 2018年4月号に掲載できるタイトル付の10句
応募先  Eメール magazine@marukobo.com
 件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
(郵送またはFAXでも受け付けております。詳しくは編集室までお問い合わせ下さい。)


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新 100年への軌跡


2017年度 第三期
第三回


夜となれば
鈴木総史

返り花印鑑軽く押しにけり
街ぎらつく置きどころなき手が寒い
その檻に水鳥はこゑ忘れけり
鳰鳴けり波の消えゆく淋しさに
凍空や欄を鳥統べてをり
みづぎはをみづの迷へる師走かな
暮れにけり冬の池にも沖と岸
夜となればまぶしき駅やポインセチア
灯を点けて塔の全貌夜鳴蕎麦
読み終へて本に厚みや十二月
青畝忌や薄くのばして卵焼き
面倒や炬燵に足裏混み合へば
生姜湯の甘さのだらしなきことよ
冬川に透明といふ昏さあり
狛犬は腹を匿ひ雪時雨

鈴木総史(すずき そうし)
 1996年生まれ。21歳。立教大学3回生。大学入学より櫂未知子、佐藤郁良に師事、以後本格的に句作を開始する。俳句同人誌「群青」同人、企画部長。『鷹』会員。「俳句対局 第五回龍淵王決定戦」優勝。


粧ふ
松本千鶴

春浅し眠気を払ふ化粧水
如月のまじなふごとく塗るマスカラ
猫の恋チーク赤しは誰の所為
菓子缶にしまふマニキュア瓶余寒
かの人を鏡に春服など見立て
じやらじやらと首飾り取り出す早春
春寒し耳飾りして逢ひにゆく
人のため粧ふ春の夜あをし
ハイヒールやさしく濡らす春の雪
化粧室は私室めきたり冴返る
春近しリップクリームほの甘く
手鏡に映れる春の月明るし
光り合ふ君が釦と春の星
春手套づたひに君の温度かな
春コート脱ぎて私をあらはにす

松本千鶴(まつもと ちづる)
 1990年徳島県出身。「狩」所属。職業、コピーライター。



気持ちはわかる
平山南骨

 まず、「夜となれば」。  
街ぎらつく置きどころなき手が寒い  鈴木総史
 冬の街がぎらつくという感覚は面白いが、「置きどころなき」で手のありようがぼやけた気がする。
灯を点けて塔の全貌夜鳴蕎麦  鈴木総史
 都会の夜のにぎわいの隅でひとり背中を丸めているような感じ。
面倒や炬燵に足裏混み合へば  鈴木総史
 珍しく賑やかそうだけど、取り敢えず斜に構えてみる。
冬川に透明といふ昏さあり  鈴木総史
 そうなのだけど、もう一歩踏み込めないかと思う。

 さて、「粧ふ」。デートの次第を詠んでいるのだろうか、浮き足だった気分は伝わってくる。それにしても念入りに粧うものだ。
かの人を鏡に春服など見立て  松本千鶴
 あなた好みの女になりたいという歌もあった。
光り合ふ君が釦と春の星  松本千鶴
春手套づたひに君の温度かな  松本千鶴
 こういった気持ちはわかるのだが。
春コート脱ぎて私をあらはにす  松本千鶴
 コートの下にちゃんと服を着ていたのか、少し心配。

平山南骨(ひらやま なんこつ)
 1968年生まれ。2005年より作句開始。「鷹」同人。


街はぎらつき、私をあらはにす
十亀わら

街ぎらつく置きどころなき手が寒い  鈴木総史
 鈴木総史さんの十五句はタイトルの「夜となれば」が生きている。「街ぎらつく」も夜の句。欲望を意図して「ぎらつく」の類の語が使われることがあるが、感傷に流れず、今「置きどころ」のない「手が寒い」のだと訴えてくる。この季節ならではの身体感覚と心象を融合させていて巧み。
狛犬は腹を匿ひ雪時雨  鈴木総史
 ふっくらとした腹を匿うように台座に座す狛犬を思う。雪時雨の中、立ち止まる人も少ないだろう。頭から背、足は既に濡れていても、腹だけは守られているのだ、今のところは。
 一句目、印鑑を押す句は多いので、「軽く」だけでは埋没するか。四句目、句中には既にさみしさが溢れている。「淋しさに」の別の語を探してみてほしい。
 
化粧室は私室めきたり冴返る  松本千鶴
 松本千鶴さんは「粧ふ」と十五句のテーマを潔く定めた。「化粧室」の句、大きな鏡が配された女性用化粧室に一人の女性が入ってくる。他の人はいなかっただろうか、ひっそりとしていて私室のようである。外には寒さが戻ってきているから、この部屋の居心地の良さは尚更である。「私室」が上手い。
光り合ふ君が釦と春の星  松本千鶴
 君の釦は春の星を受けて光っている。くすぐったいような感傷を、淡い春の星が受け止めた。
 十一句目、「甘く」だと少し勿体ないか。最後の句、「私をあらはにす」の言い切りが面白い。コートを脱ぐという因果関係から離れると、より個性が出せそうである。

十亀わら(そがめ わら)
 1978年愛媛生まれ、昨秋よりトルコ在住。「いつき組」。2005年「俳句界賞」受賞。


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳 朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.55

Many-layered clothing
Squeezing into roller coasters
Seeing happy screams

着膨れて叫ぶやジエツトコースター

(直訳)
着膨れて
ジェットコースターにぎゅうぎゅう詰めの
楽しげな叫びが見える


 We entertain our Los Angeles cousins with great joy. Such fun we are having even though the end-of-year holiday is over. Let us hope we can find pleasure in getting back to work.

 ロサンゼルスの僕のいとこ一家を、あれやこれやともてなしている。お正月休みが終わったというのに、こんなにも僕らは楽しんでいる。仕事に戻ってもこれくらい楽しめるように願いたいものだ。
山へ行き、戻ると友人達とコンサートがあり、それから栂池高原でスキーだ。


ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文 白方雅博(俳号 蛇頭)

第83話
古佐小基史 solo harp live at JAZZ BLEND

マイルスの暗闇を射る冬の弦 南行ひかる

 マイルス デイヴィスはジャズの発展を考える上で欠かせない存在だが、曲はあまり書いていない。じゃあ何が凄いのか? それは、ジャズという即興演奏の捉え方。これが革命的だった。普通、音楽家はどんな音を出そうかと考えるけれど、マイルスは音楽というものを音でつくる構造物と考えた。例えば建物が建物であるために一番重要なものは建物の中の空間である。これを音楽に置き換えると音程もリズムも音と音の間、この空間を経験するために音を出すということ。マイルスは音を出した後の、或いは出す前の空間づくりに長けていた。そんな個人的なマイルス観を意識しながら彼ゆかりのナンバーを中心に私のオリジナルも交えながらハープを演奏したい。

空間を震わし真冬のサマータイム チャンヒ

 マイルスはミュージカルの曲もよく演奏した。次の曲はジョージ ガーシュィンの「サマータイム」。黒人差別の時代背景で母が歌う子守唄は「父は裕福で母は美人。だから、あなたが独り立ちするまで何も心配ないのよ」と子どもに嘘をつくブルージーな雰囲気。

ファンキーなハープ手袋無くしたことなんて 郁

 次は僕のファンキーなオリジナル ナンバー「バブリング オブ ドランカー」。「ファンキー」って英語のニュアンスは、例えばイカの塩辛をアメリカ人が食べるとき「うわっ、ファンキーだ」って感じ。良いんだけど「臭せぇ」みたいな。でもこれがリズムを主体とした黒人音楽のハートの一つでもある。

濃く薄く続く足跡冬銀河 妹のりこ

 「フットプリンツ」はマイルス傘下で活躍したサックス奏者、ウェイン ショーターが作曲した12小節のマイナー ブルースでモーダルな曲。ラシドレミファのファを半音上げた音階を使ったドリア奏法。元々ドリア旋法は教会音楽で使われていた音階で、浮遊感のある面白い音階。これを多用している曲。

凍星の灯に竪琴の息づかい 蛇頭

 マイルスの音と音の間の空間を見るという発想。単純なことかもしれないけど、これを見ると見ないでは大きな違いとなる。聴き手が感じるのは音が出た後の場面で、そこに矢継ぎ早に印象を積み重ねてしまうと聴く側は付いて行けなくなる。演奏家は音を出す前に何かを感じながら演奏しているので次々と音を出したくなる。結果、自分の出した音をお客さんと味わう間をつくれない。なんてこともある。マイルスは、その間のバランスが良い。次の曲はマイルスが好んで演奏した「星影のステラ」。

ジーンズほつれグリッサンドや冬の月 てくてく

 今回はマイルス特集ということで彼ゆかりの曲を中心お聴きいただいたが、マイルスのアーティストとしてのもう一つの特徴は、様々な音楽の要素を取り入れたこと。マイルスの名盤「スケッチ オブ スペイン」はフラメンコからインスピレーションを受けてつくったアルバムだけど、次の曲もフラメンコギターのイメージで書いた僕のオリジナル曲。「バイラオーラ」はフラメンコの女の踊り子さんの総称のこと。


Today's Turntable
『スタジオ92』2015&2016年/mk
『霊峰』2017年/mk


「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は月曜日の21時〜22時。

次回のJAZZ句会は、2月11日(日 祝)13時よりJAZZ BLENDにて開催します。
テーマ アルバムはベーシスト、ニールス ペデルセンの「ジェイウォーキン」です。参加希望の方は、本誌の句会カレンダーを参照してください。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU』vol.1〜vol.3(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ。


第八十三話
文、俳句 らくさぶろう


くやみ
 ノロケ話は突然に

 ある街のご隠居さんが亡くなった。葬式のお手伝いに受付で座っていると、次々とくやみに訪れる人達がやって来る。
 筆屋の大将は、何を言ってるか分からないくらいにはっきりと言葉にしないが、くやみというのはこれくらいがいいのかもしれない。
 次に来たのは炭屋の大将。あわてて飛んで来たので手は真っ黒。ここのご隠居さんには本当にお世話になった。うちの親父が死んだ時にも「オレに任せとけ」と言われ今の所へ店を持たしてくれた……とご隠居をほめるのは最初だけで、自分の店の炭の自慢が始まった。
 うちのは「山成り」というたら本当に山成り、産地直送。よそとは違う。
 炭団もそう。よう「夏干し」いうけどそない夏に干せるもんやない。うちはホンマに夏干し。こたつへ入れたらよぉ分かる。芯が残らず全部燃えてくれる。
 みなさんとこももしよかったらうちの炭使てみておくれやす。お値段の方も勉強させてもらいますんで、ほなさいなら……
 結局宣伝をして帰ってしまった。
 色々な人が訪ねてくるが、それにトドメをさしたのが又はん。この人の悪い癖は、嫁はんのノロケ。今日みたいな日に、まさかくやみとノロケを一緒にするとは思わないが、何やかんやと話しているうちにさあ始まってしまった。
 二人のなれそめから、二人のことを反対された時にここのご隠居さんが間に入ってくれただの、うまいことご隠居の話を入れながらノロケ話が展開していく。
 仕事から家へ帰って道具箱を二人で半分ずつ持って路地口から家の中まで一時間四十分かけて入る話、夏場は一緒に行水する話。
 行水から上がって二人で酒を呑んでいると嫁さんが三味線出してきて都々逸を歌い始め、途中で三味線放り出して抱きついてきて「アンタ、好きやーすきすき〜」
「今時分、もう、ひとりでよぉじっとしとらんと思いますんでちょっとでも早よ帰って顔みせてやりますわ。さいなら……」
「えらいくやみやなー!!」

 はっきりとしたオチがある噺ではありませんが、ノロケまくる男の激しい動きと言葉で爆笑が起き、充分オチの役割を果たしています。
 故桂枝雀師の得意な噺で、生の高座を観たことがありますが、涙を流しながら笑った記憶があります。
 数年前、僕の頭に円形脱毛症による十円ハゲが出来たことがありまして、その時いつき組長にそのことを話したら「あんたよかったね、それで十句は作れるよ!」と言われ、俳句とはどんな事でも詠むことが出来るのかと感動したことがあります。
 落語もまた、でありまして、人が生まれてから亡くなるまで、すべてのことが噺に成り立っていると思われます。
 「子ほめ」に始まり、この「くやみ」まで、まさに「ゆりかごから墓場まで」といった感じ(笑)。
 僕の祖母が亡くなった時に、わが息子はまだ3才。葬儀の際にご住職の御詠歌が始まったら息子「あの人歌がうまいねー」と大声で。悲しみの中にも笑いが起こり、ほのぼのしみじみした時が流れました。
 さすが、わが息子。笑いのポイントがよく分かってる(笑)。
 最近“終活”ブームだそうで、自分の最期のことも考えないことはないのですが……。
 好きな出囃子か吹奏楽曲でもかけてもらおうかと思うくらいです。

笑ふても炭団のやうな男かな


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mhm通信


第83回
文 小田寺登女

まる裏俳句甲子園 舞台裏

 こんにちは。昨夏からmhmに入会いたしました小田寺登女です。よろしくお願いします。
 さて2018年1月7日、第16回まる裏俳句甲子園が無事に終わりました。詳細な記事は来月号をお待ちしてもらうこととして、ここでは舞台裏を書かせてもらいますね。
 まる裏俳句甲子園はmhm最大のイベントであり、このために1年間準備を重ね、会員が奔走してきました(私は新人なのでほぼ様子見しかしてませんが……)。会場をお借りしたり、共催や広告をお願いしたりと様々な申請と書類の作成が必要なことを初めて知りました。来年からは私も一員としてがんばります。
 いよいよ当日。今年は過去最多の45チーム(135人)がエントリー。
 危なかったです。我々は過去のエントリー数から「50チーム分用意すれば十分だろう」と考えていたので、どんどん減っていくエントリー用封筒に焦りましたが、どうにか足りてホッとしました。
 しかし、入場者数は予測を上回り、入場チケットが足りなくなる事態に。即席で手書きのチケットを作成し乗り切ることができましたが、俳句人気の高まりを一層感じた出来事でした。
 運営に関してはやはり反省点が多かったです。
 エレベーターを降りてからの動線がなるべくスムースに行くよう受付レイアウトを考えたのですが、開場前にたくさんの方にお越しいただいたこと、一部スタッフが不慣れなこと、指示が行きわたっていなかったことなどで混乱をきたしてしまいました。ご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。
 それでも皆様の温かいご協力とご寛容のおかげで無事に開催できたことを本当にうれしく感謝いたします。たくさんの方から「楽しかった。来年もまた来る。」の声をいただき、苦労も吹っ飛ぶ思いです(涙)。
 また、来年の課題にいたしますので、お気づきの点がありましたらどうぞお知らせください。
 
 さて大会が終わった後は懇親会です。これがまた大変なのです。
 mhm会員の句友を通じて情報を集め、およその参加者数を予測します。当日にならないと分からない方もおられますから、読みが外れると会場に入りきれないorガラガラになる……。そこを過去の経験からしんじゆさんが「90名!」と予測。
 蓋を開けてみれば92名で、会員一同しんじゆさんの慧眼に感動しました。
 まる裏俳句甲子園は成人の日前後三連休の中日に開催するというのが原則なため、懇親会の日には成人式を終えた新成人たちの会合も各所で行われており、大人数の入れる会場を押さえるのも一苦労なのです。昨年は同じ店内で新成人の会合があり、あまりの賑わいに隣の人との会話もままならない事態でしたので、今年はできれば貸切で、立地が良く、料理が美味しく、正座はつらいから椅子席で、と条件を加えていくと、なかなか難しい。
 ですが、去年オープンしたばかりのイタリア料理店八兵衛(HACHIBEI)が条件にぴったり! しかも予約がとれた!
 おかげさまで懇親会は大盛況。
 初めて会った俳号しか知らない俳人たちが顔を合わせて飲み語り、組長のお話に涙し、既知の友のように連れ立って、二次会を開くべく夜の繁華街へ散っていったのでした。

 ところで、mhmは新規会員を常に募集中です。
 今回の大会会場でも呼びかけたところ、たくさんの方が入会してくれました。ありがとうございます!
 次回は大花見会でお会いしましょう!


 mhmでは松山市内外問わず会員を募集中です。原則、毎月最終金曜日19時からマルコボ.コムにて定例会を行います。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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会話形式でわかる

近代俳句史超入門


第23回


 大学で俳句を研究する青木先生と、その教え子で俳句甲子園の出場経験もある大学生の俳子さんが雑談を交えながらの近代俳句史超入門。


河東碧梧桐のまとめ

 青木先生と俳子さんが教室で話しています。


率直すぎる性格

青木先生(以下青) これまで碧氏の経歴や句を見てきましたが、いかがですか。
俳子(以下俳) 子どもの頃のあだ名そのままかも……腕白ヘイさん。
青 明治期にこんな指摘があります。「子規でも鳴雪でも虚子でも皆正直者に相違ないが、正直なる性情を幾らか塗抹して、婉曲に複雑に見せかける方である、碧梧桐に至つては実に透明なもので、単純、率直、直線的の性情を遠慮会釈なく暴露し、銀行や会社の事務員の如く一心不乱に俳務を執つて居る」(1)。子規の「写生」を突き進めて有季定型を無視したり、派閥の維持や人間関係に頓着しないところなど、確かにそうかも。
俳 クラス運営の理想に燃えて学級委員になり、みんなの都合を考えずに突っ走るタイプね。たまにいたなあ……真っ直ぐで迷惑な人。
青 彼が新傾向俳句や自由律、ルビ俳句へ急進的に革新を続けて仲間や門人たちを振り回した結果、碧派はバラバラになりましたが、彼を慕った人々もそれなりにいたんですよ。
俳 破滅型ホストに貢ぐ熟女たちのようなものかしら。
青 「女性セブン」みたいな設定で碧梧桐を理解しないように。彼が精力的に行った旅行や俳誌を創刊する時など、彼に共鳴したパトロンが金銭面で援助したり、弟子達がお金を出しあって碧梧桐夫婦に新居をプレゼントしたこともありました。
俳 羨ましい……私に新居と旅費をくれる方はいませんかねえ。大街道商店街でプラカードを掲げて立とうかしら。「パトロン募集 傑作詠みます」とか。
青 情けないからやめましょう。それに傑作を詠める可能性はひく……コホン(咳払いでごまかす)。碧梧桐に戻ると、「単純、率直」な彼は困っている仲間のために奔走したりと男気もあったので、最晩年まで年始の挨拶を欠かさなかった弟子達もけっこういたんですよ。二十年近くお酒を届け続けた弟子もいましたし。
俳 権力や金銭面でガツガツしないで、純粋に俳句活動を追い求めた碧さんだから熱心な支援者がいたのかもしれませんね。そういえば、私には傑作が詠めなさそうなことを先ほど仰りませんでしたか? 丑三つ時に藁人形で呪いますよ。
青 真夜中に白装束の学生がローソク片手に徘徊するなんて、発覚したら大学の責任にかかわるのでやめて下さい……それに名句を吐く俳人はパトロンがいようといまいと、詠めてしまうはず。支援者がこの俳人を応援したい!と思わせる句を詠むのが先では?
俳 うっ、正論を……心の傷を負った私の境涯を句に託すわ。「ローソクもってみんなはなれてゆきむほん」。
青 それは阿部完市(2)の代表句……一体、どんな境涯ですか。

文人として

俳 そうだ、先生、碧さんを「負け組」と見るのはよくないと以前仰っていましたよね。どういう意味なんでしょうか。
青 色々ありますが、一つは、昔の俳人を「今の私たちにとって魅力的な句をどれだけ詠んだか」だけで判断せず、その活動全体や影響を見渡して評価すべきということ。碧梧桐の新傾向俳句も、活字で読むのと、彼の破天荒な書と一緒に味わうのでは印象が全く違う。それに江戸期の俳人、蕪村研究の第一人者といってもいい。
俳 碧さん、研究者でもあったんですか?
青 ええ。明治期に正岡子規一派が蕪村を称揚した際、関心の的は『蕪村句集』だけでしたが、後に碧梧桐は蕪村の書簡や画、蕪村一門の句集といった資料を丹念に探し集め、本にまとめています。蕪村の本業は画家ですし、彼の書も人気があった。碧梧桐が蕪村を一俳人としてでなく、江戸期の文人として研究を進めたおかげで昭和期以後の蕪村研究の基礎ができたんです。
俳 ほぉぉ……碧さん、やりますね。一度興味を持ったら、夢中で調べそう。
青 中村不折と一緒に中国六朝期の書風を流行させたのは前に述べた通りですし、漱石が愛した伊予の画人、蔵沢の研究も進めている。竹の墨絵で有名な画家で、漱石は彼の墨竹画を手本によく画を描いたとか。能楽の嗜みも玄人肌だったといいます。私たちは碧梧桐を「俳人」と捉えがちですが、むしろ近代版「文人」と理解した方がいい。
俳 なるほど! 俳句オンリーというより、色々な教養の中に俳句があった、という感じでしょうか。
青 それに近いですね。紀行文作家としても凄く、明治や大正期に北海道から沖縄まで日本中を旅し、樺太(現サハリン)や台湾、シンガポール、西欧諸国やアメリカも訪れています。北海道の道なき道を踏破したという超健康体な上、その膨大な紀行文の面白さが今一つ分からないのも凄い。
俳 何だ、面白くないんですか。どこが凄いんですか。
青 彼の紀行文は「作品」として読者に示す意識が希薄な上に、なぜそれほど情熱的に旅をしたかの理由や目的がよく分からない。とにかく旅をして、その記録をひたすら書く。従来の書道や有季定型をしゃにむに壊し、蕪村や蔵沢の資料を一生懸命集め、そして俳句の弟子たちはどんどん離れてゆく。一つ一つがバラバラで、その時々の使命感に駆られて情熱をまきちらした感じで、権威や名誉、蓄財といったことがスッポリ抜けているんです。そこが凄いなあ、と。
俳 ひねりまくった褒め方ですね。

失敗が功績に

青 何より、一番凄いのは新傾向俳句から自由律に至る中で大失敗したところ。
俳 「失敗」を讃えるとは、先生、ドSなんですね。「ほら、もっとしくじってご覧……高い泣き声を妾にお聞かせ!」という感じかしら。
青 新参の女中をいじめる大奥のお局みたいでイヤだ……そうではなく、彼の新傾向俳句で重要なのは『「写生」の徹底は季感や定型を破壊する』ことを実践してしまったところ。機会があればお話しますが、「写生」と有季定型は、実は相性が良いわけではないんですよ。碧梧桐は、それを図らずも体現したのが凄いんです。
俳 先生、火星人ですか。全然分からない……。
青 九星気学の占いによると、私の星は火星ではなく土星で、吉方位は……いや、そんなことはいいんです。有季定型と「写生」は大きな問題なので、またの機会に(3)。で、彼の「写生」の影響を受けた門人の中塚一碧楼や荻原井泉水が自由律にのめり込み、特に井泉水側からは尾崎放哉や種田山頭火が現れた。これも碧梧桐の活動が生んだ大きな功績といえるでしょう。
俳 あー、仰りたいことが分かりました。碧さんの俳句活動自体は色々失敗に終わりましたが、それがきっかけで新しい俳句の形や価値観が生まれたんですね。
青 そう。他にも、碧梧桐の新傾向俳句は難解と否定的に評されますが、昭和期の中村草田男の先駆けと見るのも面白い。「相撲乗せし便船のなど時化となり 碧梧桐」(前回紹介)は、例えば「銭の憂ひ細身の蠅の玻璃に生れ 草田男」が持つ意味深長な感じと方向性は似ている。草田男は、碧梧桐派の難解さを受け継いだ俳人と見なすと、従来の俳句史とは違う「写生」の消長が見えてきます。
俳 うーん、正直、頭が追いつきません。碧さんから草田男さんまで話が飛ぶと、その間の俳句史をよく知らないので……「写生」と有季定型の仲が悪いとか不思議なことを仰るし、いやはや……おぬしも悪よのう。
青 私は越後屋ですか。確かに「写生」や草田男の話は、今の段階では突飛かも。では、碧梧桐は今回で終わりにして、次回から「子規 虚子 碧梧桐」以後の俳句史を考えていきましょう。

(続く)

解説

1.中村楽天『明治の俳風』(明治四十年)の一節。同時代俳句や俳人の傾向を歯切れ良く論じた俳論書。
2.阿部完市=戦後の前衛俳人で、「海程」出身。「ローソク」句は代表句。
3.「写生」と有季定型の問題は、拙著『俳句の変革者たち』(NHK出版)所収「子規の後継者 碧梧桐と虚子」で少し触れています。


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100年投句計画

選者三名による 雑詠俳句計画




先選者 関悦史

 「これは俳句ではない」といった頭ごなしの否定の仕方がときどき話題になることがありますが、先日とうとう「これは評論ではない」を見かけました。かつて批評の神様と呼ばれた小林秀雄なども、直観的な飛躍した書き方が多いせいか、今の若い人には評論や批評として受容できない人がけっこういるらしい。
 批評的な散文が、糞リアリズムならぬ糞実証だけになられても困るのですが。



クリスマスしづかに抜ける胸の水  うに子
 病気療養中らしく、一人静かに自分の身心と向き合うことになったクリスマスを描いていて、病状の詳細や程度はわかりませんが、緊張のなかの安堵感は伝わってきます。幸福であったり、不遇であったりする多くのクリスマスの句が概ね家族と祝う行事としてのクリスマスを描いているなか、身命を通じて、イエスの誕生日という本来の意義を無理なく連想させる句になっています。



おふとんや知らない人は怖いひと  くらげを
 知らない怖い人から逃れて布団に籠っている図が浮かびますが、中七下五は一般論になっていて、そう直に結びついているわけでもない。子供の頃の布団の慕わしさと夜闇の怖さだけが、説明抜きに掬い取られています。

監視カメラ冴えて一人の昇降機  西原みどり
 監視カメラの句はときどきありますが、密室化されたエレベーターのなかでの対峙の場面を掬ったこの句は静かな緊張感があり、現代都市で日々味わっては忘れ去る些細な生活感情を過不足なくリアルに捉えています。

わぶわぶと鯨を捌く午前二時  久我恒子
 「午前二時」に鯨を捌いている場面というのが珍しく、オノマトペ「わぶわぶと」が手触りを感じさせて面白いです。句の切れがやや弱い点は惜しく、中七を「鯨捌くや」にするとか、語順を変える等の推敲はまだ可能。

「しあわせ」と書き残しおく冬満月  小市
 遺書のようにも見えますがそこまでの諦観や切迫感はなく、単に心境を記録しておきたくなったという、今この時への慈しみと取れます。「冬満月」の「満」の効果でしょう。「冬の月」だとそのまま死にそうに見えます。

青年の抱くモルモット春の雪  あるきしちはる
 愛玩用に飼われているモルモットのようで、溺れこまない傍観者的な詠み方のなかにも、感触、愛情と、それゆえに感じる生命の儚さなどは見て取れます。季語とのバランス上「少年」ではなく「青年」なのも良い。



レンチンのスープの破裂十二月  野良古
熊よけのラジオが話す中国語  中山月波
猫の舌触れて壊れる初氷  あいむ李景
同乗の救急車より冬北斗  内藤羊皐
冬雲や煤けたビルの奥へ猫  青柘榴
突起部を持て余すヒト憂国忌  土井探花
年下の痴呆となりて年の夜  柊つばき
国道の狸の未だ有機物  風海桐
〈ハリネズミカフェ〉いっぱいの冬うらら  みやこまる
見上ぐるはヒエラルキーの聖樹かな  元旦

関悦史(せき えつし)
 1969年茨城県生。「翻車魚」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。2017年第二句集『花咲く機械状独身者たちの活造り』、評論集『俳句という他界』刊行。共著『新撰21』『俳コレ』他



先選者 桜井教人

 某カルチャー教室句会の忘年会があった。参加者二十数名がそれぞれ自己紹介的なスピーチをしたのだが、講師の夏井いつきさんがタイミングよく質問及びツッコミを入れるのだ。分かってもらえると思うが、それがとても絶妙で、その質問とツッコミによって、その人物の光と影が明確になり、個性が引き出されて来る。選評によりその俳句のよさに気付くことができるのと同じく、その人物のよさを上手く引き出すことにおいて夏井いつきさんは本当にすごい。この技をぜひ妻にも習得してもらいたいものである。



底冷や川を背骨に眠る街  凡鑽
 底冷えの経験といえば、受験で京都に泊まったときだ。安宿の相部屋、ガスストーブは早目に消え、仕方なく分厚い布団にもぐり込む。寝返りもできないくらい重い布団だったがそれでも寒かった。この句はそのときの自分自身だ。それだけこの句は半端ではない冷たさ、静けさ、暗さを発している。取り合わせでありながら、一物仕立てであるかのごとく季語が効いている。川が背骨であるという措辞がそれこそこの句に背骨を与えている。



寒柝の星生む仕事かも知れず  小川めぐる
 拍子木の透明で乾いた音が、寒い冬の夜空に響く。輝く星々はその音から生まれたのかも知れないという発想にとても共感した。静寂の中の微かだが確かな音と光の調和は質の高い詩を生み出す。

国道の狸の未だ有機物  風海桐
 こんな光景を通勤途中に何度見たことだろう。狸は夜行性なので事はだいたい夜中に起きる。朝の生々しさは言うに及ばないので、帰宅の頃を詠んだものだ。場面設定、時間経過の表現方法が見事。

討入りの真っ只中の雪女郎  みやこまる
 雪女郎の立ち位置は何処? 討ち入っている側? たまたま現場にいた? 何をしていた? 想像が止まらない。「真っ只中」の表現により雪女郎のただならない様子も浮かんでくる。ピンチになれば、口から冷たい息を吹きかけるのだろうか。

短日や袋の中の草津の湯  柊月子
 我が家にある袋に入った草津の湯は何故だか透明なオレンジ色をしている。本家草津温泉の湯畑の色と臭いとは似ても似つかないものだ。しかしそれはそれで短日の少ない楽しみのひとつなのだ。明日は白骨、明後日は龍神、その翌日は……。

クリスマスしづかに抜ける胸の水  うに子
 胸水を抜いている場面を詠んだ句だと思った。季語の選択、客観的な描写により独特の詩の世界に誘い込まれる。クリスマスのもつ聖なる部分が句の全体を支配し、命の崇高さまで昇華しているかのようだ。誰もが自然に祈りたくなるような佳句。



おらの勝ちだべとキタキツネの嗤う  冬のおこじょ
プーさんの歌つららからこぼれゆく  レモングラス
遠きほど光る海面や水仙花  dolce@地味ーず
同乗の救急車より冬北斗  内藤羊皐
暮れてなほ明るき鴨の口喧嘩  もね
寒晴や動物の名の古本屋  洒落神戸
マヨネーズ逆さまに置く二月かな  どかてい
星空を突き刺す寡黙冬木立  哲白
冬空に溶ける聖女のたましいは  アンリルカ
白銀の鳥が白木蓮となる  あるきしちはる

桜井教人(さくらい きょうと) 
 1958年愛媛県生まれ。愛媛県公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回 29回俳壇賞候補。



後選者 阪西敦子

 してきた家の近所の、おこわと和菓子を売る店も、年末になれば一面の餅世界となる。成長期の急激だった私は、数年、消化の早い餅を朝食としていたが、今は普段、その存在を忘れている。三が日が終わって余った餅を母に持たされて自宅に戻った。その餅が終わっても、正月の売れ残りを買い足したりして、1ヶ月ほど餅ブームは続く。

特選

ゆつくりと縮む日時計薺摘む  すりいぴい
 日時計はその影の位置によって時間を示す仕組み。時間を見るのに使われる角度を変えながらだんだんと短くなってゆく。薺摘みの低い視線と愛おしい時間が自然に表れる。

大海の鰤大根と缶の中  風来松
 一読、「大海の鰤大根」と読めてしまうこの句は、句またがりのリズムを持つ句。「一月の川一月の谷の中」と同じである。大海を悠々泳いでいた鰤が大根と共に今いるのは缶の中。なんのことはない、結局「鰤大根」の句なのだ。

オーバーのポケットに地図バルセロナ  さより
 地中海に面したスペインの都市 バルセロナは多彩な文化を持つ沿岸の中でもカタルーニャという独自の言語を持つ地。自由な気風は多くの芸術を育み、今、独立運動に揺れている。歴史の深みを軽くポケットに秘め、散策は進む。

並選

薄和紙の架かりたる如冬うらら  藍植生
鮟鱇の七つ道具を鍋仕立て  芳香
遅咲きのダンサーの舞い虎落笛  KIYOAKI FILM
酸っぱくて正気に戻る冬苺  桂奈
真ん丸の蹲冬の空浮かべ  幸
冬波吹く汀の白し能古島  かのん
風花や微動だにせぬ鷹女像  柝の音
許さうか蜜柑に爪を立てながら  dolce
九十まで生きる家系や冬牡丹  誉茂子
ようきたな炭継ぐ祖母の皺やさし  とべのひさの
夕暮れの黒き海砂冬鴎  しのたん
人として生きたや花のひらくまで  台所のキフジン
キャバレーの電飾の消ゆ寒椿  ひでやん
珈琲はモカ二年坂しぐれたり  彩楓
漆黒の闇追う下山牡丹鍋  あおい
境内の階段長し七五三  武彦
山茶花や厨の真中にミルク缶  小雪
年の市モスラの繭を買いに行く  藍人
冬服に手足の伸びし三年目  ヤッチー
着ぶくれて漁業組合直売所  24516
去年今年闇へ灯油を注ぎつぐ  不耳男
居酒屋に集ふ女子会聖菓分く  出楽久眞
配達のバイク吹かして十二月  ぴいす
襷継ぐ20メートル冬の空  大槻税悦
雪に陽よこの世と私を消し去りぬ  ちろりん
池の端に雲と冬木の桜かな  人日子
冬の海三津の渡しの客二人  人日子
寒牡丹紅を尽くして傾きぬ  鯉城
丸々と伊吹大根太りけり  ケンケン
大晦日紙幣のはずがレシートで  明惟久里
秋の暮二人静かに過ごすとき  巴
大根を値切る声音や恋女房  ミセスコナン
見守るは孫と鳥一羽冬耕い  エノコロちゃん
穴という穴みな静か山眠る  笑松
風鎮のまだ揺れてをり年設  点額
休戦をしてマフラーを選りにけり  松田夜市
冬薔薇にくちびるほどの朱さあり  和音
開戦日葛根湯も買っておく  波野
星座みなほどけて赤きはつはる来  てん点
標準語の車内放送古都の冬  すみ
冬木の芽谷川動き始めたる  もね
小春日に開く目の穴耳の穴  一走人
飛び跳ねるホースの水や葱洗う  のり茶づけ
浮き上がる鯉の背中へ冬紅葉  根本葉音
冬夕焼ぼとっと落つる牛の糞  テツコ
マスクして眠れと教へらるる夜  喜多輝女
室の花赤子の声の漏れ聞こえ  おせろ
冬帝や傷口に愛撫の止まず  薄荷光
丁半の壺の行方や冬の蜂  ぐずみ
お弁当温めますか火事遠し  ちゃうりん
保護フィルム剥がし透き通りたる冬  立志
煮凝を丑三つ時の舌の上  かま猫
窓を打つ紅葉かき分け離合バス  松ぼっくり
鯛焼を買い歌舞伎座の二等席  有瀬こうこ
夫の留守日向ぼこするペルシャ猫  西条の針屋さん
城にみな昔ありけり落椿  大阪野旅人
山茶花の咲きいて闇の深き径  まんぷく
初茜三和土の靴も静かなり  ぎんなん
死者眠る冬の泉の水の音  遊人
あかぎれのパステル塗りてスノーマン  マカロン星人
野良猫のふらり枯野の色となり  ゆりかもめ

阪西敦子(さかにし あつこ)
 1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。


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100年投句計画

自由律俳句計画



 先日ある人からフィギュアスケートの選手は、ほぼお金持ちの家庭ということを教えてもらった。スケート場の借り賃からコーチ代、衣装代、遠征費用まで、そこそこの選手になるまで相当お金がかかるらしい。そういえば皆やんごとなき顔してるもんな。その点サッカーとかマラソンとかはお金がかからない。世界中に広がるはずだ。となると棒高跳びはどうなのか。あの棒高価そうだし、折り畳んで持って歩けないしお金かかりそうだな。一人乗りカヌーなんかもお金かかりそうだな……スポーツにも貧富の差あるのか……。



ピカドンの跡地より大根の白さ引く  鯉城
 「泉あり子にピカドンを説明す(池田澄子)」という有名な句がありますが、ピカドンと言えば原子爆弾のこと。戦後70余年経ったいまも、日本人の心の奥底にはピカッと光ってドン!と落ちたままあの原爆投下の事実は民族の痛み重みとして残っています。そんなピカドンの跡地といえば広島か長崎か……。畑から抜く大根の白さは瑞々しさを通り越して痛々しいまでの白さかもしれません。単に大根を抜くというのではなく、焦土から復活した大根の白い命を抱くということかもしれません。



ちょっと告白してみる年賀状  ぐずみ
 年始の挨拶、それはそれとして日頃の想いをこの際年賀状にかこつけてということでしょう。あくまでも賀状の範囲を超えない程度……「ちょっと」というところに異性への現在の微妙なスタンスが浮き上がってきます。

木枯が前後左右に一人の真昼  彩風
 木枯の吹く夜を一人で居るより、よほど寂寥感がある。木枯に対する「前後左右」と一人に係る「真昼」の執拗すぎるような表現が、やや暴力的でかえって逃げ場を塞いでしまったからでしょう。定型では出ない味かもしれない。

沢庵漬の座り良き石  ヤッチー
 年季が入った沢庵漬の樽には、おそらくはそれなりの風貌を持った沢庵石が座っているのだろう。単なる重しという役目を超え、糠と塩と素材を調和させるには、座り良き石でなければならないような気にさせる。

ポケットにカイロ口中に喉飴  しのたん
 寒い中を何らかの用件で出かけて行かなければならないのだろう。そんな気の張った気分を、具体的にはまったく詠んでいるわけではないが、じわっと伝わってくる。用件のかけらも言っていない分、よけい寒い想像が膨らみます。

好きなところ数える年の夜  中山月波
 大晦日の夜に年用意を済ませた夫婦の、みごとな描写と言えます。夫婦といえどもそこそこの年齢を重ねればお互いの愚痴も増える。好きなところをあらためて思い出し確認することで新たな希望の年が見えてくる。なかなか深いな。




団地布団や冬北斗  KIYOAKI FILM
沈んで浮かぶ冬の水  小木さん
ねんねこの子の手三つ編み握りしむ  あおい
水のまま棄てるペットボトルの水  24516
管と袋でできている体  小市
寝て起きて仕事して年の暮  エノコロちゃん
銀杏散る散る海つくる如  喜多輝女
人馴れのかもめと脱げない赤い靴  うに子
玻璃越しに福助覗く店先の初氷  きさらぎ恋衣
我が家にみなとのような居間に母  大阪野旅人


並選

薬と思っても無理だから韮雑炊  冬のおこじょ
自信の句に良きもの無し  藍植生
句と歌は兎に角詠め  芳香
逃げる2月を遊びてすごそ  レモングラス
あやふやなレシピで作っても君らしさ  くらげを
荒ぶる心へ優しさの軋む音聞こゆ  斎乃雪
帰れない星はどこへ  幸
ぼうとストーブ もうと妻  凡鑚
お悔やみ欄のアイツに献杯  柝の音
もう巣を繕わぬ女郎蜘蛛  あいむ李景
はんぺんが着ぶくれてをり  天野姫城
おんぷのように跳ねる子ら  誉茂子
犬のフン避けてマラソン4位  とべのひさの
風花ゆたかに詩のように来る  暮井戸
冬景色鬼王丸がみる鬼が城  どんぐりばば
せんさくはせぬときめての夜に入る  台所のキフジン
マラソンや私はひとりJ78547  猫楽
雪蛍の蝕む朝の月  内藤羊皐
枯れゴーヤの臭いの上着叩きけり  青柘榴
瓦礫は瓦礫のままの寒い街  藍人
四号の聖菓をもてあます  出楽久眞
思いっきり季語を重ねて自由句  ちろりん
舞茸のひらひら揚がりけり  人日子
サンタの帽子のランナー追い抜く  ケンケン
白鳥が来た使者が来た  ミセスコナン
覗いてみれば暗い  笑松
薄紅のカクテルに惑う  点額
楽天家でも淋しい一人聖夜  和音
立っても踏まれても霜柱  みやこまる
真正面に朝日凍てつく国道  すみ
荒星では愚痴を聞いてはくれぬ  もね
修正だらけの一年の終わる  一走人
肩小突く風と落葉  元旦
寝過ごして降り立つ雪景色  のり茶づけ
この冬銀河の何処かにオウムアムア  風来松
拭く窓にそれぞれ十二月  テツコ
コンビニの名札漢字一つ  洒落神戸
月命日にバナナいつも通り  薄荷光
また忘れちゃったのねお母さん  ちゃうりん
耳鳴りびうびう少し忘れてスーパームーン  さより
北国の冬ガラスを割る風 立志
福耳にふられけり  有瀬こうこ
そんな事知っとる奴は何処にもおらぬ  まんぷく
水洟留処なく  坊太郎
出発点が目的地だった  遊人
五十路の花魁体験つけま三枚眉は紅葉色  マカロン星人
ウエディングドレスにポケットあり  ゆりかもめ
十二月は好きになれない  空山
もうもどらない生家秋の潮  緑の手

自由律で再挑戦を!

白鳥の尻餅ついて着氷す  みつよ
生き生きと死後のことなど日向ぼこ  みつよ


きむらけんじ 1948年生まれ。第一回放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。


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100年俳句計画

詰め俳句計画



今月の問題
次の(  )の中に共通する冬または新年の季語を入れてください。

(   )を朝日の窓に無人駅
潮騒に鳴り出しそうな(   )よ


今月もはりきってまいります!

かんじきを朝日の窓に無人駅
潮騒に鳴り出しそうなかんじきよ
 坊太郎さん。おお……これまたすごいところにある無人駅……朝日に乾かしているのでしょうか。後句、かんじきの雪を踏む音とすればわからなくもないけど、かんじき自体は鳴るのかな? 4級。藍人さんは雪沓。スキー場近し、みたいな駅? こもれ雪を踏む音でしょうか。4級。冬のおこじょさんは風除。風除だから、潮騒が聞こえるくらいじゃがたがた鳴らないような気も。4級。小木さんさんはマフラー。忘れ物のマフラーでしょうか。後句……鳴り出しそうなマフラーが想像できませんでしたごめんなさい。5級。天野姫城さんは着ぶくれ。前句、「を」という助詞では景の解釈が難しいように思います。後句、どうやって鳴るんでしょうか……? 5級。薄荷光さんは白息。後句、果たして鳴るという表現があっているのかどうか……。4級。

たま風を朝日の窓に無人駅
潮騒に鳴り出しそうなたま風よ
 人日子さん。たま風は日本海沿岸に吹く激しい季節風ということなので、後句、既に潮騒がかき消されていそう……。4級。芳香さんは凩。凩の強さを思うと、潮騒が聞こえてくるのかどうか。4級。KIYOAKI FILMさんは虎落笛。虎落笛は音を連想する季語なので後句既に鳴っている。そして五音なのでリズムが悪いかな。5級。柝の音さんは気嵐。霧が鳴り出しそう……少々景がわかりにくいです。4級。ちゃうりんさんは空風。前句、日中に多い空風に朝をどこまで引き寄せられるか……。4級。台所のキフジンさんは寒雷。前句、朝日がさしているのに寒雷!? 後句、既に鳴っていません!? 5級。ジュミーさんは厳寒。後句、形がない季語なだけに、どう鳴り出しそうなのか景がつかみにくい。4級。幸さんは冬雲。前句、雲と窓は分かりやすい。後句、雲が鳴り出しそうという景がちょっと見えにくいかも。3級。みやこまるさんは凍雲。後句、凍という一文字で、カチカチ音がしそうに思えました。3級。きさらぎ恋衣さんは凍空。前句、朝日が景の中にあるので、空がはたして効果的に見えるか。後句、凍空の鋭さは鳴るのかもしれないと思いました。3級。


風花を朝日の窓に無人駅
潮騒に鳴り出しそうな風花よ
 藍植生さん、レモングラスさん、中山月波さん、凡鑽さん、あいむ李景さん、柊月子さん、喜多輝女さん。前句、朝日の中で風花がきれい。後句、しゃらしゃらと音を立てて潮騒と響きあいそう。2級。出楽久眞さんは氷晶。一度見てみたい季語! 前句、光が増しているイメージ。後句、美しい音を立てそうなのはやはり字の効果もある気がします。初段。エノコロちゃんさんはオリオン。前句、朝日の中でオリオンを見つけるのは至難の業ではないでしょうか……。4級。

寒林を朝日の窓に無人駅
潮騒に鳴り出しそうな寒林よ
 小市さん、遊人さん。前句、無人駅がたっている場所に寒林はなるほど。後句、「カンリン」と口に出すと、一層音が聞こえてくるように感じました。3級。河原撫子さんは枯れ芦、桂奈さんは枯葦、ヤッチーさんは枯蘆。これみんなかれあし! 勉強になる詰め俳句! 無人駅の向こうに広がる景、そして後句の水辺の景は納得。3級。笑酔さんは枯荻。こちらははぎでなく、おぎ。群生する姿がさわさわと鳴りだしそうなのでしょうか。3級。斎乃雪さんは枯草。枯草は窓には飾らないでしょうから、窓の外の景だとすると、ちょっと視点が低いでしょうか。4級。久我恒子さんは枯蔦、かま猫さんは冬蔦。前句、窓に這っている様子が見える。後句、鳴り出しそう感が想像しづらい。3級。猫楽さんは冬柏。枯葉を付けたまま越冬する柏の葉音は印象的だと思うのですが、五音だとちょっとリズムが悪いです。3級。

臘梅を朝日の窓に無人駅
潮騒に鳴り出しそうな臘梅よ
 野良古さん。あの美しい黄色が朝日に似合っています。2級。立志さんは早梅。朝に見かけるときっと嬉しい。2級。ちろりんさんは寒蘭。鳴り出すには少しかわいすぎるかも。2級。鈴木牛後さんは山茶花。山茶花の存在感が潮騒に負けていない。あとはどう鳴るのか……。2級。ひでやんさんは侘助。一輪挿しに飾ってありそうで素敵。2級。内藤羊皐さん、24516さんは葉牡丹。葉牡丹のわしゃわしゃ感が「鳴りそう」につながるか少々疑問。3級。明惟久里さんは室咲。後句、「鳴り出しそう」に思えたのは何の室咲か聞いてみたい。3級。すみさんは千両。新年を迎える、そんな気配も感じられます。2級。ほろよいさんは万両。万両の少し垂れて鈴なりになっている姿、しゃらしゃら鳴り出しそう! 2級。くらげをさんは文旦。文旦が鳴り出しそうって……どんな文旦? 4級。どかていさんは凸柑。柑橘王国的無人駅のありよう。「ぽん」という語が鳴り出しそうと少し響く。3級。

今月の師匠

金柑を朝日の窓に無人駅
潮騒に鳴り出しそうな金柑よ
マイマイ師匠よりいただきました。師匠……歳時記やネットでも確認したのですが、金柑は晩秋なんです……けど、金柑の「金」と朝日の響きあいは好きです。あと、わらわら生っている感じが楽しい音が鳴りそうです。これはきっと師匠からあえての「さあどう判断する?」という宿題ですよね? ええと、級外で!

今月の正解

水仙を朝日の窓に無人
潮騒に鳴り出しそうな水仙よ
 しげこさん、dolce@地味ーずさん、誉茂子さん、小川めぐるさん、とべのひさのさん、くろしゃさん、青柘榴さん、彩楓さん、笑松さん、一走人さん、元旦さん、のり茶づけさん、根本葉音さん、洒落神戸さん、うに子さん、大阪野旅人さん、ゆりかもめさん、あるきしちはるさん、空山さん。正解の方がこんなにも! 水仙の明るさ、清々しさ、香りを静かな駅で感じられるかしら、と……。そして海に向かって咲く水仙の姿形に焦点を当ててみたのですが、いかがだったでしょうか? 1級。

 そしてみなさん、今月の問題をご覧ください! お待たせいたしました、師匠が帰っていらっしゃいます!! 来月はまだ私が書かせていただきますので、最後まで精いっぱい師匠の代わりを務められるよう頑張ります。よろしくお願いいたします!

解答募集中!
次の(  )の中に共通する春の季語を入れてください。
(出題 マイマイ)

スカラベの尻高々と(   )
(   )チョコの卵の中もチョコ

このコーナーは『新日本大歳時記』(講談社)を参考にして、選者が勝手にランク付けをしています。新しい季語などを投稿される際は、歳時記 季寄せ名を併せて明記していただけると助かります!

山澤香奈(やまざわ かな)
 第3回俳句甲子園出場。句集シングル『線路とぶらんこ』(マルコボ.コム)。

マイマイ 
 2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人だったが、最近は?? 第1回、第4回百年俳句賞(旧大人コン)優秀賞受賞。2013年句集シングル『翼竜系統樹』上梓。将棋推定初段。棋友募集中。宇宙と生命を題材に詠んだ句集『宇宙開闢以降』マルコボオンラインショップにて発売中。



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100年投句計画 投句方法



雑詠俳句計画
自由律俳句計画
詰め俳句計画

 「雑詠俳句計画」では、寄せられた投句を一括して、各選者が選句します。各選者に宛てて個別の投句を行うものではありません。

4月号掲載分締切 2月20日(火)

投句方法

 投句先コーナー名
 俳号(無ければ本名の名前のみ)
 本名
 電話番号
 住所

 以上の必要事項を書き添えて、編集室「100年投句計画」係までお寄せください。メールの場合は、件名を「100年投句計画」としてください。
 「雑詠俳句計画」「自由律俳句計画」はそれぞれ2句ずつまで投句できます。また、「詰め俳句計画」は季語1つのみを投稿できます。
 各コーナーの投句は、ひとつにまとめて送っていただいても構いません。

メール宛先
magazine@marukobo.com

投稿専用ページ
http://marukobo.com/toukou/

さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(「俳句ポスト365」のページ参照)


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短歌の窓


選者
短歌誌『未来』会員 渡部光一郎


特選

お前など死んでしまえと月の夜介護の父の足を拭きたる  有瀬こうこ
 死んでしまえなどと悪態をつきながら(あるいはそういう想念が浮かびながら)も、父の足をふく作者。たいへんな日常の中には、しぜんと感情のさざ波も立つが、とにもかくにも父親のお世話をしながら、湧いてくる負の感情も見つめて日々を過ごす。「月の夜」で繋いだところに作者の救いが感じられるが、おそらく文学の有効性は、その辺にあるのだろう。


並選

何故君に魅かれたのかと問ひながら冬の泉に触れれば熱い  きさらぎ恋衣
 「何故君に魅かれたのか」という問いは、自らに対してのものだろうか。それとも「君」へ戯れに問いかけてみたものか。やや読みが動くところであるが、前者であれば、自問であるということをはっきり言っていないところがポイントなのだろう。ひとを恋うこころが、たとえ冬の冷たい泉の水にさわってもそれを熱く感じさせている。下句でよく締まった。

100才まで面倒看てねと言う夫頑張ってみると答えておく  ミセスコナン
 百まで生きるからといい、がんばってみると答える夫婦の、ユーモアにくるまれた愛情が気持ちよい作品。結句が一音足りないのが少し残念だが、この場合は可かもしれない。


コメント

松手入れやらないうちに腰痛め妻の腕前見る羽目となる  青柘榴
 作者が腰を痛めてしまったので、「妻」はなんと松の手入れまで上手にしてしまった。ユーモラスである。「松手入れ」は言い方としてやや苦しいので初句が六音になっても「松の手入れ」とおぎなった方がよい。

白菜が巻いてきたよと我を呼ぶ夫は得意げ小さき畑に  柝の音
 白菜を育てているのだろう。なんだか栽培が難しそうだ。「巻いてきたよ」という言葉がよく効いている。成長してあの姿になってくる様子を「巻いてくる」というのはこの歌ではじめて知った。「小さき畑」なので「得意げ」という言い方がいきてくる。

冬ざれに市民ケーンの橇のごと思い出さるる三角の凧  暮井戸
 懐古の歌。映画「市民ケーン」の「橇」のように、子供の頃によく揚げた「凧」を思い出している。三角だからゲイラだと分かる。「ヒューストンからやって来た」ゲイラカイトはかんたんに高く揚がるので、評者の周りの子供もみんな持っていた記憶がある。

車椅子押して生家へいざなひてまづ花の名を教へくるる兄  松田夜市
 「押し」「いざなひ」「教へくるる」と、動詞が三つある歌。それぞれの動作の主体が何なのか、少し分かりにくい。一首の中に動詞を多く入れると歌の意図が伝わらないケースが多いのでご注意を。作品としてはロマンティック。

踏みごこち良き化野の竹落葉さやさや葉擦れの音のするなり  ケンケン
 耳による歌。竹の葉を踏む感触と葉擦れの音が主役で、視覚中心に作った歌にはない味がある。「さやさや」というオノマトペはやや手垢がついた感があるか。

アボカドの栽培はじめ六か月ひょろつく茎に七枚の葉よ  一走人
 育てているアボカドの様子をそのまま描いた歌。「ひょろつく茎に七枚の葉」という描写が、アボカドの大きな種にそぐわない感じで可笑しみがある。特に何かの思いを述べているというのではないが、こういう飄々とした歌もいいなあ。

王様をやるから来てと子の舞台見れば居並ぶ王様十人  凡鑽
 面白い。子が特別な王さまかと思いきや、十人いるうちの一人だった。うまく定型にまとめている。

馥郁とかほる路地裏その奥の葉隠れに咲く柊の花  芳香
 やや凝った感があるが、「馥郁」「葉隠れ」といった、遣うのが難しい言葉にチャレンジしている。もう少し素材の数を減らしたほうが狙いが絞りやすいかもしれない。


自作の短歌(2首まで)を下記までお送り下さい。締切は毎月20日。
専用フォーム
http://www.marukobo.com/tanka/
専用Email
tanka@marukobo.com


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自作の俳句を英語に訳そう!

百人百様 E-haiku



評 菅 紀子


 今年は明治維新150周年です。日本語も外国語との接触で刺激を受け、言文一致運動を経て近代日本語が確立された時期でもあります。松山出身の正岡子規が俳句と短歌の革新を行なったのもこの時期。昨年ご紹介したように英国人ブライスらは日本語の俳句を英語で翻訳紹介するようになります。そういうわけで、今年は日本人による英語俳句維新のつもりでこの一年を過ごしましょう。


1.
English junior school is teatye
I like spanking ouch!
winter is river

先生がお尻をたたく冬の川  KIYOAKI FILM

the teacher hits
students in their back,
winter river

2.
winter is sister
I like chocolate
sisters my girl

冬の姉チョコレイト舐め吾が君よ  KIYOAKI FILM

my dear sister
who is licking at chocolate
in winter

KIYOAKI FILM 英語塾でアメリカの女性先生が、当地の遊びを教えてあげると言って、突然、生徒のお尻をたたいて、追いかけっこしようとした。しかし日本の子どもは先生に仕返しに叩いて、アウッチと言って終了した思い出があります(笑)

紀 概して日本人は消極的なものですが、子供は元気があっていいじゃないですか(笑)


3.
winter blue sky-
waiting for
a care taxi

介護タクシー冬青空と待ってゐる  久我恒子

blue winter sky
waiting for
a care taxi

紀 日本語と語順を変えるとより自然な英語かな。久我さんの、多くを語らずシンプルな作風が好きです。


4.
professors instead of students-
minor performers
in Christmas

学生の前座は教授クリスマス  久我恒子

the curtain raiser
not the students but their professor,
it's Christmas


5.
That's eaten
In mirage
Skiping stone

水切の石を飲みこむ蜃気楼  ほろよい

fading into
a mirage,
a skipping stone

ほろよい 月は、何が食べられたんだろう?と思わせて、答え「水切」を最後にしてみました。日本語ではリズムとか文字数で制約されるけど、英語俳句は、私が分からないだけかもしれませんが……自由にできるような?(Skiping stoneはネットで拾いました……あってるのかな?)

紀 ほろよいさんの意図を汲んで「水切」を最後にした参考句を作りました。skipの綴りは ing 形にするときには p をもう一つ重ねてください。「飲み込む」は蜃気楼の中に霞んで消えていく、と表現しました。
 英語俳句は解釈にもよりますが、日本語の五七調とか文字数の数え方などをそのまま取り入れることはできないので、日本語句ほど縛られないのはたしかです。

6.
a sign of spring night
is
a sign of elephant's death

春の夜の気配は象が逝く気配  チャンヒ

紀 1、 断定的な is の代わりに tells とし、春の夜の気配は象が逝く気配を語る(教える)としてもいいかも。2、 a sign of spring night は春の夜が近くにいるように感じられるという意味(ex.忍者の気配)ですが、チャンヒさんは、春の夜が醸し出すものとしての気配を言っているのでは? すると、次のような訳もできます。

spring night
the intimation of
an elephant's death

7.
flowers will fall
as there is
an end in a railroad track

花は散る線路に果てがあるように  チャンヒ

flowers will fall
as there is an end
to a railroad track

8.
Cold wind「Cycad of flowers are over」

木枯しや『ご赦免花は散りにけり』  すずき徳三郎

cold blasts
“Blown away are cycad flowers”

9.
Opening a bottle on Dom
Prignon celebrating me on
my success in winter

ドンペリを開けて祝ってもらう冬  すずき徳三郎

open a Dom Prignon
to celebrate my success,
a winter day

すずき徳三郎 8月に受験した国家試験の結果発表が12月15日にありました。前回、誕生日祝い兼祭りの炊き出し慰労会をさせてもらった知人が、「合格してたらオゴリでお祝い会を、不合格ならワリカンで励ます会を」と申し出てくれておりました。その知人へ予告していた不合格のときのメールの表題が上記の句で、合格のときが下記の句でした。「赦免花は散った」という木枯し紋次郎シリーズの第一作へのオマージュも込めてますので、季重なり、しかも夏と冬という問題と切れ字が2つという問題がありますが、「あっしには、かかわりのないことでごさんす」。ちなみに科目合格があり2科目のうち1科目合格のときは「めでたさも中くらいなりおらが冬」でした。

紀 :8.の「 」は日本語ですから“ ” に変えて。9.は3行詩にした方が俳句の旨味が出ると思います。それで結果はどうだったのでしょう?

10.
Hi, the fall butterfly,
I hope that everybody
contacts with you kindly

あきてふやひとにやさしくしてもらひ  明惟久里

the fall butterfly,
may people be kind
to you

紀:切れ字「や」は秋蝶に呼びかけているわけではなく強調です。英語では 「 , 」(カンマ)で代用します。may 人 〜 で「人が〜でありますよう」という意味になります。

11.
sipping hot sake
with a flamber fugu fin
picked a joker

ひれざけやほろよひでぢよーかあをひく  明 惟久里

I pick a joker
slightly drunken with sake
blowfish fin dipped

明 惟久里 今回はsyllableも意識したのですが、下手くそ初心者の私ですと今度は英句としてうまくなくなり……難しいですね。でも、面白いです^^
 師走になり、お忙しい時期になられると思います。菅先生も、くれぐれもお身体お大事にどうぞよい年をお迎え下さいませ。

紀 おかげさまで良い年を迎えることができています。

12.
fingers to promise
rugged finger
winter galaxy in the sky

指切りの指のゴツゴツ冬銀河  彩楓

rugged fingers
to pinky-swear
winter galaxy

13.
deep winter
one cat's cradle
with small hand

小さき手の一人綾取り冬深む  彩楓
doing cat's cradle
between small hands,
winter deepens

彩楓 指切りを pinky swear とした方が良いのか迷ったのですが、fingers to promiseの方が好きだったので……易しい単語ほど、ついうっかりスペルを間違ってしまいます。気をつけます。

紀 finger が 重複しないよう pinky-swear (指切りするという自動詞)を使いました。始めにゴツゴツした指、と切り出し指の様子に焦点化しました。


菅 紀子(かん のりこ)
(有)クラパムコモンカンパニー代表。通 翻訳、メディアによる姉妹都市交流コーディネーター。社名は夏目漱石が下宿したロンドンの地名から。歩道短歌会同人。人文学修士、翻訳修士。松山大学非常勤講師。(Hailstone Haiku Circle blog ICEBOX Contributor)(漱石と彼のライバル重見周吉、日系移民研究)


自作の俳句およびそれを英語俳句にしたもの(2句まで)を募集!
応募先
WEB http://marukobo.com/eigo/
Email eigo@marukobo.com
3月号掲載分締切 1月20日(土)


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百年歳時記


夏井いつき

第56回

 有名俳人の一句を紹介するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月紹介鑑賞していきます。

水涸るや月の匂ひのする小石  24516
 「水涸る」を大景として捉えるのではなく、そこにある一個の「小石」を描写することで季語「水涸る」を表現しました。「匂ひ」とあれば「小石」を手にしているであろうことが想像できますし、それが「月の匂ひ」のようだと述べることで、水の涸れている川が月面のように冷たく灰色に広がっていることも読み取れます。
 「月の匂ひ」は虚の嗅覚ですが、「月の匂ひのする小石」は虚の嗅覚を持った映像へと転換。上五の季語の力と相まって、掌の「小石」は冴え冴えと冷たく匂うのです。水の涸れた川底の「小石」を一つ我が手に載せることで、季語「水涸る」と作者が一気に結ばれたのだなという現場証明のある作品でした。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』12月8日掲載分)

月光の涸川のぼる象の列  くらげを
 「涸川」は「水涸る」の傍題ですが、水が涸れるという状況だけではなく、川という光景を内包した季語になります。
 一読、下五の展開にハッとします。「月光」の下には白く光る「涸川」がある。その川をのぼっていくのは「象の列」であるよ、という虚の光景は、静かな迫力を放ちます。ひょっとするとアフリカなどでは現実としてこのような光景が見られるのかもしれませんが、冬の季語「涸川」の存在によって、月下を歩いていく「象の列」は詩としての力を持ち得るのではないかと思います。「月光」は、季語「涸川」によって一気に冷たく硬い光を発し始めます。「涸川」も「象」も灰褐色の静けさ。ゆっくりと進む「象の列」の悲しみ。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』12月8日掲載分)

七草や灰梅色の雪こごる  ひつじはねた
 第十六回まる裏俳句甲子園の席題「七草」の一句。新年の人事として出題されたのならば、本来は「七種」と表記すべきかとは思いますが、行事を詠んだ季重なりの作品として強く惹かれました。
 一月七日に行われるのが七種の行事。上五「や」の強調のあとに出てくる「灰梅色」とは聞きなれない色です。白梅に暗い緑がまじった色を想像し、かすかな濁りを芯に持ったまま凍っている「雪」を思い浮かべました。が、調べてみると「灰梅色」は灰色がかったもも色だと分かりました。となれば、「灰梅色」は正月七日を迎える朝のイメージでしょうか。ほんのりと朝焼の色を含んだ雪が凝っている七種の日。健やかな粥の香りがめでたく芳しい朝です。
(第十六回まる裏俳句甲子園)

初雪や耳のほんのり遠くなる  月の道
 上五「初雪や」からの展開は実にさりげないものですが、中七下五「耳のほんのり遠くなる」という措辞がそのまま我が五感に溶け込んでくるかのような感覚に囚われます。「初」の一字がつく季語はさまざまありますが、どれも今年初めて出会う心の華やぎを感じさせる季語たち。「初雪」もまた、強く激しい感情ではなく、まさに「ほんのり」とした心の動きを表現する季語です。あら初雪だわ!と気づいたとたん、心が「初雪」にうっとりと囚われ、「耳」が周りの音を聞くことを放棄してしまっている……という感覚なのでしょう。「耳のほんのり遠くなる」という体の反応を素直にキャッチでき、それを言葉に紡げる感性のなんと素敵なことでしょう。
(第十六回まる裏俳句甲子園)

初鶏やもうじき僕が壊す家  睦
 「もうじき僕が壊す家」は様々な解釈が可能な中七下五です。誰も住まなくなった生家を壊すのか。父あるいは母を引き取ることで住む必要がなくなった家か。あるいはモノとしての「家」ではなく、概念としての「家」だと解釈することも可能です。いずれの意図で詠まれた句であったとしても、「僕」という存在が「家」に対して持つ感情をどんな季語に託すのかが作品の成否を分けます。
 上五に季語「初鶏」を選択したことで、一句は、取り合わせとしてのオリジナリティと心理的描写としてのリアリティを獲得。来年は存在しないに違いない「家」にて聞く最後の「初鶏」なんと感慨深いことか、切ない朝であることか。覚悟の新年であることか。
(第十六回まる裏俳句甲子園)


百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
松山市公式サイト『俳句ポスト365』http://haikutown.jp/post/
などに投句された俳句を紹介します。


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俳句の街 まつやま

俳句ポスト365



協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


金曜日優秀句
平成29年12月度

水涸る(みずかる)


水涸れてあれは海より来たる鳥  香野さとみ
水涸れて義眼のような鳥の群  いなべきよみ
岩すべて山の骨片水の涸る  樫の木
口笛を吹けば情死の川涸れる  かまど
水涸れて伐採の香の甘やかに  かま猫
水涸れてかみつきがめのあくびかな  せり坊
沼涸れて此処は墓だつたのですね  マカロン
涸川や犬引きずっているナニカ  ぐ
月光の涸川のぼる象の列  くらげを


水涸るや月の匂ひのする小石  24516

炭(すみ)


キンキンと割れる佳き炭木に木霊  あまぶー
今年も良き炭できました天狗殿  多々良海月
御籤買ふひよんなことから炭も買ふ  椋本望生
炭つぐやつけているのはラジオ劇  ラーラ
寒星を打ち合はせたる炭の声  めいおう星
ふるさとはロシアのむこう炭をつぐ  月の道
金鳥の缶に消炭貯めにけり  さるぼぼ@チーム天地夢遥
炭で描く地図おなごには教えるな  霧子
鼻毛とは健気なるもの炭俵  小泉岩魚


酢酸の臭ふフヰルムや炭をつぐ  せり坊


2月の兼題
公式サイト内の「俳句投稿」より作品をお寄せください。(※投句期間を過ぎますと投稿ページは次の兼題の募集に自動的に切り替わります。ご投稿はお早めに。)

投句期間 1月25日〜2月7日
薇(ぜんまい)
仲春/植物
ゼンマイ科の多年草シダ。山林や野原に数本ずつ自生する。山菜として有名で、先端が白い綿毛に覆われて渦を巻いた、まだ柔らかいうちの若葉や茎を折り取って、干して貯え食用にする。

投句期間 2月8日〜2月21日
春潮(しゅんちょう)
三春/地理
春になって暖流である黒潮が流入すると、水温が徐々に上がるとともに、潮の色は淡く澄んだ藍色に変わる。また、干満の差も大きくなり、遠浅の海では豊かな干潟が広がる。

参考文献 『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


 「俳句ポスト365」は携帯電話からもご参加いただけます。
 「俳句ポスト365」公式Facebookページ開設中! 公式サイトに設置しておりますリンクよりお入りください。毎回の兼題のお知らせを中心にお伝えしながら、皆様の返信欄への書き込みもお待ちしております。


 募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。


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一句一遊情報局



協力 南海放送


金曜日優秀句
平成29年12月度


藷粥(いもがゆ)

藷粥の最後の藷という甘さ  野良古
木の匙を藷粥の藷落ちたがる  かま猫
藷粥を煮る木の杓子焦げはじむ  猫愛すクリーム
藷粥や椹木蓋の糊の痕  冬のおこじょ
定年板につき昼も藷粥  まぴこ
順調に老いて藷粥さらう夫  松田てぃ
祖母ほどの貞女はおらぬ藷の粥  篠原そも
藷粥が美味しすぎると祖母泣きて  ひでやん
藷粥をすすりさらさら死ぬ気なし  あつむら恵女
藷粥やばあやの乳の細長き  桃猫
藷粥甘し卒乳の日は近し  むぎみち
藷粥に噎すは入院前夜かな  高尾彩
藷粥や父に工学への焦れ  樫の木
藷粥は薄しカストリ酒は臭し  トポル
いもがゆのひかりのうすうすとかなし  ひそか


藷粥に藷の尻尾や噛みて捨つ  マイマイ


侘助(わびすけ)

侘助のおちてほとりと伏すむくろ  緑の手
侘助の目覚め鸚哥の墓の上  のんしゃらん
侘助やおとうとに目をくれたひと  むぎみち
侘助を愛でる旗袍翡翠色  小市
中庭に侘助日本人学校  このはる紗耶
侘助や糊の匂ひの文具店  立川六珈
侘助や世間私にちと辛い  中嶋浄土
侘助や薄墨の書の綴る謝意  風
侘助よ祖母の恋なら聞きませう  ラーラ
侘助や尼僧の両手ささくれて  としまる
侘助の炎滾らぬよう開く  マーペー
侘助を運ぶ炎を消さぬよう  あつむら恵女
侘助や妣には尻尾があったかも  電線男


焦らずんば吉と侘助こぼれたり  彩楓




川に洗えば大根も空も透き通る  妹のりこ
川霧に赤い実ちりちりと鳴るよ  妙
川にはこざかなと木にはかんすずめがいる  伯方児童館俳句キッズ まさと
天の川のぞきこむかにはなすひと  天野姫城
三途の川逆走枯葦などなぎ倒せ  まぴこ
濡れっぱなしの目あり二月の川の卵  のんしゃらん
流さるる鷺の骸や冬の川  鯛飯
物として浮かぶ兵士や冬の川  中原久遠
母なる川ボルガよつめたき黒パンよ  太郎
川の名はアイヌ語冬の星近し  富山の露玉
川涸れてあら桃太郎まだそこに  あつむら恵女
触るる雪を豊平川の黒く呑む  越智空子
海とも川ともいえぬあたりを風花は  だんご虫


どこまでが川だったのか神無月  NPOとうおん俳句部 雪花


テーマ  中予

中予とは蜜柑剥く親指あたり  司敬
魂うかと浮きて道後の柚湯かな  松田てぃ
出湯もよし伊予三山は月の庭  おかまごはん
大草鞋据うる大寒仁王門  樫の木
春光を練り上げ砥部焼の白き  小野更紗
冬のダイヤモンドクロス風を断つ  荒あらた
草の花少年子規の伊予絣  もも
好古に飯碗ひとつ秋の空  凡鑽
天守より何処如何見ても麗らかや  山田ノムオー
笑うとるぞな子規さんも城山も  マイマイ
ターナー島の烏帽子のごとき淑気かな  ほろよい
椿咲くここは雨音やさしき地  ひそか


古事記旅し蕪の紅きかな  篠原そも


年の夜(としのよ)

投げ売りの店先清め年の夜  まち眞知子
願わずに謝す年の夜のあの星へ  一斤染乃
炊事場の水の硬さよ年の夜  理酔
年の夜に洗うお椀の剥ぐる金  あいは
年の夜捌いた鰤の肝を炊く  ゆすらご
はなうたとかつをのにほひ年の夜  中山月波
年の夜の雪平に昆布しずみゆく  どかてぃ
屠蘇散を浸して終わる年一夜  かのん
白湯飲みて立花正せる年の夜  むぎ子
年の夜や白山さんの巫女の鈴  にゃん
年の夜に拾いし猫の声澄めり  江口小春
年の夜やうつらうつらと尾の記憶  立川六珈
年の夜や車中であんたと過ごすとは  穂の実
手洗ひの下着しやばしやば年の夜を  ひそか
年の夜を並べる銀の匙百本  月の道
隊員の作る年夜のおかめ蕎麦  トポル


年の夜や咲きしぼむごと燐寸の火  ドクトルバンブー


投句募集中の兼題

投句締切 2月11日

薄紅梅(うすこうばい)
初春/植物
梅の紅色系の品種のなかでも、艶やかな色の紅梅に比べて、花の色が薄いもの。紅梅は白梅に比べ、気品では一歩譲るものの、若々しさや華やぎがある。

春光(しゅんこう)
三春/天文
長い冬が終わり、ようやく春の気配が地に充ちた、春の景色の有り様をいう。

投句締切 2月25日


季語ではない兼題です。カタカナの「フ」の字が詠み込まれていれば、用い方は問いません。季語は当季を原則として、自由に選んでください。

孕み雀(はらみすずめ)
仲春/動物
鳥類は卵生であり、胎生である哺乳類のように目立って腹が膨れて大きくなることはないため、実際の見た目では孕んでいるかどうか分かりづらい。この事から観念的な季語といわれており、また、卵を抱いたり雛を育てたりする姿、とする説もある。

参考文献『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句宛先
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとにしたものです。俳句ならびに俳号が実際とは異なっている場合がありますのでご了承ください。


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今回のお題句に対する投句から次のお題句を選び繋げてゆく

疑似俳句対局


選者 美杉しげり


今回のお題句
三島忌や曳船の縄張り詰めて  すりいぴい

 今月も多彩な句が揃いましたが、擬似俳句対局は「お題句から自立語または漢字をいただいて詠む」のがルール。「火事を見し人波にゐる僧ひとり」「年の夜犬への缶の蓋まろく」……良い句なのに、自立語がありませんでした。残念! 次回またリベンジを。

候補句

ピンと忌中紙たわわに実南天  凡鑽

 瀬戸内海の景色でしょうか、冬うららがいいですね。今月の一番乗り句です。今月の一番乗り句。忌中紙の白と南天の実の鮮やかな赤が印象的ですね。

全「回忌」まとめし祖母の墓詣づ  野良古

 「忌」を使った句、もうひとつ。こちらの投句も早かったです。

春の風邪記憶の僕は鹿児島弁  24516
葛の花曳かば不器男の名句かな  芳香

 24516さんの句は幼い頃の思い出でしょうか。鹿児島弁、というのがいいですね。「不器男の名句」は「あなたなる夜雨の葛のあなたかな」でしょうね。

一張羅黒のキャメルの初詣  ぐずみ
春雪や強張り続く犬の四肢  薄荷光
飾り凧眼血走る張飛かな  ひでやん
大喝の張飛黄砂を巻き上げて  中山月波

 「張」句。「一張羅」「強張り」という語の選択がそれぞれ効いていますね。
 「張飛」が二句揃うとは意外。お二人とも三国志ファン? 勢いが感じられる句です。

季語三つ詰めて素堂の初かつお  藍植生
手作りのジヤム詰め終ふや木の芽時  すりいぴい
早春のオモニは髪をひき詰めて  誉茂子
身に不満詰めてまろむやかじけ猫  根本葉音
白詰草少女ひととき姫となる  すみ
鮨詰めの嘴をあなたへ春満月  柊 月子
七手詰め北風過ぐる間に解きにけり  探花

 今回は「詰」を選んだ方が多かったですね。藍植生さんは機知の句、すりいぴいさんの句はいかにも美味しそう。誉茂子さんのオモニはきりっとした立ち姿が目に浮かびます。
 身に不満を詰めた猫なんとなく身近にいそう。すみさんの句は優しく、柊月子さんの句はちょっとシュールな味わい。探花さんの句、将棋盤を睨む横顔が見えてきそうです。

張り詰めて主菓子ころり初茶湯  大槻税悦
 そして、こちら大槻税悦さんの句。あえて難しそうな「張り詰めて」を選び、さらにお題句とは違う味わいの句を詠んでみたというコメント付。その意気や良し、ですね。拍手!

注連縄や氏子総代四苦八苦  健次郎
注連縄の紙垂の白さや茜空  夏柿
縄跳びの百を数へて寒桜  出楽久眞
長縄を跳ぶ子ら数え寒雀  桂奈

 「縄」の句。同じ注連縄ながら、健次郎さんと夏柿さんの句、まったく違う趣なのが楽しい。出楽久眞さんと桂奈さんの句、寒桜と寒雀選択した季語がそれぞれの個性なのでしょう。

縄張りは島の港や猫の恋  洒落神戸
縄張を失いし猫春隣  星埜黴円

 縄張と猫の取合せ、いいですね。洒落神戸さんの句の猫はどうもボス猫っぽいし、星埜黴円さんの句の猫は縄張を取られてしょんぼり、という感じ。猫バカ心がくすぐられます。

縄文の磐座に降る落葉かな  斎之雪
縄文の母豊かなり日脚伸ぶ  小市

 こちらは縄文二句。巨石へと降りつづける落葉、豊かな胸の土偶へ射す日差しが見えてきました。どちらの句も季語が活きていると思います。

湯治場に粕汁つつく三姉妹  あいむ李景
佐保姫や三度織たる薄衣  冬のおこじょ
年の瀬の雲間三機を送る昼  青柘榴
春月をぐいと引き寄せ津軽三味  柝の音
三島読む指あえかなり春の闇  久我恒子

 「三」を選択された皆さん。三姉妹は楽しそうだし、佐保姫の衣は美しい。雲間の三機の光に、津軽三味の迫力、そして三島を読む指はきっとほっそりと優雅に白いのでしょう。

奴来る怒号飛び交う捕鯨船  笑松
船盛が九艘並ぶ年忘れ  杉もとたかし

 「奴」とは漁師たちが怖れるような鯨でしょうか。かつては日本各地でそんな光景が見られたのでしょうね。杉もとたかしさんの詠んだ忘年会、なんとも豪勢。その部屋の賑わいが想像できます。

火縄銃構えしゃぼん玉をねらふ  天野姫城

 「火縄銃構え」で、昔の景を描くのかと思いきや、狙っているのはしゃぼん玉この意外性が楽しい。火縄銃の色や質感としゃぼん玉の対比も綺麗ですね。実はお題句にしようかと迷った句なのですが……「ねらふ」という仮名遣いにするなら「構へ」「しやぼん玉」とすべきでしょう。(あるいは「ねらう」とするか)ああ、惜しいなぁ。

次回お題句
春兆すぽんぽん船に好々爺  小川めぐる

 「ぽんぽん船」「好々爺」という音の響きが明るくて軽やか。いかにも春の気分ですね。これが晩春の季語だと中七下五の世界とつきすぎという気がしますが、「春兆す」との距離感はいいなと思います。同時投句の「飴色にひかる曳き綱春浅し」もきれいな句でしたね。
 というわけで、送信前に自立語と表記の確認をして、来月も投句よろしく!


美杉しげり
 第8回俳句界賞受賞。4年ほど前から小説も書き始め、短編「瑠璃」で第21回やまなし文学賞佳作。美杉しげりはその時からのペンネーム。

毎月25日頃に、投句フォームにてお題句を発表します。投句締切は毎月末日。

疑似俳句対局投句フォームアドレス
http://marukobo.com/taikyoku/


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THE BEATLES 213 PROJECT


第5回
ヘルプ! ザ ビートルズ


 ビートルズ2作目の主演映画「ヘルプ!4人はアイドル」の封切は1965年7月。そのサウンドトラックでもある5枚目のアルバム「ヘルプ!」は同じ年の8月に発売されました。人気絶頂の時期でありながら、アーティストへと脱皮してゆくきっかけとなったアルバムとも言うことができます。

ヘルプ!

救済の人待ち侘びて春隣  暮井戸
 アイドル真っ只中のこの時期(映画の邦題をご覧ください)、この歌詞をジョンの心の叫びと受け止めた人はごく少数派だったかもしれません。少しキリスト教の影響も考えさせられる暮井戸さんの一句です。
駆け抜けろ春闇かるく跳び越えて  猫正宗
 でありながら曲調はあくまでもポップ。斬新にして重厚なコーラスワークはもはや完成の域に達したものと言えるでしょう。
じゃがじゃんと掲げる値札亀鳴けり  蛇頭
 「ヘルプ!」といえば「開運!なんでも鑑定団」という人も多いのでは。20年以上も続く人気テレビ番組なのだそうです。
真実の叫びがヘルプ!黄砂降る!  チャンヒ
助けてと呼ばわる人や冬の雲  れんげ畑

涙の乗車券

かろがろと君奪い去る春列車  ツバメ号
 ビートルズ9枚目のシングル(ちなみに「ヘルプ!」が10枚目)。ジョンのソロボーカルをじっくりと味わうことのできる初めてのシングルナンバーと言えるでしょう。「シーズガッタチケットゥライド」の歌詞の前に出てくるアーというため息には、何度聞いても「上手いなあ」と感じ入ってしまいます。
春風に彼女は旅立つまいべびどんけあ  越境島
 さばさばと旅立っていく彼女。ジョンの失恋ソングに出てくる主人公はいつも未練がましいんだよなあ。
無期限の定期手にして春隣  さすけ
しぐるるや二時間待ちの無人駅  元旦

アクト ナチュラリー

なかなかの役者でござる寒林檎  暮井戸
 映画「ヘルプ!」では、リンゴの指輪が某国の教団に狙われたことからさまざまなドタバタ騒動が巻き起こります。ユーモアと哀愁を併せ持つリンゴのキャラクターは4人の中で一番の役者向きと言えるのでしょう。
カントリーリズムを刻み冬林檎  斎乃雪
 音程をはずしながらも楽しそうなリンゴのボーカル。ポールのコーラス、ジョージとジョンのギター陣もノリノリです。ビートルズはなかなかのカントリー&ウェスタンフリークだったのかもしれませんね。
 それにしてもリンゴの曲で林檎を季語に使うのはなるべく打ち止めにしてくれんかなあとチャンヒ編集長がぼやいておりましたよ(笑)。
福豆の外れて鳴れり林檎箱  時計子

イエスタデイ

見わたせば昨日の雪の音の中  井玉
 起き抜けに頭の中に浮かんだあまりにも完璧なメロディー。他人の曲を覚えていただけではないのかと不安に思ったポールが、あちこち先行曲がないか調べさせたというエピソードは有名です。雪原を見渡して昨日の雪の降る音を聞く。それは完璧すぎるメロディーが昇華した沈黙の音なのかもしれません。
ただ君の話を聞いていて秋麗  猫正宗
 澄み切ったストリングスにはどうしても秋を思い浮かべてしまうという猫正宗さんの一句。ヴェルレーヌ「秋の詩」のヴィオロンのイメージとコメントをいただきました。
阿武隈のひかりひとすぢ囀れり  久我恒子
 久我恒子さんの句は智恵子抄がモチーフ。イ音の脚韻と、イエスタデイの歌詞に周到に施された脚韻とがひそやかに響きあいます。
イエスタデイかけ長髪の焼芋屋  風来松
 この焼芋屋氏の存在感は強烈。もとはミュージシャンを目指していたのかも。こういう人70年代とかに絶対いたよなあとうれしくなってしまいました。
朔旦のメビウスの輪を三周目  きさらぎ恋衣


第7回 兼題曲
テーマ「シングルヒット曲特集」
 フロム ミー トゥー ユー
 シー ラブズ ユー
 キャント バイ ミー ラブ
 アイ フィール ファイン

専用フォーム http://marukobo.com/beatles/
専用Email beatles@marukobo.com
締め切り 2月20日


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鑑(み)るという冒険


〜映画篇 演劇篇〜

文&俳句 猫正宗


第六十四回
『ブレードランナー2042』&『ヴィーナス』

 『ブレードランナー』(以下『BR』)は、リドリー スコット監督がハードボイルドタッチで描くSF映画。特に、降りやまぬ酸性雨にけぶり、アジア(主に日本)の言葉と文字が飛び交う原色のネオンに彩られた猥雑な街は、当時、誰も観たことがなかった未来のイメージとして、衝撃を持って迎えられた。
 その続編として35年ぶりに作られたのが『ブレードランナー2042』。ドゥニ ヴィルヌーヴ監督独自のテイストは滲むものの、前作の雰囲気を引き継ぎ発展させ、足らなかったドラマは充実し、謎には解答が与えられつつ、ファンが大事にしておきたい微妙な部分には敢えて隙をつくる。完璧だ。続編として完璧だと言っていいだろう。いや、前作から切り離した一つの作品としても充分成立していると思う。私も堪能させてもらった。だが、しかし……。そもそも前作は隙だらけの映画だった。低予算、編集ミス、命令による不本意な改変etc. 雇われ監督であったリドリー自身、撮影中に、さらに後付けで本作を発見していったと思しき節がある。敵役の人造人間が最後に語る、美しく、かつ、テーマにかかわる重要な台詞さえ、役者のアドリブだったという。そういう意味ではかなりアンコントロールな作品だったわけで、だからこそ多くの人がその隙に自分たちの想いをこめられたのだろう。その結果、前作はファンそれぞれの『BR』になった。やがてカルト的な人気を博するに至り「ディレクターズ カット(最終版)」「ファイナルカット」など幾つかの版ができ、「それぞれの」に、さらに拍車をかけることになる。
 だが、本作「2042」は、隙さえも完全に制御されている。解答としてきれいすぎる。そもそも解答が必要なのか。これではまるで「どうです、これが正解です」といわれてるようなものではないか。だが、何度でも言おう。既に『BR』は、ファンそれぞれのものだ。本作がどんなに完璧であろうとも、それもまた解釈の一つにすぎないのだ。

過去のよに記憶のように雪積むや

 隙というのならば、こちらもまた隙のある作品。『ヴィーナス』(脚本 演出:佐々木慶、出演:由香里、杉浦裕子、たかすかよしこ、他、'17年11月25日、26日、シアターねこ)を上演したのはおおむね50歳以上で構成されたシニア劇団、劇団プラチナねこ。正直役者陣はうまくない。隙だらけだ。言い淀みや台詞待ちの長い間、といった場面も多々あった。だが、そんなことを上回るものが本舞台にはあった。言うならば、その年代でしか出せない雰囲気、気分、思いが舞台から伝わり、迫力のある舞台となっていたのだ。言い淀みや不自然な間等々さえ、ある種の魅力となっていた。それは、役者陣のそれまで経験してきた、人生の厚みが表れていたと言ってもよいだろう。若い演劇人の多い愛媛の演劇界の中では、それは希少な体験だった。演劇の大きな見どころのひとつは、やはり“人間”ということなのだろう。

冬林檎少しゆがんだ形ごと


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岡田一実の

句集の本棚




西村麒麟 著

発行 文学の森(2017年初版)
169ページ
定価 本体1,667円+税

 北斗賞受賞作を含む第二句集。人の暮らしの中にあるちょっとした安らかさをつかむ。緩やかで明るく飄々とした語り口によって、桃源郷のような豊かさが現代においても有り得るのだと希望を感じる。
獅子舞が縦に暴れてゐるところ
嫁菜飯宿の暗さも気に入つて
烏の巣けふは烏がゐたりけり
冷房の開閉すべき箇所故障
 故障している冷房のカタカタと音を立てている部分を眺めている。「箇所(kasho)故障(koshou)」と韻が軽やかなのでどこか楽しげにも感じられる。
二人ゐて長さの違ふ蠅叩き
夕立が来さうで来たり走るなり
鱧食うて昼寝の床に戻るのみ
少し待つ秋の日傘を預かりて
 女物の日傘を預かって、おそらく好ましいと思う相手を少しだけ待つ。その気分のちょっとした華やぎ。秋晴のからりと澄んだ空気が作中主体を包む。
踊子の妻が流れて行きにけり
向き合つてけふの食事や小鳥来る
冬の雲会社に行かず遠出せず
金魚死後だらだらとある暑さかな
蘭鋳の子が水中をよぢ登る
金沢の見るべきは見て燗熱し
 「古志」同人。


片白草
大西朋 著

発行 ふらんす堂(2017年初版)
173ページ
定価 本体2,400円+税

 第四回星野立子新人賞受賞後の第一句集。平明な表現により淡い機微を捉える。静かな雨にしばらく耳を傾けるような繊細な詩情。
身支度のものの五分や桃の花
蘭鋳やみづうみ見ゆる通し土間
家々の音の筒抜鱧の皮
田の上の風はつめたし蚊喰鳥
格子戸を濡らす一雨胡瓜もみ
 降り込んでくる雨の音がする。格子戸を濡らす雨の匂いと胡瓜が揉まれるときの青臭い匂いとが仄かに重なる。雨も胡瓜から出る汁気も同じ水でありながら異なる位相であり、取合わせによって不思議な味わいが生まれる。
回廊に日の影長く松手入
蓬摘いつしか籠の重くなり
啓蟄や肘まで濡らし樽洗ふ
園丁のまはり離れず秋の蝶
汝が置きし手袋雨の匂ひせり
また光失ふ雲や冬の蝶
 雲の流れが見える。光を得ては失う雲。希望と不穏。日かげった瞬間に冬の蝶の頼りない動きを見る。
水ぬきし湯船の深き朝桜
雨蛙跳ぶ金色の指ひろげ
腰掛けてみてあたたかな日と思ふ
寄居虫の組み合ひ波にさらはるる
 「鷹」同人、「晨」同人。


岡田一実(おかだ かずみ)
 2014年「第三回 大人のための句集を作ろう!コンテスト」優秀賞受賞。2014年「浮力」にて現代俳句新人賞受賞。現代俳句協会会員。「いつき組」所属。「らん」同人。第二句集『境界 border』(マルコボ.コム)。


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新聞記事に隠された俳句を発掘する

クロヌリハイク


黒田マキ


昼寝でもしているような 星 ひとつ (2018年1月7日 デイリースポーツより)

本戎 えぼし姿の福娘 (2018年1月11日 朝日新聞より)

アブダビへ 利払い完了 12月 (2018年1月6日 日本経済新聞より)

あさイチ の 冬 の ニュース デわろてんか (2018年1月11日 愛媛新聞より)


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100年俳句計画 掲示板



テレビ ラジオ

NHK Eテレ『平成29年度第19回NHK全国俳句大会』
2月10日(土) 15時〜16時14分
 1月21日開催の模様を一部放送。夏井いつきが選者のひとりです。

NHK Eテレ『NHK俳句』
 日曜6時35分〜7時
 (再放送 水曜15時〜15時25分)
 夏井いつきが第3週選者を担当
2月18日(日)、再放送21日(水)
募集兼題「猫の恋」または自由
投句締切 2月10日必着
 投稿は葉書1枚に1句。選者名、兼題、俳句1句、名前、年齢、電話番号明記。
宛先 〒150−8001 NHK「NHK俳句」係
ホームページからの応募も可 http://www4.nhk.or.jp/nhkhaiku/

NHK 総合テレビ(四国四県域)
  「四国 おひるのクローバー」内、隔週火曜
 『夏井いつきのムービー俳句!』
2月27日(火)11時30分〜
 13日は平昌オリンピックのため放送がありません。

TBS系列局 全国ネット
 『プレバト!!』
毎週木曜 19時〜19時56分
 夏井いつきが俳句の査定を担当

南海放送
 松山市政広報番組
 『大好きまつやま しあわせ未来塾』
毎週火曜 20時54分〜21時
(再放送 日曜11時40分〜11時45分)
 夏井いつきが塾長として出演

南海放送ラジオ
 『夏井いつきの一句一遊』
毎週月〜金曜 10時〜10時10分
  「一句一遊情報局」のページ参照

FMラヂオバリバリ
 『俳句チャンネル』
毎週月曜 17時15分〜17時30分
(再放送 火曜7時15分〜7時30分)
投句募集兼題
「しゃぼん玉、春の夜」2月4日締切
「ヒヤシンス、薄氷」2月18日締切
 WEB http://www.baribari789.com/
 mail radio@baribari789.com
 FAX 0898(33)0789
  投句には本名、住所をお忘れなく!
  「天」の句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。

 各番組の放送予定は変更される場合がございます。新聞などで最新情報をご確認ください。


執筆

松山市の俳句サイト
 『俳句ポスト365』
http://haikutown.jp/post/
 「俳句ポスト365」のページ参照

テレビ大阪俳句クラブ
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」(夏井いつき選)
  毎週日曜タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井いつき選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。
 裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。
 朝日新聞松山総局(〒790−0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。



イベント、講演等

第7回 瀬戸内 松山国際写真俳句フェスティバル
2月3日(土)13時30分〜16時10分
 規記念博物館 4階講堂(愛媛県)
 観覧200名募集(先着順)。
 申込用紙をFAXまたは郵送でお送りください。(※電話不可)
 問合先 松山はいく事務局
 電話 089(945)6445
 FAX 089(934)6626
http://matsuyamahaiku.jp/

前橋市市政施行120周年記念 前橋商工会議所創立125周年記念事業 夏井いつきの句会ライブ
2月8日(木) 13時〜15時
 前橋テルサ 2Fホール(群馬県)
 問合先 前橋市中央公民館
 電話 027(210)2199

長崎市立小ヶ倉中学校句会ライブ
2月15日(木)14時〜15時50分

長崎市立横尾小学校句会ライブ
2月16日(金)9時40分〜11時25分

夏井いつき句会ライブin沼津
2月17日(土) 14時〜15時30分
 沼津市民文化センター 小ホール(静岡県)
 問合先 沼津市民文化センター
 電話 055(932)6111

浜松市東区 十湖賞俳句大会十周年記念講演会 夏井いつき記念講演会
2月18日(日)14時〜15時30分
 浜松福祉交流センターホール(静岡県)
 申込受付は終了しております。
 問合先 浜松市役所東区区振興課
 電話 053(424)0115

子規 漱石生誕150年記念NHKそれいけ! 俳句キッズ
2月25日(日) 13時30分〜16時
 松山市総合コミュニティーセンター キャメリアホール(松山市)
 参加無料 郵便はがきに1、郵便番号2、住所3、名前4、電話番号を記入し、〒790ー8501 NHK松山放送局「俳句キッズ」観覧係まで。2月5日(月)必着。応募多数の場合は抽選。
 問合先 NHKプラネット四国
 電話 089(921)1163


生まれてから現在までの代表三句による 代表句集2018

お詫び
 先月号に掲載の特集「代表句集2018」において、掲載漏れがございました。お詫びいたしますとともに、以下のとおり、改めて掲載させていただきます。

理酔(56)
啄木鳥の森に迷いてより白痴
 2016年ハイポにおいて「地」に選ばれながらも発表後、松山市の都合で抹消されたこの一句に陽を当ててやろうと思い立ちまして代表句としました。


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鮎の友釣り


第235回


俳号 柝の音(きのね)

前回 あいむ李景さんへ よく分からないまま俳句とツイッターを始めた時、やさしく仲間に入れてくださってありがとう。手描き友禅の素敵な作品や愛媛情報を楽しみにしています。これからも、よろしくね!

写真 友達からは「黙っていれば、大人しく真面目そうに見える」と言われます。

趣味 編物が大好き! 毛糸に触れていると心が安らぎ、編み棒を持たない日は忘れ物をしたような気分です。インドア派で、読書やエッセー、ネット句会で充実の日々。子供達も独立して今は夫婦二人、温泉巡りや海外旅行も楽しみの一つです。

好きな言葉 「笑う門には福来る」辛い時も、悲しい時も、笑いの種をみつけてスマイル、スマイルを心がけています。


次回、凡鑽さんへ 弟分として可愛がっている(?)ので凡鑽と呼び捨てで済みません。編物が趣味という京都の老舗のご主人です。豊かな発想と硬軟多彩な俳句、抜群の美的センスに敬服しております。


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告知



春夏秋冬笑顔
まつやま福祉
五七五

主催 松山市社会福祉協議会
   有限会社マルコボ.コム(ふくし句会 ハイクライフマガジン『100年俳句計画』)選句
協賛 四電エンジニアリング株式会社(社会福祉協議会賛助会員)


福祉をテーマにした
冬の五七五募集

年4回、福祉をテーマにした五七五を募集します。
人に優しくなれるような、575をお待ちしています。

第4回締切 2018年2月3日

2016年度 冬の五七五 会長賞
蝋梅のひかりへむける車椅子  有田けいこ


応募方法
インターネットの応募フォームにて応募してください。
専用フオーム http://www.marukobo.com/egao/

賞品「松山トリコ」
 大賞(松山市社協会長賞) 道後温泉湯玉トートバッグ(1点)
 優秀賞 ブックカバー(3点)
 入賞 紙の湯カードケース(4点)

発表 ハイクライフマガジン「100年俳句計画」3月号ほか

問い合わせ TEL 089-921-2111


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編集後記


キム チャンヒ

 松山市内の子供たちにとって、一句のみ投句するコンテストは沢山ある。子供たちは、俳句の作り方を教えて貰うこともなく、一律に教室で俳句を作り集められる事も多い。そういうやり方で、果たして良いのだろうかという疑問があった。俳句は17音しかなく、一句だけ応募するコンテストならまぐれ当たりも大いにあり得るからだ。
 そこで誕生したのが「夏休み句集を作ろう!コンテスト」。40句の作品集を小 中学生たちに作って貰うという、無謀とも思えるこの企画を始めてから、今回で11回目となった。今回の応募作品数は309作品。今特集では、優秀賞以上7作品の全ての俳句を掲載した。子供たちが、自分の表現として俳句に挑む姿に、驚かれた方も多いのではないだろか。特に、心を露わにすることを嫌う、思春期の中学生たちが、心のこもった作品集を応募していたのには、主催者として率直に嬉しかった。
 「夏休みの日数に合わせ、一日一句作れば40句になる」ということで40句と設定したのだが、もっと少ない作品でも良いのでは無いかという意見もある。子供たちの姿に合わせて、企画も進化させてゆかねばとも思う。


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次号予告


244号 3月1日発行予定

大人げないって、言われたい。第16回まる裏俳句甲子園


お得で便利なマルコボ.コム直販定期購読! 巻末の案内をご覧ください
お申し込みの方へ、毎月末頃に最新号を送料無料でお届けいたします!
(住所変更の際は必ず編集室までご連絡ください)

『HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画』は以下の書店でもお買い求め頂けます。

愛媛県
 明屋書店 ※一部店舗のみ
 ゆらり内海(愛南町)
 原田書房(今治市)
 子規記念博物館(松山市)
 紀伊國屋書店松山店
 ジュンク堂書店松山店


HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画
2018年2月号(No.243)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子

2018年2月1日発行