100年俳句計画 2017年8月号(No.237)


100年俳句計画 2017年8月号(No.237)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。






目次


巻頭リレーエッセイ
雪花


特集
新聞記事を黒く塗れ!
クロヌリハイク入門



好評連載


作品

百年百花
 樫の木/希望峰/高橋白道/都築まとむ


新 100年への軌跡
 俳句 宇佐美友海/小鳥遊栄樹
 評  平山南骨/十亀わら




読み物

美術館吟行/南行ひかる

ビートルズプロジェクト/夜市

Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳:朗善)

JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭

ラクゴキゴ。/らくさぶろう

クロヌリハイク/黒田マキ

百年歳時記/夏井いつき

mhm通信/若狹昭宏

岡田一実の句集の本棚/岡田一実

鑑(み)るという冒険/猫正宗

朝の見る句/蜂谷一人


読者のページ

100年投句計画
 選者三名による雑詠俳句計画
  桜井教人/阪西敦子/関悦史

 へたうま仙人/大塚迷路
 自由律俳句計画/きむらけんじ
 詰め俳句計画/マイマイ
 100年投句計画 投句方法

短歌の窓/久野はすみ

百人百様E-Haiku/菅紀子

俳句ポスト365

一句一遊情報局

疑似俳句対局/美杉しげり

100年俳句計画 掲示板

魚のアブク

鮎の友釣り



告知

編集後記

次号予告





巻頭リレーエッセイ



自由研究
雪花 

 小学三年生だった娘と子規の句碑を巡ったのは20年以上前の事である。帰省中に訪れた『子規記念博物館』で、子規の句碑記載の地図を見つけ、夏休みの自由研究に悩んでいた親子は、この地図にある句碑めぐりをする事にした。
 太山寺 高浜 新立 石手寺……そして城山へ出かけ、子規さんの句から見える景色を見て、句碑の横に立つ娘の写真を撮り、娘がその句の感想を書き、親子共同制作の自由研究は完成した。
 先日久しぶりに太山寺に行き、句碑の前の茶店から娘にラインをしたら「『菎蒻につゝじの名あれ太山寺』でしょう。味噌コンニャクを食べながらバアバが教えてくれたんだよね。」との返信。そうだ! 妣も一緒に行ったのだった。
 その時の妣の歳を越え、ちょっと俳句を知った私は、今同じ句碑巡りをしてどのような景色が見えるのか、どのように子規の句を読むのか、大人の自由研究をしてみたくなった。


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新聞記事を黒く塗れ!

クロヌリハイク入門



レポート キム チャンヒ


 本誌の偶数月に連載をしている「クロヌリハイク」。昨年末、連載開始から4年目を機に一冊の本にまとめたことから、新聞各紙で取り上げていただき、その魅力が広がりつつある。
 今回、作者である黒田マキさんの講師のもと、定期的に句会でクロヌリハイクに取り組んでいる松山市民劇場のご協力を得て、クロヌリハイクの作り方とその楽しみ方を紹介する。


 クロヌリハイクに必要なものは、新聞、鉛筆、ペン、ハサミなど。
 「まず、新聞記事から季語を見つけましょう。季語を見つけたら、半分できたようなもの」という黒田マキさんの言葉を受け、全員新聞の1ページ目から季語探し。
 「季語は文化欄や地方欄に結構ありますよ。逆に経済欄にはあまりないですね」とのこと。それぞれ、花の名前や動物を探しだす。
 「でも、やりなれてくると季語のない面に挑むのも醍醐味です」と黒田さん。

 季語を見つけられたら、次は俳句となる単語探し。
 「見出しを使ったり、記事をまたいで作っても構いません。コツは狭い範囲で探すこと」。
 新聞の文字は小さいので、広い記事で作ると仕上がりが美しくない。近くの文字でコンパクトに作るのが、綺麗に仕上げるコツ。
 記事の中で使えそうな文字を鉛筆で薄く囲ってゆく。個人的には、ここで気になる単語を沢山選んでおくと、後でまとめやすいと思った。
 またこの作業は、記事をコピーし、そのコピーで行う方が効率的。何度も試行錯誤できるし、作品となる記事自体を痛めることもない。

 選んだ俳句の中から使う単語を選ぶ。印をつけた単語を改めて見ると、自分が俳句を作る場合には、あまり使わない単語があることに気づく。例では、「巨額損失」「元凶」「一番奥」「繰り返す」などがそう。
 「8月」を中心に、ほかは柔らかい訓読みの単語で俳句を作ることにした。俳句としての読む順番を考慮し、「風」「なかった」「繰り返す」を選択。後は助詞を選んで仕上げるのみ。
 松山市民劇場事務局長の久野はすみさんは、本誌で3ヶ月間短歌の選者をされている方。「テレビ欄には意外と季語がある!」といくつも俳句を作っている様子。テレビ欄は一列が狭いのでコンパクトにまとまるのだ。

 次は俳句にまとめるための助詞選び。
 自立語と違って、助詞は同じ単語がいくつも出てくるので、選択に幅がある。また、黒く塗った際に、記事に出てくる順番では読まれないこともある。黒く塗った状態で、正しく読めるように単語を選ぶことが必要。
 例では、「風」+「の」として使いたいと考えた。当初、記事の流れからの「の」を選んでいたが、塗りつぶした際「の風」となり、うまく繋がらないことに気がついた。
 元の記事に関係なく、塗りつぶした際に、「上から下」に、縦書きの場合は「右から左」にちゃんと読めるかを検証しなくてはいけない。
 再度「風」の近くの「の」を探しを発見。うまい具合に「風の」と繋がり、「風のなかった8月が繰り返す」と読めるようになった。もしも「の」が見つからなかった場合は、「が」を選んだかもしれない。記事の状態によって内容が変わるところが面白い。

 いよいよクロヌリ作業の始まり。サインペンで塗りつぶす場合は、例のように必要な単語の周りを先に塗っておく。その際、細心の注意を払い、絶対に俳句の文字を塗りつぶしてはいけない。
 そんなの当たり前だと思っている方も多いと思うが、これが意外と難しい。新聞の文字は小さく文字間も狭いので、簡単に必要な文字の端を塗ってしまう。この作業を開始したとたん、松山市民劇場事務所内にも、悲鳴に近い声が飛び交った。そして、くしゃくしゃにされた「クロヌリ死骸」が、積まれてゆくことになった。
 「必要な文字をマスキングテープで隠して、その周りを塗る方法もよく使っています」と黒田マキさん。さすが経験が違う!

 最後に不要な記事をすべて塗って完成。
 一行ずつ文字のみ消す方法や元の記事がうっすら見えるように消す方法など、様々なやり方がある。当日の黒田マキさんのクロヌリハイクは、必要な文字をマスキングし、それ以外の文字をスタンプしまくって隠すという手法で作られていた。
 例では、行間も含め記事のほとんどを塗りつぶし、「風のなかった8月」のイメージを強調した。クロヌリハイク完成!

 この日は黒田マキさんが持ってきたパネルに、できあがったクロヌリハイクを入れることにした。
 パネルに入れるとそれらは、一つのアートのようになり、また違った味わいが生まれた。本誌など印刷されたものだけでなく、実際に記事を塗りつぶしてできあがったものとしての魅力も多分にある。クロヌリハイクを作るワークショップなど、今後様々に展開できる可能性を秘めた企画なのだと、改めて思った。

 本特集のように、クロヌリハイクは、コツさえつかめば、大抵の方が作れる遊びでありアート。既に本誌にも、投稿がいくつか届いており、現在、黒田マキさんと愛媛新聞社を巻き込んで、更なる展開を計画中である。
 この秋から、本誌連載のリニューアルも予定しており、どんな進化を遂げるのか、ますます目が離せない企画となっている。こうご期待!



作例
2017年6月29日 愛媛新聞より

1.季語を見つける
基本はまず季語を見つけること。今回は経済面よりシンプルに「8月」。

2.俳句に使えそうな単語を探す
季語の周りで詩になりそうな単語を探す。できるだけ狭い範囲で沢山探すのがコツ。

3.俳句にする単語を選ぶ
読む順番に合わせて、俳句になる単語を選ぶ。その近くに使いたい助詞があるかもチェック。

4.助詞を選び俳句にする
上から下、(縦書きの場合は)右から左と、読む順番に合わせ助詞を選び俳句の完成。

5.俳句の周りを塗りつぶす
間違って俳句の文字を塗りつぶさないように、先に文字の周りを塗りつぶす。

6.俳句以外の文字を塗り完成!
全部塗りつぶす方法もあれば、元の記事が何となく見えるように塗る方法もあり。

完成作品
「風 の なかった 8月 が 繰り返す」


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美術館吟行


第32回
「愛媛県美術館 所蔵品展」吟行会

取材協力 愛媛県美術館、松本秀一

文 南行ひかる


実と虚と

 絵は虚である。実では無い。虚である絵を観て作った俳句は虚のまた虚である。つまり、実を二次元世界へと転化させるのが絵であり、その二次元世界をさらに言語という異次元の世界へ転換させるのが美術館吟行俳句である。実から虚へ、そして虚から虚虚への転換。「俳句六感」(目、耳、鼻、口、皮膚の五感と、それに想像力)を駆使して、絵から、俳句という言語への転換を図り、そして読者への六感に訴える。その転換において、あえて感情や思いを排除する「写生」があり、「写生」から脱却してその奥に思いを込める流れも出てくる。純粋「写生」は確かに真っ白で淡々として時に面白くなくなる。そうなると、人の思い、思想、感情も奥に込めようとしたくなる。純に美的なものの真逆に進んで人的毒気を含ませるのも時には面白い。
 ……などと、真夏の夜の、訳の解らない夢想が尽きない吾輩でありました。
 いずれにしても、異次元へのジャンプを苦しみながらそして楽しみながら行うのが美術館吟行で、そこが何とも面白く、俳句が出来上がれば心地よい脳内マッサージとなります。皆さんもぜひ参加下さい。
 以下に今回の所蔵品展吟行会の作品と俳句をご紹介します。


所蔵品展「都市と自然」(日本画)
 賑わいに満ちた都市と人里離れた山川海の景の対比。

 「ベルラジオの裏街」速水御舟
緑風を入れる窓なり鳥籠にも  遊人
鳥籠を出でて金糸雀の秋思  恋衣

 「五番街」岩波昭彦
欲望は炭化し夏の空遠し  遊人

 「布引瀑布図」三好藍石
三人が滝の途中の滝見橋  遊人


所蔵品画展「海をみる、私をみる」(洋画)
 愛媛県出身画家達の作品にみる海、そして作者の心。

 「寒霞渓四望眺より」中川八郎
冬ニ入ル山ノ幽カナ幸福ヨ  恋衣
山黒々と海へ傾げる夏真昼  ひかる

 「鴎」野間仁根
帆船の群に己を啼く鴎  チャンヒ

 「八幡浜ノ海」畦地梅太郎
國産みを終へたるころの春の海  遊人

 「佐田岬燈台」古茂田公雄
夏の黙よ灯台守の雄叫びよ  ひかる

 「瀬戸内海」土田次枝
鎮魂の海に手向けて風船や  遊人


所蔵品展「『時』の様相、『場』の記憶」
 (日本画 洋画 現代美術)
 絶え間なくその姿を変えながら存在する「時」そして「場」。

 「乳化庭/三本の楠から」大竹敦人
まん中の楠炎ゆるごと歌ふ  恋衣
眼球に真夏の黒く残るとは  チャンヒ

 「かわたれ時」三野 計
風灼くるかわたれ時へ沈む都市  ひかる
人々の影を短夜切りとつて  恋衣

 「蚕豆」松本秀一
蚕豆の二つ寄り添ふ真暗闇  ひかる

 「浅き夢」吉岡正人
夢醒めずやがて空蝉と化す女  ひかる

 「芥子/音影U」大竹伸朗
芥子よ咲け記憶は脆い光だし  チャンヒ

 「ドライフラワー」上田勇一
ドライフラワーと空蝉と片恋と  ひかる


所蔵品展「華麗なる19ー20世紀フランス絵画の世界」(西洋美術)

 「ヴィル=ダヴレー 白樺のある池」ジャン=バティスト=カミーユ=コロー
まず何から探さう晩夏の白馬  遊人

 「アンティーブ岬」クロード モネ
まつすぐに立ちたき松へ大西日  恋衣

 「波」ギュスターヴ クールベ
孤独に気づく波の濃く夏の濃く  チャンヒ



松本秀一「蚕豆」1991年 メゾチント
蚕豆の青を厨の灯(ともしび)に 恋衣

松本秀一「李」1992年 メゾチント
李らの声が小さく香りだす  チャンヒ

速水御舟「ベルラジオの裏街」1931年
裏街の謎の密談半夏生  ひかる

中川八郎「寒霞渓四望眺より」1916年
岩山は海に取り残されて夏  遊人



南行ひかる
転勤族。各地に転勤、平成15年から今治に6年間、そして2014年4月に5年ぶりに愛媛へ。俳都松山への移住計画を実現、いつき組員にて100年俳句計画に参画中。



2017年11月10日(金)〜2018年2月12日(月 祝)
「松本秀一の仕事〜版画 米 言葉」展を開催予定。
畦地梅太郎記念美術館(愛媛県宇和島市三間町務田180-1 Tel 0895-58-1133)


次回吟行会

7月29日(土)
「培広庵コレクション『美人画』は語る」吟行会
朝10時現地集合
参加費無料(入館料は別途)
事前に100年俳句計画編集室までお申し込み下さい。
TEL 089-906-0694


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100年 THE BEATLES 俳句ローラープロジェクト(仮)


文 夜市


プロローグ

 句会を終えて気のおけない仲間と飲むビールは格別に旨い。適度に脳細胞が刺激されてシェイクされた状態にあるせいだろうか。その夜も談論風発、松山は三番町の某焼鳥屋に繰り出して中ジョッキのお代わりをかさねつつ、私たちがアツく語り合っていたのはまたしてもザ ビートルズのことだった。

 ビートルズの楽曲をテーマに俳句が詠めたら楽しそうだねという話は何度かしたことがあって、酒のツマミにこれほど面白いものはないんだけどなかなか具体的には進展しない。発表の場をどうやって設ければよいのか、そもそも面白がって参加してくれる人がどのくらいいるのか。
 この日も夜更けて二日酔い方面へと帰参する頃には、ビートルズ俳句のことなどアクロス ザ ユニバースの彼方に忘れ去ってしまった私ではありました。

 ところが事態はわりとめんどくさそうな方向に進み始めた。あの夜のメンバーに、本誌の敏腕編集長であり若手ビートルマニアナンバーワンと三番町方面で恐れられるキム チャンヒ氏が混ざっていたのである。

 ある日のキム氏からの電話。

キム 先日のビートルズ俳句プロジェクトの件だけど、そろそろ具体的にすすめたいのでよろしくネ。
夜市 は。
キム いろんなところでビートルズの213曲すべてに句をつける話をしてみたらけっこう面白がる人が多いんだよね。
夜市 は。
キム さすがに月に一曲ずつだと十八年ぐらいかかっちゃうからさ、毎回何曲かテーマ曲を決めてみなさんにビートルズにまつわる俳句を募集するという形で。とりまとめは夜市さんにまかせるから締め切りきちんと守るんだよ。
夜市 へ。
キム 夜市さんヒマそうだしさ、こないだまあまあビートルズに詳しそうだったからさ。まあ適任じゃないかななんてね。参考文献とか必要なら適当に探してあげるからさ。
夜市 うう。

 ということで100年ビートルズ俳句ローラープロジェクト(仮称)の始まりです。記念すべき第一回目ということでテーマは「ほんとのデビュー曲はどれだろう」。
 「アイ ソー ハー スタンディング ゼア」「プリーズ プリーズ ミー」「ラブ ミー ドゥー」「抱きしめたい」の4曲からお好きな曲を詠み込んだ俳句をどしどし御寄せください。


兼題曲を詠んだ俳句を下記までお送り下さい。締切は毎月20日。
専用フォーム http://marukobo.com/beatles/
専用Email beatles@marukobo.com


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2017年度 第二期 第一回



樫の木

濁音で飽和してゆく梅雨の闇
激雷や猫の呼吸の浅し速し
着信ランプの青き点滅水見舞
梅雨茸の凹は雫に溢れをり
ナメクヂリクヂラと唱ふまだ消えず
翅めくや雨に透けたる白菖蒲
花菖蒲へと捩ぢ込まれるレンズ
かすかに風かすかに雨や菖蒲園
人込みはなほさらさみし花南天
昨日から一羽足りない燕の子
影ふたつ茂りの中に鳩つるむ
東方に王国ありぬ白桔梗

九州は七月に入り雨が続いています。
線上降水帯という言葉も初めて知りました。
昨年の地震、今回の水害と落ち着かない日々です。


小指の奥
希望峰

墨汁の一滴丸し走り梅雨
蓮の葉や吹かれて痒き後頭部
木苺や青空がまだ落ちてこぬ
ビールジョッキ巌のごとくぶつけ合ふ
あの電話きつと父なり髪洗ふ
小指もう蛍袋のその奥へ
七月や池へゆく子を抱きとめて
草いきれファウルのボール少し濡れ
射干へ向く青海苔の歯を舐めて
夜のをサイレンよりも嫌ひけり
夏桔梗真つ直ぐに人見ると言ふ
カプセル剤掌をくすぐれる夏の果て

1990年神戸市生まれ。「いつき組」「街」所属。
第5、6回石田波郷新人賞奨励賞。


麦秋
橋白道

夏草の中に杭打つ地鎮祭
麦秋の石を拝みて墓と成す
オスメスのセットで売られ羽抜鶏
日焼の子正座の前に帽子置き
ミス云々浴衣の上の襷かな
触角が風鈴草の中に入る
本堂の蠅捕蜘蛛の飢餓続く
パソコンと姿見つなぐ蜘蛛の糸
谷挟む隣の宿や朝曇
騙し絵の鮫に食はるる夏帽子
鳥を追ふ魚の口や走馬灯
甚平や湿布の効の切るる頃

平成10年より「いつき組」組員。
句集『涅槃図』(マルコボ.コム)



都築まとむ

白靴や明日は視察の東京へ
緑雨なるスワンボートの尻三十
百度問う真実ほととぎすほととぎす
評決や青あじさいに混じる白
六月を晴れて孔雀の声濁る
空梅雨のすかすかハンドソープかな
ひかりたくない日もありぬ熱帯魚
枇杷熟れて熟れて寂しきことばかり
この指は天道虫に飽きられた
草の根のミリリと切れる涼しさよ
河鹿鳴く水銀灯のほの白く
成虫となるとき白し夏の月

1961年愛媛県生まれ。畑のトウモロコシをイノシシに食べられ、トマトは鳥につつかれ、ナスビはコオロギに齧られる。今、カボチャをどうやって死守するか思案中。季語の宝庫で暮らすというのもちょっと大変?


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新 100年への軌跡


2017年度 第二期 第一回


仰と恋
宇佐美友海

うららかや盲導犬の舌厚き
パンジーの世間に植ゑられたから咲く
羊水の温度保てる朧月
たましひを一つ持ち寄る花見かな
一服の煙桜にうやむやに
信仰と恋は似てゐるヒヤシンス
人形は可燃ゴミなり花の雨
スカートを脚から攫ふ青嵐
爪紅の瓶整へて梅雨に入る
真夜中の水槽のごと夏座敷
白シャツに皺や愚直な男ゆえ
再会にアイスコーヒー軋む音
さういへばあれが嫉妬かクレマチス
夏痩せて精肉店に立ち尽くし
秘密には見合はぬ乳房夏の雨

宇佐美友海(うさみ ともみ)
 1996年生まれ。新潟大学在学中。高校から俳句を始める。第16回松山俳句甲子園全国大会出場。


貰ふ
小鳥遊栄樹

遠泳の眼に雲の半透明
プールサイドの太腿にあるみづの跡
髪結ひて首の真白や藍浴衣
覚えなき青痣のある夕涼み
近寄りて触れずにゐたり花氷
風死すや地下に涼しき牛丼屋
三伏の箱で買ひたる天然水
片陰に自転車冷えてをりにけり
日盛の書店に貰ふブックカバー
曝涼のいつしか耽る書のありし
猟銃を壁に掛けたる夜の秋
打水のやゝ乱暴な鮨屋かな
夕焼や犬が真つ直ぐ歩かない
夏痩せてカーテン厚き夜行バス
電子煙草咥へキャンプを畳みけり

小鳥遊栄樹(たかなし えいき)
 1995年生まれ。「里」「群青」同人、沖縄俳句会「若太陽」所属。



オアシス
平山南骨

信仰と恋は似てゐるヒヤシンス  宇佐美友海
 修道女のように清く、一途に。表題を含んでいるせいもあるのでしょうが、一連の句群の基調のようにも思えます。

パンジーの世間に植ゑられたから咲く  宇佐美友海
 どうして世間はパンジーを好きにさせてくれないのか。咲いたってろくすっぽ見てないじゃないか。

たましひを一つ持ち寄る花見かな  宇佐美友海
 おどけたような感じですが、取り合わせは正統的でしょう。

日盛の書店に貰ふブックカバー  小鳥遊栄樹
 「貰ふ」はこの句を境に投げやりな印象を与える句がめだつようになる気がします。素材感があるといわれたら、そうだけど。

プールサイドの太腿にあるみづの跡  小鳥遊栄樹
 乾きかけた太腿が、体毛のひとつひとつを認識できるくらいクローズアップされていく。初めの字余りも効果的と思いました。

風死すや地下に涼しき牛丼屋  小鳥遊栄樹
片陰に自転車冷えてをりにけり  小鳥遊栄樹
 涼しいとか、冷えているとか言わずにはいられない暑さ。「風死すや」は地上にいながら牛丼屋に思いを寄せていると解釈したら良いのか。オアシスとしての牛丼屋。

平山南骨(ひらやま なんこつ)
 1968年生まれ。2005年より作句開始。「鷹」同人。


信仰と恋、雲の半透明
十亀わら

信仰と恋は似てゐるヒヤシンス  宇佐美友海
 「信仰と恋」というタイトルがいい。しかしタイトル句について率直な感想を言うと、「信仰と恋」が「似てゐる」と思うのは極めてまともな感覚であり、共感できる、故に物足りない。「ヒヤシンス」が救うとしても「似てゐる」から一歩踏み出してもいいのでは。

パンジーの世間に植ゑられたから咲く  宇佐美友海
 「世間」に植えられたという表現が少し乱暴な気がするが、丁寧に整えられ、可愛らしく咲かされているパンジーを見る宇佐美さんの繊細な目が感じられる。「真夜中の水槽のごと夏座敷」の句も「真夜中の水槽」の把握が面白かった。

遠泳の眼に雲の半透明  小鳥遊栄樹
 遠泳の眼に映る雲が「半透明」だというのが意外だった。遠泳に疲労した身体が把握した半透明の雲の存在が、人間の小ささを思わせもし、妙に現実味のある句となった。
 二、三、四句目は、読者が想定できる範囲の世界での句となっており勿体なかった。

近寄りて触れずにゐたり花氷  小鳥遊栄樹
 季語としての「花氷」を綺麗に受けながら、「触れずにゐたり」で、違った表情を見せる。近寄っておきながら触れないでいる「花氷」は際立って美しい。「夕焼や犬が真つ直ぐ歩かない」がおかしい。「電子煙草」の句は「キャンプ」でなく「テント」を畳むとした方が景が見えるように思う。

十亀わら(そがめ わら)
 1978年愛媛生まれ、今夏トルコへ引っ越す予定。夏井いつきさんに俳句を教わり、2000年より「いつき組」参加。2005年「俳句界賞」受賞。


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳 朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.49

A hot day's sweaty face
Wiped clean by a night breeze
Visiting the onsen

By Adam Ali

温泉の夜風が拭ふ汗の顔

(直訳)
暑き日の汗の顔
夜風が清らかに拭う
温泉に来て


 This month's haiku is by my friend Adam Ali, who is visiting from New York. Like me, he is a professional musician, and I have been told by haiku professionals that he has talent. Enjoy!

 今月の俳句は、ニューヨークから訪ねて来てくれた僕の友達、アダム アリの俳句です。彼も僕と同じようにプロのミュージシャンだし、俳句のプロから才能があるって言われてるんだ。
 お楽しみ下さい!


ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文 白方雅博(俳号 蛇頭)

第77話
111サリヴァン ストリート  増尾好秋


テロの世に弦やわらかく喜雨の夜  サテンドール

 いきなり一番人気句の登場。俳号「とみ」改め「サテンドール」さんは「鈴木良雄スペシャル・トリオ」at Y's cafeにおける増尾好秋のギターに誘発されこの句を詠んだ。蛇頭の「テロとの対比が秀逸。ベースの弦なら特選とした。ギターは鋭いパッセージのイメージが強くて……゜」の評を彼女は即座に一蹴。「増尾さんのギターはこの上なく優しく、心地良かった」に納得の句座。

ギターからリゾートになる夏の果  チャンヒ

 先日、感動のライヴが収まったDVDが手に入った。「子供達のためのJAZZ LIVE at 城辺小学校」はJazz in四国(愛南町)の実行委員長、岡田一男氏の挨拶から始まる。「世界のミュージシャンがこの地に来ています。彼らがここで物凄いことを何かやります。それを聴けるのは、ここに居る皆さんだけ……」氏は我が国の代表的ジャズ ベーシストだった故岡田勉の実兄である。
 そして「凄く単純化して言いますよ。メロディーにアフリカがあり、和音にヨーロッパがあります。この二つがぶつかっているんですが、それを許す。そういう音楽がジャズなんです。まずはピアノ一つで……」と山下洋輔の即興演奏が始まった。ジョージ・ガーシュィンの「ラプソディ イン ブルー」がモチーフ。
 続いて峰厚介のサックス、日野皓正の次男、賢二のベース、黒瀬香菜のキーボード、若干二十歳のドラマー、北井誉人を率いる増尾のグループがジュニア マンスの「ジュビレーション」を軽快に演奏。爽やかな風が体育館を駆け抜けた。

サリヴァンの夏の彼女がずっと妻  蛇頭

 第111回JAZZ句会のメインテーマが「111サリヴァン ストリート」とは偶然だったが、レコードのライナーノーツを紛失してしまったので、このアルバム名の由来が分らない。それを良いことに、そこが増尾の彼女の当時≠フ住所地なのだと解釈した。決して当時の彼女≠ナはない。ジャケットの彼の隣の彼女が現在も奥さん「シャーリー増尾」であることは「チンさん」こと鈴木良雄のMCで明らかとなった。

朝顔やきっと照れ屋のギタリスト  ドクトルバンブー

 サブテーマ「グッドモーニング」を一見すれば分るそのまんまジャケ句。久々に参戦した名うての俳人が、いとも軽々と選者を拾ってしまった。

追憶のギターピックは秋蝶に  恋衣

 確かに照れ屋の右手延長上には蝶が舞っている。これもジャケ句だが、発想は大いに飛んでいる。メインテーマから4年経過。アルバムのエレクトリック度は随分と進んでいたようだ。しかし、ウォームな増尾のギターサウンドは健在である。

壁虎落つギターの音を切り裂いて  サテンドール

 リビングで増尾のギターを聴いていたら、天井からヤモリが落ちてきたんだって。


Today's Turntable
『111サリヴァン ストリート』1975年/ew
『グッド モーニング』1979年/eb


「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は月曜日の21時〜22時。

 次回のJAZZ句会は、8月11日(金 祝)13時より。テーマはベーシストの水橋孝です。「CHIN」さんの次は「GON」さん。アルバムは「オンリー トラスト ユア ハート」をメインとします。参加希望の方は、本誌の句会カレンダーを参照してください。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU』vol.1〜vol.3(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ


第七十七話
文 俳句 らくさぶろう

つる
〜 街の長老にものを尋ねに 〜


 横町に住んでいる甚兵衛さん。そこへ若い男が入ってきて世間話を始める。
 お茶とようかんを出してやったら、「このようかん包丁で切りました? 名人やな。あまりに薄いんでカンナで削ったかと思た。」とか、失礼なことばかり言う。
 話の本題は何や?と甚兵衛さんが訊くと、「先ほど散髪屋で皆で話してたら、あんたの話になって、物知りやということを聞いた。つい立てに描いてある“つる”、これは日本の名鳥やというらしいが、ホンマにつるは日本の名鳥でやすか?」
 甚兵衛さん、つるは昔からオスとメスがつがいになったら相手を変えたりせず添いとげる話をしたり、姿かたちがまことに美しいことから日本の名鳥とされてきた……とていねいに説明をしてやる。また、昔はつるとは言わず“首長鳥”と呼ばれていたとも話した。
 男、「何でつると呼ばれるように?」
 甚兵衛さん、そこまでは知らなかったがここで「知らん」とは言えず、「昔、中国の方から首長鳥のオスが「つーっ」と飛んできて浜辺の木の枝にポイッと止まった。次にメスが「るーっ」と飛んできて浜辺の木にポイッと止まった。これを見ていたある人が『ああ、今まで首長鳥と思っていたが“つる”やな。』ということから……」と答えた。
 男、これを聞いて友人のところに駆けこみ、それを教えてやろうとやっきになって話し始める。
「中国の方から、首長鳥のオスが「つるーっ」と飛んできて浜辺の木の枝にポイッと止まった。次にメスが……メスが……あれ、おかしいな、もう一回聞いてこよ。」
 また甚兵衛さんに教えてもらいに行くと、「つ」と「る」を別々に言わなければいけないことに気付く。
 もう一回友人のところへ。
「首長鳥のオスが「つーっ」と飛んできて浜辺の木の枝に「るっ」と止まった。次にメスが……あれ?メスが……メスが……」
友人「メスがどうしたんや?」
男「だまって飛んできた」

 落語に出てくる“街のご隠居さん”って、何歳くらいなのかなあと思います。季語の“生身魂”の年齢感覚よりも、ご隠居さんは若いと思う、きっと。
 僕が子供のころ、50代の男性って「おっさん」であり、中には「おじいさん」みたいに見える人もいたものねえ。
 それがですよ奥さん、自分も齢だけは立派に(?)50代を向かえてしまってですね、おっさんはおっさんなんだけどちゃんと齢相応の精神年齢かというと。ふう。
 落語には色々な人物が登場します。定番が八っつぁん、熊さん、バカの与太郎、横丁のご隠居さん(この方々は江戸落語の名前ですが)。
 八っつぁんや熊さんたちに何かとからかわれながらも、ご隠居さんはこれまでの知識や経験から学んだことを若者に語り、教えます。
 バカの与太郎もみんなに馬鹿にされながらも、自分のテリトリーがちゃんと存在している。
 落語はそんな小さなコミュニティを実にうまく描いていると思います。どんな人であれ、“相手を認める”気持ちがあるんです。
 今、それが無くなってるときこそ、落語を聴いて欲しいなあと……。
 特に子供たちに。じいちゃんばあちゃんって、ただ齢くってるわけじゃないんだぞ。けっこうモノ知ってるんだぞ。
 ググるのもいいけれど、たまにはじいちゃんばあちゃんに尋ねてごらん。
 生身魂はそれがうれしいのだぞ。

知らねども知らぬと言へぬ生身魂


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新聞記事に隠された俳句を発掘する

ホンヤクイホンヤク


作 黒田マキ


10月に咲いたウラギク (山 茜) (2017年7月8日 愛媛新聞より)

金曜日 七夕、小暑 国際 面 (2017年7月7日 朝日新聞より)

夏休み 有効に過ごしてくださいね。 (2017年7月8日 愛媛新聞より)

白 いハモ 生き残るのは珍しい (2017年7月8日 愛媛新聞より)


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100年投句計画

選者三名による 雑詠俳句計画




先選者 関悦史

 先々週あたりからパソコンのネット接続がやたらに遅くなってきて、モデムを再起動しようが、ブラウザのアップデイトが来ようが改善しません。読み込みを待っているとその間呼吸も止まる。一方、洗濯機も壊れて、これは洗濯槽を回すベルトが劣化して緩んだだけらしく、そこだけ交換すればいいのに、古い製品なのでもう部品がなく、買い替えるしかないという毎度のパターン。この話、特にオチはありません。ただの愚痴です。




夕凪やひ孫の拾う喉仏  妙
 どういうシーンなのか説明されないまま下五で「喉仏」が出てきてドキッとします。火葬後の骨拾いの場面ですが、「ひ孫」で故人がかなりの高齢まで生きたことがわかり、子孫も絶えずに続いていることもわかる。ただしそれでめでたい句になりきるわけでもなく、かえって骨拾いというものの即物性が「ひ孫」との対比から浮かび上がってくる。「夕凪」の風の止んだ暑さも、感情を潰す働きをしていて、葬儀の実質に迫っています。




東京駅スーツ追い越すアロハシャツ  24516
 軽快な詠みくちで印象鮮烈。ビジネスマンが主役となりそうな「東京駅」でそれを追い越していく「アロハシャツ」は視覚的にも際立ち、季語としても、気軽さが素早さに転じて、新たな使い方がされている気がします。

大き子の踵潰して墓洗ふ  久我恒子
体は大きく育った、しかしあまり行儀はよくない、そういう子供が、それでも墓参りにはちゃんと来て素直に墓を洗っているという微笑ましい情景が、靴の踵を潰しているという外形的な描写だけで表されています。
やはらかに夜汽車のやうに牛蛙  松田夜市
 「やはらか」と「夜汽車のやう」が矛盾するので一瞬戸惑いますが、牛蛙も最近の新幹線のデザインに似ている気がしなくもない。描写より、牛蛙からやわらかな夜汽車という別のイメージを引き出した句と取るべきか。

夜の雷「 」より君の消ゆ  土井探花
 ファンタジー的な内容と表記法の工夫がうまく釣り合った句で、「 」は台詞ではなく、或る世界全体を示すようなものなのでしょう。大事な相手が消失したような不思議な思いを抱かせるものとしての「夜の雷」が新鮮。

麦秋や二十才の母がタバコ喫う  まんぷく
 「二十才」では子供も幼いはずで、育児中の喫煙は褒められた習慣ではありませんが、句は別に否定しているわけではなく「麦秋」が付けられて、輝かしくも濁った実体感のある風景へと転じています。




わけもなく家族集まる緑の夜  dolce@地味ーず
唐突に掘り起こされて蚯蚓かな  武彦
母性なるミトコンドリア薬降る  出楽久眞
片蔭のとぎれしあたり無言館  幸
屋根裏のコウモリ起床ワレ就床  和音
冗舌なガイドは金髪青葉風  ひさの
養護施設の色とりどりの立葵  おせろ
先ず瓶に平成と記し梅漬ける  波野
あぢさゐや墨のしたたる寺門訓  もね
西瓜食べ食べ饒舌となる老女  鯉城

関悦史(せき えつし)
 1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。2017年第二句集『花咲く機械状独身者たちの活造り』、評論集『俳句という他界』刊行。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』他。


先選者 桜井教人

 自宅から車で十分ほどのところに少し変わったセルフのうどん屋がある。旧街道から少し山に入るので偶然に見つかることはまずない。営業は土曜日のお昼のみ、メニューは冷やし、ぶっかけ、釜揚げ、要するに麺をそのまま出すものだけ。花かつお レモンなどのトッピングを好みにアレンジし、ぶっかけ出汁か出汁醤油をかけていただく。もちもちの食感、たまらなく美味い。妻と二人で小と大を食べて合計五百円。代金はつり下げてある籠に自分で入れる。おつりが必要な場合も自分で取る。店を出ると眼前に広がる水田の緑に心が癒されるが、これは無料だ。




おはぐろのうつつに戻る時閉ぢる  遊人
 「うつつ(現)」の対義語は「夢」である。ということは、羽黒蜻蛉は飛んでいるときには「夢」の中にいるということになる。他の蜻蛉のように、素早く飛翔したり、こちらをからかうかのようなホバリングをしたりせず、ひらひらと舞うように羽ばたいているのは、「夢」の中にいるからなんだと思うと、なんだか納得できるような気がする。止まった時にはきちんと翅を閉じて「現」に戻る。羽黒蜻蛉はどちらのときが幸せなのだろうか。




色持たぬ紫陽花雨の色を待つ  しのたん
 色を持たない紫陽花という難しい句材を見事な作品に仕上げた。「待つ」という動詞により静かな時間的経過、淡い色合い、紫陽花に寄せる心情を表現できた。今度雨が降ったら紫陽花を探しに出かけたい。

ニンゲンの皮脱ぐ炎天また炎天  藍人
 後半の季語のたたみ掛けるリフレインが実に効果的。こんな炎天ならニンゲンの皮も脱いでしまわなければならないだろう。ニンゲンのカタカナ表記の無機質さが更に炎天を加速させる。
夏草の朝礼台の高さほど  板柿せっか
 校庭の片隅にずっと置かれたままになっている朝礼台が浮かんだ。ペンキが剥げかけ、うっすらと錆が浮かんだ朝礼台。夏草の勢いが無くなる頃、運動会のために出されるのだ。鉄の臭いと草の臭いが混ざり合い、まさにリアルな夏の臭いが表現されている。

号令の重なる廊下夏来る  小雪
 過不足のない適切な言葉、正確な語順、完成度の高い写生句だ。朝礼か集会に行くために廊下にクラスごとに並んでいる景を、視覚と聴覚の二つの視点から見事に切り取った。季語の夏来るから、子どもたちの服装や明るい笑い声まで聞こえてくる。
 
瀬戸内の子持小いかの夏仕立  えつの
 この季節、瀬戸内地方の通し物といえば小イカだ。よく冷やした物に酢味噌を掛けたものをよく目にする。夏仕立てとは言い得て妙だ。子持ちに当たると幸せそのもの。季感のある生活こそ豊かさそのものなのだと改めて教えてもらった。




怒号して曲がる神輿や夏の潮  中山月波
夏空や昭和の見ゆる高架下  24516
花あやめ水郷めぐる櫓のきしみ   柝の音
兄のゐて割り箸でとく砂糖水  幸
空梅雨や首振るたびの骨の音  てん点
先ず瓶に平成と記し梅漬ける  波野
十度目の梅雨や犬の名呼ばれける  南亭骨太
薔薇園の主の訛る皇女の名  葉音
竹簾深川めし屋の百年  かのん
国旗掲揚万緑へ回れ右  八木ふみ

桜井教人(さくらい きょうと)
 1958年愛媛県生まれ。愛媛県公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回 29回俳壇賞候補。


後選者 阪西敦子

 引越して間取りが少し変わった。一口であったコンロが二口になり、シンクも少し広く、そしてシンクとコンロの左右が逆になった。隣のコンロによって熱せられた鍋の取手をつかんでやけどをし、シンクにみじん切りを終えたばかりのまな板を滑り落とし、炊き終えた鍋に水道水を入れてしまう。でも、出来上がったものは少しおいしくなった気がする。


特選

石で書いたサヨナラ姫女苑  松田夜市
 石は今でもどこかで売られているのだろうか。そもそも、私たちはそれをどのように手にしたのだろうか。書いた文字も存在も今ではあやうい。別れの言葉は届かなかったかもしれない、姫女苑だけが、そのすべての時間に存在している。

すべらかな少年のゆび雲の峯  さより
 言われてはいないけれど、どこか一点を見つめ、それを指し示すまっすぐな指が見える。雲の峰を越えて、また今年の夏を越えて、しなやかに進んでゆく。指と雲の峰の間のひろびろとした空間に、その姿が浮かび上がる。

ぢやらぢやらと釣り八月のレジスター  どかてい
 最近のレジスターは釣りの計算どころか、カウントして正しく吐き出してくれる。人の仕事はそれをトレイから確実に掬い上げ、客に金額を知らせて渡すこと。何かレジに使われているようでもある。八月の鬱陶しさ。


並選

石鎚の神に恋して石南花は  芳香
ガジュマルの根は高々と五月晴れ  藍植生
怒号して曲がる神輿や夏の潮  中山月波
夜店きて面の一つと目の合ひぬ  中山月波
父ははの法名唱え盆用意  レモングラス
夏の城消えゆく青を惜しみつつ  ぺぷちど
滑走路離れ重力を知る白夜  桂奈
サンダルを履く爪先に朱夏きざす  柊月子
握りつぶす為にトマトを贖ひけり  凡鑽
入道雲遠く蛇行す下山道  富士山
それぞれのスマホの窓にあじさい花  笑松
優曇華の咲きぬ枕の上の葉に  テツコ
発端はアイスクリーム食べたこと  和音
雪のごとひとつばたごの並木道  喜多輝女
いなさ吹く解雇されたる機関長  小市
乱舞する黒揚羽突堤の海  一走人
南天の花のこぼるる生家かな  もね
噴水の止んで時間の動き出す  葉音
ででむしの歌舞伎座裏の住まひかな  ヤッチー
片陰に母杖つきて姉送る  のり茶づけ
月涼しパンダの母乳みどり色  誉茂子
やり直す四十代の暑き夜  ぐずみ
精巣や黄泉の金魚の髭豊か  内藤羊皐
病床に薄く香らせオーデコロン  台所のキフジン
あをと言ふ空にたわたわ柿のあか  大阪野旅人
紅白の旗の数ほど残暑かな  ひでやん
夕景を持ち帰りたき代田かな  青柘榴
噂など聞かぬふりして七変化  彩楓
ででむしの殻に幽閉さるる王  土井探花
山姫の白き御包み水芭蕉  ゆりかもめ
羅や実体の無き女身つつむ  暮井戸
わすれもの探しに天へ天道虫  アンリルカ
海亀ののびやかスキューバの真上  緑の手
雷鳴やカーテン覗くまた臥せり  マカロン星人
夏の日や目陰に見やる瀬戸の海  風海桐
石橋の向ふに夕日花菖蒲  みつよ
京言葉香水の香のおくれ来る  人日子
美容師を辞めると告げし星祭  未貫
青葉揺れ神社公園手を合わす  みちこ
目をこする仕草するなり雨蛙  童夢U世
郭公をま近にききて村の昼  エノコロちゃん
六月の月心乱すや赤淡く  ミセスコナン
夏山や父祖の道踏む歩一歩  哲白

阪西敦子(さかにし あつこ)
 1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。


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100年投句計画

へたうま仙人



 夏ぢゃ。地球が生まれて何回目かわからんほどの夏ぢゃ。と思ったら、今月七日にはもう秋ぢゃ。いやはやぢゃ。とは言っても猛暑、酷暑は続くぞ。ご自愛くだされ。
 今月も灼熱の隙間をぬって、熱そうな俳句が届いたぞ。風鈴の音を聞きながら読み進んでいただけたら嬉しいぞ。

空梅雨もベタつくジャンクフードかな  元旦
来世までまさか止まぬか梅雨長し
 ジャンクフードと言われている食べ物たちは本当に気の毒ぢゃ。本人たちは、そんな言われ方をされる筋合いはないと憤っておることぢゃろう。ジャンクフードには罪は無い。再審請求のレベルぢゃ。しかし、いくら空梅雨でも湿気はむんむんぢゃのう。食欲は無くなる一方ぢゃが、ジャンクフードさんたちも頑張れよ。今年の豪雨で被災された方々にお見舞いを申し上げますぞ。いつまでも降り続く空を見上げて、永遠に止まないのでは……と不安になる気持ち、痛いほどわかるぞ。何もかもほどほどにしてもらいたいものぢゃのう。

額あぢさゐ愛でる間もなき東慶寺  健次郎
相模灘あい色に降る虎が雨
 俳句に地名を入れるのは難しいが、チャレンジすることは良い事ぢゃ。「愛でる間もなき」理由が東慶寺(縁切寺)だからなのか、額あぢさゐだからなのか、鑑賞できる取っ掛かりがちょっと欲しいぞ。虎が雨があい色だという把握は良いのう。涙が溜まるとそんな色になるのかものう。虎御前に馴染みの深い相模灘かもしれんが、知識がないと鑑賞出来ん句はちと困惑するぞ。俳句は知識よりもほのかな知性ぢゃ、と、この歳になってほのかに思うのぢゃ。

メッという姉さんと「スマイル」歌う!  KIYOAKI FILM
良いこともあったでしょうと姉牧師
 「スマイル」という歌も世にいっぱいあるみたいぢゃが、お姉さんぢゃ無く「姉さん」ぢゃから肉親ぢゃろうな。どんな歳になっても、姉さんに「メッ」と言われた記憶は残っとるのう。「スマイル」のあの歌声が心に沁みるぞ。そうぢゃ、世の中嫌な事ばかりぢゃあないぞ。良い事も普通にやってくるぞ。それを良い事と思わずに通り過ぎたらそれまでのことぢゃ。姉牧師に諭されたら素直に従いたくなるのう。それにつけても、ワシは姉さんよりおねいさんのほうが断然好きぢゃ。

意味もなく集まつて来るあめんぼう  小木さん
そのためにたつぷり休む糸とんぼ
 あめんぼうにはきっと意味があるんぢゃ。あめんぼうが空を飛ぶことも、地面を走ることも、にらめっこに弱いことにも意味は必ずあるはずぢゃ。そういったことの意味を探したり見つけたり想像したりすることは楽しいぞ。そのためにもあのためにも、たっぷり休むのは良い事ぢゃ。休むと色々なことが見えてくる(場合もある)ぞ。俳句も適当に休めば佳句が出来る(場合もある)ぞ。糸とんぼのように極限まで言葉を削げば名句になる(とも限らん)ぞ。まとにかく、面倒臭くなったら休むことぢゃ。

油絵はムンクの叫び青嵐  坊太郎
白百合の匂ひ放てる真夜の庭
 絵の人物(作者)は叫んでおらず、自然の叫びにおののき不安に駆られ、耳を塞いでおるらしいが、そんなことは鑑賞する者の感覚に任せるとして、それにしても突如の青嵐に驚く時があるのう。生命の息吹のエネルギーへの畏怖で立ちすくんでしまうぞ。そして秘かにあのポーズをとるのぢゃ。その時だけは主人公ぢゃ。百合は何で夜に淫靡な香りを増幅させるんぢゃろう。まるで闇をエネルギーとして生き続けておるようぢゃ。「白百合」と「真夜の庭」だけであの香りは漂ってくるので、「匂ひ放てる」のダメ押しはもったいないといえばもったいないぞ。

つい最近覚えし歌や昭和産  ちろりん
冷奴琉球グラスの並ぶ店
 物覚えが悪くなって、それでもようやく覚えた歌が昭和の歌だったとは、いろんな意味でちょっとがっくりぢゃのう。懐メロとも言われ出した昭和の歌のエッセンスを大事にしつつ、新しい歌にも散々挑戦ぢゃ。冷奴がいかにも涼しげでうまそうぢゃのう。琉球グラスの夏の光を全部吸い込んだような骨太の輝きが、店の外まで照らしておるのう。冷奴に染み込んでいく醤油の音まで聞こえそうぢゃ。

万緑やおいら野良猫やめました  柊つばき
梅雨入る出るはためいきとお金
 野良猫をやめて果たして何になる気ぢゃろう。万緑の中を歩いておると飼い猫にでもライオンにでも、何にでもなれそうな気がしてくるぞ。垂れていた耳もしっぽもしゃっきと立ってくるぞ。その気になった野良猫に栄光の未来あれ、ぢゃ。入ったら出るのが世の常ぢゃが、いきなりため息とお金とは切ないのう。ため息と俳句はタダぢゃからいくら出しても大丈夫ぢゃが、お金はタダぢゃない分ちょっとしんどいのう。お金の相談にだけは乗れんが、まあぼつぼつぢゃ。梅雨明けぢゃ。

遠雷やまだ新しきけもの道  みやこまる
画数の多き戒名遠雷
 「えんらい」と「とおかみなり」の違いを考えたぞ。遠雷は近い遠雷でちょっと不穏な感じがするような気がするが、あくまでも個人的感想ぢゃから気にせんといてくれ。新しいとわかるほどぢゃから、よっぽど多くのけもの道を見て来たんぢゃろうな。どんな獣が通ったのか、獣の匂いまでして来そうぢゃ。さすがに戒名に薔薇とか憂鬱とかは入れんぢゃろうが、戒名はすっきりと誰にでも読めるものがいいのう。遠くで鳴る雷が故人を象徴しておるんぢゃろうな。

給水のコップに六月の雨が  ケンケン
六月の日差しの当たるエネファーム
 六月ぢゃと言うのに給水が必要とは大変な状況ぢゃのう。それも「給水のコップ」とは更に深刻ぢゃ。災害や戦闘地域では、すぐそこに水はあってもそれが飲める水とは限らんけんのう。差し出すコップに降り込む六月の雨が無情ぢゃのう。エネファームを知っている人の数がどのくらいかは知らんが、言葉の斡旋は大事ぢゃ。詩として成り立ち難い言葉も世の中には一杯ある。それに果敢に挑戦したくなるのも、俳人の因果というもんぢゃ。お気持ち察するぞ。おっと、察するだけぢゃいかん。こんな劇的なコップは、コップを見たらつい逃げ出してしまう己を恥じつつ、隠し砦の三悪人の中へもろ共追放!
 今月も追放者を出してしもうたが夏に免じて許してやろう。ワシもこの欄からお暇する時期が近こうなったが、なあに、へたうまが元気でおる限りこの世は安泰ぢゃ。
 ぢゃがくれぐれも油断召されるなよ。

「へたうま仙人」コーナー終了のお知らせ
 「へたうま仙人」のコーナーは、次回9月号をもちまして終了させていただきます。これまでに投句いただいた皆様ありがとうございました。引き続き、他のコーナーへのご参加をお待ちしております。

へたうま仙人 
年齢 卑弥呼がおっぱいを飲んでいた頃、ワシは青春真っ只中ぢゃった。
好きなもの 霞のシャーベット(PM2.5抜き) 嫌いなもの 上手な俳句
将来の夢 大器晩成


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100年投句計画

自由律俳句計画



 ある広告業協会から声をかけていただいた。久しぶりに広告クリエイティブの話をするのかと思いきや、自由律俳句について好きに喋れと言う。広告関係の人といっても俳句などほとんど興味ないと言ってよい。退屈されてもツライので、テーマを「自由律と破滅」にして山頭火と放哉の破綻の人生を無責任に喋った。それはそれでよかったらしいが、それ以上に二人の句そのものに思った以上に興味を持たれていることがわかった。自由律俳句も捨てたものじゃない、山頭火、放哉の句は、俳句に興味のない誰にでも突き刺さるとあらためて思い知った。




挨拶の弾みに転びそうになる  遊人
 思わず「憲兵の前で滑って転んじゃった(白泉)」という歴史的な句が頭をかすめた。背景に戦争とか弾圧された社会背景があるということでは全くないけれど、一人の人間として自分自身を突き放して俯瞰して見られるかどうか、もう一人の自分が自分自身を屈託なく見つめられるかどうか……そんなところも俳人としての資質の一要素かもしれない。神妙な挨拶なのに、どういうわけか転びそうになる自分をもう一人の自分が冷徹に見ているのでしょうか……自分のことではなく相手のことなら、それはそれで巧みな人間観察でもあります。




月涼しランドルト環に崖っぷち  内藤洋皐
 視力検査の時、一部分環の開いているあのC字型図形をランドルト環と言うのだそうです。懸命に注視してなんとか探り当てた環の切れ目は、まさに崖っぷち。そんな心境なのかも。窓の外を見れば月はあくまで涼しく輝いて……。

地獄よりおはれて杉菜  人日子
 春先には注目され食用にもなる土筆も、その後は全く外見の異なる「杉菜」になります。この杉菜はその根の深さから別名「地獄草」とも呼ばれるとあります。土筆に比べ薄幸の杉菜の悲哀を上手くとらえています。

ポストに甘噛みされちゃった  凡鑚
 出すべきなのかどうか……心の揺らぐ思いの手紙かもしれない。そんな心の逡巡を見透かしたようにポストに手紙は引っかかる。「甘噛み」という措辞が効いています。口語表現ならではの軽さ飄逸さがなおよい。

気象庁こんなに青空でいいのか  妙
 梅雨のはずなのに梅雨らしさの欠片もない青空も長く続けば、世の中さまざまな不都合が起きる。持って行きようのない不安、不満をなぜか気象庁に向けるこの理不尽さが面白い。

ブーゲンビリアで繋がっている家  もね
 ブーゲンビリアと言えば、白、赤、紫、ピンク……と色鮮やかな夏そのもののような花。普通に考えれば咲き乱れたり誇ったりするのだろうけれど、「繋がっている」としたところに普通ではない景色になった。隣も、あるいはそのまた隣にもブーゲンビリアをみごとに連想させている。




草いきれ赤錆の鎌一本  健次郎
ほなちょっとと文通断たれ  KIYOAKI FILM
女の口角が上がる「ここだけの話よ」  柝の音
また前下がりのパイプ椅子  板柿せっか
小石ふたつ届いたと聞く七十二年目の夏  喜多輝女
どうしようもない日の月が大きい  一走人
監視カメラに青嵐  小木さん
喰いしばっているホッチキス  凡鑚
溶岩原へと消える夏蝶  彩風
蛇にだけはなりきれぬ歩く  鯉城


並選

玉砕の島に夏至南風  ケンケン
超え来し峠両の手に余る夏  芳香
闘牛と聞けば宇和島隠岐の島  藍植生
きつぱりと起承転結線香花火  中山月波
我の頬見くだす友よ飾らぬ美もありや  レモングラス
段畑に掛けて眺る夏海と白い足  ぺぷちど
モーニングセットにアイスクリン  藍人
デパ地下で買ふ冷奴  出楽久眞
40デシベルは図書館ほどの遠雷  みやこまる
かたつむりの孤独って  幸
前に赤ちゃん後ろリュックのママ酷暑  和音
ふしぎそうに私をみつめている金魚  小市
スマホにささやかな抗い  南亭骨太
宅急便のトラック青田波に乗る  ヤッチー
たらふく呑んで水のまた美味し  のり茶づけ
の目が陰険過ぎるよローマは夏  さより
みなくていいものばかり見る  うに子
ラブホに堕ちたや雷神二柱  ぐずみ
緑陰にピーターラビット隠す  元旦
そだったまちがきえてゆく  台所のキフジン
軍手に善行非行の10の指  大阪野旅人
水吸いこんで吸いこんで夏へ  多満
後ろ髪引かれつつうつぶせ余り苗  青柘榴
辛口解説者の現役時代を知らない  土井探花
道端でぐずる子の跣足  ゆりかもめ
死者生者還り来て踊の浜となる  暮井戸
いつまでも梅雨の雨と歯痛  緑の手
かたつむりうじやうじや行進避けて通るまたまた避けて  マカロン星人
百年分の星流るるよ  恋衣
愛鳥週間焼鳥屋大繁盛  ちろりん
老眼とは厄介なもの頭に眼鏡  坊太郎
老鶯が電線で  エノコロちゃん
梅干しつつテロ呪いつつ  ミセスコナン
糞虫がこの世の節理をころがしている  まんぷく


自由律で再挑戦を!

青鷺の孤高を我は真似出来ず  健次郎


きむらけんじ
1948年生まれ。第一回放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。


「放哉賞」再興。自由律を動かせ!
第一回尾崎放哉賞 作品募集

応募締切 2017年12月10日(日)必着
投句料 
 一般の部 2千円(2句1組 何組でも可)
 高校生の部 無料(2句1組まで)

 一般の部 大賞 賞状、10万円 ほか
 高校生の部 最優秀賞 賞状、クオカード5千円分 ほか
送り先
 〒545−0041 大阪府大阪市阿倍野区共立通1−1−9
 (株)たまてばこ内 尾崎放哉賞事務局
主催 自由律俳句結社「青穂(せいほ)」

詳細は……
http://www.hosai-seiho.net/


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100年俳句計画

詰め俳句計画



 6月号に結果を掲載をいたしました、
(  )の橋(  )の風愉し
(  )の人形押せば人の声
という、夏の季語を考えていただく問題について、河原撫子さんより七夕という解答をいただいたのですが、秋の季語だと思い、級外として捌きました。しかし、現代俳句歳時記では夏の季語としているというお便りがあり、調べてみるとその通りでした。
 日本人の生活実感に合わせた歳時記というのを目指しているようです。ともかく夏の季語として載せている歳時記があるからには捌かねば……。前句、風情があっていい。後句、七夕に人形?と思ったが、飾ったり穢れをそれで祓ったりする地方もあるようだ。ただ「押す」が分からない。3級。同じく級外としたKIYOAKI FILMさんの七夕月も捌きます。前後句ともにリズムが悪く「月」を入れた意図がよくわからなかった。7級。

今月の問題
 次の(  )の中に共通する夏または秋の季語を入れてください。

惑星の水をたつぷり(  )かな
(  )売らる道蛇行してまた売らる


惑星の水をたつぷり夏至かな
夏至売らる道蛇行してまた売らる
 KIYOAKI FILMさん。前句、ちょうど梅雨頃なので実感としてはわかるが4音で終わるリズムが悪い。後句はシュールで驚きあり。6級。小木さんは海月。前句は納得。後句、中華食材? そうそう売られないし、そもそも干した海月は季語? 5級。レモングラスさん、かーこさん、佳葉さん、青柘榴さんは金魚。前句、「水をたつぷり」というのが金魚そのものの描写ではなくて、作中主体が金魚鉢に注いでいる行為の描写になっているところが良かった。金魚への愛情を感じる。後句はそんなには売られてないと思う。3級。

惑星の水をたつぷりラムネかな
ラムネ売らる道蛇行してまた売らる
 桂奈さん。前句、このラムネ薄そう。後句、こんな風に売られるラムネを想像できない。はやみさん、小市さんの冷酒、エノコロちゃんの新酒も同様。まとめて5級。

惑星の水をたつぷり蓴かな
蓴売らる道蛇行してまた売らる
 内藤羊皐さん。これは前句、蓴そのもののことなのか、蓴が育っている池のことをいっているのか景が確定しないのはやや損な気がする。後句、高級食材でもあり、そんなに売ってないでしょう。5級。河原撫子さんは菖蒲。前句は菖蒲そのものというよりも、菖蒲田の描写で面白い。後句、菖蒲湯にするために売っている? ちょっと無理がある。4級。ヤッチーさんは青田。前句はまさにたっぷり。後句、青田買いという言葉があり、一種の先物取引なのだが今時そんな米の売り方をしているやらどうやら。或いは不動産として売られているのか? 同じく4級。ジュミーさんは新茶。前句、水出し? それとも新茶そのものの瑞々しさを詠んだのか、よくわからないのが難。後句、産地ならそんな売り方をされているのかもしれない。同じく4級。

惑星の水をたつぷり石榴かな
石榴売らる道蛇行してまた売らる
 うに子さん。ここからは果実系の方々。前句、石榴の実は水を湛えているというよりも種の方が多い気がする。後句もそんな風に売っているイメージは私にはなかった。4級。藍人さんは秋果。前句、上五中七と読んできて読者に何かなと思わせるつくりの句としては、答えをはぐらかされたようでこの場合は何かに絞った方が良い気がした。後句は、逆にいろいろな秋果を想像できて楽しい。3級。芳香さんはトマト。ほろよいさんはとまと。後句は山道の無人販売所などを想像すると臨場感あり。前句もいいが、個人的に水っぽいトマトよりも水を少なくして育てた甘いトマトが好き。同じく3級。中山月波さんはメロン、健次郎さんは李、幸さんは葡萄、誉茂子さんは早桃。どれも瑞々しくて前句美味しそう。後句、メロンや葡萄は高級なイメージもありこんな風に売られるのかどうか分からないが、産地ではある光景かも知れない。いずれも2級。みやこまるさんは胡瓜、藍植生さんは真瓜。前句まさに瑞々しさが大事なのでぴったり。後句も気軽に売られているイメージ。同じく2級。


今月の正解

惑星の水をたつぷり西瓜かな
西瓜売らる道蛇行してまた売らる
 しげこさん、でるたさん、れんげ畑さん、dolce@地味ーずさん、24516さん、出楽久眞さん、柝の音さん、柊月子さん、凡鑽さん、笑松さん、和音さん、板柿せっかさん、ひさのさん、久我恒子さん、喜多輝女さん、妙さん、一走人さん、葉音さん、のり茶づけさん、元旦さん、片野瑞木さん、大阪野旅人さん、どかていさん、あいむ李景さん、ひでやんさん、彩楓さん、ゆりかもめさん、矢野リンドさん、緑の手さん、マカロン星人さん、恋衣さん、ちろりんさん、明惟久里さん、人日子さん、童夢U世さん、坊太郎さん、遊人さん。前句は溜め込んだ水こそがご馳走であるというところが西瓜ならではで、季語が動かないと自画自賛。後句、少なくとも四国ではよくある景。存在感がいい。ただ余りにも問題が易し過ぎたので有段にはせず、1級。

「詰め俳句計画」担当者変更のお知らせ
 10月号掲載分の「詰め俳句計画」より、現在のマイマイさんに代わって、山澤香奈さんが、問題作成ならびに選者を担当することになりました。
 10月号に結果掲載となる今回の問題より、山澤香奈さんに出題を担当していただいております。引き続き「詰め俳句計画」へ奮ってご参加ください!

解答募集中!
 次の(  )の中に共通する秋の季語を入れてください。
(※出題:山澤香奈)

一斉に子供一斉に(  )
太陽は住み処の一つ(  )

 8月20日締切 結果は10月号に掲載


マイマイ
 2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人だったが、最近は?? 第1回、第4回百年俳句賞(旧大人コン)優秀賞受賞。2013年句集シングル『翼竜系統樹』上梓。将棋推定初段。棋友募集中。宇宙と生命を題材に詠んだ句集『宇宙開闢以降』マルコボオンラインショップにて発売中。

山澤香奈
 第3回俳句甲子園出場。句集シングル『線路とぶらんこ』(マルコボ.コム)。


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100年投句計画 投句方法



雑詠俳句計画
自由律俳句計画
詰め俳句計画

 「雑詠俳句計画」では、寄せられた投句を一括して、各選者が選句します。各選者に宛てて個別の投句を行うものではありません。
 「へたうま仙人」は9月号をもって終了させていただきますので募集はございません。

10月号掲載分締切 8月20日(日)

投句方法

 投句先コーナー名
 俳号(無ければ本名の名前のみ)
 本名
 電話番号
 住所

 以上の必要事項を書き添えて、編集室「100年投句計画」係までお寄せください。メールの場合は、件名を「100年投句計画」としてください。
 各コーナーそれぞれ2句まで投句できます。また、「詰め俳句計画」は季語1つのみを投稿できます。
 各コーナーの投句は、ひとつにまとめて送っていただいても構いません。

メール宛先
magazine@marukobo.com

投稿専用ページ
http://marukobo.com/toukou/

※ハガキ FAXの宛先は本誌の裏表紙を参照してください。

さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(「俳句ポスト365」のページ参照)


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短歌の窓


選者
「未来短歌会」所属、「遊子」同人
久野はすみ


特選

円かなる朝日に目覚め円かなる夕日に眠る銀河の民は  久我恒子
 朝日に目覚め夕日に眠るわれわれは「銀河の民」である、というスケールの大きな歌。日々、眺める太陽の円さ、そして私たちが生きているこの地球の円さ。この目で確かめることはできないが、銀河もまた「円なる」ものであるはず。銀河という大いなる球に包まれて生きていると思えば、この世に生きる不安も薄れていくようだ。四句目までの対句は心地よく、愛唱性がある。朝日や夕日に出会ったとき、思い返す一首となるだろう。


並選

いと小さきシャツをパンツを洗ひ上げ抱く未来の大きさを思ふ  風
 おさなごの衣類を洗濯し、その小さいことに改めて驚いた。反比例して、おさなごの未来は限りなく大きい。この歌は「シャツとパンツ」ではなく「シャツをパンツを」としたところが良い。作者は一つずつ手に取り、その都度「小さい!」と思ったのだ。助詞一つで臨場感が生まれる好例。

縁側に猫と妻とが目つむりて猫と妻とが息をしている  暮井戸
 普通のことを歌にするのは難しい。つい一首にドラマティックな場面や主義主張を入れてしまいたくなる。この歌にはドラマも主義主張もない。見たままの世界を平板に描ききり、生と死の境のような不思議な空気を醸し出している。おそらくはごく短い、静かな時間。それが歌となり、永遠となる。

米へんも麦へんもあるこうじから限るなかれと路をしへられ  明 惟久里
 糀と麹、二つの文字から発想した新鮮な一首。下の句の「限るなかれ」「路をしへられ」には重複感がある。言い過ぎず、余韻を残す工夫を。


コメント

たちまちにジイジの西瓜平らげて子らは駆け出す夏の野原へ  柝の音
 「ジイジ〜」と呼ぶ声が聞こえるようだ。読む人を元気にしてくれる歌。

よしきりの呼びあう海辺一匹の黒猫のそりのそりと歩く  一走人
 ヨシキリのうるさい声の中、悠然と歩く猫の姿がたくましい。

道の駅巡り出会えた美生柑美しく生く夏を味わう  青柘榴
 ふだん見過ごしていた「美生柑」の文字が、爽やかな生命力を呼び覚ます。「生く」は終止形なので、「美(は)しく生きたる」などとしてはどうか。

風呂上がり裸の夫をチェックする今日の介護は眠れば終わり  ミセスコナン
 下の句で介護の歌だとわかり、ハッとさせられる。助詞の省略は避けたい。

異性から贈り物来て妻怒る単なる句友なんだけれども  佐東亜阿介
 何が届いたのか、どんなふうに怒ったのか、具体的な描写がほしい。

過ちと夕べのことを片付けるキミのネイルがとても眩しい  藍人
 まずは、どこかで聞いたようなフレーズを避けること。

六本木ヒルズへ向かう徒歩五分少し傾げる小振りの日傘  出楽久眞
 主語が省略されている場合「私」を補うのが決まりだが、日傘の主は作者?

氷水飲みて静かな夕暮の一人部屋には肉体しかない  豊原清明
 孤独は感じられるが、「肉体しかない」という言い切りの根拠が見えない。

一つまた一つ開きし豪奢なるカサブランカよなぜか淋しき  幸
 豪奢な花を淋しいと感じる心に共感する。「なぜか」は説明的なので不要。

落鮎の跳ねて夕日を返しおり流るるともなく雲流れゆく  ケンケン
 上の句で完結してしまい、下の句が付け足しになってしまった。他人の姿や自分の感情など、まったく別のものを取りあわせてみては。


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自作の俳句を英語に訳そう!

百人百様 E-haiku



評 菅 紀子


 暑中お見舞い申し上げます。
 イギリス人で、日本に長年住み、日本の短詩型文学を初めて本格的に海外に紹介したR H ブライス(1898〜1964)の新刊研究書を読んでいます。ブライスは数多くの俳句と川柳を英訳し、禅に傾倒し、戦後はアメリカ詩壇へ俳句の影響を与えました。しかし母国を長く(当時占領下の朝鮮を含め日本に通算40年)不在にしていたのでイギリスでもまた日本でもあまり知られていません。近年俳句の国際化がうたわれるなか、俳句を「無形文化財」に登録する動きもあります。私たちも「外国語俳句」の一役を担いましょう。


1.
summer water,
girls are criing sadly,
it hair touch sad boys!

夏の水悲しむ少女の髪に触れ  KIYOAKI FILM

water in summer
touching the hair of a girl
in grief


2.
summer wind,
is scooping a little dog
""very abshed!""

夏の風掬う坊やの仔犬かな  KIYOAKI FILM

summer wind,
a puppy held up
by a boy

KIYOAKI FILM 今回はむずかしかったです。父に手伝ってもらいました。映画「スケアクロウ」という古い映画で、ジーン ハックマンが、「イッツ プライド!」とすごい血相で言います(笑)。70年代の映画は掘り出し物が多いです。英語よく判らないから、一部分だけしか覚えられません。
紀 KIYOAKI FILMさん、映画好きなのですね。仔犬にはpuppyという単語があります。


3.
cut down
an amaryllis
a wave on a river


アマリリス刈り倒されて川に波  片野瑞木

amaryllis
fallen off into river water,
wavelets expanding


4.
hot today
a frypan
in baggage

炎昼や荷物の中にフライパン  片野瑞木

midday in heat
a frying pan
in my baggage

summer midday
in my backpack
a frying pan

紀 フライパンを詰めた荷物はどんな荷物でしょうか? 引越しのダンボール箱かもしれないしスーツケースかもしれません。背中にしょったリュックなら炎天下で歩くうちフライパンがジリジリと中で熱を持つ様を想像します。


5.
a dog hitched
outside of a shop-
the first soba in the season

犬繋ぐ店の表や走り蕎麦  久我恒子

紀 良いと思います。


6.
the best is
the youngest child-
blowing on a ground cherry

末つ子の上手鬼灯鳴らすとき  久我恒子

the best is
the youngest child / brother / sister,
ground cherry blowing

the best of
ground cherry blowing,
the youngest child

紀 日本語なら誰が詠んでも「末っ子」ですが、英語だと詠む人の末っ子との関係によって息子、娘、兄弟姉妹などと言葉が変わりますね。


7.
Passed through the gorge
coming up
Wave in summer

切通し抜くれば寄せる夏の波  ほろよい

coming out the gauge
and the summer waves
surge toward us

ほろよい 6月号、[ dush→dash ]でした。前置詞は割合ラフで、そうなんですね、ありがとうございます。今は、6月号の「瀬戸内 松山国際写真俳句コンテスト」の英語部門の句を、何とか理解しようとしているところです。

紀 ほろよいさん、瀬戸内 松山国際写真俳句コンテスト、世界大会が近づいています。お膝元から是非投句してくださいね。


8.
one night
in a female shank,
the scar which is a leech

とある夜の女の臑に蛭の跡  チャンヒ

one night
on a woman's shank
a scar of a leech bit

紀 femaleは性別を示す語ですのでwomanの方が色気が出ます。


9.
I just want a dog
close to the evening sun

夕焼に寄り添う犬が欲しいだけ  チャンヒ

I just wanna dog
to accompany me at sunset


10.
Let us have pot-au-feu
for supper tonight
with rape blossoms in season

菜の花や今宵ポトフの彩りに  明惟久里

rape flower
for an accent of the pot-au-feu
for tonight


11.
a carpenter bee
takes a siesta in a hollow
a worker...resemble me

くまばちもうろでうたたねひるやすみ  明惟久里

a carpenter bee
takes a siesta in a hollow
like me during the lunch break

紀 原句にはありませんが英訳を見ると「働きムシの私に似ている」意を込めたかったとお察しします。それを尊重した場合、resembleは姿形の見た目が似ている感が強いので、昼休みの私のようにとlike meとしてみました。


12.
June
begins
in a blue dress

青衣まとひ六月始まれり  彩楓


13.
similar ear
of the whole families
summer mugwort

一族の耳の似ている夏蓬  彩楓

ears are alike
among the sort

彩楓 六月が青衣を纏ってより六月が始まると言いたかったのですが……。

紀 彩楓さん、シンプルで素敵です。鑑賞する人が様々な青の色を思い浮かべるのを想像するとまた素敵です。


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百年歳時記


夏井いつき

第50回


 有名俳人の一句を紹介するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月紹介鑑賞していきます。


鯤目覚めいなさ微かに腥し  笑松
 「鯤」とは、古代中国の想像上の巨大な魚。北方の海に住んでいて、大きさが幾千里だかわからないような魚が「鯤」なのだそうです。そして季語は「いなさ」です。「たつみかぜ」という呼名があることを知れば、南東の風であることが分かります。漁師たちに恐れられている強風です。大きさが幾千里もある「鯤」が目覚めるから、あの恐ろしい「いなさ」が生臭く吹き始めるよという一句です。
 なんといっても巧いのは「微かに腥し」という押さえ。想像上の生き物とはいえ魚偏のついた「鯤」ですから、「腥し」という嗅覚のリアリティに読み手の鼻は反応します。「鯤」と「いなさ」の不気味さ、熱気を含んだ湿りなどが「腥し」の一語で立ち上がります。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』6月16日放送分)

国産みのひかりのなかを海亀は  ひそか
海亀の頬千年の波の皺  天玲
海亀や湯気立てて島広がりぬ  鞠月
 一句目、亀は万年生きると言われる生き物。国が産れる光の中を海亀は泳いでいたのだよ。その光を知っている海亀なんだよという光景の美しさにうっとりします。夏の海の透明感も鮮やかです。
 二句目、亀の「頬」の「皺」を「千年の波の皺」だという比喩に驚きます。そしてその「千年の波の皺」のリアリティに納得します。老いた「海亀」の顔が我が眼前にあるかのような静かな迫力の一句。
 三句目、小笠原の海では今も噴火が続き、「島」は広がっています。その海に生息する「海亀」たちは、今をどう生きているのか。いつか噴火がおさまった新しい島に上陸し産卵できる日もやってくるに違いない。そんな未来への思いも重ねて味わいたい作品です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』6月9日放送分)

大甕の百個並ぶや夏の霜  のり茶づけ
 「大甕」が「百個」並んでいます。泡盛か焼酎か。醤油や黒酢を想像すると匂いの印象も変わります。「大甕」そのものを製造する窯元を思ってもいいですね。要は「百個並ぶ」光景が大事なのです。
 季語は「夏の霜」です。月の光が霜のように白いさまを表現する天文の季語です。「大甕の百個」がずらーっと並べられているところに、「夏の霜」が降りそそぎます。すると同じ向きに同じ形の影も「百個」ずーっと並ぶのです。斜めに現れる黒い影の部分と月光の当たってる部分のコントラストのなんと印象的なことか。月光によって浮かび上がる幾何学模様。「夏の霜」の白い光。シンプルな光景を切り取りつつ、この難しい季語を見事に表現しました。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊7月14日放送分)

白靴や割りて南国なる果実  福花
 「白靴や」と強調したあとに現れるのが「割りて」という謎の行為。一体何を割った?と思った瞬間、「南国なる果実」が鮮やかに登場します。お洒落な「白靴」を履いての海外旅行か。現地の太陽に育まれた「南国の果実」を「割りて」という心楽しい場面。「南国の果実」の鮮やかな色合い(個人的にはオレンジ色を想像)に加え、「果実」の芳香が一気に溢れます。
 これらの鑑賞をうまく導き出すのが「割りて」という措辞。「果実」を割る瞬間をパッキングし、「果実」の色、豊かな果汁、芳しい香りを想像させる見事な誘導です。語順も絶妙。まるでこの現場に共にいるかのような臨場感と明るい夏の太陽に満ちた作品です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』6月23日掲載分)

熊野路のよき走り根に涼みけり  中込儀一
春の水飲まんと麒麟四肢広ぐ  宮内信子
 一句目、信仰の道である「熊野路」。はるか昔から人々が行き交い踏み固めてきた道。疲れた人が腰を下ろし、休むこともあったはずです。今作者は同じ道を歩き、ふと出会った「よき走り根」に腰を下ろします。季節は夏、木陰に「涼み」ながら聞く熊野の風。この道の歴史へと思いは、はろばろと広がっていきます。
 二句目、なんといっても「四肢広ぐ」が上手いですね。「麒麟」独特の動きを観察して見事です。「麒麟」が身を屈めて口を近づけていく、その水はただの水ではなく「春の水」であると感知することに俳人としての詩のセンサーがあります。温かな「春の水」を悠々と含む瞬間へ、読者の意識も惹きつけられていきます。
(和歌山県田辺市熊野俳句大会 夏井いつき特選)

百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
松山市公式サイト『俳句ポスト365』http://haikutown.jp/post/
などに投句された俳句を紹介します。


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俳句の街 まつやま

俳句ポスト365



協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


平成29年6月度


芒種(ぼうしゅ)


暗渠よりどうと吐かるる水芒種  たんじぇりん金子
あざやかな芒種の雨とおつしやられ  井上じろ
顳を絞る芒種の鉄の箍  クズウジュンイチ
芒種なり仏の飯はすぐ乾く  うに子
しゃくしゃくと芒種の空に冷や茶漬け  六々庵
芒種病んで無眼の百足産み落とす  ウロ
アポロンのくるぶしを刺す芒種の草  ウェンズデー正人
首謀者のゴーシュ芒種を忘じをり  直木葉子@早口言葉で一句


芒種なり秘詞を次郎に口伝して  谷口詠美


白靴(しろぐつ)


白靴や星の高さのプールバー  24516
娘もらいに白靴のなんて大きい  プリマス妙
白靴は知らない戦争も知らない  be
白靴の我ら無敵や夜を占むる  阿武 玲
白靴の踵ささくれハイボール  さとう菓子
吾と誰ぞ歯医者に並ぶ白靴は  アマンバ
辛うじて白靴であること保つ  雪うさぎ
白靴を履かせそのまま外す下肢  比々き
白靴の詩人の向かふ砂漠かな  Mコスモ
アウシュビッツの山なす靴にしろ靴も  白鳥国男


白靴や割りて南国なる果実  福花


8月の兼題

投句期間 7月27日〜8月9日
鰯(いわし)
三秋/動物
ニシン目イワシ類に属する海魚。一般的には真鰯を指していうことが多い。暖流に乗って日本近海に大群が回遊してくるため、かつては漁獲量が多く安価だったが、近年では漁獲量が減少している。

投句期間 8月10日〜8月23日
櫨紅葉(はぜもみじ)
晩秋/植物
櫨はウルシ科の落葉高木で、紅葉樹が比較的少ない暖地でよく見られる。その紅葉は燃えるような紅葉と言うにふさわしい深紅色をしており、野山で特に目立つ。

参考文献 『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


 「俳句ポスト365」は携帯電話からもご参加いただけます。
 「俳句ポスト365」公式Facebookページ開設中! 公式サイトに設置しておりますリンクよりお入りください。毎回の兼題のお知らせを中心にお伝えしながら、皆様の返信欄への書き込みもお待ちしております。


 募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。


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一句一遊情報局



協力 南海放送


金曜日優秀句
平成29年6月度




ピッチより夢海を越え青嵐  93sのプッコラ
夢のゴールや炎帝のど真ん中  緑の手
夏空は青くて我に夢ひとつ  桜井教人
千万の夢の折鶴風薫る  太郎
船名は夢夏潮へ進水す  樫の木
すずらんや隣の席の人の夢  きらきらひかる
夢はまだ白詰草の咲く所  幸江
夢殿に月より墜つる蚊食鳥  彩楓
画家になる夢見る象やアマリリス  中山月波
絶え間なき雷どこまでも墜ちる夢  鞠月
夢違へしてきし顔のひきがへる  ひそか


この星もたれかの夢や星涼し    海田


海亀(うみがめ)

海亀のおおらかに掻くうしおかな  出楽久眞
海亀の息継ぎひとつひるがえる  みいみ
海亀を浜へ見送る灯のほのか  野風
海亀の砂浜ほどに乾きけり  小川めぐる
海亀の死に星々の静もれる  マイマイ
海亀に波の言葉と月の黙  樫の木
海亀を眺めて沈没船の窓  なおき
散骨のすぐ消え海亀過ぎゆく  篠原そも
国産みのひかりのなかを海亀は  ひそか
海亀の頬千年の波の皺  天玲


海亀や湯気立てて島広がりぬ    鞠月


いなさ

確かめる舫に湿りいなさ吹く  妹のりこ
鉄の香も混ざりていなさ桟橋へ  かま猫
いなさ行く浜の骸を波の葬  柝の音
いなさ吹く天竜川を押し上げる  妙
犬吠へどどんどどんと大いなさ  鈴木麗門
いなさは打つラッキードラゴンとてふ墓名    上里雅史
病む亀の石に身を寄すたつみかぜ  てん点
いなさ吹く息浅く嫉妬している  香野さとみ
いなさ吹く露頭全き錆の色  小泉岩魚
干し肉の豚の黒ずむいなさかな  樫の木


鯤目覚めいなさ微かに腥し    笑松


オーデコロン

オーデコロン花の姿に立ち上がる  太郎
オーデコロン瓶は翼の形して  露玉
オーデコロン三面鏡の蔦模様  豊田すばる
オーデコロンや両の耳熱っぽし  ターナー島
指よりも髪はつめたしオーデコロン  樫の木
神妙な通夜の客よりオーデコロン  マーペー
案外に気丈な喪主のオーデコロン  妙
こうすいやつきのおはながおれている    むらさき五才
望遠レンズに揺らぐサハラやオーデコロン    越智空子


オーデコロンうすきんいろに兄の恋    ひそか
妹に愁い嗅がるるオーデコロン    篠原そも




夕顔の開くころ飲む薬かな  華緒
十薬や去勢されたる犬伏せり  蓼虫
ほうたるを薬としたき子宮かな    あるきしちはる
薬識手帳閉づる夜蟻殺す  かなたひらく
スポイトの吸いたる極暑なる試薬  ひでやん
ビーカーへ試薬轍へ夏の雨  小泉岩魚
ひまわりひまわり薬莢握りしむ  まどん
どの星に火薬の匂ひアマリリス  ひそか
謁見のごとく芍薬嗅ぐ背中  鞠月
湯釜薬師より万緑の滾々と  このはる紗耶


不眠薬らし新月の蓮の水    緑の手
人殴りし拳に汗と塗り薬    鯛飯



投句募集中の兼題

投句締切 8月13日


季語ではない兼題です。「天」という字が詠み込まれていれば、読み方 用い方は問いません。季語は当季を原則として、自由に選んでください。

ささげ飯(ささげめし)
初秋/人事
ささげを米飯に炊き込んだもの。熟した実を炊き込む一般的なもののほか、まだ青い莢を炊き込むものもある。


投句締切 8月27日

柳散る(やなぎちる)
仲秋/植物
柳は葉が黄ばみ始めた後の仲秋以降、一時には散り尽くさず、秋の終わりから初冬頃までにかけて散り尽くす。

行水名残(ぎょうずいなごり)
仲秋/人事
元々は身を清めるための行水が江戸時代以降には庶民の習わしとなった。最近では行水をすることもほとんど無いが、秋に入って最後の行水を楽しむことをいう。


参考文献『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句宛先
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとにしたものです。俳句ならびに俳号が実際とは異なっている場合がありますのでご了承ください。


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今回のお題句に対する投句から次のお題句を選び繋げてゆく

疑似俳句対局


選者 美杉しげり


今回のお題句
乗り出せば真帆へ南風や独り勝ち  久我恒子


候補句

月も潮も適ひて船出三津の浜  藍植生
 今月の一番乗り投句。額田王のあの熱田津の歌を踏まえての句ですね。古代の景とも今現在の景とも、どちらに読んでもそれぞれの味わいがあります。

独身の貴族演じる夕涼み  杉もとたかし
 本当は既婚者なのに独身をよそおっているのでしょうか。それとも「独身貴族」ではなくて「独身の貴族」ですから「世が世ならうちは伯爵でね〜」なんて大法螺吹いてるのかも。

 今月は「独」を自立語とした方が多かったのですが、その中の「独逸」二句。
蝉時雨東独逸は今やなき  ひでやん
蒼ざめし独逸語辞書の黴の花  上里雅史
 ひでやんさんの句、蝉時雨を聞いていると時を遡るような思いが広がりますね。取合せに共感。上里雅史さんの句は下五で「蒼ざめし」の正体が「黴の花」と判明。こうして描かれると、黴もなんだか綺麗に思えるのが可笑しい。

 いろいろな「独」の表情。
たゆらなる荻一叢を独白す  久我恒子
夏嵐女独りの野外劇  小市
死ぬ時はどうせ独りよ桐の花  凡鑽
独裁者徐々に増え行く溽暑かな  佐東亜阿介
 久我恒子さんの句、美しいですね。「たゆらなる」という言葉の響きがいかにも荻の雰囲気。
 小市さんの句、夏嵐が爽快。女優一人で演じる野外劇なのでしょうか。見てみたいですね。
 「どうせ独りよ」というシニカルな台詞と桐の花の取合せが不思議な味わいの一句は凡鑽さん作。そして独裁者が徐々に増えゆく世界という、佐東亜阿介さんの句……うん、確かにそれはたまらなく暑いでしょう。

 こちら「勝」三句。
いいのよと娘勝気でアマリリス  笑松
 「勝気」とアマリリスが響きあいますね。でも実は泣き虫でもろい女性だったりもしそうな。
勝ち負けは論外となる終戦日  ぐずみ
 勝っても負けても戦争なんてものは……という思いがこめられているのでしょうね。
日本中虜にしたる勝ち扇子  青柘榴
 これは、例の藤井四段の扇子なのでしょう。まこと恐るべき十四才、ですなあ。

刻紡ぐように真白きレース編む  柝の音
 美しいですね。真っ白なレースも、それを編んでいる時間も。

梅雨晴れや二百五円の乗車券  出楽久眞
月涼し乗船切符紛失し  恋衣
 出楽久眞さんの句は「二百五円」という金額がリアル。乗車距離も想像できそうですね。
 恋衣さんの句、切符を紛失してもさほど焦っていない感じ。何しろ「月涼し」ですから。

少年の心に男大南風  小川めぐる
 「男に少年の心が残っている」という句はよくあると思いますが、意外とこの視点の句は少ないのでは。大南風に少年の心の雄々しさが託されて。

はまなすや潤む真砂に鴎の歩  柊 月子
 「潤む真砂」が美しいですね。はまなすと鴎の色合いも印象的。「真砂を」とすると動きが出るかと思います。

瑰の独白として海鳴かな  土井探花
 発想が魅力的。次回お題にしたかった句です。ただ「海鳴」を「うなり」と読んでくださいとのことでしたが、それは少し無理があるかなぁと。(店名をそう読ませる例はあるようですが。もしや、地方でそういう特別な読み方があるのでしょうか?)
 「うなり」ありきで、それに「海鳴」を当て字として使ったということかもしれませんが、はまなすの独白ならば「海鳴(うみなり)は」くらいの押さえでも良い気がします。


次回お題句

鮨飯へ風を送りて咽せかへる  中山月波

 これは皆さん「あるある!」ではないでしょうか。読んだ途端に酢の匂いがつーん、と鼻にくるようです。主婦の方はもちろん、普段お料理をせずとも「子供の頃、お母さんのお手伝いした時に経験した」という方も多いのでは。今月のお題のカッコよさから一転のこの味わい、いいですね。
 というわけで、次回も力作、お待ちしております。


美杉しげり
 第8回俳句界賞受賞。4年ほど前から小説も書き始め、短編「瑠璃」で第21回やまなし文学賞佳作。美杉しげりはその時からのペンネーム。

毎月25日頃に、投句フォームにてお題句を発表します。投句締切は毎月末日。

疑似俳句対局投句フォームアドレス
http://marukobo.com/taikyoku/


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mhm通信


第77回

文 若狹昭宏


今後の展開

 そろそろ梅雨も明け、高校生が俳句甲子園に青春をかける夏がやって来ますね。今年も、小学生の時からいつき組長の句会ライブなどで活躍していた子たちが選手となって、松山に新しい風を吹かせているようです。熱い展開を期待しつつ、mhmからも幟旗やスポンサーなどの支援をしていきます。
 さて、これまでの通信でも今後のmhmの活動や、メンバー募集のことなどについて触れておりますが、進展があったことと、掘り下げたいことを今回は書いていこうと思います。
 先ず、まる裏俳句甲子園ですが、参加者にとっては子規博で開催されるものという印象が強いことと、既に1月7日前後の予定を空けて下さっている方もいること。運営の視点から見ても子規漱石生誕150年の記念ということもあり、今回限りは日時 場所は変えずに行う決定をいたしました。これまで実際にまる裏を見に来てくださっていた市役所の方々からも応援をいただき、文化 ことば課との共催という形で開催する方向で話が進んでいるところです。キャッチフレーズの募集も近々発表いたしますので、沢山のご応募お待ちしております。
 続いて、幾つか企画している新事業の中から、mhmが主催する俳句カルチャー(仮)についてです。元々中学生の俳句離れを防ごうという目的で、簡単な俳句教室を開くところからと計画しておりましたが、対象は限定せず、定期的に作句や選評、句の読み解きなどの会を開いて、その参加者でチームを作り、まる裏に出場するという流れはどうだろうかと考えています。俳句甲子園を広めるために松山市が行っている派遣事業があるのですが、俳句甲子園に出場したOBOGが県外を廻り、句作とディベートの講座をしています。私自身何度か講師として参加しているのですが、松山の高校生からも松山で会を開いてほしいと希望が出ていました。そういった希望も叶う会にできたらと考えています。俳句甲子園出場校の先生方も参加していただけるということなので、期待していて下さい。
 それと、大分遅い報告になりますが、4月にUDCM(松山アーバンデザインセンター)の「お城下マルシェ」とコラボレーションしてきました。農家さんの作った野菜や済美高校の生徒さんが作ったクッキーに、愛大俳句研究会が俳句を詠み、その俳句を俳画にするという部分を請負いました。キムさんはその日別にお仕事だったため、若狹が実質初のライブペインティングをして参りました。こういう場をきっかけに、松山を盛り上げたいという輪が広がって、気軽にmhmを活用してもらえるようになったら良いですね。どんどん出張いたしますよ!! ちなみに、UDCMのオープンスペースを使ってイベントをすることも可能だと聞きましたので、今後お世話になるかもしれません。
 最後に、新メンバーの紹介です。この度「松山はいく」でお馴染みのイリスさんがmhmに加わってくれることになりました。家庭や仕事の都合などで、裏方に回る会員が増えてきている今、大変ありがたい即戦力です。次回の通信で早速活躍を報告できそうです。mhmでは、運営に携わってくださる方を常に大募集しておりますので、今あるイベントや大会を更に良いものにするために、そして一人ではできない新しいことを皆で始めるために、是非皆様の力を貸してください。

 mhmでは松山市内外問わず会員を募集中です。原則、毎月最終金曜日19時からマルコボ.コムにて定例会を行います。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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岡田一実の

句集の本棚



ただならぬぽ
田島健一 著

発行:ふらんす堂(2017年初版)
214ページ
定価:本体2,400円+税

 著者の第一句集。
玉葱を切るいにしえを直接見る
音楽噴水いま偶然のこどもたち
いれものにいれるとねむるように鯊
白鳥定食いつまでも聲かがやくよ
森よ菠薐草に塩ふるしぐさ
風船のうちがわに江戸どしゃぶりの
根の研究あかるくて見えにくい蝶
悪の名詞化この世まばゆいチューリップ
冷遇ガール多彩な蛇に名前あり
海ぞぞぞ水着ひかがみみなみかぜ
沙羅の花双子をふとくふちどるフォト
さくら葉桜ネーデルランドのあかるい汽車
紙で創る世界海月の王も紙
砂に降る夕立にんげん同士が樹
ただならぬ海月ぽ光追い抜くぽ
西日暮里から稲妻見えている健康
七夕や卵の知られざるつづき
琴の堅さ鶴のはかなさ顔のちから
晴れやみごとな狐にふれてきし祝日
日にくじら永遠がいったん終わる
梟や息のおわりのきれいな詩
 言葉と言葉がスパークしてイメージに亀裂が入る。その亀裂にはどこが眩しい光が差す。理屈を捨てて「ぽ」っと明るい世界に身を置きたい。『炎環』同人。『オルガン』『豆の木』。



十年
高橋睦郎 著

発行:KADOKAWA(2016年初版)
221ページ
定価:本体2,700円+税

 著者の第九句集。
螢火の中をありくは泳ぐごと
簾(みす)ごもる深眼差やもの食める
梅雨潮の芥含みや波止越ゆる
年詰まる虚のきしきしと宙ラの涯テ
崖上の墓地照らされぬ海花火
日と影の差の一入ホに秋に入る
 立秋の陽差しを思う。万物を焦がすような陽射しは深い影も生む。その明暗の差に眩む。
鯊釣れて腥くなること迅し
水呑みし蚰蜒絢爛の歩を返す
秋蝉も燈を戀ふ蟲の一つかな
風花に香(かざ)といふものなかりけり
沫雪や交(あざは)らず遂ぐ魚の愛
殻脱ぎし蝉の世眩し死後の如
 「死後」は果たして眩しいのだろうか。羽化したを待つのは「死後」の如くに眩しい世界。そこは凄惨さと救いが共生する世界のようにも思える。
鳥の戀解けて蚯蚓へ驀(まつしぐ)ら
花疲れとは人よりも花に先づ
雪つむや飢ゑ透きとほる蛇蛙ヅ
 第51回蛇笏賞、第16回俳句四季大賞受賞作品。


岡田一実(おかだ かずみ)
 2014年「第三回 大人のための句集を作ろう!コンテスト」優秀賞受賞。2014年「浮力」にて現代俳句新人賞受賞。現代俳句協会会員。「いつき組」所属。「らん」同人。第二句集『境界 ―border―』(マルコボ.コム)。


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鑑(み)るという冒険


〜映画篇 演劇篇〜

文&俳句 猫正宗


第五十八回
『メッセージ』&『愛より速く2号』

 SFを語ることは難しい。一番伝えたい部分がSF的なアイデアと密接に結びついていることが多いから。本稿でもなるべく核心に触れないようにとは思うのだが、ネタばれを気にされる方はお読み飛ばしを。
 『メッセージ』は、先ず「異星との接触」物として始まる。多くのSF?映画において罪悪感なくできる戦争のとば口にすぎないそれは、本作ではまったく未知の存在から、気の遠くなるような努力と地道な対話を通して彼らの言語を解読し、その意図を理解しようとする姿として描かれる。ここには、原作とは違い、昨今の分断される世界への警鐘が色濃くにじむ。自国の利益と他国への猜疑心から協力し合えない国際社会、武力的に突出する中国、ネトウヨのウェブ放送に煽られ武力行使に走る若き軍人といった描写からも明らかだ。だが、本作にとって、「最初の接触」は、文字通り、物語の導入にすぎない。
 ところでみなさんは、パンドラの箱をご存じだろうか? うっかり開けてしまった箱から、あらゆる災厄が人の世に飛び出してしまう。慌てて閉じた箱には、希望だけが残ったという話。しかし、希望が箱に残ったのなら、世界には希望がないのではないか? この話には諸説あり、解釈も幾つかあるが、その一説として、残ったのは希望ではなくて予兆であり、人は未来のことを知ることができないゆえ、絶望することなく生きていけるのだという。
 本作における宇宙人の言語とは、そのパンドラの箱を再度開ける鍵である。そして始まるのは、いや、始まっていたのは『あなたの人生の物語』(原作邦題)。そう、本作は優れてSFであるがゆえに、優れた人間ドラマとして成立している。まるでSFホラーのような予告編から敬遠した方も多かったようにも思う。しかし、SFの苦手なあなたこそ観るべき映画なのかもしれません。

言の葉が君と世界を変え銀河

 彼らは遥か彼方から地球を目指し旅してきたわけですが、こちらはいまや数少ない旅するテント芝居、劇団どくんご。『愛より速く2号』を引っ提げ、松山へは二年ぶり、しかも初の2days公演(構成 演出:どいの、出演:石田みや、空葉景朗、五月うか、2B、Lee、'17年5月26、27日、城山公園特設 “犬小屋”テント劇場)膨大な稽古によって積み重ねられた肉体と精神の交差で火花する軽みと無意味。観ている私たちも意味に追いつかれぬよう喰らいついていくしかない。その底には、しかしせつなさが流れている。そしてそんなテントという異空間は溢れ、見知った世界を侵食していく。地元ゲストは、世界劇団の本坊由華子とダンサー、おのしたみらい あさひ姉妹(まだ小学生!)今回は、いろいろ考えてしまった様に見えた本坊より、美しい体幹と目の覚める反射神経で自分たちの遊び場に変えてしまった、おのした姉妹の方がどくんごぽかったか。
 10月23日まで各地で公演。もしあなたの町にテント小屋がやってきたならば、世界は少し、もう昨日とは違ってしまっているのかも。

公演の去り若葉風だけの広場


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朝の見る句


No.5

文 蜂谷一人


三代の猫の舐めたる皿涼し  井上じろ

 幸せな猫たちなのでしょう。三代にわたって飼われ同じ皿を使ってきたのです。昔飼っていた猫たちの思い出ともに、その皿は今もここに。割れもせず捨てられもせず。ぴかぴかに舐めとられた皿が見えてくるのは「涼し」という季語の力なのでしょう。
 と、ここまで書いて来て筆がとまりました。猫を飼ったことはありませんが、一度に生まれる子猫は一匹ではない筈。何匹も生まれて、その全てが飼ってもらえる訳ではありません。幾匹かは里子に出されます。そこで可愛がってもらえればいいのですが素敵なお宅ばかりとは限りません。それでも貰われた猫はまだいい。行き場のない猫たちはどうなったのでしょうか。
 そんな三代の猫たちの運命を一枚の皿は見つめてきました。身も蓋もない現実を前にして、初めて「涼し」の重さに気づきます。生きるとはそういうこと。それでも涼し。やるせないけれど決して絶望はしません。


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100年俳句計画 掲示板



テレビ ラジオ

NHK Eテレ『NHK俳句』
 日曜6時35分〜7時
 (再放送 水曜15時〜15時25分)
 夏井いつきが第3週選者を担当
8月20日(日)、再放送23日(水)
募集兼題 「虫時雨」または自由
投句締切 8月10日必着
投稿は葉書1枚に1句。選者名、兼題、俳句1句、名前、年齢、電話番号明記。
 《宛先》〒150ー8001 NHK「NHK俳句」係
ホームページからの応募も可
http://www4.nhk.or.jp/nhkhaiku/

NHK 総合テレビ(四国四県域)
  「四国 おひるのクローバー」内
隔週火曜『夏井いつきのムービー俳句!』
8月1日(火)、29日(火) 11時30分〜

TBS系列局 全国ネット
 『プレバト!!』
毎週木曜 19時〜19時56分
 夏井いつきが俳句の査定を担当

南海放送
 松山市政広報番組
 『大好きまつやま しあわせ未来塾』
毎週火曜 20時54分〜21時
(再放送 日曜11時40分〜11時45分)
 夏井いつきが塾長として出演

南海放送ラジオ
 『夏井いつきの一句一遊』
毎週月〜金曜 10時〜10時10分
  「一句一遊情報局」のページ参照

FMラヂオバリバリ
 『俳句チャンネル』
毎週月曜 17時15分〜17時30分
(再放送 火曜7時15分〜7時30分)
投句募集兼題
「秋の蜂、稲の花」…8月13日締切
「厄日、南瓜」…8月27日締切
 WEB http://www.baribari789.com/
 mail radio@baribari789.com
 FAX 0898(33)0789
  投句には本名 住所をお忘れなく!
  「天」の句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。

 各番組の放送予定は変更される場合がございます。新聞などで最新情報をご確認ください。


執筆

松山市の俳句サイト
 『俳句ポスト365』
http://haikutown.jp/post
 「俳句ポスト365」のページ参照

テレビ大阪俳句クラブ
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」(夏井いつき選)
  毎週日曜タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井いつき選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。
 朝日新聞松山総局(〒790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。


イベント、講演等

海と日本PROJECT
 夏井いつきと行く!愛媛の島で遊ぶ! 自然体験&俳句合宿
8月3日(木)、4日(金)
(うち、俳句合宿は3日(木))
 上島町 岩城島(愛媛県)
問合先 南海放送営業部
電話 089(915)2380
 申込受付は終了しています。

2017年度大和高田市教育講演会
 夏井いつき句会ライブ 人に寄り添う豊かな言葉を
8月5日(土) 14時15分〜15時45分
 さざんかホール 大ホール(奈良県)
 大和高田市職員及び市民対象。
問合先 大和高田市役所 人権施策課
電話 0745(22)1101

子規 漱石生誕150年記念
 俳都松山キャラバン2017in斑鳩 十七音が未来を変える
8月6日(日)13時〜
 いかるがホール 小ホール(奈良県)
問合先 松山市役所 文化 ことば課
〒790−8571
愛媛県松山市二番町四丁目7番地2
電話 089(948)6524
 申込受付は終了しています。

第20回俳句甲子園全国大会
予選リーグ 予選トーナメント
 8月19日(土)8時50分〜16時50分
 大街道商店街特設会場(愛媛県)
決勝リーグ 決勝
 8月20日(日)8時45分〜15時50分
 松山市総合コミュニティセンター(愛媛県)
問合先 NPO法人 俳句甲子園実行委員会
Eメール info@haikukoushien.com

第五回俳句対局龍淵王決定戦
8月26日(土) 13時30分〜16時30分
 坂の上の雲ミュージアム(愛媛県)
 出場観覧ともに無料
申込問合先 100年俳句計画編集室
電話  089(906)0694

第21期九州文化塾 第5回講座
 夏井いつきの句会ライブ
8月27日(日) 13時30分〜15時00分
 アクロス福岡 シンフォニーホール(福岡県)
問合先 九州文化塾事務局
電話 092(711)7536(月〜金10時〜17時  祝日を除く)


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魚のアブク



読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは他の投稿に添えてお寄せください。


出楽久眞 こんにちは。初めて俳句甲子園地方大会を見てきました。頑張っている高校生。地方大会も、松山のように盛り上がる大会になるといいなぁと思います。

みやこまる へたうま仙人さま、いつも拙い句に懲りることなくアドバイスをありがとうございます! 少しは成長しているでしょうか?

板柿せっか 百年俳句賞優秀賞本当にありがとうございました。選考委員の方の暖かいコメントにとても励まされました。

喜多輝女 梅雨入り宣言は出たけれどそれから五月晴?のいい天気ばかりで空梅雨ではないかと……ほどほどの雨はやっぱり欲しいですね。何もかも「ほどほど」がいいと思う今日この頃です。

うに子 空梅雨かと思っていたらどっと降り始めました。適度な梅雨ってどれくらいでしょう?

編集室 つい先日、全国的に広範囲で一斉に梅雨が明けたという発表がありましたね。どこからどこまでが梅雨、という明確な基準があるわけでもなさそうですので、各地とも梅雨明けの発表のタイミングをうかがっていたのかも……?

ふづき 明惟久里さんの六月号のお便りに、とても元気を頂きました。ありがとうございました☆

明惟久里 買物に出た午後は青嵐が吹く日で、昨夜は運転していたら遠雷に気づきました。いつも以上に季節を感じて夏を迎えることが出来そうです。向暑の砌くれぐれもご自愛下さいませ。


インターネットの投句フォームをご利用いただいている方へ
 弊誌「100年投句計画」の投句フォームには、グーグル社が提供しているシステムを利用しておりますが、グーグル社側の仕様変更で、入力方式の一部が予告無く変更される場合がございます。またその仕様変更により、現在、機械的な自動システムによる迷惑投稿(スパム投稿)を防ぐための画像認証などの機能が追加されておりますが、セキュリティの一環として、ご了承をお願い致します。


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鮎の友釣り


第228回


俳号 竜胆(りんどう)

前回 大五郎さんへ 俳句甲子園もカルチャー教室も先輩の大五郎さん。飲み会になるとその酒豪ぶりは、私が中二杯の間に大三杯が空く。も少し控えられた方が……。

写真 今年古希を迎えましたが、まだ週四日フルで働いていますので、ネクタイ姿にしてみました。

近況 句歴八年目、俳句の種まきのつもりで聖カタリナ学園にかかわり始めて一年半。高校生の発想に刺激を受けながら、必要に迫られて文法や旧仮名づかいなどの勉強をしています。

次回 うに子さんへ 二〇一四年の第三十三回「一〇〇年の旗手」を一緒に連載してから、同級生のような戦友のような気持ちで投句をフォローしています。身近なものへ優しい目を向ける句柄には多くのファンがいますが、私もその一人です。


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告知



JAZZ句会主催
ハイクライフマガジン『100年俳句計画』共催

NORIKO KOJIMA TRIO LIVE
at JAZZ BLEND 2017

9月17日(日)
13:30 OPEN
14:00 START

参加費 3,500円(ワンショット付)
会場 白方ビル1階「JAZZ BLEND」
 (松山市中央2丁目1238 井村歯科医院の久万川を挟んで東隣)

ライブ終了後16:30ごろよりジャズ句会を行います。
最優秀句にはキム チャンヒによる俳画をプレゼントします。





春夏秋冬(しき)笑顔
まつやま福祉
五七五

主催 松山市社会福祉協議会
   有限会社マルコボ.コム(ふくし句会、ハイクライフマガジン『100年俳句計画』)選句

協賛 JAえひめ中央 社会福祉協議会賛助会員


福祉をテーマにした
夏の五七五募集

年4回、福祉をテーマにした五七五を募集します。
人に優しくなれるような、五七五をお待ちしています。
(第2回 2017年8月3日締切)


2016年度 夏の五七五 会長賞
薫風や駅長の押す車椅子  dolce(ドルチェ)


応募方法
インターネットの応募フォームにて応募してください。
専用フォーム http://www.marukobo.com/egao/

賞品「松山トリコ」
 大賞(松山社協会長賞) 道後温泉湯玉トートバッグ(1点)
 優秀賞 ブックカバー(3点)
 入賞 紙の湯カードケース(4点)

発表 ハイクライフマガジン『100年俳句計画』9月号 ほか

問い合わせ TEL 089-921-2111





子規 漱石150生誕150年記念
俳句対局
第五回 龍淵王決定戦

主催 マルコボ.コム 100年俳句計画編集室
共催 松山市


8月26日(土)13時30分〜
会場 坂の上の雲ミュージアム 2階ホール
   愛媛県松山市一番町三丁目20番地
   TEL:089-915-2600
   (開催会場が変更になりました)
   
出場観覧ともに無料。
出場者募集中。この大会の勝者は11月上旬開催予定の松山市主催俳都松山イベントに出場する権利を得ます。
  なお希望者多数の場合は先着順となります。ご了承ください。
問合申込はマルコボ.コム 089-906-0694





100年俳句計画作品集
100年の旗手
第3期連載者募集のお知らせ

 「100年の旗手」は、年齢や俳句の経歴に関わりなく、本誌にて作品の発表が出来る場として、新たにスタートを切りました。
 そこで、毎月10句3回の連載に挑戦する方を募集します。10月号に掲載できるタイトル付きの10句の作品を、Eメール、または郵送 FAXにて本誌編集室までお送り下さい。
 編集室にて連載者を決定し、掲載いたします。
 多数の挑戦者をお待ちしております。

募集内容 10月号に掲載できるタイトル付きの10句
応募先  
 Eメール magazine@marukobo.com
  件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
 郵送 〒790ー0022 愛媛県松山市永代町16ー1
 有限会社マルコボ.コム「100年の旗手」応募係 
 FAX 089-906-0695
2017年度第3期締切 8月20日(日)

第2期連載(7月号〜9月号)は、都合により休載いたします。ご了承ください



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編集後記


キム チャンヒ

 読者の中には、「何故に今頃クロヌリハイク?」と思われる方も多いと思う。なんせ今月号で5年目を迎える、本誌の人気連載なのだから。
 作者の黒田マキさんとの付き合いは、共に地域の「おやじの会」メンバーだったことから。僕が俳句の仕事をしていると伝えると、黒田マキさんは俳人でもないのに、次から次へと俳句の企画を提案し、実現したその一つが「クロヌリハイク」だった。
 連載が始まるやいなや、読者から好評を得、いつかはまとめて本にしようと約束をした。
 そして去年の秋。作品数がたまり、全36ページの句集スタイルで発行することになった。すると黒田マキさんは、この薄っぺらい本に「朝日新聞社と愛媛新聞社の記者による解説が欲しい」と言いだし、それぞれの文化部にお願いをして、書いて頂いた。すると今度は「せっかくなので序文もつけたい」と言われ、クロヌリハイクのファンを自認する瑞木さんにお願いをして寄稿して頂いた。
 そうして関わった新聞記者が、この本を大きく紹介してくださり、様々な場所で目にするようになった。改めて、本にすることの意味は大きいと思う。


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次号予告


238号 9月1日発行予定

俳都松山キャラバン in 熊本&斑鳩



お得で便利なマルコボ.コム直販定期購読! 巻末の案内をご覧ください
お申し込みの方へ、毎月末頃に最新号を送料無料でお届けいたします!
(住所変更の際は必ず編集室までご連絡ください)

『HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画』は以下の書店でもお買い求め頂けます。

愛媛県
 明屋書店 ※一部店舗のみ
 ゆらり内海(愛南町)
 原田書房(今治市)
 子規記念博物館(松山市)
 紀伊國屋書店松山店
 ジュンク堂書店松山店


HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画
2017年8月号(No.237)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子

2017年8月1日発行