100年俳句計画 2017年5月号(No.234)


100年俳句計画 2017年5月号(No.234)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。






目次


巻頭リレーエッセイ


特集1
くいしんぼう 台湾吟行および 俳都松山キャラバンin台北(前編)


特集2
第六回 百年俳句賞 表彰式を終えて
 最優秀賞「水掻き」ふづき


優秀賞作品(上)
  「蛍烏賊の目玉」板柿せっか
  「天空の墓」てんきゅう
  「さくら餅」越智空子


好評連載


作品

百年百花
 大塚迷路/平山南骨/井上さち/門田なぎさ


新 100年の旗手
 涼野海音/くらげを


新 100年への軌跡
 俳句 紗蘭/岡田朋之
 評 十亀わら/平山南骨




読み物

美術館吟行/日暮屋又郎

mhm通信/佐川幸

Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳:朗善)

JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭

ラクゴキゴ。/らくさぶろう

ホンヤクサイホンヤク/翻田訳蔵

百年歳時記/夏井いつき

鑑(み)るという冒険/猫正宗

朝の見る句/蜂谷一人


読者のページ

100年投句計画
 選者三名による雑詠俳句計画
  桜井教人/阪西敦子/関悦史

 へたうま仙人/大塚迷路
 自由律俳句計画/きむらけんじ
 詰め俳句計画/マイマイ
 100年投句計画 投句方法

疑似俳句対局/美杉しげり

短歌の窓/渡部光一郎

百人百様E-Haiku/菅紀子

俳句ポスト365

一句一遊情報局

100年俳句計画 掲示板

魚のアブク

鮎の友釣り



告知

編集後記

次号予告





巻頭リレーエッセイ



五月の詩そして……
幸 

 「貧しいから、あなたにさしあげられるものといったら、五月の青い若葉と、精一杯愛する心だけです。でも結婚してくれますね」
 この短い詩は、昔のテレビドラマの一シーンで、森光子さん演じる母親が息子に語りかけるものです。五月がくる度に思いだします。五月をイメージすると、あふれるような生命力に満ちた青葉と光る風希望、身体中で感じる躍動感、一方で、「五月病」という現象もありますが、やはり美しい響きの季語「聖五月」に象徴されるような喜びにみちた季節と思いたい。
 今回アンリルカさんから託されたリレーエッセイ。不思議です。私も一年生の時に、同級生が病気で亡くなりました。六歳の私には、大変な事という印象しかもてず、それでも、幼さを残した彼が、「しえんしぇい(先生)」と言っていた事、「桑野君が亡くなりました」という先生の言葉を忘れていません。
 面識もない私に、エッセーのバトンを渡してくださったアンリルカさんに深謝です。


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特集

くいしんぼう台湾吟行および
俳都松山キャラバンin 台北(前編)




文 ふじみん(岡田一実)


 去る3月25日、松山市主催「俳都松山キャラバンin台北」が紀州庵(台北市指定重要文化財)で開催されました。同じ「松山」という地名を持つ台北市との交流事業として、台湾で日本文学を学ぶ学生と先生、台北俳句会の皆様との俳句交流イベントです。そのイベントに日本からも参加しよう、ついでに台湾観光もしようと企画されたのがこのツアー。
 参加者の一人ふじみんが、ツアーのすべてを渾身リポート。おいしい台湾(おもに台北)が見えてきます。


 深夜二時五十分、結局一睡もできずに身支度を始めることにした。海外旅行は二十三年ぶり二度目だ。不安と緊張で身が強張る。夫マイマイは三時に起きて身支度をする。タクシーが三時二十分に来て、三泊四日分の荷物をトランクに入れてもらう。さあ、旅の始まりだ。

タクシーに見る朝明の朧月

 集合時間の四時よりは少し早めに松山市駅に着いた。バスはもう来ている。お茶を買ったりしているうちに参加者が集まった。メンバーは夏井いつき組長、兼光、南行ひかる、きとうじん、曼珠沙華、香雪蘭、更紗、ともぞう、喜田健夫、チャンヒ、らまる、まさこ、マイマイ、ふじみん。一様に寝不足の様子だ。添乗員の藤田さんに促されバスに乗る。これから広島空港まで三時間のバスの旅である。北条でなぎささん、今治でだりあさんを乗せ総勢十六人となる。バスの中ではアイマスクを付けて眠ったり少しお喋りをしたり。

春暁を赤き三日月静かに寝

 バスがしまなみ海道に差し掛かる。夜が明けて薄明りのしまなみ海道。

春はあけぼの島と島とを結ぶ橋

 広島空港に到着。スーツケースを預け、搭乗手続きをし、手荷物検査をくぐり、飛行機に乗る。皆の緊張をよそに飛行機はぐんぐん速く走り、飛び立つ。さらば日本。飛行機が安定の高さまで飛ぶと忙しく機内食の準備が始まる。

雲上の春日やchicken or pork
麗かや機上に耳の痛みゐて

 台北の桃園空港まで二時間半。時差一時間。あっという間に眼下に台湾が見え始める。

鳥雲に犇めきあつて台北は

 桃園空港では現地ガイドの羅さんが出迎えてくれる。羅さんの流暢な日本語に少し安心して、一行は宿泊先のグリーンワールドホテル松江へバスで向かう。バスは左ハンドル。台北は右側通行だ! 大方の荷物をホテルに置き、ホテルの食堂でランチの牛肉麺を皆で頂く。あっさりしていて沖縄のソーキソバが少し近い感じ。突き出し料理の八角の香りがこれぞ台湾料理といった風情。
 ランチが終わって、晴天の初夏陽気の台北に繰り出す。まずは台北101ビル。標高五〇八m。世界九番目の高さのビルだ。ブランド品の売場を抜け、八九階の展望台まで分速千十mの高速エレベーターで一気に昇る。台北大パノラマが一望できる。九一階まで階段で上がり、屋外からさらに台北を眺める。台北は一一四〇、人口八百五十万人、人口密度は七千五百人/(東京は四千四百人/ Demographia World Urban Areas /12th ANNUAL EDITION 2016:04調べ)。台北の所得格差は東京の比ではないという。富裕層が何十億元(一元は約四円)と払って住む高層マンションが幾棟も並ぶ。

龍が混む街や台北花盛り
ビル高く低く隈なく霾れり
冷房やビルの歴史をビルで観て

 台北101ビルを堪能した後はホテルの近くで台湾茶を楽しみ、円を元に両替してもらう。ここでお土産を買う。烏龍茶やパイナップルケーキ、からすみ等々。早速の散財。そして一同は九へと向かう。
 まだ暮れきらぬ九。長い急勾配の石段に連なる赤い提灯はまだ灯っていない。人人人の石段を上る。途中色々なお店があるが買い食いは推奨しないとのこと。自由時間、我々は阿妹茶酒館で台湾式のお茶を頂くことにした。ここもお客さんで一杯だが、羅さんの顔で入れてくれた。烏龍茶はお湯で洗い、まず一煎目。花のような豊かな香りがある。胡麻味の茶菓子などを摘まみつつ二煎目。少し苦みが出てきた。三煎目、明らかに苦い。

茶が脳に染みる円卓花の風

 そうこうしているうちに暮れてきて提灯が灯り始めた。

九を斜に活躍の自撮り棒
きりぎしに春灯ならぶ喧しさ

 九戸茶語に一同集う。テラスから見える海が入日を浴びてとても美しい。乾杯に台湾ビール。ビールは頼む度に各自お金を払う。台湾のビールはさっぱりとして飲みやすい。おお、麻婆豆腐にも八角が効いている! 本場の台湾料理をたっぷり味わう。こうして長い長い一日目(一日二十五時間!)が終わってゆく。

 二日目。雨。俳都松山キャラバン in 台北のスタッフチームと別れたメンバーで國立故宮博物院へバス移動する。國立故宮博物院は七十万点近い至宝が展示される世界屈指の博物館。ここも大変な賑わいだ。手荷物検査を受け、ヘッドフォンを受け取り中に入る。ヘッドフォンで羅さんの解説を聞く。

鼎とは富の徴や春の雨
霾や辟邪は糞をせずに吼ゆ

 至宝を見尽くした後は忠烈祠へ。戦争などで殉職した英霊三三万人を祀る祭祀場である。正時、衛兵の一糸乱れぬ交替式を見る。

見ぬ如く見る衛兵や花の雨
忠烈祠雨中の囀りの中に

 ランチは小籠包など飲茶を鼎泰豐本店で頂く。ここも大陸からのお客さんなどで物凄く人が並んでいて、並ぶのかな、と思っていたら藤田さんが人をかき分けて予約の席へと案内してくれた。細い通路。離合にも厳しい細い急勾配の階段を抜け三階へ。針生姜と合わせて酢醤油で頂く小籠包は一人五個だよ、と回す。食べた数を忘れたりして数が合わないのは適当に調整する。汁が口中にじゅわっと熱く筆舌に尽くしがたい味。酸辣湯なども干した豆腐などが入って本場の味で攻めてくる。炒飯は卵が香り高くふわふわ。ランチ後はかき氷屋さんでマンゴーかき氷を頂く。練乳の入った氷は肌理細かく夢のような味わい。

酢のにほふ小龍包や春惜しむ
マンゴーの果肉暮春の甘さかな

 おなかを満たした後は俳都松山キャラバン in 台北が開催される紀州庵へ。台湾の大学生の俳句の優秀賞などが表彰される。大学生達は日本語に堪能で、夏井いつき組長のツッコミに沸く。その後、台湾俳句会を交えての句会ライブ。兼題は「花季」。チャンヒさんの俳画をGETしたのはこの二句。

最優秀賞
花季や子に焼く卵今日二つ  三宅節子(台北俳句会)

優秀賞
花季や淡い憂鬱風の中  李哲宇(輔仁大学)

 その他入選句はこちら。

さくら咲く遠き旅路の人恋し  李錦上(台北俳句会)
はなときや心を叩く夢の音  李嬌(東呉大学)
百歳にもうすぐとどく桜時  廖運藩(台北俳句会)

 台湾ツアー組は三名が発表される。遠路はるばる皆で来た甲斐があったというものだ。

飛びたからう彫られし鳥の桜どき  だりあ
旅の地の風深く吸う桜季  なぎさ
老犬の温もり残る桜どき  曼珠沙華

 打ち上げは台北の老舗名店 欣葉本店。台湾俳句会の皆さんや松山市役所の方々と円卓を囲む。ここで台北俳句会の杜青春さんがマイマイに似ていると盛り上がる。杜さんも付き合ってくださって二人で(遠い?)親戚の出現をハグで祝う。市役所文化ことば課の上田さんは七割打者の雨男だとか。今回の雨も上田さんが……。

亀鳴くや似てゐて異父母兄弟と
春雨と雨をとこなる吏のひとと

非常に親密なときを美味しい料理とお酒で過ごし五七五拍子で宴は終わる。

旅を来て旅寝に花の騒ぎかな


次回後編に続く


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第六回 百年俳句賞
表彰式を終えて



最優秀賞「水掻き」
ふづき


 百年俳句賞の応募のきっかけは、一年前の「第五回大人のための句集を作ろうコンテスト(現 百年俳句賞)」表彰式で最優秀賞受賞の大塚迷路さんとお話をしたことであった。
 何と迷路さんはこのコンテストの初回から毎年応募を続けていたそうな。一〇〇年俳句計画の「へたうま仙人」コーナーでユーモアたっぷりの選評をされている迷路さん。あのユーモアの影で人一倍努力を重ねていらしたのだなあと心から感心した。
 そして、何故だか「私もあと一回だけ挑戦してみようか……」という思いが湧いた。句を纏める難しさはイヤという程経験していたというのに、我ながら不思議な思考回路であった。身内の葬儀 仏事と続いていたのが少し一段落したことも、それにつながったのかも知れない。
 だがそれからは、案の定、しんどい思いの連続であった。秋から本腰を入れたが、なかなか進まずに難儀した。結局多くの問題点が解決しないまま、締切当日に応募した。妙に脱力感が残った。そのせいか、受賞を知ったときも嬉しさというより信じられない気持ちの方が強く、ふわふわとした心地がずっと続いた。それはこの文章を書いている今も少し残っている。
 表彰式では、越智空子さん 片野瑞木さんきとうじんさん てんきゅうさんと、御一緒することが出来た。組長のあたたかい講評に皆さんが感激されていて、とても共感した。句を纏めるという、同じ経験を経ているからこその共感であったと思う。
 そして私も組長と竹田先生から心のこもったお言葉を頂いた。今までいろいろな意味でつまづいた時もたくさんあったのだが、組長を始め多くの方々に支えられてきた幸せを、改めてしみじみと感じた。会場やお花見の場でかけて下さった言葉もありがたく、とても嬉しかった。紙面での選考委員の方々の選評も合わせ、すべてが私の励みとなっている。ずっとずっと忘れずに大切にしていきたい。
 いつき組の皆さま、本当にありがとうございました。いつき組のイベント等に、毎回の参加はかなわないのですが御一緒出来る機会を楽しみにしています。
 これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。


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第六回 百年俳句賞
優秀賞作品(上)



今月号と来月号に分けて、第六回百年俳句賞優秀賞作品を選考会員のコメントと共にご紹介します。


蛍烏賊の目玉
板柿せっか

 句の端々に作者の生活が見えてくるところがよい。光景の描き方 動詞の使い方 語順の良さなど、特に下五の作り方に心が行き届いていて全体に安定感がある。中後半に秀句が並んでいて、読後の印象が強い。

 普段の生活でよく見かける光景を改めてうまく俳句にしているという印象でした。

 描かれている世界に好感が持てました。
 また、「海猫」「海」「船」、「ぽっぺん」「ぽぺ」、「雨の日」「雨の音」といった重複するような言葉を用いながら、さらりと詩にしているところは見事だと思いました。

 生活感にあふれる句に魅力があった。それも、ほんの少し視点をずらして生活を写生しているところに好感がもてた。

 表題は「仕送りの前借り蛍烏賊の目玉」から。自らの学生時代を振り返ってくすっとしてしまった句。全体を読むと愛すべき人物達が見えてくる。

 なんでもない日常のことをつぶやきのように句にしてしまう力量。

 穏やかでありつつ、ドタバタとした日常が句に現れていて、ほほえましい。
 句の型も多彩であり、読者を飽きさせない構成も素晴らしい。

 感じることを頭の中で言葉にするのではなく感じることそのものを言葉にする。
 感覚→頭→言葉でなく、感覚→言葉。
 タイトルの蛍烏賊の目玉が切実感と共に良かった。

子の部屋に昼のビールをこぼしけり
抱かれて少し小さくなる兎
主婦なんて易し湯豆腐美味しいし
鉄鉢にうけてからつぽ春の雪
花びらのまだ筏とは呼べぬほど


天空の墓
てんきゅう

 句の材料自体は奇抜でないのに、作者の持つ詩性で詠んだ作品が魅力的だった。世間を突き放すような句がありながら青春性を感じる句もあり、幅が広い。

葡萄甘しシャンソンは嘘に甘し
 なども遊んでいていいと思いました。

 季語の選択が絶妙な句もあり、俳句ならではの豊かな詩情を醸し出している。
 あまりロマンチストでない私のようなものの胸にもすとんと響く詩情。
 逆に「冬苺潰して森の眠り解く」のような句は説明的で、作者の思いと読者の間に少し距離ができてしまうように思った。
 作者の繊細な感覚には真似できないものがあるので、さらに鮮やかに表現できる言葉にこだわってほしいと、欲張りにも思ってしまう。

 身近なものを題材にして詩に昇華しようとする意欲を感じた。反面、「網タイツ」や「アイライン」などは昇華しきれずに終わってしまった感がある。
 「天空の墓」という表題は句集として魅力があると思う。

 憂いと諧謔味の混じりあった作品で、選んだ三作品のなかではいちばん魅力を感じた。コケティッシュとでも言おうか。

 取り合わせに個性があり、色彩も鮮やかで刺激的。死を描きながら、作者が 今を生きている実感が読み手にも伝わってくる。

白秋の夜につながれて象二頭
銀漢やシルクロードに紅き骨
鳥葬の朝や枯野に白き石
冬の音たてて楽屋のパイプ椅子
地球に死んで青い金魚になりました


さくら餅
越智空子

 定型のリズムを守っている句が多く、結果としてそれが全体的な作品としての調べを整えている。

 冒頭に見るべき句が多かった。
 後半は良くも悪くもこれといった句がなく、バランスが悪いと感じた。
セロの音や豊かに濁る春の海
は特撰。五感に響く力がある。この一句だけでも入選の価値があると判断した。

 落ち着きのある凜とした姿勢、達観した視線を感じた。

 いまどき珍しく主張がわりと前面に出た作品群と感じ、とても好感が持てた。が、まだまだちょっと中途半端で、もっと主張をぐいぐい押し出せば違った展開があったかもしれない。と言いながら、ふっと力を抜いた句が格段に輝いていると感じたのはちょっとした皮肉かもしれない。この句群には必要ないと思われる句がちらちら多いと感じさせたのが残念だった。

ビニール傘の中の明るし花の雨
白蝶をこの世に戻る呪文とす
学校へ行けない巴旦杏青い
文字持たぬ民の千年星流る
髪逆立つる風は荒星より吹くか


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第6回百年俳句賞 優秀賞

蛍烏賊の目玉


板柿せっか


麦の穂の光すずめの白き腹
鳥影をおへば青葉のおしかへす
空き缶に集める会費愛鳥日
麦秋の何か言ひをる拡声器
黒糖のほろとくづれる春夫の忌
くるくると蝿取リボン匂ひけり
狛犬の眉間をのぼる放屁虫
御辞儀する角度になめる氷菓子
墓地出でて子は空蝉にしやがみこむ
走る走る子にも蟹にも追ひつけず
忽ちに捕へし蟹の黒ずめり
0.5(ゼロコンマゴ)秒舟虫の撤収
海猫や海へ帰れぬ船いくつ
鰺刺の海の光にまぎれけり
夏雲に触れて機体の旋回す
作業所に演歌の唸る大暑かな
信長のすぐにうつぶす立版古
蚊を叩くには母さんの力みすぎ
夏休一人叱れば皆消ゆる
仏飯に伽羅蕗二本横たへる
子の部屋に昼のビールをこぼしけり
夕川に触れて蜻蛉の透きとほる
門火焚きをへたれかれのふりむきぬ
踊る輪のすこし乱れて果てにけり
ねんぶつとじゆもんの違ひ鉦たたき
八朔の空へ哮りぬわらの龍
直会の枝豆青く甘かりき
豊年の風にはためく万国旗
二人三脚秋風にたふれこむ
黄落や踏切板を蹴る義足
秋光をためてこぼしてプラタナス
星飛んでお尻に温きアスファルト
消す人のなくて月下の掲示板
色変へぬ松をくぐりて嫁ぎけり
声あげて笑ふ花よめ菊日和
城址とは何もなきこと銀杏の実
落栗を二三個蹴りて拾はざる
倒木は龍の咆哮水の秋
山小屋の小さき鍵穴秋惜しむ
水鳥や山神様のたなごころ
土産屋に撃たれて熊の小さきかな
湯の花や御嶽山の眠らざる
抱かれて少し小さくなる兎
ねんねこの右手ピアスをつかみたい
西渋谷部品商会しぐれけり
冬銀河こぼれ職員室の灯や
美容院出でてのぞきぬ年の市
瓦斯の火のうなりて点きぬ小晦日
槍穂高乗鞍御岳初景色
福引を当ててしきりと謝りぬ
忘れられたるぽつぺんのぽぺと鳴く
三姉妹ひとりは引かぬ初みくじ
小吉を結はふ冬芽を揺らしつつ
十八は大人なのかな鯛焼食ふ
主婦なんて易し湯豆腐美味しいし
子を叱るあはひに刻む葱一本
水仙の背中合せに香りけり
バス停の明るさに雪積もり初む
降る雪や胎児心音聴診器
雪晴れて遠くの犬に吠えらるる
土塊の鳥のかたちに春立ちぬ
風車まだ七色をもつ速さ
赤んぼのおくびけほりと梅ほころぶ
吸入器こぽこぽしゆーと春の雲
愛の日の屋上に吹くハーモニカ
料峭の燃えるごみなる受験票
鉄鉢にうけてからつぽ春の雪
目刺爆ず消防団の倉庫裏
しよらうにはしよらうの恋や春セーター
雁風呂や束ねて捨てる診察券
陽炎に歪むペリカンのくちばし
薄き膜まとひて春の夜を行けり
赤深し日本語学校の椿
啓蟄やハングル文字の円と線
イムジンの朧月夜を流れけり
雨の日は雨の音聴く彼岸かな
花びらのまだ筏とは呼べぬほど
花屑を溜めて老木捩れけり 
猫の子に針のふるへる体重計
仕送りの前借り蛍烏賊の目玉
雲雀野の空へ伸びゆくトロンボーン

板柿せっか
1964年生まれ。岐阜県在住。2007年「俳句の缶づめ」に投句開始。兼題「鵙」をきっかけに野鳥観察にはまる。俳号を雨月より改めました。


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第6回百年俳句賞 優秀賞

天空の墓


てんきゅう


伊弉諾よ桃嗅ぐなかれ恋ふなかれ
白秋の夜につながれて象二頭
銀漢やシルクロードに紅き骨
寝袋を丸めて残暑吐き出しぬ
カタコトの店員と聞く秋の雷
初茸の数だけ木霊聞こえたか
バクの背を色なき風のモノローグ
鍵盤のごとく月夜の外階段
葡萄甘しシャンソンは嘘に甘し
銀漢を見上ぐ首なき羅漢像
地下足袋に金糸の刺繍秋祭り
千本の鳥居をくぐる荻の風
一列に亀東向く白露かな
アンモナイトの吐息ぐるぐる秋の波
網タイツよれて九月につんのめる
龍淵に潜みて黒きアイライン
三日月が胸に刺さつただけのこと
天空の墓目印は烏瓜
霜降のケトルに満ちる水の音
行く秋に乗りそこなつたハイヒール
太陽を粉々にして初時雨
鳥葬の朝や枯野に白き石
自転車に森の匂ひの冬帽子
冬苺潰して森の眠り解く
寒卵割る音空の青む音
万物に影あり小春日和かな
襟立てて十一月の地図を行く
凩に怯まず愛を欲しがらず
踊り子の胸尖りゆく寒の月
冬北斗モスクの街の静かなれ
消灯のロビーに吾と室の花
やはらかき朝の色なる冬障子
マスク多すぎて宗教めく図書館
音読みと訓読みありて湯ざめの子
おでん鍋挟んで名刺次から次
咳きや天地に走る手術痕
冬の音たてて楽屋のパイプ椅子
ドアノブに鯛焼かけてある夜半
水仙よ息甘くせよ身を固くせよ
明け方の火事や信長生存説
五色幕風蹴り上げて御開帳
麗かにライオンの子の哺乳瓶
鳥籠の影に絡まる余寒かな
料峭を挟んで閉ぢる「青い鳥」
ふらここは行けば戻つてくるものを
春泥に埋めたき人の二三人
ドロップの嘘くさき色亀鳴けり
地虫出づ第3ゲート閉鎖中
夕映えは椿セレナーデは佳境
稽古場の窓に夜あり椿あり
春ショール夜の窪みにかけたまま
淡雪やICUの電子音
虎の眼が覚めるを待つてゐる日永
芹濡るる石鎚の神宿る水
モトクロス迎へ撃つ雀の鉄砲
三つほど弱音を吐いて蠅生る
言の葉の水より軽き石鹸玉
葬列を見送るジャズと花の雨
卯の花腐しクレヨンは折れやすし
籐椅子にシャルドネ色の風とゐて
サックスの音色にとまる夏の蝶
新緑の光集めて禰宜一礼
万緑や狛犬高らかに笑ふ
手水舎の水吐く龍の髭涼し
伽羅蕗と筍飯と憂国と
夕立や生まれる前の決まりごと
六月の百葉箱に雨の熱
助手席の忘れるためにある日傘
衛星の軌道みずすましの疲労
物言はぬほうたる連れて夜の底
夏痩の胸に張り付く聴診器
清らなり心臓もたぬ水くらげ
夏蝶の意のままに墓石朽ちゆく
原爆の死没者名簿瓜冷す
夏星を生け捕るビルの観覧車
炎昼や角の折れたる求人誌
七月の空缶くしやと砂の中
木彫の少年の目に夏果てる
合歓咲くや皇后様にある愁眉
サバンナを越え水無月の風となる
地球に死んで青い金魚になりました

てんきゅう
1957年生まれ。子規と同じ誕生日。天使とキューピットのハーフなので「てんきゅう」と名乗る。苗字と俳号がなじまないのが目下の悩み。時々女優に変身する。


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第6回百年俳句賞 優秀賞

さくら餅


越智空子


五線譜の流れていくよ春の川
春光や水口に鎌置いてある
蛇穴を出て生物部に捕まる
卒業の子と踏切を待つ間
研修のお辞儀の角度囀れり
賽銭のことりと鳴るよ囀るよ
螺髪すべて右巻きといふ桜東風
スクリューの全力で春泡立てる
ビニール傘の中の明るし花の雨
白蝶をこの世に戻る呪文とす
初恋は誰も片恋豆の花
砂粒や春草挟みゐし手帳
花冷えの一献蒼き石神へ
大鍋ふつふつ春の夜を湯がく
確たる我なくて朧月の仲間
テトラの根の闇に見開く眼張の眼
人形の黒瞳つやつや椿落つ
貌鳥や木漏れ日の金露の銀
鰭長き魚棲む海桜まじ
セロの音や豊かに濁る春の海
百万の石積みの果て鳥帰る
松山市文化ことば課さくら餅
夏来たる大の字に寝て心電図
紫陽花を映すティンパニへの一打
サックスの本職はシェフ夏季公演
雨降れば雨の詩あり巴旦杏
河骨や合羽を叩く雨しとど
卯波散る岩壁に小屋生えてゐる
夏霧の青く凝れるインク壺
百年の緑陰守る署名かな
学校へ行けない巴旦杏青い
白蓮この手汚れてゐると思ふ
我が角は涼しき繊月のごとく
瀬戸の月涼しフェリーの湯の熱し
カラコロと明日の麦茶の沸く夜半
動かざる亭主と獰猛なる夏草
守護神の不敵の笑みのまま灼くる
三伏を食らふ中華街の群衆
夏惜しむ都庁の酸素薄き空
爽やかや遺跡の空へ洗濯もの
秋の補助金こふのとりの巣の家へ
飛ぶ鳥も飛ばない鳥も天高し
珈琲のミルクぐるぐる龍淵に
団栗をふまずに歩く佳き日かな
鼻の効く姉は栗虫無しを選る
真贋のわからぬ家宝蚯蚓鳴く
月昇る多国籍なるアーケード
月蒼からん平城京のペルシャ人へ
文字持たぬ民の千年星流る
秋暁の空港単調なるコーラン
着陸寸前帝都は秋の日に揺らぐ
澄む水を底まで落ちてから浮こう
白菊を手向け男は泣かぬもの
八月の祈りは海に錆ついて
内戦の記憶沈めて水澄める
秋日和要塞址に鳩の来て
湖の色は流星落ちてより
眼窩てふ小さき窪み秋の草
野菊あげやう虚しきテロリストに
ほら雲が鶴飛ぶかたち冬立ちぬ
冬日和アンパンマンの歌が好き
力瘤比べる女子や冬温し
通さるる林檎とラムプある座敷
保育器のまどろみ見つめ居て聖夜
ねんねこやこの子戦に取られまじ
徴兵の無き島国へ白鳥来
冬晴れに遺構の穴の黒々と
扇状地のここが要ぞ大根引く
北風が強いと生ハムがうまい
闇鍋や新規就農歓迎会
髪逆立つる風は荒星より吹くか
セコイアへ幾千年の冬の星
銀の星降る狼の棲む国へ
烈風の形に樹氷煌めける
寒犬の荒野に夢を嗅ぎ分ける
夷酋列像その眼光とその毛皮
冬蔦のジグザグ絡む曇り空
枯葎の家にて夢を紡ぎ居る
松の香に胸冴ゆるまで歩きけり
握り締めた指の形に熱き雪
冬風に鳴る旗は青空の色

越智空子
1955年生まれ。子供の頃、本好き、空想好き、草好きで、赤毛のアンがバイブルだった。いつしか還暦を過ぎ、今は歳時記もバイブルになった。いつき組に出会えて良かった。


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美術館吟行


第29回

「名嘉睦捻展 風の伝言(イアイ)を彫る」吟行会

文 日暮屋又郎

取材協力 「名嘉睦稔展」実行委員会(愛媛県、愛媛新聞社)、愛媛県美術館 
「名嘉睦稔展 風の伝言(イアイ)を彫る」は5月7日(日)まで開催中。



 例年より、約一週間遅れで桜満開の愛媛県美術館内に、一気呵成のトロピカルな空間が広がっている。名嘉睦稔なる版画家の作品展初日、本日のメンバー八名による美術館吟行が始まった。
 次々と迫るように訴えてくる作品群には、単に亜熱帯、トロピカルというだけでなく、全作品の根っこ部分に共通している、圧倒的な透明感を持ち合わせ、テーマとなっている「風の伝言を彫る」をまさに具現化している。
 版画を彫る鋭い刀のスピード感と裏手彩色法にその証左を見ることができる作品への挨拶句。

「ストレリチアの根方」
天然色は他人事おばあの籠に潤旬  日暮屋
さはさはと背中の魚籠に夏来たる  恋衣

 圧巻は、魚や海草、岩などの形や色が海底から掘り出されたように瑞々しい海中のパノラマを描いた大作。

「大礁円環」
うりずんや海が砂漠にならぬやう  恋衣
渦巻ける命全ては次の夏  猫正宗

 また、素材がうねり踊るように配置し、熱帯の色を大胆に散りばめるという奔放さに、その特徴があると称される驚異的なパフォーマンス。

「節気慈風」
海南風生死も時も吹きだまり  猫正宗

他にも比較的大きな作品が並ぶ。

「星の叢花」
夏星の鼓動が刺さる海にいた  チャンヒ
「嗚呼」
あーあーとあーあーと見る夜の花  遊人
「鬼の弁当箱」
花好きの鬼と並んでお弁当  阿昼

 そうかと思えば、意表を突くような小さな作品に思わずほくそえむ。あらゆる生き物に対する作家の愛しみが、たまらなくほっとさせてくれる。

「こんにちわ」
春になれば山羊が顔出す小窓かな  阿昼
「みやらび浜千鳥」
みやらびの琉球絣百合匂う  遊人
「深遠響空」
白南風や精霊ハープかき鳴らす  マーペー

 そのほかにも、作者の人の暮らしや自然に対する祈りを感じる作品が並ぶ。

「首里城」
椰子の木首里城を扇ぎくり返す命  日暮屋
「熱い一日」
西日落つほっと一息つくシーサー  猫正宗

「合唱獅子」
シーサーのだみ声の唄島の月  阿昼
肩寄せあい長閑南洋の獅子ら  猫正宗
「月の路」
うりずんの森へぐにゃりと月の路  マーペー

 今回の作品展のために、愛媛県を題材にした新作が挨拶の如く多くあり、中でも目をひかれたのは、ほぼ真四角のこの大作。

「伊豫之国愛比売」
極暑の太陽卵を産みおとす  恋衣

 急ぎ足でのひと通りの鑑賞後、アーティスト トークがはじまり、作品への熱い想いが伝わってくる。ヒトは、野生という自己責任から免れている以上、自然界すべての生物に謙虚でなくてはならない、義理や恥を覚え、社会の維持のための義務を果たしてこそ、はじめてニンゲンは、自然界の生物と同等であるという、彼の持論、思想が込められていることに、あらためて気付かされた。

海人の荒ぶる刃先夏嵐  ひかる
真夏の黒はまばゆい海の色  チャンヒ


「ストレリチアの根方」1993年 ボクネン美術館所蔵
根方より湧き出づる魂青嵐  ひかる

「伊豫乃国愛比売」2017年 ボクネン美術館所蔵
伊豫の女神に惑い夏みかんかおっぱいか  日暮屋

「大礁円環」1996年 ボクネン美術館所蔵
はじまりもおわりも泳ぎだす地球  チャンヒ



日暮屋又郎
現代俳句協会会員
蕎麦をこよなく愛する俳人。



次回吟行会
愛媛県美術館「「ウェールズ国立美術館所蔵 ターナーからモネへ」吟行会
6月10日(土) 朝10時現地集合
参加費無料(入館料は別途)
申込締切 6月8日(木)
『100年俳句計画』編集室までお申し込み下さい。TEL 089-906-0694


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2017年度 第一期 第二回


名残の春
大塚迷路

鳥帰る辞書を野原に戻しては
したたかに木の芽太って名は知らん
蛇穴を出て鱗の擦過音
定年や春のマスクに口と舌
朧夜へ水がコップを揺らしゆく
いつも見ている木が桜となる日
輪郭の桜色なる花の影
老桜の梢より猫降りて来る
直線は円と交わり花の雨
春愁の水を囲んでいる両手
行春と君には名前あるからね
次に出す手足じたばた蛙の子

噂にたがわないマルコボ7大特典であった。
いっぺんに三つの特典を戴いたので残り四つである。こんな計算は得意である。
おっと、マルサに嗅ぎつけられそうなので真相は明かさない。


機嫌
平山南骨

日曜の朝の機嫌やつばくらめ
花の虻昼酒に日の猛々し
春の雷えびせん蝦のにほひせり
湯あがりのやうな町並樟落葉
沈丁花絵を塗る人と眠る人
馬刀貝の潮の噴きやう此やこの
葱坊主浦曲に寺の寄添へる
青空と寝間の湿りと春の風邪
山葵田の有刺鉄線朽ちてをり
仕出屋の車の凹み暮れかぬる
散る桜勅語は漢語響きけり
しやぼん玉あたしパヨクで反日で

1968年生まれ。2005年より作句開始。「鷹」同人。


ショパンの指
井上さち

春光や見事なる老犬の便
初音と記す園芸家四ケ年日誌
懐かしき痛みよ末黒野の月よ
改植や木灰降る降る野馬の背に
白バター焦がさぬように桜時
ベティー ジェーンへ桃の節句の音楽会
麗かや自分で上がる手術台
本五冊みんな読みかけ蝶の昼
ふいに竹暴れだしたる薪能
花薊耳ちりちりと更年期
二十四分の五拍子飛花落花
春の闇ショパンの指の石膏像

「いつき組」組員、「街」同人。
季語の宝庫、日土に暮らす。


磁力
門田なぎさ

眼底に沈めるものとして椿
水際をかすめゆく風春の雷
おかっぱの頃の余白や桜貝
水菜切る知性のかけらくらいある
半島の道を網羅し蒲公英は
海揺るるほどふらここを漕ぎにけり
昼深き亜細亜の真中花の雨
一隻の加わる港濃山吹
春星に磁力手柄のなき日にも
お花見へ夕べの雨を踏みながら
振舞いの粥そのままに甘茶受く
流木に飛びつく波や春惜しむ

先日、家族で何年かぶりにお花見に行きました。サービス業の家族とはいつもお休みが合わないのですが、親戚の子供たちも一緒に賑やかな一日を過ごしました。


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読者投稿による3ヶ月連載作品集

新 100年の旗手


(2017年4月号 〜 2017年6月号 2/3回目)



涼野海音

街灯のごとき莨火修司の忌 
誰も見てゐず緑蔭のギタリスト
芍薬を剪る音乱れなかりけり
火の中の毛虫に絡みたる毛虫
白靴や時計台まで道ひとつ
その頃の太宰のごとく端居かな
の穴のぞく眼鏡を拭きにけり
拾ひたる空楽譜よりまぶし
振り向けばモナリザの眼や夏期講座
「異邦人」読む風死せる突堤に

1981年香川県生まれ。「火星」 「晨」同人。高松 木の芽句会幹事。句会前にウドンを食べてエネルギーを充電してます。


集結せよ
くらげを

白シャツのピッツァつて言ひさうな奴
切り方をもつとも悩むパイナップル
午睡醒め迷つたままや肉桂の香
筒鳥の遠さおほよそ前世かな
風薫る山頂摩耶へ集結せよ
包帯をほどく羞らひアマリリス
ひらがなの人をうたがへみどりの日
投げさうに食ふ兄弟や柏餅
誤配され鱧ものすごき牙剥けり
押鮨のくれなゐ淡しさびしもよ

ふなむしーずの摩耶山担当。好きなきのこはタマゴタケ。何でもひっくり返します。


2017年 第2期連載者募集中
締切2017年5月15日(月)

 応募内容 2017年7月号に掲載できるタイトル付の10句
 応募先  Eメール magazine@marukobo.com
  件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
(郵送またはFAXでも受け付けております。詳しくは編集室までお問い合わせ下さい。)


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mhm通信



第74回

文 佐川 幸


春の松山市民劇場まつり

 3月20日春分の日に「春の松山市民劇場まつり」が、ひめぎんホール別館にて開催されました。メインイベントは句会ライブ♪
 ということで、mhmに協力依頼がなされ、若狹会長、タケニーさん、キムさんが参加されました。
 11時半からライブ第一弾。若狹会長が愛媛の名産“みかん”を題材にして、句の作り方を説明しました。開始早々で20名余りの会場はエンジンがかからずシーン……皆さん真剣に聞いて下さっていたがゆえの静寂だったのですが、若狹会長いわく、吉本の若手芸人がスベったような気持ちを味わったそうです。
 その後、2時間ほどの投句タイムの間もお楽しみはいっぱい。徐々に増えていく来場者の方たちは、投句用紙を片手に、市民劇場の例会(演劇公演)の紹介トークやチェロアンサンブルのミニコンサートを聴いたり、歌声喫茶風に唄ったり、例会ポスターの展示やプチフリーマーケットを楽しんで、屋台もどきのフランクフルトやおにぎり、カップワインなどに舌鼓を打っていました。もちろんmhmのメンバーも句づくりのアドバイスをしながら楽しんでいました。
 投句は、滑り出しの心配をよそに次々と寄せられ、40句余り集まりました。8歳の小学生から80代まで幅広い年代の方が、投句してくれました。最終6句を選び、いよいよライブ第二弾へ。
 俳句を嗜む方はいるものの、句会ライブにはなじみのない方たちが多かったようで、個々の句についてなかなか手が挙がりません。それでも、こちらから当てるとしっかり言ってくれます。皆さんのお話を聞くと、選ぶ句が変わってくるのは句会ライブではおなじみのことですが、初めて参加する方はそれも面白さの一つだったようです。

最優秀句
土筆摘む摘む少年の日にもどるまで  すみれ草

次点句
愛してるとはいわぬいぬふぐり  きどしの

 お二方へは、キムさんの絵が贈られました。40句の中の2句つまり20分の1の確率でキムさんの絵をゲット!
 ラッキーな方たちでした。句の背景についてのお話とともに、市民劇場まつりにも句会ライブにも参加して本当に良かった!という感想をもらいました。
 俳句の面白さ、句会ライブの楽しさを知ってもらえたという実感を得た、春の日の穏やかなひと時でした。


 mhmでは松山市内外問わず会員を募集中です。原則、毎月最終金曜日19時からマルコボ.コムにて定例会を行います。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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新 100年への軌跡


2017年度 第一期
第二回



狂詩曲
紗蘭

来る夏のスフォルツァンドよ狂詩曲
春ショールの女みんなが降りる駅
クロワッサンの空虚ほほばる遅日さへ
草笛や生後五日の介助犬
アルバイト急募明日には散る桜
聖堂の窓へ春愁めく斜光
入団の為の五線譜夏めいて
片蔭の明るき方へベビーカー
熟れかけの西瓜一塊よこたはる
初夏のバルサミコ酢を孕む瓶
薫風を盾に戦ふ古本屋
ホッチキスが武器なら孤児が四葩なら
灼くる日のヒエログリフの鳥の目よ
削氷やなはばりといふ子供部屋
五月かのペルー政府へ嘆願書

紗蘭(さらん)
 1998年生まれ。小3より俳句を始める。第4回句集を作ろう!コンテスト最優秀賞。第5回写真俳句コンテスト課題句部門最優秀賞。2014年に第一句集「静止画の街」出版。2017年より豪メルボルン大学にて建築を専攻。


どろりとした
岡田朋之

ふらここの鎖錆びた音がする
風光る場所に二人で待ち合わせ
考えもないまま春炬燵に潜る
桜漬けつつく誤魔化してばかり
意味のない二択を迫る初雲雀
土恋し薄い布団に骨かたく
口蓋を舐める男に春一番
内臓に春泥注ぐように夜
底にどろりとした砂糖春うらら
昨夜の目はうつろい北窓開く
自己保身ばかりに長けて落し角
藍微塵指跡残らぬほど握る
種浸すとても素敵な嘘となる
それ以上言えば朧月を吹かす
かざぐるまひとりぼっちで音鳴らす

岡田朋之(おかだ ともゆき)
 1992年生まれ。学生俳句団体ふらここ所属。



子供部屋と春炬燵
十亀わら

削氷やなはばりといふ子供部屋  紗蘭

 初めて自分の部屋が出来た時のくすぐったさから始まって、「子供部屋」には皆それぞれの子供時代が詰まっている。自身の縄張りを持つことで自分を保った時期も含めて。さりさりと削られた氷の透明感や舌に感じるひんやりとしたものが、思春期の姿に重なって見える。季語の選び方が巧み。
 一般的に十五句程を並べる時は、季節の移ろいの順に並べることが多いように思う。読者としてはその句の季節ごと世界に浸る余韻が欲しいので、少し句を並び替えてみると良さそうに感じた。

入団の為の五線譜夏めいて  紗蘭

 印象的だった一句。夏めくというのは、こういう感覚のことだったのかと思わせる力がある。

考えもないまま春炬燵に潜る  岡田朋之

 人間はこうしようとして行動する時ばかりではない。考えもないまま春炬燵に潜ることもある。しかし、そもそも考えを持って春炬燵に潜ることってそんなに多いだろうか。「そりゃそうだよね」と思わせつつ納得させるものとして「春炬燵」の登場が良かった。

桜漬けつつく誤魔化してばかり  岡田朋之

 何かをつついて誤魔化すというのは可愛らしい仕草ではあるが、類想がありそう。しかしながら、「桜漬け」をつついて誤魔化「してばかり」というところに、オリジナリティーを感じた。そういう時間の中で自分と向き合ううちに、桜漬けはますます鮮やかになるというからくり。

十亀わら(そがめ わら)
 1978年愛媛生まれ、千葉在住。いつき組。2000年『詩学』新人推薦。2005年俳句界賞受賞。


反抗と屈折
平山南骨

 「狂詩曲」は、なんだか攻撃的 反抗的といった味わいで、兎に角ちから強さだけは伝わってくる。

片蔭の明るき方へベビーカー  紗蘭
熟れかけの西瓜一塊よこたはる  紗蘭

 季語のずらし方が素直じゃない。でも、不思議に直球のような威力を感じる。

草笛や生後五日の介助犬  紗蘭

 どう突っ込まれようと言い張るのだ。

初夏のバルサミコ酢を孕む瓶  紗蘭

 あれを「孕む」と見立てるのもかなり強引。

 「どろりとした」は相当屈折している。失恋でもしましたか。

風光る場所に二人で待ち合わせ  岡田朋之

 二人で幸せを待っていたのにみたいな。

考えもないまま春炬燵に潜る  岡田朋之

 それが不幸の始まりだったのかも。

桜漬けつつく誤魔化してばかり  岡田朋之
自己保身ばかりに長けて落し角  岡田朋之

 もう、あまり自分を責めない方が良いよ。

平山南骨(ひらやま なんこつ)
 1968年生まれ。2005年より作句開始。「鷹」同人。


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳 朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.46

No snow, no flower bud
Neighbor's ugly garden
Maybe have a drink

隣の庭醜し雪無し蕾無し

(直訳)
雪無く 蕾無く
醜い隣の庭
一杯飲みに行くか


 When people say "You should----, I ignore the rest of the sentence, even if they are right. I say it often enough to myself, especially as I awaken from a long winter.

 「あなたがやるべきなのは……」と人に言われる度に、僕は後に続く文句を無視する、例え彼らが正しかろうとも。僕は僕自身に十分そう言って聞かせてるから、特に長い冬から目覚めたような時にはね。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文 白方雅博(俳号 蛇頭)

第74話
ブルー サンズ
 チコ ハミルトン


マレットの幻想草原の朧  蛇頭

 チコ ハミルトンのマレット捌きが醸し出す幻想にインスパイアされ詠まれたであろう句が全53句中16句。内9句に太鼓を叩く枹=「マレット」が登場した。その9句中3番人気がこの句。マルチリード奏者のバディ コレットが作曲し、フルートで奏でる「ブルー サンズ」が評判となり、我が国では同曲名がそのままアルバム タイトルとなった。この1955年録音のパシフィック ジャズ盤が今回のテーマであるが、何句かは1958年に開催された第5回ニューポート ジャズ フェスティバルを記録した米国のドキュメンタリー映画「真夏の夜のジャズ」におけるチコ ハミルトン カルテットの演奏、分けてもエリック・ドルフィーのフルートに誘発されて詠まれた。

マレットが原始の星の南風となる  チャンヒ

 マレット句第2位がこの句。

マレットにモスラ孵化する朧かな  夜市

 「原始の星もモスラにはやられちゃう」とチャンヒさんが、あっさり敗北宣言したマレットのみならず全体のトップ句。しかもこの句には誠に昭和チックな後日談がある。
 蕪榴子さんの「孵化は卵がかえることで、確かモスラはさなぎからじゃなかったかな。なので羽化のほうが正しいのでは」というメールでのご指摘。これに夜市さんが「私もどっちかなと思いネットで確認しましたよ。あの句はイースター島で先住民たちが歌ったり踊ったりしてモスラの卵が孵る場面をイメージしているのです。蕪榴子さんが言っているのはモスラが東京タワーによじ登って蛾の成虫に羽化するシーンじゃないかなあ。ということで作者としてはイースター島でモスラが卵から孵化するシーンにブルー サンズの曲調を重ね作ったものです。アノ場面をドキドキしながら観ていた(ザ ピーナツの衣装が艶っぽかった)世代の人ならすぐ納得してくれると思うのですが」と返信してくれた。

チェロといふ箱に涼しき青き砂  恋衣

 ウエストコースト・ジャズを代表するドラマー、そしてバンドリーダーだったチコ・ハミルトン。中でもフレッド カッツのチェロとジム ホールのギター、カーソン スミスのベース、そしてチコのドラムスにバディ コレットの木管という変則クインテット編成は、室内音楽的寛ぎとジャズの即興性を融合してユニークさと楽しさにおいて群を抜いていた。恋衣さんの句は、そんなチコのグループの要素を17音にぎゅっと詰め込んでアルバム名まで示唆してくれた。

春宵の弦に震へてゐる海馬  蓮睡

 「ブルー サンズ」の1曲目、バディ・コレットのオリジナル「ナイス デイ」。2曲目、リチャード・ロジャースの「マイ ファニー ヴァレンタイン」を聴きながら味わえばニンマリできそうな句。

陽炎やチコのリズムと漣と  こもれび

 今回のサブテーマ「チコ ハミルトン トリオ」にもこの句のようなチコのサウンドが息づいている。


Today's Turntable
『ブルー サンズ』1955年/pacific jazz
『チコ ハミルトン トリオ』1953〜56年/pacific jazz



「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は月曜日の21時〜22時。

 次回のJAZZ句会は、5月21日(日)13時より。テーマはベースのチャールズ ミンガス。アルバムは「直立猿人」をメインとします。参加希望の方は、本誌の句会カレンダーを参照してください。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU』vol.1〜vol.3(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ


第七十四話

文 俳句 らくさぶろう


はてなの茶碗  
 あの鑑定の番組に出してみたい

 油の行商をしている男が、清水観音の境内にある茶店で一杯お茶を飲んでいたところ、有名な男性がひとつの茶碗に目を止めて不思議そうに首をかしげた。
 その男性とは、京都に店を構える茶道具商 金兵衛。通称「茶金」と呼ばれる京都一の目利きである。
 油屋はその様子を見ていて、この茶碗を譲ってくれと茶店の主に願い出るが、主もちゃんとその様子を見ていたようで、「あの茶金さんが首をかしげるような立派なもの、譲るわけにはいきまへん」と断る。
 油屋、なけなしの三両を出すと言っても主は首をたてにふらないので、ダメなら壊してやると脅し、高く売れたら半分を主にやるという約束で強引に自分のものにしてしまった。
 翌日、身なりを整え、茶金の店に乗りこんで、この茶碗をご主人に鑑定してもらいたいと願い出たものの、番頭は「こんなもんはただの清水焼で、一つ三文のもん。千両なんかで買うアホはおりません」と言うので油屋は頭に来て店頭で騒ぎ出す。
 それをききつけた茶金、店へ出て来て話を聞いてみると、ようやく思い出した。「あれは、キズも無いのに茶がポタリと漏れるのでおかしいと思って首をかしげた」と話す。
 なけなしの三両がムダになった油屋に対し、「私の名前を買うてくださったようなもんや」と言い、茶金は三両で買ってやった。
 しかしこの話が広まり、近衛公が見たいとのおおせ。実際に見てみると短冊に一筆書いたため価値が付き、またその噂が宮中にまで伝わり、本当に千両の値が付いてしまった。
 茶金はなんとか油屋を探しだし、二十五両を渡してワケを話す。
 油屋、たいそう喜んで帰ったが後日、「十万八千両のもうけでっせ!」と何人もひきつれてやって来た。
「十万八千両?何がや?」
「今度は、大きな水がめの漏るやつ見つけて来ました。」

 上方落語の中でも大ネタのひとつで、故 桂米朝師の十八番でした。
 上品な茶金の風格が米朝師の端正なお顔立ちと重なり、本当にこの人は目利きが出来るのでは?と思わせるほどでした。
 原作は十返舎一九の「世中貧福論」という滑稽本の中の一節といわれます。
 ところで、あの鑑定の番組で、世界に三点しかないと言われる「曜変天目茶碗」が出てきたとされ、高額が示されましたが、後日研究家や専門家がその鑑定に異を唱え、大学の調査チームまで巻き込んだ分析が行われたりして大騒ぎとなりました。
 結局、現在でもあの茶碗が本物なのか偽物なのか正式な判定はされていません。
 茶金さんに見せたいと思うのは僕だけではないはずです。茶金さん、首をかしげるかしら?
 ちなみに、内子座から出張鑑定団の放送があるときに、お宝募集で僕も一品応募してみました。
 柳家金語楼の書(かけ軸)です。ある方にプレゼントしてもらったのですが……残念ながら不採用でした。
 骨とう品の趣味はそれほど深くはありませんが、茶器や酒器を少し集めております。
 たまーに出して首をかしげながら、「はてな」と言ってる変なヤツです。

最近は正座せんねと新茶くむ


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ホンヤクサイホンヤク



 俳句初心者、翻田訳蔵がネット上の翻訳ソフトを使って名句を翻訳、再翻訳し、そこからインスパイアされた(パクッた)句を発表していこうという馬鹿馬鹿しくも実験的で図々しいコラムです。


今回の俳句
竹の子や児の歯ぐきの美しき  服部嵐雪 


 さっそく、Google翻訳(日→英)から

Beautiful gums of bamboo shoots and children

 再翻訳(英→日)

美しいタケノコと子供たちのガム。

 「歯ぐき」は「gums」なんですね。で、そのまま「ガム」と再翻訳してしまったようです。英文を見ると「美しい」は「ガム」に係っています。「美しい」=「タケノコと子供たちのガム」ということでしょうか。

 続いて、エキサイト翻訳(日→英)

Gums of a bamboo shoot unpleasant child are beautiful.

 再翻訳(英→日)

たけのこ不愉快子供のゴムは美しい。

 どうやら、「竹の子や」の「や」を「嫌」と翻訳してしまったようです。そして、こちらは「歯ぐき」を「ゴム」に翻訳しています。そして英文をよく見ると「たけのこ不愉快子供」がひとつの名詞のようです。竹の子が嫌いな子供のゴムは美しいということでしょうか。意味は不明ですが。

 最後に、Yahoo!翻訳(日→英)

I spread the beauty of the gums of a bamboo shoot and the child

 では、再翻訳(英→日)

私は、竹の子と子供の歯茎の美しさを広げました

 こちらはどうやら「美しき」の「しき」を「敷く」という意味で捉えて「広げる」と再翻訳したようです。竹の子と子供の歯ぐきの美しさを世界に広めたようですね。

 それでは、この3つを受けて一句

ゴムみたいな歯ごたえのする竹の子煮  翻田訳蔵


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100年投句計画

選者三名による 雑詠俳句計画



先選者 関悦史

 宣伝です。私の第二句集『花咲く機械状独身者たちの活造り』(港の人、税込二一六〇円)と、評論集『俳句という他界』(邑書林、税込一九四四円)がようやく両方発売になりました。句集の方は震災後の社会詠、BL、SF等雑多な句をテーマごとに大別して計一四〇二句を収録。評論集は七、八冊分くらい溜まっていた原稿から俳句概論と作家論を中心にまとめたものです。ようやく私の手を離れてくれた。ご購読いただければ幸いです。




蛇穴を出なさい風呂が沸きました  もね
 本欄ではやや珍しい口語調によるアニミズム的な句で、口調だけみれば、最近の柿本多映さんの句のような雰囲気もあります。蛇に対する命令形で有無を言わせず家族 身内のように扱ってしまい、しかも風呂に入れようとしてしまう意外性と無茶苦茶ぶりに意外と嫌味がなく、まあこういう家庭をもつ人もどこかにいるのかもしれないなとうっかり思わされて、ありえない愉快な世界を見せてくれています。




変な石拾ふ建国記念の日  くらげを
 「建国記念の日」は礼賛一色でもしらけるし、露骨に批判的だったり、斜に見たもの句にすると底が浅くなるのですが、「変な石拾ふ」はとぼけた違和感を「建国」の土地的実感へつなげている点、うまいやり方。

風船はさびしいといひ午後三時  凡鑽
 「さびしい」と言っているのが人間なのか、風船自身なのか判然としない点が句の妙味。「さびしい」から「午後三時」への飛び方も、孤独感と自足が同時にあらわれていて、その中でいつまでも遊ばせてくれる句。

出発の部屋はがらんと朝桜  ゆりかもめ
 こちらも「がらんと」の寂しさと出発の朝の前向きな勢いが渾然となった句で、入り組んだ感情をすぱっとあらわした上で、それを輝かしく受け止めてくれる「朝桜」がからっぽの部屋に光を投げかけています。

マタニティーウェアぴちりと伸ぶや春  松田夜市
 妊娠で膨らんだお腹の充実ぶりを「マタニティーウェアぴちりと伸ぶや」と服の張りつめ方と触覚であらわして辺りが句自体にも張りや艶を与えています。それが最後の「春」に包まれているのでなおのこと。

売物件のガラスに映る椿かな  一走人
 廃墟や空家の類は陳腐になりがちなので要注意なのですが、この句では「椿」と「ガラス」の照らし合いに冷やかな鮮烈さがあり、「売物件」はその小奇麗な結晶化をうまく俗のほうへ流して寛がせている格好。




屋根に火の届くと見ゆるお水取  健次郎
ビルは森矩形の空を鳥帰る  風さら紗
自然死か変死か雛の倒れたる  藍人
春霞大東京のガスタンク  誉茂子
ほほゑみも啼くこゑもなく蜂はたらく  緑の手
花の夜を回送バスのほのあかり  越智空子
夏近し取り忘れたる整理券  ひでやん
麗かや丸顔丸く散髪す  ミセスコナン
鶯の初音や猫が足元に  未貫
湯の町の道はばからず猫の恋  鯉城

関悦史(せき えつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。


先選者 桜井教人

 朝食はいつもご飯だったのだが、このところ食パンの割合が急に増えた。理由は美味しいバターに出会ったからだ。『俳句と暮らす』(小川軽舟著)を読んで、カルピスバターを買ってみた。これが中々のものなのだ。ヘルシオで食パンを焼き、焼き上がったところでバターを載せてふたをする。バターが半分くらい溶けたところで取り出し、まんべんなくパンに塗って食す。経費的にパンとバターで五十円くらいだろうが、この上ない幸せになれる。軽舟氏にならって今はカルピスバターを使ったオムレツづくりに挑戦している。




クローバーあなたは三で割れますか  土井探花
 問われてみれば「三」は不思議な数字だ。二や四に分けることは比較的たやすいが、三は意外と難しいことに気付く。どこにでも生えているクローバー。しかしその三つ葉のバランスは神から与えられたかのごとき比率なのだ。三で割れる人とは、理屈ではなく、単に当たり前の幸せに気づくことができる人なのではないか。ちなみに某テレビ番組で四つ葉のクローバーを直ぐに見つける少女を見た。クローバーが自分に話しかけてくれるのだそうだ。大きくなった今もあの少女はクローバーの声を聞くことができるのだろうか。




春一番おでこの傷がまだ痛い  葉音
 春になって遊びたくてたまらないのだろう。しかし、いざ遊ぼうとするとおでこの傷が痛むのだ。多分春を待ち切れずに、いたずらをしてしまった報いなのだろう。春二番までには治るはず。あと少しの辛抱だ。

本日は五月の風のスウプです  暮井戸
 旧かなでも本来なら「スープ」と書くべきところだが、この句はなぜか「スウプ」の方が断然いい気がする。爽やかな透明感があって尚且つ少しコクがあるのだろう。このメニューを黒板に書いて店の前に出したら、きっと立ち止まってしまう。
売物件のガラスに映る椿かな  一走人
 椿を見たのは通りがかりの人だろうか、物件を見に来た人だろうか。人が住まなくなった瞬間に家屋は急に表情を変える。でも椿は人に関係なくその使命を全うする。もし来年も同じような状況で春を迎えようとも。

かるく背をおされ四月の来たりけり  台所のキフジン
 日本人にとって四月は今も特別な月だ。期待と不安の入り混じった何とも言えない感覚を毎年覚える。そう四月になるにはほんの少しの勇気が必要なのだ。誰かに軽く背を押してもらいたいのだ。ただ私個人としては、少し強めに背中を押してもらいたい。

鶯や光の中の沈下橋  あおい
 本来なら水に沈むための沈下橋だが、作者は光の中に沈んでいると感じたのだ。それは季語「鶯」の働きによるものだろう。鶯の鳴き声の波動が光となり、沈下橋を包み込む。清流の青、空の青も鮮やか。




変な石拾ふ建国記念の日  くらげを
十段の雛壇裏の暗きこと  dolce@地味ーず
胸奥にちりちり届く花薊  幸
風に添ひ風に揺すられ竹の秋  南亭骨太
蛇穴を出なさい風呂が沸きました  もね
それぞれの凧に高さの違う空  のり茶づけ
追い風や卒業の日の滑走路  うに子
春潮に甘く錆びたる鴎かな  越智空子
いきなりのミモザのやけに眩しくて  青柘榴
鴬や訛りの抜けぬのど仏  鯉城

桜井教人(さくらい きょうと)
1958年愛媛県生まれ。愛媛県公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回 29回俳壇賞候補。


後選者 阪西敦子

 六年前から住んでいるマンションは入口両側に沈丁花がある。向かいは縫製の工房で、窓の下には梔子、外階段脇は金木犀、隣り合う小学校の運動場のフェンスはジャスミン、それに続く給食室。角の紅白の梅の下をくぐってハンバーガー屋の角へ。薔薇の垣根の先の小さな稲荷の脇には名店「大はし」の裏口があって、時々仕入れ帰りの店主三代に会う。突き当りは旧日光街道 宿場町通り、目の前はミシュラン一つ星を持つ焼鳥屋、隣は観光案内所。飾り窓の中にはいつからか見慣れた写真が飾られている。千住やっちゃばの俳人 為成菖蒲園が師であった、高濱虚子。ども、先生、と写真を見て駅へ向かう。この通勤路を辿るのもあと一か月。


特選

風の渦旅だちのたんぽぽゆうら  かのん
 あ、風の渦、と気づく。大きくなればそれは脅威となるが、今回はそういう目的ではないみたい、「たんぽぽ」を「ゆうら」とするばかり。「旅だち」の意図は綿毛かもしれないが、誰かの旅立ちを照らす黄色でもよい。

居酒屋の魚撥ねてをり夏のれん  たあさん
 居酒屋の魚は鑑賞用ではない、一時鑑賞されるけれど食べられるもの。幼い頃、その残酷さに震え、魚は水槽の外が見えるのかを何度も尋ねた。そう、外が見たかったのかもしれない、水槽から跳ね上がった魚の視界を占めたのは、鮮やかな藍。

春の日の飛ばない鳥が濠の中  遊人
 「飛ばない鳥」は飛べないとは限らないけれど、限りなくもう飛べない気がする鳥たち。それもまたよいのではないかと思わせる長閑な日に、しかしやはり囲われているには違いない。いつか来る終りはもうすこし先のこと。


並選

風光る朝の峰から望む雲  佐東亜阿介
花曇胸部CT付き添ふ日  24516
男の子居心地わるき雛祭り  芳香
二月堂火の粉に絡むなごり雪  健次郎
週末をほほけて今日の余寒かな  くらげを
桃咲いて甲斐の盆地を風わたる  柝の音
蚕豆を礼を尽くして仏壇へ  レモングラス
春愁の身に覚え無き腕の痣  波野
エアメール束ねて梅の香の窓辺  桂奈
春泥と戯れる子の悔い少し  ヤッチー
肩甲骨開いて閉じて春の蝶  おせろ
ソーダ水母に幸せだった昔  久我恒子
煙突が春の霞を吐いており  柊月子
傾いて走る幼や鬱金香  てん点
仄めかす秘めごと一つ猫の恋  さより
永き日やしづかに寄する川の砂  もね
愛の日や涙に似てるキッスチョコ  小市
落雁の一服甘し初桜  小雪
春風や産着に残る乳のあと  ぴいす
鳴き声を真似て子猫に睨まれる  和音
新社員首のサイズを聞かれけり  うに子
確と実のなること問ふや苗木市  山崎ぐずみ
潮の香も春の匂ひと思ひけり  喜多輝女
野馬へループシュートの届かない  内藤羊皐
春塵にのせる校歌の覚えたて  台所のキフジン
虎杖のポコンポコンと折りにけり  カシオペア
縁側へどうぞと座る桜餅  松尾千波矢
囀りや光の中にある余韻  西条の針屋さん
初蝶は光りの鈴を鳴らし来る  彩楓
一筆で書く☆春深し  ひでやん
二冊づつ選ぶ絵本や若葉雨  どかてい
手に入れろマントと石と杖と春  まこち
五月雨やMRI室のジャズ  あるきしちはる
花ミモザパジャマのままで終えた日は  マカロン星人
鋤鍬の今朝のかろきや初桜  風海桐
青饅や塗椀の赤箸の赤  人日子
舌出して霙の哀れ飲みこみぬ  中川弘子
春みかん中でも求む黄金柑  エノコロちゃん
春風邪に倦みて疲れてひげをそる  まんぷく
春風の巡る体は蘇る  アンリルカ
人波に続きて歩くあたたかし  遊人
緑内症忘れぬ雪色家族のにおい  みちこ
おみなごの血潮さす頬さくら散る  哲白

阪西敦子(さかにし あつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。


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100年投句計画

へたうま仙人



 花は散ってしもうたが、若葉青葉がまぶしい季節到来ぢゃ。海も山も街も里もキラキラぢゃ。今月もキラリ光る句から光りすぎてクラクラする句まで揃いにそろったぞ。どうぞ限界まで楽しんでくだされ。


イランより来ぬ訪問者ガムを噛む  ケンケン
大阪のRUN 20キロ自己ベスト
 イランの人がガムを噛んでいるのか、はたまた中七で完全に切れて、作者がガムを噛んでいるのか、この中途半端な二 五段切れの句は「ぬ」の使い方と共に謎が謎を呼ぶぞ。民間平和のために、いろいろな国の方々との交流をお願いしますぞ。世界記録も大事かも知れんが、自己を超える記録を目指すという清らかな精神が平和な世界を造るのぢゃ。世界一だけを目指しても良い俳句は作れんのと同じぢゃ。無季でも何でも自己ベストを目指すという崇高な心さえあれば、いつかは世界一ぢゃ。


教会でハレルヤ叫びうん!と言う  KIYOAKI FILM
気張りつつアーメン祈りぐいっ喉
 神と言葉による心のキャッチボールをしているようで背筋が伸びるのう。叫んだ者の迫力に負けて、神がうっかり「うん」と返事をしたみたいでくすっとしたぞ。気張りつつする祈りはよっぽどすごい祈りなんぢゃろうな。神も「ほなこと言われてもできへんわ〜」とビビッてしまい生唾ごっくんぢゃ。変な奴に祈られたら神も仏も形無しぢゃが、祈るしかない庶民の気持ちをあの人もこの人も少しはわかって欲しいものぢゃのう。


赤箱のチョコを持たせて大試験  出楽久眞
疑問符の束なる蕨揚げてをり
 赤箱のチョコといえばあれとあれかのう。本人も大変ぢゃが持たせる保護者も大変ぢゃ。試験を受けた全員に春が来ておることを望むぞ。蕨の先々を見ると、なるほど小さな疑問符がもたげておる。薇は大きな疑問がひとつぢゃが、蕨は些細な疑問をいっぱい持っておるかのようぢゃのう。山里の風景と香りが溢れておるキッチンに御呼ばれにあずかりたくなったぞ。


地虫出づ体内にまだピロリ菌  小木さん
ピロリ菌除菌の薬春愁ひ 
 可愛い名前のくせしてピロリ菌は本当に嫌な奴ぢゃ。地虫のように時期が来たら這い出してくれればよいが、おっとどっこいぢゃのう。顔を出す地虫と、いつまでも居座っているピロリ菌の対比が切ないのう。しかし、ピロリ菌のせいで体も心も萎えて大変ですのう。副作用を考えると薬も飲みたくないし、かといって飲まんといけんし、憂鬱ですのう。「春愁ひ」のラインで心のバランスをどうぞ保っておいて下され。


千里飛ぶ悟空隠すや霾ぐもり  元旦
春月や築地豊洲の隔てなく
 霾ぐもりと言えば風流ぢゃが、実際はどうかのう。悟空を隠すほどの霾の成分をぜひ調べたいものぢゃ。相当な濃度と見たぞ。ワシも最近は杖に乗って移動した後は咳込んで大変ぢゃ。仙人の世界も悟空の世界も楽ではないぞ。そうぢゃ、春月は分け隔てなくその湿った淡い光を皆に降り注がせておる。築地にも豊洲にも列島にも半島にも以下同文ぢゃ。この難問を解決すべく何かよい方法はないものかのう? 人間には知恵も勇気もあるはずなんぢゃがのう?


吉兆か未明に赤し春の月  坊太郎
中たれども懲りぬ男よ菜種河豚
 「赤し」と「赤き」との効果の違いをゆっくりと味わいたい句ぢゃのう。その違いは各々が考えるとして、妖気に満ちた赤い春の月が、誰も見ていないであろう未明の空にある図は考えるだけでぞくっとして、たまりませんのう。「懲りぬ」ということは命に別状がなかったということで、まことに目出度いぞ。しかし、馬耳東風のおめでたい人間には、はらはら、時にげんなりですのう。お気持ち察しますぞ。ところで、菜種時の河豚は美味なんですかのう?


廃校に寄り添うおぼろ月の影  みやこまる
春風や忘己利他とか言っちゃって
 おぼろ月の影とは見事に幻想的ぢゃのう。廃校の校舎には悲喜こもごもの時間が染み込んでいて、それだけでおぼろの中のおぼろぢゃのう。その上に月に寄り添われたりしたら、もう目の前に映像でーーんぢゃ。しばらく頭から離れそうもないぞ。何にこりたのかのう? あんなことかのう? それともこんなことかのう? 「春風」のおかげでそんなに深刻にならず、ペロッと舌を出す程度だったということがわかるぞ。反省はするが後悔はせんのが一番ぢゃ。うんうん。


蒲公英の蒲の部分を吹きとばす  ちろりん
牡丹の芽未来を覆う産毛かな
 蒲の部分を吹き飛ばしたら、公英のあたりは春風邪をひくかも知れませんのう。火事どころではありませんぞ。どちらにせよ蒲の部分は吹き飛ばさずに、長閑な日差しの下で穏やかに吹いてほしいものぢゃ。牡丹はどの花よりも豪華絢爛ぢゃが、芽さえも鮮やかでゴージャスぢゃのう。そんな芽の未来を考えると実に羨ましくなるぞ。産毛にまで約束された未来があるようで実に嫉妬嫉妬ぢゃ。


モンローのスカートばりのシクラメン  藍植生
ピカピカのいちれつにゆくランドセル
 「モンローのスカート」に思わず食い付いた我が身が悲しいぞ。シクラメンの透き通ったビロードのような質感はまさにモンローぢゃ。最近の地下鉄にはあのような風が起きんのがちと寂しいのう。ランドセルが一列にゆけばシュールぢゃが、一年生と一緒なら実に微笑ましいのう。単語だけを見れば季節感は無いが、それが組み合わされることによって季節感むんむんぢゃ。いつまでもキラキラ健やかに伸びやかに大人になって欲しいものぢゃのう。
 おっと、ワシに無いものばかりのうらやましいこんな句は、スカートの裾に縛り付けて、太古からずっとキラキラピカピカ光っている一等星へ光速で追放!

 あらら今月も追放者を出してしもうたが、なあに何も恐れることは無いぞ。夏はもうすぐそこぢゃからのう。梅雨前の一番気持ちの良い五月を体いっぱいで楽しもうぞ。
 ぢゃが、くれぐれも油断召されるなよ。

へたうま仙人 
年齢 卑弥呼がおっぱいを飲んでいた頃、ワシは青春真っ只中ぢゃった。
好きなもの 霞のシャーベット(PM2.5抜き) 嫌いなもの 上手な俳句
将来の夢 大器晩成


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100年投句計画

自由律俳句計画



 久々に「NOと言える日本」という言葉を思い出した。雇用拡大のために強引に米国内生産を目指すトランプ大統領に名指しで迫られた日本企業は、トヨタをはじめどこも歯切れが悪い。そんな中、「直接言われたら米国から撤退する」と断言したのはユニクロの柳井社長だ。米国内で生産して顧客にメリットのあるユニクロ価格を保てないのは中学生でもわかる。業種や置かれた状況が違うとはいえ、はっきりNOという姿勢は共鳴できる。ユニクロ、ちょっと見直した。





ソリストの肩は前後に眉は上下に  妹のりこ
 ソリストとは、独唱する人、独奏する人と辞書にはある。だからオーケストラの例えばバイオリニストもそうだろうしオペラの歌手もそうだろう。いずれにせよ独唱、独奏のあり様を詠んで無理なく納得がいく。いろんな切り取り方があると思うけれど、「肩」と「眉」、その動きを「前後」「上下」と対比させて妙味があります。演奏や舞台を楽しむ目線を離れ、ソリストの動きや表情に観察眼を走らせる……まさに俳人としての目の付けどころが鋭い一句ということになるのでしょうか。




翡翠が動かないので動けない  遊人
 ふつう翡翠といえばうつくしい宝石のこと。しかしここでいう翡翠は、あのカワセミのことだろう。めったにお目にかかれない水辺のカワセミに出会った驚きを表現して上手い。カワセミの美しさなど正面から言葉にしても無理かもしれないし。

銀輪の並ぶサイクルショップの春  喜多輝女
 春を感じる風景を切り取っただけの素直な句ではあるけれど、野山や花といったありきたりの景ではないところに新鮮さがある。「銀輪」「サイクルショップ」という言葉が春に同化してよく効いています。

面白くなくて笑われている  多満
 真面目すぎる人なのか、一生懸命な程おかしい人はいる。そういう人が人を喜ばそうとすれば別の笑いが生まれてくる。気が付かないのは本人だけ……人間の切なさが浮き出てなかなか深い。

錆止めを丁寧に塗る遅日のドック  もね
 ドックとあるからにはかなりの大型船だろう。その大きな船体に丁寧に錆止めを塗っていく行為のなんと矮小なことか。その作業員のなんと小さなことか。そこにゆったりとした春の暮の時の流れが凝縮されているようです。

紫雲英野に寝転べば蕩ける  彩楓
 げんげ畑に寝ころんだ、その感覚を「蕩ける」と表現しているのだが、それをどう捉えるかによって評価が分かれるのかもしれない。蕩けると表現したわりには、漢字が多くて見た感じが、とろけていないのがやや気になる。かなりひらがなにできそうだけど……。




静かにひかりを集めている落ち椿  まんぷく
犬の遠足曲がらず進む  ミセスコナン
山焼や道は空へと澄む  人日子
足裏奪い合う春の波と風と  青柘榴
啓蟄に自販機のビールを探す  内藤羊皐
致死量の愛国心は空に撒く  うに子
春眠を背負って歩く  みやこまる
菜の花の果てに夕陽が沈む  もね
クローゼットの中で礼服が縮んでいる  柝の音
春愁春愁打たれるなら菜の花がよい  小川めぐる


並選

強面の政治家豆まきにやってくる  ケンケン
還暦が近づく雪解けの音がする  佐東亜阿介
入院初日識別の腕輪が重い  藍植生
蕗の薹の苦みが嫌い  芳香
峠越す前振り向く癖がある  健次郎
ふりむかぬ友うずくまる私  幸
振り向けば桜が追ってくる  藍人
女三人辿れば口開け群れる鯉  レモングラス
歩く父子風を食べる牛  KIYOAKI FILM
危険ですので白線の  春一番  凡鑚
たらればにリセットボタン欲し大試験  ヤッチー
神様にヨロシク!Johny be Good  南亭骨太
気は澄み切って人臭くない山  暮井戸
筍の親は木じゃない草でもない  さより
スマホで電車内静か  ゆりかもめ
考えさせる赤い椿  小木さん
確固としてぼた餅  小市
妹に似て来たと言われてシクラメン  一走人
猫飼ってから狂うゴールデンウィーク  のり茶づけ
春をけだるく雨のにほひ  緑の手
餌を喰う寒鯉の肉弾戦  和音
菜の花の零れ黄と鳴く烏  山崎ぐずみ
この指先を見つめ仏生会  元旦
はやくしろもっとしろとは言わねども  台所のキフジン
走り梅雨卒寿の母は赤子となり  カシオペア
白木蓮ハチに注意の札あるバス停  マカロン星人
子の笑ひ野に風遊び鳥うたふ  あおい
まあなんと大名の雛かざり  坊太郎
消しゴムのカスだって彼女のものなら欲しかった  ちろりん
釈然とせぬことばかりそれでも花は咲く  エノコロちゃん
だまつてけふのさくらちる  鯉城


自由律で再挑戦を!

花は根に人は天へと帰り行く  藍植生
亀蚯蚓蓑虫鳴くな我淋し  健次郎
春の夢飲ませ飲まされ針千本  ヤッチー

きむらけんじ
1948年生まれ。第一回放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。


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100年俳句計画

詰め俳句計画



次の(  )の中に共通する夏の季語を入れてください。

小(ち)さき墓集まり(  )かな
屋根に見る(  )も鴨川も


小さき墓集まり春の星かな
屋根に見る春の星も鴨川も
 麻友さん。残念ながら春の季語でした。級外。くらげをさんのぺんぺんぐさも同じく春の季語で級外。掲載号の季節に合わせて季語を募集しておりますので、投稿時の季節とは合わない場合があります。悪しからず。また次回の投稿をお待ちしております。

小さき墓集まり沙羅の花かな
屋根に見る沙羅の花も鴨川も
 幸さん。前後句とも光景としては素晴らしいのですが、字足らずでリズムが悪い。レモングラスさんの蛇の皮、KIYOAKI FILMさんの夏の磯、妹のりこさんの夏の蝶、カシオペアさんの夏の星いずれも五音の季語で字足らず。まとめて6級。ならば六音の季語ならいいかというと……。

小さき墓集まり入道雲かな
屋根に見る入道雲も鴨川も
 佐東亜阿介さん、小市さん、のり茶づけさん。後句はリズムがピタリ。しかし前句のリズムが悪い。「かな」はしみじみとした詠嘆なので極力リズムを整えたい気がする。越智空子さんの夕焼雲、エノコロちゃんの百日紅、マカロン星人さんの宝鐸草も同様。5級。

小さき墓集まり鯉の幟かな
屋根に見る鯉の幟も鴨川も
 藍植生さん。鯉幟でしょう! 無理矢理「の」を挿入してリズムを整えた手口があからさま。季語アレンジに関するルール(本誌2016年8月号に詳しく掲載)を適用し最大の減点にて8級(-3)。ゆりかもめさんの竹の落葉も竹落葉の季語アレンジだが、内容として無理なくまとまっている。4級(-1)。喜多輝女さんは草のいきれ。辞書によればむっとする様な熱気のことを「熱れ」というので日本語として成立しているし、むしろ格調が高くなっているかもしれない。しかしルールはルール。草いきれのアレンジとして捌いて1級(-1)。どこかに竹の落葉や草のいきれで載せている歳時記がありましたらご容赦ください。たあさんの夏の夜明けも季語アレンジとして捌こうと思いましたが、これは夏暁の傍題として記載がありました。前後句とも趣がある。2級。

小さき墓集まり仕掛け花火かな
屋根に見る仕掛け花火も鴨川も
 台所のキフジンさん。前句、さすがに不謹慎か。後句の光景はいい。5級。小木さん、ひでやんさん、河原撫子さんはお花畑。歳時記的には高山植物が咲き乱れる場所を指す季語なので後句、鴨川とは合わないか(高山を流れる鴨川があったらすみません)。前句もあまりそういうところに墓はないかもしれないが、想念の風景として美しい。4級。藍人さん、彩楓さんは五月幟。墓と幟の距離感は微妙。後句は幟を設置したところだろうか。臨場感がある。3級。健次郎さん、れんげ畑さん、ほろよいさん、さよりさん、笑酔さんは祇園祭。前句、祭に対して墓が生きてくるかこれまた微妙。後句はまさに祇園祭を描写した一句になった。2級。

小さき墓集まり卯の花腐しかな
屋根に見る卯の花腐しも鴨川も
 坊太郎さん、ちろりんさん。卯の花を腐すような長雨のことをいう。七音の季語だが字余りはそれほど気にならない。前句、フレーズとよく合っている。が、後句、ずぶ濡れ? 4級。柊月子さんは卯月曇。前後句ともにとらえどころがないが、そこはかとない憂いのようなものを感じる。3級。緑の手さんは木の芽流し。木の芽が芽吹いてくる頃の湿った南風をいう。前句、木の芽の生命感と墓との対比が生きている。後句も良いが、「見る」という動詞に対してこの季語の効果が正解よりも弱いので有段にはせず。1級。

小さき墓集まりげんのしょうこかな
屋根に見るげんのしょうこも鴨川も
 一走人さん。前句、実感がある。後句、地面に生えるものなので「屋根に」に無理がある。4級。葉音さんの松葉牡丹もほぼ同じだが、花が大きく派手なので屋根からも見えやすいか。3級。うに子さんはへくそかずら。前句、荒れた墓にいかにも絡みついていそう。後句、屋根まで這い登ってきているか。少し鬱屈した感じ。同じく3級。桂奈さんは桜若葉。前句、墓と若葉の生命力の対比。後句は「屋根に」いる作中主体と若葉との近さが新鮮。2級。dolce@地味ーずさん、かま猫さん、あいむ李景さんは青葉若葉。「葉」の繰り返しに勢いがある。1級。

小さき墓集まり平家蛍かな
屋根に見る平家蛍も鴨川も
 芳香さん、久我恒子さん、みやこまるさん、元旦さん、どかていさん。松尾千波矢さん、青柘榴さんは源氏螢。前句蛍の発光が御霊のようにも思えて神秘的。後句は、今現実に蛍が見られるかどうか不明だが、昔の光景ととらえても面白い。1級。ヤッチーさんは蝉の蛻。前句、繰り返す生の営みと墓の対比に趣がある。後句、蝉が羽化のために屋根にまで登ってきたところに驚き。同じく1級。

小さき墓集まりナンジャモンジャかな
屋根に見るナンジャモンジャも鴨川も
 出楽久眞さん。なんじゃもんじゃの木には諸説あり、ヒトツバタゴが有力だがクスノキ、ニレ、イヌザクラ、ボダイジュなどもそう呼ばれることがあるらしい。とにかく語感が面白い。初段。しげこさんは蛇の衣。脱皮した蛇が残していった皮のことで前句妙なリアリティーがある。後句も遠近感が変。しかしその変さが面白くなってしまった。初段。


今月の正解

小さき墓集まり茅花流しかな
屋根に見る茅花流しも鴨川も
 小川めぐるさん、誉茂子さん、内藤羊皐さん、あるきしちはるさん、人日子さん、矢野リンドさん、遊人さん。茅花の揺れる姿が見えて、前句は鎮魂のようでもあり、後句は風の流れと川の流れが対比されて面白いと自画自賛。二段。


解答募集中!
次の(  )の中に共通する夏の季語を入れてください。

この坂の上に母校や( )
( )とはアポロンの惑ふ空

5月20日締切 結果は7月号に掲載


マイマイ
2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人だったが、最近は?? 第1回、第4回百年俳句賞(旧大人コン)優秀賞受賞。2013年句集シングル『翼竜系統樹』上梓。将棋推定初段。棋友募集中。宇宙と生命を題材に詠んだ句集『宇宙開闢以降』マルコボオンラインショップにて発売中。


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100年投句計画 投句方法



雑詠俳句計画 または へたうま仙人
自由律俳句計画
詰め俳句計画

 「雑詠俳句計画」と「へたうま仙人」は、どちらか片方にのみ投句できます。なお「雑詠俳句計画」では、寄せられた投句を一括して、各選者が選句します。各選者に宛てて個別の投句を行うものではありません。


7月号掲載分締切 5月20日(土)

投句方法

 投句先コーナー名
 俳号(無ければ本名の名前のみ)
 本名
 電話番号
 住所

 以上の必要事項を書き添えて、編集室「100年投句計画」係までお寄せください。メールの場合は、件名を「100年投句計画」としてください。
 各コーナーそれぞれ2句まで投句できます。また、「詰め俳句計画」は季語1つのみを投稿できます。
 各コーナーの投句は、ひとつにまとめて送っていただいても構いません。

メール宛先
magazine@marukobo.com

投稿専用ページ
http://marukobo.com/toukou/

※ハガキ FAXの宛先は本誌の裏表紙を参照してください。

さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(「俳句ポスト365」のページ参照)


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今回のお題句に対する投句から次のお題句を選び繋げてゆく

疑似俳句対局


選者 美杉しげり

 こんなお便りをいただきました。「3月『花の昼』に対して4月『春の月』は「の」が共通です。前句の季語の一部を季語として頂くのは不可という規則に抵触しないのでしょうか」
 前の句の自立語をどのように頂くかどうかが問題で、助詞を頂くのは問題ありません。たとえば「花の昼」に対して「花の雲」はアウトですが、「春の月」はOKです。


今回のお題句

味ぽんを買い忘れたの春の月  杉もとたかし


候補句

風鈴や買い物行くと妻の声  佐東亜阿介
 今月、二番目の投句。「ちょっと買い物行ってくるからねー」という妻の声と風鈴の涼やかな音を遠く聞きながら、作者はうとうと夢心地なのでしょうか。

忘れ水はるばる落花一二片  久我恒子
 なんとも美しい句ですねえ。ひっそりと人に知られず流れる水の清らかさ。桜もまだ散りはじめたばかりなのでしょう。お題の句とはがらりと違う世界を描いてくれました。同作者の「忘れ潮おし黙らせて日の盛り」「大旱ちりちり尖る味蕾かな」も感性の光る句でした。

蕗味噌の焦げたか夫は戻らぬか  凡鑽
 美味しくなるように、ほんの少ーし焦がした蕗味噌なのでしょうか。熱々の白いご飯でいただきたくなります。せっかく好物を作ったのに、まだ戻ってこないなんて……と夫を待っている姿なのかも。 

はつ夏の子の炒飯の味確か  小川めぐる
 なんとなく男の子が作った炒飯、という気がしました。しっかり味がついていて、具もたっぷり。風も清々しい季節、食欲もそそられそうです。

健忘の彼方五月の駄菓子店  糖尿猫
蓬摘む我が名忘れた母さんと  柝の音
振り込みの念押し忘れ昭和の日  山崎ぐずみ
 糖尿猫さんの句はノスタルジックに幼い頃の思い出を、柝の音さんの句は切なく優しく母さんへの想いを、そして山崎ぐずみさんの句は軽やかに日常を。それぞれに味わいの違う「忘」三句。

 こちらは「味ぽん」三句。便利ですよね、味ぽんて。
麗かや味ぽんかける茹でもやし  小市
味ぽんをどぼどぼかける心太  ひでやん
味ぽんに溺るるやうな春の宵  鈴木牛後
 小市さんの句は簡単で美味しいレシピ。こんな何気ない場面もさらりと俳句に。ひでやんさんの句は「どぼどぼ」がいいですね。塩分とか気にしてなさそうで(笑)……と思ったら、牛後さんの句は「溺るるやうな」! どんな味ぽんですか、な異色の句でした。

コルク栓ぽんとほぐれる花疲れ  松尾千波矢
ぽんぽんと鶏頭の種蒔きにけり  恋衣
 コルク栓の開く小気味よい「ぽん」という音。鶏頭の種を蒔くさまが「ぽんぽん」だというユニークなオノマトペ。ともに軽やかで気持ちの良い二句です。
 ……なのですが、お題句からの自立語が「ぽん」。「味ぽん」ならば問題ないと思いますが、「ぽん」だけで自立語と言えるのか、ちょっと微妙なところです。私の持っている国語辞典には「ぽん−と」「ぽんぽん」という言葉は掲載されていますが、「ぽん」はありませんでした。残念ですが、判定としてはアウトだと思います。


次回お題句

南風や工場よりぽんこつの月  土井探花
 今月の投句一番乗りの句。「ぽんこつの月」に惹かれます。工場の後ろから上がる月に心情を重ねて「ぽんこつ」だと見たのか、あるいは工場で生産されているものを「ぽんこつの月」に見立てたのか。句またがりのぎくしゃくしたリズムも、この句の内容に合っています。
 お題句から頂いた自立語は「月」。ルール上、アウトか?と思われそうですが、この句の主たる季語は「南風」で夏の句。というわけで、セーフと判定致しました。
 ルールを踏まえつつ、できるだけ早く、いい句を詠んでね!というのが俳句対局。考えてみれば、けっこう大変ですよね。でも、その大変さが面白さでもあります。来月も素敵な句、お待ちしてます。


美杉しげり
 第8回俳句界賞受賞。4年ほど前から小説も書き始め、短編「瑠璃」で第21回やまなし文学賞佳作。美杉しげりはその時からのペンネーム。

毎月25日頃に、投句フォームにてお題句を発表します。投句締切は毎月末日。

疑似俳句対局投句フォームアドレス
http://marukobo.com/taikyoku/


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短歌の窓


選者 短歌誌『未来』会員 渡部光一郎


 今回は、休載いたしました先月分を、今月分と併せて掲載いたします。


先月分


特選

梅咲いてヒヨドリが来てめじろ来て老いた姉妹が種まきに来て  殻嵩はるお
 「咲いて」一回と「来て」を三回用いて巧み。下句も見事。


並選

件名は早春として書くメール履きやすき靴買いしことなど  風
 過不足がなく、適度に抑制をきかせた表現がよい。

雛飾る幼三歳正座してさびしい顔があるといいそむ  幸
 「いいそむ」だけが瑕か。題材や詠い方はとてもよい。

高遠の小彼岸桜春がすみ江島の縁つつみ棚引く  藍植生
 高遠の小彼岸桜を題材にした作品。評者はまだ当地へ行ったことがなく、まことに羨ましい。歌中の「つつみ」は、「堤」と「江島の縁」を「つつみ」こむ、の二重の意か。「春がすみ」が「たなびく」という、昨今あまり使われない表現によるトライアルがいい。


コメント

黒白黄すべての色に包まれて仄かに光る滑らかな骨  時計子
 一読、いろいろに想像できる歌。「すべての色」の前に、「黒白黄」を置いたのが効いている。「滑」と「骨」が文字として近いのも面白い。日常生活のどこかを切りとってデフォルメした作品だが、作り込みが現実に負けていない佳作。

満潮の波跡の内一歩二歩砂に背の名を深く書きけり  風海桐
 「背の」はなくても歌としては成り立つかもしれない。ご一考を。

思い出の茶房も宿も閉じられて潮騒だけの岬の町よ  柝の音
 思い出 茶房 潮騒 岬と盛りこんでいるが焦点を絞り、破綻せずまとめた。最後の「よ」が効果的。

半月の短期留学終えし子のやっぱり家が一番いいね  出楽久眞
 よく分かるのだが、上句から下句へつなぐ際の「の」だけに負担がかかっているので、あと少し整えるとよい。

キャンディーズの春一番がかかっています車の外はまだ北の風  桃林
 まず、上句を五 七 五にととのえること。上句だけで考えるのではなく、無駄な言葉を捨てて残したい内容を下句に入れてもよい。なお、評者はスーちゃんが好きでした。

どのコース走るか走り出してからあれトイレして来なかったかなあ  青柘榴
 可笑しい。この脱力感、とてもいいなあ。

路傍仏拝む私を睥睨し無用無用と春の猫鳴く  暮井戸
 ともかくうるさい春の猫の声。作者はそれを「無用無用」と聞きなした。ほかにも猫の声は色々使えそうである。「路傍仏」という言い方があるかどうか。

やまい得て横たわる牛涙するともに流すよ我がまなこより  桃林
 このあとの牛がどうなったかが気になる。牛は人間に近い情があるのかと思うときは確かにある。

 分りにくい歌、というのがあり、それには二つの傾向があります。ひとつは作者の狙いとして、わざと直接的な言い方を避けている場合、もうひとつは、単に情報不足のため分からないものです。一読者になったつもりで冷静に、自分の作品をもう一度見直してください。言いたいことをきっちりと一首の中へ入れるだけでいい歌になる場合が多いです。(今回はいい歌が多かったと思いますが。)


今月分


特選

ガレットもタルトタタンも知らないがホットケーキを焼くのは得意  片野瑞木
 評者はガレットもタルトタタンも知らずに読んだが、あたたかい思いが伝わってくるうまい歌。伊予人の笑いもさそう。


並選

朝に聞く同じ話を夕方も初めてのよに相槌を打つ  彩楓
 優しさがすなおに出ている。「よに」と拍を調整せず「ように」で堂々と押しても大丈夫な作品かと。

小流れの畔にワンバーナーを据え泥鰌汁には笹掻き牛蒡  暮井戸
 バーナーでどじょう汁を作るのもいいなあ。「小流れの畔」のところはうごくかもしれない。ちょっと池波正太郎を思い出してしまった。

アネモネのモネのところで曲がりますあなたの待ってるあの喫茶店  彩楓
 「モネのところで曲がります」は面白い。ちょっと下の句との連携に難ありか。


コメント

振り向けば花橘の香あり佐田の岬は陽炎の中  藍植生
 硬いが整っている。「花橘」という語はなかなか使う機会はないかもしれないが、これは作者の実感によるものであろう。

晴れの日は水やりします雨の日も水やりしますそれがマニュアル  凡鑽
 乾いた文体がおもしろい。

眼裏に憂ひを沈め眠る夜兎が我を囲む夢見る  桂奈
 なんか気色悪い。

思ひ出を宿す端切れを接ぎをればちひさな幸を積んできた日々  出楽久眞
 思ひ出を「宿す」でよいかどうか。

束ね髪弾ませ巫女は小走りに産土杜に春の来にけり  広木虎之進
 もう少し整えたい歌。歌意はよく分かる。

初摘みの絹さやえんどう柔らかしスジ取る夫の無骨なる指  柝の音
 一日中すじをとっておられる姿がうかぶ。

母さんは秘密の場所が二つ三つあるらしいんだ土筆畑が  ミセスコナン
 時々、ぎょうさん生えているところがありますね。

少年の君は小さき舟に乗り夕暮れ色の旗を振り合う  時計子
 イメージはいいが、結句の「振り合う」で突然複数になり、とまどってしまった。

 文法面については(文語体でお作りの方には特に悩ましいところだと思いますが)、可能な範囲で意識なさって下さい。そのほうが打率は上がるでしょう。(俳句で鍛えていらっしゃるみなさんには「何とかに説法」で大変恐縮なのですが)ただ、一首の中に文語と口語を混ぜない方がいいとは思います。口語の歌が増えてきた昨今、私も色々悩んでいます。それではまた。


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自作の俳句を英語に訳そう!

百人百様 E-haiku



評 菅 紀子


 3月18日、松山市写真俳句コンテスト授賞式イベントでのこと。閉会直後、当コラムの常連でいらっしゃる片野さんがお声をかけてくださいました。普段は紙面上の語り合いですのでとても新鮮で嬉しく感じました。しかも日本語課題句部門優秀賞受賞、おめでとうございます!E−haikuにチャレンジされているほどですから当コラムのみなさまもいろいろな場で活躍されていることと思います。
〜新年度滑り出しも軽やかに〜


1.
an unattended station
many tulips in bloom
all only red

チューリップ赤ばかりある無人駅  片野瑞木

an unmanned station
tulips in bloom
all red

紀 unattendedだと操作員がいない、unmannedだと乗員がいない。無人駅の訳はどうでしょう。


2.
hazy grass
my tentacle
is short

草朧わたしの触角は短い    片野瑞木

 まず草朧という季語、説明することはできても一言でどう訳すかが難しい。tentacleはクラゲなど刺胞動物の触手や烏賊の触腕だそうです。昆虫の触角はantennaだとか。
作者の想像の産物はどんな触角でしょう?


3.
The slip-on take a new step to season of fresh green.

新緑へ踏み出してゐるスリッポン  小川めぐる

My slip-on takes a new step to the season of fresh green

Step forward
to the fresh green
in my slip-on

紀 一行詩でいいですが、詩なので最後のピリオドは要りません。
本来はスリッポンが勝手に踏み出すことはないのでそれを履いた人間が足を踏み出したのでしょうが、靴を擬人化することが英語的に無理でなければその表現は可能となり面白いですね。履いて、着て、といった前置詞はin。 二つ目の3行詩の方は自分が主体、「私はスリッポンを履いて(着て)新緑へ踏み出す」となります。

小川めぐる 以前から俳句の英訳に興味がありました。よろしくお願い致します!!!

紀 小川さん、はじめまして。よろしくお願いいたします。


4.
spring of window
girls Cloth ove、
hip,touch hip,touch

春の窓少女ら互いに尻触れる  KIYOAKI FILM

girls at the window
with their hips touching
a hint of spring

紀 「春の窓」とは春がもうすぐそこへ来ている(窓辺にまで)という期待感を表しているのでしょうか。
場面を描くと、少女達が窓辺で身を寄せ合って座っており、外には春の気配が漂ってきている。身を寄せ合っている少女達の姿そのものも春を感じさせますね。
「尻」の訳にhipはないようで、「腰」にはhipsが出てきます。


5.
beautiful of bottom
sit down, sit down,
spring bird!

美しき臀坐らせる春の鳥  KIYOAKI FILM

a spring bird
putting its beautiful tail
down

紀 そもそも鳥に臀部はあるのでしょうか? しっぽのことでしょうか? そういえば小枝に止まるといっとき尾っぽを上げ下げしていますね。

KIYOAKI FILM 英語俳句を書くことが、毎月の宿題みたいになっています。難しい、一語です。洋画を見ることが多く、よく聞いていると、言葉は入ってきますが、綴りがわからないので、困りものです。「尻」という言葉、映画見ていたら、hip、という時と言わない時があるような気がします。

紀 KIYOAKI FILMさん、ここ数カ月間お尻に関心が。


6.
wishing to be a butterfly-
thousands of islands
in the midnight sun

蝶となる夢を白夜の千の島  久我恒子

wishing to be a butterfly-
thousands of islands
at night under the midnight sun

紀 白夜は真夜中の太陽の下にある夜、前置詞はなしでa night〜としてもいいですね。


7.
fizzy lemonade-
a couple at the next table
quarrel

隣席の二人の喧嘩レモン水  久我恒子

紀 「喧嘩」の単語を分詞quarreling (米)、 quarrelling (英)にします。


8.
as sky turned crimson with the sunset
I just have to hone my sickle
for tomorrow task

夕焼けに明日の作業の鎌を研ぐ  たあさん

crimson evening glow
sharpening a sickle
for tomorrow

sharpening a sickle
for tomorrow's work
afterglow of the sunset

【お便り】英語の俳句ってのは勇気がいります。  (たあさん)

紀 心なしか句がたあさんの覚悟に共鳴して、明日の鎌を研ぐ姿はたあさんが勇気を出して英語俳句を作っているメタファーのようにも見えてきました。


9.
Morning in May
Gentle wind above
The Lake of Shining Waters

風薫るあさの光のあそぶ湖  ほろよい

紀 良いと思います。もう一つ試訳を下にご紹介しますが、ほろよいさんのほうが好みです。


Morning in May
Gentle wind and sunlight
Playing with the lake waters


10.
in early summer,
school building will not
blame you

初夏の校舎は君を責めないよ  チャンヒ

believe me,
the school building won't blame you
early summer

紀 「よ」の強調をbelieve me, 「いいかい?」というニュアンスで表現しています。


11.
somewhere
on book in bookshelf,
clover is

本棚の本のどこかにクローバー  チャンヒ

somewhere
in some book on the bookshelf
the clover is

12.
Hoping for larks
not to be lured by
a whistle

雲雀笛どうか呼ばれて来ぬように  句ゼミ@あつむら恵女

紀 Hoping for larksとlarksまで入れて切ると、詠み手が雲雀を求めているように感じるのでlarksを中句に移動してはどうでしょう。
笛によって/雲雀が誘い出されてこない/ように願います
語順は英日逆ですね。

Hoping for
larks not be lured
by a whistle


13.
Spring night
tuning radio frequency with
shining moonlight

春の月合わすラジオの周波数  句ゼミ@あつむら恵女

a spring night
tuning the radio
in moonlight

紀 tuneだけで放送局、チャンネルなどに合わせる、同期させる、になります。日本語の「周波数」を直訳してfrequencyという単語は意味ありげですが、英語ではそれほど意味はありません。

句ゼミ@あつむら恵女 こんにちは。初めて投稿します。英語の得意な娘に教えてもらいながら久しぶりに勉強しました。vocabularyが豊富でなければ難しいですね。くじけず頑張ろうと思います。

紀 句ゼミ@あつむら恵女さん、はじめまして。娘さんという助っ人がいて心強いですね。私も詩句に使われる語彙に乏しく、ネイティブのように浮かばなければ辞書に聞きます。でも平明な言葉だけの句はかえってインパクトが出るともいえます。


14.
March
the laughter cat

三月やシルクハットの笑ひ猫  彩楓

March,
a grinning cat
in a top hat

紀 三月「や」の切れ字をカンマで表します。silk hatはtop hat という語もあります。不思議の国のアリスの猫はgrinning cat、にやっとした笑い方です。laughterはどちらかというと大口開けてわははと笑うアクションですね。着て、被っている場合の前置詞はin、withを使うと with a silk hat onでしょう。


15.
Spring rain
daytime market
town wite many slopes

坂多き町の昼市春の雨  彩楓

紀 witeはwithのスペリングミスですね。昼市はどのような形態でしょう…market 単独だと様々な市場が考えられますが、market stallsにすると露天市の感じがします。

彩楓 3月号のit〜that〜の強調構文で倒置したと考えるとの説明、よくわかりました。そうなんだというアハ体験でした。有難うございました。

紀 彩楓さん、“俳句でワンポイント英文法”なんてコピーが浮かんできますね。


菅 紀子(かん のりこ)
(有)クラパムコモンカンパニー代表。通 翻訳、メディアによる姉妹都市交流コーディネーター。社名は夏目漱石が下宿したロンドンの地名から。歩道短歌会同人。人文学修士、翻訳修士。松山大学非常勤講師。(Hailstone Haiku Circle blog ICEBOX Contributor)(漱石と彼のライバル重見周吉、日系移民研究)


自作の俳句およびそれを英語俳句にしたもの(2句まで)を募集!

応募先
WEB http://marukobo.com/eigo/
Email eigo@marukobo.com
7月号掲載分締切 5月20日(土)


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百年歳時記


夏井いつき

第47回


 有名俳人の一句を紹介するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月紹介鑑賞していきます。


磐座の紙垂は四枚蕨狩  クラウド坂上

 「磐座」は、神の御座所。「紙垂」とは、注連縄や玉串などに垂らしてある白い紙。「磐座」に付けられた「紙垂」は聖域の象徴です。
 「蕨狩」の途中、美しい巨岩が祀られた場所に辿り着きます。「磐座」には真新しい「紙垂」が「四枚」垂れているのです。巨岩の辺りには沢山の「蕨」が生えていますが、近づくことが憚られるような神聖な空気に満ちているのです。見上げれば見上げるほど、見つめれば見つめるほど美しい巨石。圧倒的な大きさと美しさに「蕨狩」の面々は立ち尽くしているのでしょう。時折ひらりと風に靡く「紙垂」もまた、神意を伝えているかのような厳かさ。ここの「蕨」には手を出すまいと、拝礼をして立ち去っていくのでしょう。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』3月17日掲載分)

胎児のような翁のような桜蝦  中山月波

 いきなりの対照的な比喩に驚きます。「胎児のような」と「翁のような」という比喩が並列でおかれて、その二つに当てはまる季語を探しなさい、と問われたら困惑します。「翁のような」は伊勢海老でもいけるかなと思うけど胎児のようじゃないし、「胎児のような」は甘海老ならいけるかとも思うけど「翁」じゃない。ましてやブラックタイガーなんてのは、どちらの比喩に対しても中途半端。
 下五「桜蝦」という季語が出現したとたん、なるほど!と膝を打たざるを得ない比喩の妙。網にぴちぴちする「桜蝦」は「胎児」のような色と形、よくよく貌を眺めるとその髭は「翁」のようでもあり。「桜蝦」らしい特徴をこんな形で見せてもらえた楽しさ!
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』3月31日放送分)

芥菜や粥の味してきたる予後  山崎ぐずみ

 「芥菜」は、高さ1メートル以上にもなるアブラナ科の越年草。茎や葉は煮物や漬物にしますし、種子は香辛料や薬用にも使われます。ピリッとした味からこの名がついたのでしょう。
 下五「予後」とは病気が治った後、の意。何を食べても味がしない日々が続いていたのだけれども、「予後」の舌に、粥の味がもどってきたというのです。味が戻ってきたことに気づいたのが、「芥菜」のピリッと辛い味のおかげであったよ、というつぶやきの一句。「予後」の体に優しい「粥」を、と運ばれてきたお膳に添えてあった「芥菜」の漬物。「粥」の白と「芥菜」の緑を美しく思いつつ、「粥の味してきたる」ことに安堵の思いが溢れます。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』3月24日放送分)

春の匂豊かに孕む熱気球  松田てぃ

 季語「春の匂」とは「春光」の傍題です。春の気配であり春の光が地に満ちる様子でもあります。抽象的なイメージですから、一句として結球させるのはなかなかに難易度が高い季語です。上五「春の匂」のあとに続く中七「豊かに孕む」も抽象的な言葉。「春の匂」を「豊かに孕む」物って一体何だ?と思った瞬間、目に飛び込んでくるのが下五「熱気球」。この一語のなんと鮮やかなことか。
 私は実際に見たことがないのですが、テレビのニュースや写真の映像がありありと浮かんできました。次々に膨らみ、次々に飛び立つ「熱気球」。そのカラフルな色合いもまた「春の匂」の色ではないかなと思います。語順の巧さが一句の映像を際立てました。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』3月17日放送分)

船棄てる冬青空の調えば  土居正明

 「冬青空」が思いどおりに晴れ上がれば「船」を棄てる、というのです。「船」は文字通りの船か、何かの比喩的象徴か。「棄てる」の一語も、文字通り破棄すると読んでもよいし、「棄てる」=新しいものを目指す、と考えることも可能です。いずれの読みを選択するにしても、後半「冬青空の調えば」は清冽な詩語です。
 下五「調えば」は、望ましい状態になればの意。「〜ば」は原因理由、恒常条件、偶然条件、三つの意味に解釈できますが、この句は偶然条件で読みたい。偶々「冬青空」が見事に調ったものだから、僕は「船」を棄てたよ、と。青年の覇気か蛮勇か、人生の海を渡ってきた晩年の諦観か。読者の読み解きはいかようにも広がります。
(第6回 瀬戸内 松山国際写真俳句コンテスト自由句部門最優秀作品)


百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
などに投句された俳句を紹介します。


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俳句の街 まつやま

俳句ポスト365



協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


金曜日優秀句
2017年3月度

蜂(はち)


足長蜂飛ぶとき足の無心なる  樫の木
熊蜂の足みじかきは良き姿  井上じろ
蜂打てば腹柔らかく痙攣す  理酔
蜂球を朝から二つ見たるとは  小川めぐる
水飲みて静かな蜂になつてゐる  大塚迷路
水に浮く蜂もがき止まりまたもがく  睡花
手術後の白き病室蜂がうるさい  ラーラ
斥候の蜂かきまはす空に傷  青萄
吊り上げた廃車に蜂の迸る  石川焦点
地蜂噴く発破工事の音遥か  山香ばし
花巻の蜂ぢつと見る光太郎  佐東亜阿介
憎しみや蜂飼うか地は病みし国  鈴木牛後


怒り来て縦に割れたる蜂の口  クズウジュンイチ


蕨狩(わらびがり)


祟り神に触れ来し右手蕨狩  耳目
空掘と知らず蕨を狩り登る  ゆきたま
蕨狩おとこ古墳を滑り落つ  小泉岩魚
蕨狩るちちははの船戻るまで  Kかれん
蕨狩行つて還らぬ夢のはは  くらげを
蕨狩迷いし人の籠重し  蛾触
蕨狩る老女五人は無敵なり  津軽まつ
早蕨の狩と呼ぶにはうぶうぶし  めいおう星
わらび狩ぽきぽき春の骨を折る  花屋


磐座の紙垂は四枚蕨狩  クラウド坂上


渡り漁夫(わたりぎょふ)


渡り漁夫云う魚群は黒き雪崩だと  ぐわ
渡り漁夫なぶらに放り込む山気  かもん丸茶
目頭の塩穿りたる渡り漁夫  さるぼぼ
雪浴びてしょっぱき躯渡り漁夫  うに子
ここらとは違う日焼けの漁夫来たる  三重丸
所詮渡り漁夫だと母に諭される  こま
潮騒の揺らすラムプや渡り漁夫  糖尿猫
死者四人同じ苗字の渡り漁夫  永井潤一郎
渡り漁夫番屋に病みて炉を守る  留野ばあば
渡り漁夫ケロリン売るほど持ちました  初蒸気


渡り漁夫夢に哀しき牛と妻  香壺


5月の兼題

投句期間 4月20日〜5月3日
芒種(ぼうしゅ)
仲夏/時候
二十四節気の一つ。太陽の黄経が75度に達した時で、陽暦では6月上旬頃。稲や麦など芒(のぎ)のある穀物の種を蒔く時期を指し、田植えが始まる日である。

投句期間 5月4日〜5月17日
白靴(しろぐつ)
三夏/人事
涼しさの演出として、夏になると足元も白い靴が好まれるようになる。昔は、男性が夏に白い革靴を履くことが一般的だったが、汚れやすいこともあり現在では履く人が減った。

投句期間 5月18日〜5月31日
日焼(ひやけ)
三夏/人事
夏の日光で肌が黒く焼けること。以前は健康のシンボルとされたが、近年は紫外線による害がいわれるようになり、日焼けを防ぐようになった。

参考文献 『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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 募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。


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一句一遊情報局



協力 南海放送


金曜日優秀句
平成29年3月度

海猫渡る(ごめわたる)

海猫渡る島を啄むかに砂嘴は  はまゆう
天売島へ万の綺羅星海猫渡る    いくうさんろ
未踏こそよけれ蕪島海猫渡る  野風
今もなお消息はなし海猫渡る  三美子
海底に残れる瓦礫海猫渡る  おたま
海底に千尋の谷海猫渡る  太郎
診療船それぞれの窓海猫渡る  篠原そも
堰を切り母国語の夜海猫渡る  小雪


海猫渡る出雲の紙垂のより白し    七草
離岸流黒き能登なり海猫渡る    亀田荒太




丸窓に影走りけり目借時  浜の富ちゃん
リビングを陸亀走る遅日かな  糖尿猫
脱走の亀よ都会の春塵よ  だんご虫
痩猫の来襲船虫の潰走  樫の木
猫避ける自走掃除機漱石忌  ロッチ
恋猫や勝者は走って決めなさい  穂の実
チリ紙を買いに走りて春の星  ちいち
ただ走るには艶めかし春の月  江口小春
助走九歩背中バー越ゆ風光る  浜乃はの
春日傘代走へ激飛ばしけり  石川焦点
出走を待つパドックの春帽子    ひなぎきょう
玄関にアネモネ走り書き拾ふ  立川六花


分水嶺二匹の龍の走る春    中嶋浄土


春の匂(はるのにおい)

巡視艇春の匂を十ノット  妹のりこ
春の匂やスワンボートの十三艘  だんご虫
鯉跳ねて芹の葉ひかる春の匂  もろり川
透明の魚食む音よ春色よ  波恋治男
三角巾ほどいた左腕春匂う    三河のぽんぽこ
8の字跳びの途切れぬ列や春匂う    都乃あざみ
巡礼をバスが吐き出す春の匂  もも
カンカン石のまろき窪みや春匂う  みいみ
子山羊跳ね春の匂を耕せり  烏天狗
馬の目の曜変春の匂あり  小田寺登女


春の匂豊かに孕む熱気球    松田T


芥菜(からしな)

菜の花に似て芥菜の貧相な  青萄
限界集落芥菜だらけ後家だらけ    波恋治男
芥菜の咲く首塚のあるあたり  てつこ
芥菜や家督を捨てて仮住まい  あねご
小姑は猫舌芥菜もお嫌い  塩胡椒子
ななのなはからしなのなというななちゃん    穂の実
源泉は百度芥菜青々と  どかてぃ
芥菜や昔ながらの塩に角  松田T
芥菜や戦争孤児のマーの味    珠桜女あすか
芥菜の脇でアヒルの鳴く市場  はまゆう


芥菜や粥の味してきたる予後    山崎ぐずみ


桜蝦(さくらえび)

桜蝦明るき海に掬い上ぐ  マーペー
おそらくはトンで上がりし桜蝦  理酔
桜蝦腹に霞を飼うている  誉茂子
かき揚げの桜蝦の目熱し熱し  ほろよい
桜蝦かしゆかしゆ星をかむごとし    緑の手
床の間に花吉日の桜蝦  更紗
五品目は異国の塩添う桜蝦  胡椒
桜蝦駿河は風の青き国  篠原そも
右舷富士左舷あまねく桜蝦  宵嵐
海溝は海神の臍桜蝦  樫の木


胎児のような翁のような桜蝦    中山月波


投句募集中の兼題

投句締切 5月7日

朱欒の花(ざぼんのはな)
初夏/植物
ミカン科の常緑高木で、インド東部が原産の柑橘類。5月頃に白色五弁の花を開いて、芳香を放つ。日本では南九州などで栽培される。

アイスティー
三夏/人事
冷やした紅茶に氷片を浮かべたり、いれたての紅茶を直接氷に注いで急激に冷やしたりしたものにシロップを入れて飲む。


投句締切 5月21日


季語ではない兼題です。「夢」という字が詠み込まれていれば、読み方 用い方は問いません。季語は当季を原則として、自由に選んでください。

海亀(うみがめ)
仲夏/動物
ウミガメ科で、熱帯や亜熱帯の海に棲む大形の亀の総称。6、7月頃に本州〜九州の太平洋岸に来て産卵する。

参考文献『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句宛先
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとにしたものです。俳句ならびに俳号が実際とは異なっている場合がありますのでご了承ください。


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鑑(み)るという冒険


〜映画篇 演劇篇〜

文&俳句 猫正宗


第五十五回
『劇場版 ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』&『班女』


 数ある大作を差し置いて、行ってきました『劇場版 ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』昨今主流のVFXでなく、いわゆる「特撮」を久々に銀幕で堪能できたのは愉しゅうございました。その愉しさとは、ミニチュアセットは、精巧なドールハウスに感じるような小さく精巧に作られることで生まれる物自体(フェティッシュ)の魅力、着ぐるみは、ジャッキー チェンの映画のように、実際の肉体が使役されていることの感動、その他、職人技と工夫によって生まれる映像に対する驚き(センス オブ ワンダー)、等といったものだろう。とはいえ、一介の映画好きからみて、この映像のまま、ハリウッド製ジャンルムービーに映像面で抗し得るかというと、それはやはり厳しい。では「特撮」の技法は過去の遺物なのかというと、必ずしもそうではないのではないか。無論かつての如く、セット自体をじっくり見せるといったやり方では辛い。CGや実景を合成や編集でうまく組み合わせた様なものにはなるだろう。本作中にも、そんな形でおっと思わされる映像が幾つかあった。また、着ぐるみ等々も、更に効果的なものにしていくことは必須だ。だが、例えば、プリクエル三部作で、役者と衣装と小道具以外、ほぼフルCG映画となっていた『S.W.(スターウォーズ)』は、最新シリーズ以降、再び昔ながらの技法がとりいれられている。物があるからこそ生まれる映像美というものがあるからだろう。そう、正確さならドラムマシンの打ち込みには敵わない。それでもドラマーが、けして滅びない様に。

触るる美と触れざるる美と黒蜥蜴

 さて、良くも悪くも「伝統芸能」などと称される「特撮」であるが、一方こちらは、本当の伝統芸能である能から題材をとった、三島由紀夫の近代能楽集より『班女』(演出:本坊由華子、出演:赤澤里瑛、本坊由華子、廣本奏、'17年4月8、9日)上演したのは、四国劇王V及び第三回中国劇王の覇者、本坊由華子率いる世界劇団。「愛媛大学医学部演劇部」の看板を外しての第一回公演だ。精神性が強調される舞台が多い様に思われる三島の近代能楽集を世界劇団独特の身体性で喰らい尽くそうとする表現の面白さ、シンプルながら効果的かつ暗示的な舞台装置、前回出演作では奇矯な人々の中で普通な人物を普通に現出させていた赤澤は、今回はその存在感で、逸脱した人物をも普通に在らしめることを証明。そして本坊の演出。氏の作り出す世界は、表現に対する真摯な挑戦とともに、氏の表現者としての、そして氏自身の切迫感、切実感が胸に迫る。追っても追っても届かないものに、手を、指先を伸ばし続けているかの様な。
 粗削りだし、未整理な部分も多い、本公演では、前半のリフレインは、親切すぎるのではとも感じた。それでも、できれば今この時にしか出会えない世界劇団に出会ってほしい。そして、劇団とともに本坊由華子の名を覚えていただければ(あなたにとっても)幸いである。
※本誌2月号 当欄において、赤澤里瑛氏の瑛の字が抜けておりました。遅くなりましたが、失礼をして申し訳ありませんでした。

秋扇や影結晶と化するまで


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朝の見る句


蜂谷一人

No.2


麦秋の櫂を濡らしてもどりたる  夏井いつき

 かつて愛媛県に勤務していたので、麦秋の風景を身近に感じます。一面黄色に染まった麦畑。近づくと照りつける陽に麦わらがざわざわと呟きます。しかし掲句を描いてみると、不思議なことに音が聞こえてきません。世界の向こう側の風景のように時が止まっています。黄色が音を吸い取ってしまったかのように。櫂は彼岸へ向かう舟のもの。
 黄を巧みに操った画家といえば何と言ってもゴッホでしょう。「ひまわり」の燃え上がる色彩に惹かれる方は多いのではないでしょうか。でも私が一番好きな黄は「ひまわり」ではなく、遺作となった「カラスの群れ飛ぶ麦畑」。風に揺れる黄色い麦畑の上に、沈んだ青い空が広がり鴉が群舞しています。この黄色は死のイメージ。すべてが不穏で、ざらざらとした埃を眼に投げつけてきます。麦畑に鳥。よく似た構図なのに音を吸い取ったり不穏な空気を醸し出したり。黄色は一筋縄ではいかない色のようなのです。


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100年俳句計画 掲示板




テレビ ラジオ

NHK Eテレ『NHK俳句』
 日曜6時35分〜7時
 (再放送:水曜15時〜15時25分)
 夏井いつきが第3週選者を担当
5月21日(日)、再放送24日(水)
募集兼題 「蟇」または自由
投句締切 5月10日必着
投稿は葉書1枚に1句。選者名、兼題、俳句1句、名前、年齢、電話番号明記。
宛先 〒150ー8001 NHK「NHK俳句」係
ホームページからの応募も可
http://www4.nhk.or.jp/nhkhaiku/

NHK 総合テレビ(四国四県域)
 「四国 おひるのクローバー」内
  隔週火曜『夏井いつきのムービー俳句!』
5月16日(火)、30日(火) 11時30分〜

TBS系列局 全国ネット
 『プレバト!!』
毎週木曜 19時〜19時56分
 夏井いつきが俳句の査定を担当

南海放送
 松山市政広報番組
 『大好きまつやま〜しあわせ未来塾〜』
毎週火曜 20時54分〜21時
(再放送:日曜11時40分〜11時45分)
 夏井いつきが塾長として出演

南海放送ラジオ
 『夏井いつきの一句一遊』
 毎週月〜金曜 10時〜10時10分
  「一句一遊情報局」のページ参照

FMラヂオバリバリ
 『俳句チャンネル』
 毎週月曜 17時15分〜17時30分
(再放送:火曜7時15分〜7時30分)
投句募集兼題
「髪洗う」「パセリ」5月7日締切
「夏の月」「ハンモック」5月21日締切
 WEB http://www.baribari789.com/
 mail radio@baribari789.com
 FAX 0898(33)0789
  投句には本名 住所をお忘れなく!
  「天」の句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。

 各番組の放送予定は変更される場合がございます。新聞などで最新情報をご確認ください。


執筆

松山市の俳句サイト
 『俳句ポスト365』
http://haikutown.jp/post/
 「俳句ポスト365」のページ参照

テレビ大阪俳句クラブ
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」(夏井いつき選)
  毎週日曜タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井いつき選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。
 朝日新聞松山総局(〒790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。


イベント 講演等

俳句王国がゆく(宮城県加美郡)公開録画
5月13日(土)13時30分〜15時30分
 加美町中新田文化会館(バッハホール)(宮城県)
問合先
 NHK仙台放送局
  電話 022(211)1016
 加美町中新田文化会館(バッハホール)
  電話 0229(63)7367
参加申込受付は終了しています。

「プレバト!!」カルチャースクール関西
5月14日(日)
 第1部 12時30分〜 (開場12時)
 第2部 16時〜 (開場15時30分)
 毎日放送(大阪府)
 参加費 4千円
(全席指定、俳句査定料込み)
問合先 チケットよしもと
 電話 0570(550)100
 詳しくは「プレバト!!」の公式WEBサイトをご覧ください
http://www.mbs.jp/p-battle/

NHK文化センター梅田教室 夏井いつきの句会ライブ
5月20日(土)14時〜16時
 NHK文化センター梅田教室(大阪府)
 受講料
  会員 3、780円
  一般 4、320円
問合先 NHK文化センター梅田教室
 電話 06(6367)0880

平成29年度 八幡市生涯学習開校式記念講演会
 夏井いつき句会ライブ 〜俳句を知れば世界が変わる〜
5月21日(日)13時30分〜
 八幡市立生涯学習センター ふれあいホール(京都府)
問合先 八幡市立生涯学習センター 
 電話 075(983)6002
参加申込受付は終了しています。


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魚のアブク



読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは他の投稿に添えてお寄せください。


みやこまる まる裏俳句甲子園にフェイスブックで参加して、ほぼリアルタイムでの審査結果にワクワクドキドキしました。3月号のあねごさんのレポートで、あの時の興奮が蘇りました。ありがとうございます!

小川めぐる 「一〇〇年の旗手」連載させていただき、ありがとうございました! 二度とない得難い経験となりました。未熟さを思い知るばかりですが、今後なお一層精進してまいりたいと思います。どうぞよろしくお願い致します!

編集室 連載ありがとうございました。 「一〇〇年の旗手」に挑んでみたい方のご応募は、随時お待ちしています! また、掲載された作品のご感想なども、ぜひ編集室までお寄せください。

ちろりん へたうまに追放されてもまた投句

一走人 マイマイさんの今回のお題は難しい。「小さき墓」の解釈と、「屋根に見る」の「に」の効果による詠者の位置の判断が難しかった。さて正解は……楽しみです。

葉音 象さん句会にも参加し始めました。ただただ完走することだけを目標に……今のところは、質より量で、頑張ります!

編集室 本誌では、読者の皆様に投稿していただける様々なコーナーを用意しています。また、句会や講座なども様々に開催されていますので、これは自分に合ってそうだ!と思ったところへは、どうぞ積極的に参加して、楽しみながら俳句のウデを磨いていただければと思います。

健次郎 三月七日、修二会の火祭見物に行ってきました。雪のちらつく寒夜でした。


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鮎の友釣り


第226回


俳号 山野遊造(やまのゆうぞう)

前回 みかりさんへ 「100年俳句計画」も、ながらく「ご購買者」のままでいつき組から名前の消えるところを釣り上げていただきありがとう。

写真 みなと交流センター「はーばりー」二階の第一スタジオで収録前のスナップです。背後霊は向かって左が「みかりさん」、向かって右が「すずめちゃん」です。

近況 いくつかの団体のお世話に、グランド ゴルフに、句会に、公民館カルチャーにと多忙な日々を送っています。特に三 四 五月は決算報告書や総会資料の作成に悪戦苦闘しています。

次回 三津浜わたるさんへ 長らくご無沙汰しております。当方、早寝早起きの至って健康的な生活を心がけております。いつき組の「酔っ払い俳人四天王」のわたるさん、ご登場ください!


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告知







子規 漱石生誕150年シンポジウム
俳句県みんなで詠むぞ575

主催 愛媛新聞社 子規新報 100年俳句計画
協力 創風社出版 マルコボ.コム


2017年6月4日(日) 13:30〜(受付13時〜)
愛媛新聞社 1階ホール(松山市大手町1丁目12-1)
入場料 一般1,000円、学生500円

《第1部》シンポジウム「俳句県みんなで詠むぞ575」
《第2部》議論が名句を作る!「句合わせ対決」

当日投句有り!賞品有り!
 当季(初夏)雑詠句を当日募集します。(一人一句のみ)
 優秀&佳作作品それぞれ3句ずつ選び、第2部の「句合わせ対決」にて使用します。

出演者(予定)
 坪内稔典氏、小西昭夫氏、キム チャンヒ氏、
 岡本亜蘇氏、菅紀子氏、岡田英樹氏、青木亮人氏、
 若狹昭宏氏、川又 夕氏、寺岡 凜氏、ほか

 愛媛新聞アクリートくらぶ会員の方は、愛媛新聞社エリアサービへお申し込みください。
 会員以外の方は、郵便局備え付けの払込取扱票に「子規 漱石生誕150年シンポ」、入場券の枚数、枚数分の料金と発送手数料(52円×枚数分)の合計金額、郵便番号、住所、氏名、電話番号を明記し、振込先口座番号 01600-4-15421、加入者名 (株)愛媛新聞社 までお振り込みください。(別途、振込手数料が必要)

問い合わせ
 愛媛新聞社 営業局企画事業部
 電話 089-935-2355

チケットは、マルコボ.コムでも販売中です。電話 089-906-0694 までお問い合わせください。





春夏秋冬(しき)笑顔まつやま俳句五七五

福祉をテーマにした
春の五七五募集

年4回、福祉をテーマにした五七五を募集します。
人に優しくなれるような五七五をお待ちしています。
(第1回 5月5日締切)

2016年度 春の五七五 会長賞
臥す母に鏡で見せる春の庭  江戸川散歩


応募方法
インターネットの応募フォームにて応募して下さい。
専用フォーム http://www.marukobo.com/egao/

賞品「松山トリコ」
大賞 (松山市社協会長賞) 道後温泉湯玉トートバック(1点)
優秀賞 ブックカバー(3点)
入賞 紙の湯カードケース(4点)

発表 ハイクライフマガジン『100年俳句計画』6月号ほか

問い合わせ 電話 089-921-2111

主催 松山市社会福祉協議会
   有限会社マルコボ.コム(ふくし句会 ハイクライフマガジン『100年俳句計画』)選句


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編集後記


キム チャンヒ

 スプレーは飛行機には積めない。
 僕の描く句会ライブでの俳画には、スプレーが欠かせない。しかし、テロの影響で十数年前からスプレーは、一切機内に持ち込めなくなった。それ以来、愛媛県外で句会ライブを行う際、俳画で使うスプレーは、事前に宅配で会場に送っている。
 そして、今月号の特集で紹介された「俳都松山キャラバン in 台北」での句会ライブ。初めて海外で俳画を描くことになり、困ったのがスプレー。飛行機のみならず、宅配でも送れない事態に。ならば現地で入手するしかない。事前にスタッフが現地を訪れ、スプレーを売っている画材屋を探しだし、無事句会ライブで俳画を描くことが出来た。俳画を手に入れた方の喜びの表情を見て、皆には手間を掛けてしまったが、台北で俳画を描けて本当に良かったと実感した。
 この4月に、俳句をユネスコの無形文化遺産に登録するための推進協議会が発足する。今年は本格的に俳句が国際化する元年となるかも知れない。
 僕の描いている俳画は、俳句にとってはオマケのようなものだけれども、俳句を楽しむきっかけにはなる。この楽しみ方に国境は無いように思う。


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次号予告


235号6月1日発行予定

俳都松山キャラバン in 台北!後編
  &第6回瀬戸内 松山 国際写真俳句コンテスト結果報告


お得で便利なマルコボ.コム直販定期購読! 巻末の案内をご覧ください
お申し込みの方へ、毎月末頃に最新号を送料無料でお届けいたします!
(住所変更の際は必ず編集室までご連絡ください)

『HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画』は以下の書店でもお買い求め頂けます。

愛媛県
 明屋書店 ※一部店舗のみ
 ゆらり内海(愛南町)
 原田書房(今治市)
 子規記念博物館(松山市)
 紀伊國屋書店松山店
 ジュンク堂書店松山店


HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画
2017年5月号(No.234)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子

2017年5月1日発行