100年俳句計画 2017年4月号(No.233)


100年俳句計画 2017年4月号(No.233)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。






目次


巻頭リレーエッセイ
アンリルカ


特集1
第六回 百年俳句賞 結果報告


特集2
松山発! HAIKU BAR



好評連載


作品

百年百花
 井上さち/大塚迷路/門田なぎさ/平山南骨


新 100年の旗手
 くらげを/涼野海音


新 100年への軌跡
 俳句 岡田朋之/紗蘭
 評 とりとり/亜桜みかり




読み物

美術館吟行/猫正宗

Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳:朗善)

JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭

ラクゴキゴ。/らくさぶろう

クロヌリハイク/黒田マキ

岡田一実の句集の本棚/岡田一実

百年歳時記/夏井いつき

鑑(み)るという冒険/猫正宗

mhm通信/暇人

朝の見る句/蜂谷一人

続 南極を詠もう!/源泰拓



読者のページ

100年投句計画
 選者三名による雑詠俳句計画
  桜井教人/阪西敦子/関悦史

 へたうま仙人/大塚迷路
 自由律俳句計画/きむらけんじ
 詰め俳句計画/マイマイ
 100年投句計画 投句方法

百人百様E-Haiku/菅紀子

俳句ポスト365

一句一遊情報局

疑似俳句対局/美杉しげり

100年俳句計画 掲示板

魚のアブク

鮎の友釣り

休載のお知らせ
 今月号の「短歌の窓」は、都合により休載いたします。
 次回今月分の投稿を含めて掲載予定です。


レポート

第55回 愛媛マラソン 吟行会



告知

編集後記

次号予告





巻頭リレーエッセイ



みきちゃんと桜
アンリルカ

 誰にも言っていない事がある。私は子供の頃から桜を見ると、どうしても死を連想してしまう。風で一瞬にして桜の花びらが散る様子は、突然の別れにとても似ている。
 6歳当時、私は香川県に住んでおり、とある街の音楽教室に通っていた。ある日、私達のクラスにみきちゃんという、私よりひとつ年上の女の子が新しく入ってきた。クラスメイトが増えて、私はワクワクしていた。しかし、みきちゃんは再びその教室に来ることはなかった。みきちゃんは交通事故に遭い、大型トラックに轢かれて亡くなったからだ。なぜみきちゃんが7歳で亡くならなければならなかったのか、幼い私は分からなかった。今でも心の整理ができていない。
 華やかな桜の季節がやってくる。散る桜を見るとぞっとするが、その感情は大切にしなければならないと思う。私はみきちゃんと、彼女のお母さんの悲しい悲しい微笑みを忘れることはない。


目次に戻る



特集

第六回 百年俳句賞 結果報告



 百年俳句賞(大人のための句集を作ろう!コンテスト)は、「百年後の未来に残したい作品を、私たち自らが作り、自らが選ぶ」というコンセプトで、毎年開催しております。
 今回の第六回百年俳句賞には、49作品の応募がありました。34名による百年俳句賞選考会員の審査により、ふづきさんの『水掻き』が最優秀賞に決定しました。また優秀賞は、板柿せっかさんの『蛍烏賊の目玉』、てんきゅうさんの『天空の墓』、越智空子さんの『さくら餅』、初蒸気さんの『首塚の向こう』、片野瑞木さんの『前進』、きとうじんさんの『くるぶしの砂』の6作品に決まりました。
 今月号には最優秀作品を付録の句集と共に掲載し、次号より、優秀賞作品を掲載いたします。


コンテストの経緯
編集長 キム チャンヒ

 本コンテストは、夏井いつき氏とキムによって予選審査を行い、「百年俳句賞」選考会員の投票により、最優秀賞作品が選ばれます。今回は、全四十九作品の中から、7作品が予選を通過、その後選考会員の投票により最優秀賞が決定しました。
 予選では、写生を主とした作品から、自由律俳句まで、様々なジャンルの作品から、一つ一つジャンル分けし、それぞれのジャンルの中から、どれが突出しているかを、議論し進めてゆきます。今回は、読み応えのありつつも手堅い作品が多くを占めていました。選考会員の中には、「俳句の新しさ、という点では物足りない」という意見もありました。
 そんな中、最優秀賞作品に選ばれたふづきさんの『水掻き』は、実感のある俳句から、「表現への挑戦」も感じられる作品で、高い評価を得ました。ふづきさんは昨年も「見出し」という作品で、優秀賞を獲得しており、日々の努力が実った形となりました。
 本コンテストも、歴史を重ねることで、「百年俳句賞」らしい作品というものが生まれつつあります。その「百年俳句賞」らしさが、未来の俳句への挑戦であり続けることを、願っています。

一次選考通過作品一覧
 舟歌  みやしたかのこ
 睨む  立待@ちびつぶぶどう
 不思議  宵嵐
 草青む  マーペー
 チョーク  クズウジュンイチ
 猫の舌  江口小春
 夏の雨  日暮屋又郎
 たった一人が君である  十亀わら
 月のマグマ  長緒 連
 水蜜桃  剣持すな恵
 学校が好き  八十八


最優秀賞『水掻き』選考評抜粋
百年俳句賞選考会員

 この作品は読んでいて詩の塩梅が心地いい。作者の人となりを感じられるところも良かった。
「アコーディオンひらいてとじて鳥の恋」「青葉雨やんで産みたて卵に血」「俳人A蔵の窓より蜘蛛放つ」「月白や潮騒を巻く真珠核」「白鳥の水輪は櫂にとどかざる」

 読み始めから春の明るい様子が細かく描かれている。
「雲呑麺なみなみ梅のほころびぬ」「湯屋の戸に禁忌あれこれ亀鳴けり」
など普段当たり前のことに注目しながら季語が生きている句が多いと感じた。
 夏になれば「豌豆のころがる先に邪馬台国」「龍の尾のごとき早瀬や雷去りぬ」のダイナミックな句がよい。
 秋に、表題句でもある「銀漢やヒトに水掻きありました」は銀河とヒトの歴史との間にある大きさを掌から見せようとしている点がいい。
 冬の景が少し悲しいものが多かったのは作者自身のことを詠んだ句が多かったためだろうか。
「雪や臥すははに繋がる管五本」「マスク外したのは涙拭くためか夫よ」「鎖骨寒し眼下にふるさとの波濤」は訴えるものがある。
 全体的にカタカナや記号、英語など様々な表現方法にチャレンジしているというのも印象に残った。

 まず、春の明るい光があふれているような出だしの流れが気持ち良かったです。
 一句一句のレベルが高く、句材も表現方法も実に豊富という印象。
「銀漢やヒトに水掻きありました」のように遥かな時空を感じさせる句、「ゴールに入る義足は爽やかに撓る」のような新しい素材への挑戦、
「青葉雨止んで産みたて卵に血」などに見られる感覚の冴え、「夕すすき淋しき爪はすぐ伸びて」の叙情……等々、世界が広やかで、
どんな素材も自在に詠めてしまうのではないかと思わされました。

 作品を読んで佳句と思った句に印をしていった。特に多かったのが「水掻き」と「くるぶしの砂」で、甲乙つけ難く何度か読み直した。丸印の数は僅かに「くるぶしの砂」が多かったが、記憶に残るようなインパクトの強い句は「水掻き」に多かった。どちらにするか迷ったが、百年俳句賞の目的を考慮してこちらに2点を入れた。
 「赤紙ガ来タゾ守宮ヨ野ヘ逃ゲロ」「北京ダックを取り分け名月の華燭」「着信の点滅木兔耳立つ夜」などには豊かな想像力がみてとれる。「叱られて菫より母小さくなる」「秋蝉の流れて雨後の溝きれい」「すみれ色の湯を抜きボーナス日の終わる」などの句は日常生活の中で詩情をくみ取っている。作者の豊かな感性から生み出された句には読者の記憶に残る句の力がある。

 一句一句のリズム、読み進めてゆく時の連なりのリズムもいい。俳句が韻文であることの楽しさを思い出させてくれる句群。
「ロベリアに蝶来ゼウスの子だくさん」「叱られて菫より母小さくなる」「のどけしや墓場のそばに墓石屋」「青葉雨止んで産みたて卵に血」
 明るく軽やかな中に作者ならではの世界を開いて見せる。日常の些細な物への温かな眼差しに共感し、励まされる心地がした。
「遅番や火蛾の粉浮くカップ麺」「サルビアや( )を埋めてノート閉づ」「すみれ色の湯を抜きボーナス日の終る」
 春に始まり節分で終る一年の景。最後に確かな句を据えたところもよいと思った。
「鬼やらい御堂の裏へ鶏かくれ」

 生活の中から生まれ来る上質の詩。身の回りの人達との関わりを上手く表現し、バランスよく配している。
「女系三代蛤に振る大吟醸」「叱られて菫より母小さくなる」「湯屋の戸に禁忌あれこれ亀鳴けり」「豌豆のころがる先に邪馬台国」「龍の尾のごとき早瀬や雷去りぬ「夕すすき淋しき爪はすぐ伸びて」

 今回の候補作品の中で、季語との取り合わせの距離感が、もっとも遠い作品と言える。
 この意外さが、読者を引きずり込んでゆき、81句という長丁場を全く疲れることなく、あっという間に読み終え、それどころか、気がつくとリピートしている。
 入りの掴みの句から展開の句、強弱のつけ方、エンディングの余韻の残し方まで、一連の流れに無理がなく、一見やりすぎかと思える句も、おとなのルールの範疇に収まっており、品性の良さがうかがえる。

 句材の多様さ、取り合わせの新鮮さなど、抽斗をたくさん持っている作者ということを感じた。飽きることなく一気に読ませる。「春や土起こせば縺れくるひかり」 「解氷の朝をきんいろなる羽音」「水盤のさざ波猫のしわざらし」「秋蝉の流れて雨後の溝きれい」など、写生の句でも単なる嘱目ではなく独自の感覚でものごとを切り取っている。「湯屋の戸に禁忌あれこれ亀鳴けり」「空の鮓桶戸口に積まれ昼のBAR」「ンゴロンゴロ保護区のヌーは月を追う」など、ユーモアのようでもありアイロニーのようでもある視点が面白い。「マスク外したのは涙ふくためか夫よ」のような作者の心情を語るような句も味わい深い。

 作者の視線で見るとこんなふうに感じられるのだなあと作者のレンズを横から覗いているような感覚で読ませてもらった。繊細であるが骨太に感じられるのは確かな実感がちりばめられているからだと思う。
「蝌蚪の足伸びる速さで炉に亀裂」
引きこもっていたり謝らなかったり休職中だったりするがその中にある開き直りに好感が持てる。季語が作者を明るく支えてくれている。全体的に語順がいい。一句の中を言葉を辿りながら読み手はいつの間にか景の中にいるような感覚になる。「早瀬」の「早」まで言えていたり隅々まで丁寧に作りこんでいるがそれを読み手に押し付けない爽やかさがある。
「龍の尾のごとき早瀬や雷去りぬ」
「花八手一生に炊く飯の数」
こんなこと考えたこともなかったという発見に意外性と共に合点がいく。
 読む楽しさを味わえる句集である。

 「アコーディオンひらいてとじて鳥の恋」「情死見し柳をすべる雨のつぶ」「豌豆のころがる先に邪馬台国」
 これらの句が好きでした。
が、反面「訳あって休職中」や「ゼリーぷるるん」「がっしゃん」など
もっと表現として磨くべき言葉があるように見受けられました。

 全体的に水分を感じさせる作品。数えると、はっきり湿度や潤いを感じさせる句が約四割ありました。明るい句も含め、「憂い」というキーワードが貫かれているのではないでしょうか。その意味で、表題「水掻き」が生きていると思います。
「ベル押してお待ち下さい花の雨」「青葉雨止んで産みたて卵に血」「銀漢やヒトに水掻きありました」「月白や潮騒を巻く真珠核」「白鳥の水輪は櫂にとどかざる」
淋しい句、訳ありそうな句には明るさを、明るい句には淋しさをささやかに配合し、一句の中に奥行きと深みを作り出しています。
「引きこもります丘をたんぽぽ占めるまで」「ゼリーぷるるん訳あって休職中」「西瓜冷すてんでばらばらでも家族」「父の忌はいつも晴れます柿羊羹」

 美しく詩的でありながらも迫力のある句群に惹かれた。好きな句は「解氷の朝をきんいろなる羽音」「女系三代蛤に振る大吟醸」「月白や潮騒を巻く真珠貝」等。少し気になったのはオノマトペだ。「ゼリーぷるるん」「連結器のがっしゃん」「名水のこんこん」等、当たり前すぎる気がして工夫の余地ありとみた。

 表題は「銀漢やヒトに水掻きありました」から。銀河の悠久の時間と人の営み或いは進化(?)との対比で思索的な句。この作品には水に関連した句が多い。
 全体を読むと作者の等身大の世界が描かれているという印象を受ける。好きな句をあげると「女系三代蛤に振る大吟醸、句帳まだ白紙ぞ花粉吹く杉ぞ、豌豆のころがる先に邪馬台国、西瓜冷すてんでばらばらでも家族、マスク外したのは涙ふくためか夫よ、白鳥の水輪は櫂にとどかざる」

「蝌蚪の足伸びる速さで炉に亀裂」
のスピード感、「情死見し柳をすべる雨の粒」「空の鮓桶戸口に積まれ昼のBAR」「遅番や火蛾の粉浮くカップ麺」の情感などは面白かった。
中盤にややダレがあり、「水掻き」と表題になっている句は類想感があると思った。

 ところどころに配されている口語調の句がアクセントとして良い働きをしていると思う。

 難解な語句を使わないで、日常 非日常をぴりっと描いている。現代への批判、反戦の精神が流れている。好きな句が多かった。


目次に戻る




松山発! HAIKU BAR


レポート 山澤香奈


 今回、松山市と各社が発信した「HAIKU BAR」は、体験型と言って差し支えない、そして吟行とも句会とも違う、松山発 新たな俳句の楽しみ方である。
 HAIKU BARは簡単に言うと、「飲食店で俳句に関するサービスが受けられる」ということになろう。今回、取材したのは、三店舗。まずは、この三店舗から「HAIKU BAR」はスタートするそうだ。


俳号サービス「ほやけん」

 一店舗目は、居酒屋「ほやけん」。店舗の外には古本(売り物)が置かれていて、なにやら外見からもユニークな匂いがしてくる。今回体験していたのは、ロッドさん(イギリス出身)。カウンターに座り、お酒と料理に舌鼓を打っていたロッドさんに、「ほやけん」店主はすっとカードを差し出した。
「ロッド、というお名前から、ロッド……竿、ということで、「一竿」という俳号をお付けしました」
 そう、まずここで受けられるサービスは、「俳号を付けてもらえる」というものである。店主がインスピレーションや、会話からイメージして、お客に俳号を付けるのである。俳号をつけてもらったロッドさん、店主の俳号に関する説明を聞きながら、うれしそう。
 さて、店のカウンターには「HAIKU BAR」のロゴが入ったカードが置かれている。裏は白いので、俳号を付けてもらった後はこのカードに一句書き、同席した人と見せ合い鑑賞を楽しむことができる。たまたま隣り合った知らない人とも俳句を見せ合ったりして、交流ができる、という仕組みだ。
「いやいや初心者には一句詠むのが難しいんでしょ」という声が聞こえてきそうだが、カウンターには俳句の作り方のガイドも置かれていて、初心者にも優しい配慮がされている。また、「ほやけん」の店主の暮井戸さんと時計子さんは、ともに俳句をされているので、アドバイスももらえる。
 初心者もまず、俳号を付けてもらい、ガイドを見ながら一句ひねる、なおかつお酒や料理を楽しみながら、という仕組みに、なるほど、と思った。俳号が既にある人も、「HAIKU BAR」用の俳号を付けてもらうと思えば、覆面みたいで楽しいかもしれない。

俳句オリジナルカクテル「caravan」

 二店舗目はバー「caravan」(キャラバン)。こんなおしゃれなバーに来たのは正直久しぶりすぎてドキドキものである。
 ここで受けられるサービスは、「俳句からイメージしたオリジナルカクテルを作ってもらえる」。先ほど一竿という俳号を付けてもらったロッドさん。提出した俳句は、庭に来た鶯を見て高揚した気持ちを詠んだ英語俳句。え、英語俳句でもいいの?と、思っていると、店員さんは一竿さんの俳句についていろいろ質問をしながら、カクテルを作り始めた。
 なるほど、各店に置かれているという作り方のガイドは英語にも対応している。ここにも白紙のHAIKU BARカードが置いてあり、この店からスタートしても大丈夫だし、もちろん一店舗目の「ほやけん」で作った俳句を持ち込んでもいいという訳だ。
 一竿さんの俳句からイメージされたカクテルは美しい桃色。
 こんな素敵なバーには一人でなかなか来られない。しかし、こんな素敵なサービスが「俳句」で受けられるとなると、思わず足を運んでしまいたくなる。

俳句×マジック×JAZZ?「WBGO」

 三店舗目はマジック&ジャズバー「WBGO」。こちらは、本誌「JAZZ俳句ターンテーブル」にも登場するマミコンさんこと、堤さんが店主。店内は堤さんがこれまで撮影してきたジャズに関する写真が飾られ、音源などが所狭しと置かれている。きっとジャズファンならば狂喜乱舞するところであろう。
 ここで受けられるサービスは、マジック。そう、堤さんはマジシャンでもある。ここでも活躍するのがHAIKU BARカードである。カードを渡した途端、堤さんの手により、まるでカードが生き物のように動き出す。「マジックなら俳句と関係ないんじゃ……?」とふと頭をよぎったが、そこはHAIKU BAR、きちんと俳句と絡めたマジックである。
 もちろん、店主と俳句 ジャズ、そしてジャズ俳句の話で盛り上がるもよし、俳句を絡めたマジックを堪能するもよし、いろいろなジャンルの枠を超えて楽しめること間違いなしである。

 さて、ここまで一通り取材をして、せっかくなので「CARAVAN」で実際にオリジナル俳句カクテルを体験してみた。
私の俳句は
シェイカーの春三日月を生み出しぬ
という、ごあいさつ句。この句からカクテルを作ってもらえるなんて、と、ついつい店員さんの手元をまじまじと見てしまう。そして、出てきたのは、桃色の、何とも素敵なカクテル。これが私の句から……と思うと飲むのが勿体ない気もするが、一口。……美味しい〜!! こんなにワクワクして、おしゃれで、美味しいなんて、もう一杯オリジナル俳句カクテルオーダーしたい!!
 飲みながら思っていたのが、たとえば暗い俳句や悲しい俳句、難解な俳句を提示したらいったいどんなカクテルになるのかしら、ということ。これは、俳句を提示する俳人のセンスも問われるか……?と、俳人魂に火をつけられるような気がした。
 残念ながらCARAVANでのサービスは、3月28日までとのこと。今後は別の店舗で、オリジナルカクテルのサービスが受けられると嬉しい。
 
 このHAIKU BAR3店舗すべてに、俳句ガイドと俳句カード、それから筆記用具が置かれている。またガイドは英語に対応している。つまり、手ぶらで訪れても、初心者の方でも、海外の方でも、楽しむことができるように考えられている。

 今回は3店舗であったが、主催者側はこれから店舗を増やしたい、とのこと。松山市内に、今回の店舗のように、その店独自の俳句サービスを受けられるお店が増えれば、吟行や句会だけでない、新たな楽しみ方ができる。
 オリジナルカクテルがあるのなら、俳句に合う日本酒を提供してくれるお店はどうだろう。お酒を提供するお店だけでなく、カフェや喫茶店ではどうだろうか。お昼に営業している店なら、お酒が苦手な人も楽しめる。
 HAIKU BARは動き出したばかりの企画だが、これからどのように発展していくのか、とても楽しみである。皆さんもぜひ、ペン(も各店に置かれている)句帳(もなくてもガイドやカードが置かれている)を持って、訪れてみては如何?


目次に戻る




美術館吟行


第28回
「生誕140年 杉浦非水 開花するモダンデザイン」展 吟行会

取材協力 「杉浦非水展」実行委員会(愛媛県、愛媛新聞社)、愛媛県美術館

文 猫正宗


 杉浦非水、明治九年(一八七六)愛媛県松山市出身。グラフィックデザインの先駆者にして、生涯日本にデザインを根付かせるために尽力。
 非水の名は、一時、島根で中学教師をしていた折、子規派の俳句に熱中した際の俳号「翡翠郎」より。また彼の妻は、歌人杉浦翠子として活躍。本誌読者とも縁遠からざる存在なのだ。

 明治後期、三越は老舗の呉服店から近代的な百貨店へと改革を進めている中、ポスター、PR誌の図案家として駆け出しの非水を抜擢。非水のデザイン感覚は、新時代の都市文化の中心的存在を担い、自ら流行を創出しようとする企業イメージと見事に合致。やがて、「三越の非水か、非水の三越か」といわれるまでになる。

「三越呉服店 新館落成」
舞ひ上がる羽と炎と蝶々と  遊人

「三越広告図案」(原画)
モデル嬢十五頭身春うちは  遊人

 若き日に日本画家を志していた非水は、東京美術学校(現 東京藝術大学)で、洋画家の黒田清輝と出会い、彼がパリから持ち帰ったアール ヌーヴォーの資料に大きく影響を受ける。

アール ヌーヴォーの窓より香り立つ春風  ひかる

非水の日本画時代の作品「孔雀」。
春風へ孔雀は羽を落としけり  恋衣

細部は精緻ながら大胆な構図により、どこかおおらかな雰囲気が漂う。
 やがて図案家としてポスター、ブックデザイン等、精力的に活動。
 「星製薬」のポスターはその中の一つ。様々な星の意匠の中央に座するは医薬の女神か?

うすももに透くる乳房よ星月夜  猫正宗

 蛇足ながら星製薬は、ショートーショートの名手、星新一の父、星一が立ち上げた会社。
 愛媛県美術館では、遺族より寄贈された、スケッチ、写真、スクラップ、書簡、あるいはコレクションや遺愛品を「非水のアーカイブ」として保存。中には、欧州遊学に使った旅行鞄も。

欧州の春を目指せよ大鞄  ひかる

 非水の創作活動の根幹に「写生」がある。その究極の一作が「非水百花譜」である。今回はその中の「椿」で競作。

朝ぼらけけふ咲く椿に触れにけり  恋衣

俳人の眼が捉える細部。
虫喰ひの葉も描かれたる椿かな  ひでやん
そういつも椿の葉っぱは喰われてる  チャンヒ

 しかしながら、ただ現実をそのまま写し取ったのでもなく、巧みに図案化されている。

存分に咲きましたどうぞご介錯をと椿  日暮屋
もう一度見出されたる椿かな   猫正宗

 もしお持ちであるならば、1月号のモリス展の画と比べて見るのも一興であろうか。
 非水の遊学時、欧州ではアール デコ様式が隆盛の兆しを見せていた。非水もその影響を受けるとともに、広告メディアのより実践的な効果や意義について、より深く考えるようになる。
 鮮烈な色彩、直線 立体的構図、幾何学的なパターンなどを特徴とする図案、そこに大胆に置かれた、これでもかという具体的な商品。純粋な商品広告でありながら、それはアバンギャルドでさえある。

カルピスを瓶で飲む象春の夢  ひでやん
飛魚にヤマサ醤油を二リットル  日暮屋

そして後期の代表作といわれる「東洋唯一の地下鉄道 上野浅草間開通」

地下鉄が小鳥を未来へ連れてゆく  チャンヒ
小サキ手ノ指サス方ヨリ春来ル  恋衣
他所行きの春や地下鉄乗り初むる  ひでやん

「萬世橋まで延長開通 東京地下鉄道」
日脚伸ぶ地下鉄で行くオムライス  日暮屋

最後に待つのは、大正末、昭和期の雑誌表紙

「科学 第二巻第五号」
足元の寂し天女の花飾り  遊人

 そして、装丁
惜春の本こそ永遠のいのち  チャンヒ

 そう、非水のデザイン自体がまるで永遠の命を持つが如く今でも新しい。このかつてあった未来の回顧展に触れることは、現在の私たちの展望に、また別の角度を与えてくれるのかもしれない。


紅椿すでにこの世の紅ならず  ひかる

息白し過去より押し寄せる未来  猫正宗



「生誕140年 杉浦非水 開花するモダンデザイン」展は3月30日(木)まで開催中。

次回吟行会
愛媛県美術館「名嘉睦稔展 風の伝言を彫る」吟行会
4月8日(土) 朝10時現地集合
参加費無料(入館料は別途)
申込締切: 4月6日(木)
『100年俳句計画』編集室までお申し込み下さい。TEL 089-906-0694


目次に戻る




百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2017年度 第一期 第一回


金目銀目
井上さち

火を吐ききって椿落ちにけり
寛解やとたとたとたと雪解水
一遍像の腱隆々と冴え返る
「ドラゴンの卵」たる入浴剤や春
人が来て駅らしくなる春の風
紅梅や髭とピアスの若きシェフ
離婚したおかげでスィンガー春ショール
春愁や金目銀目の海と空
麗かに限界集落より歩く
よく振れるオッターテイル花ミモザ
朧夜の叔父のギターと祖父のチェロ
霾や片恋らしき駱駝の眼

「いつき組」組員、「街」同人。
季語の宝庫日土に暮らす。


前略
大塚迷路

芳春や安請合をする男
ぐうの音が春の吐息のまえに出る
そんなこと言っても桜いつか咲く
梅園を中腹に置く一戸かな
ぶらんこと朝を揺らしておりにけり
寝転んだあと風船をふくらます
春の昼やはり水音だったのか
桜咲く連帯責任のように
花を見てから十時間後の私
家中の振り子をみがく花のころ
逃水やまさかの友に借りる金
次の手は約十種類佐保姫来

マルコボ7大特典の誘惑に負けて百年百花を引き受けてしまった。
今までに引き受けた方々の喜びの声をいっぱい聞いている。
終わるのが楽しみだ。


春の月
門田なぎさ

立春や運河に騒ぐ雲といる
邱さんの点呼初蝶よぎりたり
梅咲いて寝起きの顔を窓に寄す
谷川のとくんとくんと蕗の薹
尾を打って水響くなり春の馬
海鳥とわたくしの距離春日さす
淡泊なうしろ姿や紙の雛
恐竜の尾の水平に春愁
眼も耳も潮に濡れゆく孕鹿
若干のライバルもいて春日傘
梅一枝影が影生む夕暮れよ
春の月岬の起点より上がる

「第二回大人のための句集コンテスト」(現「百年俳句賞」)最優秀賞受賞。
村上春樹の新刊を買いましたが、まだ読めていません。
時間のやりくりは案外難しいです。


息を吐く
平山南骨

大橋をはみ出す車列鳥雲に
永き日や耳の毛がやや気に掛かる
靴下のつま先の穴ひなまつり
みつめあふ杉の花粉に目は潤み
ハーモニカ袖に拭へり土手の春
畦を焼く腰のラジオが株価告ぐ
迫り来る工期や韮を刻みをる
春の雨血圧計が息を吐く
三椏の花貯水池を風走る
春夕とんかつの身のほのあかし
肝臓を励ます朝湯さへづれり
蠅生る朝日の満つる喫煙所

1968年生まれ。2005年より作句開始。「鷹」同人。


目次に戻る



新 100年の旗手


読者投稿による3ヶ月連載作品集
(2017年4月号 〜 2017年6月号 1/3回目)


春のぽき
くらげを

あやふややぶらんこのまま鳥になる
まなざしの彼は桜守だと思ふ
遅れたる古木やうやく花に満つ
春泥を踏みたい今朝のよいしらせ
春の海なつかしいもの棲んでさう
鳥雲にシャツは箪笥にさやうなら
もれなくと聞いて躊躇や目借時
霞みつつ去つてゆく人猫背の人
阪急や席をゆづれば春のぽき
雨ざらしあざらし濡れてうららけし

ふなむしーずの摩耶山担当。好きなきのこはタマゴタケ。何でもひっくり返します。


明るき雨
涼野海音

土筆つみゐたり学校嫌ひの子
初蝶と同じ日向に立ちゐたり
卒業やアップルティーと雨の音
別れたる人よりメール鳥ぐもり
野遊の明るき雨を帰りけり
暁の巣箱にとどく波の音
剃刀に水のつめたさ桜咲く
春の月旅信にぬくみありにけり
恋猫と手鏡ほどの水たまり
海鳴りの耳に残れり春うれひ

1981年香川県生まれ。「火星」 「晨」同人。高松 木の芽句会幹事。句会前にウドンを食べてエネルギーを充電してます。


2017年 第2期連載者募集中
締切2017年5月15日(月)

応募内容
2017年7月号に掲載できるタイトル付の10句

応募先
Eメール magazine@marukobo.com
件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
(郵送またはFAXでも受け付けております。詳しくは編集室までお問い合わせ下さい。)


目次に戻る





新 100年への軌跡


2017年度 第一期
第一回


中途半端に満たされて
岡田朋之

嘘から始めてるくせに春ショール
春色の軟水シンクに落とし込む
当事者にだけはならない春浅し
猫の子も押し倒す事を知っている
春の水ぬるくて肺に穴空いて
春の宵少女箱に詰めている
爪割れただけで動けぬ春の朝
花の兄目立たずとも立つ事に意味
太い足ですね春の服ですね
中途半端に満たされて春兆す
春めきて切れぬ包丁押し付ける
寒戻る一発殴り忘れてた
春の海名のない街の灯に覚え
間違いと分かって春の日に弛む
落第の紙鶴にされてるわけでなく

岡田朋之(おかだ ともゆき)
1992年生まれ。学生俳句団体ふらここ所属。


序曲
紗蘭

陽炎やフォルテに始まりぬ序曲
ビル群の朝抜けて東風届く窓
ありふれたリュックに菜の花の鼓動
炭酸水の泡はどこから沈丁花
蝶の来る余白だらけの単語帳
入学の階段教室にて睡魔
ぶらんこが地の重力に負けるとき
クッキーの脆くて春日傘の重くて
吸い殻の余香まとひぬ花曇
春泥の靴粛々とエレベーター
草臥れて蒲公英電車急停車
行く春の葉影の蒼を跨ぎゆく
はるさめのいろほとばしるクラクション
チョコレートの断層果てるなら春
透明な飴だけ集めたる四月

紗蘭(さらん)
1998年生まれ。小3より俳句を始める。第4回句集を作ろう!コンテスト最優秀賞。第5回写真俳句コンテスト課題句部門最優秀賞。2014年に第一句集「静止画の街」出版。2017年より豪メルボルン大学にて建築を専攻。



春の憂いと喜びと
とりとり

 岡田さんの「中途半端に満たされて」は、全体に春愁の気分が溢れていて、共感を呼ぶ作品でした。
爪割れただけで動けぬ春の朝 岡田朋之
 鬱々とする朝に爪の痛み。それだけで動きたくない自分に嫌悪。これは「春」でなくてはね。
春めきて切れぬ包丁押し付ける 岡田朋之
 切れない包丁は一年中だけれど、春にはそれが妙に気になります。春の明るいひかりのなかのささやかな憂鬱。
落第の紙鶴にされてるわけでなく 岡田朋之
 落第を知らせる紙を鶴にするわけにはいかないが、どうするのこれ、という無力感。

 紗蘭さんの「序曲」は、春の若々しい色彩が鮮やかで、詩情豊かな作品でした。
炭酸水の泡はどこから沈丁花 紗蘭
 沈丁花の甘くて重い香りと、ぶくぶく重そうな泡が絶妙なハーモニーですね。本当にどこから湧いてくるの?って思いますね。
透明な飴だけ集めたる四月 紗蘭
 集めた透明な飴がきらきら光って、いいことが待っていそうです。

 意欲にあふれるお二人、次回も期待しています。

とりとり
1957年生まれ。三重県在住女性。第1回選評大賞優秀賞。


スタートライン
亜桜みかり

 「中途半端に満たされて」には否定や負の言葉が入っていない句がほとんど見られない。
当事者にだけはならない春浅し
 映像を持たない季語と事柄との取り合わせなのだが、だけはならないというきっぱりとした断定によって、読者の心に小さくない印象を残す。
春めきて切れぬ包丁押し付ける
寒戻る一発殴り忘れてた
 活用語を多く含んだ口語の語りで作者の世界に静かに、少しずつ引き込まれていく。タイトル句で兆した「春」がどのように深まっていくのか、要注目。
 
 「序曲」は連載スタートとしての意味も含め作者の毅然とした姿勢を感じさせるタイトルだととらえた。
陽炎やフォルテに始まりぬ序曲
ありふれたリュックに菜の花の鼓動
入学の階段教室にて睡魔
透明な飴だけ集めたる四月
 名詞で終わる句が多いが、その中に句跨りを三音の名詞で止めた句をちりばめることで、揺らぎを感じさせつつ作品群を引き締めている。
 動詞は最小限に、さまざまな名詞が魅力的に配置された句群で、次回作もとても楽しみ。

亜桜みかり
1961年俳都松山市生まれ。今治市在住。第2回、第7回、第8回選評大賞優秀賞受賞。第3回大人のための句集を作ろう!コンテスト優秀賞受賞。


目次に戻る




Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳 朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ

No.45


March comes in like an angry lion
Stops and glares
Then eats a lamb chop

三月の獅子のごと仔羊喰らふ

(直訳)
三月は怒れるライオンのように来て
立ち止まり 睨み
そしてラムチョップを食う


 Here is an exciting month of music, sports, and Japanese language studies. I am told that my Japanese skills are improving, but I do not feel it and think people are only being kind. About music, I teach a lot and hope that there is some benefit to the students. About my life's work, cello playing, I think that I must be always be practicing my scales and etudes, like a senior athlete in the gymnasium. I am confident that this is the right thing for me, along with skiing right now and bicycling after the snow melts. Our town swimming pool opens in June, and we shall have romantic evening swims even though it is in the local junior high school.

 音楽、スポーツ、日本語学習にもエキサイティングな月だ。僕の日本語がうまくなってると言ってくれる人があるが、僕自身は感じなくて、みんな優しいのだと思う。音楽については、教える機会が増えた。何でもいい、生徒に役立つことがあればと願う。僕のライフワーク、チェロの演奏については、常に音階と練習曲をやらねばならないと思う。ジムに通う老スポーツマンみたいに。それが僕にとって正しいことなんだと自信がある。今はスキーに専念し、雪が解けたら自転車に乗る。六月は町のプール開き。ロマンチックな夕暮れの泳ぎが楽しめるよ、地元の中学校のプールなんだけどね。


目次に戻る





JAZZ俳句ターンテーブル


文 白方雅博(俳号 蛇頭)

第73話
ナイト トレイン  エド シグペン


漆黒と空のあいだはきっと春  千栄子

 「俺はマイルスにラッパを教えた」なんてMCを入れながら、クラーク・テリーは超絶テクニックで陽気に演奏した。途中、逆さまにしたトランペットのバルブを指の爪側で跳ね上げ吹くという曲芸演奏も披露した。対照的にバックのケニー ドリュー率いるピアノ トリオは各々の躍動感を一体化させ、極めて解像度の高い画像を送り出すようにクールにプレイした。ベースはニールス ペデルセン、ドラムスはエド シグペン。当時、北欧を拠点に活躍したユニットである。会場は松山市千舟町4丁目「アオノホール」。
 コンサートの翌日、僕は東京出張のため職場経由で松山空港に向かい午前中の便に乗り込んだ。席は前から3番目あたりの通路側。そこにクラーク テリーの顔が現れた。腰痛のペデルセンはシートの背もたれを支えに一つ前の窓際の席に腰掛けた。真ん中の席にはトランペットとフリューゲルホルンの入ったハードケースが鎮座。その持ち主が僕の前の席に腰掛けた。ケニー ドリューとエド シグペンも近くの席に居たのだと思うが、僕は大柄な二人のオーラで完全に舞い上がってしまった。間も無くジェットも舞い上がった。僕はシートベルト着用のサインが消えたタイミングで勇気を振り絞り「エキスキューズミー」と発した。その後のことはよく覚えていない。

墨跡の無き筆運び磯の春  蕪榴子

 今回のサブテーマ「オスカー ピーターソン トリオ+ワン=クラーク テリー」は、あのアオノホールのライヴを蘇らせてくれる名盤。ベースは勿論レイ ブラウン。これにエド・シグペンのブラシング リスペクト句第1弾を添えさせていただく。

スネア打つたびてふてふの弾けたる  ジョニー

 「あれは娘の麻実子が3歳の冬だったから1982年のライヴだね。松山空港のロビーでクラーク テリーに抱かれた娘が今にも泣きそうだった」と、俳号「マミコン」こと堤宏文さん。何とマミコンさんご一家もあの日あの時、松山空港にいらっしゃったのだ。ご一緒にお茶できたら良かったのに。

菜の花を炒めるごときブラシング  照造

 ドラマーのブラシングをよく焼きそばやお好み焼きに喩えたりするが、菜の花を炒めた瞬間に人気句となってしまった。リスペクト句第2弾。

輪郭を作るブラシや朧月  ジョニー

 メインテーマ、オスカー・ピーターソン・トリオの名盤「ナイト トレイン」の輪郭を形成した陰の立役者はエド シグペンである。二十歳、俳句甲子園組、大学ブラスバンド部員のジョニーさんが、これを見事に切り取った。リスペクト句第3弾。

薄氷やシンバルレガートのやはらか  蛇頭

 つまり、シグペンは全て巧い。完璧なのだ。


Today's Turntable
『ナイト トレイン』1962年/verve
『オスカー ピーターソン トリオ+ワン』1965年/mercury


「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は月曜日の21時〜22時。

次回のJAZZ句会は、4月23日(日)13時より。テーマはジャズギターのケニー バレル。アルバムは「ケニー バレル&ジョン コルトレーン」をメインとします。参加希望の方は、本誌の句会カレンダーを参照してください。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU』vol.1〜vol.3(マルコボ.コム)を発売中。


目次に戻る





ラクゴキゴ


第七十三話

文 俳句 らくさぶろう


雑俳
 落語にも俳句が

 八五郎がご隠居さんを訪ねて来る。
 隠居という身分は日々何にもすることがないのでつまらないでしょう?と訊くが、ご隠居には道楽があるという。
 それが俳句。
 八五郎も俳句ならやったことがあるといい、町内の俳句の先生のところで俳句の会をやっていると聴き行ってみたら、「お前さんもやらないか?」と誘われ、参加してみたらしい。
 まず出たお題が「蛙(かはづ)」。八五郎が作ったのが「がま口を忘れて何もかはず(買わず)かな」
 次に出た題が「朝顔」。八五郎作「朝かおを洗うは年に二、三回」
 椿の題で「痰よりも少しきれいなつばきかな」
 春雨は「船底をがりがりかじる春のさめ(鮫)」
 目白は「JR目白の次は池袋」
 福寿草は「福寿そう(荘)三畳一間で四万円」
 くちなしは「くちなしや鼻から下はすぐにアゴ」
などと、わけのわからぬ句を連発するものだからご隠居さん、「お前さんみたいなのは初雪というきれいなお題でやってごらん。初雪や二の字二の字の下駄のあとなんて、いい句があるぞ」
そうしたら八五郎「初雪や一の字一の字一本刃の下駄のあと」とやるからひどい。
 ご隠居さん「お前はじゃあこういう風なシャレのきいた言葉を重ねるやつはどうだ?」と勧めたのが「月々に月見る月は多けれど月見る月はこの月の月」
「山王の桜に猿が三下がり合いの手と手と手手と手と手と」
 これはおもしろい!と八五郎、覚えようとするがなかなか覚えられない。どうも後半をまちがえてしまう。
「あいのてとぺとぺと……」
「あいのぺてとてぺて……」
「あいのてとてとてけてっとーてっとー」
 そうしているうちに隣の人が窓を開けて「お宅はラッパのけいこですか?」

 昭和の名人 三遊亭金馬(三代目)が得意にしていた噺です。本来は今回のあらすじに書いた流れではなく、オチに「天」が出てくるものです。(句が選ばれる際の“天 地 人”の“天”)
 この流れは、春風亭柳昇作で、そのまま弟子の春風亭昇太(「笑点」の司会)に受け継がれています。
 故柳昇師は「えー、私が春風亭柳昇と申しまして、大きなことを言うようですが、わが国では春風亭柳昇といえば……私ひとりでございまして」という冒頭のツカミで笑わせていました。
 ひょうひょうとした口調がこの馬鹿馬鹿しい「雑俳」というネタにはピッタリで、その感覚を見事に昇太師がよみがえらせています。
 「品川心中」や「芝浜」、「紺屋高尾」などじっくり聴かせる噺もそれはそれでいいのですが、このような軽い噺をサラリとやって颯爽と舞台を降りる噺家をかっこいいなと思います。
 古典落語にもちゃんと俳句が出てくるのです!
 まあ八五郎作の句はラジオの「一句一遊」に出すと月曜日に組長に叱られながら紹介されるかもしれません。
 僕もこの原稿を機に、この噺をレパートリーに加えてみようかなと思ってます。
 堂々と下手な俳句を人前で出来るから!!

春雨やくずきりとどうちがうのよ


目次に戻る





新聞記事に隠された俳句を発掘する

クロヌリハイク



作 黒田マキ


1月の アフリカの地で流す汗
(愛媛新聞より)

フグ食べ た 兄弟 辞任に追い込まれ
(愛媛新聞より)

春なのに いい日旅立ち 桜坂
(2017年3月12日 朝日新聞より)



目次に戻る




100年投句計画

選者三名による 雑詠俳句計画




先選者 桜井教人

 ランドセル商戦の佳境は夏だということを少し前に知った。今どきのランドセルは、色、形、刺繍、留め具など、実に多様なオプションがあり、ほとんどオーダーメイドのようなものだそうだ。だから早くから注文しないと好きなものがなくなるし、仕上がりが間に合わなくなるのだ。それを聞いてうちの学校の子どもたちのランドセルをよく見てみた。同じようなものもあるのだが確かに微妙に違う。全く同じものを見つけるのはかなり困難だ。特に低学年ほどその傾向が強い。ランドセルの進化はすさまじく恐ろしい。




静寂を少し揺らして椿落つ  ミセスコナン
 椿が枝を離れ、地面に落下するまでの僅かな時間を見事に切り取っている。「揺れる」ではなく「揺らす」としたことにより、軽い虚の世界が生まれ、そこから詩が広がる。擬人化を生かした椿ならではの世界観だ。更に「少し」という言葉を使う場合、結構勇気が必要だが、この句ではとても生きて働いている。椿の一物仕立に真摯に向き合った作者のチャレンジ精神にも拍手を送りたい。




あろうことか朝寝の妻を抱いてしまう  藍人
 「あろうことか」から始まる句は見たことがない。「抱いてしまう」で終わる句もみたことがない。俳人としての作者のセンスにも、朝寝の妻を抱くという作者の生活にも羨望の念を持たずにはいられない。

ランドセル眩しく匂う四月来る  たあさん
 「眩しく匂う」という措辞がとても新鮮かつ実感を伴う。甘くなりがちな素材でも、工夫次第で十分に詩になることがよくわかる句だ。新しいランドセルを何度も背負ってみる子どもの姿が眩しい。
春の山風も光も懐きたる  ひさの
 風景全体がとても馴染んだ一枚の絵のように見えて来た。これは「懐く」という動詞の働きによるものだ。俳句における動詞の選択は句全体を決定すると言っても過言ではないことをこの句が教えてくれる。

春の夜の背中に羽の生えたこと  誉茂子
 羽が生えたのは「夜の背中」とも「私の背中」とも読める。読者の想像力に任せてどちらで読んでも楽しい。いずれにしても春の夜だからこそ起こり得る虚の世界。羽が生えた自分はどこに飛んで行くのだろう。

人間失格と言うか春の闇  まこち
 いいなあ、このストレートな叫び。春の闇が自分に向かって「人間失格」と言い放っているとも読める句の作りが作品の質を高めている。ただ春だからそれほど深刻なものではないのだろう。春愁をこじらせた程度?




老人が鳩に負けさううららけし  くらげを
四股を踏む足の高きや春立てり  おせろ
春愁や四捨五入などできぬこと  小市
リ、ル、ルギと止むオルゴール春の昼  さより
梅白し先の欠けたる琴の爪  葉音
理髪師のピアスを揺する春の夕  小雪
白鳥の首をたたみて寄り添へる  一走人
人ふたり入る荷物や春の汽車  和音
地球軽いのか水仙重いのか  土井探花
吾が腰の聞く耳持たぬ如月の朝  まんぷく

桜井教人(さくらい きょうと)
1958年愛媛県生まれ。愛媛県公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回 29回俳壇賞候補。



先選者 阪西敦子

 街は工事の季節。まだ寒い夜中、とりどりの灯をともして歩道、車道を掘り返している。迂回を誘導されて、ポールに囲われた車道の中央へ出ることがある。広々とした車道は歩道に比べて眺めがいい。月も建物も、行き交うヘッドライトもテールライトも、いつもより近くを走る車体や、工事のあれこれに映ってたのしい。




リ、ル、ルギと止むオルゴール春の昼  さより
 光、風、あたたかさと、何もよく揃った春の昼。なにをするにもよい時間であるけれど、無為に過ごすのに何よりもふさわしい。この句でもその例にもれず、ただオルゴールを鳴らし、外を眺めるといったよう。動力がなくなってしまえば止んでしまうオルゴールは、無為の時間にちょうど良い。ここではその止む瞬間をとらえた。音は止んだけれど、「リ、ル、ルギ」という空前の擬音語が生まれた。春昼はやっぱり無為に過ごした方がいい。




埋火や姉妹揃へば静電気  凡鑽
 水をかけるほどでなく、消えるのを待つために榾を埋める。目には触れないけれど、なお続く熱はある。昔は一緒に過ごしたこの姉妹も、今ではそれぞれの生活があるのだろう。しかしながら揃う時があれば、不思議にその間を電気が通う。

車椅子の膝を掠めて蝶の翅  てん点
 車椅子に畳んだ膝は、確かにその体の先端。その進路を渡るものがあった。辛くも翅を掠めてゆくのは、春の先駆け。

血液のどくんとめぐる朧かな  誉茂子
 「リ、ル、ルギ」に比べれば、「どくん」はあまりに知られた擬音語であるけれど、それだけに伝わるものは多い。集中した意識や、高揚、あたりのしずけさ。曖昧な「朧」にかたちを与え、「朧」によって固有の「どくん」とさせられている。

あと十日通ふ校門春の雨  西原みどり
 三年か、六年か、あるいは途中での転校か、その最後の日、ではなく、十日前のことである。日ごろの十日であればいつの間に過ぎたのかわからぬほどに、あっという間に過ぎるもの、きっとこの十日もそうだろう。けれど、春の雨によって一度時が止まったような、十日という塊が改めて身に迫る。

初雛へ朝日あつまる窓開く  あおい
 生まれて初めての雛祭りを祝う雛。この先のいつの雛よりも晴れやかに飾られるのだろう。慣れてゆく今後の雛とは違い、堂々と日を集める中に置いた。「朝日あつまる窓」と述べて、雛自身が日を集めるようでもある。




寝落ちして半端に目覚める冬の月  ぺぷちど
ゼラチンのぷるん玲瓏三月は  桂奈
四股を踏む足の高きや春立てり  おせろ
春寒のパンを焦がしてゐたりけり  ヤッチー
紅梅の窓に置かるるオルゴール  さより
春暁の猫起こさぬよう出かける  のり茶づけ
菜の花や猫鳴いてゐる水源地  もね
おとがいの丸き少女へ牡丹の芽  彩楓
頬に当てえのころ柳銀の絮  エノコロちゃん
幾重にも枝垂桜のまなうらに  レモングラス

阪西敦子(さかにし あつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。



後選者 関悦史

 今回の選に当たる二日ほど前、先選者である阪西敦子さんにたまたま会って呑んできました。愛媛大学准教授の青木亮人さんがNHKカルチャー講座のために東京に来ていたのを囲む飲み会でしたが、その席上、阪西さんに「関さんごめん!」と謝られた。今回の先選、阪西さんが遅らせていたようで、こちらに回って来たのは締切の二日前という……。といった楽屋話はともかく、青木さんの講座はラジオで放送されるようですので要チェック。


特選

乳呑み子の触れてさ揺らぐつるし雛  柝の音
 赤ん坊を出したことによる可愛さの押しつけや、あるいはただごとに終わってしまう危険にかなり接近しながら、句は揺れる吊るし雛のイメージへと収斂し、情緒性を非意味の方へ引きつけることに成功しています。

あらかじめ金星の生る冬田かな  松田夜市
 普通の景色をレトリックで際立たせた句。何も生えていない冬田の上の金星を「生る」で関係づけた点に詩情あり。「あらかじめ」がやや意味や機能が取りにくいところですが、春の田へ転ずる先触れとも読めます。

キッチンの傷磨きをり春の夜  うに子
 キッチンを磨く句は珍しくないし、それと「春の夜」も無難な合わせ方の域を出ませんが、ここでは「傷磨きをり」があざやか。小さなマイナスの言葉を出した後なので、一見無難な季語の明るさ、大らかさが効きます。


並選

葉落ちている青どこまでも冬の空  ぺぷちど
春泥を乾くまで見るカンペール  くらげを
蒲公英や摘めば乳を吐く手折らずに  芳香
風光る真白き地図に何書かう  dolce
お遍路の傘のしめりや早き春  幸
緋毛氈古雛鎮座旧街道  桂奈
菜飯炊く何もなき日の花一輪  風さら紗
節分や鬼を廃業して久し  ぴいす
春の月太極拳の弧を描き  おせろ
閼伽桶に雑然と入る花樒  ヤッチー
三月の社長と啜るカップ麺  暮井戸
赤点はイヤです先生春なんです  藍人
保育所の門に別れの夢見月  たあさん
アネモネや眠れぬ夢の夢も夢  凡鑽
今宵また子どもの家へ春の月  久我恒子
起つ冬芽各々の星さしてをり  小市
風誘う信号右へ梅の里  ひさの
冬かもめ置き去りにせし車窓かな  松田夜市
初午や朱の回廊のほの明し  南亭骨太
足裏にゴリゴリ伝うアイスバーン  富士山
水色のギンガムチェック街うらら  かのん
無人家にズズと物音いたちかな  青蛙
すれ違いざまのハイタッチ風光る  のり茶づけ
春の雹セルロイド眼鏡跳ね上げて  小雪
白梅の光めざして鳥の影  一走人
湯上りの春月球場のうねり  もね
サーファーの水鳥めいて波を漕ぐ  和音
金色の笑ふ顔して春の月  てん点
路線図を旅してみたり目借時  ゆりかもめ
息苦しひかりばかりの春の山  緑の手
春風やアフィン代数多様体  山崎ぐずみ
花型のおはじき数へ四月来る  あるきしちはる
早春の城へとつづく道登る  喜多輝女
天智睨みし潮の泡立つ春である  越智空子
狩りたてて人も獣となりて追う  中川弘子
ふと不安朝がきれいで大根引  人日子
初笑ひ家族の揃ふ山の荘  高木久美子
薄氷を踏みて夢無き若者よ  松尾千波矢
春暁の風呂に眠れる妻の貌  内藤羊皐
しがらみを抜けた女の梅だより  台所のキフジン
夕日かな一本うかす冬菫  世子
開けにける木戸の閂春の宵  風海桐
車検から戻るワゴンや桜草  どかてい
春寒や朝焼け淡く染みにけり  ひでやん
上陸せよ春一番と怪獣王  まこち
冬椿五枚小鉤の足捌き  彩楓
あっ鶫あわて茂みへチョンチョンチョン  明日嘉
立春やからくり音の止む夜空  土井探花
カタオモイ片言のごと子の春愁  西原みどり
追われたる番のメジロ高く速く  青柘榴
かろやかに巫女の指先春兆す  あおい
何のため生きる問答クロッカス  マカロン星人
春動く地盤調査の杭深く  八木ふみ
陽炎に牛のあくび揺れにけり  桃林
梅散れば又来る春を恋しおり  まんぷく
蛤に空の青の似合いけり  ぎんなん
春夕焼ひょうひょうとゆく白き鳥  アンリルカ
地球より重き命よ春愁よ  ミセスコナン
口遊む猫柳の歌光る花  エノコロちゃん
春風に肉球さらす野猫かな  童夢U世
おしゃべりな春かけ足のランドセル  レモングラス
何買ひに出しか忘るる鳥曇  鯉城
残照に浮かむ黒雲寒波来ぬ  哲白
新聞紙広げて土筆むきにけり  カシオペア

関悦史(せき えつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。


目次に戻る




100年投句計画

へたうま仙人



 花ぢゃ桜ぢゃ夜遊びぢゃ。この国は酔っ払いに特に寛容ぢゃから桜どきは大概の事は大丈夫ぢゃ。飲み過ぎは体と社会に毒ぢゃが、俳句の作り過ぎは誰にも迷惑はかけん。とにもかくにも、俳句を作りすぎるにはもってこいの季節ぢゃ。
 今月も悪酔いしそうな句から、思わず酔いが醒める句まで選り取り見取りぢゃ。俳句を肴に花の下で楽しんでもらえればうれしいぞ。


胸痒くなるケンシロウ春北斗  佐東亜阿介
佐保姫のチョコを喜ぶせんとくん
 春になるとアレルギーがひどくなりそこらじゅう痒くなるが、ケンシロウも同じかのう。とても気の毒ぢゃ。あの厚い胸を掻くケンシロウを思うと北斗七星の柄杓も涙を零しそうぢゃ。当初、せんとくんには世間も否定的ぢゃったが、慣れてしまえばどうってこともない。あれからもっと強烈なキャラも出没して、せんとくんもずいぶん薄められたのう。ワシは一回だけ佐保姫に会ったことがあるが、そのお姿はまだ脳裏に焼きついておる。あのままお付き合いをしていたかったのにのう……。

大阪のRUN二十キロ自己ベスト  ケンケン
あかねさす二月のヤンマースタジアム
 体を動かすのに良い季節になりましたのう。シティマラソン花盛りで、市民ランナーは忙しい限りじゃ。みんな世界一を目指す訳ではないとは思うが、いつの時も自己の極限を追及するという姿勢は表現者として清々しいのう。俳句も絶えず自己記録を更新出来る様に精進せんといけんのう。Jリーグも開幕したし、あとはセレッソ(スペイン語で桜のことらしい)の満開を祈るだけぢゃのう。

酉年やさんずいつけて酒を汲む  ちろりん
晩冬や縁より円を欲す娘ら
 酒飲みは何かと理由をつけて酒を汲む。梯子が梢に届いたとか、証人喚問が始まったとか、とにかく何でもいいのぢゃ。酉にさんずいが付いた日にゃもう大事ぢゃ。上や下へのどんちゃん騒ぎが見えてくるぞ。何を隠そうワシも縁より円派ぢゃ。晩冬でも初夏でも円ぢゃ。この思いは娘らには負けんぞ。ところによって商品券でも良いぞ。差し出されても「無礼者!」と投げ返しはせんのでどうぞ安心して差し出して下され。


マラソンやスポーツの花冬深む  どんぐりババ
雪だるま作り幼きもどりけり
 季重り、三段切れに果敢に挑戦する姿はフルマラソンに挑む市民ランナーのようで、殊に頼もしいぞ。厳冬、盛夏とマラソン人は何かと大変ぢゃが、切れ字が効いた俳句のようにシャッキっと走って欲しいもんぢゃのう。「幼き」の使い方が独特ぢゃ。それにつけても、後先考えずに作りだす雪だるまは厄介ぢゃ。置く場所を考えておかんと、変な所で大きくなり過ぎてびくともせんなる。ここで初めて自分の愚かさに気付くのぢゃ。これが雪だるま作りは人生の縮図だと言われる所以ぢゃ。奥は深いぞ。

卒業やさみしくなりし祖母と母  柊つばき
年ふえるさみしさふえる散る桜
 「さみしさ」二連発でどっと奈落の底ぢゃ。卒業や散る桜をさびしく見るか、そうは見ないかで句は約百八十度違ってくるぞ。卒業子には次の世界があり、桜が散れば葉桜がある。
 世界は考えようでいくらでも輝くぞ。そう、くよくよすることは無いぞ。世界は時に自分中心に回っておるのぢゃ。これでいいのぢゃ。

老いらくの春忘却も欲求も  みやこまる
陽だまりに寄る年波や磯遊び
 老いても欲求があるうちはバリバリぢゃ。そしてその欲求さえも忘れ出したら、老いらくも名人の域ぢゃ。元来、老いらくと春には忘却はつき物ぢゃが、忘れる事ができるのも老いと春の特権かもしれんのう。磯に寄せる年波という波。誰も抗うことは出来んが楽しむことは出来るぞ。陽だまりと歳時記とちょっとばかしの波音があれば完璧ぢゃ。

あほ犬の小便の先犬ふぐり  藍植生
風なふきそはらりひらりふる桜
 犬が立小便をするのは当たり前と思っておったが、確かに不衛生ぢゃ。都会では特にのう。立小便をしないように躾けられた犬は人間のご都合で本能を拒絶されているようで、ちょっと哀れぢゃ。犬ふぐりも人間のご都合でそんな名前を付けられてかなり哀れぢゃ。あほ犬を引っ張っている飼主の顔を思うと吹き出してしまったぞ。係り結びの法則を持ってくるとはいけずなお人ぢゃ(な…そ が係り結びではないという意見もあるようぢゃが文法は全くわからん)擬人化擬態化の時は、今までに無い言葉を作って皆のドキモを抜いた方が痛快ぢゃ。はらりひらりぐらいでは驚かんぞ。

行く春や主人と二人旅の人  真歩
春の海渡り舟待つ港風
 二人旅で、もし近江辺りで春を惜しんだらそれは最高ぢゃろうのう。夫婦で惜春の感慨に浸り、しじみ汁をすすりながら出会いから今までを反芻するのぢゃ。二人の絆が更に固くなること請け合いぢゃ。な、なんと見栄えのする言葉てんこ盛りの豪華な句ぢゃ。品の良い演歌の一小節のようでぐぐぐっと来たぞ。松山市の三津の渡しの風景がプリントアウトされて旅情に誘われたぞ。やっぱり春は旅ぢゃ。

白梅も紅梅も二分水光る  坊太郎
父の忌の父のふるさと寒椿
 水面に真直ぐに屈折して反射する光線をまだまだ冷たい空気が磨き、眩しさ倍増ぢゃ。青年に成りかけの紅白梅の清楚さが「二分」で表現されておるぞ。
「寒椿」がたとえば「日輪草」「狸汁」だとどうだろうか、などと両極端な季語の置き換えが楽しめそうな句ぢゃ。実を言うだけでは無く、時には虚を楽しむのも表現の醍醐味かもしれんと思う昨今なのぢゃ。

ええ尻と自慢をすれば笑むウグイス  KIYOAKI FILM
注射されぐぐぐっと重心睨む星
 ウグイス嬢にそんな事言ったらそれは大変な事になるが、本物の鶯さんだったら、自慢しようが出そうが怒りはせんぢゃろう。とことん気の済むようにして下され。下五の字余りの余韻が病みつきになりそうぢゃ。注射される場所と薬品名によってぐぐぐっの感覚は変わってくるぢゃろうが、重心が落ちていく感覚はようわかるぞ。舞い上がる注射はダメぢゃが、それ以外ぢゃったら体を壊さん程度に、気の済むまで打ってもらって下され。睨んでも睨まれても、星は今日も瞬いておるぞ。グッド、ラックラックぢゃ。

鼻で吸つて口で吐く息梅の花  小木さん
意味のない世界に入る梅の花
 吸った香りの成分は肺の中で吸収されておるのぢゃろうか?もし吸収されず鼻から出す時、鼻は鼻を通る残り香を感じておるのぢゃろうか?我が肺と鼻ながら時々覗いてみたくなるぞ。梅の花は不思議な花ぢゃ。うっかりすれば香りに気をとられるが、どっこいよく見れば可憐で清楚ぢゃ。おまけに実まで成って人類に貢献しておる。さすがの桜も形無しぢゃ。反面、その花と香りの中で泳いでおると異空間に吸い込まれているような錯覚に陥る時がある。そこが意味の無い世界ぢゃったらそのまま居付くぢゃろうなあ。梅の花は不思議ぢゃ。

囀や指先忙しツイッター  元旦
百の声撒き散り散りに百千鳥
 指先に集中している人たちを尻目に、囀りを豊かに聞く作者。せっかくの囀りを浴びながらスマホに興じていてはもったいないけんのう。というより、自然と囀りに耳が行くんぢゃろうな。枝々に声を置いて散り散りになるいろいろな色の百千鳥。聴覚と視覚がフラットになるのう。若葉の色彩までも鮮やかぢゃ。おっとっと、こんな心のリトマス紙を必要としない健康で穏やかな句は、要らなくなった聴診器と一緒にウソ発見器研究所へ追放!

愛の日やまどかに崩すラテアート  出楽久眞
水彩の自画像笑ふ春の雪
 ええのう。愛は万能の薬ぢゃ。「まどかに崩す」で、カップを溢れる満ち足りた愛を感じるぞ。どんなラテアートかのう?芸術的もいいが、ジンベエザメや石を噛んだ下駄みたいなシンプルなものにも惹かれるのう。ワシのところは三月八日の雪が名残の雪ぢゃったが、水彩画と春の雪の淡さが、ティーカップに立ちのぼる湯気の向こうで抱擁しておるのう。すぐそこの本格的な春が窓の外で待っておるぞ。
 おっと、こんな幸福ふくふくなでナルちゃんな句は、今朝久しぶりに立った茶柱と一緒に、列車の来ない幸福駅ホームへ宅急便で送付!!

 今月も追放者と送付者を出してしもうた。思わず陽気に誘われてしもうた。後悔先に立たずぢゃ。さあ、これから本格的春ぢゃ。野に山に海に大いに春を満喫してくだされ。
 ぢゃが、くれぐれも油断召されるなよ。


へたうま仙人 
年齢 卑弥呼がおっぱいを飲んでいた頃、ワシは青春真っ只中ぢゃった。
好きなもの 霞のシャーベット(PM2.5抜き)
嫌いなもの 上手な俳句
将来の夢 大器晩成


目次に戻る




100年投句計画

自由律俳句計画



 長年趣味で絵を描いている元会社の友人がいる。古稀も過ぎたので人生最初で最後の個展をやると言う。費用はなんと100万円。画廊代が16万。あとは30点ほどの絵のための額縁代。額縁@2万5千円×30点で75万円。絵は誰も買ってくれないので売らないと言う。それじゃ個展のあとは75万の額縁の山だ。もったいないので個展後は、2万5千円の額縁を買えば今ならみごとな絵が付いてくる!というキャンペーンをネットでやれと薦めているが、どーも納得しない。個展て大変だ。




生まれ変われるならば春キャベツ  もね
 なんの屈託もない。こう正面切ってあっけらかんと言われると、読み手は平身低頭して「なるほど!」と賛同するしかない。そんな雰囲気が、冬を耐えて春を迎える心情にうまく重なっている。もともと春キャベツというのは、ふつうのキャベツより葉の巻きがゆるくて水分も多く柔らかで甘味があるらしい。そこまでは知らなくても春キャベツに持つ万人のイメージを、人生のリセットと取り合わせたところに妙味がある。無駄なことを四の五の言わない歯切れの良さにも句の力があります。




以下同文の群れの中に居た  南亭骨太
 卒業式だろうか。卒業証書を全読してもらえるのは最初の一人。あとは以下同文。思えば人生は、そういうことの積み重ねでもある。群れから飛び出せない人生の悲哀を「以下同文」という措辞で上手くまとめています。

老い梅の樹下に罪一つ埋めた  さより
 観念の句というのでしょうか。精神世界に入り込みすぎると独りよがりになるところですが、みごとに起立しています。埋めたものが「罪一つ」とは、なかなか意味深長な投げかけでこの句の太い背骨になっています。


万年エキストラの百千鳥  みやこまる
 春になって囀るいろいろな鳥のことを総称してここでは「百千鳥」と言っているのだろう。たしかに春になれば多くの鳥が囀るわけだけれど、考えてみればその多くの鳥たちが春の主役というのではなく、あくまで春を演出するエキストラなのかもしれない。視点がおもしろい。

佐保姫に尻子玉献上す  山崎ぐずみ
 「佐保姫」は春の女神。「尻子玉」は、人間の尻の穴にある架空の玉。これを河童に抜かれると腑抜けになると言う。その尻子玉を水神の龍王ではなく春の女神に差し上げる……なんともユニークな発想に感服です。

どうしてもシャッターが押せぬ春の夢の中  ゆりかもめ
 最後の「の中」が必要なのかとも思うけど。ただシャッターが押せないだけ、という淡泊単純さが春の季節、春の夢にふさわしい気がする。この感覚が合えば佳句、合わなければ駄句というところだろうか。




二つ目の卵を割る松坂牛である  柝の音
鬱病の母ぶらさげし十字架  KIYOAKI FILM
立春の教室壁一面に習字の立春  ヤッチー
落ちる落ちる夢だから夢なのに  凡鑚
いやだな単品という言葉  小市
ハリネズミのおしくらまんじゅうが痛い  さより
音符が軋んで春がやってくる  一走人
春灯の漣を鯉が連れて来た  もね
放射線照射啓蟄の乳房  緑の手
わたくしの七割は水  うに子


並選

またため息春近いと言うけれど  佐東亜阿介
星と月闇に浮かぶ時もある  ぺぷちど
また肩こりを競うてゐる  くらげを
走っても走っても追いついて来る女子ランナー  ケンケン
ふりみふらずみ春雨にくし  芳香
眉間の皺の消えぬ立春  幸
春の匂い初めてのことが増えてくる  多満
春雨すべて落ちて来ない雨  暮井戸
開いた口を塞ぐ  藍人
もやもやの牡丹の芽  小木さん
春塵に地球のしかめつら  出楽久眞
立春大吉母の大くしゃみ  のり茶づけ
飲みすぎている寒の水  和音
まだ香らぬ沈丁花の蕾かな  喜多輝女
平凡な日の湯豆腐  誉茂子
この世界の片隅にたんぽぽ  元旦
冬の夜夢語るなり  人日子
蘖は鏡台を濡れさせてゐる  内藤羊皐
あの日からずっと前からこわくって  台所のキフジン
野焼の煙が追い掛けて来る  坊太郎
世紀のジョーカーだ大統領  ちろりん
書院の棚に侘助一輪  彩楓
末黒野の芒へ雨  恋衣
袴の真実土筆の隠れ蓑  青柘榴
園庭のタンポポ駅へシュッポッポー  あおい
天使のささやきの日誕生日でも夫婦喧嘩  マカロン星人
お前など知らんと腹の虫嗤う  まんぷく
最終ランナーへ春一番  ミセスコナン
女子寮にづかづかと春と我  エノコロちゃん
逃げ水を追ふ嘘か誠か  レモングラス
寒紅や鏡の中にひばり似の妻  鯉城


自由律で再挑戦を!

ものの芽はおよそたがはずあたたかし  藍植生
長兄は西行真似て逝きにけり  藍植生
酔い覚めのブランコ寒し帰ろかな  風さら紗
恋猫が屋根にいるから帰れない  風さら紗
オレンジの巨大タンカー風光る  カシオペア


きむらけんじ
1948年生まれ。第一回放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。


目次に戻る




100年俳句計画

詰め俳句計画



今月の問題
次の(  )の中に共通する春の季語を入れてください。

海の色美し(  )のガスタンク
(  )や三葉虫の被食痕


海の色美し浮き鯛のガスタンク
浮き鯛や三葉虫の被食痕

 童夢U世さん。激しい潮流に浮袋の調整が出来なくなって浮いてしまう鯛で春の季語になっている。前句、浮き鯛のガスタンクが分からない。まさか浮袋のこと? 後句も生き物が重なってうるさいか。青柘榴さんの花烏賊も同様。7級。カシオペアさんは魚島。これは魚が集まって盛り上がり島のように見える現象。これも、前句意味不明。同じく7級。芳香さんは初蝶。前句、「の」を主格の助詞と捉えて蝶がガスタンクに来たあるいは止まった景と読めばカメラワークが面白い。後句は博物館をイメージした。生命感溢れる初蝶と化石でありながら闘争の痕が残ったものの対比が面白い。1級。


海の色美し春闌くのガスタンク
春闌くや三葉虫の被食痕

 久我恒子さん。後句はいい感じだが、前句、動詞なので「の」には続かない。6級。dolceさんは踏青。中国より伝わった風習だが、まあピクニックと思えば大体合っているか。前後句とも意味は分かるが、なぜガスタンク?なぜ三葉虫?と思ってしまう。同じく6級。佐東亜阿介さん、笑酔さんは蜃気楼。内容はいいが前後句ともリズムが良くない。同じく6級。坊太郎さんは春満月。このように前句はいっそ上座を字余りにして後半を「七 五」で整えたほうがリズムが良い。後句のリズムにはやや違和感あり。3級。


海の色美し若草のガスタンク
若草や三葉虫の被食痕

 くらげをさん。後句、生命力のある季語がこの事物に合っている。前句、「若草のガスタンク」という表現にやや違和感あり。4級。さよりさんは菜の花。若草よりも華やかなので、前句は菜の花が咲き誇っているような場所のガスタンクと読めばそれほど違和感はない。ただ後句はちょっとぼんやりしているか。同じく4級。


海の色美し春潮のガスタンク
春潮や三葉虫の被食痕

 Mayuさん、ジュミーさん、れんげ畑さん。前句、海と潮の関係が近すぎる。後句も三葉虫が海の生き物なので取り合わせの句としては近すぎる気がする。6級。桂奈さんは薄氷。後句の取り合わせは悪くない。が前句、「薄氷のガスタンク」が意味不明。同じく6級。KIYOAKI FILMさんは春灯。前句、夜の景なので「海の色美し」とはならないだろう。桃林さんの春宵も同様。5級。出楽久眞さんの春夕は前句、夕日や夕焼を海が映していると思えば納得できる。後句はややぼんやりした取り合わせ。4級。幸さんは春天。前句、ガスタンクを見上げているのでしょうが、「春天の」は言い過ぎでは? 後句、気持ちいい季語とやや意味深な事物の取り合わせで面白い。同じく4級。うに子さんは春雷。後句ドラマチックで良いが、前句「海の色」と雷の光が重なっているのは損だと思う。3級。おせろさん、一走人さん、ゆりかもめさん、喜多輝女さん、誉茂子さん、人日子さん、台所のキフジンさん、佳葉さん、マカロン星人さんは春光。無難にまとまっているが、前句「海の色美し」と季語の意味が重なっていてやや損。同じく3級。ぺぷちどさんの春風、エノコロちゃんの三月、ヤッチーさんの如月はその点意味の重複はなくそれぞれの味わい。2級。内藤羊皐さんは春月。前句、夜なのであまり海の色は出ない気がするが、月が煌々と照っていれば「美し」となるかもしれない。後句、食われて欠けた三葉虫と満ち欠けする月が絶妙に響き合っている。同じく2級。ぎんなんさんは雪解け。前句、山なども含めた大きな光景になった。後句の取り合わせをどう読めばいいか。同じく2級。のり茶づけさんは春昼。前句、長閑な情景で好き。後句も博物館をのんびりと回っている情景が浮かぶ。1級。藍人さん、元旦さんは春暁。前句、明け方の海も美しい。後句、春暁という季語が多細胞生物の黎明期を彷彿とさせて良かった。同じく1級。みやこまるさんは立春。前句きりりとして気持ち良い。同じく1級。ちろりんさん、河原撫子さんは啓蟄。後句はまさにこのフレーズのためにあるような季語。前句、「美し」に対してこの季語のざわつきを良しとするかどうか。同じく1級。藍植生さん、矢野リンドさん、笹百合さん、ひでやんさんは陽炎。葉音さん、恋衣さんはかぎろひ。後句、幻想的な季語で内容とあっている。前句、「海の色美し」と重なったとき陽炎のその揺らぎが微かに損な気がしたので有段にはせず。同じく1級。小市さん、小木さん、ひさのさん、緑の手さんは春愁。前句、抒情的で美しい。後句も良いが、「被食痕」イコール「春愁」という図式が見える気が微かにして有段にしなかった。同じく1級。


海の色美し春眠のガスタンク
春眠や三葉虫の被食痕

 松尾千波矢さん。前句、季語を比喩として用いてはいるが、それで春の気分は十分出ている。後句も一睡のうちに何億年もの時間が経過したようで面白い。初段。杉山久子さんは清明。「せいめい」という澄んだ響きが前句の内容に合っている。生き物が活力に溢れて動き出す季節なので後句にもしっくりくる。同じく初段。彩楓さんは惜春。前句、青春の1ページのようでドラマチック。後句も絶妙の距離感。同じく初段。たあさんは凍解。前句、大きな景で好き。後句は凍てついていたもの全てが解けていくという季語と化石の取り合わせが面白い。同じく初段。笑松さんは修司忌。前句、前衛芸術家としての寺山修司にガスタンクが似合う気がする。後句、十代で俳句、短歌を始め、演劇、写真など分野を超えて活躍した修司の、何もかも食い散らかす猥雑ともいえるエネルギーを思うとき、被食痕がぴったり。二段。


今月の正解

海の色美し花冷のガスタンク
花冷や三葉虫の被食痕

 あるきしちはるさん。 ほろよいさん、妹のりこさん、レモングラスさんは花冷え。前句「冷」がガスタンクからも伝わってくる。後句、この季語の「冷」の部分だけでなく「花」の部分の華やかさがこのフレーズと豊かに響き合う。二段。


解答募集中!
次の(  )の中に共通する夏の季語を入れてください。

(  )の橋(  )の風愉し
(  )の人形押せば人の声

4月20日締切
結果は6月号に掲載


マイマイ
2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人だったが、最近は?? 第1回、第4回百年俳句賞(旧大人コン)優秀賞受賞。2013年句集シングル『翼竜系統樹』上梓。将棋推定初段。棋友募集中。宇宙と生命を題材に詠んだ句集『宇宙開闢以降』マルコボオンラインショップにて発売中。


目次に戻る




100年投句計画 投句方法



雑詠俳句計画 または へたうま仙人
自由律俳句計画
詰め俳句計画

 「雑詠俳句計画」と「へたうま仙人」は、どちらか片方にのみ投句できます。なお「雑詠俳句計画」では、寄せられた投句を一括して、各選者が選句します。各選者に宛てて個別の投句を行うものではありません。


6月号掲載分締切 4月20日(木)

投句方法

 投句先コーナー名
 俳号(無ければ本名の名前のみ)
 本名
 電話番号
 住所

 以上の必要事項を書き添えて、編集室「100年投句計画」係までお寄せください。メールの場合は、件名を「100年投句計画」としてください。
 各コーナーそれぞれ2句まで投句できます。また、「詰め俳句計画」は季語1つのみを投稿できます。
 各コーナーの投句は、ひとつにまとめて送っていただいても構いません。

メール宛先
magazine@marukobo.com

投稿専用ページ
http://marukobo.com/toukou/

※ハガキ FAXの宛先は本誌の裏表紙を参照してください。

さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(「俳句ポスト365」のページ参照)


目次に戻る




自作の俳句を英語に訳そう!

百人百様 E-haiku



評 菅 紀子


 昨年私はNHK WorldのHAIKU MASTERSという番組に出演し、世界中から集まった英語俳句を選び批評しあう貴重な経験をさせていただきました。その時いいねと褒めあった句の中には英語の文法や綴りが間違っているものもありました。作者は非英語圏の人でしょう。本人に伝えたうえで訂正し採用しました。苦手なのは日本人だけではありません。

1.
sunny ruins
butterfly is
fluttering about

蝶の昼日当たり良好なる廃墟  片野瑞木

butterfly
taking a nap on a flower
ruins in the sun

紀 蝶の昼とは草花に止まって休む蝶の昼寝の意の季語、それを表現すれば一気に情景が浮かぶようです。


2.
we wish a cherry blossom
like the dog
of Pavlov

パブロフの犬のごとくに待つ桜  片野瑞木

waiting for
cherry blossoms' blooming
like the Pavlov's dog

紀 私たちは春めいてくると涎を垂らす犬のように桜の「開花」(blooming)を待っていますね。a cherry blossomだと桜の花ひとつ、一個の花だけを待つわけにはいきません。


3.
spring of field
girls,girls it hip hop grayt
dancing dancing ""nice bottoms!""

春の野少女が二人ダンスせり  KIYOAKI FILM

a spring field
a couple of girls
dancing

紀 これこれKIYOAKI FILMさん、「いいお尻!」とはなんたること。原句にないことを英語にしています。この句のエッセンスは少女が二人いること。彼女達が蝶の一対の羽のように二人して踊っている情景が浮かびます。英語句では単語を重ねて躍動感が出ています。またお尻を詠むなら詠むでそこが俳味の発揮しどころです。


4.
church is ester
good day good day
beautifuleggs ""thank you berry match""

教会や玄関並ぶ復活祭  KIYOAKI FILM

Easter
people standing in line
the church entrance

紀 イースターの綴りにaが抜けていました。それからbeautiful legs でしょうか、綴りを確かめましょう。会話を示すクォーテーションマークは " " 二個ずつで結構です。その中は意図的に日本語発音として書いたのでなければthank you very muchですね。御本人の英訳では教会に並ぶ人の足に視線が向かったことはわかりますが、感謝しているのは足に?復活祭に? 前者だとしたら、春の陽気でむらむらと湧く野生の衝動? ひとまず原句に忠実な英訳例をご紹介しました。

【お便り】KIYOAKI FILM 今回は生まれて初の会話です。難しかったです。一行が長くなってしまいました。

紀 KIYOAKI FILMさん、自作句の英訳で深層心理が見えるとは思わぬ効果でした。ならば落としどころはユーモアで。


5.
keep her steady!
to the ends of the earth-
his new post

「宜候!」最果ての地は新任地  久我恒子

紀  英語では船を女性に見立てるのでkeep her steadyのherは船を意味します。しっかりした足取りを保って進む船で新任地に赴くのは男性ですね。また仮に「最果ての地は」の助詞「は」に忠実に訳すとするとthe end of the earth is his new postと下の句にかかります。

6.
a long day-
her coaxing voice
like her mother's
永き日や猫なで声は母に似て  久我恒子
a long day
her voice purrs
like her mother's

紀 猫がゴロゴロ喉を鳴らす、という単語にpurrという語があります。

【お便り】久我恒子 「宜候」は舟人のかけ声やはやし声。操船で、「真っ直ぐに進め」という場合の命令語(広辞苑より抜粋)だそうです。なんだか励まされているようで、今一番好きな言葉です。菅先生、私は最近は、英訳できそうな日本語俳句を詠んでいたつもりですが、時々無理やり英訳しようとして、失敗してしまいます。自分の力不足もありますが、やはり、英訳しやすいものとそうでないものがあるのではと思います。また、英和辞典でたまたま見つけた素敵な英語表現を元に、日本語俳句を詠むこともあります。季語も入れたいので、英訳できる季語を探します。しっくりくる英語がなかなか見つからないときもありますが、この作業(?)も楽しんでいます。

紀 「宜候!」の解説ありがとうございます。背中を押してくれそうないい音感ですね。久我さんのコメントのように、英語と日本語を相互に行き来する作業の中で、それぞれ相手の言語を触発しあって新しい言葉に気づくことがあります。これは、俳句の翻訳をするまで存在しなかった作用だと私も思います。


7.
Railroad crossing doesn't open
for 5 minutes,
shallow spring day

遮断機の上がらぬ五分春浅し  出楽久眞

Railroad crossing
kept closed five minutes
the early spring

紀 原句の575の通りに区切ってみてはいかがですか? この句はほぼ原句に忠実に訳すことができました。春浅し、浅春はまだ寒さが残る春の初め、早春と同じ意味ということなので、shallowをearlyに変えました。「浅い」を直訳すると物理的な浅さや「浅はかな」イメージが湧きかねなく、そうなると春に悪いな、と思いました。

【お便り】出楽久眞 こんにちは。今月は諦めよう、難しい…と思いながらも、投句しないとどうにも落ち着かない。ご指導よろしくお願いいたします。

紀 出来久眞さん、このようにスルッと訳せる句が言語変換する句の一つの型として分類できるとしたら、その価値は高いと思います。遮断機に待たされる人とまだ浅い春の春への期待が呼応してとてもいい句ですね。いい句は素直に訳せるということでもあるのでしょうか。


8.
get excusion ticket
trip around resort
with cherry blossom

周遊券手に二人して桜東風  たあさん

the two of us
holding excursion tickets
cherry blossoms in an east wind

紀 一字、excursion にr が抜けていました。「リゾートを旅する」とは言わなくていいでしょう。

【お便り】たあさん 久しぶりに作ってみました。

紀 たあさん、桜東風に誘われ出掛けるように、思いついたときに作ってください。


9.
Shower of cherry blossoms
Showering my cheeks
Standing by

佇みて頬に愛でたる花吹雪  ほろよい

Standing still
My cheeks blessed with
a shower of blossom

【お便り】ほろよい 先生、今月もよろしくお願い致します。ですが、先月の投句では、覚えたばかりの「過去完了継続」のつもりでだらだら説明臭い俳句を送ったばかり、で、百年俳句計画2月号をみると……説明臭くならないようにってコメント……あらら大失敗やっちまったよ(^^ゞ で今回は読者を信じてきっぱりと……と思って言るのですが??? どうなりますやら。

紀 ほろよいさん、意図的に文法に拘る句もそれはそれで妙味があるものになります。どうぞいろいろ試してください。


10.
the signs
slips of paper in the city
will be butterflys

街中の紙切れが蝶になる兆し  チャンヒ

a sign
all the pieces of paper in town
turn to be butterflies


11.
for the human race,
right, restraint, love
and cherry tree

人類に、権利、束縛、愛、桜  チャンヒ

紀 human beingsの語に馴染んでいたので調べるとこちらは「人間」、the human race「人類」という種には権利、束縛、愛、そして桜が必要ということでしょうか。桜には定冠詞のtheをつけます。


12.
two croquettes
just finished frying
spring star

揚げたてのコロッケ二つ春の星  彩楓

Just deep fried
a couple of croquettes
spring stars

紀 fryは「炒める」、deep fryは「揚げる」です。「二つの」は a couple of という表現をします。


13.
in spring daytime
vehicle-free promenade
a child on one's shoulders

春昼の歩行者天国肩車  彩楓

the spring daytime
vehicle-free promenade
kids on their dad's shoulders

紀 one'sは例として人の、という意味なのでそこに具体的な人を入れます。

【お便り】彩楓 暖炉燃ゆは指摘していただいたように、本当に暖炉が火事になってます。 大変!! 意味を考えなくてはと、反省!難しくて、挫折しそうですが、添削していただくのをを励みに頑張ります。

紀 彩風さん、言語の違いからくる典型的なミスで日本語につられてみんなよくやります。間違うことで慣れましょう。


菅 紀子(かん のりこ)
(有)クラパムコモンカンパニー代表。通 翻訳、メディアによる姉妹都市交流コーディネーター。社名は夏目漱石が下宿したロンドンの地名から。歩道短歌会同人。人文学修士、翻訳修士。松山大学非常勤講師。(Hailstone Haiku Circle blog ICEBOX Contributor)(漱石と彼のライバル重見周吉、日系移民研究)


自作の俳句およびそれを英語俳句にしたもの(2句まで)を募集!

応募先
WEB http://marukobo.com/eigo/
Email eigo@marukobo.com
5月号掲載分締切 4月20日(木)


目次に戻る





岡田一実の句集の本棚


文 岡田一実


片翅
高野ムツオ 著

発行:邑書林(2016年初版)
150ページ
定価:本体2,200円+税

 著者の第六句集。

鵜の濡羽鵜の悲しみと見て飽かず
みちのくや蛇口ひねれば天の川
揺れてこそ此の世の大地去年今年
死者二万餅は焼かれて膨れ出す

 東日本大震災の死者は震災関連死を含め19533人にのぼるという(2017年3月1日現在、消防庁のまとめ)。正月に生者は餅を焼く。その膨張は死者の魂を彷彿とさせる。「餅を焼く」という正月の言わばハレの行為が弔いの行為のようにも感じられる。

巻くならばマフラーよりも眠る蛇
底冷は京みちのくは底知れず
黒揚羽あれは光の裏返し
億年の途中の一日冬菫

 この地球の歴史からいえば、今日一日は億年の中の一日である。その一日を咲く冬菫は可憐だが健気で力強くもある。

数え日の陽差しが墓の中にまで
 福島原発二十キロ圏内 十句
原子炉へ陰出しに野襤褸菊
福島は蝶の片翅霜の夜

 「小熊座」主宰。



夜の森
駒木根淳子 著

発行:KADOKAWA(2016年初版)
217ページ
定価:本体2,700円+税

 著者の第二句集。

ひと蹴りに四隅の光る水馬
貝洗ふ音きびきびと立子の忌
首抱かれ馬のしづまる朝桜
日表は葛の覆へる巨きな木
 東日本大震災
海市にはあらず原子炉てふ遺跡
震災二週間後いわき市に入る
活断層あらはに山の芽吹きけり

 東日本大震災によって多くの甚大な被害があった。その中でも山は芽吹き、確かな春の訪れは来る。活断層が露わな様が身の自然の姿として迫ってくる。

見る人もなき夜の森のさくらかな
山河灼け万年超ゆる半減期
遅延の文字まつ赤に滲む暮雪かな

 電車だろうか。駅に貼り出される紙の文字の真っ赤な滲み。冬着の黒っぽい人だかりの中で、暮れの雪に冷えた人々の顔も真っ赤に上気しているかもしれない。文字の滲んだ真っ赤さはどこか引き返せない切実さを感じさせる。

さくら枝垂れてかき揚げの紅生姜
螢待つかすかな飢ゑを押しとどめ
ビル裏を運河に晒す帰燕かな
つくし摘む淋しき音を地に重ね
千万の影降るしだれ大桜
紅梅は日暮を恋ふ木ひとりの木

 跋文、山下知津子。装丁、間村俊一。第五回星野立子賞受賞作品。「麟」同人。



岡田一実(おかだ かずみ)
 2014年「第三回 大人のための句集を作ろう!コンテスト」優秀賞受賞。2014年「浮力」にて現代俳句新人賞受賞。現代俳句協会会員。「いつき組」所属。「らん」同人。第二句集『境界 ―border―』(マルコボ.コム)。


目次に戻る





百年歳時記


夏井いつき

第46回


 有名俳人の一句を紹介するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月紹介鑑賞していきます。


怒り来て縦に割れたる蜂の口  クズウジュンイチ
 「蜂の口」をしげしげ見たことはないのに、「怒り」の感情に支配された「蜂の口」がカッと「縦」に「割れ」襲い掛かってくるCG映像が、我が脳内で生々しく再生されることに驚きました。一匹の「蜂の口」が大写しとなる背後には、同じように「縦」に割れた「口」を開けて、怒る蜂たちが押し寄せてくるのです。怖い、実に怖い!
この生々しさを表現しているのが、語順の巧さ。巨大にして禍々しい感情「怒り」が、こちらに向かって押し寄せ「来て」という緊迫感。さらに中七「縦に割れたる」という謎の言葉に、読み手の心は不穏に揺れます。最後にいきなり出てくる「蜂の口」のクローズアップが眼前に迫る。これがこの句の恐怖の仕掛けなのです。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』3月3日掲載分)

吊り上げた廃車に蜂の迸る  石川焦点
 「吊り上げた廃車」ですから、解体されるあるいは潰される「廃車」なのでしょう。クレーンで持ち上げられる一台の「廃車」が、次第に高く吊り上げられていくと、「蜂」の群れが群がりつつ飛び回っていることに気づいたのでしょう。
 「吊り上げた廃車」の光景から、ズームアップの「蜂」へ焦点が移るカメラワークも巧みですし、下五の動詞「迸る」の選択も的確にして秀逸。この一語が映像喚起力の源となっています。
 更に同じ現場で作られたと思われる「捨てられし車体へもぐる蜂の群れ」「フェンダーの裏に蜂湧く廃車かな」も実に丁寧な観察眼。「蜂」の動きが巧みな動詞の選択によって活写されています。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』3月3日掲載分)

雲雀笛吹くとき水の青臭し  上田樫の木
 「雲雀笛」は人事の季語。雲雀の鳴き声を比喩したものではありません。雲雀の鳴き声に似た音を出す竹製の笛です。そういえば、中に水を入れて囀りのような音を出す竹笛、子どもの頃に吹いたことがあるなと思い出す人もいるのではないでしょうか。
 「雲雀笛」は吹くものですから、基本的には「吹く」という動詞は不要なのですが、この場合は一物仕立てで「雲雀笛」を描写しようとしており、「吹くとき」と限定することで、後半の措辞「水青臭し」が実感をもって立ち上がってくる仕組みになっています。「水」の一語により音の感触を、「青臭し」の複合形容詞によって青の視覚的印象と爽快な嗅覚も刺激してくれる作品です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』2月24日放送分)

海猫渡る出雲の紙垂のより白し  七草
離岸流黒き能登なり海猫渡る  亀田荒太
前句、「紙垂」とは、注連縄や玉串などに付けて垂らしてある白い紙です。「海猫渡る」遥かな光景の中で、神の国「出雲」の神社に祀られる「紙垂」は、より一層「白し」と感じられるよ、という一句。「海猫渡る」「出雲」「紙垂」「白」それぞれの言葉は、無彩色の濃淡のような美しい印象を残す佳句です。
 後句、「離岸流」とは、砕ける波が原因となって生じる、幅の狭い強流帯です。小さな舟などはこの潮に乗ってしまうと一気に沖へ押し流されてしまいます。かつては北前船が行き来した「能登」の海。「離岸流」の「黒き」潮目の上を「海猫」は悠々と渡っていきます。それぞれの地名を活かした「海猫渡る」の二句です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』3月3日放送分)

分水嶺二匹の龍の走る春  中嶋浄土
 「分水嶺」とは、雨水を異なった水系に分かつ山の峰々です。山に降った雨がどちらかの側に流れていく様子を、高い位置から俯瞰していますが、実景というよりは、虚構の世界に立ってこそ見える大景というべきでしょう。「分水嶺」を「二匹の龍」が走り下って行くかのような春であるよという一句の世界には、春の光が満ちあふれ、鮮烈な春の水は「龍」の鱗のごとく迸ります。
 語順もよく考えられていて、「分水嶺」という実の光景に、「二匹の龍」という虚の生き物が躍り出で、さらに動詞「走る」は春の川の流れも想像させます。最後の季語「春」の背後には、時候の季語「竜天に登る」が隠されているかのような味わいも技あり、の一句。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』3月10日放送分)



百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
などに投句された俳句を紹介します。


目次に戻る





俳句の街 まつやま

俳句ポスト365



協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


金曜日優秀句
平成29年2月度

鷹狩(たかがり)


鷹匠へ鷹浮くやうに戻りけり クズウジュンイチ
鷹狩の鷹篝火の外に眠る すな恵
鷹狩に長けて戦は下手くそで 石川焦点
鷹匠に樹齢のことも教はりぬ 希望峰
鷹狩やいつか獲りたき甲斐國 初蒸気
鷹狩を見守る播磨富士日和 山崎ぐずみ
鷹狩やその名ふぶきの胴震ひ めいおう星
霊異記の扉を開けて放鷹す 三輪 佳子
鷹狩やスーホーの馬ナラの犬 まどん
鷹狩や砂漠の王はまだ五歳 ほうじ茶


腰壺の肉片温し鷹狩の朝 ぐわ


山焼(やまやき)


山焼やけふは風神留守と言ふ むじーじ
稜線を縺れ山火の波がしら とおと
山焼や大地の黒よ蒼く若く 93sのプッコラ
山焼の本部見下ろす開拓碑 GONZA
山焼の前線黒く囲む沼 月の道
山焼や無線応答ぼつと消ゆ すな恵
焼き尽くし坊主の札のやうな山 トポル
二回り小さく山を焼き終へる かをり
山焼の慰労の指の浮腫みけり とうへい
山焼に乗じて走る人拐い 理酔


山焼や若草山をがらがらぽん 葦信夫


4月の兼題

投句期間 3月23日〜4月5日
薄暑(はくしょ)
初夏/時候
初夏の、少し暑さを感じるくらいになった気候をいう。過ごしやすい時季ではあるが日中は汗ばむほどとなることもあり、涼風や木陰が欲しくなりはじめる頃。

投句期間 4月6日〜4月19日
青芝(あおしば)
三夏/植物
冬の間にすっかり枯れてしまっていた芝生が、春になると色を変えはじめ、夏には勢いよく伸びて一面の緑となる。

参考文献 『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


 「俳句ポスト365」は携帯電話からもご参加いただけます。
 「俳句ポスト365」公式Facebookページ開設中! 公式サイトに設置しておりますリンクよりお入りください。毎回の兼題のお知らせを中心にお伝えしながら、皆様の返信欄への書き込みもお待ちしております。


 募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。


目次に戻る





一句一遊情報局



協力 南海放送


金曜日優秀句
平成29年2月度

しばれる

タラップを降りて父祖の地しばれる地 ちづ子
凍れ木や伐採示す赤テープ 樹朋
鉈となる早暁の風しばれたり ほろよい
からしばれ夜の深みたる木の香り ターナー島
太陽の音めく鼓動からしばれ 蓮睡
太陽の滾る貌にしばれけり 樫の木
湯の端の石の蛙のしばれをり 其蜩
恐竜はこう死んだのかしばれる夜 中嶋浄土
牛の目のどうにもならずしばれけり 朝日
しんばれると言うてばあばが拭く義眼 めろめろ
金属音たててしばれの来る獄舎 小泉岩魚


しばれるや捩じ切られたる星無数 太郎




ようちえんバスが一周ささめゆき けいご6歳
武蔵野を一周逃水捉まえよ 正則
外周に冬ほとばしる八ヶ岳 猫の恋
山手線一周春眠小一時間 波恋治男
勇退の春白波を周航す 莎草春眠や合わないままの周波数 さくら
朧夜の憂い円周率の彼方 江刺乃かな女
凍てゆるむ色鮮やかに周期表 富山の露玉
よいしょと四股に周く風光る どかてい
菓子袋二周目となる日向ぼこ 内山初美
竜天に登る周恩来の井戸 江口小春
雪晴や周り数多の獣跡 篠原そも


周波数乱る青葉を通るとき 香野さとみ


駒返る草(こまがえるくさ)

駒返る草に何かの食べた跡 ポメロ親父
駒返る草魚眼レンズに映る空 あやね
駒形の見ゆる里駒返る草 ひでやん
鴇色の笛吹けば駒返る草 まるる
駒返る草少しいただき鳥籠へ かおり
猫草の小さき鉢植駒返る 糖尿猫
駒返る草や水吸う象の鼻 マイマイ
駒返る草やどこかにドードー鳥 だんご虫
町は無人駒返る草豚走る 小市
駒返る草無味無臭なる放射能 太郎
除染土に草六度目の駒返る クラウド坂上
駒返る草や埴輪という殉死 南亭骨太


龍の子に駒返る草てふ産毛 このはる紗耶


雲雀笛(ひばりぶえ)

手作りの鳩のようなる雲雀笛 凡鑽
嘴欠けて声変わりけり雲雀笛 山田ノムオー
雲雀笛の鳴らし疲れや空広し マイマイ
雲雀笛影なき白き椅子ひとつ ターナー島
思春期は群れるのがイヤ雲雀笛 ちいち
雲雀笛吹いてここでも少数派 天玲
絵合わせのごと知子さんの雲雀笛 恋衣
雲雀笛翔太が帰ってきたようだ はまゆう
よく通る鳥屋の古老雲雀笛 磯子
王様の耳はと雲雀笛を吹く 都乃あざみ
空色のピアノに出合う雲雀笛 ドクトルバンブー


雲雀笛吹くとき水の青臭し 樫の木



投句募集中の兼題

投句締切 4月9日

蠅生る(はえうまる)
晩春/動物
蝿は四季を通じて見られるが、単に「蝿」といった場合、特に多く見られる夏季とされ、その羽化は晩春である。小蝿を多く見かけるようになる時季でもある。

凧合戦(たこがっせん)
三春/人事
凧は古くから中国やヨーロッパで見られ、日本には中国から伝来したと考えられる。かつては村落の競技であった、糸を切り合うなどする凧揚げ行事が、現在も日本各地で開催されている。


投句締切 4月23日


季語ではない兼題です。「菓」という字が詠み込まれていれば、読み方 用い方は問いません。季語は当季を原則として、自由に選んでください。

清和(せいわ)
初夏/時候
陰暦4月(陽暦では5月頃)の時候をいう。古くは「和清の天」として詠まれている。

参考文献『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句宛先
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとにしたものです。俳句ならびに俳号が実際とは異なっている場合がありますのでご了承ください。


目次に戻る





今回のお題句に対する投句から次のお題句を選び繋げてゆく

疑似俳句対局


選者 美杉しげり

 インターネットを利用しての「擬似俳句対局」
という試み。俳句対局の楽しさを少しでもお伝えできたらと思っています。


今回のお題句

花の昼涙の味をゆつくりと  小市


候補句

 今月はなぜか「ゆつくりと」に反応した方が多かったようです。春の、かすかに愁いを含んだのどけき気分にふさわしいからでしょうか。

ゆつくりと雪解ゆらゆらと面影  鈴木牛後
 今月最初の投句。句またがりのリズム、「ゆつくり」「雪解」「ゆらゆら」の頭韻、漢字とひらがなのバランス神経がゆきとどいていて、さすがの一句。

ゆつくりと水温むやうなる失恋  天玲
 大人の恋、という感じですね。どろどろの修羅場ではなくて、いつの間にか心が離れてしまった恋。前の牛後さんの句と並べると、一つのドラマが生まれそう。

 そして海と「ゆつくりと」の出会い。これもまた春の気分。
ゆつくりと向かふ海境春の虹  凡鑽
ゆつくりと貌たすむつの目さめかな  山崎ぐずみ
ゆつくりと海市に烟立ちにけり  久我恒子
 一句目。海境は、海神の国と人の国とを隔てる境界。春の虹を渡れば、そこへ行けるのかもしれないですね。二句目。むつは魚のムツの事でしょうか。不思議な魅力のある句です。三句目。海市という幻想的な景に立つ烟、見てみたいですね。

涙など水にすぎない春夕焼け  小市
 上五中七、とても惹かれます。「水にすぎない」と強がりながら泣いているのでしょう。ただ「春夕焼」は情緒的。このフレーズを活かすのなら他の季語がありそうに思います。

酔ひ明けの味蕾に染むや蜆汁  ひでやん
桜餅にまったり包まるる味蕾  越智空子
若鮎や味蕾の開く音たてて  糖尿猫
 味蕾三句。ちょっと二日酔い気味の朝の蜆汁、もっちりと風味豊かな老舗の桜餅、とれたての新鮮な若鮎……それぞれ美味しそう。

昼ドラの抱擁に飽き夏蜜柑  松尾千波矢
 思わず笑ってしまいました。最近観たことないけれど、昼ドラといえばドロドロ愛憎劇のイメージ。似たような場面の繰り返しに、夏蜜柑もいっそう酸っぱく。

筍の刺身に七味唐辛子  恋衣
 さらりと詠まれた一句。刺身にするのだから、掘りたての筍のはず。わさび醤油が一般的ですが「マヨネーズ+七味唐辛子」も美味しいとか。食べてみたい!

花柄のペアグラス割る春愁ひ  柝の音
 「割れた」のではなく意図的に「割った」のでしょうか。「割る」と「愁ひ」の気分がやや近いかも。

花はこべ嬉しきことの五つ六つ  小川めぐる
 嬉しいことが一つあった、という句は多いけれど「五つ六つ」もという句はあまりなさそう。同作者の「茅花野を鬼女の涙の跡といふ」も詩的な発想で惹かれます。

美味そうな女の手酌磯千鳥  葉音
 千鳥が見えるのだから、まだ明るさの残っている時間帯なのでしょうね。周囲を気にせず、(たぶん一人で)手酌で飲む女性が粋。

不味い草詰めたるサプリ春の虹  土井探花
 可笑しい。確かにサプリメントって、そういうものが多いですね。春の虹という取合せが合っているような、唐突なような……。迷うところ。


次回お題句

味ぽんを買い忘れたの春の月  杉もとたかし
 一番のりではなかったけれど、かなり早い投句でした。全体にメランコリックな句が多かった中、「味ぽん」という、いわば俗な言葉を使ったこの句の軽やかさが楽しかったです。
 たとえば「春の風」だと少し平板になりそうなところ、上五中七の明るいフレーズに対する「春の月」の微妙な距離感が意外な効果をあげているように思います。


美杉しげり
 第8回俳句界賞受賞。4年ほど前から小説も書き始め、短編「瑠璃」で第21回やまなし文学賞佳作。美杉しげりはその時からのペンネーム。

毎月25日頃に、投句フォームにてお題句を発表します。投句締切は毎月末日。

疑似俳句対局投句フォームアドレス
http://marukobo.com/taikyoku/


目次に戻る





鑑(み)るという冒険


〜映画篇 演劇篇〜

文&俳句 猫正宗


第五十四回
『この世界の片隅に』&『凪の砦』総収編

 『この世界の片隅に』ようやく観ました。因みに『君の名は。』はまだ観ていない。どうも、みんながこぞって絶賛する作品を観れなくなってしまうという悪い癖が。『ラ ラ ランド』は観れるだろうか。
 さて、こんなコーナーを書かせていただいたり、俳句にかかわらせていただいたりしている私は、言葉が、言葉で表現することが好きなのだと思う。『銀河英雄伝説』という小説にある「言葉では伝わらないものが確かにある。しかし、それは言葉を使い尽くした人だけが言える事である」という文も(やや言葉を使うものの傲慢さを感じつつも)そうなのだろうと思う。だから本作を観た後だって、頭の中は言葉を結ぼう、紡ぎ出そうとぐるぐるしていた。街は夕刻を迎えていた。夕焼けはゆっくりと沈下していき、空気は天頂から淡く群青に染まり始めている。
 ところで、『星の時計のLiddell』というマンガにこんな台詞があった。 「俺はね何者でもない」「画家だったら描かなければいられない。詩人だったら言葉があふれてしまうだろう。音楽家は感情の一ひだも、葉っぱの一枚さえも音に変えてしまうんだ。そういうミューズを必要としないってこと、俺はけっこう気に入っている」
 そう、私の中で渦巻いている、感情、思い、気分、etc. 油断しているとあっという間に言葉になってしまうそれらを、必死で言葉にならないようにしていた。今、言葉にしてしまえば、途端にひどく陳腐な、手垢のついた、みすぼらしいものに成り下がってしまうことが目に見えていたから。
 これは言葉の敗北だろうか? いや、言葉を使うものとして私が未熟なのだろう。そうして私は、まだ言葉にできないでいる。

朧夜を詰め込む言葉にせぬために

 『凪の砦』総収編('17年3月4日、5日、シアターねこ)は烏丸ストロークロックと庭ヶ月の共同制作。庭ヶ月は烏丸ストロークロックの代表、柳沼明徳のかかわるワークショップや市民参加演劇で出会った人々による、演劇を核にした、サロン的(と言っていいのかな?)な共同体 えんげきの庭が、発展的に劇団となったもの。メンバーそれぞれの「死生観」を語り合うことから始めて、作品としてつくり上げていったのだそう。作品上演後には、劇団と観客を交えたアフタートークもあり、そういった意味では、そこは言葉があふれていた場であったと言えるだろう。元々短編連作だったということもあってか、現代の様々な問題が隙間なく埋め込まれたような作品であった。それらの問題が混ざり合い汽水域のようになっている作品だという評があった。そうかもしれない。だが、世界は無数の層から成り立っており、私の世界とあなたの世界は決して混じりあうことはない。私にはそのように見えてしまった。もし現実の世界がそのようなものであるのなら、その世界でどうすればよいのか。私はまた途方にくれている。

涅槃吹止んで現実への砦


目次に戻る




mhm通信


第73回

文 暇人


“線”

 まずは先月号の続きみたいな話から。第15回まる裏俳句甲子園も前回に引き続きFacebook審査員を担当させていただきました。まずは参加していただいた皆様、誠にありがとうございました。今回は、予選のシステムについては大きな変更があったりしましたが、Facebook審査員に関しては、これまでにないぐらい安定した運用で審査および配信をすることが出来ました。次回以降にもFacebook審査員をやるのかどうかはまだ未定ですが、必要とされているのかどうか、担当している身としては気になる所です。
 さて、今回の題「線」ってなんやねんと思われた貴方、英訳してみましょう。google先生によれば「LINE」と出てきました。「LINE」といえば……スマホには欠かせない、無料通話アプリを思い浮かべた方は大正解。今回はその話題です。
 mhmでは公式の情報発信ツールとしてホームページとFacebook、そしてTwitterを利用しています。それ以外に会員向けにはメール配信で情報を発信しています。また、mhm役員向けには今まではメーリングリストを使っていましたが、携帯で受信する場合「迷惑メール」扱いではじかれてしまったり、メールアドレス変更の度に再登録が必要になるなど、あまり機能的とは言えない状況があり、新たなる役員の意思疎通の方法を模索していました。
 その流れから、この1月の定例会のことでしたでしょうか。mhm役員メンバーの多くがスマートフォンを使用するようになっていたことから、LINEでmhmのグループトークを作ることに。利用登録が面倒なのでは?とも思われましたが、意外にすんなりと登録が出来ました。
 LINEのいいところは、無料通話もさることながら、文字チャットも出来て写真や素材も送れる。しかも読んだかどうかまでわかるところです。実際に月一度の定例会以外にも様々な情報を共有できます。
 すでにこの1ヶ月、mhm役員の連絡ツールとして機能しております。今後、月一回の定例会とLINEによる情報交換によって、どんな展開が起きるのか、メンバーの一人としてワクワクしているところです。
 さて、ここでお知らせです。mhmの年度初め行事「総会」が4月28日に行われます。場所はマルコボ.コム事務所、時間は19時からです。
 会員の方はもちろん、新規でmhmに参加されたいという方もお待ちしています(年会費1000円)。
 まずはお気軽にお問い合わせください。


今年もやります!大お花見大会
日時 4月2日(日) 8時〜20時
雨天決行
場所  道後公園内(松山市)
お問い合わせ まつやま俳句でまちづくりの会
mhm_info@e-mhm.com


目次に戻る





朝の見る句


蜂谷一人

No.1


畳まれて鳥の出てくる巣箱かな  蜂谷一人

 古今の俳句に無国籍でカラフルな絵を取り合わせた新コーナー。一回目は自作の一句を紹介。
 あるとき日光の戦場ヶ原を訪れた。巣箱が懸かっていて、アカゲラが雛を孵していた。餌を運んできた親鳥は、翼を畳み全身の羽を寝かせて巣箱に入ってゆく。その穴は、「よくまあ、あんなところへ」と驚くほど小さい。やがてまた現れ、巻かれた旗をさっとほどくように翼を広げる。そのあとに雛が丸い頭を覗かせる。頭が赤いので、たこ焼きに紅生姜をのせたよう。
 巣箱は穴の大きさが大切と野鳥の会の方に教わった。シジュウカラは28ミリ。スズメは30ミリ。ムクドリなら50ミリ。ぎりぎりの大きさにするのが肝要という。大きすぎると他の鳥にのっとられ雛を孵せない。アカゲラはムクドリほどの大きさだから、あの巣箱の穴は50ミリだったのだろうか。ならばと、私は考える。「不思議の国のアリス」に登場する絶滅鳥ドードーはどうだ。七面鳥よりも大きな体にぴったりの巣箱の穴は何ミリ?


目次に戻る





続 南極を詠もう!


エピローグ

一般研究観測担当隊員 源 泰拓(俳号 源笑)


 「100年俳句計画」読者のみなさま、こんにちは。第57次日本南極地域観測隊越冬隊員のみなもとです。この稿を書いている現在、私は南極観測船「しらせ」に乗って帰途についているところです。15か月あまりの南極吟行も、これにて大団円となります。連載の機会をいただき、歳時記をひもといて毎月句を詠むことで、ふだんとは別の視点から南極を眺めることができました。拙句にお付き合い頂いた希望峰さんに感謝いたします。ありがとうございました。

降る雪や居候身の置き場なく  源笑

睦月過ぎ吹雪横目にお昼寝す  佐波妙惟

 2月1日に越冬交代したあと、ふぶきのために私たちは「しらせ」に移動できず、昭和基地に留め置かれてしまいました。これまで住んでいた部屋は次の越冬隊に明け渡して、2段ベッドの夏宿舎で天候の回復を待ちます。出かけるところもなく宙ぶらりんの気持ちを詠んだところ、おなじ場面の句が寄せられました。

困りもの越冬麦酒に尿酸値  佐波妙惟

 昭和基地でひと冬越したビールを「越冬ビール」と呼んでいます。風味が若干落ちるので、次の隊が新しいのを運んできたあとは、ちょっとお荷物です。一方、尿酸値は越冬中の健康診断でしばしば指摘される項目です。

代替わりかへりなむいざ秋立つ日  源笑

 2月4日、南半球では立秋の朝、「しらせ」から迎えのヘリコプターがやってきました。夏が終わり、見送りに来てくれた58次隊に基地を託して飛び立ちます。“かへりなむいざ”は陶淵明の「帰去来辞」からいただきました。

ゆく春や家路半ばの南大洋  源笑

 昭和基地を離れてシドニー入港まで30日以上、「しらせ」に揺られて行くことになります。帰心を抱いて船中の人となってみれば、3月はやはり春です。


目次に戻る





100年俳句計画 掲示板




テレビ ラジオ

NHK Eテレ『NHK俳句』
 日曜6時35分〜7時
 (再放送:水曜15時〜15時25分)
 夏井いつきが第3週選者を担当
4月16日(日)、再放送 19日(水)
募集兼題 「青嵐」または自由
投句締切4月10日必着
 投稿は葉書1枚に1句。選者名、兼題、俳句1句、名前、年齢、電話番号明記。
宛先 〒150ー8001 NHK「NHK俳句」係
 ホームページからの応募も可 http://www4.nhk.or.jp/nhkhaiku/

NHK 総合テレビ(四国四県)
  「四国 おひるのクローバー」内
隔週火曜
 『夏井いつきのムービー俳句!』
4月11日(火)、25日(火) 11時30分〜

TBS系列局 全国ネット
 『プレバト!!』
毎週木曜 19時〜19時56分
 夏井いつきが俳句の査定を担当

南海放送
 松山市政広報番組
 『大好きまつやま 〜しあわせ未来塾〜』
毎週火曜 20時54分〜21時
(再放送:日曜11時40分〜11時45分)
 夏井いつきが塾長として出演

南海放送ラジオ
 『夏井いつきの一句一遊』
毎週月〜金曜 10時〜10時10分
  「一句一遊情報局」のページ参照

FMラヂオバリバリ
 『俳句チャンネル』
毎週月曜 17時15分〜17時30分
(再放送:火曜7時15分〜7時30分)
投句募集兼題
「山葵漬、鳥交る」…4月9日締切
「菜の花、愛鳥週間」…4月23日締切
 WEB http://www.baribari789.com/
 mail radio@baribari789.com
 FAX 0898(33)0789
  投句には本名、住所をお忘れなく!
  「天」の句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。

各番組の放送予定は変更される場合がございます。新聞などで最新情報をご確認ください。


執筆

松山市の俳句サイト
 『俳句ポスト365』
http://haikutown.jp/post/
 「俳句ポスト365」のページ参照

テレビ大阪俳句クラブ
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」(夏井いつき選)
  毎週日曜タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井いつき選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。
 朝日新聞松山総局(〒790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。



イベント 講演等

第六回 百年俳句賞表彰式 
4月2日(日)10時〜
 松山市立子規記念博物館
1階視聴覚室(愛媛県)
問合先 マルコボ.コム
電話 089(906)0694

国際ソロプチミスト高槻認証20周年記念
 夏井いつきチャリティ講演会
 「あなたも挑戦! 俳句の世界 こころを言葉に」
4月7日(金)13時30分〜15時30分
 高槻現代劇場 中ホール(大阪府)
 一般参加定員 600人
 参加料 2、000円
問合先 国際ソロプチミスト高槻
電話 072(671)0757

朝日カルチャーセンター名古屋教室
 夏井いつきの句会ライブ 〜春に寄せて〜
4月8日(土)13時30分〜15時30分
 朝日新聞名古屋本社 朝日ホール(愛知県)
 受講料
 会員 3,456円
 一般 3,996円
問合先 朝日カルチャーセンター名古屋教室
電話 052(249)5553

レクザムホール
 夏井いつき句会ライブ
4月14日(金)19時〜21時
 レクザムホール(香川県県民ホール) 大ホール(香川県)
全席指定
一般:前売1,800円(1,600円)
当日2,300円(2,100円)
学生:前売800円
当日1,000円
 (  )内は県民ホール友の会会員料金。学生は高校生以下。
問合先 県民ホールサービスセンター 
電話 087(823)5023

南楽園句会ライブ
4月16日(日)14時〜15時30分(投句締切 13時)
 南楽園 中央芝生広場(愛媛県)
問合先 南楽園 
電話 0895(32)3344

「俳句王国がゆく」公開収録(奈良)
4月22日(土)13時30分〜15時30分
 田原本青垣生涯学習センター 弥生の里ホール(奈良県)
観覧申込
 往復はがきに、郵便番号 住所 氏名 電話番号を明記し、
 〒636ー0247 奈良県磯城郡田原本町阪手233ー1
 田原本青垣生涯学習センター内「俳句王国がゆく」係まで。
 締切 3月31日(金)必着
問合先
NHK奈良放送局
 電話 0742(26)3411
田原本青垣生涯学習センター 弥生の里ホール
 電話 0744(34)7000

NHK文化センター松山教室
 夏井いつきの赤ペン俳句講座
4月23日(日)13時30分〜15時30分
 NHK文化センター松山教室(愛媛県)
 受講料
  会員3,369円
  一般3,715円
問合先 NHK文化センター松山教室 
電話 089(921)1151

松山法人会第4支部特別協賛
 夏井いつきの句会ライブ
4月28日(金)13時30分〜15時30分
 松山市立子規記念博物館 4階講堂(愛媛県)
 参加費 無料(事前申込制、先着400名)
 申込方法 
 名前 住所 電話番号 参加希望人数 松山法人会会員の有無を記載の上、
 FAXもしくはEメールで申し込んでください。
申込先 句会ライブ実行委員長 井関
 FAX 089(941)5578
 メール iseki@xuard.com


目次に戻る





魚のアブク



読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは他の投稿に添えてお寄せください。


元旦 詰め俳句を考えるのが好きです。いろいろな季語を当てはめては、しっくりきたりこなかったりを楽しんでいます。ピッタリハマった!と思っていても正解は違っていることばかりですが。でももしかしたら正解は無いのかもしれないと思ったりもします。正解の季語よりも、自分としてピッタリハマる季語を探してみるのも面白いと思うのです。

葉音 1月のミーハー吟行隊に参加しました。俳ポや100年俳句計画でお名前を拝見している有名俳人の皆様と一緒に吟行。俳句を通して、どんどん世界が広がっています!

(次ページへ続く)
出楽久眞 今年は息子が進学、私もおそらく異動となるので、4月からは家族そろって新しい生活が始まる予定です。平然を装いつつも、内心はざわざわ落ち着かない日々です。

うに子 春の訪れを杉花粉に感じる鼻と目が機能していない日々です。

喜多輝女 寒暖の差の激しい今日この頃、春一番も例年より強く吹いたような気がします。春はもうそこまで来ています。皆様どうぞご自愛くださいませ。

松尾千波矢 もう2月号にはたまげました。まさか疑似俳句対局のお題に取り上げられるとは! なんか良いこと今年はあるのか、それともこれで良い運を使い果たしてしまったのか、これからの投句結果をお楽しみに。

みやこまる 俳句を始めてもうすぐ2年!という寸前で、新しい仕事と資格取得のための勉強に専念することに決めました。投句は半年の間ガマン! ひと回り成長して復活したいです。


目次に戻る





鮎の友釣り


第225回


俳号 亜桜(あさくら)みかり

前回 だりあさんへ
俳句はもちろんエレクトーン、ウクレレ、フラダンスもたしなむパワフルレディーで三日月句会のアイドル、だりあさん。わぁ〜きゃ〜ついていきます(きっぱり)。

写真
月一のさとざくら句会吟行でのショット。今年は今治市民の森にて定点観測を実行中。今治五七五実行委員会会長の右腕が私で、だりあさんが左腕?

近況
今治五七五実行委員会がキムさんから「俳句チャンネル」を受け継いで早七度目の春。キムさんが天の葉書を描いてくださる限り続けたいかも。先日のラヂバリ十五周年記念句会ライブも楽しかった♪

次回 Gへ
コアなファンからご挨拶句が送られてくる「俳句チャンネル」の重鎮のG。何か気が合うなあと思ったら、絵手紙が趣味という共通点が分かり納得。これからもよろしく。Gへバトンタッチ。


目次に戻る




第55回 愛媛マラソン 吟行会



レポート 若狹昭宏


 雨や雪が危ぶまれた2月12日。心配を蹴散らすように見事晴れ渡り、第55回愛媛マラソンは絶好のマラソン日和となった。吟行会としては7回目の開催である。今年は壮行会の場所を松山市総合福祉センターに移し、センターの方々を含めた多くの応援者がランナーを送り出すことになった。今回は共に走るランナーであり、マラソン部顧問の楠真美さんからメッセージを頂いた。

 ランナーは蛇頭、キム チャンヒ、千栄子、照造、武久智和、ねこ端石、鉄人、若狹、曽我房市、白方敦子、まこさん、福本由美、宇都宮優子、いろは。そして応援の逆ベッカム、あねご、青柘榴、らまる、ともぞう(敬称略)他多くの方々。紹介を始めるとそれだけでページが埋まってしまいそうな人数だ。俳人というよりも、本格的なランナーの多い集まりになってきている。

10292人の走りや春動く  雪花

 愛媛に来たならば「温泉」「俳句」そして「マラソン」の三つは体験してみなければならない。某N放送局で囁かれている言葉だ。そういう文言に弱い私は、前々回は応援側で参加してみたのだが・・・とにかく寒い! 雨も風もある上、自分は全く動かないため本当に辛い。応援する人は予想以上に大変である。そこで、前回の54回からはエントリーしてランナーとなったのだ。
 今年で2回連続の出場が叶ったのだが、残念ながらいつも一緒に練習していた蓮睡や、今年こそ一緒に走ろうと言っていた野兎が抽選で落ち、モチベーションが上がらず練習をしないまま本番へ……。しかし、完走すればヒーロー、途中リタイアしてバスに乗ろうものなら一生の恥とまで聞く愛媛マラソン。ギリギリでもいいから完走だけはせねばと、制限時間との戦いの中、他のランナー達と共に「バスは嫌だぁぁぁぁぁ!」と叫んだ。

春浅し敵は己の六時間  ひでやん

 あまりタイムを狙っていないランナーの楽しみの一つが補給だ。坊っちゃん団子に豚汁に一六タルトをはじめ、沿道の応援の方々からもハチミツ檸檬や七折小梅など色々なものを頂く。平田の坂辺りからドリンクや塩飴があった記憶だったのだが、どうやら今年はコールドスプレー系の需要が高かったらしい。私はお腹が減って20km地点用のゼリーを10km地点で飲んでしまったのだが、キムさんなどは最初から5km毎に準備しており、それを飲むのが楽しみだったという。何はともあれ、応援のおかげで走れているのは間違いない。

旗振るや平田の坂の春浅し  雪花

風光るまだ行けるよのハイタッチ  ころん

 応援側の楽しみは、知り合いや本気で早いトップ集団の応援を除くと、仮装集団ではないだろうか。走っていると一部分しか見ることができないが、後から聞くと美しいマリオ、『ONE PIECE』から指名手配のサンジやチョッパー、巻物を装備したナルト、戦地に向かうような迷彩の兵士などなど、どうしてそんな走りにくそうな格好で速いのか不思議な人たちも多く参加している。キャラクターに合ったパフォーマンスまで披露して走るのだから、本気を出せば相当速いに違いない。一緒に走っているとそっちばかり応援されるので少し寂しくもなるのだが、見ていて楽しいキャラクターの後ろに付くと、ついついペースを合わせている自分がいる。

キキ走る並走のごと恋の猫  恋衣

 約一万人が大きな河のように流れを作り走っていく。中には速いところも遅いところもあり、時々止まってしまうところもある。普通に走っているように見えた人が急に倒れてしまうこともあるのだ。当然各ポイントごとに医療班がいて、並走する人の中にも救命係がいるのだが、一刻も早く処置するために、見かけたランナーが走りながら沿道の人や次のスタッフ配置場所に報告していく。当然のことではあるのだが、そういうことが当たり前にできるということは美しいと思う。走ることが好きだと言うと、大概「何のために走るのか分からない」と返されてきたが、初めてフルマラソンに出た時は自分でもそう思った。いっぱいいっぱいになりながらゴールして、長い筋肉痛や関節痛とも付き合いながら、「二度と走るか!」と言いつつ、それでも脚が治ると仲間とまた走って、大会にエントリーすることが使命のように感じてくる。自分で自分を輝かせたいと思ったとき、この愛媛では、身近に「走る」という選択枝があったのだ。メンバーは全員完走し、打ち上げでは早くも龍馬マラソンや来年の愛媛マラソンの話題で盛り上がった。

最終ランナーまで叩き続けた手袋  青柘榴

ゴールの情景春風へハイタッチ  逆ベッカム

風光る来る来るランナーは光る  らまる


目次に戻る





告知




句集Style
だれもが句集を出版できるかたち

あなたの句集を20,000円〜制作します
(完全デジタル入稿、30冊制作の場合。価格は税別。)
仕様:135mm×135mm、36ページ、オンデマンド印刷、表紙PP加工

2017年 第2期
5月31日 (水) 申し込み締切
(原稿締切5月5日、2017年7月末納品)

詳しくはhttp://www.marukobo.com/style/

通常の句集Styleの倍のページ数による「句集Style-W」の募集も行っております。
お気軽にご相談下さい。





子規 漱石 生誕150年シンポジウム

俳句県
みんなで詠むぞ
575

当日投句有り

主催 愛媛新聞社 子規新報 100年俳句計画
協力 創風社出版 マルコボ.コム

日時 2017年6月4日(日) 13時30分〜
場所 愛媛新聞社 1階ホール(松山市大手町1丁目12-1)


第1部 シンポジウム「俳句県みんなで詠むぞ575」
20代で俳句に熱中した子規と漱石。百数十年の時を経て、俳句甲子園を経験した20〜30代の俳人たちの共通することや見習うべきことは多いはず。子規と漱石の果たした役割を検証しつつ、次世代の俳人の今後について議論をする。

第2部 議論が名句を作る!「句合わせ対決」
今年20回目を迎える俳句甲子園の特徴は、団体戦で議論を交えながら競う句合わせ対決であること。第2部では、会場から集めた俳句を使って、「時間制限なし!」の句合わせ対決を行う。議論によって、一見駄句に見えた句が名句になったり、その逆もあったり、多様に解釈できる俳句の面白みを味わって頂く。

出演者(予定)
坪内稔典さん(船団の会代表)
小西昭夫さん(『子規新報』編集長)
キム チャンヒさん(『100年俳句計画』編集長)
岡本亜蘇さん(船団の会会員)
菅紀子さん(松山大学講師 漱石研究&英語俳句)
櫛部天思さん(『櫟』副主宰)(交渉中)
青木亮人さん(愛媛大学教育学部 国語教育)
森川大和さん(高校教諭 第2回俳句甲子園優勝)
若狭昭宏さん(まつやま俳句でまちづくりの会代表 第6回俳句甲子園全国大会出場)
寺岡 凜さん(NHK松山放送局キャスター 第13回俳句甲子園全国大会出場)

入場料 一般1,000円、(学生500円)
4月上旬チケット販売開始

【問い合せ先】
100年俳句計画編集室 電話089-906-0694(キム)





愛媛経済同友会文化芸術委員会主催

坊っちゃん劇場ミュージカル
「52days 愚陀佛庵、二人の文豪」を特別価格で観劇しよう!

日時 4月16日(日)13:50〜16:30(受付13:00〜)
場所 坊っちゃん劇場(東温市見奈良1125番地)
料金 大人2,600円(通常前売3,600円)
   小人860円(高校生以下 通常前売り1,860円)
問合 申込先 マルコボ.コム
申込締切 4月3日(月)必着!

名前、参加人数(大人○人、小人○人)、住所、電話番号を明記の上、メールでお申し込みください。
宛先 info@marukobo.com





今年もやります!
大お花見大会

日時
 4月2日(日)8時〜20時(予定)
 雨天決行

場所
 道後公園内(松山市)

お問い合わせ
まつやま俳句でまちづくりの会
mhm_info@e-mhm.com


目次に戻る




編集後記


キム チャンヒ

 「HAIKU BAR」は、松山市とJTBとで、新しい街の観光地となるよう企画されたもの。松山市から報道発表されるやいなや、新聞や地元のテレビ ラジオで紹介され話題となった。
 私も企画の当初から関わっており、企画の内容や店の手配、デザインなどをさせて頂いている。
 今回「HAIKU BAR」に参加して頂いたお店のマスターは、みんな俳句仲間に紹介されて知り合った。今では、一緒に句会を楽しむメンバーでもある。
 それぞれ俳句がなければ出合うことは無かったわけで、俳句の「人と人とを結びつける力」に、改めて感謝している。
 「HAIKU BAR」が俳句を身近に楽しもうという企画なら、「百年俳句賞」は俳句を極めよう企画。まるで対極のようにも思える企画ではあるが、俳句で人を豊かにしたい、という思いは同じ。
 百年後気がつけば、俳句によって街の姿が変わっていた、なんてことを夢見ている。


目次に戻る





次号予告


234号 5月1日発行予定

俳都松山キャラバン in 台北! & 第6回瀬戸内 松山 国際写真俳句コンテスト結果報告


お得で便利なマルコボ.コム直販定期購読! 巻末の案内をご覧ください
お申し込みの方へ、毎月末頃に最新号を送料無料でお届けいたします!
(住所変更の際は必ず編集室までご連絡ください)

『HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画』は以下の書店でもお買い求め頂けます。

愛媛県
 明屋書店 ※一部店舗のみ
 ゆらり内海(愛南町)
 原田書房(今治市)
 子規記念博物館(松山市)
 紀伊國屋書店松山店
 ジュンク堂書店松山店


HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画
2017年4月号(No.233)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子

2017年4月1日発行