100年俳句計画 2017年3月号(No.232)


100年俳句計画 2017年3月号(No.232)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。






目次


巻頭リレーエッセイ
誉茂子


特集
第15回 まる裏俳句甲子園

 どさんこ4人組「まる裏」体験記/五十嵐秀彦

好評連載


作品

百年百花
 理酔/初蒸気/此花悠/岡田一実


新100年の旗手
 小川めぐる/若狹昭宏


新100年への軌跡
 俳句 下楠絵里/葛城蓮士
 評 都築まとむ/樫の木




読み物

美術館吟行/日暮屋

Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳:朗善)

JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭

ラクゴキゴ。/らくさぶろう

ホンヤクサイホンヤク/翻田訳蔵

百年歳時記/夏井いつき

鑑(み)るという冒険/猫正宗

mhm通信/蓮睡

岡田一実の句集の本棚/岡田一実

続 南極を詠もう!/源泰拓、希望峰



読者のページ

100年投句計画
 選者三名による雑詠俳句計画
  桜井教人/阪西敦子/関悦史

 へたうま仙人/大塚迷路
 自由律俳句計画/きむらけんじ
 詰め俳句計画/マイマイ
 100年投句計画 投句方法

短歌の窓/渡部光一郎

百人百様E-Haiku/菅紀子

俳句ポスト365

一句一遊情報局

疑似俳句対局/美杉しげり

100年俳句計画 掲示板

魚のアブク

鮎の友釣り



レポート

第5回 城北地区小学生俳句大会



告知

編集後記

次号予告





巻頭リレーエッセイ



ライバル
誉茂子

 孫(俳号さな5才)が幼稚園の帰りにやって来た。私とオセロの勝負をするためだ。5才児に負けるわけにはいかない。真剣に盤と向き合う。少々の擦った揉んだはあったものの、私のプライドは守られた。そして一息ついて……。
私「次の兼題『蕨狩』はできた?」
孫「去年、じいじとわらびとりに行ったよね。じいじと綱で、きしゃぽっぽをして歩いたね。」
『きしゃぽっぽ歩いて楽しいわらびとり』と早速一句できた。
私「いいねー。でも、じいじと行ったんだから『きしゃぽっぽじいじと歩いてわらびとり』にしたらどう?」
孫「それは、ばあばの句だね。」とキッパリとした口調で言われた。
 5才児俳人のプライドは思っていた以上に高かった。
 孫に芽生えた小さな小さな俳句の芽を、枯らさぬようにそっと見守っていこう。
 ずっと俳句を好きでいてくれますように。


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特集

第15回 まる裏俳句甲子園



 去る1月8日(成人の日の前日)、まつやま俳句でまちづくりの会主催による第15回高校生以外のためのまる裏俳句甲子園(以下、まる裏俳句甲子園)が、松山市立子規記念博物館にて開催された。
 まる裏俳句甲子園は、高校生の俳句甲子園を応援する目的で、開催しており、俳句甲子園には出られない大人や子どもが参加できる大会である。俳句甲子園と異なり、1チーム3名で参加できる。
 今回は37チームがエントリー。午後からの本戦出場に向けた予選では、席題「宝」の句を制限時間5分で全員が作り投句。その全ての句に3名の審査員がそれぞれ点数を付け、チームでの合計点が高い8チームが本戦に勝ち抜けた。
 予選の審査をしたのは、夏井いつきさん(俳句集団「いつき組」組長、「藍生」会員)、五十嵐秀彦さん(俳句集団「itak」代表、「藍生」会員、「雪華」同人)、岡本亜蘇さん(「船団の会」会員)の3名。本戦には、昨年優勝した「ラ さえずり」よりまとむさん、インターネットを通じて広く審査するフェイスブック審査員を加え、計5名で行われた。
 本特集では、本戦の全試合結果とまる裏俳句甲子園を初体験された五十嵐秀彦さんの体験記をお届けする。


 予選の結果、KMC、ダイオウイカ、三日月T、ザ ハイボールズ、チーム実行委員会20歳、奇々怪々、まるやす、ドクトルマイみんの8チームが、午後の本戦に挑んだ。


本戦の結果

本戦審査員(敬称略)
夏井いつき(俳句集団「いつき組」組長、「藍生」会員)
五十嵐秀彦(俳句集団「itak」代表、「藍生」会員、「雪華」同人)
岡本亜蘇(「船団の会」会員)
まとむ(昨年度優勝チーム「ラ さえずり」)
一般投票(Facebookにて投票)

 紅白の次の数字は、審査員の旗の数を、それに続くかっこ内は審査員の名前を記す。FBはFacebook上での投票審査の結果によるFacebook審査員のこと。


第一回戦 第一試合
席題 埋火

紅 KMC
(クズウジュンイチ 理子 くらげを)
白 ダイオウイカ
(土井探花 あるきしちはる ウェンズデー正人)

先鋒戦
×紅 埋火や足裏にくる生理痛
○白 くしやくしやの春画一枚埋火よ
 紅1(まとむ)
 白4(夏井 五十嵐 岡本 FB)

中堅戦
○紅 埋火や家鳴り鎮みてまた鳴れり
×白 埋火や卓に散らかるデッサン画
 紅5(全員)
 白0

大将戦
×紅 埋火や母の幼き頃を知らず
○白 埋火のかろりと赫く崩れ見ゆ
 紅1(五十嵐)
 白4(夏井 岡本 まとむ FB)

 大人ならではの扱いにくい句に容赦ない口撃を仕掛け、また守り抜いたダイオウイカ。一回戦から大将戦にまで縺れ込む大混戦に審査員の講評も熱い。


第一回戦 第二試合
席題 埋火

紅 三日月T
(西連寺ラグナ 桜井教人 亜桜みかり)
白 ザ ハイボールズ
(こま とおと はとほる)

先鋒戦
×紅 埋火や化石に兆す月の色
○白 埋火や本因坊天元を打つ
 紅2(岡本 まとむ)
 白3(夏井 五十嵐 FB)

中堅戦
×紅 埋火や金輪際といふ啖呵
○白 倦怠や埋火を割る細火箸
 紅2(夏井 FB)
 白3(五十嵐 岡本 まとむ)

大将戦
○紅 埋火や万葉仮名のごとくづす
×白 埋火に夢の余白をぬくめをり
 紅3(夏井 五十嵐 まとむ)
 白2(岡本 FB)
 俳句のみの参考評価

 前年準決勝で対戦した因縁の対決となった。ザ ハイボールズの上品な口調で、俳句をよく知らないなどととぼけつつ、容赦なく針の先ほどの傷を探して大きく口を広げるディベートに、本戦常連の三日月Tが今回も涙を呑んだ。


第一回戦 第三試合
席題 埋火

紅 チーム実行委員会20歳
(三津浜わたる 大五郎 ひでやん)
白 奇々怪々
(まお 怪々 火枕)

先鋒戦
×紅 埋火や少年の手の母に似て
○白 埋火やばんそうこう貼り上手くなる
 紅2(夏井 FB)
 白3(五十嵐 岡本 まとむ)

中堅戦
○紅 埋火や地球の歴史訊く子らに
×白 埋火や舌で転がす金平糖
 紅5(全員)
 白0

大将戦
○紅 独り夜は埋火消さで寝ねにけり
×白 埋火となった親父の汽笛かな
 紅4(夏井 五十嵐 岡本 FB)
 白1(まとむ)

 夏の俳句甲子園が第二十回を迎えるという実行委員会チームと実際に若いチームという取り敢えず青春対決となった試合。短い言葉で有効なパンチを繰り出すおっちゃんチームに軍配が上がった。


第一回戦 第四試合
席題 埋火

紅 まるやす
(のり茶づけ 釈然 南亭骨太)
白 ドクトルマイみん
(ドクトルバンブー マイマイ ふじみん)

先鋒戦
×紅 埋火や怒りをしまう箱の欲し
○白 埋火を吹くや獺祭書屋主人
 紅2(五十嵐 FB)
 白3(夏井 岡本 まとむ)

中堅戦
×紅 埋火や深めに埋める昭和の子
○白 埋火や鸚哥の籠に布下ろし
 紅0
 白5(全員)

大将戦
○紅 埋火や耳に欠片のJAZZのある
×白 埋火や夜を撤して相続談
 紅4(夏井 五十嵐 岡本 FB)
 白1(まとむ)
 俳句のみの参考評価

 ヘタ俳人の聖地と異名を持つまるやすから満を持しての本戦出場。負けはしたが釈然さんの頑張りは目を見張るものがあった。マイマイ率いるドクトルマイみん、二日酔いさえも戦法と思えるディベートで準決勝に駒を進めた。


準決勝戦 第一試合
席題 梟

紅 ダイオウイカ
(土井探花 あるきしちはる ウェンズデー正人)
白 ザ ハイボールズ
(こま とおと はとほる)

先鋒戦
×紅 指輪にしたし白梟の琥珀の眼
○白 覚めぎはに梟のこゑして空虚
 紅2(夏井 まとむ)
 白3(五十嵐 岡本 FB)

中堅戦
○紅 眼を奪られるぞ梟を撃つなかれ
×白 パンタグラフは梟にあこがれて
 紅3(岡本 まとむ FB)
 白2(夏井 五十嵐)

大将戦
○紅 梟の森に銀枝の伸ぶるまで
×白 酉年の梟ことに声や佳し
 紅3(五十嵐 まとむ FB)
 白2(夏井 岡本)

 俳句さながら両チームともディベートで放たれる言葉のひとつひとつが美しく心に残る対戦となった。勝って天を仰いだり伏せたりのダイオウイカ。負けて微笑むハイボールズ。


準決勝戦 第二試合
席題 梟

紅 チーム実行委員会20歳
(三津浜わたる 大五郎 ひでやん)
白 ドクトルマイみん
(ドクトルバンブー マイマイ ふじみん)

先鋒戦
×紅 世の闇に首傾げたる梟よ
○白 梟の羽搏く闇を汽笛ゆく
 紅1(夏井)
 白4(五十嵐 岡本 まとむ FB)

中堅戦
×紅 ふくろう啼いて錠剤に品番
○白 梟の頸のからくり夜を廻す
 紅2(夏井 岡本)
 白3(五十嵐 まとむ FB)

大将戦
○紅 梟や人に聞こえぬ歌を聴く
×白 梟と月光を背に水場まで
 紅3(五十嵐 岡本 まとむ)
 白2(夏井 FB)
 俳句のみの参考評価

 攻めが弱い実行委員会チームに対し守りが上手いドクトルマイみん。のらりくらりと攻めをかわすまさに酔拳のようなものか。それに対し実行委員会チームの攻めが弱かったのはそれくらい相手の句が攻めにくかったということか。


決勝戦
席題 雪

紅 ダイオウイカ
(土井探花 あるきしちはる ウェンズデー正人)
白 ドクトルマイみん
(ドクトルバンブー マイマイ ふじみん)

先鋒戦
○紅 始祖鳥の影ごと石となり深雪
×白 踏み進むちりちり闇に燃ゆる雪
 紅3(夏井 五十嵐 FB)
 白2(岡本 まとむ)

中堅戦
○紅 子を百度揺すりあげ敗戦の雪
×白 眠りたる火口幾つが雪の下
 紅4(夏井 五十嵐 岡本 まとむ)
 白1(FB)

大将戦
×紅 少女らのそれぞれ孤独手には雪
○白 金閣に水を逆さに雪が降る
 紅2(岡本 FB)
 白3(夏井 五十嵐 まとむ)
 俳句のみの参考評価

 感覚的な鑑賞だけにとどまらず助詞の一文字まで、多彩な攻撃をしかけるダイオウイカに対し、相変わらずののらりくらり戦法の守りも一歩及ばずダイオウイカが優勝を決めた。

(レポート mhmあねご)


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どさんこ4人組「まる裏」体験記


五十嵐秀彦


 千歳から松山までの直行便はない。
 羽田で乗り換えなので、なかなか面倒なのではあるが、早朝の千歳空港で早くも缶ビールをプファーとやっている酔鳴を見つけるところから今回の旅は始まっていた。
 飛行機の中で、どうしてこうなったのかと考える。たぶんあれだ、2年ほど前のこと仕事を終えて喫茶店で原稿を書いていたところに突然ケータイが鳴った。大阪の三木基史さんだった。「いま松山にいる」と言う。「あんたの俳句集団 itak から『まる裏』にチームを送れ」という強迫電話であった。さらに電話の相手が代わり、次に出てきたのが夏井いつきさん。とにかく北海道から人を送れというのである。送らなければお前が責任をとって来いと言ったのは三木さんだったような。
 昨年は itak の1月イベントとまる裏の日程がぶつかってはいたものの、有志がチームを作り初参加。しかも予選通過という快挙をなした。
 まあつまり、外濠はみっしりと埋められていたのである。次は私が行ってみようということになり、ある日札幌にやってきた夏井さんに、来年は参加するよと伝えると「ラッキー! じゃ審査員やってね!」となって…。
 で、飛行機の窓から見慣れぬ瀬戸内海の風景を見下ろすことになったわけだ。
 今回、北海道から参加したのは、ふじもりよしと、青山酔鳴、高橋洋子(itakじょっぴんトリオ)と、私の計4名。「まる裏」はその名前以外なにも知らないという勢いだけの私たちが松山空港に降り立ったとき、酔鳴はすでに缶ビールを5本ばかり空けていたのであった。
 前夜祭だと思って参加したのが俳句ポストのオフ会であった。松山の人たちに実にあたたかく迎えていただき感動。俳句って初めて会った人も旧知の友のようになってしまう。そこにしびれるような快感があるのだ。
 さて当日、審査員は夏井いつきさんと岡本亜蘇さんと私。この3人でまず予選句にばたばたと点をつけていった。「まる裏」はお祭りであり遊びとは心得ているが、選句は真剣にやらなくちゃ遊びが成立しないと思いしっかり目をとおしたつもりだ。「itakじょっぴんトリオ」の成績はいかに?(「じょっぴん」というのは北海道弁で「家の鍵」のこと)
 この作業の結果、トーナメントに残る8チームが決定した。
 あらら、「じょっぴんトリオ」は早くも花と散っていた。まあ、彼らにトーナメントに残られても、私が旗を上げないような事態になって、その後ボコられてしまっただろうことを思えば幸いであったが。
 後で聞くと、よしと氏のくやしがることひとかたならず、きっと来年もリベンジとか言い出しそうだ。
 さて、決勝トーナメント。ここではディベートが目の前で見られるので、たっぷりと「まる裏」を堪能させてもらった。チーム名や、句の作者名もよくわからないまま書いているので不備な点はご容赦。

 埋火や家鳴り鎮みてまた鳴れり(KMC)
 いのちがあって息づいているような古い家を思わせる。

 埋火や金輪際といふ啖呵(三日月T)
 いまどきこんな啖呵をきれるのはきっと女性だ。

 埋火やばんそうこう貼り上手くなる(奇々怪々)
 この埋火からばんそうこうへの飛ばし方がいい。

 覚めぎはに梟のこゑして空虚(ハイボールズ)
 夢とうつつの間に落ちてゆくのだね。

 梟や人に聞こえぬ歌を聴く(実行委20歳)
 梟も俳人も聞こえぬ声を聴いている。

 始祖鳥の影ごと石となり深雪(ダイオウイカ)
 お、これは地層のように堅く堆積する北海道の雪そのものではないか。

 最後には「ダイオウイカ」チームが優勝となった。優勝はもちろん見事なことではあるけれど、予選から決勝まで、俳句をとおして参加者が交歓することこそ理屈抜きで楽しいのであり、このイベントの価値だろう。
 ディベートを聞きながら思ったことがあった。最後にそのことを少し話させてもらう時間をいただいた。
 本家の俳句甲子園は年々隆盛で喜ばしいことではあるが、少し気になっていることがある。それは彼らがディベートに上達すればするほど、どこか息苦しいのである。俳句ってこんなに息苦しいものだったのかと思うほどだ。参加したからには一位になりたい。高校生なのだからそれは理解できる。けれどどこか違和感があった。今回「まる裏」に参加してその違和感の理由がわかった。俳句は真剣に作っても、語り合うときにはそれを肴にして自由に遊ぶ。ボケもあればツッコミもある。笑いが自然と生まれてくるやり取りが、俳句ならではの相聞だ。「まる裏」にはそれがあった。大人の遊びゆえの余裕ではあろうけれど、高校生たちにもこれをぜひ見て欲しい。俳句の相聞というものを彼らにわかってほしいと強く感じたのである。
 「まる裏」それは、百聞は一見に如かず、である。参加しなくちゃわからない。参加すれば誰にでもわかる。きっと来年も来ることになりそうだ。
 それにしても前の晩から当日の懇親会まで全力投球の夏井いつきさんのパワーにはあらためて驚かされた。そして元気というものは伝染する。妙に元気になってしまった4人はなぜか帰途空港ゲートで2度も止められるというヘマをしながら雪の北海道へと帰ったのであった。


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美術館吟行


第27回

愛媛県美術館 所蔵品展 吟行会

写生と装飾
愛媛の洋画史 明治〜昭和戦前期 光風会の作家たち
西洋美術 旧杉浦非水コレクション


文 日暮屋


 イレギュラーでしか参加できていない美術館吟行、楽しみでたまらなかった。にもかかわらず朝から気鬱だ。理由は朝の用足し後、トイレの排水が詰まって、掃除したての便所に溢れだしそうなほど、危険水域にせまった為である。すぐさま業者に連絡、午後三時からの作業予約後、急ぎ愛媛県立美術館へ。
 午前十時の集合に、日暮屋、天玲、紗蘭、チャンヒ、恋衣、ひかる、少し遅れて猫正宗の七名が集まり、いざ吟行開始。
 下調べ無しで乗り込んだ第一展示室に、杉浦非水の文字が。スギウラハイスイ?……無知にもほどがある。心の中で、ヒスイをハイスイと読んでしまった。そしてせっかく忘れていたのに、ここにきてまでトイレの排水を思い出し、忌々しくってしょうがない。
 気を取り直し、作品に目をやると、写生に基づきながらデザイン感覚で抽象化され、写実と装飾のみごとなまでの融合、調和された作品に目が奪われる。

伊東正次作「黒牡丹図」
半生を牡丹の闇の中に居る  チャンヒ

 日本画の静なる空間、さらに歩を進めると二幅の掛け軸の如く、

平田百穂作「蕗の薹」「かけ稲」
誰も触れず誰にも知られず蕗の薹  猫正宗
ふきのとう空は大気の層のこと  チャンヒ
吸ひあげし水の召されて稲乾く  天玲

対面にも大きな作品が並ぶ。

福井江太郎作「思」
ダチョウ遊べよ墨汁散る春よ  紗蘭

福井江太郎作「夢T」「夢U」
ゆるやかに首をからませ春来る  恋衣
くり返しふり向く夢の冬の鳥  天玲

 そして第一展示室の終焉で、屏風に描かれた夜の風景。
 黒い洋の世界を和に閉じ込めた、不思議な感覚に思わず歩が止まる。

岩波昭彦作「夜のマンハッタン」
マンハッタン屈折という春の闇  日暮屋

 つづいて第二展示室。ここは常設で、日本の画壇に大きな影響を与えた、愛媛出身の作家の作品が並ぶ。
 早々に、明媚な里山の春を堂々と描いた大作に魅せられる。

中川八郎作「杏花の村」
花盛る遠山に青春を捨てた  ひかる
夫婦野に遊びともだちは要らない  日暮屋

 そして、俳句も俳画もたしなんだ画家、実は彼の作品には、かつて久万美術館の井部コレクションで心を奪われたことがある。その画家とは、野間仁根。

野間仁根作「静物」
永き日よピエロになれないピエロよ  恋衣

野間仁根作「画室」
望むなら全ての虹をアトリエに  猫正宗

 最後、第三展示室は、長年三越のブランドイメージを決定づけたグラフィックデザイナー、杉浦非水の心を動かしたに違いないことが、手に取るようにわかる西洋美術、アールヌーボーの世界である。

ウジェーヌ・グラッセ作「瞑想」
瞑想の瞳に春星の触れて  ひかる

アルフォンス・ミュシャ作「メディア」のポスター
ミュシャ描く死体に春愁のまぶた  紗蘭

 ひと通り鑑賞を終えてたところで、今日のメンバー全員で昼食後解散。
 気が気ではなかったトイレの排水の詰まり。約束の午後三時前、ピンポーン、待ってました、専門業者。
 原因は、庭木の根っこが地下を這って、わずかな隙間から入り込み、鳥の巣状になっていたためだ。取り除き、高圧洗浄で無事、作業完了。税込、一万六千円也。何かあったらまたお願いしますと、領収印にな、な、なんと!杉浦。
ありがとう杉浦「排水」、エライぞ杉浦「排水」、また頼むぞ杉浦「排水」。


ビー玉のころげた先に蕗の薹  日暮屋
吸ひあげし水の召されて稲乾く  天玲
ふらここを漕がばあの日の曲がり角  恋衣



日暮屋又郎
蕎麦をこよなく愛する俳人。
第三回、第五回、百年俳句賞優秀賞受賞。
句集、デカパンのピカソ上梓。


次回吟行会
愛媛県美術館「名嘉睦稔展 風の伝言を彫る」吟行会
4月8日(土) 朝10時現地集合
参加費無料(入館料は別途)
申込締切 4月6日(木)
『100年俳句計画』編集室までお申し込み下さい。TEL 089-906-0694


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2016年度 第三期 最終回


二月
理酔

蒼黒き海蒼白き二月かな
春雪や子連れに路を譲られる
浅春の酒場喧嘩は苦手だが
落椿船に乗るのは諦めた
焼原や饂飩の出汁が甘すぎる
傾ぎだす春雨傘のタンゴかな
愚痴と梅饐えた酒場の大漁旗
早春の陽が港仕事に有り難い
雪泥や三十五分前の犬
春黄金花ピアニストの嘆息
昼酒の角打ち春雷の微か
初雲雀若い上司に叱られる

腰痛は快癒したのですが、寒い日が続いたので朝風呂をやめ夜に風呂を使うようになりました。結果として外で飲むことが少なくなり家飯家酒の日々を楽しんでいます。


三月のゆびきり
初蒸気

鬼やらひ逃げどころ無きこの島に
スサノオの太き鼻毛や野火走る
自刃の地ころりころりと蕗の薹
曲水の鳥鳴けばみな空を見る
梅が香や心に小さき龍の棲む
春障子ふくふくと揉む土踏まず
愛の日の白銀のボンボニエール
宇宙から呼ぶ声がする猫柳
三月のゆびきり頼りない君と
めんどくさい顔の胸像春の風
春宵の泣きぼくろめくひとつ星
古雛や未来が見えてゐるのですか

プチ引越しすることになりました。妻カリメロは、今の部屋から見える森や鳥と離れがたい、と最後まで抵抗。俳人の部屋選びは面倒くさい。


鳥瞰
此花悠

針山に針の光沢木の芽雨
日の指のふれては覚ます梅の花
夕日得て夕陽が丘に春や来ぬ
枝枝に鳥語頻りや春立つ日
あたたかや鉢に目高の恋満ちて
涅槃西風四辻の僧衣はためかせ
勤め上げうぐひす餅のくびれ愛づ
新行員のお辞儀ふかぶか木瓜の花
拭けど拭けど春の埃の黒家電
月満ちて淋しきまなこ冴返る
沖雲のシベリア色や鳥帰る
吹き上ぐる春岬勃然と鳥瞰

五十路のパート主婦にして、俳句の穴〜ロマンチカ〜の幽霊部員。


海よ
岡田一実

蝋燭の芯のみ残り燃ゆ春昼
雛同士目の合ふこともなかりけり
雛壇の中に上着の脱いであり
濡れ土に跳ねて椿の側溝へ
ふらここをはづれて街が普通に見える
連翹の遥けき黄とも卑の黄とも
もはや溺れたい海だよこの春の怒濤の中は暗いのか海よ
定型が波頭に揺らぐしやぼん玉
腑にうるささうなうぐひす餅の粉
麗かや図説ときおり大げさに
体内を管は隈なし百千鳥
春や目はいつも濡れつつ動きゐて

2014年「第三回 大人のための句集を作ろう!コンテスト」優秀賞受賞。2014年「浮力」にて現代俳句新人賞受賞。現代俳句協会会員。「いつき組」所属。「らん」同人。第二句集『境界 ―border―』(マルコボ.コム)。


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新 100年の旗手


読者投稿による3ヶ月連載作品集
(2017年1月号 〜 2017年3月号 3/3回目)


春来たる
小川めぐる

砂場には貝殻雲母二月尽
春暁や水は光の珠になり
瘡蓋はひりひり紫花菜咲く
白詰草しゃむしゃむ馬の半眼
雲雀東風あの芦毛クロフネと云ふ
春来たる鳶大きな輪を描けば
初百合の下に妖精来る気配
犇めける春のルージュの中にゐる
山焼の夜や錆猫の集う庭
髪をピンクにしてみたき春である

1967年熊本県生まれ、現在は大阪在住。俳句歴は1年3ヶ月くらいです。俳号の由来は、「いつも目をグルグル回している」ところから。


磯磯
若狹昭宏

梟や夜の激動は爪に秘め
身を投げるやうに薄氷踏みにけり
白魚の世の仮初の姿かな
内蔵に渦巻く神秘栄螺積む
園児ほど素直に父が桜鯛
星屑を迎へに来たる蛍烏賊
外海の残機の知らせ望潮
そよそよと色を散らして磯巾着
山裾に流るる如し桜えび
たてがみに藁の香りやかぎろひぬ

1985年生まれ、広島県出身。お呼びとあらば即参上。自称「キム チャンヒの弟子」として俳画修行中のmhm代表。松山や今治で双星句会を開いてます。


2017年 第2期連載者募集中
締切2017年5月15日(月)

応募内容
2017年7月号に掲載できるタイトル付の10句

応募先
Eメール magazine@marukobo.com
 件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
 (郵送またはFAXでも受け付けております。詳しくは編集室までお問い合わせ下さい。)


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新 100年への軌跡


2016年度 第三期
最終回


船出の音
下楠絵里 

笑ふとき皺多き人春うらら
三月の甘めに作る卵焼き
花種蒔く弟の背の伸びてゐて
遊園地はこどもの街や牡丹の芽
青年の声に近づき雲雀飛ぶ
春の虹五分早めてある時計
引鴨や東京は朝昏くなり
赤縁の眼鏡を選び大試験
卒業の日の海岸の明るさよ
キーボード軽し青きを踏んできて
春塵の帽子飛び出す車掌室
嘘ひとつ混ぜた手紙や山椿
姿勢正せば船出の音よ涅槃西風
晴れ空の都会近づき菫かな
寝る前の弦楽遠く春の雪

下楠絵里(しもくす・えり)
 1997年生まれ。京都大学文学部在学中。洛南高校在学時より句作を始める。第15〜17回松山俳句甲子園全国大会出場。第10回鬼貫青春俳句大賞優秀賞。


少年よ
葛城蓮士 

―春は行く。人のいくたて黄泉の國。
少し休んでおつかひの路半ば
年下の子の鞦韆を待つてゐる
よく喧嘩してる仔猫や輪止め石
詩で以つて諭す先生春一番
をかを跳ねとほくへクローバー探し
たんけんと称し彼岸のぬけみちへ
づたぼろの靴は春野の子の証
さくら散る道や靴跡入り混じる
へそ見えてしまふ欠伸や水温し
てがみ皆母宛なりや春の風
抗生剤消えゆく身体春あした
ヘッドホン無音 影ぽつんと朧
春暁や影に傾くオートバイ
へのへのもへじ消えかけて春うらゝ

葛城蓮士(かつらぎ・れんじ)
 1994年生まれ、埼玉県在住。第12回鬼貫青春俳句大賞優秀賞。ゲリラ句会管理者。


青と春
都築まとむ

 たまたま選んだ下楠さんの句に「青」、葛城さんの句には「春」の字。「青」と「春」どこか似ている。

青年の声に近づき雲雀飛ぶ 下楠絵里
 変声期の少年のことだろうか。季語の「雲雀」が明るい。「飛ぶ」としたことで広い空を想像させる。雲雀の鳴き声からするとまだ青年になりきるには少し間がありそう。

キーボード軽し青きを踏んできて 下楠絵里
 書きたい思いが押し寄せてくるとキーボードは軽い。春の野の光を浴びた心は、書きたくてウズウズするに違いない。いま私もそんな気分。

抗生剤消えゆく身体春あした 葛城蓮士
 冬の名残を「抗生剤消えゆく身体」と表現したところがいい。「春あした」は実感として心の動きを捉えている。

春暁や影に傾くオートバイ 葛城蓮士
 「春暁」という情緒的な季語の後の展開がいい。「影に傾くオートバイ」この描写で、コンビニに止めた大型のバイクを想像した。春の暁を走ってきたバイクには何かドラマがありそうだ。ひとつ「影へ」とした方がよいのかも。

都築まとむ
 1961年愛媛県八幡浜市生まれ。第3回選評大賞優秀賞。


成長すること
樫の木

 「船出の音」は春の出会いと別れを感じさせる。

春の虹五分早めてある時計 下楠絵里
 春の虹は春はじめて現れる虹で淡く消えやすい。虹が消えるまで見ていたら約束の時間に遅れそうになって慌てる。が、時計を五分早めていたことを思い出す。
引鴨や東京は朝昏くなり 下楠絵里
 東京の繁華街は一晩中煌々と灯っているのだろう。夜と朝とが入れ代わる僅かな時間に東京が最も昏くなることにはっとさせられる。その昏い空を鴨達が帰って行く。

 「少年よ」は前半に少年の後半に青年のにおいがある。
 「いくたて」とは広辞苑によれば、いきさつ、なりゆき。

てがみ皆母宛なりや春の風 葛城蓮士
 郵便受けを覗く少年は自分宛の手紙が届かないことに一人前の大人として認められていないような寂しい気持ちになるのだろう。春の風は暖かくその頬を撫でる。
ヘッドホン無音 影ぽつんと朧 葛城蓮士
 曲が終わってヘッドホンの音が途切れたことにふと気付く。その間が半角分の空白か。影ぽつんとに孤独感を朧に(自分の存在も含めた)頼りなさを感じている。

 お二人の連載も最終回ですね。本当にお疲れ様でした。

樫の木
 1965年愛媛県生まれ。大分県在住の家具職人。第5回選評大賞優秀賞。第10回選評大賞最優秀賞。


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳 朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ

No.44

After Setsubun
Soft evening light
But why does it smell like snow?

節分の後の薄暮や雪匂ふ

(直訳)
節分過ぎの
柔らかな薄暮の光に
何故雪の降りそうな匂いがするの


 We spent a week in Hokkaido's constant snowfall. We saw the sun only once but were grateful for the fluffy white flakes which fell every other day. During the long nights our winter's sleep was nourishing.

 僕らは雪の降り続く北海道で一週間過ごした。太陽を見たのは一回きりだけど、それ以外はふわふわの真っ白粉雪に感謝する毎日だった。長い夜の冬の眠りは、僕らの身体を養ってくれた。


ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文 白方雅博(俳号 蛇頭)

第72話

オール・ラヴ
グラディ・テイト


春眠を誘うグラディの深い声  毒取

 倉庫に眠る大量のVHSビデオテープ。500本は下るまい。その半数がジャズ物で、今探し出し、視聴したい筆頭がジャズフュージョン・サックス奏者グローバー・ワシントンJr.の来日公演で、グラディ・テイトが歌ったナンバー「ジャスト・ザ・トゥ・オブ・アス」である。1982年にリリースされたグローバーのアルバム「ワインライト」が日本でもヒットして1983年9月4日(日)横浜スタジアム「オーレックス・ジャズ・フェスティバル'83」での公演。と記録があるので、この時の映像に間違いないだろう。オリジナル盤ではパーカショニストのラルフ・マクドナルドと共に作詞・作曲者に名を連ねるビル・ウィザーズという歌手が歌っているが、グラディの日本公演の歌の方が断然良かった。

シンギンスウィンギンドラマー春光  蛇頭

 しかし、現在JAZZ句会はドラマー特集だ。そう、グラディ・テイトは歌も一流の超人気ドラマーなのだ。名プロデューサーの伊藤八十八氏は、これを見逃さなかった。2002年、ピアノのケニー・バロン、フルートとテナーサックスのフランク・ウェス等ニューヨークの人気ミュージシャンを招聘して3日間で二刀流グラディの才能満載のアルバム「オール・ラヴ」を完成させた。伊藤氏が設立したレーベルEighty-Eightsの録音だから音も良い。これが今回のメインテーマなのである。

午前2時ジャズの余韻と梅の香と  とみ

 「オール・ラヴ」にはスタンダード・ナンバーがずらりと並ぶ。1曲グラディのオリジナル・ナンバーもある。そして、9曲中5曲が二刀流。どれか1曲を、と言われたら少々迷うが、1953年にロバート・メリンが作詞、ガイ・ウッドが作曲した2曲目の「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」を僕は選ぶ。コルトレーンと共演したジョニー・ハートマンの快唱を超えたかも。なので、とみさんが詠んでくれた一番人気句を添えさせていただいた。

ドラムスは呼吸か春の闇からの  チャンヒ

 ドラマーとしてのグレディの代表作、となると困った。コレ!!というリーダー作が無いのである。そんな時はミュージシャンに聞くのが一番だ。しかし、テーマ提案者のマミコンさんにもう1枚推薦してもらうのも芸が無いので古本と中古レコードも商うジャズドラマーのTさんに相談した。Tさんは迷わなかった。テナーサックス奏者スタン・ゲッツのリーダー作「スィート・レイン」で決まり。グラディの功績が絶大のアルバムだ。

緩急の宜しきを得て春の雨  暮井戸

 1曲目とラストの5曲目、チック・コリア作曲の「リザ」と「ウィンドウズ」は正にこんな感じ。
ハイハットさらりと春雨のにほい  ジョニー
 ディジー・ガレスピー作曲の4曲目「コン・アルマ」はリズミックで場面転換が面白く、心地よく五感を刺激してくれる。

チョコレイト和らげ花の雨の降る  若狭

 2曲目アントニオ・カルロス・ジョビンの「オ・グランジ・アモール」と3曲目マイケル・ギブスの「スウィート・レイン」でとろけちゃえ。


「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は月曜日の21時〜22時。

次回のJAZZ句会は、3月12日(日)13時より。テーマはジャズドラマー「チコ・ハミルトン」です。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU』vol.1〜vol.3(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ


第七十二話

文 俳句 らくさぶろう


大安売り
 祝 稀勢の里横綱昇進

 町内の若い衆が二人道端で立ち話をしていると、向こうから関取が歩いて来ている。しばらく会っていないので声をかけてみることに。
男「どこへ行ってなはった?」
関取「東の方へ行っておりまして。本場所十日間相撲をとらしてもらいました。」
 東の方とはすごい。結果はどうやったと尋ねると、「勝ったり負けたり」と控えめな答え。初日をきいてみると、気後れしてしまい残念ながら負けてしまったと言う。
 二日目も立ち遅れてしまい連敗。
 三日目は立ち上がりにバーンと腰車を……かけそこなってまた負け。
 四日目は、鉄砲をかましそこなって向こうへ引っ張りこまれて土俵を割ってしまったという。
 五日目ははたきこみで四つばいにはわされてしまい、六日目は投げられて六連敗。
 「ええかげんにしいや。負けてばかりやがな。」と問うと、七日目八日目九日目も結局何やら言い訳をつけて負け。千秋楽十日目は「ついでに負けてやった。」と言う始末。
 「勝ったり負けたり」とはどういうことや、負けてばっかりやがなと言うと、「向こうが勝ったりこっちが負けたり」と返される。
 もう辞めようかと親方に相談すると「辞めてくれるな。お前が辞めたら部屋のちゃんこ番がおらんようになる。」と、変な理由で残ることにしたという。
 そして、こうなったらシコ名を変えて「大安売り」にしたという。
 けったいな名前じゃ。「大安売り」とはまた何で?と訊くと、「これからはなんぼでもまけてやります。」


 稀勢の里のあの場所での横綱昇進に関しては、早過ぎるとか妥当だとか賛否両論。
 ま、ともかく決定したことなので目出度いではありませぬか。
 大阪の春場所はチケット発売後2時間で売り切れという大人気。若貴全盛のころを思い出させますね。
 僕もあのころ、どうしても生で大相撲本場所が見たくて、春場所のチケットを買おうとして電話を朝イチからかけまくっておりましたが全くつながらず……。あきらめかけたときにやっとつながって「どこが空いてますか?」と訊くと「一番お安いイス席でしたら何とか」と答えられ、「それ! お願いします!」と、必死の思いでゲットしたものです。
 後ろの方ではありましたが、やはり本場所の空気は違う。力士ひとりひとりの所作や行事、呼び出し達の動きや衣裳を見ているだけでも非日常を体感できて、大大満足でした。
 今のように様々なスポーツを観たり自分がやったりするような時代ではないので、落語には相撲がよく登場します。
 また、我々が日ごろよく使っている言葉も、相撲からきているものもたくさんあります。
 仕切り直し、土俵際、格段の差、待ったなし、序の口、腰砕け、足を出す、懐が深い、揚げ足を取るなどなど。
 それだけ相撲が生活に近いものだったということでしょう。
 稀勢の里にもますます精進してもらいたいところですが、小兵の二人が今人気急上昇中。宇良と石浦の二人です。
 上位をおびやかす存在になってほしいし、ぜひ幕内でこの二人の対戦が見てみたい。
 春場所では宇良の新人幕も有力となっているので、はやくも取組が組まれるかも?
 以上、じいちゃんの影響で大相撲ファンのらくさぶろうでした。

春場所の桟敷五人の舞子かな


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 俳句初心者、翻田訳蔵がネット上の翻訳ソフトを使って名句を翻訳、再翻訳し、そこからインスパイアされた(パクッた)句を発表していこうという馬鹿馬鹿しくも実験的で図々しいコラムです。


今回の俳句
谺して山ほととぎすほしいまま  杉田久女 

 「谷」の「牙」で「こだま」なんですね。そして、山ほととぎすで一つの季語なんですね。勉強になります。
 ではまず、Google翻訳(日→英)から

I want you to take a mountain and leave it.

 再翻訳(英→日)

私はあなたが山を取ってそれを残しておきたい。

 あなたが取った山を残しておきたい?
 で、ほととぎすはどこへ行ってしまったのでしょうか?

 続いて、エキサイト翻訳(日→英)

A mountain little cuckoo does an echo, and is selfish.

 再翻訳(英→日)

山小カッコウはエコーをし、利己的である。

 ほととぎすはカッコウ目・カッコウ科に分類されるそうで、カッコウは全長35センチメートル、ほととぎすは全長28センチメートル。なので、小カッコウと訳されてしまうわけですね。

 最後に、Yahoo!翻訳(日→英)

It echoes, and a mountain grayheaded cuckoo is selfish

 では、再翻訳(英→日)

それは反響します、そして、山の灰色の頭のカッコウは利己的です

 ほととぎすを灰色の頭のカッコウと、詳しく説明してくれていますが、カッコウも頭は灰色のような気がするのですが……。

 それでは、この3つを受けて一句


郭公よりすこしちいさい時鳥  翻田訳蔵


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100年投句計画

選者三名による 雑詠俳句計画




先選者 関悦史

 冬場恒例となってきた全身の凝り、眩暈がひどくて、よろけて襖を破ったりしている間に、そこへ重ねてすでに花粉が飛び始めているようで、目まで真っ赤。
 どう考えても何もやる気が起きないこの状態のなかで、自分の第二句集の校正作業が大詰めを迎えていまして、これがまた句数が多い上に、再校まで進んでしまってからものすごい規模の誤植が紛れこんでいるのに気がつき、変な笑いが漏れています。予定通り出るのかこれ。


木枯や空に無数の顔がある  小市
 最初はイメージの作り方が恣意的すぎて説得力がない気がし、一応拾っておくという程度の扱いだったのが、順位をつけていくうちに結局「天」にまで上り詰めてしまったという、これまでの選句ではあまりなかったパターン。無数の顔がある空という無気味なイメージが「如し」などの直喩ではなく言いきられていて、句の形としては文句がなく、だんだん、作者の心理にも還元しきれない、存在することそのものの謎とも見えてきます。


またダリを超える面なり福笑ひ  出楽久眞
 ダリは絵柄が知られている分、俳句にもわりとよく出てくるのですが、福笑では意外に使われていないかも(福笑ではピカソが多い)。平凡なようで「また」と「ダリ」の組み合わせが流動性をじわじわ醸し出します。

外套を脱ぎ捨て君は鯱になる  葉音
 「鯱」となった人というのが泳ぎをイメージさせるので夏にも見えますが、季語は「外套」で冬。「鯱」を比喩ととったら面白くない。「君」への讃嘆が重くなる暇もない瞬時の変貌を傍観するのみの君と私の関係。
熱燗や宇宙を語る二十歳の娘  波野
 熱燗で一杯やりつつとなると何の話をされても自足が目についてどうでもよくなってくるのですが、「熱燗」「宇宙」「二十歳の娘」の組み合わせで一歩抜け出た感あり。

音叉またくはんくはんと鐘冴ゆる  マカロン星人
 鐘の音と音叉の周波数が合って、共鳴しているという句でしょうか。鐘と音叉の二つの音を詠みつつ主眼はそのどちらでもなく、両者の関係になっているので「冴ゆる」が「くはんくはん」に乗って意外に広がります。

鯛焼の手をあたヽむる重さかな  人日子
 当たり前の句に見えますが「鯛焼の手をあたヽむる」から「重さ」へのつなぎ方にはひとつの飛躍があります。「重さ」といっても大した重量のわけはないので、そのその違和が鯛焼に返り、強い実感を呼び起こします。


靴底に返る力や日脚伸ぶ  dolce
せうばうしや帰署してしづかなる余熱  出楽久眞
空港の空は水色旅はじめ  柝の音
着ぐるみのパジャマ干さるる四日かな  おせろ
あの亀もどこかで聞くや除夜の鐘  ぴいす
寒卵ありますと告ぐ養鶏場  青蛙
崇徳院愈愈嗄声歌骨牌  凡鑽
メレンゲの角のふうわり鬼やらひ   越智空子
音たてて水飲む仔犬新松子  鯉城
教へ子も孫をる歳や福寿草  哲白

関悦史(せき えつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。



先選者 阪西敦子

 すこし切りのいい誕生日を迎えるにあたり、何年も前からそれを意識し、あるいは想像して、それまでに何かを成し遂げようと思ったのだけれど、やはり現実とは現実で、何も特には成し遂げ得ず、仕事で遅くなったので帰宅途中に買った食材で小鍋を作って食べ、締めの餅雑炊を火にかけている途中に日付は改まり、携帯のメールに返事をして、あ、日付が変わってると気づく。今日は誕生日、休みを取ったけれど、朝の10時からマンションは断水。仕方がない、築何年目かの改修がはじまるのだ。


缶蹴りの缶飛んできし寒椿  鯉城
 なお空間の多い寒い季節に開く寒椿は、普通の椿に比べて何か唐突に空間に現れたような、劇的なところがある。地と関わりなく宙に咲くそんな花を、缶蹴りから放たれた缶がかすめて、その高さを思い出したような次第。寒椿にも枝があって、地に繋がって咲いているのであった。すかすかした空間に一瞬の動揺が走り、また静寂を取り戻す。しかし、その前後は同じではなく、季節も少しずつ進んでゆく。


双六にかがめる子らのつむじかな  ゆりかもめ
 独楽廻しにしろなんにしろ、あの単純なお正月の遊びはなぜ古今の子供たちを集めてしまうのだろう。双六には静かな緊張が訪れたところ。つむじにその熱中が最も現れる。

地球から墜ちないやうに冬木抱く  西原みどり
 地球から墜ちるなどとは、ガリレオの昔の人々が恐れたこと。あるいは、それぞれが小さかったころの思い。昔の記憶が急に戻った心細さをおさめるのは冬木のような、太くあたたかきもの。

百段を登りジャケット木の枝へ  あおい
 季題はジャケット、前あきの冬の衣服。百段を上るうちに暖かくなってきたが脱げば邪魔、前を開けて上り終わるやそれを枝にかけて、自らはどこかに腰かけるのかもしれない。冬の高さの心地よさとジャケットの気軽さがいい。

音たてて水飲む仔犬新松子  鯉城
 仔犬が大いに水を飲んでいる、あの小さな体のどこにそんな水が必要なのだろうか。寒くなる季節に向かって、力を蓄える新松子も何かの驚きのかたちをしている。

初鏡夫が後に写ってる  ミセスコナン
 正月の身支度の妻の鏡に、夫が姿を見せている。覗くというよりは映っているのに気づかずに、後姿が入ってしまったように見える。自分の姿に集中していれば見えないはずの夫の影は、気配りであり、改まった年の感慨でもある。


白鳥の見あぐる空もまた白く  dolce
空港の空は水色旅はじめ  柝の音
着ぐるみのパジャマ干さるる四日かな  おせろ
佐保姫に背中押されて渡すチョコ  ひさの
演台へマイクと水とカトレアと  のり茶づけ
熱燗や宇宙を語る二十歳の娘  波野
冬鵙や帰宅時間に遅れし子  一走人
冬帽子投げて第一反抗期  空山
炬燵出て昔の遊び教へけり  人日子
それぞれのマスクも独り言を言ひ  ぎんなん

阪西敦子(さかにし あつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。



後選者 桜井教人

 「少年式」は愛媛県民にしか分からない言葉の一つだ。刑事責任を問われる十四歳を機会とするイベントだ。最近は全国的に「2分の1成人式」というイベントが流行している。言葉の通り十歳を機会に自分の今までの歩みを振り返り、感謝の気持ちを新たにし、本当の成人に向かって歩みだそうというイベントだ。関東の某市の成人式はテーマパークで行われるが、関西の某市の2分の1成人式ではチキンラーメンがもらえる。なんだか微笑ましい。

特選
麗らかや決定稿の誤字脱字  ひでやん
 稟議に回し、完成したはずの文書に誤字脱字を見つけることがままある。多分作者は気づかなかったふりをしたのだろう。麗らかな季節なら見つからないに違いない。普段のチェックは甘いのにこんな時だけ気づく上司がたまにいるが。

弟を弔う朝の寒さかな  カシオペア
 単純なようだが「朝」がとても効いている。哀しさも様々な思いも前夜までに消化したのだろう。送り出す最後の朝の寒さは潔く、崇高でさえある。これほどストレートな句には敬意を払うしかない。

施設一美人の母よ遠霞  風海桐
 施設一美人という言い切りから作者の愛の深さや施設での生活の様子を想像させる。同時になんともし難い思いや事情があることも遠霞から推し量れる。思いを乗せる言葉の選択と句の構成が見事だ。

並選
七種の草の二つが間に合わず  芳香
すくと立つ背に参考書暮早し  桂奈
梅ひらくカン キドン氏の句誌ひらく  健次郎
松過ぎておしゃべり坊主の長法話  しのたん
冬銀河左手だけのピアニスト  幸
受験子やかまぼこ板の応援歌  レモングラス
銚子沖機窓に拝す初日の出   柝の音
梯子乗法被の背ナの逆さ文字  ヤッチー
風花や身籠ることを知らぬ猫  ゆりかもめ
六日夜や「嵐」に熱き五万人  かのん
春泥にホーミーホーメイらしき聴く  暮井戸
煮え切らぬ男だったわ海鼠食う  もね
大寒や骨軋む音響きをり  葉音
天心の青より来たり冬の鳶  松田夜市
春の泥小さき手より果たし状  久我恒子
中指の骨だけ鳴るよ枯蓮  てん点
寒紅と艶歌の似合う紬かな  南亭骨太
大寒の首脳会議の行方かな  一走人
上弦の月に抱かるる冬の星  藍人
音立てず音を消しゆく昼の雪  和音
灯を入れてガレの残照冬深む  凡鑽
木蓮の芽のふくらめど主なし  喜多輝女
悴める指あてて聴く心の臓  山崎ぐずみ
雪月夜中也の詩のような青  誉茂子
沸点のひくきわらひや冬の水  うに子
ポルカ踊ればギンイロに雪跳ねる  緑の手
ほうと咲く闇夜に春の白き花  台所のキフジン
着ぶくれて腹話術師の姉妹かな  内藤羊皐
小さきを母に取り置く鏡割  松尾千波矢
まる裏俳句甲子園言霊の故郷  西条の針屋さん
裏路地の日に跳ねて出る初雀  彩楓
桃の花ブラスバンドの女学生  どかてい
空つぽの子宮が痛い寒の月  西原みどり
ぽつぽつ陽の香競うかに蝋梅  青柘榴
一ところ割れて冷え冷え石畳  明日嘉
溜息を星に変換するマスク  土井探花
ジョーカーと名乗る僧来る寒に入る  土井探花
うつむいて透き通るかな冬桜  桃林
冬の雨山に微かに獣臭  空山
実紫艶めきたりて小糠雨  中川弘子
昼の月秋雲となり消へにけり  未貫
いそいそとおせち作りて娘待つ  みちこ
導かれまた導かれ去年今年  アンリルカ
灌漑の水の走りて春きざす  童夢U世
クレソンや水せき止めて春旱  エノコロちゃん
娘より受胎の知らせ冬の虹  ぎんなん
初夢の恵比寿大黒鶏も舞い  まんぷく
砕岩機握る拳や飛雪急  哲白
バオバオの樹の語りたる冬の月  遊人

桜井教人(さくらい きょうと)
1958年愛媛県生まれ。愛媛県公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回、29回俳壇賞候補。


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100年投句計画

へたうま仙人



 三月ぢゃ。弥生さんぢゃ。野山も海も街も村も本格的春の準備は整っておるか?乗り遅れてはいけんぞ。
 今月も時刻表通りの句から置いて行かれたような句まで、アクセル全開ぢゃ。吊り革にしっかりつかまって読み進んで頂けたらうれしいぞ。


初旅やあす参詣の浅草寺  (スカイツリーより) 藍植生
富士筑波武蔵野皇居松飾
 初旅に浅草寺とは粋ですのう。下町の空気と気風は初旅にはもってこいぢゃ。この句からはちょっとわからんが、初旅の初日、一番目に行ったところが是非浅草寺であって欲しいものぢゃ。ワシはいつも杖で飛んでおるのでわざわざスカイツリーに登ったことは無いが、スカイツリーからの景色はそれはそれは絶景であるのう。あとがきが無いと句の内容がわかり難いが、それを打ち消すごとくその眺望の感動がビシビシ伝わってくるぞ。

雪に耐え咲く水仙よ清楚かな  どんぐりババ
 詠嘆を二回するほど感動したんぢゃろうなあ。この感動と感受性はとても大切ぢゃのう。雪の中にひっそりと咲く水仙には、健気な生命力と気品が漂うのう。それをひっくるめて「清楚」というんぢゃろうな。自然の途切れの無い営みとしたたかさがぐぐっと迫ってきたぞ。

めずらしや雪の深さを測りおり  元旦
あと五分あと一分の冬の床
 正岡さんは晩年ご自分では雪の深さを測れなんだが、珍しく積もった雪の深さを測るという行為はちょっとわくわくするのう。雪国の方々には申し訳ないが、南国で雪が積ると結構うれしいんぢゃ。犬と一緒に庭駆け回るんぢゃ。という事は、作者は雪国の人ではないということが凡そわかる。雪国の家の暖房はかなり効いていると聞く。家の中の温度はひょっとして南国の方が低いかもしれんのう。朝は特にそうかもしれん。布団から出たくない作者は雪国の人ではないかもしれないという事がこれでも凡そわかる。わかったからどうしろという事でもないが、こんなこともワシの俳句の読みの楽しみのひとつなんぢゃ。

初夢や借金取りがついてくる  柊つばき
米の減り見るのがこわい人日よ
 ついに借金取りさん、夢にまでご出演されましたか。まったく油断も隙もありませんのう。ぢゃが心配することはないぞ。今年から「借金取りの夢を見たら金運が上がる」という夢判断を作ってしまえば全て解決ぢゃ。借金取りさんの夢を見れば見るほど大金持ちへの道まっしぐらぢゃ。めでたしめでたし。正月のうちは気分も大きくなってついつい普段とは違う行動をとってしまうのう。せっせと節約していた米もしかりぢゃ。お正月だもんね、とかなんとか言いながら浪費してしまうのぢゃ。まっ、これは致し方ない。人が裁かれない人日が過ぎたら、大いに裁かれたまえ。

兆す芽の動揺誘う霜柱  たあさん
眼を閉じて君と駆けよう冬銀河
 芽の心の動きが見て取れるのう。その気になっていた芽が霜柱を見てタラ〜〜となっている所を想像すると、お気の毒ぢゃが可笑しくなるぞ。もうちょっとだけ芽の立場になりきったらまた違った切り口になるかもしれんぞ。澄み切った冬銀河を見上げると、寒いには寒いが星が綺麗、と背筋が伸びてくるのう。その下を君と駆けると、たとえ目を閉じていても決して躓かないような気がしてくるから不思議ぢゃ。それが錯覚だと気付かないのもまた青春ぢゃ。

初氷告白されてゐる朝  みやこまる
道化師の虚ろな笑ひ月氷る
 初氷の危うさと儚さがいかにも告白ぢゃ。本人が告白されているのか、告白されている現場を見ているのか、そんな事はどうでも良い。この青春性にきゅんきゅんぢゃ。初氷の白と告白の白と寒い朝の白い息がホント青春ぢゃ。道化師が腹の底から笑っていたらその方が不気味でより俳句的ぢゃ。「道化師の虚ろな笑いひ」では驚きが決して大きくはないが「月氷る」で道化師の姿がくっきりしたぞ。


血を吐いて一月三日入院す  小木さん
妻の七回忌前日退院す
 俳句形式は強いですのう。余分な説明無しでも状況がわかるぞ。簡潔明瞭のおかげで元旦の体の様子はどうぢゃったのか?退院の足どりはどうぢゃったのか?などといろいろな思いをめぐらせることが出来るのぢゃ。俳句形式を信用して装飾を取り外し質素な姿にすれば、言葉がすくっと立ち上がってくるのう。いやあ、勉強させて頂いた。どうぞどうぞお大事に。

葉葱斬るいようしやつしやつしゃつ  KIYOAKI FILM
葱買えず子指に醤油掛け舐める
 ひらがなをどう読めばいいんぢゃ?「いようしやつしやつしゃつ」と読めばいいのかのう? それにつけてもひらがなの妙ぢゃ(妙なひらがなとも言う)のう。ひとつのひらがなが、前のひらがなに付くのと後のひらがなに付くのとでは意味が全然違ってくる。しめしめ、この技は使えそうぢゃ。小指はお約束をするための指ぢゃ。そんなことで使ってほしくないぞ。ぢゃが、醤油は誰がなんと言おうと小指で舐めんといけん。人差し指は水飴専用で、中指はそんなこと専用で、薬指は寒紅専用ぢゃ。そんな基本を心得ておるとは大したもんぢゃ。

枯蓮や墓標めきたる千の茎  坊太郎
枯蓮や廃居の街に舞う砂塵
 枯蓮と墓標、枯蓮と廃居が近いと感じる人がいるかもしれないが、ダメ押しの相乗効果で枯蓮の様がより鮮明になる映像が満点ぢゃ。殺伐とした茎の乱立、遠くの風景を曖昧にさせる砂塵。まるで七人の侍やウェスタン映画を髣髴とさせる設定ぢゃのう。志村喬やイーストウッドが枯蓮の向こうに立っているのが見えるぞ。

初詣亀が阿吽の間を歩む  ちろりん
我が家でも白菜巻くと知りて鍬
 まさか初詣の中に亀が居るはずも無いので、亀とは作者、もしくは参詣者の事かのう。狛犬の間を歩むのは好みとしては是非本物の亀であって欲しいが、そうそう都合は良くない。が、亀の歩みを見下ろす狛犬のちょっと退屈そうな表情が見えてきそうぢゃ。「阿」はあくびで「吽」はあくびを押し殺しているのかもしれんのう。葉を巻く前の白菜は地面にだら〜と広がっていて、店頭にある白菜とはまた違った趣の姿をしておるが、どうも放って置いても綺麗に巻くとは限らんらしい。それにはきっと鍬使いがものをいうんぢゃろう。ウクレレを弾くような軽やかなリズムで鍬を降ろしたら、そのたび巻いてくるんぢゃろうのう。
 おっとどっこい、もうちょっとで降車ボタンを押し忘れるとこぢゃった。こんないくら剥いでも芯に届かない白菜のような句は、小指で味見をし尽した出汁の中へ雪の深さを測るように追放!

 今月もまるで告白のように追放者を出してしもうた。迂闊ぢゃ。まあ、これから日ごとに一日が長くなるし暖かくもなるし、人生ウィンウィンとしよう。
 ぢゃが、くれぐれも油断召されるなよ。

へたうま仙人 
年齢 卑弥呼がおっぱいを飲んでいた頃、ワシは青春真っ只中ぢゃった。
好きなもの 霞のシャーベット(PM2.5抜き)
嫌いなもの 上手な俳句
将来の夢 大器晩成


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100年投句計画

自由律俳句計画



 目玉の手術を過去に二度ほどしたことがある。なので、今度目玉の手術をするらしい女性に「トーゼン麻酔はするでしょ?」と訊かれたので「目玉に麻酔の注射をします」と答えた。彼女はそんな恐ろしいことは耐えられない「絶対痛さで気絶します!」と泣きそうになって、私はぜったいムリムリを繰り返す。目玉に注射する前に、第一段階の麻酔の目薬をするということが伝わるまで、だいぶ時間がかかった。やっぱり話の順序は大事なこと……ナハハ。


退屈な大部屋日脚伸ぶ  小木さん
 いきなりの「退屈な大部屋」に意表を突かれる。売れない役者が溜まる大部屋なのか、なにかの合宿の大部屋なのか……そんな大部屋にするべき何かを見つけられない作者ひとりとり残されている状況が想像される。手掛かりになるような具体的表現のない分、却って読み手もずるずるアンニュイな世界へ引きずり込まれてしまう。このもどかしさが「日脚伸ぶ」という漠然とした季節感と融合して春近しの気だるさをますます演出しています。


うぐいす餅の飛びたがる  藍人
 思わず素直な良い句、と言いたくなるような安心感があります。うぐいす餅は、もともと形も色も鶯に似せ春の感覚を纏った和菓子ですから、そのわかりやすさを損なわない、あるいは読み過ぎない自制がよいと思います。

トッテントッテン夜の公園空き缶つぶす  多満
 オノマトぺ(擬声語)といえば、「鳥渡るこきこきこきと罐切れば(不死男)」「水枕ガバリと寒い海がある(三鬼)」……などがよく知られていますが、揚句も「トッテントッテン」が効いています。むやみに深刻にならず、おとぎ話のように明日の希望が感じられます。

ランドセルの色にえっと驚く  レモングラス
 共感する人は多いと思う。ハリウッド女優まで背負うランドセルは、いまや世界のファッションに。そのせいかどうかは知らないけれど赤、黒どころかピンク、ブルー、パープル、ホワイト……と多彩です。こうなれば親のセンスまで見られててるような……色は子供が決めるのか?

落葉して母きりきりと活き  KIYOAKI FILM
 この作者の世界観にはいつも驚かされるのだけれど、揚句はよく解かる(作者にとって、本当によいことなのかどうかわかりませんが)。変わりゆく季節の中で、凛として生きる母の強さが伝わってきて清々しい。「きりり」ではなく「きりきり」が平板を免れています。


冬菫のランナーの歩幅に揺れる  内藤羊皐
 ランナーの走ったあとの風圧で揺れる冬菫に焦点が当たっているようだけれど、「歩幅に揺れる」ことで冬菫から冷たい筋肉のランナーの足許へと視線は移動してゆく。こういう揺れ方を発見したところがお手柄というしかない。


雪抱くように赤子抱く  和音
頸は春を向く  緑の手
しばらくはあなたおまえでいたものを  台所のキフジン
別にベジタリアンではないのだが  南亭骨太
凍月の向こう太陽が凍る  恋衣
燗酒や身代を潰したは祖父曾祖父  坊太郎
呆気に取られて女が外套脱ぐ間  暮井戸
うかうかと生きて古稀  小市
首太き人へスピーチを振る  ゆりかもめ
おでん鍋のはんぺん威張りすぎ  もね

並選
個室の深夜点滴の音が聞こえる  藍植生
おとろしやこがいようけに餅もろて  芳香
行けるだけ行つてみるか霜の朝  健次郎
雪虫雪に攫われぬ  出楽久眞
新品の水槽メダカの新年  しのたん
東京の寒さなんてどれほど  幸
読めても取れない歌がるた  ヤッチー
風花の街で深海魚になる  柝の音
川の中に寒月を見つける  のり茶づけ
泡だて器を思い出せず大寒  一走人
枯山水にも初凪  みやこまる
吾の馬鹿さ加減を笑って日向ぼこ  凡鑚
大寒やロープウェイ待ちの長し長し  元旦
城へとつづく早春の道登る  喜多輝女
象が空を飛んでいく初夢  山崎ぐずみ
雪とかすための塩まきにゆく夜明け  うに子
喪に服す元朝のフランスパン  彩楓
睦月逝く来世も必ず弟で  カシオペア
鬱陶しき程のアロエの花盛る  青柘榴
ドクターヘリ日赤の屋上に冬帝と降臨す  マカロン星人
祝膳まなかにふくの届きをり  あおい
着ぶくれて愛はもどかし  空山
寒鰡を釣る半日  人日子
寒天に雲がない月皎々  鯉城
賀状止めますの賀状  ミセスコナン
春蜜柑一個丸ごとカプッ  エノコロちゃん
夜明け前梅をみにゆく  まんぷく
立春青春青き草  ちろりん
さよならは大袈裟に言う  遊人

きむらけんじ
1948年生まれ。第一回放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。


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100年俳句計画

詰め俳句計画



今月の問題

次の(  )の中に共通する春の季語を入れてください。

晴れあがる空、(  )を立ちあがる
(  )に濃く鉄塔の影ありけり


晴れあがる空、いかのぼりを立ちあがる
いかのぼりに濃く鉄塔の影ありけり
 dolceさん。前句「を」の助詞が変。後句鉄塔の近くで凧揚げしてはいけません。7級。笹百合さんの霞、空山さんの春野、ちろりんさんの余寒は後句が字足らずで居心地悪い。6級。

晴れあがる空、朧夜を立ちあがる
朧夜に濃く鉄塔の影ありけり
 ひでやんさん。前句、「朧」なのに「晴れあが」っているし、後句、「朧夜」なのに「濃く」「影」があるし、もうどこを突っ込んでいいのやら。7級。ヤッチーさんは雪形。雪形とは山腹の岩肌と残雪が織りなす模様を人が何かの形に見立てたもので、動物や鳥、人など様々。前句、雪形に人が座っていてその人が立ち上がる? 後句もせっかくの雪形が台無しでは? 7級。レモングラスさんは初虹。前句「を」が「の」なら意味が通るのだが……。後句の「影」は影法師ではなくその立ち姿の方だろうか。6級。

晴れあがる空、卒業を立ちあがる
卒業に濃く鉄塔の影ありけり
 小木さん。前句の言葉運びに無理がある。後句、何気ない光景が卒業の記憶と結びついていると思うと深い味わい。4級。松尾千波矢さんは雛市。前後句とも意味の分からないところはないが、その光景を切り取って面白いかと言われると? 3級。幸さんはふらここ。前句、ブランコで物思いに沈んでいた人物が青空に気づいて立ち上がる光景が見えてとても好きだった。2級。

晴れあがる空、早春を立ちあがる
早春に濃く鉄塔の影ありけり
 喜多輝女さん。前句、この場合の「を」は詩的な用法。「早春という時間と空間の中を」という意味になる。後句「に」が説明的なので「や」と切れ字を使いたいが、それも「けり」と重なってダブル切れ字の禁じ手なので難しいところ。4級。河原撫子さんの啓蟄、一走人さんの花冷えも前句それぞれの味わい。同じく4級。エノコロちゃんは春の日。後句、柔らかい語り口になり「に」の説明臭さをやや和らげている。3級。KIYOAKI FILMさんは立春。前句、「立」の字を重ねてきたのが工夫。決然とした感じが出ていて良い。後句はやはり「に」の説明臭さが気になる。同じく3級。青柘榴さんは春暁。前句、時刻が設定されたことで臨場感が生まれた。ただ、春暁というだけで晴れていることが想像されるところは少し惜しい。季語の中に色などの視覚情報があるので、後句の「に」が場面設定としての役割をちゃんと果たしている。2級。

晴れあがる空、青麦を立ちあがる
青麦に濃く鉄塔の影ありけり
 おせろさん。前句「を」が「の」なら、麦の穂が立ち上がる景として読めるのだが、「を」なので麦畑にいる作者が立ち上がった景になる。無くはないが、少し違和感がある。後句は緑と黒のコントラストが素敵。3級。ほろ酔いさんはたんぽぽ。前句、これも「を」を「の」にして花穂が立ち上がる景にしたい誘惑もあるが、「を」でもたんぽぽのある野原に人がいるところを思えばそれほど違和感はない。後句は青麦ほどのコントラストはないか。同じく3級。片野瑞木さんは下萌。前句、「下」という漢字が効果的で作者の動きがより強調される。2級。矢野リンドさんは若芝。これなら前句、座っているのも立ち上がるのも納得。後句のコントラストも見事。1級。

晴れあがる空、春塵を立ちあがる
春塵に濃く鉄塔の影ありけり
 麻友さん、葉音さん。前句「を」が「の」ならわかるが……。これだと春塵が舞っている中を立ち上がったことになる。後句も舞っている塵に「影」が「濃く」映り込むとしたら物凄いことになっているとしか思えない。「濃く」は言い過ぎか。5級。カシオペアさんは春光。前後句とも気持ちいいが、前句の「晴れ」と近すぎるのと後句も「光」と「影」の対比があからさますぎるか。4級。伊奈川富真乃さん、桂奈さん、久我恒子さん、誉茂子さん、内藤羊皐さん、マカロン星人さん、桃林さんは陽炎。かっこいい季語だが、前句作者が立ち上がったとすると、作者を包んでいる陽炎を見る視点が必要になってきて異様な感じがする。別のものが立ち上がるのならそのものをきちんと詠んだほうがいい気がする。後句も陽炎なのに「濃く」「影」があるのは変。同じく4級。藍人さん、どかていさん、坊太郎さんは春嶺。この季語は遠くの景色を想起させるので、前句の「立ち上がる」に違和感。後句も「濃く」と言うには対象との間に距離がある感じ。同じく4級。健次郎さんは春山。これなら遠景として読む必要がないので違和感はない。ただ、のっぺりした季語で深い感慨も持ちにくい。3級。藍植生さんの春の田はそれよりは身近で前後句とも生活感がある。2級。霞山さんの苗代、ゆりかもめさん、妙さんのげんげ田は同じく春の田ではあるが、より情景を想像しやすい。ただ、水のある苗代や不揃いな成長をするげんげ田において、後句、鉄塔の影が射し込んだ状態を「濃く」と表現したので合っているのだろうか。同じく2級。小川めぐるさん、小市さん、れんげ畑さん、元旦さんは春の野。特に前句、広さと生命力を感じて好きだった。1級。

晴れあがる空、残雪を立ちあがる
残雪に濃く鉄塔の影ありけり
 鈴木牛後さん、越智空子さん、ぎんなんさん。前句、春になった喜びが感じられて気持ちいい。後句もコントラストが見事。初段。笑松さん、出楽久眞さん、遊人さんは堅雪。これは前句、「堅」の字が利いて立ち上がる時の足裏の触感まで感じられる。ただ後句では「堅」の字はそれほど利いていないか。同じく初段。人日子さんは焼畑、童夢U世さんは焼け山。前句、焼け跡の広さやくすぶっている煙の臭いも感じられる。後句、焼け跡の色と「影」が重なって不思議な光景。同じく初段。たあさん、ひさのさん、みやこまるさん、うに子さん、台所のキフジンさんは春泥。前句、ドラマが一番感じられる季語だった。後句も黒っぽい泥に鉄塔の影が射し込んでいるところを詠むという行為が新鮮だと思った。二段。

今月の正解
晴れあがる空、末黒野を立ちあがる
末黒野に濃く鉄塔の影ありけり
 のり茶づけさん、彩楓さん、恋衣さん。初段にした焼畑や焼け山よりも、地面そのものに視点が行く季語であり「黒」という字も利いていると思う。二段。


解答募集中!

次の(  )の中に共通する夏の季語を入れてください。
3月20日締切 結果は5月号に掲載

小さき墓集まり(  )かな
屋根に見る(  )も鴨川も


マイマイ
2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人だったが、最近は?? 第1回、第4回百年俳句賞(旧大人コン)優秀賞受賞。2013年句集シングル『翼竜系統樹』上梓。将棋推定初段。棋友募集中。宇宙と生命を題材に詠んだ句集『宇宙開闢以降』マルコボオンラインショップにて発売中。


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100年投句計画 投句方法



雑詠俳句計画 または へたうま仙人
自由律俳句計画
詰め俳句計画

 「雑詠俳句計画」と「へたうま仙人」は、どちらか片方にのみ投句できます。なお「雑詠俳句計画」では、寄せられた投句を一括して、各選者が選句します。各選者に宛てて個別の投句を行うものではありません。


5月号掲載分締切 3月20日(月)

投句方法

 投句先コーナー名
 俳号(無ければ本名の名前のみ)
 本名
 電話番号
 住所

 以上の必要事項を書き添えて、編集室「100年投句計画」係までお寄せください。メールの場合は、件名を「100年投句計画」としてください。
 各コーナーそれぞれ2句まで投句できます。また、「詰め俳句計画」は季語1つのみを投稿できます。
 各コーナーの投句は、ひとつにまとめて送っていただいても構いません。

メール宛先
magazine@marukobo.com

投稿専用ページ
http://marukobo.com/toukou/

※ハガキ FAXの宛先は本誌の裏表紙を参照してください。

さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(「俳句ポスト365」のページ参照)


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短歌の窓


短歌投稿ページ
選者 短歌誌『未来』同人 渡部光一郎


特選
つい本に夢中になって七駅も乗り越してるわ間に合わないわ  彩楓
 「つい本に」も「七駅も」もよく、リズムで読まされた。下句、最高。

並選
九州の母への電話朝夕に今日の天気と笑える話  彩楓
 何よりのプレゼントである。

ツイートを追ふ指先はいつの日か世界中から雨を集める  鈴木牛後
 「雨を集める」がよい。

コメント
死にたいと生きとうないと言われても聞こえないふり心音を聞く  桂奈
 上句を既視感として括れないものがある。

ツマラナイ話たまにはいいかもね聞いてる途中ぼーっと出来るし   変来
 話者は誰か。

遥かなる大倉山の梅の花莟のままの枝のあるらし  藍植生
 温雅。

伏竜と思ひ幾年我が脚は老いを隠せぬ細さなりけり  風海桐
 「思ひ幾年」は要推敲。

本尊へ向かふ階段二百段手を取り歩む老夫婦かな  出楽久眞
 「かな」が疑問。

似た柄のシャツとパジャマを買ってきた妻のセンスの無さ私似  青柘榴
 「私似」がちょっとしんどい。

空じかに叩くが如く釘打ちの槌の音遠く春へと響く  時計子
 「空じかに」は「を」を補ってもよい。「槌の音遠く」はどうか。リズムの微調整は難しい。

難産を生れし仔牛の突っ張れる四肢も瞳もぬくぬく濡るる  久我恒子
 「濡」れているところが発見。ただしところどころ文法に注意。

ガタガタと今年もフォードで君は来る太田胃散を携えて来る  暮井戸
 「君は来る」以降にやや既視感があるが面白い。そういえば太田胃散をしばらく見ない。

百十一年前のアリアのレコードの雑音入りを祖母も聞きしや  だりあ
 そういえば、レコードの雑音どころかCDもみない。

オリオンとふいに出逢えた裏道でジョニミッチェルのベスト盤聴く  元旦
 すみません。「ジョニミッチェル」がわからずググりました。オリオンと「ふいに逢う」というのは、案外思い当たる経験のような気も。

真ん中の爪甲横溝三月前我のストレス爪のみぞ知る  マカロン星人
 とにかくものすごいストレスなのだろう。お大事に。


 みなさんこんにちは。いやインフルエンザがこわいです。(家族が一名ダウンしています。)ご注意ください。かかってしまった人もどうか余後ご養生を。私はストレスで食べすぎてもう胃がゲップ言うています。(これも悪いな〜)とにかく睡眠を十分におとりください。では左様なら。


自作の短歌(2首まで)を下記までお送り下さい。締切は毎月20日。
専用フォーム http://marukobo.com/tanka/
専用Email tanka@marukobo.com


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自作の俳句を英語に訳そう!

百人百様 E-haiku



評 菅 紀子


 つくづく思いますが、観客あっての芝居、チャレンジャーあっての添削、というわけですから毎月果敢に自作句の英訳を発表してくださりありがとうございます。
 昨年私はある英訳の校正をとても頭の切れる(医学博士号さえ持っている)ネイティヴの人にしてもらったことがあります。原稿の中に俳句が一句だけあったのですが、見事にそこだけスルーされていました。詩句の翻訳には色々な要素があり、繊細です。

1.
I am boy
open the window
girl of town

原句 春峠窓の果には少年少女  KIYOAKI FILM

紀 KIYOAKI FILMさん、英語句と日本語句が結びつかないので原句を英訳してみます。春峠は季語かと思いましたら、兵庫県の中国自動車道沿いにある峠の一つなのですね。休憩で車を停めた時の一コマかな。固有名詞の春峠も英訳することで効果はあるでしょうか。

far from me in the car
a boy and a girl
at Spring pass

2.
my right foot
you are left foot
spring of friday

原句 春が来た我が右足に君が足  KIYOAKI FILM

KIYOAKI FILM やめていた基礎英語1をまた始めました。
初歩的な参考書、真ん中あたりまでしたのですが、答えが下に書いているので進歩しません(苦笑)

紀 やはりこちらも英訳には原句にない情報が加えられています。基本的には日本語句を英語句に忠実に置き換えることから始めましょう。意訳、超訳は次のステップで。

spring has come
my right foot and
your left foot

3.
Tracing fingertip
the character of the monument
on the "ginko" in the new year.

原句 句碑の字をなぞる指先初吟行  出楽久眞

出楽久眞 こんにちは。今年もよろしくお願いいたします。季語の持つ微妙なニュアンスを意訳するべきか毎回悩んでおります。と、毎回同じお便りのような気もしてきました。進歩がなくて申し訳ありません。

紀 出楽久眞さん、今年もよろしくお願いいたします。
おっしゃるように「季語の持つ微妙なニュアンス」こそが翻訳のしどころであり醍醐味ですよね。“悩む力”を信じて続けましょう。

fingertip
tracing the poem inscriptions
the first Ginko of the year

4.
yellow sand come
to my best clothes
and hippocampus

原句 つちふるや一張羅にも海馬にも  片野瑞木

紀 「土降る」は風に巻き上げられた土や砂が降る、という意味の春の季語ですが、英語では「黄砂」と訳したところで詠人のいる場所や気候がより具体的にわかります。大脳辺縁系の海馬にも降るとどうなるのか、鑑賞者それぞれの解釈に任せて黄砂のしわざを共有できそうですね。

falling yellow sand 
accumulates on my best
and my hippocampus

5.
fifteen short-neck clams
stay at my home
throwing up their sand

原句 留守番は砂吐く浅蜊十五匹  片野瑞木

紀 良いと思います。

6.
the hazy moon-
Mark Twain's boat
has come back calmly

原句 月朧マーク・トウェインの舟還る  久我恒子

紀 現在完了形にしたことで、現在形で表した日本語「舟還る」の動きが伝わるように感じます。

the hazy moon
the boat of Mark Twain
has come back in peace   

7.
rattle-rattle
in shimmering hot air-
advancing catapiller track

原句 陽炎をぐあらぐあらとキャタピラー  久我恒子

紀 一例です。カタカナ語の綴りを英語にする際、日本語につられないようにしましょう。

a roaring caterpillar
pushing its way through
haze of heat

8.
Cyclamen
The prickle that had been sticking into the heart.

原句 シクラメン胸に刺さったままの棘  ほろよい

紀 シクラメンの茎は柔らかく棘がありません。何の棘でしょう、あるいは棘とシクラメンを対比させているのでしょうか。そして胸をheartと訳されていますが、heartは心臓なのか、心なのか、上半身の胸板なのか、ほろよいさんの意図を知りたいところです。下の訳例では、胸板に「刺さったまま」を別の発想で「決して抜けない」にしました。

cyclamen,
a thorn in my breast
that never comes off

ほろよい 「ほろよって」のコメントありがとうございます。投げ出さずにがんばります。mpgプレーヤーを手に入れて遅聞き、早聞き楽しんでます。

9.
not only you,
wetting
in the spring rain is

原句 君だけじゃない春雨に濡れるのは  チャンヒ

紀 「君だけじゃない」は下の句との倒置で、それをカンマで示したのはいいと思います。文法的に「のは」は人を表しているので関係代名詞whoを補いたいところ、先行詞に「唯一」と言った言葉が来るとthatになるそうです。でも詩的には理屈っぽい関係代名詞などない方が美しいでしょうね。

not only you,
that gets wet
in the spring rain

10.
I only cried
if I was cat in season

原句 恋猫になれば泣くだけだったのに  チャンヒ

紀 人(私)が発情期の猫であったならば、チャンヒさんの句を仮定法過去にして

I would only cry
if I were a cat in season

恋猫が失恋して泣くのではなくにゃーと鳴き、in season は辞書によってはメスの場合に使うようなので僕が雄猫だったなら、とすると

I would only need to meow in heat
were I a tomcat

11.
Japanese allspice fragrant
in the room
without the person

原句 蝋梅の人居ぬ部屋を香りけり  彩楓

紀 一案として「空部屋にはろうばいの香り」と訳してみます。
Japanese allspiceという訳があるものの、allspiceはその香料が取れる木。蝋梅はwintersweetらしいです。

vacant room
a scent of
wintersweet

12.
first purchase of year
a pride of the shopkeeper
coffee beans

原句 買い初めは店主自慢の珈琲豆  彩楓

coffee beans
recommended by the owner
the first purchase of the year

紀 it〜that〜の強調構文で倒置したと考えれば一番言いたい珈琲豆をはじめに持ってくるのは理屈に合っています。

It was the coffee beans recommended by the owner that I got in my first purchase of the year.
(店主お薦めの珈琲豆だったのですよ、初買いは)

彩楓 ネット翻訳と辞書と……日本語を英語句にするのは難しいですが、続けていきたいと思います。添削していただけるので、とても嬉しいです。  

紀 彩楓さん、お役に立っているかどうかわかりませんが、「百人百様」コラムですものね。



菅 紀子(かんのりこ)
(有)クラパムコモンカンパニー代表。通 翻訳、メディアによる姉妹都市交流コーディネーター。社名は夏目漱石が下宿したロンドンの地名から。歩道短歌会同人。人文学修士、翻訳修士。松山大学、愛媛大学非常勤講師。(Hailstone Haiku Circle blog ICEBOX Contributor)(漱石と彼のライバル重見周吉、日系移民研究)

応募内容 自作の俳句およびそれを英語俳句にしたもの(2句まで)

応募先
フォーム http://marukobo.com/eigo/
Email eigo@marukobo.com

5月号掲載分締切 3月20日(月)


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百年歳時記


夏井いつき

第45回


 有名俳人の一句を紹介するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月紹介鑑賞していきます。

しばれるや捩じ切られたる星無数  太郎
 「しばれるや」の詠嘆のあとにでてくる「捩じ切られたる」という表現。何か金属の類いが無理矢理ねじ切られているのかと思いきや、「星無数」であるよ、というのです。この下五の出現に、読み手の心はハッと動きます。なんと秀逸な比喩でありましょう。
 描かれているのは、満天の荒星。「しばれる」とは、凍るように厳しく冷え込む状態を指す季語。「冱つ」よりもさらに厳しい氷点下の極寒です。「捩じ切られたる」は、強引にもぎ取った金属の断面を思わせ、凍るような空気の中で荒々しくも冷たく光る星々を表現しています。「しばれる」という季語を使って、「荒星」という別の季語の世界をありありと見せてくれる味わいの秀句。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』2月3日放送分)

ホットドリンクス猫星空の共通点  穂積天玲
 「ホットドリンクス」という季語があることに首をひねる人もいるに違いありません。冷え切った体を温める様々な冬の飲み物ですが、明確に何と言わないぼんやりした季語の特性をどう表現するか。しかも複数ですから、これはなかなか手強い季語なのです。
 「ホットドリンクス」「猫」「星空」の三つには「共通点」があるのよ、と読者に謎かけする一句。「ホットドリンクス」を飲めば体が温まる。「猫」を抱けばあったかい。その二つを傍らに観る冬の「星空」の美しさは、私たちの心を満たしてくれる。でも、それら三つを心地よく感じるのは、対比としての寒さが、そこにあるからですね。作者の用意した答えをあれこれ想像して楽しみましょう。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』1月27日放送分)

ひつそりと熊の来てゐる火消壺  とおと
 冬眠前にたっぷり食べていなかったのか、浅い眠りから覚め、里へ下りてきた「熊」でしょうか。「熊」に遭遇したのは、朝餉の支度の葱を取りに行ってた婆さんか、鍬を担いで戻ってきた爺さんか。土間に誰か立っている……と思いつつ、近寄ってみると、それが「熊」だと分かる瞬間が、淡々と切り取られてます。
 「熊」の足元には「火消壺」。何か食べ物が入っていると思って転がしたのか。「熊」と「火消壺」の取り合わせの妙は、「熊」と人間の「ひつそり」とした遭遇を描きつつ、季語「熊」が持つ事実の一つを読者に提示してくれます。こんな描き方でもって、冬という季節の手触りが表現できていることにも驚かされた作品です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』1月20日掲載分)

腰壺の肉片温し鷹狩の朝  ぐわ
 「腰壺の肉片」とは、鷹自らが捕らえた獲物から、鷹を引き離すための餌です。「鷹狩の朝」の支度が整った「鷹匠」の腰には小さな「壺」が括られています。そこには、まだ生温かい「肉片」が入っており、鷹匠の朝はその餌となる生き物を屠り、「肉片」とするところから「鷹狩」が始まるのです。下五「鷹狩の朝」が字余りになっていますが、このゆったりとした下五の措辞が、これから始まる「鷹狩」への愉しみ、期待を表現しているようでもあります。
 現実に体験し難い季語「鷹狩」について調べた内容を元に、まるで己が「鷹狩」に出発するかようなリアリティを掴み出す。想像力の翼があれば、私たちは鷹のように悠々と時空を飛べるのです。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』2月3日掲載分)

周波数乱る青葉を通るとき  香野里美
 「周波数」の一語はラジオをイメージさせますから、「青葉」の下を通りかかった時に、たまたま聞いていたラジオの音声が乱れた、と解釈するのが妥当なのだろうと思います。が、それだけの読みで終わってしまうのは、なんだか勿体ないような気がします。
 「青葉」は夏の季語。強い生命エネルギーを内包する印象を持つ季語です。そんな「青葉」の下を通るとき、全ての「周波数」は一瞬乱れてしまうのだよ。「青葉」とはそんな力を持っているのだよ、と解釈したくなります。さらに深読みするならば、「青葉」の下を「通るとき」、己の脳波が乱れるかのような思いに囚われるよ、と読みたくなる。想定外の肉体感覚が刺激された一句です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』2月10日放送分)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
などに投句された俳句を紹介します。


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俳句の街 まつやま

俳句ポスト365



協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


金曜日優秀句
2017年1月度

熊(くま)


油煙墨たらしたやうに熊の出る 三重丸
熊の章立てて開拓少史かな ぐわ
熊割かれたばしる湯気と臓腑かな 樫の木
熊裂いて滴の形の胆を摘む クズウジュンイチ
熊ぐらい出るさ岩手の山だもの 関屋
くつくつとポトフは歌う熊の村 酒井おかわり
日の本の国の熊なり人くさし ウェンズデー正人
愉しげな猿哀しげな檻の熊 香野さとみ
柿の木の熊を説得する巡査 でこはち


ひつそりと熊の来てゐる火消壺 とおと


3月の兼題

投句期間 2月23日〜3月8日


坂の上の雲ミュージアム開館10周年記念兼題!
小説『坂の上の雲』では、激動の明治時代に高い志をもち、坂の上の雲をみつめながらひたむきに生きた若者たちの群像が描かれている。
季語ではありません。「雲」という字が詠み込まれていれば、その読み方・用い方は問いません。また、季語については当季を原則として自由に選んでください。


投句期間 3月9日〜3月22日
菜の花(なのはな) 晩春/植物

アブラナ科の葉菜には様々な種類があり、春になると黄色の十字状の四弁花が茎の先に群がって咲くが、特に油菜の花のことを指していう場合が多い。

参考文献 『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


 「俳句ポスト365」は携帯電話からもご参加いただけます。
 「俳句ポスト365」公式Facebookページ開設中! 公式サイトに設置しておりますリンクよりお入りください。毎回の兼題のお知らせを中心にお伝えしながら、皆様の返信欄への書き込みもお待ちしております。


 募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。


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一句一遊情報局



協力 南海放送


金曜日優秀句
2017年1月度

歌留多(かるた)

飛び来る歌留多の角の凶器めく  妹のりこ
賑やかに猫駆けぬけるかるた取り  ちづこ
お座敷の犬飛び跳ぬる歌留多かな  宵嵐
久々の歌留多いささか黴臭し  麦仙人
天皇は昔奔放歌かるた  小泉岩魚
歌かるた坊主の顔は胡乱なり  誉茂子
ひらがなの渦とけゆきぬ歌留多の海  亀田荒太
遠来の従妹まぶしき歌留多かな  露玉
エプロンも取らずかるたを湿らする  下町おたま
また語らるる歌留多の破れし理由  小田寺登女
歌がるた吾に脈々と倭の血  野風


求婚の試練其の一花かるた  ほろよい




水族館の亀や鰐やと初写真  ポメロ親父
初春や亀泳ぎくるガラス越し  内山初美
おらぬ亀の話などして梅日和   野風
深泥より来し亀ぽわんと雪なめる  理酔
亀は首伸ばして憂うクリスマス  えるも
湯たんぽを干せば昼には亀になる  妹のりこ
満を持しこれから亀の鳴く態勢  マイマイ
亀鳴いて酒を飲ませて帰しやる  ねもじ
菓子型の花に魚に亀の鳴く  もも
闇鍋のこれは確かに亀の甲  凡鑽
極月の亀の子束子したたれり  のんしゃらん
鶴亀算解かば年玉呉るるらし  このはる紗耶
乳搾る亀手を舐める冬の蠅  鈴木牛後
大寒や地割れのごとく亀の口  ドクトルバンブー


雲中から来て亀の尻打つ霙かな  蓼虫


雉始めて鳴く

雉始めて鳴く歩けるほどに痩せた川  太郎
雉始めて鳴く七色に匂ふ土  更紗
雉始めて鳴けど山鼠はなほ熟寝  たかおあや
雉始めて鳴く甚平谷の風神よ  あんみつゆか姫
日の射して雉鳴き初むる国に住み  いそこ
門ごとの御旗始めて雉の鳴く  笑松
雉始めて鳴く寝屋に産湯の運ばれて  まゆ熊
酒米を磨く雉鳴き初むるころ  石川焦点
雉始めて鳴く極彩色の天井画  ちづこ
雉始めて鳴く夢の底より呼ばれけり  七草


雉始めて鳴く鬼北の鬼の肩で鳴く  ちーちゃん


ホットドリンクス

龍三郎の裸婦のふくよかホットドリンクス  てん点
描き終へて裸婦の手へホットウイスキー  緑の手
草城を論じてホットドリンクス  あるきしちはる
原発の瓦礫とテントとホットレモン  三河のぽんぽこ
野営地の歩哨やホットドリンクス  きとうじん
ベースキャンプ嗚咽の君へホットワイン  のプッコラ
止まり木へ漂着ホットウイスキー  野風
ホットウォトカラジオ終値告ぐる時間  海田
ホットウイスキー日誌に寄港地を記す  樫の木
昭和基地快晴ホットウイスキー  トポル
ホットドリンクス砕氷船の軋む夜  ひかるん
辻絵描お代はホットワインでと  はまゆう
ホットワイン台本汚す二色ペン  あいむ李景


ホットドリンクス猫星空の共通点  天玲


投句募集中の兼題

投句締切 3月12日

芥菜(からしな)
三春/植物
アブラナ科の一、二年草。鋸歯がある葉は細長い濃緑色で特有の香りと辛みがあり、漬物や煮物にする。また、種子も粉末の香辛料に加工される。

桜蝦(さくらえび)
晩春/動物
サクラエビ科の、体長5cmほどの蝦。透明で桜色に見える。多数の発光器を持ち、弱く光る。干して食用にする。


投句締切 3月26日


季語ではない兼題です。「丹」という字が詠み込まれていれば、読み方・用い方は問いません。季語は当季を原則として、自由に選んでください。

エリカ
晩春/植物
ツツジ科の常緑低木。葉は杉の葉状で、ピンクの可憐な花が枝にぎっしり付いて咲く。ヨーロッパなどでは広く自生するが、湿度の高い日本などでは育ちにくい。

参考文献『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句宛先
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとにしたものです。俳句ならびに俳号が実際とは異なっている場合がありますのでご了承ください。


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今回のお題句に対する投句から次のお題句を選び繋げてゆく

疑似俳句対局


選者 美杉しげり

 インターネットを利用しての「擬似俳句対局」という試み。俳句対局の楽しさを少しでもお伝えできたらと思っています。

今回のお題句
ふらここや涙の訳は解けぬまま  松尾千波矢


候補句

礼服の躾解きて朧かな  葉音
 今月最初の投句。まだ手を通したことのない礼服の香や手触り。その躾糸をほどいている人を柔らかに朧の夜が包みます。表記、躾か解のどちらかをひらがなにしてみてはどうでしょう。

多喜二忌や露西亜語訳す領事館  山崎ぐずみ
 小林多喜二はロシア文学に傾倒した作家。取合せとしてやや近いのかもしれませんが、ベタというほどではないと思います。「ロシア」ではなく「露西亜」表記がこの句に合ってますよね。

花菜風絵本作家を解き放つ  久我恒子
 一面の菜の花を渡ってくる春風の心地よさに、心も解き放たれるような……。絵本作家はもしかしたらその景色をスケッチしていたのかも。同作者の「御簾越しの寵妃の涙春の雁」「能面のごとき通訳花見船」は、またがらりと違う雰囲気でいいですね。

女房は翻訳家なりヒヤシンス  松尾千波矢
 水栽培のヒヤシンスを連想しました。その傍らで翻訳という仕事をしている妻。きっと知的で、ヒヤシンスのようにきれいな女性なのでしょう。
涙活といふ一月の埠頭かな  小川めぐる
 「涙活」は「意識的に泣くことでストレス解消を図る活動」のこと。まだ成熟していない言葉ですから評価は分かれるところでしょうね。同作者の「涅槃西風訳知り顔の猫である」も好きな句です。お釈迦様のごとく悠然と構えている猫、そこらにいそうです。

そのうちの一つは涙石鹸玉  恋衣
 青空にたくさん飛ばした石鹸玉。そのなかの一つが誰かの涙だという発想が、とても詩的で奇麗。表記ですが、石鹸玉以外をすべてひらがなにしてみる、というのはどうでしょうか。

早口の同時通訳春北斗  佐東亜阿介
 テレビなどで見かける同時通訳、確かに早口ですよね。春北斗がどこか優しくて、なんとなく女性の通訳者を連想させます。

右を向く冬椿にも訳がある  すぎ本たかし
 「訳がある」と言いきられると「あ、そうですか」と。妙な説得力があっておかしい。

林檎の花の陰や村岡花子訳  越智空子
 村岡花子訳の本はたくさんありますが、林檎の花陰に読むのなら、やっぱり『赤毛のアン』でしょうね。

悴んで何の涙か忘れたわ  凡鑽
 悴んでいるのは指ではなくて、心なのでしょう。「忘れたわ」という強がり?が切ない。

翻訳をすれば初春のあるオセロ  三島ちとせ
 「翻訳」するということは「オセロ」はシェイクスピアのオセロ? 「すれば」が少し分かりづらいですね。初春と翻訳のオセロの取合せはいい感じ。

愛人は妻の訳なり花衣  ひでやん
 この場合の「愛人」、中国語では「妻」ということですね。同じ漢字でも意味がまったく違う面白さ。ただ、注釈がないと意味がすぐには分かりづらいところが残念。

誤訳富む洋画抜け出し春の月  土井探花
 楽しみにしていた洋画なのに、やたら誤訳が目立って……苦笑しつつ映画館を出れば、春月が頭上に。「誤訳富む」は誤訳が多いという意味だと思いますが、「富む」はやや違和感あり。


次回お題句
花の昼涙の味をゆつくりと  小市
 桜が咲き満ちている、明るく華やかな日に流す涙。「涙の味をゆつくりと」がいかにも春愁の気分。お題句と雰囲気が似ているのですが、流した涙が口に入った時のしょっぱい味がリアルに蘇りました。同作者の「その訳を告げてをりたる春の雷」も、どこかしら甘い愁いの気配。


美杉しげり
 第8回俳句界賞受賞。4年ほど前から小説も書き始め、短編「瑠璃」で第21回やまなし文学賞佳作。美杉しげりはその時からのペンネーム。

毎月25日頃に、投句フォームにてお題句を発表します。投句締切は毎月末日。

疑似俳句対局投句フォームアドレス
http://marukobo.com/taikyoku/


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鑑(み)るという冒険


〜映画篇 演劇篇〜

文&俳句 猫正宗


第五十三回
『ポッピンQ』&「四国学生演劇祭」

 『ポッピンQ』。アニメ映画です。初めに断っておくと、必ずしもお勧めしない。それでも『君の名は。』と『この世界の片隅に』の間で埋もれてしまいそうな可能性だけは取り上げておきたかった。
 「それぞれの問題を抱えた卒業間近の女子中学生五人が異世界へ。世界に生じた危機を食い止めるためダンスで心を一つにしていく」
 繊細で丁寧に作られた美麗な映像はとても気持ちのいい好感が持てるものでした。しかし、短い時間にやりたいことを詰め込みすぎたこともあってか、内容は焦点の分散した踏み込みの足らないものだったかも。そのためか、興行的にはかなり厳しかったよう。一番問題だと思ったのは、本作の目玉でありクライマックスのはずのダンスが少女たちの問題克服にほとんどかかわっていないということです。
 ところで本作は、東映アニメーション60周年記念作品と銘打たれています。東映アニメーション、かつての東映動画は、日本のディズニーを目指して設立。高畑勲、宮崎駿を輩出したことからもわかるように、フルアニメーションのオリジナル作品を送りだしていました。だが、長編アニメは金食い虫だ。もともと東映は(某プロデューサー曰く)「100億円の予算があったら、大作を一本撮るより、10億円の作品を10本、いや、5億円のを20本」という体質の会社。東映動画は「東映の癌」と呼ばれ、常にリストラの対象に。その後、テレビへの進出とその成功を受け、劇場作品は、ほとんどがテレビ作品のブロウアップかスピンオフとなる。近年では『ワンピース』や『プリキュア』が代表作品だろうか。しかし、圧倒的な数のファンが存在する『ワンピース』でさえ、一本の映画として評価されることは少ない。いわんや『プリキュア』をや。それでも、アニメ制作各分野の人材を多数抱え、業界最多の制作本数を誇り、毎週のアニメ制作という過酷な環境で鍛えられている本会社は、実は実力と先進性を備えており、近年は様々なコラボで幾つかの野心的な作品も。もし、本作が(興行的にも)成功していたら、ファンだけでない一般向けの、出来の良い娯楽作としてのオリジナルアニメ映画がよりつくられやすい環境が東映アニメーションに、そして日本のアニメ界に生まれたのかもしれない。その可能性と、その実現がやや遠ざかったこと、そのどちらをも本作は垣間見せてくれたように思うのです。

卒業へ刻む僕らのステップを

 さて、映画では中学生ががんばりますが、大学生が奮闘したのが、「四国学生演劇祭」('17年1月21日、22日、シアターねこ)「ユニット(団体)の構成員が学生であること」などの条件のもと、観客投票で一位を決定。他九か所で行われている演劇祭の一位で競い合う全国演劇祭に出場するというもの。初めて(実質は去年の愛媛学生演劇祭を引き継いで二回目)の開催ということもあって、運営等、まだまだ改善点があるように感じましたが、学生自らが立ち上げたと見られるのが素晴らしい。交流が少なかったひと昔前を思うと隔世の感があります。新たな才能が生まれる新たな場所として期待しています。

無謀さと破綻と熱と春疾風


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mhm通信


第72回

文 蓮睡

 本年のまる裏も無事に終わりました。ご参加、お手伝い、広告のご支援をいただいた皆様、本当にありがとうございました。
 昨年のまる裏俳句甲子園の反省会で、「次回は中心となってやってもらってかまん」と声を上げてくださったのは、あねごさん。そこから約1年がかりの準備が始まりました。
 前回までの反省を活かしながら、あわせて参加人数が増加しても時間の足りなくなることがないように予選のシステムを見直し、決まった時間内で皆さんに楽しんでもらえる内容を考えました。何度も議論を重ね、内容は二転三転。結局、最終決定したのは開催前日の20時頃でした。
 当日も上手くいくか内心はドキドキでしたが、チームリーダーのあねご、会長の若狹をはじめ、スタッフの皆が想いを一つに、そして個々のパフォーマンスを最大限発揮し、無事に終了という運びになりました。
 今回の度重なる議論の中で、mhmメンバーが再確認した想いの一つ。「俳句の裾野を広げたい、もっといろんな人に俳句を知ってもらいたい」という確固たる信念。その想いのもと、みんなで助け合いながら活動を進めていきたいと思っております。
 今年の反省をもとに、来年に向けて早速始動しています。絶賛仲間募集中!

 mhmでは松山市内外問わず会員を募集中です。原則、毎月最終金曜日19時からマルコボ.コムにて定例会を行います。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局mhm_info@e-mhm.comまで。


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岡田一実の句集の本棚


文 岡田一実


一夜劇
中原道夫 著

発行:ふらんす堂(2016年初版)
269ページ
定価:本体3,500円+税

 著者の第十二句集。
初反故を入れ屑籠の眠りに就く
日脚伸ぶ猫に背骨といふ峠
摘草を料るにさつといふ手順
立錐の餘地春雨の傘立に
 「立錐」は木に穴を空ける道具「錐」を立てることを意味し、慣用的には「立錐の余地がない」などと使う。錐が立つだけの余地すらなく、ぎっしり詰まって隙間もないという、狭い土地の喩えである。掲句ではその余地が春雨の傘立にはあるのだという機知がみられる。
うぐひす餠巣箱のやうな口に入る
腋草をうるほす汗を拭かずゐる
亞細亞とふ汗し雜交する臭氣
白魚の目のやり場なく集まれる
牡丹に見ごろひとつは覗きごろ
蟻喰の舌を登れる蟻二三
凍星に現在地はた過去在地
スウェターは悉く穴穴を着る
血で血を洗ふ絨毯の吸へる血は
 著者は2015年11月のフランスで起こったテロの数時間後にフランスへ赴く。その連作のひとつ。「血」が繰り返されることにより絨毯のずっしりと血で濡れた景色がありありと目に浮かぶ。
 「銀化」主宰。


椿、椿
和田耕三郎 著

発行:ふらんす堂(2016年初版)
169ページ
定価:本体2,500円+税

 著者の第五句集。
軍鶏一羽檻に入りけり夕牡丹
 檻に入る時に軍鶏の猛々しさを思う。羽根を羽搏かせながら地を渡って檻に入る軍鶏の動き。その動きと夕日が差し込む牡丹の幾重にも花びらが重なる造形とが協奏され伊藤若冲の日本画のような味わいがある。
さくら紅葉ひとひら散りていなり寿し
 ゆっくりと赤い桜紅葉が美しく散る様子を眺めてから、さあ「いなり寿し」と切替わる。いなり寿しの触感、食感、味などが突如想起され、リアリティがありつつ変な気分になる。その展開が楽しい。
うらおもてなく鶏頭の枯れ兆す
うしろにも空の拡がり神輿かな
五月雨の一夜に錆の湧きにけり
黒揚羽水を飲むときよぎりたる
桃二つ暗がりに置き匂ひたる
花疲れだんだん翳となりにけり
三島忌の銀座にをんな待たせたり
さくら一枝空き瓶に挿し節子の忌
破れたるごと秋風の中に入る
海鳴りは海の寝息や秋深む
 「OPUS」代表同人。


岡田一実(おかだ かずみ)
 2014年「第三回 大人のための句集を作ろう!コンテスト」優秀賞受賞。2014年「浮力」にて現代俳句新人賞受賞。現代俳句協会会員。「いつき組」所属。「らん」同人。第二句集『境界 ―border―』(マルコボ.コム)。


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続 南極を詠もう!


最終回

一般研究観測担当隊員 源 泰拓(俳号 源笑)


 「100年俳句計画」読者のみなさま、こんにちは。第57次日本南極地域観測隊越冬隊員のみなもとです。
 昭和基地の1月は、南極観測船「しらせ」が運んできてくれた荷物の輸送、ヘリコプターで出かける野外調査、そして交代する58次隊への引継ぎなど、目の回るような忙しさです。今年のわたしたちの場合、元日の次にお休みになったのは22日でした。
 そして2月1日に越冬交代。わたしたち57次隊は、昭和基地では「過去の人」になりました。

幾万年流れし末の滝の音  源笑

 昭和基地から140キロメートルくらい離れたインホブデというところへ出かけました。観測装置のメンテナンス作業を終えて、迎えのヘリコプターが来るまでの間に少し散歩をしていたら、滝の音が聞こえました。この滝の水は、南極大陸に降った雪が溶けずに何万年にも渡って積み重なって、ゆっくりと流れ落ちてきたものです。

白夜尽く半分の月が浮かぶ陸  源笑

 白夜も終わりが近づいて、午前0時近くには宵の気配が漂うようになったころ、もう寝ようかな、と思ってふと外を見ると、南極大陸の上に月が見えました。大陸の縁だけが、地平線ギリギリにある太陽に照らされています。

旧正月立ち去る者が壁拭う  源笑

 1月28日は大掃除。廊下の天井と壁を拭いて、食堂の床にワックスをかけました。一年間お世話になった基地をきれいにして引継ぎます。2月1日の越冬交代式のあとは、次に越冬する58次隊員がすぐに引っ越してきます。

ひととせを越えて衝く息夏の果て  源笑

平成29年2月1日、57次隊から58次隊への越冬交代式が行われました。「ただいまから、昭和基地は58次隊が運営します」という声を聞いた時に、なんとなくほーっと息をつきました。一年間を完走できた、安堵の吐息でしょうか。


今月の南極吟行句
編 希望峰

幾万年流れし末の滝の音  源笑
 俳句は一瞬を描くセオリー、という考えがありますが、私たちが生きる世界の一瞬の背後には大いなる歴史の渦が存在します。インホブデの滝を前にして詠まれた句が、他の人が別の滝を目の前にした時に近似したイメージを抱く。それが「普遍」ということなのかもしれません。「末の」「後(あと)の」「後(のち)の」……いろいろな言い方がありますが、「末」がこの写真に合っているかもしれませんね。

白夜尽く半分の月が浮かぶ陸  源笑
 「半分の月が」の「が」は、中八なので、なくても伝わるかもしれません。
 満月でなくて、半分の月がいい味を出している気がします。連載の中では、天文系の句をたくさん送っていただいたことを思い出しました。この原稿は岡山から書いておりますが、世界は繋がっているんだということを源さんたちには教えていただきました。写真の赤みがかった陸地がグッときますね。

旧正月立ち去る者が壁拭う  源笑
 「旧正月」という季語が持っている方向性と、「立ち去る者が壁拭う」というフレーズの方向性は調和していないと思います。フレーズから、「旧正月」というイメージに到達しないからです。その日が旧正月であったということを除けば、文脈を知らない読者には少々読むのがつらいところかもしれません。「立ち去る者が壁拭う」という表現は非常に俳句らしく、季語を変えれば大化けすると思います。廊下がきれいになると、寂しくなりますね。

ひととせを越えて衝く息夏の果て  源笑
 「衝く」は「つく」の方がよいかもしれませんね。「夏の果て」も寒々しいなかでのものでしょうね。
基地運営も、この連載も、本当にありがとうございました。

南極へ色なき風の漂着す  ひでやん
 「色なき風」が連載の最後に合っています。

秋分や地平ころがる陽の光  同
 南極の太陽も俳句も、「ころが」っていくものなのかもしれません。


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100年俳句計画 掲示板




テレビ ラジオ
     
NHK Eテレ『NHK俳句』
 日曜6時35分〜7時
 (再放送 水曜15時〜15時25分)
 夏井いつきが第3週選者を担当
3月19日(日)、再放送 22日(水)
募集兼題
 「春の鳥」または自由
投句締切 3月10日必着
投稿は葉書1枚に1句。選者名、兼題、俳句1句、名前、年齢、電話番号明記。
宛先 〒150ー8001 NHK「NHK俳句」係
 ホームページからの応募も可
 http://www4.nhk.or.jp/nhkhaiku/

NHK 総合テレビ(愛媛のみ)
  「えひめ おひるのたまご」内
隔週火曜『みんなで挑戦! MOVIE俳句』
3月14日(火)、28日(火) 11時40分〜

TBS系列局 全国ネット
 『プレバト!!』
毎週木曜 19時〜19時56分
 夏井いつきが俳句の査定を担当

南海放送
 松山市政広報番組
 『大好きまつやま しあわせことば塾』
毎週火曜 20時54分〜21時
(再放送 日曜11時40分〜11時45分)
 夏井いつきが塾長として出演

南海放送ラジオ
 『夏井いつきの一句一遊』
毎週月〜金曜 10時〜10時10分
  「一句一遊情報局」のページ参照

FMラジオバリバリ
 『俳句チャンネル』
毎週月曜 17時15分〜17時30分
(再放送 火曜7時15分〜7時30分)
投句募集兼題
「春場所、土佐水木」3月12日締切
「うららけし、落花」3月26日締切
 WEB http://www.baribari789.com/
 mail radio@baribari789.com
 FAX 0898(33)0789
  投句には本名 住所をお忘れなく!
  「天」の句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。

各番組の放送予定は変更される場合がございます。新聞などで最新情報をご確認ください。


執筆

松山市の俳句サイト
 『俳句ポスト365』
http://haikutown.jp/post/
 「俳句ポスト365」のページ参照

テレビ大阪俳句クラブ
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」(夏井いつき選)
  毎週日曜タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井いつき選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。
 朝日新聞松山総局(〒790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。

愛媛県《吟行ナビえひめ》句&写真
俳句選者 夏井いつき
写真選者 キム チャンヒ
 募集期間 毎月1日〜25日頃締切
 応募先
http://www.iyokannet.jp/ginkou/
 問合せ 愛媛県観光物産課
電話 089(912)2491


イベント・講演等

長崎市立戸町中学校ライブ 
3月2日(木)14時〜15時50分
 長崎市立戸町中学校(長崎県)
 生徒 教職員対象。
問合先 特定非営利活動法人 長崎国際文化協会 
電話 095(822)2366

長崎市立南長崎小学校ライブ
3月3日(金)9時40分〜11時25分
 長崎市立南長崎小学校(長崎県)
 児童 教職員対象。
問合先 特定非営利活動法人 長崎国際文化協会
電話 095(822)2366

みやざきレディース倶楽部グレイス第4回定期講座
 夏井いつきの句会ライブ 〜あなたも今日から俳人です〜
3月5日(日)10時30分〜12時30分
 シーガイアコンベンションセンター(宮崎県)
 グレイス会員対象。
問合先 宮崎日日新聞社広告局 
電話 0985(26)9333

鳶巣コミュニティセンター主催
 夏井いつきの句会ライブ
 俳句づくりで交流 俳句づくりで健康づくり
3月12日(日)10時〜12時
 鳶巣コミュニティセンター(島根県)
 小学生以上対象。
問合先 鳶巣コミュニティセンター 
電話 0853(21)0174
 申込受付は終了しています。

第71回JAたかつき文化セミナー
 夏井いつき講演会
 100年俳句計画 〜俳句を使ったまちづくり〜
3月16日(木)13時30分〜14時30分
 JAたかつき本店ビル(大阪府)
 参加費 500円
(最寄りの本支店に参加費を添えて申し込み。先着400名)
問合先 JAたかつき本店 
電話 072(671)5421

第6回 瀬戸内 松山写真俳句コンテスト
3月18日(土)14時〜(開場13時)
 松山市立子規記念博物館(松山市)
 入場料 無料(要申し込み)
問合先 朝日カルチャーセンター「松山俳句」係
電話 06(6222)5224

道後温泉祭り吟行句会
 @愛媛新聞カルチャー「俳句のある生活を楽しむ人のための俳句」共同企画
3月19日(日)10時〜
 吟行 道後地区
 句会 椿の湯2F会議室(愛媛県)
 日程 10時集合 道後温泉駅前からくり時計下→道後周辺を吟行 各自昼食→13時 椿の湯2F会議室→13時30分 句会スタート→16時30分 終了予定
 参加費 一般1000円(カルチャー受講生は不要)
問合先 マルコボ.コム 
電話 089(906)0694

伊勢神宮俳句会 夏井いつき句会ライブ
3月20日(月 祝)15時〜
 神宮会館(三重県)
 受講費 2500円(全席指定)
 未就学児の入場不可。
問合先 毎日新聞社中部本社事業部
電話 052(324)1936

子規 漱石生誕150年記念
 俳都松山キャラバンin台北 〜十七音が景色を変える〜
3月25日(土)13時〜
 紀州庵(台湾 台北市指定重要文化財)
問合先 松山市役所 文化 ことば課
電話 089(948)6952
 申込受付は終了しています。


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魚のアブク



読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは他の投稿に添えてお寄せください。


出楽久眞 まる裏には参加できませんでしたが、チームダイオウイカの優勝に喜びました。当日のお題の難しさ、それを難なくこなしていかれる皆さんの活躍に刺激を受けました。

西条の針屋さん まる裏俳句甲子園には今年も参加させて貰いました。予選ではポメロ親父さん、マーペーさんらと参加して一点差で本戦に出れませんでした。まぁ、本戦に出ていたら一切喋れないと思う自分ですが……。

葉音 今年は、俳句ポストか一句一遊どちらかで金曜日に登場することを目標に頑張りたいと思います。

藍植生 我が座右の銘「下手な鉄砲も数撃ちゃ中る」。一日一句を継続中(3年)。

みやこまる 1月号の「観るという冒険『聖の青春』」とても嬉しく拝読しました。俳句とめぐり会う前は将棋が趣味でしたので、この記事を読んで映画を見て将棋にも興味を持ってくださる方が一人でもできたらいいなと思っています。猫正宗さん、将棋の種蒔きありがとうございます(コッソリ)。

元旦 擬似俳句対局、チェックをついつい忘れてしまいます。気をつけないといかん。

童夢U世 先月号の詰め俳句、季語でどじりました。季語が「冬」と「新年」でわかれている電子辞書を買いました。

桂奈 自分が大学受験で苦しんだのがついこの間のような気がしていたのにいつの間にか子供の大学受験を支える立場になりました。不思議な気持ちです。



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鮎の友釣り


第224回


俳号 だりあ

前回 きとうじんさんへ ひよひよの三日月句会から藍生遍路吟行などを経て、素晴らしい句を作るきとちゃん。ますます宜しくね。

写真 浜辺の吟行句会にて。ハンサムボーイの間でわ〜きゃ〜のだりあです。

近況 なんたって俳句と組長と仲間たち、うちの松ちゃんと四人の子と孫たちと、最高。
 年を取るのもええもんです。

次回 亜桜みかりさんへ 後輩の可愛い、頼り甲斐のある、頼りにしています、みかりさんへバトンタッチ。


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第5回 城北地区小学生俳句大会


橋 大五郎


 有限会社内田パンの内田社長から「お店を構える松山市の城北地区で、小学生を対象にした俳句大会をしたい」とご相談を頂いたのが5年前。地域に根差したお店にしたいとの想いからのお話でした。小学生を惹きつける俳句大会と言えば「句会ライブ」しかないと考え、その魅力を内田社長に力説しました。決断の早い内田社長の「その方向で行きましょう」との言葉で『城北地区小学生俳句大会』は産声をあげました。
 実行委員会を組織するにあたり、当時の「まつやま俳句でまちづくりの会」(以下mhm)会長の高須賀あねごさんにお声掛けしたところ、内田社長と高須賀あねごさんは、高校の同級生と言うではありませんか! 俳句が繋いでくれた旧友との再会です。第1回から第4回まで高須賀あねごさんのてきぱきとした捌きが、小学生を魅了してきました。回を重ねるうちに、毎年参加する児童もでてくるなど城北地区小学生俳句大会は少しずつ定着してきました。
 そして今年も12名の小学生とその保護者が集まり、1月22日(日)第5回城北地区小学生俳句大会が、松山市立清水小学校「はつらつルーム」で行われました。「はつらつルーム」は、空調設備があり、冬場でも暖かく行事を行えます。この部屋を毎年貸していただけることは本当に有難いことで、地域に根差した大会であることを実感させてくれます。第5回の今年は、「mhm」現会長の若狹昭宏さんの捌きで行われ、若狹会長の溌剌とした捌きも新鮮な大会となりました。規模はそれほど大きくはない大会ですが、毎年続けることで俳句の裾野が広がっていくことを実感します。俳句の種まきに携われるささやかな喜びを感じています。
 毎年の入賞作品は内田パンの店舗に1年間掲示しています。更に最優秀作品は若狹会長の描いた俳画も展示しています。内田パンに足を運んで、美味しい焼きたてパンのお買い物を楽しみながら、小学生の俳句を鑑賞してみてはいかがでしょうか。

最優秀賞
 松山市立堀江小学校2年 田中佑奈
冬のまどへのへのもへじいっぱいだ

優秀賞
 松山市立清水小学校1年 早川陽大
ふゆのあさつよくサッカーボールける

入賞
 松山市立清水小学校1年 鈴村美桜
はつスキーリフトのけしきさいこうだ

 松山市立清水小学校2年 石井彩貴
お母さんからのべんきょうストーブで

 松山市立姫山小学校5年 葛西真生
坂道のバケツの水も氷る朝


内田パン 松山市中央1丁目12-1


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告知




第6回 百年俳句賞
 〜大人のための句集を作ろう!コンテスト〜

主催 マルコボ.コム
共催 朝日新聞社 松山市教育委員会


最優秀賞は
ふづきさんの
『水掻き』に決定!

 本コンテストは、「百年後の未来に残したい作品を、私たち自らが作り、自らが選ぶ」というコンセプトで開催しております。
 昨年募集を行った「第6回百年俳句賞 大人のための句集を作ろう!コンテスト」には、49作品の応募がありました。
 34名の百年俳句賞選考会員の審査により、ふづきさんの『水掻き』が最優秀賞に決定しました。また優秀賞は、板柿せっかさんの『蛍烏賊の目玉』、てんきゅうさんの『天空の墓』、越智空子さんの『さくら餅』、初蒸気さんの『首塚の向こう』、片野瑞木さんの『前進』、きとうじんさんの『くるぶしの砂』の6作品に決まりました。
 来たる4月2日(日)午前10時より、松山市立子規記念博物館にて表彰式を行います。(観覧自由)
 また、詳しい審査結果などは、4月号にて発表します。最優秀賞作品は、4月号の付録句集として配布されます。





春夏秋冬(しき)笑顔まつやま福祉五七五

福祉をテーマにした冬の五七五結果発表


会長賞
蝋梅のひかりへむける車椅子  有田けいこ(松山市)

優秀賞
化粧してヘルパーを待つ四日かな  わだっち(松山市)
寒凪やゲートボールの玉の音  奈月(松山市)
雪掻いて隣のばあちゃん見えてきた  渡辺竹女(山形県)

入賞
湯タンポ遠ざけばあちゃん寝かせやり  青柘榴(松山市)
判定は「自立」の通知背筋伸ぶ  みの吉(松山市)
母の名をさん付けで呼ぶクリスマス  矢野貴子(高知県)
信号機の音澄み渡る冬の朝  竹の子(松山市)


主催
松山市社会福祉協議会
有限会社マルコボ.コム(ふくし句会・ハイクライフマガジン『100年俳句計画』選句)

協賛
東亜ホーム株式会社(社会福祉協議会賛助会員)





今年もやります!
大お花見大会

日時
 4月2日(日)8時〜20時(予定)
 雨天決行

場所
 道後公園内(松山市)

お問い合わせ
まつやま俳句でまちづくりの会
mhm_info@e-mhm.com


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編集後記


キム チャンヒ

 今年のまる裏俳句甲子園は、近年になく準備に手間取ってしまった。その一番の理由は、以前mhm通信で報告したとおり、予選の方法を変えたため。ありがたいことに、参加チームが増加したため、一句一句を観客と一緒に採点するのが、時間的に困難になってしまったのだ。
 時間を短縮するには、審査を別室で行うしかない。また、審査を別室で行うことで、今まで出来なかったチームの紹介をゆっくりすることが出来る。
 それを実現したのが、スマートフォン。予選出場チームにご協力を頂き、投句すべてを各自で入力頂いた。その俳句をランダムにして、審査員の方々に審査していただいた。
 結果は大変好評。
 限られた時間で投句を集め、審査データをまとめ、チームの順位をドラマチックに発表する。そのシステム作りに、大会直前まで掛かってしまったが、ある程度の成果が出たと思う。
 今年出来なかったことは、まだまだ沢山ある。今回の大会は、そんなまる裏俳句甲子園の新しいスタートの様な気がする。


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次号予告


233号4月1日発行予定

第六回
百年俳句賞 大人のための句集を作ろう!コンテスト
結果発表


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『HAIKU LIFE 100年俳句計画』は以下の書店でもお買い求め頂けます。

愛媛県
 明屋書店 ※一部店舗のみ
 ゆらり内海(愛南町)
 原田書房(今治市)
 子規記念博物館(松山市)
 紀伊國屋書店松山店
 ジュンク堂書店松山店


HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画
2017年3月号(No.232)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子

2017年3月1日発行