100年俳句計画 2017年2月号(No.231)


100年俳句計画 2017年2月号(No.231)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。






目次


巻頭リレーエッセイ
うに子


特集
第10回 夏休み句集を作ろう!コンテスト
結果報告



好評連載


作品

百年百花
 初蒸気/岡田一実/理酔/此花悠


新100年の旗手
 若狹昭宏/小川めぐる


新100年への軌跡
 俳句 葛城蓮士/下楠絵里
 評 平山南骨/十亀わら




読み物

美術館吟行/恋衣

Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳:朗善)

JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭

ラクゴキゴ。/らくさぶろう

クロヌリハイク/黒田マキ

百年歳時記/夏井いつき

鑑(み)るという冒険/猫正宗

mhm通信/暇人

岡田一実の句集の本棚/岡田一実

続 南極を詠もう!/源泰拓、希望峰



読者のページ

100年投句計画
 選者三名による雑詠俳句計画
  桜井教人/阪西敦子/関悦史

 へたうま仙人/大塚迷路
 自由律俳句計画/きむらけんじ
 詰め俳句計画/マイマイ
 100年投句計画 投句方法

短歌の窓/渡部光一郎

百人百様E-Haiku/菅紀子

俳句ポスト365

一句一遊情報局

疑似俳句対局/美杉しげり

100年俳句計画 掲示板

魚のアブク

鮎の友釣り

告知

編集後記

次号予告





巻頭リレーエッセイ



二月
うに子

 「秋田の男子高校生は雪の日もコートを着ない。女子高生は生足」
 テレビ番組で見たのはやらせではなかった。二月の秋田駅前は、確かに顔を上気させた制服のみの高校生であふれていた。
 コートを着ない理由は
1.着膨れはかっこ悪い
2.浮きたくない
3.寒さに慣れてるので平気
だからとか……。
 でもマイナス四度は十分命にかかわる寒さだ。何のたしにもならないことにむきになる「愛すべき馬鹿チン」男子と陶器のような肌を磨く大人びた女子と……眩しいのは雪の反射光ばかりではなかった。
 卒業すれば、浮きたくないと思っていた輪は案外小さいことも知るだろうし、あと五年もしたら強がっていた自分が可笑しくて可愛くてたまらなく思える日がくるはず。期間限定の痩せ我慢も悪くない。少しつめたい二月の風は背中をおしてくれる。


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特集

第10回 夏休み句集を作ろう!コンテスト
結果報告



 小中学生を対象とした、「第10回夏休み句集を作ろう!コンテスト」(主催 朝日新聞社、マルコボ.コム、日本俳句教育研究会、共催 松山市教育委員会)。このコンテストは、一年間で作った俳句40句を、句集に仕上げて応募する企画です。今年は全国から、344作品(小学生322作品、中学生22作品)の応募がありました。
 審査は昨年11月、三浦和尚(愛媛大学教育学部教授)、夏井いつき(俳人)、松山市立潮見小学校教諭の赤松聖則、松山市立栗井小学校教諭の兵頭俊昭、能登智彦(朝日新聞松山総局総局長)、キム チャンヒ(本誌編集長 装丁賞のみ)の計六名(敬称略)で行い、「最優秀賞」、「優秀賞」、「学校賞」、「装丁賞」、「一句賞」の各賞を決定しました。また今回はコンテスト開催10回目を記念して、優秀賞の中から、新聞を題材にした作品に対して「朝日新聞松山総局長賞」を授与いたしました。
 1月7日に松山市立子規記念博物館にて、表彰式を行い、夏井いつきによる句会ライブなどを楽しみました。
 本特集では、最優秀賞作品、優秀賞 子規博特別賞、優秀賞 朝日新聞松山総局長賞の40句と各賞を抜粋して紹介いたします。


最優秀賞 小学生の部
『12歳。-2』
松山市立味生小学校 4年 平原晴香

五月雨やイライラの内容はイロイロ
ひまわりや家のかんばんどこにある
意味のある八日を生きるみんみんぜみ
千年の流転とどまる夕立雲
青がえる毎日通う音楽室
草笛やまたあのクラスに帰りたい
居残りの話し合い草笛の音
まん中に立ちたい年ごろさくらんぼ
ふるさとは三びょうしかな夏ぼうし
風かおる未来はいつか変えられる
大の字で転んだきずや夏あざみ
妹に変なうそつく青あらし
雷やわたしの意見聞いてほしい
無理なこと母に言われる木下やみ
試食メロン心と言葉はいっちしない
セカンドの五年生は神ばらの花
お気に入り洋服汚れ夏終る
秋近し帰りのおそいお母さん
秋の空音程命のヴァイオリン
天高しやる気元気根気ゆう気
秋晴れやひよこはやさしい色をしている
コスモスや先生のちりょう成こうをいのる
おおげさな母のため息落花生
うろこ雲なやみの向こうは完ぺきなやみ
きつつきや無線無音の電話かな
るす番の妹は泣くもみじ散る
達人のサインはにがお絵雪だるま
あやとびができるまじない冬いちご
一人だけぶれないでいるからっ風
粉雪や心に0・5ミリのひび
妹の気持ちの病冬の風
くしゃみ一つ色のない旅を終える
そりすべり流れる前に流される
山ねむる見すてることも一つの手
げんの音ソがファに化ける寒がらす
かれ葉ちるもぬけのからになってみる
先生にビッグサプライズ春近し
雪どけや車で歌う「花は咲く」
理不じんの本当の意味春うれい
さよならと言ってもまた会う弥生かな

受賞の言葉
 俳句は一年生の頃母に勧められて始めました。旅行に俳句ノートを持っていったり、家で気づいたことをいっぱい書いて作っています。今回の応募作で、自分が一番気に入っている俳句は、「青がえる毎日通う音楽室」です。
 タイトルは、小説から借りました。「12歳。」の小説は、10冊持っています。
 百句以上作っても、なかなかいい句がなく、自分では、今回の作品集はあまり自信はなく、「最優秀賞」と聞いてびっくりしました。



最優秀賞 中学生の部
『あと一歩』
松山市立道後中学校 3年 橋凜太朗

初鶏と自動販売機の電子音
入学の気をつけ爪が伸びていた
ぶらんこは手術前夜の心かな
春雨や局部麻酔を追加する
テロップに遊ばれている山笑う
春愁の玩具をなめている赤子
父さんの健康診断春嵐
春風や洗濯物は生きている
陽炎ト車ト街路樹ノ地球
地方都市大交差点黄砂哉
春の朝同じところにある寝癖
泣き方は各々違い虎が雨
梅雨曇有人改札を抜ける
梅雨曇エレベーターで欠伸する
目が悪いから夜景が点の夏
韓国のラジオを拾う熱帯夜
東京の蝉朗らかに鳴いている
旅人の汗にしなっている切符
五校時の口に残っているトマト
風鈴がうるさい塾の帰り道
墨汁の甘い匂いの夏の風
最近の若者は草笛も吹けない
夏野行くですからそれは結果論
地下道の匂いを蝉と食っている
夏の風新快速のドアチャイム
初盆や保安検査にひっかかる
アゲハ蝶顔にぶつかりそうになる
ダイバーの一息深し夏の昼
青春のように西日に照らされる
順延の運動会の弁当箱
レモンのように酸っぱい機内アナウンス
長月の昇降口の匂いかな
首都高の下でゆうらりすすきかな
法廷と野分が人を弄ぶ
一時間一本の汽車山装う
教科書の挿絵赤蜻蛉の交尾
園庭のこちらを向いている兎
外は雪ライブラリーのパイプいす
単線のバラスト雪濡れている
卒業の体育館の茫茫と

受賞の言葉
 今回の作品集は、句の質を高めるところが、工夫した点であり、苦労した点です。思ったような俳句が作れなかったけど、等身大の俳句が作れたので良かったです。 表紙をもっと工夫しとけば良かったな、と後悔しています。
 一番気に入っている俳句は、「旅人の汗にしなっている切符」です。電車でどこかに行くことが好きで、それをそのまま俳句に詠めたからです。
 昨年は子規博特別賞で、「あと一歩」だったので、今年最優秀を受賞でき嬉しかったです。



優秀賞 子規博特別賞
『流星群』
愛媛県立松山西中等教育学校 2年 岡ア唯

流星群さくらの咲く日に来るらしく
青色のインクのしみや蝶生まる
春の海一番星の写真集
春光を紙飛行機に折りこむ
カンバスを青緑で塗る春疾風
後れ毛を気にしてコーヒーを飲む弥生
にわたずみにつながる海の温みけり
揺り椅子の窓辺巣箱の蒼さ見ゆ
海に沿い光を掬うこと薫風
子猫捨つポテトチップのダンボール
夏めいてバクが宇宙を少し食む
両利きが降車口から来て青葉
初蛍約束なしでもまた会える
キャラメルをほおばり冥王星は夏
夏の星ちゃんと私は生きている
ミサンガに天の川の支流編みこむ
文字盤に星河の映る時計台
黄パプリカサラダボウルの月涼し
反抗期乳歯一本残る夏
はん登棒撤去され夏終わりゆく
今だれか生まれて来てて大花火
慧星の飛び立つ寸前青林檎
とかげ掬いあげたら世界は碧い
リボンほどけて月をビン詰めとする
水たまりの月はくらくら水芭蕉
三箇月コリックしめじのホイル焼き
手品師は一生終えて野分かな
バス停が待ち合わせ場所小鳥来る
いつかとはいつなのか檸檬かじる
大夕焼幸せはいずれ来るかも
枯蔓やまだ乾いてない空の色
冬の海鍵を片手に溶く光
星冴ゆるガラスの靴を見つけだし
降誕祭だれかのための星の距離
すずかけの並木小春の音軽し
毛糸編む振り子時計に誘われて
去年泣かなかったことを大声で笑う
初鶏やどこもかしこもにぎわって
カルタ取り一枚足りぬまま終わる
ちぐはぐな心初空へ飛ばせ

受賞の言葉
 俳句は、中学生になって入部した俳句部で主に作っています。また、月に一回、カルチャー教室句会と双星句会に参加しています。自転車通学での登校は、句材を多く得られる貴重な時間です。
 「流星群」というタイトル通り、宇宙のイメージをちりばめたところを工夫しました。宇宙が好きな私らしい作品に仕上がったと思います。
 3年連続「一句賞優秀賞」だったので、今回こそは、もっと上位をと思っていました。周りの方から「子規博特別賞」は大きな賞だと言って頂き、とても嬉しかったです。
 次回は中学3年生で、最後の応募となるので、「最優秀賞」を狙います!



優秀賞 朝日新聞松山総局長賞
『同行二人』
大洲市立大洲北中学校 3年 岡田真巳

先生の印の色濃き花一輪
若葉風任命式の返事かな
友と解く角の証明春麗
立春や押し込む白の体操服
消しゴムのころころ転ぶ春掃除
春嵐上下左右に回す地図
山奥の祖母の故郷や風薫る
朝練の磨くホルンや時鳥
シャーペンの芯のばらける走り梅雨
眼鏡店壊れたからの燕の巣
新聞の字写る肘や夏始め
ゴーグルをつけてプールの水となる
蝉の声聞きつ合わせる自由曲
手拍子の広がるホール夏真昼
オール漕ぐ右手は夏の波に濡れ
炎天や全速力のホームベース
奉仕作業誰も気付かぬ蟻の道
宿題を友と競いて夏の果て
般若経足跡にして秋近し
ラジオから流れる軍歌終戦忌
鰯雲デモする若き力かな
我夢灼羅にバトンを繋ぐ運動会
メモ帳の糊弱くなる白露かな
秋涼し地図空白の新居かな
封筒の墨の濡れたる秋彼岸
古書店のポスター変わる秋の風
鶏頭やロングトーンの音かすか
秋惜しむソロ流れゆくトランペット
先生の結婚天皇誕生日
筆文字の流れる経や時雨止む
冬初め掃除機のひも引っ掛かり
冬の風隅の落書き消せぬまま
灯の数は魂の数阪神忌
スニーカー紐のほどけぬ霜の朝
英検の紙繰る音や虎落笛
戦争に突き進む国月の雪
慰安婦の怒りの涙冬の雷
ノートからはみ出た糊や隙間風
マフラーをはずす校門登校日
封筒を切る古ばさみ小春空

受賞の言葉
 中学生活の最後の思い出にしようと思い応募しました。自分らしい、味のある作品に仕上がったと思います。
 表紙に般若心経を入れ、今で作ってきた俳句の軌跡を表しました。お遍路さんの前にはまだまだ道があり、これからも俳句を作り続けていこうという思いを込めました。
 今回は入賞しなかったかも知れないと思ってたので、受賞を知ってとても嬉しかったです。また、表彰式の会場で、10回目を記念して、私のために作ってくれた賞だと聞いて、さらに喜びが増しました。いつも新聞を読んでから一日が始まる私に、ぴったりの賞です。
 小学校4年生から毎年応募してきたこのコンテスト。 たくさんの喜び、悔しさ、出会いを経験することができました。このコンテストで、自信を持つことができ、様々な大会に参加することが出来ました。高校生になっても俳句を続けます。



優秀賞
『かぶと虫』
愛南町立家串小学校 2年 山本文太

さくらのみぼくが生まれて八年目
あたらしいクレヨンでかくこあじさい
はい校にバッタ一ぴき大ジャンプ
夏の空もサンドイッチにはさむ
ぼくだけにきこえる冬の音こんこん



優秀賞
『Truth isn't empty』
東温市立北吉井学校 6年 伊葉小夏

入試日の駅のホームのアナウンス
春雪に独り吸い込まれて行った
リトマス紙夏色に変える実験
母の日に反抗予告と赤い花
雨つぶを空へ返して虹の街



優秀賞
『小鳥来る』
済美平成中等教育学校 2年 滝下真央

一瞬のてっぺんは春観覧車
花散るや夜の砂場に山と谷
人形の目に映りたる冬日和
塩鮭にさしこむ箸の深きこと
風花や紙飛行機の低く飛ぶ



装丁賞 優秀賞

『アオダイショウ』
 鬼北町立三島小学校 2年 樽虎白

『あおい夏』
 京都市立上賀茂小学校 6年 古谷真理

『夢に向かって』
埼玉県寄居町立寄居中学校 3年 高橋彩香



装丁賞 入賞

『なつはたのしみ』
広島県東広島市立平岩小学校 1年 山本華菜

『カブトムシ』
愛媛県砥部町立広田小学校 1年 日野林一都

『はいく日記2016(夏〜秋)』
香川県丸亀市立城坤小学校 3年 前田康太朗

『きりんまっすぐ』
愛媛県愛南町立家串小学校 4年 末弘力也

『銀の匂い』
愛媛県愛南町立家串小学校 5年 高魚涼

『るりとかげ』
愛媛県愛南町立家串小学校 5年 兵頭玲勇

『小さな夏』
東京都江東区立越中島小学校 5年 吉田小夏



一句賞 優秀賞

東温市立北吉井幼稚園 年中 豊島佐菜
秋あざみあっちの風とつながった

道後聖母幼稚園 年長 河村みなみ
はるのにじかさでとびたいおうちまで

鬼北町立三島小学校 2年 竹内健太
グランドのアオダイショウはうごかない

広島大附属三原小学校 2年 平木惺菜
とどかないフェンスの先のつくしんぼ

今治市立常盤小学校 3年 杉本優馬
よう虫のしんぞうみつけた秋のくれ

今治市立桜井小学校 3年 野村颯万
石われてキバの化石とび出す夏

宇都宮市立中央小学校 5年 安留悠
渋滞の車間をぬって黒揚羽

広島大附属三原小5年 平木結菜
自分しか見えない楽ふ春の歌

大阪市立片江小学校 6年 馬場叶羽
夏の星しっぽをなでるねこの通夜

松山市立道後中学校 3年 武田歩
跳び箱のホコリの匂いそぞろ寒



一句賞 入賞

宇和島市立九島小学校 1年 田中羚潤
さかあがりひゅんひゅんできるよみなみかぜ

宇和島市立九島小学校 1年 桃田子鉄
やまわらう「ま」のまわるとこできんのよ

愛南町立家串小学校 1年 浅野迦恋
じいちゃんのからだにいしがよるのあき

愛南町立家串小学校 1年 前田航輝
せみしぐれきょうのぷうるはよにんだけ

砥部町立広田小学校 1年 窪田菜々望
いもうえでまほうのいどみずかけてやる

東京都江東区立深川小学校 2年 服部優真
夏のくもきょ人がパンチあなあいた

鬼北町立三島小学校 2年 杉本綾音
ありたちがひつじの足にあつまった

鬼北町立三島小学校 2年 岡崎美都姫
ピーマンはたたくとたいこ夏の空

鬼北町立三島小学校 2年 丸石真央
ならんでる水とう二つ天高し

宇和島市立九島小学校 2年 松岡翔真
日本のはたきれいにおよぐ夏木立

広島県東広島市立平岩小学校 2年 国松芽生
おかあさんはじめてバカといったなつ

愛南町立家串小学校 2年 兵頭海音
あおぞらのなわとびトントンふゆこだち

愛南町立家串小学校 2年 藤井愛望
夏まつり牛おにの中にパパがいる

愛南町立家串小学校 2年 中尾紗唯
プールはんぶんラッコおよぎですすみます

松山市立堀江小学校 3年 武田琉里
弟がいっしょうもちをせおう夏

愛南町立家串小学校 3年 松原琉也
貝がらを五つひろって雲のみね

愛南町立家串小学校 3年 伊勢小葉
先生がまってもこないかきおちば

愛南町立家串小学校 3年 兵頭太嘉
父さんのトラックは新車朝のにじ

砥部町立広田小学校 3年 河本清花
春風や四人のシーソーおしりうく

香川県丸亀市立城坤小学校 3年 前田康太朗
兄ちゃんの速いボールを止めた夏

今治市立乃万小学校 4年 越智和奏
台風のあとにさがしに行くバケツ

松山市立たちばな小学校 4年 村上悠乃
水そうに足を広げる水カマキリ

大洲市立喜多小学校 4年 村上嘉康
おとなりの雨ふるような梅のえだ

愛南町立家串小学校 4年 末弘力也
夏の風きりんまっすぐ立ってます

愛媛大教育学部附属小学校 5年 小田こゝろ
夏ぼうしつばの広めのお姉さん

新居浜市立船木小学校 5年 伴野悠之介
花札の雨の絵にらむ夏の夜

宇和島市立九島小学校 5年 浜崎秀斗
毛筆で平和と書いた風かおる

広島県東広島市立平岩小学校 5年 高村恵生
赤ちゃんをあやす私の暑い夏

東京都江東区立越中島小学校 5年 中山優凛
春時雨雨から守る髪飾り

松山市立みどり小学校 5年 山崎志音
雲泳ぐなずなの花もゆれている

松山市立みどり小学校 6年 吉田陽南大
息白し歯ブラシの毛も反抗期

愛媛県立松山西中等教育学校 1年 山内真穂
中生代迷い込んだる蜥蜴あり

愛媛大教育学部付属中2年 山川さくら
先輩のロッカーに置くレモンかな

大洲市立長浜中学校 3年 久保穂佳
鳥かじる三日月型の椿の実

仙台市立中山中学校 3年 小野寺凌
日盛りの引退試合打点一



学校賞

学校賞 最優秀賞
 愛南町立家串小学校

学校賞 優秀賞
 宇和島市立九島小学校
 鬼北町立三島小学校

学校賞 奨励賞
 砥部町立広田小学校
 広島大学附属三原小学校
 東広島市立平岩小学校
 江東区立越中島小学校


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美術館吟行


第26回

ウィリアム モリス
原風景でたどるデザインの軌跡 吟行会


参考文献 資料「ウィリアム モリス展図録」「ウィリアム モリス展愛媛展チラシ」
取材協力 「ウィリアム モリス展」愛媛展実行委員会(愛媛県、テレビ愛媛)、愛媛県美術館

文 恋衣


 1月9日、まる裏俳句甲子園の翌日の朝、愛媛県美術館に俳人7人が集合。「ウィリアム モリス展」鑑賞吟行に参加するために。
 手にした「原風景でたどるデザインの軌跡」と書かれたチラシが、その青が美しい。
 先ず、頬杖をついたウィリアム モリス(1834-1896)の肖像に見つめられる。見つめ返す。


第1章 少年期から青年期(1834-59)
 ロンドン郊外ウォルサムストウのエルムハウスに生まれ6歳でウッドフォード ホールに引越し。エピングの森に遊び、16世紀に建設され現存の「エリザベス女王の狩猟小屋」にあった「緑樹のタペストリー」に強烈なロマンスの感覚に打たれた少年モリス。一家の住んだウォーターハウスで育んでゆく美。


第2章 レッド ハウスからクイーン スクエアへ(1859-1871)
 1859年に壁画のモデルのジェイン バーデンと結婚。その住まいは赤煉瓦のレッド ハウス。

春の川きらら楽園となる館  小野更紗

 ステンドグラスや壁紙の内装を手がけ1861年、モリス マーシャル フォークナー商会を設立。希望の中に「格子垣」等壁紙をデザイン。

柘榴あるいは果実描いて布は海  天玲

 どれも花や鳥が歌いだすような明るさがある。生活の一部をデザインした壁紙の前に、時に並べ替えられたであろう藺草座の椅子が、ここが定位置のように佇んでいる。

「ロセッティの長椅子」
一人の椅子三人の椅子冬日射  遊人
長椅子のカーブにふかと春愁  恋衣


第3章 ケルムスコット マナー(1871-1896)
 モリスが「地上の天国」と讃えたケルムスコットマナー別荘 家のはなやぎ。

森深く蜂蜜色の桃源郷  南行ひかる

 師であるロセッティとモリスと妻のユートピアにきしきしと潜む憂鬱。

「りんご」
冬林檎香 酸 甘の粒子かな  遊人


第4章 ケルムスコット ハウスとマートン アビー(1878-96)
 1878年、テムズ川下流のハマースミスに転居。ケルムスコット ハウスとマートンアビー工房で染と織物、刺繍に専念。ハマースミス ラグを制作。

「小鳥」
見つめ合ふ左右対象冬あざみ  遊人

「暖炉の二曲衝立《バラとオリーヴ》ほか」
寒薔薇やはらかさうな棘を持ち  恋衣

 モリスの美の集約された衝立の刺繍。

 1878年以降中断していた染色実験を1881年再開。インディゴ抜染に成功。モリスの青を堪能。

「兄弟うさぎ」(白)
夏めきて兄弟まみれの兎たち  猫正宗
朧夜や兄弟ウサギ棲むブルー  小野更紗

 単色の「青」と「白」のテキスタイルに浸る。
「黄」と「緑」は、全く違った世界を作りだす。

「小鳥とアネモネ」(黄)(緑)
アネモネに眠る小鳥の倦怠よ  天玲

 単色よりさらに多色染めの楽しさはここに。

「いちご泥棒」
鳥たちがついばむ苺自体罪  猫正宗

 青を根底に、テムズ川支流の名前をつけたパターンデザインは、色の優美さを増してくる。

「リー」
春の碧深く深く水底まで  南行ひかる


第5章 ケルムスコット プレス (1891-1896)
 理想郷へ一歩でも近づこうとするたゆまぬ努力でモリスは書物芸術へ。書家である俳人は、やはりここに注目。

「書体」
半券を無くす葡萄の熟るる野に  天玲


第6章  アーツ アンド クラフツ運動とモリスの仲間たち
 モリス商会を継承したウィリアム アーサー スミス ベンソンのランプは、灯りを灯したような優雅さが。

冬灯花の帽子に花の精  遊人

 モリスのあくなき美の追求は、終生揺るぎなき美を基盤に続けられた。美しいものは、美しい。美を求める姿は、美しかったに違いない。「役に立たないものや、美しいと思わないものを家に置いてはならない」ー頬杖を解いて、モリスが語りかけてくる。写真家織柞峰子氏は、英国でモリスを見かけたのでは、と思う。

ファインダーのぞくモリス織柞水の春  恋衣



衝立は春の闇への入口に  チャンヒ
兄弟に違ひがひとつ白兎  遊人
春の野へバタースコッチキャンディを  恋衣


恋衣 俳句をJAZZを絵画をこよなく愛する俳人。



次回吟行会
「生誕140年杉浦非水 開花するモダンデザイン」展吟行会
2月25日(土) 朝10時現地集合
参加費無料(入館料は別途)

申込締切:2月23日(木)
『100年俳句計画』編集室までお申し込み下さい。
TEL 089-906-0694


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百年百花


2016年度 第三期 第三回


黒幕
初蒸気

梟や黒幕知らず死ぬ青年
寒林の中のビストロ客無き夜
キヤンドルぐらぐらおととい熊の出た話
一服のエコーの美味し蒟蒻掘
大寒やターミナル埋めるバスの尻
往診にもひとつ投げさす投扇興
鏡台の裏に福笑ひの口にやり
御破算で願ひましては雪しまく
谿底の駅狙つてゐる隼だ
寒月の地球を敵視してゐる眼
冬薔薇の家イーゼルが棄ててある
白鳥や兄を廃して立てた國

「おそろしい子……!」。今年は「ガラスの仮面」の月影先生の日めくりカレンダーが、心の支えです。


涅槃図
岡田一実

傘まはし振るや雪積む雪の上
雪を焼く焚火にはかに猛りたり
紙懐炉ほとほる雨の車寄せ
探梅やゆふづつ潤むゆふやみを
節分の鍋沸点をゆうに越す
梅古木翁の情と強く咲く
たたかひの気勢しづもる臥龍梅
また霾のにほふ日照や艀舟
艶やかに鈴鳴り続く猫の恋
涅槃図や魚は鱗を散らしつつ
歯の疼き頬より触れてうららけし
墓地の木の紙含みある鳥の巣よ

2014年「第三回 大人のための句集を作ろう!コンテスト」優秀賞受賞。2014年「浮力」にて現代俳句新人賞受賞。現代俳句協会会員。「いつき組」所属。「らん」同人。第二句集『境界 ―border―』(マルコボ.コム)。


二人
理酔

口数の少なき冬の二人かな
オリオンやあれはお前の家の灯か
恋文の乾かぬ内の冬の雷
枯園やいつか逢えればそれで良い
冬の噴水から君がやって来る
寒影や先に死ぬなと君の言う
冬晴れの松山にいて一人かな
寒椿ホームに君はうつむいて
小さなくしゃみを可愛いと思った
お揃いは少し照れるなイヤーマフ
腕を組もうかそれとも冬芽愛でようか
君といる三十五年雪眩し

年始に痛めた腰が未だ癒えず、横になったまま作句を続けました。また締め切りに間に合いませんでした。


光る眼
此花悠

交響曲第九番タイタニックを待つ氷山
火災注意の文字吹かるる大枯野
凍滝やゴジラの火炎封じたる
歳の市暗渠に光る眼の無数
顎半ばなる表面張力寒夜の湯
僅かに浮く冬の陽炎抜けて来て
果てなる物と書いてくだもの冬苺
まづは猫起きて来て鳴くお元日
初春のみどりの御髪すべる櫛
月光に薔薇の芽立つる七日かな
芯まで吹かれ雪女郎ともならず
待春のカレイドスコープなる水面

五十路のパート主婦にして、俳句の穴〜ロマンチカ〜の幽霊部員。


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新 100年の旗手


読者投稿による3ヶ月連載作品集
新 100年の旗手

(2017年1月号 〜 2017年3月号 2/3回目)


兎と亀と
若狹昭宏

鳥葬の白き骨ある冬銀河 
氷壁を割りて最古の水の湧く
冬雲を剥がしておりぬ象の鼻
着ぶくれの中に抱きたる老兎
皸の入る亀の甲羅よ日脚伸ぶ
冬温し鰐の欠伸のまま眠る 
初夢を抜け出してきた顔ばかり
春塵の毛を輝かすキュウヨかな
穴出づる大蛇地軸を巻き終へて
春の夕翼畳みし鳥の群れ

1985年生まれ、広島県出身。お呼びとあらば即参上。自称「キム・チャンヒの弟子」として俳画修行中のmhm代表。松山や今治で双星句会を開いてます。


はつはる
小川めぐる

この道の小鳩は逃げず冬うらら
春待つや「サボテンの花」唄ふひと
水仙の花言葉「慈愛」と思ふ
ニッセンのカタログ厚し春近し
天鵞絨の如き馬の背春隣
桃鉄の百年戦譜寒明くる
竜頭てふ懐かしきもの春浅し
金色の繻子のリボンよ愛の日よ
植木鉢逆さに積まれ冴え返る
春の家美築駅より徒歩二分

1967年熊本県生まれ、現在は大阪在住。俳句歴は1年3ヶ月くらいです。俳号の由来は、「いつも目をグルグル回している」ところから。


2017年 第1期連載者募集中
締切2017年2月15日(水)

応募内容
2017年4月号に掲載できるタイトル付の10句

応募先
Eメール magazine@marukobo.com
件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
(郵送またはFAXでも受け付けております。詳しくは編集室までお問い合わせ下さい。)


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新 100年への軌跡


2016年度 第三期
第三回


YELL
葛城蓮士 

冬めいて鉛筆尖りすぎぢやないか
あいさつは元気でよろし冬講習
冬の朝ゆらゆらチャイム鳴りそむる
休み時間外套羽織る小さき椅子
暗算のたびに蠢くマスクかな
寒晴や問一計算ミス多し
宿題も多しちかちかするオリオン
過去問の狭き余白や暮早し
誰が欠伸うつる聖夜の自習室
弁当の届きし塾や冬日和
着膨れて受付に来てよく喋る
手の脂冴ゆる赤セルシートかな
北風や乗継駅の受験生
握手てふエールを終へて春隣
鉛筆を丸めて君の春を待て

葛城蓮士(かつらぎ れんじ)
 1994年生まれ、埼玉県在住。第12回鬼貫青春俳句大賞優秀賞。ゲリラ句会管理者。


喫茶室
下楠絵里 

古書の棚抜ければ外套並びをり
全室に青き照明冬薔薇
悴みて金の取手に触れにけり
お湯の沸くまでの時間や寒雀
ティーカップに石の丸みや春を待つ
寒明のピアノ雫のごとく鳴る
コーヒーにランプの映る二月かな
地下にジャズやまぬバーあり冴返る
春浅し客船の名の喫茶室
下萌やバターのやはらかく滑る
山頂の抹茶は初春の温度
薄氷の町へと続く磨りガラス
クッキーの焼けるを待ちて猫の恋
春霖の小豆の甘さのみ残る
天井は鳥飛ぶ高さ君子蘭

下楠絵里(しもくす えり)
 1997年生まれ。京都大学文学部在学中。洛南高校在学時より句作を始める。第15〜17回松山俳句甲子園全国大会出場。第10回鬼貫青春俳句大賞優秀賞。



応援しています
平山南骨

冬めいて鉛筆尖りすぎぢやないか  葛城蓮士
鉛筆を丸めて君の春を待て  葛城蓮士
 鉛筆の先っぽに目を付けたところが面白い。一句目からはマークシートを連想した。この他、「過去問の狭き余白」、「蠢くマスク」。一方、受験生の描かれ方が通念的で物足りなく思えたのは、応援というしばりの所為か。「握手てふエールを終へて」はゆるゆるだと思います。

着膨れて受付に来てよく喋る  葛城蓮士
 こんな小母さんっているよねと思いました。無理に受験に絡めて読む必要はないだろう。

全室に青き照明冬薔薇  下楠絵里
 この冬薔薇は白であって欲しい。「全室に」は読み手にもやもや感を抱かせる中途半端な情報と思います。

薄氷の町へと続く磨りガラス  下楠絵里
 修飾関係が曖昧で、これももやもやする。でも、それが狙いだとしたら成功しています。

下萌やバターのやはらかく滑る  下楠絵里
 ホットケーキ、または熱いフライパンのうえ。下萌がやわらかな動きを強調し、かつ明るさを与えている。


平山南骨(ひらやま なんこつ)
 1968年生まれ。2005年より作句開始。「鷹」同人。


三十句を読む
十亀わら

手の脂冴ゆる赤セルシートかな  葛城蓮士
 書く、引く、隠す。書き、書き、引き、隠す。一連の動きを共にしてきたのが赤いセルシートだ。目の前のシートには手の脂が付いている。懸命とか表情とか言わないで、作者はただセルシートをぽんと詠む。上手い。
宿題も多しちかちかするオリオン  葛城蓮士
 自分なら「も」は不要と見るがどうだろう。「宿題多しちかちかするオリオン」で踏ん張ると、句が引き締まったのではないか。オリオンは「瞬く」のではなく「ちかちか」するのだ。深読みすると、この点滅はカウントダウンにも似る。そんな空の下、重い鞄を背負って帰る子供達が見える。一つのテーマで十五句作るのは大変なことだ。葛城さんの取り組みに拍手。

天井は鳥飛ぶ高さ君子蘭  下楠絵里
 力のある句。鳥が飛べるほどの高さである天井は開放感があり自由なようであって、しかし自由ではない。どうしてもこのままでは本当の空に辿り着けないのだから。君子蘭は地に咲くものとして色鮮やかにどっしりと咲き満ちている。
寒明のピアノ雫のごとく鳴る  下楠絵里
 ピアノの音を雫に喩えた句はあるかも知れないが、寒明が良かった。長かった冬が終わり、ようやく春を迎えようとするとき、重い鍵盤蓋が開かれるのだろう。下楠さんの「喫茶室」十五句は優しく、傷がない。十代でこれだけの句を毎月出せるのは、素晴らしいと思う。でも、わがままを言えば、もう少し違う表情の下楠さんの句も読んでみたい気がする。


十亀わら(そがめ わら)
 1978年愛媛県生まれ。千葉在住。「いつき組」。2005年「俳句界賞」受賞。

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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳 朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ

No.43


Sleeping rice field
Hungry birds searching
Hiroshige block-print

広重の冬田に鳥の啄みぬ

(直訳)
眠る田を
腹ぺこ鳥が探し回っている
広重の版画のように


 It is now truly winter and I hope it is a long one. If the snow keeps coming we will ski every day. If not, perhaps the roads will be dry and the sun will be shining and I can bicycle around Lake Yamanaka. I don't know if this will slow my ageing but it sure feels good.

 本物の冬が来た。長い冬だといい。雪が降り続けば、僕らは毎日スキーに行くよ。そうじゃなければ道は乾いて、陽が照るだろうから、僕は自転車で山中湖を巡るよ。こんな事で老化を遅らせられるかどうかわからないけどね、気持がいいのは確かだ。


ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文 白方雅博(俳号 蛇頭)

第71話
ジョージ川口 & ビッグ4


落花ありドラム殺人時効なる  蛇頭

 そのドラマーは昭和の高度成長期に早稲田大学ハイソサエティ・オーケストラに在籍、バンドマスターも務めていた。バンドの練習場は大学内の音楽長屋であり、遮音状況は最悪。長屋の先は平和で閑静な住宅地。平和といっても病人の一人はいる。その一人が夜な夜な長屋の窓からもれてくるドラムの音を苦に息をひきとった。
 遺族は証言する。「バンドの練習が終わっても、毎晩遅くまで居残りタイコを叩く者が、確かに一人いた」と。そして「死因はその音である」と主張する。
 その後、事件のドラマーはプロとして活躍するが、間もなく東京から行方をくらました。なんでも陸奥の某ジャズ喫茶のマスターに納まり時効を待ったらしい。
 これが僕の中での「ドラム殺人事件」だった。しかし、俗にいうこの事件は、昭和33年に松山市の愛媛県民館で起こった。

連打するドラムの先から氷解く  こもれび

 ジョージ川口と白木秀雄のドラム合戦の最中、地方興行を仕切るヤクザのいざこざで、一人の組員が射殺された。しかし、二人のドラマーは勝負に熱中していてまったく気付かなかった。

初夢や十二小節のホラを吹く  南亭骨太

 ジャズドラムスの神様<Wョージ川口は、その豪放磊落な性格に親しみを込めてホラ吹きジョージ≠ニも呼ばれていた。「ドラム殺人事件」でも生前ジョージは「俺には銃声が聞こえた」と言っていたらしい。僕もそのホラの空気に直接触れたことがある。

バスドラに札束つめて建国日  蛇頭

 確か昭和50年代末、松山全日空ホテル14階のラウンジでのジョージ川口&ビッグ4のライヴ後「打ち上げでジョージさんが来てくれるよ」とマスターに教えてもらっていたので一番町のピカソビルにあったライヴハウス「サテンドール」に押しかけた。ジョージはファンを引き連れ賑やかにやって来た。
 「昔のツアーはドラムセットより、札束入れたボストンバックを運ぶのが大変だった」と早速始まった。「空中で飛行機が操縦不能になり墜落して地面に大きな穴を空けてしまったが俺は何とか無事だった」と続く。飛行機乗りだったことは事実である。

春光のドラムだった昭和だった  チャンヒ

 (1)「ジャズ・アット・ザ・トリス」は、ジョージ川口に松本英彦のテナーサックス、中村八大のピアノ、ベースはオリジナルメンバーの小野満じゃなく上田剛だが昭和の元気≠ビビッドに伝えるビッグ4+αのライヴ名演集。司会はロイ・ジェームスである。
 (2)「ザ・ビッグ4」は、市川秀男(ピアノ)と水橋孝(ベース)を迎えた新生カルテットの名演が収まっている。

立春を遅らすカバの大欠伸  時計子

 (2)は40年ほど前のレコーディングだが、まったく古さを感じさせないサウンドである。


「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は月曜日の21時〜22時。

次回のJAZZ句会は、2月26日(日)13時より。テーマはジャズドラマー「エド・シグペン」です。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU』vol.1〜vol.3(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ


第七十一話
文 俳句 らくさぶろう


親の顔
 やっぱり鳶は鷹を産まぬのか?

 あるとき、ご隠居さんのところに八五郎がやって来る。話を聴いてみると、八っつぁんは、息子の金太が通う学校から呼び出しをくらったという。
 訳を聞くと、テストの答案を見せられる。なんと百点満点で5点。回答の内容も「太郎君と次郎君がそれぞれ1/2、1/3ずつ草むしりをしたら、草はどれだけ残るでしょう。」という問題に「やってみないとわからない」といった、一見ふざけたものだった。
 ほかにも「本能寺を焼いたのは誰でしょう」という問題には「ボクじゃありません」などと答えている。
 こんな答を書いているから呼び出しをされているのは明らかなのに、八っつぁんはどうも納得がいかないようだ。
 ご隠居さんは「昔からことわざで“親の顔が見てみたい”と言うように、そんな訳で呼ばれているんだよ」と説得し、八っつぁんを学校へ行かせることに。
 金太も連れての三者面談という形になった。
 先生の前で「何でこんな答書くんだよ!」と叱ると、金太はまちがった回答にも、あながちまちがいとは言い切れないのでは?というヘリクツをつけるので、八っつぁんもそう考えるようになった。
 先生にもその話をすると、先生も八っつぁん親子に押され、はじめは名前が書けていたということだけで5点つけたところを、少しずつ点数をアップしてくれる。
 実は呼び出したのは、この点数を見て親の八っつぁんが金太を怒るのでは?と思い、先生が“世の中には色々な考え方があるので正解はひとつじゃない、子供の考えの幅を認めてやりませんか?”と提案したかったという。
 しかし八っつぁんの考えの幅の方が広いということを知った先生。
「今度、あなたの親に会わせてもらえませんか?」とお願いする。
八五郎「何でです?」
先生「今度はあなたの親の顔が見てみたい」


 ご隠居さんや八っつぁんという名前が出てくるので、古典落語のように見えますが、立川志の輔師の新作落語です。
 志の輔師がプロになって初めて作った創作落語で、もうずいぶん経っていますが現在でも度々演じられ、笑いどころも多い噺です。
 子供がテストに誤った答を書くというのはよくあるパターンですが、これがオモシロイ。
 ネットなどでもよく「こう間違うか? 大人では考えつかん!」と、誤答を集めたものをよく見かけるようになりました。

問「段」を使って、文を一つ作りましょう。
答「段ボールを先生が食べる」

問(  )に文を作りましょう。
 お昼はやきそばにしますか。それとも(  )
答(なしにしますか。)

問 有機物を出来るだけたくさん書きなさい
答(有機物 有機物 有機物 有機物 有機物 有機物……)

などなど(笑)。
 まあ、日頃の学校のテストなら親も笑っていられるんですが、わが家は今年高校受験。
 子を持って初めて知る親の恩とはよく申しますが、只今絶賛その心境。
 松山の神社でお守りを買い、京都では絵馬を奉納し。もはや出来ることは神頼みのみ。
 しかし、鳶は鷹を産まないことは重々承知の上でござんす。
 行けるところに行ってくれるでしょう。
 はやく来い来い、本当の春。

頑張れの代わりを探す大試験


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新聞記事に隠された俳句を発掘する

クロヌリハイク



作 黒田マキ


昨年 の 正月休み 五日間 。 (愛媛新聞より)

年暮れ る 突き指 切り傷 脱臼 も (2017年1月5日 朝日新聞より)

新年を迎えた 心 スクラップ (愛媛新聞より)


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100年投句計画

選者三名による 雑詠俳句計画



雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者2名が、それぞれ天 地 人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選 並選を選んでいます。

選者 関悦史、阪西敦子、桜井教人


先選者 関悦史

 二〇一六年はマイナンバーが実施されて、英国がEU離脱して、参院選で衆参両院を改憲勢力が牛耳り、天皇が退位の意向を示して、トランプが大統領に当選して、カストロが死んで、こち亀が終了して、SMAPが解散して、南スーダンに出兵され、年金は政府に株でスラれて五兆円消え、「保育園落ちた日本死ね」があって、世界各地でテロ頻発、五輪のために東京がぶっ壊されていくという一年でした。今年も暴流の中、生き延びましょう。




冬日向象の肛門蠕動す  内藤羊皐
 時候 天文の季語はわりと何にでも付けられるので緩くなりがちなのですが、この「冬日向」は象の巨体と皮膚のざらついた質感をなだらかに引き出して間然するところがありません。また象の句はあまたあるものの、その「肛門」まで詠みながら、底の浅い諧謔に逃げない句というのも珍しいかも。「蠕動」する「肛門」に絞られた視野がかえって生き物としての象の体内活動全体と巨大さを引き立たせ、存在感のある句になっています。



冬浅し老人すこし動きけり  くらげを
 強いて難を言えば「浅し」と「すこし」が近いのが気にならないではありませんが、季節と老人の動きの対称性を大胆に抽象化していて、そこから、まだ死んでいないぞと言わんばかりの可笑しみも滲み出てきます。

焚火の匂ひ煙管の匂ひ祖父の匂ひ  藍人
 匂いから過去の記憶が引き出されるというのはよくあることですが、焚火の焦臭から煙管へ、煙管から祖父へと二段階になっているところが俳句に必要な飛躍にもなっています。

雑煮供ふ小さき地蔵や花街の  夜市
 焦点がピンポイントの「雑煮」から、思いがけなくも外の「地蔵」へ、そこからさらに「花街」へと広がるように移り、映像的な編集の手際が感じられます。屋外に置かれた雑煮の生々しさと「花街」も響きあいます。

ベビーブックを持ってとことこクリスマス  ぴいす
 子育ての句は陳腐になりがちなのですが、「ベビーブックを持って」の具体性と「とことこ」の乾いた軽さ、そして「クリスマス」が何のはからいもなく繋がり、子の可愛さを出しながらも嫌みのない句になっています。

マザコンですと喪主の挨拶青木の実  おせろ
 出だしは一体何の話だと思いますが、「喪主の挨拶」と続いて、喪主の男性が死んだ母親への思いを語っている場面らしいとわかる。意外性がかえって喪主や弔問客それぞれの思いを引き立たせ、「青木の実」も絶妙。



うつくしい枯野だ釈迦が寝てさうな  くらげを
霜柱踏みて行きけり柔道着  小市
このページいつも笑うね暖炉燃ゆ  風さら紗
初雪や亡父に紅茶たてまつる  さより
散散にちぎって破り障子張る  和音
冬うらら徐行の窓に迫る海  妙
公民館句会や蜜柑配られて  西原みどり
狐の瞳蒼白く澄み生くる知る  中川弘子
古鍬の濁つたひかり蓮根掘る  人日子
金婚の行く手の鱶を食ひにけり  鯉城


関悦史(せき えつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。



先選者 桜井教人

 先日まる裏俳句甲子園に参戦した。そもそも十二年前に家内の運転手としてこのイベントに行ったのが俳句との出会いだったと言ってもよい。会場前で組長と兼光さんに会ったのも記憶に新しい。少しのぞいて早めに退出し、温泉にでも行って、終わる頃に家内を迎えに行く予定だった。ところがなんだか面白い。昼飯にあさひの鍋焼きうどんを食べ、結局最後まで観戦した。翌年からはチームをつくり参戦。「三日月T」を結成してもう八年になる。チームのメンバーに感謝しながらもうしばらく本気で楽しみたい。




狐火を灯す螺鈿の髪飾り  幸
 「灯す」と「螺鈿」の間で切って読むか切らないで読むかで景がかなり異なってくる。私は切らない方が好きだ。「なあんだ、狐火の正体は螺鈿細工だったのか」ではつまらない。髪に挿せば狐火を灯す魔法の髪飾りなのだ。その青白く妖しい光は、山野を越えて愛しい人に会いに行く少女の目印となるのかもしれない、少女を守る魔力としてはたらくのかも知れない。ファンタジーの世界は読み手の数だけ広がる。




うつくしい枯野だ釈迦が寝てさうな  くらげを
 歴史的仮名遣いに口語という手法は独特の世界を生み出すがとても難しい。この句はそれを見事に成立させている。俳句では禁じ手の措辞「うつくしい」を敢て使うなど作者の緻密な計算により、独特の枯野の世界を表出している。

このページいつも笑うね暖炉燃ゆ  風さら紗
 家族の暖かさを表現するのにこんな方法があったんだと目から鱗。暖炉と近いかも知れないが、それはむしろこの句の長所。明確な景によって生かされる季語。平易な言葉からまだまだ俳句は生まれるのだということを学んだ一句。
マザコンですと喪主の挨拶青木の実  おせろ
 この挨拶をした喪主の胸中、それを聞いた会葬者の思いはどうだったのだろう。「マザコン」という言葉の発する力は不思議で危うい。しかし青木の実の鮮やかな真紅がそれを受け止め、オリジナリティーあふれる句になった。

冬夕焼象舎の中の象の骨  誉茂子
 ふくよかな象ばかりではなく、あばらが透いて見えるような象もいる。寒い冬が苦手な象。本当は故郷の暖かな大地に帰りたいのかも知れない。冬夕焼に照らし出される象の骨は美しくも哀しい。

山茶花の崩るる音さへ奪ふとは  土井探花
 音数の関係だけでなく「音も」か「音を」にしてもよかったかもと思うが、そんなことを問題にさせない強い詩情がある。全てのものを奪って行く理不尽さへの怒りの対比としての山茶花が実に際立っている。切れのない構成が詩情を更に増幅させる。




冬木立黒々と虚を鷲掴み  桂奈
小春日に群れて駆け出す赤帽子  富士山
雪うさぎ家族ごつこに飽きました  凡鑚
冬萌や二匹目同じ名を与へ  久我恒子
冬月の灘や鯨の献上絵  もね
狼のぎんいろ森を哮らせて  緑の手
杜に明るき黄落の一処  ポメロ親父
節分にかつては鬼を追うた鬼  ひでやん
子抱き上ぐ枯野は舞台かもしれず  西原みどり
寒木瓜は真紅に風は蒼白に  彩楓


桜井教人(さくらい きょうと)
1958年愛媛県生まれ。愛媛県公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回 29回俳壇賞候補。



後選者 阪西敦子

 いつぶりだろうか、もう忘れるくらい久しぶりにそれはやって来た。なんかさっきから咳出るなあと帰って、熱を測ると9度!最短のオペ(歯磨き 洗面 お湯で風邪薬飲む)で就寝、寒い→脚つる→暑い→関節痛い……が順繰りの一晩、朝起きたら平熱になっていた。ふー、今回のすごかったなーと昼食後に一応内科へ、診断は「インフルエンザ陽性」……。え、一晩で熱さがったのに?食欲あるよ?という思いもありながら、5日の隔離生活へ……。

◆特選
注連縄の教え請ふ子の手の柔し  小雪
 地域によってさまざまの注連縄は、年の市で買うこともあろうけれど、家庭で作られていることも多いのだろう、その伝承の一幕である。先達と比べて藁を扱うにはあまりに柔らかな手、それでもその手に作り方を伝えるのである。

湖は龍のかたちや浮寝鳥  越智空子
 浮寝鳥が陣を張った湖、その湖は実は龍のかたちをしているという。龍のかたちの湖に眠りが守られているようでも、浮寝鳥の眠りが水面を鎮めているようでもある。句の視点と広がりに意表を突かれる。

ポップコーンかさこそ摘む日永かな  どかてい
 映画館でも販売されるように、アメリカのドラマでも大人も子供も抱えているように、ポップコーンは間の持つお菓子だ。その主たる用途の通り、食べ続けている無為と日永の交わり。「かさこそ」の刻むかすかな動きが深い。


◆並選

手捻りのお碗の底に芋頭  桂奈
最御岬参道に舞ふ冬の蝶  芳香
水しぶき上げ進級テスト暮早し  しのたん
数え日や余白少なき赤手帳  かのん
凩や今夜見る夢怖い夢  小市
冬満月掲げ古刹の森蒼し   柝の音
着膨れて星見る山について行く  風さら紗
ポインセチア愛語らひし君のもと  幸
大嚔夜間金庫の口である  藍人
ドッジボールいつもの場所で冬ぬくし  富士山
ユーミンの声の針飛ぶ風邪心地  凡鑚
シマウマの縞は黒白枯野原  ヤッチー
神札の届きて始むすすはらひ  南亭骨太
臨終と告ぐや主治医の眼鏡冴ゆ  夜市
鰭酒に解体されたヘゲモニー  暮井戸
ふゆざくら匂へばゆめのつづき見む  さより
すべり台もひとりでできた日向ぼこ  ぴいす
四期目の事務所開きや笹子鳴く  おせろ
冬薔薇水のひかりへ散りゆきぬ  てん点
天近くなりゆく虚ろぼたん雪  久我恒子
鳩時計告げし真夜中クリスマス  ゆりかもめ
おはようの小道さざんか咲いた道  一走人
法事客めつきり減りぬ枇杷の花  もね
数へ日や十大ニュース考へる  葉音
風呂吹や味噌やはらかくかぐはしく  喜多輝女
霜の夜の電子レンジの完了音  和音
ざざ虫を噛む瀬音さぎさぎにがし  緑の手
潮目越ゆエンジン音は凍雲へ  妙
わりきれば光りだす街賞与月  うに子
冬ざれや胸にぽつかりあいた穴  誉茂子
寒苦鳥ひるまず石を置く碁盤  山崎ぐずみ
雨合羽にもしがみつく牛膝  ポメロ親父
脇役の人生でよし霜柱  dolce
朝の餉の湯豆腐となる湯宿かな  内藤羊皐
初雪やぬいた衣紋にふわと落つ  台所のキフジン
青ぬたの赤貝旨し細い目す  レモングラス
夜学子や時を刻んだ羽根栞  西条の針屋さん
直垂を着なれぬ人も追儺かな  ひでやん
背に二本物差し通し冬至かな  青柘榴
狛犬に神馬頼みて煤払ふ  彩楓
ロボットの集ふ雀荘古暦  土井探花
火を落とす母につくらむ玉子酒  あおい
枯尾花銀に光るる闇の途  マカロン星人
野良の猫道に椿の花踏まず  風海桐
群れ千鳥吹き飛ばされては風を切る  中川弘子
銃声の谺猟犬の寡黙なる  人日子
紙製のツリー贈るや恋を知る  未貫
中門へ続く柴垣冬の雨  哲白
なんとなく鳥の集まる寒き朝  遊人
柿賜う三百成りしひとつとて  まんぷく
極月の暦に残す余白かな  ミセス コナン
おそろしき眠りつつ澄む冬の水  アンリルカ
ニホンのソーリやられてばかり去年今年  エノコロちゃん
百年の鉄路消えけり鳴く  童夢U世
冬の虹米寿の母の手やわらかし  ぎんなん
春の音に踏みだす一歩夫の朝  むべ
我が命留めし妻や冬の朝  迂叟
初鶏の声やはらかき伊予路かな  鯉城


阪西敦子(さかにし あつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。


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100年投句計画

へたうま仙人



ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めてほしい方に最適!?

選者 大塚迷路


 春ぢゃ! 立春ぢゃ! いろんなものが立ってくる季節到来ぢゃ。とは言っても寒いのう。寒い時は俳句に限る。今月も、陽だまりのような句からお寒い句まで産地直送ぢゃ。心を温かくして鑑賞してくだされ。


冬めくも虚子のようにはなれません  ケンケン
平成の生まれ多数のトマト鍋  ケンケン
 特に虚子のようにならなくても良い気はするが、それはさておき、上五の「も」が良い味を出しておるのう。他人事のようでもあり自嘲気味でもあり、つかみどころのないところが大虚子のようでもあり、なんとも憎めんのう。
 料理の世界の発想の逆転にはいつも感心するのう。ご飯の上にあんこを乗せて、さあ食えと言われたら困るが、ご飯をあんこでくるんだとたんに大好物へと変身なさるのだからあらあらぢゃ。いつの間にか二十八歳以下に昭和生まれは居ないという状態となり、今までにないメニューが目白押しぢゃが、俳句の世界もいろいろなメニューを作らんといけんのう。なあに、あんなもんこんなもん、食ってみれば案外旨いもんぢゃ。

枯葉どもに追い立てられて十二月  元旦
極月や文句一つも言うてやる  元旦
 師走にもなるとなんとなく誰に言うでもなく文句や愚痴のひとつでも言いとうなるのう。あげくの果て枯葉どもにも当り散らしとうなる心持ちはようわかるぞ。押詰まって意味なく不安で落ち着かん心境が手に取るようぢゃが、どっこい作者はそんな気持ちを楽しんでおるのう。言葉の端はしにそんな余裕が感じられるぞ。おおらかに人生をながめては呼吸にも似たため息をついておるのぢゃ。俳人はこうでなくてはならん。俳人は食わねど火の用心ぢゃ。

軟膏ガーゼ屁我が尻看護婦の冬  KIYOAKI FILM
馬鹿にされ嬉し候青大将  KIYOAKI FILM
 看護婦(師)さんのご苦労を思うと、感謝の念しかない常日頃ぢゃ。綺麗な尻もそうでない尻も平等に扱わなくてはならん。作者はそれをじゅうじゅう知りつつ、罪深くその汚い尻を曝け出すのぢゃ。看護師さんに感謝をしつつも、自分の境遇を儚みそして受け入れておるのぢゃ。それが「冬」なのぢゃ。それにつけても看護師さんは気の毒ぢゃ。
 馬鹿を演じておる者にとって、馬鹿にされるという事はちょっとした快感ぢゃのう。賢い者は馬鹿になれるが、余り賢くない者はなかなか馬鹿になれん(頭が良いのと賢いのとは当然根本的に違うぞ)。各方面で嫌われている青大将にしても、絶滅して一番困るのは人間ぢゃ。それぞれに影響し合ってそれでいいのぢゃ。冬眠から覚めた青大将を大事にしような。

寒波きて舌禍一刀両断す  みやこまる
ためらはず破る月日や年の暮  みやこまる
 やって来た寒波に、あの人たちの舌禍を一刀両断していただいたら少しはすっきりする人達もいらっしゃるぢゃろうな。ま、すっきりするだけぢゃあいけんがの。それにしても今の世、どなたさまも言いたい放題ぢゃのう。寒波さんもあきれていらっしゃるような気がするぞ。
 最後の日めくりをめくると、ニューイヤーぢゃ。みんな平等にアハピニューイヤぢゃ。「ためらはず」に作者の充実感と新年への期待がひしひしぢゃ。「や」も気持ち良いぞ。是非良い酉年として下され。

神棚の社の落ちて年暮れる  柊つばき
初霜やたのみの神にみすてられ  柊つばき
 とことんぢゃのう。こうもとことんぢゃとかえって清清しいぞ。作者の家の神様は神棚の社に納まり切らんようになったんぢゃ。神様が大きくなればそれにつれて周りも大きくなってくる。作者の家がこれから繁栄する兆候ぢゃ。
 見捨てられたたのみの神とは相性が悪かったのう。相性の悪いものとは深手を負う前にオサラバぢゃ。無理することはないぞ。新しい神様を見つけ、前の神様に後悔させてやれ。初霜がありがたがられるのは「初」だからぢゃ。二回目からは結構厄介者ぢゃからのう。

着ぶくれて長所短所のありのまま  小木さん
妻に起こされる夢みる日向ぼこ  小木さん
 裸になって長所短所がありのままになったのならわかるが、着ぶくれて初めてわかるとは皮肉ぢゃのう。もっとも、着膨れていると判断するのは他人であって、ご本人は一向に気付いていないのが常ぢゃが、長所が有るだけでも幸せ者ぢゃ。
 これが日向ぼこの中の日向ぼこぢゃ。正調日向ぼこ、名代日向ぼこぢゃ。背中の柔らかい日差しが夢と現の境界を曖昧にさせるのう。正気に戻ったときに胸を満たすのは、寂寥ではない事だけはわかるぞ。

病む人の母呼ぶ叫び冬銀河  坊太郎
燃え残る焚火が闇を立ち上がる  坊太郎
 病む人に亡き愛犬の名前ばかり叫けばれたらちと複雑な気持ちになるが、母呼ぶ叫び声には切のうなるのう。母はまさに万能ぢゃ。冬銀河に細く長く反射する叫び声は母に届いたのぢゃろうかのう。きっと届いておるはずぢゃ。きっとな。
 残り火が風もないのに突然に立ち上がる様は、情念にも似てなかなか大変ぢゃ。闇を食ったかのような炎は一瞬、残りの闇をたじろかせ、そして消えてゆくのぢゃ。病む人も病まぬ人も、心にそれぞれの焚き火があるのかものう。

朝五時の朝刊暗き音凍る  ちろりん
鼻通る寒気澄みたり肺洗ふ  ちろりん
 都合で早起きをせんといけん時は「早起きは三文の得」と三回唱和して起きるようにしておるが「暗き音凍る」のを体現できたとは、得をしましたのう。体毛という体毛が逆立ちするような芯の通った寒い朝の新聞には、昨日のきな臭い出来事の記事なんか載ってないような気さえして来るぞ。そんな朝の痛いまでの空気を吸うと、今日一日良いことがありそうな気がして来るからおもしろいのう。一番鶏を聞きながら昨夜の酒を綺麗に抜いて深呼吸。さあ、今日のはじまりぢゃ。

ひとさじのプディングほどの冬日和  出楽久眞
寮長のどてらなれにしあやめ寮  出楽久眞
 まさしくラヴィンスプンフルぢゃのう。ささやかな幸せを感じると言う事は心が豊かということぢゃ。日差しをたっぷり浴びたプディングとスプーンが目の前に現れたぞ。冬日和ならではぢゃ。
 男臭い寮の名があやめ寮とは楽しいのう。寮長はひげ面のいかつい奴なんぢゃろうな。そして刺繍が趣味ぢゃろうな。木造のちょっと古くなった寮の掃除の様子、食堂の様子まで浮かんでくるぞ。新しいどてらがようやく馴染んできた寮長さん、若い奴らをこれからもよろしくぢゃ。

黄色で銀杏落葉まいおりて  真歩
 当たり前のことを当たり前な顔で当たり前の言葉で、こうも当たり前に目の前に差し出されると、なんか楽しくなってくるのう。銀杏が黄色いのは世間の常識ぢゃが、あらためてじっくり見たらやっぱり黄色だった、という驚きと不思議がストレートに伝わってくるぞ。
 「まいおりて」という手垢のついた常識も、あらためて文字をなぞればそれは素敵な言葉ぢゃ。そして「黄色でまいおりて」という当たり前の再発見は「で」という言葉の復権でもあるのぢゃ。おっと饒舌になってしもうた。銀杏への根源的な畏怖と愛をしたためたこんな句は、銀杏も銀杏も同じ漢字で、どっちがいちょうかいっちょもわからん倒錯の世界へ追放!

 今月も追放者を出してしもうて面目ないが、なあに春はすぐそこぢゃ。ここを踏ん張ればもうすぐぢゃ。ぢゃが、くれぐれも油断召されるなよ。


へたうま仙人 
年齢 卑弥呼がおっぱいを飲んでいた頃、ワシは青春真っ只中ぢゃった。
好きなもの 霞のシャーベット(PM2.5抜き)
嫌いなもの 上手な俳句
将来の夢 大器晩成


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100年投句計画

自由律俳句計画



自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。

選者 きむらけんじ


 新聞で読んだ。ロシアでは入浴や肌の洗浄で使うローションなんかを酒代わりに飲むらしい。アルコール度90%以上で、水で薄めて飲めば安くて旨いらしい。商品にはもちろん「体内に入ると危険」と書かれている。その偽物のローションが出て77人も飲んで中毒死した。もともと旧ソ連時代から、工業用アルコール、オーデコロン、洗浄液なんか飲んでたらしいけど。いくら寒いとはいえこの国はやっぱりスゴイな。北方領土なんかとても返ってくるとは思えない。




かまくらを作ってみたが一人  和音
 「かまくら」は、雪で室を作って水神を祭る雪国のそれだろう。もとより「かまくら」には詳しくはないが、なんとなく子供たちがかまくらの中で楽しむ様子が想像される。しかしそのかまくらを作ってみたが一人とは、どういうことだろうか。帰ってくるはずの孫が帰って来なかったのか、あるいはスキー場の隅にでも戯れに一人かまくらを作ったのだろうか……と「一人」の在り様が広がっていく。「咳をしても一人(放哉)」の一人とは、あきらかに異なる寂しさだ。こういう一人も悪くない。かえって清々しい気がするけど。



腰曲がったり沢庵曲がったり  みやこまる
 「腰」と「沢庵」の取り合わせが絶妙です。朴訥とした田舎の老人とその暮らしぶりがみごとに炙り出されています。「たり」で韻を踏むことによって、軽妙洒脱感がいっそう増して俳味のある洒落た句になった。

仁王留守の山門霜が降る  もね
 仁王のいる山門に霜が降ったのでは、当たり前に過ぎる。修理か何かで居るべきはずの仁王さんが居ないのだろう。それを「留守」と詠んだところに面白味が生まれたと思う。主が居ない静寂の山門は、霜が降ってますます静寂に……。


マフラーを編むあなたを飼い殺すため  凡鑚
 一針一針マフラーを編み続ける行為というのは、果ては愛憎へと繋がっていくのでしょうか。女性の愛の深く重く編み込まれたマフラーなど巻いたことが無い身には,とてつもなくオソロシイ句に思えてきます。

規則正しい不整脈  うに子
 不規則でもそれなりに続けば規則になる……なるほど感があります。自由律ならではの短律の妙。句として何か足りないと思って付け足せば、たぶん崩れて行く。見出しと俳句のギリギリで成立しています。

どう読んでもAが死ぬのにまた読む  土井探花
 映画でも推理小説でも結果が解かっているのに二度三度……素直に共感を呼びます。「どう読んでも」という表現が上手い。「A」は、たとえば「高橋」のように具体化したほうが句に力がでるように感じますが。



闇鍋に人魚の肉喰らう  藍人
女子寮の門扉は高い  ゆりかもめ
寒さを泣けば二センチ背が縮む  緑の手
聖夜の靴下にプロポーズを入れました  出楽久眞
置いて行かれさうな師走  ポメロ親父
イラン人と対話する十二月八日  ケンケン
街灯が点滅している寒い  彩楓
露天湯に雪女が来ている  ミセスコナン
冬の海木端微塵のミサゴ  エノコロちゃん
屍を越えちりめんの中のエビ  ちろりん

並選

天地人など有るまいよあの世には  藍植生
冬銀河星新一を読みつ語りつ  桂奈
この爺居れば煩し居なけりや淋し  芳香
蕎麦屋で紅白を見ている  小市
あなたの「バァカ」で少女になるわたし  柝の音
ポケットのどんぐり 紙飛行機 森の設計図  風さら紗
元旦にさよならなんて  幸
鮟鱇と枯野の大決戦  KIYOAKI FILM
二重跳びと虎落笛  ヤッチー
ある日冷たい雨を吸い込んでいる枯木  多満
平和を守る綿虫  小木さん
陽射に眠る犬は充足  南亭骨太
碧梧桐の忌なりベースボールのキャンプイン  暮井戸
前車尾灯凝視冬霧高速道  さより
待つことに倦むもう待たない  一走人
提灯に照らされて猪鍋の看板  喜多輝女
赤ちょうちん「関東煮」戸を開ける  山崎ぐずみ
冬の海潜水艦は西へ  元旦
葉牡丹に朝の雫を解く  内藤羊皐
ピザにのる夢ばかり見る  台所のキフジン
食べられず歩けぬ体の幻覚を得る  レモングラス
栗虫ごと喰ろうて無医村に生く  青柘榴
淋しそうにふらここ止まる  恋衣
壺の骨を捨てるとはこの罰当り女  坊太郎
針千本の菊人形  人日子
勤労感謝の日の通勤電車入れ歯の友  遊人
直角に折れ曲る道赤きセーターの人  まんぷく
原爆の跡七十年の枯野  鯉城

選外(自由律で再挑戦を!)

霍乱の鬼女の機嫌も小春の陽  藍植生


きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。


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100年俳句計画

詰め俳句計画



2つの俳句の句意から、空欄に共通する季語を考えていただくコーナーです。季寄せや歳時記さえあれば、全くの俳句初心者でも挑戦できます。
問題作成、選者 マイマイ


今月の問題
次の(  )の中に共通する春の季語を入れてください。

無欠なる排水溝の(  )かな
(  )てふ色夕闇に置かれけり


無欠なる排水溝の蘇芳かな
蘇芳てふ色夕闇に置かれけり
 くらげをさん。花蘇芳ならば春の季語なのですが、花辞典によると蘇芳だけだと別の植物になってしまうようで、歳時記にも記載はないようです。残念、級外。KIYOAKI FILMさんの冬灯、ポメロ親父さんの朽葉も冬の季語のため級外とします。掲載号の季節に合わせて季語を募集しておりますので、投稿時の季節とは合わない場合があります。悪しからず。人日子さんは花粉。花粉症や杉花粉は季語として認定されつつあるようですが、花粉だけではさすがに……。級外。

無欠なる排水溝の田螺かな
田螺てふ色夕闇に置かれけり
 彩楓さん。前句、割と普通の光景なので「無欠なる」と力むほどなのかなあと思ってしまう。それに後句も田螺じゃあ夕闇に紛れてしまうでしょう。5級。青柘榴さんは蜆。後句は同じく色が地味すぎる。しかし前句、意外な場所に食材を見つけた驚きが伝わってくる。4級。片野瑞木さんは子猫。驚きの季語。前句は意外な場所の生命を力強く詠んだ句になった。後句、猫の色は様々なので「子猫てふ色」に戸惑ってしまう。同じく4級。

無欠なる排水溝の雪間かな
雪間てふ色夕闇に置かれけり
 たあさん。雪が解けて地膚が顔を出しているところをいうのだが、「無欠なる……雪間」ということは排水溝には全く雪がないということだろうか。何だかややこしい。後句、夕闇で目立つのは雪間の暗い色ではなく残っている雪の方だと思うのだが、その雪間の色が置かれているという感覚が詩的。4級。妹のりこさん、矢野リンドさんは雪解。やはり「無欠なる……雪解」が分かりにくい。後句も雪間と大体同じように鑑賞すれば良いだろうか。同じく4級。

無欠なる排水溝の雨水かな
雨水てふ色夕闇に置かれけり
 台所のキフジンさん。前句、排水溝だけに「あまみず」と読んでしまいそうだが、季語としては二十四節気にひとつで「うすい」。雪が雨に変わる頃ということだが、この季語自体には強い感慨はないので「無欠なる……雨水」とか「雨水てふ色」とか言われてもどう想像していいのかわからず戸惑ってしまう。5級。ひさのさん、出楽久眞さんは春日。前句は無欠が面白い表現になっていて好きだが後句、闇に春日が置かれるという状況がわからない。4級。小市さん、れんげ畑さん、葉音さん、元旦さん、レモングラスさん、エノコロちゃんは朧。これも前句は面白いが、朧とは春の夜の万物が霞むさまをいうと歳時記にあるので、後句夕闇にその朧の色を見たことになりややこしい。同じく4級。久我恒子さん、遊人さんは余寒。これは前句、無欠なのに「余」の字が入ってくると矛盾を感じるのは私だけだろうか。後句は「余寒てふ色」という比喩が面白い。ただ抽象的な句なので読者が映像を頭の中で再生しようとしたときに手がかりが無く味わいにくい。同じく4級。ひでやんさんの長閑も後句同評価だが、前句長閑が無欠であるという言い切りが面白かった。3級。緑の手さん、恋衣さんは日永。これは前句、心情を述べずに日永という天文現象に託して「長閑」を想像させるところがさらに私の好みだった。しかし、後句は日が長くなったので夕闇にもその色が残っているというふうな因果が感じられ、惜しい気がした。同じく3級。

無欠なる排水溝の柳かな
柳てふ色夕闇に置かれけり
 童夢U世さん。前句は落ちている枝とかではなく排水溝の脇に根を張って伸びる柳だろう。「排水溝の柳」と言われると溝そのものに柳が生えているようで少し違和感がある。3級。みやこまるさん、ゆりかもめさんは落花。前句は花びらが散り敷いている景で美しいが、花びらが無欠というよりもその光景そのものが無欠の美だと読みたいところ。後句は視線が下に行ってしまうのが残念に感じた。同じく3級。藍植生さん、鈴木牛後さん、さよりさん、うに子さん、dolceさん、笹百合さん、どかていさん、坊太郎さん、ぎんなんさんは菫。ほろよいさん、ちろりんさんはすみれ。これも後句は視線が下に行ってしまうので「置かれ」たときの存在感が正解と比べるとやや薄い気がした。前句はリアリティーがあってよい。2級。桂奈さん、ヤッチーさん、内藤羊皐さんは残花。前句、「残」の字と「無欠」という言葉との間に微かな齟齬を感じる。しかし、後句はその「残」の字が残像のように機能して良い。またこれなら視線が上を向くので「置かれる」にも納得できる。同じく2級。一走人さんはさくら。前句、「落」の字を使わずとも排水溝なので落ちた花びらだと理解できる。シンプル。後句も和語「さくら」が柔らかく効果的。1級。幸さんは二葉。前後句ともに生命の存在感を強く感じる。同じく1級。

今月の正解

無欠なる排水溝の椿かな
椿てふ色夕闇に置かれけり
 藍人さん、小木さん、妙さん、喜多輝女さん、誉茂子さん、越智空子さん、あいむ李景さん。前句傷も汚れもない一輪の椿を思い浮かべることができる。後句は、今パレットから画布に置いたような鮮烈な紅が夕闇に感じられる。初段。


解答募集中!
次の(  )の中に共通する春の季語を入れてください。

海の色美し(  )のガスタンク
(  )や三葉虫の被食痕

2月20日締切 結果は4月号に掲載


マイマイ
2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人だったが、最近は?? 第1回、第4回百年俳句賞(旧大人コン)優秀賞受賞。2013年句集シングル『翼竜系統樹』上梓。将棋推定初段。棋友募集中。宇宙と生命を題材に詠んだ句集『宇宙開闢以降』マルコボ オンラインショップにて発売中。


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100年投句計画 投句方法



雑詠俳句計画 または へたうま仙人
自由律俳句計画
詰め俳句計画

 「雑詠俳句計画」と「へたうま仙人」は、どちらか片方にのみ投句できます。なお「雑詠俳句計画」では、寄せられた投句を一括して、各選者が選句します。各選者に宛てて個別の投句を行うものではありません。


4月号掲載分締切 2月20日(月)

投句方法

 投句先コーナー名
 俳号(無ければ本名の名前のみ)
 本名
 電話番号
 住所

 以上の必要事項を書き添えて、編集室「100年投句計画」係までお寄せください。メールの場合は、件名を「100年投句計画」としてください。
 各コーナーそれぞれ2句まで投句できます。また、「詰め俳句計画」は季語1つのみを投稿できます。
 各コーナーの投句は、ひとつにまとめて送っていただいても構いません。

メール宛先
magazine@marukobo.com

投稿専用ページ
http://marukobo.com/toukou/

※ハガキ FAXの宛先は本誌の裏表紙を参照してください。

さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(「俳句ポスト365」のページ参照)


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短歌の窓


短歌投稿ページ
選者 短歌誌『未来』同人 渡部光一郎


特選

才能とかんたんに言ふそのあとで「ごはん食べよ」とすこやかに言ふ  鈴木牛後
 誰かが、何か意味深なひとことのあとで、何事も無かったように普通のことを「すこやかに」言った。複雑な心境である。


並選

死んでゐるやうに眠つてゐる人を観察しては記録する夜  岡田一実
 おそらく実景を詠まれたのだろう。面白い観点かと。「死んでゐるやうに眠つてゐる」という決まり文句がここでは活きた。

大掃除出来ぬ弁解ばかりして困りはせぬが片付かぬ部屋  青柘榴
 ああ、同感の情しきりであります。きちんとした定型が気持ちいい歌。

真夜中の蛇口小さくこぼと鳴り潜めて我もこぽと応える  時計子
 「潜めて」がわずかな疵だと思うが、こういう経験は誰も割とあるのでは。あくまでも小さい音であるところに詩性がある。


コメント

樽職人腕を振るひて仕上げたり遥に望む富士を閉じ込め  桂奈
 材はもちろん富嶽三十六景の名作。一読、富士を「閉じ込め」ている気はしないなあと評者は思ったけれど、そこは作者の感じ方しだい。

仲人の言ひし一言父不在好きで死んだんじゃない開戦日  だりあ
 どうも余計なひと言を加えてしまった仲人。たいてい、傷つけられた方だけが覚えているものである。

中華蕎麦餃子焼飯老いたりといへどピンクのスニーカー履き  夜市
 説明不足。ピンクのスニーカーというところは面白い。

ハイビスカス昔大戦ありし島三線の音どこからか聞こゆ  ケンケン
 少し絵葉書のようになったようではある。もう少し個の意志が見えてもよい。

ショートケーキ二つを買ってクリスマス風の重さを抱きて帰る  風
 実感なのかもしれないが、「風の重さ」がわかりにくい。もう一工夫を。

吹き抜けのリビングに鳴る黒電話黄泉の国より母の声する  柝の音
 黒電話にかかってきた電話が、あの世の母からのように聞こえたということだろうか。このとき起きた感情が正か負か、分かりづらい。

夫に吐く暴言ぐっと呑み込んで今日は何回笑顔にかえた  ミセスコナン
 家庭を壊すのは簡単だが、続けるのは大変。笑顔に変えたお力がすばらしい。

悔しさの歯軋り父を抱いては優しくしたい息子になれぬ  豊原清明
 主体がちょっと分からない。もう少し整理を。


 短歌は古来、相聞歌・挽歌に名作が多いですが、そのほかのどんな題材を選んで詠んでも何の問題もありません。詠み手しだいです。ただ、何を伝えたいのかだけは、はっきりさせておいた方が打率は上がると思います。


自作の短歌(2首まで)を下記までお送り下さい。締切は毎月20日。
専用フォーム http://marukobo.com/tanka/
専用Email tanka@marukobo.com


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自作の俳句を英語に訳そう!

百人百様 E-haiku



評:菅紀子


 最近感じるのですが、このコラムでは自句を英訳する作業を目的としているので、多少説明的にならざるを得ないかもしれません。はじめから英語で考え英語で創作した俳句には、もっと字数も少なく最低限の単語で鑑賞者に思索を促すものがあります。

1.
winter of stone
little boy my eyes?
flash little boy,my father

【原句】冬の石僕を見つめて光るかな  KIYOAKI FILM

a stone in winter
shines, gazing
at me

 とりあえず原句にほぼ忠実に訳し直しました。(紀)


2.
Cold man Cold girl
touch in hot hip me me
return boy return girl cloud

【原句】寒鴉あの子の尻を掴みたし  KIYOAKI FILM

a winter crow,
an urge to grab
her bottoms

 尻という単語のごく一部です。
backside〈話〉behind〈話〉blind cheeks boff〈米俗〉boody〈米卑俗〉bootie〈米俗〉booty〈米俗〉bottie〔【略】bot〕 bottom〈話〉botty〔【略】bot〕bum〈英・卑俗〉bum-bum〈俗〉buns〈米俗〉butt〈米話〉buttock〔通例buttocks〕
 英語圏の人もお尻が気になると見えます。ネイティヴではないので、どの語がニュアンスに合うのか測り難いです。さらにこういう句の場合、上の句の冬鴉と下の句との関連性も測り難いです。(紀)

【お便り】難しかった……今、中一の英語参考書、折を見てやってますが毎日やらないと、あかんですね。一度、一時間かけて勉強しました。ちっとも覚えてない。次々やるのと、少しずつやるのでは、少しずつやった方が好いですよね。高校時代、テストのための勉強だったので、午前中してましたが、何も学力つきませんでした。(KIYOAKI FILM)


3.
wait for spring
fish sausage
is spring pink

【原句】待春の魚肉ソーセージのピンク  片野瑞木

waiting for the spring,
fish paste sausage
whose pink color

 英語圏に魚肉ソーセージがどんなものかすぐわかってもらえるかどうか、疑問です。
 その安っぽいピンク色に春を触発される気分もわかってもらえるでしょうか。(紀)


4.
ideal is something
like a spring cabbage
grow up loosely

【原句】理想像とはスカスカの春キャベツ  片野瑞木

ideal image,
a head of spring cabbage
large but light

 キャベツはheadという単位で数えます。具体的にはその玉が大きいのだけど軽いわけです。スカスカをどう表現すればいいでしょう。ゆるく育ったgrown looselyという気持ちもわかります。(紀)


5.
Get a one-way ticket
Going to the sea of fog in winter

【原句】片道の切符海には冬の霧  ほろよい

one-way ticket,
winter fog
over the sea

 片道切符を手に入れてから海にやってくるまでの移動の時間差を込められたらと考えましたがカンマを入れるくらいに留めました。説明が過ぎると俳味が薄れますから。(紀)


6.
whistling out of tune
Spring is near at hand

【原句】口笛の調子はづれや春隣  久我恒子

whistling
out of tune,
spring at the corner

 春を告げるかに思えた口笛、ただし音程が外れているではないですか……でもそれが余計に春の訪れの気配を感じさせますね。ウグイスの練習も彷彿とさせますがヒトの成長も重ね合わせているのでしょうか。切れ字があるのでカンマで代用しました。at the cornerはすぐそこの角まで、間近に、という意味です。  (紀)


7.
throughout the world
the horizon tinged with deep blue-
the air auspicious

【原句】あをあをと淑気分け合ふ地平かな  久我恒子

the auspicious blue
shares the atmosphere
with the horizon

 夜が明ける前の壮大な情景が目に浮かびます。原句の主語と述語の関係を考えていると混乱してきてとても難しかったです。(紀)


8.
a modest mystery
in the life
the fireplace burns

【原句】人生にささやかな謎暖炉燃ゆ  彩楓

a modest mystery of life,
flame flickering
in the fireplace

 英語の原句だと暖炉が火事になってる。(紀)


9.
while waiking
take off a muffler
color of the see

【原句】 歩きつつ外すマフラー海の色  彩楓

taking off
my muffler promenading
the color of the sea

 マフラーを外す行為にスローモーションをかけて焦点を当てたいと感じたので動詞を発句に置いてみました。散歩する、連れて歩く、という単語にpromenadeがあります。名詞として使うとpromenade by the seaで海辺の散歩(道)。日本語でもプロムナードという名称を使ったりしています。(紀)


10.
the tulip
that petals are
powerful drug

【原句】花びらが劇薬であるチューリップ  チャンヒ

tulip
whose petals
a potent poison

 特定のチューリップなら定冠詞のtheを、その花びらがということで関係代名詞の所有格whose、劇薬には不定冠詞のaをつけます。薬などが強いことを表すpotent、そしてpetal, potent, poisonとpを重ねて楽しんでみるのもよいかも。(紀)


11.
such as the ribbon
of the Saint Valentine's Day
tell a lie

【原句】愛の日のリボンみたいな嘘をつく  チャンヒ

telling a lie
like the ribbon
of the Saint Valentine’s Day present

 チャンヒさんの句ではちょっとニヒルな憎い演出がよくなされますね。奈良美智の上目遣いの女の子の絵を思い出しました。(紀)


菅 紀子(かんのりこ)
(有)クラパムコモンカンパニー代表。通 翻訳、メディアによる姉妹都市交流コーディネーター。社名は夏目漱石が下宿したロンドンの地名から。歩道短歌会同人。人文学修士、翻訳修士。松山大学、愛媛大学非常勤講師。(Hailstone Haiku Circle blog ICEBOX Contributor)(漱石と彼のライバル重見周吉、日系移民研究)

応募内容 自作の俳句およびそれを英語俳句にしたもの(2句まで)

応募先
フォーム http://marukobo.com/eigo/
Email eigo@marukobo.com

4月号掲載分締切 2月20日(月)


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百年歳時記


夏井いつき

第44回


 有名俳人の一句を紹介するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月紹介鑑賞していきます。


行列の最後も毛布もらえるか  彩お茶子

 幾つかの大震災を経験し、暖をとるための一枚の「毛布」が生き死にを決定する事実に、私たち現代人は改めておののきました。「行列の最後」に並ぶのは作者自身か、はたまた「最後」の人物を見つめているのか。のろのろと進みつつ短くなっていく列。はるか前方に堆く積まれていた毛布の山はどんどん低くなっていきます。列と山とを見比べながら、この呟きは次第に切迫感を持ち始めます。
 すでに毛布をもらった人たちは、避難所のあちらこちらに我が場所を作り始めている。ため息と不安と焦りが渦巻きつつ、読み手である私たちは「毛布」がもらえる瞬間の安堵を思い、「毛布」が足りないと分かる瞬間の落胆を思うのです。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』12月23日掲載分)


雲中から来て亀の尻打つ霙かな  蓼虫

 「雲中から来て」何が来るのか?「亀の尻打つ」え?っと思ったとたんに出てくる「霙かな」の詠嘆。上五「雲中から来て」と字余りで読み、中七下五で七五を取り戻す調べも飄々とした味わいです。
 一読した時は、「霙」ではなく「霰」のほうが佳いのではないか?と迷いもしたのですが、「亀の尻」に当たったとたんビチュと崩れる「霙」のほうが生々しくて面白いなと思い直しました。
 「雲中から落ち」ではなく「雲中から来て」という動詞の選択により、あくまでも作者の視線は「亀の尻」の側にあって、まさに「雲中」から落ちてきた「霙」が「亀の尻」に当たる瞬間を眺めていることが分かります。実に絶妙な玄人好みの一句です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』1月13日放送分)


名残の空春日神社の火の当番  長緒 連
名残の空徳利の数の榊摘む

 季語「名残の空」とは、ゆく年を惜しむ名残つきない空の意。元々は和歌で使われていた言葉で、恋や別れの思いを抱いて眺める空を表しましたが、転じて俳句では大晦日の空の意となりました。
 大晦日の「春日神社」、境内には「火の当番」をする人がおり、その傍らでは竹箒をもった若い祢≠スちが参道を掃き清めています。社の中では「榊」を挿してお供えする「徳利」の準備が始まり、その「徳利の数」だけの「榊」を「摘む」人もいる。祢≠フ水色の袴、巫女の赤い袴がひらりひらりと勤しむさまも見えてきます。
 この難しい季語を表現するために、神社の光景を丁寧に切り取り、誠実に描写していく姿勢にも感銘を受けた二句です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』12月30日放送分)


旅人の汗にしなっている切符  高橋凜太朗
地下道の匂いを蝉と食っている

 作品四十句「あと一歩」から。前句「旅人」とは自分自身を客観視した言葉でしょうか。「旅人」とはその地における一種の異邦人。ささやかな興奮と緊張をもって握っていた「切符」が、「旅人」としての己の「汗」に「しなっている」ことに気付く。最後に出現する「切符」が臨場感をもって季語「汗」を表現します。
 後句「地下道」という場所から始まる一句は、「地下道の匂い」で嗅覚へと展開します。面白いのはその後「蝉と食っている」という独特の感覚です。「地下道」へと降りていく階段。ひんやりと湿った「匂い」、背後には炎天の空、追いかけてくる「蝉」の声。下五「食っている」によって季語「蝉」の強かな生命力も描かれます。
(『夏休み句集を作ろう!コンテスト』中学生の部最優秀賞)


花散るや夜の砂場に山と谷  滝下真央
塩鮭にさしこむ箸の深きこと

 作品四十句「小鳥来る」から。「花散るや」明るいひかりを発しながら散っていく桜の花びらから始まる一句は、中七にて一転「夜」の光景となります。場面は「砂場」。月のひかりによって生まれる「砂場」の起伏。「山と谷」と表現された美しい陰影へと、桜の花びらは一つまたひとつと散っていくのです。
 後句は随分と趣きが変わります。目の前にあるのは一切れの「塩鮭」。「箸」をさしこむと、思わずも「箸」が深く入ったと、只それだけのことです。しかしながら、この一句を読むだけで読者の脳裏には、分厚く柔らかく焼き上げられた一切れの「塩鮭」がうかんできます。描写力とは、まさにこのような句をいうのです。
(『夏休み句集を作ろう!コンテスト』中学生の部優秀賞)


百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/)などに投句された俳句を紹介します。


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俳句の街 まつやま

俳句ポスト365



協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


金曜日優秀句
平成28年12月度

風邪(かぜ)


風邪の熱吸うて重たき夜着の花  とおと
市民の風邪蔓延る市民窓口課  めいおう星
風邪引きのるつぼの中や薬待つ  あすなろ
喉彦の奥は真っ暗風邪宿る  いもがらぼくと
赤黒き風邪の臭ひの沈む部屋  クズウジュンイチ
風邪の子にむつかしい物たのまれぬ  くらげを
風邪の儘三日過ぎたるソウルかな  三重丸
風邪の子の寝付くや北の大陸も  Y音絵
立ち位置と風邪こじらせて金曜日  ぐわ
四谷「蜜」のママ風邪声の早じまい  ララ点子
外国で人が死んだ、風邪が辛い  光
味しないメロン食して風邪の馬鹿  渡邉康之


風邪喰うて我百貫の無用者  93sのプッコラ


毛布(もうふ)


避難所を花野めきたる毛布かな  くらげを
シベリア上空軽き毛布とシャンパンと  雪うさぎ
洗礼の王女をくるむ毛布かな  朶美子
毛布掛け歌ふアイヌの星を火を  佐藤直哉
泣き虫な毛布をなだめしづかな丘  とおと
わたくしを発酵させる毛布は黄  中原久遠
いつのまに爪は毛布と睦みあふ  Y音絵
薔薇の毛布や佳き死へと転院す  土井探花
つまはいまよもつひらさか毛布抱く  くさぐき
泥濘の毛布や踏めば泥を吐く  大西主計
毛布毛布わたし猿人だった頃  カリメロ
ミランダと名付けた毛布離せない  野純


行列の最後も毛布もらえるか  彩お茶子


2月の兼題
公式サイト内の「俳句投稿」より作品をお寄せください。(※投句期間を過ぎますと投稿ページは次の兼題の募集に自動的に切り替わります。ご投稿はお早めに。)

投句期間 1月26日〜2月8日
蕨狩(わらびがり)仲春/人事
蕨は、春を告げる山菜として代表的なものだが、それを行楽として摘みに野山に出かけることをいう。

投句期間 2月9日〜2月22日
渡り漁夫(わたりぎょふ)仲春/人事
仕事を求めて渡り歩く漁夫のことで、主に春の鰊漁に従って出稼ぎに北海道に渡った東北地方の農民をいう。かつては、群れをなして押し寄せていた鰊の漁のために漁夫が集められ活況を呈した。

参考文献 『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


 「俳句ポスト365」は携帯電話からもご参加いただけます。
 「俳句ポスト365」公式Facebookページ開設中! 公式サイトに設置しておりますリンクよりお入りください。毎回の兼題のお知らせを中心にお伝えしながら、皆様の返信欄への書き込みもお待ちしております。


 募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。


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一句一遊情報局



協力: 南海放送


金曜日優秀句
平成28年12月度


冬の泉(ふゆのいずみ)

首伸べて冬の泉に入れる嘴  樫の木
日輪や冬の泉に魚群澄む  マイマイ
冬の泉真珠の生まれ出でさうな  小田寺登女
手に触れし冬の泉を火と思ふ  石川焦点
庶子笑まふ冬の泉の洗礼に  中原久遠
星のこどもは冬の泉にねむります  緑の手
冬の泉に龍骨の杖眠る  天玲
口承は遠野の冬の泉かな  よしの


まだ人を冬の泉は知らざりき  笑松


ざざ虫(ざざむし)

ざざ虫のざざと這ふかと思へばささ  鈴木牛後
馬草匂うざざ虫を食む月の村  出楽久眞
ざざ虫漁石の音に伊那晴れわたる  月の道
鑑札買うてざざ虫踏みの日の晩酌  ポメロ親父
これはカワゲラだなとざざ虫を食う  ポメロ親父
草の匂い吐きてざざ虫煮られけり  七草
ざざ虫に腸の苦みと枯葉の香  トポル
美味いですかこれはざざ虫と言いまして  雪うさぎ
ざざ虫食わぬヤツにお父さんだなんて筋合いなど  まぴこ
ざざ虫を噛むや胎児のよく動く  マーペー
ざざ虫の蓋閉じてメキシコに壁  まどん
売人のやうだざざ虫手に入れて  矢野リンド


ざざ虫ほど清らかな食い物を知らぬ  越智空子




木の実降りやまず太古の森の水底へ  ひかるん
森の木のじゅえきはくろいふゆのはち  たくみ三才
風邪の児に森の仔りすの物語  あるきしちはる
手袋の落ちていそうな森である  かま猫
梟や我迷う子育ての森  えるも
セーターとノルウェイの森借りたまま  江口小春
年木樵華僑に森を売る話  石川焦点
冬枯の森に一筋ひかりごけ  小市
森番の話は尽きず終日雪  紫水晶
森番へ寒鴉の告ぐる獣の死  樫の木


森はしじまに冷たく胞子太らせる  天玲


飯櫃入(おはちいれ)

米甘し源爺作の飯櫃入  都乃あざみ
飯櫃入ずらりお伊勢の大旅籠  このはる紗耶
先代の暖簾と飯櫃入を継ぐ  徹子
飯櫃入兄より遅き乳離れ  ロッチ
兄弟子が帰らぬ暮れの飯櫃入  塩胡椒子
夜稽古の男衆待てり飯櫃入  宵嵐
順風寮第三班の飯櫃入  瑞木
飯櫃入仏仕えの足白し  ターナー島
雪で手を洗って開ける飯櫃入  鈴木牛後
飯櫃入太宰の席はこのあたり  風


飯櫃入藁青々と嫁の来る  ちろりん


名残の空(なごりのそら)

漁師老い名残の空を眩しみぬ  ターナー島
二十年名残の空を長靴で  妹のりこ
百キロの肉売りつくし名残の空  静泉
集金終え名残の空は星ばかり  甘泉
名残の空大鍋の昆布ひらきゆく  よしの
ととのえて名残の空へ合掌す  唐平
浅草の名残の空の覗色  中原久遠
名残の空信号の黄も美しき  まどん
名残の空シャガールの馬現れさう  もも
白鳥の鎮もる首や名残空  きとうじん


名残の空春日神社の火の当番  長緒 連
名残の空徳利の数の榊摘む  長緒 連


投句募集中の兼題

投句締切 1月29日


季語ではない兼題です。「周」という字が詠み込まれていれば、読み方・用い方は問いません。季語は当季を原則として自由に選んでください。

駒返る草(こまがえるくさ)初春/植物
春の訪れとともに、枯れたかに見えていた古草が青々と萌えだしてくることをいう。


投句締切 2月12日

雲雀笛(ひばりぶえ)三春/人事
篠竹や土器製の笛で、雲雀を捕るための狩猟用と、雲雀の囀るような音を出す玩具の両方があったという。

海猫渡る(ごめわたる)仲春/動物
カモメ科の海猫(夏季)が、3月頃、繁殖のために南方の越冬地から日本近海の島などに渡ってくる。


投句締切 2月26日


季語ではない兼題です。「走」という字が詠み込まれていれば、読み方・用い方は問いません。季語は当季を原則として自由に選んでください。

春の匂(はるのにおい)三春/天文
長い冬が終わり、春の気配が満ちてくるさまをいう。
く。

参考文献『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句宛先
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとにしたものです。俳句ならびに俳号が実際とは異なっている場合がありますのでご了承ください。


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今回のお題句に対する投句から次のお題句を選び繋げてゆく

疑似俳句対局


選者 美杉しげり

 インターネットを利用しての「擬似俳句対局」
という初めての試み。俳句対局の楽しさを少しでもお伝えできたらと思っています。


今回のお題句

月冴えて心の鬼を解き放つ  越智空子
 年末の多忙な時期ということもあってか、今回の投句はやや少なめでした。そんな中でも、いろいろな趣向の句が届いて楽しませていただきました。感謝。


候補句

Xの解を求めよ寅彦忌  ひでやん
 今月の投句一番のり。「解き放つ」から「Xの解」への展開が面白いですね。寅彦忌は十二月三十一日。物理学者である彼と「Xの解を求めよ」の措辞はまさにぴったり……ですが、逆に「つきすぎ」と取られるかもしれません。
 同作者の「凍星よりモスクワ放送入りけり」の発想も詩的で素敵。必ずしもモスクワでなくてもいいかな、とは思いましたけれど。

鐘朧いま半眼の天邪鬼  久我恒子
 天邪鬼というと、四天王などに踏みつけられている小鬼をまず連想します。苦しくて顔をしかめている表情が浮かびます。……が、それだといかにも「鐘朧」の世界の同心円内という気がします。「あまのじゃく」なんて陰で呼ばれている、ちょっとつむじ曲がりな男性を指しているのかもしれません。鐘の音も朧に聞こえる春夜、彼の顔もいつになく穏やかそうに見えて……。
 同作者の「点心の白やはらかや冬の月」も好きでした。言われてみると、点心料理って白っぽいものが多いですね。柔らかな白が、いかにもふっくらと美味しそう。同じく「放埓の旅のしづかや白魚鍋」「涅槃会や方程式に解ひとつ」も手堅いですね。

心音は遠き故郷や冬銀河  凡鑽
 「心音は遠き故郷」の解釈は、人によって分かれそうですね。銀河が冴え冴えと美しい、しーんと静かな冬の夜。聞こえるはずのない己の心音が聞こえたようで、ふっと耳をすます。その音はいつしか幼い頃の記憶へと続き、やがて遠く離れた故郷への思いにしみじみと包まれるといった句かと私は読みました。

節分や鬼にされたり牧師さん  小市
 可笑しい。節分という行事には縁のないはずの牧師さんですが、人の良い優しい方なのでしょうね。にこにこと笑いながら鬼の面をかぶっていそう。
 句友の住職さんに「クリスマスとか関係ないんでしょう?」とお聞きしたら「いや、子供はやっぱりクリスマス楽しみにしてますから、プレゼントも用意します」とおっしゃってたことを思い出しました。
 「節分や」と「や」で上五が切れていますから「鬼にされたる牧師さん」としたほうが句の姿が整うでしょうね。

正月の凧や鬼子母神の参道へ  恋衣
 「凧」は本来春の季語ですが、一般的な感覚としては「お正月の遊び」でしょうね。
 鬼子母神というと「恐れ入谷の鬼子母神」の真源寺などを連想しますが、そういう有名なお寺ではなく、地元の人が訪れる小さなお寺のような気がします。いつもはひっそりとしている参道も、さすがに今日は初詣に訪れた人で賑わっているそこへばさりと落ちた凧。驚いたり面白がったりしている参拝の人たちの声が聞こえてきそうです。


次回お題句

ふらここや涙の訳は解けぬまま  松尾千波矢
 少し甘い句ですが、早い投句による加点?と、春(二十四節季の立春)も近いことだし……ということで選ばせていただきました。
 ぶらんこを漕ぎながら泣いているのは、幼い子供か、思春期の少女か。それとも、こらえきれぬ泪を拭う大人か。哀しみの涙か、悔し泣きか、あるいは嬉し涙か。それは「解けぬまま」読み手にゆだねられます。私は、黒澤明監督の映画『生きる』のような、初老の男性の泪を思いました。家族や友人に知られない、見せない泪。
 同じ作者の「巡査押す放置自転車春疾風」は、ほぼ漢字だけで景を詠もうと試みた作。ふらここの句とまったく違う、ぶっきらぼうなくらいの表現がいいですね。

というわけで、今年もよろしくお願いいたします。
次回もまた意欲作、お待ちしております。


美杉しげり
 第8回俳句界賞受賞。4年ほど前から小説も書き始め、短編「瑠璃」で第21回やまなし文学賞佳作。美杉しげりはその時からのペンネーム。

毎月25日頃に、投句フォームにてお題句を発表します。投句締切は毎月末日。

疑似俳句対局投句フォームアドレス
http://marukobo.com/taikyoku/


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鑑(み)るという冒険


〜映画篇 演劇篇〜

文&俳句 猫正宗


第五十二回
「懐かしの名画劇場」&『遭難、』

 蛇頭さんの勤める松山市総合福祉センターで年に一度開催される「懐かしの名画劇場」。十周年を迎えたこの催しは、文化庁と東京国立近代美術館フィルムセンターが手掛ける「優秀映画鑑賞推進事業」(広く国民への優れた映画の鑑賞とともに映画保存の理解を目的に、各地の文化施設と連携・協力して、所蔵フィルムを全国の会場で巡回上映する)を活用。(詳しくは書けませんが)非常に安価な料金で、四本もの映画が観られるというお得な企画。今年は「成瀬映画の女性たち」と銘打ち、成瀬巳喜男監督の作品『めし』『おかあさん』『流れる』『乱れ雲』の四本。加えて、共同通信社編集委員の立花珠樹さんの記念講演もあるという大盤振る舞い('16年12月10日)。
 昔の映画を観ると思うのが、登場人物が随分大人であること。なのですが、今回観た作品の多くで、若者たちが明らかに幼く描かれていたのが面白かったです。戦中派の大人たちには、戦後青春を謳歌する?若者たちはそんな風に見えたのでしょうか。
 さて、この催しに来ていつも思うのは、観客の九割方が人生の大先輩であるご高齢の方であること。いや、わかるんですよ。これらの映画を「懐かし」いと感じるのはその世代の方々だし、一日がかりのイベントに参加できる余裕のある方もその年代の方に多いのでしょう。とは言え、各大学の映画研究会の方とか、映画ファンと称する方とかはどこに? 自分の好きな映画だけ観たい人。それって「映画」そのものが好きなわけじゃないよね。
 なんて偉そうに書いてる私も、毎年来れてるわけじゃないし、今回だって四本全部まるごとは観れませんでした。それでも、それでもなんですよ。くどいようですが、本当にお得なんです。一本観るだけでも十分元が取れる。それに映画を好きという人にだって、優れた映画の鑑賞と映画保存に対して、もしかして責任があるのじゃないかしら。

侘助の白しフィルムに雨が降る

 庶民や貧しい人、時代に流されていくような人々の生活や心情を、ユーモアを交えながら淡々と、繊細に描く成瀬作品とは異なり、愛媛大学医学部演劇部世界劇団第37回本公演『遭難、』(作:本谷有希子、演出:廣本奏、出演:高橋望、山口美帆、白戸七海、廣本奏、赤澤里、'16年12月10、11日、シアターねこ)は、過剰な設定、過激な表現、その接点で生まれる黒い笑い。それらで人が普段覆い隠しているものを暴きたてるような作品。
 「自殺未遂の生徒の母親が、生徒の相談の手紙を無視したからだと連日担任を責め立てる。騒動の中、担任をかばう模範的教師の素顔が暴かれていく。エゴのぶつかりあい、漂流していく人間関係。果たしてその着地点は」
 登場人物の中では、比較的普通な、落ち着いた人物を、奇矯な人物像を奇矯に演じる役者たちに引きずられることなく、また、強烈な脚本に飲み込まることなく演じていた役者に目をひかれた。それは本作の役故なのか、それとも他の役、他の演じ方をしたときもそうなのか、注目していきたいと思わせる役者さんであった。

輪形彷徨我という雪山に


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mhm通信


第71回

文 暇人

 1月8日に開催いたしました「第15回まる裏俳句甲子園」。昨年同様全国各地から参加していただき誠にありがとうございました。主催者として、mhmメンバー一同お礼を申し上げます。まる裏俳句甲子園当日の模様は次号お届けする予定です。お楽しみに。
 さて本題、今回は「まる裏俳句甲子園打ち上げ」の紆余曲折を。過去最高のエントリー(参加者)だった前回大会ですが、用意していた打ち上げ会場に対して参加希望者が多くなったことから一部の方にご迷惑をおかけする事態が発生しました。そのような事から今大会では当初「打ち上げ」は行わないところまで話を進めていました。しかし何度かの協議の結果、「打ち上げを企画するのもおもてなし」ということになり「打ち上げ」を行うことに。
 「打ち上げ」を行うに問題となったのが「会場」そして「値段」。頭を悩ませる中で探し出したのが、今回の打ち上げ会場となった、三代目若乃花がプロデュースしたという触れ込みの「若の台所」でした。(昨年オープンしたばっかり!)
 会場の下見と忘年会を兼ねて12月21日定例会終了後現地へ向かうことになりました。松山市駅前の最高の立地で、中に入ると百人ほどの人数にも対応出来るスペースがあり、席は掘りごたつ! あとは料理だけ。通常の居酒屋コースにある「刺身」のようなメニューはないけど「醤油ちゃんこ鍋」をはじめ飲んで騒ぐには十分な内容。値段は3500円飲み放題なのでお財布にも優しい。
 というわけで、今年も無事に打ち上がれました。

 mhmでは松山市内外問わず会員を募集中です。原則、毎月最終金曜日19時からマルコボ.コムにて定例会を行います。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局 mhm_info@e-mhm.comまで。


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岡田一実の句集の本棚


文 岡田一実


遊星
大木あまり 著

発行:ふらんす堂(2016年初版)
206ページ
定価 本体2,500円+税

 著者の第六句集。
花びらのかすめる枝に蝸牛
 桜の花びらの透いた色合いが枝の蝸牛をかすめていく。蝸牛の半分透いているような不思議な質感がイメージの中で合わさり、世界が半透明なものだけでできているような甘美な幻惑に陥る。
晴れわたる東京にゐて柏餅
須磨にしていざよふ雲や燕子花
木彫のごと本棚の枯蟷螂
蝶のごと生くるは難し火を使ふ
沸きし湯の水にもどるや昼の虫
春は曙枕を踏んで水飲みに
 後朝の景だろうか。起き上がる動作の生々しさが明けきらぬ朝のやや興が醒めた感じを引き出す。されど、「春は曙」。平安の世に清少納言が記したように美しい曙は変わらず広がり、情交を経た親しさもまた良いもののようにしみじみと感じられる。
蛸食べて悪い夢でも見ましたか
この本のヒーロー悪にして涼し
子猫はや身籠るまでに萩の雨
ひと鳴きの鳥それつきり近松忌
泳がんとして縞蛇の尾が貧相


青でなくブルー
蜂谷一人 著

発行:芹澤泰偉事務所(2016年初版)
192ページ
定価 本体3,000円+税

硯には蝌蚪千匹を放つ墨
 硯の墨の黒は蝌蚪を千匹放つためのものという。墨にさわさわと生命が宿るようなイメージをもたらす。
椋鳥やプラネタリウム出ても夜
ふらここに頂点ふたつ底ひとつ
まづこつと叩くマイクや薔薇を抱き
 授賞式だろうか。薔薇の花束を贈呈されて挨拶に移るそのちょっとした間を描くことで緊張した空気が伝わり、聴衆の視線を感じさせる。さまざまなドラマを思い起こさせる間である。
桃の日の回せば上がるピアノ椅子
むささびや夜へ夜へと動く木々
口論の眼鏡に映る暖炉の火
羽ばたいて白鳥といふ手話の指
鎧めく古城ホテルの扇風機
しやりよりも長き穴子や板に垂れ
ゐた筈の冬の金魚のゐない部屋
もう魚に戻る気のなき目刺かな
背の開くサマードレスの前が海
針金をまづ手なづけて菊師たち
門前を過ぎれば灯る寒夜かな
 第31回俳壇賞受賞作家の第一句集。チョコレートのような箱に入った瀟洒な装丁を芹澤泰偉。


岡田一実(おかだ かずみ)
 2014年「第三回 大人のための句集を作ろう!コンテスト」優秀賞受賞。2014年「浮力」にて現代俳句新人賞受賞。現代俳句協会会員。「いつき組」所属。「らん」同人。第二句集『境界 ―border―』(マルコボ.コム)。


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続 南極を詠もう!


No.9

一般研究観測担当隊員
源 泰拓(俳号 源笑)


 「100年俳句計画」読者のみなさま、こんにちは。第57次日本南極地域観測隊越冬隊員のみなもとです。
 12月は夏まっさかり。下旬には南極観測船「しらせ」が第58次隊員を乗せて到着しました。新鮮なトマト、キャベツなどをひさしぶりに頬張って、越冬生活もラストスパートです。

青空に布団晒して客を待つ  源笑
 もうすぐ昭和基地にやってくる58次隊のために、ヘリポートにシートを広げてふとんを干しました。このころは、松山市よりも昭和基地のほうが、お日さまは高くなります。たっぷりと日差しを浴びた布団はふかふかと気持ちよさそうでした。

真夜中の太陽へ立つ夏至なりき  源笑
 北半球では冬至、南極では夏至の午前0時過ぎに、お日さまを眺めに行きました。この日、一番太陽が低いときの高度は、角度にして3度弱です。空には薄雲が拡がっていました。

夏盛ん黒煙を吹くかえり船  源笑
 南極観測船「しらせ」は12月28日のお昼前に昭和基地に接岸しました。基地の主要部からディーゼルエンジンの黒煙が見えます。あとひと月あまりで越冬生活を終えて、この船で帰国の途につきます。

露天風呂湯気をくるんで初霞  源笑
 元日の夜に露天風呂がオープンしました。ずっと明るいのですが、うまいぐあいにかすみがかかってきました。昭和基地では正月2日から仕事が始まります。つかのまの休日に、58次隊の方々にも氷山を望む露天風呂を楽しんでもらえました。


今月の南極吟行句
希望峰 編


青空に布団晒して客を待つ  源笑
 この句を良くしているのは「晒して」です。布団の「無防備感」がよく表れています。普通の人は「干して」と書いてしまうところを、少しだけひねっているところが俳句だなあという感じがしてとても気持ちよかったです。源さんがおっしゃるように、この布団で寝たいですね! 写真も壮観です。こんなふうにたくさんの布団をがっつり広げてみたいですね。

真夜中の太陽へ立つ夏至なりき  源笑
 今の句では、「立つ」の主語が「夏至」となるので、そこが少しわかりにくいかもしれません。リズムがまだ整うかもしれませんが、「真夜中に夏至の太陽立ちにけり」など、どうでしょう。真夜中の太陽、という言葉が詩的ですが、なるほどこれぞ南極俳句だ、という気もします。

夏盛ん黒煙を吹くかえり船  源笑
 「黒煙」が「夏盛ん」とぴったり合っているようにも思え、少しイメージが近いかな……とも思いますが、勢いがあります。あとは、「かえり船」ですが、調べてみたところそういう歌もあるのですね。長い時間がたったなあ……と思わされました。お写真も、船が横向きなのがなんだか寂しいですね。

露天風呂湯気をくるんで初霞  源笑
 2日から仕事! サラリーマンより大変かもしれないですね。「くるんで」が初霞と湯気の関係を近くしすぎているかもしれませんが、初霞と湯気はありそうでないと思いました。

 読者の方からも俳句をいただいています。

日沈まぬ大雪原よ年明くる  南行ひかる
 「年明くる」という目出度さが、大雪原の「大」を支えているような気がします。「日沈まぬ」という見得を切った出だしも、懐の大きさを感じました。

しらせ発つ日よ白夜静かに広がりぬ  同
 なんだか、初めて観測隊の皆様の俳句を見せていただいたことを、この句を見て思いました。日本に夜が広がる一方で、白夜が広がる場所も世界にはあるという、当然だけど普段は意識しないことを思わせてくれます。


投句募集
南極の写真から発想した俳句を募集します。投句された俳句は、スウェーデンに留学した経験のある希望峰さんが紹介します。
俳句は専用の投句フォームにて受け付けます。
http://marukobo.com/antarctic/
投句締切 2月3日(金)。


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100年俳句計画 掲示板




テレビ ラジオ

NHK Eテレ
 『平成28年度 第18回NHK全国俳句大会』
2月11日(土)15時〜16時13分
 1月22日開催分。夏井いつきが選者のひとりとして参加しています。

NHK Eテレ『NHK俳句』
 日曜6時35分〜7時
 (再放送 水曜15時〜15時25分)
 夏井いつきが第3週選者を担当
2月19日(日)、再放送 22日(水)
募集兼題 「囀り」または「百千鳥」
投句締切 2月10日必着
 投稿は葉書1枚に1句。選者名、兼題、俳句1句、名前、年齢、電話番号明記。
 宛先 〒150ー8001 NHK「NHK俳句」係
 ホームページからの応募も可
http://www4.nhk.or.jp/nhkhaiku/

NHK Eテレ
 『第10回 俳句王国がゆく 石川県白山市』
2月19日(日)15時〜15時59分
 夏井いつきが主宰です。

NHK 総合テレビ(愛媛のみ)
 「えひめ おひるのたまご」内
 隔週火曜 『みんなで挑戦! MOVIE俳句』
2月14日(火)、28日(火) 11時40分〜

TBS系列局 全国ネット
 『プレバト!!』
毎週木曜 19時〜19時56分
 夏井いつきが俳句の査定を担当

南海放送
 松山市政広報番組
 『大好きまつやま しあわせことば塾』
毎週火曜 20時54分〜21時
(再放送 日曜11時40分〜11時45分)
 夏井いつきが塾長として出演

南海放送ラジオ
 『夏井いつきの一句一遊』
毎週月〜金曜 10時〜10時10分
  「一句一遊情報局」のページ参照

FMラジオバリバリ
 『俳句チャンネル』
毎週月曜 17時15分〜17時30分
(再放送 火曜7時15分〜7時30分)
投句募集兼題
「石蓴(あおさ) 伊予柑」2月12日締切
「春 彼岸河豚」2月26日締切
 WEB http://www.baribari789.com/
 mail radio@baribari789.com
 FAX 0898(33)0789
  投句には本名 住所をお忘れなく!
  各兼題「天」の句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。

 各番組の放送予定は変更される場合がございます。新聞などで最新情報をご確認ください。


執筆

松山市の俳句サイト
 『俳句ポスト365』
http://haikutown.jp/post/
 「俳句ポスト365」のページ参照

テレビ大阪俳句クラブ
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」(夏井いつき選)
  毎週日曜タブロイド判8ページ
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。
 裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。
 朝日新聞松山総局(〒790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。

愛媛県《吟行ナビえひめ》句&写真
俳句選者 夏井いつき
写真選者 キム チャンヒ
 募集期間 毎月1日〜25日頃締切
 応募先
http://www.iyokannet.jp/ginkou/
 問合せ 愛媛県観光物産課
電話 089(912)2491


イベント・講演等

御荘中学校句会ライブ
2月2日(木)14時〜16時
 愛南町立御荘中学校(愛媛県)
 生徒 教職員対象。
問合先 御荘中学校 
電話 0895(72)0231

中川小学校句会ライブ
2月3日(金)13時30分〜15時30分
 西予市立中川小学校(愛媛県)
 児童 保護者対象。
問合先 中川小学校
電話 0894(62)0357

平成28年度 いなべ市民大学講座 夏井いつきの句会ライブ
2月12日(日)13時30分〜15時
 員弁コミュニティプラザ(三重県)
問合先 いなべ市教育委員会生涯学習課 
電話 0594(78)3521
 参加申込受付は終了しています。

平成28年度 四国ブロック児童養護施設職員研修会 夏井いつきの句会ライブ
2月16日(木)10時〜12時
 国際ホテル松山(愛媛県)
問合先 愛媛児童福祉施設連合会事務局 
電話 089(921)8384

石井地区まちづくり句会ライブ
2月17日(金)13時30分〜
 松山市立石井小学校(愛媛県)
 5、6年生と地域住民対象。
問合先 石井地区まちづくり協議会(松山市役所石井支所内)
電話 089(904)4939

市原市文化振興財団主催 夏井いつき句会ライブ
2月18日(土)14時30分〜
 市原市市民会館 小ホール(千葉県)
 入場料 500円(未就学児童入場不可)
問合先 市原市市民会館
電話 0436(22)7111

龍ヶ崎市文化講演会 夏井いつきの句会ライブ
2月19日(木)13時30分〜
 龍ヶ崎市文化会館 小ホール(茨城県)
問合先 龍ヶ崎市立中央図書館 
電話 0297(64)2202

NHK文化センター 青山教室 夏井いつきの句会ライブ
2月20日(月)14時〜
 NHK文化センター 青山教室(東京都)
問合先 NHK文化センター 青山教室
電話 03(3475)1151

国際ソロプチミスト今治
「第11回 俳句キッズわくわくコンテスト」表彰式
2月25日(土)13時30分〜
 今治市市民会館 2階大会議室(愛媛県)
問合先 国際ソロプチミスト今治事務局
電話 0898(47)4027


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魚のアブク



読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは他の投稿に添えてお寄せください。


ひさの 忘年会楽しかったです。一句一遊の有名人に生でお会いできて興奮しました。新しい年も昨年以上に俳句を愉しみたいと思います。よろしくお願いします。

南亭骨太 今年も押し迫りました。色々とお世話になり無事に一年を過ごすことが出来ました。あいも変わらず上達しない俳句ですが日々楽しく過ごす力を頂いているような気がします。来年も宜しくお願い申し上げます。

みやこまる 一年間お世話になりました。新しい年が皆様にとって素晴らしい一年となりますようお祈り申し上げます。

喜多輝女 あっと言う間に一年が過ぎてしまいました。また一年、ボツリボツリとマイペースでがんばります。継続は力なり! よろしくお願い申し上げます。

編集室 年末の投稿締切に、新年へ向けてのご挨拶を沢山いただきました。今年も宜しくお願いします。

元旦 いつもギリギリ投句ですみません。平凡な発想しかできない自分です。いつもKIYOAKI FILMさんのぶっ飛んだ句には驚かされます。詠んだ自分自身でもハッとするような句がつくりたいですね。


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鮎の友釣り


第223回


俳号 きとうじん

前回 西条の針屋さんへ デカイのを釣り上げて頂きまして光栄です。自分にはない誠実オーラ満載の針屋さん、お仕事ぶりも想像でき商売繁盛間違いなし!

近況 脱サラして十年目の春がやって来ました。お蔭様で俳句にゴルフに飲み会と毎日が充実しています。御先祖様と平和に感謝!

次回 だりあさんへ 今治三日月句会から始まり、今では愛媛藍生でも大変お世話になってる大先輩です。いつお会いしても明るい太陽のようなお方です!


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告知




春夏秋冬(しき)笑顔まつやま俳句五七五

福祉をテーマにした
冬の五七五募集

年4回、福祉をテーマにした五七五を募集します。
人に優しくなれるような五七五をお待ちしています。
(第4回 1月31日締切)


応募方法
「春夏秋冬笑顔まつやま福祉575」係 宛に、ハガキまたはFAX、または、インターネットの応募フォームにて応募して下さい。

送り先
790-0808 松山市若草町8番地2 松山市総合福祉センター
 社会福祉法人松山市社会福祉協議会 総務部 施設管理課
FAX番号:089(941)4408 
専用フォーム http://www.marukobo.com/egao/

賞品「松山トリコ」
大賞 (松山市社協会長賞) 道後温泉湯玉トートバック(1点)
優秀賞 ブックカバー(3点)
入賞 紙の湯カードケース(4点)

発表 ハイクライフマガジン『100年俳句計画』3月号(予定)ほか

主催 松山市社会福祉協議会
   有限会社マルコボ.コム(ふくし句会 ハイクライフマガジン『100年俳句計画』)選句
協賛 東亜ホーム株式会社 社会福祉協議会賛助会員




2月12日(日)
愛媛マラソン吟行会

 今年も愛媛マラソン吟行会を行います。今年は松山市総合福祉センターにて壮行会を行います。
 多数の参加お待ちしています。

壮行会
当日午前8時15分
松山市総合福祉センター集合

主な応援ポイント
(1)平田交差点付近
(2)パルティフジ夏目店前
(3)ゴール地点(堀之内)
 各応援ポイントでは句会旗・手旗などで、応援します。
 移動方法・防寒対策など各自宜しくお願いします。

100年俳句計画マラソン部 参加フォーム(ランナー&応援)
http://marukobo.com/marathon/
 当日の情報は、100年俳句計画Facebookページにて、随時お伝えします。どなたでもコメントを書き込めますので、会場に来られない方の投稿もお待ちしております。




協会けんぽ愛媛支部
健幸(けんこう)俳句大賞

「健康」をテーマに俳句作品を募集 3/31締切

 平成29年は、正岡子規 夏目漱石生誕150周年にあたります。そこで、協会けんぽ愛媛支部では地域の文化に根差した「俳句イベント」を開催します。
 俳句の選考には、地元の俳人夏井いつき氏が参加し、皆様よりいただいた句から優秀なものを選句 選評していただきます。もちろん、優秀句に選ばれた作品には素敵な賞品が贈られますので、ぜひ、皆様こぞってご参加下さい!


募集要項

(1)募集テーマ  「健康」をテーマに俳句作品を募集します。
(2)募集期間  平成29年2月1日〜平成29年3月31日まで
(3)賞及び賞品  
 協会けんぽ愛媛支部長賞 1作品
   オムロン上腕血圧計
 優秀賞 4作品
   オムロン体重体組成計
   オムロン音波電動歯ブラシ
   オムロンクイックマッサージャー
   オムロン歩数計
 佳作 5作品
   レディ薬局共通商品券(2,000円分)
(4)応募資格  愛媛県在住の方であればどなたでもOK
(5)応募方法  愛媛支部のホームページより応募用紙をダウンロードしていただき、郵送によりご応募下さい。
(6)発表  入賞者 受賞作品について、平成29年5月10日に協会けんぽ愛媛支部ホームページ上で発表します。また、入賞者には事前に通知します。

 応募の際は必ず、協会けんぽ愛媛支部ホームページの健幸俳句大賞「募集要項」をご覧下さい。


後援 愛媛県 松山市 株式会社愛媛新聞社 南海放送株式会社
協賛 株式会社レディ薬局


詳しくは、協会けんぽ愛媛支部にお問い合わせ下さい
企画総務グループ 089-947-2100


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編集後記


キム チャンヒ

 「俳句なんて簡単」と言いながら子どもに俳句を教えるとき、心の中ではちょっと違うかも、と思ってしまう。
 確かに、本誌表紙の内側に記載しているように、「5音の季語+12音のフレーズ」さえ知っていれば、取りあえず一句は作れる。しかし、そこから一歩踏み出した表現をしようとした途端、575の短さや季語の認識の難しさを痛感するようになる。
 今回の特集は、10回目を迎えた「夏休み句集を作ろう!コンテスト」受賞作の紹介。受賞者それぞれのコメントから、小 中学生であっても大人と同じように葛藤をし、一句一句磨いてきたであろう姿が見えてくる。そして受賞作品に共通して、「自分らしい作品」が出来上がったという満足感が伝わってくる。
 40句の作品集を作ることは、マラソンを走り抜くのに近い。タイムを競うだけではなく、それぞれのランナーがそれぞれの目標でゴールを目指す。
 勝敗が付くことは、人にやる気を起こさせることでもある。しかし、それだけでは無いところで、このコンテストに挑んでいる子ども達の姿を清々しく思う。


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次号予告


232号 3月1日発行予定

第15回 まる裏俳句甲子園!


お得で便利なマルコボ.コム直販定期購読! 巻末の案内をご覧ください
お申し込みの方へ、毎月末頃に最新号を送料無料でお届けいたします!
(住所変更の際は必ず編集室までご連絡ください)

『HAIKU LIFE 100年俳句計画』は以下の書店でもお買い求め頂けます。

愛媛県
 明屋書店 ※一部店舗のみ
 ゆらり内海(愛南町)
 原田書房(今治市)
 子規記念博物館(松山市)
 紀伊國屋書店松山店
 ジュンク堂書店松山店


HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画
2017年2月号(No.231)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子

2017年2月1日発行