100年俳句計画 2016年12月号(No.229)


100年俳句計画 2016年12月号(No.229)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。






目次


巻頭リレーエッセイ
富士山


特集
選評大賞2016



好評連載


作品

百年百花
 岡田一実/此花悠/初蒸気/理酔


新100年の旗手
 時計子/ひでやん


新100年への軌跡
 俳句 葛城蓮士/下楠絵里
 評 都築まとむ/樫の木




読み物

美術館吟行/其蜩

Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳:朗善)

JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭

ラクゴキゴ。/らくさぶろう

クロヌリハイク/黒田マキ

百年歳時記/夏井いつき

鑑(み)るという冒険/猫正宗

岡田一実の句集の本棚/岡田一実

mhm通信/暇人

続 南極を詠もう!/源泰拓



読者のページ

100年投句計画
 選者三名による雑詠俳句計画
  桜井教人/阪西敦子/関悦史

 へたうま仙人/大塚迷路
 自由律俳句計画/きむらけんじ
 詰め俳句計画/マイマイ
 100年投句計画 投句方法

短歌の窓/渡部光一郎

百人百様E-Haiku/菅紀子

俳句ポスト365

一句一遊情報局

疑似俳句対局/美杉しげり

100年俳句計画 掲示板

魚のアブク

鮎の友釣り

告知

編集後記

次号予告





巻頭リレーエッセイ



サイクリングしまなみ2016
富士山


 秋暁は妻の頬をもこわばらせ、スタートの号砲に耳を澄ませた。「ファーン」ペダルにビンディングを合わせ、力いっぱい踏み込んだ。「カチャカチャ」周りの乾いたシューズの音が耳に響く。双輪は二台並んで、高速道へ滑り出た。頼んだぞキャノンデールとラピエール。秋空に突き刺さる橋脚目指し、海の上を一直線に駆け抜けた。秋風を全身に浴びどこまでもペダルを回す。大きく曲がったドロップハンドルをさらにねじ曲げるほど握り締め、いつまでも回す。上がった息でサングラスが白くなっても、とことん回す。神ノ島を一周しても、永遠と回す。コース最難関の田ノ浦峠が近づく。ギアをライトに入れ、筋肉が石になる限界までま わ す。心臓を口から吐き出した時、突然解放される。征服の喜び。秋気澄むフィニッシュ会場、二台の双輪は歓声響くゴールへと吸い込まれた。百二十キロの制覇に、自然と笑みがこぼれた。


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特集

選評大賞2016



 毎年恒例の選評大賞も、今回でなんと10回目。本誌「百年百花」「新100年の旗手」に掲載された作品の中から好きな俳句を選び、20文字×15行(計300文字)の書式の中で、選評という創作に挑む企画である。
 今回の応募総数は19点。審査は、詩人 堀内統義氏、愛媛大学教育学部教員 中西淳氏、俳人 夏井いつきの3名にて行われた。
(進行はキム編集長)

堀内統義
11月に、2016 Pyeong - Chang(平昌) East Asia Poet Festivalに招かれ、基調講演。

中西淳
愛媛大学教育学部教員
国語教育学担当。

夏井いつき
俳句集団いつき組組長。


審査の方法

 審査は、各投稿作品に1〜19番までの番号を振り、作者無記名で行った。
 各審査員が事前に推薦する作品を選び、議論によって、各入賞作品を決定した。
(文中、応募者の名前の後にある番号は、審査に使用した番号) 


入選作品


鯛飯 1

サックスの匂う白シャツ放らるる  天玲

 数十人の生徒がひしめく酷暑の音楽室。汗まみれの顔、腕、楽器、そして「白シャツ」。一年の成果を競うコンクールは目前。白熱する練習を終えて帰宅したのは夏の日が暮れかかる頃。脱いだ「白シャツ」を母へと荒っぽく放る。拾い上げた手にしっとりした感触。今日の練習の汗だ。まだ乾ききらない、「サックス」を懸命に吹いてきた汗が匂う。音までも染みているような「白シャツ」だ。 適切な言葉の斡旋が人物をありありと登場させる。「白」の一字は若さのイメージ。「放る」動作の中に、甘えと少しの反抗心を嗅ぎとらせ、両者の関係性を想像させている。 彼の「サックス」の音は、母の耳と暮しの中に、愛おしく匂っていることだろう。

キム 三名全員が押しているのが一番ということになります。
堀内 語彙というのは、俳句や詩、文芸の言葉として取り上げたとき、筆者や読者の間の心の距離を、いろいろな力が働いて膨らませていくわけでしょう。なので、筆者がどのくらい自分の心を踊らさせて書いているかということを特に意識して読みました。1番と2番はすごくいいなあと思いました。1番は、俳句と筆者が向き合って、鑑賞した心の中の踊りのようなものが非常に妥当に着地しているような気がしたんです。
中西 やはり、選んだ俳句がどのような句か、という点と、その俳句の良さをもう一段階上に引き上げていくということ。ただ説明するだけではなく、読者の心を揺さぶるものが必要ではないかと。もう一点はそれを語る時の語りがどういうものか、という視点から選んでいきました。1番は、表現が非常に素直で、すっと入ってきた。非常に無理のない文章表現になっていると思います。構成もまとまりのある書き方で、五感を揺さぶるような俳句を、嗅覚や触覚といった言葉を使わずに、それらが全部響きあっているんだ、というような表現になっていると思います。
夏井 この1番の方は文章の細部も上手いですよね。短いセンテンスを畳みかけながら、読み手の側に一つずつその場面がするっと入ってくる。で、筆者が汗の匂いを句の中から読み取って、そういう夏らしさのようなものをちゃんと書きこんでいる。そういうところを実感として受け止めて書いているから、文章の中に生々しさが生まれてくるんだろうなと思いました。それからもう一点、「放らるる」と連体形で言い切らない効果も、「甘えと少しの反抗心をかぎ取らせ」とかちゃんと深く読んでいらっしゃるし。俳句に対する態度、読み手としての態度もすごく好感が持てるな、と思います。


樫の木 2

花野まで灰色山羊を連れ出しぬ  杉山久子

 その野原は農場の裏山を大人の足で十五分ほど上った先にある。秋の今頃はオミナエシ、フジバカマ、リンドウなどが咲く花野だ。中学三年の僕は一人になりたくなるといつもその野原へ行った。今回がいつもと違うのは一頭の灰色の仔山羊を連れていることだ。 僕の家は小麦と玉蜀黍を作り乳牛と山羊を飼う中規模農家だ。去年生まれた仔山羊四頭のうち三頭は真っ白で一頭は灰色だった。灰色の仔は白い仔達より臆病でおとなしく、いつも離れて小屋の隅の方にいた。それを今日は晴れた午後の花野まで連れだしたのだ。 仔山羊は最初は僕の近くにいたのに、いつの間にか花野に隠れてしまっている。あっ!フジバカマの向こうで灰色頭が跳ねた!

夏井 物語調で書くときに、自分一人の世界を強引に構築すると、読み手として逆に反感が湧いてくる時がたまにあるんですが、これは物語の中に非常に素直に入り込めて行けたといいますか。「中学生」とか、「小麦と玉蜀黍作っている農家」のような、設定に無理がないんだろうと思います。最後の三行だけで、花野という季語の中で「仔山羊」と「僕」とが過ごしている様子や表情が十分に感じ取れる。この三行でこの俳句に対する解説 鑑賞を可能にしているというのは、今まで見た物語系の鑑賞文の中では秀逸なのでないかと思います。
堀内 僕も、最後の三行に三重丸つけてます。本当にうまく組み立ててまとめられている。欲を言えば、なぜ今日この灰色山羊を連れ出したのかまで言ってもよかったのではないかな。そういうことを抜きにしても、すごく自然にこの文章に惹きつけられていく、まとめ方をされているなと。あと、女郎花 藤袴 竜胆と、「花野」の季語の解説がそのまま出てきている。短い行数だから、わざわざ書くのは過剰な表現なのか、それともやはりこれくらいは書かないと俳人の方たちも花野ってすぐにはわからないのかなと思って、それを聞いてみようと思っていた。
夏井 基本的には書かないでいいとは思いますが、秋の七草であるこれらを具体的に書くことによって、見えてくる景色はあるのかなと思っていました。花野って、秋の花々が咲く広い原っぱ、のようなイメージが強いので、ここまで丁寧に秋の七草を数えるっていうのが、私は「ああそっか中学三年生の僕なんだ」と感じて。そういうところで気にならなかったのかもしれません。
中西 中学3年生として読むと非常によく書けていて楽しく読めたのですが、灰色山羊のところをどう読み解いていったらいいのかな、というところが一つ気になったので。ただ、僕、俳句を「灰色」で一旦切って読んでいたところもあったので。逆に灰色山羊を連れ出したところの説明が一つ欲しいと思ったのかもしれません。自分は噴火による灰色の中に、山羊が白だから浮かんでくるのかな、と勝手に読んでいたんですよね。でもこれを読むと、「灰色山羊」としても十分解釈は成り立つのかなという気がして。
夏井 堀内さんがおっしゃった、なんで僕が灰色山羊を連れ出したのか、という読みっていうのは、灰色山羊っていうものへの、思春期の共感っていうか愁いっていうか……。これも鑑賞の側の勝手な設定ですが、そこはかとない愁いを抱える中学三年生の僕が、なぜ灰色の山羊を連れ出すのかというときに、「四頭の内たった一頭だけ」という鑑賞の仕方は、僕が内面に持っている鬱屈などとちゃんと触れ合ってくるんじゃないでしょうか。私は程々な説明、鑑賞がちゃんと成立しているんじゃないかなと思いました。


鈴木牛後 14

馬の眼の淵に来たりし冬の蠅  朗善千津

 馬の目は人の眼よりも深い。これは眼球の直径のことを言っているのではなく、そこに沈潜する想像の深さのことだ。 人の眼は他者の凝視には容易には耐えられない。嫉妬とか指弾とか余計な意味を見てしまうから。それゆえ眼に入った他人の視線は、ごく浅いところでみな弾かれてしまう。 一方で、馬の目はすべてを受け容れる。人の眼にはしらじらとした白目があるが、馬の眼はすべてが瞳。その大きな瞳は世の中のあらゆるひかりの入り口であり、深い淵の水面でもある。 そこに集っている冬の蠅。もうすぐ瞳はひかりを失おうとしているのかもしれない。他者の視線をすべて閉じ込めて。

堀内 この人はこの俳句からこれだけのことを言えて、特に最初の三行なんかは、なかなかのものだなと思ったんだけど。ただ、気になったのが、冬の蠅は一匹かと思っていたんだけど……。
夏井 私も、私も。
中西 私もそうです。
堀内 「そこに集っている冬の蠅」って言ったから、うーん……。
夏井 汚くなりましたよね、急にね。
堀内 そこがちょっと気にはなった。
夏井 最後の三行まではこの人よくこんなこと考えるな、と思って。またこの句も「淵」っていう比喩は馬の眼ならではのものですし、「来たりし」、って何が来たのかと思わせるこの辺りの構成もいいと思うので、最後の冬の蠅の着地ですよね。なんで集っていると思ったんだろう。
中西 非常に興味深い選評だったんですが、「眼球の直径のこと」や「しらじらとした白目」、というような気になる表現が出てきたので。一番気になったのは、やっぱり「集っている」という所で、そこらがなかったら非常に面白い選評だろうなと思ったんですが。
夏井 その後も私引っかかったんですよ。この馬の眼はちゃんと光っている眼だろうと思ったし、「他者の視線をすべて閉じ込めて」もなんか結論を軽く端折ってみました、みたいな感じがするし。後ろの三行がとにかく、違和感の塊。
堀内 僕は最初の三行の「そこに沈潜する想像の深さ」の所なんて、なるほどこう考えるかと思って面白くて、ちょっと楽しんだんですけれども。
夏井 私もそこは楽しみました、少し言い方が強引だけど。前半の、一種馬の眼に関する私的な解釈が述べられているそこには十分共感できるので、となったら最後の馬の眼の淵にたまたま来てしまった冬の蠅と馬の眼の関係のようなものについて、最後止めを刺してほしいです。


小野更紗 3

介護ベッド解体して父を失う  きむらけんじ

 無言の慟哭が伝わる一句。介護ベッドというからには長い間の世話、それに伴うさまざまな苦労と葛藤があったことだろう。介護し尽くした作者は心底疲れ果て、父親の死を悲しむ余裕さえなかったに違いない。 葬儀を終えて一段落の部屋。父親の白髪の残る枕、染みと死の匂いのシーツ、布団に毛布、かたわらの紙オムツ。父親の残骸を一つ一つ取り去る作者。父親と一体化していたベッド。その枠の冷たさ、床の埃に突然フラッシュバックする臨終の顔、そして骨片。ずっと作者を見守り続けてくれたであろう静かで大きな存在。そんな父はもう二度と帰らない。 季語に頼らないストレートな十七文字が心に迫る。無季自由律の強さであろう。


マイマイ 11

介護ベッド解体して父を失う  きむらけんじ

 あくまで個人的な感想だが、母が亡くなった時と父が亡くなった時の悲しみはどこか質が違ったような気がする。母の時には素直に自分自身の悲しみとしてそれに浸ることもできたのだが、父の時のそれは悲しんでいる自身を客観視するような少し距離を置いた感慨だった。この句の作者が私と同じような気持ちだったのかは分からないが、介護ベッドというモノの解体によって父の喪失を実感するという体験はある種の共感を持って胸に迫ってきた。本当の時系列としては「父を失う」→「介護ベッド解体」となるのだが、それを入れ替えることで、あたかも父親自身が解体されていくような喪失の痛みを読者に残す作品となっている。

中西 3番は非常に主観性の強い選評だなと思いました。最初の「無言の慟哭が伝わる」と、そこまできっぱり主観を言っていくというのは課題として有りなのかなと思って、読んだのですが。構成からいくと、最初の段落が作者の姿を描いていて、そのあとに句の中に書いていないモノをリアルに読み取って句の解釈を述べている。最後気にはなったのですが、「無季自由律」にちゃんと触れている。ただ、説明不足な気はするのですが。11番も同じ句の選評ですが、こちらの方は非常にリアルで生々しくて、力強い選評だなと思って一押しとして選びました。
キム 堀内さんは、3番を取らずに11番を取られているんですが。
堀内 僕は3番は、作者のおそらく実体験であろう俳句に非常に寄り添った解釈だなと思ったんです。ただ、ちょっとまともすぎるかな、とも思って。あと最後の「季語に頼らないストレートな十七文字が心に迫る。無季自由律の強さであろう」で、ぼくちょっと冷めてしまったんで……いや、こんなこと言わなくてもいいんじゃない、と。
夏井 3番の良さっていうのは中西先生が語ったのとほぼ一緒ですが、2段落のモノを置くだけで現場が見えてくるような、畳みかけてくるモノの力みたいなのが文章の中で生きているのかなという感じ。私が気になったのは、「ずっと作者を見守り続けてくれたであろう静かで大きな存在」と父の存在を総括したりとか、「そんな父はもう二度と帰らない」とか、だから帰らないんだよ父を失っているんだから、とか、そういう所の詰めの甘さっていうんでしょうか、そこの2行なんて全然無くてもいいだろうと思います。ましてや最後の2行は句の中のどこに無季自由律の強さがあるのかということこそ、解説、鑑賞してほしいという感じがしました。
堀内 僕は、3番の方は本当に身につまされるというか、実感としてわかるんだけど、そこの域から脱していないと思うんです。11番の方は、「あくまで個人的な感想だが」と、この俳句と自分なりの距離を取ったところで見つめているので、その隙間、距離の取り方が僕は理解が出来た。
中西 11番は、母と比べて説明しようとしたのは非常にいい視点だったな、と。説明も丁寧で、非常にいい印象を受けた選評でした。
夏井 「あくまで個人的な感想だが」、という頭のこれを良しとしたときに、「この句の作者が私と同じような気持ちだったのかは分からないが」はいらないんじゃないかな、と思うんですよ。あくまで個人的な感想だが、っていう距離の取り方を頭にもってくるっていうのは、母と父の比較というところをこっちに納得させる力があるな、とは思います。それと、「本当の時系列としては『父を失う』→『介護ベッド解体』となるのだが」という解説がありますよね。ああいう所はきちんと押さえなくてはいけない部分だと思いますし、「父親自身が解体されていくような」というここも丁寧に書いていらっしゃっていいと思います。何が引っかかったんだろうって思った時に、「介護ベッドというモノの解体によって父の喪失を実感する」の辺りと最後の結論と、内容がかぶっているのかな、と思って。その辺りをもう少しだけ整理なさったら、この人なりの母と父を失った時の悲しみの違いみたいなことに対する部分もひっくるめて、もう少し具体的な事を書き込めるのかもしれません。


いよいよ最優秀賞作品決定!

キム では、最優秀賞を決めていきます。皆さんのお話を聞いていて1でいいのかな、という感じはしているのですが。
夏井 私は1でも2でも全く異論はないです。この2つが私的には今回は頭一つ出てたかな、という感じ。
中西 私もこの2つでいいかなと。2を取らなかった理由というのが、私自身が読み間違えたのかな、と。句またがりとして読んでいたので、全然句の印象が違ってきますよね。そこの説明がどうなのかなと思って、手を出さなかっただけなので、別にこの2つを、ということであれば全く異論はないというところです。
堀内 僕も同感です。1番でも2番でも。
夏井 これまでどれか一つ選ぶのに、すごい苦心惨憺して落としどころはここかな、だったけど、この精度はいままでにない、いい精度ですよね。こんなのが二編あって、しかもアプローチが全然違う。二つ、っていうのは難しいんですか?
キム できないことはないですよ、最優秀賞2作品というのは。
中西 同等だったらいいんじゃないですか。
キム 十回大会ですし。
夏井 いいじゃないですか。だってこれ、どっちが好きですか、みたいな話になるでしょう。
キム 趣が全然違いますからねえ。では両方いきますね!
夏井 いきましょうよ、こんな年めったにないですし。
中西 書き方がまったく違うから。
キム 二作品の方が、今後目指すべき作品ということでは、いい気がしますね。では優秀賞を。
夏井 優秀賞は、審査員一人一人が一作品を推薦したらどうですか? 10回記念大会だし。となったら私、14番を押します。
中西 私は3番で。
堀内 僕は11番にします。
夏井 この句も好きなんだけど。普通こんなこと書かないですよね。
キム では作者を最後に紹介して終わりたいと思います。1番目は鯛飯さん。
夏井 へー、さすがだね!
キム 鯛飯さんは大人コンで去年優秀賞をとってますね。2番は大分の樫の木さん。
中西 中学生じゃなかった。
夏井 でも中学生のような心根を持った家具職人。心根は中学校3年生くらいです。
キム 優秀賞の3番は小野更紗さん。
夏井 手堅いですね。
キム おととし選評大賞取りましたね。11番がマイマイさん。14番が牛後さん。多分牛後さん、牧場されているから、冬の蠅が集まっているんだと思います。
中西 そっちの方がリアルですね。そっちの方が現実かもしれない。
キム 確かに一匹じゃないかもっていう。
中西 そう聞くと……!
夏井 そうだけど、あの句に関しては一匹であってほしい。


最終結果

最優秀賞
鯛飯、樫の木

優秀賞
小野更紗、マイマイ、鈴木牛後


12月3日開催の大忘年会内で、「選評大賞2016」の授賞式を行います。


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美術館吟行


第24回

大洲市立博物館
大洲ゆかりの文人 文学展&村島宮の首遺跡の発掘速報展 吟行会

文 其蜩(そのひぐらし)
取材協力 大洲市立博物館


 ようこそ、大洲市立博物館へ。そう、今回の美術館吟行の舞台、大洲市立博物館は、私が勤務している場所なのです。「学芸員」、というやつです。えっ「学芸員」って何? 話し出すと長いので、それはまたお会いした機会に。
 今回は、私も末席に加えさせていただいている穂積書道教室俳句部の天玲さん、実結さんをはじめ、チャンヒさん、恋衣さん、日暮屋さん、マーペーさん、ひかるさん、猫正宗さんの8人が集っての吟行となりました。では、さっそく、魅惑の世界へ。
 さて、博物館では、現在4階の歴史関係の展示室で豪華二本立ての展示を開催中。ひとつは、「大洲ゆかりの文人 文学展」。もうひとつは、現在教育委員会が調査発掘を進めている大洲市菅田の村島宮の首遺跡の発掘速報展です。私は、古文書系の学芸員のため、考古学には疎く、たまたま朝、博物館に顔を出した発掘を担当している蔵本学芸員に解説をお願いしました。
 村島遺跡は、弥生時代の集落跡。それも、石斧を大量に製作した場所として貴重な遺跡です。まだまだ発掘途中ですが、調査発掘が進むにつれて、興味深い発見があるものと期待できます。
 
出土せし未成の石斧秋夕焼  マーペー
紅葉且つ散る打製石斧製作所  チャンヒ
秋声や石斧うずまるあばれ川  日暮屋

 考古展のあと、文学展の入り口にある大洲城の天守雛形と、鯱を見ていただきました。天守雛形は、江戸時代後期頃、天守を修理した際に作成されたものと考えられます。この雛形によって、柱組が判明して、平成の木造天守再建が出来た重要な資料です。鯱は大洲城のどの建物で用いられたものかは不明ですが、シャチの目は、大洲加藤家の紋である「蛇の目」になっています。

ひな形の天守を残し十三夜  マーペー
しゃちほこの受け止めている春の雷  天玲

 大洲と言えば、近江聖人と呼ばれる中江藤樹ゆかりの地。藤の花が好きであったことから、門弟から「藤樹先生」と親しまれた江戸初期の人物。ですが、歴史上に「中江藤樹」と名乗った人物はいません。さて、これはどういうことか? この答えは、博物館にお越しいただいた際に♪ 藤樹とサインのある「中江藤樹筆」の資料が売りに出された際は、決してご購入なさいませんように、と、藤樹と落款のある軸物を出してお話しました。

うそ寒や藤樹と署した秘蔵の書  ひかる
聖人の贋もの易し藤の花  猫正宗

 大洲は、城下町でもあり俳諧 和歌が盛んで、大洲人はもとより、種田山頭火 吉井勇、西本一都らが訪れています。また、昭和10年頃、全国各地でご当地の唄(○○音頭)をつくることがブームとなりました。そこで作詩のため引っ張りだこだったのが野口雨情です。大洲でも「大洲音頭」、そして「白滝小唄」が作られました。

ハロウィンの雨情は石斧ふりまわす  日暮屋

 5階には、昆虫標本や、剥製を展示した自然科学分野の展示室があります。そこには、数年前に、新谷の池で発見された2メートルを超える蛇の抜け殻が2匹分、展示されています。

ストッキング脱ぐように脱皮した冬晴  ひかる
水澄みし郷の夢見る大うわばみ  猫正宗

 さて、吟行が行われた10月30日は、肱川橋を舞台に「肱川橋は大騒ぎ!!〜ありがとう4代目〜」というイベントが行われました。大正2年に架橋された肱川橋は現在の橋で4代目。この橋も、耐震強度が弱いため、新しい橋に掛け替えられることになり、すぐ隣に工事期間中の架設橋が設けられ、車は既にそちらを通行。4代目の橋はこの日、全体が歩行者天国となり、露店が並び、綱引きなどのミニ運動会、地元和太鼓の演奏、そして大洲藩鉄砲隊の演武が行われました。せっかくのメモリアルデー! これはご案内しなくては♪

雁渡し百三年の橋に佇ち  恋衣
鉄砲の轟く秋の蝶の空  チャンヒ


秋声や石斧うずまるあばれ川  日暮屋

雁渡し百三年の橋に佇ち  恋衣


 昼食の後、博物館に戻り、一句一遊の兼題「晩三吉」、そして「ざざむし」に因んで、内子で見つけた晩三吉の交配種の梨と、ネットで購入した「ざざむしの甘露煮」の試食会。お味はいかがだったでしょうか? ご来館、ご来洲、おおきにありがとうございました。

百年を一またぎして秋惜しむ  其蜩


其蜩(そのひぐらし)
大洲市立博物館学芸員(専攻 日本近世史、古文書)
穂積書道教室俳句部の酒は百薬の長。
猫好きながら、「猫に好かれたい」と格闘中。


次回吟行会

愛媛県美術館
ウィリアム モリス展 吟行会
1月9日 朝10時現地集合
参加費無料(入館料は別途)
申込締切 1月5日
『100年俳句計画』編集室までお申し込み下さい。
TEL 089-906-0694

吟行ナビえひめ
http://iyokannet.jp/ginkou/


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2016年度 第三期 第一回


宇宙船
岡田一実

水に消す焚火や熱の残りたる
凩の只中にゐて火の匂ふ
凍鶴の凍てゆるびたる貌かたち
裸木の灯りに雪の触れにけり
猟犬の地表と親しからず馳ける
寒濤や岩一枚に鳥群れて
クリスマスカードに綿が乾いてゐる
異教われ聖夜の間接照明に
散りてけり数へ日の薔薇数ふれば
煤逃の映画の中の宇宙船
大年の雲とは海を気とせしか
除夜の鐘撞けば身ぬちに響きけり

2014年「第三回 大人のための句集を作ろう!コンテスト」優秀賞受賞。2014年「浮力」にて現代俳句新人賞受賞。現代俳句協会会員。「いつき組」所属。「らん」同人。第二句集『境界 ―border―』(マルコボ.コム)。



とおりやんせ
此花悠

太陽のうつろひサルビアの翻心
色なき風となりぬ白蛾の死を撫でて
出雲へと靡く雲雲馬肥ゆる
秋桜の斉唱めきて風の丘
解れ絡み天ふところへ秋の蝶
うづもれて木舟はねむる芒原
ひとつづつ色攫はれてゆく秋野
新米を研ぐ燦燦と水を呼び
一拍の一音階の虫残る
爪を立て歯を立て立冬の結び目
飛ぶ影へひかりの撒き餌今朝の冬
ビルは風穴木枯し一号とおりやんせ

五十路のパート主婦にして、俳句の穴〜ロマンチカ〜の幽霊部員。



神の旅
初蒸気

カテドラルの悪鬼舌出す雪催
蔵の窓高し時雨るる空ばかり
鷲ひとつ葵上の屋根の上
火の番へひたりひたり柿落葉の闇
縮毛矯正大失敗す十一月
鑑識や出どころ知れぬ千歳飴
達磨忌の彫刻刀は青く砥ぐ
茶の花や陶土に混じる月の砂
大根抜く遊女引きずるごとく抜く
卵塔と遊びをる児や大綿舞ふ
人形筆のうつかり顔出す小春かな
コツヘルへ湯をちと立てよ神の旅

俳句のお友達には妻の方が有名です。カリメロの亭主、で通ってます。なんなら娘・初メロのパパでもOK。



ハロウィーン
理酔

コスモスの朝の公園にてワイン
立ち漕ぎの女の背の鶏頭花
秋霖に昨夜の酒が抜けてゆく
尻の下やさぐれ者の木の実かな
マルボロを燻らす巫女といぼりむし
ラ・マンチャの男挑むや台風眼
精神科閉鎖病棟衣被ぎ
冬帝が来るぞとメタセコイアのテノール
戦争ハオ金儲ケダ新蕎麦ダ
黄落の底に眠れる焦土有り
秋濤や髑髏のごとき巨船行く
我が国は戦前であるハロウィーン

昭和三十五年下関市生れ福岡市在住。句歴も十三年を過ぎると自分の真似をしそうになるので、駄目になるまで新機軸を追って行きたい。


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新 100年の旗手


読者投稿による3ヶ月連載作品集
(2016年10月号 〜 2016年12月号 3/3回目)


といざラす
時計子

ヘロヘロと生返事して神無月
芋の端そだてる乙女座の男
焼鳥冷めて曖昧に流すふり
半眼のピエロに決して笑わぬ子
冬木に古書抱けばこの街の匂い
「レリゴー」と窓の下ゆく焼芋屋
冬の雨街灯うなだれている
ぐるぐるの描けないままに年暮れる
潔癖な性に生まれて雪女
ゆくとしのあととぼとぼとついてゆく

俳号について……腐った男で「草田男」に感じて、今にして恐れ多くも、溶けた女で時計子(とけこ)としました。


晩秋の切れ
ひでやん

秋の風小石ころんと靴の中
次々と車窓に雑木紅葉かな
畦道を付いて来てゐる嫦娥かな
ペガサスや背面飛びを決めてみろ
故郷の秋の渚に引くリード
猪垣や今年隣の畑まで
鼠には食はさじ脱穀機叩く
稲架の下湿り具合は龍の腹
前山の一ヘクタール竹の春
我の手の土の匂ひや零余子飯

1968年愛媛県生まれ。俳句歴3年数ヶ月。俳句甲子園に携わって9年。現在、俳句甲子園実行委員会一般ボランティア委員長。


2017年度第4期連載者募集中
締切 2017年2月15日(水)

応募内容
2017年4月号に掲載できるタイトル付の10句
応募先
Eメール magazine@marukobo.com
件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
(郵送またはFAXでも受け付けております。詳しくは編集室までお問い合わせ下さい。)


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新 100年への軌跡


2016年度 第三期
第一回


鉄の匂い
葛城蓮士 

蜂蜜の匂うトースト冬の朝
文化の日クッキー缶にシリカゲル
かれくさの路カフェラテのあたたかさ
冬浅し匙の届かぬパフェの底
ラテアート崩れて影の小春かな
冬旱クレープ剥がれゆく鉄板
神の留守シナモンフォッカチオが来ない
ティラミスの皿を汚せり小夜時雨
ストーブを点すスコーン焼けるまで
ワッフルのアイス溶けだす冬銀河
ポップコーンバケツの滓や冬の暮
パンケーキ屋の行列や冬ぬくし
ドーナツの穴の歪や聖胎祭
メレンゲの角の重たき師走かな
冬ざるる湯せんのチョコに鉄におう

葛城蓮士(かつらぎ れんじ)
 1994年生まれ、埼玉県在住。第12回鬼貫青春俳句大賞優秀賞。ゲリラ句会管理者。


ひかりのいろ
下楠絵里 

海岸に祈る人あり葦の花
歌ふごとくに木犀の揺れてゐる
空明るし林檎に名前つけておく
鳥居みな空白を持ち秋蛍
冬近し土を踏む音やはらかく
飴玉はひかりのいろに天の川
赤き靴にて都会に立ちぬ冬の朝
ひらがなにはらひの多く葛湯飲む
いきものに数多の骨や初時雨
劇場てふ木箱を閉ぢて散紅葉
鳥書けば風の始まる冬田かな
針穴の先に暖炉のしづかなる
旅先は未定のままに毛糸編む
鉛筆に大樹のかをり寒夜かな
凍星や図鑑に羽ばかり並ぶ

下楠絵里(しもくす えり)
 1997年生まれ。京都大学文学部在学中。洛南高校在学時より句作を始める。第15〜17回松山俳句甲子園全国大会出場。第10回鬼貫青春俳句大賞優秀賞。



ドライとウエット
都築まとむ

 葛城さんの句はカタカナが全部食べ物。ごちそうさま。

冬浅し匙の届かぬパフェの底 葛城蓮士
 「浅し」という言葉が届きそうで届かないパフェの匙と響き合う。冬とはいえ、始まりは物足りないくらい甘く穏やか。そのもどかしさも「冬浅し」らしい。

冬ざるる湯せんのチョコに鉄におう 葛城蓮士
 カカオには鉄分が含まれているので、味覚としてはあるだろうけど、匂いに「鉄」を感じるという繊細さがいい。季語の渇いた冷たさにもどこか鉄の匂いがありそう。

 下楠さんの句は生活感が瑞々しい。

飴玉はひかりのいろに天の川 下楠絵里
 「いろに」の「に」という助詞によってこの飴玉は、目の前にあるのではなく舌の上でころがりながら「ひかりのいろ」になってゆくところが表現された。季語の「天の川」がきれい。

劇場てふ木箱を閉ぢて散紅葉 下楠絵里
 この劇場、巨人の手の中にあるような感じ。木箱が閉ぢられるように幕は下りる。「散紅葉」としたことで、そこに埋もれるように木箱の劇場があるかのよう。

都築まとむ
 1961年愛媛県八幡浜市生まれ。第3回選評大賞優秀賞。


匂いと色と
樫の木

冬浅し匙の届かぬパフェの底 葛城蓮士
 立冬を過ぎても寒さはまだ厳しくなく「冬浅し」には中途半端な落ち着かなさがある。「匙の届かぬ」パフェの「底」にはもどかしさがあってやはり落ち着かない。作者の心の「底」にも溶けて混じり合った何かが溜まっているようだ。

冬ざるる湯せんのチョコに鉄におう 葛城蓮士
 見渡すかぎりの荒れたもの寂しい景が「冬ざるる」。湯せんのチョコの匂いの中に「鉄」のにおいを感じ取ったのが鋭敏な感覚。実際に原料のカカオ豆は鉄を含有するがここではその焦茶色も「鉄」のにおいを呼び覚ましている。

海岸に祈る人あり葦の花 下楠絵里
 塩水と真水が混ざり合う河口あたりの海岸。そこに「祈る人」がある。その海で親しい人が亡くなったのだろう。紫色の「葦の花」の群落が風に揺れるさまは猛々しくも寂しげだ。時が経っても静まらない心のように。

針穴の先に暖炉のしづかなる 下楠絵里
 「富んでいる者が神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通る方が、もっとやさしい」とはイエスの言葉である。この句は寓話的な趣がある。「針穴の先」の赤い「暖炉」は良き世界の象徴だが果たしてそこへ行けるのだろうか。

樫の木
 1965年愛媛県生まれ。大分県在住の家具職人。第5回選評大賞優秀賞。


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳 朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ

No.41


Praying mantis
Withering on still stone bridge
Dying in shades of gray

石橋の石の色なる枯蟷螂

(直訳)
蟷螂よ
静かな石橋の上に枯れ
灰色の影に死にゆく


 A busy October has surrendered to a peaceful November. We are eating, sleeping and preparing for winter. We will clean the fallen leaves from the roof, dry our ski boots and cuddle beneath the blankets.

 多忙な十月は、平和な十一月に道を譲った。我々はよく食べよく眠り、冬に備える。屋根に溜まった落葉を取り除き、スキー靴を乾かし、毛布にくるまって寄り添う。


ナサニエル・ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文 白方雅博(俳号 蛇頭)

第69話
小島のり子トリオ2016   


神渡し頭ガイが共鳴するギター  いしき

 蛇頭企画6回目、JAZZ BLENDにて3回目の小島トリオはギターに天野丘を配してのライヴとなった。10月16日(日)14時〜テレビ画面に『JAZZ HAIKU Vol.2 サキソフォン編』のジャズ俳句とマミコンさんのカメラが捉えたジャズジャイアンツの肖像がモノクロで映し出された。バックにはジョン・コルトレーン カルテットの「至上の愛Part1承認」の神聖なサウンドが響く。

フルートの息つぎ一瞬冬来る  dolce

 小島は今回のツアーで秋の句を詠んでいた。が、先ほど季語は冬だと知り動転してる、とまず笑いを取りメンバー紹介。天野のギターはセミアコースティックでカテゴリーはエレキギターだけど管楽器のホーンライクなところだけじゃなく弦楽器らしさも兼ね備える。ユニークなのは、普通エレキはピックで弾くけど彼は指で弾く。澁谷のアコースティックベースは百年ほど前のドイツ製らしいが、中のラベルが剥がれて本当のところが分らない。それと彼はガット(羊の腸)弦を使い極力生音でやってる。演奏は「星影のステラ」から砥部の地酒「初雪盃純米吟醸」の味わいが生んだ「ルッキン アップ トゥ ザ スカイ」へ。

をんをんと音混ざり合う霜夜かな    小野更紗

 セカンド ステージの頭でCDのPR。天野のニューアルバム「デディケーションズ」はベースが山田晃路でドラムスが小山彰太。「彰太さんはJAZZ句会にも出てますもんね。ハナモゲラ語雅派の名手で誰の句だかすぐ分っちゃう」小島のアルバム「ラッシュ ライフ」にも小山が参加している。小山を小島に紹介したのは天野だった。

モンクの謎解く鍵コート脱がす鍵    てんきゅう

 「次の曲はコンポーザーでありピアニストであるセロニアス モンクの曲です。このメンバー皆モンク好きで、いろいろ演奏してますが、その中から『エビデンス』(証拠)という曲をお届けします。世界中のミュージシャンがモンクの曲を取り上げるのは謎が多いから、そしてやり甲斐があるから」

ベースの音深く沈み込む初時雨  こじのり

 演奏の後半は澁谷のベースラインが描くデッサンに小島と天野が音色の塊をぶつけ合うという構成。「この曲は、パシッとしてウニウニって感じ。特にデュオなどは今日はウニウニを楽しんでいただきました、なんて言うとお客さんのほうも段々分ってくるのです」

ブルースの弦の太さや日脚伸ぶ  蛇頭

 「次はバラードで、やはりモンクの曲。名曲中の名曲『ラウンド ミッドナイト』です」小島のフルートの幻想的なバースに導かれテーマをギターが奏でる。間を置かず澁谷の重厚な弦の響きが加わり天野の呻き。「のりさんジャズはブルースだよ」という天野の主張は後ほどゆっくり考えることとしてラスト ナンバー、小島のオリジナル「ブルース イン ザ スカイ」へ。

初雪や休符に音の鳴る奇跡  いしき

 キム・チャンヒの描く一番人気句の即興俳画でライヴ&句会を終えた。


「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は月曜日の21時〜22時。

次回のJAZZ句会は、12月18日(日)14時より。テーマは「ジョージ川口とビッグ フォア」です。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU』vol.1、vol2(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ


第六十九話
文 俳句 らくさぶろう


『くっしゃみ講釈』
くしゃみの工夫それぞれ

 町内でも評判のべっぴんさん、小間物屋のみっちゃんといい仲になった喜六。ある日の夕方、長屋の路地口で二人で話をしていると、そこを通りかかったのが講釈師の後藤一山先生。
 喜六は「こんなとこを見られたら後で何を言われるやらわからん」と思い、壁にピターッとはりつくように立っていたら、一山先生、ぞうりの裏に犬のフンがついてしまい、そのフンを喜六の鼻先になすりつけてしまった。
 犬のフンを鼻先になすられるような人は嫌だとみっちゃんにふられてしまった喜六。なんとか一山に仕返しをしようと友達の清八に相談して企む。
 そこで思いついたのが、一山が出ている講釈小屋に行き、講釈をやっている一山の目の前で胡椒の粉を火鉢でくすべたらくしゃみが止まらず講釈がメチャクチャになるだろう……というもの。
 八百屋へ胡椒の粉を買いに行くが、清八に教えてもらったことを全く覚えていない喜六は「胡椒」という言葉が出ず、店先で何とかきっかけを思い出そうと、のぞきからくりの「八百屋お七」を一段語り尽くしてしまう。
 やっと胡椒が思い出せたのに、運の悪いことに胡椒が売り切れ。くすべたらくしゃみが出るものは無いか?と尋ねると、唐辛子はエライことになるだろうとすすめられ、唐辛子を買って帰ることにした。
 勇んで講釈小屋に向かい、かぶりつきの席に陣取った喜六、火鉢を借りて用意は完璧。
 何にも知らない一山先生、名調子で「難波戦記」を語り始める。
 さあ唐辛子の粉をくすべ始めると、えげつないくしゃみが次から次へと出てくる一山先生。とうとう止まらなくなり、客に謝り「今日のところはお引き取り下さい。」
 ここぞとばかりに喜六は毒づく。一山が「他のお客さんはみな気の毒と言うて帰ってくれるのに、あなたがたはなんぞ私に故障がおありか。」
喜六「胡椒がないさかい、唐辛子くすべたんや。」


 上方弁なのでしょうね、「くしゃみ」ではなく「くっしゃみ」というのは。何かもっちゃりしていて僕は好きな言葉です。
 噺の中では講釈師が「難波戦記」を語りますのでキチンと講釈になるように演じなければなりません。途中からくしゃみがボチボチ入ってきて、しまいには連続しどうにも講釈が出来なくなるまでの様子、これが演者の見せ所です。
 くしゃみは噺家によってずいぶん違いますねー。
 得意ネタにしていた故桂枝雀師は、「ハックション」とは程遠いくしゃみでした。「へくしょーい」とか「へくしゅ、へくしゅしゅ」と聴こえてました。
 どの噺家の高座にも共通して思うことは、一番前の席のお客さんはツバまみれになってしまうのでは?という余計な心配。
 さて、くしゃみに悩まされる講釈師の後藤一山先生、喜六の鼻先に犬のフンをなすりつけたのはわざとではありません。ですから一山先生がお気の毒で仕方ありません。と言いつつ、喜六の仕返しも楽しみで……スンマセン私そんな人間なんです(笑)
 今原稿書きながらふと思いついたんですが、くしゃみの演出を、カトちゃんの「へーくしゅっ」でやってみると面白いのではないかしら?
 今度やってみようっと。

くっしゃみも伝染るものかと思ひけり


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クロヌリハイク


黒田マキ

山椿SS作家小説に (愛媛新聞より)

お待ちかね。キノコを土鍋でアヒージョに (2016年11月4日 朝日新聞より)

円安で自動車堅調月の影 (愛媛新聞より)


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超初心者から中上級者まで楽しめる

100年投句計画



 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天地人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選、並選を選んでいます。選者は、関悦史さん、阪西敦子さん、桜井教人さんです。

 「へたうま仙人」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は大塚迷路さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。

 「詰め俳句計画」は、マイマイさんによる、二つのフレーズに合う季語を投稿するコーナーです。季寄せや歳時記さえあれば、全くの俳句初心者でも挑戦できます。

(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)


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選者三名による 雑詠俳句計画




先選者 関悦史

 このところ海外ミステリの古典、クロフツとかヴァン ダインをぽつぽつ読んでいます。トリックや何かがわからなくても、ミステリ特有のいわば詩学的な風味が捨てがたい。現実には意味もなさそうな密室とか、全体の奇妙な閑雅さとか。神田古本まつりの時期なので、できれば訳出当時の装幀でこの辺も入手したいところです。最近、西洋美術風に描き込んだ写実的な絵がほとんど使われないのはコストの問題にでもよるのでしょうか。


覚えたてのバイバイ続く赤のまま  おせろ
 一見どうということもない作りの句で、題材的には小さい子供のかわいらしさを詠んでいます。詠みようによってはイヤらしくも稚拙にもなりうるはずなのに、不思議なことに嫌味がない。「子供」「幼子」等の単語が直接入っていないのも計らいの結果ではなく、口をついて出た虚心な言葉がその流露感のまま一句に構成されたようです。「赤のまま」は単に過不足がないだけの付き方に見えますが、これも古拙味を出しています。


芽キャベツのカタチ占象かもしれず  暮井戸
 「占象」は亀の甲 鹿の骨などを焼いて占うときに現れる形。芽キャベツのややグロテスクなまでに仔細に富んだ姿かたちは意味を持つ記号のように見え、その変容は芽キャベツを超えて生の全領域に及びそう。

老練のボクサーのごと秋桜  夜市
 俊敏に相手のパンチをかわし続けるボクサーに、秋桜の揺れ方を重ねた句。実感が伝わるというよりは、機知性が勝っていますが、「老練」な「秋桜」という奇妙な結びつきが、自然への畏怖を微妙に呼び出します。

秋風や雌雄同体てふ魚  内藤羊皐
 オスがメスになったり、その逆だったり一匹で同時に二役をこなしたりと、魚の中には雌雄同体の種が少なくない。そのことへの奇妙な隔絶感が、「秋風」を感じるはずもない「魚」との取り合わせから出てきます。

幾度も轢かれ砂塵の狸かな  風海桐
 田舎ではときどき見る景色ですが、「幾度も」「砂塵の」と、ただの報告に終わらない観察眼と言葉の精妙な選び方がきいた句になっています。深長味よりは正確味の方が出すのは難しく、しかし遥かに効果的という好例。

菊人形傘の老人匂ひかぐ  鯉城
 「傘の」という情報は要るだろうかと最初ちょっとひっかかりましたが、これはこれで雑然たる要素がわずかに割り込んだ分、生々しさが増しているのかもしれません。可笑しいような怪しいような無意味性の味わい。


小さき手で押さえし鉢やとろろ飯  幸
子の瞳亡き夫に似て秋祭  さより
祖母母も私も白髪菊枕  ヤッチー
パンを売り始む色なき風に乗せ  夜市
真っ暗な娘の部屋へ月の色  和音
反戦歌と共に老いたり白鳥は  ゆりかもめ
段ボール基地は屋根無し秋涼し  富士山
天高し色とりどりの熱気球  彩楓
灯火親しむ栞としてのするめイカ  土井探花
主なき椅子にどっかり秋の闇  空山
葛の葉の吹かれて白き長堤  人日子


先選者 阪西敦子

 鍋を買った、誘われて立ち寄ったドイツフェスティバルで思い立って。友人に贈られて使ってた五徳の上だと少し中の分量が減ると転ぶミルクパン、友人に贈られて使っていたコーティングのはげつつあった鉄分たっぷりのフライパン、これらの後任を心のどこかで探していた。ぴったりのふたつと、お米まで炊ける両手鍋の加わった三点セット、60%オフ。得をするとすぐに使いたくなる。


空見上ぐ少女のあぎと秋薊  小市
 この照らし合いはなんだろうか。空を仰ぐ少女は、もともと華奢なところを、その顎は天と首の間に張り詰めてありありとその骨のかたちを浮き彫りにしている。その肩と顎の間には、空間があって体の向こう側の景色を見せている。秋風の中にうかぶ薊がふわふわと揺れても、凛と動くことのない少女の輪郭。


特急のきざむ橋音秋高し  出楽久眞
 線路の音は継ぎ目の音。速度が違えば、音は変わる。秋晴に響けば、その違いはよりはっきり。高校の時、国語では列車紀行文を、学園祭では首都圏鉄道の停車音当てクイズやってた鉄研の小圷君、どうしてるかな。

洗面器いつぱいの雪捧げられ  どかてい
 だれが、だれに、なんのために。いろいろと不足のある句だ。しかしながら、その不足が洗面器に溜まった、あるいは盛られた雪の質感や重さを、より鮮明に喚起してゆく。

大寺や奥の間ひろき秋扇  人日子
 切れが大寺のあとにあると、聞いたところ「奥の間ひろき秋扇」となる。奥の間の広いと知れているところに使われ、あるいは置かれている秋扇。余地のある空間に、秋扇の余裕が見える。

冒険は裏道からよ金木犀  ミセスコナン
 チェ ゲバラの旅は、家の前から家族に送られて始まったそうだけれど、本来冒険とは、この句のようなものかもしれない。幼いころに読んだものでもそうであった。金木犀はそこにも香る。

おはなしのつづきはあした星月夜  アンリルカ
 冒険物語だろうか、話には続きがあって、月夜にはそれに続く空間が(本当は)ある。どちらも今の時点は知りえないもの。人を不安にも、前向きにもするつづきというもの。


藍と紺あわいの縹星月夜  幸
美しき先進国やかけうどん  優空
秋天へ赤いきりんのごと重機  もね
秋天へなほ高々と赤帽子  さより
秋の日を入江に寄する渡海船  小雪
鼓笛隊色なき風を膨らませ  ヤッチー
段ボール基地は屋根無し秋涼し  富士山
太鼓台進みて房の揺れるなり  カシオペア
蘆の火の蘆のみ燃ゆる煙かな  風海桐
燕帰る終着駅に巣を残し  鯉城


後選者 桜井教人

 今、引越しのために家中を整理している。中でも時間がかかるのが写真である。自分、家族、友だち、職場の仲間、数千枚もある。不要なものを処分しつつ薄いながら一冊に二百六十四枚入るアルバムに入れ直している。ふとあることを思った。写真を撮る誰かがいて、撮ってくれる誰かがいる。つまり写真の数は幸せの数だということだ。今は自撮、デジタルの時代だ。とても便利だが、削除キーを一度叩けば、幸せが一瞬にして無になると思うと少し寂しい。

特選句
中秋の月下難民舟でくる  迂叟
 虚と実の間に揺れる所謂シュールな世界の句。特に後半の裏切り感は半端ではない。静かな世界の中における、中秋の名月と難民船の対比。絵画のようでいて怖い。月下の「下」
のひと文字がとてもしたたか。

流星の瓶詰売の美少年  緑の手
 虚の世界の句。流星の瓶詰とは、なんて素敵な発想なのだろう。透明の瓶の中で、流星が流れては消える。もしかしたらこの地球自体がその瓶詰に入っているのかもしれない。
ぜひこの美少年に出会ってみたい。

記録係をせし国体馬術木の実降る  えつの
 「木の実降る国体馬術記録係」としてもよいかも。国体の馬術競技の記録係という言葉が強いリアリティーをもつ。障害を飛越する時の馬の筋肉の躍動感と木の実降るとの動静の響き合い。それを見つめる記録係の冷静さと客観性との位置関係が実に面白い。

並選句
秋霖や姉の手紙を幾たびも  柝の音
枯葉舞ふしなやかな指風を呼ぶ  レモングラス
寂しさの極みの空に烏瓜  dolce
団栗に返り血殺意はあったか  藍人
横笛の明き音は澄み月の宴  桂奈
雲の影去れば現る紅葉かな  喜多輝女
水細し三連水車稲の波  かのん
先達の声抜きん出て秋天へ  ひさの
破線めく愛撫の舌や秋黴雨  凡鑽
手袋の上からやっと手を繋ぐ  江口小春
勤務地へ急ぐ未明の流れ星  のり茶づけ
小鳥来る無事に終わった面接日  一走人
太刀魚の眼窩や怨嗟残りたる  南亭骨太
栗ふたつかごに入れたる三輪車  ぴいす
ブレーキを持たぬ銀輪冬木立  板柿せっか
厄除けの肩打たるるや秋湿り  プリマス妙
飛びちがふμの粒子や時雨寒  久我恒子
露の朝そろり抜かるる制御棒  うに子
宙ばかり見て更待を帰りけり  蒼真
照る柿の下に草あり耕畝の忌  山崎ぐずみ
船上のジャズ止みオリオン流星群  風さら紗
黒き背中みせず満月さやかなり  西原みどり
海豚跳ぬ海王星に海の色  ひでやん
泥酔の新宿駅や冬の月  台所のキフジン
雲の峰伊予に生まれし三男坊  大阪野旅人
三枚の堅皮押し退け栃の実は  青柘榴
水鉢の名月掬ふ旅の宿  西条の針屋さん
あっけらからんと口あけている通草  空山
さざ波のピアニシモ冴ゆ秋の川  中川弘子
鶴を折るオバマ氏の罪原爆忌  未貫
につこりと転ぶ孫見て秋楽し  弥生
悩むけど秋空仰ぎ答出す  みちこ
看取れずに滲む夜道や虎落笛  童夢U世
もの思い重ねても尚月は月  まんぷく
またひとり天国へ逝き花八つ手  エノコロちゃん
十三夜完璧主義と言はれたる  遊人


関悦史(せきえつし)
 1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。

阪西敦子(さかにしあつこ)
 1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。

桜井教人(さくらいきょうと)
 1958年愛媛県生まれ。愛媛県公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回、29回俳壇賞候補。


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へたうま仙人


文 大塚迷路

 しかし師走ぢゃ。だって師走ぢゃ。一年が早いと思うか遅いと思うかで年齢がわかるらしいぞ。早いと思うても早いと思うたらイカン。月日の流れはその上を行くけんのう。
 今月も、月日を遡るような句が所狭しと集まったぞ。年の瀬の喧騒をBGMに、のんびりせかせか楽しんで下され。


秋深し大阪マラソン初出場  ケンケン
三万の足音ミナミに響きおり  ケンケン
 詳細なる近況報告ありがたいぞ。肌寒くなった空気感と「初出場」の不安感が不安定に衝突しておるぞ。「響きおり」で、無季の臨場感が三倍増しぢゃ。スタートのときは三万の足音がしておるが、そのうちだんだんばらけていってしまう足音は、去りつつある秋の足音とリンクして味わい深いのう。無事に完走されましたか?

十五夜に優る十六夜外に出でよ  藍植生
 中村汀女の秋ヴァージョン句ですの。久しぶりのスーパームーンは生憎の天気で見えなんだが、次の日の十六夜はばっちり見えたのう。明らかに大きく、明るかったぞ。地面を見ると月影の輪郭がはっきりしとった。外に出でとったら夜露ですっぽり濡れたぞ。それもこれも全部含めて、外に出でたら何かが待っとるものぢゃ。そして空を見上げたら尚更ぢゃ。

数へ日の母の気丈に励まされ  たあさん
 一年も切羽詰まってきたら意味もなく不安になるのう。こういう時は、父親より母親の方が頼りになるのぢゃ。母親のその笑顔だけで落ち着くのう。母のどんなところが「気丈」なのかをすこーんと提示してもろうたら、もっともっと母の人物像が鮮明になるぞ。そうしたら「気丈」や「励まされ」という言葉も不要になって、数へ日と母との関係だけのすっきりした句になるかもしれんぞ。

夕暮れの荒れ田に傾ぐ案山子かな  坊太郎
満月の海真つ直ぐに月の道  坊太郎
 風景がまっすぐに飛び込んでくるのう。読み手が考える隙間が無いくらいまっすぐぢゃ。ワシぐらいのへそ曲がりになると、荒れ田の案山子こそまっすぐ立っていて欲しいし、月の道こそ曲って欲しいし、いやなに、こんなひねくれ者にはなったらイカンぞ。世の中をこんな濁った眼で見ておったら性根まで腐ってくるぞ。俳句は清々しく、ぢゃ。

でこぽんはウマイでお食べおかあさん    KIYOAKI FILM
うえっへひ女医のバンソコ冬感じ    KIYOAKI FILM
 なんという母恋句ぢゃ。おかあさんの口もとに運ばれたでこぽんの色と香りと、作者の指先までも見えてくるようぢゃ。すっかり食が細くなったおかあさんも、小さな口を開けさぞかし喜ばれたことぢゃろう。「バンソコ」とはなんぢゃ? 「伴淳さん、ソコぢゃない」の略か? よもや絆創膏のことではあるまいの? そうだとすると絆創膏に冬を感じたのか、絆創膏に冬の感じがしたのか微妙ぢゃが、ワシにはソコが肝心なのぢゃ。なにせ「女医」ぢゃからのう。「うえっへひ」ぢゃからのう。

金木犀思つたことを忘れけり  小木さん
いちいち口に出すまでもなく金木犀  小木さん
今思ったことさえ忘れだしたらそれは幸福の始まりぢゃ。忘れた事さえ忘れだしたら至福ぢゃ。いつまでも昔の事を覚えていて、いつでも思い出せる頭脳の持ち主は、ある意味不幸と思うぞ。嫌な事はすぐに忘れちまえばいいのぢゃ。これが凡人の特権ぢゃ。金木犀の匂いを嗅ぐたびに忘れられたら、それに越したことはないのぢゃ。そして、物忘れが出だした人の話を相槌を打ちながら、いちいち口を出すことなくときどき励ましながら聞くことも残ったものの大事な仕事ぢゃ。ということでワシにも愛の手を、ぢゃ。

敷松葉匂ふ帰って来よと云ふ  みやこまる
返り花だけが知るほんたうの空  みやこまる
 松葉の匂いは郷愁を誘いますのう。日増しに香ってくる庭に敷かれた松葉に「帰って来よ」と言われたらもう帰らざるを得んぞ。望郷の念は日増しに募るのぢゃ。松葉の香りの消えんうちに帰るのぢゃ。「ほんたうの空」で千恵子抄を思い出したぞ。ほんたうの空を知っていると言う事は偽者の空も知っていると言うことぢゃ。「返り花」の歩んできた季節を思うといじらしくなるぞ。

すすきの穂不登校の子のゆく末は  柊つばき
冬はじめ毎日悪夢のいやになる  柊つばき
 何かと心配の種は尽きんのう。人類の心配事を一人で背負っているようで何かと大変ぢゃ。不登校の子も少しずつ俳句をすれば気が紛れるかものう。すすきの穂のように、荒地でも撓っていて欲しいものぢゃのう。「冬はじめ」と「悪夢」は相性がいいぞ。なあに、恐怖映画をタダで見ることができたと思えば悪夢もまんざら捨てたもんぢゃないぞ。今日はもっと強烈な悪夢を!と念じながら眠ったら期待はずれの悪夢ぢゃったりして、それはそれで楽しめるぞ。電気代もいらんし、少しうらやましいぞ。

蒂残す柿や俳句も下手なりに  ちろりん
ひやおろし下戸には建てる蔵もなし  ちろりん
 この屈折した自嘲が良いのう。なんだかんだ言って下手とは思っておらんのぢゃ。どんなにへたくそに句を作っても蒂はちゃっかり残しておるのぢゃ。柿はうまいのが当たり前。ぢゃが、残った蒂にこそ味があるのぢゃ。蔵で寝かされた「ひやおろし」。この味を知っとる者が飲みながら「下戸はこの味を知らんで可哀相じゃ」とほざいておる姿が可笑しいぞ。おまけに「じゃけん下戸は蔵のひとつもよう建てんのじゃ」とのたまう姿は可笑しいを通り越して哀れでもあるぞ。いや、今宵も蔵いっぱいのひやおろしを心ゆくまで飲んでくだされ。

常温のままで語らぬ秋思かな  元旦
ぎゃんぶらあみな哲学者秋惜しむ  元旦
 常温のままで語らないのならば、低温で語るのか高温で語るのか不思議な感覚ぢゃ。秋思の経験が無いものにはわからん世界ぢゃが、秋思とはこんなものだという妙な説得力があるぞ。確かにぎゃんぶらあの背中は哲学者そのものぢゃ。いや、哲学者がぎゃんぶらあに似ておるのか。哲学者に知り合いはおらんので詳しいことはわからんが、「秋惜しむ」とはそういう事ぢゃ。ところで、勝った事のないぎゃんぶらあはある意味強運の持ち主ぢゃ。周りの人間はそのぎゃんぶらあの反対をいけば全部大当たりで万々歳ぢゃ。そんなぎゃんぶらあ、どこかにおらんかのう。おっと、見果てぬ夢ばかり追っとったんじゃいけん。哲学者さまを愚弄したこんな句は、哲学者の悩みと共に骰子の一の目のど真ん中へ追放!


 師走の風にそそのかされて今月も追放者を出してしもうた。後悔にっちもさっちも立たずぢゃ。これもあれも日頃の修練がものをいっているのかもしれないのかもしれん。
 ぢゃが、くれぐれも油断召されるなよ。


へたうま仙人
年齢 卑弥呼がおっぱいを飲んでいた頃、ワシは青春真っ只中ぢゃった。
好きなもの 霞のシャーベット(PM2.5抜き)
嫌いなもの 上手な俳句
将来の夢 大器晩成


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ


 麻雀が見直されているらしい。頭の回転、勝負カン、大局観……とかを判断するツールとして採用試験の一部に採り入れる会社も出てきているようだ。最もアナログ的人間力を見極めようということかもしれない。そんな事とは別に指先を動かすことは健康に繋がるし頭の運動にもよいというので、ある老人ホームでもレクレーションとして採り入れたらしい。聞いた話だけど、さっそく老人同士つかみ合いの喧嘩になって取りやめになったとか。どうも博打性が強いのが原因らしい。なんだかなあ……。


包み隠さず話して蓑虫になる  もね
 蓑虫を擬人化した句はそう珍しくはない。風にも吹かれひたすらぶら下がるだけという侘しさ寂しさが、反って私情を膨らませやすいのかもしれない。鬼が捨てた子という「鬼の子」の別名もあるくらいだ。しかし揚句は擬人化ではなく、いわば擬蓑虫化である。何があったか知らないが洗いざらい話して、あとは沈黙するという自分の姿勢を蓑虫の形態に例えている。自分の行為と包み隠してしまう蓑虫との対比が面白いかなと思う。


冷たい木馬が木馬を追い駆けている  暮井戸
 ここは「冷たい」でも「寒い」でもよい。要は客のまばらな遊園地のメリーゴーラウンドの寂しさが句の本質だろう。背中に誰も乗せていない木馬が木馬を追うという視点がよい。淡い照明の中から弱々しいメロディさえ聴こえてきそうです。

教科書に収まらぬ秋思  元旦
 秋の物思いや愁いは言葉でひとまとめにできない感情だけに、どうのこうのと表現しすぎると句は崩壊する。「新書版ほどの秋思といふべしや(片山由美子)」があるが、揚句も簡潔でよいと思う。

寒月の欠片を拾ひしか  恋衣
 「寒月の欠片」が、美しい緊張感を持ってせまってきます。欠片は寒月でなければならないような不思議な感覚さえ湧いてくる。その欠片を拾ったとすれば……短律ならではの余白、余韻がますます詩情をかきたてます。

信号待ちの向こうの知人と気まずい  ゆりかもめ
 信号待ちとか駅のホームとか……誰しも一度や二度は経験のあるほろ苦い状況は、読む人に素直に共感を引き起こします。ただ「気まずい」がストレートすぎて句のふくらみを削いでいることがややざんねん。

またふられようと毛糸編む手は止まず  レモングラス
 好きな男性のために懸命に毛糸を編む……近頃めずらしくなった女性像ともいえます。まさに絶滅しつつある日本女性のアイデンティティを見る思いです。それだけに「またふられようと」が説明的過ぎ、灰汁強すぎ感が気になる。せめて「ふられようと」くらいで。


諍いの国越えて雁渡る  迂叟
小鳥来て痛点をつつく  藍人
二本の足がみな靴履いている  多満
ニョロリと雨上がりの空に満月が出た  まんぷく
ちちろ逃げろや阿蘇山の灰の降り来るぞ  エノコロちゃん
ニュートンに万有引力馬鈴薯に笑窪  鯉城
ずっと楽しみで楽しかったよ運動会  さより
蝉の亡骸蝶の亡骸一列に  幸
何処へも行けぬから行かぬまでよ  優空
踏まれて立ち上がりまた踏まれ草の花  のり茶づけ

並選
考えるな、感じろと言う人のあり  ケンケン
逝きたく無ければ春を待て  川足水
闇の中に羊が増えていく  柝の音
逝く時が来たら死ぬあわてるな  藍植生
咳をして骸骨の硬さよ海原  KIYOAKI FILM
水星探査機ロゼット流星となる  喜多輝女
弱者弱者の蘆を刈る  出楽久眞
飲み込んでいいですかナマコとやらを  凡鑚
月を狙って片目瞑って指鉄砲  ヤッチー
あるがままの敗荷  小木さん
仰向いたら死が待つのが虫  和音
曼珠沙華に動脈のぬくみ  一走人
超法規的存在の神輿  南亭骨太
終わつたと思っていたのに秋風  小市
悔ひはけせるか流星にまなこ射貫かれて  緑の手
リフトをおりるならば今  うに子
凶三度冬眠するか  みやこまる
みなみな寄ってこって赤い羽根  山崎ぐずみ
風邪声の友を労りついつい長電話  風さら紗
齲歯の夜を筮竹が探る  内藤羊皐
満月の空は蒼い  彩楓
泣いたって叫んでたって見えないは  台所のキフジン
模様替えしても万年床  大阪野旅人
雨上がりの空へ木犀香りたつ  青柘榴
プチプチに野分を閉じ込めている  土井探花
身に入むや午後2時は痛くないはずデンタルクリニック    マカロン星人
畑一面の赤赤燃える死人花  カシオペア
文無しになつてとぼとぼひとり  坊太郎
林檎の芯くりぬいて自由句のへたっぴい  ちろりん
曼珠沙華誠実である赤  人日子
稲穂好き愛犬の道草  ミセスコナン
トンネルの中は温かい  遊人

選外(自由律で再挑戦を!)
晩秋や行きつく先は皆同じ  空山
金木犀咲けば広がる父母の海  まんぷく


きむらけんじ
 1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。


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詰め俳句計画


出題・文 マイマイ

今月の問題
次の(  )の中に共通する冬の季語を入れて下さい。

駅地下の書店明るし(  )
(  )こと空壜を捨てること


 今月は後句がしっくりこない投稿が意外に多かった。前句がいわば何でも入るので油断されたのだろうか。

駅地下の書店明るしイブの夜
イブの夜こと空壜を捨てること
 藍植生さん。イブといえばクリスマスと日本人は思ってしまいますが、イブは本来「前夜」の意。私もうっかり普通に季語として捌くところでした。級外。あぶないあぶない。

駅地下の書店明るし冬鏡
冬鏡こと空壜を捨てること
 KIYOAKI FILMさん。歳時記やインターネットでも調べましたが、冬鏡という季語は載っていませんでした。新年の季語として初鏡というのはあるのですが……。ということで季語「冬」の季語アレンジとして捌きます。前句明るさが倍加したようでちょっと面白い。後句は文法的に無理がある。8級(-2)。以下も文法に無理のある方々。
 マカロン星人さんは冬霞、エノコロちゃんは冬の暮、河原撫子さんはクリスマス、川足水さんは大掃除、dolceさんは年用意、大阪野旅人さんは年の市、おせろさんは年忘、葉音さんは年の暮、内藤羊皐さんは小晦日、レモングラスさん、たあさんは春支度。いずれもまとめて6級。

駅地下の書店明るし日短し
日短しこと空壜を捨てること
 のり茶づけさん。前句韻を踏んでいて面白いが後句は文法的には「短き」となるところ。5級。笹百合さん、空山さんの冬ぬくしも「ぬくき」となるところ。同じく5級。

駅地下の書店明るし水烟る
水烟ること空壜を捨てること
 恋衣さん。厳冬期に外気よりもやや暖かい川などの水面から湯気が立つこという。後句は並列の対句表現なのに内容が対句的でないところがおしゃれ。だが、前句、なぜ地下の店とこの季語を取り合わせたのか不明。4級。出楽久眞さんは日つまる。日本大歳時記座右版(講談社)では短日の傍題になっている。字面だけ見ると4音でリズムが合わないようにも思えるが、「日」の後に1音分の休みがあるので実質5音の季語と考えて良いだろう。前句、地下の明るさに地上の日暮れの速さを思う不思議な感覚。後句並列なのに因果関係がないのが面白い。3級。板柿せっかさんは冬来る。幸さんは冬に入る。これも後句の並列のさせ方が面白い。前句やや平凡か。同じく3級。優空さんは年詰まる、久我恒子さんは年つまる、ヤッチーさんは年暮るる。前句はこんなところで立ち読みしている場合ではない焦りのようなものを感じる。後句は急き立てられて空壜を出しに行く感じか。同じく3級。迂叟さんは年送る、緑の手さんは年歩む。後句、空壜を捨てることで新しい年へ向かう感慨が気持ちいい。前句、書店で年は越せない場合が多いと思うのでリアリティの点でどうか。同じく3級。桂奈さんは春を待つ。前句、春までずっと立ち読み? 後句の並列がうきうきして楽しい。2級。ゆりかもめさん、蒼真さん、元旦さん、杉山久子さんは年惜しむ。前句、年を惜しんでいる場所の意外性がある種のリアリティを担保している。後句、空壜も捨て惜しんでいる? 1級。

駅地下の書店明るし暦果つ
暦果つこと空壜を捨てること
 ほろよいさん。前句、暦果つの感慨は普通自宅で感じると思うのだがこの場所で思うのが不思議。後句は年末の押しせまった感じ。3級。ちろりんさんは湯冷めする。前後句ともに俳諧味があって楽しい。季語「湯冷め」のアレンジとみて3級(-1)。うに子さんは着膨れる。前句人物がありありと見えて良い。後句も何だかかわいい。1級。笑松さん、藍人さん、ひさのさん、牛後さん、江口小春さん、小木さん、小市さん、プリマス妙さん、台所のキフジンさん、青柘榴さん、遊人さんは日記買う。喜多輝女さん、一走人さん、みやこまるさん、矢野リンドさん、片野瑞木さん、どかていさん、彩楓さん、童夢U世さんは日記買ふ。坊太郎さんは日記買う(ふ)と現かなと旧かなを併記してくれました。前句は書店と日記の関係性が近いが臨場感があり気持ちのいい句。後句、いかにも年用意。まるでメモ書きのよう。1級。

駅地下の書店明るし注連飾る
注連飾ること空壜を捨てること
 さよりさん。前句、まだ営業している書店の中で脚立に上ったり、それを支えたり、別にレジでお客さんに応対していたりする人のいる慌ただしい情景を想像できて面白かった。後句はいかにも年用意。れんげ畑さんの松飾るも同様。初段。ひでやんさん、人日子さんは日脚伸ぶ。前句、日が長くなってくることと地下の書店の明るさは関係ないことなのだが、あたかもその日脚が地下にまで「伸」びてくるかのよう。後句も因果関係は全くない並列でありながら、空壜にも日の光が届いているように感じさせるのが季語の不思議な力というべきか。同じく初段。

今月の正解
駅地下の書店明るし暦買ふ
暦買ふこと空壜を捨てること
 正解者なし。今月は出題がやや甘かったか。1級。



2月号掲載分の問題(12月20日締切)
次の(  )の中に共通する春の季語を入れて下さい。

無欠なる排水溝の(  )かな
(  )てふ色夕闇に置かれけり


マイマイ
 2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人だったが、最近は?? 第1回、第4回大人コン優秀賞受賞。2013年句集シングル『翼竜系統樹』上梓。将棋推定初段。棋友募集中。宇宙と生命を題材に詠んだ句集『宇宙開闢以降』マルコボオンラインショップにて発売中。


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100年投句計画 投句方法




 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可) 俳号(なければ本名の名前のみ) 本名 電話番号 住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙人」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、12月20日(火)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがき FAXでも投句できます。

さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。


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短歌の窓


短歌投稿ページ
選者 短歌誌『未来』同人 渡部光一郎


特選
ふるさとのはなしばかりのとうさんにわたしこのごろにてきたみたい    台所のキフジン
 ひらがな表記が、下二句の話し言葉に説得力を持たせている。

並選
ガソリンが切れないように極月を慎重に行く大胆に行く  暮井戸
 毎年、十二月は気ぜわしい。この歌は現代における極月の把握である。ガス欠などに用心しながら作者は自動車か何かの運転をしているようだ。それにしても「慎重に行く大胆に行く」とは大胆極まりない表現であるが、とぼけた可笑しみがあってよい。

鳥仲間集ふ雨のち晴れの朝望遠鏡の角度揃へて  板柿せっか
 下句が面白い。こういう集いがあるのだなあ。

紫の花は虎の尾きっとそうそうねと返す笑顔のあなた  彩楓
 上句の終わりと下句のはじめの繋げ方に工夫があって良い。

コメント
手指は手指眼球は眼球それぞれに仕舞いて夜へ私が残る  時計子
 ルビについてはいろいろな考え方があるが、この作品ではルビを用いて繰り返したことのメリットが少ない気がする。むしろ「夜へ私が残る」という変則的な表現に面白味を感じた。

佳き人の面差し軽し十三夜畝傍香久山耳成の山  藍 植生
 畝傍香久山耳成の山、と大和三山で一気にたたみかけている点が気持ちよい。「面差し軽し」については読者によって評価が分かれそうである。

腐葉土を洗い清める冷水は凍滝の背でさらさらと言う  桂奈
 主格をはっきりさせるとよい。

生き方は十人十色の草の花 神戸は坂の多き街なり  ケンケン
 神戸はまことに坂が多いまちである。そのことと「十人十色の生き方」とを組み合わせた。謎の多い歌であるが、上句で結論が出てしまっている感じもある。

長男の「帰ってくるよ」きつぱりと「よし」と答へて父弾む  だりあ
 全体的にニュアンスが汲み取りづらく、二音節足りない。歌の字余りは成功率も高いが、字足らずだと成功しないことが多いため要注意である。

よかよかと婆の差し出す晩白柚学ランの手はこはごはのびぬ  久我恒子
 面白いが、どのような状況で作られた作品なのか説明が必要。

障害は個性の一つあの日から夫はでっかい個性を持った  ミセスコナン
 「でっかい」に、作者の思いが込められていると感じる。

菩提寺に「屁っこき嫁さん」笑い咲く鈴鹿景子の一人芝居や  マカロン星人
 「や」で終わるのが適切かどうか要検討。


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自作の俳句を英語に訳そう!

百人百様 E-haiku



評:菅紀子


 おお寒、今年は一気に寒くなったので紅葉がきれいに色づいていないとも聞きます。
 また夏は厳しく暑かったので表面が焼けたり傷んだ葉が多いそうです。E-haikuで労ってあげましょう。

1.
a bullfrog
are you adoring stars
twinkling in the sky

【原句】さんざめく星を恋ふるや牛蛙 穂の美

 特定の星ならばstarsには定冠詞のtheをつけて。さんざめく、というきれいな日本語に対応する単語はなんでしょうね。たとえばsparklingだと少し光量が多そう。


2.
a yellow leaf
got a hole in one
rain celebrates

【原句】黄落のホールインワン祝い雨 穂の美

yellow leaves
getting a hole in one
celebratory rain

a hole in one
by a yellow fallen leaf
rain in celebration

 黄色い落葉を敷き詰めた風景の中ホールインワンを成したと想像します。一葉の色づいた葉がぴたりと穴に落ちた、あるいは一葉の黄色い落葉の脇にホールインワンしたのなら単数で。

【お便り】100年俳句計画を先月から読み始めました!英語で俳句、面白そう!と、早速飛び付いています。17音に日本語でまとめるのも難しいけど、その句の言いたいことを英語で伝えるのも難しい!でもあれこれ考えるのが楽しいです。できるだけ続けていきたいです!(穂の美)

 穂の美さん、はじめまして。私もあれこれ考える一人です。よろしくお願いします。


3.
A old men is cold
black of life
men dicannt.

【原句】咳をして老人煙草を吸いにけり KIYOAKI FILM

an old guy
in spite of coughing
he smokes

an old man
resumes smoking
over coughing

 上記二つの訳例の場合、「老人の咳をしてまで煙草吸う」のニュアンスで訳しました。


4.
young mama i love you
but is happening
winter is kids i sad

【原句】若き母怒り過ぎなり冬の子ら KIYOAKI FILM

young mother
scolding too much
her winter kids

【お便り】英語のテキスト買ってもらって、中一から少しずつ、やり直してます。英語辞書も貸してもらい、助かりました。英語楽しです。 (KIYOAKI FILM)

 KIYOAKI FILMさん、チャレンジの後には楽しみもひとしお。


5.
my rucksack
and my hair
smell of dead grass

【原句】枯芝の匂いリュックも髪の毛も 片野瑞木

dried lawn grass
both my hair and backpack
get its smell

 これだと説明的なので、片野さんの訳を尊重すると

my backpack
my hair
smell of dried grass

 前置詞や動詞を廃し単語を並べる素朴なスタイルのほうが俳味が増すように感じます。


6.
foggy winter
a key of hotel
is thin

【原句】冬の霧ホテルの鍵の薄っぺら 片野瑞木

winter fog
how much the room key is
thin

winter fog
thinness of the card key
of a hotel room


7.
Baseball players voices
It resounds in the hills
The sky is high

【原句】球児らの聲弾む丘秋高し 出楽久眞

Voices of baseball boys
Resonates over the hills
Sky high

 球児という英単語はないようです。野球少年でいいかな。


8.
Blue sky
Coming of birds
Historic sites

【原句】まさをなる空や小鳥の来る史跡 出楽久眞

Blue sky
Birds flocking together
at a historic site

 小鳥は何羽くらい飛んでくるのでしょう。群れなして来るなら flock togetherです。 Bで韻を踏んでみました。

【お便り】こんにちは。なんと!先日、VictoryをVictryと痛恨のスペルミスをしてしまいました。…いやいや、ここは前向きに、『「try」あっての「Victory」』だと言い聞かせることにしました。 (出楽久眞)

 出楽久眞さん、ドンマイ(Don't mind)


9.
Gnaw the Lemon
To live on this island

【原句】檸檬齧ることこの島に生きること ほろよい

To take a bite at a lemon
To live on this island

 gnawは噛み切るのほか、苦しめるという意味もあり否定的なニュアンスを含みます。ひとかじり、というときにはbiteが一般的でしょう。地元の檸檬なら a local lemon


10.
a numerical formula
failed by chance-
a grebe appears

【原句】数式にふとした破綻かいつぶり 久我恒子

the numerical formula
by chance found faulty
a grebe pops up

 この場合数式は特定のもので、その数式が主体的に破綻するわけではないので、数式には破綻が発覚、そのときふいにかいつぶりが頭をもたげた。なんだか面白いですね。


11.
after school
at a teacher's room
many a steamed bun

【原句】放課後の職員室の蒸し饅頭 久我恒子

after school
lots of steamed buns
in a teachers' office

 職員室には複数の教員がいるので教員達のオフィスとなります。


12.
improvised piano
winter like violence

【原句】即興のピアノ暴力的な冬 チャンヒ

improvised piano play
violent winter

 即興はピアノという楽器ではなくピアノ演奏ですね。
 またwinter like violenceだと暴力のような冬。形容詞で冬を修飾しましょう。


13.
all fallen leaves
of the town are
A of the heart

【原句】街の落葉がすべてハートのA チャンヒ

all
fallen leaves in town shape of
the ace of hearts

 心のAではなくハートのエースですね。


14.
Make the air dignified
winter camellia
bloom deep red

【原句】凛として咲くや紅寒椿 たあさん

winter camellia
bloom in deep red
the air dignified


15.
boil gentry a few apples
warm rainy sound
from the outdoors

【原句】林檎煮る外にこまやかな雨の音 彩楓

simmering apples,
subtle sound of rain
in the open

 辞書ではことこと煮るがsimmer、ぐつぐつ煮るはboilだそうです。戸外の微かな雨音が聞き取れるくらいに煮ている音はどんな音でしょうね。


16.
Autumn serene
in the plate of leaf
a soil dumpling

【原句】秋麗葉っぱの皿に土団子 彩楓

serene autumn
a mud dumpling
on a leaf


菅 紀子(かんのりこ)
(有)クラパムコモンカンパニー代表。通・翻訳、メディアによる姉妹都市交流コーディネーター。社名は夏目漱石が下宿したロンドンの地名から。歩道短歌会同人。人文学修士、翻訳修士。松山大学、愛媛大学非常勤講師。(Hailstone Haiku Circle blog ICEBOX Contributor)(漱石と彼のライバル重見周吉、日系移民研究)

応募内容
 自作の俳句およびそれを英語俳句にしたもの(2句まで)
応募先
 フォーム http://marukobo.com/eigo/
 Email eigo@marukobo.com
2月号用応募締切 12月20日(火)


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百年歳時記


夏井いつき

第42回


 有名俳人の一句を紹介するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月紹介鑑賞していきます。


胡麻爆ぜて晴天続く二十日間  木好

 「胡麻爆ぜて」は、炒って爆ぜるではなく、植物として実が熟して爆ぜる状態です。いよいよ「胡麻」が爆ぜ始めたよ、ここのところ続いている「晴天」が今年の「胡麻」の生育をぐんとよくしてくれたに違いないよと、言祝ぐ一句。
 「胡麻」は旱魃に強く、特に生育後期の乾燥に大変強い植物。逆に刈り取りの頃に、雨が多いと生育は悪くなります。「晴天二十日間」は「胡麻」にとっては最高のお天気。「胡麻」の花の美しさ、「胡麻」の実の存在感、それらを日々眺めている人だからこその「晴天続く二十日間」という措辞でありましょう。この「晴天」に感謝をしつつ、今年の見事な「胡麻」の収穫を喜びましょう。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』9月16日掲載分)


胡麻爆ぜて王土は一夜にてほろぶ  とおと

 同じ「胡麻」という季語でも、ここまで違う作品が生まれることに驚きと歓びを感じます。「胡麻」が実を弾かせることからの発想だとは思いますが、たかが「胡麻」という季語から「王土は一夜にてほろぶ」という詩語へのジャンピングに驚きます。
 「王土」とは、文字通り王が治めている領土。「王土」が「一夜」にて滅びるという出来事は歴史上いくらでもあることですが、植物の「胡麻」が「爆ぜて」という小さな爆発が、「王土」の滅亡という大きな爆発となる、詩的連動に感嘆します。「胡麻」の微細な波動が「王土」の滅亡へと繋がるとき、一瞬、蠱惑的な「胡麻」の香りが匂ってくるかのような目眩を感じた秀句です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』9月16日掲載分)


めいげつやだいおういかのめはおおきい  たくみ 三才

この投句には、たくみ君のお母ちゃん(あるきしちはる)のコメントが添えられていました。それが見事な鑑賞になっています。
 「組長、たくみに名月の話を振ったら、何故かダイオウイカの話をはじめました。名月とダイオウイカの取り合わせなんてなかなかないですよね。しかも名月の丸くて大きい感じと、ダイオウイカの目。夜空のイメージと深海のイメージ、悪くないんじゃない?」
 「名月」はただの満月ではなく、一年に一度の中秋の名月を愛でる気持ちを含んだ難しい季語。「だいおういか」という名前との堂々たる取り合わせが天晴れです。そして、三歳の息子のつぶやきに詩があることをキャッチする母ちゃん。それもまた天晴れです。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』9月16日放送分)


沢水の洗顔痛し秋薊  篠田ピンク

 一読、「沢水」という場所情報に加え、「洗顔」の一語によって、前夜はこの「沢」の近くで野営したのではないかと想像できます。野営の朝を迎えての「洗顔」を、「沢水の洗顔」という言葉で端的に表現したのが鮮やか。さらに「洗顔」の感覚としての「痛し」のリアリティ。この一語が、春の「薊」でもなく「夏薊」でもない、「秋薊」という季語の本意と呼応します。
 最後に出現する「秋薊」は、具体的な種ではなく、秋に咲いている薊全般を指す季語。「秋」の一字の爽やかさ、秋冷の感触を連想させる特徴が生かされた下五の選択です。朝の清澄な空気、「洗顔」の「水」の感触。野営の現場が生き生きと伝わってくる作品です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』9月30日掲載分)


冬近し輪ゴムのやうな匂ひして  きとうじん

 「冬近し」はこれといった映像を持たない時候の季語です。定石ならば、中七下五には何らかの映像を取り合わせるべきなんですが、この句に出現するのは「輪ゴム」のみ。しかも「輪ゴム」の「匂ひ」に「冬近し」という季節感を嗅ぎ取っているのですから、この作家の詩的嗅覚は大したものです。
 「輪ゴム」の「匂ひ」って?と思っている人はいませんか。近くに「輪ゴム」があれば、是非嗅いでみて下さい。ちょっと安っぽい化学の臭いだな(笑)と思う人もいるかもしれませんし、輪ゴムをつないで遊ぶゴム跳びを思い出す人もいるかもしれません。冬近い日の太陽もまた「輪ゴムの匂ひ」がしているような気もします。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』10月21日放送分)


 百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


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俳句の街 まつやま

俳句ポスト365



協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


金曜日優秀句
2016年10月度

湿地茸(しめじ)


石づきに湿地ふたたび生えそうな 石川焦点
湿地茸裂く湿った龍のにほひして ことまと
山彦へ少し残さむ湿地茸狩 まどん
ほぐしたるしめぢに木霊二三匹 佐藤直哉
でいだらぼっちの足跡の沼しめぢ茸 樫の木
しゃかしめじ子泣き爺の簑に雨 誉茂子
しめじ踏み砕き桃太郎一行は 初蒸気
兄弟子の白星黒星しめじ裂く ぐわ
姫路城みたいなしめじ桐箱に 小泉岩魚

湿地茸生う同胞多き大穴牟遅神 笑松


12月の兼題
公式サイト内の「俳句投稿」より作品をお寄せください。(※投句期間を過ぎますと投稿ページは次の兼題の募集に自動的に切り替わります。ご投稿はお早めに。)

投句期間 12月1日〜12月14日
鷹狩(たかがり)三冬/人事
じゅうぶんに飼い慣らした鷹を空中に放って、鳥を捕らえる狩り。主に大鷹や隼が使われた。公家や武家のあいだで古くから盛んに行われており、江戸時代に最も隆盛をきわめた。

参考文献 『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


 「俳句ポスト365」は携帯電話からもご参加いただけます。
 「俳句ポスト365」公式Facebookページ開設中! 公式サイトに設置しておりますリンクよりお入りください。毎回の兼題のお知らせを中心にお伝えしながら、皆様の返信欄への書き込みもお待ちしております。


 募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。


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一句一遊情報局



協力: 南海放送


金曜日優秀句
2016年10月度

秋の村雨(あきのむらさめ)

秋の村雨刃物を仕舞ふごと熄まむ  鈴木牛後
秋の村雨去り平然とある野山  内山初美
ランプ小屋秋の叢雨にてかすむ  えらいぞはるかちゃん
湯治場に秋の村雨ランプの灯  笑松
秋の村雨湯気もうもうと登り窯  杉本とらお
秋の村雨画架に絵具と黒い土  てん点
煮え滾る摩周湖秋の村雨に  トポル
秋の村雨太平洋にサーファーに  まゆ熊
秋の村雨この龍はまだ子どもらし  天玲
秋の村雨炉心どこまで溶けている  小泉岩魚

秋の村雨据えてはしまう選果台  妙


うるか

うるか製すまず清めたる酒と塩  朝日
夕光は眩しうるかを仕込む納屋  矢車草
酒飲めぬ阿波の義兄のうるかかな  唐平
船頭のうるかの酒に焼けし声  瀑
旅をする小石は丸し白うるか  あまいアン
腸うるか壺開けし夜の星豊か  ターナー島
うるか食う河童来そうな強き雨  ラグナ
うるか食ぶ日本の底のにほひ食ぶ  緑の手
うるか好きとなんで亭主に知れたのか  瑞木

苦うるか奥まで使ひ切る味蕾  矢野リンド




輪郭は震えるひかり芋の露  マイマイ
りんどうや一輪ごとに海を持つ  風薊
夕焼は空の傷口三輪車  太郎
日輪へ秋色ハーレーダビットソン  優空
ストーブの教室輪ゴム飛び交えり  小市
的には秋思輪ゴム鉄砲放ちけり  亜桜みかり
黄落の散り積む夜の輪転機  下町おたま
闇色のインク夜業の輪転機  樫の木
輪転機寒露と夜を転写して  海田
銃声怒声夜寒を唸る輪転機  このはる紗耶
桃運ぶオート三輪ハノイの灯  析の音

冬近し輪ゴムのやうな匂ひして  きとうじん


柿羊羹(かきようかん)

種のごと尖るや柿羊羹の角  ドクトルバンブー
好物は固まり切らぬ柿羊羹  瑞木
些事ひとつ柿羊羹で忘れたり  もも
柿羊羹水屋に渋の出にけり   優空
茶箪笥の引手ことりと柿羊羹  富山の露玉
右書きの金の看板柿羊羹  ほろよい
結納を終えて柿羊羹甘し  板柿せっか
すすめらるる仰臥漫録柿羊羹  野風
禅寺とフランス人と柿羊羹  稲穂
柿羊羹介護の日々に終わりあり  るい
父の忌はいつも晴れます柿羊羹  ふづき

鶴寿の間へ楓かたどる柿羊羹  このはる紗耶


投句募集中の兼題

投句締切 12月4日


季語ではない兼題です。「森」という字が詠み込まれていれば、読み方、用い方は問いません。季語は当季を原則として、自由に選んでください。

飯櫃入(おはちいれ)三冬/人事
釜で炊いたご飯を移し入れた飯櫃が冷めないよう、さらにその飯櫃を入れて保温するための藁で編み上げられた入れ物。電気釜の出現により、ほとんど見られなくなった。


投句締切 12月18日

名残の空(なごりのそら)仲冬/天文
元は古歌において、恋や離別の感情を抱いて眺める空という意味だったものが転じ、大晦日の、行く年を惜しむ名残つきない空という意味で使われるようになった。

歌留多(かるた)新年/人事
正月の遊びのひとつ。最もオーソドックスで競技会なども行われる「小倉百人一首」の「歌がるた」のほか、「花がるた」、「いろはがるた」などがある。また、あまり一般的ではないが「トランプ」を含めていう場合もある。

参考文献『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句宛先
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとにしたものです。俳句ならびに俳号が実際とは異なっている場合がありますのでご了承ください。


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今回のお題句に対する投句から次のお題句を選び繋げてゆく

疑似俳句対局


選者 美杉しげり

 インターネットを利用しての「擬似俳句対局」
という初めての試み。俳句対局の楽しさを少しでもお伝えできたらと思っています。

今回のお題句
鳴動ののちの鼓動や銀河濃し  鈴木牛後

候補句
のちの世へ木枯し吹いて行きにけり  恋衣
 今月、真っ先に投句していただいたのが恋衣さん。「のちの世」は、後世のこととも、あるいは死後の世のこととも読めそうです。「行き」をひらがな表記にすると、さらに謎めいた味わいになるのでは。

曇りのち雨のち晴れの紅葉山  鈴木牛後
 これも、お題の句から「のち」をいただいての句。さらりと詠まれていますが、雨あがりの紅葉山へ日が射したときの、はっとするほど鮮やかな美しさに惹かれます。

「舌づつみ」ちゃう「舌鼓」お元日  ひでやん
 つい言ってしまいがちですね、「舌づつみ」。(話し言葉としては許容されているようですが)そのうっかりも、お元日だから楽しく笑って許されそう。

鳴き砂や先歩く背に秋惜しむ  越智空子
 きゅうきゅうと砂を鳴らしながら先を歩いてゆく背中。それを見ている作者。「秋惜しむ」に、昨日今日ではない二人の間柄が見て取れるようです。

銀の匙舐めて寒夜を寂しめり  凡鑽
 これが子供なら、誓子の「匙舐めて童たのしも」でしょうが、大人だとこうなるのでしょうね。舌に触れる銀の匙のひんやりした感触に、寒夜の寂しさがいっそう増して。

水鳥の鼓動は極小の波に  天玲
 なぜか夕暮を連想しました。さほど大きくはない水鳥なのでしょう。その鼓動が、かすかなかすかな波になるという句だと読みました。その発想がきれい。

明後日晴れのち曇り大晦日  杉もとたかし
 牛後さんの句と逆に、こちらは晴れのち曇りですね。字足らずのリズムが、逆に歳晩の慌ただしい気分に似つかわしいと思います。

公園の太鼓奏者は着ぶくれて  松尾千波矢
 着ぶくれた太鼓奏者とは愉快。ちゃんと演奏できるのでしょうか。同じ作者の「銀山の間歩通り抜け寒日和」は、句にはっきりした切れが欲しいところ。

酔ひ醒めてベンチに一人蚯蚓鳴く  葉音
 気がつけば周囲には誰もおらず静まりかえっていて、酔いの醒めた身体に夜風が冷たいそんな景。「蚯蚓鳴く」という季語が効いてます。

ゆつくりと冬に入るらし水銀灯  小川めぐる
 徐々に徐々に、厳しい季節を迎えようとしている身のほとり。水銀灯が、その季節の象徴のように青白い光を投げかけて。
龍淵に潜む鼓動を聞く夕べ  佐東亜阿介
 淵に潜んでいる龍の、聞こえないはずの鼓動を聞くという発想が詩的で素敵。「夕べ」は推敲の余地がありそう。

今月の異端
芸能が主戦場なり夏の川  仮屋賢一
 いただいた語が「夏」ということで、「ルールは分かっていますが、敢えて」とのコメント付。今月ではなく先月のお題の句「鳴動が主旋律なり夏の山」へのオマージュですね。

次回お題句
三鬼忌の鼓釦を外すバー  久我恒子
 お題の句の「鼓」から「鼓釦」という、どこかレトロな響きの言葉を選択。この鼓釦はカフスボタンか、あるいはフォーマルジャケットのものか。もちろん女性の服にも使われますが、「三鬼忌のバー」ですから、正装の紳士を思わせます。かしこまった席から馴染みのバーへ移動して、さてという姿は、もしかすると三鬼本人かもしれない……なんて連想も。
 同じ作者の「動乱の兆しは竈猫に訊け」は発想が楽しく、「鳴き龍の震はす伽藍山眠る」の取り合わせにも惹かれました。


美杉しげり
 第8回俳句界賞受賞。4年ほど前から小説も書き始め、短編「瑠璃」で第21回やまなし文学賞佳作。美杉しげりはその時からのペンネーム。


毎月25日頃に、投句フォームにてお題句を発表します。投句締切は毎月末日。

疑似俳句対局投句フォームアドレス
http://marukobo.com/taikyoku/


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鑑(み)るという冒険


〜映画篇 演劇篇〜

文&俳句 猫正宗

第五十回
『スタートレック BEYOND』&『ハッピーモンスター』


 『スタートレック』は'68年から(日本では『宇宙大作戦』として'69年から)放送、その後4本のシリーズ、13本の映画、1本のアニメが制作され、欧米で圧倒的な人気を誇り日本でも根強いファンを持つアメリカのSFドラマだ。
 本作『スタートレック BEYOND』はテレビシリーズ第一作目をリブートした第3弾。 
 そのテレビ第一作が本放送時、いかに画期的で進歩的であったかは「SFマガジン」'16年10月号を読んでもらえればと思うが、当時のアメリカの問題を盛り込みつつ、そこを乗り越えようとする物語をSFの形を借りて展開していた。無論、単純な娯楽回もあったし、個人や時代等々の限界もあった。また、その描く理想の根底にあるのは、所謂アメリカンウェイなので、そこを共有していない者にとっては鼻白むところだってあった。それでも、この作品は「未来」の「理想」を描こうとしていたのだ。
 さて、私が『スタートレック BEYOND』を観に行った日、同時刻に邦画2作品が始まっていた。それらに比べ、本作は明らかに観客が少なく、年齢層もやや高めだったようだ。洋画だから? SFだから? なじみのない作品だから? それとも若者から「未来」や「理想」が失われてしまったのだろうか。いや、そんなことはないはずだ。本シリーズの、そして本作にもあった有名なナレーション「宇宙、それは最後の開拓地」しかし、それは至る所に残っている。どこもかしこも開拓地だ。そして、僕らの最後の開拓地はいつだって「未来」なのだから。

机上にも銀河ここにも開拓地

 そんな開拓地の一つ?を描こうとしたのが『ハッピーモンスター』(劇団狩潔亭(仮)、作:霜月猫、演出:井手口茜、出演:山戸美優、高田涼介、黒田早希、'16年10月9、10日、シアターねこ)「三百六十五歩のマーチ」を軸に描く、子どもをつくらないことを選択した兄妹(姉妹?)と母の物語。役者陣(特に兄と妹)のやりとりのテンポや間が絶妙で、気持ちの良い作品となっていた。テーマの扱い方や表現の仕方はやや古めかしいようにも思ったが、だからといってテーマそのものが古びたわけではない。実際私自身も子どもをつくっていないことを、つい最近ネチネチと言われたばかりだ。本作にはオープニングとエンディングに、子どもをつくらないことによって次代に引き継がない、あるいは引き継ぐものがないことをイメージさせるようなシーンが、やや形を変え挿入される。しかし、本当にそうなのだろうか。子どもをつくらない人間は次代に引き継いでいくものがないのであろうか。『スタートレック』が例えば、アメリカのテレビで初めて、アフリカ系の女性を自立した責任ある存在として描き、多くの少数者に勇気と希望を与えたように、芝居を上演すること、本文の様に益体もない文章を書くこと、いや、そんなことすら関係なく、人と人とが出会うことそれだけで、人は何かを残していくのではないでしょうか。それは私の様な義務を果たしていない人間の言い訳、所詮、引かれ者の小唄かもしれませんが……。
 それでは、みなさん「長寿と繁栄を」。

歩いても立ち止まっても冬星座


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岡田一実の句集の本棚


文 岡田一実


夢洗ひ
恩田侑布子 著

発行:KADOKAWA(2016年初版)
176ページ
定価:本体2700円+税


 著者の第四句集。
古ひひな咽に雨のふりしきる
 蔵から出した古雛に雨がかかるといった実景も想像でなくはないが、情報を削ぐことで夢幻の世界の甘美な雨が古雛の咽だけを濡らしているような感覚をもたらす。
百態の闇をまとひて踊るなり
雪底に水のかよへる神楽かな
しやがみこむ背となりて門火焚く
 門火の頃は夕暮れ時で、体を単に「しやがみこむ背」と認知する。表は彼岸を見ているのだろうか。影しかない背が寂しい。
核の傘いくつひろげて天の川
羊水の雨が降るなり涅槃寺
胎に入る白象の眼の涼しさよ
瞑りても渦なすものを薔薇とよぶ
緑雨にもふところありぬ夢の淵
川床にかがよふ日差冬はじめ
富士に野に八十八夜の水走る
手を触れて水の切れ味紅葉川
獅子舞や大空にあるみ応へ
 雅語や古語、地名、神話などを巧みに配して読者を幽玄の世界へと誘う。



櫻翳
藺草慶子 著

発行:ふらんす堂(2015年初版)
136ページ
定価:本体3000円+税


 著者の第四句集。
息白く歩けば星の濃かりけり
 冬の夜、不意に気づく息の白さに驚くことがある。息が白く可視化されることによって世界が、星のあかりさえも濃く感じられてしまう。
昼夜なき盆提灯をともしけり
 盆提灯の華やかさは夜こそ目立つが、昼夜通して灯っている盆提灯には魂を迎えるということへの倦怠感までもにじむ。
その翳の匂ひなりけり藤の花
踏む影のそばからあふれ盆踊
けさ冬の机の影が椅子の上
揺れながら照りながら池凍りけり
一斉にもつれ上がりて鯉幟
夜の鏡ぽとりと火蛾の落ちて這ふ
とほるたび鏡に映り夏館
 生は影が濃く映る時に最もきわやかなのかもしれない。装丁、間村俊一。「屋根」「星の木」所属。第四回星野立子賞受賞作品。


岡田一実(おかだ かずみ)
 2014年「第三回 大人のための句集を作ろう!コンテスト」優秀賞受賞。2014年「浮力」にて現代俳句新人賞受賞。現代俳句協会会員。「いつき組」所属。「らん」同人。第二句集『境界 ―border―』(マルコボ.コム)。


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mhm通信


第68回

文 暇人


第15回まる裏俳句甲子園予選方法など

 今年もあとわずか、年を越したら待っているのは「まる裏俳句甲子園」です。今回はまる裏に関するお知らせとご協力願いです。
 開催日、場所そして改訂された料金(入場:500円、エントリー料:700円)は前回の記事通りです。今まで曖昧だった18歳未満の料金について、入場は無料ですが身分証明書のご提示をお願いすることにしました。ただし、18歳未満でもエントリーされる場合は1200円が必要です。
 そしてまる裏運営のためにはどうしても皆様のご協力が不可欠。まだまだパンフレットの広告主を募集しています。3000円枠、5000円枠がございます(デザイン料は別途)。12月11日(日)まで受け付けております。ご協力頂ける方は事務局まで御連絡下さい!よろしくお願い申し上げます。
 mhmでは、以前より予選部分について検討を重ねて参りました。参加者の増加により今までのやり方では進行に支障が生じるようになったからです。今回「句会ライブ」というベースは残しつつも進行を変える計画です。
 具体的には当日会場にて席題を発表し5分間で俳句を作っていただくところまでは変わりません。
 できあがった俳句を、皆様にスマートフォンやタブレットなどを使用していただき、チームごとに入力をお願いしたいと思っています。入力が難しい方はスタッフがお手伝いします。また今まで通り、投句用紙での受け付けも行います。
 投句後、チーム紹介の間に三名の審査員が裏で審査をし、点数の低い句から発表を行います。
 最後に上位句の中からボーナス句会ライブを開催、最優秀句にはボーナス点を加算し勝ち抜けチームの発表となります。
 また当日は、例年通りフェイスブック審査も行いますので、ぜひスマートフォン、タブレットなど持参してご参加ください。ちなみにフェイスブック審査員に参加するにはmhmのグループに登録が必要です。(http://www.facebook.com/groups/mhm575/
 なお、予選の方法など、変更になる場合があります。もっと皆様が楽しめるやり方をギリギリまで検討しています。ご了承下さい。
 なお最新情報は随時まる裏俳句甲子園のホームページ(http://e-mhm.com/maruura/)もしくはFacebookにて公開します。そちらもご覧下さい。
 当日会場内に愛媛CATVなどの番組収録のためビデオカメラが入る場合があります。また取材や記録用にカメラで撮影させていただきます。予めご了承願います。

北海道からスペシャル審査員!

 最後に決勝の席題は「雪」です!
そして今回審査員として、雪の本場北海道から五十嵐秀彦さんに来て頂く事になりました。松山とは異なる季語の解釈など、審査も楽しみです。


 mhmでは松山市内外問わず会員を募集中です。原則、毎月最終金曜日19時からマルコボ.コムにて定例会を行います。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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続 南極を詠もう!


No.7

一般研究観測担当隊員
源 泰拓(俳号 源笑)


 「100年俳句計画」読者のみなさま、こんにちは。第57次日本南極地域観測隊越冬隊員のみなもとです。
 私は、10月8日から24日まで16日間、昭和基地を離れて、南極大陸の内陸を旅してきました。といっても(もちろん)遊びに行くのではありません。雪のサンプルを持ち帰ったり無人の観測装置のメンテナンスをしたり、研究のための仕事をいろいろと頼まれての、いわば「出張」です。
 旅の途中は周りに季節感を感じさせるものがなく、昭和基地よりも句作に苦労しましたが、ご笑覧ください。

運動会延期の報を聞いて発つ  源笑
 ふぶきのため、予定よりも3日遅れての旅立ちになりました。日本時間で土曜日の午後2時ごろ、こどもの小学校の運動会が、やはり悪天のために延期になったよ、というのが出発まえ最後のメールでした。

風光る世界は二色青と白  源笑
 南極大陸を旅していると、まわり360度がすべて地平線、という光景が普通になります。日本ではなかなか見られない景色です。お天気がいいときは、見渡す限り空の青と雪の白です。

いわし雲追い立てられて雪上車  源笑
 昭和基地の気象担当隊員からお天気の情報を無線で教えてもらいますが、この日は夕方から吹雪になるとの予報でした。朝のうちは晴れていたのですが、いつしか雪上車のうしろから、悪天の前触れとされるいわし雲が広がってきました。

南極のシュラフの中の春の夢  源笑
 夜は、車内に寝袋をひろげて休みます。一酸化炭素中毒などの危険を避けるため、寝る前に雪上車のエンジンを止めます。暖房もストップするので、一番寒いときには室内がマイナス11度くらいまで下がりました。それでも、眠れなくて困る、ということはありませんでした。


今月の南極吟行句   希望峰 編

運動会延期の報を聞いて発つ  源笑
 句の内容だけでは、大陸内陸地に発ったということは読み取れないのでしょうか、それでもどこかへ発ったということはわかります。親御さんの目線で考えると、「楽しみにしていたのに残念だっただろうなあ…」という、お子様へのまなざしが感じられますね。リズムもいいと思いますし、最後の「発つ」で場面がくっきりと変わるところがいいなと思いました。つくりごとではなく、実感があります。

風光る世界は二色青と白  源笑
 確かに、南極ならではの光景ですね。私のPCのデスクトップ背景にしたいくらい美しいです……。「二色」という表現は、下五の「青と白」で伝わるかと思いました。「世界」という言葉は、ロマンがあってかっこいいですが、「世界」の中の「何か」を具体的に詠みこむことこそが俳句のおもしろさなのかな、と思います。今年の「俳句甲子園」に「一切は足音と風天の川/鶴岡夏鈴」という句があったことを思います。この写真から広がる世界に近いものがあるかもしれません。

いわし雲追い立てられて雪上車  源笑
 気象担当隊員から無線で天気を聞く、というのもそれだけでかっこいいなと思います(笑)。書かれている風景はとてもダイナミックですね。内容としてはいわし雲「に」雪上車「が」追い立てられるということだと思いますが、原句では助詞「に」が省略されているので、いわし雲が追い立てられているようにも読めてしまいます。ここは、575の形が崩れてしまったとしても、「に」を入れるべきでしょう。

南極のシュラフの中の春の夢  源笑
 これは、源さんにしか書けない句だと思いました。下五の春の夢が、どんなものだったのかは説明されていません。だから、一般読者にその想像の余地が残されているのが面白いと思いました。寒そうな夢ですね。室内がマイナス11度……26度の暖房を入れた室内で寝ている私には、想像するだけでも恐ろしいですが。

寒月と眼に線のあるやうな   希望峰


投句募集
南極の写真から発想した俳句を募集します。
投句された俳句は、スウェーデンに留学した経験のある希望峰さんが紹介します。
また投句の中から1点、写真とコラボレーションした作品として掲載いたします。
俳句は専用の投句フォームにて受け付けます。
http://marukobo.com/antarctic/
投句締切12月3日(土)


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100年俳句計画 掲示板




テレビ、ラジオ

NHK Eテレ『NHK俳句』
 日曜6時35分〜7時
 (再放送 水曜15時〜15時25分)
 夏井いつきが第3週選者を担当
12月18日(日)、再放送 21日(水)
募集兼題 「節分」または「追儺」
投句締切 12月10日必着
 投稿は葉書1枚に1句。選者名、兼題、俳句1句、名前、年齢、電話番号明記。
 宛先 〒150ー8001 NHK「NHK俳句」係
 ホームページからの応募も可
http://www4.nhk.or.jp/nhkhaiku/


NHK 総合テレビ(愛媛のみ)
  「えひめ おひるのたまご」内
隔週火曜
 『みんなで挑戦! MOVIE俳句』
12月6日(火)、20日(火) 11時40分〜


TBS系列局 全国ネット
 『プレバト!!』
毎週木曜 19時〜19時56分
 夏井いつきが俳句の査定を担当


南海放送
 松山市政広報番組
 『大好きまつやま 〜しあわせことば塾〜』
毎週火曜 20時54分〜21時
(再放送 日曜11時40分〜11時45分)
 夏井いつきが塾長として出演


南海放送ラジオ
 『夏井いつきの一句一遊』
毎週月〜金曜 10時〜10時10分
  「一句一遊情報局」のコーナー参照


FMラジオバリバリ
 『俳句チャンネル』
毎週月曜 17時15分〜17時30分
(再放送 火曜7時15分〜7時30分)
投句募集兼題
「重ね着 寒月 小晦」…12月4日締切
「双六 冬菫」…12月25日締切
 WEB http://www.baribari789.com/
 mail radio@baribari789.com
 FAX 0898(33)0789
  投句には本名 住所をお忘れなく!
  各兼題「天」の句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。

 各番組の放送予定は変更される場合がございます。新聞などで最新情報をご確認ください。


執筆           

松山市の俳句サイト
 『俳句ポスト365』
http://haikutown.jp/post/
 「俳句ポスト365」のコーナー参照


テレビ大阪俳句クラブ
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/


ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」(夏井いつき選)
  毎週日曜タブロイド判8ページ


朝日新聞愛媛俳壇(夏井いつき選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。
 裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。
 朝日新聞松山総局(〒790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。


愛媛県《吟行ナビえひめ》句&写真
俳句選者 夏井いつき
写真選者 キム チャンヒ
 募集期間 毎月1日〜25日頃締切
 応募先
http://www.iyokannet.jp/ginkou/
 問合せ 愛媛県観光物産課
電話 089(912)2491


イベント・講演等

日本フルハップ第2回女性交流会
 夏井いつき句会ライブ「あなたも今日から俳人です」
12月1日(木)14時〜15時30分
 帝国ホテル大阪(大阪府)
 日本フルハップ会員事業所の女性加入者対象。
申込 問合先
 日本フルハップ福利厚生事業部
電話 06(6494)3316


100年俳句計画 大忘年会
12月3日(土)18時30分〜21時
 いよてつ島屋
9階 ローズホール(愛媛県)
 大人 6500円
 大学生以下 4000円
 小学生以下 2500円
申込受付は締め切りました。
問合先 マルコボ.コム
電話 089(906)0694


第15回瀬戸内海俳句大会
12月4日(日)
 吟行会 9時〜12時
 忽那諸島を吟行します。
 表彰式 13時30分〜16時30分
 中島総合文化センター(愛媛県)
問合 申込先
 瀬戸内海俳句大会実行委員会
電話 089(997)1181


愛南町三校合同句会ライブ
12月7日(水)13時30分〜15時
問合先 内海公民館
電話 0895(85)1021


済美平成中等教育学校
夏井いつき句会ライブ
 12月8日(木)13時30分〜15時20分
 済美平成中等教育学校(愛媛県)
問合先 済美平成中等教育学校
電話 089(965)1551


第15回土岐市文芸祭15周年記念講演会
 夏井いつき句会ライブ
12月11日(金)14時〜16時
 土岐市文化プラザ サンホール(岐阜県)
問合先 土岐市文化プラザ
電話 0572(55)5711


京都女子大学キャリアデザイン講座
夏井いつき講演会「夏井いつきの選んだ仕事 〜教員から俳人へ〜」
12月14日(水)14時45分〜16時15分
 京都女子大学(京都府)
 在学生対象。
問合先
 京都女子大学キャリアセンター
電話 075(531)9177


NHKそれいけ!俳句キッズ 本選
12月23日(金)13時〜15時30分
 松山市立子規記念博物館 講堂(愛媛県)
 観覧無料(要申込)
郵便はがきに、〒郵便番号、住所、氏名、電話番号を明記し、
〒790−8501 NHK松山放送局「俳句キッズ」観覧係まで。
 申込締切12月9日(金)必着
 応募多数の場合は抽選となります。


朝日カルチャーセンター
 夏井いつきのクリスマス句会ライブ
12月24日(土)14時〜16時
 中之島フェスティバルタワー12階 アサコムホール(大阪府)
 会員 3456円
 一般 3996円
問合先
朝日カルチャーセンター中之島教室
電話 06(6222)5222


兵庫県社会福祉協議会主催
 はじめての方でもできる?
 赤ペン先生「夏井いつきの俳句を楽しもう!」セミナー&ランチ
12月25日(日)10時〜13時30分
 ANAクラウンプラザホテル神戸(兵庫県)
 互助会および福利厚生センター会員とその家族対象。
 申込受付は終了しています。
問合先
 兵庫県社会福祉協議会 福祉事業部
電話 078(242)4635


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魚のアブク



読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは他の投稿に添えてお寄せください。


トンボ玉 俳句を始めて1ヶ月。17音に大きな宇宙を見つけました。夏井先生の変幻自在の添削に、日本語の豊かさ、偉大さに改めて気付かされました。一日3句を目標に頭をひねっております。

葉音 遅れてきたいつき組ファンです。初めて10月号を手にして……とりあえず詰め俳句から始めます。

うに子 ジャズ句会百回開催おめでとうございます。

出楽久眞 吟行と俳句大会に参加しました。俳句大会では、ベテランの方の句に触れて、その奥深さと軽みを勉強させていただきました。

ケンケン 俳句とランナーの「二刀流」を目指します! 愛媛マラソンに出場されるみなさんに負けないようにガンバロウ!!

元旦 NHK俳句では似て非なる季語で句を募集してますよね。とても面白い企画だと思います。でもせっかく2つの季語があっても紹介されるのは、どちらかの1句です。これをパクって2句セットで募集して、似て非なる季語をどう詠んだかを並べて紹介するというのは、いかがでしょうか。もう少し捻りがいるかもしれませんが。

編集室よりお詫び
 インターネットの投稿フォームをご利用の方から「いつもは届く、投稿の確認メールが届かない」というご連絡を多くいただいておりました。確認いたしましたところ、利用しているシステムの仕様変更が原因でしたので、新しいシステムへの対応を行わせていただきました。現在は確認メールがお届けできているかと思います。ご利用の皆様にはご不便をおかけいたしまして、申し訳ございませんでした。


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鮎の友釣り


第221回


俳号 たあさん

前回 砂山恵子さん フェイスブックで知り合いました。この方の俳句は抜群のセンスです。お家では俳句作りもお仕事もそれ以外のことも精力的にやっておられて、エネルギッシュな女性だなぁといつも感心しております。

自己紹介 俳句を始めて2年4ヶ月ほどになります。2年前に大街道で俳句甲子園を見て、夏井いつき先生にお会いし、ご挨拶をした頃からです。両親の死後2年近く苦しんだうつ病からやっと抜け出し、外を出歩き始めた頃でした。俳句はまだ知ってる季語も少なく非常に下手です。でも分からないことはいつも辞書を引いて努力はしていますよ。
 仕事は歯科技工士をやっていましたが57歳の頃、母の介護中に私自身が心筋梗塞になってしまい、それ以来仕事はしておりません。現在は俳句のほかに、伊予椿を挿し木で育て花を咲かせることを楽しんでおります。スポーツは子供のころから野球が好きです。

次回 西条の針屋さんへ フェイスブック、いつき組リスナー班のお仲間です。いつも「おっ」というようないい句を作られる方です。ラジオの記念パーティでご一緒しました。お仕事が私のやっていた仕事と近い感じがして親しみを感じております。



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告知




春夏秋冬(しき)笑顔まつやま福祉五七五

主催
松山市社会福祉協議会
有限会社マルコボ.コム(ふくし句会・ハイクライフマガジン『100年俳句計画』)選句

協賛
株式会社いつき(ギフトのデパート)社会福祉協議会賛助会員



福祉をテーマにした秋の五七五
結果発表


会長賞
ばあちゃんの外泊燕帰る朝  竜胆(松山市)

優秀賞
看護師の手の甲のメモあたたかし  みつよ(熊本県)
コスモスや母を励ます万歩計  藤ア由希子(福岡県)
明日からは怒るのやめよ野紺菊  平岡喜代美(松山市)

入賞
徘回の妻愛おしい秋桜  重見典子(松山市)
菊の香やくり返し読む妣の文  星地清子(松山市)
尻拭けば有難とねつて文化の日  未貫(石川県)
明日のこと明日にまかせて障子貼る  森サトミ(松山市)



福祉をテーマにした 冬の575募集中
締切2017年1月31日

応募方法
 「春夏秋冬笑顔まつやま福祉575」係 宛に、ハガキまたはFAX、または、インターネットの応募フォームにて応募して下さい。

送り先
790-0808 松山市若草町8番地2
 松山市総合福祉センター
 社会福祉法人松山市社会福祉協議会
 総務部 施設管理課
 FAX番号:089-941-4408 
専用フォーム
 http://www.marukobo.com/egao/

賞品 「松山トリコ」製作
 大賞(松山市社協会長賞) 道後温泉湯玉トートバック(1点)
 優秀賞 おじゃみクッション エコバック付き(2点)
 入賞 紙の湯カードケース(5点)

発表 ハイクライフマガジン『100年俳句計画』10月号(予定)ほか



生まれてから現在までの代表句募集!

 1月号特集は、毎年恒例、皆さんからの自選三句を掲載した「代表句集」です。代表句は来年のスケジュール帳(裏表紙)にも掲載予定です。沢山の方の参加をお待ちしております。

募集内容
 あなたの生まれてから現在までの代表句三句(一人一俳号まで)
 代表句についてのコメント(コメント全体で100字以内厳守)
 お名前、俳号(ふりがな)、年齢、住所、電話番号を必ず明記の上、宛先・件名を「代表句集2017」として本誌編集室までお送り下さい。

 俳号と俳句には、よみがなを付けてお送り下さい。年齢は鑑賞の参考とするため句集に掲載させていただきます。御了承下さい。

専用ホームページ
http://marukobo.com/3ku

締切 11月30日(水)必着
なお、応募対象者はハイクライフマガジン『100年俳句計画』定期購読の方のみとさせていただきます。ご了承下さい。



会話形式でわかる近代俳句史超入門
文 構成 青木亮人
単行本化準備中!
連載は暫くお休みします。ご了承ください。


編集会議開催
 編集会議は、2ヶ月に1度開催しています。年間購読をされている方なら、どなたでも参加できます。また、Eメールなどでのご意見もお待ちしております。
次回編集会議
日時:1月20日(金)(予定)18時〜
場所 マルコボ.コム 松山市永代町16-1
対象 本誌年間購読者
申込先 100年俳句計画編集室
E-mail magazine@marukobo.com



裏からGO!! (作者 藤田夕加さん)

第15回
高校生以外のための まる裏俳句甲子園

主催 まつやま俳句でまちづくりの会
共催 松山市教育委員会

日時 2017年1月8日(日) 予選 9時30分 集合 本戦 13時00分〜 (12時30分開場)
場所 松山市立子規記念博物館(松山市道後公園1-30)
入場料 500円 エントリー料 700円(エントリーには計1200円が必要です)
当日パンフレット広告募集中(1口3000円〜)

お問い合わせ
Eメール mhm_info@e-mhm.com
電話 (089)906-0694 マルコボ.コム内(担当 キム)


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編集後記


キム チャンヒ

 2007年にスタートした選評大賞は、今回で10回目を迎えた。
 当初、散文である選評の高みを目指すことも、俳句という文芸の高みを目指す事に通じると思い企画した。
 コンテストが始まったばかりの頃は、俳句に込めた言葉にならない情景や感情を、散文に移し替える段階で破綻させてしまう作品が多数あった。しかし、今回、そんな作品は非常に少なくなり、入賞作品には、俳句の選評という粋から昇華し、魅力ある文芸として新たな命を与えられた作品が揃った。しかも、最優秀賞として2点選ばれるほど、本コンテストの作品は読み応えのある素晴らしい文芸に育ってきたように思う。
 俳句が俳句だけでベストセラーになる日はまだまだ先かも知れない。しかし、俳句の単純な解説ではなく、俳句に寄り添った新しい文芸として、選評が見直され、沢山の方に読まれる日が先に来るかもしれない。そんな手応えが、今回の入賞作品から感じられた。
 この選評大賞が、次の俳句表現の一つの姿として確立する、そんな次の10年を夢想して止まない。


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次号予告


230号
1月1日発行予定

生まれてから現在までの代表句集2017
など


お得で便利なマルコボ.コム直販定期購読! 巻末の案内をご覧ください
お申し込みの方へ、毎月末頃に最新号を送料無料でお届けいたします!
(住所変更の際は必ず編集室までご連絡ください)

『HAIKU LIFE 100年俳句計画』は以下の書店でもお買い求め頂けます。

愛媛県
 明屋書店 ※一部店舗のみ
 ゆらり内海(愛南町)
 原田書房(今治市)
 子規記念博物館(松山市)
 紀伊國屋書店松山店
 ジュンク堂書店松山店


HAIKU LIFE MAGAZINE 100年俳句計画
2016年12月号(No.229)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子

2016年12月1日発行