100年俳句計画4月号(no.221)


100年俳句計画4月号(no.221)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
亀鳴く てん点


特集
第5回 大人のための句集を作ろう!コンテスト
結果報告&優秀賞作品


好評連載


作品

新100年の旗手
海田/松尾千波矢


百年百花
 亜桜みかり/十亀わら/谷さやん/中町とおと


新100年への軌跡
 俳句/脇々/中西亮太
 とりとり/亜桜みかり


選者三名による雑詠俳句計画
関悦史/阪西敦子/桜井教人


へたうま仙人/大塚迷路

自由律俳句計画/きむらけんじ

詰め俳句計画/マイマイ

短歌の窓/渡部光一郎

百人百様 E−Haiku/菅紀子



読み物
美術館吟行会/猫正宗
Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
クロヌリ/黒田マキ
観るという冒険/猫正宗
歳時記「無季」がバイブル/日暮屋又郎
百年歳時記/夏井いつき
mhm通信/若狭昭宏
南極を詠もう!/渡辺浩志

読者のページ
俳句ポスト365
一句一遊情報局
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




亀鳴く
てん点

 我家には21歳になる草亀がいる。来た頃は頸の緑と白の模様が美しく、女子に違いないと「亀子」と名づけた。活発な亀子は餌に釣られて衣裳ケースの中を駆け回る、尾と後ろ足の三点で直立し結果仰向きに倒れ助けを呼ぶ、ケースを脱走し連れ戻されるのを楽しむ、等の日々を送って来た。
 ところが近年、頸筋の模様が消え甲羅が黒化し始めた。「もしかして亀子は男子?」「まさか」と言う家族の傍で、当の亀子は円らな瞳を向け女子を訴えているかに見える。
 『亀鳴く』が想像上の季語だと知った時私は仰天した。声帯も歯もない亀だが歯ぎしりのように「ぎゆっ」と喉奥から発する声は鳴いているのではなかったのか……。
 亀子は陽の匂い一杯の欅の葉の中で冬眠し四月半ばに目覚める。そう、もう直ぐ! 亀子は今年鳴くかもしれない。


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特集

第5回大人のための句集を作ろう!コンテスト


結果報告&優秀賞作品


 昨年募集を行った「第5回大人のための句集を作ろう!コンテスト」には、46作品の応募がありました。
 36人による大人コン選考会員の審査により、大塚迷路さんの『誰か居る』が最優秀賞に決定しました。また優秀賞は、クズウジュンイチさんの『すこしばか』、河野しんじゆさんの『職歴欄』、ふづきさんの『見出し』、此花 悠さんの『静電気』、日暮屋さんの『無名の人』、渡辺瀑さんの『散髪屋の電話』、鯛飯さんの『冬青空』の七作品に決まりました。
 今月号では付録の最優秀賞句集に加え、優秀賞作品および選考会員による選考評要約をお届けします。選考評を参考にしつつ、各作品をじっくりと味わっていただけたら幸いです。


『コンテストの経緯』
編集長 キム チャンヒ

 本コンテストは、夏井いつき氏とキムとが出来るだけ多彩な作品を最優秀作品候補として選び、その中から大人コン選考会員の投票によって、最優秀作品を決定します。
 今回、最優秀作品候補として選ばれたのは8作品。この中には、過去に優秀賞を受賞された方もおり、このコンテスト全体の作品レベルが、じわりじわりと上がっているのを実感しました。一句一句の面白さはもちろん、81句の作品全体を通して力のある俳句が並んでいる作品を、最優秀賞作品候補として選びました。
 大人コン選考会員は、この8作品の中から最優秀賞作品に推薦する2作品または3作品を選び、2作品の場合はどちらか一方の作品に2点、もう一方に1点を付け投票。3作品の場合は各1点ずつ付けて投票。その合計点の最も高い作品、大塚迷路さんの『誰か居る』が最優秀作品となりました。
 「ヘタウマ仙人」でおなじみの大塚めろさんは、本コンテスト開催時から毎年全てに応募されており、今回で5回目。その内、過去に2回、優秀賞を受賞されております。毎年81句を揃えてくるというだけでも、驚愕の俳句作家なのですが、そのクオリティの高さは驚きに値します。そして今回遂に、最優秀賞を獲得されました。
 俳句は一句ごとに評価される文芸ではありますが、俳句作家は、作品集で評価されるもの。本コンテストの目指す姿は、新しい俳句作家を育み、俳句の次の世界を切り開こうというものです。大塚めろさんの受賞により、また一歩、その夢に近づいたように思います。


第5回選考評要約
大人コン選考会

 選考会員から寄せられた選後評を要約することで第5回「大人コン」のご報告と致します。

「誰か居る」 大塚迷路
 得票16名 合計22点

 とにかく作風が自在。単純明快でありつつも、中に朴訥とした俳諧味が潜む。虚の世界を垣間見せるような詩的な作品もある。主体と客体を自在に行きつ戻りつする81句に通底して、作者の対象物に対する自他を区別しない慈愛の念がある。見るものへのやさしい眼差し、落ち着き、心のゆとり、生きることに対する作者の達観さえも感じる。話し言葉がそのまま俳句になったような句がほどよいアクセント。写生が効いていて、しかも句に奥行きがあるものもある。発見の佳句と、感情移入によって独自性を得た佳句が魅力。発想の豊かな句が多く、断定力が高い。心に響くユニークなヴォイスを持つ句集を我々の代表として世に出したい。「結び目は影の集まり冬に入る」「着水の水鳥水を疑わず」「裸木の詩を得てよりの夜の船」「薄氷になり切れぬ水犬が鳴く」「次の野へ野火の切先また猛る」「水替えて金魚より水ばかり見る」「今更だがそれは国宝だぞ毛虫」「空蝉のみつめる蝉の七日間」「夕立の中で思うことではない」「秋の蝶次の悲しい日には泣こ」

「見出し」 ふづき
得票16名 合計21点

 リズムが心地よい。作者は定型を強い味方につける手法を熟知しているのであろう。自在で、豊かな詩情性が漂っている。易しい言葉と優しいまなざし。しかも、精緻な観察、時事、生活句、現代の生命観、明確な戦争反対、鮮明な社会詠を織り込んでおり、振幅が大きい。句と句をバランス良く配置して、世界観ができている。取り合わせの句の距離感が絶妙で、嫉妬を覚えたほど。タイトルのように、新聞に載っていそうな身近さがよかった。起承転結の「起」「結」に佳句が多く、作品への引力や読了感の支持に繋がる。「くちばしに蚯蚓は光りつつ縮む」「望郷のたとえば馬刀の穴へ波」「百合の根は琥珀に触れたかも知れぬ」「西日より来てキリストを説く女」「蝌蚪散り散りやヘリコプターで着く臓器」

「無名の人」 日暮屋
得票10名 合計14点
 プロレタリア俳句の系譜を感じる。強い主観と反骨精神と独特のリズムによって個性的な世界観を打ち出す。ことばの斡旋は注意深く的確になされており、生々しい叫びの中に少年のようなナイーブさや、身近なものたちを不器用に愛しむ男の心が垣間見える。巧い作家はこれから先もたくさん出てくるだろうけれど、これほどの暴れん坊ぶりを発揮できる作家がいるだろうか。今の自分のありのままを全力で詠う作者に、喝采を送りたい。「爵位返上に人々は野ばらの花を」「あれ以上は怖かった遠泳の黒い雲」「虫も殺さぬ妻の膾となれば裂くこと裂くこと」「打ち上げは失敗ロケット良夜に立ってなさい」「躑躅の喝采浴び無名の人でいる」

「冬青空」 鯛飯
得票11名 合計14点

 全体に鳥の気配と水の匂いのする作品。対象をじっくり観察することで句にリアリティがあり瑞瑞しい。繊細な叙情性と詩心を濃やかに表現する力が魅力。配列のバランスも良く、読み手の心にすんなりと入ってくる。「囀やてのひらに汲む水甘し」「くちばしに米搗蟹を食った砂」「日蝕や襤褸のごとき鵜の翼」「「金木犀の匂い」と書いて渡す地図」「冬の草ぱんとならしてつまらない」

「静電気」 此花 悠
得票11名 合計12点
 詩情が溢れ、耽美。句群から見える色彩の豊かさ、文語表現の美しさ、歴史的仮名遣いの効果などに惹かれる。比喩の言葉も作者独特かつ詩的。どことなく宗教的でしんと静かな読後感。ことばの斡旋が美しい。「蛇穴を出て水のよな目蓋欲し」「日雷ピアノは沈黙の大器」「とんぼ等は寄るとさはるとメロスのこと」「いにしへにいにしへありき雁のこゑ」「美しき鰭ひらめかせ歌留多取る」

「散髪屋の電話」 渡辺瀑
得票10名 合計11点

 正統派山岳俳句。山の香の素材を己の中で咀嚼し昇華して、透明な詩の言葉として産みだしている。時折虚の世界を織り交ぜながらの構成も巧い。「炭酸の弾ける如く樹氷鳴る」「何処より何時より膝のなめくじら」「夏川や牛の閊える沈下橋」「花野にて受ける散髪屋の電話」「鯨鳴く夜なり戦禍がまたひとつ」

「職歴欄」 河野しんじゆ
得票5名 合計7点

 展開に意外性があって一句の最後で読み手をさらに惹きつける力がある。単語の選び方が丁寧。タイトルと内容に裏切りがなく、人物像が浮かび上がる。「香水や飛び立つやうに辞職せり」「耳の水ころりと出して桜桃忌」「放送で雨知る昼の冷房病」「それから蝉に止まられた人となつた」「春三日月スプンで燃やす角砂糖」

「すこしばか」 クズウジュンイチ
 得票6名 合計7点

 卑近な日常と不穏さの同居。程よく諧謔味もある。特に、時折挟まれる口語句やひらがなの多い句には、やわらかさの中に独特の叙情性が感じられる。「福引の一等の象当たらぬやう」「丸薬のこぼるるやうに熊ん蜂」「ふらここのぐるり海ならどうしますか」「ジャケットの腕の淫靡に折れ曲がる」「職業のやうに海鼠を食つてゐる」


一次選考通過作品一覧

「ひょうたん池」 波野
「魂の重さ」 上田樫の木
「メール来る」 丸山清子
「たましひだけでいい」 葦信夫
「壮年期」 高橋大五郎
「空き缶に」 雨月
「前進」 片野瑞木
「震央」 このはる紗耶
「玻璃のピアノ」 みやしたかのこ
「蓮華編む」 雪井苑生
「ハイライト」 初蒸気
「飽くるまで」 小林妙
「天狼」 土屋 淘人
「塗絵」 岡田一実
「こども」 井伊辰也



第5回大人のための句集を作ろう!コンテスト優秀賞作品

すこしばか
クズウジュンイチ

人間は人間が好き大旦
福引の一等の象当たらぬやう
洗ひ場の石鹸固き二月かな
ぼんやりとすべてのいのち野火迫る
湧き水を水菜と競ふやうに飲む
丸薬のこぼるるやうに熊ん蜂
ふらここのぐるり海ならどうしますか
新薬のやうに春菊匂ひけり
耳たぶの半端に固く余寒かな
泥田螺てんでに進みつつ沈む
ひこばえや不仲の家の隣り合ふ
水を噴く浅蜊一晩飼ひにけり
春の風丘の上より馬賊去る
かき抱きて血の闘鶏の喉を撫づ
硫酸の茶壜花冷の理科室
昏睡のうつつをさくらさくらかな
暁のさくらは訥弁のさくら
たおやかに殺めて共犯はさくら
グッピーのざわめく初夏の治験の夜
芒持てる麦の反骨ありにけり
モルワイデ図法のやうに金魚玉
いいことがなにもなかつたのに蛍
ひきがへる歩き始めの傾けり
薫風や国語教師のループタイ
風止みて死海の如き植田かな
それぞれの海の色して扇風機
心太突かるるまでの不穏かな
南国の水漬く早苗でありにけり
舟虫をかへせば裏は全部脚
水飴のやうに熱帯魚の尾鰭
葛餅の冷たいんだか鈍いんだか
空蝉を砕きて爪の残りけり
白桃に体温人となる途中
油臭き木の電柱や法師
かなかなやあかがね叩き延ばさるる
選挙看板横倒しに猪垣
露まみれの猫の帰つてくる戸口
コスモスのいつもいつまでも満開
猿の腰掛といふ死に近きもの
鶏頭に余分な湿りなかりけり
銀漢や権利書その他菓子の缶
梨剥いて蛍光灯の輪の二つ
こゑがはりして颱風を迎へ撃つ
秋蝶の飛びつつ死ぬを選びけり
大昔人を埋めしと杜鵑草
かたまりを掘れば親芋子芋かな
いにしへのいのちの甕や栗集む
よこむきの鶏の片目や後の月
土手一面血腫のやうに吾亦紅
老人に神秘の嘘や秋の蜂
こほろぎが三交替の中にゐる
秋繭の糸取る奪衣婆のごとく
秋繭の中の空気のすこし濃く
黄落を斜めに渡る山師かな
蹴りつけるやうに凩吹いて野良
インヴァネス纏ひ浅草十二階
ジャケットの腕の淫靡に折れ曲がる
ラグビーやわたしはいまもすこしばか
甲板の鮫へ冷酷なる殴打
来歴は明らかならず茎の石
焼芋の袋の口の握り皺
鷲の居る樅の横枝の撓みけり
瞳なき鯛焼の眼を持つて割る
づらづらと並んで鯛焼の善良
野兎に銃創ありき口開けり
綾取りの赤き毛糸の輪を闇夜
鎌鼬血を噴くまでの間のありて
青むほど研ぐ剃刀が冬の月
溶岩のやうに鯨の突き上げる
鯨待つ砲手の洟の乾きけり
しりしりと夜霜の匂ひ薄荷飴
星の夜を狐の啼いてゐて不眠
レーニンのずつと冬服着て眠る
冬服の詐欺師に鬢の白髪かな
うるめ焼く匂ひの染みて雨なりけり
鯛焼の冷えて重たき紙袋
ちそばへの寒鴉の低く飛び跳ねる
臍帯の小川の在りて枯野かな
職業のやうに海鼠を食つてゐる
霜柱巨大インコの居る花屋
悴みて抱きて震へて生けるもの

クズウジュンイチ:1969年生まれ。群馬県高崎市在住。職業堅気。突然facebookにて俳句開始宣言を行い賛同者を募るも誰も共鳴せず、やむなく単独句作スタート、現在に至る。体重は100kgを下回る。



第5回大人のための句集を作ろう!コンテスト優秀賞作品

職歴欄
河野しんじゆ

牡丹の芽鳥になりたき日の血潮
この木から始まる空へ揚雲雀
旅人を生業としていぬふぐり
毛繕ふ畝柔らかし蝶を待つ
弘法の手形のやうな残る雪
獣の尾我に生えたる春の夢
香水や飛び立つやうに辞職せり
号令は今でも水夫ヨット番
我のための殻一つ欲し芥子の花
薫風のベンチに職歴欄笑ふ
耳の水ころりと出して桜桃忌
失業のげに美しき冷蔵庫
立つもののひとつに玉子青簾
地下室に検品係梅雨の雷
梅雨のクレーマー益々吠ゆ
荒梅雨のライオンの尾の光りけり
放送で雨知る昼の冷房病
中継の桂浜より油蝉
それから蝉に止まられた人となつた
吊革に二の腕誇る生身魂
初露の庭に干したる潜水着
青北風や海の匂ひの籠伏せて
霜降の鉄扉の穴へ海の歌
皆崖へ傾く鶏頭いぢつぱり
断層のここが天辺露葎
象嵌師息ひそやかに聞く時雨
花街の乾風休みの三味多忙
発酵の布巾をめくる掘り炬燵
折りのまま鶴折り戻す霜の夜
白鳥に着せよ真青の強き風
炭を足す事も催促沈黙す
証文の焼き跡美しき薄氷
猫坂のバーを曲がるや春夕焼け
船底の鳴き声拾ふ春満月
春水に触れて飲みたる眼病み猫
螺子一本落ちて春愁の玄関は
鳴きドアに油飲ませる日永かな
鶯や鬘疑惑の青木さん
口開けて猫に錠剤の遅日
星ひとつ僕に下さい春三度
春愁を吐き出す駅へ混ざりたり
被災地の犬貰ひたる初桜
春闌けて安全ピンの曲がりやう
県道の火蛾群る自動販売機
山門は国宝梅雨茸の大草鞋
捨て猫でありし前世や半夏雨
夏の星住まわせ賜ふ窓の欲し
北へ行けイサムノグチの噴水へ
嫉妬する癖の噴水故障中
網戸より雨嗅ぎ分ける島の猫
甲板のよく磨かれて野分晴
静かしづか秋蝶群るる島時間
ちちろ虫絹結ぶ音の仏蘭西語
繍線菊や鏡の房の寝かせ癖
面会は出来ぬ朴の実垂れ下がる
泣き虫をだんだら染める月の暈
露時雨史跡埋蔵調査班
ご試着室のお忘れ物は新人参
大仰な言ひ回し雪は噂のみ
マフラー結んで眼鏡曇らせる
硯石切り出す山へ雪激し
ほの暗き初湯に腕二本の白
愛人のことさら太き柳箸
春愁の鳥の切手を濡らす舌
春三日月スプンで燃やす角砂糖
納采の儀の蛤の暴れやう
嫁になどしてはならぬぞ春埃
花冷えのずん胴鍋にぐいと寄る
暖かや旨き匂ひの煙の街
菫草けふ忙しき人ばかり
代掻きの濁流の渦空になる
まばゆしやライバル店の大夕焼
休憩室にカースト制度トマト食む
熨斗百種波成す棚に太る紙魚
かなかなの病院坂へ外商車
棟梁の寝付いた話松手入れ
案内嬢眠りこけたる聖樹元
からまつの子の泣くやうに落葉せり
紙ヒコーキ行け飛べない白鳥へ
雪明り昨夜手紙を焼きし缶
手を振りしフェリーと海と吾へ雪

河野しんじゆ(こうの しんじゆ):1955年生まれ。宇和島「じゃこ天句会」にて俳句を始める。現在は俳都松山在住。第4回大人コン優秀賞受賞。



第5回大人のための句集を作ろう!コンテスト優秀賞作品

見出し
ふづき

くちばしに蚯蚓は光りつつ縮む
南吹く母貝に埋める真珠核
王宮の扉を開け虹をつかまえに
競り勝てる駿馬へ首夏の紙ふぶき
修正液乾きかけ薔薇崩れかけ
サガン伏せ夏蜜柑むく自主休講
キッスしてハグして他人さくらんぼ
ラムネ玉かろん謝りそびれたよ
三面鏡さびし藻へ散る緋目高も
太宰忌の毬藻泡吐くまで突つく
玉葱切る辞令のごとく薄く切る
虹二重間違えたなら戻ってみる
ご神体遷御す夏木立抜けて
国境と交わる大河夏の月
望郷のたとえば馬刀の穴へ波
百合の根は琥珀に触れたかも知れぬ
夜の部のがら空き何処かで蚊打つ音
住人は老いベゴニア増えてゆく団地
肺に影あり白シャツに裂け目あり
貸借対照表メロンきっちり切り分ける
デイゴ咲く$で支払う米と味噌
西日より来てキリストを説く女
改憲や行水の湯に浮く羽虫
深海魚群れて眠りぬ遠花火
新涼の野へいななきや馬具外す
半島を貨車折り返す天の川
白線まで下がってください鵙猛る
土下座する動画カンナは赤すぎる
金買い取ります泡立草の累累と
手をつなぎねむるちちはは虫しぐれ
子を持たぬ猫は棗をころがすよ
しら菊と珠と剣を神器とす
銅鏡に虎駆け古都の秋高し
月光を去りしは若冲の鶏か
身に白き茸の殖えて不眠症
ドラマまた悲恋カボチャは乱切りに
鍋にルー足して秋思の中休み
開幕を待つ月代の椅子の千
おにぎりのセロファンを解く夜学の師
塾に貼る標語ゴーヤのぷらんぷらん
デモ隊に杉の実投げたのは誰だ
外つ国の戦火や蔦へ犬の尿
霧深き夜の鉄条を微電流
梅紅葉御堂再建募金箱
邂逅や熟柿ついばむ銀の嘴
針焼いて突くうそ寒の足の肉刺
火事遠し両膝を抱く背に麻酔
二号室の父を綿虫遠巻きに
荒星の砕け溲瓶に丘と谷
鑑真像のまなこは冴ゆる月へ開く
たたまれていつか木の葉となる翼
蝦蛄葉仙人掌いろつきのゆめをみる
極月の真珠そいたる鎖骨かな
タクト振る聖樹の星の高さまで
犬に仔の十匹みかん詰め放題
丸餅を嗅ぐ猫明日は晴れになれ
象の耳日なたにひらく御慶かな
初東風や日の丸掲げ巨船発つ
ソファに取るショール欠航アナウンス
霜咲くや肉塊を吊る競りの鐘
セロリ砕くジューサー孤独死の見出し
赤ん坊の母へ寝返る冬りんご
陸奥の波高し冬日を機に織る
白鳥の水輪は櫂にとどかざる
立春のしずくを切ってたたむ傘
愛の日の月やしゅるしゅるしゅるとケトル
黄身白身ボウルに分けて春の風
山笑う飛び出す絵本より気球
初蝶の寝釈迦の腰を越えゆけり
あたたかやゼミに四人の田中さん
月おぼろ薄紅のぼるリトマス紙
蝌蚪散り散りやヘリコプターで着く臓器
不法投棄禁止黄砂の積もる積もる
蕨ぎっしり移住者に家差し上げます
柳絮暮れたり二胡の弓撓りたり
八畳に寡婦五人臥す遍路宿
たんぽぽや猫の柩は紙の箱
画布へ降る花びら眼下より汽笛
子雀の試練その三墓石におりる
さくらさくら子らはならんで手をあらう
桜まじ台車ではこぶ除籍本

ふづき:1961年生。愛媛県松山市在住。いつき組の一員となって、いつの間にか丸八年が過ぎました。只今、タンデム句会新メンバー募集中。



第5回大人のための句集を作ろう!コンテスト優秀賞作品

静電気
此花 悠

蛇穴を出て水のよな目蓋欲し
金いろにほつるる初蝶の飛跡
げんげ野やイコンの隠し場所ひみつ
鶯の遠音銀器の曇り初む
朧夜を来て玄関の湖底めき
鳥帰る内耳磁石のルビー色
万愚節くらやみに咲く静電気
花祭り僧侶もくぐる文明堂
春愁よりゆふむらさきを抽出す
日の原に群れて淋しき春鶫
飛花落花回転木馬の子な消えそ
金平糖ばらまく如し遠足児
芝ざくら水のうへにも咲きたくて
花虻やいつしか疎遠従姉妹どち
佐保姫のふる白布や沖の雲
永き日のプラネタリウム症候群
沸沸と空輸の栄螺滾る夜
過呼吸の兆し躑躅の燦燦と
夜汽車てふ鉄のヴィヨロン春の夜叉
太陽の寵児としての蠅生る
乳臭く遍くはつなつの原野
仔羊の肉塊買はれゆく五月
金魚水葬手折りて流す野の花も
密やかな陸の水圧梅雨の蝶
紫陽花をほぐさば水の屑ばかり
モディリアーニの寝違へ癖や黴の花
天道虫発つやぽつてり尻提げて
ラッシュアワー天王星に懸る虹
ほととぎす星は研磨に出しました
立葵経由のバスで向かひます
ヒロシゲの驟雨の走る石畳
孕みたる蝶の体温南風吹く
日雷ピアノは沈黙の大器
夜盗虫もの喰ふ音の満つる星
三日月の遠心力や合歓の花
百畳の下のぢごくを均す蛇
白玉を光らせてゐる無神論
吊り上がるグランドピアノ天蓋花
プールサイド最後の乳歯ぐらぐらす
大夕焼マチュピチュは星払ふころ
炎天裡釜朦朦と塩の華
桐一葉大仏坐像のやや猫背
とんぼ等は寄るとさはるとメロスのこと
きはやかに飢ゑてゐるなり彼岸花
水澄むやくうに小舟の泛ぶまで
瞬きを知らぬ桔梗や山雨急
墓洗ふその名はテスの墓洗ふ
御詠歌に兆す睡魔や盆の海
ほとほとと厄日の鬼の叩く夜は
思考てふ微弱電流ちちろ鳴く
橋脚の水深を擦る鰡の鬱
十六夜の蝶ひと匙の粉と化し
畳目に散らばるビーズ夜長星
太陽光に幽かな油分菊日和
どの露を鳴らさばかの山のうごく
秋風は月の裏側より戦ぐ
朝窓の痛点めける緋鶏頭
万年青の実ピシリと家のどこぞ鳴る
居続けのセンセイ露地に焼く秋刀魚
いにしへにいにしへありき雁のこゑ
山彦が海彦を喚ぶ紅葉かな
見はるかす潮の回廊神の旅
銀杏大樹五重塔と並び立ち
返り花歌ふことだけ覚えてた
小夜時雨拾はなかつた仔犬たち
水槽の魚木枯しの夢を見る
地の神へ還す乳かな花八ツ手
雑踏や今日二の酉と誰か言ふ
寒夜食堂少年マンガの捲り癖
荒巻の仰天の貌並びけり
白餅のひかりを結ぶたなごころ
國恋へば湯の混み合へる大晦日
初詣ぐんしゆうゆるやかにうごく
美しき鰭ひらめかせ歌留多取る
四日には発つ子の前へ将棋盤
若菜摘終へてねつとり甘いお茶
懐手うかうかくぐる仁王門
夕鐘や神代の田鳧立つ御陵
行くべしや強北風に耳塞がれつ
白原を四方集音の白うさぎ
山眠る太古より太陽は其処に

此花 悠(このはな はるか):西暦1958年生まれ。再び社会の荒波に漕ぎ出したばかりの五十路後半主婦。俳句は、そんなせわしない日々を、優しく色づけてくれるマイナスイオンのようなアイテム。



第5回大人のための句集を作ろう!コンテスト優秀賞作品

無名の人
日暮屋

へその緒ぶち切られてより母の日の空白
夜明けの風に吹かれたく白シャツを着てみた
爵位返上に人々は野ばらの花を
どちらかに蛇苺罠か右手が少し前
大きな傘のなか母子寮へ紫陽花の路
文句たれずにユンボよく回る半夏生
小屋に酔狂むせかえり黒鍵しかないピアノ
戻り梅雨とはピカソに青を塗りたくられることか
バスタブに河童の溺死浮いてこい
昼の独りにもてあます冷麦の白さ
ショーウィンドウの諦めを問えば身を以て蛾
あれ以上は怖かった遠泳の黒い雲
はだか銭で遊びベランダにGパンの硬直
支度中のくらがりに白鱚の鰓呼吸
カシュカシュと岩塩削る熱帯夜
青りんごを引きちぎるニュートンの強情
遠花火負われて祖母の顔がない
目打ちした土用うなぎにまだ勝気
息継ぎのできぬままカルキのにおい
深酒の頭上に遺影釜蓋朔日
生意気だった弟に不器用な盆路をつくる
爪の黄ばみテレビ欄にかき集め昼の虫
アクセルをまだ踏めと言う残暑かな
句帖に連れ帰った俳句甲子園の余熱
虫も殺さぬ妻の膾となれば裂くこと裂くこと
露草や然程は知らぬ両隣
羽黒とんぼひっそりと家族葬の庭
マサイの高跳びこの秋空で足りるのか
二百十日の船揺れて山羊しかいない島
女房質屋に入れたきりまたもや戻り鰹
打ち上げは失敗良夜にロケット立ってなさい
敬老の日突っぱねごくりと生卵
猫甘えさせ酒飲めと大西風が言う
無花果やすっごくいけないおねえさん
金婚は無理と思う平均余命いなご喰う
代償にケロイドの赤ただれゴーヤー落つ
見逃した芋虫がサラダですまなさそうな顔
敵将の帽子突き上げ騎馬戦の土埃
来世を信じきった顔で鵙の贄
落下林檎買えと北国から黒いトラック
孤独死は自分ときめ米二合磨ぐ秋の昼
かごめかごめ後ろの正面つるべ落とし
雨の横丁だれを泣かすつもりのハーモニカ
小龍包を自慢する霜降の赤い壁
ボイラーの明けの雄叫び冬めきぬ
橋からのおはよう千鳥バスが来た
明るいナショナル光る東芝冬構え
乾鮭で人を指し結論を言う
枯れ柳夢ならそれでいいじゃないか
隼から逃げるには呼吸がまにあわない
社会鍋聖書に新と旧のあり
調理師免許クソ喰らえ浜の河豚汁シビレルぜ
雨粒が枯草をピンと動かした
行商の頭巾始発にいりこの香
鰭酒に酔えず燃え尽き症候群
何も起こらぬわけは無く三日の新聞
雨静か御形に力らしきもの
リフォームの借金のこと希望ヶ丘ニュータウン
タイマーぶちきって火傷なら慣れている蒸饅頭
まさかの冬眠ボイラー室に死角とは
前略妻よ糠床は健やかか
ストーブに告ぐ君は完全に包囲されている
北極の氷蹴っ飛ばし地軸ひん曲げてきたぜ
クラクションあのカーブで梅の香にぶつかるぞ
魚氷に上る洗車ブラシの寝癖かな
守衛つんけんと洋館に薔薇の芽 
枕に顔うずめなおす囀りの眠さ
薄氷やすこし乱視をたしました
世の裏を見過ぎためばる喰われけり
湯呑に雨あふれる彼岸の墓
朧夜のどうやら課長止まりかな
頸椎へし折ってまで桜見あげたか
花筏この責任を誰がとる 
本棚に匿う親友のちびくろサンボ 
ふしだらにのびた軍手や桜まじ
蜃気楼など知りませんヒロポンはやめました
パラソルチョコは雨具とし遠足のおやつ制限
シナモンの香り満ちるや夏隣
棺に都忘れ入れ釘うてと石わたされる
新聞に足投げ出して巻き爪は母ゆずり
躑躅の喝采浴び無名の人でいる

日暮屋(ひぐれや):1959年2月生まれの野村の子。秘かに思いをよせている妻が居り、最後の晩餐を問われたら迷うことなく蕎麦と答えるほどの酒好き。



第5回大人のための句集を作ろう!コンテスト優秀賞作品

散髪屋の電話
渡辺瀑

眠らるか山毛欅の巨人へ春の雪
雪嶺の極上の蒼に盲いぬ
半身は透きて歩めり雪の尾根
炭酸の弾ける如く樹氷鳴る
源流の氷柱甘くて美しい
山麓は雪解まぢか山羊歌う
鷽鳴くや壺を逆さにすれば雨
薬莢は沈み椿の流れゆく
四万十の語源はアイヌ初燕
少年に戻る弥生の草まみれ
ヘミングウェイよりでっかい鱒を釣る
夕暮れの雲雀と捜すチロル帽
かたくりの花開くまで詩を敲く
豊かなる雨後のさえずりうまき水
太陽を見失いけり落し角
まだ伸びるすっぽんの首万愚節
輿入れの狐に続く蝶千頭
御神体写すべからず蝶の昼
降りそそぐ木霊や眠き袋角
山毛欅若葉石の魚を刻む音
すれ違う子泣き爺や山女釣る
卯の花腐しタランチュラにでもなるか
何処より何時より膝のなめくじら
蟾蜍塞ぐ深山の切り通し
駒鳥や雲は我等を通過中
銀竜草群れて天馬と化す鞍部
龍神を鎮めよ千の夕菅よ
三光鳥光はすべからく注ぐ
雷鳴の過ぎたる沢に水を汲む
半夏雨やダム反対の筵旗
プログラムどおり噴水踊り出す
駐在さん大向日葵を咲かせけり
老人と老犬合歓の花冷ゆる
三伏やいよいよ白き晒し蝋
夏川や牛の閊える沈下橋
ペンキ塗る水母の海へ吊されて
夕焼へ砂の鯨も帰しけり
飛魚の滑空いろは丸見しか
竜宮の使い月吐き打ち上がる
女郎蜘蛛編みし山河の光かな
かなかなや行方知れずの犬帰る
硫黄谷越えて花野の青き空
花野にて受ける散髪屋の電話
鳥に揺れ鼠に揺れる草の花
太陽の震えは風に大花野
頬白の歌えば円くなる光
雨近き盗人萩に獣臭
天空の宿や尾花の波高し
柚味噌や家の光の読者欄
菊膾善根宿の賑わいて
秋深しオルソンさんの土の笛
太陽は深く眠れり鵙の朝
詩の一篇付し綿虫の漂えり
犬笛に風立ちにけり秋の川
鹿鳴いて森は太古の湿り帯ぶ
支石墓に腰おろしけり紅葉山
菊の酒天狗倒しにこぼれたる
脱藩の峠に満つる雪蛍
飯場には二つの薬罐鷹の天
虎落笛に雑じりて強き硫黄臭
天空の地図を蔵せり帰り花
雨乞いの壺覗きおり雪婆
隼にブロッケンの環二度裂かる
千両の灯り雪輪の滝近き
抱かれ来る猟犬腹を抉られし
草罠に掛かりしは吾子山眠る
枯園に沸かす珈琲十二杯
目差したる神南山の狸罠
お日柄も良く狐火と出会いけり
レノン忌や想像妊娠したる犬
鰤一尾持ち込む消防詰所かな
男等の激論の端に炭つぎぬ
拉麺すするか冬夕焼を見に行くか
駅長の指さすむささびの飛翔
校長の諭せば帰る狸かな
佐平次と名告る地酒と冬籠
クレーンに吊す聖樹の金の星
聖樹据えたり昼夜違いし母の部屋
皹のなき母の手がやせっぽち
鯨鳴く夜なり戦禍がまたひとつ
冬の虹すべて受け入れつつ歩む

渡辺瀑(わたなべ ばく):1960年愛媛県大洲市生まれ。ムーミンの谷句会、さえずり句会がベース。山を歩き、花を愛で、鳥の声に耳を澄ます。自称自然派俳人。



第5回大人のための句集を作ろう!コンテスト優秀賞作品

冬青空
鯛飯

囀やてのひらに汲む水甘し
早春の♭ふたつ分の青
二十六聖人祭海鳥の羽ひかる
半島やひしゃくに満たす春の水
愛の日の非常持出袋かな
春炬燵バルト三国言うてみよ
オルガンのペダルを踏めば春の山
仏蘭西の国旗へ燕来たりけり
朧夜の水は大樹を溯る
ひらめくは万の弔旗ぞ鳥帰る
春愁をロシアの猫と過ごしけり
春の日へ伸びてフィリフィヨンカの鼻
春星や水辺にかすかなる羽音
潮干潟鳥の踵は濡れている
までパン投げ上げる弥生かな
鯛の身をほぐせば匂い立つ弥生
なみなみと切子を満たせ桜鯛
四万十は眩しくあるか山葵漬
桜蘂降るピピと鳴る体温計
びいどろの皿のむらさき春行かん
半島は緑色片岩なる立夏
入山のノートに若葉風過ぎぬ
緑さす四百年の墓石かな
てんと虫回転ドアに入れない
くちばしに米搗蟹を食った砂
セルふわとマッカーサーの頃の風
ゴスペルの夜はふくろうの子を思う
五月闇鳥は卵を抱いているか
火星指す枝より熟るる桜の実
青い花咲かす夕立呼ぶように
ふくろうの洞はからっぽ青時雨
お先達とてまくなぎを一身に
汗臭き背に御神像押し当てる
漆器涼し白蝶貝を研ぎ出せば
珍味売りの背中の海の夕焼かな
ロスタイムは5分麦茶のがらんがらん
大阪や冷奴にもからまれる
冷そうめん明日ラオスへ発つ人に
弓弾けば松脂烟る我鬼忌かな
日蝕や襤褸のごとき鵜の翼
鶏の蹴散らす砂や終戦日
盆の月生々しきは鯉の口
時雨橋まで鶺鴒についてゆく
仙入や湿原に踏む朝の音
ハシビロコウの沈黙二百十日かな
石に彫るヒロシマの詩や月上る
鰯雲キリンの前ではぐれたり
台風圏に小籠包の熱し熱し
半島は嘴に似て秋灯し
耳深きまで十六夜のサキソフォン
鷹柱砕かれ南中の太陽
楔もて切り出す石や鷹渡る
不知火や銅鐸にある波模様
「金木犀の匂い」と書いて渡す地図
きりきりとゼンマイ巻けば雁渡し
真空管灯してよりの夜長かな
紅葉鮒跳ねて市川団十郎
風に色無し龍笛に孔七つ
龍の水に漱ぐ銀杏臭き指
乳房触れて夜寒の集中治療室
鹿鳴いてふつふつ膠溶かす夜
磨き粉の指にざらつく冬はじめ
水笛の中のさざ波初時雨
繭糸を繰ればひかりの時雨かな
小春日の鳥のくちばしから滴
勤労感謝の日のフルサワギンナン粉砕器
木枯一号インコの胸の緑にも
星の入東風鷺の冠羽は水平に
金星に怯え冬千鳥の群は
潮錆の塔埋めゆく枯野原
冬の草ぱんとならしてつまらない
靴底に落葉貼りつくデモ帰り
大雪の醪ぷくりと弾けたり
猫の背を零るる砂も四温かな
着ぶくれてソファーを転ぶ母である
鍵盤に寒の小指がじれったい
活締めの出刃を乾風に吹きさらす
冬北斗静かにセロの弓撓む
雪催ほろほろ落雁のこぼる
うちぬきの水は冬青空より凛々し
波の花飛ぶ白山はもっと上

鯛飯(たいめし):1951年宇和島生れ。2006年より「一句一遊」に投句を始める。燧灘に面した干潟や石鎚山系の里山をマイ フィールドにして徘徊中。


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読者投稿による3ヶ月連載作品集

新100年の旗手


(2016年4月号 〜 2016年6月号 1/3回目)


 アンテナ 海田

ラジオ目盛り万愚節ほどのゆらぎ
清明を靴音土を固む音
春の宵あの吠え方は客ならむ
光なる聴こえぬ高音目借時
春愁の雑踏炭酸抜けるごと
花冷のノイズと空白周波数
穀雨の水音地球の心拍へ
海向こうの放送と桜蘂の降る
春惜しむリターンキーの戻る音
アンテナを伸ばす音より夏立ちぬ


1979年生まれ。八幡浜市日土町、日土東地区出身。今年、地元の福岡分区の副区長まで兼任する羽目に。



 ぼん ぼん ぼん 松尾千波矢

石段は猫猫猫や春夕焼
野火迅し記念物てふ橋の石
ロボットと語る行員初燕
春宵や柱時計のぼんぼんぼん
畔塗るや「黒猫」隠蔽するごとく
膝小僧浮かぶ出で湯や目借時
水草生ふ小川飛び行く子らの列
アンティークガラス贖ふ種物屋
堀割を渡れば町屋花ミモザ
春めきて遠回りする散歩の夜


1965生、山口県萩市在住。「今年は句集を出す」が夢でしたが、四月に句集が出来上がります。「いつき組」「山彦」所属。



2016年度第2期連載者募集中 *締切5月20日(日)

応募内容 7月号に掲載できるタイトル付の10句
応募先  Eメール magazine@marukobo.com
*件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。(郵送またはFAXでも受け付けております。詳しくは編集室までお問い合わせ下さい。)



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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2016年度 第一期 第一回


「かたつぽう」 亜桜みかり

春立つや表紙は優勝力士なる
ヒヤシンス貸出し延長申し出て
車掌帽胸にあいさつ風光る
浅春の足湯へ靴下のかたつぽう
ずつぷりと濡れてヒノキの火の木たり
梅の紅し紅し木の股に小石
うぐひす餅かつたるいとか言つてみる
正直屋のシャッターガシャリ春の夕
砂すべて吐かせよ浅蜊泣かせても
擂粉木の善し悪し菜の花茹でこぼす
海鳥の一鳴きさくらはまだつぼみ
帆柱のときどき揺れて鳥の恋


久々の統計調査員の仕事で空家と高齢世帯の多さを知り、自分の未来を否応なく考えさせられるが、まずは今を詠もうか。




「青鉛筆の覚え書き」 十亀わら

水菜切る夜を近づけるために切る
はこべらや青鉛筆の覚え書き
靴底を荒らして歩く春の暮
芽吹く夜のコピー用紙の二千枚
アスパラガス明日の靴も今日の靴
恋慕とも白木蓮の白さとも
タングラム上にずらして春の月
暮遅し獣舎に放る赤き肉
角印の朱の際立てる彼岸かな
今生を比喩のひとつとして椿
ものの芽やチョークの粉のひらひらす
クロッカス泣いている子をなお叱る


1978年愛媛県松山市出身。千葉在住。2005年「俳句界賞」受賞。詩集『燃える野』。




「子猫として」 谷さやん

晴れ晴れと川にみかんの皮捨てて
雫を競う白梅と紅梅と
蜂の巣のスケッチ未完草に寝る
悲しみはないでもないが菫咲く
子猫として怪獣として星見あぐ
春分の日の指先の飛鳥味噌
立ち泳ぐゴム風船の空光る
シクラメン三鉢鴨池診療所
牛飼いの方言難し春寒し
来た道は忘れることに蕗の薹
野いちごの花に遅れて座礁して
ひらがながち三月の怪文書


1958年生まれ。「いつき組」所属。「船団の会」会員。『不器男百句』坪内稔典 谷さやん共編(創風社出版)。句集『逢ひに行く』(富士見書房)で宗左近俳句大賞受賞。『芝不器男への旅』(創風社出版)。




「朧」 中町とおと

憂鬱やひひなの首を挿げ替へて
ふくらかな雛のかんばせ藁の胸
春の雪 はる、おゆき、とて降りかかる
草摘んでやたらに摘んで飽きにけり
いぬふぐりバゲットの屑あげませう
ふらここの日暮れてよりの思索かな
鬢に触るる油つめたし朧月
花衣包みて重き畳紙
朧夜の手首は腕をはなれたい
花守の指の爛れや花のみ知る
問ひ詰めるやうにチェロ抱く花の雨
さうやつてまた花まみれになるんだらう


千葉県在住。「さみしき獣」で第4回大人コン最優秀賞受賞。4か月間よろしくお付き合い下さいませ。




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新 100年の軌跡


2016年度 第一期
第一回


 泣きやめば 脇々 

白梅や生まれた家は海のそば
今日のラジオはどんな春が流れるか
踏みつけてゆく不幸な薄氷から
ショッピングモールに春の陽が溜まる
かたはねがなくて蝶々と呼べるのか
舟星やかわいてしまう泣きやめば
春泥をひっくり返すなにもない
朧夜をすこし留まるキャンプカー
宿されたような目覚めを星朧
春霞文具はすべてむらさきに
ペットボトルを宇宙都市へと組み上げる
ひかりごと教える若草のいろよ
まじないのような指揮棒春の海
歩く歩く歩く光風の二番線のなか
ねむれども昨夜の墓が気になっている


脇々
 1996年、愛媛県宇和島市生まれ。第16回、17回俳句甲子園出場。愛媛大学俳句研究会所属。




さくら島 中西亮太 

春嵐過ぎて時計は時を打つ
梅咲くや城壁の縁のなめらかさ
春水に屈折したる硬貨かな
恋猫の溢るる島やさくら島
恋猫の背中の色のさくら島
菜の花や異国言葉にルビを振る
青島は春めく空を濯ぐ島
四頭身ほどの仏像二月尽
春川の股輝ける博多かな
幹黒し花は白しや梅に雨
若草の感触即変わらぬ吾
踏青や火を吐くゴジラとなりぬべし
掌の平和を統べる春の夕
爪噛むやあと一回の梅見して
飛行機の遅延重なるうるう年


中西亮太
 1992年岐阜県生まれ。東京都在住。東京大学大学院在学中。「艀」同人。




チャレンジ とりとり

 「泣きやめば」は、やさしい言葉でよく共感できる作品でした。ことに無季の二句が成功していると思いました。
ペットボトルを宇宙都市へと組み上げる 脇々
 ペットボトルがきらきら光っています。早春と言わずに早春の光を見せています。
ねむれども昨夜の墓が気になっている 脇々
 もやもやした不安感。これも春の気分だと思いました。
 そのほか、
春霞文具はすべてむらさきに 脇々
の色彩感覚が素敵でした。

 「さくら島」はチャレンジングでしたね。
恋猫の溢るる島やさくら島 中西亮太
恋猫の背中の色のさくら島 中西亮太
 「さくら島」は、桜島でしょうか、それとも架空の島でしょうか。二句並ぶと、なんだかこの島に行ってみたくなりますね。童謡の一番と二番のようで楽しい組み合わせでした。
 そのほか
春水に屈折したる硬貨かな 中西亮太
の安定感も好きでした。
踏青や火を吐くゴジラとなりぬべし 中西亮太
の若さもいいですね。

おふたりの今後のご活躍を期待しています。


とりとり
 1957年生まれ。三重県在住女性。第1回選評大賞優秀賞。



ひかりは春  亜桜みかり

 二つの作品群は無季句を交えつつ「春」を意欲的に詠んでいるという印象。

今日のラジオはどんな春が流れるか 脇々
 聴覚への「春」の情報を期待している作者。映像が含まれない分、些細な兆しを聞き分け、いかようにでも膨らませて「春」を捉えることができる。
ひかりごと教える若草のいろよ 脇々
 「春」へのアンテナを伸ばし、春泥をひっくり返しもしつつ春を生きている作者が、ついに「若草のいろ」を「ひかりごと」「教える」ところまできたのだ。あえて五七五に整えないことで「ひかり」と「いろ」を無理なく読み手に想像させている。 

菜の花や異国言葉にルビを振る 中西亮太
 タイトルにもなっている「さくら島」二句の次に置かれたことで異国言葉を話す「恋猫」がいるのかもしれないとふと思わせられる。恋猫が追いかけっこをする場所で揺れている菜の花は、せつなさの混じった光に満ちているのだ。
幹黒し花は白しや梅に雨 中西亮太
 最後に「雨」を提示することで春雨の明るさの中で幹の「黒」、梅の花の「白」の極まっていく様子を読み手に感じさせる。「梅」を下五の始めに置く映像の出し方も効果的だ。


亜桜みかり
 1961年俳都松山市生まれ。今治市在住。第2回、第7回、第8回選評大賞優秀賞受賞。第3回大人のための句集を作ろう!コンテスト優秀賞受賞。



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超初心者から中上級者まで楽しめる
100年投句計画

 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天地人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選、並選を選んでいます。選者は、関悦史さん、阪西敦子さん、桜井教人さんです。

 「へたうま仙人」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は大塚迷路さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。

 「詰め俳句計画」は、マイマイさんによる、二つのフレーズに合う季語を投稿するコーナーです。季寄せや歳時記さえあれば、全くの俳句初心者でも挑戦できます。
(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)
写真:藤


選者三名による雑詠俳句計画


先選者 阪西敦子


 郵便配達は二度ベルを鳴らす、ならぬ、一週間に二度鍵をなくす。一度目は火曜日、夜中に帰宅して鞄を探ると鍵がない。失くしものをしたら、最後に見たときを思いだす。よくものを失くす父からの教え。今朝、鍵を閉めて鞄の……いや、荷物で手がふさがっていたのでコートのポケットに入れた。ああ、そのコートは職場のロッカーの中だ。更衣室で着物に着替えて祝い事に行ったから。近所のホテルでくつろぎながら、以後、鍵は鞄に入れると固く誓う。


セーターの模様の犬へラスク屑 緑の手

 犬の模様のセーターを着ているのは男性だろうか、女性だろうか。最近一時流行ったらしいけれど、アグリークリスマスセーターといって、大きなトナカイの柄などどうにもダサい模様のクリスマスセーターというジャンルがあるらしい。もちろん日本にはぴょん吉がいる。そんなもののひとつだろうか、大きな犬の柄の口元へちょうど零れ落ちたラスク。セーターの柄に引っかかったラスクを、たのしい錯覚へ導く。



春だねと消えていく子がおりました dolce
 町なかで、あるいは近所で、単にそんなことがあっただけだとしても、この句に与えられる景色はそれに全くとどまらない。ほとんど記さないこと、春だということ、この二つの作り出す余韻のの大きさ。

風車まだ七色をもつ速さ 雨月
 多くは四枚の羽をもつ風車、羽ごとに四色が風を受けて回り出し、それは混ざりあって色を増やしながら、まだ七色を保っている。速度があがれば、きっとすべての色が混ざって一色となってしまう。風を受け始めたばかりのある一瞬を「速さ」として描く。

山裾の雪解け水の跳ねる音 台所のキフジン
 一山全体から裾へ向かって、地下を地表を木々をたどって山裾へ向かう雪解け水。地上に出たものは流れとなる。小さな音に山全体の営みを思う。

古里の牡蠣食ひまたも齢とりぬ 鯉城
 毎年決まったころに送られてくるものであろうか。里に帰って食するものであろうか。土地によって旬や大きさ、味や料理にも特徴があろう。口になじんだ牡蠣を食べて安堵の心持も。

朧月仏間の鈴の響きけり 童夢2世
 朧の月夜、ものごとの境目がなんとなくあいまいになって、夢と現もまた。鈴の響きはどうやら現のようであるけれど、それを鳴らすものは何か。風かもしれないし、飼い猫かもしれない。あるいはまたというたのしみが感じられるほどの無理のない現がいい。



春手袋はずし移籍のニュース読む 小雪
素足なる托鉢僧や室の花 迂叟
新元素命名権や龍天に 藍人
断崖の牛へしぶける春一番 もね
神の罪人間の罪大野焼 ほろよい
春の雨家出の猫の行方かな ゆりかもめ
子どもらの歌声途切れ花の雨 西原みどり
耳飾る小さきフリンジ春兆す あおい
初午やいつもの研師来ていたり 彩楓
枝先の紅梅までを夕茜 さざなみ真魚



先選者 桜井教人

 お遍路に必要なものの一つに「納め札」がある。表面には日付 住所 名前等、裏面には願い事を「身体健康」「心願成就」などのように書くのだが時々何を書くか迷ってしまう。
 しかし、ある時全てを総括する万能の言葉を見つけた。それは「家内安全」だ。家内安全ということは、健やかに過ごし、事故 事件にも遭わず、それぞれの願いが叶う、しかもそれが家族全員分だ。欲張りすぎと思われるかも知れないが、そこは心の広いお大師様のこと、きっと笑って赦してくれるに違いない。



風車まだ七色をもつ速さ 雨月

 自分にとって風車は風というよりむしろ光だ。中々買ってもらえなかった鮮やかな色彩をもつセルロイド製の風車は子供の頃の憧れだった。その憧れは風車そのものではなく「光」に対してだったのだということをこの句が気づかせてくれた。風の速度によって光も変化する。「まだ七色をもつ」という速度はまさに春の風の速度だ。古い玩具が淘汰される中、風車はいつまでも愛され続けるだろう。
 そう、光がある限り。



目借時吾もまた分光されしもの 海田
 ふと考えた。自分が分光されたスペクトルだとすると、どんな波長なのだろう、どんな色なのだろうと。この句のもつ想像と詩は光のごとく明るく強い。この詩の世界を更に広げる季語が他にもあるのかも知れない。

亀見上ぐるやらんらんと春の星 てん点
 「るやらんらん」ですか。なんというオノマトペでしょう。春の星と亀を結ぶこんなすてきな言葉があるとは。暗闇の中で空を見上げる亀の目に映る春の星。春の夜の季感あふれる表現に感心することしきり。 

セーターの模様の犬へラスク屑 緑の手
 自分が戌年だからは置いといて、このタイプの句が大好きだ。実景だろうがラスクの選択が適切、何より屑まで言ったところが写生力の確かさ。この光景を見守っている人とセーターの温かさがシンクロする。

啓蟄のゆっくりのばす可動域 うに子
 可動域という大仰な言い方により、虫のみならず自分の実感として伝わってくる。ゆっくりのばすという平仮名を固い漢字が挟む句の作り方はしたたかだ。季語の本意をよく捉えた佳句。

寒の雨壺の底なる裏通り 哲白
 生活感が溢れたり、何か危険な臭いがしたりする裏通りが壺の底であるという比喩に共感した。何か得体の知れないものが蠢いているがそれは人間そのものなのだ。オリジナリティーあふれる比喩に対する季語「寒の雨」が実に適切。



盆梅や親父譲りの喧嘩囲碁 dolce
オリオンや赤軍兵士の老眼鏡 小市
春北風や戦場に立つアラブ馬 青萄
菜の花の犬来るたびに嗅がれをり 南亭骨太
流民や千切れたるもの全て花 みちる
白梅と交信している碧眼 越智空子
愛の日の鳩の鳴かない鳩時計 樫の木
山裾の雪解け水の跳ねる音 台所のキフジン
山茱萸の花や鳥獣供養塔 遊人
春の日を追ひ越してゆく無人バス さざなみ真魚



後選者 関悦史

 ときどき作句信条なるものを、さして多くもない字数で書かされる機会があるのですが、あれは作句そのものよりもしんどい。短詩型ローカルの習慣なのでしょうし(詩人や小説家は多分こういう質問はあまりされない)、短歌、俳句の作者でも、つねづね自分の作句方針を決めてそのとおりにやっているという人はそういないはずなので、ある程度作って、自選して、その後、事後的 反省的に形成されるもののような気がしますが。


特選句

教養とは声の小ささイヌフグリ さより

 教養ある人に大声は似つかわしくない、しかしその声はイヌフグリの小さな青さのように心ある人には静かに届くだろうという読解とは別に、「ふぐり」は陰嚢のこととはたしかに大声ではいいにくいという可笑しみも。

野火果つや放水の虹消えたなら のり茶づけ

 野火の消滅と、その野火を消すべく撒かれた水による虹の消滅が重なり、いま眼前にあるのは焦げた大地だけとなっているのに、火と虹の残像がたゆたって、不思議な幸福感を呼び込んでいます。

猫タワー越しの春山正座して 青柘榴

 猫タワーは室内に置く猫用の遊具。近年までなかった句材なので下手をすると俗なままに終わりそうですが、それ越しに見る「春山」という遠景と「正座」の組み合わせで、生活感を失わないまま妙に端然たる句に。


並選句
青信号帰路軽快に日脚伸ぶ 風更紗
蔦芽吹く性徴の赤のごと芽吹く 海田
明日からのランニングウェア春隣 出楽久眞
待つことに慣れたる春や吾もまた みやこまる
野焼きして大地の匂ひ立ち上がる 小雪
会報で友の訃を知る秋の蝶 迂叟
重さうに雪を背負ひて金次郎 富士山
寒明けや甘咬みをする白い猫 小市
初蝶となるやサナギの黄金期 青萄
キャバ嬢にローション貰う建国日 藍人
竿球を磨く建国記念の日 ヤッチー
春の風邪軽きまな板購えり 幸
寒雀小波描いて空へ空へ 和音
春寒やフェリーの舳先海へ開く 樹朋
酒臭き母が嫌ひで葱きらひ 凡鑽
牙見えるまどろみもまたねこの午後 多満
サスペンス映画のごとく椿落つ もね
容赦なく旅立つ朝や石蕗の花 夜市
春機上窓下に富士の丸火口 かのん
日永の赤の褪せたる立看板 南亭骨太
立春の華やぎ聞こゆ寺の鐘 波野
春浅しフランシーヌの反戦歌 誉茂子
ボール手に泣く子の背中春夕焼 てん点
唇に乳の味濃き日永かな みちる
園庭にすみれと小さき命の碑 ほろよい
土壁の崩落紅椿の海 一走人
紅梅の枝先とどく地蔵尊 ぴいす
菜の花の陽射し求めてぐにゃりのび おせろ
椀種のなるとの渦や春浅し ゆりかもめ
立春の雲焼きたてのパン買ひに 雨月
立つ鳥のまなざしは見ず送りけり 野兎
凩へ剣状突起より進む 緑の手
立春大吉空も空気も明るうす 喜多輝女
受け取ってくれぬ菓子折り耳菜草 うに子
今日よりは春の鳶なり空の青 越智空子
春一番拉致被害者のビラ揺れる 瀬戸
つみき積みこわして積んで春の雨 西原みどり
繊月や喉絞りて寒犬鳴く 大阪野旅人
春眠やロックを流す散髪屋 樫の木
朗らかに生きた人逝く梅二月 あおい
入学式香水混ざる保護者席 ひでやん
予寒なほ紅の褪せたる女面 彩楓
兜太の眸海の果て追ふ開戦日 松ぼっくり
春兆す埠頭や頬張るカレーパン 松尾千波矢
暖かや沖行く船の光りける カシオペア
ふりかえる視線をよけて春ショール  台所のキフジン
日脚伸ぶ夕日に浮かぶ船の影 哲白
着ぶくれて背中のまるきへそまがり 鯉城
満作や笙篳篥の聴こえ出す 遊人
立春や朝の月背に体操す 未貫
水鳥の波といちにち遊びけり 人日子
鳥の巣や庭の狭きに知らぬふり 童夢2世
吾の分確保し土筆妹に ちろりん
立春や本日をもち再生す アンリルカ
如月や二日の月が空の端 まんぷく
山笑ふ車椅子ごと夫笑う ミセスコナン
貝寄風に乗りてこれから旅に出る エノコロちゃん




関悦史(せきえつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。

桜井教人(さくらいきょうと)
1958年愛媛県生まれ。松山市公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回、29回俳壇賞候補。



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へたうま仙人


文 大塚迷路

 新入生、新社員の季節になりましたのう。すでに半世紀前の出来事となってしまっている人や数年前の出来事の人もひっくるめて、いかがお過ごしかの?
 今月も春寒しや春爛漫な句が揃っておるぞ。手のひらに太陽をかざしながら付き合っていただけたらうれしいぞ。


冬晴れ間来客ありて麺のびる 柊つばき
ふきのとうやりくりつまり野草喰う 柊つばき
 せっかく作ったラーメンをいざ食おうとしたら来客ですか?こういう時の客はなかなか帰らんのう。こういう客に限って手ぶらでやって来るんぢゃ。「冬晴れ間」に悲哀がこもっておるぞ。ついに野草に手を出されましたか。そうですか。こうなればとことんぢゃ。「誰も喰わなかった野草」という本を出して、ベストセラー作家の世界に殴り込みぢゃ!

花落ちる音聞こえる椿かな 真帆
葉の裏にしがみついてる空蝉よ 真帆
 音もなく散る花もそれはそれで風情があるが、これ見たかと、ぼてっと落ちる花も勢いがあってよい良いもんぢゃのう。どこに落ちてどんな音がしたのか知りたいぞ。春になったのにまだしがみついている空蝉に生命力を感じるか、ものの哀れを感じるか、哲学的で即物的な難題ぢゃ。投句の際は当季の季語のほうがイメージがより湧いて、読者の脳に有利に働くぞ。

春潮がいいえ春潮彼女見る KIYOAKI FILM
汗花見醤油ラーメン味噌ラーメン  KIYOAKI FILM
 「春潮が見たいわ」って言い出したのは君の方さ。「これ春潮じゃない。だって、あなたは春潮ですか?と聞いたらいいえと答えたのよ」。まてよ、ここで五ヶ所目だぜ。ポンコツワーゲンは潮を吸ってエンスト寸前。ま、いいか。こうなったらとことん付き合うさ。君の横顔を見ながら。てな絵ですか?(一部盗作)。昨今は桜の下のバーベキューが禁止されておるが、その代わりにラーメンが大流行とか(定かではない)。わしゃ花見に行ってまでバーベキューやラーメンは食いとうないぞ。ちゃんぽんならちょっとよろめくかもの。

害虫に明日はないぞと野焼きされ 森子
節分の豆二つ三つ所在無げ 森子
 虫の立場になって野焼を考えたらそれはもう大変ぢゃ。害虫というのは人間側の言葉であり、自然界では害虫も益虫もないのにのう。逃げ延びたとしてもPTSDに悩まされるかものう。おっとお次は豆の立場の句ぢゃ。小さく弱い立場になって句を作るのも一つの方法ぢゃ。もっともっと成り切って描き切ったら、それはそれはすばらしくなるぞ。

開かぬまま融雪剤の雨水かな 元旦
顔ハメの褪せし看板春一番 元旦
 立春後十五日目を雨水と言うらしいが、地域によっては一番寒い頃かもしれん。とは言えど暖冬の折、道路に積まれている融雪剤もついに開かれず、所在なさげに佇んでいる姿がなんとも良いのう。そんな所に目が行く作者も素敵ぢゃ。顔ハメが趣味の句友が居るが、顔ハメのほとんどは有効活用されておらんのう。もったいない話ぢゃ。「本当はこわい春一番」と「本当は面白い顔ハメ」とのコラボが観光地活性化のヒントとなる、訳はござらんか。

杖と手摺左右に登る春かなし だなえ
春まけて小魚は針を飲み込みて だなえ
 怪我でもされましたかのう? 登りは比較的楽になっても下りは大変なので、十分気をつけてくだされよ。「春爛漫」はもうすぐぢゃ。海と言うよりは、公魚釣りの風景が真っ先に浮かんだぞ。まだまだ春浅い四方の山々の風景ぢゃが、湖を渡る風に「春まけて」の実感がじんじんぢゃ。公魚の天婦羅にぬる燗がまた格別ぢゃ。

落ちたがる赤い椿の隙だらけ 小木さん
赤い椿夜が明けたらもう落ちず 小木さん
 いやいや、隙を見せている赤い椿はなかなかに趣があるのう。鉄壁なのは香水をつけたときだけにして、これからもぜひ隙を見せてほしいものぢゃ。そうか……赤い椿は夜が明けたら他人同士なんか……いやいや、次の日にはぜひもう一回落ちてほしいものぢゃ。のう。

耳とほき父母のこと女正月 坊太郎
寒行の僧の衣は雫して 坊太郎
 「女正月」になると父母のことを思い出すのぢゃろうな。「耳とほき」で、耳だけではなく存在そのものがなお遠くなったことが想像されるぞ。ぶるる、いかにも寒そうぢゃ。寒行の寒さに輪をかけて、時雨の雫で凍りつきそうぢゃ。その雫は爪先に落ち寒行の僧の足を更に遅くさせるのかも知れんのう。今は春ぢゃから寒行の事を実感しづらいことがちょっと残念ぢゃ。

陽炎へ遠き雄叫び古戦場 久我恒子
輿入れは何ぞと姫や雛あられ 久我恒子
 陽炎へ向かって兵どもが上げる雄叫びが今にも聞こえてきそうぢゃ。「陽炎」と「古戦場」は近すぎるかも知れんが「遠き雄叫び」で連結されたので、復活したDー52のように力強くなったぞ。雛壇の前で、孫がおばあちゃんに「お輿入れってなに?」と聞いている風景にほっとするのう。雛あられに差す日の光がやさしいぞ。

ぬばたまの夜の向こうの春の海 ケンケン
冬のネコかごめかごめの輪の中に ケンケン
 枕詞とはまた高度なテクニックぢゃのう。漆黒の向こうに息づいている春の海の体温が伝わってきそうぢゃ。余計な事を言わんのがかえっていろんなことを言っているという典型ぢゃのう。かごめかごめの意味は諸説諸々らしいが、無邪気でいて何か空恐ろしい空気が漂って来るのう。輪の中に入った冬のネコは、春になってどんな姿で輪から出てくるのかのう?
 おっと、春の猫に思いを馳せてばかりではいかん。こんな寸止めの効いた句は、真剣になればなるほど嘘っぽく見える真剣勝負の輪の中へ追放!

寒明の空にドローの弧を描く 照造
方円の器にはまる雪解水 照造
 ラグビーかサッカーか、はたまたセパタクローか水球か、熱戦の末に引き分けで終了した試合のボールの軌道が鮮やかぢゃ。体から立ち上る湯気が、寒明の空へ吸い込まれていくぞ。水は器の形に入っていくが、雪解水ともなると大自然の方円の器の中を満たしいくのぢゃろうなあ。いや、雄大ぢゃ。
 おっと、大自然に浸ってばかりではいかん。こんな健康的で広大な句は、健康に良いかも知れない電解水をお土産にモンゴルの草原へ追放!


 今月も万愚節に合わせて追放者を出してしもたわい。不覚ぢゃ。まっこれも、嘘も方便嘘から出た大竹まことぢゃと思って許してやろう。
 ぢゃが、くれぐれも油断召されるなよ。




へたうま仙人
 年齢 卑弥呼がおっぱいを飲んでいた頃、ワシは青春真っ只中ぢゃった。
 好きなもの 霞のシャーベット(PM2.5抜き)
 嫌いなもの 上手な俳句
 将来の夢 大器晩成


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ

 日本人が世界的に活躍しているスポーツと言えば、柔道、水泳、体操、卓球、サッカー、テニス、ボクシング、スノボー、フギュアスケート……といろいろあるけど、なんと言ってもダントツは女子スキージャンプではないか。高梨沙羅はこれを書いている時点で、W杯17戦14勝の強さだ。こんなに世界を圧倒している日本人選手は他にはいない。しかもまだ19歳だ。おなじ日本国民として、もっと誉めてやってもよいと思うけど。なんなら銅像建ててやってもよいくらいだ。



あれやこれや飛ばしてさびしい風だ  さざなみ真魚

 春風駘蕩というような、のどかな風ではない。寂れていく地方都市のたとえばシャッター通り商店街に吹きぬけるような風かもしれない。そもそも春風のイメージはかってに人間がつくりあげたもので、風のほうとしてはそんなことを斟酌しているわけではない。同じように吹く春の風が、なんということもない「あれやこれや」をお構いなしに吹き飛ばしていく様は、場所によっては寂しい光景を見せる。「あれやこれや」という所在なげな措辞と「さびしい風だ」という口語表記が、無常感さえ演出している。



覚めぎはの夢に泣く 雪うさぎ
 目覚める直前の夢しか人は覚えていない、と何かの本で読んだことがある。泣いて目覚める夢の悲しさが、短律10文字でうまくまとめられている。多分涙も少しでているような気がする。誰も一度や二度はこんな経験がある分、共感できる。

今年も寅さんのような春一番 みやこまる
 そろそろやって来る頃だ……の予測に違わずやって来て、いきなり騒ぎまくってあっという間に去って行った、というところだろうか。「寅さんのような」を見つけたところがこの句の全て。素直におもしろい。

空きれい死ぬかもしれない 小市
 「死ぬほどきれいな空」では、せいぜい安モノの映画のヒロインの台詞で、俳句にはならない。「空きれい」と「死ぬかもしれない」の間にある余白が広大で、かといって離れ過ぎの感もないのはみごと。なにかしら哲学的な匂いさえする。

左向きにイカナゴの目がそろう 一走人
 春のイカナゴ漁解禁で関西ではイカナゴの釘煮が出回るけれど、揚句は新子ではなく、塩茹であるいは少し炙られて十匹ほど小皿に盛られたイカナゴかなと思う。見れば頭はみな左向きに置かれ、当然小さい目がそろう。そこに俳味を感じるその感性がなかなか鋭いと思う。

耳鳴りか空耳か亀鳴くか ヤッチー
 果たして耳鳴りなのか空耳なのかも確信がもてない。なんだか春のように自分の身体もぼんやりしているのだろうか……。そこへ極めて情緒的な季語「亀鳴く」を強引に持ってくることで、ますます春の朧が深まっている。



この道が好きで悲しみのあり ケンケン
春が脳漿に溶け込まぬ 海田
すぷりんぐはずかむ誰も来ない教室 藍人
川底つつく日永の鯉 もね
苦労した人の良く笑う のり茶づけ
とうとう名前聞けずに卒業す のり茶づけ
カラオケてふ貧しさの中に居る みちる
CMの食卓は少子化 ゆりかもめ
逃水を飲みこんで行くは朧 恋衣
自動ドアの前を通る 遊人


並選
捨てたくて冬の海で吹かれている 風更紗
立春大吉裏も表も 出楽久眞
建国記念日波音高き国境 迂叟
漂泊の中に詩ありか酒は一合 青萄
全部で抱きしめる小春 幸
恐竜のまた来るかも暖冬なら 和音
嘘には賞味期限あるそうな 凡鑚
春の嵐還暦を荒れてのち 多満
この犬は階段が嫌い 南亭骨太
オオイヌノフグリを知ったあの春 誉茂子
落椿夜が明けますよ 小木さん
さびしいかやすらかか犬と寝る冬の蚊 緑の手
暦通りに雨降って雨水 喜多輝女
働かぬ蟻ゐてこその平和 うに子
眼鏡下げてメールす春炬燵 元旦
籠居に来そうな予感雪女 大阪野旅人
かつては畑だった枯野に槌音 樫の木
冷凍大根にて復活 青柘榴
牛糞を熨斗つけてどっしりと蜜柑の木へ  松ぼっくり
確定申告早く出さなきゃ気の重し カシオペア
山見れば山に涙す 台所のキフジン
千人針縫ひし手で核兵器反対の署名なす 鯉城
冬凪灯台黙りこむ 人日子
鮟鱇のやふな死に方は御免 ちろりん
梅と同じ朝の気を吸う まんぷく
立春朝しぼり酔って候 ミセスコナン
種袋この中身生きてます エノコロちゃん


選外〔自由律での再挑戦求む〕
こちへ来て甘飯誘う猫の恋 KIYOAKI FILM
恋猫やずきりずきりとラブレター  KIYOAKI FILM
ついてくる鳴かぬ子猫のあはれかな あおい
春なれや今様小町舞い踊る 彩楓
ケンケンパケンケンケンパ春が来る 彩楓



きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。



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詰め俳句計画


文と出題 マイマイ


今月の問題
次の(  )の中に共通する春の季語を入れて下さい。

鳥は踊り魚は逆立ち(  )
お店ごと買はれ(  )の薔薇は

 今回数名の読者の方から、薔薇は夏の季語なので季重なりになるのではないかというご指摘を受けました。全くその通りですが、季重なり何するものぞ的な心意気で敢えて出題してみました。正解を見て下されば、季重なりでも薔薇を登場させる必要があったことにきっと納得して頂けると思います。

鳥は踊り魚は逆立ち春終わる
お店ごと買はれ春終わるの薔薇は
 ケンケンさん。前句はまずまずだが、後句文法がめちゃくちゃ。KIYOAKI FILMさんはシャボン玉。これも後句のシャボン玉の薔薇がわからない。7級。

鳥は踊り魚は逆立ち三月
お店ごと買はれ三月の薔薇は
 エノコロちゃん。四月号なのに三月とは……。前句リズムが断ち切られたようで気持ち悪い。童夢2世さんの彼岸、幸さんの春光も同様。6級。

鳥は踊り魚は逆立ち木の芽晴
お店ごと買はれ木の芽晴の薔薇は
 出楽久眞さん。後句、薔薇と木の芽が近すぎてごちゃごちゃする。5級。ひなぎきょうさんは春日傘。前句は日傘の図柄? 後句も薔薇が図柄に見え、うまく季重なりを避けているといえそう。青柘榴さんは花盛。これも後句薔薇のほうを季語として立てて季重なりを回避するというアクロバティックな技。しかし、今月は季重なり回避よりも、後句の「お店ごと買はれ」という状況が尋常ではないので、それを季語の力で何とかできるかがポイント。その点弱い気がする。どちらも4級。恋衣さんの春の夜、元旦さんの春月夜、越智空子さんの暮の春、台所のキフジンさんの春満月、緑の手さんの夏隣、それぞれ悪くはないが、先述の通り後句の状況を納得させる季語とはいえない。同じく4級。迂叟さんは涅槃西風。釈迦入滅のイメージと前句は合っている気がするが、後句はやはり? 3級。杉山久子さんは春の夢。さざなみ真魚さん、牛後さんの夢見月は陰暦三月弥生の副題。夢のロマンチックな力で後句を何とかしようとする姿勢が見られる。2級。人日子さんは目借時。これも夢とうつつを行き来するようでこれも一種の夢落ち解決策か。同じく2級。立待さんは春一番。後句を「一番」という元気な言葉の勢いで乗り切ろうとしていて面白かった。1級。

鳥は踊り魚は逆立ちみどりの日
お店ごと買はれみどりの日の薔薇は
 笹百合さん。おせろさんは愛林日。前句はちょっと面白い取り合わせだが、後句の状況を納得させるのは難しそう。ちろりんさんは花祭。前句はお釈迦様の誕生のイメージが面白いが後句は花が重なってうるさい。いずれも4級。樫の木さんはバレンタインデー。後句、愛の日だけに「お店ごと買はれ」に説得力がある。前句、下五の字余りがやや損か。3級。なお、ひさのさんと坊太郎さんからバレンタインで投稿がありましたが、手持ちの歳時記およびインターネットでも記載はありませんでした。季語としてはバレンタインデーあるいはバレンタインの日とするのが正式のようです。一応ルールとして級外とします。さよりさん、彩楓さん、矢野リンドさんは復活祭。松尾千波矢さん、片野瑞木さんはイースター。誉茂子さんは復活祭。前句、鳥や魚も仮装しているようなものかもしれないと思うと可笑しかった。後句、お祭なのでこういう状況もありうるかとは思ったが、祭系の中でベストの選択とは思えなかった。2級。海田さん、みやこまるさん、久我恒子さん、小市さん、のり茶づけさん、みちるさん、小木さん、西原みどりさん、大阪野旅人さんは四月馬鹿。正解と同じ意味なのだが、フレーズに対して「馬鹿」の語感があからさますぎる気がした。1級。

鳥は踊り魚は逆立ち謝肉祭
お店ごと買はれ謝肉祭の薔薇は
 dolceさん、藍人さん、ゆりかもめさん。一走人さん、雨月さん、ひでやんさんはカーニバル。謝肉祭の狂騒的な雰囲気は前句のフレーズと良く合う。後句も説得力あり。初段。


今月の正解

鳥は踊り魚は逆立ち万愚節
お店ごと買はれ万愚節の薔薇は
 青萄さん、ヤッチーさん、ほろよいさん、うに子さん、遊人さん。河原撫子さん、カシオペアさんは萬愚節。前句、この季語が「万物」という語を想起させるので生き物みんなの狂宴を思わせる。後句、薔薇だけに女性へのプレゼントでしょうか。万愚節の冗談?でも本当だったらびっくり。初段。


6月号掲載分の問題(4月20日締切)
 次の(  )の中に共通する夏の季語を入れて下さい。

天に虹地に(  )のよく映える
(  )の主の不在や引っかかる




マイマイ
2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人だったが、最近は?? 第1回、第4回大人コン優秀賞受賞。2013年句集シングル『翼竜系統樹』上梓。将棋推定初段。棋友募集中。大人コン落選の問題作『宇宙開闢以降』発売に向け準備中。出たらみんな買ってね。




【100年投句計画】投句方法
 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可)、俳号(なければ本名の名前のみ)、本名、電話番号、住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。
ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙人」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、4月20日(水)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがきFAXでも投句できます。


さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(俳句ポスト365のページ参照)


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短歌の窓



短歌投稿ページ 選者 短歌誌『未来』同人 渡部光一郎


 みなさん、はじめまして。さっそくすてきな歌をありがとうございます。とても楽しく拝読しています。
 俳句とはちょっと違う、短歌という窓から世界をのぞいてみませんか。
 私は俳句については最近さぼっています。でもときどき句会をのぞくと、やっぱり元気が出ますね。またどこかでお目にかかりましょう。

特選
薔薇園に薔薇咲く午後の日の中に薔薇の芽に出づ薔薇の芽の伸ぶ 岡田一実
 美意識を徹底的に前面に押し出した力作。凝った造りであるが、最後まで破綻なく、高い密度の詩性を保ったまま詠い切っている。初句 二句の「薔薇」から「午後の日の中」を経由して弛むことなく下句の「薔薇」へ繋いだ。助詞の斡旋にも高いセンスが感じられる。

並選
最期まで放さずはめしエメラルド戦後を生きし指太き母 だりあ
 重い「戦後」を観念として語るのではなく、それを具体的に亡くなった母の太い指に見ており説得力がある。

いつもいつも花の事だけ話すけど次第に分かるあなたのことが 彩楓
 自分自身を直接は語らない「あなた」へと近づいてゆく作者の様子が、すぐれた定型感覚で詠われている。初句の字あまり六音も効果的。

幼き日母に叱られてたように母を叱っているんだろうね 片野瑞木
 上の句と下の句の漢字仮名遣いを揃えて配置しており巧み。最後の「〜だろうね」もこの場合適切。

コメント
あたらしき道に逃げ水次々と阿蘇へと続く助手席に君 高木風華
素材が面白い。盛りだくさんであるが、もう少し絞って詠ってもよい。

魂の入った壜の蓋を開け代わりに波の音だけ入れる チャンヒ
「波の音を壜に入れる」という発想だけに絞って詠うのもひとつの方法。

父母の骨壷抱いて覗き込む奥にいったい誰の骨壷 マイマイ
お墓を開けた時の実感がよく出ている。ストレートな詠み振りがよい。

アネモネのぽんぽんひらく月曜日発車のベルは高らかに鳴る 高山真由美
上句と下句の距離の取り方が巧く、素材の選び方やオノマトペも洗練されている。

海からの風に邁進させられて帰るつもりはサラサラナイト きとうじん
こうした言葉遊びも大切にしたい。「邁進」がやや硬いか。

寒風を行きつ戻りつ冬川の土手を走れば気分晴れ晴れ 青柘榴
さわやかな実感がある。「気分晴れ晴れ」とまで書かなくても充分伝わるのであと一工夫を。

彼女とは?告白はせぬ裏道を待つだけの人冬の石たち KIYOAKI FILM
独特な感覚があり、もう少し分かりやすさを心がけて作ると面白くなる歌。

カレンダー一枚破り桃色のハート溢れる二月始まる 出楽久眞
元気に溢れた歌。「桃色のハート」と断定しているところが新鮮。「二月」できまった。



プロフィール
応募内容 自作の短歌(2首まで)
応募先  フォーム http://marukobo.com/tanka/
      Email: tanka@marukobo.com
6月号用応募締切 4月20日(水)


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自作の俳句を英語に訳そう!
百人百様E-haiku



評:菅紀子


*1,2は殆ど直さなくてよかった句

1
a ladybird comes
on your back
only one knows that →*I only know it

【原句】 君の背に天道虫の来て止まる 片野瑞木


I want
a striped tail
at mild spring day →*at を取り a をつける

【原句】シマシマのしっぽが欲しい春うらら 片野瑞木

*3〜10、以下のように直してみました。

3
There is a long-established store baking a rice cake at the door front of the temple.

【原句】門前に餅焼く家業日永し  あねご

*Baking rice cakes
 At the gate of a temple
 Long-established store


Sitting in a swing
It creaks, swings and creaks at night
I'm in the darkness

【原句】鞦韆の軋みが我を夜に放つ  恋衣

*Riding a swing
 The creaks release me
 In the dark


The moon is misty
I will become a dragon
Holding fast the moon

【原句】月朧月を抱いて龍になる 恋衣

*Misty spring night
 I will become a dragon
 Holding the moon


music is overflowing,
earth become
the star of bees

【原句】音楽の溢れ地球は蜂の星 チャンヒ

*The earth is
 filled with music
 like a bees’ star


balloon is forgiven
if fly to
far away

【原句】風船は遠くへ飛べば許される チャンヒ

*Forgive your balloon
 if it flies
 so far away


Bamboo sprouts are cooked up
in the earth raining.

【原句】雨ふる地球に筍飯の炊きあがる  岡田一実

*Ready to eat
 Bamboo sprouts rice
 On the rainy earth


Do confessーー
can I been bent road around
green paddy field.

【原句】懺悔とは青田の道に屈みしか 岡田一実

*Confession is
 To knee down the path
 Along the green paddy

10
Protect your mind again
From a stamen
Of falling cherry blossom

【原句】かばつてもかばつても桜蘂降る きとうじん

*Cherry blossom petals
 Never stop falling
 No matter how much I protect

11
Afternoon,I have nothing to do with foxtail grasses.

【原句】猫じゃらし何にもしない午後といる マイマイ

*「午後、私は猫じゃらしとは何の関係もない」という意味になります。

12
Did Schrodinger's cat scream with love in the spring night?

【原句】シュレディンガーの猫も恋する猫ですか マイマイ

【お便り】2句目は敢えて過去形にしてみました。その方がその実験の夜(あくまで思考実験ですが)という臨場感が出るような気がしたからです。
本当のところはよくわかりません。(マイマイ)

*たまたま見てもらったネイティヴの友人が唯一合格にした句。これなら英語圏の人にウケるよと大笑いしました。

*13〜18については原句の比喩が強く限られた文字で訳すのは難しい、そのままでは訳せない句です。飛躍か意訳するしかないので触れないでおきます。

13
Matasaburo is howling in wind over the Naminohana.

【原句】波の花又三郎も哭いている 出楽久眞

14
at dawn
the silent window
forget-me-not

【原句】黎明の窓の静けさ藍微塵 久我恒子

15
a dragon
hiding in an abyss
gold sculptured candy

【原句】龍淵に潜むや金の飴細工 久我恒子

16
Beginning of spring
Firmly increasing sugar content
Of starlights

【原句】立春の星の糖度の硬く増す 海田

17
The night sky
As egg membrane,
Vernal stars
As countless pores

【原句】夜空なる卵殻春星は通気孔 海田

18
Spring of blind my eyes god hands my best story
 
【原句】春疾風眼を癒すイエスの手 KIYOAKI FILM 



菅 紀子(かんのりこ)
(有)クラパムコモンカンパニー代表。通 翻訳、メディアによる姉妹都市交流コーディネーター。社名は夏目漱石が下宿したロンドンの地名から。歩道短歌会同人。人文学修士、翻訳修士。松山大学、愛媛大学非常勤講師。
(Hailstone Haiku Circle member)
(漱石と彼のライバル重見周吉、日系移民研究)


応募内容 自作の俳句およびそれを英語俳句に
   したもの(2句まで)
応募先  フォーム http://marukobo.com/eigo/
      Email: eigo@marukobo.com
6月号用応募締切 4月20日(水)


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美術館吟行16:愛媛県美術館 
「生命大躍進 脊椎動物のたどった道」
吟行会



文 猫正宗


 本展は、NHKの放送90年を記念した「生命進化プロジェクト」の一環。貴重な化石群に加え模型や映像などで脊椎動物のたどったおよそ40億年の進化を総覧する。今回は、5人の高校生俳人が参加し、フレッシュな吟行となった。
 さあ、私達も40億年を駆け足で辿ってみよう。

春深し一面に並ぶ最古の字 リベロ
 
 会場は大盛況。特に子どもたちの姿であふれていた。

風光る小さき恐竜博士の眼 ひかる
荒東風や化石の熱に子の泣きて リベロ
化石見る少女も多くいて春霖 猫正宗
 
 40億年ほど前、原初の海に、初めて単純な生命が誕生する。

億年の海の温みにある鼓動 チャンヒ

 それから10億年後、光合成をおこなうバクテリアによって形成された断層。

断層の闇がはきだす春愁ひ 恋衣

 やがて、カンブリア紀に入り、生命は猛烈な多様化を見せる(カンブリア大爆発)。バージェス頁岩などに残されたピカイア、ハルキゲニアなど、奇妙な姿の生物群。

石の染み生命と読む人あり朧 猫正宗
冬ざるるバージェス命名iaの群 佳弥
 
(※ラテン語の接尾辞iaは、発見された土地名や形容詞等につき固有名詞化する。)
 
 次第に私たちの見知った姿を見かけるようになる。中には直に触れられる化石も。

残雪に三葉虫は群のまま チャンヒ
海を巻くアンモナイトの冷たさよ みく

 眼の進化が捕食者、被捕食者に競争を促し、飛躍的進化を招いたとも(光スイッチ説)。

捕食者のぬらりと覗く小春かな キリキ
大顎を内より覗く春の子等 ありこ
凍て返る波よりさはと海サソリ 恋衣

 生命は陸上へと

大陸の移動のかたち二月尽 ケミカル

 哺乳類への進化につながる、哺乳類型爬虫類が誕生し
 
眼窩の奥にさらなる春の闇 キリキ
人の航路持つごとく生る二月尽 キリキ

 そして恐竜の登場。

恐竜の背初春に湿りたる ケミカル
大根干すやうに化石の骨垂れて  天玲

 胎盤を持つ哺乳類が生まれる。

森じゅうを眠らせ胎盤は月の闇 天玲
母胎という小さき器や木の芽雨 ありこ

 巨大隕石の衝突による恐竜絶滅。その痕跡の残る地層。

隕石の地層あかるき春隣 みく

 やがて進化は私達ヒトへとつながっていく。

魂をもう失えず春の果 天玲

 ところで、生命史には5度大量絶滅(ビッグファイブ)が起きているらしい。
 
億年進化瞬時絶滅はるのほし ひかる

 それは

進化とは時に悲しき種選び 恋衣

なのかもしれない。
 しかし、DNAの複写ミスや重複等により多様化することで、生命は絶滅を乗り越えてきたとも言えるのかも。

石片に眠るDNAへ朧 ひかる
間違いを繰り返し僕ら春の夢 猫正宗
 
 例え  

六度目の絶滅を待つ春時雨 ありこ
風光る僕らも滅びるのだろう 猫正宗

 だとしても、生命のバトンは、きっと次の誰かに手渡されていくのだ。

生命の躍進の果てアロエ咲く 佳弥



猫正宗
メガネ句会&JAZZ句会が主な作句場所。本誌今月号より「鑑るという冒険〜映画篇 演劇篇〜」連載開始。




取材協力:愛媛県、NHK松山放送局、NHKプラネット四国、愛媛新聞社
*4月3日(日)まで開催中



次回美術館吟行会
いずれも『100年俳句計画』編集室までお申し込み下さい。(TEL089-906-0694)

愛媛県美術館
スタジオジブリ レイアウト展
日時:4月24日10時〜
場所:愛媛県美術館
参加無料(入館料は別途)
申込締切:4月20日(水)


吟行ナビえひめ
http://iyokannet.jp/ginkou/



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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.33


Red weeds at sunset
Failing light on wet branches
Time to make good sound

楽の音や草木明るく暮れなずむ


(直訳)
夕陽に 草は赤く
濡れた枝に 日は暮れ
妙音を作る時が来た



 It is raining in Yamanakako and Spring is in the air, making me sneeze. Will a winter storm come to us once again? It seems impossible but it could still happen, and how exciting that would be! I am here anyway, practicing and eating apple pie.

 山中湖は雨、春の気配があちこちに漂い、僕に嚔をさせる。吹雪がまた来るって? そりゃ考えられない事だが、あり得なくはないし、来たらすごいだろう! どっちにしろ僕はここで、ひたすらチェロを弾き、アップルパイを食べるだけさ。
(訳:朗善)



ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第61話 デディケイションズ  穐吉敏子

その指が触れれば蝶の舞う鍵盤 猫正宗

 「ピアノはここが良いわ」と、その夜のヒロイン穐吉敏子が舞台前方に視線を送った。これでピアノのポジションとトリオのレイアウトが決まった。間をおかず男性職員10名が群がり、グランドピアノをステージからフロアーに降ろし、照明の変更と再度の調律。僕が勤める松山市総合福祉センターも既に25周年の歴史を重ねているが、後にも先にもこのような事例は無い。彼女の威厳が生んだ掟破りには違いないが、お蔭で会場の客は至近距離でナマ穐吉を体感することができた。もちろんコンサートは大成功。プロデュースは「俳句は自分にとって一番遠い存在」と思っていた頃の俳号マミコンこと堤宏文氏である。

春愁やトリオの軽やか過ぎるから うさ

 演奏家のみならず作 編曲家、さらにはビッグ バンド リーダーとして数々の大作、問題作を世に問い、99年に日本人として初めて「ジャズの殿堂入り」を果たした穐吉。そんな彼女のアルバム群の中にあって、今回のテーマである「デディケイションズ」は自作曲が無く、軽快なリズムのナンバーを交えたスタンダード仕立てとなっているだけに、やや地味な存在であるかも知れない。

春だから歌はハートを飛び出るの いしき

 しかし、本作の選曲は彼女が敬愛し影響を受けた8人のジャズ ミュージシャンに奉ずるものであった。そして、トリオとしては11年ぶりのレコーディングを終えた彼女の感想は「今の私には運動選手のような要素は無いが、音楽的には内容が濃くなったように思えて、その点で満足した。聴いて下さる人達にも私の成長を感じていただければ幸いである」だった。
 いしきさんはアルバム冒頭のデューク エリントンの曲“I let a song go out of my heart”を意訳じゃなく写生してくれた。

春暁の黄色い長いジャズの道 蛇頭

 穐吉が60年に作曲した「ロング イエロー ロード」は代表曲というより彼女の代名詞のような曲で、黄色い肌の日本人としてアメリカでジャズとともに歩んできた自身の道を意味している。曲想は幼少の頃に中国でみた、どこまでも続く黄色い道から得た。サブテーマの「トリオ&カルテット」は、日本人初の留学生としてボストンのバークリー音楽院に学び、やがてアルト サックス奏者のチャーリー マリアーノと結婚。一女をもうけ、米国での本格的な活動が始まる。その先駆けとなったセッションを記録したものである。

陽春のピアノよ果てのある空よ チャンヒ

 「果て」がなおさら空の広がりを鮮明にしてくれたのだろう、ってことで一番人気句。御歳86歳、穐吉の快進撃はまだまだ続く。


http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。

次回のJAZZ句会は、3月27日(日)13時より。テーマは「スタンダーズvol.1&2/キース ジャレット」です。句会への参加を希望の方は、本誌44ページの句会カレンダーを参照してください。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU vol.1/vol.2』(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ


第61話
『花見酒』 〜 経済学にまで影響? 〜

 ぼちぼち隅田川の向島あたりが桜満開になるだろうということで、仲の良い二人の男が花見にくり出すことになった。
 しかし、二人とも金が無い。
 そこで一人の男があることを考えた。
 なじみの酒屋で灘の生一本を三本、計三升を借りてきて、花見の場所で小さなひしゃく一杯十銭で売る、というもの。
 すなわちそこでもうけが出た分を自分たちの呑み代にしようということである。
 早速酒を持って向島までやって来ると、花見客で大にぎわい。これは売れるぞと喜ぶ。
 さあ売ろうという矢先、風下にいる方の男が酒の香が鼻に来て呑みたくてたまらなくなり、なけなしの十銭を出すから呑ませてくれと、十銭払って一杯呑む。
 それを見ていたもう一人も呑みたくなり、先ほどもらった十銭を相手に払ってぐびぐび。
 じゃ、俺ももう一杯、こっちも一杯と二人がやっているうちに三升の酒は全て無くなってしまった。
 これだけ呑んだわけで、そりゃ二人はもうベロベロ……。
 周りの客は、「酒を売ってるようだが、二人とも相当酔ってるようだねえ」「どうやら、いい酒だというのを客に見せているんだろう」と言いながら、買ってみようと来たはいいが、酒は一滴も残っていない。
 あきれて客が帰ると、二人はさあ売り上げの勘定をしようと金を数えてみると、十銭銀貨が一枚しかない。
「考えてみたら当たり前だ。俺たち十銭を行ったり来たりさせて呑んでたんだから。三升の酒をみんな二人で呑んじまったんだ。」
「あ、そうか。そりゃムダがねえや。」



 笠信太郎というジャーナリストが昭和37年に出版して反響の大きかった「“花見酒”の経済」という本があります。
 高度経済成長期の日本、当時の日本経済の危ないところを、二人の男が十銭をやったりとったりしてぐるぐるさせているだけのこの噺にたとえて警鐘を鳴らしているのです。
 のちのオイルショックやバブルの日本を見事当てているようで、すごい預言とも言えます。
 落語って、そんなとこにまでつながるとは……。
 さて花見。
 僕は去年も一昨年も行けてません。いつき組の花見だけじゃなく、友人とも家族とも行けてないのです。
 現場でバーベキューするよりは、断然花見弁当派。
 コンビニでおつまみをちょこちょこっと買うのもいいんですが、花見って結構自分では大きな“ハレ”のイベントだと思っておりますので、デパ地下で千円は出したいところです。
 色合いも美しく、少しずつ総菜や肴がぎっしり詰まった花見弁当は、まさに「宝箱やー!」と言いたくなります。
 それに合わせたいのはやっぱり日本酒。
 盃も持参したいところ。なみなみと注いだ冷や酒に、桜の花びらがひらりと落ちて浮かんでくれれば、もうそれだけで生きていてよかったー!と思える自分。
 この噺の二人の、アホらしいけども呑みたくなる気持ちはお分かりいただける方も多いと思うのですが。
 ねえ、組長&理酔兄!!

肩書きのひとつ取れたる花見酒


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新聞記事に隠された俳句を発掘する
クロヌリハイク


黒田マキ


はるの夜ビーチで2勝トランプ氏
(2016年3月7日朝日新聞より)


豆知識「春告草」って何だろう。
(愛媛新聞より)


答えウメ。ウグイスに似合う植物だ!
(愛媛新聞より)


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鑑るという冒険


〜映画篇 演劇篇〜
文&俳句 猫正宗

 第42回
『幕が上がる』&『さようなら』


 映画についても書くことになりました。諸々偏るであろうことは御容赦を。
 さて、松山の小劇場シアターねこ。2月は映画と演劇で、平田オリザ祭りでした。
 映画は、原作平田オリザ×主演ももいろクローバーZ×監督本広克行で話題になった『幕が上がる』。弱小演劇部の少女たちが全国大会を目指す、ひと夏の挑戦。本作を誉める評は「アイドル映画を超えた」とか「アイドル映画じゃない」とかいうものばかり。堅苦しかったらやだなあと思って観たのですが、いやいや、がっつりアイドル映画でした。とはいえ、優れたアイドル映画は優れた青春映画でありうることを、私たちはよく知ってるはずで、そして本作もその一つであったのだと思います。少なくとも私には、手が届かないという諦念も含め胸熱な作品でした。

見上げれば夏星僕らの停車駅

 本作はまた、演劇部という部活を描いた「部活映画」でもありました。二大体育会系文化部の一方の雄である吹奏楽部に比べて、演劇部はどうにも影が薄い。演劇部が出てくる映画も、『櫻の園』(中原俊監督)等、ないわけではないのですが、演劇や演劇部はどちらかというと背景や道具立てになっていたものが多いのでは? その点本作は、ストレートに高校演劇を描いた、というか、ほぼ高校演劇しか描いていない映画でした。それはつまり、(高校)演劇を世に知らしめるというのが、この映画のミッションの一つなのでしょう。そこは本稿とも重なるものであるのですが、残念ながら本作のほうがはるかに有効打を放っているように思うのです。
 一方演劇は、『アンドロイド演劇「さようなら」』(作 演出:平田オリザ、出演:アンドロイド「ジェミノイドF」、村田牧子、海津忠、アンドロイドの動き、声:井上三奈子、16年2月28日)ロボット研究者 石黒浩と組んで作られた、本物のアンドロイド(ジェミノイドF)と人間の役者によって演じられる舞台。パンフによれば、「感心」させるのではなく「人びとを感動させるロボットを見せる」ことが、そのミッションの一つのようです。

人に似て非ざる者の蝶の夢

 ジェミノイドFが演じるアンドロイドの行く末や運命、また、彼女(と呼んでる時点でアレなんですが)と人とのかかわりに対して、思いいれられるか、感情移入ができるか、といったところに本作の肝があるのでしょう。残念ながら、私には彼女の存在を物以上のモノ 者に感じることはできませんでした。なぜ感動できなかったのかは考えていきたいなあと思っているのですが、むしろ、アンドロイドとは名ばかりの不器用な機械である彼女を相手に、演劇として成立させている演出と役者の力量に舌を巻いた観劇となりました。
 本作品は、移動が容易なこともあって、初演以来、国内外で上演を続けているそうです(パンフより)。もしもどこかで出逢えたなら、一度体験してみては? また映画化もされ、中四国では4月から上演されます。ご興味ある方はそちらもどうぞ。



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歳時記「無季」がバイブル


第6回
文 現代俳句協会会員  日暮屋 又郎


 塗料の調色(色合わせ)には絶対の自信があった。ここにきて、あったという過去形の語りになるとは……。
 もう、数十年来磨いてきた調色師としての技術は、依頼主である塗装職人との二人三脚で成り立つ。例えば、同じメーカーの同じ車種、同一カラーであっても、製造日、持ち主の保管状態(紫外線による日焼け等)で、微妙に違いが生じる。だからこそ、主にあずかる見本となるガス蓋(ガソリンを入れる時、開く蓋)の状態を観察しながら、日頃のコミュニケーションで把握した、塗装職人の癖、工場の立地条件などを考慮して仕事を進める。
 光揮顔料(メタリックやパールマイカ)の入っていないものなら、何処から見られても朝飯前だが、シルバーやパールマイカだとそうはいかない。どの範囲でぼかし塗装をしてくれるのか、広げたくない塗装職人とのディスカッションで折り合いをつけ、あとはシンナーのアドバイス。先回りで週間天気予報を伝え、その塗装日の気温にどんぴしゃのシンナーを提案する。この世界に永年携わってきたからこそできる職人と調色師の掛け合いである。
 出かけるまでに三色から五色くらいを仕上げ、余った時間は、新人や中堅へのアドバイスに使い、下を育成するのだが、このところアドバイスどころか、自分の持ち分をもてあますことがあるようになってきた。そしてデリバリーへと出かける頃にはへとへとの状態だ。
 先方の無理、難題にも何とか応えきってこそ「いつもうちのしんどい無理を聞いてくれてすまないね。明日これも一緒に頼むよ。」と塗料以外の副資材も買ってもらえて、売上が上がる。言い換えればこの副資材を売りたいがための調色作業である。それがこのところスピード、精度、ともに落ちてきている。疲れているのかなあ……。
 「課長、先日の健康診断の結果が届いています。」毎度のことながら、飲酒による肝機能障害の適正数値越えは気にも留めないのだが、眼底検査の項目に 「加齢黄斑」 と。ものが歪んで見えたりこれが進むと中心が黒くなり見えなくなる疾患で、現在これといった治療法はないとのこと。調色師として命ともいえる眼病、終了という喪失感に襲われた。得意先を裏切ることになる、ペースを落としてでも、まだごまかしながら続けるという気にはならなかった。

俺が老いるとは嘘のようだが老いている 田中 陽

 もう無理はよそう。残された人生、失明は避けたい。そうきりかえた現在、来たる定年に向け、愛情が故の厳しい叱咤、激励でもって後進の指導に励む日暮屋課長である。

正視され しかも赤シャツで老いてやる 伊丹三樹彦


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百年歳時記


第35回 夏井いつき

 有名俳人の一句を紹介鑑賞するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月ご紹介していきます。


雉鳴けりこれより雪の無き林 井上じろ
 「雉」が春、「雪」が冬の季語。上五「雉鳴けり」は麗かな春の野山を連想させつつ、中七からの展開が実に鮮やかな季重なりの逸品です。「これより雪の無き林」という措辞によって、ここまでは残雪の道を歩いてきたことが分かります。雪の残る山道を歩く途中、繁みから出てきた「雉」に会ったのか、繁みに消える「雉」の尾を見たのか。背後の山から聞こえる「雉」の声は、さっき出会ったあの雉かもしれないと思いなつつ山を下りてきたのでしょう。
 今、眼前に広がっているのは早春の林。「これより雪の無き林」という措辞は、越えてきた山道の残雪を想起するとともに、まだ冷たい空気の中で鳴く「雉」の声をありありと再生させます。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』3月4日掲載分)

雉低くよぎって空港まで5キロ カリメロ
 いきなり出現した「雉」に驚くシーンから始まります。「雉」は飛ぶよりも歩くことが得意な鳥ですが、「雉低くよぎって」という措辞でその特徴がよく描写されています。
 さらに、後半「空港まで5キロ」によって、「雉低くよぎって」が車内からの視界であることが分かるのも巧い展開。作者はハンドルを握っているのかもしれない、市街から離れた山中を切り開いた「空港」にちがいないと、一句の世界がどんどん明確になっていくのもこの作品の持つ力です。俳句ではあまり好まれない「5キロ」という表記も臨場感を生み出します。よぎった「雉」の行方に心を残しつつ、作者は「空港」をめざして車を走らせます。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』3月4日掲載分)

山茱萸の花パンソリの響く谷 江口小春
山茱萸の花や写経に金の墨 もも
 前句「パンソリ」は朝鮮の民俗芸能。歌い手と太鼓の伴奏者が身振りを添えて演じる語り物です。中国から韓国を経て日本に入ってきた「山茱萸の花」の原風景かと味わうこともできます。「響く」の一語が深い「谷」の残響を思わせ、「パンソリ」の歌の響きに春を告げる「山茱萸の花」の黄色が揺れはじめるかのような作品です。
 後句「写経」の一語で墨の匂いや漆黒の墨の色などが想起され、下五「金の墨」という美しい色の出現にハッとします。ミズキ科の落葉高木「山茱萸の花」は「春黄金花(はるこがねばな)」という別名もあります。「金の墨」の格調高い美しさを提示することで、「山茱萸の花」の素朴で新鮮な黄色が際立つのだなと感嘆させられた一句です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』2月19日放送分)

花びらは確かにおちる石の上 ありあ(小一)
 「花びら」は桜の花びらです。作者ありあさんは、花びらが散るようすをきれいだなあと飽きることなくながめているのでしょう。落ちてくる「花びら」の一枚一枚の行方をじっと見ていると、それらが「石の上」に落ちていくことに気付きます。庭石のような大きな石かもしれませんし、庭園の敷石かもしれません。くらりくらりとゆれながら落ちていく「花びら」もあれば、すとんと落ちてしまう「花びら」もありますが、どの花びらもどの花びらもみな「確かにおちる」と見てとったところに写生という名の詩が生まれます。
 また「花びら」と「石」の色や質感の違いも一句の味わい。「花びら」の行方を目で追うかのような語順も効果的な作品です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』3月11日放送分)

龍目覚むるごと料峭の走者発つ 野風
 「料峭」は春の肌寒い頃を意味する季語。「龍目覚むるごと」という比喩は「料峭」という映像を持たない季語に係る?と思った瞬間、「走者発つ」という情景が立ち上がります。何万人ものマラソンランナーが、スタートの号砲で一斉に動き出すさまを龍が目覚めるかのようだと比喩した表現はダイナミック。作者の視線は高い位置にあり、例えばドローンからの映像のような効果も持っています。
 時候の季語「料峭」は肌に感じる冷たさが本意ですから、取り合わせる句材としてマラソンは持ってこいの現場。肌寒い風の中を走る走者の群れ、「料峭」の風の中で振られる応援の旗、応援する人たちの歓声等、現場の実感が季語「料峭」をありありと表現します。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』2月26日放送分)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第61回 文 若狹昭宏

内田パン句会ライブ

 1月24日(日)、霜柱が立つほどの寒気の中、今年も清水小学校で内田パンさんの句会ライブを行ってきました。正確には「城北地区小学生俳句大会」といって、内田パンさんが現在の場所に移転した際に、子どものための地域活性化を目的として始め、今年で四回目になります。お店のブログにも掲載されておりますので、良かったらご覧ください。
ライブ進行のあねごさんの元に雪花、若狹、紫羽、その他にもmhm内外のメンバーが集まり、14名の小学生と保護者さんを迎えて会が始まりました。軽く季語のクイズなどをして、すぐに実作に入ったのですが、参加している子どもたちも慣れたもので、「季語が分からない」「何書いたらいいの?」と言いつつ、昨年の入賞句や、入賞し易い句の傾向と対策を説明してくれる子どもまでいるという、大人顔負けの様子。何故か毎年、自転車に乗っている景の句がよく採られているそうですよ!?
今年の最優秀句には、永田真悠さんの

 冬の雨光るダイヤのしずくかな

が選ばれました。
前日の雨が光るダイヤのように思えたという身近な経験から、ダイヤという言葉を使いたい、ということが最初にあり、殿様ケンちゃんの俳句手帳で、季語を「初時雨」にしようか「驟雨」にしようかと悩んでいたところ、「見たことや感じたことをそのまま俳句にしたら良いよ」とアドバイスを受けて、最後に冬の雨と決めたそうです。
句会ライブで入賞した俳句は、一年間、内田パン店内に飾られており、子どもたちはよく買い物に行って見ているそうです。
キム チャンヒさんの絵の代わりと言っては非常にお粗末な物なのですが、私の方から最優秀句の俳画を色紙にして内田パン店内に飾っていただいておりますので、種類が豊富で美味しいパンを買うついでにこちらも「俳句は良いんだけどなぁ……」と思いながら見てください。


 内田パン
  愛媛県松山市中央1ー12ー1
  http://www.uchipan.com


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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南極を詠もう!


No.3
愛媛県立新居浜西高等学校教諭
渡辺浩志

 「100年俳句計画」の読者の皆様、こんにちは。新居浜西高校の渡辺です。
 12月23日に昭和基地に入り、設営作業や野外オペレーションに取り組んできたのは、前号でご紹介した通り。その後、2月1日に越冬交代式があり、56次越冬隊と57次越冬隊の引継ぎが完了いたしました。この日を境に、管理棟に57次越冬隊30名が入居し、越冬生活がスタートします。私は……と申しますと、 数日後に控えた最大の任務「南極授業」に向けて、てんやわんや、切羽詰まった日々を過ごしていました。
 そして、本番の2月5日。開始時刻は、9時15分(日本時間15時15分)。観測隊で編成した南極合唱隊による校歌斉唱で始まりました(♪紫煙る石鎚の……、真理の扉開きなん♪)。呼気の凝結やソーラークッカーを用いた実験、昭和基地紹介、白夜の仕組み、野外オペのVTR、研究観測や設営業務の紹介、質問コーナー、そして最後に、校旗を振りながら再び校歌(♪あゝ南極に緑の校旗翻る♪)。エンドロールで57次隊員のメッセージ……と、あっという間の60分間でした。アンケート調査では、南極観測について理解が深まったという結果も出ており、ひとまず安堵しています。
 しばらく、昭和基地生活を楽しみたいという願いもかなわず、 翌6日には「しらせ」に戻りました。14日には、基地残留組がすべて帰還し、56次越冬隊と57次夏隊の計60名が帰路につきました。しかし、疾病発症したしらせ乗組員の早期帰国のため、急遽アフリカのケープタウンまで向かうことになりました。
 ということで、「南極吟行句」。昭和基地やしらせでの様子を詠んだ句(いや、川柳……。どうぞ、寛大な心でお許しを)が玉石混交。読者の皆様が玉のごとく光るセンスで観測隊をフォローしていただければ助かります。
 ところが……。このあと、さらなる予想外の展開が……。それは次号の最終回にて報告いたします。では、また。



今月の南極吟行句   希望峰 編

 疫病発症された隊員さんは大丈夫でしょうか……。渡辺先生の南極授業も、聞いてみたかったです。
 それでは、隊員と読者のみなさんの句です。渡辺先生が補足的に説明をつけてくださっているのでそちらも参考にしつつ。

春光を抱きて着くなり昭和基地 一ノ瀬海桜
ペンギンのあちらこちらに水温む 小鳥遊栄樹
南極やマイナス二十度の温し ひでやん

 読者の投句。一句目は「抱きて」が壮大な幕開けを演出しています。しかし隊員のみなさんには、前号の通り厳しい作業が待っていました。二句目は前号のアデリーペンギンの写真からですね。「水温む」は春の季語です。「あちらこちら」がほんわかした空気を醸し出しているのですが、さて実際の水はどうだったかというと……。

休日は外出禁止ブリザード 宙空夏隊員

……もう水が温いどころの騒ぎじゃないですね。

季節逆南半球季語も逆 戸田 真

 渡辺さんからコメントいただいています。「やはり季語は難しいようで。南半球では季語も逆になるのでしょうか? しかし、南極は夏でも寒いし……。今回の吟行句で「南極」とか「氷山」とか「ブリザード」とか「しらせ」とか「昭和基地」とか諸々、新しい季語として登録できませんか?」
 そうですよね。私も隊員のみなさんの句を見ながら、季語にあふれた日本での生活を当たり前だとしていること、そのような日本を離れたうえで、俳句を書くことの意味ってなんだろう、などと考えてしまいました。観測船である「しらせ」や場所を示す「昭和基地」は、強いパワーを持っている言葉だと思いますが、季語にはできないでしょう。「ブリザード」は季語になるかも……。というか、「季節」という概念は「春夏秋冬」という変化があるこそ成り立つんですよね。「ブリザード」は南極にいようがいまいが、読者が激しく吹雪く様子を想像できますよね。季語かどうか以前に、イメージを与えることのできる言葉です。なので、季語がなくても成り立つ句はあるんじゃないかと思います。

隊員に遠き家族や春の月 金城果音

氷河痕春の放浪せる如く 海田

 こちらは読者。いずれも、春のかすかなせつなさが月や氷河にたくされています。

昭和基地どんなに食べてもダイエット 太一

しらせではねてるだけでも太ってく 同

 運動量の多い作業がある基地と違い、「しらせ」の中では運動不足とボリュームのある食事のダブルパンチ。一句目は、「昭和基地」を食べても太るむなしさを表す季語にできれば俳句ですね。「春夕焼」とか?(笑)

除雪して除雪した後除雪する 除雪隊

と思ったら、季語いっぱい入っている句がありました。これは、○○○○○除雪の後の除雪かな くらいにとどめて上の五文字で情報を追加できるかもしれません。

暴風圏船のしぶきに架かる虹 土井浩一郎

暴風圏のひとときのやすらぎです。

疲れ果て浅き夢見し初白夜 渡辺 浩志

 「白夜のためか熟睡できない日々が続きました。」と先生。私もスウェーデン留学時代、白夜体験しましたが、夜中なのに明るいと体のリズムが狂っちゃうんですよね……。

バレンタイン友見送って基地広し 源笑

 56次越冬隊、57次夏隊の残留組が帰還し、57次越冬隊30名の生活がスタートしたのが2月14日だったそうです。基地の広さに対する虚無感が、バレンタインという愛情を持った季語と混ざり合い、心に渦巻く感情が表現されています。源隊員は越冬隊員だそうです。友の姿を思いつつ、作業を続けてゆくことでしょう。

北窓を開く南極から手紙 ふくみ

 こちらは読者。「メールではなく、手紙を送れるならきっと素晴らしい体験だなと思います!」とのコメント。「北窓を開く」は春になってきたので北側の窓を開くという季語。是非基地にはポストを設置いただきたいです(大変でしょうが……)。


【投句募集】前回最終回と告知してしまったにもかかわらず、今月も右の写真から作った俳句を募集します。投句された俳句は、スウェーデンに留学した経験のある希望峰さんが紹介します。
 俳句は専用の投句フォームにて受け付けます。http://marukobo.com/antarctic/
 投句締切は4月3日(日)。

写真提供:十勝毎日新聞社 塩原真 記者(第57次日本南極地域観測隊 同行者)
*印は渡辺


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俳句の街 まつやま
俳句ポスト365


協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


優秀句
平成28年2月度


【伊予柑】
《地》
伊予柑ひとつ東京を明るうす 三重丸
伊予柑を置いてあかるくなるベッド とりとり
伊予柑やもとより母性半疑なる 西田克憲
伊予柑を剥き一畳庵のしづけさよ 紫羽
子規の恋ありえず伊予柑甘くない 藤鷹圓哉
観潮船待つ伊予柑の二個目かな まどん
五軒目のママに伊予柑で帰さるる 初蒸気
大吉を引いた手で伊予柑を剥く 捨楽
伊予柑の香るルソーの森のごと 靫草子
伊予柑や母のアンダースロー見た 貝ヶ森

《天》
伊予柑の海に朝鮮通信使 一斗


【野焼】
《地》
恵方より野焼きの火種授かりぬ ぐわ
まづみづをたんと祠へ野焼く朝 このはる紗耶
野焼の火とも纏足の少女とも Y音絵
貧相な川輝ける野焼後 葦信夫
境界杭煤け野焼きの遠ざかる ポメロ親父
船頭の犬は野焼に怯えけり 灰色狼
野を焼きてあをぐろき雪じゆつと消ゆ 鈴木牛後
一秒に二十四齣野は焼ける ジャンク洞

《天》
河原辺の野焼きに爆ずるボールはも くらげを




俳句ポスト365作品集2015

冊子のお問い合わせは……
 松山市役所 観光 国際交流課
 TEL 089−948−6556



4月の兼題
公式サイト内の「俳句投稿」より作品をお寄せください。(※投句期間を過ぎますと投稿ページは次の兼題の募集に自動的に切り替わります。ご投稿はお早めに。)

投句期間:3月31日〜4月13日
鮓 すし【三夏/人事】
かつては魚などを発酵させる馴鮓を言ったが、時代と共に現代のような、酢飯に魚介類などを添えるものへと変遷していった。酢が防腐の役目を果たし、また食欲を増進させることから夏の季語になったとされる。

投句期間:4月14日〜4月27日
蜜柑の花 みかんのはな【初夏/植物】
一般的に「蜜柑」といえば温州蜜柑のことで、主に西日本の暖地で栽培される。5〜6月頃に白色五弁の小さい花が細かく咲き溢れ、甘くて強い芳香を漂わせる。



《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


※募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。
※「俳句ポスト365」は携帯電話からもご参加いただけます。
※「俳句ポスト365」公式Facebookページ開設中! 公式サイトに設置しておりますリンクよりお入りください。毎回の兼題のお知らせを中心にお伝えしながら、皆様の返信欄への書き込みもお待ちしております。



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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成28年2月度


【波の花】
波の花とは千切れたり番ったり  マイマイ
波の花崩るることを高々と 青萄
顔ほどの波の花飛ぶ日本海 花見月
波の花うねり獣の腹めくや 樫の木
波の花飛んで白山目指しけり もね
波の花朝定食の窓に来る トポル
波の花浴び行商の声に錆 蓮睡
波の花四キロ続く防波堤 雪花
波の花むかし狼煙を揚げた端 一走人
この地より古事記は東へ波の花  西条のユーホ吹き
伊邪那岐の掻き混ぜ賜ふ波の花 更紗
彼の国の恨の凝れる波の花 天玲

《天》
遺骨拾い戻る車列に波の花  波恋治男


【碑】
寒風切り裂く石碑に鑿の第一刀 伯洋
寒烏どこまで続く寄進の碑  松永のばあば
牛の群れ過ぎて末黒の開拓碑 樫の木
柴犬のコタロウの碑や春疾風 一走人
積モレ積モレ子規直筆ノ墓碑ヘ雪 恋衣
碑を撫づる嫗氷雨の爆心地  このはる紗耶
碑は春を幾度治めて地震の海  オイグウサガカツ@
茨の芽碑文これより小松領 もろり川
鷹匠の笛の揺らぎや知覧の碑  てんきゅう
霾や魯迅碑求め魔都の臍 土井探花
囀りやナイルは王の碑を埋む 鯛飯
コプト語の碑へ囀りの乾きたる  マイマイ

《天》
犢ほどの根明ありけり牛魂碑  鈴木牛後


【山茱萸の花】
山茱萸の花輪郭を持つ吐息 天玲
山茱萸の花を大気の煙かな 蓼蟲
蹲に列山茱萸の花見上ぐ 不知火
糸繰りの音ありて山茱萸の花 みみこ
山茱萸の花やダンプの大洗浄 唐平
山茱萸の花やマリアの明き顔  ターナー島
ひとに遠くわたしに近くさんしゆゆの花  青萄
日当たりの山茱萸の花急須に湯  江刺乃カナ女
山茱萸の花ふくよかに遺影決め  ドクトルバンブー
納棺師来て山茱萸の雨上がる ふづき
山茱萸の花パンソリの響く谷 江口小春

《天》
山茱萸の花や写経に金の墨  もも


【料峭】
料峭や溶接の火は海へ飛ぶ 理酔
料峭の日矢踏み固む作業靴  ドクトルバンブー
料峭や間歩の底から鑿の音 妙
硯彫る肩に料峭なる窪み 天玲
料峭を挟んで閉じる青い鳥 てんきゅう
春寒料峭千年解けぬ和算学 稲穂
料峭や恐竜の胃の中に石 みいみ
料峭の牙たり復元のマンモスは  マイマイ
料峭に透かす解凍受精卵 長尾蓮
料峭の朝の海風死者のこへ えるも

《天》
龍目覚むるごと料峭の走者発つ  野風



※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

投句締切: 4月10日
海胆 うに【晩春/動物】
棘皮動物ウニ綱の総称。海底の砂中や岩礁などに生息する。円盤状や球状をしており、毬栗にも似た無数の長い棘を持っている。

松の緑摘む まつのみどりつむ【三春/動物】
「松の緑」とは「若緑」や「初緑」などとも呼ばれる晩春の松の新芽のことで、松が弱らないように、これを摘むことをいう。

投句締切: 4月24日
墓石
季語ではない兼題です。「墓石」という字が詠み込まれていれば、読み方、用い方は問いません。季語は当季を原則として、自由に選んでください。

五月富士 さつきふじ【晩春/植物】
陰暦5月の富士。現在の暦では6月半ば頃にあたる。雪をさっぱり脱ぎ捨て、山麓の緑が鮮やかで、みずみずしさを漂わせる。



《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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100年俳句計画 掲示板



NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  4月12日(火)、26日(火)11時40分〜

あいテレビ(TBS系列、全国)
 『プレバト!!』
   毎週木曜 19時〜19時49分
※組長がゲストの俳句ランキングづけで出演! 放送日番組欄を要チェック!

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
兼題「蛙の目借時 蜃気楼」4月10日〆
   「苺の花 夏燕」4月24日
 インターネットでも配信中。詳しくは番組webサイトへ。
  HP http://www.baribari789.com/
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)、住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。


執筆
松山市の俳句サイト「俳句ポスト365」
http://haikutown.jp/post/
 毎週水曜締切/翌週金曜結果発表

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」
※ 毎週日曜発刊タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。朝日新聞松山総局(790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。

愛媛県《吟行ナビえひめ》句&写真
 俳句選者:夏井いつき
 写真選者:キムチャンヒ
【募集期間】毎月1日〜 25日前後締切
【応募先】http://www.iyokannet.jp/ginkou/
【問い合せ】愛媛県観光物産課
TEL 089ー912ー2491

NHK俳句 組長放送回俳句募集
 兼題「麦の秋」または「麦」。
 締切4月10日必着。
※投稿は葉書1枚に1句。選者名、兼題、俳句1句、名前、年齢、電話番号明記。送り先 〒150-8001 NHK「NHK俳句」係まで。ホームページからの応募も可 http://www.nhk.or.jp/tankahaiku/


句会ライブ、講演など

南楽園句会ライブ
 4月17日(日)13時30分〜
 投句締切 12時30分
 南楽園中央芝生広場(宇和島市津島町近家甲1813)※雨天の場合管理棟休憩所
※参加 問合は南楽園0895-32-3344


イベント

俳句対局龍天王決定戦
 4月23日(土)13時〜
 子規記念博物館4F和室
 料金…無料(観覧、出場とも)
※参加 問合はマルコボ.コム089-906-0694

恋人の聖地サテライト北条鹿島ペア写真×俳句大会
 4月29日(日)12時30分〜
 北条鹿島博物展示館(かしまーる) 北条辻1596
 内容…恋人の聖地サテライト北条鹿島で、男女ペアで写真と俳句を作り、俳人「夏井いつき氏」が選句、発表会を行う。
 対象…男女ペア(親子、夫婦、恋人、友達等)
 定員…ペア20組(応募多数の場合は抽選)
 料金…無料(渡船料 駐車料金は別途必要)
 持参物…写真を撮影し、メールでデータを送れる携帯電話等
 申込先…4月13日(水)までに、観光 国際交流課まで、代表者のご住所、ご連絡先、お二人の氏名 年齢を電話かファックスまたはメールで。
※参加 問合は松山市観光 国際交流課tel 089-948-6555 Fax 089-943-9001 kanko@city.matsuyama.ehime.jp



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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

こどもたちの句集コン!
みやこまる 『夏休み句集を作ろう!コンテスト』の作品、とても勉強になりました!表彰式の後の句会ライブもなんてうらやましい!!テーマ『去年笑えなかったこと』1位の作品、笑えました!
編 今年の当日句会ライブは大いに会場の共感を集めての1位でした♪ 困ってる人は多いみたい?(笑)

NHK俳句に夏井いつき
元旦 この春からNHK俳句の選者に組長がなられるとのことですね。楽しみにしています。プレバトのようにいかないでしょうが、歯切れのいい評を期待しています。益々お忙しくなるようですが、お身体ご自愛くださいませ。
編 ぜひ投句もよろしく! 兼題は39ページをチェック!

詰め俳句推理ーズ
カシオペア 二月〆切詰め俳句、お題、薔薇は夏の季語では? 春の季語を入れる? 季重りになりませんか? いつも悪戦苦闘、お手上げです。
ひでやん カーニバルの山車のイメージかなあと。「薔薇」も季語ですが従たる季語になるようにすればいいだろうとまでは発想したのですが、「カーニバル」が本当に主たる季語になっているかやや自信なし。
青萄 マイマイさん、正解の上を狙えば「朧月」はどうかな?と考えましたが…やはりハズレがこわいので…順当に「万愚節」でお願いします♪
編 今回はマイマイさんも言う通り薔薇がポイントでしたね。朧月ならどうだったか聞いてみたいぞ!

誌上文通のコーナー
雨月 幸さんへ。こちらこそ自分の読みに幸せと言っていただけ、とても嬉しいです。ありがとうございます!!これからも素敵な俳句をたくさん詠んで下さい。
編 選評大賞2015に寄せて。こんな感じのお手紙お便り各種も見せて貰えると楽しい嬉しい♪

まる裏俳句甲子園への意見 感想
海田 1:まる裏のみならず俳句甲子園本体の財政基盤の一つをなす、ダイドーさんの支援自販機の設置がなかなか松山市以外に広がっていきがたい様子とお見受けします。県内各学校のPTA等に所属している方は地元の学校へ、地区公民館の要職にある方は公民館に同自販機の設置を進める運動を始めてみるのも、一策ではないでしょうか。
2:またこれも学校がらみですが、『高校生以外』との条件にもかかわらずまだまだ中学生以下の出場が少ないのでは。県内の中学校に、俳句に関連した活動を行う文化部が非常に少ないのではと危惧します(特に南予では、残念ながら長浜の某中学校の一つの例しか、寡聞にして知りません)。そして時に、最近『部活動の指導 管理が先生の負担になっている』との指摘が他ならぬ学校現場から、最近出てきています。
そして県も、昨年のパブリックコメントへの返答内で「部活動については、外部人材の活用など、教職員の負担軽減に努めている」と明言しています。(出典 https://www.pref.ehime.jp/comment/27-4-10sougouseisaku/kekka.html ←内の11と12)と、するならばこれを利用しない手はありません。中学生のお子さんを持つ方(または、地元中学校の学校評価委員を務めている方)から学校に働きかけ、ご自身、または別の地域の人を顧問として、前述のような文化部を新設する。そして各校でまる裏出場を目指す……。そんな図が描ければ俳句の種まきとして大きなものになりうると思うのですが、いかがでしょう。
編 ありがとうございます。mhm一同拝読いたしました。各種協力できるかも、という方いらっしゃいましたらmhm通信のページを参照の上ご連絡頂けますと幸いです。みんなで作るまる裏俳句甲子園、今後ともご協力の程宜しくお願い致します。


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鮎の友釣り

213
俳号 妙

ひなぎきょうさんへ お姉さんのような、ひなさん。いつもたよりきって、すっかりお世話になってます。季節ごとの「ちろりんだより」も楽しみです。御本になるの待ってます。

俳号 妙は本名の当て字。魚のアブクでアドバイスいただいたので苗字は「プリマス」にします。

プリマスロック句会 参加当初は、苦手な会話の練習、人と接するリハビリのような場でした。今は元気と笑顔と栄養の元。出会わなければ、こんなに楽しい俳句生活の広がりは、なかったと思ってます。句会の皆様に感謝です。

写真 飼ってる猫の一匹。家族五人に猫五匹。猫になりたい。

次回…蓮睡さんへ マガジン1月号の蕎麦打ちリポートを読んで、以前の句会での健啖ぶりを懐かしく思いだしました。これからも一緒に楽しく遊びましょうね。


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告知


春夏秋冬
笑顔まつやま
福祉五七五

福祉をテーマにした
春の五七五募集(5/4締切)

 年4回、福祉をテーマにした五七五を募集します。人に優しくなれるような、五七五をお待ちしています。

応募フォーム
 http://www.marukobo.com/hukusi/

賞品
 大賞(松山市社協会長賞) 道後温泉湯玉トートバック(1点)
 優秀賞 おじゃみクッション エコバック付き(2点)
 入賞 紙の湯カードケース(5点)

発表 本誌6月号

主催
松山市社会福祉協議会
有限会社マルコボ.コム
(ふくし句会 ハイクライフマガジン『100年俳句計画』)
綜合警備保障株式会社(ALSOK)




俳句対局 第四回「龍天王決定戦」出場者募集

 俳句対局とは、囲碁や将棋の対局戦を模した、一対一の句合わせ対決の句会です。トーナメント戦で対戦を行い、四代目「龍天王」を決定します。
 出場観覧問わず、多数の参加、お待ちしております。

日時
 4月23日(土)12時30分〜受付
 13時開始 15時終了予定

場所
 松山市立子規記念博物館4階和室

出場&観覧
 ともに無料
 出場される方は、事前に編集室までお申し込み下さい。

出場&観覧定員
 出場 4名(超過の場合事前予選)
 観覧 30名(先着順)
*出場申込締切 4月10日(日)
*出場が決まった方は、当日スーツや着物にてお越し下さい。観覧のみの方は、服装の指定はありません。

賞品
 優勝準優勝に賞品あり

問い合わせ先
 『100年俳句計画』編集室
 089ー906ー0694
 magazine@marukobo.com

主催
 ハイクライフマガジン
 『100年俳句計画』




俳句新聞いつき組
2016年4月以降に新規で購読料をお支払いの方には
6号(2016年4月号)からお届けします!
※6号は2016年4月中旬発行予定です!

※ご希望の方は、ひとつ前の号からの購読開始とすることもできます。購読料のお支払い時に、ご希望の旨を編集室までご連絡ください。

A4サイズ8ページフルカラー仕様
参加登録料(※初回のみ)1,000円(税込)
年間購読料 3,500円(税込)/年4回発行
*年1回、夏井いつきの句集シングル付録あり。

まずは無料の0号「創刊準備号」と購読のご案内をお送りいたします!
※0号「創刊準備号」を既にお持ちの方は、0号に掲載しております案内にしたがって購読料をお支払いいただくことで、正式な購読の申込となります。

ご購読のお申し込みは……

「俳句新聞いつき組」購読希望の旨、本名(ふりがな)、俳号(無ければ不要)、郵便番号、住所、電話番号、生年月日を明記して、下記のいずれかの方法で申し込んでください。

 ハガキで申し込む
  790-0022 愛媛県松山市永代町16-1
  有限会社マルコボ.コム
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 FAXで申し込む
 FAX番号:089−906−0695

 メールで申し込む
 kumi@marukobo.com
 (件名を「いつき組購読申込」としてください。)




会話形式でわかる
近代俳句史超入門 文 構成 青木亮人
単行本化準備中!
*連載は暫くお休みします。ご了承ください。




編集会議開催

 編集会議は、2ヶ月に1度開催しています。年間購読をされている方なら、どなたでも参加できます。また、Eメールなどでのご意見もお待ちしております。

次回編集会議
日時:2016年5月20日(金)
   18時〜
場所:マルコボ.コム
   松山市永代町16-1
対象:本誌年間購読者
申込先:100年俳句計画編集室
E-mail:magazine@marukobo.com




今年は4月開催!
大お花見大会

日時
2016年4月3日(日)
8時〜20時(予定)
雨天決行

場所
道後公園内(松山市)

今年もやります!!
奮ってご参加ください!



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編集後記


 今月号より、3つの新連載がスタートした。
 一つ目は、かねてより告知をしていた短歌の雑詠欄「短歌の窓」。古くからの友人、渡部光一郎さんにお願いし、正岡子規が起こした近代短歌の風を、細やかながら本誌でも体験できればと思い企画した。個人的には初めての短歌体験。言葉の力のかけ方が、俳句とは微妙に異なり新鮮だった。
 二つ目は、菅紀子さんによる「百人百様E-haiku」。日本にいらっしゃる外国の方々に、英語俳句でおもてなしできないかと考えたのが、この企画の始まり。芭蕉だって子規だって、英訳された俳句が世界に広がっているわけだから、日本語の俳句を英訳して発表したって問題は無いはず。俳句は短いから英訳だって簡単、とはいかず、大変難しいのだが、この連載によって訳し方のコツが見えてくれば、俳句の世界発信も出来ると思う。
 最後に、復活した「100年の旗手」。学生の頃、マンガ雑誌に原稿を投稿したことを思い出し、今回から持ち込み原稿から連載者を決める方式にした。この連載が、熱意ある新しい作家に出合える場になれば、嬉しく思う。
 というわけで、本誌の今後に期待して頂きたい!
(キム)


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次号予告 (222号5月1日発行予定)


次回特集

新100年の旗手強化企画
俳句を並べて作品集を作ろう!


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2016年4月号(No.221)
2016年4月1日発行
価格 771円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子