100年俳句計画3月号(no.220)


100年俳句計画3月号(no.220)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
Iラブ大竹 小野更紗


特集
第14回 まる裏俳句甲子園報告


好評連載


作品

百年百花
 朗善千津/遊人/鈴木牛後/杉山久子


新100年への軌跡
 俳句/幌谷魔王/児嶋ほけきよ
 評/都築まとむ/樫の木


選者三名による雑詠俳句計画
関悦史/阪西敦子/桜井教人


へたうま仙人/大塚迷路

自由律俳句計画/きむらけんじ

詰め俳句計画/マイマイ



読み物
愛媛県美術館吟行会/天玲
Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
ホンヤクサイホンヤク/翻田訳蔵
お芝居観ませんか?/猫正宗
歳時記「無季」がバイブル/日暮屋又郎
百年歳時記/夏井いつき
mhm通信/暇人
南極を詠もう!/渡辺浩志

読者のページ
俳句ポスト365
一句一遊情報局
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




Iラブ大竹
小野更紗

 「好きです」と告白してしまった。一昨年、画家大竹伸朗氏の芸術選奨受賞を祝う地元宇和島の会でのこと。現代アートの旗手・大竹氏。その描くもの・造るもの・書くものの面白さ、美しさ、その縦横無尽、自由奔放、溢れ出るエネルギーといったら……。
 香川県・直島では大竹氏の作品の詰まった銭湯「I湯」や「はいしゃ」といった立体作品に見て触って浸ることができる。銭湯入口には「ゆ」の文字を掲げたラブ美が妖艶に光り、浴室では象サダコが遊ぶ。からんの一つひとつに真珠が埋め込まれ、浴槽に壁にトイレに大竹作品が充満している。どこを見回しても大竹ワールド。かつてこんなにニタニタしてお風呂に入ったことがあっただろうか。
 この3月20日開幕の「瀬戸内国際芸術祭」。豊島では新たな大竹作品が見られる。豊島〜直島と回ったら、あなたはもう大竹氏の虜!


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特集

第14回まる裏俳句甲子園報告




 去る1月10日(成人の日の前日)、第14回高校生以外のためのまる裏俳句甲子園(以下、まる裏俳句甲子園)が、松山市立子規記念博物館にて開催された。
 まる裏俳句甲子園は、高校生の俳句甲子園を応援する目的で、開催しており、俳句甲子園には出られない大人や子どもが参加できる大会である。俳句甲子園と異なり、1チーム3名で参加できる。
 今回は過去最多46チームがエントリー。午後からの本戦出場に向けた予選では、席題「道」の句を制限時間5分で全員が作り投句。その全ての句を公開審査で1〜4点に振り分け、チームの合計点が高いチームから、本戦に勝ち抜けた。
 予選の結果、チームちびつぶ、蝶々ハッシ、三日月T、イタックしばれーず、SMAP、ラ・サエズリ、ニューグランドホテルズ、・それゆけカンレキッズの8チームが、午後の本戦に挑んだ。
 ちなみに予選最優秀句は、北海道から参戦したイタックしばれーずの牛後さんの句、「足跡を道と呼びたる雪野かな」。

本戦の結果

本戦審査員(敬称略)
夏井いつき(俳人・いつき組組長)
森賀まり(俳人・百鳥・静かな場所)
三津浜わたる(俳人・NPO法人俳句甲子園実行委員会委員長)
金紗蘭(昨年度優勝チーム)
一般投票(Facebookにて投票)

*紅白の下の数字は、審査員の旗の数をかっこ内は審査員の名前を記す。FBはFacebook上での投票審査の結果によるFB審査員のこと。

第一回戦 第一試合
 席題 寒椿

紅 チームちびつぶ
(とおと・こま・たちつぶぶだう)
白 蝶々ハッシ
(ジャンク洞・夜市・破障子)

 先鋒戦
○紅 寒椿ひと息に抜くしつけ糸
×白 寒椿独逸に醸せほしぶだう
 紅 5 白 0
 紅の勝ち

 中堅戦
○紅 まつろはぬ恋もあるらむ寒椿
×白 寒椿落ちて運河の精となる
 紅 3(いつき、紗蘭、FB)
 白 2(まり、わたる)
 紅の勝ち

 大将戦
×紅 寒椿なぜ二人ではないのです
○白 心にも沈下橋あれ寒椿
 紅 0 白 5
 *俳句のみの参考評価

 本戦最初の試合は、東京から参加した「チームちびつぶ」と松山北校OBを中心とした今回初参加の「蝶々ハッシ」。中堅戦で一歩勝った、「チームちびつぶ」が勝ち抜けた。


第一回戦 第二試合
 席題 寒椿

紅 三日月T
(桜井教人・西連寺ラグナ・亜桜みかり)
白 イタックしばれーず
(鈴木牛後・高畠葉子・久才透子)

 先鋒戦
○紅 寒椿鉄門の勘兵衛石
×白 人の世に人ちりばめて寒椿
 紅 5 白 0
 紅の勝ち

 中堅戦
○紅 薬莢の余熱匂うや寒椿
×白 赤裸々な告白寒椿のごと
 紅4(いつき、まり、紗蘭、FB)
 白1(わたる)

 大将戦
×紅 寒椿我が胎内に神の水
○白 泣き言は嫌い長女の寒椿
 紅2(わたる、FB)
 白3(いつき、まり、紗蘭)
 *俳句のみの参考評価

 今治市の句会メンバーで結成した常連チーム「三日月T」と北海道から初参加した「イタックしばれーず」との戦い。席題の「椿」は、北海道では見ることが出来ないという。そんなハンディキャップを背負って、「イタックしばれーず」はここで敗退。


第一回戦 第三試合
 席題 寒椿

紅 SMAP
(仮屋賢一・田中志保里・砂川伸夫)
白 ラ・サエズリ
(さち・瑞木・まとむ)

 先鋒戦
×紅 レコードの針を落とすや寒椿
○白 戒名の中に空の字寒椿
 紅2(まり、紗蘭)
 白3(いつき、わたる、FB)
 白の勝ち

 中堅戦
×紅 寒椿土ゆたかなる藩なりき
○白 鳥生かすための寒椿となるよ
 紅1(わたる)
 白4(いつき、まり、紗蘭、FB)
 白の勝ち

 大将戦
○紅 寒椿ラジオ流れる無人駅
×白 寒椿言葉にしてくれないと不安
 紅 3(まり、わたる、紗蘭)
 白 2(いつき、FB)
 *俳句のみの参考評価

 俳句甲子園出身者で結成した「SMAP」と愛媛県日土のさえずり句会メンバーで結成した「ラ・サエズリ」。常連「ラ・サエズリ」が、若手俳人をかわして勝利。しかし勝敗は、先鋒戦での旗一本の差だったかも。


第一回戦 第三試合
 席題 寒椿

紅 ニューグランドホテルズ
(エバンス伊藤・エルヴィン三木・曾根コルトレーン)
白 それゆけカンレキッズ
(なぎさ・しんじゆ・あねご)

 先鋒戦
○紅 寒椿少しめでたく撓むなり
×白 岬への道を断ちたる寒椿
 紅 3(いつき、わたる、紗蘭)
 白 2(まり、FB)
 紅の勝ち

 中堅戦
×紅 寒椿快速電車通過駅
○白 還暦や黙りこくって寒椿
 紅1(わたる)
 白4(いつき、まり、紗蘭、FB)
 白の勝ち

 大将戦
×紅 昼更けて寒の椿を潜りけり
○白 寒椿軽口そへて小さき箱
 紅2(いつき、FB)
 白3(まり、わたる、紗蘭)
 白の勝ち

 関西から出場し、昨年準優勝チーム「ニューグランドホテルズ」と可愛らしくも貫禄溢れる「それゆけカンレキッズ」との戦い。実力派「ニューグランドホテルズ」に対し、伊予弁攻撃で「それゆけカンレキッズ」が際どく勝ち抜け。


準決勝戦 第一試合
 席題 写

紅 チームちびつぶ
(とおと・こま・たちつぶぶだう)
白 三日月T
(桜井教人・西連寺ラグナ・亜桜みかり)

 先鋒戦
○紅 映写機に供へる小さき鏡餅
×白 凍星や写本に甘き匂いかな
 紅4(いつき、まり、わたる、FB)
 白1(紗蘭)
 紅の勝ち

 中堅戦
×紅 初写真詩も無き街の鳥居にて
○白 風花の写影ベルリン東駅
 紅1(いつき)
 白4(まり、わたる、紗蘭、FB)
 白の勝ち

 大将戦
○紅 複写機の光一閃霜の夜
×白 初写真汽笛の届くサッカー場
 紅 5 白 0
 紅の勝ち

 いよいよ準決勝戦。大将戦までもつれ込んだこの対戦、「霜の夜」「初写真」とそれぞれの季語の効かせ方が最終的に勝敗を決めた。
 「チームちびつぶ」決勝戦進出決定。


準決勝戦 第二試合
 席題 写

紅 ラ・サエズリ
(さち・瑞木・まとむ)
白 それゆけカンレキッズ
(なぎさ・しんじゆ・あねご)

 先鋒戦
○紅 複写機の発光林檎がすっぱい
×白 雪渓に今召されゆく写真
 紅4(いつき、まり、わたる、FB)
 白1(紗蘭)
 紅の勝ち

 中堅戦
○紅 冬凪の果てのヨダカ写真館
×白 待ち伏せのジッポ写して氷る池
 紅4(いつき、まり、わたる、紗蘭)
 白1(FB)
 紅の勝ち

 大将戦
×紅 雨風をおさめて梟の目を接写
○白 冬海を眠らせるごと写楽の絵
 紅2(いつき、まり)
 白3(わたる、紗蘭、FB)
 *俳句のみの参考評価

 実感の伴った圧倒的な句の力で先鋒戦と中堅戦を奪い、「ラ・サエズリ」が決勝戦進出。まつやま俳句でまちづくりの会メンバーでもある、「それゆけカンレキッズ」はここで敗退。


決勝戦
 席題 雪

紅 チームちびつぶ
(とおと・こま・たちつぶぶだう)
白 ラ・サエズリ
(さち・瑞木・まとむ)

 先鋒戦
×紅 敵味方有耶無耶となる雪合戦
○白 舛花色の夜明け牛乳箱に雪
 紅2(紗蘭、FB)
 白3(いつき、まり、わたる)

 中堅戦
×紅 雪しづるまだわたくしを許せぬか
○白 雪明り義母の肌着に書く名前
 紅1(いつき)
 白4(まり、わたる、紗蘭、FB)

 大将戦
×紅 初雪や翼よここが子規の国
○白 窓に雪第二楽章からはソロ
 紅2(いつき、紗蘭)
 白3(まり、わたる、FB)
 *俳句のみの参考評価

 勝敗を決めた中堅戦、「チームちびつぶ」は「義母の肌着に書く名前」というフレーズの類想感を指摘しつつも一歩及ばず、「ラ・サエズリ」が今大会を優勝で飾った。



ラ・サエズリ、まる裏のその裏  まとむ

 「最強チームの胸を借ります!」とあねごさんからメールをもらって、ならばっ!と瑞木さんさちさんを召集。「予選通過は絶対しよう。決勝用の雪の句は持って行こう。」それだけを申し合せして当日を迎えた。まる裏から二週間あまり……対戦の内容をほぼ忘れてしまっている私たち。(すんません)アンケートの形で当日を振り返ってみた。

1:今回のまる裏で優勝できると思っていた?

瑞木:本戦には残りたいけど、残ったら忙しいから予選落ちしてゆっくりするのもアリだな……と思っていた。
さち:いえいえとんでもありません。予選はなんとか突破できるかな?くらいに思っておりました。
まとむ:とにかく予選通過が目標。本選に残ったらあとは運。

2:今回の対戦で手強かった相手は?

瑞木:「チームちびつぶ」かな。2句目(雪しづるまだわたくしを許せぬか)でしゃべりがヨレヨレになってしまったのは、本当はかなりこの句に惹かれていたのに無理に突っ込みを入れようとしたから。自分には作れんタイプの句やし。「SMAP」はテンポのいい質疑応答に「いゃ〜本物の俳句甲子園みたい」と楽しかった。「それゆけ!カンレキッズ」はお姉さま相手でやりづらかった。
さち:対戦した相手なら東京のちびつぶチーム。対戦はしなかったけれど見ていて強いと思ったのは三日月Tチームです。
まとむ:「SMAP」は元学生チャンピオンというだけでビビッた。「それゆけ!カンレキッズ」にはいちばん燃えた。「チームちびつぶ」とは何をしゃべったかも覚えてないくらい混乱していた。結局みんな怖かった。

3:今回の勝因は?

瑞木:まとむさんさちさんの句の確かさ。私自身はよくある発想に落ちてしまって句で役に立たない分、しゃべりで挽回しようとしたけど、それもヨレヨレに……あそこまでヨレヨレになったのは初めてやな。
さち:雪の句をあらかじめ作っていた事。まとむさん、瑞木さんのディベート力!
まとむ:私は瑞木さんさちさんの句を信じとった。三人の句柄がバラバラいうのも良かったかも? そして何よりチームワーク。


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2015年度 第三期 最終回


「三途川」 朗善千津

頬髭に雪つけて乗る列車かな
三途川スキーに乗りて下りけり
雪しんしん時計の針の動く時
雪激し綾取りの紐からまりぬ
切り株の涙のやうな薄氷
靴底に貼りつく雪と落葉と夜
仏蘭西の旗振らるるや氷柱道
雪の上運ばれて行く大太鼓
マーチングバンド雪靴雪帽子
猫草を食べてゐるらし日向ぼこ
滝しぶき激しくかかる石蕗の花
四十年ぶりの寒波や手相見る


標高3800m「白い谷」滑降の夢を叶えたニック。次の試練は、バッハ無伴奏チェロ組曲全36曲を一日で暗譜で演奏する事。舞台にひとりぼっちの彼を応援してあげて下さい。




「遺骨」 遊人

隼や遺骨は海に撒かれたと
立春の硝子砕いたやうな水
犬ふぐり涙ひとつぶづつの花
春寒し白いテントの五十張り
沈丁の蕾へ停まる郵便車
愛の日の土の匂ひのせざる街
鳥群るる人群るるより草青む
春一番極彩色の車両来る
満作や石を組みをる槌の音
光琳のひともと遷し梅の花
口笛に応えて呉るる初音かな
春めきて南方よりの相思鳥


最近夢というものは、持ち続けるというだけで良く、叶わなくてもそれはそれでいいのだと思うようになった。年齢のせいか。




「雪にスコップ」 鈴木牛後

粉雪の重さを屋根の下に聞く
雪晴に近く鳴りあふ枝と枝
青空へ梯子の雪を払ひつつ
屋根の雪雪雪我雪雪の屋根
雪下ろしぼふつと白い日を散らす
処女雪を掬ひ処女雪へと抛る
深雪野を大きくつかふ獣跡
雪下ろす遠き山河の黙を背に
断面の光もろとも雪下ろす
雪にスコップ今日と明日との境目に
雪を帰る我が足跡を毀しつつ
深雪晴影わたくしを新たにす


立春。冬から春への移行は暦の上の日付が進むというだけではなく、日差しを受け取る細胞の一つひとつが変わりゆくように感じられる。




「舌」 杉山久子

春を待つ猫にはなびらほどの舌
薄氷やホワイトハウストイハウス
春くるといふえびせんは海老ふくみ
トーストににじむバターよ春の雷
賞状の筒を覗けば地虫出づ
保育器にかほを寄せ合ふ桃の昼
年輪をひとつ加へてあたたかし
てふてふやサプリメントにあやしき名
(前書き:着物屋「ねこやなぎ」さん)
山羊と猫つれて再婚草萌ゆる
アンパンの餡のみどりや囀れり
雁帰るゴンドラに濃き影おとし
陽炎や花のごと盛る牛の舌


第2回芝不器男俳句新人賞受賞。「藍生」「いつき組」「ku+」所属。最新句集「泉」発売中。




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新 100年の軌跡


2015年度 第三期
最終回


 ひかりは遠く 幌谷魔王 

根号の数字おほきく春蜜柑
屋上はすこし余寒に紛れけり
きずあとを深く卒業式迎ふ
赤顔の日光猿軍団焼野
くらむほど蒲公英蒲公英蒲公英
遠嶺かな雪解雫のこぼれゐて
はつこひの記憶花盗人を待つ
りくがめのかたち寄生虫のかたち
からからな沼をむくむく蠅生る
ひなあられぽろりとびだす赤子の手
やすらかな寝息たてをる孕み猫
うらうらに照れる睫毛の長さかな
植林の人に光や鐘霞む
樹海かもしれぬ燕の来る国
果実酒の果実の行方春時雨


幌谷魔王
 1995年生まれ。高校3年より句作を始める。「いつき組」所属。




うぐいす鳴く部屋 児嶋ほけきよ 

木造の下宿に入る新入生
空き部屋に寝袋一つ余寒かな
亀鳴くや調節効かぬ風呂に入る
春めくや風呂場のタイル割れていて
うぐいすの鳴いて講義の休みおり
長閑さや錆びしチェーンに油差す
梅の花白眼の小さき大家かな
玄関に籠一杯の菜の花か
下水溝土筆の夥しく生えて
山笑う怯えた犬の迷い来て
春泥や農耕車のある駐車場
石鹸玉いくつか下に降りてきて
春炬燵周りにごみの散らかって
隣人と同じ番組春の夜
囀るや笑い上戸の人と飲む


児嶋ほけきよ
 句歴2年。「櫟」所属。『WHAT vol.2』、『WHAT vol.3』共著(コジマアキラ)。




動きだす春 都築まとむ

くらむほど蒲公英蒲公英蒲公英 幌谷魔王
 これは蒲公英の絮の飛ぶさまを想像した。何かの瞬間に蒲公英の絮は憑かれたように空へ旅立つ。「蒲公英蒲公英蒲公英」この字面がその空間に密集している蒲公英の花と飛ぶ絮を見せた。
からからな沼をむくむく蠅生る 幌谷魔王
 「沼に」ではなく「沼を」なので次々と生まれ続ける蝿を見つめる作者の姿が見える。「むくむく」という表現が生まれたての蝿の躍動を表現した。ひとつ、「からからな」ではなく「からからの」とした方が良かったと思うがいかがだろうか。

春めくや風呂場のタイル割れていて 児嶋ほけきよ
 「風呂場のタイル」が割れている、そこにかすかな春を感じる、この気分に共感。緊張した冬から春に向かうとき、いろいろな物が解けはじめる。
長閑さや錆びしチェーンに油差す 児嶋ほけきよ
 自転車のチェーンだろうか。「錆びしチェーンに油差す」で人間の動きが見える。また、「長閑」という季語と油の色合いや質感が響きあう。ゆったりとした時間は油の雫のようにポチリポチリと落ちていく。


都築まとむ
 1961年愛媛県八幡浜市生まれ。第3回選評大賞優秀賞。



それぞれの試行錯誤 樫の木

 幌谷さんの作品を第一回から順に並べると「死体安置室」、「最後の晩餐」、「墓地の香り」と「負」の要素が通底していましたが今回は薄れてきたように感じました。
 「ひかりは遠く」ではひらがなを多用しています。
くらむほど蒲公英蒲公英蒲公英 幌谷魔王
 上五のひらがな表記に対して「蒲公英・たんぽぽ」の漢字表記を三つ重ねることでその眩しさを表現しています。
からからな沼をむくむく蠅生る 幌谷魔王
 ひらがな表記がゆったりとした語り口を生み、句の内容に反して絵本の中の一節のように思えてきます。

 児嶋さんの作品は「500キロドライブ」、「冷たい耳」、「いつも否定ばっか」と各回ごとに異なるテーマ、方向性にチャレンジしているという印象を受けました。 
下水溝土筆の夥しく生えて 児嶋ほけきよ
 普段見過ごすような場所である下水溝に焦点をあてました。土筆の生命力に驚き、或は呆れているのでしょう。
隣人と同じ番組春の夜 児嶋ほけきよ
 テレビをつけている時は気付かないのだけれど、テレビを消した瞬間に隣の部屋から今まさに見ていた番組の音声が聞こえてくる。隣人に共感を覚える瞬間です。

 幌谷さん、児嶋さん、四回の連載お疲れ様でした。


樫の木
 1965年愛媛県生まれ。大分県在住の家具職人。第5回選評大賞優秀賞。


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超初心者から中上級者まで楽しめる
100年投句計画

 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天地人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選、並選を選んでいます。選者は、関悦史さん、阪西敦子さん、桜井教人さんです。

 「へたうま仙人」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は大塚迷路さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。

 「詰め俳句計画」は、マイマイさんによる、二つのフレーズに合う季語を投稿するコーナーです。季寄せや歳時記さえあれば、全くの俳句初心者でも挑戦できます。
(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)
写真:藤


選者三名による雑詠俳句計画


先選者 関悦史


 去る一月三十一日に榮猿丸、鴇田智哉、トオイダイスケとラッパーの「スーパースターズ」と一緒に俳句の朗読ライブをやってきました。普通に俳句を読んでもあまり面白くならないので、テクノポップに乗せて、声を機材でずらして重ねたりといろいろ加工したもの。ラッパーの人たちはゲームボーイ音源を伴奏に歌うというこれまた風変りなことをやっていました。単調になりがちな俳句朗読にも未知の可能性が幾らでもありそうです。


初御空西方を見る写楽の目 一走人

 「西方を見る写楽の目」に必然性があるのか何なのかはっきりとはしないまま、他のわかりやすい句の中から徐々に浮上する形で「天」まで来てしまいました。「初御空」と派手やかな「写楽」の目を剥いた大首絵とは一句に同居していいものでしょうが、日没や浄土を思わせる「西方」が割り込んでくるのがやや難解。しかし唐天竺(今の中国・インド)のイメージもないことはないので様式美の中の気宇壮大さで採りました。



蒲団より白き太腿真昼かな 藍人
 「より」の読みが、出どころを示す「から」なのか比較の意味の「よりも」なのか割れますが一応前者と取りました。「蒲団」「太股」「真昼」の組み合わせに色気だけではなく、軽い意外性と不思議さがあります。

一族の一気に去りし初湯かな 夜市
 年始の挨拶に来た親族たちがみな帰ってしまった後の風呂。一仕事片付いたような満足感と、さびしさや虚脱感が同居した場面を「一気に去りし」から「初湯かな」への急展開で一種の物量感に転じ、かえって余情あり。

ハンドルのあそび確かめ初仕事 うに子
 具体的な動作で描かれた、地に足のついた「初仕事」の句です。仕事の内容だけではなく、句の作り方としても。車を運転する仕事らしいということ以外何もわからなくても、手応えとやる気は伝わってくるうまい省略。

ずっと寝ている人が居て初芝居 ひろの
 これも解釈が割れる句。家に病人を残してきたというのは論外として、舞台上の役者のことなのか、観客のことなのか。後者だと陳腐なので、前者の役者と取ります。ただ平穏に寝ている役が妙に気になる初芝居。

冬銀河しんしんと家古りにけり 大阪野旅人
 目に見える動きとしては何も起こっていない。「冬銀河」の重さを受け止めるように家が閲してきた歳月を思っているという句。家の古びとともに己の死も意識されます。「しんしんと〜古る」の軽いねじれに生気あり。



ポケットのニオイスミレや初講義 さより
夕凍みや水に触れねばならぬ鳥 青萄
くろがねのくじらの風見雪もよひ ゆりかもめ
昼色の部屋のホルンに春の声 紗蘭
初茜厨の空気動き出す おせろ
袖とおす寝巻きの中の寒さかな 和音
かへりかけた僧のくははる歌留多の輪 緑の手
大試験林檎に蜜の入りし朝 ちろりん
山口の機関車見たい春休み まこち
大寒に汗もかきます引越しの 多満



先選者 阪西敦子


春の雪おちてとろける交差点 台所のキフジン

 交差点であるから、それなりに人通り、車通りのある地面である。雪は積もることはなくて、すぐに溶けてしまうということは、容易に分かることではある。むしろ、そのいろいろのものが通る中で、落ちて・とろける間を見届けられたことが、貴重なのではないか。何者にも遮られず空から落ちて地に届いた雪が、みずからとろけて溶けてしまうまでの間。確かにそれが目の前に現れる。



頭頂より爪先までも大旦 海田
 元旦の異称、大旦。年が改まった朝の清らかで漲った様子が、「大」の字にこもる。そこに立つ自分もまた、頭のてっぺんから足の先まで、改まった心地なのかもしれない。身体的に新年を感じる珍しい感覚だが、よくわかる。

シーソーの左右に三寒四温かな dolce
 春に近づいては戻る三寒四温の気候はシーソーだといえば、単に言葉による表現だけれど、シーソーの左右となると不思議に実物のシーソーが見えてくる。ゆっくり上下するシーソーが三寒と四温を作り出すふいごであるかのようだ。

冬夕焼け百八十度ある病棟 夜市
 病棟の窓の180度が夕焼け、つまり窓から見渡す限りの冬の夕焼け。たったそれだけのことであるけれど、百八十度と示された角度で、空に開けた窓と四角い建物が実感される。病棟の窓を埋めた夕焼けは、また病棟を包んでいるだろう。

初雪や田に点々と鴉おり 青蛙
 初雪が降って田の景色が一変する。それは田を変えただけではなく、それを取り巻くものの姿を新たにする。土と馴染んで暮らしていたカラスの黒は突然に白の上に濃く現れる。初雪が変えることはさまざま。

沈める子投げる子もいる柚子湯かな 松尾千波矢
 黄色くて丸くて暖かな香りを発する柚子が湯に浮かんでいれば、こどもが放っておくことはない。沈めれば浮かび、投げれば落ちて、いずれも飛沫を生み出す柚子に、永遠に興じ続けるのである。



オリオンのまだ逃げている冬銀河 でらっくま
冬散歩古着骨董ジャズ喫茶 風更紗
寒月やエナメル靴の疵ひりり 凡鑽
小溝ひとつ春国境の物語 青萄
嫁が君罠にはまるを放ちたり 樹朋
木枯しや家に入らぬ児が遊ぶ 波野
ずっと寝ている人が居て初芝居 ひろの
朝夕を数へる程の梅の花 遊人
送別のあったかすぎた握手の手 多満
冬銀河しんしんと家古りにけり 大阪野旅人



後選者 桜井教人

 「ホテルの朝食バイキングをかっこよく食べる」未だ達成できていない私の目標の一つである。サラダの山盛りを手始めとして、美味しそうな物、珍しい物は必ず取る。もちろんご飯、味噌汁など定番を取る。納豆など身体によい物も取る。和食が基本だが、美味しそうなパンならやはり取る。最後はヨーグルトに果物。こうして私のテーブルには朝からお皿が積み重ねられる。ワンプレートに彩りよく盛りつけ、最後にゆっくりとコーヒーを飲む。こんな日がいつか来るのだろうか。


特選句

天平の石の湯釜や寒椿 一走人

 太古より途切れることなく温泉を湧出する道後温泉の湯釜だろう。天平という言葉が句に時間的に長大な奥行きを与えている。石と寒椿の色の対比も鮮やかである。温泉の湯気も匂いも感じることができる句だ。

早春の喇叭は若き血の香り ほろよい

 早春の気温ではまだ喇叭は鳴りにくい。自分の息を入れ、喇叭を暖めて鳴らす。金属製のマウスピースに血の臭いを感じるところにリアリティーがある。早春と若きとの言葉の響きが句に明るさを与えている。

冬蝶の翅より白きのどぼとけ もね

 「白き」とあることから女性なのだろう。冬蝶の儚く危うい美しさを作者はこの女性に見ている。のどぼとけの平仮名表記が句にほどよいバランスを与えている。


並選句

お返しはすずしろほどの仲であり 海田
春隣回転ドアに油注す dolce
自撮りする晴れ着の群れや成人祭 でらっくま
初旅は青春18ガタゴトン 風更紗
書を開く蝶のあらわる日和なる レモングラス
ザビエルの貌によく遇ふ風二月 さより
しとしとと死と詩と尿と小夜時雨 凡鑽
墨染めに雪纏わりて寺の門 南亭骨太
鏡餅罅の描ける亀甲紋 樹朋
隙間風友のメールの途絶え勝ち 迂叟
大地震にむんずと掴む冬帽子 藍人
おでん屋の目貼はがれてそのままに 幸
新妻に供す湯豆腐アルミ鍋 小市
コンビニのレジの向こうにサンタかな 富士山
さいころの吸ひ込まれゆく初掃除 ヤッチー
つぎの東風吹くまで泣ゐてよいといふ  みやこまる
駅弁の冷たさを知る冬の旅 喜多輝女
雪解川法三章は漢の御代 みちる
光彩は忽然と一月の虹 かのん
羽子をつく音懐かしき児童館 ゆりかもめ
お歳暮に無事を乗せ来る一筆箋 しのたん
餅つきの石臼譲る幼稚園 ぴいす
冬凪や白き潮流観測所 波野
闇揺れて規則的なる床の息 紗蘭
待春や焼け残りたる山門に 越智空子
旅鞄隙間に冬のアトランタ 八木ふみ
寒蜆小さな息をひとつ吐く 和音
美坊主にあへるか狐にばかされるか 緑の手
かたくなな鎧とろかす葛湯かな うに子
立春大吉古傷も我が部分 のり茶づけ
綿虫の尻尾の顕微鏡写真 ポメロ親父
幸運の宿りし手帳年迎ふ アンリルカ
初夢や言葉の壺を掘り当てた えつの
寒暁のサイレンに夢二つ三つ まんぷく
しあわせを引き寄せに行く初詣 ミセスコナン
狼や闇くる風の耳に入る 人日子
じゃんけんはグーで勝ちたり蕨採る ちろりん
言葉呑む良き事もあり年の内 ひろの
冬晴や雲のかたちに山の影 さざなみ真魚
福引きのハズレてばかりこんなもの  エノコロちゃん
大寒や初春の季語を選び出す 遊人
香煙の絶え千鳥鳴く鯨塚 鯉城
鍋すらも面倒臭いと母米寿 未貫
書き初めや掠れし文字のいとおしく 松尾千波矢
冬の海前途多難の舟を漕ぐ カシオペア
磯竈水落ちやまぬ腰の篭 松ぼっくり
珈琲を淹れる間の初詣り 台所のキフジン
米寿なほ窓拭く気力息白し 瀬戸 薫
越す湯本越されて下る冬山路 西条の針屋さん
捨てらるる補助券九枚年の市 青柘榴
寒稽古減反の田を突っ切って 彩楓
水槽に魚住まずして水温む ひでやん
ホットレモン子どもの恋の話聴く 西原みどり
じゃんけんの石をひらけば福寿草 大阪野旅人




関悦史(せきえつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。

桜井教人(さくらいきょうと)
1958年愛媛県生まれ。松山市公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回、29回俳壇賞候補。



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へたうま仙人


文 大塚迷路

 日脚も縮んできておるのう。もうすぐ春分の日ぢゃな。天秤がだんだん釣り合ってきている今日この頃、いかがお過ごしかのう。
 今月も、釣り合いと兼ね合いをどう取るか、悩ましくも特に悩まくても良いような快作が大盛りぢゃ。浅き春にしみじみしながら読んでくだされば幸いぢゃ。


人は言なり鱈は月なり蟹は鴉だよ KIYOAKI FILM
北風や空っぽ頭叩いて一人 KIYOAKI FILM
 実体の有る者同士で、何々は何々というのはちょっと弱いような気もするが、これはもう作者の感覚に委ねるしかないのう。しかし「鱈は月」とはメルヘンちくちくぢゃ。
「咳をしても一人」に相通じるものがありやなしや。まるでちょうど良い加減に酔っぱらって立ち飲み屋を出た時のしぐさのようぢゃな。北風の中に一人でいることも特に寂しくない感が、じんわり沁みてくるぞ。

年度末俳句つづける決意せよ ケンケン
ふるさとの村旧正月で総踊り ケンケン
 先月も同じような句を見たような記憶があるが、毎月決意するとは見上げた根性ぢゃ。その根性をもうちょっと作句に向けて下されば言うこと無しぢゃ。
 地域によってそれぞれの旧正月もあろうが、そういえば旧正月も最近祝うことがなくなったのう。ふるさとを遠くから見つめている作者の視線が温かいぞ。

正月をすぎれば体重へりにけり 柊つばき
一年の計などすぐに忘れてる 柊つばき
 自虐的境涯句の道を邁進されておるのう。プチな贅沢をした正月がすぎたらまた清貧生活に戻り、プチな体重増も元に戻るどころか逆にへってくる。うーむ。言葉が無いぞ。
一年の計を立てるだけまだマシぢゃ。新しい年に新しい気持ちになるということは素晴らしいことぢゃ。たとえ三日坊主だとしてもぢゃ。なあにそのうち思い出す思い出す。

蝋梅の甘い香りや薄黄 真帆
新春のジャンヌダルク瀬戸の海 真帆
 小石に躓いてよろろとするくらいの調べの引っ掛かりはあるが、蝋梅を見たまんまありのまんま描写する姿勢は基本中の基本ぢゃ。そこはかとなく漂う蝋梅の独特の香りは冬の終わりを感じさせるのう。ジャンヌダルクになった気分で見つめる新春の瀬戸の海はまた格別ぢゃのう。作者の凛々しい姿が、瀬戸の海の陽光と相まって眩しいぞ。

皺くちゃの漱石干せる寒日和 元旦
薄化粧さえ騒がしや首都の雪 元旦
 早いもので、夏目さんから野口さんに代わって十年以上経つらしいが、洗濯物のポケットの奥から出てきた千円札は、結局は身銭なんぢゃがなんか得したようでうれしいのう。寒に干された皺くちゃの夏目さんの顔がだんだん元に戻っていく様は、干物の逆を行ってなかなかの光景ぢゃ。
 最近のテレビ報道はちょっと親切過ぎるような気がせんでもないのう。即経済に思考を繋げるのも結構ぢゃが、薄化粧でも見ながらもう少し余裕を持って、一句でもひねる心もちで生活して欲しいのう。作者のため息が聞こえてきそうぢゃ。

早逝の友よ故郷は冬銀河 坊太郎
実母を恋う妣を送りし冬北斗 坊太郎
 「早逝の友よ」の句も先月見たような気がするぞ。
 「実母」と「妣」の使い方の解釈がこの句の生命ぢゃと思うが、いや難しいぞ。それにつけても、どんないきさつがあろうが、どんなに虐待を受けようが実母は実母であって、心のどこかでは恋うておるというのが人の性らしいが、たとえば結婚したら、それから一生実母に会えなんだ人もいっぱいおったし、今でも居るんぢゃろうな。「冬北斗」の星と星とを繋ぐ線が切ないぞ。

竜天に登るマナティーてふ人魚 誉茂子
 「竜天に登る」とはまたチャレンジしがいのある季語ぢゃのう。脳内映像を竜からマナティへさらに人魚へと誘導していく技は、わかっていてもついつい買ってしまうテレビショッピングに通じるものがあるぞ。天に一点となっていく人魚をいつまでも見ているその視線を大切にしておきたいものぢゃのう。

鮮明に底冷えの薄型テレビ だなえ
二股の堰に馴れ初め落椿 だなえ
 テレビは冬に限るのう。それも底冷えぢゃ。夏のテレビはぼやけて遺憾。その点、冬のテレビは四隅もはっきりくっきりぢゃ。昔からサンマは目黒、テレビは冬としたもんぢゃ。
 花筏はゆっくり流れ、落椿は急流をいく。そんなイメージがあるが、二股をかける気もない落椿は、一旦堰で止まり呼吸を水に馴染ませ、そして越えてゆくのぢゃのう。いや、良い情景を味わさせていただいた。ありがたいことぢゃ。

タコ焼きのタコがハミ出す昼炬燵 照造
着ぶくれて壺に入れぬ蛸一人 照造
 炬燵の上でタコ焼きを作っているのか、買ってきてほおばっているのか、どちらにせよタコ焼きの熱さと外の寒さの差が絶妙ぢゃのう。タコがハミ出ているというのはタコが間違いなく入っているということぢゃ。結構結構。
 俳句界隈のことを「蛸壺」という人もおるが、言い得て妙ぢゃ。「壺に入れぬ」より「壺を出られぬ」か「壺出たくない」の方が、あるあるかも知れんのう。「着ぶくれて」が実に痛快ぢゃ。いや、ひとりごとひとりごと。
冬の蠅ひくりと猫の払ひけり 童夢2世
手出しして人の冷たき寝酒かな 童夢2世
 「ひくりと」が冬の蠅に係るのか猫に係るのかで味わいが微妙に変わって来るが、陽だまりの中での必死な蝿とのんびり猫との駆け引きが目に見えてくるぞ。
 打って変わって今度は寒々とした句ぢゃのう。良かれと思って手を差し出したが、相手は手出しされたと思っておる。寝酒がつらいのう。ほどよく温もって眠って下され。
 おっと、ゆっくりと眠ってもおれんぞ。こんな描写力と心情深き句は、隣の奥さんに手出ししたくてもできないブラックホールへ、重力波に乗せて追放!

春まけて石濡れそぼつかっぱ淵 久我恒子
捨て猫は金目銀目や冴えかへる 久我恒子
 近づいてくる春を肌で感じつつ淵の端の濡れた石に手をやると、心なしかその石までも温かくなっておるんぢゃろうな。和歌の世界を歩いているようで、うっとりするぞ。
 「金目銀目や」で捨て猫がいっぱいおることがわかるぞ。捨て猫もやがて野良猫になっていくのぢゃろうが、捨て猫の過去を思うたび、悲しゅうなってくるのう。擦り寄ってくる捨て猫は可愛がられていたはずなんぢゃがのう。なんだかのう。冴えかへるのう。
 おっと、冴えかってばかり居れんぞ。こんな純文学に片足を入れたような句は、片足を上げて用を足していた猫が居ったかもしれん太古の世へ、ほぼ光速で追放!


 とまあ今月も追放者を出してしもうたが、啓蟄も近づいて虫たちも喜んでいるということで、まことにめでたいことぢゃ。このままアビーロードの横断歩道を突っ切って、へたうまの王道一直線ぢゃ。
 ぢゃが、くれぐれも油断召されるなよ。




へたうま仙人
 年齢 卑弥呼がおっぱいを飲んでいた頃、ワシは青春真っ只中ぢゃった。
 好きなもの 霞のシャーベット(PM2.5抜き)
 嫌いなもの 上手な俳句
 将来の夢 大器晩成


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ

 投句いただいた句の中で「これは良いな!」と思ってよくみると、りっぱな有季定型の句だった……というのが今月は3〜4句もありました。選びたい気持ちはあるのですが、ここは自由律のコーナーなので、自由律で頑張っておられる方に申し訳ないので選びません。ものすごくカンタンに言えば「有季定型」という枠を超えれば、もっとインパクトを与えられるはずだ……と言う考え方が自由律俳句の精神です。できた句がやっぱり有季定型であれば、それはそれで大事にしてぜひ雑詠俳句計画へ。優れた有季定型の句が、ここで埋もれてしまうのはもったいないと思います。投句の前には、もう一度推敲を。



そんな話ならおでん屋にすればよかった 多満

 最近は高級なおでん屋もあるけれど、おでん屋の持つ庶民的な意味合いを上手く利用して物語を作っている。多分この二人は、おでん屋よりは高級な位置づけの店にいるのだろう。まったくそういう店のイメージは湧いてこないどころか、反っておでん屋のイメージばかりが際立ってくる。おでん屋でする「そんな話」とは、一体どんな話なのか……。何ひとつ具体的なことが表現されないまま終始することで、二人の気の置けないゆるゆるな関係が、ドラマのようにますます読み手のなかで膨張していく。



薄眼から針を発射する女 みちる
 特に男を軽蔑する女性の眼差しの怖さだろうか。細い眼でじっと威嚇されては、たいていの男なら逃げだしたくなるのではないか。まさに眼から針が発射されて、突き刺される感じがする……言い得て妙。喚き叫ぶ女性より、よほどオソロシイと思う。

ライオンの欠伸の数ほど日脚が伸びる もね
 日脚が伸びて徐々に春が近づく穏やかな状況に、いきなりライオンをぶち込んだ奇策が面白い。映像でよく見かけるライオンの欠伸自体は、まあなかなかの脱力感ではありますが。これこそ二物衝撃と言える。

大井川を静止画面のように水鳥 さざなみ真魚
 静止画面のように、モノトーンで動くものもない冬の大井川……。よく見れば水面には水鳥が浮いている……。水墨画のような風景がよく掬いとられている。大井川とあるが、だれもが知るような大きな河川を持ってくることでリアリティを獲得していると思う。

セクハラと言うな介護の手を股に入る 凡鑚
 母親なのか妻なのか……いずれにせよ下の世話をする男の切ない叫び、と捉えるのが素直な読み方だろう。こういう実感は、自由律ならでは。定型を離れることでより実感となる。

親不孝なのかさかむけの元日 一走人
 親不孝するとなると言われる「さかむけ」は、爪ぎわの皮膚が逆さにむけること。どこかに触れるたび痛い。日頃の親不孝が頭をよぎって、せっかくの元日からなんだかイラ立つ。イラ立つとは書いてないが、誰にも言えぬ忸怩たる思いがよく伝わってくる。



冬日射す王の石像にもホームレスにも さより
初夢に間男が入り込む 藍人
オーバーを着せられし犬うつむく 小市
清貧は楽し猫と湯たんぽのあれば ゆりかもめ
白くなったおでんの朝 和音
積雪を風が耕す 緑の手
生まれた時は天使のはずなのに のり茶づけ
朝刊の冷たさに触れる 元旦
日に一度愚の石を握りしめ生きてゆく まんぷく
綿虫の遊泳港区夕凪町 大阪野旅人


並選
絶滅寸前の旧正月派のおらが村 ケンケン
元日なれど軽トラ 海田
また一句決まらぬまま出す年賀状 でらっくま
子を捨て行けば一人荒野を歩むばかり  レモングラス
雨降って犬の憂鬱 南亭骨太
美術館に買う復刻の西洋骨牌 青萄
天窓に春の月物置は宇宙船 迂叟
春寒し歳時記の糸ばらばら KIYOAKI FILM
積もる雪を破壊する雨 幸
化粧石鹸箱から出してお正月 ヤッチー
待ちくたびれて咲いてみた みやこまる
パチパチとゴウゴウと煙りて野火の走りけり  喜多輝女
初雪かつ暴風雪の休校 ほろよい
目の奥の疑心冴返る 誉茂子
まず走れいびつな球は後方へ うに子
潤い成分の足りない年度末 ポメロ親父
咳をするスクランブル交差点 元旦
MRI室子守唄で戦う ミセスコナン
川舟で擦れ違う花嫁へ拍手 坊太郎
とつとつと年の内 人日子
ゾゾゾゾゾッと積もる雪 エノコロちゃん
原因が見つからなくて不安 遊人
水槽に魚影なき老の冬支度 鯉城
竜天に登るスカイツリー カシオペア
右より五番目は昔美人 松ぼっくり
ガーベラの首に針がね刺す女 台所のキフジン
安否表明寒中見舞 青柘榴
野水仙切ればすぐ香り立つ 彩楓
バレンタインチョコ食いきれなくて苦しいてふ夢  ひかるん
元旦の浜に丸い石ひろう 多満



きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。



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詰め俳句計画


文と出題 マイマイ


今月の問題
次の(  )の中に共通する春の季語を入れて下さい。

渇きとは日に(  )を見失う
(  )の来て引越のダンボール



 今回のポイントは前句の「見失う」。実際に視界から消えてしまうという意味で捉えてそういう季語を選ぶのが普通の考えかと思いますが、もっと精神的な喪失と捉えて冒険なさった方もおられます。ただあまり跳び過ぎると理解されないというのは芸術の常でしょうか。

渇きとは日に春めくやを見失う
春めくやの来て引越のダンボール
 ケンケンさん。春めくという季語はあるのですが、この「や」は何でしょう。季語アレンジとみなしますが、このアレンジでさらにリズムが悪くなっています。9級(−2)。季語アレンジの減点については2015年12月号参照のこと。

渇きとは日にひこばえを見失う
ひこばえの来て引越のダンボール
 KIYOAKI FILMさん。いやいや、ひこばえは来ませんから。7級。dolceさんののどけしは文法的に変。同じく7級。南亭骨太さんの長閑さだと安心して読めます。ただもう少し飛躍したい。4級。

渇きとは日に行く春を見失う
行く春の来て引越のダンボール
 人日子さん。前句はおもしろいが、後句、行くのか来るのかはっきりしてほしい。7級。みやこまるさんの逃水も後句来るのか逃げるのか。同じく7級。矢野リンドさん、雨月さんの寒明、ひさのさんの春寒、さざなみ真魚さんの春霖は前句が意味不明。6級。童夢2世さんは春一。春一番のことですがやはり前句がわかりにくい。5級。

渇きとは日に春の鳥を見失う
春の鳥の来て引越のダンボール
 幸さんは春の鳥。内容は悪くないのですがリズムが乗らないですね。6級。

渇きとは日に早春を見失う
早春の来て引越のダンボール
 立待さん。後句は前半がもたもたした言い方になっている。前句、詩的にも思えるが実体のあるものが出てこないのでイメージだけになっているのが難。5級。笹百合さんの花時も同様だが、もう少しイメージが広がる。4級。
 久我恒子さんは黄塵。これはかっこいい季語。ただ前句が「日を黄塵に」になっていればと残念。3級。小市さん、迂叟さん、喜多輝女さん、カシオペアさんは陽炎。これもかっこいいが陽炎って見失うものなのだろうかとだんだんわからなくなってきた。同じく3級。うに子さん、ポメロ親父さん、元旦さん、ひでやんさんは佐保姫。春を司る女神のことで前後句ともに不思議な味わい。同じく3級。だりあさん、一走人さん、緑の手さんの春風は軽やか。前句もちろん見失ったりはしないが、こういうありふれた季語のほうが前句の矛盾をすんなり受け入れやすい。1級。

渇きとは日にはえの子を見失う
はえの子の来て引越のダンボール
 レモングラスさん。前後句とも矛盾はないが嫌。特に後句何かが腐敗しているようで気持ち悪い。5級。ヤッチーさんは箱鳥。そもそも正体不明のこの季語をさらに見失うのだからなんとも……。無理やり評価して4級。海田さんは引鴨。前句はきれいだが、後句、「引鴨の来て」に違和感あり。同じく4級。でらっくまさん、エノコロちゃんは鶯。もともと藪の中にいて見つけにくい鳥なのでそれをさらに見失うのはシチュエーション的にかなり稀。後句は声が聞こえてきていい。3級。風更紗さん、青萄さん、藍人さんは猫の子。後句とにかく可愛い。前句も矛盾がない。2級。おせろさん、のり茶づけさん、杉山久子さんは恋猫。これは可愛いというよりも狂気を孕んでいるから前句とより合う。1級。ちろりんさんはたんぽぽ。綿毛といわないと本当はいけない気もするが植物でこんなに合う季語があったことに驚く。同じく1級。凡鑽さんはてふてふ。正解に近いが前句の切れ味の点で正解の方がマッチしている気がした。同じく1級。

渇きとは日につばくらを見失う
つばくらの来て引越のダンボール
 みちるさん。後句、つばめも自分も引越しという共通項を持っていることに気付いてちょっとしたおかしみがあった。前句も猫などと比べて視線の高さがある分「日に〜見失う」というフレーズをより活かせる。初段。


今月の正解

渇きとは日に初蝶を見失う
初蝶の来て引越のダンボール
 ゆりかもめさん、ほろよいさん、牛後さん、越智空子さん、誉茂子さん、坊太郎さん、遊人さん、松尾千波矢さん、片野瑞木さん、青柘榴さん、彩楓さん、ひかるんさん。今月は正解者多数。問題が簡単すぎるのか、手口を見破られているのか、嗚呼。


5月号掲載分の問題(3月20日締切)
 次の(  )の中に共通する夏の季語を入れて下さい。

しどけなき陽よ(  )をくぐり舟
借景に(  )店の名に銀座




マイマイ
2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人だったが、最近は?? 第1回、第4回大人コン優秀賞受賞。2013年句集シングル『翼竜系統樹』上梓。将棋推定初段。棋友募集中。




【100年投句計画】投句方法
 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可)、俳号(なければ本名の名前のみ)、本名、電話番号、住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。
ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙人」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、3月20日(日)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがきFAXでも投句できます。


さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(俳句ポスト365のページ参照)


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美術館吟行15:国立カイロ博物館所蔵
「黄金のファラオと大ピラミッド展」
吟行会



文 天玲


 とにかく寒波だ、暴風雪だ、と騒がしかったまさに1月24日、私は俳都松山にいた。寒さこそキビしいが、松山平野は雪もなく穏やかである。西堀端より堀之内に入ると、左手のグラウンドでは消防の「出初式」、右手の松山市民会館では「全日本アンサンブルコンテスト愛媛県大会」。その間の道を抜けると、世界の人々を魅了してやまないエジプトの至宝が、ダイナミックな古代エジプトの世界が、そして美術館吟行メンバーが待っている。
 吟行メンバーはチャンヒ・ひかる・猫正宗・恋衣・祭り子・天玲の6名。
 展示開催2日目の静かなる喧騒の中、展示室へ。

展示室の床に四千年の余寒 天玲
日と月の交わる闇よ蝶生るる ひかる

 何の予備知識もなく見始めたが、この展覧会がとんでもない一級品を集めたものだということはすぐに判る。それもそのはず、あの吉村作治教授監修、カイロ国立博物館から選りすぐりの100点を展示、とのことなのだ。

王という神を生み出す春の岩 チャンヒ

 エジプトを語るにまず避けては通れないピラミッド、そして数多の彫像となり存在が示される王たちと王権。

寒波でも王も貴族もみな半裸 猫正宗
王権は果てまで碧き冬の空 天玲

 王族の姫たちの装った数々の装飾品。

王女の襟の暗殺者はハヤブサ ひかる
心臓の重さ知るスカラベへ雪 恋衣

 そしてその国家を支えた職人、農民。

四千年前の春よりパンの昼 チャンヒ

 これらの遺物が世界の人々を魅了する訳は、文化・技術の高さもさることながら、人類の永遠のテーマであろう、魂の永続性、霊魂の存在、生まれ変わりへの信頼、それらが見事な意匠の木棺などの形でまざまざと具現化されている点にあろう。

花の夜の柩は永遠へと閉じる チャンヒ
内臓の壺それぞれに冷たき影 天玲
雪をゆくバーや静かに偽扉の閉ず 恋衣

※バー…個人の人格を司る魂のようなもの。
※偽扉…バーの出入りの為、墓に作られた扉

 本展の目玉でもある黄金のマスクもまた、来世にかける願いである。

古代人黄金マスクきらびやか 祭り子
語りだしさふな唇春寒し 恋衣

 展示を見終えた恋衣さんの一言
 「言葉が追いつかない」……。
 
 資料によれば、ピラミッド内部に刻まれたヒエログリフの文章に、同音異義語などを使用した「言葉遊び」が見られるという。そこに書かれた内容は、【死者に害を及ぼす邪悪な存在から身を護るための呪文など】ということなので、古代エジプトにも、韻律やリズムの美しさを駆使した言葉〜詩歌の力でもって、邪悪なるものを祓い、見えざるものと交信できるとの思いがあったのだ。遙か四千年後の人類である我々もまた、相も変わらず、時に彼らと同じ思いを持って、俳句などというものを喜々として紡いでいると知ったら、古代エジプトの人々はあきれるだろうか、それともニヤリと笑うだろうか。

永遠を夢見るなんて冬夕焼 猫正宗
永遠てふ真実の果て寒昴 ひかる



天玲
いつからか穂積書道教室俳句部部長・すてきな俳句仲間が増えてしあわせです。




取材協力:取材協力:「黄金のファラオと大ピラミッド展」実行委員会(愛媛県、あいテレビ)
*3月27日(日)まで開催中



次回美術館吟行会
いずれも『100年俳句計画』編集室までお申し込み下さい。(TEL089-906-0694)

畦地梅太郎記念美術館
日時: 3月12日10時30分〜 (現地集合) 
場所:〒798-1114 愛媛県宇和島市三間町務田180-1 Tel:0895-58-1133
参加無料(入館料は別途)
申込締切:3月9日


吟行ナビえひめ
http://iyokannet.jp/ginkou/



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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.32


Vallee Blanche snowflakes
Glacier skiing very far
Did I escape death?

死を逃れ氷河の果てを行くスキー


(直訳)
白き谷 雪の結晶
氷河スキーは果てしなく
私は死から逃れたか?



 We explored the Alps on our skis and ate flaky croissants. Now we are at home in Yamanakako watching the snow fall and staying in our pajamas all day.

 我々はアルプスをスキーで探検し、パリパリのクロワッサンを食べた。今は山中湖の家で降る雪を見ながら、一日中パジャマで過ごしている。
(訳:朗善)



ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第60話 オール アローン マル ウォルドロン

春の水黒一点に地を穿つ 時計子

 ビリー ホリデイ最後の伴奏者としてマル ウォルドロンが吹き込んだアルバム「レフト アローン」がヒットして以来、「この地味な、灰色の楽想を持ったピアニストは、完全にわが国ジャズ ファンのハートを掴んでしまった感が深い」と表したのはジャズ評論家の粟村政昭氏である。この一篇で即レコード店に向かった二十歳の頃の僕も典型的日本人の類だった。
 中年の僕のレコード棚に、ジャズ アルバムが二千枚ほどになった頃。某ジャズ冊子のインタビューでタモリが語った。「「レフト アローン」ってマルの曲、嫌いだな。あまりにもメランコリック過ぎちゃって」と。なるほど、と思った。当時、既にこのアルバムが僕のターンテーブルに乗ることは殆どなかった。

春愁や夜を反芻するピアノ  ドクトルバンブー
流氷の水墨画にも似てピアノ 蛇頭

 一方、前記アルバムと同時期に購入したエリック ドルフィーの「アット ザ ファイヴ スポット VOL.1」は今でも度々聴いている。マルの曲「ファイヤー ワルツ」におけるドルフィーのアルト サックスとブッカー リトルのトランペットが奏でるカラフルなアドリブに心が躍る。続くマルのピアノは一変、水墨で描かれたフレーズを反芻し、推敲し、叙情詩を紡ぐような味わいがある。これが飽きない。いや、病み付きになっちゃう。
 このライヴ直前のスタジオ録音が今回のサブテーマ「クエスト」である。ドルフィーがバスクラじゃなく普通のクラリネットを吹いたことでも貴重なアルバムだが、出来栄えも上々。テンポがややスローな「ファイヤー ワルツ」ではマルのピアノとロン カーターのベースがフィーチャーされており聴き比べがとても美味しい。

余寒なほロンバルディアの旅人へ 破障子

 マルは本国アメリカより日本や欧州での人気が高く、当然ながら各地のミュージシャンとの共演やレコーディングの機会も多かった。念のため手持ちのアルバムをチェックしてみると、何とその三分の一が我が国のミュージシャンとのセッションやプロデュースに係るものであった。しかも駄作は皆無と言ってよい。中でもイタリアのロンバルディア州ミラノで吹き込まれたソロ アルバムはマルの決定的名盤。

独りなら触れる全ての春星に 猫正宗

 今回のメインテーマ「オール アローン」には訥々とマルの世界が凝縮され、散りばめられている。具体的にJAZZ俳句で表現すれば、

左手の憂鬱春きざす右手 光海

となる。


http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。

次回のJAZZ句会は、3月27日(日)13時より。テーマは「スタンダーズvol.1&2/キース ジャレット」です。句会への参加を希望の方は、本誌44ページの句会カレンダーを参照してください。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU vol.1/vol.2』(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ


第60話
『道具屋』 〜 伸縮自在、重宝がられる噺 〜


 仕事もせずぶらぶらしている頼りない男に、甚兵衛さんが小遣いかせぎにでもと、道具屋をやれと勧める。
 夜店でいろいろな掘り出し物を売る道具屋、これなら出来るかもと、男も商売を教わる。
 風呂敷包みの中には様々なモノが。
 掛軸の絵を見てこの男「珍しい絵ですなあ、ボラがそうめん食うてるてな……」
「そら、鯉の滝登りを逆さに見てんのやがな」
 また、このモノモノがちゃんとしたのが少ない。
 のこぎりは火事場で拾ってきたものだし、ひな人形は首が抜けてしまう。短刀も、ホンマもんとはちがう、芝居や踊りで使う抜けない代物。
 まあこれらでもうまくやれば売れると教わり、荷を持ってやって来たのが夜店がたくさん出ている筋。
 ゴザを敷いてモノを並べて売り始める。
 客が来てのこぎりを見ながら「これは焼きが甘いなあ」と言うと男は「いや、よう焼けてまっせ、火事場で拾てきたもんやさかい」と返し、客をあきれさせる。
 次の客に電気スタンドを見せてくれと言われるが、「これね、形は変わってて面白いんですが、三本足が一本取れてて二本しかないんで、買うんやったら今もたれてる後ろの塀も一緒に買うてもらわんと……」と答える始末。
 また、次の客が短刀を手にして抜こうとするが、いくら力を入れても抜けない。一所懸命うんうんうなりながら抜こうとする客と一緒になって両端を引っ張る男。
客「抜けんなあ〜」
男「抜けまへんやろ」
客「何でやねん」
男「木刀です」
客「木刀? 木刀てなもんが抜けるかアホ!! 何ぞ抜けるものはないのんか?」
男「それなら、おひな様の首が抜けます」



 東西でよく演じられており、東京の寄席では一日に誰かが必ず演るといっても過言ではないくらいポピュラーな噺です。
 20分ぐらい演ることも出来ますし、5ふんにも縮めることの出来る伸縮自在な噺ですので出しやすいのでしょう。
 客とのやりとりでとぼけた男が笑わせてくれますが、このやりとりも様々なパターンがあり、オチも演者によってバラバラです。
 この「おひな様の首が抜けます」はその中の一つ。
 他には、客が笛を見ていて指を突っ込んで抜けなくなり、買わなければいけないハメに。客が「いくらだ?」と尋ねると、ここぞとばかりに男はべらぼうに高い値をふっかける。客が「お前、足元を見るな」
男「いえ、手元を見ております」
などあります。
 古い物など興味もなかった僕ですが、ここ数年古い食器に魅せられ、あまりたくさんではありませんが、集めるようになりました。
 盃は徳利とおそろいのものが好きですが、昔の盃はとても小さいのだなあと実感しています。
 小さい盃、かわいいんですよ。ただ一口で酒をクイッと呑み干せますので、クイックイッとやってると確実に呑み過ぎることになります。
 僕がやってる店(旨酒総菜とみなが)にも古い食器を置いているのですが、スタッフが割ってしまうとムカッときます。
 形あるものはこわれるとある方に言われましたが、ムカッとくるもんはくるんです……。

これだけは手放さぬやう雛人形


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ホンヤクサイホンヤク


翻田 訳蔵

 俳句初心者、翻田訳蔵がネット上の翻訳ソフトを使って名句を翻訳、再翻訳し、そこからインスパイアされた(パクッた)句を発表していこうという馬鹿馬鹿しくも実験的で図々しいコラムです。


今回の俳句
 三月の甘納豆のうふふふふ 坪内稔典


 う、ふ、ふ、ふ、と言われると私はやはりEPOを思い出してしまいます。某化粧品会社のCМソングでしたね。
 ではさっそく、Google翻訳(英→日)から

Ufufufufu of March of amanatt

 再翻訳

甘納豆のマーチのFufufufufu

 「甘納豆のマーチ」どんな曲なのでしょう? もしかして、EPOが歌っていたりして……。検索してみましたが、そんな曲はありませんでした。そしてよく見ると、「Ufufufufu」から「Fufufufufu」と「F」がひとつ増えています。

 続いて、エキサイト翻訳(英→日)

Bran bran of a sweetened adzuki bean in March

 再翻訳

3月の甘くされたアズキ豆のふすまふすま

 確かに、甘納豆は甘くされたアズキ豆ですね。「ふふふふ」→「Bran bran」→「ふすまふすま」になっています。ここで訳された「ふすま」は「襖」ではなく、「bran」とは「糠」のことで、小麦の糠を「ふすま」というそうです。

 最後に、Yahoo!翻訳(英→日)

Sweetened adzuki beans のうふふふふ of March

 再翻訳

3月の加糖小豆のうふふふふ

 確かに、甘納豆は糖分を加えた小豆ですね。

 それでは、この3つを受けて一句。


3月のEPOの新曲納豆マーチ 翻田訳蔵


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お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第41回 『真夜中の太陽』
 [劇団民藝公演、原案・音楽:谷山浩子、作:工藤千夏、演出:武田弘一郎、出演:日色ともゑ、石巻美香、藤巻るも、他、'16年1月18日、ひめぎんホール(県民文化会館)サブホール]

 「防空壕に入っちゃダメ!」空襲から避難しようとする女学生達に叫ぶ少女・ハツエ。
 1944年、ミッション系の女学校。時局厳しくなる折、学生たちはそれでも眩い青春の只中にある、そんなある日のこと。
 青年団の演出部に所属し、渡辺源四朗一座のドラマターグを務める工藤千夏が、谷山浩子の歌「真夜中の太陽」からつくった作品。
 女学生達の中、ハツエの姿は我々には老婆に見える。防空壕の学友たちが、みな空襲で亡くなった中、彼女は音楽室に合唱の楽譜を取りに戻ったことで、唯一助かった少女だった。自分だけ生き残ってしまった、そんな悔恨を抱えて生きてきた彼女は、今、70年の時を超え、友の命を救おうとするのだが……。
 本作には、戦争に対する直接的な弾劾や批判はない。ただ、礼拝の禁止に始まり少女たちの日常が少しずつ不自由になっていく姿、そして、死んでしまった彼女達がハツエとの会話を通して示される、失われてしまった未来への憧れを描くだけだ。いや、そもそも戦争を描いた作品ですらなかったのかもしれない。個人の命、尊厳、自由、良心、そういったものを押しつぶそうとする全てへの抵抗【プロテスト】の物語であり、生き残ったものがどう生きていくかという物語であったように思う。

命とは太陽寒夜明けずとも

 なぜなら本作の核には、常に「真夜中の太陽」という歌が在るからだ。作中のこの歌は、彼女が取りに戻った楽譜の曲という設定になっている。彼女が命を賭して守ろうとしたその歌は、その歌詞の内容とともに、禁じられた讃美歌の代わりに、特攻に捕えられた恩師が帰ってきたら友と共に合唱しようと、自分たちで作った歌なのだから。

染卵君と歌いたかった歌

 生き残ってしまった自分を、みんな怒っているのではないか、そんなハツエの前に現れた女学生たちは口々に「ハロー」と声をかける。そんな何でもないシーンで涙が溢れた。

※本作は、3月23日〜27日まで渋谷の全労災ホール/スペース・ゼロで上演。



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。


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歳時記「無季」がバイブル


第5回
文 現代俳句協会会員  日暮屋 又郎


 我が家系は代々の刀鍛冶である。西予市城川町には、昭和の終わりくらいまで続けていた者もいた。自分も職人にあこがれて弟子入りを志願したのだが、将来性を慮って断られた経験がある。また一方、一族のほとんども時代変化とともに喰いあぐね、包丁や鋤や鍬といった刃物鍛冶に生業を求めていった。
 子供のころ、親戚の鍛冶場での作業を興味深く眺めていると、最初は鉄という単なる物体でしかなかったものが熱を加えられ、その真っ赤に焼かれた塊が槌を打たれるたびに火花を散らしながら転がされ、だんだんと目的をかなえるための形になってくる。
 鍛造の末出来上がった製品には、道具としての機能性に命という無形の力がそなわっているのがわかる。使い手のことを思い、鍛冶職人の吹き込んだ魂そのものだ。その命が、使い込むほどに欠けたり、えぐれたりを研磨修正され、持ち主の個性が加えられながらさらに変化を繰り返し痩せてゆく。
 現在、自分が商人としてかかわっている、職人といわれる人たちの中にも様々な人がいて、サラリーマンであれば、とっくに定年している歳の職人の道具は、一言でいえば小ざっぱりして清々しささえ感じる。

死ぬまで働くつもりの鍬がある 鈴木和枝

 この気分がストンと腑に落ちて大好きな句の一つだ。この鍬も小ざっぱりと、良い意味で痩せているように見える。いやな言葉だが後期高齢者と呼ばれる人の農具であろう。一家を背負って養い、額に夕日を受けながらなお鍬を打ち続け、がむしゃらに働いたであろう、盛りをとうに終え、都会に出た子供や孫たちに作物を送ったり、たまに帰ってくれる事を生きがいに、ともに老いた妻との静かな余生を過ごしているようだ。
 人生の達人といった慎みを持ち、決して無理することもなく、かといってやめる理由も見つからず、淡々と農作業に親しんでいるように思えてならない。
 このような農夫の人生に、我が一族の造った鍬や鋤が、役に立ったのであれば幸いなのだが、今ではさらなる時代変化に耐えかね、同じ鉄と火を扱うことがきっかけかと思える鉄工所へと変貌し、今なお難儀していると聞く。

熔接の火にぱっと あいつも妻がおる顔 柴田義彦

 もうあとを継ぐ者もおらず細々と年金を継ぎ足しながら、彼らにもまた、一生働くつもりのガストーチがある。


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百年歳時記


第34回 夏井いつき

 有名俳人の一句を紹介鑑賞するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月ご紹介していきます。


犢ほどの根明けありけり牛魂碑 鈴木牛後
 「根明け」は「木の根明く」の意で、木の根元の部分が円形に雪解ける現象を指します。木の幹や枝に太陽が当たり、その熱によって木の周りの雪から解けていくのだそうです。これを季語として載せる歳時記は少ないですが、北国独特の春の季語と判断しました。
 「犢」の句かと思いきや、「犢ほどの」という比喩が「根明け」の映像となっていく手法が、実に巧み。「ありけり」と言い切った後に出現する「牛魂碑」にもハッと心が動きます。北の原野を開墾するために働いた牛たちの「牛魂碑」でしょうか。かつては「犢」ほどの木の根を引き抜くために力を尽くした牛たちだったのでしょう。「牛魂碑」の根方の「根明け」が春の訪れを告げます。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』2月12日放送分)

遺骨拾い戻る車列に波の花 波恋治男
 「遺骨拾い」とあれば、読み手は皆、今まさに骨あげのための長い箸を手にしているのだと想像します。焼き上がったばかりの骨の熱を生々しく感じとる人もいるでしょう。が、続く一語ごとに一句の映像はどんどん変化していきます。「遺骨拾い」に続く「戻る」という動作、「戻る」ものが何台も何台も続く黒い「車列」であるという事実、そして「車列」に吹き千切れる「波の花」。季語が出現したとたん、熱を帯びた「遺骨」から寒風にあおられる「波の花」へと、めまぐるしい臨場感をもって一句の光景が完成します。黒い車列へ吹きつける「波の花」は、その色の印象を「遺骨」の色に重ねつつ、忘れ難い光景として作者の心に刻まれているのでしょう。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』2月5日放送分)

河原辺の野焼きに爆ずるボールはも くらげを
 最後の「はも」は「…はなあ」という意味で、詠嘆を表します。「河原辺」で行われている「野焼」の最中に、ボン!と爆ぜるものがある。それが「ボール」であることに気付いた時の軽い驚きを、「ボールはも」と表現したわけです。「爆ずる」の一語が、爆ぜる音、火の匂い、「ボール」の焦げた臭いなどをありありと想像させ、ある時代の「野焼」という季語の現場の手触りを伝えます。
 さらに、「はも」という悠長な語り口が、「野焼」が行われてきた縄文の頃からの時代の印象や、春の長閑やかな気分をも感じさせます。おまえも絶滅寸前季語に数えられるようになったか、「野焼」よ、という感慨に寄り添ってくれた一句でもありました。
 (松山市公式サイト『俳句ポスト365』2月19日掲載分)

野焼の火とも纏足の少女とも Y音絵
 「野焼」の句としてこのような発想が生まれていることに驚きました。「野焼の火」と「纏足の少女」をイコールで結びつつも、それが別の何かの比喩になっている構造にも目を見張ります。
 チョロチョロと燃え始める「野焼の火」とチョコチョコと歩く「纏足の少女」、自然の変移を断ち切って人工的に野を変移させる「野焼」と人為的に足の成長を阻害する「纏足」。思いがけないさまざまな類似点を想起しつつ、「〜とも〜とも」という措辞に隠されている、別の何かを想像する詩的興奮。作者からの謎かけを受け止めた読者一人一が、果たしてどんな解答を一句の奥に見いだすのか。Y音絵ワールドというべき作品に、鼓動が高鳴ります。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』2月19日掲載分)

桃活けて遠く海鳴る洗面所 光藤多恵
 「桃」とのみあれば桃の実を意味しますが、「桃活けて」とありますから桃の花だと分かりますね。「桃活けて」という措辞は、自分が桃の花を活けたとも、活けられてそこにある桃の花だとも解釈できますが、一句の味わいとしては後者の意味に取りたいと思います。
 この句の魅力は「桃活けて」からの展開です。中七「遠く海鳴る」音が、眼前の「桃」の花片へ微かな振動となって伝わってくるかのような感触。「洗面所」の一語が持つ清潔感は、桃の花を活ける行為そのものを清々しく感じさせ、春の「海」の明るい青と「洗面所」の白の対比が「桃」の花の濃い桃色をより鮮やかに印象づけます。春という季節のしずけさのなんと美しいことでしょうか。
(瀬戸内海俳句大会 夏井いつき選優秀賞)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第60回 文 暇人

まる裏俳句甲子園の裏

 1月10日朝8時半の子規記念博物館講堂には既に多くのスタッフが集まっていた。わちゃわちゃと準備を進めているとスーツ姿の紳士から「皆さん、打ち合わせを始めます。集合っ!」と。声の主は若狭代表。早朝から眩しすぎるぐらい、テンションの高い代表。
 打ち合わせを終え、私はここ数年恒例になっているFacebook審査員の用意を行う。昨年まで利用していた無線インターネット通信は安定しない状態だったので、今回は別のサービスを利用してみることに。試しにインターネットに繋いでみると……かなり安定している様子。さらに今回は、また別の、無料のネット接続サービスも会場内で使えるようになっていた。ただしこの回線は利用に時間制限があるため、やはり自前での回線確保が必要なようだ。
 受付開始30分前、受付の準備を始める頃には既に、会場前ロビーに多くの参加&観戦希望の方々が。どうやら昨年よりかなり多い様子。受付開始時刻の9時半になると、ロビーに若狭代表が姿を現し、開場を宣言。ここ数年で受付やチームエントリーをスムーズに進めるための改善に取り組んできていたものの、今年は例年に無い人数への対応で、混乱が生じる部分があった。
 そして予選の句会ライブ開始。捌きには夏井いつき組長、司会者に俳号・八角こと平野和子さんを迎えた。エントリーしたチームの総数は「46」。なんと例年のおよそ1・5倍。現地ではこの数字に「びっくりポン!」。スタッフも「聞いてないよ!」。まず最初にチームを一組ずつ紹介するのだが、当然、チーム数が増えればそのぶん紹介に時間もかかる。しかし、全員を紹介したいという夏井いつき組長の意向もあり、ここは例年どおりにチームを紹介。
 予選の模様はできる限りFacebookで報告した。そして今回は動画もいくつか掲載したが、これは今回改善されたネット環境のおかげ。当日Facebookをご覧いただいていた方には、少しでも会場の雰囲気を伝えられたのでは。
 本戦では、mhmのFacebookグループに参加いただいている方には審査員としての投票を行っていただきつつ、グループ未参加の方にも投票の様子がわかるような報告をさせていただいた。

 今回のまる裏俳句甲子園は、前日に開催された俳句ポスト365オフ会からの参加や、この数年来呼び掛けてきた若年層の参加が増えたおかげで、例年以上の参加人数となりました。本当にありがとうございました。この流れが来年以降も続くよう、mhmではすでに来年の準備を開始しています。その様子は、今後のmhm通信や、Facebook等でも報告します。

 最後に定例会開催日変更のお知らせです。mhm発足当初より、毎月最終火曜日としてきた定例会を、今年の2月より最終金曜日に変更いたしました。3月は25日(金)19時から開催予定です。


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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南極を詠もう!


No.2
愛媛県立新居浜西高等学校教諭
渡辺浩志

 「100年俳句計画」の読者の皆様、こんにちは。新居浜西高校の渡辺です。
 12月23日に待望の昭和基地に入りました。夢にまで見た昭和基地でしたが……、そこは、トラックや重機が土埃を巻き上げながら走り、あちこちにコンテナやドラム缶が野積みされた、まるで工事現場でした。私たちも翌日から、「現場」入り。風力発電2号機建設などに携わりました。油と埃と汗にまみれ、トラックの荷台に乗り、現場と宿舎の往復。「ここは一体何処なんだ」と錯覚する毎日。作業中、ふと遠くに見える南極大陸に「やっぱり、ここは南極なんだ」と我に返っていました。
 しかし、現場作業もつらいことばかりではありません。この昭和基地建設に携われる喜びもあり、研究者や医療、調理隊員など様々な職種の素人集団が一丸となって取り組みました。
 その合間に、野外オペレーションにも同行しました。南極の氷河や露岩などの雄大な自然やペンギンの姿に心が癒されました。
 ということで、今回は、忙しさもあり、隊員の方々の俳句も十分に集まりませんでした。俳句を詠む心のゆとりがないほどに、疲労困憊している隊員の姿。工事現場の様相を呈する昭和基地。読者の皆さんが想像する基地とはかけ離れた真の姿をイメージしてください。そして、隊員に代わって、17文字に南極の姿を詠んでいただけることをお願いいたします。
 次回は、再び、観測船「しらせ」からご報告いたします。では、また。



今月の南極吟行句   希望峰 編


 今回は、隊員のみなさんと読者の投句とのギャップを楽しんでください。

割れ崩る氷河は知らず大晦日 源笑
 氷河を見れず、大晦日を迎えてしまったということでしょうか。せっかくたどり着いた昭和基地ですが、立ち会うことのできなかった想像上の氷河は大きな音を立てています。ところで、「氷河」に修飾されるならば、「崩る」は「崩るる」「崩れる」のどちらかですね。

初春の日が顔を焼く昭和基地 源笑
 そして、年が明けました。「焼く」という措辞から、遮るものがなにもない大地を思わせます。「昭和基地」という固有名詞も、まさにこの場所で日を浴びたんだ!という気持ちが伝わってくるので、この句においては効いています。

昭和基地 ここは 強制収用所? 後藤猛
 渡辺さんの文にある、発電2号機建設の現場ですね。リアル感が伝わってくるのですが、そのままの報告文に終わってしまっています。「昭和基地」を省いてしまって、「強制収容所」の比喩はそのまま活かし、季語を使って苦しさを表現したいところです。(すみません、頭で原稿を書くより実際の作業は大変だろうなと思います……)

藍空の冬を極光の緑罅 海田
 読者の海田さん。「藍空」という言葉には若干無理がある気がしますが、緑に見えた水の罅が照らされているのは美しそうです。

逆光に あかくてかりし 氷河痕 土井浩一郎
 こちらも、満ちた光を詠んでいる句ですが、「てかりし」がやや幼い言葉に聞こえます。「照る」くらいで抑えたいところですね。氷河痕……赤土とは思いもしませんでした。氷河痕を季語として捉えるのは難しいので、「逆光」を「冬の光」などにしてはいかがでしょう?

春風は良いかアザラシゆうゆうと だりあ
ようこそここへ人見知りする鯨です 同 
 こちらは、読者のだりあさん。すみません、隊員のみなさんはそれどころではなさそうですね…

打ちあがるアザラシ笑うミイラの目 塩原真
 ミイラは隊員のみなさんの比喩でしょうか?

風すさび小屋で身を寄せヘリを待つ 渡辺浩志
 ヘリで来てもらわないところまで行ったのでしょうか?ああ寒そう……辛そう……「風すさび」を季語にしたら俳句らしくなり、よくなるかと思います。

北東の 清風響く 虎落笛 荒川逸人
 荒川さんからは、解説もいただいています。
 「北東の卓越風は,南極の澄み切った空気を運んでくる。気水圏モニタリングでは、北東の風を狙って大気のサンプリングをおこなっている。この風が強く吹くときに,観測設備のある観測棟の階段は,もがりぶえのごとく,ひゅうひゅうと音を鳴らす。サンプリング日和だと心がはやる。」
 なるほど、まずは大気をサンプリングするという行為に驚きです。「虎落笛」は風と結びつきの季語ですので、「虎落笛」を季語として詠む場合は「清風」という言葉は意味的に重複が大きいでしょう。「北東に虎落笛」とし、大気のサンプリングの状況を足してほしいです。

南極の尻尾のあたりはだれ雪 ひでやん
 あの大陸の「尻尾」ってどこなんだろう……隊員の皆さんに聞きたいところです。
 ひでやんさんからコメントも。「前回、観測基地に門松があるかどうかと言われていましたが、毎年、愛媛から観測基地に門松が送られているのです。」
 そうだったのですね!

 大事なことを忘れていました。隊員のみなさん、俳句は基本的には5 7 5の分かち書きはタブーです。一行にまとめて書いてくださいね〜。


【投句募集】掲載写真から作った俳句を募集します。投句された俳句は、スウェーデンに留学した経験のある喜望峰さんが紹介します。
 俳句は専用の投句フォームにて受け付けます。http://marukobo.com/antarctic/
 投句締切は3月3日(木)。


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俳句の街 まつやま
俳句ポスト365


協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


優秀句
平成28年1月度


【歌留多】
《地》
美しき鰭ひらめかせ歌留多取る めいおう星
痛そうな犬の顔ある歌留多かな 井上じろ
歌留多には円空仏のごとき姫 初蒸気
ゆんでは軸めては歌留多を打ち飛ばす  えらいぞ、はるかちゃん!
目の前のかるた取らるるみぜらぶる 葦信夫
姉の恋皆知つてゐる歌がるた 雨月
歌留多大敗白妙の電気ケトル Y音絵
沈金の三段御重かるた読む 七草
花骨牌リトル・トーキョーてふ坩堝 このはる紗耶

《天》
どうかしてゐる歌留多にひらがなは群れて  Y音絵


【冬凪】
《地》
帯電したまま冬凪を飛んでゐる Y音絵
冬凪やフェリーの窓に乾く潮 矢野リンド
冬凪や塩の欠片のやうに島 樫の木
冬凪や固き漁協のメロンパン トポル
冬凪の港に匂うC重油 スズキチ
ぐつぐつと滾るアーク炉冬凪ぎぬ 比呂 無
冬凪や涸びし骨の蹴りごこち とおと
冬凪や死んでも猫はやわらかく 江口小春
冬凪や妻の座譲る日の朝の ぐわ
リーマンゼータ関数めく冬凪 はとほる

《天》
冬凪や浜舐め戻す波うすし み藻砂




俳句ポスト365作品集2015

冊子のお問い合わせは……
 松山市役所 観光 国際交流課
 TEL 089−948−6556



3月の兼題

投句期間:2月18日〜3月2日
貝寄風 かいよせ【仲春/天文】
陰暦2月20日前後に吹く西風。大阪の四天王寺の聖霊会の舞台に立てる供養の造花を、古くはこの風によって住吉の浜に吹き寄せられた貝殻で作ったという。「貝寄」の語は他の各地にもある。

投句期間:3月3日〜3月16日
海胆 うに【晩春/動物】
棘皮動物ウニ綱の総称。海底の砂中や岩礁などに生息する。円盤状や球状をしており、毬栗にも似た無数の長い棘を持っている。

投句期間:3月17日〜3月30日
菜種梅雨 なたねづゆ【晩春/天文】
3月末〜4月にかけて、連日降る長雨のこと。菜の花の咲く頃の長雨であることからの呼び名。



《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


※募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。
※「俳句ポスト365」は携帯電話からもご参加いただけます。
※「俳句ポスト365」公式Facebookページ開設中! 公式サイトに設置しておりますリンクよりお入りください。毎回の兼題のお知らせを中心にお伝えしながら、皆様の返信欄への書き込みもお待ちしております。



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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成28年1月度


【第九】
腹筋を鍛え第九に備えおる 遊人
五日後に歌う第九を聴きに行く 不知火
背表紙の天使微笑む第九かな あるきしちはる
ラジオより第九零れる決戦前夜 睡花
豚の耳炒めつつ聴く第九かな 矢野リンド
幕開きて保育科百名の第九 誉茂子
ドイツ語は優です第九歌えます 天玲
鼻歌の第九で捏ねるドイツパン 妙
ドイツ船籍ドロテア号の第九 理酔
地の星の集う第九のスタジアム ほろよい
総立ちの第九の星は眠らざる 松ぼっくり
彼は声を光と変えし第九かな 咲く空色
第九歌い終えて蝶ネクタイの曲がり 樫の木
雑音の第九エノラゲイの話 ラグナ
第九聴こゆカラシニコフを眠らせて 三津浜わたる

《天》
やや削げし鴎外が頬第九聴く 山中憶良


【楪】
楪を一枝剪るに手を清め 一村
楪を添えて支度を整えて 秋尾
楪や三方のもの日々皺む 篠原そも
楪や一子相伝餡を練る 抹茶最中
楪や家長のとりし出汁薄し マイマイ
楪や時には長子家を去る いそ
ゆづり葉やわれもわれもとみな独居 青萄
青丹よし奈良の都の楪は だんご虫
楪に雨滴どんどん新しい 豆腐太郎

《天》
楪の樹下や子犬のごとき子等 雪うさぎ


【磁】
磁器の音綺麗透明初御空 赤い長靴
冬晴や磁器を攻め焼く青煙 青花
抽斗にころがる磁石漱石忌 もも
抽斗の奥より磁石寅彦忌 笑松
流星を浜辺に探す棒磁石 樫の木
磁極動いたか西寄りの北風 ひでやん
寒月の磁界に打たん平家琵琶 鯛飯
狼を連れ句座という磁場の中 妙
深海の磁場へ鯨の墓場かな ラグナ
人体の磁場に舫える宝船 天玲
初夢の中に磁の字の恐ろしや ミセスコナン

《天》
磁針揺れやまず原発に狐火 小市


【寒犬】
一塊の野生寒犬疾走す ひなぎきょう
主眠る山へ寒犬放ちたる あおい
床下を寒犬に貸し祠旧る 紫水晶
旅の宿寒犬の待つ七合目 西条の針屋さん
寒犬の威嚇熊突き爺の谷 ほろよい
もののけや寒犬柵に跳び当たる 青萄
寒犬や龍の喉笛狙いおり 山崎ぐずみ
灰色の壁の卍と寒犬と 鈴木牛後
大天使ミカエルのごと寒犬来 理酔
オーロラや猛る寒犬へ口笛 このはる紗耶
総統の鞭寒犬の片目萎え オイグウサガガツ@
寒犬の尻尖る朝刊配る トポル
寒犬へ明け行く水のさざめきぬ ターナー島
寒犬抱けば犬も私も出る涙 烏天狗

《天》
闇ひきずるや寒犬の垂らす紐 更紗


【生姜酒】
こめかみを揉み込む指や生姜酒 みいみ
生姜酒土佐と銘打つ下ろし金 マイマイ
商標の虎吠えている生姜酒 太郎
保線作業終えて夜明けの生姜酒 このはる紗耶
生姜酒酌み交う朝の番屋かな 篠原そも
生姜酒梁に獣の肉吊るす ラグナ
生姜酒脱稿まであと三千字 あるきしちはる
幻燈のごと開く夜の生姜酒 黛
生姜酒呷る灰色熊のごと 青萄
フィリッピンの残痕暗し生姜酒 豆腐太郎
水兵の黄ばむ写真や生姜酒 殻嵩はるお

《天》
眼鏡置き鼻はさびしや生姜酒 ターナー島



※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

投句締切: 3月13日
捨頭巾 すてずきん【晩春/人事】
春になって頭巾を用いなくなること。かつては防寒用として多く用いられていた頭巾だが、現代ではほとんど見られなくなった。

常節 とこぶし【三春/動物】
ミミガイ科の巻き貝。見た目は鮑に似ているが、長さ約7cmと小さい。表面は黒っぽく、緑がかっている。

投句締切: 3月27日

季語ではない兼題です。「石」という字が詠み込まれていれば、読み方・用い方は問いません。季語は当季を原則として、自由に選んでください。

雀の鉄砲 すずめのてっぽう【晩春/植物】
田野の湿地に群生するイネ科の二年草。草丈約30cm。葉は細長く柔らか。茎の頂に淡緑色の棒状の花穂を付ける。花穂は葉鞘から抜けやすい。



《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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100年俳句計画 掲示板



NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  3月1日(火)、15日(火)11時40分〜

あいテレビ(TBS系列、全国)
 『プレバト!!』
   毎週木曜 19時〜19時49分
※組長がゲストの俳句ランキングづけで出演! 放送日番組欄を要チェック!

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
兼題「孕み鹿 入学試験」2月28日〆
   「花種蒔く 蒲公英」3月14日〆
   「春の鳥」3月28日〆
 インターネットでも配信中。詳しくは番組webサイトへ。
  HP http://www.baribari789.com/
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)、住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。


執筆
松山市の俳句サイト「俳句ポスト365」
http://haikutown.jp/post/
 毎週水曜締切/翌週金曜結果発表

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」
※ 毎週日曜発刊タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。朝日新聞松山総局(790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。

愛媛県《吟行ナビえひめ》句&写真
 俳句選者:夏井いつき
 写真選者:キムチャンヒ
【募集期間】毎月1日〜 25日前後締切
【応募先】http://www.iyokannet.jp/ginkou/
【問い合せ】愛媛県観光物産課
TEL 089ー912ー2491

NHK俳句 組長放送回俳句募集
 兼題「陽炎」または「逃水」。
 締切3月10日必着。
※投稿は葉書1枚に1句。選者名、兼題、俳句1句、名前、年齢、電話番号明記。送り先 〒150-8001 NHK「NHK俳句」係まで。ホームページからの応募も可 http://www.nhk.or.jp/tankahaiku/


句会ライブ、講演など

三重県観光キャンペーンイベント〜夏井いつき句会ライブ〜(東京)
 3月3日(木)18時〜 開場
 三重テラス2階イベントスペース(東京メトロ銀座線 半蔵門線「三越前」駅 地下直結)
※参加 問合は以下URLへ
https://www.kankomie.or.jp/miecp/okagesama/

よみうり堺文化センター「あなたは俳句才能有り?夏井いつきの句会ライブ」(大阪)
 3月4日(金)13時〜
  ギャラリーよみうり(大阪市北区野崎町5ー9読売大阪ビル地階)
 料金…2700円
※参加 問合は072-222-2030よみうり堺文化センター。

NHKそれいけ!俳句キッズ〜句会ライブショー〜
 3月6日(日)13時〜
 松山市立子規記念博物館 講堂
※参加 問合は089-921-1163NHKプラネット四国。

国際ソロプチミスト今治わくわく俳句キッズ表彰式
 3月13日(日)13時30分〜
 今治市市民会館(2F大会議室)
※参加 問合は0898-47-4027事務局

道後温泉祭り吟行句会@愛媛新聞カルチャー「俳句のある生活を楽しむ人のための俳句」共同企画
 3月19日(土)10時〜
 「吟行」道後地区、「句会」椿の湯2F会議室
 日程…10時集合/道後温泉駅前からくり時計下 → 道後周辺を吟行 各自昼食 → 13時椿の湯2F会議室 → 13時30分句会スタート → 16時30分 終了予定
 料金…一般1000円(カルチャー受講生は不要)
※問合は089-906-0694マルコボコム

第5回瀬戸内 松山写真俳句コンテスト
 3月21日(月/祝))14時〜
 松山市立子規記念博物館 講堂
 入場無料(要申込)
※申込 問合は06-6222-5224朝日カルチャーセンター「松山俳句」係

山中温泉フォト5755周年記念講演会「夏井いつきの今日からあなたも俳人です」(石川)
 3月23日(水)18時45分〜開場
 山中温泉山中座
 料金…無料(先着180名)
 問合…芭蕉の館(0761-78-1720)または山中温泉フォト575事務局ムラタフォトス(0761-78-1562)

俳句王国がゆく@香南市合併10周年記念(高知)
 3月26日(土)12時30分〜開場
 夜須中央公民館
 料金…無料(往復はがきにて要申込、満1歳から入場整理券必要)
※申込 問合はNHK高知放送局(088-823-2300)または夜須中央公民館(0887-54-2121)

香川 三豊市句会ライブ(香川)
 3月31日(木)18時30分〜開場
 三豊市文化会館マリンウェーブマーガレットホール
 料金…一般1800円(前売)2300円(当日)、高校生以下 800円(前売)1000円(当日)
※申込 問合は0875-56-5111 三豊市文化会館マリンウェーブ



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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

先月号「百年百花」訂正とお詫び
 2月号「百年百花」(12ページ)にて句の内容に誤りがありました。左記の通り訂正しお詫び致します。

誤 ことごとく菊の折れたる裏通り
正 ことごとく葱の折れたる裏通り

新年のおたのしみ
だなえ 今年もよろしくお願いいたします。18日はお寺さんで、餅投げがあり40個程拾うことができました。帰宅するや否や大荒れの天気となりました。本当におかげさまでした。皆様も、おかげさまがありますように。
編 正月満喫〜♪ でも食べ過ぎて太らないようにご注意を!(笑)

でらっくま こんにちは。まる裏俳句甲子園、前日のオフ会に参加させていただきました。今年も始まったばかりですが、今年一年の中でこんなに濃い二日間もないだろうと思っています。「100年俳句計画」を会場の子規記念博物館にて購入し、帰宅後も俳句を楽しんでいます。
喜多輝女 俳句ポストのオフ会、まる裏俳句甲子園も終わり楽しい日々はあっと言う間に過ぎてしまいましたがその後に来たのが凄い寒波! 北海道の人たちには笑われるかもしれませんが、この冬は例年にない暖冬だと思っていたので縮み上っております。愛媛マラソンの頃にはもう少し暖かくなってくれると良いのですが皆様、体調を崩されませんようにご自愛下さいませ。
編 遠くから来た人も松山人も楽しんでいただけたでしょうか。

投句計画あれやこれや
久我恒子 一月号の詰め俳句計画では二段をいただき、舞い上がっております。3つの候補の中から考えに考え抜いたものですから。ありがとうございました。そして今回は、あまり時間がなかったので……と言い訳。すみません。また、へたうま仙人さま、厳しくも温かいご指摘ありがとうございました。自分の欠点の一つが判ったような気がします。今回も、容赦ない愛のムチをお願いいたします。
編 作者越えお見事〜!! 今月は正解者多数でマイマイ氏、嘆く。嗚呼。

柊つばき へたうま仙人様、俳句はうまくなりませんが、仙人のコメントがたのしくて、ここから出たくないのでへたのままでもいいです。
編 へたでいい・へたがいい、ってね♪

うに子 自由律にしようとしても五七五になってしまうのは何故? 自由ってやっぱり不自由です。
編 今月号冒頭できむらけんじさんがコメントしてます。採ろうとしたら、五七五で……ってやつ。

松尾千波矢 明けましておめでとうございます(@^^@)/今年も投句楽しみますね。よろしくお願いします♪(ФωФ)
編 顔文字って縦書きで再現できるのかなあ、と試してみたらダメだった……違う顔になってる!?

どっちだっけ
dolce 俳句はじめて8ヶ月 まだ春めくとか春隣っていったいどっちが春の季語なんだとおたおたしています。
編 迷う季語ってありますよね。「小春」とか「竹の秋」とか……。

俳句と親孝行??
ケンケン 俳句に関わって、俳句ライフを満喫するようになってからはもう十年ぐらい帰省していない(苦笑)……まだまだ俳句をやめるつもりはないし。俳句と親孝行は両立しないので、あと何年も帰省できないやろな〜いつかは俳句を断ち切って里帰り、とかするんだろうな〜と考えながら粛々と暮らしてる(苦笑)……
編 え、両立しないもんなの!?(笑)


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鮎の友釣り


212
俳号 ひなぎきょう

ドクトルバンブーさんへ ドクトルの時に大胆、時に繊細な発想と、それらを形にする知識の引き出しの多さに敬服しています。ラヂオバリバリではいつも夫ちろりんを支えて頂きありがとうございます。

俳号 昔、飛鳥の里で出会った青紫の可憐な花を30年後に愛媛のしかもしかも我が家の近くで見つけました。心臓をきゅっとつかまれたようで、俳号にしました。

写真 二人で写ってる写真を出してという夫のたっての希望により、今治「さいさいきて屋」のキッチンスタジオにて。

次回…妙さんへ いつき組のお花見で知り合い、ご近所さんとわかって以来のおつき合い。これからも一緒に楽しく遊びましょうね。


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告知



第5回大人のための句集を作ろう!コンテスト

最優秀賞は
大塚迷路さんの
『誰か居る』に決定!

 昨年募集を行った「第五回大人のための句集を作ろう!コンテスト」には、四十六作品の応募がありました。
 三十六人による大人コン選考会員の審査により、大塚迷路さんの『誰か居る』が最優秀賞に決定しました。また優秀賞は、クズウジュンイチさんの『すこしばか』、河野しんじゆさんの『職歴欄』、ふづきさんの『見出し』、
此花 悠さんの『静電気』、日暮屋さんの『無名の人』、渡辺瀑さんの『散髪屋の電話』、鯛飯さんの『冬青空』の七作品に決まりました。
 来たる四月三日(日)午前十時より、松山市立子規記念博物館にて表彰式を行います。(観覧自由)
 また、詳しい審査結果などは、四月号にて発表します。最優秀賞作品は、四月号の付録句集として配布されます。




100年俳句計画作品集
100年の旗手
第2期連載者募集のお知らせ

 「100年の旗手」は、年齢や俳句の経歴に関わりなく、本誌にて作品集の発表が出来る場として、新たにスタートを切ります。
 そこで、毎月10句3回の連載に挑戦する方を募集します。7月号に掲載できるタイトル付の10句の作品集を、Eメール、または郵送、FAXにて本誌編集室までお送り下さい。
 編集室にて連載者を決定し、掲載いたします。
 応募締切は5月20日(日)。多数の挑戦者をお待ちしております。

応募内容 7月号に掲載できるタイトル付の10句
応募先  
 Eメール magazine@marukobo.com
      *件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
 郵送  〒790ー0022 愛媛県松山市永代町16ー1
     有限会社マルコボ.コム「100年の旗手」応募係 
 FAX  089-906-0695

2016年度第2期締切:5月20日(日)




俳句新聞いつき組
1月以降に新規で購読料をお支払いの方には
5号(2016年1月号)よりお届けします!
※6号は2016年4月中旬発行予定です!

※句集シングル『皺くちゃ玉』が付録の4月号からの購読は2016年3月まで受け付けいたします。ご希望の方は、新規で購読料をお支払いの際に必ず「4号から購読希望」と明記してください。

A4サイズ8ページフルカラー仕様
参加登録料(※初回のみ)1,000円(税込)
年間購読料 3,500円(税込)/年4回発行
*年1回、夏井いつきの句集シングル付録あり。

まずは無料の0号「創刊準備号」と購読のご案内をお送りいたします!
※0号「創刊準備号」を既にお持ちの方は、0号に掲載しております案内にしたがって購読料をお支払いいただくことで、正式な購読の申込となります。

ご購読のお申し込みは……

「俳句新聞いつき組」購読希望の旨、本名(ふりがな)、俳号(無ければ不要)、郵便番号、住所、電話番号、生年月日を明記して、下記のいずれかの方法で申し込んでください。

 ハガキで申し込む
  790-0022 愛媛県松山市永代町16-1
  有限会社マルコボ.コム
  「『俳句新聞いつき組』購読申込」係

 FAXで申し込む
 FAX番号:089−906−0695

 メールで申し込む
 kumi@marukobo.com
 (件名を「いつき組購読申込」としてください。)




4月号より短歌&英語俳句の投稿欄がはじまります

 近代俳句を確立した正岡子規は、短歌でも革新を行いました。その子規の精神を受け継ぐべく、選者に短歌誌『未来』同人の渡部光一郎氏を迎え、短歌の雑詠欄を開始します。
 また、世界中の国々で「HAIKU」が授業に取り入れられている中、自分たちの俳句を英語で発信できないか、という企画もスタートします。選者は長年英語俳句に取り組んでいらっしゃる、松山大学講師菅紀子氏です。
 5月号の応募締切はそれぞれ3月20日(日)。多数の応募お待ちしております。

短歌投稿
応募内容 自作の短歌(2首まで)
応募先  フォーム http://marukobo.com/tanka/
      Email: tanka@marukobo.com
5月号用応募締切:3月20日(日)

英語俳句投稿
応募内容 自作の俳句およびそれを英語俳句にしたもの(2句まで)
応募先  フォーム http://marukobo.com/eigo/
      Email: eigo@marukobo.com
5月号用応募締切:3月20日(日)




俳句対局
第四回「龍天王決定戦」出場者募集

 俳句対局とは、囲碁や将棋の対局戦を模した、一対一の句合わせ対決の句会です。 トーナメント戦で対戦を行い、四代目「龍天王」を決定します。
 出場観覧問わず、多数の参加、お待ちしております。

日時
 4月23日(土)12時30分〜受付
 13時開始 15時終了予定

場所
 松山市立子規記念博物館4階和室

出場&観覧
 ともに無料
 出場される方は、事前に編集室までお申し込み下さい。

出場&観覧定員
 出場 4名(超過の場合事前予選)
 観覧 30名(先着順)
*出場申込締切 4月10日(日)
*出場が決まった方は、当日スーツや着物にてお越し下さい。観覧のみの方は、服装の指定はありません。

賞品
 優勝、準優勝に賞品あり

問い合わせ先
 『100年俳句計画』編集室
 089ー906ー0694
 magazine@marukobo.com

主催
 ハイクライフマガジン
 『100年俳句計画』




「さくらひめ」俳句コンテスト

 愛媛県「吟行ナビ」と伊予銀行とのコラボ企画。愛媛県が開発したデルフィニウム新品種「さくらひめ」を、伊予銀行大町支店(西条市)のリニューアルオープンにあわせロビーに展示します。これを記念し、「さくらひめ」をテーマに俳句を募集します。

テーマ 「さくらひめ」
*さくらひめ自体は現在季語ではありませんので、イメージにあった季語を自由に選定してください。

応募期間 
 平成28年2月26日(金)〜 3月25日(金)締切

応募方法
1:愛媛県が運営する俳句投稿サイト「吟行ナビえひめ」
http://iyokannet.jp/ginkou/

2:大町支店内に設置する俳句ポストへの投句

賞品
 上位3名に後日賞品が送られます。

お問い合わせ先
 伊予銀行089-941-1141(代表)
 総合企画部 栗田まで




会話形式でわかる
近代俳句史超入門 文 構成 青木亮人
単行本化準備中!
*連載は暫くお休みします。ご了承ください。




編集会議開催

 編集会議は、2ヶ月に1度開催しています。年間購読をされている方なら、どなたでも参加できます。また、Eメールなどでのご意見もお待ちしております。

次回編集会議
日時:2016年3月25日(金)
   18時〜
場所:マルコボ.コム
   松山市永代町16-1
対象:本誌年間購読者
申込先:100年俳句計画編集室
E-mail:magazine@marukobo.com




今年は4月開催!
大お花見大会

日時
2016年4月3日(日)
8時〜20時(予定)
雨天決行

場所
道後公園内(松山市)

今年もやります!!
奮ってご参加ください!



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編集後記


 今月号の特集は、1月10日に開催された、第14回まる裏俳句甲子園。
 今回は過去最高の46チームがエントリーし、例年になく大いに盛り上がった。
 チーム数が激増した理由は大きく2つ。その一つが、まる裏俳句甲子園の前日に、俳句ポスト365のオフ会があったこと。愛媛県内外から50名近くがオフ会に参加し、10チーム近くがまる裏俳句甲子園に当日エントリーを行った。
 もう一つの理由が、昨年準優勝チーム「ニューグランドホテルズ」や北海道から参加された「イタックしばれーず」など、県外参加のチームの力。「いつき組」という枠組みを飛び越え、愛媛県外から大会そのものを楽しみに来て下さる方が増えることで、逆に地元の参加者が盛り上がる、という好循環が出来てきた。
 それもこれも、「俳句甲子園」のブランド力が上がり、それに伴い「まる裏」も信頼されるイベントに成長してきたのだと思う。
 来年は節目の15回大会。日本中の俳人に「まる裏俳句甲子園」という「新年会」を楽しみに来てもらえるよう、これから企画を練って行きます。
(キム)


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次号予告 (221号4月1日発行予定)


次回特集

第5回大人のための句集を作ろう!コンテスト
結果発表


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2016年3月号(No.220)
2016年3月1日発行
価格 617円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子