100年俳句計画2月号(no.219)


100年俳句計画2月号(no.219)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
ウグイスの木 都築まとむ


特集
第9回夏休み句集を作ろう!コンテスト
結果報告


好評連載


作品

百年百花
 遊人/杉山久子/朗善千津/鈴木牛後


新100年への軌跡
 俳句/児嶋ほけきよ/幌谷魔王
 評/平山南骨/十亀わら


選者三名による雑詠俳句計画
関悦史/阪西敦子/桜井教人


へたうま仙人/大塚迷路

自由律俳句計画/きむらけんじ

詰め俳句計画/マイマイ



読み物
愛媛県美術館吟行会/南行ひかる
Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
クロヌリハイク/黒田マキ
お芝居観ませんか?/猫正宗
歳時記「無季」がバイブル/日暮屋又郎
百年歳時記/夏井いつき
mhm通信/暇人
南極を詠もう!/渡辺浩志

読者のページ
俳句ポスト365
一句一遊情報局
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




ウグイスの木
都築まとむ

 家の裏庭に白木蓮がある。二階のパソコンの部屋の窓から丁度見える。有に七メートルは越えている。その木蓮が落葉して初めて気がついた。そこにウグイスの巣があったのだ。
「この家はウグイスがおるがかな?」
「ほら山やけんウグイスもおるやろ。」
昨年の春から家で暮らしはじめた母とこんな会話をした覚えがある。あの時上手に鳴いていたウグイスが、実はこんなところで巣作りをしていたのだ。いやしかし、ウグイスの姿は一度も見たことがない。と思う……あれほど頻繁に声は聞いていたのに。
 よぉし、今年はウグイスの姿を探すことにするぞ。来てくれるかな? 鳴いてくれるかな? 巣を作ってくれるかな? ウグイスの木が家にあるなんて素敵。そしてしばらくは「鶯」の句ばかり作ってしまうだろうなぁ。また小さな幸せを見つけてしまった。


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特集

第9回夏休み句集を作ろう!コンテスト


結果発表


 小中学生を対象とした、「第9回夏休み句集を作ろう!コンテスト」(主催 朝日新聞・マルコボ.コム・日本俳句教育研究会、共催 松山市教育委員会)。このコンテストは、一年間で作った俳句40句を、句集に仕上げて公募する企画です。今年は全国から、302作品(小学生264作品、中学生38作品)の応募がありました。
 審査は昨年11月、三浦和尚(愛媛大学教育学部教授)、夏井いつき(俳人)、松山市立潮見小学校教諭の赤松聖則、松山市立栗井小学校教諭の兵頭俊昭、菅井弥(朝日新聞松山総局総局長)、キム・チャンヒ(本誌編集長・装丁賞のみ)の計六名で行い、「最優秀賞」、「優秀賞」、「学校賞」、「装丁賞」、「一句賞」の各賞を決定しました。
 1月9日に松山市立子規記念博物館にて、表彰式を行い、夏井いつきによる句会ライブなどを楽しみました。
 本特集では、最優秀賞作品、子規博特別賞の40句と各賞を抜粋して紹介いたします。



最優秀賞・小学生の部
『みなし栗』
松山市立番町小学校 6年 栗田大愛

春風の提案髪型変えたのは
グラウンドに夢中私と春夕焼
コロッケに春愁投入して食す
真っ直ぐに進めているかおぼろ月
夏の朝鏡とともにファッションショー
母さんの恋のお話ハンモック
夏の星そえた駅弁旅終わる
南風お好み焼きと母の愛
炒めすぎ謝る相手夏野菜
小麦粉の香りお帰り夏の雲
南風大らか島の造船所
島時間一オクターブ上の夏
星が嗅ぐキャンプのカレーライスかな
夏の夜火も燃え上がり皆燃える
かぶと虫子孫残してご退場
夏果てる鬼監督の前歯は金
塾の前一気飲みする氷水
スイカ割り心にヒビを入れぬよう
息抜きの料理の腕が上がる秋
敬老の日届けた薬シルバー缶
秋鯖や彼の上腕三頭筋
ここで一句ここで一句とみなし栗
結果追う最終学年運動会
運動会翌日デビューニューシューズ
秋分や紙飛行機が切り裂く青
三秒の呪文流星見逃した
嫉妬の目彼を独占星月夜
連ドラの終わり夜長のモヤモヤ感
学習量積み上げた自負秋高し
蓑虫やピアノ鳴らなくなった部屋
眠れない私と秋の一つ星
九月尽空気読まない受験生
おはようの声校庭の露目覚め
無人駅色なき風の始発駅
青北風や向かい風なら回れ右
噴水の着地惑わす冬の風
鏡餅いつか目にしたシルエット
ストーブの炎を揺らす家族模様
ペン先にひろい集めた冬の星
中見える福袋には福はなし


受賞の言葉
 2年連続の最優秀賞。ただただ驚いています。
 昨年は、一昨年優秀賞を取った妹に負けないという気持ちだけだったので、どんどん俳句を詠めて、ある意味、楽に作れました。今年は、去年の自分の作品に負けないようにという思いが邪魔をして、なかなか句集に仕上げるのに苦労しました。
 昨年、最優秀賞を取ったことで、周りの人から、「ここで1句」とたびたび言われ、その場で詠んだ句の出来が、あまり良くなかったのではと悩んだこともありました。
 「中身のない栗=みなし栗」が私の思いと一致し、それを俳句に詠み、題名にもしました。

  ここで一句ここで一句とみなし栗  だいあ

 句集の中で、一番好きな俳句は、修学旅行の時の俳句です。

  夏の星そえた駅弁旅終わる  だいあ

 帰りの新幹線の車内で食べた駅弁が美味しかったです。窓から星空を見ながら、駅弁を食べ、楽しかった旅行を思い返す時間が、いとおしかったです。
 俳句が素晴らしいと思うのは、この修学旅行の俳句のように、そのときの記憶があざやかに残るということです。中学生になっても、大切な時間を俳句に残していけたらと思っています。




最優秀賞・中学生の部
『トロイメライ』
大洲市立大洲北中学校 2年 岡田真巳

うららかや茶髪の消防分団長
刺しゅう糸絡まる針や名残雪
冴返る片目飛び出すぬいぐるみ
春の風邪友と二人の保健室
兄の部屋隔離されたる大試験
カレー買ういつも甘口風光る
クロスワード白紙のままや花曇
後輩に身長抜かれ散る桜
点字ブロック果てなく続く八重桜
突然のメール受信や鳥雲に
五月晴ランプの消える手術室
行きつけの惣菜店に夏燕
未来へと平和を繋ぐ沖縄忌
部帰りの金星目指し駆ける夏
向日葵やふせんの多き課題図書
風鈴の動かぬ朝や二度寝する
夏休み胸の釦はかけぬまま
行進の長き笛聞く雲の峰
看板の消えかけの灯や原爆忌
夕焼や国かきまわすオスプレイ
日焼した腕に金属バット振る
夏深しリュックの裏の背番号
筆箱にちびた鉛筆鰯雲
獺祭忌脱ぎっぱなしの靴の裏
コスモスの揺れる向こうに陸上部
友達に手紙で謝罪星月夜
京土産飾る本箱萩の花
団栗をパチンと跳ねて乗用車
教科書に砂混じる風そぞろ寒
あと一点届かぬテスト秋は行く
新任の部長挨拶冬薔薇
注ぎたてのホットミルクと雪兎
鉛筆はいつも三菱一茶の忌
ストラップ揺れる師走の交差点
理科室へ入りたくない日向ぼこ
年賀状ゴムの張ち切れそうな束
錫杖の音空へ空へと今朝の雪
冬晴や楽器をおろす交差点
プレハブの影伸びてゆく冬日向
風花や学校名の彫り深き


受賞の言葉
 俳句は、小学3年生の頃、俳句を習っていた祖母に影響されて始めました。夜、宿題が終わった後に、1日1句を目標に作っています。
 このコンテストには、学校でもらったパンフレットを見て、小学4年生の夏休みに初めて応募しました。一句賞入賞を2回、優秀賞を2回受賞し、今回は5回目の応募となりますが、常日頃よりこの句集コンテストへの応募を目標として俳句を作ってきました。
 受賞を知ったときは、私以外にも上手な人はたくさんいるのに、最優秀になれてとても嬉しかったです。「夢を見ているのではないか」と思い、受賞通知を受け取った次の日も、何度も見直しました。
 今回の句集は、俳句には自分のお気に入りの作品が多く満足していましたが、絵や題名がぎりぎりまで決まらず、少し雑になってしまった部分もありました。しかし表紙の絵は、色使いを重視し、遠くからでも目立つようになり、良かったです。句集の俳句を見ると、その時の情景を今のことのように思い出すことが出来るので、どの句も中学生活の良い記念となりました。
 学校の勉強、部活の吹奏楽、委員会活動と毎日忙しく、俳句活動に使える時間がないので、日常の生活の中で感動した事を1句ずつ積み上げてきました。感情表現などで、うまく季語を使うよう、心がけています。普段は一人で俳句を作っていますが、応援して下さる多くの方々に感謝しています。
 次回は最後の句集コンです。受験勉強が新たに加わり、ますます忙しくなると思いますが、俳句を作り続けて、今回よりも成長した姿を見て頂けるよう、日々努力していきます。
 今回「最優秀賞」という栄えある賞を受賞させて頂き、本当にありがとうございました。




子規博特別賞
『反抗期の句集』
松山市立道後中学校 2年 高橋凜太朗

春暁や路面電車の分岐点
来賓のイスがぎすぎすといふ入学式
渦潮をみている人の夢あさはか
春雨のバイクに乗っている僧侶
沿線の田んぼの匂い確か春
助手席のリュックの中の山葵漬
牧開三角屋根の陰を踏む
ひねくれた社会春帽子ほど誠実な
故アナログテレビ様豆の花は散りました
初夏のサーブや迫りせうな雲
飼犬を初めて叱る熱帯夜
辻褄があってはじめて蚯蚓鳴く
一昨日はあの歯で噛みしめたきゅうり
日記には半ズボンとだけ書いておく
四次元をさまよっている蝸牛
砂糖までも舌に染みるほどに夏
矛盾した夫婦げんかを見る蜻蛉
おしぼりの匂いや夏料理を食らう
蛾の観てる世界観られている人々
夏の空崩壊しても走るミニカー
夕立のマトリョーシカの独りかな
訃報聴きつつ向日葵に水をやる
大きくなった手は墓石を撫でる
満月は欠けぬ泣いてもわめいても
静寂を感じとったる神無月
竹林の孤独に生える冬の虹
政権はいつもと変わらない聖夜
冬の空粛粛とある砂の山
冬菜食ふちんちんでんしゃのかたこと
年越しの駅の電光掲示板
雪の降る町汽車の走る街
網戸から抜けでたちさき虫の冬
冬時雨十円ガムの咀嚼音
曖昧な記憶ちっぽけな冬野
冬晴れの多目的室の匂い
ボクたちはミニチュア冬の淡きこと
冬休み読まぬ参考書の活字
ヘッドライトは雪を照らそうとはしない
黒北風や環状線の渋滞よ
卒業や砂場の山の褪せている


受賞の言葉
 作品集を仕上げるのに一番工夫をした点は俳句です。自分の中で、今までで一番の出来でした。いろいろな瞬間を切り取って俳句にすることができました。
 また、一番苦労した点は、俳句を並べる順番です。読んでくれる人に、読みやすく、引き付けられるような句集を目指しました。1つ、心残りなことは、表紙を丁寧に作れなかったことです。表紙と俳句の両方ができて初めて句集と呼べると思います。次回は最後ということもあるので、表紙もこだわりたいです。
 今回の受賞は、あと1歩で最優秀賞というところだったので、悔しいけどうれしいです。でも逆を言えば、そのあと1歩がとれなかったということなので、次は最優秀賞をねらいます。




優秀賞

『ひまわりちゃん』
 松山市味生小学校 3年 平原晴香

かすみ草一人ほけん室のしずかさ
水でっぽう今言いたいことは今言う
まっ白なうずまき貝がら雲のみね
ひまわりや弱い自分は見せられない
はみがき台にとどかない妹の夏


『しぜんとぼく』
 宇都宮市立中央小学校 4年 安留 悠

蟹探し磯のくぼみに足はまる
縦長の守宮の瞳夜開く
汗まみれ父と掘り出す貝化石
学帽に空蝉乗せて始業式
街路樹の蓑虫数えバスを待つ


『引退』
松山市立椿中学校 3年 三瀬未悠

閉じこめるための雪だから静か
金星のキリンと冬を見おろして
春の夜のラジオが雨を受信する
嘘吐きなままで夕立に逃げこんで
グラスには秋が溜まっていて静か


『2000』
愛媛県立松山西中等教育学校 3年 福原 音

古ぼけたコインランドリー蛍
身に入むや朝は人間らしく居る
冬蜂や淋しい庭の真ん中に
八重歯よりひねくれている夏を行く
春光は見つからなかったボール




装丁賞 優秀賞

『ひげおちる瞬間』
 大阪市立片江小学校 5年
 馬場叶羽

『僕と犬(こま)の夏』
 東広島市立平岩小学校 6年
 村上いお

『太陽と地と月と』
 松山市立西中学校 3年
 鈴村直樹




装丁賞 入賞

『チャームポイント』
松山市立道後小学校
2年
前田康太朗

『想い出の夏』
埼玉県寄居町立用土小学校
3年
高橋遥香

『孤独なタコ』
愛南町立家串小学校
6年
前田真吾

『C12』
松山市立河野小学校
6年
山内真穂

『カステラのカメラレンズ』
松山市立椿中学校
2年
久保田千晶

『LAST』
松山市立西中学校
3年
田哉汰

『My Serious Gradation』
愛媛県立松山西中等教育学校
3年
日高隆介




一句賞 優秀賞

伊予市立郡中小学校 1年 門田百花
 あめのひはしろくみえるよさくらのはな

今治市立常盤小学校 2年 杉本優馬
 はじまった青いバットの夏休み

広島大学附属三原小学 4年 平木結菜
 背のびしてのきのつららを一つ折る

愛南町立家串小学校 4年 高魚涼
 ヒマワリや体の中にこもる熱

愛南町立家串小学校 4年 兵頭玲勇
 ライオンの声はさびしい春の雲

松山市立みどり小学校 5年 田井綾乃
 白猫がひょいと屏越す桜の実

愛南町立家串小学校 6年 黒田真希
 ファゴットの音はゆったり梅雨の月

愛南町立家串小学校 6年 小川叶
 ギザギザの歯を持つ魚春の月

愛媛県立松山西中等教育学校 1年 岡崎唯
 雨の匂いしてミモザの花雫

松山市立桑原中学校 3年 宮井桃歌
 息をする感触に似た八重桜




一句賞 入賞

広島大学附属三原小学校 1年 平木惺菜
 ゆきみちをママとふたりでつくるうた

愛南町立家串小学校 1年 兵頭叶武
 ゆうやけはりゅうのはきだすほのおです

愛南町立家串小学校 1年 末弘哲也
 つゆのあさおんがくしつのわすれもの

愛南町立家串小学校 1年 山本文太
 わかばかぜちゃりんちゃりんとすず十こ

愛南町立家串小学校 1年 渡邊魁斗
 おとうとはゆうやけにてがとどかない

愛南町立家串小学校 2年 伊勢小葉
 春あさしふうしゃがくもをまぜている

愛南町立家串小学校 2年 松原琉也
 チューリップ雲の高さはわからない

愛南町立家串小学校 2年 兵頭太嘉
 ばあちゃんにないしょのはなしかきの花

今治市立桜井小学校 2年 野村颯万
 手をつなぎおはかのめいろハチが来る

松山市立道後小学校 2年 前田康太朗
 かんらん車西日をあびてもうてっぺん

宇和島市立九島小学校 3年 岡島野乃華
 夏の風ポテッと立ってる習字の筆

愛南町立家串小学校 3年 末弘力也
 雪を歩くクッキーみたいな音がする

鬼北町立三島小学校 3年 伊手麻裕
 父さんとトラクターのる春の風

砥部町立広田小学校 4年 上本結香
 給食に花びら何まい入るかな

江東区立東陽小学校 4年 中川雄介
 ふん水のにじをくぐったトラムかな

愛南町立家串小学校 4年 織田凜花
 夏の風おきっぱなしのビンの中

愛南町立家串小学校 4年 伊勢雅姫
 カンガルーピョンピョン春の虹消える

四国中央市立中曽根小学校 4年 西山朋花
 父さんの仕事おわって月涼し

愛媛大学教育学部附属小学校 5年 安部紗世
 黒猫がにらみつけたり夏来たる

広島大学附属三原小学校 5年 荻野容子
 つば広の帽子に夏を留めました

大阪市立片江小学校 5年 馬場叶羽
 自転車でひく満月や水たまり

仙台白百合学園 5年 小形愛美
 たんぽぽの綿毛両手で包む昼

大府市立大東小学校 6年 山本千尋
 仲間からはなれて帰る春の風

東広島市立平岩小学校 6年 村上いお
 坂道で二度立ち止まる夏の犬

宇和島市立九島小学校 6年 田中佑奈
 ほんのりとキズからただようアンズの香

宇和島市立九島小学校 6年 濱崎久仁
 飛車のごと九島に攻め込む入道雲

宇和島市立九島小学校 6年 大藤音和
 朝曇りノートにびっしり疑の字書く

済美平成中等教育学校 1年 滝下真央
 あめんぼう朝一番の蹴伸びかな

八幡浜市立真穴中学校 2年 矢野光士郎
 動名詞雷の鳴る塾帰り

大洲市立長浜中学校 2年 久保穂佳
 冬晴や走るいたちが草分ける

松山市立道後中学校 2年 武田歩
 向日葵が咲くなら朝日はいらない

松山市立西中学校 3年 鈴村直樹
 開渠の水動かず茅花流しかな

愛媛県立松山西中等教育学校 3年 日高隆介
 憧憬を引き裂き実る檸檬かな

大洲市立長浜中学校 3年 坂本梨帆
 星月夜壊れた時計二時をさす

済美平成中等教育学校 3年 兵頭洸亮
 父の背を江ノ電越しに見る夕立




学校賞 最優秀賞

 愛南町立家串小学校


学校賞 優秀賞

 宇和島市立九島小学校
 広島大学附属三原小学校


学校賞 奨励賞

 砥部町立広田小学校
 東広島市立平岩小学校
 鬼北町立三島小学校
 八幡浜市立真穴中学校



当日は、会場全員で夏井いつき組長による句会ライブを行いました。
テーマは「去年笑えなかったこと、今年笑いたいこと」。
1位となった俳句は、広島大学附属三原小学校4年平木結菜さんの「給食の男子のだじゃれ冬のはえ」でした。


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2015年度 第三期 第三回


「歩数計」 遊人

歩数計日々の指針に寒の入
朽野や電車いくたびも通り
冬蝶の舞へば極楽浄土とも
喜々として鴨の急流下りかな
白昼の冬のタンポポ白ばかり
尋ねたき人のをらざる冬野かな
ことごとく菊の折れたる裏通り
慰霊碑の吉日建立寒椿
さへづりと違ふ寒禽鳴きたるは
冬うらら最大積載十三人
人寄せの焚火を焚いてをるやうな
海の町風船蔓枯れきつて


最近友人と会うとあっちが悪いこっちが痛いと言う話で自分も安心する。子供の時には考えられない話だ。年齢のせいか。




「サヨナラ」 杉山久子

貝殻はかつての貨幣星凍つる
冬星や不幸の手紙いまいづこ
求人のチラシ見てゐる雪女
凍雲をながめ体育座りかな
冬木の芽暗号文のごとく立ち
吹雪く夜は叔父の軍艦模型来る
枯蓮の泥より抜きし脚立派
漏れてよきほどの秘密や海鼠噛む
ウルトラマン枯野でやつてくれないか
カーソルのひとつはづるる四温かな
サヨナラの数だけ風花を浴びる
新体操リボンただよひつつ春へ


第2回芝不器男俳句新人賞受賞。「藍生」「いつき組」「ku+」所属。最新句集「泉」発売中。




「初富士」 朗善千津

雲なくて寂しき初富士を拝む
歯固めや屋久杉の箸頼もしく
スパイ小説三部作寝正月
初春や富士の裾野にクラクション
初稽古星を見ながら帰りけり
銀行に琴の音を聞く四日かな
五日はや笑ひたまえり表富士
裏富士は六日の雲に目隠しす
千両の黄や母入院の報せ
凍星や富士聳えたる死の如く
冬日まだ荒野の果てに残りたる
憂ひつつ初旅へ発つ富士が在る


雪が降らぬまま新年を迎えた。私も夫も家族もみな確実に年を取る。何を問うても富士は答えない。神の様に遠くて近いこの山に、ただ語りかけるのみ。




「しゆるる」 鈴木牛後

凍蝶の翅が薪にあり焼べぬ
裸木のたがひに傷め合うてをり
窓開いて凍蝶小さくかしやといふ
掻き混ぜし棒を燃やして焚火閉づ
牛に眼があり大年の暗がりに
初空を絞りしやうな乳搾る
知らぬ客どうしの笑ふ年賀かな
冬帽子五人ひとりは雪を乗せ
カーテンに本の触れゐる冬灯
雪の朝雪の新聞届きけり
冬晴へしゆるると二連梯子かな
牛に背をあづけて寒の内にゐる


1961年生まれ。第1回大人コン最優秀賞。北海道の片田舎でほそぼそと牛飼いをしている。今週末は「まる裏」。みなさんにお会いできるのがほんとうに楽しみです。




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新 100年の軌跡


2015年度 第三期
第三回


いつも否定ばっか 児嶋ほけきよ 

空き缶の強く握れず冬の尽く
白菜や蛇口の強く締めずいて
風花や読まないメール届きおり
足音を掻き消していく冬野かな
鮟鱇となりて約束忘れおり
裸木の周りに人の見当たらず
完全に閉めない扉寒の入
口だけは寝ない寝ないと鯨かな
新しい手帳は見ない大晦日
しばらくは電話に出ない去年今年
年越しや普段使わぬ器かな
走らずと決め追い越され年新た
びりびりと初商いの包装紙
冬の夜や積もる読まない説明書
隣人と歩幅合わせず春を待つ


児嶋ほけきよ
 句歴2年。「櫟」所属。『WHAT vol.2』、『WHAT vol.3』共著(コジマアキラ)。




 墓地の香り 幌谷魔王 

逃水や未来はきつとあるきつと
眼にひとりふたり子どもやピクニツク
スコツプの先の欠けたる潮干狩り
人を騙す伊予柑影の黒々と
龍天に登る海ごとたひらげて
寂しき川辿り遍路の人に逢ふ
(前書き:石北本線旧白滝駅に寄せて)
春疾風しづかに眠る駅舎かな
鬼縛の花で作る秘密基地
狐てふ字に爪のあり春北斗
火にまみれ火を纏ふまで雪残る
プリン食む淡雪降り止まず無音
春の風邪瞼重たくありにけり
隣より墓地の香りや雁帰る
磯菜摘忌日俳句を作らるる
鷹化して鳩と為りけり日曜日


幌谷魔王
 1995年生まれ。高校3年より句作を始める。「いつき組」所属。




肯定的に 平山南骨

白菜や蛇口の強く締めずいて 児嶋ほけきよ
 白菜を洗っているのでしょうか。蛇口を強く閉めすぎるとパッキンが傷むので、いい心がけだと思います。

鮟鱇となりて約束忘れおり 児嶋ほけきよ
 私も、鮟鱇になってまで約束を覚えていられる自信はありません。

冬の夜や積もる読まない説明書 児嶋ほけきよ
 読みもせぬ説明書なんてお捨てなさい。新聞紙が積もると結構あたたかいですよ、読もうと読むまいと。

 それにつけても否定表現って、読むのに体力がいりますね。もっと前向きに行こうよと声を掛けたくなります。


逃水や未来はきつとあるきつと 幌谷魔王
 大丈夫です、未来は逃げません、きっと。

春の風邪瞼重たくありにけり 幌谷魔王
 思い切って寝た方が良いと思います。

火にまみれ火を纏ふまで雪残る 幌谷魔王
 ほとんど燃えております。何かはわかりませんが。

プリン食む淡雪降り止まず無音 幌谷魔王
 プリンは静かに食べるに限ります。


平山南骨
 1968年生まれ。2005年より作句開始。「鷹」同人。



冬の夜とピクニック 十亀わら

 ほけきよさん「いつも否定ばっか」と拗ねたような口語のタイトルが初々しい。

冬の夜や積もる読まない説明書 児嶋ほけきよ
 冬の夜に積もるというと雪。その読者のイメージをゆっくりと裏切りつつ利用した。白く高く積もっていくものとして、読まれない「説明書」というのが面白い。

びりびりと初商いの包装紙 児嶋ほけきよ
 初売りで買った商品。破られていくのは商品への期待の高さか、せっかちな性格なのか。どちらにしろお正月から元気が良くて何より。
 「読まないメール」「普段使わぬ器」等、説明的になってしまったのは否定縛り故か。「冬野かな」の発想はもう一跳躍を期待。 

 魔王さん「墓地の香り」。お名前に似合わず?叙情的(すみません)。

眼にひとりふたり子どもやピクニツク 幌谷魔王
 二つの目の動きを詠んでいる。まず一人を認識してすぐさま二人目を認識する、そのコンマ何秒のズレを句にしていて巧み。

隣より墓地の香りや雁帰る 幌谷魔王
 「墓」、「雁」と石田波郷を連想させる世界観。「死」を感じたということか否か、具体的に想像しようとすると「隣より」が少し分かりにくく感じた。他、「狐」に「爪」の繊細さと、「海ごとたひらげて」の大胆さが読んでいて楽しかった。


十亀わら
 1978年松山生まれ。2005年俳句界賞。「俳句に一歩近づこう」(WEB誌シノドス)対談記事出ています。


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超初心者から中上級者まで楽しめる
100年投句計画

 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天地人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選、並選を選んでいます。選者は、関悦史さん、阪西敦子さん、桜井教人さんです。

 「へたうま仙人」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は大塚迷路さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。

 「詰め俳句計画」は、マイマイさんによる、二つのフレーズに合う季語を投稿するコーナーです。季寄せや歳時記さえあれば、全くの俳句初心者でも挑戦できます。
(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)
写真:藤


選者三名による雑詠俳句計画


先選者 桜井教人


 正月早々とても素敵なプレゼントをもらった。20年前に中学校を卒業させた生徒達がクラス会に招待してくれた。みんな本当によい大人に成長していた。私が叱り始める時の口癖、競馬に勝って内緒でみんなにジュースを飲ませたこと、20年も前のことをそれぞれがもつ記憶のピースを合わせてジグソーパズルのように完成させていった。3時間余り久しぶりに大笑いした。とても力をもらった。これをエネルギーに後3年間くらいは多少のことがあっても頑張れそうだ。


梟の鳴くとき反す砂時計 樫の木

 「反」の漢字がとても効いている。「返」を使った時よりもはるかに詩の分量が多い。砂時計を引っ繰り返すなんてサウナでしかしたことはない。それを梟が鳴く時に反すと言うのだ。静かな冬の夜、梟の鳴き声と共に砂時計を反す。「反」の作用により、今自分がいる空間や時間までもが反転するかのように感じる。さらさらと砂が落ちる音さえも聞こえるかのようだ。人は誰でも戻りたい過去がある。
 不可能だが、もしかすると梟の鳴く時に砂時計を反せば戻れるかもしれない。



偏愛の白薔薇を切る夕時雨 さより
 夕方に降ってきた雨、すぐに上がることは分かっている。そうだこの機会にあの白薔薇を切ろうと思い立ったのだろう。多分白薔薇は作者がこだわりをもって愛した何かの象徴だ。時雨の後はきっと陽が射すことを信じて。

ナフタリン臭きコートの女隣り 喜多輝女
 バスか電車でたまたま隣り合わせた、知人でも何でもない女性。何の興味もなかったがふとナフタリンの臭いがしてきたことから急にコートに関心が行った。何げない一場面の描写力と語順が秀逸。

オーバーのポケットの飴溶けている  ゆりかもめ
 誰もがあるある感満載の句。特に子供の頃はよくあった。下五の展開によりリアリティーが強い句に仕上がった。一瞬の景の切り取り留まらず、この後どうするのだろうと読み手に時間的な余韻も与えている。

ぴいすけの眠る日溜まり冬菫 さざなみ真魚
 ぴいすけ、眠る、日溜まりという言葉から、いかに作者がこの(多分)小鳥を愛していたかがよく分かる。季語冬菫の温かさと句全体への関わりも適切。こんな句を作ってもらえる「ぴいすけ」は幸せものだ。
 
弾痕に挿す冬薔薇のひび割れる P,妙
 いきなり「弾痕」から始まる語順に驚く。しかも最後に「ひび割れる」と駄目を押して終わる。実景かどうか分からないが、言葉のもつ強さ、リアリティーの効果を改めて感じさせる句だ。季語冬薔薇が動かない。



寒菊やまだ三千の万歩計 樹朋
枯葦や単色の風吹きぬける 小市
冬薔薇無神論者になれなくて 一走人
年惜しむペンギンの向きそれぞれに てん点
岬へと吹き上ぐる風冬木の芽 ポメロ親父
枯葦の倒れ重たき水含む のり茶づけ
冬の芽の健気でありて逞しく エノコロちゃん
しぐるるや一俳人の死亡記事 鯉城
湯気立てて鍼灸院の人体図 瀬戸 薫
悴みてより金星の近くなり 青柘榴




先選者 関悦史


 一月号はすでに出ているのですが、本当に年が明けてからの選句選評はこれが最初となります。今年もよろしくお願いします。私の場合、実家に一人で住んでいるので、帰省する先もなく、三が日から普通にパソコン作業をしています。特に勤勉だったり多忙だったりしているわけではなくて、年末に不調で寝てばかりいたための皺寄せであります。今年は参院選後すぐ、事実上立憲体制が終わってしまうのではないかと危惧しています。



金縛り跳ね返したる蒲団かな もね

 見たことのない「蒲団」の句で、句意は単純明快。俳句はなるべくごちゃごちゃ修飾せず、単純明快にした方が強くなりますが、この句はその見本です。
 金縛りにかかったときの不安と緊張が一気にほどけた局面を描いていて、息を荒らげながらも安心感を得た目に、自分が跳ね飛ばした蒲団が映る。これが普通ではありえない「蒲団」の存在感につながっていて、季語「蒲団」の新しい味を引き出した感あり。



翔けのびて白鳥のくび鷺のあし 青萄
 のびている体の部位だけが描かれていますが、結果として二種類の大型の鳥が飛び交う空が目出度いような雄大な交通空間になっています。季語は「白鳥(冬)」でしょう。

年の暮ニュースはニュースで人の群 多満
 上五と下五が両方「○○の○○」の形になっていると通常収まりが悪くなりがちなのですが、上五がはっきり切れているせいか、中八の字余りともどもあまり気になりません。眼前にも人の群、年の瀬感が迫ります。

捨石も綺麗に積まれクリスマス うに子
 囲碁などの捨石ではなくて、実際の採石場などの捨石と取りました。綺麗に積まれたことで捨石にまで祝祭性・聖性がひそかに及んでいるようです。「クリスマス」の情緒と離れた物件を拾った清潔感があります。

日輪を引つ張る蒲団干されけり 池田喜代持
 これも強力な蒲団の句。「日輪」のような大仰な詩語は普通なるべく避けたいところなのですが、干蒲団とのテンションを組織するにはこの語が不可欠。蒲団への日当たりの強さをこう捉えなおしたのは手柄でしょう。

初霜や生まれたてなるバイパス道 青柘榴
 工事が終わったばかりの道路は、それなりにきれいではあっても殺風景なもの。「バイパス道」となるとなお大味になりますが、「生まれたて」という一種の擬人化がここではうまく働き、清冽な初霜となっています。



綿虫の棲みついている耳の穴 藍人
オリオンに導かれ発つスペインへ レモングラス
吹き寄すは落葉とベビーソックスと ゆりかもめ
転職や水仙を挿す牛乳瓶 樫の木
梟の鳴くとき反す砂時計 樫の木
年惜しむペンギンの向きそれぞれに てん点
星々の老いていく地図去年今年 越智空子
赤き実の梢に一つ冬の雨 哲白
寒くって空生真面目に青過ぎて 台所のキフジン
梟や秘密の十個くらいある 奈月
連弾のパイプオルガン年惜しむ 彩楓




後選者 阪西敦子


 仕事の関係で読み始めた作家の1冊を年末の帰省にも読み続けていた。帰省の初日に会った人に勧められた作家はまた別の人で、翌日買って並行して読み始めた。それは進むほどに最初に読んでいた本の中の時と場所に近づいてゆき、いつか合わさっていった。天狗党の乱。一方での清廉な若侍は、他方で訛りの強い若造とされ、一方での頑強な堅物は、他方では鮮烈な恋に落ちる。滅ぶとわかっている血で血を洗う歴史の一幕は、よく知った地名とあいまって妙に身近になってゆく。


特選句

ラブレター三回折つて吹雪かな 奈月
 三回とはどういう折り方だろうか。三つにか、あるいは開いては折りか。ちょっと不明だが、その折る回数を言うところに、手紙の重みが知れる。ともに句の中に置かれたのは吹雪。轟々たる中のラブレターの確固たる様子が鮮烈。

背後から肩叩かれし十二月 大阪野旅人
 「俺の背後に立つな」とは有名なセリフだが、そうでなくても背後から肩を叩かれるのは気持ちのいいものではない。まして十二月ともなれば、なおさらのこと。なんとも言わずに、この季節の不安を言い当てる。

短日やみんなだんだん居なくなる 彩楓
 集まっていた人がひとり、またひとりと去って行く状況。「短日や」と言い切っているからか、暗くなるのが早いからという因果は、なぜかあまり感じられない。知らず知らずに夜に飲まれて行くような、残されるものの心許なさが切実。


並選句
鯛焼きを差し入れ泊まってあげようか dolce
夕間暮れ鈴の音響く秋遍路 アキラ迂叟
枯いばら獣は寝ねて傷癒す 凡鑽
父と子の内緒話や枯葉踏む 小市
頑なに吼える木枯らし犬に似て 南亭骨太
ばら撒いた画鋲のごとく鳥渡る 夜市
鹿寄せのホルン響くよ古都の空 しのたん
銃身の油光や山眠る ほろよい
元朝や六番線へ駆けて行く みちる
角巻の母に似てをる姉の背ナ ヤッチー
地下歩道昨日の冬の朝に添う 紗蘭
風神のためいき雲腸のくびれ 緑の手
実印を持つ手ふるえる冬の月 ぴいす
新札をまず取り分けて年用意 おせろ
バーボンに溶けゆく炎焚き火燃ゆ 和音
時ならぬ花染めて師走の裏通り お手玉
北風吹くや眠れぬ夜のぐわんぐわん てん点
クリスマス祈りよ充ちよ笑み充ちよ  アンリルカ
鍋に顔突込み鼻水とめどなき まんぷく
れんこんをサクッと切りて十二月  ミセスコナン
ワイングラス割れて一閃雪おこし ちろりん
屏風絵の虎の全き赤き舌 幸
山茶花の道さゞれ石たどたどと 人日子
冬晴や青に驚くなまけもの 未貫
冬波は吾を射る矢や日本海 松尾千波矢
餅つくや老いも若きも粉だらけ カシオペア
歳晩の店先手と足ばかりかな 松ぼっくり
開演を知らせるチャイム春ショール 瀬戸 薫
冬の朝油槽船着く港かな ひでやん
白息の宮の掃除と風共に 西条の針屋さん
社殿けぶる大蛇の火焔里神楽 P,妙
初日の出雲ほどけゆく天狗岳 あおい




関悦史(せきえつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。

桜井教人(さくらいきょうと)
1958年愛媛県生まれ。松山市公立小学校教員。いつき組。子規顕彰松山市小中高校生俳句大会選者。第2回大人のための句集コンテスト優秀賞。第24回、29回俳壇賞候補。



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へたうま仙人


文 大塚迷路

 この前までお正月ぢゃったのに、うかうかしていたらもう立春ぢゃ。列島の北と南では春の訪れにかなりの差はあるが、何かを待つ、待つものがあるということは幸せなことぢゃのう。今月もこの幸せをますます増幅させるかもしれない句が集まっとるぞ。幸せと不幸せのせめぎあいをゆっくり堪能してくだされ。


金欠病献血もペケ年の暮 柊つばき
年末のジャンボに夢を又おかゆ 柊つばき
 「首くくる縄切れもなし年の暮 太宰治」まで言い尽くすと、表現の意義も目的も無くなるが「献血もペケ」「又おかゆ」の哀愁とほのかな笑いに救いがあるぞ。クレージーキャッツの「だまって俺について来い」を愛聴すると、金欠病もまんざら不幸でもないと思えてくるから不思議ぢゃ。
 ま、なんの慰めにもならんがの。

天蕎麦やずるずるずるっとズボン脱ぐ  KIYOAKI FILM
きよあきは清明と書くわーっ枯野  KIYOAKI FILM
 蕎麦通は(天蕎麦は邪道!)と言うそうぢゃが、ずるずるずるっとズボンを脱がされるように出てくる海老をカシッと噛めば天蕎麦もまた良しぢゃ。ちょっと伸びた蕎麦を連想させるのもまた良しぢゃ。
 清明といえば安倍晴明ぢゃが、昔一時友達ぢゃったような記憶がある。富士には月見草がよく似合うように、清明には枯野が大変似合うのかものう。それも「わーっ」と叫ぶ枯野がのう。ようはわからんが。

来年も俳句つづける決意せよ ケンケン
定型を破ってみたい冬の朝 ケンケン
 確認と覚悟をする意味で、大晦日頃に「決意せよ」と自分自身に催促するということは実に良いことぢゃ。再来年も、その次もずっと俳句を続けて下されよ。
 昆虫や爬虫類のみならず、脱皮したいのは誰も同じぢゃのう。抜殻の形をちゃんと認識して定型破りをみごと完成してくだされ。「冬の朝」で、身も心も引き締まるぞ。それにつけても、目標があるということは実に素晴らしいことぢゃのう。

夕時雨生徒四人に傘一つ 元旦
人日や妻は三十七度二分 元旦
 どことは言わんが、どこぞのカルチャーセンターの生徒四人に傘一つとはちと酷なような気もするので、この句の生徒はお子様ぢゃな。家があまり遠くないので傘で送り出したのぢゃろうが、ちと心配ぢゃ。ぢゃが時雨ぢゃから、家に着く頃には上がっておるぢゃろうて。
 心配は妻ぢゃ。正月の疲れが出たのぢゃろう。三十七度二分を侮ってはいかん。七草粥よりもっと栄養のあるものを食して静養することぢゃ。その間の家事は夫の務めぢゃぞ。

吾が出自養父母は明かさず冬の雲 坊太郎
早逝の友よ故郷は冬銀河 坊太郎
 「冬の雲」は難しいのう。出自を明かしてくれないのか、あえて明かさない、のかによって冬の雲の光線の具合が変ってくるのう。いや、心の綾は難しい。
 大好きだった故郷についぞ帰れなかった友に対する愛と追悼が画面一杯ぢゃ。冴え渡った冬の夜空と、秋と比べればいくらか弱弱しい光を届ける冬銀河をその昔友といつまでも見上げたのぢゃろうなあ。

水鳥や仮の宿たる鳰の海 森子
龍の吐く言霊白し枯れ野かな 森子
 「鳰の海」は琵琶湖のことらしいのう。「仮の宿」をどう解釈するかによって読みも変ってくるかもしれんが、常に落ち着く事のない心情は察するに余りあるぞ。「水鳥や」の詠嘆も切ないぞ。仰せの通り、殺伐とした枯野は龍の吐く言霊の行き着く所かもしれんのう。枯れの中にある生命力のメタファーとしての龍の存在は「白」に集約されておるのう。

書初めの余白のいよよ白きこと 誉茂子
 何事も余白が肝心ぢゃのう。一生懸命は良いが、余白がない作品はちと窮屈ぢゃ。書初めともなれば一層それが肝要になるのう。新たまった心で進める筆先が発する墨のにおいと、いよよ白き余白に奥ゆかしく絡んでいく文字は、清楚でありまたエロチックでもあるのう。墨と文字のエロスが濃くなれば濃くなるほど余白も白さを増すのぢゃ。
 おっといかん、いかん。こんなあらぬ妄想を駆り立てる句は、とめてはねてはらって、文鎮と一緒に硯箱へ追放!


 新年早々皆様アクセルを目一杯踏み込んで、なんか幸先良い感じ之介ぢゃ。追放者をせめぎめぎして出してしもうたが、なあに先は長い。一年は始まったばかりぢゃ。このお調子で突っ切ればゴールはもうすぐそこそこぢゃ。
 ぢゃが、くれぐれも油断召されるなよ。




へたうま仙人
 年齢 卑弥呼がおっぱいを飲んでいた頃、ワシは青春真っ只中ぢゃった。
 好きなもの 霞のシャーベット(PM2.5抜き)
 嫌いなもの 上手な俳句
 将来の夢 大器晩成


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ

 この号が出る頃はどうかわからないけど、完全に暖冬だ。正月三箇日なんて、することがないので散歩してたら汗ばんだ。そのうち春夏秋冬ではなく春夏秋・深い秋くらいになるような気がする。寒鰤、寒鴉、寒雀は絶滅だ。公魚釣りなんてできないし、スキー場も閉鎖。すでに和歌山沖や千葉沖には、珊瑚が着床しているらしい。今世紀末には、関西は東南アジアになっている気がする。「百年後もういないけど木の芽和え(児玉硝子)」



働いて働いて白菜鍋の底 もね

 「働いて働いて」という重い表現が、冬の団欒の鍋を、ただならぬわけありの鍋にしてしまった。かつてのプロレタリア俳句をも彷彿とさせるが、思えばいま日本の子供の6人に1人は貧困状態にあると言われている。母子家庭の子供の貧困率は、先進国中最悪らしい。格差社会といわれる所以なのだ。この句はそんなことひと言も言ってないけど、「働いて」のリフレインが、どうもただ働いてたどり着いた鍋より重いことを示唆している。白菜が残った鍋の底をとらえる作者の視点の鋭さもまた重い。この句からシングルマザーの悪戦苦闘を見るのは行き過ぎなのかもしれないけど……。



かつてわたくしがとなかいだつた空がない  緑の手
 擬人化の手法として揚句のような表現は、そう珍しいというわけでもないけどこの自由律俳句計画のなかでは記憶にない。正面から大気汚染がどうのこうのと振りかぶってよろけるよりは……よほど洒落ていて魅力がある。「雲雀笛僕が空缶だったころ(塩見恵介)」。

鷺は首縮め白鳥は首伸ばし 和音
 そう言われてみればそうだな……と思う。こういうのを俳句的「発見」というのだろう。ひとえに観察眼の鋭さということになる。白鳥が首を伸ばして飛ぶ姿は想像しやすいけれど、首を縮めて(曲げて)飛ぶ鷺の姿は、写真でみて、なるほどということになる。とくに都会でフツーに生きてる人の場合……。

ロシア人の寒中水泳 ヤッチー
 これは寒そうだ。フインランド人でもノルウェー人でも句にならないような気がする。俳句と何かの見出しのようなもののぎりぎりで、みごとに立っているような自由律俳句だと思う。自由律の俳人によっては、こういうタイプの句を毛嫌いする狭小の人もいるかもしれないけど、御託並べて心に届かない句よりよっぽど良い。

年の隅っこに佇んでいる冬の鉄棒 多満
 あわただしい年の瀬に完全に忘れ去られたようにある公園の、あるいは校庭の鉄棒の孤独。こういうところに眼を向けるのは俳人とか詩人とかぐらいだろう。「年の隅」と「冬の(鉄棒)」が少々かぶっているのが気になりますが……。「木枯が鉄棒を置いていった(作者不詳)」。

冬枯の木つんとして尽きる 人日子
 冬枯れの木を詠んだ句は結構お目にかかるけれど、「つんとして」と「尽きる」と言う表現は新鮮です。確かに冬枯れの木は微動だにせず「つんとしてる」しエネルギーとしては「尽きて」いるようにも思える。しかしこの二つの言葉が一つになって次の季節へ向かおうとする沸々とした沈黙が伺える。



雑炊をリゾットと言ってみる 青萄
同時に変わるデジタル時計 小市
冬はわたくしを追いこした 一走人
風が裸にした櫟 喜多輝女
そろそろ冬眠に入る兄 のり茶づけ
冬の夜は天動説 元旦
犬が消えた極月の空を迷ってる ミセスコナン
紅葉とだえず川に沿うてゆく さざなみ真魚
てっぺんはいやだ木守柿 幸
群集へ豆撒く鬼の夢 恋衣


並選
ざらついた夜に音して目覚める ケンケン
あの梟の声聴きにゆく アキラ迂叟
とても長い夜の短い別れ 藍人
人の心の移ろひやすく涙枯れ レモングラス
傍観者決め込む冬帽子 凡鑚
吟行に行こうと犬の吼ゆ 南亭骨太
眼が痒い昼月赤くなりぬべし KIYOAKI FILM
サックスは鼓動ただ夜半の冬 ほろよい
冬陽隠し偉大なる高架線 みちる
今朝の梅飛梅になろうとしている みやこまる
糸切り歯で切るものがない 誉茂子
着ぶくれのごと手足収める亀 ゆりかもめ
待ち受け画面のちっぽけな聖樹 樫の木
手足の引つ掻き傷がひりひりして柚子湯  ポメロ親父
口紅のつかぬティッシュは甘い うに子
雲と海の狭間を冬夕焼 越智空子
実を申せば妾の子 坊太郎
霜柱立派に育ち踏まれるを待つ まんぷく
寒い夜だからふぐりにぎれとユーミンが  エノコロちゃん
秋深し人語より鳥語の多き島なりき 鯉城
噴水を見ていて疲れる 遊人
見てくれるあんたあっての化粧 台所のキフジン
鼻血がよく出る暖かい冬だ 奈月
冬に歯向かう力尽く カシオペア
子は台を使ふ二日のポスト 松ぼっくり
六甲の月見や夜景敷き詰めて 大阪野旅人
息をしているのか静かな稚児 彩楓
聖樹の影に二人の陰 ひかるん
ヒビアカギレだらけの言い訳 青柘榴
吾子の産毛のにほい春どなり あおい



きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。



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詰め俳句計画


文と出題 マイマイ


今月の問題
次の(  )の中に共通する春の季語を入れて下さい。

レシートを捨て(  )の雑踏へ
(  )やカツのはみ出すカツサンド


レシートを捨て冬光の雑踏へ
冬光やカツのはみ出すカツサンド
 KIYOAKI FILMさん。まあ冬と入ってますから春の季語ではないようです。級外。ひかるんは競艇。前後句とも臨場感があってすばらしい。しかし、ボートレース・競漕は春の季語ですが、競艇は……。やっぱり違うんじゃないでしょうか。私の手元の歳時記にも記載がありません。一応、級外。

レシートを捨て草萌えの雑踏へ
草萌えやカツのはみ出すカツサンド
 さざなみ真魚さん。後句は生命感があっていいが、前句の「草萌えの雑踏」って何か変。5級。笹百合さんは二月。リズムが悪いと思ったのだが、二月を(ニンガツ)と読ませる用法があったことに気付いた。内容的には淡々としており、違う月でも良いのではと思わせるところが難点。うに子さんの如月もあまり主張点がないか。ともに4級。南亭骨太さんは朧夜。大阪野旅人さんは春月。緑の手さんは永日。ほろよいさん、ゆりかもめさん、遊人さん、だりあさんは春風。いずれも春の空気感が出ている季語だが、「捨て」や「はみ出す」といった言葉に対してやや柔らかすぎる気がした。同じく4級。ケンケンさんはうりずん。元は沖縄地方の古語で花曇に似た生ぬるい気候のことと歳時記にある。地域を限定したことに面白味。3級。樫の木さんの春雷はドラマを感じさせる。一走人さん、元旦さん、立待さん、青柘榴さんは早春。ちろりんさん、片野瑞木さんは春寒。前句の「捨て」と早春の寒さが合っている。同じく3級。みやこまるさん、ひでやんさん、矢野リンドさん、雨月さんは寒明。後句「か」の頭韻が心地よい。2級。小市さん、のり茶づけさんは春愁。前句、こういう気分のことが私にもあります。後句は大した愁いではないか。同じく2級。白秋千さんは春装。前句、雑踏といいながら華やぎがある。後句も春らしい服装と元気なカツサンドが合っている。1級。恋衣さんは花冷。前句、花という字が入ることで、灰色の雑踏に色が加わる。後句は花見の一場面か。坊太郎さんは陽春。これも陽の一字により、前句の場面転換の印象が鮮やか。台所のキフジンさんは春塵。前句の雑踏に重厚感が加わった。後句、窓一つしかない部屋で探偵がひとり黙々とカツサンドを齧っているような妄想が湧いてきた。いずれも1級。

レシートを捨て雛市の雑踏へ
雛市やカツのはみ出すカツサンド
 カシオペアさん。イベント系の方々が数名。前句、「雑踏」にそれぞれの雰囲気が見えてきて面白かった。雛市は雛人形や雛道具を売っている市のこと。後句のカツサンドと合っているか微妙。4級。藍人さんは初午。お稲荷さんの祭礼で庶民的なお祭らしいのだが体験のない私には評価が難しい。カツサンドが庶民的な感じはする。みちるさん、エノコロちゃん、幸さんはどんたく。これも後句「はみ出す」が祭の勢いを示しているようで心地よい。どちらも3級。dolceさんは義士祭。後句は討ち入りに勝つという縁起を担いでいるようでちょっと面白い。2級。

レシートを捨てメーデーの雑踏へ
メーデーやカツのはみ出すカツサンド
 レモングラスさん、青萄さん、喜多輝女さん、人日子さん、奈月さん。春闘で投稿して下さったのが凡鑽さん、ヤッチーさん、おせろさん、ポメロ親父さん、松尾千波矢さん、海田さん。前句、雑踏の中に拡声器の音やデモの隊列等も想像できて面白かった。後句もカツのはみ出し具合が春闘への意気込みを示しているよう。どちらも初段。越智空子さんは獺祭。時候の季語で二月二十日〜二十四日頃に当たるのだが、獺が魚を並べて祖先を祭るというイメージが雑踏やカツのはみ出し具合にも重なってきてよかった。同じく初段。

レシートを捨て愛の日の雑踏へ
愛の日やカツのはみ出すカツサンド
 P,妙さん。前句、読者がいろんなドラマを想像できる点で一番でした。後句、これも愛の日に何か勝負をかけるのでしょうか。脱帽。二段。


今月の正解
レシートを捨て立春の雑踏へ
立春やカツのはみ出すカツサンド
 アキラ迂叟さん、誉茂子さん、池田喜代持さん、彩楓さん。「立」の字が歯切れよく句を支えている。初段。


4月号掲載分の問題(2月20日締切)
 次の(  )の中に共通する春の季語を入れて下さい。

鳥は踊り魚は逆立ち(  )
お店ごと買はれ(  )の薔薇は




マイマイ
2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人だったが、最近は?? 第1回、第4回大人コン優秀賞受賞。2013年句集シングル『翼竜系統樹』上梓。将棋推定初段。棋友募集中。




【100年投句計画】投句方法
 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可)、俳号(なければ本名の名前のみ)、本名、電話番号、住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。
ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙人」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、2月20日(土)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがきFAXでも投句できます。


さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(俳句ポスト365のページ参照)


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美術館吟行14:愛媛県美術館特集展示
「人−そのイメージと表現」
吟行会


文 南行ひかる


 前号に於いてねこ端石氏より問い掛けのあった「カルチャー」と「サブカルチャー」の違いはどこにあるのか?、という深ぁ―い命題を浅薄かつ漠然たる思いのままこの原稿を書く事となった。
 それはよく知られている、戦後直後に桑原武夫が提起した俳句第二芸術論だ。あらためてネット検索してみると「『俳句』は芸術というより『芸』であり、他に職業を有する老人や病人が余技として消閑の具とするにふさわしいもの。俳句は井戸端会議で世間話の断片」などと驚愕の文章が登場する。「そもそも俳句は、お茶、お花、踊り、と同じ習い事の『お俳句』なりうる要素を宿命的に備えている」、とも。
 坂口安吾はこう言ったそうだ。「俳句も短歌も芸術だ、きまっているぢゃないか、芭蕉の作品は芸術だ、蕪村の作品も芸術だ、啄木も人麿も芸術だ、第一も第二もありはせぬ」
 浅学非才な小生として、子規が生きていたらどう反応しただろうかと想像するばかりである。我が思いは結局、次に終着する、四の五の言わず、そんな暇があったら一句作って楽しみましょう、→アワワ、安易且つ月並みな纏めです(笑)。

 前置きは以上とし早速今回の美術館吟行をレポートする。年の暮、師走極月十二日、愛媛県美術館所蔵品の特集展示展に一同参集。テーマは「人ーそのイメージと表現」であり各章に分かれていた。掲示の説明では「我々人間は自分達をいかに表現してきたか。時に美しく理想化したり時に現実をあるがままに受け止める表現で人間という最も身近で多面的な存在を美術作品に作り上げてきた、それを鑑賞する…」 これはもう芸術の究極のテーマと言えます。

 第壱章 かお 自己他者を見つめる (自画像では作者が自己とどう向き合っているか、肖像画では作者とモデルとの関係性や距離感を鑑賞する)

 いきなり最初に展示されていたのは兼題の画、中村彝作の自画像。一同次の通り一気に詠む。

溶けてゆきたき欲もあり霜の夜 猫正宗
雪が降る小川のくねりに彝の眼に 恋衣
真冬の闇にほの光る我でいる チャンヒ

 そして伊藤五百亀作、「村上三島像」を詠む。

極月の佳きことを聴く耳の欲し 恋衣

 さらに舟越桂作「読み終わらない本」を詠む。

読み終わらぬ本と玩具と綿虫と ひかる
女正月百行の詩をうたう 恋衣

 第弐章 暮らしといとなみ(何気ない暮らしや営みのなかにある幸せ、楽しみ、時に悲哀等それぞれの生活に注がれた作者の眼差しに共感を寄せながら鑑賞する)

 新居浜市出身の真鍋博作「人物」
横顔にさみしき意志もあり冬萌 猫正宗

 同「2001年の日本」
モノクロノ未来ヘ凍星モキタヨ チャンヒ

 杉浦非水作「上野浅草間開通」
終電の地下鐡駅に持つ聖菓 恋衣

 第参章 からだ(裸体に見られる理想的・写実的な人体・ポーズの追及を鑑賞する)
あるままの無情を裸婦像と林檎 チャンヒ
人という容に折り合うべく荒星 猫正宗
スフィンクスの眠る王柩冬銀河 ひかる

 新寄託作品 福井江太郎の特別展示 (駝鳥2作品、菖蒲2作品)

 福井江太郎画伯の日本画駝鳥2作品(「黙」「憾」)、菖蒲2作品(「連」「煕」)、が最後に展示されていたが、ともに大作、色彩が鮮烈で素晴らしくオリジナリティに溢れた作品であり、一同感服。

 菖蒲作品
金箔へ飛散るブルー花菖蒲 ひかる
君独り凍つる奇跡の華の道 猫正宗
いつせいにすきとほりゆく菖蒲かな 恋衣

 駝鳥作品
寒木や駝鳥の爪が掴む黙 ひかる
生と死の境に冬枯は黙る チャンヒ
あらたまの自由なる首まむかいに 恋衣

 結局のところ、芸術であろうと無かろうと、第一であろうと第二であろうと、お構いなしの楽しく俳句詠み放題、いかなる挑戦も自由の4人の吟行でありました。

生と死と光と闇と凍てる眼と  ひかる
熱砂征く速度を内に秘め冬麗 猫正宗



南行ひかる
今治から東京、名古屋と転勤の後、2014年4月、5年ぶりに松山に舞い戻る。俳都松山への移住計画を実現し、いつき組俳句100年計画に鋭意参画中




取材協力:愛媛県美術館



次回美術館吟行会
いずれも『100年俳句計画』編集室までお申し込み下さい。(TEL089-906-0694)

特別展 生命大躍進
脊椎動物のたどった道
日時: 2月13日15時〜
場所:愛媛県美術館
参加無料(入館料は別途)
申込締切:2月10日

当日17時より「生命大躍進ナイトミュージアム」(入場無料)が開催されます。吟行会終了後見学できます。*47ページに関連情報

吟行ナビえひめ
http://iyokannet.jp/ginkou/



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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.31


Still air and no snow
Crisp frozen ground underfoot
Smelling hamburgers

肉焼ける匂いや霜の庭静か


(直訳)
しんとして 雪もなく
足元に ぱりぱり霜張る大地
ハンバーガーの匂い



 We stay warm with our nervous dog and I daydream of Bach and Schubert. Reality intrudes when I pick up the cello, and the challenge is to be patient enough to turn the dreams into real sound.

 興奮しやすい番犬と暖かい我が家に居て、僕はバッハとシューベルトを夢みている。チェロを手に取ると、現実が割り込んで来る。夢の音が現実となるまでじっくり我慢すること、それが挑戦だよ。
(訳:朗善)



ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第59話 ジェリコの戦い コールマン ホーキンス

曲がってる大根はJAZZを聴いた所為  toku229
ハミングの闇にとけゆく冬の星 一走人

 とうとう念願の100年俳句計画マラソン部とJAZZ句会のコラボが成って、toku229さんと一走人さんが人気句を詠んでくれた。tokuさんのジャズへのクエッションマーク付き好奇心は大根を曲げてしまったようだが、一走人さんは今回のテーマ タイトル曲「ジェリコの戦い」の自身のアルコ ソロにスキャットでハモるメイジャー ホリーのベース奏法に反応。実はホリーもこのアルバムの人気を決定的にした立役者の一人だった。

匕首のごと二月の句帳忍ばせる 暮井戸
浅春のジャックナイフが斬る夜よ 恋衣

 クルト ワイル作曲の「マック ザ ナイフ」日本語タイトル「匕首マック」も、このアルバム中の人気ナンバーで美空ひばりも歌っている。原曲は「モリタート」でベルトルト ブレヒト作の戯曲「三文オペラ」の劇中歌。

雪踏みて湧き出る音の老い知らず  千栄子
鈍色のサックスの音にじわり春  チャンヒ

 ヨーロッパに移住していたコールマン ホーキンスが久々に帰米し、グリニッチ ヴィレッジの人気クラブ「ヴィレッジ ゲイト」で62年に録音したライヴ盤が「ジェリコの戦い」である。スウィング ジャズの全盛期に名を馳せたホーキンスが、ここではモダン テナーの始祖としてエネルギッシュな演奏を聴かせてくれる。円熟の境地、57歳の鈍色のサウンドは、大らかで柔らかい熱気を帯びている。

バップなる鷹は45回転 蛇頭
ただそこに居る鯨のバップ 千栄子

 ジャズ評論家の油井正一氏は、HAWK(鷹)ことHAWKINS(ホーキンス)とバップについて、このように語ったことがある。「ホークが残した《ゼア ウィル ネヴァー ビー アナザー ユー》を45回転で聴きたまえ。テナーのピッチはあがってアルトとなり、そこに出現するのは疑いもなくチャーリー パーカーを徹底的に理解し尽くした彼の偉容なのである」と。早速「ホーク イン ハイ ファイ」(56年/rca)のその曲に針を落としてみた。十分にニンマリとできた。
 千栄子さんはバップ スタイルを吸収し、変貌するホーキンスの大御所的包容力を「鯨」と表した。共感のメンバーは四の五の言わず、この句を強く推した。今回のサブテーマ「ハイ アンド マイティ ホーク」もモダン ジャズの名盤。

片耳の馬凍天に火の匂ふ 時計子

 「鷹」「鯨」ときて、時計子さんは「片耳の馬」と詠んだ。句場の誰もがホーキンスの未知なるエピソードの公開に耳をそばだてた。「いえ、ホーキンスとの関係は特にございません」とのご本人の返しに全員、コケタ。


http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。

次回のJAZZ句会は、2月28日(日)13時より。テーマは「デディケイションズ/穐吉敏子」です。句会への参加を希望の方は、本誌44ページの句会カレンダーを参照してください。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU vol.1』(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ


第59話
『節分』


 貧乏長屋の夫婦の話。
 大みそかに払わなくてはいけない家賃やツケで買っていた店のお金。大みそかに払えないと、旧暦の大みそかにあたる節分まで待つこともあった。
 それでも払う金は無い。去年の節分のことを思い出すと、大家がやってきて家賃を払えと言うと夫は押し入れにかくれ、妻は「急に亭主は亡くなってしまい……」と涙で語った。びっくりした大家、香典にと5円置いていこうとするがさすがに受けとれないので返そうとすると押し入れから死んだはずの夫が「もらっとけ!」と出てきたので大家は腰を抜かしてしまった……。
 またその手は使えないということで、借金取りの好きなことを話題に振って、うやむやにしてしまおうという作戦を使うことにした。
 酒屋の番頭は大の芝居好き。歌舞伎のまねごとをしてやるとそれにのり、「行け!」と言うとそのまま帰ってしまった。
 魚屋は酒と端唄好きだが、金がないので酒を買えるはずもない。お茶を湯飲みに入れ、「おちゃけ」として飲み、酔ったふりをして端唄の文句をならべたてると魚屋も調子に乗り、逆に酒を買ってこさせ、ふぐを煮て食べさせてくれると言い出した。
 酒を燗にして二人で呑みつつ、節分らしくめでたい酒づくしの端唄の文句を並べ立てる。
 そのうちふぐが煮えたとみえ、熱々のふぐをふうふう言いながら食べ、「ふぐはーくち(口)ー」
魚屋「おい、そのまままるごと口に入れるなんて乱暴なことするなよ」
夫「ほねはーそとー」



 あまり演じられない噺になりました。
 八代目春風亭柳枝師がこの季節に高座にかけていたようです。
 似たような噺に、暮れの借金取りを追い返す「かけとり」というのがあります。どちらかというと「かけとり」が有名で、これは東西の噺家が現在もよく演る演目です。
 好きなものの話題をもちかけ借金取りを調子に乗らせ帰らせる部分はそっくりで、この部分に演者のアレンジが生きます。
 たとえば桂米團治師は自分も好きなクラシックの作曲家をシャレで並べ立てて笑いを誘います。
 さて、節分の日に寄席に行くといいことがあります。
 節分にちなみ、寄席の出演者による豆まきがあります。
 まくのは豆だけでなく、噺家オリジナルの手ぬぐい、演芸場の入場券、グッズなどをにぎやかに投げるのです。
 ちなみに二月上席(一日から十日)の上野・鈴本演芸場は、私の大学の後輩・古今亭菊志ん師が夜の部の主任(トリ)をつとめます。三日は豆まきがあるといいますので東京方面のみなさんはぜひ。
 私も一月二之席(十一日〜二十日)の新宿・末広亭を観てきました。
 やはり寄席の雰囲気は良いもんです。
 必ずといっていいほど出る酒の噺。この日もうまそうに呑む酒の噺が出たおかげで、寄席を出たその足で新宿思い出横町をのぞき、おいしい酒をいただきました。
 何かと理由をつけて呑んでおります。

節分にかこつけて呑む酒五合


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新聞記事に隠された俳句を発掘する
クロヌリハイク


黒田マキ


夕立とジャズと俳句がジャム セッション
(愛媛新聞より)


10月にJAZZ句を詠んだ彼のママ
(愛媛新聞より)


一月の句会はチャンヒ氏が仕切れ
(愛媛新聞より)


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お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第40回『ただいま』『Love&Peace2』

 地元劇団のための百人規模の劇場。そんな要望から始まったシアターねこも、活動を続ける中でネットワークが広がり、全国各地からの公演も多くなってきた。昨年12月も宮崎県から劇団こふく劇場、東京からは公演では3回目の250km圏内が来松。
 劇団こふく劇場の『ただいま』(作 演出:永山智行、出演:あべゆう、かみもと千春、他、'15年12月5、6日)は、寂れた地方都市の、ささやかな事件をはらんだ日常を描いた作品。その日常を、役者たちは能狂言の様な伝統的な身体表現で演じ、地方独特の息苦しさを体感させる。その身体性がわずかの間破れる、ラジオ体操のシーンに解放を感じた。
 250km圏内の『Love&Peace2』(創作 出演:黒田真史、宮尾昌宏、キュレーター:小嶋一郎、ドラマトゥルグ:渋川まろん、'15年12月26、27日)はどこの国の言葉でもないデタラメ語(パシュトゥーン語)で演じられる父と子の物語に、観劇後、感じた事、考えた事、中でも今回は「幸せとは何か」を役者らを交え語りあう(シェアする)ミニフォーラムまで含めた公演。気の抜けない、最初から最後まで考えざるを得ない作品だった。

旅に出る初星全てと出会うため

 彼らが自分たちのホームを離れ、わざわざ、愛媛 松山くんだりまで来てくれるのは、新たな観客を求めてに他ならない。なぜなら、演劇は観客がいて初めて完成するからだ。それは取りも直さず、未知の観客と出会うことは、作品もまた新たな命を吹き込まれるということでもあるだろう。しかし演劇と観客が出会うには、いくつかの障壁がある。例えば、俳句が、活字や電波によって偶然目や耳にする機会があるのと違い、演劇には、偶然の出会いといったことがほとんどないのだ。それでも、あなたが気づいていないだけで、あなたのそばにも演劇があるのかもしれない。そしてそれは、きっと、俳句やジャズや美術館同様、あなたとあなたの住んでいるところを豊かにするものに違いないのだ。まだまだ力不足ではあるが、本稿がその出会いのきっかけの一つになれればよいのだけれど。

君の隣羽化する春を待つ蛹



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。


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歳時記「無季」がバイブル


第4回
文 現代俳句協会会員  日暮屋 又郎


 寒い日が続くと、うれしいものの一つに鍋がある。みんなで囲む鍋は最高だ。幸せをかみしめるひと時でもある。
 以前、人にとって幸せとは何だろうと、自分に似つかわしくもない哲学的な事を考えた時がある。そして導き出した答えは、家族と和やかに夕食をとるという、いたってシンプルなものだった。家族、和やか、夕食の三点セットが自分にとっての絶対条件である。
 しかしながら意に反し、真逆の事をしなくてはならない時もある。出張先での独り鍋はさすがに野暮だろう。それとかぎすぎすと、そりの合わない連中となんてなおさらのこと。
 そんな時、鍋焼うどんに救いをもとめてみる。するとあの小さな鍋の中に、独りだからこそ誰にも邪魔されない幸せがある。先ず出てきたところ、すぐにアルミの蓋を取る。そこに広がるワンダフルワールド、わぁお。
 裏返したアルミ蓋の小さな穴を指でふさぎ、熱いのを我慢して、まだ薄い膜に覆われ、ほとんど生の状態の卵を素早く、かつ慎重にれんげですくい出す。失敗して鍋の中で卵が崩れようものなら、せっかくの出汁が濁って味がぼやけ、この世の終わりとばかりに落胆するはめになるので要注意。
 リーズナブルなイメージのうどんを、ハイソなすき焼きに一瞬で変化させ、肉、ごぼう、長ネギ、えび天、かまぼこと好きなものを溶き卵でいただく。その合間には澄まし汁でのわかめうどんをもいただく。
 食べ進むうち、やがてすき焼きもなくなって、いささか淋しさが漂い始めたところで、おっとどっこい、鍋焼はこれからが本番だぜとばかりに、今度はうどんをアルミ蓋にひきずり上げ。さきほどの溶き卵と混ぜ合わせる。すると、まあなんということでしょう。うどんが、まるでカルボナーラになっているではありませんか。まさに最高潮、ヘイ・えくすタクシー的な盛り上がり……。
 しかしながら、終わりがあるからこそのクライマックス。独り鍋のフィナーレに少し残った溶き卵を鍋に注ぎ込み、優しい味へと変貌を遂げた出汁を名残り惜しく飲みほして祭りは無事終了。
 千円ほどの支払いを済ませ、またうんざりするほど面倒くさいビジネスマンへと戻る。こんな日の気分としてこの句はいかがだろうか。

鍋にアルミの蓋をする愚直な初老 山本 芒原

 だが、今日の本当のクライマックスは退社後に待っている。我が家で妻と、今日の出来事なんかを語り合い、直箸でかまわぬ鍋をつつきあう夕食を励みとして、もうひと頑張りの日暮屋課長である。

鍋にやはきものふるはせて家むつむ 鈴木 哲哉


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百年歳時記


第33回 夏井いつき

 有名俳人の一句を紹介鑑賞するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月ご紹介していきます。


どうかしてゐる歌留多にひらがなは群れて Y音絵
 いきなり畳みかけられる「どうかしてゐる」という呟きに惹きつけられます。困惑か、憤りか。「歌留多」の一語で、おやおや理不尽に負けましたかと一句の展開を見抜いた気になった瞬間、目に飛び込んでくる「ひらがなは群れて」の措辞に、心がハッと動きます。
 「どうかしてゐる」は、目の前にある百人一首の取り札に向けられた呟き。長方形の札いっぱいに「ひらがな」ばかりが「群れ」ていることへの美しい困惑。初めて百人一首の取り札を見たときに、確かに私自身も感じそのまま忘れ去っていた違和感が、上五の独白によってありありと蘇ってきたことに驚きました。改めて取り札の一枚一枚を眺めながら、この句の詩語の鮮度に感じ入りました。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』1月8日掲載分)

痛そうな犬の顔ある歌留多かな 井上じろ
歌留多には円空仏のごとき姫 秋鹿初蒸気
 前句、一読「いろはカルタ」だと分かるのが、さすがだなあと思います。「犬もあるけば棒に当たる」と読み上げられ、ハイ!と威勢よく「い」の札を叩き、手にとってみると、そこにはいかにも「痛そうな犬の顔」が描かれているとは、なんとも飄々たる俳味の一句。「痛そうな」から始まる語順が意外性を巧く演出しています。
 後句の「歌留多」は、百人一首の読み札であることが一目瞭然です。「歌留多」の読み札に刷られている十二単の「姫」の顔はどうにも「円空」が彫った「仏」みたいだよという愉快に、思わず笑ってしまいます。この作家らしい視点から生まれるウィット。我が家の百人一首にも、こんな顔つきの「姫」がいらっしゃいますよ。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』1月8日掲載分)

山眠る熊胆闇色に干され 鈴木牛後
 「熊胆」は「ゆうたん」と読みます。クマ類の胆汁を乾燥したもので、苦味健胃、鎮痛、消炎、解熱等に効能がある漢方薬です。
 「山眠る」頃は、猟の季節でもあります。食べ物を求めて里に下りてくる「熊」を撃つ。これもまた里山に生きる人たちの切実な仕事です。昨日撃った「熊」は丁寧に解体され、肉は肉として、皮は皮として仕分けられています。取り出された「熊胆」は貴重な漢方薬。値の見込める大事な部位です。冬の乾いた風の中、昼と夜を繰り返しながら「熊胆」はゆっくりと乾いていきます。眠ったかのような冬の山に生きる熊と人間の関わり、生きるための営みが、曼荼羅図のように組み込まれている一句に深い感銘を覚えます。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』12月25日掲載分)

注連縄に泡の飛びつく磯祠 宇多津花菜
 季語「注連縄」から始まる一句。上五の助詞「に」が巧く機能していて、読み手は「注連縄に」何がどうしているのだろうと、「注連縄」をしげしげ眺めるような心持ちになります。助詞「に」が伏線となって出てくる中七の「泡」というモノ、「飛びつく」という複合動詞の勢い。これらの措辞が生き生きと映像を再生します。
 さらに巧いなあと唸ったのが「磯祠」の一語。仮に下五に「祠かな」と置いた場合と比較してみると、「磯」の一字の効果は歴然。「磯祠」によって中七の「泡」は、波の花の泡であることが分かり、その泡が飛ばされるほど風の強い日であることもわかります。新年を迎える「磯」の匂いも一気に立ち上がってくる見事な作品です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』12月18日放送分)

磁針揺れやまず原発に狐火 小市
 「磁針揺れやまず」は、磁石をズームアップした映像。いつまでも揺れ止まない「磁針」の映像が得体の知れない不安を掻き立てます。句またがりの型によってカットが替わった後半に現れる「原発」の二文字は、心に生まれた不安を明確なものにし増幅させ、「原発の狐火」という虚の世界にはひたひたと恐怖が満ちていきます。
 「磁針」は「地震」と同音異義語。目で見るよりも声に出してみると、さらなる不穏に心が支配されていくようでもあります。なぜこの磁石の「磁針」は止まらないのか。これでは北がどちらなのか、どちらに向かって進めばよいのかわからないじゃないか……。そんな困惑の向こうに「狐火」はゆらゆらと青白く揺れ始めるのです。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』1月15日放送分)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第59回 文 暇人

まる裏直前! 長い夜

 まずは先日行われた「まる裏俳句甲子園」のお礼から。全国各地からまる裏俳句甲子園に参加していただいた皆様、誠にありがとうございました。おかげさまで今回は、過去最高の参加者数となりました。主催者として、mhmメンバー一同お礼を申し上げます。また今回、各種賞品のご提供をいただいた皆様、大変ありがとうございました。心よりお礼を申し上げます。まる裏俳句甲子園の当日の模様につきましては、また次号で改めて取り上げます。
 さて、話は2016年1月5日の午後7時から行われた、まる裏俳句甲子園の開催を目前に控えてのmhm「臨時会」へとさかのぼります。
 臨時会の内容としては大きく二つの議題がありました。ひとつは、まる裏の台本 進行の確認。もうひとつは、恒例となっている、まる裏の次の日の吟行会の開催について。
 まず台本の確認。あねご前代表が台本について説明しながら、当日の役割分担や進行を細かくチェックしていきます。代表を勇退されて以降、こんなあねごさんを観たのは久しぶりではなかろうかと思うぐらいの熱さ。実は、この時の様子をFacebookにて報告させていただいたのですが、ご覧いただけましたでしょうか。
 その後はあねご前代表、メールや電話を通じて各所へ諸々の確認をされておられました。
 台本の打ち合わせが終わった後は、mhmが例年、恒例行事として行ってきた、まる裏俳句甲子園翌日の吟行会について。昨年は「俳句ポスト365」のオフ会と予定が重なったため、当初の計画を中止し、俳句ポスト365への協力を行うことになりましたが、今回は、その俳句ポスト365オフ会については、まる裏俳句甲子園の前日に行われるということで、吟行会の開催をどうするか、という話し合いが行われました。
 結果としては、mhmとしては時間的にも人員的にも難しいとの結論に至り、残念ながら今回は吟行会は行わないこととなりました。
 気が付けばもう夜の10時。夜も遅いということで、この日の臨時会はここまで、ということになりました。
 実際の時間以上に大変長い夜に感じましたが、今回の話し合いで感じたのは、あねご前代表の「まる裏」に対する情熱の強さでしょうか。この熱量が、まる裏当日には果たしてどうなったのか、それはまた来月号のお楽しみ。
 さて、ここで読者の皆様にご協力のお願いがございます。
 来月号のこのページに向けて、「まる裏俳句甲子園」へのご意見、ご感想を、mhmもしくは100年俳句計画編集部までお寄せいただけないでしょうか(2月7日締切)。それをもとにして、今年の「まる裏俳句甲子園」を振り返っていきたいと思います。
 どうぞ宜しくお願い致します。


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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南極を詠もう!


No.1
愛媛県立新居浜西高等学校教諭
渡辺浩志

 「100年俳句計画」の読者の皆様、こんにちは。新居浜西高校の渡辺です。南極へ向けて、12月2日に日本を出発、オーストラリアのフリーマントルで「しらせ」に乗船し、12月6日に出港いたしました。船内では、南極での設営作業や野外活動に向けての安全講習会やヘリ搭乗訓練、物資運搬や海洋観測などを行いながら、一路、南極へ向かいました。激しい船の揺れに耐えながらも、見渡す限り海と空しか見えない観測船「しらせ」の生活は、目新しいこともあってか、予想以上に快適に過ごせました。
 船内で、隊員の方々に「みきゃん俳句手帳」をお配りし、あらためて「南極吟行句」への協力をお願いしました。投句箱を作成し、サロンに設置したところ、たくさんの個性的な俳句が集まりました。素人が詠んだものですので、稚拙なものもあるかとは思いますが、そこはご愛敬でお許しを。
 南極に近づくにつれ、日毎にニュースが飛び込んできます。オーロラの発生(11日)、初氷山視認(13日)、流氷域(20日)、定着氷域到達(21日)、また、ペンギンやアザラシ、カモメ、アホウドリ達の歓迎を受けました。今年は、定着氷も比較的薄く、順調な航海となりました。
57次隊に同行している北海道の十勝毎日新聞社の塩原記者から、数多くの素敵な写真を提供していただきました。読者の皆様から、南極への思いや観測隊への応援など愛に溢れた「南極吟行句」をお待ちしています。
 いよいよ昭和基地入りです。では、また。


<写真の説明>
写真は、それぞれ、しらせ船上から撮影されたものです。
提供:十勝毎日新聞社 塩原真 記者(第57次日本南極地域観測隊 同行者)*「投句箱」の写真は除く

白き大地目指すはしらせ蜜柑色
南極へ頬染めしらせいざ往かん 浩志



今月の南極吟行句   希望峰 編

かがやいているか氷の大陸は 恋衣
 初めまして。希望峰と申します。スウェーデン留学経験があるので、寒いのは慣れているだろうということで鑑賞担当となりました。南極隊員の皆様と、マガジン読者の方の句を入り混ぜていきます。恋衣さんの句は、読者から隊員の挨拶句としてとてもスケールが大きいです。帰りを待つものとしての、膨らむ希望が溢れ出しています。

黒煙なる鬨の声南極向かふ船の吐く 海田
空と海に抱かれ出航春近し だりあ
 隊員の皆さん、出航はこんな感じでしたか?また教えてください。
くじら出た知らせが入るが巡検中 後藤猛
 巡検、というワードがリアルです。見ることのできない鯨に、船内はそわそわしているのでしょう。人にとっては鯨の出現は大事件なのですが、鯨にとっても人間を初めて見るかもしれません。

海原にぽつんとひとり棚氷 渡辺浩志
 陸上の氷河または氷床が海に押し出され、陸上から連結して洋上にある氷のこと。「ぽつんとひとり」は、棚氷自体のこととも、はたまた自分自身のこととも読めます。前者の方が、棚氷のスケールに対して「ぽつんとひとり」のギャップがあって面白いです。孤独という感情は、暑いときよりも寒いときに感じることだと思います。そもそも、陸地に慣れ親しんだ私たちにとっては、長期間海にいるということそのものが不思議と寂しい体験なのではないのでしょうか。しかし、時に人は自ら孤独を求めることも…棚氷も同じなのかもしれません。

暮れぬ日に娘を思う聖夜かな 源笑
 暮れる日ではなく、暮れないからこそ愛娘のことを考えるのでしょう。サンタクロースは娘さんに現れたのだろうか……。

年の暮れ船酔い越えて昭和かな 酔人
 船酔いの向うに昭和の明るい日々が見えたのでしょうか……。平成生まれの私には自信を持って「うん」と言えない世界ですが、いつの日か「平成」もこのように詠われるのだろうか、などと思いました。

ミシミシと砕氷艦冬銀河を渡る 香雪蘭
しらせを出向かふ一月のペンギン ヤッチー
南極の観測基地へ門松を ひでやん
 こちらは読者から。実際に門松はあるのかどうか定かではないが、門松の周りはきっと暖かいはずです。

乾杯のワイングラスに雪の花 雨月
 物理的にワイングラスが鳴ることと雪片が降りてくることは関係ないのですが、両者が呼応している気がします。観測隊の風景と読んでもよいでしょう。

凍る朝半袖を着て妻思う 塩原 真
 娘だけでなく、奥様を思う句もありました……ってなぜ半袖? 寒すぎませんかさすがに……。ちなみに、隊員の皆さんの句には3句も「思う」がありました。思わずには居られない南極への日々……。

日本よりフツーに南極がすっきー 日曜日の使者
 あらら、そんなこと言わずにちゃんと帰ってきてね…私も読者の皆様もお待ちしております!



【投句募集】右の写真から作った俳句を募集します。投句された俳句は、スウェーデンに留学した経験のある喜望峰さんが紹介します。
 俳句は専用の投句フォームにて受け付けます。http://marukobo.com/antarctic/
 投句締切は2月3日(水)。


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俳句の街 まつやま
俳句ポスト365


協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


優秀句
平成27年12月度


【蜜柑】
《地》
投げ入れるやうに蜜柑を喰ひ若し  クズウジュンイチ
蜜柑山明るき午後は死後のやう 葦信夫
捨て山に切り火のごとく散る蜜柑 西田克憲
小結は五勝七敗みかん剥く 山香ばし
白組の5組目蜜柑5、6個目 村上海斗
傷みたる蜜柑を捨つる逮夜かな  内藤羊皐
剥いたみかん見つめるだけの母となりぬ 豆闌
執拗に筋剥かれ蜜柑ひりひり トポル
都合悪いと蜜柑ばっかり剥いて、もう 可不可
伊予国の蜜柑のことは儂に訊け ポメロ親父

《天》
にきたつの月の凝りたる蜜柑かな とおと


【山眠る】
《地》
丸太へと鉈の一喝山眠る 中原久遠
湯川とて少し温か山眠る ぐわ
湯の花や御嶽山の眠らざる 雨月
山眠る茶碗に雨の名を与へ 希望峰
山眠るさて獲物でも洗おうか てまり
山眠る真珠のごとき天文台 このはる紗耶
山眠るよき田の水を蔵しつつ 石井せんすい
山眠り脱鞍したる馬に湯気 灰色狼
抜髪のからむ湯殿や山ねむる 比々き
馬の眼の周りに山は眠りけり 酒井おかわり
蜂蜜に沈む知恵の輪山眠る 岩魚

《天》
山眠る熊胆闇色に干され 牛後




俳句ポスト365作品集2015

冊子のお問い合わせは……
 松山市役所 観光 国際交流課
 TEL 089−948−6556



2月の兼題

投句期間:1月21日〜2月3日
雉 きじ【三春/動物】
キジ科の鳥で日本の国鳥。草原や雑木林などに棲む。春に雄が雌を呼ぶ声を放つことから春の季語とされているが、留鳥である。

投句期間:2月4日〜2月17日
馬鈴薯植う じゃがいもうう【仲春/人事】
芽の出るところを外さないように2〜4つに切り分けた馬鈴薯の種芋を、畑の畝に40〜50cmの間隔で、芽の出る方を上に向けて植える。北海道では「馬鈴薯蒔く」ともいう。



《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


※募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。



於2016年1月9日
俳句ポスト365新春オフ会
盛会御礼絵図

約50名のハイポニストが全国より集結。俳号とお顔を一致させたりまる裏出場チームをその場で作ったりと大盛り上がりの2時間でした。



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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成27年12月度


【膝掛】
膝掛のようでもあるし分厚いし もね
膝掛が抜け殻になり椅子にある 富士山
膝掛のフリンジにある憂いかな 亜桜みかり
膝掛の横一列の交換手 釈然
膝掛や貸し出しカードに押す日付 富山の露玉
膝掛の自習室からチャペルの灯 妙
膝掛を抱え洞窟行きのバス 波野
膝掛の中も闇なる夜行バス 鈴木牛後
膝掛の蒼はフィヨルド呼び覚ます 遠音
シベリアの途切れぬ窓や膝毛布 樫の木

《天》
膝掛の配られ義母の通夜整う ひめばあちゃん


【雲腸】
雲腸入る腹そのままに供えけり 篠原そも
雲腸の主の大きさ偲びける 雪うさぎ
雲腸に慣れず仕舞や転勤す もも
腹割けば雲腸晴れやオホーツク 逆ベッカム
雲腸へポン酢腸へは清酒 のり茶漬け
雲腸のうねり春慶の一椀 角耳
悔恨や雲腸ねちと噛み切って 鈴木牛後
雲腸を澄ましてすする孫九人 和吉
雲腸に殿上人の歯形かな 豆腐太郎

《天》
八百比丘尼より賜りし菊白子 天玲


【磯】
小春日や寄する磯菜の名を知らず 雪うさぎ
磯足袋のスパイクに石蓴の欠片 ポメロ親父
トロ箱の丸に磯の字冬急ぐ トポル
石蕗咲くや磯風を聞く道祖神 一走人
磯宮の巫女の袴へ初明り マーペー
磯道に出くわす鹿の退かず もも
因幡の磯にうさぎおりそな小春かな 篠原そも
短日の光と影や磯と波 蓼蟲
冬怒涛磯を生みゆく熔岩の湯気 紗耶
この磯の向こうは雪の阿蘇五岳 恋衣
風花へ乾すスコッチの磯臭き アドドケナク@
最果てや磯に犇く海馬二百 逆ベッカム

《天》
注連縄に泡の飛びつく磯祠 花菜


【年の市】
千体の猫に招かれ年の市 妹のりこ
美容院出でてのぞきぬ年の市 雨月
南座をはねて紛れる年の市 鯛飯
飴売りも飾り買いけり年の市 越智空子
棒鱈は夫の役目よ年の市 さざなみ真魚
年の市何故に棒鱈先に買う 都乃あざみ
呼び声の錆光りする年の市 もも
年の市橋を渡れば鐡の町 ドクトルバンブー
裏道よりふらりと僧侶年の市 緑の手
年の市逃れて路地の星きれい もね
本堂はぽつかりしづか年の市 豆腐太郎
腕ほどの縄綯う婆や年の市 樫の木

《天》
年の市宮総代は火の傍に 紫水晶



※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

投句締切: 2月14日
料峭 りょうしょう【初春/時候】
暦の上では春になっても、まだ春風が肌にうすら寒く感じられるさまをいう。

眼張 めばる【三春/動物】
フサカサゴ科の魚。磯釣りでよく釣られる。目が大きいのでこの名がある。胎生魚で、春先に沿岸で子を産むが、この頃が旬である。体色は黒、赤、金などの個体変化がある。

投句締切:2月28日

季語ではない兼題です。「確」という字が詠み込まれていれば、読み方用い方は問いません。季語は当季雑詠を原則として、自由に選んでください。

種物 たねもの【仲春/人事】
前の年に取った五穀、野菜、草花などの種子をひと冬よく乾燥させ、貯えて春に播くが、このうち籾種以外の種子をいう。



《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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100年俳句計画 掲示板



NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  2月2日(火)、16日(火)11時40分〜

あいテレビ(TBS系列、全国)
 『プレバト!!』
   毎週木曜 19時〜19時49分
※組長がゲストの俳句ランキングづけで出演! 放送日番組欄を要チェック!

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
兼題「ヒヤシンス、望潮」2月14日〆
   「孕み鹿、入学試験」2月28日〆
 インターネットでも配信中。詳しくは番組webサイトへ。
  HP http://www.baribari789.com/
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)、住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。


執筆
松山市の俳句サイト「俳句ポスト365」
http://haikutown.jp/post/
 毎週水曜締切/翌週金曜結果発表

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」
※ 毎週日曜発刊タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。朝日新聞松山総局(790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。

愛媛県《吟行ナビえひめ》句&写真
 俳句選者:夏井いつき
 写真選者:キムチャンヒ
【募集期間】毎月1日〜 25日前後締切
【応募先】http://www.iyokannet.jp/ginkou/
【問い合せ】愛媛県観光物産課
TEL 089ー912ー2491

NHK俳句 組長放送回俳句募集
 兼題「陽炎」または「逃水」。
 締切3月10日必着。
※投稿は葉書1枚に1句。選者名、兼題、俳句1句、名前、年齢、電話番号明記。送り先 〒150-8001 NHK「NHK俳句」係まで。ホームページからの応募も可 http://www.nhk.or.jp/tankahaiku/


句会ライブ、講演など

福岡 大牟田市句会ライブ
 2月3日(水)18時〜 開場
 場所…大牟田文化会館小ホール
 料金…一般2000円、学生1500円
※参加と問合は大牟田市文化振興財団 0944-55-3131

長崎国際文化協会主催学校ライブ
 2月4日(木)〜5日(金)
 長崎市立三川中学校
 長崎市立村松小学校

琉球新報社主催「新報女性サロン」
 2月12日(金)14時〜
 場所…ANAクラウンプラザホテル沖縄ハーバービュー

四国生産性フォーラム in 高知講演「俳句で人生を豊かにする」
 2月18日(木)13時30分〜
※問合は四国生産性本部 087-851-4262 E-mail : toiawase@spc21.jp

よみうりカルチャー自由が丘句会ライブ
 2月20日(土)13時30分〜
 めぐろパーシモンホール小ホール(東急東横線・都立大学駅徒歩7分)
 料金…2950円
 申込…03-3723-7100

茨城県神栖市立中央図書館 著者を囲む会
 2月21日(日)12時30分〜受付
 神栖市立中央図書館視聴覚室
※対象は市内在住の方。2月6日(土)午前10時から整理券を配布(中央図書館、うずも図書館にて)。

NHK文化センター横浜教室・青山教室「夏井いつきの赤ペン俳句講座」
 2月22日(月)横浜教室10時〜
 2月22日(月)青山教室15時30分〜
 料金…3240円(会員)、3780円(一般)
 問合…青山教室 03-3475-1151

大阪府社会保険労務士会公開講座「楽しい俳句作り」
 2月27日(土)13時15分〜開場
 場所…大阪リバーサイドホテル4階(大阪市都島区)
※参加無料・定員400名。申込は2月12日まで(名前、住所、電話を記入の上ファクスでの申し込み 06-4800-8177)。問合先は大阪府社会保険労務士会事務局 06-4800-8188



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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

大人コンに挑戦!
みやこまる 『大人のための句集を作ろう!コンテスト』に挑戦して生意気にも燃え尽きました!(笑) 俳句作りを始めて半年。そんな自分に今から81句なんて作れるはずないもん!と諦めていましたが、〆切が近づくにつれ、この俳句との出会いを何か形で残したい、と思い直し1から作り始めました。今ではこの81句が私の宝物です。このような機会をいただいて心から感謝しています。ありがとうございました!
編 応募ありがとうございました!結果速報は3月号にて公開予定。

選評大賞ありがとう!
幸 雨月さんへ。選評に私の句を選んでくださってありがとうございました。長引く入院生活でうつうつとしていた時に、ぱあっと明るい光がさしこみました。幸せでした。
編 読み応えありましたね〜。来年はぜひ選評書く側に回って幸せのお裾分けを♪

大忘年会行ってきた!
P,妙 100年俳句計画大忘年会、初参加。俳号しか知らなかった方とお話しできたり、久しぶりに外でお酒飲んでフワフワしたり、楽しかったです〜。ありがとうございました。少し前から、マガジンでは俳号にプリマスロックの略のつもりで「P,」を付けて「ピーたえ」を名乗ってます。が、縦書きになると納まりが悪いので、別の苗字がいいかもと考え中です。
編 俳号そういう意味だったか! そのものずばり「プリマス妙」とか?

矢野リンド 大忘年会の時、津川エレキさんにサインをいただきました、感激!!
編 サインコーナー結構賑わってましたね。さすが画伯。

今月の詰め俳句
青萄 マイマイさん、楽しく参加させていただいております! 前回の「柊の花」〜全く思いも及ばない季語でした。盲点? ハハハまたがんばりますゆえ☆
編 今月はさらに原句越えが現れた!?

坊太郎 マイマイさんの詰め俳句には歳時記が必要と思い、お城下へ出掛け角川大歳時記五冊をゲット、ついでに家庭裁判所へ立ち寄り……。それはさておき季語の多さにびっくりしています。あっそれからついでついでで申し訳ありませんが、先日龍淵王決定戦を観戦し、まあよくも次々俳句が生まれるものよと思いましたが、中でも恋衣さんの句に白州次郎が出て来るとは恐れ入りました。
編 ついでに龍淵王の感想までありがとうございまする。当日が白州次郎の命日だったんですよねえ。

白秋千 友人と4人で素人句会を遊びながら月一ではじめ、今回この投句を進められたばかりで、何もわからず、とりあえず季語を感覚だけで投句します。
編 歳時記開けば誰でもできる!がモットーです♪ 今後ともぜひ!

ここんとこの暮らしぶり
ケンケン 可も不可もない一年だおでん食う
何だかんだで平穏無事に暮らせたので幸せ、といってもいいのかもしれない……来年も「俳句」ケイゾクです(苦笑)……。
編 小市民的幸せのおでんが沁みる!

喜多輝女 暖かだったり寒かったりの予想のつかない毎日ですが皆さんお変わりありませんか? 両足首の骨折で1か月半入院しておりましたがやっと退院出来ました。病院から帰って見ると庭の山茶花は勝手に咲いて散っておりましたし金柑は間違えてもう黄色い実をつけております。変な気候ですが皆さんご自愛下さいませ。
編 退院おめでとうございます。暖冬から一転の厳寒どうぞ体調崩されぬようお過ごし下さい。

さざなみ真魚 あたたかい師走……ありがたいけど、恒例の師走行事に乗り気がしません。早めに大掃除をすませちゃえばいいんだ、と思いつつも……。
編 それも季語ではあるんですけどねえ。めんどくさいこと多いよね年末年始。

松ぼっくり 暮れの急な姉の旅立ちでした。
編 暮れのお忙しい時期にご愁傷様でした。ご冥福をお祈り致します。

うに子 最悪の一年でしたが季語スケジュール帳の俳句日記で吐き出せたので気持ちが楽になり救われました。来年はうんと笑える一年にしたいです!
編 最初の一月が過ぎ調子いかがでしょうか。多くの幸がきますよう!

大阪野旅人 早いもので又、一年経ちましたね。
編 時の流れが早すぎてこわい……。


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鮎の友釣り

211

俳号 ドクトルバンブー

マイマイさんへ マイマイ師匠と出会い、俳句と出会い、組長と出会い、句友もできて世界が広がりました。ありがとうございます。

写真 今治コミュニティFMラヂオバリバリのスタジオにて。

俳号 小説家、エッセイストでもある北杜夫(通称どくとるマンボウ)の名前をもじってつけたラジオのパーソナリティー名です。

次回…ひなぎきょうさんへ プリマスロック句会ではいろいろとお世話になっております。景品でいただく卵は絶品です。


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告知


100年俳句計画作品集
100年の旗手
連載者募集のお知らせ

 「100年の旗手」は、年齢や俳句の経歴に関わりなく、本誌にて作品集の発表が出来る場として、新たにスタートを切ります。
 そこで、毎月10句3回の連載に挑戦する方を募集します。4月号に掲載できるタイトル付の10句の作品集を、Eメール、または郵送、FAXにて本誌編集室までお送り下さい。
 編集室にて連載者を決定し、掲載いたします。
 応募締切は2月20日(土)。多数の挑戦者をお待ちしております。

応募内容 4月号に掲載できるタイトル付の10句
応募先  
 Eメール magazine@marukobo.com
      *件名に必ず「100年の旗手応募」と明記して下さい。
 郵送  〒790ー0022 愛媛県松山市永代町16ー1
     有限会社マルコボ.コム「100年の旗手」応募係 
 FAX  089-906-0695

2016年度第1期締切:2月20日(土)




俳句新聞いつき組
1月以降に新規で購読料をお支払いの方には
5号(2016年1月号)よりお届けします!
※6号は2016年4月中旬発行予定です!

※句集シングル『皺くちゃ玉』が付録の4月号からの購読は2016年3月まで受け付けいたします。ご希望の方は、新規で購読料をお支払いの際に必ず「4号から購読希望」と明記してください。

A4サイズ8ページフルカラー仕様
参加登録料(※初回のみ)1,000円(税込)
年間購読料 3,500円(税込)/年4回発行
*年1回、夏井いつきの句集シングル付録あり。

まずは無料の0号「創刊準備号」と購読のご案内をお送りいたします!
※0号「創刊準備号」を既にお持ちの方は、0号に掲載しております案内にしたがって購読料をお支払いいただくことで、正式な購読の申込となります。

ご購読のお申し込みは……

「俳句新聞いつき組」購読希望の旨、本名(ふりがな)、俳号(無ければ不要)、郵便番号、住所、電話番号、生年月日を明記して、下記のいずれかの方法で申し込んでください。

 ハガキで申し込む
  790-0022 愛媛県松山市永代町16-1
  有限会社マルコボ.コム
  「『俳句新聞いつき組』購読申込」係

 FAXで申し込む
 FAX番号:089−906−0695

 メールで申し込む
 kumi@marukobo.com
 (件名を「いつき組購読申込」としてください。)




4月号より短歌&英語俳句の投稿欄がはじまります

 近代俳句を確立した正岡子規は、短歌でも革新を行いました。その子規の精神を受け継ぐべく、選者に短歌誌『未来』同人の渡部光一郎氏を迎え、短歌の雑詠欄を開始します。
 また、世界中の国々で「HAIKU」が授業に取り入れられている中、自分たちの俳句を英語で発信できないか、という企画もスタートします。選者は長年英語俳句に取り組んでいらっしゃる、松山大学講師菅紀子氏です。
 4月号の応募締切はそれぞれ2月20日(土)。多数の応募お待ちしております。

短歌投稿
応募内容 自作の短歌(2首まで)
応募先  フォーム http://marukobo.com/tanka/
      Email: tanka@marukobo.com
     *2月1日より投稿できます。
4月号用応募締切:2月20日(土)

英語俳句投稿
応募内容 自作の俳句およびそれを英語俳句にしたもの(2句まで)
応募先  フォーム http://marukobo.com/eigo/
      Email: eigo@marukobo.com
     *2月1日より投稿できます。
4月号用応募締切:2月20日(土)




2月7日(日)
愛媛マラソン吟行会

 今年も愛媛マラソン吟行会を行います。
 マラソン部逆ベッカム部長他約十名がランナーとして参加します。応援は当日参加も可能ですが、事前に登録していただくと、事前に連絡が出来、大変助かります。
 多数の参加お待ちしています。

壮行会
当日午前8時:愛媛新聞社前集合

主な応援ポイント
  1:平田交差点付近(現場応援団長/toku229)
  2:パルティフジ夏目店前(現場応援団長/ほろよい&一走人)
  3:ゴール地点(堀之内)
各応援ポイントでは句会旗、手旗などで、応援します。
移動方法・防寒対策など各自宜しくお願いします。

100年俳句計画マラソン部
参加フォーム(ランナー&応援)
http://marukobo.com/marathon/

当日の情報は、100年俳句計画Facebookページにて、随時お伝えします。どなたでもコメントを書き込めますので、会場に来られない方の投稿もお待ちしております。




愛媛県美術館
「生命大躍進」
チケットプレゼント

主催者よりチケットの提供がありました。10名様にプレゼントいたします。
応募締切:2月7日(日)
応募先:100年俳句計画「生命大躍進」チケット係
E-mail:magazine@marukobo.com




会話形式でわかる
近代俳句史超入門 文 構成 青木亮人
単行本化準備中!
*連載は暫くお休みします。ご了承ください。




今年は4月開催!
大お花見大会

日時
2016年4月3日(日)
8時〜20時(予定)
雨天決行

場所
道後公園内(松山市)

今年もやります!!
奮ってご参加ください!



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編集後記


 今月号の特集は、第9回を迎えた「夏休み句集を作ろう!コンテスト」。
 第9回ということは、第1回コンテストに小学校1年生から参加した子どもが中学3年生となり、ちょうど卒業する。表彰式会場では、全9回応募した「同志達」らが、最後のコンテストということで記念撮影をしたり、後輩にエールを送ったりと、アットホームな雰囲気となった。
 今回のコンテストで最も印象に残ったのが、そんな中学生達の作品群。本特集を読んで、その俳句の実力に、舌を巻く大人達の姿を想像するだけで、愉快な気分だ。
 このコンテストがスタートした9年前は、自分の表現として、真剣に俳句に取り組み、40句の作品集を編む中学生は数えるほどしか応募してこなかった。というより、そんな中学生は、ほとんどいなかったと言って間違いないと思う。先生に言われて、無理矢理作ってきたような作品が多くを占めていた。
 今回の中学生の応募数は38作品と、決して多くはないが、どれも作者の血の通った作品だった。
 そんな作家が育ってゆくコンテストになってきたのだと、改めて実感する表彰式だった。
(キム)


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次号予告 (220号3月1日発行予定)


次回特集

第14回まる裏俳句甲子園!

過去最多の46チームが参加した、
当日の熱気をお伝えします!


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2016年2月号(No.219)
2016年2月1日発行
価格 617円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子