100年俳句計画7月号(no.212)


100年俳句計画7月号(no.212)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
忍び足 希望峰


特集
夏井いつき、「俳都松山大使」に就任!



好評連載


作品

百年百花
 美杉しげり/灯馬/都築まとむ/桜井教人


新100年への軌跡
 俳句/山下舞子/瀬越悠矢
 評/とりとり/桜井教人


選者三名による雑詠俳句計画
関悦史/阪西敦子/加根兼光


へたうま仙人/大塚迷路

自由律俳句計画/きむらけんじ



読み物
愛媛県美術館吟行会/恋衣
Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(翻訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
ホンヤクサイホンヤク/翻田訳蔵
お芝居観ませんか?/猫正宗
百年歳時記/夏井いつき
近代俳句史超入門/青木亮人
mhm通信/若狭昭宏

読者のページ
俳句ポスト365
一句一遊情報局
マラソン部 しまなみ報告
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




忍び足
希望峰

 七月が忍び足でやってくる。 忍び足というと、去年の七月のある日のイベントを思い出す。家の近所にある日本三大庭園、岡山後楽園。午前四時に集まり、蓮の花を見ようというイベントだ。早起きをして、自転車を飛ばす。少しだけ遅れてしまい、蓮の池には人だかりができていた。人の間から首を出し、蓮を覗く。既に少し開いている。気づかれずに咲こうとしている姿は、まさに忍び足。それを見ようとするのは人の欲深さか。同時上映の映像投影では、開き具合を「さら型」「お椀型」などと説明していた。朝のきらきらした空気が心地よかった。
 奇しくもこの日は昼からいつき組大阪句会。たっぷりと蓮を鑑賞したあと、新幹線の中で必死に頭を唸らせながら、蓮の句をひねる。しかし、結局一句もできず、絞り出した雑詠を投句した。
 今年の夏こそは、蓮の句を。もう七月は、すぐそこに。


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特集

夏井いつき、「俳都松山大使」に就任!


文 三瀬明子

 俳句集団「いつき組」組長夏井いつきに、別の肩書きがついた。毒舌先生、いや、それもあるが、正統派なやつ、そう「俳都松山大使」だ。

任命式
 去る平成27年5月14日@組長58歳の誕生日の翌日、俳都松山大使任命式が行われた。松山市は平成26年8月に「100年後の未来へ向かって俳句の風を絶やさず起こし続ける」とする「俳都松山宣言」を発表したが、この「俳都松山宣言」を全国発信するPR大使に、組長が任命されたのだ。
 野志克仁市長より、大使任命書と「風薫る俳句の種を蒔く仕事(組長自作の俳句)」と印字された名刺を手渡された組長は、「名刺に込めたとおり、俳句の種蒔きを通じ、俳句を愛する人、ことばの都として松山を愛してくれる人を増やしたい、今後の活動にわくわくしている。」と意気込みを語った。
 平成29年には、正岡子規・夏目漱石の生誕150周年と俳句甲子園第20回大会を迎える。松山市も、そして俳都松山大使も、ますます忙しくなりそうだ。

大使の初仕事
 5月20日〜21日、文化庁長官が松山市に来訪されることになった。なんと、松山市は、平成26年度文化庁長官表彰(文化芸術創造都市部門)受彰都市(全国で4カ所)に決定、その表彰のための文化庁長官来松である。この機に、文化庁長官に、松山の俳都としての魅力を紹介することが大使の初仕事となった。
 5月21日の舞台は松山東高等学校。第21代文化庁長官である青柳正規氏と大使は、まず校内にある句碑や、子規や秋山兄弟など多くの先人が学んだ明教館を視察。その後、森川大和・藤田敦子両先生率いる松山東高校俳句部による俳句甲子園デモンストレーションが行われた。長官も大使と共に審査員に加わり、生徒の俳句対決に旗を揚げた。俳句甲子園は、文化庁長官表彰の理由のひとつとなっており、長官はその丁々発止のやりとりや俳句の魅力を生で体験された。

今後の予定
 俳句や観光などで松山と関係の深い地域2カ所で、PRキャラバン企画を開催。大使による松山PRトークイベントと、各地の俳人4名による俳句対局が行われる。
1:7月4日(土)大阪 クレオ大阪西ホール 13時〜15時30分
2:7月12日(日)東京 台東区国立科学博物館日本館講堂 13時〜15時30分
 いずれも入場無料。
 また、10月31日(土)には、松山市立子規記念博物館に於いて、さらなる盛大なイベントを予定。俳都松山大使の任務は、まだまだ始まったばかりである。



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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2015年度 第一期 最終回


「上京」 美杉しげり

野良猫の尻大いなる麦の風
まほろばや風に弾みて朝の蜘蛛
卯の花くたし睡れば痛み忘れるよ
枇杷を剥く指太陽をこぼす指
炒飯の山父の日をかがやけり
すぐ傷むくちなしの花上京す
蛾の声を聞いたよ月の出ない夜に
雲迅し青水無月の檻に砂
剣より百合を怖れねばならぬ
夏蝶の影しんかんと鉄工所
風涼し住宅地図に故人の名
うねりつつ猫の背去れり誘蛾灯


1960年生。第8回俳句界賞受賞。4年ほど前から小説も書き始め、短編「瑠璃」で第21回やまなし文学賞佳作。美杉しげりはその時からのペンネーム。




「成風」 灯馬

水羊羹のための音楽かけ給へ
水羊羹よりも意気地のない男
仲直りなんて簡単葛ざくら
梔子は旅に立たせてやりませう
六月の風をあつめし選手団
論陣や手のひら白薔薇のやうに
工場のまちをうたへよ夏の鳥
夏服ノ女子ハ剛健風(フウ)ヲ成セ
品川のイルカをねむらせて半夏
隙あらば猫に攫はる夏料理
居合はせぬ人の噂やどぜう汁
公選法改正 缶ビールより溢るる泡


1970年生、福岡育ち。01年に松山へ。「ざくろ句会」にて俳句を始める。10年3月より猫と正式に同居。「はじめて句会」に(時々)参加。




「日土・夏」 都築まとむ

夏来る手のひらに肉刺育てつつ
ほととぎす来たぞ防除が始まるぞ
人死んで虫の孵化千みどりの夜
蝸牛ごろごろ鍬をまた止める
御先祖様ほたるぶくろは置きますよ
オオミズアオの碧(あお)は煽られやすき青
翡翠のくぐる門前橋錆びる
草すぐに腰丈まくなぎがまた来る
噴口をよぎる夏蝶のぐらり
蝉消えて老人ばかり残りけり
夕焼に解くや草刈刃のナット
終生や星をふやせる河鹿笛


1961年愛媛県生まれ。第3回大人のための句集を作ろうコンテスト最優秀賞。八幡浜市日土町で柑橘栽培をしながら季語にまみれて暮らす。




「涅槃」 桜井教人

ひとつの身ひとつの祈り花ぎぼし
涼風やかの鈴の音に再会し
金百円納め立夏の鐘をつく
薫風や馬頭観音ただ拝す
尺蠖のあとひと伸びぞ僧の襟
桐の花降る義経の弓流し
(前書き 志度寺)夏空へ石塔海女も母でした
大窪寺さまの牡丹のそりや見事
捨てに来ていただくばかり結願す
(前書き 高野山三句)青しぐれ安芸浅野家の墓巨大
新緑を来て新緑の御廟かな
来世らしき夏蝶拝し高野辞す


某寺にて馬頭観音様の御守りを買い、肌身離さず持っているが未だ霊験に肖れていない。信心が足りないからだと思い、もう一巡することを決意。




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新 100年の軌跡


2015年度 第一期
最終回


 二百円 山下舞子 

マスキングテープのばして夏期講座
白シャツの胸からマリオネット舞ふ
噴水や飼い主よりも女っぽい
赤ちゃんの首のガーゼや風青む
iPhoneに初夏の光の泳ぎこむ
天道虫てんとウイスキーボトル缶
おちてゐるゴミもふえたり小屋の夏
メンバーもうどんの上のきゅうりも変
五月雨や時代をつけるやうにうつ
生きた金魚が入ってた靴
リバイバル映画館らし虎が雨
扇風機フリマで買ふと二百円
とりにくの絵がもはや鶏夏座敷
三貫の薬味鮮やか初鰹
弓道の身体白黒麦の秋


山下舞子
1994年生まれ。愛媛県松山市出身。第13回・14回 俳句甲子園出場。関西俳句会「ふらここ」所属。




 キャンパス・ライフ 瀬越悠矢 

キャンパスに尽くるいのちや夏の月
バス停に浜の字多き旱梅雨
靴下の跡のでこぼこ夏木立
机上から机上へキャンパスの日傘
あぢさゐや中也の詩より名を受くる
文学てふ遊びはまじめ蓮の花
街騒にたゆたふ祇園囃子かな
ビール担ぐやキャンパスが我がものに
惑星の色にはじまる夏期講座
捨てられし自転車ならぶ炎暑かな
蟻の道キャンパスといふがらんだう
涼風や泥に傾くトラクター
帰省して祖母のラジオの鳴り通し
くちなはにくちなし我に外国語
キャンパスの不変を愛づや晩夏光


瀬越悠矢
1988年、兵庫県生まれ。大学院より句作をはじめる。関西俳句会「ふらここ」所属。




それぞれの夏期講座 とりとり

マスキングテープのばして夏期講座 山下舞子
 可愛いマスキングテープでノートを飾るのかな。今どきの女の子らしい「夏期講座」の捉え方でした。
メンバーもうどんの上のきゅうりも変 山下舞子
 変な句ですね。このナンセンスさがとても好きです。
扇風機フリマで買ふと二百円 山下舞子
 古い扇風機をフリマで品定め。夏の日差しも見えます。

 山下舞子さんの作品は、現代の等身大の自分を口語文と韻文取り混ぜて表現しているところが魅力ですが、表記は統一が必要かな。歴史的仮名遣いならば「女つぽい」「赤ちやん」「きうり」ではないでしょうか。

惑星の色にはじまる夏期講座 瀬越悠矢
 惑星のとりどりの深い色が、夏期講座に詩的な魅力を与えますね。涼しげな風も思われます。
帰省して祖母のラジオの鳴り通し 瀬越悠矢
 祖母はいつものようにラジオをつけっぱなし。聴覚で感じる故郷の懐かしさですね。

 瀬越悠矢さんの作品は、「キャンパス」の語が五回出てくるのはちょっと多すぎましたが、格調高く大学生活が描かれていて完成度も高く、好きな作品群でした。


とりとり
 1957年生まれ。三重県在住女性。第1回選評大賞優秀賞。



バス停 桜井教人

iPhoneに初夏の光の泳ぎこむ 山下舞子
 「iPhone」という固有名詞、「泳ぎこむ」という複合動詞の出会いが新鮮だった。季語「初夏」が上手く機能したのだろう。これから夏の物語が始まりそうだ。
噴水や飼い主よりも女っぽい 山下舞子
 噴水のある公園で小動物を散歩させているのだろうが、なぜか噴水に引っかかった。女っぽい噴水ってどんなのだろうなどと想像してしまう。読み手を引き込む楽しい句だ。
生きた金魚が入ってた靴 山下舞子
 またもや読み手に挑戦する句だ。リアリティーが強いにも関わらず、前後関係が読み切れない。ただ何故だか金魚の映像だけは鮮やかに感じられる。
バス停に浜の字多き旱梅雨 瀬越悠矢
 よくある型の句であるが、「バス停」に「浜」をもって来たところがとてもよい。俳句は読み手の記憶の抽斗を開ける鍵だと言われるが、この句を読むと誰もがそれぞれの懐かしい景を思い浮かべるだろう。ちなみに我が家の最寄りのバス停にも「浜」の字がついている。
惑星の色に始まる夏期講座 瀬越悠矢
 無駄な言葉が無く、その上語順が実に上手い。夏期講座である必然性も充分に理解できる。誰もがこの講座を受けたくなる力をもっている句である。この句を読んだ後きっと夜空を見上げるだろう。


桜井教人
 1958年生まれ。愛媛県今治市在住。俳都松山市の小学校に勤務。第3回選評大賞および第4回選評大賞入選。


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超初心者から中上級者まで楽しめる
100年投句計画

 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天地人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選、並選を選んでいます。今回の先選者は、阪西敦子さんと加根兼光さん。後選者は、関悦史さんです。

 「へたうま仙人」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は大塚迷路さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。
(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)
写真:藤


選者三名による雑詠俳句計画


先選者 阪西敦子

 四年ぶりのナイターは六時の試合開始早々に雨が降り出して、私が会社を出た頃には、中断した。一時間かけて到着した時に、幸いにも再開されたが、直後の三回裏にツーランホームランがあったのちは得点が入ることはなく、五回でコールドとなった。それでも九時は回っていて、球場から十分ほど歩いた八人ほどが座れるお店に入ったときには、すっかり冷えてしまった。案の定、翌日は七度の熱を出すことになった。ある日の一から十まで。


堀に竿やがて静かに柳の芽 松ぼっくり
 堀に竿が垂れて、人の姿はよくは見えないけれど、釣りをしているらしい。特に動きのない、そんな釣りであろう。その竿に促されるかのように柳の芽のざわめきも止んでゆく。同じ垂れるものであるけれど、張りの様、静まる早さ、風への順応の違いが楽しい。また風が吹けば柳の芽は揺れて、一方で、風もなく竿が水に引かれたりする。それぞれが勝手に揺れ出して静まり、時には揺れを同じくして、静まる。



啓蟄の手元狂ひしダーツかな みなと
 大地の生き物たちの動き出す啓蟄。地に生きる我々であってもその影響を受けずにはいまい。平らな床を踏みしめて的を狙うダーツには集中がキーとなる。何か小さなサインを受け止めてしまって、狂ってしまう手元。

初夏の診察室に三鬼の句 藍人
 診察室であれば「恐るべき君等の乳房夏来る」か、はたまた「算術の少年しのび泣けり夏」か。医師であった三鬼であるけれど、その句を診察室にかける医院は珍しい。置いてみれば三鬼のユーモアが思いのほか明るい。

昨日よりちょっと大きい初夏の窓 多満
 初夏のある期間、窓の外が日々存在を増して、窓の外へひきつけられる室内の人々。そんな風景を主観から倒錯的に描く。少しメルヘンにすぎるものいいかもしれないけれど、初夏にはそれが許されるような気がする。

黒猫の溶け込むピアノ夏始 しんじゆ
 たがいに黒く艶やかな黒猫とピアノ。夏の始まりには、光を受けてともにその艶を増してゆく。黒猫がひらりとピアノに飛び乗ってその身を伏せると、たがいの纏う光が混ざり合ってゆく。黒の明るさが夏の始まりを告げる。

新緑や影を踏み踏み美術館 未貫
 美術館の周りは緑が多い。その建築と調和した植栽が選ばれ、美術の空間へ誘う。新緑のさまはその歩みと交る影によって描かれる。「踏み踏み」に弾む気持も見える。



ヘアピンをにぎやかに留め祭人 和音
何もかも洗ってしまう五月晴 和音
香水のニッカポッカの漢かな 凡鑽
快晴の若葉の城を望みけり 喜多輝女
梅雨寒の犬眠らせる膝の上 南亭骨太
綿虫の飛ぶよ閉園アナウンス 大阪野旅人
習ひ事早引けしたる田植かな みさきまる
からたちの堀に竿差す水の音 松ぼっくり
解答欄空白のまま夏の雨 西条の針屋さん
対岸を遠回りして花ミモザ 青柘榴
姫女の上を渡つてゆく天使 遊人



先選者 加根兼光

 10日ばかりを病院で過ごした。肺癌の手術であるが人生の小休止ということでもある。多謝。ご報告はあくまで退院後にと決めていた。ご容赦を。ちょうど俳句甲子園地方大会と重なり、例年のように会場に行けないのが残念。そして今の所、存命率も意外と高いので七月からは普段通りに活動する。ただこの選句欄は今回にて終了させていただく予定。短い期間でしたがお付き合いいただきありがとうございます。また全国どこかの句会やイベントでお会いしましょう。


梅雨闇に取り残されて椅子となる 雨月
 今まで2人以上で居た湿った闇にポツンと残った人物と読む。楽しい会話や嬌声から離れると自身は物体化し座っている椅子そのものに成る。会話は雨へ嬌声は土砂降りへ。梅雨の闇の持つ不穏を椅子への変身に仮託することでまるでカフカの虫のような感覚を生んだ。しかしあくまで椅子なので動くこともない。静かに梅雨が閉じて行くのを待つ。
 或いはそれまでは椅子という自覚がなかった「椅子の人生?」に自覚が生まれたというシュールな読みも興味があるが。



ガラス戸のひよつこり明し夏の雨 蓼蟲
 「ひよつこり」が存外に良い。一見ひょうきんで居て偶発性と蓋然性を持つ。夏の雨と言えど空は曇り一瞬夏を失う。ガラス戸に想定外の明るさが戻る。夏を意識する瞬間そして再び失う瞬間。

ぜんまいやくるりくるりと山の音 一走人
 「ぜんまい」の形態からの一物に見せてその先に聴覚情報を滑り込ませる。手練れの技。ぜんまいの尖端へと視点移動して行くと森や鳥の声、風の音が湧き上がる。視覚→オノマトペ→聴覚と読者を誘う移動感も良い。

一着は風や五月の運動会 八十八五十八
 句またがりでの「や」切れで鮮やかなカットチェンジ。後半を読むと運動場で五月の風が真っ先にゴールを駆け抜けたことが分かる。季重なり?の疑念もあろうが「五月」としたことで風が見え、聞こえた。

ががんぼの翅のセロファンめく乾き 樫の木
 「セロファンめく」という比喩が如何にも乾いて不気味な大きさを言い得ている。「翅の」という映像の絞り込みと念押しも効いている。火をつければボッと燃え出すような生命体だ。

木苺のぷつぷつ笑いだす連鎖 不知火
 この句もオノマトペで繋がれた前半と後半の意味変化、景の変化で読ませる。木苺が歯に当たった音から思わず漏れ出す笑いと笑い。この先にある更なる爆笑も期待出来、楽しい句になった。

蝶の息剃刀色の夜が明ける ターナー島
 「剃刀色」は実際無いが言われると夜明けの一瞬はそんな色だと。昔の刃を取り換えるタイプの剃刀の濃いブルーのこと。それに対し季語が独特。「蝶の息」は密やかではあるが夜明けになら聞こえる生命感である。



対岸の闇より匂ふ針槐 もね
もの言わぬ金魚に見つめられている 小市
鎖骨より始まつてゐる梅雨の鬱 みちる
草の名が言えて薄暑の介護三 ほろよい
青あらし故郷の海は真珠抱く てん点
ヘアピンをにぎやかに留め祭人 和音
黒猫の溶け込むピアノ夏始 しんじゆ
内孫の五人でこぼこさくらんぼ 池田喜代持
百花王咲きて頭の重さふな ちろりん
姫女の上を渡つてゆく天使 遊人
綿虫や弱音ひと言母老いぬ 大阪野旅人



後選者 関悦史

 前回の続き。業者に見てもらったところ、ハクビシンには天井裏には侵入されていませんでした。しかし代わりに蛇の皮が出てきた。家の中も何がいるやらわかったものではない。知人に言ったら、「お金が貯まるのではないか」と言われましたが、あれは財布の中に入れておくべきものらしいのに、天井裏からブツが回収できていない。蛇の皮に引かれて、天井裏に勝手に現金が集まり、その重みで天井板が落ちた場合どうすればよいのか。

特選句

てんとう虫月面着陸の夢 一走人

 夢を見ている(あるいは抱いている)のは「てんとう虫」か語り手か、あるいは「てんとう虫」と「月面着陸の夢」は無関係に並んでいるのか判然としませんが、てんとう虫と月面探査機のイメージがダブる面白みあり。

段取りのうまき葬儀屋なめくぢり うに子

 葬儀屋は段取りをつけるのが商売なので、うまいのは当たり前なのですが、心がないとまでは言わないものの、その熟練自体にそこはかとなく違和感がある。「なめくぢり」が隠喩的ながらそれをうまく形にしています。

タッキーと呼ばれてみたき那智の滝 未貫

 一読、あまりのバカバカしさに思わず採ってしまった句。擬人法の句ではありますが、神聖さも荘厳さも手放してアイドル扱い(?)されたがる那智の滝というナンセンスさのおかげであまり気になりません。


並選句
甘味屋の軒に新茶の札ゆるる 杉本とらを
花火散り赤子の声も吸いこまる レモングラス
蛍火や胎のほとりの仮住まひ 凡鑽
明け易し旅支度する考の夢 迂叟
愚痴なんて野暮さみつ豆きらきらり 幸
六月を濡らし彩り行潦 真魚
葭簀ごしキリマンジャロの救護ヘリ ヤッチー
草笛を吹く唇の甦る ヤッチー
麦秋の海に浸かつてゐる夕陽 もね
ランニングポリスと犬と若葉風 雨月
鈴蘭の音無く揺るる朝かな 富士山
山里にかすかな期待幟立つ 樹朋
青葉木菟をる良ささうな死に場所に 森 青萄
国会の鉄扉の花や美智子の忌 小市
晩秋の日に凭れゐる巨船かな みなと
その昔怪獣博士風光る 藍人
芋虫の這いゆく先の揚羽蝶 多満
豆飯の仏間に招く日差しかな 南亭 骨太
娘から妻へ香水薄紫 みちる
新幹線満開の花目もくれず さくらがい
井手さらふ音すずろはし夢の中 蓼蟲
新聞で兜を折りし子供の日 喜多輝女
初夏へ取り出す皿のうすみどり のり茶づけ
二玉と呼ばれし街に初夏の風 かのん
夏雲を乱して鯉の鰭の金 ほろよい
ロゴシャツの玉葱畑闊歩する 小雪
布押して覗く観音風光る てん点
定年へ二年を切りて仰ぐ初夏 八十八五十八
新樹光老舗の蔵の格子窓 八木ふみ
夏めくや巨大錨のモニュメント ぴいす
園庭の遊具は休み五月雨るる おせろ
子ら薔薇の花弁降らせて聖母像 樫の木
自転車の先頭は妻四葩かな ゆりかもめ
車前草の花や一茶の道なかば 不知火
横顔が何処かかなしきバナナ売り 緑の手
鳥カフェなるものありと聞き青葉木菟 青蛙
宴会の締めにみつ豆古き味 青蛙
円陣の底より湧ける夏の声 越智空子
汗甘く匂ふ乙女のボランティア 越智空子
友四人友を見舞いて暑気払い あきさくら洋子
雨落ちて孑孑どものはしやぎだす ポメロ親父
自撮棒延ばす百本松の芯 しんじゆ
振り向けばベンチは無人未草 北伊作
足湯出て茅花流しや老二人 北伊作
明るさも暗さも楓若葉かな 池田喜代持
春障子開き孫等のサッカー戦 高木久美子
苧環の花に隠るヽ草の葉や 人日子
寝ころんで夏雲ひとつ空深し ちろりん
より道はいつもの所落とし文 エノコロちゃん
どくだみのねむることなき闇夜哉 まんぷく
夏の夜無垢なるサイン放つ星 アンリルカ
卯の花腐し畳んだままの車イス ミセスコナン
白寿翁耳打ち「カメノナキニケリ」 鯉城
行く春や継ぎ獅子の子の見栄を切る 哲白
囀と逢ふ鴉の鳴きたるは 遊人
ガーベラや油の匂ふディーゼル車 瀬戸 薫
ランドセル投げて遊ぶや麦の秋 瀬戸 薫
袖口をひっぱる夜や梅の雨 台所のキフジン
ポツポツと放棄田覆う蓮華草 青柘榴
金鳳花妻の毒には敵うまい 西条の針屋さん
千の薔薇千の香りの有りにけり カシオペア
夏草の撫づ弁慶の泣き所 ひでやん
パイナップル轟音を聞く基地の島 ひでやん
羽蟻群れ飛ぶやティンカーベルの群れ  みさきまる
ほとばしる山水の音雛納む ターナー島
稜線は夏に初期化をするらしい 春告草
バロックの光ヒビ入る復活祭 明日嘉




関悦史(せきえつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。

加根兼光(かねけんこう)
映像 俳句プロデューサー。1949年、大阪府堺市出身。関西大学法学部法律学科卒業後、CM制作会社に勤務。CMチーフプロデューサーとして30年以上に渡り、1000本以上のCM制作に携わる。50歳を過ぎて始めた俳句で2007年秋、第9回俳句界賞受賞。映像と俳句のコラボレーション、俳句の新しい展開を目指す。俳句集団いつき組組員。現代俳句協会会員。



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へたうま仙人


文 大塚迷路

 夏だ! 海だ! 山だ! バーベキューだ!! 煙といろいろな火の始末には十分気を付けて下され。
 今月も梅雨明け前の句から、長梅雨の句から、永遠に明けそうもない句から、豪華絢爛縦横無尽傍若無人飲み放題な句が集まったぞ。
 梅雨明けの太陽を想像しながら読み進んでくだされ。

ビンボーをこじらせヤセた菜種梅雨 柊つばき
 春先の草花の成長を促す菜種梅雨は、優しさの中にもかすかに残る冬の寒さを感じさせてくれるが、ビンボーをこじらせているとはなかなか大変ぢゃ。ビンボーに効く薬はやっぱり「お金」かのう? 何もお手伝い出来んが、どうも金は天下の回り者らしいので、親類間の回し者になる前に回ってくると思うぞ。荒梅雨にならんことを祈っとるぞ。

花畑極楽鳥花誇らしく 真帆
 「花畑」は秋の季語で「お花畑」が夏の季語らしい。まったくもって俳句は面倒くさいのう。極楽鳥花を初めて見たときは、あまりにも出来過ぎたネーミングに思わず大笑いしたが、そう言われれば実に誇らしげぢゃったぞ。周りの花とは別世界のようで、周りに馴染めないもどかしさも少し感じはしたがの。富士山の孤独のことも考えたぞ。

初鰹一尾一両江戸の粋 森子
 粋な生き方は本当に粋ですのう。初鰹の味が、女房を質に入れてまで食うほどの価値があるかどうかは千差万別ぢゃが、それが粋だったらしょうがおまへんなあ。「江戸の粋」で活気溢れる庶民の生活を彷彿とさせ、時空を超えて声まで聞こえてくるような気がしたぞ。

じっと海ばかり見ているアノ人と ケンケン
アノ人も見たのか美ら海そして夏 ケンケン
 甘酸っぱいアノ日を思い出したぞ。言葉はいらない、とじっと海ばかり見ていたが、結局は言葉は必要だったのう。夏を先送りして、まるで晩夏の挽歌のようで、不覚にもほろりとしてしまったわい。今年の南の海のご機嫌はいかがなものかのう。
 
花のころしらぬまにまに歳ひらう 老兵
花のふる渇きに雨の心地かな 老兵
 毎年、花のころに誕生日を迎えるられるとはお幸せですのう。桜たちは人間が過度に感情移入するのを横目に、毎年淡々と咲いているだけと思うのぢゃ。波乱万丈も淡々もどちらも愛おしいのう。桜が散るころの心の渇きに、雨心地はぴったりぢゃ。こうしてだんだんと渇きが潤ってくるのぢゃなあ。

弟や兄に夏山怒鉄拳 KIYOAKI FILM
眼の痒し鳴かされるまま梟や KIYOAKI FILM
 「弟や」で切れるのであればほどほどに味わい深いぞ。「兄に夏山」で物語が見えてきそうで、頂上にまだ雲がかかっている感じぢゃ。「怒鉄拳」は見なかったことにしよう。最近巷では梟がやたら人気らしいが、結構なことぢゃ。「梟カフェ」なるものを覗いてみたいもんぢゃが、昼間見世物にされている梟はドライアイに悩んではおらんか?という作者の優しさがうれしいのう。現代社会をのらりと突くこんな社会性俳句も捨てがたいぞ。

青葉風日本三大車窓より 元旦
夕凪や火星人をば釣り上げん 元旦
 「日本三大」がはたして何者なのか不明ぢゃが(日本三大がっかり名所?)、青葉風が吹き渡る場所ということはわかるぞ。窓全開で走る車の解放感と爽快感は、若葉ではなくて青葉ならではのもんぢゃ。重油を撒いたようなべた凪の夕暮れの海に潜んでいるのは、確かに火星人かもしれんのう。頭だけ出して火星を望郷中なのぢゃ。愉快愉快。

蕎麦を打つ男の額に夏来る 未々
 「額や」と切らずに「額に」としたことで場所が限定され、額のほんのりとした汗まで見えてきそうぢゃ。もちろん、汗が蕎麦に落ちるところまでついつい想像するのは愚の骨頂ぢゃ。初夏の空気感と、ほのかに立つ蕎麦の香りが絶妙に広がっていくぞ。

心までかくして夜のサングラス 誉茂子
 夜にサングラスとはオシャレなのか野暮人なのかよくわからんが、ワシは夜の部屋に投げられたサングラスを思ったぞ。昼間の仮のわたくしを投げ捨て、昼のわたくしを逆回しで思い出しながら夜のわたくしへとだんだんと変わっていく行程は、短編サスペンスを読んでいるようで、ぞくっときたぞ。

ふるさとを一望の寺夏立ちぬ 坊太郎
子規の句の五色が浜や夏に入る 坊太郎
 二句とも場所の簡単な説明をして季語でおさめる、という堅実な作りぢゃが、飾り気のない説明で、目の前の風景と幼い記憶の中の風景とが微妙にクロスして懐かしい感覚に陥ったぞ。生命が躍動する季節に向かう風景が広くて眩しいぞ。

すっきりと庭石の立つ春眠し だなえ
獣偏は添い寝の形春の月 だなえ
 「けものへん」は確かに添い寝の形ぢゃ。それも背中から守るような添い寝の形ぢゃ。よく気づかれた。一般的に獣偏は「犬」の形が変わったものと言われているみたいぢゃが、これからは「添い寝」の形だ、とも言われるかもしれんな。春の月が降り注ぐ淡い光の下に眠る万物の子供たちは、どんな寝顔をしているのかのう。

札所までだらだら道や花蜜柑 小木さん
毛虫あるくどつちがあたまかばればれ 小木さん
 カーブを曲がるたびに強まる潮の香と蜜柑の花の香。先を急ぎつつもだらだらと歩きたくなる小道が光溢れる絵画のようぢゃ。いやいや、どうしてどうして、バックしている毛虫かもしれんぞ。じっと見つめられているとは露知らず、素をさらけ出している毛虫のまわりのミクロとマクロとの対比が泣かせるのう。ぢゃがこんな自然賛歌な句は、白ヤギさんから黒ヤギさんへのお手紙と一緒に山のあなたへ追放!!

切つ先をわたくしに向け菖蒲の湯 ひでこ
弟と疎遠になりし草の笛 ひでこ
 仙人的には「菖蒲の湯」ではなく「菖蒲湯」で勝負してほしいと思っております。同じように「草の笛」ではなくて「草笛」でぐさっと鳴らしてほしいと思っております。
 それはさておき、挑戦的な菖蒲と対峙している作者の「なんのなんの」という対抗意識が伝わって来るぞ。湯船の中の両者の緊張感がたまらんのう。「弟」に何とはなくの屈折感を感じるぞ。久しぶりに取った草から出る音は、どんな思いを蘇えらせたのかのう。こんな人間賛歌な句は、犬のおまわりさんが困ってしまう前に子猫ちゃんのお家へ追放!!

 と、動揺を隠せず思わず追放者を出してしもうたが、なに、臆することは無い。へたうまのへたうまによるへたうまのための句を作っておれば、向かうところ敵僅かぢゃ。
 ぢゃが、くれぐれも油断召されるなよ。



へたうま仙人
 年齢 卑弥呼がおっぱいを飲んでいた頃、ワシは青春真っ只中ぢゃった。
 好きなもの 霞のシャーベット(PM2.5抜き)
 嫌いなもの 上手な俳句
 将来の夢 大器晩成


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ

 ついにと言うか、とうとうと言うか義母がワタクシの名前を騙ったオレオレ詐欺にあいかけた。このての詐欺話でいつも思うのは、どうして自分の息子や娘の声とか喋り方が、これは違うと分からないのかイマイチ納得いかないことだった。けれど義母のように同居したこともないし、まして実子でもないなら騙されても無理ないかもなあ、とも思う。幸い事なきを得たが、詐欺屋も実の親ではなく義母あたりに標的を替えてきているのは、なかなかの進歩かもしれない……とか感心している場合ではないな……年金情報125万件も流失してるし……。



試しにほたる袋に入れる 小木さん

 ほたる袋は釣鐘草のこと。6〜7月頃、梢上に枝を分け大型鐘状の白又は淡紫色の花を開く。この花に蛍を入れて遊んだことから螢袋とも呼ばれる、と辞書にはある。特に定型の俳人なら、こんなロマンチックな背景は、よくご存じなはずです。そこを逆手にとって句に仕立て上げるという絶妙のテクニックが光っています。「試しに」という全く無駄のない言葉ひとつが、蛍で遊ぶ背景をまとめて掬いあげてしまった。もしこの「ほたる袋」の意味合いを知らなかったとしても、それはそれで幻想的で不思議な味わいを醸し出しています。



蟻の来ぬ大人だけの家 和音
 一瞬ン?と考えさせられますが、蟻が来ないということは、甘いものが辺りにこぼれていないということは、たぶん子供がいない……という三段論法が面白味。しかし句意はそこではなく子供も家を出てなんだか寂しいだけの家になってしまった……そんな切なさが伝わってきます。

黄色い声と帽子で空が青い ほろよい
 わかりやすい、素直すぎると言えばそれまでですが、浮かび上がる風景が気持ちよいのがなにより。多分通学路を行く児童の黄色い帽子と声、空はあくまで晴れわたって……。無理にひねらなくても佳句はできる。

会ったこともない男出てくる夢の中 多満
 知ってる男がフツーに出てくるのでは、句にも詩にもならない。会ったこともない男がなぜか夢の中に突然現れるこの不思議さ……できればなにかひと言決定的なことを言えば、また別のインパクトが出てくるような気がします。

森の人が指の間から見てゐる 北伊作
 森の人とは誰なのか、彼が指の間から見ているものは何なのか、なぜ指の間からなのか……いちいち突き詰めれば破綻してしまいそうですが、この曖昧さの中にも句としての背骨はしっかりあると思います。指の間から見えるものは、壊れつつある文明かもしれない……。

麦の秋分母は大きなほうがいい うに子
 一面に広がる麦畑……大地の恵みを「分母」という言葉に凝縮させて、人と自然との大きな関係を上手に表現していると思う。しかしほぼ有季定型。たとえば「麦秋と言ふ分母大きなほうがいい」なら俳味は薄れますが意図ははっきりします……。
(自由律を創るということは、定型とは違う力を持たせることでもあります)



行ったきりだぜ疑惑の初蝶 森 青萄
しょうぶ湯の貼り紙ひらひらする銭湯 喜多輝女
明日来ると言いに来るカウンター のり茶づけ
ピース二箱と決め黄金週間 緑の手
家族の数だけあるシャンプー うに子
つきまとふ小蠅を処刑するガラス窓 しんじゆ
碁に負て葉まで喰ふ桜餅 人日子
紫陽花やあの人の胸に触れましたわざとじゃないんですごめんなさい エノコロちゃん
掴んでは捨てる荒海 台所のキフジン
野良で生きると決めた孕み猫 青柘榴


並選
葉桜や朝から渋滞したる談合坂 杉本とらを
家事の途中で散りたるをちこちの ケンケン
咽喉荒れて 兄に 投げ たる 檸檬 KIYOAKI FILM
会議の誘いいつも飲み会 レモングラス
糖尿の考を連れて甘味処へ 凡鑚
きらきらと街角の風光る 迂叟
はり倒す病 幸
最期までしっかり優しい母でした 誉茂子
涼風に吹かれみる夢は海 真魚
マロニエの花似顔絵少しも似て居らず ヤッチー
引っくり返せば赤腹である もね
主婦でもできる猿でもできる料理 雨月
雨粒のつくっていく標的 小市
地の底から蛙鳴 藍人
悪夢の溶け込んだ寝汗 南亭骨太
鴉カチリと眼を取り換え みちる
風になった人星になった人数多 一走人
形見のカメラのレンズの黴 樫の木
香水に喉からからに乾く ゆりかもめ
子燕の事言い弁当箱をだす 不知火
寝よっちゃいかんやろ春眠 あきさくら洋子
もう白鳥の雛鳥を観ましたか ポメロ親父
夕凪の沖に潜水艦 元旦
カスタネットたたくように夜のアマガエル ちろりん
間違えた!五月一日鯖缶を買う まんぷく
六月の花嫁となる覚悟 ミセスコナン
飼ひし亀一匹鳴いて一匹死す 鯉城
夜の静寂破る台風 カシオペア
大福に跨る苺の誇り 松ぼっくり



きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「青穂」同人。句集『圧倒的自由律 地平線まで三日半』(象の森書房)、写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。



【100年投句計画】投句方法
 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可)、俳号(なければ本名の名前のみ)、本名、電話番号、住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。
ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙人」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、7月20日(月)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがきFAXでも投句できます。


さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(俳句ポスト365のページ参照)


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美術館吟行8
愛媛県美術館「金澤翔子展」吟行会


文 恋衣


 梅雨晴れの朝、愛媛県美術館に猫正宗、雛鶴、ひかる、瑞木、toku229、チャンヒ、恋衣の7名が集まった。今回は、美術館吟行会、初めての書展。書家一人による『金澤翔子書展』だ。
 初めて美術館吟行に参加の雛鶴さんは、書を習っていたそうで昨夜は、遠足前の子どものように眠れなかったらしい。
 ロビーにある、二双の書に迎えられ会場へ。
 まずは、「一」の字。

はじまりの一は大きく太く夏 チャンヒ

 作品解説によると『「一」を知らずして他の字を書くべからず。「一」で始まり「一」で終わる。書を志す者は「一」をどれだけ書いたかが問われる』と。筆を紙におくまでの息づかいが聞こえて来るようだ。
 五歳より母に支持し書を始めた翔子さんは、
この字にたどり着くまでに、何回書いたのだ
ろうか。三十歳の世界の扉が開く。

1:なぜ どうして〜ダウン症の娘 翔子・二十一番目は愛だった

 摩訶般若で始まる般若心経は十歳の作品。
 涙の痕があるという作品の、「一」の字に、とりわけ釘付けになる。どうやら書とは、苦しみと喜びを孕んでいるらしい。

無心の一文字突き立てて大暑 ひかる

 そして、書は、こんなことも。同じ字でも書体が違えばこんなにも違う「龍」。
 六龍は、「易経」にある言葉。人が一生の内に何度も繰り返す成功や失敗、栄枯盛衰を龍の成長になぞらえた六段階を表す。
 潜龍 実力が備わってない龍。
 見龍 まだまだ学ぶ時代の龍。
 乾龍 試行錯誤している龍。
 躍龍 まさに飛躍せんとする龍。
 飛龍 自在に大空を飛ぶ龍。
 亢龍 もう一度潜龍に戻る龍。
 身体で覚えた龍という字が動く。止まる。

六龍を心に留めて夏真昼 toku229
雲を呑み雲を吐きだし龍泳ぐ 恋衣

「夢」「子」「笑」等の一字。

字が笑う夏服のみんなも笑う toku229

書とともに展示されている筆、大筆、落款。

小さな落款大きな落款かなぶんぶん 瑞木

ああ、恋ってこんな字だったんだ。

淡き戀薔薇色のほほで書く乙女 雛鶴
白服やむかしの戀の難しく 瑞木

夥しく聖書を書き写し、「聖書を書き写すと神が降りてくる」と言った女流書家。

号は小蘭結んだ髪に風薫る  瑞木

 「獨リ想フ」「魔法図書館」「円の中に無」。

秘密だが全ての月は無を胎む 猫正宗

 活字では、こんなに伝わらない書の力。書家の懇懇とみなぎりゆく力。「楽」の字の不思議。

2:いつもどこかで〜二十歳の飛翔

 十年後の般若心経は、凛々しい。「一」の字もはらいも。翔子という字も。
 
迷ひなく大筆一気雲の峰 ひかる
脈打ちて拗れ肉へと書の風雷 猫正宗

 全紙二曲屏風一双楷書の「飛翔」をはじめ、天が揺れ動きそうな「天馬行空」、鳳来も麒麟も天に「鳳来麟現」。書と言えば憧れの「蘭亭序」。

白黒の滝より出てる飛翔龍  雛鶴
筆先の震えに擦れ月涼し チャンヒ

 筆の擦れの極まる世界。お気に入りの屏風の前にとどまる人が増えてくる。

3:どこへ どこまでも〜三十歳、新たなる世界へ

 六月十二日、愛媛県美術館書展中の誕生日。愛媛県今治市の第五十八番札所、仙遊寺にて製作の縦4メートル、幅16メートルの般若心経。書き上がった作品の上で微笑む小蘭の写真。

 仙遊寺般若心経雲の峰 toku229
 言葉から生まれた幸せも虹も チャンヒ

 「共に生きる」は書き続けていく祈りの作品。

父の日は共に生きる意味問うと決め  雛鶴
炎帝を生きるは共に生きること 恋衣
「共に生きる」墨書銀河まで飛翔 ひかる

 字に宿る言霊は、書家によって燃えあがる。

一の目や賽は久遠の海霧の中 恋衣
夏木立世界と対峙するために 猫正宗

 会場を出て偶然にも翔子さんと会えた。
 握手した新たなる世界を開く手は、マシュマロのように柔らかだった。


恋衣
俳句を、短歌を読むことを、絵画を見る事を、音楽を聴く事をこよなく愛する俳人。美術館吟行も愛します。



「金澤翔子展吟行会」展は7月20日(月/祝)まで開催中。

取材協力:「金澤翔子書展」実行委員会(愛媛県、あいテレビ)、愛媛県美術館


次回美術館吟行会
いずれも『100年俳句計画』編集室までお申し込み下さい。(TEL 089-906-0694)

白川義員写真展『永遠の日本』
日時: 7月25日10時〜
場所:愛媛県美術館
参加無料(入館料は別途)
申込締切:7月24日

http://www.iyokannet.jp/



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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.24


Soft rain in summer
We offer our face to
Sweet-smelling llamas

香しきラマに寄りたる夏の雨


(直訳)
柔らかな夏の雨
我々は首を垂れる
香しきラマの前に



We have travelled easily through New England, visiting friends and enjoying family. The woods in Vermont remind us of our home in Japan.

僕らは気楽な旅をした。
ニューイングランドを走り抜け、友達を訪ね、家族と過ごした。
ヴァ―モントの森は、日本にある僕らの家を思い出させる。(訳:朗善)



ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第52話
「 モ’ ベター ブルース」 ブランフォード マルサリス


ジャズメンみな?のカタチ夏の宵 時計子

 本誌句会カレンダーへのJAZZ句会掲載は朗報だったが、早めのテーマ設定が必要となる。で、僕は市内三番町の居酒屋「古書ほやけん洞」に向かった。
 テーマ設定は難航した。名盤と言われるジャズのアルバムは山ほどある。しかし今回は、第2弾JAZZ句集企画の思惑もあってサックス系で可能な限りビッグネームという条件を付けた。途端に店主は思考モードに陥った。この難題を抱えてしまったのは暮井戸さん。『最高人気句を詠んだ者が次々回のテーマを決する』権利を時計子(奥)様に譲渡されてのことである。

緑夜なりサックス神韻縹渺と 暮井戸

 暮井戸さんが最初に挙げたのは欧州で男優もやる某サックス・プレイヤーだった。少なくとも我が国ではビッグじゃない。即ダメ出しと思ったが、そこは人一倍自分の発言に責任を持つタイプの彼のこと、慎重に対応した。で、暫時歓談後「この人(某サックス奏者)だと前回の猫さんの二の舞かも!?」発言。これが効いた。「それは不味い」と暮井戸さん。その顔には明らかに危機感が漂っていた。勿論、彼は本誌5月号(通巻210号)の当コーナー冒頭に詳しく記したJAZZ句会、その現場に居たのだ。

ハーレムの蒼き夜明けに星ふたつ 夜市

 「 モ’ ベター ブルース」は1990年に公開されたドラマ映画である。脚本 監督はスパイク リー。彼もジャイアント役で出演している。大物サックス奏者のブランフォード マルサリスが自らのカルテットを率い、新鋭のトランペッター、テレンス ブランチャードをフィーチャーし、音楽を担当するこの映画の話題は、生ビールが日本酒に換わる店のカウンター越しにふと浮上した。「ブランフォードいいね」と暮井戸さん。「じゃあ、サブテーマは『ロイヤル ガーデン ブルース』でどう!?」「任せます」「決定やね」
 一番人気句、夜市さんのハーレムのふたつの星は、主役のデンゼル ワシントンとスパイク リーのことか、はたまたジャズの名門マルサリス一家の天才兄弟、ブランフォードとウィントンのことか!?

七月の闇よりジャズは原色へ チャンヒ

 二つのアルバム ジャケットは青、紫、ピンク、黄、緑と鮮やかなのでジャケ句と言えなくもないだろうが、この不思議な世界観は何だろう。選んだ4人が全員特選で、しかも大のジャズ好きばかり。その辺りにヒントがありそうだ。チャンヒさんも相当のジャズ者である。

ブルースに陸橋叩く夏の果て 俊坊

 サミー デイヴィス Jr.のような大物ミュージシャンじゃなく、無名のジャズマンらしきが被写体のこんなシーンを映画の予告編かCMか何かで観たような気がする。そんな人気句を俊坊さんが東京から送ってくれた。



http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の毎月第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。

次回のJAZZ句会は、7月26日(日)13時より。テーマは、ポール・チェンバースの「ベース オン トップ」です。句会への参加を希望の方は、本誌44ページの句会カレンダーを参照してください。


このコーナーで紹介した俳句とエッセイ、堤宏文さんの写真とを組み合わせた『JAZZ HAIKU vol.1』(マルコボ.コム)を発売中。


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ラクゴキゴ


第52話
『酒、いろいろ』〜 寄席には欠かせない〜


 今回は特に「この噺」というわけではなく、酒にまつわる噺いろいろ。

【親子酒】
 たがいに禁酒を誓った父と息子。ある日おやじがどうしても呑みたくなり、息子が居ない夜に何やかやと理由をつけて一杯やりだす。そのうち酔っぱらってしまいベロベロ。息子の方も約束を破り、世話になっている人と呑みたおして帰ってくる。
父「せがれのやつ、酒の毒が回り、頭が三つも四つもある。そんな化け物にうちの家は譲れんぞ!」
息子「要らんわい! こんなグルグル回る家。」

【替わり目】
 また今宵も酔っ払って帰ってくる亭主。「早く寝なさい」と妻に言われてもなかなか寝ようとせず、まだ呑みたがる。アテが無いというので妻におでんを買いにやらせる。
 そこへうどんやが通りかかり、うどんも買わずに酒の燗だけをさせてグダグダ話ばかりする。
 うどんやはたまらずその場を去るが、別の家で「おい、うどんや。あの家でお前のこと呼んでるで。」
「あの家はもう行けまへん。今行ったらちょうど銚子の替わり目でございます。」

【酒の小噺1】
 酔った男。
「すみません、ちょっと見てくれますか、私の頭にこぶがいくつあります?」
「あー、三つありますね。」
「ああそうですが、よかった。あと電柱二本で家に帰れますわ。」

【酒の小噺2】
 医者から注意を受ける男。
「あんた相当数値が悪い。いかんなあ、酒が悪いです。」
「え、悪いのは酒ですが?」
「そうじゃ、酒が悪い。」
「ああ、よかった。悪いのはオレじゃなかった。」



 寄席へ出かけると、必ずといっていいほど誰かは酒の噺を出します。我々酒呑みは本当に情けない人種で、噺家が演技で呑んでいるのに刺激され、つい「どう? 帰りに焼鳥で一杯」とこうなります。
 古典落語だとビールはまず出てきません(当たり前か)。
 出てくるのはもちろん日本酒。それも燗にするか冷やで呑むか、このどちらか。
 ま、たまに「青葉」という噺のように“柳蔭”という、みりんのような甘い酒を井戸で冷たくひやして呑む涼しげなシーンはありますが、当時は普通の日本酒を冷やして呑むということはしてなかったようです。
 現代は日本酒も品質管理うんぬんで冷蔵庫でキンキンに冷やして提供される機会が多くなりました。
 そのため居酒屋で「冷や」が通じなくなっています。なんと嘆かわしいことか!
 みなさん、今晩居酒屋へ行って「お酒、冷やで」と注文してごらんなさい。10店中、8、9店で冷たくひやした酒が出てくるはずです。
 冷や=常温ということが通じなくなってきているのです。
 燗も結構、冷たいのもまた良し……ですが、以前から日本で常に呑まれていた“冷や”文化の灯を消してはなりません(そんな大層なことか? いや、大事なことですよ)。

 冷やし酒子規の俳号冠しをり


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ホンヤクサイホンヤク


翻田 訳蔵

 俳句初心者、翻田訳蔵がネット上の翻訳ソフトを使って名句を翻訳、再翻訳し、そこからインスパイアされた(パクッた)句を発表していこうという馬鹿馬鹿しくも実験的で図々しいコラムです。


今回の俳句
 夏草の上に砂利しく野道かな 正岡子規



 さっそくGoogle翻訳(英→日)から

I wonder if gravel properly Nomichi on the summer grass

 再翻訳

砂利が正しく夏草にNomichiているのだろうか

 「Nomichiている」とはどういう状態なんでしょうか?

 続いて、エキサイト翻訳(英→日)

Is a pebble the field path laid out on the summer grass?

 再翻訳

小石は、夏の草においてレイアウトされたフィールドパスであるか?

 科目は何かわかりませんが、入試問題のようですね。

 最後に、Yahoo!翻訳(英→日)

Is gravel a field path to spread on the grass in the summer?

 では、再翻訳

砂利は、夏に草に広げるフィールド経路ですか?

 梅雨が明けると庭には雑草が生え、炎天下の中、草むしりの作業をしなくてはなりませんよね。先日ホームセンターへ行くと、庭に敷くことで雑草の種が土に触れにくくなり、防草の効果があるという砂利が売っていました。リサイクルガラスを高温で溶解し、発泡させた軽石状の環境にやさしい砂利だそうです。踏むと石同士が擦れ合って「ジャリジャリ」と大きな音が出るので、手軽に防犯対策にもなります。1袋60リットルなので、約1.5平方メートルに敷詰めることができます。

 それでは、この3つを受けて一句。


夏草の上に五袋砂利をしく 翻田訳蔵


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お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第33回 『十二人の怒れる男たち』『人間そっくり』
 5月の市民劇場の芝居『十二人の怒れる男たち』(俳優座劇場プロデュース、作:レジナルド ローズ、演出:西川信廣、出演:原康義、他、'15年5月8日、9日、高知県民文化ホール オレンジ)は、松山ではお休みだったので、高知の市民劇場まで観に行きました
 かのヘンリー フォンダ主演の映画でご存知の方も多いでしょう。陪審員のだれもが有罪と認める容疑者に対し、ただ一人の陪審員が有罪ではないのかもしれないと主張し始める。その声が裁判のみならず様々な問題点をあぶりだしていく。声ある少数者になることが、ますます難しくなっているように感じる昨今、本作の持つテーマは、残念ながらいまだに有効といえるでしょう。一方、正義の傲慢さ、残酷さのようなものも感じてしまったのです。正しくあるということがどういうことか、その難しさも考えさせられました。

我一人正しき人か油照

 一方、内容も手法も対照的なのが、京都の劇団このしたやみと三重の劇団Hi!PositionのユニットによるこのしたPosition!!による『人間そっくり』(構成:油田晃、演出:山口浩章、出演:二口大学、他、'15年4月24日、25日、シアターねこ)。しっかりとしたセットと衣装で、きっちり演技をしている『十二人〜』に対し、『人間そっくり』は、簡素なセットにシンプルな衣装、ミニマルな演技を交えながら、巻物の形にした、安部公房の不条理小説を基にした脚本を読んでいくというリーディング公演。内容も前者が、ある意味揺らがぬ人が主役だったのに対し、人として揺るがぬどころか人間としてのアイデンティティさえ揺るがされてしまう男を描いた作品でした。「木下闇抜け人間の闇の中」(平井照敏)という句がありますが、本作も舞台を通して、観ている者の存在を揺さぶり不安を掻き立てるような作品。リーディングという手法も、作品のそんな力をよりストレートに伝えるためということもあったようです。

故郷の星をなくして木下闇

 本作の公演は、今年で3年目。あなたが自己の存在に疑問や不安を感じるような(あるいは感じたい)人であったなら、いつかどこかで本作と出会うことがあるかもしれません。



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。


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百年歳時記


第26回 夏井いつき

 有名俳人の一句を紹介鑑賞するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月ご紹介していきます。


高菜畑月こわごわとなめてゆく 花屋
 放っておくと手の施しようがないほどの大きさとなる「高菜」。それがひしめき合うように育っている畑の横を通る時、雲のあいだから急に「月」が顔を出したのでしょうか。雲を動かした風は「高菜畑」をぐらりと揺らします。「高菜」の大きな葉の一つ一つに、月光がざわりと揺れます。帰途を急ぐ足が思わず速まる一瞬です。
 「こわごわと」は「月」への感情移入であり、一句の世界の手触りでもあるのでしょう。ピリリと苦い「高菜」だから「月」も「こわごわと」舐めていったに違いないよという発想には、怖ろしさとユーモアが入り混じります。季重なりではありますが、主役の季語たる「高菜」が、夏の夜の少し腥い風も感じさせてくれます。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』6月12日掲載分)

したたるしたたる樹海に鳥の声ゆがむ Y音絵
 夏の季語「滴り」は「下垂る」が原義で【崖の岩肌を伝ったり、苔などにしみ込んだ水が雫となって真下にぽたぽたと落ちる清水】を意味します。雨の雫や鍾乳洞の水滴は「滴り」とは呼びません。
 上五「したたるしたたる」の後に出現する「樹海」の一語は、青木ヶ原の樹海を思わせます。深々と水をふくんだ苔からおちる清水の一滴。見上げれば「樹海」という名の天幕が頭上を覆います。「したたるしたたる」滴りのひかり、「樹海」のひんやりとした空気の匂い、いきなり響きわたる「鳥の声」、その声を「ゆがむ」と聞き止める感知。五感全てで感じ取った「滴り」という季語の現場に、読者である私たちを一瞬にしてワープさせる力を持つ作品です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』5月29日掲載分)

嘴に米搗蟹を食った砂 鯛飯
 「米搗蟹」とは【鋏を上下に動かし砂を口に入れ、有機物を食べたあとの残りを砂の団子にする】小さな蟹です。鋏を動かす様子が米を搗く動作に似ていることで、この名が付いたのだそうです。
 この句の面白さは、「米搗蟹」を季語として据えているのに、肝心の蟹の姿は無い点です。眼前には「嘴」に「砂」をつけた鳥がいるだけなのですが、それはさっき「米搗蟹を食った」時についた「砂」に違いないと、作者には分かっているのです。干潟には沢山の「米搗蟹」がいて砂団子がコロコロ転がっているのでしょう。禍々しく尖った「嘴」に「米搗蟹」が食われていくさまを、時間を巻き戻して見せられているかのような、手練れの一句であります。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』6月9日放送分)

三代の境界争い梅雨菌 プリマスロック句会・妙
七不思議の二つは理科室梅雨菌 ねこ端石
 前句、「三代」かかってまだ「境界争い」に決着がついてない家と家との間の境界のところに、びっしりと生えている「梅雨菌」……なんて、ありそうな話ですねえ、ジメジメとした人間関係のめんどくささを季語「梅雨菌」が皮肉っているようにも読める作品です。
 後句、2階の東の端のトイレにはお化けがでる!とか……そういう噂が子どもたちの間でまことしやかに取り沙汰されているんだけれども、学校のその「七不思議」のうちの「二つ」は「理科室」にあるのだという愉快。骸骨が笑うとか夜になったら動くとかそんな他愛ない噂なのでしょう。ひょっとすると「梅雨菌」という季語は、ヒタヒタと広がる噂を吸って太っていくのかもしれませんなあ。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』6月19日放送分)

六月の狂ったように咲く密度 藤紫ゆふ
 「六月」というとすぐに思い出すのが正岡子規の句「六月を綺麗な風の吹くことよ」ですが、その一方でジメジメした鬱々たる季節のイメージもあり、一筋縄ではいかないのが季語「六月」です。
 「六月の狂ったように」までは抽象的なイメージしか伝えてないのですが、下五「咲く」によって前半の措辞が花の形容であることが分かり、最後の一語「密度」によって怖ろしいほどびっしりと咲き集う花の映像が噴き出てきます。「狂う」「密度」などの言葉で映像を描いてみせるという一種の荒技に驚かされた作品でもあります。「六月」に咲く花には白が多いという事実を思えば、狂気という言葉には「白」が似合うのだなあと、改めて感じ入る次第です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』6月19日掲載分)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


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会話形式でわかる
近代俳句史超入門


第13回
文 構成 青木亮人

 大学で俳句を研究する青木先生と、その教え子で俳句甲子園の出場経験もある大学生の俳子さんが雑談を交えながらの近代俳句史超入門。

虚無感に近い仕事への決意

 二人は大学の教室で高浜虚子について論じあっています。

恋愛と結婚?

俳子(以下俳) 先生、分かりました。
青木先生(以下青) ??
俳 虚子さんの人生ですよ。この前、仰っていましたよね。「虚子は小説を選びたかったのに俳句に選ばれた人生を歩むことになった」と。その感触が分かった気がしたんです。「恋愛と結婚は違う」、ということですよね?
青 あー、なるほど。虚子自身は小説と恋に落ちたんですがうまく行かず、結局は現実的な判断で俳句と結婚し、粛々と過ごした……ということでしょうか。
俳 そうです。最近、これからの身の振り方を考えることが多いんです。「俳人になる!」とか夢を見ずに、一部上場企業の堅気の男と結婚して平凡ながらも安定した人生を歩むのが確実じゃないかと。趣味は趣味、人生は人生。俳句にいくら生涯を賭けても食べていくのは難しい。俳句は趣味と割り切り、老後まで安定した暮らしをするには定職に就く男性と結婚するのが一番じゃなくて? ホホ。
青 「堅気の男」とは大仰な。えーと、愛する男性と人生を共に歩む、という選択肢はないんですか?
俳 それも大切ですが、大事なのは「定職持ちの堅気」。旦那さんにガッツリ働いてもらって、その間に私はガンガン句作しなきゃ。ママ友とランチに行ったり、公園に散歩に行ったり、週末やお盆休みには旅行しまくって句材を得るのよ!
青 俳人、全然諦めてないじゃないですか。怖い。

虚子の諦め

俳 でも、虚子さんもそんな感じだったんですよね。
青 だいぶ違いますが、言わんとすることは分かります。そこで今回は、虚子の人生観を示す逸話を紹介しましょう。彼の作品に通じるそっけなさというか、一見淡々とした作風に通じるものです。
俳 いい男を捕まえたいので、ぜひ虚子さんの話をお願いします!
青 いや、全然参考になりませんよ。大正時代に発表した「落葉降る下にて」(解説1)という自伝小説風エッセイから始めましょう。ある時、虚子さんは溜まった仕事を片付けようと温泉地に赴き、黙々と仕事をしつつ昔のあれこれを思い出します。
俳 温泉で仕事……かっこいい。いかにも文学者という感じです。わくわく。
青 一見優雅ですが、虚子はこんな風に述懐します。「今になつて見るとあの当時若い心を躍らした程のものでは無く、元来事業其ものが平々凡々たる詰らない事業であつたことが判るのである」。
俳 ……いやに地味ね。
青 もちろん、「事業」とは「ホトトギス」の仕事です。この後、虚子は温泉の雰囲気やそこで出会った人のことなどを書くのですが、次第に近親の死について筆を進めます。彼は若くして父を亡くした時、医者を強烈に憎んだそうです。「理屈では人は死ぬるものだといふ事位百も承知してゐたのであるが、感情上どうしても自分の父が死ぬるものだとは考へられなかつた」。
俳 虚子さんの気持ちも分かる気がしますが、お医者さんがかわいそう。
青 ええ。虚子は自分の理不尽を承知の上で、それでも感情を抑えられなかったとか。次に母が長い病気の末に亡くなった際には諦めもつき、子規さんも含む多くの親しい者が亡くなるたびに「自分の骨肉の死も世間の人の死と同様拒むことが出来ぬものと観念した」のですが、今度は自分の子どもが肺炎になった時、「どうしても自分の子は死ぬるものではない」と再び信じたらしい。
俳 でも、やっぱりお子さんも……?
青 虚子は不眠不休で看病し、「医師は私の気違ひ染みたのに少しあきれてゐた」ほどに介抱を続けると、子どもは治ってしまった。次の子どもも肺炎になったのですが見事復活。虚子さんは「矢張り自分の子どもは死ぬるものではない」と強烈な自信を抱きました。
俳 ふぅ、良かった。話の成り行き上、お子さんたちも次々と……とヒヤヒヤしました。気分は火曜サスペンス劇場ですよ。
青 ところが、六番目の女の子が肺炎であっさり亡くなります。
俳 ガーン……ひどい、予告して下さいよ。不意打ちじゃないですか。
青 すいません。虚子は心底打ちのめされたらしく、もはやこの世には善も悪もない、「唯ありの儘をありの儘として考へるより外は無い」と諦め、次のように述懐します。「子供が死んでからもう一年半にもなる。(略)事業は其一年半の間にいくらか歩を進めた。一向栄えない仕事も此一年半の間には比較的成功をした。が、たとひ幾ら成功しようともいくら繁昌しようとも、私は一人の子供の死によつて初めて亡び行く自分の姿を鏡の裏に認めたことはどうすることも出来ない。栄えるのも結構である。亡びるのも結構である。私は唯ありの儘の自分の姿をぢつと眺めてゐる」。
俳 虚子さん、かわいそう……ヘンな言い方ですけど、諦めというより、冷静に自棄になった感じ? 心の大事な部分が堅く干上がっちゃったような。
青 そうかもしれない。「落葉降る下にて」は、風呂上がりの散歩でたまたま火葬場に立ち寄ったところ、自分と同じように幼子を亡くした者が火葬しようとするところに出会ったりなどして、次のように結ばれます。「眼の前の山川は其上に芸者屋やおもちや屋や水車小屋や萱原の家や、あの湯壺の中に居た男や、拘引された男や、火葬場や、其火葬場にゐた男や、赤つ茶けた櫟林や、(略)其等のものを静かに載せて、凡て時の移り行くのに任してをる。『何が善か何が悪か』。山川が静かにありの儘を其掌の上に載せて居れば、時は唯静かに其等のものの亡び行く姿を見せるのみである。其処に善も無ければ悪も無い。私はたゆまうとする心を振ひ起こして鞄の中の用事を片づけるより外に道はなかつた」。

虚子の「写生」

俳 ああ! 分かったァァァァ! ウリィィィ!
青 こ、声がでかい、突然大声出さないで下さい! み、耳がァァァァ
俳 あ、先生もご存知なんですね。「ジョジョの奇妙な冒険」風にカタカナで叫んでみたのよ。
青 う、身体がとっさに反応してしまった……と、そんなことはいいんです。何が分かったんですか?
俳 以前、虚子さんの句をたくさん紹介して下さいましたよね(連載第八回)。「大寒の埃のごとく人死ぬる」「一を知つて二を知らぬなり卒業す」「手鞠唄かなしきことをうつくしく」、そして「流れゆく大根の葉の早さかな」。自然には善も悪もなく、人や動物や草木はその自然の中でただ生まれたり死んだりするだけで、私たちの喜びや哀しみもいつかは消えゆく。虚子さんの「写生」は、「其等のものの亡び行く」「ありの儘」をただじっと眺めて、無言で指差す…といった姿勢だったのではないでしょうか。
青 おぉ……まるで天性の詩人みたいにカッコイイ。まさにその通りです! 
俳 「みたいに」が気になりますけど、何だか虚子さんの「写生」が分かった気がします。
青 虚子の人生観と俳句上の「写生」は、通底しているように感じます。次も他の逸話で彼の「写生」を考えてみましょう。
(続く)


青木亮人(あおき まこと) 1974年、北海道生まれ。現在、愛媛大学准教授。著書に『その眼、俳人につき』(邑書林)など。



解説


解説1
「落葉降る下にて」 「中央公論」大正五年一月号発表。「ホトトギス」に「進むべき俳句の道」を連載中の頃で、「事業」に打ちこむ決意を支えるものは宿命の中でただ生き続けることだ、という虚無感に近い信念を垣間見せたエッセイ。
本文に戻る 解説1



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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第52回 文 若狭昭宏

1 挨拶
新緑の風持ち換える羊飼い 若狭昭宏
 この度、高須賀あねごさんのご勇退によりmhmの会長に就任しました若狭です。広島県立安芸南高校から第6回俳句甲子園に出場、現在は俳句甲子園実行委員会にも所属しています。中四国の俳句活動をより活性化させるために昨年度岡山県から移住してきました。「俳都松山」から俳句の楽しさや新しい試みを多く発信できるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。 

2 俳句対局
 巷では「プレバト!!」効果で夏井いつき組長が大人気ですが、松山発の新しい俳句イベントである「俳句対局」も噂になっております。先日は、大阪で7月4日に開催される「俳都松山キャラバン2015in大阪」の打ち合わせがあり、当日の俳句対局参加者も交えて対局経験者との模擬試合を行いました。相手の俳句から「漢字一字」もしくは「一単語」を頂いて詠み合っていく形式に、ついつい言葉を取りすぎたり、推敲しているうちに取り忘れたりしつつ、どんどん作句が進む楽しいひと時を過ごしました。7月12日には東京でも開催され、大阪・東京両会場の優勝者は10月31日(土)松山にて、岸本尚毅先生及び松山の代表者との対局が予定されております。
 また、関西では今年3回目となる「俳句Gathering」という大イベントが年末に予定されており、過去のイベントでは俳句甲子園形式の試合や句会ライブ形式の句合せも楽しめました。そのイベントで昨年主催者を務めていたのが三木さんという方で、前回のまる裏俳句甲子園で会場を沸かせた「エルビン三木」といえば記憶に新しいかと思います。その方の提案で、俳句Gatheringの賞品には「まる裏俳句甲子園に出場するための旅費」を用意してはという話になり、折角なのでmhmもそのイベントに何らかの形で協力できるよう準備を進めています。先の話になるかもしれませんが、様々な地方の俳人達と合同企画を立てられるようになると良いですね。

3 俳句甲子園地方大会
 6月といえば俳句甲子園の地方大会がスタートしました。mhmのメンバーも多くが現地に向かい、スタッフとして運営に関わっています。二週に分けて行われる地方大会で、一週目が終わった段階でこの原稿を執筆中ですが、個人的に注目していることを。まず東京第一会場では開成高校Aチームが全国の切符を手にしたわけですが、第二会場で開成高校Bチームを破って出てきたのが東京家政学院。強力な指導者がいらっしゃるということで、全国での活躍が楽しみです。他に、中国地区防府会場ですが、一昨年から松山市のOB OG派遣事業で講習を行っており、昨年初めて4チームが集まり地方大会開催に至りました。そこがなんと今年は8チーム。僅か二年で松山東高校のように合同練習会を開くまでに成長しているのです。そして、勝ち上がったのは去年初出場で全国大会進出、惜しくも敗退した山口県立徳山高等学校。双子の姉妹が大人顔負けのディベートをするところも見所です。8月の全国大会が楽しみです。


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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俳句の街 まつやま
俳句ポスト365


協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


優秀句
平成27年5月度


【春の月】
《地》
春の月臨月の臍初々し 祐
春の月生まれ変われるなら毬藻 誉茂子
歌姫ののどに春月滴れば 台所のキフジン
春の月昇れよ安田講堂に 小市
サイゴンに旅して春の月に座す いもとやべえ
鳥はみづになる春の月のめざめ 脇々
しらまゆみ春の月まで打ちてけむ 有櫛水母男
球場を眼下針路は春の月 このはる紗耶
春月の昇らば左翼席の上 もね
のぼさんの頭のような春の月 小田宮ゆうき

《天》
産気づく象舎や春の月は望 長緒 連


【黄金週間】
《地》
虫愛づる黄金週間のルーペ あつちやん
4Bと黄金週間一日目 大塚迷路
黄金週間ああ累累と象の糞 くろやぎ
ゴールデンウィークペンギンの餌の放物線 あるきしちはる
黄金週間キレイに揃うイルカの歯 シツ女
黄金週間NARITAへ向かうドーベルマン 紀貴之
黄金週間マングローブの苗植えに ポメロ親父
歌舞伎座のロビーのをんな黄金週間 鈴木麗門
黄金週間光まみれに過ごしけり 香山のりこ

《天》
黄金週間の朝日射し来る救急部 スズキチ


【初夏】
《地》
初夏を乾けピザ窯用の薪 ウェンズデー正人
初夏の手押しポンプの水甘し こりのらはしに
ぱんっと抜く初夏いっせいに発泡す トポル
青い実の初夏のひかりを身ごもれり はまゆう
乳臭く遍くはつなつの原野 めいおう星
初夏のひよこに小さき肉の冠 ジャンク堂
初夏の音なく浮かぶフリスビー いもとやべえ
縦走の夜は丸く寝ぬ初夏の風 蘭丸
グッピーのざわめく初夏の治験の夜 クズウジュンイチ

《天》
初夏や跳ねては沈む野の兎 でこはち




俳句ポスト365作品集2015

冊子のお問い合わせは……
 松山市役所 観光 国際交流課
 TEL 089−948−6556



7月の兼題

投句期間:6月25日〜7月1日
登山【晩夏/人事】
夏は日が長く、気象が安定しており、また軽装で出掛けられることから、登山には良い時期と言える。信仰としての登山もあるが、現在ではレジャーやスポーツとしての登山が主流である。

投句期間:7月2日〜7月8日
百物語【晩夏/人事】
夜に数名が集まり100本のろうそくを立て、各々が怖い話を語ってはろうそくを1本ずつ消していくという怪談会。最後のろうそくが消え真っ暗になった時に妖怪が現れるともいわれる。

投句期間:7月9日〜7月15日
葛餅【三夏/人事】
葛粉を熱湯で練り、型に入れて冷やし固めた菓子。三角などに切って、きなこと蜜をかけて食べる。古く元来は小麦の澱粉(正麩)を練り、長期醗酵させてから蒸しあげたものだった。

投句期間:7月16日〜7月22日
ハンカチ【三夏/人事】
暑い季節に汗を拭くための「汗拭い」としては最も一般的。ハンカチ自体は一年中使うことから季節感にやや乏しいが、季語としては汗を拭く目的のものをいう。

投句期間:7月23日〜7月29日
蟋蟀【初秋/植物】
秋の虫の中では最も一般的なもののひとつ。畑や草原はもちろん、部屋の中へも入ってきてリーリーリーと鳴く。秋深く、他の虫の音が聞かれなくなる頃になっても鳴いている。



《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)

※募集の兼題は変更される場合があります。「俳句ポスト365」のサイトで最新の情報をご確認ください。



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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成27年5月度


【山葵漬】
雨音やひとまず山葵漬所望 日々草
山葵漬取りたる山にまた祈願 なおき
山葵漬祖母と暮らした土蔵の間 かのん
一度だけ父が怒った山葵漬 野地菊
山葵漬婿殿へ酌ややあって酌 鞠月
マッチ箱二つを繋げたような箱根の電車山葵漬  樫の木
むしろ山葵漬こそ舌を食う 海田
舌戦の妻に軍配山葵漬 野風
山村の僧の手酌や山葵漬 朝日

《天》
出雲一巨き杉玉山葵漬  紀貴之
四万十は眩しくあるか山葵漬  鯛飯


【墓石】
晴天や墓石と蝶と白い猫 あけん
墓石の鶴の字は母山桜桃 てん点
初鰹食ったと墓石へ語りおる 篠原そも
墓石だと言い伝えられ虎が雨 のり茶づけ
墓石の裏スポンジとなめくじら 理酔
子雀の試練その三墓石に下りる ふづき
スカラベと墓石と夏の星々と 稲穂
サングラス墓石の前を動かざる 不知火
行く春や墓石に残る地震の痕 みさきまる
川底の被爆瓦八月の墓石 ひかるん
突如として墓石群水芭蕉咲いた 一走人
墓石めく姥捨山の夏薊 あねご

《天》
墓石より蝶百頭の海へ飛ぶ  露玉


【茅花流し】
溜池の波立ち茅花流しかな きのと
開渠の水動かず茅花流しかな  なおき中3
としこさんと下校の茅花流しかな  カナリヤ
茅花流し水門橋を通りぬけ よもこ
海臭きホームの茅花流しかな マイマイ
伊那バスを降り立つ茅花流し前 おたま
茅花流し塞き止めている生駒山 灰色狼
山羊のチーズ欲しき茅花流しかな 小雪
茅花流し穢れた言葉吐きました 野風
茅花流し昨日に住んでいる老婆 鞠月
文焼けば茅花流しの火の色に 樫の木
みづいろは藍へと茅花流しかな  鈴木牛後

《天》
茅花流しやアトランタより巨船  緑の手


【仙入】
仙入の声牧草の銀の波 露玉
仙入の声日輪の低木林 紫式部
仙入の鳴いて羅臼の低き空 ほろよい
仙入やアイヌの森に斧木霊 ひかるん
仙入や雲のくぼみに棲むという 一走人
神仙沼だったか仙入見かけしは 瀑
大辞林割りて仙入つまみ出す もも
仙入の語る内地の噂など 笑松
蝦夷仙入鍵は牛舎の少し奥 鈴木牛後
仙入や湿原に踏む朝の音 鯛飯

《天》
蝦夷仙入あれはカムイを歌うのだ  太郎


【半ズボン】
本当の空色探し半ズボン 逆ベッカム
こちら快晴カンカンを蹴る半ズボン  宇摩のあかつき
半ズボン風と遊べと校訓碑 ターナー島
中年やいつも心に半ズボン 矢野リンド
矍鑠とゴルフ米寿の半ズボン  八十八五十八
前屈の得意な家系半ズボン 一走人
蒼天やマストと笛と半ズボン まどん
ラケットを抱え殿下の半ズボン  ほろよい
塹壕へ一眼レフと半ズボン きとうじん
半ズボンピカの地平に頽れて 海田
不発弾囲む破けた半ズボン  三河のポンポコ
半ズボンもうピノキオと呼ばないで  樫の木

《天》
島の子となって二ヶ月半ズボン  風



※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

投句締切:7月5日
山滴る 【三夏/地理】
夏の山を形容していったもの。水の滴りとは関係無く、山の木々が深く青々と茂り、みずみずしく感じられる様子をいう。

白蟻 【三夏/動物】
主として古い木材に巣を作り、内部から食いひろげるシロアリ科の昆虫。5〜6月頃に羽をそなえた成虫が空中を飛び交尾する。蟻に似ているが類縁関係は無い。

投句締切:7月19日

季語ではない兼題です。「破」という字が詠み込まれていれば読み方は問いません。季語は当季を原則として自由に選んでください。

冷し中華 【三夏/人事】
ゆでた中華そばを水で冷やし皿に盛る。その上に細く切った胡瓜、焼き豚、錦糸卵などの具をのせて、酢醤油やごまだれなどのたれをかけて食べる。



《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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マラソン部 しまなみ報告




 走ることで俳句の普及を目指す、100年俳句計画マラソン部。
 去る5月31日、しまなみ海道練習会を開催しました。
 当日は天気予報を覆しての晴れ。瀬戸内海を見渡す最高の景色の中、ランニングをスタート。今治市糸山公園から大島道の駅「よしうみいきいき館」まで、片道6・8kmのコースを往復しました。
 走り始めは、絶景を堪能する余裕がありましたが、走ってみると橋は思いの外アップダウンがあり、休憩地点の道の駅に着く頃には、バテバテ。ソフトクリームで栄養を取り、ようやく帰り着きました。
 ランニングの後は、温泉に入り、その後打ち上げと、120%練習会を楽しみました。

橋脚は龍の背の如風薫る 逆ベッカム

しまなみを走る仲間に風薫る  照造

夏の雲走れば鳥になれる橋  チャンヒ


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100年俳句計画 掲示板



NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  7月14日 28日(火)11時40分〜

あいテレビ(TBS系列、全国)
 『プレバト!!』
   隔週木曜 19時〜20時49分
※組長がゲストの俳句ランキングづけで出演! 放送日番組欄を要チェック!

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「人参の花/朝曇」6月28日〆
   「海の日/夜光虫」7月12日〆
   「ビール/夕月夜」7月26日〆
 インターネットでも配信中。詳しくは番組webサイトへ。
  HP http://www.baribari789.com/
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)、住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。


執筆
松山市の俳句サイト「俳句ポスト365」
http://haikutown.jp/post/
 毎週水曜締切/翌週金曜結果発表

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」
※ 毎週日曜発刊タブロイド判8ページ

朝日新聞愛媛俳壇(夏井選)
 投稿は葉書1枚に5句以内(未発表句)。裏面に作品と共に住所、氏名、電話番号を明記。朝日新聞松山総局(790ー0003 松山市三番町4ー9ー6 NBF松山日銀前ビル)まで。

愛媛県《吟行ナビえひめ》句&写真
 俳句選者:夏井いつき
 写真選者:キムチャンヒ
【募集期間】毎月1日〜 25日前後締切
【応募先】http://www.iyokannet.jp/ginkou/
【問い合せ】愛媛県観光物産課
TEL 089ー912ー2491

本阿弥書店「俳壇」(1月号より連載)
 『十二か月添削教室』
 8月号 7月14日発売
*誌上で俳句を募集しています。


句会ライブ、講演など

俳都松山宣言大阪&東京キャラバン
 大阪 7月4日(土)
 東京 7月12日(日)
※詳細は裏表紙参照

広田合同小学校句会ライブ
 7月9日(木)

NHK文化センター青山教室・横浜教室
 7月15日(水)
 青山 申込先…03-3475-1151
 横浜 申込先…045-224-1110

新居浜市国語同好会句会ライブ
 7月19日(日)
 新居浜市別子銅山記念図書館

正観寺地蔵祭り句会ライブ
 7月24日(金)13時〜
 幼稚園児、小学生対象(保護者同伴)
 申込…089-975-3736

関西市民文化塾講演
 7月25日(土)13時30分〜15時
 御堂会館大ホール

毎日新聞大阪開発主催「句会ライブ」
 7月25日(土)17時45分〜
 毎日インテシオ

第31回長崎小学校国語教育夏季研究大会長崎大会句会ライブ
 7月30日(木)
 チトセピアホール

伊予銀行主催「思いのままに575」
 8月1日(土)
 観劇をしての句会ライブ
 申込先…089-931-9803



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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

「鮎の友釣り」お引っ越し
編 近年掲示板コーナーの過密状態が続いておりました。ので、同ページだった鮎の友釣りをこちらのページにお引っ越し。立待さんへのお便り、質問、イケメンの息子さんへの求婚その他もろもろお待ちしております〜。……しかし組長の大学時代の悪友とは驚きです。二人で大酒飲んでそうだなあ。

先々月号特集に寄せて
元旦 詰め俳句のライブバージョンですか。いろいろ考えますね〜。
編 考案&対戦を実施したキム編集長曰く「俳句に明るくない人でも、点をつけるのに参加してるだけで盛り上がる」とのこと。反面、「まだ少しとっつきにくい」との意見も。さらなる改良が待たれます。

初投句!
真魚 六月より年間購読です。見本誌の五月号を見ての投稿が、許されるのかどうかわからないままひとまず投稿してみます。
編 まったくOKです。結果いかがでした?

西条の針屋さん 久しぶりの投句です。
編 初じゃないけどお久しぶり。そして人入りおめでとう!

病院あれこれ
哲白 先月は検査入院をしたり、薬のアレルギー治療をしたりしているうちに投句締め切り日が過ぎていました。その折に投句しようとしていた句です。
編 で、その句が載っているのが今月号。なーるほど、花の時期でしたものね。

喜多輝女 梅雨入りはしましたが、だんだん昔の梅雨とは様子が違って来ているように思います。さっき組長のブログで兼光さんの手術の事知りました……ふつーの生活に戻られたとのことホットしました……お二人ともあまりにもお忙しすぎるのでは……気候不順のおりからくれぐれもお身体大切になさって下さいませ。
編 6月20日の組長ブログの記事ですね。退院なにより。

俳句甲子園はじまる。
うに子 明日は俳句甲子園愛媛大会。どんな句に出会えるか楽しみです。
編 6月21日が俳句甲子園松山大会でした。今年の松山会場勝ち上がりは松山東高校、愛光高校、宇和島東高校、伯方高校Aチームの四校。本番でも良い句に出会えますように〜♪

夏といえば怪談
北伊作 さて時節柄旧北条市の立岩川に女の幽霊が出たお話を致しましょう。モチロン、本当の幽霊ではありません。近所の娘さんが夜中で人目の無いのを良い事に水浴びをしていたのです。その夜もいつもの様に水浴びを終えてそそくさと浴衣を羽織り、土手を駆け上がりますと後から自転車の急ブレーキの音と共に「出たあー!」と言う男の叫び声が……。気の毒に土手を転がり落ちて行ったそうです。都合良く柳の木まで有ったとか……。終戦直後の事とて、街灯も無く幸い顔は見られずに済みましたが、その後話にオヒレが付いてソレらしい幽霊話が広がったそうです。この話は幽霊の妹さんから聞きました。
編 落ちた人には気の毒だけど笑ってしまった〜! 怪談っていうより落語の世界。

季語の写真館
編 今月号「へたうま仙人」に寄せて真帆さんが送って下さった「極楽鳥花」。綺麗なので掲載〜♪



100年俳句計画誌上編集会議

 先月号でお伝えしておりました。「100年の旗手」リニューアルのお伝えについて。今月号にてお伝えする予定でしたが、もう少々企画の練り上げが必要なため、次号以降でのお伝えとさせて頂きます。読者が作品を発表できる場として実りあるものとなるよう企画を進めておりますので、楽しみにお待ち頂ければ幸いです。 (編集室)


 この欄への提案、質問、要望、その他は、100年投句計画投稿時のフォームに書き添えてお送り下さい。また、メールでの投稿も可能です。メールで送る際は件名を「魚のアブクへ」としてお送り下さい。

メールアドレス
 magazine@marukobo.com(編集室)



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鮎の友釣り


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俳号 立待

こまさんへ 尊敬する俳句ポスト365の五曜日制覇一番乗り&ことばの魔術師。その知的好奇心とセンスに脱帽です。これからもよろしくご指導ください。

俳句との出会い 正しい日本男児となるべく、囲碁(大学から。初段)、剣道(息子と鍛錬。四段。写真です)と嗜んでましたが、数年前にいつき組長(大学時代の悪友)と再会、「次は俳句やろ!」と、強引に東京の句会に引っ張り込まれたのでした。

俳号は 最初組長とこまさんに、なぜか「相模原悦子」と命名されましたが、初めて出席した句会で「立待月」を季語とした意味深な句を作ってしまい、組長から「立待」にせい!、と再命名されました。(俳句ポスト365に出没する「謎のJKちびつぶぶどう」は、実は無二の親友かも。ゴゴゴゴゴ ← 効果音)

次回…あつちゃんへ 笑松さんと組む立待ブラザーズの欠員を、快く埋めて松山遠征してくれたチームの柱です。最近、365金曜日の常連で、絶好調ですね。


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告知



俳都松山宣言
十七音があなたを変える
大阪&東京にて
イベント開催!

お申し込み方法
「キャラバン大阪会場希望」または「キャラバン東京会場希望」と明記し、郵便番号、住所、代表者氏名、電話番号、申込人数を添えて、松山市役所文化ことば課まで、郵送、電話、Eメールでお申込みください。

お申し込み/お問い合わせ先
松山市役所 文化ことば課
〒790-8571
松山市二番町四丁目7番地2
電話:089-948-6952
Eメール:haito@city.matsuyama.ehime.jp

俳句対局の対局者が決定しました!

大阪(7月4日)
エルヴィン三木(エルヴィンみき)
出身地:関西。所属:ニューグランドホテルズ。俳歴:第13回まる裏俳句甲子園準優勝。

工藤 惠(くどう めぐみ)
1974年生。神戸市在住。「船団の会」に所属。2014年第6回船団賞受賞。

中山 奈々(なかやま なな)
1986年生。俳句甲子園より句作開始。「百鳥」「里」同人。

小鳥遊 栄樹(たかなし えいき)
沖縄俳句会「若太陽」、関西俳句会「ふらここ」所属。「里」「群青」同人。

東京(7月12日)
関 悦史(せき えつし)
昭和44年生。豈同人、第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞、第11回俳句界評論賞。句集に『六十億本の回転する曲がつた棒』で第3回田中裕明賞。

中町 とおと(なかまち とおと)
昭和54年生。埼玉県育ち、千葉県在住。2010年よりツイッター上で短歌・俳句を詠み始める。2013年、俳句ポスト投句開始を機にいつき組組員に。

大塚 凱(おおつか がい)
1995年生、開成高校出身、東京大学2年。俳句甲子園第14、15、16回大会出場、俳句同人誌「群青」所属。

青本 柚紀(あおもと ゆずき)
広島高校出身、東京大学1年、句歴3年、「里」「群青」所属




7月7日
石鎚山お山開き
登山吟行会

 西日本最高峰の石鎚山は、今年、国定公園指定60周年。
それを勝手に記念して、山開き登山吟行会を行います。
 現地集合&現地解散、雨具必須のハードな吟行会ですが、お山開きの時しか出合えない、霊峰の姿を拝めます。
 定員は15名。参加費は交通費&参拝料など実費。申し込み締切は、7月2日(木)。
 参加ご希望の方は、100年俳句計画編集室キムまでお申し込み下さい。




8月8日
蕎麦打ち企画
始動!

 蕎麦打ち名人の日暮屋さんの蕎麦を堪能しようという企画。
 8月8日(土)の種まき(松山市内某所)を皮切りに、11月の蕎麦打ちまで計4回、自ら蕎麦を育て、蕎麦を食する吟行会を行います。費用は実費(現在算出中)。
 先日、日暮屋さんが冷凍保存しておいた秘蔵の蕎麦の種を、試しに庭に蒔いたところ、無事育っているという報告が届きました(写真は6月21日撮影)。美味しい蕎麦を作るべく、着々と準備を整えているようです。
 こんな蕎麦打ち企画に参加ご希望の方は、まつやま俳句でまちづくりの会(mhm_info@e-mhm.com)または100年俳句計画編集室キムまでお問い合わせください。




俳句新聞いつき組
7月新規ご購読お申し込みの方には
3号(2015年7月号)よりお届けします!
※3号は2015年7月中旬発行予定です!

2015年「花の座」決定!&「蛍の座」ノミネート20句

大好評「プレバト!!」のちょこっと裏話

そのほか内容充実のフルカラー全8ページでお届け!

※1号より購読希望の方は、事前にその旨をお伝えください。

A4サイズ8ページフルカラー仕様
参加登録料(※初回のみ)1,000円(税込)
年間購読料 3,500円(税込)/年4回発行
*年1回、夏井いつきの句集シングル付録あり。

まずは無料の0号「創刊準備号」と購読のご案内をお送りいたします!
※0号「創刊準備号」を既にお持ちの方は、0号に掲載しております案内にしたがって購読料をお支払いいただくことで、正式な購読の申込となります。

ご購読のお申し込みは……

「俳句新聞いつき組」購読希望の旨、本名(ふりがな)、俳号(無ければ不要)、郵便番号、住所、電話番号、生年月日を明記して、下記のいずれかの方法で申し込んでください。

 ハガキで申し込む
  790-0022 愛媛県松山市永代町16-1
  有限会社マルコボ.コム
  「『俳句新聞いつき組』購読申込」係

 FAXで申し込む
 FAX番号:089−906−0695

 メールで申し込む
 kumi@marukobo.com
 (件名を「いつき組購読申込」としてください。)



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編集後記


 俳都松山キャラバン大阪&東京、石鎚山お山開き登山吟行会、蕎麦打ち企画、子どもコン&大人コンなどなど、イベント告知だらけの雑誌となってしまった。
 そんな中、ひときわ注目して頂きたいのが、「週活句会」メンバーによる合同句集『WHAT』の告知。
 今年で3回目となるこの句集は、20代までの俳人が、安価に作品を発表できる場として企画したもの。毎年、俳句甲子園の時期に新作発表している。
 今までは、俳句の作品集のみを掲載していたが、今回は俳句甲子園出身の俳人、森川大和さんと神野紗希さんに、それぞれの評文を頂くことにした。『WHAT』に参加している俳人たちの励みになると共に、『WHAT』を購入して頂いた方々が、若手俳人たちの作品を読み解く道しるべとなればと思っている。
 とは言え、『WHAT』の精神は、始まった当初と変わらない。誰かに選ばれるために作る作品集ではなく、作家が自分の可能性に挑む場であるということ。ライバルたちの作品によってそれぞれが刺激を受けている姿を期待している。
 現在、本紙編集メンバーの正人を中心に編集の最中。完成が待ち遠しい。
(キム)


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次号予告 (213号8月1日発行予定)


次回特集

俳都松山宣言
十七音があなたを変える
大阪&東京 俳都松山キャラバン


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2015年7月号(No.212)
2015年7月1日発行
価格 617円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子