100年俳句計画7月号(no.200)


100年俳句計画7月号(no.200)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
「500号」まで 鯛飯


特集1
200号記念 俳句新聞から現在までを超おさらい!


特集2
『俳句王国』と共に生きた男〜村重 尚



好評連載


作品

百年百花
 理酔/平山南骨/天玲/門田なぎさ


100年俳句計画作品集 100年の旗手
 岩宮鯉城/うに子/竜胆


百年琢磨 しなだしん

新100年への軌跡
 俳句/仮屋賢一/雀子
 評/桜井教人/とりとり


選者三名による雑詠俳句計画
関悦史/阪西敦子/加根兼光


へたうま仙人/大塚迷路

自由律俳句計画/きむらけんじ



読み物
Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
ホンヤクサイホンヤク/翻田訳蔵
お芝居観ませんか?/猫正宗
百年歳時記/夏井いつき
近代俳句史超入門/青木亮人
mhm通信/暇人
句集の本棚

読者のページ
俳句ポスト365
一句一遊情報局
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




「500号」まで
鯛飯

 16年と8ヶ月。
 月刊誌が200号に到達するのに必要な時間だ。
 そんな大切な区切りの号に、読者歴8年の自分が立ち会えて、しかも新たな1年が始まる購読更新月と重なるとは、ダルビッシュの完全試合を目撃するぐらいのラッキーさだ。
 そこで考えた。更新月と「00号」が重なる時が再び来るのではないかと。
 数学の素養がないので、1年ごとに12を足した数字を書き連ねる。偶数が続くはずなのに奇数が現れたりした超アナログな作業の結果、2039年7月号が通巻500号に当たる事が判明した。(くだらん計算する時間があるなら俳句作れと言われそう。)ちなみに、300号は2022年11月号、400号は2031年3月号です。
 25年後……めでたく米寿を迎える年だが微妙なお年頃です。覚えていたらどなたか順番回してくれませんか。あっ、購読料の振込がまだだ。


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特集1

200号記念
俳句新聞から現在までを超おさらい!



1997年

8月号/0号
『ミーハー吟行隊通信いつき組』としてB5サイズ4ページでスタート。

9月号/1号
いきなりA4サイズ8ページに変更。夏井いつき(以下組長)のエッセイと波郷の句を読み解く「まるかじり波郷論」、4コママンガ「殿様ケンちゃん」、読者参加の「投句&選句欄」が主な内容。初回の投句数は36句。購読料は300円。

1998年

2月号/6号
リレー式に読者を紹介する「鮎の友釣り」スタート。

4月号/8号
「投句&選句欄」をポイント化。互選トップを取るなどして5ポイント集めると「大漁旗獲得」として最新10句を発表できることになった。

1999年

8月号/24号
組長選による雑詠欄「くらむぼんが笑った」スタート。
俳句甲子園第一回まつやま大会開催。

2000年

3月号/31号
初代「花の座決定戦」開催。後に「月の座」「雪の座」と続く。

9月号/37号
誌名を「読者参加型俳句新聞いつき組」に変更。
雑詠欄を付録から格上げ。組長の作品&エッセイ「放歌高吟」、「三ヶ月競詠サドンデス」など新連載もスタートし、全12ページとなる。そして購読料400円に。

11月号/39号
誌名を「俳句新聞いつき組」に変更。

12月号/40号
特集は「40号記念10大ニュース」として、3年ちょっとの歴史を振り返った。

2001年

7月号/47号
マンガ「忍者ももろう」(作・桃ライス)連載開始。このあと、なんだかんだと姿を変えながら、桃ライスの連載は現在まで続く。
7月2日、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』放送開始。

2002年

4月号/55号
発行が遅れ気味だったため、3月号を4月号として調整。

2003年

2月号/65号
第1回まる裏俳句甲子園報告

4月号/67号
12人が12ヶ月間コトではなくモノを詠む「モノがたり」連載開始。
4月21日よりNTTドコモ公式サイト『俳句の缶づめ』スタート。(2012年12月終了)

2004年

1・2月号/76号
3・4月号/77号
発行の遅れにより合併号に。
第2回まる裏俳句甲子園開催。この回より実行委員会形式となる。

6月号/79号
新聞から雑誌のスタイルに変更し、『俳句マガジンいつき組』として新たにスタート。表紙もカラーになった。
大幅な増ページに伴い、らくさぶろう「毎日記念日」、一句一遊の情報を伝える「メディア俳句談義」などの連載開始。

7月号/80号
増ページに伴い購読料500円に。

8月号/81号
「戦争と平和の俳句」特集に合わせ、付録句集『戦争と平和の俳句集』が好評を得る。掲載句は後に、愛媛新聞の連載記事に紹介された。
「新季語選定委員会」などの連載も増え、32ページに。

2005年

1月号/86号
毎年恒例「生まれてから現在までの代表句」特集スタート。現在まで続く。

5月号/90号
「恋の俳句」特集に合わせ、ねじめ正一編による句集『恋の俳句集』が特別付録となる。

6月号/91号
伝説の特集「人間はジェットコースターに乗りながら俳句が作れるか」。
「句会のご案内」お楽しみ度とお勉強度を軸とした表に分類され掲載。現在に至る。

7月号/92号
表紙の構造を変え、強引にカラーページを捻出。それに伴い、夏井ふみの写真と組長のエッセイ「大連風聞」の連載開始。のちに、『子規365日』(夏井いつき著・朝日新書)にて転載される。

2006年

3月号/100号
特集1は「100号までの歩み」。
特集2の「入門俳句の並べ方 ライバル俳人養成講座」は、句集を作る際のバイブル。

4月号/101号
「100年俳句計画」のロゴが初登場。

5月号/102号
「季語って何だ!? 新季語選定委員会総集編」特集。

6月号/103号
読者の投票で連載者が決まる「100年の旗手」連載開始。現在に至る。

7月号/104号
特集は「第1回俳句チャンピオン決定戦」。NHK松山放送局による「学生俳句チャンピオン決定戦」の原型。
「JAZZ者俳句ノート」(蛇頭)連載開始。

9月号/106号
特集はきむらけんじによる「自由律俳句でいこう!」。立て替え前の一草庵にてロケ。

11月号/108号
『伊月集 梟』出版記念特集。マルコボ.コムの四角い句集はこれが始まり。

2007年

1月号/110号
「100年への軌跡」連載開始。当初は、1年間で360句詠む企画だった。
「今さら聞けない俳句の歴史超入門」連載開始。形を変えて、今月号より復活!

2月号/111号
伝説の企画「はいのり」。

8月号/117号
衝撃の企画「俳句は脳に効く!」

9月号/118号
10周年企画「絵金祭バスツアー」

12月号/121号
毎年恒例「選評大賞」スタート。

2008年

2月号/123号
特集1は「第1回夏休み句集を作ろうコンテスト結果報告」
特集2は、懲りもせず「ばいのり」。
ページ増に伴い600円に。

4月号/125号
目の不自由な方向けのテキストファイル配信が始まる。

5月号/126号
3回シリーズ「俳句における一物仕立ての定義」スタート。
冒険型吟行会「うみいづ再び」レポート。

2009年

6月号/139号
特集「6時間18題の席題句会に挑戦!6時間耐久ラブワゴン」。このあと、お正月企画として復活。

9月号/142号
特集は「松山俳諧・俳句240年 三庵めぐり!」。組長と中村市長(当時)との対談あり。

2010年

2月号/147号
日本俳句教育研究会第2回研究発表大会報告

4月号/149号
「万愚節新聞」の記事に新聞記者が参戦。

11月号/156号
特集はmhm主催による「俳句チャンピオン決定戦三庵巡り大会報告」。

2011年

1月号/158号
「100年俳句計画」に誌名変更。
「mhm通信」連載開始。

4月号/161号
特集は「愛媛マラソン吟行会」。のちにマラソン部に発展。

6月号/163号
「俺たちの俳句米プロジェクト」スタート。半年間かけて、稲作吟行会を行った。

2012年

1月号/170号
付録として季語付スケジュール帳登場。
雑詠欄に「へたうま仙人」が初登場。

2月号/171号
「百年琢磨」連載開始。

4月号/173号
第一回大人コン結果発表。最優秀賞の『根雪と記す』(鈴木牛後)が付録として配布された。
「百年百花」連載開始。

5月号/174号
「Letter from spider garden」(ナサニエル・ローゼン)連載開始。

9月号/178号
特集「『季語震災記念日』について考える」。
20代までのインターネット句会「週活句会」開始。

2013年

1月号/182号
特集「俳句対局 龍淵王決定戦」。初代龍淵王は加根兼光。

3月号/184号
特別企画「句集styleというスタイル」。新しい句集制作の提案。のちに続々と新作句集が登場。

4月号/185号
第2回大人コン最優秀賞『兎抱く』(門田なぎさ)。

5月号/186号
表紙の仕様が変わりページ増加。

6月号/187号
「100年投句計画」&「百年歳時記」スタート。
俳句対局龍天王報告。初代龍天王は瑞木。

8月号/189号
mhm「松山城歳時記化計画」。
「週活句会」のメンバーによる合同句集『What』創刊。

2014年

1月号/194号
俳句対局第2回龍淵王報告。二代龍淵王はみちる。

4月号/197号
第3回大人コン最優秀賞『塩辛色』(都築まとむ)。

5月号/198号
愛媛マラソンに俳句ポスト365のブースが出来たことを報告。
道後オンセナートの一環で、道後俳句フォトライブ!開催。

6月号/199号
俳句対局第2回龍天王報告。瑞木が防衛。

7月号/200号
 これからも新しい企画は続く!


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特集2

『俳句王国』と共に生きた男〜村重 尚



 今春この世を去った俳号蕃こと村重尚さん。
 彼はNHK「俳句王国」を立ち上げた人物であり、その俳句王国によって培われた人脈を生かし、俳句甲子園実行委員会の一人として全国から審査員を集め、俳句甲子園の協力者を増やし、大会の発展に大きく寄与した。
 多くの俳人と、NHKの後輩に慕われた彼の生き様はどのようなものだったのか。
 番組立ち上げを一番近くで支えてきたNHKの越智篤志氏と、番組制作に関わった外部スタッフ広瀬周次氏、そして俳句王国1回目の出演者でもあり、蕃さんの晩年の俳句ライフのキーパーソンとなる夏井いつきが彼の生き様を語り合った。

座談会日時 2014年5月27日(火曜)
場所 東京第一ホテル松山「花のれん」

参加者

越智篤志(おち・あつし)
今治出身。NHKメディア企画室副部長。松山放送局に9年間勤務。

広瀬周次(ひろせ・しゅうじ)
NHK番組の演出、舞台監督歴35年。制作会社ネットワークパパ会長。俳号ともぞう。

夏井いつき(なつい・いつき)
8年間の中学校国語教諭をへて俳人へ転身、俳句集団いつき組組長。


村重尚との出会い

夏井 そもそも村重さんとの最初の関わりってのは、どこからだったんですか?
広瀬 ボクは二十代の頃。学生で音楽をしてた頃……
夏井 音楽? やってたの?!
広瀬 そう、『ここはお四国』っていう番組があって、
越智 あった、あった! 毎週30分放送の、どローカル・バラエティー! 四国四県それぞれに、アナウンサーではない人を抜擢してキャスターをしてもらって、結構な人気番組でした。
広瀬 その番組で、俺は二人組で座付きバンドをしてたんですよ。ディレクターが村重さんで、そこで初めて知りあったんです。村重さんに「ほんとに俺たちでいいんですかね?」って言ったら、ちょっとした場面転換のためにやって欲しいだけだから「やりゃあいいんだよ!」って言われて(笑)。めっちゃ、ぶっきらぼうな人って印象だった。
夏井 村重さん何歳ぐらい?
越智 30代の現役バリバリのディレクターの頃だと思います。
広瀬 若さは感じなかったな、あの頃から中年っぽい感じだった(笑)。その番組で村重さんと関わったのが、こんなヤクザな世界に入るきっかけだったもんな。村重さんが「番組の豪華弁当が三つ余ってるから食わしてやる。手伝え!」って、その弁当につられて、働かされたこともあった(笑)。
夏井 どんな番組?
広瀬 加賀美アナウンサーが司会で、俳句の番組だった。他の出演者は覚えてないけど、めっちゃこき使われて、豪華弁当を食べる時間もないぐらいだったけど、満月の夜の生放送だったと思う。平成2年の秋だな。
夏井 その番組覚えてる! 加賀美さんが司会で、愛媛の主要な結社の主宰が出演してた。村重さんが「あの番組が俳句王国の前身になったんだ」って言ってたと思うけど、記憶違ってるかな?
越智 「俳句王国」が平成3年4月スタートで、その前年の秋ですから、記憶は正しいと思います。

『俳句王国』制作の道程

夏井 そもそも『俳句王国』を発案したのは村重さん?
越智 村重さんは、平成2年の夏、『テレビ遍路 四国八十八か所 けさの霊場』という、BSで四か月間、毎朝放送の大番組が終了して、やれやれと一息ついてたタイミングだったんです。ところが上司の中田さんから「次は来年4月から月一回放送する、松山らしい新番組を作ってくれ」と言われて、しかも俳句で一時間ぐらいの生放送って条件で。
広瀬 『テレビ遍路 四国八十八か所 けさの霊場』って番組は、生中継で23分の番組。当時の現場は僕ひとりで仕切ってたんです。
越智 台本は私たちディレクターが取材して順番に書いてたんですが、現場は広瀬さんがやってました。村重さんは、全てを統括する立場でした。
広瀬 BSの衛星を打ち上げた年で、日本初のBS放送でしたから。失敗できないという緊張感が現場にはありました。村重さんは教養番組のチーフ・ディレクター兼、プロジェクト長をやってたので、プレッシャーは相当強かったと思います。
夏井 その重責を降ろしたとたん、俳句で一時間の新番組を作れと言われたと。しかも生放送で(笑)。
越智 そうです。「俳句王国」の準備は平成2年の夏から始まりました。句会中継みたいなものならできるかもというアイデアを村重さんが出してきて、県内の主宰を説き伏せるところから始まりました。愛媛県内の主要な結社の主宰との話し合いを、半年で三回ぐらいやったなあ。なかなか話し合いがまとまらなくて……。
夏井 その頃の愛媛県内は、結社同士の仲が滅茶苦茶悪くて、お互いに立ち入らないことが不文律としてあったし、ちょっとやそっとの交渉じゃなかったと思うよ(苦笑)。
越智 それぞれの主宰の坐り位置から、どう切り出しどう説得するかまで、ほんとに気を遣いつつ話し合いを進めていったのが、村重さんでした。私は部下の立場でしたが、話し合いの現場にも立ち会いました。一回目の話し合いは、「そんな番組はあり得ない!」って完全に決裂。さらに二度目の話し合いで、まずは「超結社でやろう」というところまで説き伏せました。
夏井 「超結社で」とは?
越智 それぞれの結社が持ち回りで所属同人を集めて番組を作るのではなく、毎回、いろんな結社の人間が集まる句会番組にするという、基本スタンスを飲み込んでもらうのに時間がかかったんです。
夏井 なるほど、そこからだったのか。
越智 次に決めたのが、「親分は出ない」ってこと。
夏井 親分?
越智 結社の主宰は出演しない。各結社の若手に出てもらうということで、どこの結社が勝ったの負けたのっていう、リスクを減らす。これも村重さんの提案でした。
夏井 そうか、それで第一回目の『俳句王国』出演のお鉢が、ワタシのところに回ってきたってことか。若い奴らがコケるのなら、結社の威光にキズが付きにくい?(笑)
広瀬 各結社のメンツってのが、障壁だったんですねえ。
越智 最後に揉めたのが、「主宰を誰がするか」ということでした。村重さんは、県内の結社ではなく、中央から有名結社の主宰を呼んでくるのではどうか? と提案しました。金子兜太さん、稲畑汀子さんクラスですね。そんな人たちが愛媛くんだりまで来るものか、という懐疑的な声もありましたが、ほんとに出演交渉がまとまるのならば、番組に協力しようという約束を取り付けたのが、三回目の会合でした。
夏井 一つ一つ問題を突き崩しての匍匐前進やねえ(苦笑)。
越智 はい、村重さんに、「お前、本屋に行って、俳句の雑誌を全部買って来い」って言われて、買ってきた本を机に積み上げて、片っ端から読んで。村重さんも私も俳句のことは全く分かって無かったから、読んでもよく分からなくて(苦笑)、だんだん中身ではなく、主宰の写真が載ってるグラビアページだけを切り取って、ここに載る人は絶対に有名人だろう!って(笑)。4月5月は、金子・稲畑の両先生。森澄雄、藤田湘子って人はどうも有名そうだから押さえようとか。さらに村重さんが「俺たちが作るのはテレビ番組なんだから、ルックスでも選ぼう」って言い出して、そこで上がってきたのが鷹羽狩行さん。
夏井 おおー納得!
越智 十二ヶ月分の主宰を選びきれず、六人の出演を取り付けた段階で見切り発車することにしました。半年間もめにもめましたが、村重さんの粘りに根負けして、最後は県内の主宰の皆さんがノッて下さり、新番組を支えるよう各結社内に文章をまいて下さって、いよいよ第一回放送に向けた準備に入りました。

『月刊俳句王国』第一回生放送現場秘話

越智 初年度は愛媛県域放送でした。『月刊俳句王国』という番組名で、月一の生放送。その第一回の現場で、私はディレクターとして副調整室にいて、村重さんがその真後ろに控えてました。スタジオには、夏井さんも広瀬さんもいたわけです。
夏井 え? 広瀬さんも?!
広瀬 いましたよ! 俺、俳句を貼るボードの担当。あの頃は、俳句の筆耕もその場でやってたから、書道の先生が書いたのをドライヤーで乾かして、貼って、もうてんやわんや(笑)。得点の磁石をボードに貼る、ミニスカートの「得点ガール」もいました(笑)。
越智 あの当時は、出演者が十人いたと思います。主宰を真ん中において、県内の結社をバランスよく並べて、左右に男女五人ずつ。スタジオのイメージは、民放でやってた『プロポーズ大作戦』の「フィーリングカップル5対5」だったんです。
夏井 ははは! そこ?(爆笑)
越智 はい、ですから、左右両サイドの五人目の席は、笑いのとれるユニークな人が欲しかったので、県内の二つの結社の主宰に「ちょっと変わった人」をお願いしますって頼んで、上がってきた一人が夏井さんでした(笑)。
夏井 色物だったか!(爆笑)
越智 申し訳ないですが、その通りでした。夏井さん、目きらきらさせて句座にいたのを覚えてます。イメージ通りの色物でした(笑)。
夏井 あ、ということは、私の対面に座ってて、唯一若かったのが、松本勇二さん(現・愛媛現代俳句協会会長)だったよね。勇二さんも色物枠だったってことか!(爆笑)
越智 若い人をお願いしたはずなんですが、松本さんと夏井さん以外は、結社の中堅やベテランのご年配の方々で。やはり他の結社に負けるわけにはいかない!という思いはあったみたいでした。
広瀬 覚えてますよ。スタジオは一張羅のナフタリンの匂いと緊張が漂ってた(笑)。
越智 でもね、実際にやってみると、点数が入ったから勝った!じゃない、ってことが分かったんです。若い夏井さんや松本さんは語りで目立って、句会を動かしてましたから、この番組ってこういうことだったのかと。
広瀬 初回の主宰を金子兜太さんにお願いしたのが大成功だったって、村重さんよく言ってましたよね。
越智 金子さんは、県内の結社状況も、村重さんが作りたい番組の趣旨も全て理解して、句座を楽しむ空気を見事に作って下さいました。
夏井 兼題が「風光る」でね、気合い入った句ばっかり並んでる中に「たこ焼き投げれば鳩が来る」みたいなのが一句だけ混じってて、誰やこれ!と呆れたんですが、それを松本勇二さんが堂々と誉めるんですよ。こんな句選んで大丈夫か、この男!って思いながら(笑)、作者誰なん?って興味津々で観てたら、作者は兜太先生。もう爆笑でした!
広瀬 そういうところも含めて、金子先生ならではの句座だったですよね。

主宰をタメ口で怒鳴る?!

夏井 村重さんは、東京にいる頃に『NHK俳壇』にも関わってたと聞いた記憶があるんだけど、それは松山発『俳句王国』の前? 後?
越智 村重さんは『俳句王国』を立ち上げて、東京に転勤します。NHKエデュケーショナルで講座番組を担当するんですが、そこで待っていた仕事も俳句。『NHK俳壇』復活という使命を果たします。で、4年後、平成7年6月に松山に戻ってみると、『俳句王国』がBSで毎週の全国放送に昇格し、4月から放送がスタートしたばかりというタイミングだったんです。村重さんが50代前半の頃だと思います。改めて、松山局の看板番組となった『俳句王国』の責任者に任命された村重さんは、「覚悟を決めた、俺はもう俳句から逃げられない」と腹を括った、と。
夏井 金子兜太先生からの弔文に、「村重氏はNHKの俳句講座を、今の形に作り上げた初中期の功労者です。私情のない厳しい仕事ぶりの人で、その清潔感を俳人の誰もが尊敬していました」という一節もありましたね。
越智 『俳句王国』でお付き合いの生まれた各結社の主宰が、村重さんの還暦祝いを東京で開催されたとも聞いています。
夏井 黒田杏子先生からの弔文にも「頑として現場の現役を貫く清廉な姿勢を俳人皆が敬愛していた」と。
広瀬 「俳句から逃げられない」と覚悟を決めたあたりからの村重さんは、凄かったよね。『俳句王国』のリハーサル終わると、調整室から鉄の階段をカンカン降りてきて、主宰に向かってタメ口で「アンタねえ、そーゆーことじゃねえんだよ!」って(笑)。そのくせ、村重さん自身は台本も開かないんだよ。村重って名前書いてある台本、開いた折り目すら付いてないのを、俺、毎回片付けてたもん。
越智 番組が始まる前に、村重さんの中ではもう出来上がってたんだと思います。この主宰にお願いをすれば、きっとこんな句会ができる。前夜の打合せを兼ねた食事会でも、村重さん自らが司会して、出演者の個性も掴んでいる。明日の句座が楽しいものになるよう、気遣いを見せない気遣いのある人でした。
広瀬 番組を一緒に作るって、運命共同体ですもんね。
越智 村重さんにとって、主宰と局アナは、すでに同志なんですよ。思い描いた番組を作るための同志。初めて主宰を引き受けて下さった俳人の先生に向かって、「主役は一般俳人の出演者なんだから、番組をアンタの授業みたいな使い方してもらっちゃ困るんだよ!」なんて怒るのは、そういう意識なんですよね。
広瀬 村重さんが怒るのは、主宰と局アナと上役だけだった(笑)。
夏井 お葬式の最後に読まれた村重さん自身のメッセージにも「上役にとっては扱いにくい部下だったと思う」って一節ありましたね。
広瀬 あの人はね、徹頭徹尾、正義の人だったんですよ。

「正義の人」の矜恃

越智 村重さんは元々、ドキュメンタリストでした。ドキュメンタリーの制作者は、基本的に弱い人の味方なんです。権威に向かって、弱い立場の人たちの現実を突き付け、弱い立場の人たちに代わって主張する。
広瀬 俺たち外部のディレクターは、大事にしてくれたよ。村重さんが上役に向かって噛み付く姿勢は強烈だったけど、その理論は常に「正義か否か」ってとこにあったよ。
夏井 村重さんとかかわってきた元ディレクターさんたちのメッセージを、越智さんがお葬式の時に代読なさったでしょ。あの中で強く印象に残ってる言葉があって。撮影クルー皆で昼食をとってた時に、そのうちの一人が、注文した料理が間違ってたっていうんで食堂の人をひどく叱責したと。その時に村重さんが「あのな、労働者は労働者を怒っちゃいけないんだよ」と諭された、というエピソード、ありましたよね。
越智 反戦の活動などもされてた人ですから、「正義から外れる」ということは最も嫌ってました。そして、若い人、弱い立場の人に対しては、個人的好悪は抜きにして全て守らねばならないと、そういうポリシーを固持してらっしゃいましたね。 
広瀬 現場でミスったりすると「お前ぇらなんか要らねーんだよ!」って怒鳴られるんだけど、その後で職員・外部関係なく金のないディレクター連中引き連れて、酒飲ませてくれて。
夏井 すごく個人的な話で恐縮なんだけど、私、村重さんに「俺は、アンタみたいな人間を応援したくねーんだよ」って言われたことあって。
越智&広瀬 ええー?!
夏井 知り合いの俳人が『俳句王国』に出演するっていうんで、番組前夜の食事会の後の2次会に声かけてもらって、その店に行ったんですよ。勿論村重さんもいて。かなりお酒は入ってたんですが、私たちが近況を語り合ってたテーブルにやってきて、いきなり「アンタ、子どもも家族もおいて離婚したんだって?自分のしたいことだけフワフワやってんだろ!」って。私もこんなですから、カチンときて「離婚はしましたけど、子ども二人と脳腫瘍の母つれて、貧乏と格闘してます! ろくに知りもしないくせに、憶測で物言われるのは心外です!」って言い返して。
越智 村重さん、どんな顔しました?
夏井 悲しい子犬みたいな目になって、じわっと店の暗がりのほうに席を移していった……(苦笑)。でも、そんな出来事をすっかり忘れた頃、もう何年も何年も経ってから、ひょんな席でお会いした時に「お前さん、頑張ってんだな」って声かけてくれて。それ以来、色んなことを心にかけて下さって、私の再婚の心配までこっそりしてくれてたのも、後で分かって(笑)。
広瀬 そうなんだよ、村重さんの「正義」ってのはただ理屈を主張するんじゃなくて、根底に優しさがあるんだよ。
夏井 村重さん、退職してから『俳句甲子園』実行委員会の活動を手伝ってくれるようになって。その頃まだまだ、愛媛の俳句界は旧弊でねえ、それに反発して「俳句の種蒔き運動」を展開し始めた私は、愛媛俳壇の要注意人物だったんですよ(苦笑)。だから、『俳句甲子園』の審査員確保するのに四苦八苦してて……「夏井が関わってる大会に関わってはいけない」って陰のお達しがあったりして。
広瀬 へえ〜!
夏井 村重さんに、なんとか助けてほしいってお願いしたら、「大したことは、できねーぞ」なんて言いながら、あっという間に審査員集めてくれて「これで、お前さんのやりたいことは出来るのか」なんて言ってくれて。
越智 その台詞、いかにも村重さんだなあ! 番組の柱を立てるという一番大変なところは村重さん自身がするんだけど、番組の細かいところは若い者にやりたいようにやらせてくれる。責任は俺が取るから好きようにやれ、と。
夏井 最高の上司ですね!
広瀬 だけど、村重さんの上役のCP(チーフ・プロデューサー)は、大変だったと思うよ、怒鳴ってる声も剣幕も強烈だったからなあ(笑)。

村重尚は何者だったのか?

夏井 村重尚という男の功績とは、と問われたら、何と答えますか?
越智 『俳句王国』という番組を残した、と答えたい。24年間続いている驚異的な番組を愛し、残した。覚悟を決めて、やりたいことをやりきった。多くのファンを生み出したこの番組がずっと続いていること、それが村重さんが残したものであり、村重さん自身のシアワセだったと思います。
夏井 村重尚とは何者だったんでしょう?
広瀬 現場に仁王立ちして、言いたいことを言えばいい! やりたいことをやればいい! なんて、言葉でいえばカッコイイけど、それを貫くなんてのは、普通の人間にはやれませんもん。自分の信じる「正義」を貫くために、怒り通す人なんて、この業界ではあり得ない。一匹狼の侍みたいなジャーナリストでした。
越智 大リーグ・ドジャーズで20年にわたって監督を務めたラソーダ氏に、「俺の腕を切ってみろ、ドジャーブルー(の血)が流れてる!」という名言があるんですが、『月刊俳句王国』立ち上げから十年経って、私が改めてCPとして村重さんと再会した時、村重さんはラソーダ監督だ!って思いました。存続か否かの嵐に『俳句王国』も直面してたんですが、村重さんは怒鳴ってました。「この番組をやめてみろ、全国一千万の俳句ファンが、受信料拒否するぞ! その先頭に立つ、最初の一人が俺だ!」って吼えてました。村重さんの体には、俳句という血が流れてるんだと痛感しました。
夏井 NHKのラソーダ監督かあ、五七五の血が流れてたんだ(笑)。

俳句のある人生

越智 村重さんに、「これだけ俳句に関わってるんだからご自身もどこかの結社に入って俳句をされたらどうですか?」って言ったことがあるんですが、現役やってるうちはどこの結社にも入る気は無いし、入るべきではないと思ってる、と。でも「退職したら『いつき組』に入ってやろうと思ってんだよ」って。
夏井 そうなんですよ。「いずれ、お前さんとこに入ってやるからな」って、恩着せがましく言われてて(笑)。なのに、退職しても一向に句会に来ないんで、「なんで句会にこないのよ」って聞いたら、「お前さんがちっとも誘ってこないから、行けない」なんて言い出すし(笑)。
広瀬 その台詞も、丸ごと村重さんだなあ(笑)。
夏井 今年の『いつき組』の花見に、車椅子に乗ってきてくれました。食道癌で声が出ないんで、 筆談用の紙を膝に乗せて「皆に会いたいから来た」って書いてあるの。頑固で我が儘で、シャイで優しい蕃さん(俳号)を、皆ほんとに愛してた。
越智 「覚悟を決めた、俺はもう俳句から逃げられない」って言ってた村重さんの退職後の人生を豊かにしてくれたのが、奥様と共通の趣味ともなった「俳句」だった、という事実が嬉しかったです。お見舞いに何度か訪ねたんですが、句集『からからころと』を取り出して、一句一句解説してくれるんです。「夏井夫妻に無理矢理勧められて、出来心で作ってしまったんだけどな」なんて照れながら、ほんとに嬉しそうに。
夏井 あの日の花見大会句会ライブの投句が、たぶん最後の句だったんだと思います。蕃さんらしい酒の句でした。体には、酒と俳句の血が流れてたんですね、きっと。

来年は一升酒ぞと桜花 村重蕃


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2014年度 第一期 最終回


「鳳梨」理酔

鼻唄の母が連れ来る青嵐
夏川や対岸犬を荼毘に伏す
「土下座しろ」「殺すぞ」路地の百日紅
ソフトクリーム肘に垂れれば肘上げる
菩提樹の花にえぐ味の微かかな
前書き:柳川三句
どんこ舟ゆるりと合歓の花くぐる
鎌首の蛇するすると泳ぎ過ぐ
白秋の生家の庭の檸檬の木
嘆息の鳶の頭の水中花
山桜桃犬見上げれば児も見上ぐ
匂い立つ梅雨の気配や夜の門
秘め事はさらけ出すべし鳳梨食む


今一番やりたいことは、百万円握って無計画な旅に出ること。




「つまびらか」平山南骨

立葵しごとせぬ日の無精髭
眠たさや磯鵯のくね鳴ける
冷し中華鏡の中の明るき街
明日は雨羽蟻は腹を摺りて歩く
枇杷たわわ段丘崖をつづら折り
午報よぢれて夏蝶は風を叩く
ガレージのサンドバッグや梅雨の月
紫陽花や膨れ捲れて古雑誌
夏ともし展翅して死のつまびらか
黒南風やウッドベースの指踊る
箱眼鏡雲流れつつ育ちつつ
無尾猿のしんがりとして泳ぐなり


1968年生。高知市在住。「鷹」同人。




「鏡やがて」天玲

緑陰の扉を開け言霊のくにへ
女部屋の小さき蔀戸より若葉
田の水の震え蛙の小さき喉
翅は帆に蝶に留まる意志ある時
物忌みの小屋の筵の芯に黴
海霧すこし鳥は沖見て鳴き交わす
迷信のように夜明けの合歓に禽
歪みしはずっと歪みて蟻の列
王国の蜥蜴の娘手なずけて
妹にも優しいひとと見る螢
鏡やがて茂りに呑み込まれるだろう
死は午後飲むつもりのアイスココアのようでもあり


山仕事と書道と家庭生活の黄金比をめざしていますといいながらすべてをさぼりがちです。45さいになりました。




「翼生まるる」門田なぎさ

さきほどのさよならの手で薔薇を剪る
蜘蛛の子に音楽聞かす夕べかな
篝火に海の記憶や梅雨寒し
やがて雨渉りて蛇の美しく
錫色の蛇よ砂こすれあう音よ
星捉え風を捉えて夜店の灯
貝死して島のかなたに夏の雨
海月いつか空へ帰っていくかたち
重ね売る麦わら帽子夜が来る
画集めくるように朝焼けはじまれり
いつよりの退屈青い蠅叩
乾かせば翼生まるるかも水着


愛媛県松山市生まれ。第2回大人のための句集を作ろうコンテスト最優秀賞。この季節、帰宅途中の海岸線から見る夕焼けがとっても綺麗で癒されています。




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読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2014年7月号 〜 2014年9月号 1/3回目)


 白牡丹 岩宮鯉城

白牡丹を見し夜の浅き眠りかな
白牡丹に呼び止められし以後余白
出目金魚ふはりふはりと人待つ間
花菖蒲日暮の風のこもりけり
雨だれの大きなたまの梅雨入かな
蛍火となりきるためのエネルギー
退職の日も蚯蚓の這うてをりにけり
紫陽花の花より薄き死者の色
滝落ちて携帯ラヂオに笑ひ声
広島に強き引力甲虫


平成八年愛媛新聞カルチャー教室で組長に俳句を習い、平成九年から愛媛新聞へ投句開始し、年間優秀賞を十四回受賞。また平成二十二年に瀬戸内海俳句大会で大賞受賞したのが俳句人生での大きな財産と言えようか。



 未来 うに子

新宿は異国緑雨の昇降機
虹ニ重塔にゐるとき塔を見ず
夕焼けを切り裂きブルーインパルス
父の日の肩車より見る未来
かはりゆく夏服かはらない驛舎
天使魚に見られ食べあぐねるポワレ
月涼しいるかは鳴いて跳びあがる
疎まれてくすぶる炉心蛇苺
例文で済ます弔電ジギタリス
明けやすし酸つぱき家族つどふ通夜


木曜カルチャーに飛び込み2年半。車で2時間離れた松山へ出向き笑って習って顧みることが生活の一部に……。花の名前も知らないし鳥や虫は苦手だけど俳句は楽しい! 錆びた五感を目覚めさせ一生かけ季語覚えていくつもり。



 週末 竜胆

雲湧くや十年目なる登山靴
山頂の大蟻無口なる強さ
往還の峠にケルン積まれをり
夏山やドナーカードの自筆欄
ネクタイを緩めて赤き旱星
瓶底で死んでいる虫麒麟草
透明のスプーン二本花氷
向日葵の硬き産毛や十五歳
父の忌の首を振らない扇風機
週末や黒糖焼酎色の風


団塊世代の66歳。木曜カルチャーの4年生。退職後、福祉の仕事と共に俳句甲子園実行委員会のメンバーを務める。山歩き・ゴルフ・卓球・写真等、俳句以外の趣味も多く、予定表が埋まってくると安心する回遊魚系。



読者が選ぶ人気俳人!
「100年の旗手」連載者推薦募集

 今求められているのは、読者が読みたいと思う俳句作家。「100年の旗手」は、連載する俳人を、編集室ではなく、読者が選ぶコーナーです。
 「この人の作品集を読んでみたい」と気になる俳人を、1人3名まで推薦してください。その中から、推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行います。
 あなたのお勧めの俳人を是非推薦してください。

 推薦の方法

「この人の作品集を読んでみたい」という人を3名まで選んで(自薦は不可)、その俳号と活動場所(句会、誌面等)、推薦者ご自身の俳号(本名)、住所、電話番号を明記して、100年俳句計画編集室「作品集推薦」係へ送ってください。ハガキ、FAX、Eメールで受け付けています。Eメールの場合は件名を「作品集推薦」としてください。また、専用のインターネット投稿フォーム(http://www.marukobo.com/100kishu/)でも受け付けています。※投稿フォーム利用の場合を除き、推薦は他の投稿等とは分けてください。

締切 毎月末日

 現在連載している3名の方以外なら、一度連載された方も含め、どなたでも推薦できます。
 今回連載を行った3名の作品集の感想もお待ちしています!


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百年琢磨

 切れと詩情 しなだしん

「立夏」 八木ふみ

ヒロシマの相生橋をまた卯波

 「相生橋」は原爆ドームの近くにある、全国的にも珍しいT字の橋。その形から原爆投下の目印にされた。ここで合流する本川と元安川はいわゆる感潮河川で、潮の干満の影響が大きい。この句ではその満潮を卯波と詠う。「を」という助詞にある種の感慨がある。好みもあるが「ヒロシマや」と切る手もあるかもしれない。

ドア開く一分間の青葉風

 おそらくは列車のドア。最近はローカル列車などもほぼ嵌め殺しの窓になり、車窓から風を受けることは無くなった。一分の停車の間「青葉風」が、すこし淀んでいた車内へ流れ込む。

霊峰の風夏帽の落下点

 森村誠一の「人間の証明」を思い出した。「落下点」という把握がこの句の面白み。この作者は切れを嫌う方かもしれない。例えばこの句の「風」を「かぜ」と表記を変えるだけで、視覚的な切れが生まれるようにも思う。


「粽とく」 かのん

春深し二番庚申猿の面

 福岡では庚申日に猿田彦神社で「猿の面」を求める風習が古くからある。「初庚申」は殊に混み合うが、この句では「二番庚申」が詠われている。今年は四月十九日。敢えて「春深し」と季語を入れ、その頃の季節感を強めている。

鬼の形相や牡丹の咲ききるは

 破調になっていて読みにくくはあるが、「牡丹」の絞り出すような咲きようを「鬼の形相」という感性の措辞で詠い切っている。

海見据う筥崎宮の杜若葉

 福岡の筥崎宮は正月三日の「玉せせり」で有名な宮。参道から耀く博多湾が見える。事実のみを提示した句だが、「海見据う」の措辞と「杜若葉」によって神域の空気感が伝わる。


「これから」 妙

深く吸ふ朝の蒼さや五月来る

 「あお」色には様々な漢字が用いられるが、「蒼」は少しつめたい感覚が強いだろうか。この句では五月を迎えた作者の気分が「蒼さ」で表現されている。「や」の切れの効果も大きい。

バラ満杯のバケツ百ある出荷場

 「満杯」「百」と、やや説明過多かもしれない。「出荷場」も場面としてよく分かるが、詩情に欠ける感じが残る。語順などの句の整え方は別にして、「出荷場」を「出荷待つ」とすると、薔薇にも情景にも期待感が広がるかもしれない。

夏蝶の黒の重さの眩暈かな

 「夏蝶の重さ」という表現や、「夏蝶」と作者の「眩暈」の取合せは無いわけではないが、この句は「重さ」も「眩暈」も夏蝶のことで、作者がそれを感じ取って詠っているところが面白み。


しなだしん
1962年新潟県生まれ、新宿区在住。「青山」同人、俳人協会会員。句集に『夜明』『隼の胸』。


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新 100年の軌跡


2014年度 第一期
最終回


 隣家に客 仮屋賢一

まづ音の運ばれてきてアイスティー
夏めくや亀首長く息をする
薫風や立ちてバス待つ二三人
噴水の降らぬところの濡れてをり
薔薇園のアーチの蔭を濃く造る
サンドウィッチ開けてパセリ真ん中に
弁当の二段目ぎしり梅雨に入る
百日紅隣家に客の来にけらし
病葉や正字敷き詰め蔵書印
まだ竹に隠るるまへの今年竹
太陽の落とす波あり糸蜻蛉
水紋に余計の多し青蛙
吐く息のすべてうるさき熱帯夜
片蔭の端の落ち着かない様子
巴里祭ここは原語のままの歌詞


仮屋賢一
1992年生まれ。俳句甲子園出場を経て、現在京都大学工学部情報学科在籍。関西俳句会「ふらここ」代表、作曲の会「Shining」会員。




 女子校生 雀子

AメロとBメロの間に青嵐
太陽の塔にバナナの引っかかる
ロングホームルームだいすき海月すき
制服を脱ぎ油絵と扇風機
薔薇園の南を示す図にペンギン
ソプラノ系女子の睫毛はぱさついて
水筒は空で冷水機に直行
夏の夕ホルンは愛されて丸い
スカートは古着泰山木の花
モノレール通学iPodは黄色
浮く沈む泳ぐお臍に底がある
冷房のきつくて指定カーディガン
炎天の職員室にAED
手首には狂った時計日焼け痕
額縁を鉋で削る夏だった


雀子
本名、木田智美。1993年3月24日生まれ。大阪府立吹田東高校出身、龍谷大学在学中。12、13回俳句甲子園に出場。関西俳句会「ふらここ」に所属。




太陽の塔の謎 桜井教人

弁当の二段目ぎしり梅雨に入る 仮屋賢一

 二段の弁当、しかも二段目はぎしり。どんな人の弁当か想像ができる。愛情のこもった弁当と梅雨との対比。

太陽の落とす波あり糸蜻蛉 仮屋賢一

 波とは光の波長のことだろうか。考えてみると糸蜻蛉も光の波の中を泳いでいるのだ。微かだが確かに光を捉える糸蜻蛉の羽は光そのものだ。

巴里祭ここは原語のままの歌詞 仮屋賢一

 原語のままにするにはそれなりの理由があるはずだ。おそらくそれは祈りの言葉だろう。そう言えば戦後日本の公用語を仏語にせよと主張する一派がいたらしい。

太陽の塔にバナナの引っかかる 雀子

 太陽の塔を机上においている女性が私の職場にいる。理由を聞いても理解できなかった。太陽の塔にバナナが引っかかる理由を聞いてもやはり理解できないのだろう。作者も彼女も詩人なのだ。

薔薇園の南を示す図にペンギン 雀子

 実景だとしたら本当に見てみたいと思わせるつくりである。これ以上ない語順。

冷房のきつくて指定カーディガン 雀子

 「指定」の一語が情景を具体的な映像に導く。さりげないがしっかりとした手法の秀句。


1958年生まれ。愛媛県今治市在住。大阪万博でアメリカンドッグを初めて食べた時は、初めてシュークリームを食べた時以来の衝撃だった。第3回選評大賞および第4回選評大賞入選。



自分らしさ とりとり

 「隣家に客」は、日常のささやかな夏らしさを軽やかに知的に詠っていて素敵でした。

まづ音の運ばれてきてアイスティー 仮屋賢一

 カラコロと氷の涼しげな音が角を曲がってきたら、それはアイスティーだった。音と色のハーモニーが綺麗です。そしてこの明るい句を最初に持ってきたことが、あとの句への期待を高める効果を持つと思います。

サンドウィッチ開けてパセリ真ん中に 仮屋賢一
弁当の二段目ぎしり梅雨に入る 仮屋賢一

 晴れた日の真っ白いパンにはさまる緑のパセリ。雨の日のずしりと重いお弁当。どちらも美味しそうですね。ていねいに生活している作者が想像されます。

 「女子校生」は、雀子さんが、自分の表現を模索している、しかも掴みかかっているという感じがしました。つっぱねたような名詞止めがかえって魅力です。

AメロとBメロの間に青嵐 雀子

 おばさんは調べましたよ。Aメロは歌い出しの部分、BメロはAメロのあと曲調の変わる部分、ですね? 常識なのかな? 意味がわかれば「青嵐」が生き生きしてきます。

太陽の塔にバナナの引っかかる 雀子

 これ好きです。太陽の塔ってたしかに何か引っかけたい形。そこにダイレクトに「バナナの引っかかる」と言ったことで、夏のエネルギーが楽しく表現できたと思います。


1957年生まれ。三重県在住女性。第1回選評大賞優秀賞。


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超初心者から中上級者まで楽しめる
100年投句計画

 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天地人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選、並選を選んでいます。今回の先選者は、阪西敦子さんと加根兼光さん。後選者は、関悦史さんです。

 「へたうま仙人」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は大塚迷路さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。
(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)
写真:白鯨


選者三名による雑詠俳句計画


先選者 阪西敦子

 KSEは48人いない。たった片手である。だけれど、そのためにわたしの毎日が変わって、おかげで新しい知り合いもできた。そう、たった左手の腱鞘炎のために。11月からもう半年、水に弱いテーピングのために必ず炊事、洗顔、入浴はビニールの手袋をするので左手は肌理が細かくなり、症状を一発で見抜く先達たちが折々心配してくれる。こないだテープを変える瞬間を見たら、テーピング焼けしていた。KSEと歩む新たな季節。


黄菅一輪香は木もれ日をのぼりたる てん点

 夕方にちかづくにつれ、その花を開く黄菅。だんだんと日は傾きつつ、黄菅の最初の一輪が咲いた。さきがけの一輪には、まだ木洩れ日がはっきりとわかるくらいに日の光が残っていて、それを伝って日へ向かうように香りを放つというのだ。最初の一輪ならではのくっきりとした香りと光の変化、日と影の香りの違いが、夕方に残る日の強さを見せることによって、詩的かつ私的ながら、押し付けることなく描き出されている。



夕暮を双子の通る五月雨 みちる
 夕暮といっても、五月雨ということには、もともと暗いものを暗くなる頃だろう。そこを双子が横切る。双子とわかるからには姿の似た二人が、双子とわかるくらいの明るさの中を通る。すべてが絡み合って一つの重なりもない。

農園に子等しゃがみ居て穀雨かな 富士山
 穀雨と言っても雨が必ずしも降っているわけではないが、雨の気配はある。空の上に雨が蓄えられているような重さが、子供に感じられたわけではないだろうが、ふと穀雨の感慨に捉えられる。いま、動き出す土の香りが近い。

マーガレット咲く大陸に半島に ソラト
 よく考えると大陸と半島の並列は珍しい。大陸は海と対で、半島はその一部だ。半島と別の大陸の一望される海峡なのだろうか、大陸から半島へズームする視線か、いずれもマーガレットの広さと密度、その境界の曲線を際立たせている。

地球儀の青深まりし梅雨の入 幸
 地球儀の青は水の色。梅雨がはじまれば本当の水は色を落とす。地球儀はその窓辺からの暗さを湛えて、色を深めるのだろうけれど、「地球儀」であるからには、内側からも暗さを増すようだ。

ががんぼやかたと鳴り止むオルゴール  瀬戸 薫
 ががんぼはどのくらい重さを感じているのか、床の感触があるのか、振動を受けるのか。そのゆらゆらとした往来の中途、オルゴールが最後のぜんまいをあてて鳴りやんだ。なんといえばよいのか、限りなく同じほどの重さで。



日盛りにうす紫の帯締めて レモングラス
万緑や俳都は西に細く海 樹朋
雨音に数分早く雨蛙 樹朋
穀象やぼとりと落つる黒インキ 蓼蟲
名なき鳥鳴きて明けゆく空の初夏 緑の手
泉湧く画家の茶室は閉ざされて てん点
白薔薇のブーケ手渡す姉妹かな ぴいす
葉柳の覗き込みたる水面かな 不知火
五月雨の摩天楼には魚影見ゆ 元旦
百といふ齢は遠く茄子植へる ちろりん


先選者 加根兼光

 俳句甲子園の地方大会も始まった。マガジンが発行されるころには三十六チームの本戦出場校も決定している。今年も熱い夏が来た。年々出場校のレベルが上がり地方大会でも本戦並みの俳句やディベートが見られるようになった。高校生たちが真剣に戦うように審査員も真剣にその戦いに参加しなければと思う。高校生が年々鍛えられるように審査員も鍛えられる、そんな大会でありたいと思う夏の朝である。


マーガレット咲く大陸に半島に ソラト

 マーガレットの白い花が画面一面に広がる。今は観賞用として栽培されるが元はカナリヤ諸島から発してヨーロッパ大陸へと広がったのだろう。半島を越え海を越え。そこには人々の暮しや戦もあっただろう。花は文明とともに広がり、文明は幸せと戦いを広げる。一読、景の美しさだけを詠んだと見えて、文明批評にもなっている、とは読みすぎか。マーガレットの純白の裏にある暗さも連想させる句である。



穀象やぼとりと落つる黒インキ 蓼蟲
 近頃見かけなくなった穀象であるが米櫃の中でうごめく姿はやや不気味。ペン先から「ぼとり」と大きく落ちる黒のインキ。夜をうごめく穀象のようにそのペン先から生まれるものもまた不気味に紙の上を這うのだろうか。

夏雲や硫酸銅の海の色 雨月
 真っ白な夏雲。硫酸銅も無水では真っ白な化合物であるが水をたらすと青色になる。夏雲から降った雨滴が硫酸銅を変色させるように海も青を豊かに広げてゆく。やがて白の夏雲は消え青だけが残る海である。

登り来てドーベルマンの夏館 もね
 やや高台にある家を目指して「登り来た」。迎えるのは目付きも鋭い犬。挑みかかるように吠えられたのだろう。上五中七が的確な景を生み出し訪れる夏館の持つ佇まいに自ずと導かれる。その館で何が待つのだろうか。

沈丁や記憶の井戸に沈む石 杜木あわい
 沈丁の甘やかさに導き出され記憶の底の石は静かに揺らめき始める。詩的な言葉に込められたものは杳として実体は見えないが沈丁の香りがそうであるように漂い、姿を露わにするのである。井戸はフロイトの「イド」か。

届きたる手紙緑の匂ひして 幸
 夏を運ぶように届いた封筒には遠く離れた友の便りとともに溢れるような緑の匂いが閉じ込められている。開封した瞬間から漂う匂い。その匂いとともに緑の景色も広がる。隔たりを埋める緑の便りである。



泉湧く画家の茶室は閉ざされて てん点
少年は白い羽根さし夏帽子 樫の木
おにぎりは旨し若葉の湖青し 八十八
白き腹ぬらぬらと蛇のたうてり 青蛙
椎の香の染み込んで来る闇夜哉 喜多輝女
泡音の影は金魚の砂の上を ポメロ親父
メレンゲをくるりと丸め雲の峰 一心堂
引鶴の風にまぎれて清々し 人日子
春の昼懐かしき歌とともにゆく アンリルカ
あくび出るほどの風なり春の雲 大阪野旅人
コンビニの制服が夏カレーパン 理酔


後選者 関悦史

 池澤夏樹個人編集による「日本文学全集」全30巻の刊行が発表されました。同じく個人編集で独自路線を行った「世界文学全集」に続く企画で、十一月に河出書房新社から。現在活躍中の作家による古典の現代語訳が大半を占めますが、第二十九巻が「近現代詩歌」にあてられており、「詩 池澤夏樹 選・新釈/短歌 穂村弘 選・新釈/俳句 小澤實 選・新釈」と俳句も収録されることになるようです。どういう選になるか楽しみです。


特選句
夏来る輝け前方後円墳 小市
 「夏来る」と「輝け」がダブり気味ではありますが、命令形で変化がつき、緑生い茂る前方後円墳を前にした心の弾みが出ています。墳墓は墳墓として墓それ自体も生の営みの中にある。そこに感応しているようです。

ががんぼが難破してをる終ひ風呂 もね
 ががんぼ特有の間抜けで情けない軽い邪魔さが凝縮したような場面です。水に浸かってしまった句というのは意外とないかも。「難破」の見立ても「溺れ」では報告になってしまうので、これでいいのでしょう。

はつなつの砂にまぎるる金の粒 うに子
 川か海で砂金を見つけた場面でしょうか。自然の中から金の粒があらわれた驚きや喜びが、そのまま「はつなつ」という漠然と広がるものの価値再発見に通じており、そこに自分も含まれている。気持ちのよい賛歌です。


並選句
母は好き娘は嫌ふ豆ごはん 杉本とらを
夏薔薇や迸る水 目薬 KIYOAKI FILM
式終えて残った二人青葉潮 藻川亭河童
茶人かなひょいと飛び越え若葉風 レモングラス
ざわざわとラジオのノイズ昭和の日 迂叟
雄蕊なき白百合強く匂ひけり ヤッチー
キリン見て象見てカバ見て薔薇を見て 藍人
冷蔵庫開けて用なきこの身かな 未貫
僧侶子を叱り毒だみの根を抜く みちる
花過の芥とどむる高瀬川 蓼蟲
薫風や流行の歌の行進曲 和音
真っ直ぐに白線引かれ夏近し 富士山
ががんぼの影に驚く灯下かな のり茶づけ
ビュレットを離れる滴目借時 雨月
万緑を抜けケーブルはもはや空 緑の手
泉湧く嫁は第二子授かりて 七草
十薬を抜いてあらはに猫の墓 樫の木
ライラックビニールハウスには演歌 ほろよい
廃屋の芥子若き獅子の匂いして 一走人
たて笛を先頭に行く植田道 あらた
バージンロード歩く父娘に薫る風 ぴいす
高台の校舎より歌風薫る 八十八
継獅子の上へ上へと夏立てり おせろ
親燕復元船を行き交ひぬ 八木ふみ
消防の訓練放射薄暑光 青蛙
なんじゃもんじゃ三日見ぬ間に花盛り 喜多輝女
右利きの蛇が来るその裏をかけ ポメロ親父
初時鳥は聞いたかと問う野良帰り 不知火
風鈴や路地は迷路の行き止まり ゆりかもめ
夏布団蹴る空爆の翅の音 ソラト
夕立あと錆びた鉄鎖の匂う町 一心堂
青葉の湯大師も入り給ひしか 空
五月雨や六時間目は自習です 元旦
市川や荷風の鼾梨の花 まんぷく
幼子の尻濡らしたる磯遊 人日子
収骨はかさかさの音散る桜 柊つばき
ぼうたんやみ胸ゆたかに観世音 省三
此の村の螢が程の未来かな ちろりん
ダムの村八重の椿を枯らしけり 北伊作
雨宿り石斛の花見上げている エノコロちゃん
白蓮やもう通るまいこの小径 杜木あわい
薔薇の名のマリアカラスよ島土産 えつの
頑なな想い貫く春の風 アンリルカ
一年生少し汚れた白靴 ひでやん
枕元手紙を置いた母の日か まこち
補聴器をはずせばここは夏の海 鯉城
亀の子の急ぎて四肢の空まはり あおい
武蔵寺の今朝の箒目若葉風 松ぼっくり
葉桜や光にそよぐ万国旗 瀬戸 薫
階段道に腰掛け風鈴売るをとこ 大阪野旅人
歳時記(夏)開けば醤油の染み 理酔
麦秋や沖縄行きの欠航す 青柘榴



関悦史(せきえつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。

加根兼光(かねけんこう)
1949年大阪生。俳句集団「いつき組」組員。第9回俳句界賞受賞。



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へたうま仙人


文 大塚迷路

 梅雨も半ばあたりを過ぎ、体も梅雨に馴染んできたこの頃ぢゃが、皆様はいかがお過ごしかの?
 今月も、へたうま楽園の芝生の上で寝転ぶなり飛び跳ねるなり、自由にくつろいでくだされ。
 ところによって棘注意報が発令されているので注意は必要ぢゃぞ。

人にいちゃもん猫にパチモン水羊羹 青萄

 う、いかにも不味そうな水羊羹ぢゃ。「パチモン」が水羊羹にも掛かるところなんぞ、まったく持って離れ業ぢゃ。「ん」の脚韻の正当性も一気に吹っ飛んだぞ。最近の犬猫の種類の多さをパチモンと言い放つあたり、社会性俳句の荒星現る現る、ぢゃ。

赤き薔薇情熱すべてあの娘へと たっ君
鉄線花蔓よ天空伸びてゆけ たっ君

 何かありましたかな? 恋は誰をも詩人にさせる、と神代の昔から言われます。何かありましたら遠慮せず、恋指南資格二級のワシに相談して下され。

母の日やとにもかくにも母はいる ケンケン

 そうなんぢゃ。誰もが母から生れてきたんぢゃ。いまだに男尊女卑がまかり通っている国もあるそうぢゃが、この句を標語にして少し立ち止まって考えて欲しいものぢゃのう。
 「とにもかくにも母はいる」幸せをじっと噛み締めたいものぢゃ!

青あらし老人ばかりにぶつかる 小木さん
地べたで遊ぶ老人と青嵐 小木さん

 老人と青嵐を大胆に連作するあたり、まさに手練れの骨頂ぢゃ。「青あらし老人」がおったら面白いじゃろうなあ。「老人と青嵐」が地べたで遊んでいる所を見た作者は幸せもんぢゃ。うらやましいぞ。

五年目の入居者来たり燕の巣 南亭骨太

 五年続けての来訪とは、よっぽど居心地がいいんぢゃのう。燕に替って礼を言うぞ。
五年目の年季の入った燕の巣の形、色、やがて生れるであろう小燕まで、読者に想像させる技は、微妙にニクイのう。

燕来る学園都市の下宿屋さん コナン

 一瞬、若いツバメ?と思ったがこれは違うぞ。学園都市という近代的な場所に、ノスタルジックな下宿屋さんの舞台設定とはなかなかのテクニシャンぢゃ。燕のツツーーと飛ぶ様が絵になるぞ。

五月雨は一途なりけりしほれぐさ 未々

 萎れた草を少しでも立ち直らせようと降る五月雨。その献身的な姿には頭が下がるのう。「しほれ草」に作者の心情が投影されている、とは深読みが過ぎたのう。いかんいかん。

さよならを決めたのは誰青嵐 ゆまるばたこ
占いのいい日悪い日五月晴れ ゆまるばたこ

 ある時代を席巻したちょっと(かなり)湿った叙情フォークな句かと思えば、下五の明るい季語で俄然目の前に希望が広がったぞ。占いのいい日も悪い日も、梅雨の晴れ間のお日様と一緒に笑い飛ばそうぞ!

好い女気取って今日の初松魚 台所のキフジン

 ○○を質に入れてでも食う、とまで言われた初鰹。そんなことも鼻で笑って食しているご婦人の姿がなんとも痛快ぢゃ。うまいものはうまい、面白い事は面白い、で世の中うまく回るってなもんでぃ。べらんめー、ぢゃ。

炎天や名を成して載るラブレター  あきさくら洋子

 中七のナ行の畳み掛けが心地よいリズムを奏でておるのう。我々が文豪にでもなったら、あの赤面のラブレターも「あの文豪のラヴレター特集」なんぞに、誰の断りもなく載るのかのう?「炎天」のメタファーがなんとも意味深ぢゃ。

薫風にかざす履歴書反り返る しんじゆ
運命は私が握る若葉風 しんじゆ

 この過剰ともいえる前向き加減が潔いのう。人生これもんぢゃ。この先も幸多かれ五馬身差逃げ切り的追放!


 へたうまの何たるかを熟知していない未熟者を今月も追放してやったが、へたうまの道は険しく、曲がりくねくねしていると、昔から相場は決まっておるもんぢゃ。これでようくわかったぢゃろう。
 そうは言っても、誰もが一度はあこがれられるへたうまの皆様、くれぐれも油断召されるなよ。



へたうま仙人
 年齢 卑弥呼がおっぱいを飲んでいた頃、ワシは青春真っ只中ぢゃった。
 好きなもの 霞のシャーベット(PM2.5抜き)
 嫌いなもの 上手な俳句
 将来の夢 大器晩成


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ

 歳のせいか最近人の名前がでてこない。先日も、映画「男はつらいよ」の柴又帝釈天の住職の呼び名が出てこない。俳優は笠智衆。寺男は佐藤蛾次郎とかは出てくるのに、その住職の呼び名「〇〇さま」が出てこない。人に訊けば早いが、こーゆー場合できるだけ自分で考えると脳の活性化に良いとゆーので意地になることにしている。終日イライラして十二指腸に潰瘍ができかけたころ、「御前さま」とポロっと出た。夜中の二時ごろ、午前さまだった。オソマツすぎ。脳活性できてるのか?



三社祭厨房より怒鳴り声 七草

 三社祭といえば浅草。褌に晒し、白足袋姿の男等が町中のあちこちで御輿を担ぎまわる伝統的かつ勇壮な祭りですが、浅草という土地柄とも相まって祭りの間はまさに町中混沌としています。その様子を三社祭りから一歩引いた視点である「厨房」でとらえているところに、この句の鋭さがあります。繁忙を極める厨房の怒鳴り声が、より一層三社祭の混沌を際立たせているといえます。



春昼やこんなところに母の針山 迂叟

 こんなところとは一体どんなところか釈然としない。そこにあるのは最近では死後になりつつあるような気もする針山。老いた母ともども曖昧模糊として春の昼らしいが、「春昼」ということばが、はっきりしすぎているのがやや気になる……。

ぼうふりのへのへのもへじ あらた

 ぼうふりは、ぼうふら(孑孑)。「ぼうふらの考えてまた沈みけり(近藤酔船)」という句があるが、この動きをもっと創造すれば揚句のようになるのかもしれない。へのへのもへじ、をみつけたのがお手柄です。みんなひらがななのも、らしくてよい。

空が始まる君は素足だ 北伊作

 水平線を見ているのでしょうか。仮に「海が始まる君は素足だ」では、あたりまえに過ぎる。視点は空と間逆の足元。このギャップが景を拡大して、もっと言えば青春の高揚感へと繋げていると思う。

父さんと筍を蹴飛ばしに ポメロ親父

 筍掘りを、「筍を蹴飛ばしに」という言葉をみつけて着地させたこと、これがこの句の全てではないかと思います。掘った筍を足で蹴って一か所にまとめるということか……まあそんなことどうでも良いと思わせるインパクトがあります。

座敷より眺められてゐる蚯蚓 みちる

 犬が人を噛んでも不思議はないが、人が犬を噛めば不思議ある。その類の妙な味わいがあります。眺められている蚯蚓は、釣り用なのか、それとも雨上がりの庭に這い出した蚯蚓か……不思議の妄想が膨らみます。



五月雨や爪でホチキスを外す 元旦
菜の花畑に降りてしまって葱は坊主に 多満
聞きたいことだけひろふ耳 うに子
八十八夜空飛ぶためのアブラカダブラ 藍人
去年の蛙と目が合う 緑の手
組対四課の腕章夏祭り 七草
なめくじも人見知りするのか もね
運命に舵無いので今日も白シャツ しんじゆ
骨になった犬を踏んだ 理酔
大夕焼ポッケにごそごそある秘密 たま


並選
戦艦の角にトースト焼けにけり KIYOAKI FILM
堂島はみな偉く観ゆ腹減った 藻川亭河童
電話の声チョコレートは体にいいんよ  レモングラス
大正生まれの姉妹の実家桐の花 ヤッチー
国の統制されて行くさまを見つつ ケンケン
生きる覚悟の葉桜 小木さん
不機嫌なスキップ 小市
ハンモック揺れたら酔った 和音
宵の明星ウルウル明日は五月雨 南亭骨太
父の顔忘れたと母の言う のり茶づけ
猫に引掻かれた手で顔を洗う 樫の木
麦秋という雲の上にいる もね
夏の恋はあてどなくただよう 一走人
昼寝ばかりして少々の罪悪感 喜多輝女
山笑う綿菓子ぺろんぺろん あきさくら洋子
食べきれぬ夏蜜柑ばかり剥いでいる 不知火
垣根ごしバラ褒めらるる朝 ゆりかもめ
車椅子の目の高さまで降りる ソラト
そんなこと皆知ってる日はまた昇る まんぷく
笑ってなんぼの人生よ 柊つばき
カボチャばっかこんなに植えてどうならい  ちろりん
樫落葉カサカサと エノコロちゃん
万緑のシャワー夫は風になりたがる コナン
まっすぐて田舎は遠き薄暑かな 鯉城
緑に押されっぱなし 幸
虹色と決めているのは夏の服 あおい
まだ主婦で居るときゅと締め柿若葉  台所のキフジン
煙は仏となり藤にたゆたふ 松ぼっくり
欠伸をしてもひとりにあらず 大阪野旅人
できたての線路沢蟹の憂鬱 ザッパー
雨の夜の嘔吐物に滑る 理酔
桜若葉抜ければ眠る廃車群 青柘榴



きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「層雲」同人。写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。



【100年投句計画】投句方法
 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可)、俳号(なければ本名の名前のみ)、本名、電話番号、住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。
ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙人」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、7月20日(日)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがきFAXでも投句できます。


さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(俳句ポスト365のページ参照)


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.12


sunset in garden
two deer walking quite slowly
white clover petals

白詰草暮れゆく庭を鹿歩む


(直訳)
夕暮れの庭
二頭の鹿がゆっくり歩む
クローバーの白い花びら



The woods are dark and green but it is only June. Will they get still greener and darker? We must wait and see, because I know that summer will pass quickly.

まだ六月なのに、森は暗くて緑だ。もっと緑に、もっと暗くなるか、僕らは見守っていよう。だって(山の)夏はすぐに過ぎ去ってしまうって知ってるから。(訳:朗善)



ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第40話
「シュガー」 スタンリー タレンタイン


灼熱の街に紫煙の苦き蜜 蛇頭

 「紫煙の方舟」とはジャズ喫茶のこと。ジャズが一層ビタースウィートに方舟を彩る季節は夏。取り分け7月はジャズ者にとって感慨深い。ビリー ホリデイとジョン コルトレーンの忌日が7月17日。ジャズをこよなく愛した石原裕次郎も87年のこの日に落命した。

CTI夏星集いシュガー演る 投槍

 なので、7月号のテーマはジャズへのリスペクト的名盤が良いと思っていた。「シュガー」はCTIレコード所属オールスター共演の名盤。タレンタイン作の主題曲も良いが、聴きモノは何と言ってもコルトレーン作曲の「インプレッションズ」である。
 まあしかし、この句のアルバムの切り取り具合はスゴイ!!

マニュキュアの指で奏でる木下闇 蕪榴子

 今回のサブテーマは、やはりタレンタインの「チェリー」である。そのジャケットのセクシー度は、演奏の出来栄えとともに「シュガー」と甲乙つけがたい。結果、予想どおり艶っぽいジャケ句が連発されてしまった。「舌先と足の指」「手の指と柔肌の窪み」であるな、と単純に構図を捉えた直後に「シュガー」→「チェリー」と、思わせ振りな表題が飛び込んでくるのだから致し方ない。で、数あるそれ系ジャケ句の中から、その「思わせぶり」が粋な一句を選ばせていただいた。
 A&MとCTIレーベルの見事なジャケットを演出したのは写真家のピート ターナーである。

夏の月万に砕いてヴィブラフォン 猫正宗

 今回の一番人気句は、サブテーマの音の写生句だった。ネタがタレンタインのテナーじゃなく、共演者のミルト ジャクソンが奏でるヴィブラフォンであったことは少々皮肉だったが、僕は迷わず特選句とした。確かに「チェリー」のミルトは主役を凌ぐほどの熱演で、パワフルかつソウルフルこの上ない。おそらく猫さんは、一曲目のブルース ナンバー「スピードボール」のミルトのソロに誘発され、この句を弾き出したのだろう。
 作曲は、このレコーディングの数ヶ月前、夫人に射殺された天才ジャズ トランぺッター、リー モーガンである。

黒南風の鈍き光がジャズファンク 蛇頭

 クロスオーバー? フュージョン? ブルース? ブラック ミュージック? ファンキー? ジャズ? 何かしっくりこないなぁ!? う〜ん「シュガー」は、やはりジャズファンクだ。



http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


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ラクゴキゴ


第40話
『夏の医者』
〜 舞台はどこ? 四国でもいける? 〜


あらすじ
 真夏の炎天下、畑でお百姓三人が仕事をしている。
 と、中の一人が急にドタッと倒れてしまう。今で言う熱中症だと思われる。
 早く医者を呼んで来なければいけないが、なんせ山の中。隣村の先生のところまで山越えの八里半。歩いて呼びに行くことに。
 到着すると先生も畑仕事中。「遠いんでやめとこう」など言われながらも、なだめすかして来てもらえることに。
 先生「暑いんで倒れたんじゃろうが、何か妙なもの食べなんだか?」
 百姓「それなら、ちしゃ菜をたくさん食べよりました。」
 先生「それじゃ。夏のちしゃは腹にさわるからのお。」
 山越しの途中、松の大木が道をふさいでいるのかと思えば、これが大きなうわばみ。
 先生とお百姓さん、うわばみに飲まれてしまう。
 うわばみの胃袋の中で二人は思案。何とかして出たいが……。
 そこで先生、下剤を調合して外へ出ようと思いつき、合わせた薬をお百姓がパラパラとまき始める。
 案の定、うわばみの腹はすごい勢いで下り、二人は無事外へ。
 しかし、大事な薬箱が腹に残ったままということに気付く。
 先生、うわばみにもう一回飲んでくれと頼みこむが、うわばみは嫌じゃと断る。
 先生「なぜいかんのじゃ?」
 うわばみ「夏の医者は、腹にさわる。」



 落語には、「ここじゃないとダメだ」という噺がいくつもあります。「愛宕山」「高津の富」などは地名が入ってるし、「三十石」なども京都→大阪の淀川が舞台。
 上方落語から江戸落語へ移され、地名を変えて演じたりしますが(逆もあり)、やはり元ネタにはなかなか勝てない。
 また、舞台ははっきりしてないけれど、江戸っ子じゃないと話が上手くいかないとか、大阪弁じゃないとしっくりこないというような噺もあります。
 そんな中で、この「夏の医者」はとてもゆるやか。登場人物がみな“どこかはっきり分からない”田舎の言葉で話します。
 これが逆に正統派の大阪弁や、江戸の言葉ではこの噺は成り立たない。というか、面白味が半減してしまいます。
 だから!!
 この噺、四国の伊予のどこかにありそうな言葉で演じてもイケそうなんです。
 「〜じゃけん」とか「ほうよほうよ」とか「診に行ってこうわい」なんて入れても、全然OK。
 実はこの七月に新居浜で全国からアマチュア落語家が集まるお祭りのような落語会があるのですが、そこに僕も出演します。で、この「夏の医者」を伊予弁っぽいやり方で演じてみようと考えています。
 西条の「あんのーえ」や南予の「なーし」、小松の「がん」「ぞん」「かん」なんかバンバン入れてみると楽しそう。
 今からワクワクしている僕なのであります。

 先生と呼ばるる仕事夏羽織


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ホンヤクサイホンヤク


翻田 訳蔵

 俳句初心者、翻田訳蔵がネット上の翻訳ソフトを使って名句を翻訳、再翻訳し、そこからインスパイアされた(パクッた)句を発表していこうという馬鹿馬鹿しくも実験的で図々しいコラムです。


今回の俳句
 池の朝がはじまる水すましである 尾崎放哉

エキサイト翻訳(日→英)

水す from which the morning of a pond begins -- better

 では、再翻訳

池の午前が始まる水す -- よりよい

 「水すましである」を「水す」と「ましである」に分けてしまったようです。けれど、「水す」っていったい何でしょう?「水ッス!」って感じでしょうか?

 続いてGoogle翻訳(日→英)

It is a whirligig beetle morning of pond begins

 再翻訳

それは池が始まるのここまでカブトムシの朝です

 調べたところ「水すまし」は「カブトムシ(beetle)」の仲間のようです。「whirligig beetle」だけで翻訳するとちゃんと「水すまし」になるのですが、この1文で翻訳するとなぜか分けてしまいます。また「whirligig」だけで翻訳すると「回転木馬」になりました。

 最後に、Yahoo!翻訳(日→英)

Water すましである where the morning of the pond originates

 では、再翻訳

池の朝が始まる水すましである

 おー! 元の句に戻ってきましたよ! 素晴らしい!「Water すましである」と翻訳された時にはどうなることかと思いましたが。
けれど、これはこれではなんかもの足りませんね……。
 それでは、この3つを受けて一句。


池の朝ッス! はじまるッス! 水すましッス! 翻田訳蔵


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お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第21回 「銀の羊と鶯つれて」
(愛媛大学医学部演劇部 世界劇団公演、脚本・演出 本坊由華子、出演 本坊由華子、赤瀬里瑛、小川直史、他、2014年5月17日、18日、愛媛大学医学部重信キャンパス)


 今月号のmhm通信で報告されている「道後宝厳寺俳句フォトライブ」に行って参りました。屋外イベントというのは、それだけで気持ちのいいものです。月を詠んだ俳句をモチーフにしたパフォーマンスを目前にしながら、振り仰げば本物の月。なんて、野外ならではの醍醐味といえましょう。
 屋外とは若干違いますが、愛媛の学生劇団がテント芝居をするというので、松山市の隣の東温市まで行ってきました。
 「第十四回」でも触れたように、テント芝居というのは今や絶滅寸前とのこと。そこに敢えて挑むことに興味を惹かれたのです。

芝居テント波打つ野外ライブにも

 本公演は第38回愛媛大学医学部医学祭のサークル企画として上演されました。テントやそれを取り巻く医学祭という異空間・非日常的時間を充分には生かし切れてはいなかったかな、とは思ったのですが、それでもテントの中に身を置くというだけで、やはりワクワクするものです。また本公演には世界劇団の団員以外にも、他劇団の役者、舞踏家、DJなど、様々な分野の人が参加していました。その分、良くも悪くも混沌としたものになっていたのですが、なに、新しい「世界」が混沌から生まれるというのは多くの神話が語るところ。まずは、はじめの一歩、でしょう。

緑陰の役者ら陸亀横切らん

 ところで、冒頭のイベントでは、俳句+フォト+ライブに加え、ダンスがコラボされていました。他日、やはり非常に興味深い身体表現でみせる「並置」という芝居を観ました。紙数が尽きたので、こちらはまたの機会に。
 さて、7月の市民劇場はテアトルエコー公演『風と共に来たる』(7月16日(水))。かの『風と共に去りぬ』のメイキングコメディ。映画好きな方にもご覧いただければと……。



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。


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百年歳時記


第14回 夏井いつき

 有名俳人の一句を紹介鑑賞するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月ご紹介していきます。

田を植える農夫砂鉄のような鬚 ひでやん
 「田を植える」のが「農夫」であるという措辞はいかにも当たり前ですし、その男の「鬚」に着目する発想もありそうですが、そんな一句に個性を吹き込んだのは後半の比喩です。
 「ひげ」は「髭」「鬚」「髯」と三種類ありますが、それぞれ「髭=口ひげ」「鬚=あごひげ」「髯=ほおひげ」を意味します。田植えを前にした忙しさで、この数日は剃る暇もなかった「鬚」でしょう。「砂鉄のような」という措辞がツンツン伸びた剛毛を活写。「田を植える農夫」の土臭さや汗臭さは、「砂鉄」の一語が持つ鉄色のイメージ、鉄の匂いと響き合います。「田植える農夫」の光景から「砂鉄のような鬚」にカットが切り替わる構成も巧い作品です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』5月30日放送分)

学僧の煮梅差し出す高野山 ターナー島
 「高野山」にあるこの僧坊では、自給自足も修行の一つに違いありません。寺に実った「梅」の形の良いものを選んで「煮梅」にし、その他の「梅」は干して漬けて梅干にしているのでしょう。そしてそれらの梅は日々の質素な膳に饗せられるのでしょう。
 「学僧」が手作りの「煮梅」を差し出したのは、僧坊を訪れた客でしょうか。それとも、学問に励む仲間たちとのささやかな息抜きでしょうか。よくよく考えると「高野山」は「梅」の産地でもありますから、取り合わせの句材としては有りがちなのかもしれませんが、「学僧」が差し出す「煮梅」とは、なんとも清貧な味わいの一句。この「煮梅」もまた甘すぎない清々しい味でありましょう。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』6月6日放送分)

伽藍炎上守宮は何を見ていたか 塔山音絵
 七塔伽藍の並ぶ大きな寺院。その「伽藍」の一つが「炎上」する凄惨な場面を「伽藍炎上」の7音で一気に言い放つ迫力。上五の字余りは凄みをもって読み手の脳裏に流れ込みます。
 火の手と煙の匂いにいち早く気づいた「守宮」たちは、ザワザワと逃げ始めます。「伽藍」に住む数知れない「守宮」たちは小さな声で鳴き交わしながら、危険を知らせ合っているに違いありません。「守宮」の群れの中には、出火の顛末を覗き見た一匹もいるのかもしれません。闇の中を走り出す「守宮」たちの背後には「炎上」の火が迫ってきます。三島由紀夫著『金閣寺』炎上の場面が、一句の背後に立ち上がってくるような魅力に満ちた作品でした。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』5月16日掲載分)

九龍の錆吐き出せるシャワーかな 奈津
 「九龍=クーロン」は香港の地名。この固有名詞が持つ連想力(イメージ喚起力)は、充分に詩語と成り得ます。
 「九龍の錆」とは何?「錆」を「吐き出せる」とはどういう状況?と、脳が目まぐるしく意味を探ろうとしたとたん、下五に「シャワーかな」と季語が出現する語順がなんとも絶妙。香港の「九龍」のホテルの「シャワー」から出てきたのは「錆」の混じった水だった、と意味が分かったとたん、「錆」の臭いが我が鼻腔に生々しく再生されます。香港を歩き回った一日の埃と汗を流す水に混じる「錆」は、エネルギッシュな香港の街の臭いのようでもあります。季語「シャワー」が引き出す鮮やかな肉体的記憶の再生です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』5月30日掲載分)

星々は麦の隣人幾久しく こま
 「麦」はメソポタミアの時代から、人類と共に生きてきた命の作物です。我々人類が一万年以上も前から天体を見て農耕の時期を図ってきた事実を、「星々は麦の隣人」という詩語に言い換えることによって、上五中七の12音は詩的真実を獲得しました。
 読めば読むほど佳い言葉だと思い始めたのが、下五「幾久しく」という和語。いつまでも変わらないさまを表現するこの美しい言葉が一万年前から現代へ、そして一万年後へと詩的真実を繋ぎます。乙女座の女神が持つ麦の穂の先に位置するのが「スピカ(穂先)」という名の星。季語「麦」の向こうに「スピカ」という美しい星の名前を思い浮かべてみるのも素敵な感興でありましょう。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』5月23日掲載分)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


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会話形式でわかる
近代俳句史超入門


プロローグ
文・構成 青木亮人

 大学で俳句を研究する青木先生と、その教え子で俳句甲子園の出場経験もある大学生の俳子さんが雑談を交えながらの近代俳句史超入門。

正岡子規って何がそんなに凄いの?

 道後公園を散歩していた青木先生が、大学の授業で教えたことのある俳子さんと久々に偶然出会い……。

子規が「古い」と思ったものとは?

青木先生(以下青) こんにちは。お久しぶり……凄い格好ですね。まさか菅笠に脚絆とは。演劇部に入ったんですか?
俳子(以下俳) あら先生、お久しぶり。研究者なんだから見れば分かるでしょ、敬愛する正岡子規が東北旅行に行った時のマネをしてるのよ。彼と似た格好をすれば少しはいい句も詠めると思って……ごほごほ。うっ、喀血が。
青 ここ、道後公園ですよ。みんなヘンな眼で見てるから笠だけでもとった方がいいのでは……それに喀血なんてしてないじゃないですか。
俳 傑作をモノにしようと努力を傾ける乙女心も知らずに……あ、一句できた。「夏嵐机上の白紙飛び尽くす」。
青 それは子規の句。しかも、机なんてどこにもないですよ。
俳 それぐらい私は子規さんに憧れているということよ。(笠をとり、汗を拭う)
青 子規への憧れは分かりましたが、そもそも子規のどこに惹かれたんですか?
俳 何を今さら。俳句革新の英雄! 教科書には「いくたびも雪の深さをたずねけり」が載っているし、「病床六尺」の名随筆もあるわ。
青 確かにそうかもしれないけれど、当時の子規の何が凄かったのか、実はよく分かっていないことも多いんですよ。
俳 へー(さめた口調)
青 まあ、そう言わずに。子規が俳句革新のリーダーで、彼から近代俳句が始まったのは間違いない。でも、明治期に彼が何をしたのか、内実というと大げさだけど、今の私たちの知らないことも多いのでは……ということ。
俳 古臭い俳諧を蹴散らして近代俳句を作ったんでしょう?
青 そう。よく言われるのは、江戸後期から俳諧宗匠たちは常識や類想に囚われた「月並」ばかり詠み、俳壇全体が停滞していたんだけど、子規が彗星のように現れて革新した、という説。その原動力が「写生」だったと説明されることも多いですよね。
俳 だから凄いんじゃない(鼻高々)
青 何も君が胸をはらなくとも。ただ、「月並」とされた当時の俳諧宗匠の句がどんなもので、子規たちは宗匠たちの句の何を古臭いと感じたのか、どうでしょう、当時の宗匠の作品を挙げられるでしょうか?
俳 し、知らないわ。歴史に名を残せないダメ宗匠の句なんか興味ないし。
青 当時の子規たちの何が新しかったかを知るには、彼らが何を古いと感じたかを知る必要がありますよね。「古さ」を理解して初めて「新しさ」を感じることができるでしょう? 明治に生きた子規たちは、もう百年以上も昔の俳人です。平成時代の私たちが一種の定説や思いこみをそのままなぞり、「子規は偉人だった、革新を起こした」と今のイメージを過去にあてはめても、あの時代に子規たちが起こした革命の意味はつかめないと思いませんか?
俳 句にまとめると、「降る雪や明治は遠くなりにけり」という感じね。
青 それは中村草田男。しかも今は真夏ですよ。
俳 ……ばれたか。うーん、先生の言いたいことも分かるけど、大昔の無名ダメ宗匠のことを調べようと思っても難しそうだし、あまりにマニアックで周りからヘンな眼で見られそう。
青 菅笠で脚絆のいでたちの方がよほどヘンに思われそうですが……でも、確かにそうかも。私たちは史上の俳人や出来事を思い浮かべる時、すでに出来上がったイメージをなぞって「子規といえば『写生』、碧梧桐といえば新傾向俳句」とまとめがちで、当時の資料や彼らの作品をじっくり読む機会は少ないかもしれません。
俳 そうそう、毎日忙しいし。朝暗い内からリヤカー引いて山向こうの村に牛乳を……
青 いつの時代ですか。まあ、そういう訳で、子規のような著名俳人でも今や忘れられたことは多いし、彼らの作品も実際に読むと分からないことや謎のような部分がたくさんある。当時の俳人たちが実感していた俳句や文学の流れも、今の私たちには分からなくなった文脈がたくさんあるはず。

昔を知れば現代が分かる

俳 うーん、確かに昔のことだしねぇ。でも、二〇一四年の現在に昔の俳句史をそこまで詳しく知る必要とかあるんでしょうか。
青 いくつかの答え方があると思いますが、一つには、過去にあった出来事をしっかり見つめ直すというのは、現在がどういうものかを知ることにもつながるはずです。その昔は当然だったことが今では当然でなかったり、あるいは現在の常識が以前は常識でなかったかもしれない。例えば、江戸時代には子規が提唱した「写生」という発想はおよそなかったし、「季重なり」がダメというルールもなかった。
俳 えっ。知らなかった。
青 こういう風に昔のことを知ることで、現在の私たちが抱いている価値観の特徴がかえって分かりますし、それに、自分たちが知らずに抱く「俳句」のイメージや俳句観、当然と信じる感性などが、実は大昔からあったわけでなく、明治や大正のある時期に突然定着した発想を無意識のうちに受け取り、俳句固有の価値観と思いこんでいるだけかもしれない。今の私たちが当たり前と感じる「俳句」のイメージや過去の俳人たちのレッテルなどをいったん保留して、彼らが生きていた当時のことや作品そのものを見つめ直すことは、自分という存在を見直すことにもなるでしょうし、それは「俳句」とは何かを問い直すきっかけにもなるはず!
俳 ……ここ、道後公園よ。そんな大声で語るから、私たち、皆さまの注目を一身に浴びてるんですけど。
青 すいません。いつも授業で大きめの声を出しているので、つい。青空教室の気分だね、はは。
俳 それ、敗戦直後の話よ。
青 詳しいですね……。そういうわけで、どうでしょう、俳子さんは俳句がお好きなようですし、よろしければ近代俳句史を一緒におさらいしてみませんか。子規や草田男が好きなのでしたら、彼らの意外な側面を発見できるかもしれませんよ。
俳 ええ、お願いします。菅笠かぶるよりいいかも。
青 ところで話は変わりますが、「俳子」さんという名前、なかなかないですよね。
俳 そう、キラキラネームというやつ。俳句好きだった祖父が「初孫は男の子なら俳太郎、女の子なら俳子にしよう」と言い出して、それで決まったらしいの。でも、特にキラキラもしてないし、微妙なのよね。まあ、おかげでというべきか、子どもの頃から俳句が好きになって、それは良かったと思っているけど。ちなみに脚絆は祖父のものよ。
青 お祖父さん、子規のコスプレを止めなかったの?
俳 むしろ薦めてくれたわ。「子規さんになりたいのか、ええことじゃ。でも、結核には気を付けてくれよ」と心配してくれたし。
青 ……教育熱心なお祖父さんかもしれないね。じゃあ、次回は俳子さんの憧れでもある正岡子規について色々考えてみましょうか。
俳 ラッキー! そりゃそうね、子規なくして近代俳句は語れないよね。
青 確かにそうなんですが、「俳人子規」の真価はあまり知られていないのも事実で、次はそのあたりを考えてみましょう。(続く)


青木亮人(あおき まこと) 1974年、北海道生まれ。現在、愛媛大学准教授。著書に『その眼、俳人につき』(邑書林)など。


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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第40回 文 写真 暇人

道後宝厳寺俳句フォトライブ

 2014年5月4日、天気は晴れ。時候では初夏に近いためなのか少し暑い。そんな中、道後宝厳寺跡に集合する面々。何をするのかといえば、「道後オンセナート」というアートイベントでいつも以上に賑わう道後を吟行し、それをJAZZと俳句と映像とダンスのコラボ作品として上演するのである。
 道後宝厳寺といえば、かつてmhmの初期の頃「道後句碑巡り」なるイベントで何度か訪れた場所。残念ながら火災により建物が消えてしまったが、この日は、その跡地に巨大なスクリーンが設置された舞台が出来上がっていた。
 このコラボイベントを立ち上げた一人である、踊れる俳人「なお」こと三好直美さん。2011年、2012年の三津浜アート蔵劇場でもお世話になった彼女から再度オファーをいただいたmhmは、今回も俳句と映像で協力させていただくことに。
 16時に集合したメンバーは、賑わう人混みの中、道後界隈を吟行したり、写真を撮ったりしていくことに。私も写真を撮りながら道後を巡った。オンセナートでは各所にアート的な仕掛けが施されており、道後を巡っている間、随所に「アート」が見かけられた。
 吟行が終わり、参加者たちが道後地ビールなどで喉を潤している間、映像制作班は、とある事務所をお借りして、吟行の成果を映像にまとめる作業を行う。今回は主に正人氏が中心となり作品を仕上げていった。
 19時。昼間の暑さと違い、少し肌寒くなった道後宝厳寺。作品の上映を今や遅しと待ちわびる観客。そんな中でJAZZと俳句と映像とダンスのコラボは始まった。まずはキムさんが事前に制作していた俳句映像作品を上映して会場を暖める。その後、キムさんの作品が、JAZZや、三好さんを含めた三人のダンサーとコラボ。十七音の俳句の世界にイメージを補足する映像、それに合わせるJAZZ、そしてダンス。現地で見ていて大変興味深い作品だった。
 最後に、先ほど正人氏たちによって制作された、当日の俳句と写真をセンス良く組み合わせた映像作品が、10分あまりの間、JAZZの演奏とともに上映される。……なんて贅沢なんだろう。このイベントに関われて良かったと強く思う瞬間である。
 1時間にわたって行われたコラボレーション。20時からは、JAZZは別の音楽に変えて再び演奏。コレもまた良かった。
 当日の作品は、一部mhmブログにて紹介しているほか、キムさんのYouTubeを探していただくと公開されているので、インターネットで検索して、是非ご覧いただきたい。

次回予定…「再始動、松山城歳時記化計画〜初夏〜」の予定です。


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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句集の本棚





『萬の翅』高野ムツオ 著

 平成十四年から平成二十四年春までの作品のうちから四九六句を収めた第五句集。宮城県多賀城市在住。陸奥の日常や植物、動物、生きてある今が照らし出され響く。
 〔凍れ日 平成十六年〕
  凍れ日も山河は青みつつありぬ
  芽吹くとは血を噴くことか陸奥は
 〔鯨の血 平成十八年〕
  みちのくの夕焼すべて鯨の血
  万の翅見えて来るなり虫の闇
 東日本大震災を直視した俳句の圧巻。
 〔蘆の角 平成二十三年〕
    三月十一日
  四肢へ地震ただ轟轟と轟轟と
  膨れ這い捲れ攫えり大津波
  車にも仰臥という死春の月
  陽炎より手が出て握り飯む
  みちのくの今年の桜すべて供花
 〔鰯の眼 平成二十四年〕
  初蝶やこの世は常に生まれたて
(書評:野風)

KADOKAWA(2013年初版)
定価 2300円(税別)
全206ページ



『巨石文明』仲寒蝉 著

世の中とは、人とは、物とはこんなにも可笑しい。作者の第二句集はのびやかなタッチでその可笑しみを捉えている。
  あめんぼに是非来てほしい洗面器
  スプーンに映る万緑舐めにけり
  死者の他みな息白く門を出づ
  春昼の入つてみたい座敷牢
  或る部屋は蚊取線香のみ点す
  叩くなと書かれし西瓜みな叩く
  茸汁化かされさうな食堂の
  明日のこと言ひだす人のゐて良夜
  春昼を囲つて映画館と呼ぶ
  トラックで来ては祭を置いてゆく
  たたまれて屏風の裏のなくなりぬ
  尻餅をよろこぶ尻と春の山
 「洗面器」「スプーン」「座敷牢」「食堂」こういったもの達がほこほこと楽しい気持ちにしてくれる不思議。巻末の『朗読火山俳作品集』も必読。
(書評:眠)

KADOKAWA(2014年初版)
定価 2667円(税別)
全200ページ



『累日』齋藤朝比古 著

 日常を切り取るときどこをどれくらいの長さで切り取るか。作者の第一句集は誰もが何気なく出会っているはずの瞬間を見逃さない。
  歩道橋渡る祭の列の上
  サングラス砂を払ひて砂に置く
  まなこ閉ぢ嚔の支度してをりぬ
  マフラーをたためば重さありにけり
  脱いで着て脱いで水着になつてをり
  浮寝鳥横に流れてゆきにけり
  ふらここの影がふらここより迅し
  ねんねこの子も挨拶をしてゐたる
  北窓を開けば北を向いてをり
  届きけり男二人と冷蔵庫
  自転車にちりんと抜かれ日短
  コピー機の光が右へカトレアへ
  ストーブに向く先生と生徒かな
 研ぎ澄まされた観察眼にさらりとした描写が相まって洒脱。
(書評:眠)

角川書店(2013年初版)
定価 2200円(税別)
全159ページ



このコーナーで紹介した句集は、100年俳句計画編集室にて閲覧できます。


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俳句の街 まつやま
俳句ポスト365


協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


優秀句
平成26年5月度


【ライラック】 
《地》 
リラ冷えや遺跡の街に水売人 登美子
リラ冷えの空にスーザのマーチかな ウルトラのはとこ
琺瑯の白の水差しライラック やのたかこ
通訳を待ちたるホテルライラック 蘭丸
領事には五人の娘ライラック るびい
リラ香る三輪明宏の声のごと ハラミータ
ライラック宛名は夏目鏡子様 ミル
リラ咲いて石炭船の霧笛かな みなと

《天》 
母いまも内地と呼べりライラック 雪うさぎ


【籐椅子】 
《地》 
籐椅子に腰かけ八重山の時間 ポメロ親父
籐椅子に今日いちにちの女帝となる とおと
籐椅子やさしもの父に日暮れきて 青萄
籐椅子に居なければ床屋じゃないの 雨月
「風立ちぬ」読み終え深く籐椅子へ マーペー
籐椅子の日課となりぬ双眼鏡 樫の木
籐椅子と床に豚児の一と二と 葦信夫
籐椅子で養命酒爺様は年上が好み 日暮屋

《天》 
籐椅子や追伸に山青きこと ハラミータ


【守宮】 
《地》 
はめ殺し窓の守宮の五指ねばし うに子
白壁を腰振り走る守宮かな 富士山
土の上に落ちて守宮の速からず 八十八
お悔やみの玄関灯の守宮かな とうへい
喪主未だ決まらぬ窓の守宮守宮 大塚迷路
解体は明日や守宮へ最敬礼 このはる
守宮這ふ速度で家の古びけり 十猪
神棚に置く臍の緒や守宮鳴く ハラミータ
守宮ゐてわが胸底のぬらぬらす 牛後
指の血を洗ふ浴室守宮鳴く 中原久遠
惑は冷たき星よ守宮這ふ ヤスハル
物売りと守宮と神と雨のバレ とおと
満点じゃない日守宮が待っている だいあ
日の本は戦はぬ民守宮寝ぬ みなと
赤坂の女将と守宮口固し あらた

《天》 
伽藍炎上守宮は何を見ていたか 塔山音絵


【麦】 
《地》 
麦の穂や山羊のチーズを切るナイフ 鞠月
刈れとばかり朝は鳥来る麦の空 ドクトルバンブー
麦の穂の光すずめの白き腹 雨月
芒持てる麦の反骨ありにけり クズウジュンイチ
麦星をはねあげている麦の波 根子屋
ここ東京向かふ埼玉麦熟るる じろ
麦一茎活けてみよ描いてみよ みちる
今日きりか今日きりか麦輝けり 江

《天》 
星々は麦の隣人幾久しく こま


【シャワー】 
《地》 
カンツォーネ歌うてシャワー全開す 渕野陽鳥
目を閉じてシャワーアジアの端の端 塔山音絵
トゥクトゥクに揺られ二時間シャワー浴ぶ みえ
立ったまま溺死つかの間シャワー浴ぶ 雪うさぎ
シャワーぬるし四十の膚をぬたぬたと 初蒸気
シャワー浴ぶアンドロメダを見つけた夜 柳葉魚
シャワー浴び女将の顔を見に行くか 笹百合
シャワーお湯になるまでしばし修行せん カリメロ

《天》 
九龍の錆吐き出せるシャワーかな 奈津



7月の兼題

投句期間:6月26日〜7月2日
青田【晩夏/地理】
根付いた稲が順調に生育し、青々としてきた田んぼ。まだ稲の隙間から水面が見える状態から、生育が進んで稲が密集している状態まで、生育段階によって情景は様々。

投句期間:7月3日〜7月9日
蓮【晩夏/植物】
スイレン科ハス属の多年草で、インド原産といわれる。沼や池などに生育し、夏に淡紅色や白色の花をひらく。仏教では極楽に咲く花として描かれるなど、仏教との結びつきが強い花でもある。

投句期間:7月10日〜7月16日
炎天【晩夏/天文】
夏の日盛りの、やけつくような暑い空のこと。また、その天気のことをいう。

投句期間:7月17日〜7月23日
夏深し【晩夏/時候】
夏の終わりの頃のことで、「晩夏」の意。「春深し」や「秋深し」などとは趣を異にするが、古くから使われている、心情的なニュアンスを含む季語。

投句期間:7月24日〜7月30日
法師蝉【初秋/動物】
8月、秋風の吹き出す頃に鳴き始める、体長4〜5cmの蝉。翅は透明、体は暗黄緑色で黒斑がある。特徴的な鳴き声が名前の由来となった。


《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成26年5月度


【墓石】
菜の花や沈下橋より墓石群 逆ベッカム
糸遊の犇き忽然墓石群 青萄
卯の花や伯母の墓石はハ列の五 鞠月
墓石みな古り千の牡丹は緋を尽くす 風
墓石に残す醜名や草朧 あねご
やがてまた逢わん墓石へ春の水 妙
墓石は落花を受けるためにある 一竿
道しるべ墓石めきたる朧月 のり茶づけ
廃炉は墓石風車きらきら春まわす 菜々枝
墓に薊石をも砕く山の雨 ドクトルバンブー

《天》
荷車の墓石を曳いて春の牛 ポメロ親父


【鈴懸の花】
鈴懸の花や子猫の名前はベル 亜桜みかり
鈴懸の花猫の右目は青きまま とうへい
鈴懸の花咲く巨木初任校 富士山
図書館を出て鈴懸の花の鳴る 妙
鈴懸の花寮生の十五人 ポメロ親父
鈴懸の花咲いた母校は閉校 ぽぽんた
鈴懸の花パレードの金ボタン 樫の木
鈴懸の花やメロスのひた走る ターナー島
鈴懸の花や重たき腰の熱 北大路南天
鈴懸の花とは球形の沈思 海田

《天》
鈴懸の花小鳥の塚を点しけり 八木ふみ


【毛虫】
庵静か毛虫五百をはびこらせ 風
食い終えし毛虫が我を睨み上ぐ もね
全身に波打たせ毛虫飛ぶつもりの助走 日暮屋
刃の先で落とす毛虫の知らんぷり 不知火
予定などない日やたらと毛虫見ゆ ゆめ
この木には毛虫はいないこととする のり茶づけ
毛虫には言いたいことが二つある 四万十のおいさん
今さらだがそれは国宝だぞ毛虫 めろめろ
毛虫焼くチラシ一枚あれば足る 空海菩薩を観た
毛虫ごと燃やす糾弾調の記事 鞠月
水滴を真珠とまとう毛虫かな 樫の木

《天》
毛虫焼く昨日は護符を焼きし畑 篠原そも


【麦嵐】
太陽は南に高く麦嵐 ポメロ親父
鶏小屋と瓦の町に麦嵐 星の雫
麦嵐搾乳を待つ牛数多 花菜
麦嵐大志なくとも鍬を振る 鍛冶屋
麦嵐影通り越す影のいて のり茶づけ
首塚や見渡す限り麦嵐 菜々枝
干拓碑は伊予の青石麦嵐 ねこ端石
旧満州開拓団碑麦嵐 樫の木
抗わぬことも反抗麦嵐 しんじゅ
百穀に百の産声麦嵐 ドクトルバンブー
麦嵐海賊王のいた海へ 八木ふみ

《天》
花嫁の足逞しき麦嵐 下駄女


【砂】
砂浜へ五月の馬を走らせよ 更紗
鳴き砂のきるりきるりと夏に入る まっことマンデー
炎昼や輪郭失せし砂像群 富士山
釜に砂ためて筍当り年 ケソラ
ビーカーの砂かき混ぜて薄暑かな 大五郎
一握の砂や雨はじく青棗 ターナー島
風紋になりたがる砂蟻地獄 日暮屋
シャワー浴ぶ砂の国より帰還して 稲穂
水中花咲かせひんやり砂時計 亜桜みかり

《天》
田を植える農夫砂鉄のような鬚 ひでやん



※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

7月6日
ベゴニア【三夏/植物】
シュウカイドウ科の、非耐寒性の多年草または半低木の総称。種間交雑などにより品種は多岐にわたり、茎・葉・花の形態は様々。


季語ではない兼題です。「破」という字が詠み込まれていれば、読み方は問いません。また、季語は当季を原則として自由に選んでください。

7月20日
みどりの冬【晩夏/時候】
梅雨が明けてからも様々な気象要因により気温が上がらない日が続くこと。冷夏。青葉の茂る頃の寒さであることからの呼称。

鮓【三夏/人事】
元来は魚や貝を塩に漬けて熟らしたもののことだが、発酵を早めるために飯を使ったところから、酢飯と共に食すものへと変遷していく。酢の防腐性や食欲増進効果から夏の季語とされている。



《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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100年俳句計画 掲示板


 組長&編集長&組員さんの出演執筆一覧

NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  7月1日(火)11時40分〜
  7月15日(火)11時40分〜
  7月29日(火)11時40分〜

あいテレビ(TBS系列、全国)
 『プレバト!!』
   隔週木曜 19時〜20時49分
  7月17日&7月31日予定
※組長がゲストの俳句ランキングづけで出演! 放送日番組欄を要チェック!

NHKラジオ第2
 「私の日本語辞典」(4回シリーズ)
〔第1回〕7月5日(土)21時〜21時半
以降12日、19日、26日と連続放送。
再放送
〔第1回〕7月12日(土)15時10分〜40分
以降19日、26日、8月2日と連続放送。

NHKラジオ松山
 「俳句ネットワーク」(兼題「暑し」)
7月26日(土)朝7時40分頃

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FM愛媛
 バニラビーンズの俳句っちゃお〜!
 毎週日曜日深夜0時〜0時30分
※夏井いつきが俳句指南で出演
※FM大分でも毎週月曜21時〜放送中

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「蜥蜴・土用波」7月6日〆
   「極暑・夏深し」7月20日〆
 インターネットでも配信中。詳しくは番組webサイトへ。
  HP http://www.baribari789.com/
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)、住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。


執筆
松山市の俳句サイト「俳句ポスト365」
http://haikutown.jp/post/
 毎週水曜締切/翌週金曜結果発表

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」
※ 毎週日曜発刊タブロイド判8ページ


句会ライブ、講演など

いちき串木野市立市来中学校修学旅行句会ライブ(正人)
 7月2日(水)

愛媛大学教員免許状更新講座愛媛大学(夏井)
 7月13日(日)

今治国語同好会50周年記念大会講演(夏井)
 7月23日(水)



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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

繊細なエッセイスト
杉本とらを 6月号の表紙リレーエッセイの掲載、有り難うございました。原稿依頼を貰い、生まれ付きの気の弱さからお腹を壊しました。でも良かったです。人生の記念になりました。
編 執筆ありがとうございました。その後お腹は大丈夫でしょうか……。本文と関係ありませんが、マンボウが繊細すぎると昨今巷で話題に。なんでも気泡が目に入ったストレスで死亡するとか。繊細すぎる!

俳句のある生活を楽しむ
小雪 お久しぶりです。時間や気持ちに余裕がないと俳句が出来ないと思っていましたが、実は作ることにより、心が穏やかになり生活にもゆとりが生まれることに気付きました。6月からは、月曜俳句にも再入門です。
編 「卵が先かにわとりが先か」みたいな話ですねえ。いずれにせよとてもいいライフサイクル! 月曜カルチャーお楽しみ下さい!

季語あれこれ
喜多輝女 いつもお世話になっております。あっという間に1ヶ月が過ぎまた締め切りの日が来てしまいました。今年はエルニーニョのせいで冷夏の予想が出ているそうですが、さてどうなることか……。皆さまお身体ご自愛下さいませ。
編 本誌編集中の6月現在、愛媛県は久々の梅雨らしい梅雨を迎えております。暑いのもヤだけど、冷夏は冷夏で農家の方が困りますな。

うに子 季語だらけの夏に突入。花の名前がさらりと言えるようになるのはいつの日でしょう。
編 「ひまわり! あさがお! あとは知らん!」 ……みたいな人は自分だけじゃないと思いたい。

投句してみよう
ゆまるばたこ 久しぶりの投句になります。この春から部署が変わって右も左も分からないまま2ヶ月。俳句により近い仕事を担当しているので、自分の俳句力も高めていかなくては!と思うこの頃です。今年こそ、大人の句集コンに応募できますように。
編 投句ありがとうございます。第4回「大人コン」は2014年12月10日が締切です。一年の総決算としてぜひ!

ケンケン そろそろ草津俳句大会の応募開始なので、とびっきりの一句を考えて特選を狙います。
編 一番最初に該当したのが「第59回宗鑑忌俳句大会」(インターネット調べ)。締切は……6月30日(必着)。うーん、本誌発行からギリギリのタイミング。間に合う人は参加してみてはいかがでせう。


100年俳句計画誌上編集会議

編 本誌も十年目を迎え、様々なご意見を参考にしながらリニューアルをはかっていきたいと思っています。このコーナーでは、皆様のお便りを紹介しながら、さらにご意見を集めつつ、誌面に反映させてゆきます。
 先月の誌上編集会議あてにさらなるご意見が届きました。


今月の提案 相談

鞠月 編集部の皆様、いつもお世話になっております。6月号の「魚のアブク」、めろさんの俳句対局に対するご意見の1(※1)は、まことにごもっともだと思います。
 ルールとして組み込むことが難しいならば、審査基準に「一戦通しての発想力点」みたいなものを取り入れるのはいかがでしょうか。今の審査は一句一句独立しての採点というだけですよね?(違っていたらすみません)
 というのも、単に観客が見ていて面白いとかつまらないとかいう問題だけではなくて、例えば、相手の句の世界観はそのままに季語だけ変え、取り合わせの精度を上げていくことで点を稼ぐという作戦も可能なわけですよね。極論ですが

○○○○○×××××××夏来たる
   ↓ ↓ ↓
○○○○○×××××××梅雨に入る

 のように季語以外のフレーズが全く同じでも ルール上は逸脱していません。後句の方が取り合わせの完成度が高かったとして、審査が一句独立で行われるならば後句の方に高い点数が付けられます。これを繰り返せば、勝てます。が、勝負としてフェアといえるのかどうか。
 まあ〜こんなあからさまな事をする人はいないでしょうが、そしてそう上手く行くとも思えませんが、ただ、「この句から即興でこんな句が生まれた!」という発想の驚きこそが俳句対局の肝だと私は思っているので、そこをもう少し審査に反映させていただいてもいいのかな、と思います。なんでしたらめろさんの仰る3(※2)のように、観客の判定にその役を担わせるのもいいかもしれません。
 あくまで、こんなことも無いとは限らないよ、という可能性のお話をさせていただきました。
 長文失礼いたしました。

※1 先月号誌上編集会議より
1 歌仙を巻くみたいに(巻いた事はないけれど)1句ごと飛躍がないと面白くない。そのためには、前の句の単語や自立語を1つしか使わない。2つ以上使ったら減点。前の句の世界を引きずっていたら見学の人たちもつまらないはず。

※2 先月号誌上編集会議より
3 見学者にも採点をしてもらい0.3点程度加点する。団扇みたいなものの裏表で採決する。(見学者が傍観者になるのを防ぐため)

編 ご意見ありがとうございます。俳句対局の審査は一句独立の採点です。懸念されている展開となった場合、後出しの句は「本歌取り」にあたるのではないかと。単純に取り合わせの精度を上げるのとは違い、本歌取り成功へのハードルは高く、結果として句への絶対評価は低くなるかと思われます。仰る通りこのリスクを実行する人はまずいないでしょうねえ。
 「一戦通しての発想力点(仮)」を導入するとしたら、なにかしらの工夫が必要になりましょうか。なにぶん「発想力」という明確な指針の存在しない評価・加点ですので、得点のウェイトなども含めてバランスは考慮する必要がありそうです。
 次の一般参加可能な大会は秋の龍淵王決定戦。よりよい大会となるよう、今後も様々なご意見をお聞かせ頂ければ幸いです。



 この欄への提案、質問、要望、その他は、100年投句計画投稿時のフォームに書き添えてお送り下さい。また、メールでの投稿も可能です。メールで送る際は件名を「魚のアブクへ」としてお送り下さい。
メールアドレス magazine@marukobo.com(編集室)



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鮎の友釣り

192
俳号 てん点

笑松さんへ 釣りあげて頂きありがとうございます。明るい笑顔が素敵な笑松さん、これからもロマンチカでよろしくお願いいたします。

出合い 「愛媛出身です」と言うと「だから俳句してるのね」とよく言われます。正しくは、しんじゅさんのブログを覗いたのがきっかけで俳句といつき組に出会いました。
 お蔭で俳句とその友に励まされ、刺激を受けて、どどっと駆けおりそうだった人生後半の坂が広くゆるやかになり楽しんでいます。

写真 俳号由来の点訳をしています。近年パソコン点訳が主流になりましたが、その場で打ち出せる点字タイプライターは貴重な存在です。

次回…七草さんへ 気配りがあっていつも穏やかな七草さんを見習いたいです。ロマンチカでご一緒するのを楽しみにしています。


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告知


この秋、俳句新聞いつき組が装いも新たに復活します。
詳しくは次号にて

予定仕様
A4サイズ、8ページ、全ページカラー印刷
参加登録料 1,000円(税込)
年間購読料 3,500円(税込)
年4回発行(季刊)
*年1回、句集シングルの付録あり。



7月26日 ボーリング大会開催

 7月26日は、愛媛新聞カルチャースクールの合同ビアガーデンの日ですが、このビアガーデンのスタートまで、カルチャースクールに関係ある人も関係ない人もボーリングして打ちあがろう、という企画です。ボーリングで一汗流した後のビヤガーデンは最高です!もちろん「お酒は飲めない」っていう方もボーリングだけの参加もOK!俳句友達が大勢集まる貴重な交流会、みなさん参加してみませんか?

日時 7月26日(土)14時〜16時30分
場所 ファーストボウル(予定)【松山市大街道2丁目 ※現地集合】
参加費 1500円(靴レンタル代込み)
問合せ 申し込み
 (有)マルコボ.コム
 電話 089-906-0694
 ※当日の飛び入り参加はできません。必ず事前にお申込ください。
申込締切 【7月22日(火)】

ボウリング終了後、17時30分ごろからはカルチャースクールのビアガーデン(いよてつ高島屋)に合流して打ち上げも行います。



HAIKU LIFE 100年俳句計画
第4回
大人のための句集を作ろうコンテスト
作品募集

主催 マルコボ.コム 共催 朝日新聞社 松山市教育委員会(予定)

 第四回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」(通称「大人コン」)の作品募集がスタートしました。
 「大人コン」は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』が開催する俳句コンテストです。
 共催 朝日新聞社 松山市教育委員会(予定)

「受賞作品が句集になるってホントですか」
 最優秀賞作品は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』の付録冊子として読者諸氏に広く読んで頂きます。付録とはいえ、お洒落なデザインの句集だと評判です。
 受賞者には一切の金銭的負担をかけず、読者にとっても安価な句集をどんどん生み出していきたいという志を一つの形にしたのが、この企画なのです。

「俳句マガジンを購読してないんですが、コンテストへの応募はできますか」
 どなたでも応募できます。購読の有無は一切関係ありません。勿論、応募は無料です。

「審査は誰がするのですか」
 本コンテストの受賞者は、「大人コン」選考会員の投票によって決まります。「大人コン」選考会員は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』購読者の内、各総合誌等の俳句賞受賞者あるいは最終選考に残った実績のある人たち等によって構成されます。第二回の有資格者は三十二名。年々選考会員数は増えていくことになります。
 多くの目利きの力を借りて「百年先の未来に残したい作品と作家」を見い出し顕彰していくことが「大人コン」の目的。我こそは!という皆さんのご応募を、心からお待ちしております。

既作新作を問わず81句の作品集を募集。
最優秀賞作品は句集にし、本誌付録として配布します。

募集要項

応募資格
15才以上(高校生以上)の方なら、本誌購読の有無に関係なく、どなたでも応募できます。

応募方法
1:Eメールでの応募の場合
応募用のエクセルファイルに必要事項を全て入力し、Eメールの添付ファイルにして、応募して下さい。
応募用ファイルのダウンロード先
http://81ku.marukobo.com/

2:郵送の場合
B4判四百字詰め原稿用紙に81句とその表題、俳号、本名、年齢、住所、電話番号を必ず明記して応募して下さい。

締め切り 2014年12月10日(水)必着

賞 賞状および応募作品による句集20冊
*賞品句集は縦横135ミリメートル 36ページとなります。句集は本誌付録として配布します。

発表 本誌2015年4月号誌上(予定)

送り先
〒790-0022 愛媛県松山市永代町16ー1
有限会社マルコボ.コム
月刊俳句マガジン『100年俳句計画』編集室Eメール:81ku@marukobo.com



ボリュームが倍になりました
句集Style-W 登場

*オリジナルデザイン仕様の3点
句集『COSMOS』
キム チャンヒ

句群 op. 1 半過去と直説法現在として、あること
加根兼光

俳優勝村政信×俳人夏井いつき
付句のある往復Eメール書簡集

2014年 9月10日 申し込み締切
(原稿締切9/16、10月末納品)

句集制作費:25冊セット 50,000円(税別)〜 *完全デジタル入稿の場合
仕様:135mm×135mm、72ページ、オンデマンド印刷、カバー付

オプション料金 *全て税別
 オリジナルデザイン料:50,000円〜
 増刷費:24,000円(25冊ごと)


句集Style
仕様:135mm×135mm、36ページ、オンデマンド印刷、表紙PP加工
2014年 第2期 6月10日 申し込み締切
(原稿締切6/16、7月末納品)

詳しくは http://marukobo.com/style/



誰もが無料で参加できるインターネット句会開催中
次回は7月10日(木)一般募集開始

 ハイクライフマガジン『100年俳句計画』が運営しておりますインターネット句会「象さん句会」&「週活句会」の2014年4thシーズンの参加者を募集します。
 どちらの句会も参加無料。それぞれエントリー開始から定員まで、先着順で参加出来ます。

俳句を増産したい方のための
象さん句会

「百年百花」や「100年の旗手」など、本誌に作品集を連載される「俳句を増産したい方」を中心に、毎週5句出しで4週間行う「本気モード全開」の句会です。もちろん一般参加も可能です。


20代のための週末俳句活動句会、略して
週活句会
 俳句甲子園出身の方や、大学のサークルで俳句をやっている方など20代の俳人を中心とした句会です。この句会から「100年への軌跡」連載者も輩出します。また、交流の場としても楽しめます。

どちらも2014年7月10日(木)一般募集開始
詳しくはブログマルコボ通信まで
http://info.marukobo.com/



100年俳句計画投稿締切カレンダー

7/20(日)
 100年投句計画
http://marukobo.com/toukou/
 魚のアブク
 100年の旗手推薦募集

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


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編集後記


 200号特集ということで、0号から200号までひもとくと、次から次へと新しい企画が出現するめまぐるしさに、改めて呆然としてしまった。特集のリストでは紹介できなかったが、未発表句の定義をしたり、韓国吟行に行ったり、80歳からはじめる句会をしたり、子ども達と季語のおみくじを作ったり、どろんこバレーをしたり、正岡子規になりきった写真を集めたり、人間案山子になったり、俳人のが力を試したり……。
 そして、雑誌は生き物なんだと実感をした。
 俳句雑誌の記事と言えば、雑詠欄や作句上達のためのテキスト、そして俳句の批評が一般的。
 この雑誌が他と違うとすれば、そんな立派な俳人への一本道の提案ではなく、様々な分野で俳句を使って人生を楽しもうという姿勢。俳句新聞の頃から「楽しくないと俳句じゃない」という精神は全く変わってはいない。
 この200号までに変わったところがあるとすれば、雑誌の主役が夏井いつき組長ではなく、100年俳句計画という考えに賛同する全ての方だというところ。だからこそ、この秋「俳句新聞いつき組(仮)」が復活する!こちらもお楽しみに。
(キム)


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次号予告 (201号 8月1日発行予定)


次回特集
特集! 句集Style!
句集Style誕生から約1年。この1年間に発行された句集の総特集のその1。


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2014年7月号(No.200)
2014年7月1日発行
価格 617円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子