100年俳句計画4月号(no.197)


100年俳句計画4月号(no.197)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
そしてまたときがはじまる 台所のキフジン


特集1
第三回大人のための句集を作ろう!コンテスト
結果報告 & 優秀賞作品


特集2
愛媛県立松山東高校主催
俳句甲子園冬季合同練習会



好評連載


作品

百年百花
 門田なぎさ/天玲/平山南骨/理酔


100年俳句計画作品集 100年の旗手
 かのん/妙/八木ふみ


百年琢磨 しなだしん

新100年への軌跡
 俳句/雀子/仮屋賢一
 評/桜井教人/とりとり


選者三名による雑詠俳句計画
関悦史/阪西敦子/加根兼光


へたうま仙女/杉山久子

自由律俳句計画/きむらけんじ

詰め俳句計画/マイマイ



読み物
Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
クロヌリハイク/黒田マキ
お芝居観ませんか?/猫正宗
百年歳時記/夏井いつき
mhm通信スペシャル/雪花

読者のページ
俳句ポスト365
一句一遊情報局
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




そしてまたときがはじまる
台所のキフジン

そしてまたときがはじまる
 方々へ散っていた者たちが
苦しみや歓び、それぞれの思いを胸に
ふるさとと呼ばれる此処へ帰って来る
冬を越え鬼をはらい雛を祝うと
花の色に背中を押されるように
ひとり またヒトリと故郷を後にし
新しい季の中へと踏み出してゆく
 そしてまたときがはじまる
四月と云う勢いに飲みこまれないように
両の足を 踏ん張り 立つ
両の手で 空を掴む
母の乳房を掴むあの幼子のように
ときはゆき
  ときははじまる
行って御出で
   気をつけて
  そしてまた
帰っておいで
  おまえの好物こさえておくよ
行って御出で
  気をつけて
そしてまた 花を見よう


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特集1

第三回 大人のための句集を作ろう!コンテスト


結果報告 & 優秀賞作品


 昨年募集を行った第三回大人のための句集を作ろう!コンテストには、45作品の応募がありました。
 31人による大人コン選考会員の審査により、都築まとむさんの『塩辛色』が最優秀賞に決定しました。また優秀賞は、藤実さんの『匣の家』、灯馬さんの『猫目草』、あねごさんの『がちゃがちゃぽん』、日暮屋さんの『ビストロケルン』、亜桜みかりさんの『秋思ノタマゴ』、理酔さんの『雪くずる』の六作品に決まりました。
 今月号では付録の最優秀賞句集に加え、優秀賞作品および選考会員による選考評要約をお届けします。選考評を参考にしつつ、各作品をじっくりと味わっていただけたら幸いです。



「コンテストの経緯」
編集長 キム チャンヒ

 このコンテストの特徴は、まず、最優秀賞作品が一冊の本となり、本誌付録として広く配布されること。また、優秀賞作品も全句掲載されること。そしてこれが一番重要なのですが、優秀賞に残った作家が、次回より選考会員の資格を得ることです。
 これらが目指していることは、「受賞作が決定して終わり」というのではなく、受賞された方が一人の作家として自立し、そして次の作家の送り手として力を発揮して頂くことで、百年後の俳句の世界を豊かにしようということです。
 今回も、様々なスタイルの応募作品の中から、「オリジナリティがあるかどうか」「最優秀賞作品になったときそれに相応しいか」という視点で、俳人夏井いつきと編集長のキムが予選を行い、7作品を優秀賞として選びました。
 その7作品に、選考会員が一人3点の持ち点を投じた結果、『塩辛色』が最優秀作品に決定しました。
 句集『塩辛色』をはじめ、優秀賞作品が広く読まれ、それぞれの作家の活躍する場が広がることを願っています。
 ちなみに、このコンテストの最優秀賞を受賞された方は、一年後の「百年百花」の連載をお願いしています。昨年受賞されたなぎささんの連載も、今月号から始まりました。また、第一回コンテストにて受賞された鈴木牛後さんの新作句集も現在企画をしています。
 更に、大人コンの新たな部門として、20代までを対象としたコンテストも計画中です。こちらの方もご期待下さい。
 最後に去年もお伝えしましたが、このコンテストは、既発表の俳句でも応募できます。また落選した場合でも、それらの俳句を全て捨ててしまう必要はありません。今年も12月の初旬を締切に、企画を進めております。新たなる構成のもとに再度挑戦して頂けたら幸いです。



第三回選考評要約
大人コン選考会

 選考会員から寄せられた選後評を要約することで第三回「大人コン」のご報告と致します。

「塩辛色」 都築まとむ
 得票20名 合計31点

 理屈が理屈を超えて、実感が溢れ出す面白さ! 生きることの痛みを引き受けながら、十七音に光を見るかのような作者の眼差しに共感を覚える。作者の対象物に対する好奇心と愛が、どこにでもある気負いの無い言葉で紡がれ、身の回り5メートル以内の些事さえも広大な物語のように感じさせる。なんということもない自分の周りの日常が、物の見方、表現の仕方によってこれほど躍動し変化し、揺れ動いて輝くとは……。句はすべて作者の手の届く範囲で余裕をもって絡め取られた後、静かに発酵しているという感じがする。日々季語の現場に立つ作者の感興の圧倒的なリアリティに屈服させられた。「緑へと憑かれたように父登る」「雲の峰辞書の厚みの亀洗う」「うつ伏せの椿を波に投げてやる」「さえずりの光の中の遺骨かな」「梅雨深し吊革ざんと揺れもどる」「ネクタイを解くほうたるの匂いかな」「日盛やかすかなくぼみ持つ卵」「月光の床より猫を引き剥がす」「立て掛けて月下の回覧板となる」「セーターの袖執拗に嗅がれおり」


「匣の家」 藤実
得票9名 合計12点

 全体の印象は、とにかく柔らかで官能的。多様な語彙、句材も句調もバラエティ豊か。喜怒哀楽では表しきれない何か、ワインでいえば最後に残る澱のようなものが、読後自分の中にも残る。難解にして謎の多い詩句が散りばめられているが、作者の表現の形として意図的に選択されていることがわかる。その未解決さもまた魅力的な句群である。「ゆふだちと言うて嬉しき木のかたち」「卵管は暗渠で蘆の伸びて咲く」「とほくに象死んで熟れゆく夜のバナナ」「くちなはのひかりつめたく泳ぎけり」「嘶きをとほくに雪のひかりあふ」


「愁思ノタマゴ」 亜桜みかり
得票9名 合計11点

 明るい透明感のある抒情性に惹かれる。爽やかに細やかに光景を切り取った句が魅力でありながら、俳句の骨法を存分に使い無駄のない言葉で構築された力強い句もある。全体に漂う孤独感や、何かを掴もうとしてもがいている感じに共感すると共に、日常から少しずれたところに言葉が行き着いている点が面白い。「ワタクシノ愁思ノタマゴトリオトス」「立冬を小さく波うつソノシート」「かざし見る雲形定規夏に入る」「月光浴ぶ果実の種になつたやう」「ラ フランス剥く言ひ含めらるる夜」


「がちゃがちゃぽん」 あねご
得票5名 合計9点

 詠まれているのは目に見える事象や人事であるが、それらの奥に、作者の現実に対する苦い認識や批評精神を感じることができる。社会と関わり、誰かの子として、また親として生活している姿が、無理なく表現され、その中にあるかすかな哀しみが、読み手の心に沁みこんでくる。等身大でありながら類想ではない世界がある。「立春の社運を背負ふ阿弥陀籤」「北窓を開く瓦斯屋と目が合ひぬ」「水たまりほどの影持つ日傘かな」「木が枯れるやうに死にたき柿日和」「海鼠腸や遺書書くときの漢字辞書」


「雪くずる」 理酔
得票7名 合計9点

 労働の大変さを叫ぶでもなく生活の手応えとにおいを感じさせる。潮風にまみれた街と暮らしの景が掛け値なしに立ち上がってくる。詩的情趣に背を向けるような独特なスタンスで吐き出されていく句句の世界を支えているのは、卓越した写生力と、孤独力とでも言い表すしかない硬質の感受性。強い把握力、無駄のない措辞から逞しさと興趣が生まれ出る。「春霜を安全靴で確かめる」「紅梅や海底トンネルまで二秒」「魚臭き冷たき口の海豚かな」「肉塊となりし鯨を踏み越える」「空壜の口雪つもり雪くずる」


「ビストロケルン」 日暮屋
得票8名 合計9点

 目についたものや感じたことを、思いつくままに片っ端から俳句にしていったような勢いと無邪気さがいい。饒舌過ぎて大コケの句もあるが、こういう本音とも怒りとも寂しさとも悲しさともおかしさともつかない短詩の集合がなんとも痛快。おかしみが単なる滑稽や諧謔でなく、時代批評を含んでいる句もある。「さあ撃て春霰こめかみはここだ」「妻よほじくってまで短い土筆とるか」「トルコ石の青さを小綬鶏に訊く」「僕が行きます尺蠖すくっと立つ」「群生のアザミ突き飛ばしたい人がいる」


「猫目草」 灯馬
得票5名 合計6点

 新鮮な視点や言いまわし、溢れるオリジナリティに視野の広さと知性を感じる。「さくらさくらあたしこの爪剥がしちやふ」「衰へてください貴方も牡丹も」「撫でられて形代になつた子は誰」などの、わらべ歌や童謡にあるような無邪気な残酷さを感じる句や、「和箪笥の底なる春画蜜柑吸ふ」「後宮の女千人室の花」「秋麗や厨子に両性具有像」などの性的な内容を扱った句が、81句の中でほどよいスパイスになっている。



第三回大人のための句集を作ろう!コンテスト優秀賞作品

匣の家 藤実

半焼がまるごと濡れて春の火事
綿雪や何もかもやはらかく煮え
知識とは粉まみれなる蝶の羽
沈丁花つぎからつぎに忘れだす
軟骨の奥歯にたのし不器男の忌
風光る道いつぽんを間違へて
はくれん崩るるは逸脱の寓話
コロッケのふつふつ揚がる啓蟄よ
墓石の天へ長きや竹の秋
蝌蚪の国なら配線の混み合ひぬ
輪に濡れるテーブルクロス朧月
星は夜に鰆は味噌に絡めらる
匙の柄のト音記号や卒業す
人影のひときは昏き桜かな
花筏荒らす遊びに飽きたらぬ
月は春たまごボーロの湿気たれば
花過ぎのお冷やかろんと眠くなる
春の赤子が次々と乗り込むよ
星空を揺らし無人のふらここは
八重桜ぽてんとぽてん雨もよひ
遠足の写真のやうに仲良くす
白波をあげて汽船や松の花
藤の枝に藤引つかかる空となる
雨粒は雨粒に濡れ聖五月
新樹光ぱふつと人形より空気
ベランダを突き出て垂るる鯉幟
たらちねの母の日湯桶ころがるよ
雨みちて昼に明るき薔薇あまた
薬降る熊野に私史の嵩高く
配流とは蜂ふるへたる花の中
ジューンドロップ踏む纏足の置きどころ
黙考のまはりを額の咲きにけり
海霧濃しや岬をひたと匿つて
みづすこしゆれて尾鰭より琉金
夜の風を浮人形と萎びけり
虹立ちて虹の消えざる来世は嫌
馬冷す無花果色の夕空に
サンダルの片つぽくはへ消えにけり
ガウディの死後峰雲の育つ育つ
漕ぎ出して燃ゆる夏蝶を見たか
背泳ぎと空を同じくする身体
海峡の波に昼寝の二等室
欺瞞充ちみちて凌霄花吹き上がる
とほくに象死んで熟れゆく夜のバナナ
くちなはのひかりつめたく泳ぎけり
ゆふだちと言うて嬉しき木のかたち
カンナカンナ火見櫓の火の見頃
ひと群をひかりの群として蜻蛉
野分晴パスタに芯の残りけり
桔梗の水より清き色を咲く
コルトレーン桃のうぶ毛をふるはせて
金風や馬の横腹盛り上がり
雨脚の始めは弱くななかまど
コスモスのひかり囲ひにされてゐる
茎容れて吸はれながらに水澄めり
和毛(にこげ)浮く囮でありしものの上
美(うま)し国なりしがけふに冷ゆる海
こほろぎの火燭の中を鳴きゐたり
卵管は暗渠で蘆の伸びて咲く
床下に小鳥あつまる匣の家
えのきくすのき色なき風をあふれしむ
鞭はしる馬と尾花の荒ぶるを
花すすき最もひかり吹いて海
初冬や焔(ほむら)に濡るる黒砂糖
捕鯨船ゆめのくぢらと鳴きあひぬ
近松忌目玉の中の塩の味
本堂の燃ゆるは冬の青空へ
狐火の一匹として鳴きにけり
朽野は濡れてゐる廃車のシート
元日の鶏の足こつちを向いてゐる
シャガールの蒼ひたひたと初夢は
膕(ひかがみ)の昏さとおもふ炬燵かな
胎内に一回やすむ絵双六
冬凪の碧(みどり)を巨石聳えけり
初東風や水軍の長(をさ)ねむる森
山茶花を轢きつづけ轢きつづけゆく
蝋燭の溶けきつてなほ風花す
立方の部屋立体の紙マスク
焚火かの兎を入れて愛しめり
肌に雪ふれてこの身の循環器
嘶きをとほくに雪のひかりあふ

藤実(ふじみのる):1976年生まれ。松山市在住。第三回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞受賞。



第三回大人のための句集を作ろう!コンテスト優秀賞作品

猫目草 灯馬

七行で了つてしまふ初日記
俎板始め利き手のちがふ母娘
和箪笥の底なる春画蜜柑吸ふ
冬うらら猫はわたくしより短命
後宮の女千人室の花
白鳥の首折るるほど熟慮せよ
セーターや土壌汚染のありし村
ダイヤモンドダスト副音声で聴く国歌
アールグレイの缶開け二月礼者かな
立春大吉猫の鼻先濡れてゐる
春霙数式が詩であるやうに
藍蒔くや学べば太くなる背骨
唇に傷ある魚凍返る
秒針の合はない春の星ひとつ
祝言や鶯の眼のまつくろな
聖壇の隅のチェンバロ春浅し
春炬燵ウェブに水爆製造法
革命は懐かしむもの春ショール
末黒野に風密会のチョコボール
君は居ないことになつてゐる春の椅子
亡命やまちは霞んでありにけり
ミルク噴きこぼして春は寒い寒い
桃の日の男の首の骨こきり
未だ誰も傷つけてはゐない薊
花筏見しとて湯より上がりくる
遅くなつたのはボートレースの所為ぢやない
アネモネやわたくしといふ展開図
さくらさくらあたしこの爪剥がしちやふ
四月馬鹿あの橋ならば焼け落ちた
通草咲いて市報にくるむ猫の糞
巻尺のするする伸びて雲雀東風
風の名を書き留め憲法記念の日
才長けて電話とパセリを苦手とす
女には厳しき女豆ご飯
衰へてください貴方も牡丹も
青胡桃ざわざわ模範家畜房
五月雨やまちは夢見てゐた木馬
水無月の蹴轆轤(けろくろ)は真澄鏡(ますかがみ)となるよ
撫でられて形代になつた子は誰
蓮の池をいま少し睡らせて呉れよ
水の香の男戻り来(く)夏祭
薄荷水ぴりり ここまでは定石通り
レーダー音濁りこれより苦潮へ
海の日の貴方のための耳ぢやない
海の日の暮れて石には石のこゑ
笹舟のやうにわたしを折り上げよ
雨の音ばかりを聴いてゐた蜥蜴
おとうとと鏡合はせに干すビール
ジョン コルトレーン氷は溶けきつた
噴水やみどりごの名を報らさるる
夏至の日のトーベ ヤンソン短編集
国際聖路加病院帰りの鰻かな
猫の死を悼む大暑の御手洗ひ
歯に衣を被(き)せてもの云へ百日紅
言霊の幸ふまちのどぜう汁
日盛りのテーブルにある置き手紙
八月のジオラマを指す棒の先
遠雷や自治都市に踏むマンホール
いちめんの向日葵墓標となして雨
草いきれ何時か海へと還る土地
焚かれゆく利休の像や極暑来る
合歓咲くや山野は崩落れつつ匂ふ
処暑の日の猫の寝相のあんまりな
すすがるる二百十日の眼玉かな
散薬を振り入れて嚥む秋の水
恋人の犬に眉毛を描く秋思
星涼し猫恋しがる猫を抱く
聖マリアの首彫り上がる夜涼かな
無花果へ垂らす恩赦のウヰスキー
椋鳥やたやすく乾く舌の先
水盤の菊は傾ぎぬ修羅の家
髪強き性なり野菊にはなれず
声変はりせし子と鹿を見てをりぬ
掌に教へむ椿の実のことも
蓮の実がぜんぶ飛んだら帰らうか
良夜かうかう皮蛋(ぴーたん)の選び方
朝露の消えて埴輪の昏き口
秋麗や厨子に両性具有像
秋気澄む華泰茶荘(ファータイチャソウ)の坂くだる
十月の午後の餡入りクロワッサン
議事堂へ向かふはとバス文化の日

灯馬(とうま):1970年生まれ。福岡市出身。2001年松山へ。その後「ざくろ句会」にて俳句を始める。
13年4月より「道後オンセナート2014」実行委員長(ノーギャラ(笑))。



第三回大人のための句集を作ろう!コンテスト優秀賞作品

がちゃがちゃぽん あねご

立春の社運を背負ふ阿弥陀籤
春霙熱き監査分析表
牡丹の芽もみ消すやうに押す拇印
うりずんの夜めく口中の黒飴
駅裏の艾の匂ひ春時雨
大朝寝自然治癒力増強中
北窓を開く瓦斯屋と目が合ひぬ
淡雪や地図には残らない仕事
乾杯の相手は夕日山笑ふ
復縁ノススメノサイト蝶ノ昼
三椏の花三度目の週末婚
参道に餅焼く家業日永し
病み猫のひしめきあへる遍路寺
人形はママーと鳴いて鳥雲に
万愚節がちゃがちゃぽんと出る玩具(おもちゃ)
嘘つきの鼻のひくひく蝿生る
塀高きわけあり荘の庭桜
蝶蝶やこれより刑務所敷地内
ダム建設再開緑の羽が知事の胸
桜蘂降る蘂といふ字のごとき蘂
水たまりほどの影持つ日傘かな
斑猫や右だけ解ける靴の紐
貰ひ湯に晒鯨を提げ来る
来客のまず目にとまる金魚かな
つばえよる子から天花粉つけてやる
甚平のちんちくりんといふサイズ
一人しか産まない理由夾竹桃
工学部実験実習棟猛暑
夏雲をひとつ残らず拭く仕事
白シャツの鉤裂き二の腕の瘡蓋
パリ祭や欠損したる鳩の趾
海の日のいじめなくそうミーティング
日本がねじれています浮いてこい
夏潮や尻にこそばきエンジン音
目の前に見える本州穴子丼
蝉時雨三水にある墨溜り
仏壇の森永キャラメル蝉時雨
検尿のコップの底に夏果てぬ
父乗せるための助手席秋茜
加持祈祷終へし西瓜でありにけり
級長を投げ飛ばしたり草相撲
傷口の赤より赤き桃を食む
萩寺に和して罰当たりな話
月待ちの昼間の熱を残す椅子
月光や瀞はゆつくりかあぶする
蛇笏忌の光る粒ある蜻蛉玉
義姉さんの涙袋にある愁思
保湿クリームの内蓋にある愁思かな
排水に匂ふ石鹸星月夜
砂丘より受け取りました流れ星
結界の幣ざわめける黍嵐
鵙猛る小鉤のうまくおさまらぬ
はみ出せる蟷螂の腑の暴れたる
甲板は油の臭い鳥渡る
落花生干すや子どものいない島
斎田に始まる神事鷹渡る
紅葉かつ散るや大師の杖の先
木が枯れるやうに死にたき柿日和
新蕎麦や父と行くはずだつた町
ポケットに林檎大連へ亜細亜号
夕暮れの東中野を駆くる鼬
譫妄の中に本堂焼き尽くす
憂国忌鍵の開かないままの箱
宮様と息を合はせて放つ鴨
マフラーのなびく反対側に海
大阪へ明日発つ夜の玉子酒
億の商談大音量の聖歌
手相見の毛皮の帽子にある尻尾
良きことを書くためだけに買ふ日記
月色の鉄塔一基枯野原
淑気満つ風に乗らんとする鴉
竜の尾のごとき大縄初景色
初髪や花の名前のつく神社
人権の定義マスクの人多し
乳母車乗りたし先生の手袋触りたし
もがう子の袖鼻水のかぴかぴ
風邪の子の子を抱き上げる雨夜かな
文旦を剥く時だけの親である
母さんの我慢の数ほど寒椿
海鼠腸や遺書書くときの漢字辞書
梟の鼓動にはさんである栞

あねご:1955年生まれ。小柄で小心者のくせに声が大きく態度がでかい。笑いが俳句の原動力。夏井いつき命。



第三回大人のための句集を作ろう!コンテスト優秀賞作品

ビストロケルン 日暮屋

ミモザ咲きましたしかも発条仕掛で
ポコポコと謎の穴あり春の土
囀りや夢の奥まで日曜日
連泊の朝に春光シャンパンのシュワシュワ
余寒と言うにはいつまでも星の瞬き
さあ撃て春霰こめかみはここだ
アルペジオまだぎこちなく春の月
犬陰嚢のらくろ二等兵出社せり
朝刊のダウ平均や蜆汁
妻よほじくってまで短い土筆とるか
ブランコの止め方なんて知るもんか
啓蟄やパカンと開いた試着室
カーナビを使えぬ遍路しつこいぞ
スナックは海から十歩干鰈
別に咲かなくてよかった薺の花
嫁ぐ気のまるでなき姉雛祭
満月は低きにありて嫁菜飯
トルコ石の青さを小綬鶏に訊く
ひじき炊く地味な女に別の顔
春の川何年ぶりに石投げた
木蓮やヘップバーンのワンピース
雲丹の殻山にしてこれっぽっち
タンポポの種や少女の深呼吸
残り弾申告五発猟期終わる
桜鯛この流れなら酒だろう
アルバムの番長から逝く葱坊主
蝿生る駒音たてずまた王手
摘み草や知り尽くしたる山の暮れ
骨を埋めに来た新社員に骨がない
縦に裂けてしまったラップに春愁
ほんとうにあったことかと桜に訊く
捨蚕のたたりモスラはきっと来る
肘鉄の得意な女春日傘
憤懣遣る方無く蘖を切る
見せしめの左遷田螺和えは右巻き
やめろチンギスハーン口の中がざらざら桜まじ
群生のアザミ突き飛ばしたい人がいる
行くな春だってダンプが煽るんだ
退屈な時間が好きでみどりの日
マザコンは否定しないよプリン好き
星瞬かす麦の穂のチクチク
新緑の山ごと背負い漢来る
矢車今日も矢が飛んだもう無しでいい
柏餅ペロンと剥いで老けてゆく
ヒキガエル手足のばして思いっきり死んでいる
シャッターを僧に頼みて牡丹寺
うりずんやかすかに緑山羊の乳
ビストロケルン再開したってよ夏きざす
聖五月ドロップスからまたハッカ
葉桜や元恋人の離婚聞く
転げても三秒ルールえんど豆
すっかり脂ぎった工場からミズスマシが帰る
母の日に子のない妻と海に居り
駅までの近道知るや姫女苑
勝馬の主ズラリの金歯かな
海霧深しまた深酒になる
蜘蛛の巣昨日と同じ場所学習しろ
アスファルトの泥跡が右に曲がる仲夏
蝸牛ちびちびやって二日酔い
火の気ない厨のステンレスに梅雨寒
はまひるがお砂丘越えたら泣いていい
空の広さ関せず蟻の行列
ゼリーに閉じ込めた少年の日の微熱
足首回せばどこぞ骨泣く半夏生
返信のメール無しどこだ根切虫
鯖を折る漁師の腓返りかな
ボルト1000本締め上げくたくたの夏服
氷菓売る脳天焼かれ爆心地
生きる意味問われ水母と答えけり
祭笛どの追憶と遊ぼうか
穴子天一本これ見よがしにはみ出している
立ち読みにギリギリの打ち水はや三回目
パイナップル売りが来たしかもアフロで
僕が行きます尺蠖すくっと立つ
掻っ込んだ冷汁とばし昼からの段取り言う
淀みに船休む激しき夜振だったか
すててこの膝の記憶に缶ピース
黒い雲梯梧の花の当り年
トラックの風圧に夏蝶が転がる
踝熱砂にめり込ませ国がない
戦争放棄以来鵤鳴き方を変える

日暮屋(ひぐれや):1959年2月生まれ。適当にやっていたら、このようになっていました。何かご不満でも?
と言いたいのですが嘘です。血尿が出るくらい頑張りました。



第三回大人のための句集を作ろう!コンテスト優秀賞作品

秋思ノタマゴ

亜桜みかり

目隠しも遊びのひとつ穴惑ひ
紅葉且つ散るトキワレコード店
冷やかや球根もらふ休肝日
行秋の問診票に人体図
ワタクシノ秋思ノタマゴトリオトス
秋惜しむ鳥の歌聞くための舟
るきるきと深秋の夜の昇降機
立冬を小さく波うつソノシート
ストーブ据ゑる新着図書の棚は空
冴ゆる星表紙の固き児童図書
冬雲を透かせば青き独語癖
自由詩のかたちに初冬の海は凪ぎ
耳袋して吊革の輪の向かふ側
暖房車CCレモンにあるくびれ
霜月のシーソータイヤのぷすんぷすん
冬林檎剥けば星の香満つ厨
樹下にあり我極月の鳥となる
すれ違つたのは猟犬ではないか
虎落笛炎の中のスペアリブ
大年の杏仁豆腐にある鋭角
風呂場から子の口笛や年新た
御降や半紙の白の極まれる
ゆりかもめ切り絵の波の向かふから
寒晴を錆びきつてをる街宣車
風花や天使突抜一丁目
そもそもは結び目だつた梅一輪
浅春の水飴うつす小さき壜
愛の日の雲は鴎になりたがる
ひらがなで話した記憶春の星
凧ほどの筋金入りのをの子なれ
受験子の旅鞄より中央紙
小骨まできれいに食べて雛の客
花びらの一対菱餅の一対
だましだまし抜いて置いて帰る野蒜
若鮎や川は地球の笑ひ皺
落下するやうに桜の空へ鳥
砂山は崩れ花びらは波へ
春の月さざ波は巻貝を巻く
菜の花蝶と化す双子の転校生
雲生るる音にさそはれ石鹸玉
春炬燵ハモニカ低くボブ ディラン
決別や弥生のレモン厚く切る
かざし見る雲形定規夏に入る
五合目で風捕まへる鯉幟
身も蓋もなく弾けからすのゑんどうは
蝸牛地球学者になると言ふ
薬局のへくそかづらのうはの空
聖五月波尖るまで波を見て
夕薄暑ホーム突つ切る白き猫
込み入つた話冷製パスタ巻き
缶底より涼しきホワイトアスパラガス
野心たりメロンの蔕を切落とす
水みちて眠気を誘ふ金魚玉
記者席へ置かるるレジュメ青葉冷
遊学の子へ土用鰻を存分に
八月の磁石へ伸び上がる砂鉄
夏野なつ野いちばん戦がないのが薊
万緑や離島の溜池に小島
左舷に寄るな大暑の渦を見たくとも
炎帝や砂に埋もるる縄太き
おのころ島神に仕ふる鵜の棲める
この大樹にして青蔦のなすがまま
夕涼や鳩は円陣ほどきゆく
遠郭公村境なる魔除札
青鬼灯樋屋奇應丸の小さき粒
いつもいつも掴みたがつてゐる海月
白鳩出て来ぬよ秋麗のマジックショウ
がちやがちやや生家に開かずの間ひとつ
菓子箱をたたんで積んで厄日来る
白曼珠沙華はぐらかされたやうな顔
秋麗の底や眠りの深き猫
実石榴をこぼすや火種とも知らず
朝霧やたつぷんと尾をゆらす馬
白帝や千里の草に馬待たせ
鰯雲るろんと動く風向計
錦秋の肩胛骨の可動域
波打つて去る鼓笛隊草の花
鈴の音の月を容れたる鳥籠は
月光浴ぶ果実の種になつたやう
ラ フランス剥く言ひ含めらるる夜
星静か船首深秋へと傾ぐ

亜桜みかり(あさくらみかり):1961年生まれ。2001年より作句開始。初めての季語は「梅」。三日月句会所属。FMラヂバリ「俳句チャンネル」進行役の一人。「一句一遊」聞き書き隊隊員自称ブルー。



第三回大人のための句集を作ろう!コンテスト優秀賞作品

雪くずる 理酔

行くあてのなき犬海は春めかん
紅梅や海底トンネルまで二秒
春霜を安全靴で確かめる
公魚の匂う昨夜の軍手かな
船窓に鶯の声届きけり
春炬燵ブルーチーズをぽろぽろと
三椏の花はと問えば顎の先
何人死んだ何人生まれた佐保姫来
ボタ山の麓は暗し初桜
飯蛸や軍手に塩の華の咲く
港には紅き旗あり卒業日
万愚節そんな町などありません
踏めば死ぬのに何故笑う蚕
土食いし軍手を脱いで種を蒔く
若鮎や唄う山小屋管理人
昼休み君は桜を見ているか
蜃気楼ぶち壊し往く百万噸
蜆汁鋼鉄都市の日暮かな
春愁のボクサー走る走る走る
油煙満つ立夏の夜の紅き街
船籍はパナマ五月の国に入る
卯の花の小屋よりバンドネオンかな
薫風や生花市場の競り猛し
船名は朝太郎丸鯖揚げる
滴りを弾いて黒し登山靴
言訳はしない深夜のアロハかな
戦争の始まった日の蚤取り粉
抜錨の海は粉吹き梅雨に入る
紫陽花の駅脱線のアナウンス
蜘蛛と蜘蛛すれ違いたる収蔵庫
干し梅を跨ぎ茶の来る仏間かな
長靴がトロ箱の鯵蹴り渡す
赤牛の角にとまりし蛍かな
蓮ばかりあって退屈するお堀
迷子のお知らせ花氷はつんとして
すててこの説くビッグバン以前かな
くたびれて酒飯女日々草
看護師の目尻の汗に身を任す
翻る金魚の尾びれこそ淫乱
海という海飢えている大暑かな
蛮王の立ち上るごと虹の立つ
桐一葉すと身を起す夜の猫
留守番やどこかに桃のある実家
蜉蝣のサッシの縁に死に三日
子らはみなカンナの森に迷いけり
八月や焦土の影のごとき犬
三井三池闘争朝顔に水をやる
夜をおしむ二百十日のピアノかな
蟋蟀や仏頂面の街があり
やがて夜は明ける野分はさんざめく
ライオンの顎ぬれている葉月かな
さて諸君オクラを科学してみよう
腸を酒に含んで秋刀魚かな
曼珠沙華咲く畦道を嫌う馬
警報の海より来たる夜長かな
山霧の奥より混じり来る硝煙
北京語のざわめく路地や鵯の鳴く
重箱や運動会の土埃
どの赤も描けぬ柿の熟したり
面舵に滑る夜食のカレーかな
蓮の実を弾く海は豪と啼く
金柑や今荒海は哀号す
凩のバスを降り来る聖かな
海風の背骨に厳し大根引く
博多発長崎行きの時雨かな
風呂トイレ共同山茶花愛で放題
小雪の舟は川より川に入る
狐火の臨む羊歯類博物館
魚臭き冷たき口の海豚かな
バーテンがおでんを買いに行く夜明け
北風の未だ鳴りやまぬ事故現場
頂の観測所にて玉子酒
機械油の落ちぬ掌朝冴ゆる
日記買う無頼気取って犬蹴って
ブリッジの氷柱黒々ロシア船
雑炊や山口百恵がラジオより
金貸しのティッシュで眼鏡拭く外套
肉塊となりし鯨を踏み越える
空があるから海がある薔薇は冬
泡生るる水槽冬の天使魚
空壜の口雪つもり雪くずる

理酔(りすい):1960年生まれ。今回「大人コン」に応募した動機は大変な頭脳労働である審査員役から逃れる為でした、作戦はまんまと成功。でも来年は審査員がんばります。



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特集2
愛媛県立松山東高校主催

俳句甲子園冬季合同練習会




 今年で第17回を迎える俳句甲子園。今や俳都 松山8月の風物詩となった大イベントである。俳句甲子園の主役はもちろん熱戦を繰り広げる生徒たちであるが、その裏側には活動を支える大人たちの姿がある。俳句甲子園に臨む生徒達のために大人は何ができるのか。愛媛県立松山東高校にて開催された合同練習会の様子を本誌記者が取材した。
文責 正人

 俳句甲子園とは高校生を対象とした俳句コンクールである。全国から集まった各校が5名からなるチームを結成し、句合わせ形式で互いの句の優劣と俳句への理解力を競う。
 句作の上達、団体戦ならではの連携力向上、俳句への理解度を示す指標となるディベートの研鑽など、俳句甲子園に挑む学生は日々多くの学びに勤しんでいる。そんな学生達のために大会常連校、愛媛県立松山東高校が冬季合同練習会を企画した。

 2月11日(火 祝)、朝9時。小雪のちらつく中、愛媛県立松山東高校に集まったのは愛媛県内外の高校9校14チーム。集まった人数は顧問 審査員を含めると100名近くにもなり、集合場所である図書館は関係者で埋め尽くされた。生徒達は開会を待つ間、各自試合の用意を整えている。取り組みの確認や各試合で使用する用紙の準備など、現場は静かな活気に満ちていた。
 開会の諸連絡を終えると、生徒は5つのブロックに分かれて模擬試合を行う。試合は午前午後に跨る6兼題分。今回はそのうちの1ブロックで審査員を体験させて頂いた。

OB OGの支援
 校舎1階312教室で対戦するのは今治西 弓削B 伯方Bの3チーム。午前中の取り組みは兼題「落葉」「寒波」「鯨」の3題で行われる。初戦を戦うのは今治西チーム対弓削Bチーム。
 両チームともに緊張の面持ちで始まった試合に檄を飛ばしたのが、同会場の審査員を務める俳句甲子園OG川又夕さんだ。自身が俳句甲子園に出場した体験を元に、ディベートについてのアドバイスを語る。聴く両校の態度は真剣そのもの。審査員の発言から多くを吸収しようとメモを取りながら講評に耳を傾けている。
 試合後、今治西チームに話を聞いた。放送部を中心に構成されたチームの指導に当たっているのは今治西高校のOBやOGだそうである。川又夕さんもそのうちの一人。メールでの俳句指導に限らず、直接練習に協力し、ディベートの技術を後輩達に伝えているという。
 俳句のどこが楽しいかを尋ねるとチームメンバーがそれぞれに違う楽しさを語り始める。
今治西 メールでの指導は厳しいけど、楽しい。ズバズバ言うディベートや句会、それぞれに違う楽しさがあります。

俳句の楽しさを伝える先達
 時折、俳句甲子園に出場する生徒のご両親が「なぜうちの子が俳句なんて?」と疑問に思うケースを耳にする。(のちに疑問が氷解し応援に回るケースが多いようだが、それについては本題から外れるので割愛)。
 たしかに俳句は地味な趣味である。なぜ高校生が数ある技芸の中から俳句を選ぶのだろう?
 午前中の試合を終え、1年生女子4人で構成される伯方Bチームにも話を聞いた。
伯方B 部活紹介で見た俳句甲子園に出てる先輩がカッコよかったから。今日の試合も、緊張してるけど楽しい。自分の気持ちが出せる良さが俳句にはある。試合ではいつも全力です。
 先生や先輩に加えて、普段は外部の先生にもご指導頂いていると語る伯方Bチーム。午後の試合を控えるメンバーの表情は明るい。来たる愛媛県地方大会に向けて各校切磋琢磨する意気が伺える。

学校現場が抱える問題
 俳句甲子園本戦においてもそうだが、この模擬試合における各校の「この試合から学び取ろう」とする姿勢は本物だ。
 実戦の中で磨かれる経験値の大切さを松山東高校俳句部顧問の1人、森川大和先生は語る。
森川 試合を吸収するチームは育っていく。俳句甲子園本戦でも、各試合で学ぶチームは試合毎に力を伸ばしていく。こういう合同練習会で実戦の経験を重ねさせていくことで、各校のレベルアップを図っていきたい。
 例年、年4回を目標に開催を続けている合同練習会は今年も同様に開催する予定だ。しかし運営へは不安材料も残る。
森川 公立の学校に勤める教師の宿命として、転勤という避けがたい問題がある。自分達がいなくなった時どうなるか。何を残していけるのか。考えるべきことは多い。
 進学校である松山東高校は県外に進学する卒業生が多く、直接現場で後輩の指導にあたることのできるOB OGがいない。また、技術的な指導という意味では地域の俳句愛好家による外部支援も現状では無いという。それらが先に紹介した他校とは明確に異なる点だ。
森川 加えて、学校現場としては活動費用の問題もある。文化系部活動は部費の少ない傾向があり、活動の一環として吟行などの遠征に行けばそれだけで資金が枯渇する場合もある。教師が個人的に実費を負担することも珍しくない。
 今回の練習会の場合、松山東高校は他校を招待する立場であるため交通費 施設使用料など大きな費用は発生しない。会場を眺める限りはお茶等の準備についての費用が察せられる程度だ。
 では招待される側の高校はどのようにして今回の遠征に参加しているのだろう。

合同練習会の意義
 この合同練習会に最も遠方から参加しているのが高知県の私立高校 土佐高校だ。今日の練習会には2時間30分をかけ、顧問の先生の自家用車で来たという。「高速代出しますよ」と言う生徒達に先生は笑って首を振る。先生も含めチームの空気はとても穏やかだ。
土佐 練習会への参加は去年から。ディベートの瞬発力とか、他校さんには驚かされることばかり。それに高知県民とは性格も全然違う。普段の練習では経験できないことがいっぱい学べます。
 やはり松山東高校と同じく、顧問 指導者が負担する部分はあるようだ。しかし練習会に参加する意義は大きいとチームメンバーは感じている。昨年の俳句甲子園第16回大会の時点では高知県からのチームエントリーは少なく、地方大会の開催に至らなかった経緯がある。そんな中、土佐高校にとって実戦経験を積める合同練習会は得難い機会なのだろう。

 練習会は午後3時まで続いた。全チームが再び図書館に集合し、諸連絡を終えて解散となる。帰り際、松山東高校一同が、来校した他校生徒を見送る。互いに今日の奮闘を称え、エールを送り合う姿は清々しい。
 俳句甲子園は今なお全国でその活動の裾野を広げている。生徒達を支援する学校が、そしてその学校を支援する新たな動きが生まれてくれるよう願う。



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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2014年度 第一期 第一回


「もっともっと」門田なぎさ

早春や涙は水のはじめなる
ぶらんこのもっともっとという軋み
雨垂れのごときまばたき春の馬
こまごまと買うて雛あられの軽さ
夕映えの鳥の巣わずかふくらみぬ
レフ板のひらりと春の動きけり
犬撫でれば弓なりの喉春の夕
エレベーター出て春愁の生まれたて
たんぽぽや展望風呂に顎乗せて
旅果てて星は大きく蜆汁
しゃぼん玉吹くいそいそと変わる雲
つばくらめ丘はむなしき高さにて


愛媛県松山市生まれ。第2回大人のための句集を作ろうコンテスト最優秀賞。昨年暮れに我が家の一員となったゴールデン レトリバーと遊ぶことが目下の楽しみ。




「かるこけるこ」天玲

うすみずいろに春は沖も青島も
つっ立って眺めてた帰りゆく鳥を
しゃぼん玉とばす海行く汽車の窓
昼すぎの路地を迷うて君子蘭
流木にかつてさえずりあふれし日
しんにょうが饒舌になる春の山
蛇出づるかるこけること竹は鳴る
剪定の揺れに小さき巣は毀れ
連翹や水面は正直な鏡
黄水仙みるみる悪女になるスンジョン
薄氷月と呼び合う陸の舟
黙祷を終え残像の梅一りん


山仕事と書道と家庭生活の黄金比をめざしています。45さいになりました。




「振顫」平山南骨

春寒し生春巻に透くる海老
三椏の花ぱんぱんの膨ら脛
頬杖を伝はる揺れや蠅生る
アセトアルデヒド執念し囀れり
三 一一木端くはへて鴉発つ
永き日を四畳半にて振顫す
洞籠めの木霊魑魅や桜咲く
肝臓はふくらみ蝶は舌のばす
陽炎やルーデサックを干す少女
揚雲雀皇御軍(すめらみくさ)の脱肛す
八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)磯巾着のなか
羊の毛刈り童貞に安んじぬ


1968年生。高知市在住。「鷹」同人。




「犬が来る」理酔

愛国を叫ぶ輩の建国日
スミノフとストリチナヤと二月尽
双葉タクシー近藤氏の春暁
鉢の梅若き車掌の会釈する
やわ肌の熱き血潮に桜餅
春霜の筑後平野の汽笛かな
風の無き霞の底の有明海
鶯や天草四郎の城の跡
入札の中庭春闘のビラを踏む
角打ちの隣の客の春ショール
春荒や軍手重たし手の痛し
啓蟄の連絡船で犬が来る


1960年生まれ。性別:男 年齢:51歳 国籍:日本 出生地:下関市 所在地:福岡市 賞罰:無し 身体的特徴:内臓完全逆位




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読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2014年4月号 〜 2014年6月号 1/3回目)


 都府楼 かのん

駘蕩やキリンもロバも側対歩
永き昼路地口に立つ旅の人
春の霧街は嗣治の乳白色
亀鳴くやシェイクスピアは法螺吹きか
古文書は日勤表や春暖炉
丁寧に洗う足裏宵の春
都府楼の梅散るや苔生ゆる幹
春苑の騎馬像奮い立てる脚
菖蒲根分け水底鯉の目覚めたり
伽藍石朧月夜に潤みたる


夫の転勤で松山へ。組長の新聞コラム「えひめ日めくり歌暦」を愛読し、木曜カルチャーを受講。今は郷里福岡で「おらぶ俳人の会」を楽しみにしています。



 うねりて海へ 妙

いぬふぐり埋もるやシャベルで撒く堆肥
斑雪野やうねりて海へ鳥の群
雉鳴くや農舎に据うる選果台
竹輪麩で指される先の春の蝿
花菜漬問ふ入籍のタイミング
大絵馬の鰯屋兵蔵梅日和
散り際の白梅に紅注す不思議
シスターは園長先生春の霜
一万五千余人の忌日木々芽吹く
ラプンツェルに鍵手渡さん揚雲雀


農業の合間にテキトーに家事をこなす五十四歳。ラジオ投句に心を吐き出す術を得、楽しく美味しいプリマスロック句会に力をもらい、日々笑って過ごしている。組員歴七年目。



 卒業 八木ふみ 

花菜風百葉箱を抜けて来し
春の日をトランポリンと乱れ飛ぶ
ゴール裏沸き立つゲーム山笑ふ
吊革に春手袋の淡き色
脇差の切先きらり雛の市
春泥を斜めに走る白き犬
遠足の空はなちゃんと歌ふ空
ねこやなぎ橋を渡れば小学校
卒業や手紙を添ふる新刊書
さよならが口から離れ白モクレン


09年5月より、3人の子の巣立ちを機に木曜カルチャーで俳句を始めました。現在、孫が長期滞在中。来島海峡大橋の近くに住み、柑橘栽培に励んでいます。趣味は、スポーツ観戦と折り紙。



読者が選ぶ人気俳人!
「100年の旗手」連載者推薦募集

 今求められているのは、読者が読みたいと思う俳句作家。「100年の旗手」は、連載する俳人を、編集室ではなく、読者が選ぶコーナーです。
 「この人の作品集を読んでみたい」と気になる俳人を、1人3名まで推薦してください。その中から、推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行います。
 あなたのお勧めの俳人を是非推薦してください。

 推薦の方法

「この人の作品集を読んでみたい」という人を3名まで選んで(自薦は不可)、その俳号と活動場所(句会、誌面等)、推薦者ご自身の俳号(本名)、住所、電話番号を明記して、100年俳句計画編集室「作品集推薦」係へ送ってください。ハガキ、FAX、Eメールで受け付けています。Eメールの場合は件名を「作品集推薦」としてください。また、専用のインターネット投稿フォーム(http://www.marukobo.com/100kishu/)でも受け付けています。※投稿フォーム利用の場合を除き、推薦は他の投稿等とは分けてください。

締切 毎月末日

 現在連載している3名の方以外なら、一度連載された方も含め、どなたでも推薦できます。
 今回連載を行った3名の作品集の感想もお待ちしています!


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百年琢磨
 春の表現 しなだしん

「被食者」 鞠月

春手袋アンケートにはすこし嘘

 街頭の簡単なアンケート等だろうか。アンケートに記す「嘘」は、少しの背伸びや、ちょっとした見栄、もしくは些細な悪戯のようなものだろう。そんな無邪気な嘘も、春の兆しから来るものなのかもしれない。

梅東風や百号キャンバスに女神

 「女神」という言葉から、像を結ぶその姿は、読者によって千差万別だろう。「百号」の「キャンバス」からは洋風な感じもするが、季語の「梅東風」から佐保姫を想像するのも愉しい。

糸電話みみ くち みみ くち みみ うらら
 凝った句。「糸電話」で繋がるのは、おそらくはこどもたちの「耳」「口」。表記を含めて情景がやわらかく描かれている。季語「うらら」の効果も大きい。


「空洞の目」 樹朋

釉薬の豊かに垂るる春の月

 焼物について明るくないが、磁器の制作現場での釉薬をまさに垂らしている場面の写生か、それとも既に焼き上がった器を眺めているところだろうか。釉薬の美しさが映える、やはり後者と見るべきか。いずれにしても「春の月」の瑞々しさが、対象をより美しく見せる。

陽炎に布を染めなばきはだ色

 「きはだ色」は漢字では「黄蘗色」と書き、ミカン科のキハダの樹皮で染めた鮮黄色。ややもたつく表現ではあるが、詩的な比喩が、「陽炎」のひとつの答えとなっており、春を感じさせる。

春を笑む目と口のみの木端仏

 「目と口のみの木端仏」に類似した表現は見ないではないが、「春を笑む」という「木端仏」の大掴みな把握がこの句の面白みとなっている。


「恋文」 たま

草の香や円墳濡らす春の雨

 「草の香や」と、嗅覚の要素を取り入れたことで「春の雨」に、より春らしい趣が出た。「円墳」に対峙する作者の息づかいも感じられる。

春の月ワルツ色なり恋文は

 「ワルツ色」とはどんな色だろうか。それが「恋文」であるというところも想像が膨らむ。上五の切れの浅さを含め、倒置法が成功したのかは意見が分かれるところかもしれない。

リラ冷や礼拝堂に膝折る娘

 「リラ」はフランス語であり、「ライラック」のこと。「リラ冷」は雰囲気のある季語だが、実は北海道限定で五月下旬の寒さを指すとされる。勝手に函館の元町あたりの教会を想像した。「膝折る」からは少女のかぼそい脚が思われ、礼拝堂の床のつめさたまでも伝わる気がしてくる。


しなだしん
1962年新潟県生まれ、新宿区在住。「青山(せいざん)」同人、俳人協会会員。句集に『夜明』『隼の胸』。


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新 100年の軌跡


2014年度 第一期
第一回


スモックに春 雀子

紅梅や吊りスカートの千鳥柄
三毛猫の爪とぎの痕なぞる春
ぶらんこの鎖に指を噛みつかれ
クレパスのどうぶつ笑っていて退屈
数字にも書き順のあり鳥雲に
長靴を鳴らしゆくプラネタリウム
風船の色選ぶ早生まれの子
檸檬忌の釦ひとりで留めはずす
チューリップ咲かないずっとずっと見る
豆腐屋は花屋のとなり春の雲
エイプリールフールの姉を見失う
春の昼パンダの中に人がいる
遠足の帽子のつばを上向きに
みどりの日あんぱんちぎっては口へ
ペコちゃんの目は春の虹見る高さ


雀子
本名、木田智美。1993年3月24日生まれ。大阪府立吹田東高校出身、龍谷大学在学中。12、13回俳句甲子園に出場。関西俳句会「ふらここ」に所属。




絵地図 仮屋賢一

飼ひ犬を莫迦と言ふ人春立ちぬ
春めくやそんな見てくれだから長
遊山客春告草に春を告げ
石鹸玉つひゆ以下略したるごと
料峭や己刺す向きに刃を渡す
酒を前に目刺仲良く死んでゐる
薄氷やヴィオラはをとこ弄ぶ
名諺に俗説多し山椿
男等に男はさまれ卒業す
受験子の配らるるビラ全て貰ふ
蘖や絵地図の沼は大きめに
鉄臭き手に種袋握りをり
蛇穴を出づ知己誘ふ演奏会
ふらここを漕ぐふらここの影も漕ぐ
いつせいに戦ぐ山ある朧かな


仮屋賢一
1992年生まれ。俳句甲子園出場を経て、現在京都大学工学部情報学科在籍。関西俳句会「ふらここ」代表、作曲の会「Shining」会員。




ポコちゃん派 桜井教人

風船の色選ぶ早生まれの子 雀子

 早生まれを意識するのは、小学校低学年か競走馬である。作者の意図とは違うだろうが、競走馬が好きな色の風船を追いかける景を想像すると愉快だ。中七に切れを入れて少しリズムを崩すことにより、独自の調べを生むのがこの作者の特徴のようだ。

ペコちゃんの目は春の虹見る高さ 雀子

 文句なく大好きな句だ。春の虹とペコちゃんとの距離の近さがとても心地よい。それを目の高さに着地させるところは憎いほどの着眼だ。店の前に置かれた人形と垢抜けたお洒落な店も見えてくる。但し、私と同年代の男性はペコちゃんよりもポコちゃん派である。

蘖や絵地図の沼は大きめに 仮屋賢一

 「池」ではなく「沼」と聞くだけで、想像力が数倍拡大する。重い質量感、不思議な生物、何より必ず何らかの伝説をもっている。つまり人にとっては危険な存在なのである。絵地図には大きめに書いて知らしめなければならない。蘖の存在感が確かで、しかもその対比がおもしろい。

鉄臭き手に種袋握りをり 仮屋賢一

 骨太い句である。日本人は古来よりかくあったに相違ない。現代社会へのアンチテーゼなのかも知れないと思いつつ、パソコンのキーを叩く自分の手を思わず鼻にもって行ってしまった。


1958年生まれ。愛媛県今治市在住。第3回選評大賞および第4回選評大賞入選。



春ですね とりとり

豆腐屋は花屋のとなり春の雲 雀子

 春の空気のなかの色とりどりのお花屋さんとモノトーンのお豆腐屋さんがパステル画みたいに可愛いくて、もこもこの雲も目に浮かびますね。

ペコちゃんの目は春の虹見る高さ 雀子

 そうだったんですか。春の虹を見ているからペコちゃんはあんなに嬉しそうなんですね。街のなかにも春は来ているんですね。

飼ひ犬を莫迦と言ふ人春立ちぬ 仮屋賢一

 素直に愛を語れない男とたぶん雑種の犬と立春がベストマッチです。

春めくやそんな見てくれだから長 仮屋賢一

 すみません「長」がわかりません。

男等に男はさまれ卒業す 仮屋賢一

 あはは。あるある感が可笑しいです。青春はこれからですね。
 「スモックに春」は春のうきうきした気分の楽しい十五句でした。「絵地図」は少し屈折した早春の気配が魅力的でした。次回からも楽しみにしています。


1957年生まれ。三重県在住女性。第1回選評大賞優秀賞。


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超初心者から中上級者まで楽しめる
100年投句計画

 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天地人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選、並選を選んでいます。今回の先選者は、阪西敦子さんと加根兼光さん。後選者は、関悦史さんです。

 「へたうま仙女」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は杉山久子さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。

 「詰め俳句計画」は、マイマイさんによる、二つのフレーズに合う季語を投稿するコーナーです。季寄せや歳時記さえあれば、全くの俳句初心者でも挑戦できます。
(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)
写真:白鯨


選者三名による雑詠俳句計画


先選者 阪西敦子

 腱鞘炎が治らない。間もなく半年。炊事の最中によくものを取り落とす程度だったが、ある日、手首の踝に当たる位置にちいさな角が現れた。かかりつけの玄先生に見せたところ原因はおそらくPCの変換。確かに正字の多い原稿を書いていた。骨のずれを直せば引っ込むのだけれど、放っておけばまだ元に戻る。鍼で関節を支える筋肉を刺激し、テーピングで戻りを防ぎ、変換は極力減らして別の指で行うしかない。治癒は春のおとずれに似て。



春めくやサンドイッチの赤白黄 明日嘉

 赤白黄は春の弾みを表す色。リズムもよいし、春めくものを描く方法としては、定番の内かもしれない。しかしながら、今回の赤白黄はチューリップでなく、旗でもなく、サンドイッチだ。白はパン、黄は卵、赤は……トマトか、味から言えばハムだろうか。明るく、のんきで、たわいないけれど、イメージからではなく、具体的な風景から描き、赤白黄という典型のリズムの力を借りながら、「春めく」さまを息づかせ、蠢かせている。



円窓を細く開けたる風邪の人 杉本とらを
 円窓というものはそんなにあるものではなくて、由緒のある家か、凝って作られた家などが浮かぶ。深窓の令嬢か、それを薄く開けてやつれた顔がときどき覗くのみ。ふとした状態から、風邪の様子が伝わってくる。

冬の山洗濯物の生乾き こぼれ花
 家の裏の窓から見える冬の山。空は青いが、山は厳しく人を寄せつけがたくある。それにかかるようにこちらにある洗濯物に触れたところそれは生乾きであった。茫漠とした山と、湿りの妙な感触の差に冬山の遠さを思う。

節分の夜を尖っている梢 ほろよい
 節分の夜「を」は凝った言い方。通常であれば「に」とするところ。「を」としたことで、今まさに尖りが進行しているような、節分の真夜にそれが極まるような感じが生まれた。季節の変化へ向けた力を描かれている。

たまご焼く夜明けて暗き建国日 妙
 建国記念の日であるからというわけではないだろう、むしろこの時期の朝の様子である。夜明けは早くなるものの、寒く戸も閉じがちである中に、白々と卵を焼く。その淡白な読後に、はじまりの風景が思われる。

誰れも居ない部屋に音する春の昼 北伊作
 誰もいないはずの部屋にする音は、家のきしみか、飼い猫か、作者の幻聴か。あたりの静けさと明るさの中で、それは妙に響き、耳に残った。鷹揚なリズムで描かれる、穏やかさの一方にある、春昼のゆらぎのようなもの。



門衛の顔を消したる白い息 杉本とらを
邂逅や肩に残れる春霰 まほろ
塩梅は母の一言桜餅 レモングラス
警策のびしりと響く室の花 迂叟
葉牡丹を植えて女将の顔となる のり茶づけ
そのなかの眇の子猫もらひたり 樫の木
はふはふと小犬追わゆるしゃぼん玉 おせろ
段ボールだらけの部屋のヒヤシンス 雨月
ばばひくとすぐにわかる子春炬燵 うに子
春寒の小骨かかりし喉かな あい


先選者 加根兼光

 2月で大阪の仕事を辞し長距離通勤からも解放された。と言っていたら長年、スタッフの方々と続けていた十三会(大阪十三での飲み会)の最後に立ち寄る十三トリス一帯が消失してしまった。13日にはその焼跡を見舞い、いつもとは違う店での十三会。いつか再建されるであろう十三トリスでまたトリハイ(トリスのハイボール)を傾けたいものである。



受難日の雨じぐざぐと流れけり 七草

 キリストは十字架の上で「私は渇く」と言われ、槍の先の海綿の酢で喉を潤したのち息絶えた。その受難日の雨は地に落ちてもまるで十字架を負うて坂を登るキリストの足のように「じぐざぐ」としか流れずキリストの苦難に涙するかのようである。今ここに降る雨を描写しただけではあるが「受難日」という季語の力が時を超えてキリストの受難を目の当りにするかの臨在性をもたらすのであろう。季語の力を改めて認識する句である。



余寒あり木目の詰まる文机 樹朋
 キッパリとした上五の切れが余寒の深さを思わせる。木目の詰まった木は寒い年月を耐え身を縮めながら成長した証。天板の木目もその文机の持ち主の実直で律儀な性格を思わせる。その机にも春光が伸びるころか。

愛の日の無言貫くエレベーター 紗蘭
 バレンタインデー。本来、愛を交換する日でチョコを贈る日ではないが、「愛の日」としたことで本来の意味が浮かび上がった。普段は話すエレベーターも寡黙。それに乗って作者は何に向かうのか。本来の愛の日の寡黙。

画架たたむカフェや紅梅残りたる てん点
 今まで描いていた画材を畳むオープンカフェ。立ち去ろうと腰を上げる。通りの風景を描いていたがふと見上げた紅梅は散り残って花を残す。或は描いていた紅梅を残して去る未練か。紅梅は温もりを宿す花である。

浅春の砂場に奪ふバケツの黄 雨月
 寒さが残る春。砂遊びに夢中になっている子たちのバケツを奪い合う光景であろうか。或は母親が子を連れ帰るために奪ったのであろうか。黄と色に帰着した鮮やかさが浅春。

たまご焼く夜明けて暗き建国日 妙
 白身の真ん中の黄が焼けていくにつれ白濁してゆく。建国日の朝は白濁してゆく卵の黄身のように濁りを伴って暗い。「夜明けて暗き」という言葉はこの国の今と未来に対する思いを現す。ふと卵に国旗がダブる朝である。



こおこおと雲の啼きたる余寒かな まほろ
白銀の富士山腹にある火口 こぼれ花
葉牡丹を植えて女将の顔となる のり茶づけ
漢文の易きレ点や如月来 野風
啓蟄や地を切り開く鍵の束 紗蘭
彩卵を齧れば黄身のかぼちゃ色 樫の木
クレーンの腕たたまれて冬雲雀 ほろよい
節分の夜を尖っている梢 ほろよい
儚儚と子宮の揺らぎ猫柳 ゆりかもめ
入学や都会の人の早歩き ポメロ親父
春ノ海渡レバ働キ蟻ノ町 ひなぎきょう



後選者 関悦史

 三月十一日に第四回芝不器男公開選考会が行われ、私も運営の手伝いに行ってきました。選考はきわめて難航。結果は、芝不器男俳句新人賞=曾根毅、大石悦子奨励賞=西村麒麟、城戸朱理奨励賞=表健太郎、齋藤愼爾奨励賞=庄田宏文、対馬康子奨励賞=高坂明良、坪内稔典奨励賞=原田浩佑、特別賞=稲田進一各氏に決まりました。受賞者、非受賞者の差はわずかであり、両者ともこれを自分の飛躍のきっかけに変えてほしいと願います。


特選句
早春のキャンパス沖縄戦争展 藍人
 余計なことを言わず、現代の大学と沖縄戦争展を取り合わせただけなので、かえって詠みたいものがすっきり伝わってきます。「早春」の平和さが学生の関心の淡さを暗示していますが、それで糾弾調を免れてもいます。

母と義母入れ歯見せ合う雛祭 和音
 こんなイヤな雛祭の句もおそらくあまりないでしょうが、かつて娘だった母たちの長寿と陽気さで救われています。身内たちが集まっての何の気取りもない(なさすぎる)団欒を描いて、素朴な実感と可笑しみあり。

金星を見守っている春の星 青柘榴
 いちばん目立つ金星がまず目を引く、そして周りの星々に順次注意が広がっていく。その金星と周りの星々との関係付け方が面白い句です。見立て 擬人化は浅薄に終わりがちなのですが、嫌味なくまとまっています。


並選句
チューリップ咲きて日蘭辞書開く ヤッチー
セロファンの風や蛙の目借り時 迂叟
春の昼ミモザサラダの出番です 幸
薄氷に褶曲のある夜明けかな みちる
原爆ドームの破片回収寒明くる 一走人
人のみな上機嫌てふ花疲れ 七草
蕗の薹焼けば松ぼっくりのごと お手玉
遠足の子が歌いだす踊りだす 北伊作
猛風吹泰然自若磁石かな まこち
薄氷や夜半に孵化するティラノザウルス 明日嘉



関悦史(せきえつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。

加根兼光(かねけんこう)
1949年大阪生。俳句集団「いつき組」組員。第9回俳句界賞受賞。



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へたうま仙女


文 杉山久子

 新年度を迎えた下界の皆さん、色んな身辺の変化に加えて花見だなんだとざわざわ忙しい時期だけど、忙しい時こそへたうま句の材料も豊富? 新たな気分でスタートね。

卒園式親につられて泣く園児 未々
 新たな出会いの前には別れも付きまとう。これから様々な「卒」を体験してゆく人生の中の初の「卒」を経験している園児に微笑ましい視線が注がれていて、沢山の泣き顔が輝いて見えるわね〜。

冬ぬくし俳人たちに囲まれて ケンケン
 このある意味恐ろしい状況をウエルカムに捉えられるあなたはもう「或る世界」に両足を突っ込んでます。多分。ららら〜な人生が開けてますよ。多分。

鉄瓶の口数減って春火鉢 南亭骨太
 あ〜ら南亭素敵なお名前ざんしょ。擬人法を駆使して懐かしい佇まいが心安らぐ時間とともに描かれたわ。「褒めても貶しても進歩がない」とお便りされてた南亭さんだけど、仙女は褒められて伸びるタイプよ。よろしくね。

チョコの日は家族にしかやらぬ 柊つばき
 断固たる決意が自由律でよく表現されてるわね。好きだわこういう人。仙女の同僚に「家族にもやらない。家族が貰ってきたのを自分が貰う」という人もいたっけ。

うとうととうとうとうとと春の風邪  台所のキフジン
 「う」と「と」が延々続きそうでこっちまで眠くなってきたわ。「う」と「と」だけで十二音使い切るという春ならではの技。寝ては覚め寝ては覚め、次々と夢を見ながらの養生もたまにはいいものね。

「ハローCQ」階段下の部屋も春 元旦
 「ハローCQ」ってなんじゃろ? ハローとくればキム編集長の名句「ハロー、コスモス、僕はギターを弾いている」しか知らなかった仙女はググってみたわ。「昔のテレビドラマで、アマチュア無線にハマった中学生が周りの人に助けられながら成長、開局する話」らしい。因みに主題歌が作詞やなせたかし、作曲いずみたく、歌いしだあゆみという豪華メンバー。先日亡くなられたやなせさんへの追悼の意味も込められてるのかしらね。無線でやなせさんに繋がっちゃいそうな、柔らかな春風が吹き抜けてゆくような心地よさ。上手いじゃん。追放。

梅咲いて李さん一家のまだ二階 小木さん
 同じ部屋を詠んだ句でもこちらは二階。何らかの事情で二階の一間を借りて暮らす李さん一家。季節が変わってもなかなか変わらない状況に、けれど李さんたちにまだまだ居てほしい気分も伝わってくる。梅の花のぽっと灯った空間が優しい。小木さん、上手くなったよね〜。追放。

着膨れておしくらまんぢゅう見てをりぬ  大阪野旅人
 おしくらまんぢゅうの中に入って行きたいような、でも言い出せないようなって感じの着膨れさん。情景だけで微妙な心理を詠むような上手い句は追放。

春を待つ女伊達なり猿の助 たっ君
 これもよく判らなかったのでCQついでにググったら、四代目猿之助が「女伊達」って
演目をやったのね。「颯爽と現れた男勝りの女侠客がならず者達を鮮やかに手玉にとる」って、観てみた〜い。興業のコピーにピッタリじゃない。

猫といふ猫に鈴つけ春満月 青萄
表札に猫の名前や春隣 青萄
 ダイナミックな作業をした前句の春満月のめでたさ、薬袋に猫の名前はあるけど、表札にまで堂々と書くとは、動物病院やペットショップから続々とDMが届きそうだわ。こんな上手い猫句は当然追放。

 ぴちぴちの新入生も待ってるわよ!



杉山久子(すぎやまひさこ)
1966年生まれ。第二回芝不器男俳句新人賞。句集『春の柩』、『猫の句も借りたい』『鳥と歩く』。


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ

 「ももいろクローバーZ」、通称「ももクロ」と言えば、7年総額162億円であの楽天からニューヨークヤンキースへ移籍した田中将大投手の大好きな女子アイドルグループ。おかげで世の中のおっさん連中にまで一気に有名になった。しかし当初この「ももクロ」を、俳人で師匠の黒田杏子(くろだももこ)のことと勘違いしていた人がいる。いまや毒舌俳句先生になってしまった夏井いつき。まあ師匠想いと言えばなかなか美しいが、それにしても上手に都合よく勘違いするにもほどがある。バツとしてこの際唄って踊れる俳人を目指してください。でへへ……。



遅日のまんじゅうどこから齧ろうか もね

 ガツンとくるような重さもないし、鋭利な刃物で刺されるような鋭さもないけれど、よく読むとじわーとした春の倦怠感が伝わってくる。「遅日」とは、季語にもあるように、春の暮れそうで暮れない時間帯……。「まんじゅう」は、いま人気のスウィーツといった華やかさからはほど遠い……。それをどこから食い付こうかと迷っているという中途半端……。すべてアンニュイというか倦怠というか、もっといえば脱力感というか……春愁とまではいかない何気ないフツーの春を、うまく切り取れているのではないかと思う。



春はあけぼの泣いてもあかるい 緑の手

 「春はあけぼの……」と言えば枕草子。やっぱりこの句も本歌取りというのだろうか。素直に解釈すれば、泣くなら春の夜が明ける頃がいちばん良い。なにしろ泣いてもじわーと明るいので、必要以上に重く暗く落ちこまなくてもよいし、かといって夏のように、あっという間に明るくなって泣く気にもならない、ということもない……ということになるのか。妙に納得してしまうのだ。

朝刊を開いてとまどいを隠す ケンケン

 朝一から、なにをとまどうことがあるのだろうか。昨夜のうちになにがあったというのか。とまどう相手は誰なのか。朝刊ということから考えれば、妻なのか。いやそうとは限らない……。つぎつぎに妄想が生まれる。この感覚は有季定型では出しにくい。

消えたいのに土まみれの雪 幸

 土まみれになった汚い雪を詠んだ句というのは、珍しいのではないか。できれば美しい雪でいたかったのだろうが、はからずも土と混じってしまった。こうなれば早く融けて消えたいのに土のせいで、それもままならない。こんななさけない恨みがましい雪の視点があったとは。

宇宙に暗黒物質人に春愁 藍人

 「暗黒物質」とは、宇宙にあって天体に重力を及ぼしているがその正体は、いまだ謎。かたや「春愁」、これも考えようによっては人の奥底にあってよくわからないもの。この二つをひっつける大胆さが、ものすごい句にしている。

この鍋でいふと春菊だなオレは ちろりん

 すべては春菊の解釈の仕方だろう。おそらくは主役ではない自分をやや斜めに見つつ、しかし独特の芳香があり苦味があり……存在感は十分にあるということだろうと思う。大阪なら「そんなええもんか!」と、まだツッ込まれる心配はあるが……。



三寒や爪は容赦なく伸びる コナン
トマトを握り潰してはいけない 理酔
恋猫に押される背中 小木さん
日脚伸ぶ株式市況というリズム 元旦
風はクレッシェンド水仙の波 北伊作
象牙に刺された夢を見た エノコロちゃん
春愁の重さ計れぬヘルスメーター たま
納豆の好きとなればこねるこねる のり茶づけ
花びら散るように砂浜へ海鳥 和音
捨てる神あれば桜貝 もね


並選
諤諤と震え小猿の遠き唄 KIYOAKI FILM
消しゴムを借りて奪われし心 小市
吉三の台詞を諳んじるには朧月 ヤッチー
四つ葉のクローバー手渡され意味ありげ  レモングラス
施設の庭に小鳥くる 迂叟
犬はぶらんこが嫌い あらた
凍てつく展望台にひとり立ち頷く ペプチド
天とったどー亀の鳴く あきさくら洋子
引くに引かれず課長とぶつかるライラック  河合郁
君は少女のやうだから僕も少年 みちる
フィボナッチ数に産まるる人参 紗蘭
雪消える黒板消しばんばん叩く 樫の木
出迎えの鷹真正面に海 一走人
ジョギングの眩しき朝にモカの香り ふーみん
坂の街はざらざら黄砂降る 七草
海鼠三鉢集まって宴たけなわ しんじゅ
子の寝顔に腹が立つ 雨月
じだんだ踏むふらここ待ちの三番目 お手玉
薄目開け紅梅ちら見した大仏 元旦
亀鳴くや言った者勝ちでない 不知火
ぶらんこは乗らない歩いて行くと言う 妙
福耳用花粉症マスクあります うに子
チョコ喰うて春は名のみの義理の寒さや  まんぷく
陰膳のグランダットに語る夜 一心堂
終いに混ぜくりかやしておじや ポメロ親父
北国の友へ寒桜咲いたよ 喜多輝女
老父には聞こえない亀の鳴き声 空山
拡声器撹乱アワワワ冬うらら 親タカ
久々の苗木市前の訪問客 サキカエル
連休のあけに風邪の子 柊つばき
春雲であるだしぬけに甚平鮫である 鯉城
卒業の日の麻雀や面子忘れじ 台所のキフジン
4回転ひやひやさせて金メダル カシオペア
ファインダー春を覗いてどなられる たま
義歯補綴科は若き美人医師 松ぼっくり
猪猛る天高々の土 ひなぎきょう
割烹着春色に染まってSTAP細胞 ザッパー
春を憂えるがための消費税 青柘榴
紙飛行機急降下草萌ゆる あおい



きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「層雲」同人。写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。


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詰め俳句計画


出題 文 マイマイ

今月の問題
 次の(  )の中に共通する春の季語を入れて下さい。
おむすびのこれぞさんかく(  )
(  )裾野を縫って這う電車

おむすびのこれぞさんかく霞
霞裾野を縫って這う電車
 KIYOAKI FILMさん。この腰砕け感は何。7級。

おむすびのこれぞさんかく針供養
針供養裾野を縫って這う電車
 みちるさん。後句、「縫って」からの連想でしょうか。前句おにぎりに針が入っていそうで嫌。6級。小木さんは花粉症。前句、せっかくの行楽気分が台無し。同じく6級。台所のキフジンさんは磯菜摘。これは磯遊びなどとは違ってかなりきつい労働のようだ。後句、電車が磯から遠景として見えているのだろうか。前句のフレーズがこのマニアックな季語を受け止めているかどうか。5級。

おむすびのこれぞさんかく山遊
山遊裾野を縫って這う電車
 牛後さん。前後句ともにまとまっている。が、納得するだけで終わってしまう気もする。4級。ヤッチーさん、藍人さん、幸さんはみどりの日。ゆりかもめさんは緑の日。祝日名を持ってくることで行楽を想像させるのはなかなかの技。3級。

おむすびのこれぞさんかく蓮華草
蓮華草裾野を縫って這う電車
 喜多輝女さん。前句は野遊びの光景か。後句、蓮華畑の広がりが美しい。3級。ケンケンさんは桜咲く。前句、季語のめでたい感じがフレーズとよく合っている。後句は山桜の咲く中を電車で駆け抜けていくようで好き。2級。

おむすびのこれぞさんかく春の富士
春の富士裾野を縫って這う電車
 ポメロ親父さん、ちろりんさん。南亭骨太さんは弥生富士。後句、富士という固有名詞によって景色は雄大になったが、素朴な長閑さのようなものは減じたような気もする。前句は固有名詞を出さずに一般化したほうが、この浮き立つようなフレーズには合っている気がした。2級。のり茶づけさんは茶摘笠。前句、労働の合間の楽しいひと時。後句は車窓から見た風景か。それこそ富士の「裾野」でしょうか。こんな旅にあこがれます。1級。

おむすびのこれぞさんかく春の風
春の風裾野を縫って這う電車
 大阪野旅人さん。前後句とも気分がいい。ただ後句、電車はそれだけで風を伴うものなので別の映像を盛り込んだほうが得か。2級。その点北伊作さんの風光るはきらきらした印象を与えるところがいい。1級。

おむすびのこれぞさんかく春の山
春の山裾野を縫って這う電車
 杉山久子さん、あきさくら洋子さん、未々さん、樫の木さん、ほろよいさん、エノコロちゃん、カシオペアさん、恵美子さん、青柘榴さん。前句、単純化されていることで素朴な長閑さが演出されている。後句もそのまま読んで気持ち良いし、傍題の山笑うを踏まえていると考えるとさらに面白く読める。初段。

おむすびのこれぞさんかく大試験
大試験裾野を縫って這う電車
 たっ君。この意外な季語が少々の俳諧味を持って収まってしまうことに驚きを覚えます。初段。

おむすびのこれぞさんかく揚雲雀
揚雲雀裾野を縫って這う電車
 瑞木さん。前句、なんとも気分のいい野の情景。後句は雲雀が空から俯瞰しているような面白さがあった。二段。


今月の正解
おむすびのこれぞさんかく山笑う
山笑う裾野を縫って這う電車
 小市さん、レモングラスさん、迂叟さん、あらたさん、河合郁さん、一走人さん、緑の手さん、れんげ畑さん、おせろさん、雨月さん、元旦さん、不知火さん、妙さん、まんぷくさん、蓼蟲さん、人日子さん、親タカさん、コナンさん、笹百合さん。旧カナの山笑ふでの投稿がうに子さん、ひでやんさん、まこちさん、ひなぎきょうさん。詰め俳句始まって以来の正解数にちょっと驚き。「春の山」との比較に悩んだが、擬人化された季語を使うことで、わかりやすく面白さが提示できている点は評価してもよい……かな? 初段。


「詰め俳句計画」は5月号で終了します。 たくさんのご投句ありがとうございました。



マイマイ
2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人。第一回大人コン「多面体」にて優秀賞受賞。句集『翼竜系統樹』マルコボ.コムオンラインショップにて販売中。将棋推定初段。棋友募集中。



【100年投句計画】投句方法
 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可)、俳号(なければ本名の名前のみ)、本名、電話番号、住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。
ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙女」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、4月20日(日)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがきFAXでも投句できます。


さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(俳句ポスト365のページ参照)


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.9


Yes, I am older
My season is winter
So I ski more often

人生の冬来たりけりいざ滑らむ


(直訳)
そう 私は老いた
我が人生の冬である
だから もっとスキーしよう



I am preparing for my April concerts, one of which is in Matsuyama.
I have many friends and family there, so I practice hard to please them and myself.

僕は今、四月のコンサートの準備をしている。そのうち一つは松山コンサートだ。松山にはたくさんの友達と、家族がいる。だからもっと練習して、みんなを、そして僕自身を喜ばせたいんだ。



ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第37話
「イン ア サイレント ウェイ」マイルス デイビス


蠢くはジャズかロックかシャボン玉 チャンヒ

 JAZZ句会第70回を記念して「次回のテーマは参加者の合意で決める」とした。で、その第一弾がチャンヒさん提案の「イン ア サイレント ウェイ」だった。これは尤もな選択だと思った。ロックファンである彼は僕とともにJAZZ句会を主宰してくれ、一挙にジャズにも傾倒してくれた。その象徴的アルバムである。

帝王が旅する蜃気楼の国 猫正宗

 「イン ア サイレント ウェイ」というナンバー、というよりアルバムと言った方が良いだろう、これを「蜃気楼の国」に譬え、帝王=マイルスが旅をする、としてくれた猫さんは大手柄者である。旅するマイルスは、やがて「ビッチェズ ブリュー」という大陸(大傑作)にたどり着く。レコーディングデータを見比べると半年ほどの旅である。
 だが「旅の方が心地よい」というのがチャンヒさんの意見で、僕も全く同感である。

デジタルの条理しゃぼん玉の不条理  みちる

 昔の電気ピアノはハンマーで叩いた音をピックアップマイクで拾う方式のものだったが、現在発売されている電子ピアノは=デジタル、つまり、ピアノの音をデジタル信号として記憶させ、鍵盤の操作で再生させるタイプのものが殆どである。従って、「イン ア サイレント ウェイ」の時代の主流は前者ということになる。が、当時この音色が何処か無機質に聞こえたのも確か。その条理をバックにマイルスの肉声がトランペットを介して奔放に響き渡る。となると不条理はとても美味しい。

朧夜に突き刺す致死量のマイルス 蛇頭

 「死刑台のエレベーター」以来久々にマイルスが書き、演奏した映画音楽「ジャック ジョンソン」は、マイルスの作品中、最もロック色の強いアルバムの一つである。ジャック・ジョンソンは、黒人として初めてボクシング世界ヘビー級チャンピオンとなった人物。珍しくマイルス自身が筆をとったLPのライナーノーツの一文は「1908年、ジャック ジョンソンがヘビー級の最高峰に上り詰めたことで白人の嫉妬は爆発した。どういうことだか解るか? もちろん、アメリカに黒人として生まれた奴なら誰でもそれがどんなことか知っている。1912年、ジョンソンがタイトルを防衛したジム フリン戦の前日は、こんな手紙が届いたそうだ。『明日はリングに倒れろ、さもないと首吊りだぞ。〜クー クラックス クラン(※編注1)より〜』だとさ!」と記されている。ここに、このオリジナル サウンド トラック レコーディングへのマイルスの入れ込み様が伺える。

※編注1 クー クラックス クランは1920年 代後半に衰退した「白人至上主義団体」。



http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


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ラクゴキゴ


第37話
『鶴満寺』
〜 四千円ちょっとの袖の下 〜


あらすじ
 大阪の船場の旦さん、時候もよくなったので花見にでも出かけようかということで長柄というところにあるお寺さん 鶴満寺へ。
 なじみの芸者、舞妓、たいこもちを引き連れて北へ北へ向かって歩き、まあ道中は陽気でにぎやかなこと。
 寺へ着いたのはいいが、門が閉まっている。去年の今ごろは中でわあわあ騒いでいたのにと、そこにいる寺男にたずねてみる。
 すると、今年は住職が変わり、新しい住職は生真面目な人。花見で大勢の人が押しかけて桜の枝を折って帰ったり下品な騒ぎ方をするのが許せない。俳句や和歌を詠むならいいが、花見客は断れということになった。
 住職本人にお願いしようとすると、住職は留守のもよう。このまま帰るわけにもいかず、寺男の権助さんに袖の下百文を渡してお願いすると、あっさりと中へ入れてくれる。
 さあ酒を呑もうと広げだすと、権助「酒はあかん、約束がちがう。」
 それならもう少しと、今度は一朱を渡し話をまとめ、宴会が始まった。
 権助も最初は遠まきに見ていたものの、誘えばよろこんで輪に入り、酒が入るとだんだん住職へのグチを語り出しベロベロに酔っぱらってしまう。
 ドンチャン騒ぎが始まり、盛り上がったところに住職が帰ってくる。
 桜の木のもとで寝ている権助を見つけ、「何をしてたんや?」
権助「歌詠みの方々が来られて、ご案内しました。」
住職「どんな歌を?」
権助「花の色は移りにけりないたずらに……」
住職「それは小野小町、百人一首の歌やないか!」
権助「ひゃくにいっしゅ? しもた、何で分かったんです? はじめが百で、あとが一朱もらいましたんや。」



 鶴満寺とは、現在の大阪市北区長柄東一丁目、天六交差点を東へ約600メートルのところにあったお寺です。忍鎧上人のプロデュースにより客寄せの枝垂桜が植えられて大人気を博したらしいのですが、明治18年の洪水で大きな被害を受け全滅したということ。
 オチにもあるのですが、昔の金の数え方って、現代の人間にとってはトテモワカリニクイ。
 最初の袖の下が百文。天保銭が一枚です。この天保銭は楕円形をした大きな穴あき銅銭。一両が四千文。一両は今の金額で約四百万円ですので、千円ぐらいの値でしょうか。
 そして一朱。銀一朱は16分の1両。銭二百五十文。まあ約三千円といったところか。
 なので権助は四千円ほどをもらって花見をOKにしたことになります。
 「俳句や和歌を詠むのはいいが、酒はダメ」といわれると、我々いつき組は生きていけませんな。
 「酒なくて何の己が桜かな」この言い回しはよく花見の落語のマクラに使われます。いつき組の花見のためにあるような言葉だと思うのですがいかがでしょう?
 今年のいつき組花見大会、少しでも顔が出せたらとは思っているのですが、仕事の都合がつくかしら。
 権助のように、組長へのグチでも言いつつ酔っぱらいたいものであります。

金勘定だけは得意ぞ花見酒


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新聞記事に隠された俳句を発掘する
クロヌリ俳句


黒田マキ


スノボ女子大回転女子初メダル
(2014年2月20日朝日新聞より)

冬の金荒川以来2人目と
(愛媛新聞より)

チーズなど3月からの値上げかな
(愛媛新聞より)


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お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第18回 「春は別れと出会いの季節」
 (承前)前回の原稿掲載後、イラスト担当の立花君からこんなメールが。
 「残念!羽生弓弦が『ロミオとジュリエット』で滑るとは、知らなかった。タイムリーだったのに:(」
 思いつきもしませんでした(笑)。
 「真央ちゃんは全国民が応援してますから」的なことを言ってたテリー伊藤氏あたりからは、国民には入れてもらえそうにありません。
 閑話休題(あだしごとはさておき)。春は別れと出会いの季節。ということで、若干時期はずれですが、今回は「別れ」です。
 というのも、愛媛私大の雄? 松山大学演劇部の卒業公演『Green Bench』(作:柳美里、14年2月21日〜23日、松山大学文京キャンパスカルフール三階ホール)を観てきたからです。
 本作は歪んだ家族関係から紡ぎ出される愛憎をサイコサスペンスなタッチで描いた作品。

母娘(おやこ)に腐臭風死すテニスコート

 作品そのものの鑑賞だけでなく、若い彼らがなぜこの作品を選んだのか、なんてことに思いを馳せたり、公演会場がキャンパス内であれば、大学を訪れるというささやかな非日常を体験できたり、なんてのも学生演劇の楽しいところかも。ところで、本劇団にはずっと気になる役者さんがいたのですが、どうやら本公演で卒業のようです。部活やサークルで熱心だった分、その後、芝居の世界から離れてしまう人もいると聞きます。無論、その人にはその人の人生なのですが、せっかく輝くものを持っていると思うので、できれば何らかの形で芝居と関わっていってくれたらと、そして、いつか何処かでまた出会うことがあればと、願わずにはおれません。

 また次の卒業のための舞台(ステージ)

 さて、五月の市民劇場の公演は、イッツフォーリーズ公演のミュージカル『見上げてごらん夜の星を』(5月7日(水))あの坂本九の名曲は、もともと本作の劇中主題歌だったそうです。機会があれば、是非ご一緒に……。



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。


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百年歳時記


第11回 夏井いつき

 有名俳人の一句を紹介鑑賞するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月ご紹介していきます。

節分や護符貼り換へて山晴るる 江戸人
 「節分」は豆撒の行事を指すと思われがちですが、実は時候の季語です。立春から始まる二十四節気は、大寒の最終日「節分」で終わります。この季語の核には「永い冬に思いを寄せつつ、いよいよ明日から始まる春を喜ぶ心」があるのだと考えるべきですね。
 「護符」は「節分」の行事で賑わう神社で戴いてきたものでしょうか。神棚を清め、古い御札を剥がし、新しい「護符」を貼り、春を迎える準備を整えると、向かいの遠山辺りからみるみる晴れてくるのが目に入ります。小さな青空が広がってくるさまは、あたかも春の訪れを眼前にする思い。清々しくも冷たい「節分」の青空を見上げる作者の心に、明日からの春を喜ぶ気持ちが満ち満ちてきます。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』2月7日掲載分)

堅雪の野越ゆイエスの如く越ゆ 大分 樫の木
 「堅雪」とは、解けかかった雪が夜の冷え込みによって固く凍り付く状態を指します。「堅雪の野」とは、雪に足をめり込ませることなく、ぬかるみに足を取られることもなく歩ける野。そのさまを「イエスの如く」と比喩した点がこの句の魅力です。
 「堅雪の野行く」「堅雪の野歩く」ではなく「越ゆ」という動詞を選択したことで、「野」の広さや移動していく距離を想像させるとともに、ささやかな困難のイメージを添えます。「〜越ゆ〜越ゆ」と畳みかける一句の調べも、内容に見合っていますね。
 「堅雪の野」を越えて歩く私自身が、数々の奇跡を成し遂げた「イエス」のようであるよ、という感興に心動かされた作品でした。
 (ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』2月14日放送分)

富士山の全容見えて入試へと 更紗
 一言で「入試」といっても、最近は小学校中学校高校大学と色々あります。そんな時代の季語「入学試験」ですから、どの年代なのかがはっきり分かる作り方をしたいわけですが、これはもう大学入試に違いないと読める点を、まずは評価したい一句です。
 「富士山の全容見えて」という措辞から、飛行機で上京しての入試かなと想像しました。日本に山はたくさんあるけれど、「富士山」は日本人にとって晴れなる山にして吉兆の山。下五「入試へと」という措辞が、日本一の山の全容が見事にみえる今日の明るい春空を吉として、これから東京の受験に乗り込むぞという意気込みを表現しています。 合格祈願を込めての実感の一句です。
 (ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』2月21日放送分)

凶暴なるぶらんこの王者は二歳 カリメロ
 子どもたちにとって「ぶらんこ」は人気ベスト3に入る遊具。順番を待ったり、割り込んだり、割り込まれたり、泣いたり、そんな子どもたちの「ぶらんこ」シーンに「凶暴なる」という言葉が使われる意外性と愉快に満ちた作品です。
 大好きな「ぶらんこ」を手に入れるために、ちょっと意地悪したのか、一番に突進して鎖を握り、他の子たちを断固排除したのか。仁王立ちしている二歳児は、「ぶらんこ」を制圧した喜びに満ちあふれているのでしょう。他の子たちを見下した視線で、ゴンゴンこぎ始める「ぶらんこ」。獰猛な青空をも従えんばかりに、「凶暴なる」二歳の「王者」は、このシーンに君臨します。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』3月7日掲載分)

母という魔女春菊も食えと言う ミル
 好き嫌いを「母」に諭される句は数えきれぬほど読んできましたが、「母という魔女」という比喩一つで鮮やかなオリジナリティを手に入れた快哉! 見事な発想です。この句の眼目である「魔女」という言葉に対して「春菊」は絶妙な野菜。独特の匂いは、「魔女」が調合する薬のようでもあり、ぞわぞわと脇芽を増殖させるさまや、意外に可愛い花を咲かせるさまは魔法のようでもあります。
 「母という魔女」は大きな鍋に薬草を放り込む手つきで「春菊」を入れ、さあ体に良いのだからお食べなさいと迫ってきます。「魔女」の微笑みに気圧されて、「春菊」の怖ろしい匂いと味を飲み下す、そんな子どもの様子も見えてくる楽しい作品です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』3月14日掲載分)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


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まつやま俳句でまちづくりの会通信スペシャル


第37回 文 雪花 写真 キムチャンヒ
まる裏次の日吟行会
ギヤマンに出会ふ

まる裏の翌日1月13日

 道後からくり時計前に午前十時集合。今年も一番遠方からの参加小木さんを始め、前夜まる裏の打ち上げ最中に福岡から着いた理酔さん、初めてお会いしたとは思えない、誌上でお馴染み猫正宗さん他総勢21人が松山はいく しんじゅさんの案内で冬晴れの中出発する。
 後の句会に出された句から吟行コースをたどってみたい。道後駅を後に住宅街を抜け松山神社下へ。

成人の日松山神社日の丸だらりん  小木さん

 酒井黙禅の句碑がある家に借主募集の幕が架かっていて「面白いねぇ句碑付きで借りれるんじゃろか」と賑やかな事。
主募集日向ぼっこの猫と句碑 あらた
 細い道を曲がった奥に白い壁 レンガの煙突の目立つ『瓶泥舎びいどろ ぎやまん ガラス美術館』はあった。

椿の径迷いて着きし美術館 猫正宗
路地裏に漏れくる光冬木の芽 八十八

 この美術館は古いガラス器を中心に個人のコレクションが展示されていて、今は『江戸の粋 びいどろの意匠と紋様』と題しての展示である。

木漏れ日を吸い込み冬の江戸硝子 理酔

 参加者は2班に分かれ学芸員の方の説明を受けながら見て回る。
 私は先に2階に行く班になり、2階の一室に入る。ここは6畳位の部屋の両側にガラスケースが置かれ、器が飾られている。縁が繊細なレースの様に作られたコンポートや綺麗な赤いぎやまん、その頃の赤色は金からつくられていた。

初星を盛るによろしきコンポート 正人
冬ざるる心に映える瑠璃の色 紅玉

 隣の部屋に入って目に付くのは壁に掛けられた浮世絵のような美人画? なんと絵ではなくこれもガラスを組み合わせて作られている。

美人画の衿元に猫冬ぬくし 野風

 四角い徳利も珍しく江戸の人の遊び心を感じる。

にきたつの酒器のびいどろ春隣 葵

 次は3階へ。ここはこの美術館の中で唯一陶器が飾られている。部屋の正面に陶器で作られた家のような物がある。これは沖縄の墓だそうだ。

寿ぎの骨壷開く前の梅 緑の手

 両手でも抱えきれない位の大皿もいくつか展示されている。

大皿は海なる広さ春を待つ 更紗
こんぺいとう踊らそか大皿の日脚伸ぶ  しんじゅ

 いよいよ1階の広い部屋へ。ここは蓋物 江戸の型吹きガラスの器が展示してあり、割型の内側にガラス種を落として吹き作られていると説明を受ける。中から蝶や鶴の模様が浮き出していて、職人の息 技 粋を感じる。

型割りて生まるる器初化粧 マーペー
蝶三つ閉じこめらるる冬の瓶 てんきゅう
人日やガラスの影に気泡ある 日暮屋

 そして目を惹くのは尾を跳ねているような真っ赤なガラスの鯛。
 照明にも大変こだわって綺麗に見せる為の工夫がされている。

寿ぐや切子の鯛の跳ねてをる なつ
初明り器の影の二重三重 雪花

 最後は和室に案内される。外の広縁にどーんと置かれた大きな陶器の壺はなんと室町時代の物とか。見学者「夜も天気が悪くてもあのままですか?」 学芸員「そうです」 見学者「……」
 部屋の中にはガラス棒入り虫かご。土台は蒔絵で絹の紐がかかり、それはそれは華奢な物で私達は見るのにも神経を使った。

鳥籠はガラスか氷のことだろう チャンヒ

 和室から見える手入れの行き届いた庭には兎が見える。その横には大きな蛙もいる。どちらも石製である。

障子戸の光まぶしき瓶泥舎 輝女
うずくまる石の兎や冬日向 あねご
冬日さす江戸のびいどろ耳鳴りに  八木ふみ

 美術館の一室ではお茶を飲むことも出来る。残念ながら私たちにはお茶を飲む時間はなかったが、学芸員さんの丁寧な説明を受け濃厚な時間を持つ事ができた。
 一行は昼食場所『大黒屋』へ向け後ろ髪を引かれる思いで瓶泥舎を後にする。投句の締切は大黒屋到着時である。句帳を見たり心ここにあらずで歩いていてあねご会長をハラハラさせる。
 昼食は食べ比べ膳といい、宇和島風鯛めし 釜飯 うどん 刺し身 てんぷらと食べきれない程豪華である。投句の終わった者からゆっくり味わう。
 句会は場所を移して旅館街にある道後屋という宿で2句出し。賑やかで楽しく真剣な句会であった。
 句会が終わり理酔さんに「遠くからお疲れ様でした。」と言うと「だって楽しいんだもん。」という答えが返ってきた。
 来年に向けて身の引き締まる嬉しい御意見である。参加の皆様ありがとうございました。


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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俳句の街 まつやま
俳句ポスト365


協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


優秀句
平成26年2月度


【節分】
《地》
節分の風呂濛々と沸かしけり 尚川
節分や鬼射る弓の如く月  ドクトルバンブー
節分や湯宿に鬼の大金棒 みなと
口開けてゐる節分の土間の闇 初蒸気
節分や闇は大きな鬼の口 やのたかこ
小料理屋出て節分の雪に会ふ じろ
節分や鳩の寄り来る精米所 杉本とらを
節分の何かひつかかつてゐる雨戸  雪うさぎ
節分の鯉の池ごとふくらみぬ 仮屋賢一

《天》
節分や護符貼り換へて山晴るる  江戸人


【二月】
《地》 
新しき風倒木や二月晴 ポメロ親父
林に生まれ二月の水となる 七七子
信号の二月の青が生ぬるい あつちやん
米を研ぐ二月の光渦にして 松本だりあ
洗ひ場の石鹸固き二月かな  クズウジュンイチ
二月きて強くさびしい女優の死  らっこマミー
卒論を仕上げ二月の椅子ぬくし うに子
金管の音色の透きとおる二月 ぐみ
背景に巨船群を置いて二月 東脇々

《天》 
切株に立つや二月の木の如く  吉川千早


【紅梅】
《地》 
母も娘も歩はば紅梅びいきなる  あつちやん
あの母の紅梅好むてふ意外 雪うさぎ
紅梅やお先にどうぞお姉様 やのたかこ
紅梅や声よく揃う薙刀部 根子屋
紅梅のはじけて遠き魚売り ぐべの実
紅梅一つ清少納言の声を待つ 安
紅梅や袴に風をはらませて 雨月
紅梅に鳥の耳打ちしてふふふ ミル
紅梅や笑ひ上戸の床の壺 田中憂馬
紅梅に飽きてみたらし甘過ぎて  とりとり
飼い犬に紅梅の香を嗅がせたり 位子
紅梅へゆるゆる噴水の上がる バーバラ

《天》 
紅梅を飾りて暗きクラブかな  じろ


【風光る】 
《地》 
ランナーズ ハイ風光るにはまだ遅い  葛城蓮士
行けど行けど大阿蘇の中風光る あい
内陸に繋がる無線風光る ちとせ
サメの歯の出そうな地層風光る  小木さん
風も未だ少年だから風光る ミル
風光るさっき転んだのが長女  台所のキフジン
母を追ふ子象100キロ風光る  大阪華子
風光る音に待たせる盲導犬 根子屋
浄化され戻る山彦風光る ヤッチー

《天》 
ランナーを追う連写音風光る  笑松



4月の兼題

投句期間:3月27日〜4月2日
巣箱【三春/動物】
木の穴を巣とする野鳥の保護や観察を目的として、営巣できるようにかけられる箱。巣箱を利用する野鳥は三十数種類におよび、鳥の種類それぞれに合わせてつくられる。

投句期間:4月3日〜4月9日
蛍烏賊【晩春/動物】
ホタルイカモドキ科の烏賊。胴長5〜7cmで、身体の各部に発光器がある。普段は深海に生息しているが、晩春の産卵期に浅海に上がってくる。富山湾のものが有名。

投句期間:4月10日〜4月16日
ライラック【晩春/植物】
ヨーロッパ原産、モクセイ科の落葉低木。高さ約5m。4月頃、筒状の花の先が四裂した、芳香のある小花を穂状につける。

投句期間:4月17日〜4月23日
籐椅子【三夏/人事】
籐を編んで作った椅子。見た目にも涼感があり、肌触りもひんやりとしている。編み目を通る風の感触の心地よさを愉しむ。

投句期間:4月24日〜4月30日
守宮【三夏/動物】
ヤモリ科の爬虫類。全長12cmほどで蜥蜴に似ているが、頭が大きく、指の腹に吸盤を持つ。夜間、灯に集まる虫などを補食するために壁や天井などにぴたりと吸い付く。


《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成26年2月度


【海苔掻き】
海苔掻きの陽を上げて潮引きにけり  痛快
一族の総出海苔掻き日和かな 菜々枝
まず海に二礼二拍手海苔掻きぬ 朝日
海苔掻きや氏神様に火を点し  ターナー島
あの尻は磯さん親子海苔を掻く  八幡浜発
海苔掻くに波猟犬のごと寄り来 樫の木
江戸前の海苔掻く波へジェット音 野風
ドロドロと海苔掻いて漁協の裏事情  日暮屋
国論ずる男三人海苔を掻く 蓼虫
海苔掻くや水門閉じし内海に  toku229

《天》
決めるなら決めろワシらは海苔を掻く  旧重信のタイガース


【堅雪】
堅雪に風私ばかりを横殴り 朝日
堅雪の路上ぶっ飛ぶダットサン もね
売土地の堅雪朝日跳ね返す 大五郎
堅雪やじりじり沁みる洗い水 いそこ
堅雪や高野豆腐に染みる出汁 マーペー
堅雪やげんこつあられ購いぬ 小市
堅雪を餅一袋手土産に ポメロ親父
堅雪の淋しと虹を捕らまえる 妙
堅雪やうさぎの耳を閉じ込めて  とうへい
堅雪や賢治の童話読み直す 八十八
堅雪を踏みて賢治の白狐 きゅうべえ
靴底の堅雪ひたひたと反戦歌  きとうじん

《天》
堅雪の野越ゆイエスの如く越ゆ  樫の木


【入学試験】
お守りが喧嘩してをる入学試験 もね
親よりも醒めて入学試験かな 青石榴
入学試験会場過ぎて電車のがらんだう  緑の手
入学試験あの校章には負けぬ  旧重信のタイガース
入学試験祖父の重たき腕時計 みいみ
入学試験再会の約束交わす  ぜんざいよしこ
入学試験終えてバッティングセンターにひとり  三津浜わたる
新聞に入試問題分の嵩 妙
翌日の朝刊入試の設問一を解く  亜桜みかり
補助線をどこへ入学試験かな マイマイ

《天》
富士山の全容見えて入試へと  更紗


【二月尽】
家計簿の余白美し二月尽 篠原そも
赤札の赤褪せかけて二月尽  ひなぎきょう
赤本を紐で縛って二月尽 てんきゅう
二月尽少なくなった塗り薬 カナリヤ
処方薬律儀に飲むや二月尽 青萄
ビバルディ聞こゆる校舎二月尽 無窮花
北国より膨らむ封書二月尽 菜々枝
両腕は翼のかたち二月尽 殻嵩はるお
寝太郎の猫出かけたり二月尽 くくう
ダンボールに猫の亡骸二月尽  三津浜わたる
荒山が月食らいたる二月尽 ケソラ
二月尽削る木の香の丸しまるし 樫の木

《天》
肋骨に薄紙を貼り二月尽  蕃


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

4月13日
凧【三春/人事】
古くから中国やヨーロッパで見られ、日本には中国から伝わった。新年の印象が強いが、元々は春の行事とされ、現在でも各地で春に凧合戦などが開催される。

墓石
季語ではない兼題です。「墓石」という字が詠み込まれていれば、読み方は問いません。また、季語は自由に選んでください。

4月27日
鈴懸の花【晩春/植物】
プラタナスとも呼ばれるスズカケノキ科の落葉高木。葉腋から伸びる花柄に淡黄緑の花をつけるが目立たない。鈴懸の名は、垂れ下がる球状果実に由来する。

毛虫【三夏/動物】
蛾や蝶の幼虫で全身に長い毛があるものの総称。毒を持つ種も一部あるが、一般には無毒。樹木などの葉を食い荒らしてしまう。



《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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100年俳句計画 掲示板


 組長&編集長&組員さんの出演執筆一覧

NHKEテレ(教育 全国)
 「俳句王国がゆく」広島県世羅町
  4月20日(日)15時〜16時
※主宰:夏井いつき、ゲスト:篠原ともえ、司会:U字工事

NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  4月8日(火)11時40分〜
  4月22日(火)11時40分〜

あいテレビ(TBS系列、全国)
 『プレバト!!』
   隔週木曜 19時〜20時49分
※組長がゲストの俳句ランキングづけで出演! 放送日番組欄を要チェック!

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FM愛媛
 バニラビーンズの俳句っちゃお〜!
 毎週日曜日深夜0時〜0時30分
※夏井いつきが俳句指南で出演
※FM大分でも毎週月曜21時〜放送中

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「水温む 夜桜」3月30日〆
   「馬の子 昭和の日」4月13日〆
   「立夏 捩花」4月27日〆
 2月18日よりインターネットでも配信開始。詳しくは番組webサイトへ。
  HP http://www.baribari789.com/
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)、住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。


執筆
松山市の俳句サイト「俳句ポスト365」
http://haikutown.jp/post/
 毎週水曜締切/翌週金曜結果発表

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」
※ 毎週日曜発刊タブロイド判8ページ



句会ライブ、講演など

昭和会特別例会句会ライブ
 4月10日(木)

第2回俳句対局「龍天王決定戦」
 4月13日(日)13時〜
 場所 … 子規記念博物館4F和室
 観覧&出場 … 無料
 優勝および準優勝に賞品あり
※出場が決まった方は、当日スーツや着物にてお越し下さい。観覧のみの方は服装の指定はありません。
※観覧、出場申込はマルコボ.コムまで
 TEL 089ー906ー0694

南楽園句会ライブ
 4月27日(日)組長&キム出演
 場所 … 南楽園中央芝生公演
 スケジュール
  11時   席題発表 〜 吟行
  12時30分 投句〆切
  13時30分 句会ライブスタート
  15時   終了
※今治発着お得なバスツアーあり!
申込、問合 … 南レク観光
 TEL 0895ー32ー1020



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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

冬から春へ
エノコロちゃん 「立春」を過ぎても、寒い寒い日が続いていますので、スタッフみなさまどうぞくれぐれもご自愛下さいねー。
うに子 思いがけない春の雪で首都圏(愛媛も)は右往左往……雪が日常の北国の人が辛抱強くなるのはむべなるかなですね。
喜多輝女 暖かかったり大雪だったり変な冬でしたがみなさんお元気でしょうか? 日本列島長いから北の方では雪で大変なことになってるというのに松山城では寒桜が咲き始めております(2月20日)。春はもうそこまで来ているようです。いつき組大お花見大会も、もうすぐです! 皆さんにお目にかかれるのを楽しみにしています。
編 厳しい冬もようやく過ぎようとしてる感じの今日この頃。本誌編集佳境の3月中旬現在、花見会場である道後公園周辺も桜が咲き出しております。3月30日(日)は愛媛松山でお会い致しましょう。

俳句×書道展
親タカ 先日お電話があり、小倉書道教室俳句×書道展で私の句使用(習字として)との事、嬉しい限りです。光栄に思い、仲間うち数人にメール! いばってます!
編 組員の小倉揮代さんはこどもたちに書道を教えておられ、毎年その教え子たちによる作品展を企画しています。作品の題材は毎年、マガジン1月号代表句集掲載作品から選んでます。ちなみに親タカさんの句はこちら
「自転車に乗り左手は春の風 親タカ」
 今年は3月19日〜24日、松山市、いよてつ高島屋9F観覧車乗り場前のロビーに展示されました。見に行けました?

大当たり!
あきさくら洋子 二月号は自由律の「天」と、雑詠の「地」、そして、マイマイさんの詰め俳句「初段」まで、大当たりのなんともうれしい100年俳句計画冊子でした♪♪ 俳句の「は」の字も知らない吹き溜まり没俳人?でしたが、継続は力で、たまあにヒットするようになりました。花鳥風月季語付スケジュール帳のおかげでもあります。知らない季語もたくさん教えていただいてます。感謝しています。ありがとうございました。
編 スケジュール帳がお役に立ち嬉しゅうございます。これからも登場お待ちしておりますぞ!

詰め俳句への挑戦
カシオペア いつも、手強いです。
編 お題によって難易度に結構な差がある気がする。今月は正解多し。

大阪野旅人 今回は「麗らか」と「春の風」と迷いましたが「春の風」にしました。
編 音数的には5音の「春の風」優勢?とか考えつつ迷うのもまた楽し。

永遠の都 へたうま
たっ君 一度追放されたのですが〜もう一度へたうま仙女に投句したいのですがかまいませんか?
編 はいどうぞ! 追放といいつつも本当に追放されることはないのでご安心を。へたうま界はいつまででも永住可能のユートピアなり〜。

自由律を悟る?
北伊作 自由律は難しい。結局リズムだと思う。
編 悟っているような……そうでもないような……。

リレーエッセイを書く
妙 活字になると自分の文章じゃないような、何とも言えない気分です。引き続きお世話になります。よろしくお願いいたします。
編 3月号でリレーエッセイの執筆を担当して下さった妙さん。今月号からは百年の旗手の連載が始まりました。連載中のお三方への応援お待ちしてます!

俳句対局に出る!
川又夕 いつも大変お世話になっております。川又 夕です。龍天王決定戦、もし良ければ今年も参加させて頂ければ幸いです。ご検討のほど、宜しくお願い致します。
若狭昭宏 お世話になります。龍天王決定戦出場希望しますので、何卒よろしくお願いいたします。
編 先月号まで「新100年への軌跡」で連載を担当していたお二人が俳句対局第二回龍天王決定戦へ出場表明。大会の詳しい情報は19ページ参照。ただいま出場 観覧ともに絶賛受付中。

南楽園とはこんなところ
編 4月27日(日)開催の南楽園句会ライブ(詳しくは47ページ参照)。南楽園とは愛媛県南予にある、年間通じて超豊富な種類の花々が見られる庭園なのです。句会ライブの時期に咲く花は木蓮、木瓜、連翹、躑躅、藤、水木などなど。ライブ当日は「南楽園つつじまつり」の最終日でもあり、数種合計3万株超の躑躅で満たされる庭園は圧巻です。以上、お便りがあるわけではないのですが宣伝でした。俳人なら行って損なし!



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鮎の友釣り

189
俳号 日暮屋

鞠月さんへ 過日、マル裏での楽しいひと時をありがとうございます。僕も15歳の春からギターキッズです。

座右の銘 良い加減
 親、兄弟、子供無し、気楽なもので、妻が一人だけいます。ふらりと旅に出て、適当に人生を謳歌しています。

次回…野風さんへ 日暮屋特製つるつるドリルを受け止めてくださって、ありがとうございます。同期での百年の旗手以来、お互いの俳句をフランクに話し合える、数少ない句友です。


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告知


俳句対局
第二回龍天王決定戦
出場者募集(4/13開催)

 俳句対局とは、囲碁や将棋の対局戦を模した、一対一の句合わせ対決の句会です。優勝者「龍天王」を決定します。
 出場観覧問わず、多数の参加、お待ちしております。

 日時
 4月13日(日)13時30分〜受付
 14時開始 17時終了予定

 場所
 松山市立子規記念博物館4階和室

 出場&観覧費
 ともに無料
 ※出場される方は、事前に編集室までお申し込み下さい。

 出場&観覧定員
 30名(先着順)
 ※出場が決まった方は、当日スーツや着物にてお越し下さい。観覧のみの方は、服装の指定はありません。

 賞品
 優勝、準優勝に賞品あり

 問い合わせ先
 『100年俳句計画』編集室



100年俳句計画大お花見大会
日時:3月30日(日)8時〜20時
場所:道後公園内(松山市)
参加費:300円(場所代など)
開催時間中ならば、いつ来ていつ帰ってもOK!
食べ物、飲み物は各自ご持参下さい。
雨天の場合も道後公園内のどこかで決行!



夏井いつきと行く「南楽園」句会ライブツアー 4月27日(日)

 俳人 夏井いつきと共に春の南楽園を訪れます。南楽園は数万株の花が開花期を迎え、最も華やかな季節。彩り豊かな園内を散策し、句会ライブを行います。優勝者にはキム チャンヒライブペインティングがプレゼントされます。

 日時:4月27日(日)13時30分
 場所:南楽園(愛媛県宇和島市津島町)

バスツアーのご案内
 今治発着、松山経由のバスツアーが催行されます。遠方からお越しの方は是非ご利用下さい。
 出発日時:4月27日(日)
      JR今治駅(7時発)
      JR松山駅(8時15分経由)
 旅行代金:4980円/1人(大人小人共通)
 問い合わせ先:南レク観光 0895(32)1020



100年俳句計画投稿締切カレンダー

4/20(日)
 100年投句計画
http://marukobo.com/toukou/
 魚のアブク
 100年の旗手推薦募集

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


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 2014年4月より、消費税率が5%より8%に変更されることに伴いまして、誠に勝手ではございますが、本誌のマルコボ.コム直販の定期購読価格を以下のとおり改定させていただきます。
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半年払い(6か月分): 3,600円(税込) → 3,700円(税込)
月払い(1か月分): 580円(税込) → 595円(税込)

※「半年払い」はオンラインショップのみ、「月払い」はゆうちょ銀行自動払い込みのみでの取り扱いです。
 2014年4月1日(火)以降に各窓口でお支払い手続きを行われる際には、改定後の新しい価格でのお支払いをお願い致します。

※特例としまして、オンラインショップでお申し込みの場合に限り、お支払いが4月にまたがった場合でも、ご注文が3月中までであれば、ご注文時の改訂前価格を適用します。

なお、ゆうちょ銀行の自動払い込みにてお支払いの方につきましては、下記のとおりと致します。
年払い … 5月の引き落とし分より改定後の価格
月払い … 4月の引き落とし分より改定後の価格


改定前価格での前倒しのお支払いを希望される方へ
 今回の価格改定にあたりまして、まだ購読期間が残っている方(今号の送付時に更新の案内が同封されていない方)につきましても、改定前価格での、前倒しのお支払いによる購読期間の延長お手続きを受け付けます。(なお、月払いによるゆうちょ銀行の自動払い込みをご利用の方は、前倒しによるお支払いは出来ません。ご了承ください。)

 今回前倒しでお支払いいただけるのは12か月分(年払い6,900円)までです。

 前倒しでのお支払をご希望の方は、ゆうちょ振替、銀行振込、オンラインショップを利用の場合は必ず2014年3月31日(月)までに、各窓口で改定前価格にて通常どおりのお手続きを行ってください。

ゆうちょ振替: 01650−5−21493 有限会社マルコボ.コム
銀行振込: 伊予銀行 古川支店 普通 1396084 有限会社マルコボ.コム
オンラインショップ: http://shop.marukobo.com/

 また、年払いによるゆうちょ銀行の自動払い込みをご利用の方で、前倒しでのお支払いを希望される方は、事務手続きの都合上、必ず2014年3月24日(月)までに、直接お電話にて、マルコボ.コムまでご連絡ください。(電話:089−906−0694/平日9時〜18時)


【オンラインショップをご利用の方へのご注意】
 マルコボ.コムのオンラインショップは、2014年3月31日(月)の夕方より、消費税率変更に伴う設定変更作業に入るため一時的にご利用いただけなくなります。(休止前にいただいたご注文につきましては、休止中でも対応を致します。)
 オンラインショップをご利用の方は、どうぞお早めにお手続きをお願い致します。


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編集後記


 今月号の特集は、第三回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」(以下「大人コン」)の結果発表。最優秀賞の句集『塩辛色』はもちろん、優秀賞の6作品もどれもが個性的で、読み応えあり。「自分が大人コン選考会員だったら」と想像しながら、読み進めてみるのも面白いと思う。
 俳句をされない方が、本誌を読んで「こんなに俳句が載っててスゴイ」なんてことをおっしゃることがある。俳句雑誌なので、俳句が載ってて当たり前だと思うのだけど、俳句は高尚な趣味と捉える方が結構多いのだと思う。
 俳句の高みを目指すことと、俳句を身近に楽しむこととは、相反することではなく、地続きだと思う。
 「大人コン」の受賞作品も、俳句初心者の方は、他人事のように思うかもしれないが、自分がこの中から気に入った作品を選ぶとなると、違って見えてくるはず。
 「この作品がいい」と勝手に思うだけで、自分の俳句に対する考え方が見えてくることもある。
 数多ある俳句コンテストは、優れた作家を輩出する仕組みであると同時に、豊かな読者を生む仕組みでもあると改めて思う。
(キム)


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次号予告 (198号 5月1日発行予定)


次回特集
俳句で人は元気になれる!
スマイル句会

障がい者支援施設スマイルでの句会が始まってほぼ3年。その句会の様子と、句会を通しての参加者の変化をお伝えします。


第三回 瀬戸内 松山
写真俳句コンテスト結果
&愛媛マラソン報告など


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2014年4月号(No.197)
2014年4月1日発行
価格 771円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子