100年俳句計画1月号(no.195)


100年俳句計画1月号(no.195)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
正統派七草粥 ドクトルバンブー


特集1
第七回 夏休み句集を作ろう!コンテスト 結果報告


特集2
俳句対局 第二回龍淵王決定戦 後編



好評連載


作品

百年百花
 マイマイ/大塚迷路/行広遊人/谷さやん


100年俳句計画作品集 100年の旗手
 たま/鞠月/樹朋


百年琢磨 平敷武蕉

新100年への軌跡
 俳句/川又夕/若狭昭宏
 評/瑞木/キム チャンヒ


選者三名による雑詠俳句計画
関悦史/阪西敦子/加根兼光


へたうま仙女/杉山久子

自由律俳句計画/きむらけんじ

詰め俳句計画/マイマイ



読み物
Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
クロヌリハイク/黒田マキ
お芝居観ませんか?/猫正宗
百年歳時記/夏井いつき
mhm通信/暇人

読者のページ
俳句ポスト365
一句一遊情報局
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




正統派七草粥
ドクトルバンブー

 私はデパートやスーパーで七草のセットを買ったことがない。七草粥は陰暦1月7日に食べるからだ。今年は2月6日にあたる。南国愛媛と言えど野草である七草が芽吹くのは1月下旬から2月になる。この頃の陽射しは一年で一番ありがたいと思う。紫外線の影響をあまり受けず、暖かい太陽を浴びて野外活動ができるからだ。
 近年の日本人は健康意識が高く、食べる健康に注目されがちだが、七草の効用は食べるだけではないと思っている。七草の育つ環境は里山にある。太陽の恵みをたっぷり浴びながら、七草を探して里山をゆっくり歩く。私にとっては至福の時である。里山ウォーキングも七草粥を美味しく頂く秘訣であろう。春の勢いを七草粥にして体内へ取り込む、先人の知恵に感謝しながら。


目次に戻る


特集1

第七回 夏休み句集を作ろう!コンテスト 結果報告



 第7回を迎えた「夏休み句集を作ろう!コンテスト」(主催 朝日新聞、マルコボ.コム、日本俳句教育研究会、共催 松山市教育委員会)。このコンテストは、全国の小中学生が、自分の一年間で作った俳句40句を、句集に仕上げて公募する企画です。今年は全国から、289作品(小学生195作品、中学生94作品)の応募がありました。
 審査は昨年11月、三浦和尚(愛媛大学教育学部教授)、氏家弘二(朝日新聞松山総局総局長)、夏井いつき(俳人)、キム チャンヒ(本誌編集長)の計四名で行い、「最優秀賞」、「優秀賞」、「学校賞」、「装丁賞」、「一句賞」の各賞を決定しました。
 1月11日に松山市立子規記念博物館にて、行われた表彰式には、全国から約60名の受賞者とその家族が参加し、表彰後の夏井いつきによる句会ライブなどを楽しみました。
 本特集では、最優秀賞作品の40句と各賞を抜粋して紹介いたします。


最優秀賞 中学生の部

『あの夏の海』
 松山市立椿中学校 1年 三瀬未悠

檻から逃げだした芋虫のまだ孤独
こんな秋だから絵の具も泣いている
鶏頭やボクは分身なのですか
風に乗る竜露草も香らない
ポッケに隠した団栗と学生証
テディベア洗う秋の風で乾く
木馬解体寒月の無音無音
魔法とはポインセチアの様な靴
冬の虹かける費用を集めます
始まりの日の朝冬カモメだけが飛ぶ
冬天や闘うカンガルーの虚ろ
血統書付きのニンジンは赤い
凍星を閉じ込めサクマドロップス
冬の夜のガゴンガゴンと薄くなる
風花やこれでは目的地に行けぬ
折れた鉛筆の代わりは春の虹
立春や海のアオイロ空のあお
春節に亀は文鎮気取りです
春ショール巻きナントカの花を見る
待つための椅子ぶらんこのぎうぎう
放課後を吸い込む春のホルンかな
この花に集いて朝のカツサンド
春の日の水路は水を流さない
土佐水木駿馬は風が好きでした
マドンナとさよなら春の雨しずか
夏の星眠らせていくピアニスト
母さんがたたんだハンカチはやわらかい
四時間のタイマー扇風機の雑音
偽物の空とかき氷の重さ
アルバムの僕は盛夏を笑っている
嘘をつくほどに夏空のガンガン
白南風に音は近づき遠ざかる
真実はいらない夏の日に捨てた
炎昼に溶けたマトリョーシカ溶けた
ゼリーには風を空には光を混ぜましょう
金魚の遺書は水草にかいてある
手も足もマクラも熱帯夜の重さ
油田と向日葵が誕生日プレゼント
アマガエル計画帳は直方体
紙ひこうきなら行けるあの夏の海

受賞の言葉
 今年は初めて親の手を借りずに俳句の並びを考えたので、とても苦労しました。好きな俳句で1位を取れたのがとても嬉しかったです。


最優秀賞 小学生の部

『突貫工事』
 愛媛大学教育学部附属小学校 4年 八塚陽向

初夢や踊る無数のコンペイトウ
気まぐれな推理雪うさぎが鍵
海上保安官になりたかったイルカ
フグの森ピラクルは動かない
カマイタチ絶望に満ちたロバの耳
羽ぶとん水銀の無い体温計
寒北斗ぼくらも作ろう光の輪
さくらさくら日本の首都は東京です
ピクニックてるてる坊主一体が味方
波紋で動き出す蝌蚪の集団
シンキロウ地獄のカーブ目の前に
竜天に登る生き残れるか心配です
海豹は雨にぬれた記憶だけ
口ずさむ歌はワルツ風薫る
時鳥のタイムマシン動き出すのは今
青嵐命令される筋合いじゃない
かたつむり心は連続ホームラン
沈下橋こわいこわいと川とんぼ
喜びと悲しみのパレード蟻の道
秘密の種眠るヒメホタルの森
カブトガニの敷地アナゴはツボの中
意地悪なボクとじこめているゼリー
蟻地獄運動場でさがすネジ
木下闇かげふみがやってみたい
落とされ踏まれ再起不能な団扇
炎熱や溶けてハカイされる列車
自分との決戦ココは夏の海
秋蝶と共に飛び立つへそ曲がり
みの虫は友達未満気がかりだ
一人ぼっちのおやつ秋の蚊が来た
芋嵐所持金残り30円
イナビカリ九回ウラの運命は
歌うたう道路昔とんぼ目覚めよ
月の剣深海魚の目が光る
名月も涙を流す「ごんぎつね」
竜淵に潜むここは哀しみの場所
きつね花と忘れ去られた造花
秋の虹おしょうさんには無関心
啄木鳥は突貫工事を後回し
吹き飛ばしたい鱗雲の迷路

受賞の言葉
 応募締切2週間まで、半分目が出来ていなくて、一気に作りました。最優秀賞を目指して応募したけど、本当に最優秀賞だったのでびっくりしました。


子規博奨励賞

『そうま』
 今治精華幼稚園年長 野村颯万

あしなのにかげはてみたいあきのあさ
サイダーをはじめてじぶんであけたよる
いろえんぴつけずるとけむしになってくる
くるまににあうぼくのあさがおバイオレット
とのさまばったおしりのばしてたまごうむ

受賞の言葉(おかあさんより)
 7歳上の姉と5歳上の兄が俳句を作っていたので、幼稚園に入った頃から少しずつ俳句を始めました。今治市桜井浜集会所の「親子サークルげんきっず」で、時々句会をしています。出来た俳句は、愛媛新聞「集まれ俳句キッズ」に投稿しています。
 今回は、字がまだうまく書けないため、俳句を自分の手で書いていくことが出来ませんでした。最初の1行目でかなり時間がかかり、これを40句がんばって書かせていたら、書くことが苦痛となり、俳句が嫌いになってしまってはいけないと思い、代筆させて頂きました。
 句集が戻ってくるので、記念になるかなと、くらいの気持ちで応募しておりましたので、受賞を知って大変びっくりしました。本人も新聞に出ているのを見て、大変喜んでいました。
 今回の応募作で、本人が一番気に入っている俳句は、「サイダーをはじめてじぶんであけたよる」です。サイダーの缶をそれまではどうやっても開けることが出来なかったのに、夏の夜、おばあちゃんの家で開けることが出来るようになったのが、本当にうれしかったようです。おまけにその缶は、おばあちゃんも開けることができなかったようですので。


優秀賞

『さくらんぼちゃん』
 松山市立味生小学校 1年 平原晴香

山、火、川のかんじおぼえたはるのにじ
さつきばれはみがきタイムのミュージック
ともだちとシールこうかんさくらんぼ
なつのかぜきょうはじぶんをほめている
なつぞらやセルリアンブルーのセキセインコ


優秀賞

『チョコレートプレート』
 松山市立番町小学校 3年 栗田暖乃

見つめたらにげたてれやの春の雲
さくらまいはりつくまちあいしつのまど
飛行機雲右が私の夏の空
水面へ顔出す金魚手紙書く
色あせた水着ターンは真っすぐに


優秀賞

『肱流』
 大洲市立喜多小学校 6年 岡田真巳

新校舎校章高く風光る
仮校舎壊す重機に花吹雪
かき氷こぼれたしみを吸うタオル
水仙の香りのさそう診療所
空っ風ソの音出ないトランペット


優秀賞

『冬天の匂い』
 マータークリスティカレッジ(中学3年) 金 紗蘭

それぞれの囀の間にある休符
風船の中の空気の重さかな
行くあての無き雲吊り下げて夏野
蜘蛛の死に触れた塵紙のしわくちゃ
帰国する朝五時冬天の匂い


優秀賞

『三度目の初めて』
 東京都江東区立有明中学校 3年 藤田茉莉子

春陰は開いたかばんの口の中
桜蘂降る夜の雨の無色かな
朝曇り場末の街のホルンかな
冬の川割って近付く水上バス
帰り花祈りは届くように祈る

受賞の言葉
 中一の5月、東京都江東区の中学校俳句部への入部がきっかけで俳句を始めました。普段は、月1回の俳句部の句会や吟行で作る他に、日常生活で思いついた際、句を詠んでいます。俳句は、俳句部で紹介されたコンテストを中心に投稿しています。
 このコンテストは、中一の時、俳句部に指導にいらした先生に応募冊子をいただきました。それから、毎年応募しています。
 作品集を仕上げるのに一番苦労した点は、詠んだ句の中から、四十句を選ぶことです。気に入っている句や褒められた句が、いくつもあったからです。
 昨年は一句賞をいただいたので、優秀賞を目指していました。優秀賞を受賞して貴誌に掲載していただくことは憧れでしたので、受賞を知って、非常に嬉しく思いました。
 今回の応募作で、一番気に入っている俳句は「帰り花祈りは届くように祈る」です。俳句部の先生方や部員に、特に評価された句だからです。


装丁賞 優秀賞

『ボタッと座る蛙ねこ』
 大阪市立片江小学校 3年 馬場叶羽


装丁賞 優秀賞

『夏の声』
 松山市立正岡小学校 5年 二神 栞


装丁賞 優秀賞

『イチリンシャ』
 横浜市立いずみ野小学校 5年 松下昇馬

受賞の言葉
 前回も応募して賞を取ってうれしかったので、今回も応募しました。装丁で一番苦労したところは、表紙の切り絵です。車輪を切り損ねると大きな穴が空いてしまうからです。
 今回は、俳句の賞(一句賞入賞)も初めて取れて、嬉しかったです。
 俳句は調子が良いときは3句、普通の時は1句、毎日夜寝る前に作っています。
 これからも装丁賞ともうちょっと俳句の賞を取りたいです。


装丁賞 佳作

『わたしのキラキラアルバム!!』
 松山市立東雲小学校 2年 越智汐音


装丁賞 佳作

『フウセンカズラの夏』
 東京都光塩女子学院初等科 3年 矢野結万


装丁賞 佳作

『夏の空』
 松山市立みどり小学校 4年 西崎葵衣


装丁賞 佳作

『くさぶえ』
 横浜市立いずみ野小学校 6年 佐々木セナ


装丁賞 佳作

『パズル』
 松山市立みどり小学校 6年 合田知瑛


装丁賞 佳作

『明日の風』
 松山市立石井小学校 6年 三谷のどか


装丁賞 佳作

『カナキュー!!』
 松山市立西中学校 1年 田哉汰


一句賞 優秀賞
松山市立東雲小学校 1年 河村和仁

みつばちがしろつめくさにこしかけた


愛媛大学教育学部附属小学校 4年 錫村茉生

沖縄の入道雲は生きている


松山市立番町小学校 4年 栗田大愛

タマネギ切る母の強さがしみてくる


松山市立久枝小学校 5年 岡崎 唯

青葉潮アルトホルンの響きなり


松山市立日浦小学校 6年 金 安理

君と犬だきあって夏の死


松山市立道後小学校 6年 高橋凜太朗

炎天下石はさみしい顔をする


愛媛県立松山西中等教育学校 1年 福原 音

悲しみに夕焼けはただ照りつける


松山市立桑原中学校 1年 宮井桃歌

どう見てもため息製のシャボン玉


一句賞 入賞

愛南町立家串小学校 1年 末弘力也

クレヨンがさんぼんおれたあさのにじ


愛媛大学教育学部附属小学校 2年 相馬怜奈

もうのめる思ったコーヒーにがい春


内子町立田渡小学校 2年 宮岡夢

かまきりのあしにほこりがついている


内子町立田渡小学校 2年 寺岡大夢

先生すながかがやいているようです


八幡浜市立日土東小学校 2年 山中紗和

ハムスターねたふりじょうず月見草


松山市立石井小学校 2年 三谷ふわり

とうりょうのゆめは?ときいた夏休み


松山市立みどり小学校 3年 田井綾乃

スイカ切るピンと元気な音がする


松山市立双葉小学校3年 日高万歩路

冬ざれや言い返したい夜もある


東京都江東区立越中島小学校 3年 橋口茉弥

赤とんぼみんなとんでけさくら島


内子町立田渡小学校 3年 福岡省吾

ぼたん雪くすくすとける地面


松山市立みどり小学校 3年 吉田陽南大

水たまりとびこえた朝夏がきた


松山市立河野小学校 4年 山内真穂

青葉潮十七せきの漁船うく


奈良女子大学附属小学校 4年 渡邉達志

金魚たちあかねの夕日待つしぐさ


内子町立天神小学校 4年 池田玲美

三千三百年の土ぐう月すずし


高知市立江陽小学校 4年 鳥海帆乃花

ぶらんこしジャンプで飛び出し鳥となる


八幡浜市立双岩小学校 5年 横尾直澄

雪ダルマ大声出すな説教するな


日本女子大学附属豊明小学校 5年 尾形綾香

リコーダー一人で吹いてひる


諏訪市立高島小学校 5年 宮澤ななせ

富有柿どっしりつくえにすわってる


横浜市立いずみ野小学校 5年 松下昇馬

夏の野をかけてく犬がほしい


松山市立道後小学校 6年 武田歩

雑草をまた少しふみ南風


宇和島市立九島小学校 6年 片山渚々美

春の暮まわしてもまわしても点対称


松山市立西中学校 1年 鈴村直樹

外灯にむささびの目の反射する


愛媛県立松山西中等教育学校 1年 日高隆介

炎天下曲がりくねった筆記体


愛南町立一本松中学校 1年 松本実夢

吹く風のすがたのままに秋の雲


松山市立道後中学校 1年 鈴木大河

6階で迷い子になった金亀虫


東京都暁星中学校 2年 高野綸

足先でかきわけ入る菖蒲の湯


八幡浜市立真穴中学校 2年 大下雅子

影の中上へ上へと蝸牛


小平市立小平第四中学校 2年 立岡真由子

夕立ちで天と繋がる広き海


八幡浜市立青石中学校 2年 藤本千聡

オーロラのかけらも入れてソーダ水


松山市立西中学校 3年 鈴村綾音

うりずんや光の透けた和紙の羽


学校賞 優秀賞

 内子町立田渡小学校
 愛媛大学教育学部附属小学校
 松山市立みどり小学校 


学校賞 奨励賞

 愛南町立家串小学校
 宇和島市立九島小学校
 広島市なぎさ公園小学校
 府中市立府中第十小学校
 松山市立東雲小学校
 松山市立番町小学校
 八幡浜市立日土東小学校
 八幡浜市立青石中学校
 八幡浜市立真穴中学校


目次に戻る


特集2
全酒類卸山澤商店&クリビオ杯

俳句対局 第二回龍淵王決定戦


後篇

(前回のあらすじ)
 第二回龍淵王決定戦に挑んだのは恋衣さん、久保田牡丹さん、大隈みちるさん、藤田夕加さん、高須賀あねごさん、蓼蟲さんの六名。
一回戦を終え、蓼蟲さん、大隈みちるさん、久保田牡丹さんが準決勝へ。残る一人は敗者復活戦で決まる。
文 正人


後半戦 開始

 敗者復活戦に挑むのはあねごさん、恋衣さん、藤田夕加さんの三名。図らずも女性三名による対戦となった。対戦席につく表情は各々緊張している。
 敗者復活戦は2分制限一句勝負。席題句の発表と同時に一斉に作句開始。採点方法は本戦と同様。俳句点が同点の場合は早く完成した者の勝利だ。

敗者復活戦

生身魂七十と申し達者也 子規
秋高し七千人のエキストラ あねご
魂を五七五にして源義忌 恋衣
生まれたる命消えたる灯六花 夕加

 最初に仕上げたのはあねごさん。 僅差で恋衣さんが続き、一拍遅れて夕加さんも作句完了。
 審査員の判定は、あねごさん7.3点、恋衣さん7点、夕加さん6.6点。僅差ながらあねごさんの勝ち抜け! 「源義忌」にも惹かれたが「七千人」の数詞が勝負を分けたと審査員。
 これにて準決勝戦の対戦が決定した。第一試合が蓼蟲さんと大隈みちるさん、第二試合が久保田牡丹さんと高須賀あねごさんの対戦となる。
 対戦相手が決まると同時に久保田牡丹さんが唸りだした。曰く「春の龍天王戦で井上さちさんに負けた記憶が蘇ってきて……なぜかいつも年上の女性に勝てないんです」とのこと。ジンクスを覆すことができるか?

準決勝戦 第1試合

先手 蓼蟲 × 後手 大隈みちる

 準決勝からは一人四句勝負となる。長丁場は選手の集中力と体力を消耗させてゆくが、初戦を終えて両選手のコンディションはどうだろうか。

淋しさの三羽減りけり鴫の秋 子規
三千の人が流るる秋祭 蓼蟲

 「三羽」の三の字を頂いてきた。席題句の季語は「鴫」……かと思いきや、「鴫の秋」ではないか! そして蓼蟲さんの句の季語は「秋祭」。これは俳句対局ルール【前の句の季語、および季語の一部を季語として頂いてはならない】に該当してしまう。がーん。今大会初の減点が出てしまった。このケースは減点2となり、最終得点から2点が引かれることになる。

流れゆく灯少し山粧ふ みちる
本堂のたたみ冷き灯に向ふ 蓼蟲
本堂の暗くなりゆき夏の雲 みちる
雲速し八幡神社に野分ふく 蓼蟲
速度無制限高速道路にくつわ虫 みちる
忘年会道すがらにぞネオン咲く 蓼蟲
ネオン赤都市溺れさせ台風来 みちる

 怯むことなく試合は続行。蓼蟲さん二句目には8点をつける審査員も。巻き返しなるか?
 対するみちるさんは落ち着いた作りでコンスタントに7点級の句を作り継いでいく。そしてやはりスピードが速い。最終的に5分34秒を残して試合を終えた。
 結果は減点計算も含め蓼蟲さん26.9点、みちるさん32.6点でみちるさんの勝利。

準決勝戦 第2試合

先手 久保田牡丹 × 後手 高須賀あねご

名月や伊予の松山一万戸 子規
ふるさとの山冬紅葉溢れ出づ 牡
滝近き烏の帰る山笑ふ あねご
網戸張りかへ空近し海近し 牡
縄張は田んぼ一枚寒鴉 あねご
棚田幾百段曼珠沙華幾万 牡
本棚に亡父の眼鏡秋の暮 あねご
父の日に美しき嘘つきにけり 牡
初孫に美のつく名前木の実降る あねご

 「お手柔らかに」とあねごさん。「どんな相手でも全力で戦います」と牡丹さん。両者火花を散らす。
 試合が始まると二人の俳句の作り方は対称的だ。牡丹さんは黙考し、片やあねごさんは気がついたことを喋りながら句を作っていく。出揃った句はいずれも秀句。点数はどうだろう?
 牡丹さん一句目は7点。あねごさん一句目は6点。まず先手が1点をリードした形だ。
 前篇でもお伝えした通り、牡丹さんは作句点を高い平均でキープするタイプの選手。このリードを守り通すかと思われたが、ここからあねごさんの進撃が始まった。
 先手続く二句目で7.3点を獲得すれば、後手7.6点を獲得。三句目は互いに7.3点と並ぶ。最終の四句目では先手7点、後手は右肩上がりに調子を伸ばし8点を獲得した。
 下表は両者の獲得点早見表。一瞬勝負の行方がわからない。「結局どっちが勝ったの?」とざわめく会場。みんな暗算は苦手だけど試合が伯仲していることだけは感覚でわかるのだ。
 互いに時間は3分台を残し、合計点は久保田牡丹31.6点! 高須賀あねご31.9点! 0.3点差であねごさんの勝利!! 見事に巻き返したなあ。
 「相手のいい句に触発されてこっちもいい句が作れだした」とあねごさん。「年上の女性がトラウマになりそうです」と牡丹さん。手に汗握る名勝負に大きな拍手が送られた。

二代目龍淵王決定!

 いよいよ決勝戦。この戦いに勝利したものが二代目「龍淵王」となる。互いの名誉をかけて戦うのは大隈みちるさんと高須賀あねごさん。ここまで力を尽くしてきた両者、疲労の色が濃いが……?

決勝戦

先手 大隈みちる × 後手 高須賀あねご

桃太郎は桃金太郎は何からぞ 子規
太郎泣くこの川上の初紅葉 みちる

 定型を外れた席題句にも怯まず早速一句目を仕上げるみちるさん。続くあねごさんも順調と思いきや……

夕焼や黄金のタレ買いに行く あねご

 なんと、前句から一字も頂いていないという事態が発生! な、なんということだ……。子規の句のインパクトが強すぎて「金太郎」から一字とってしまった? いずれにせよこのケースは5点の減点となる。
 さらに動揺は連鎖する。
黄金仮面後姿へ大夕焼 みちる

 多少形は違うものの前句の季語「夕焼」をそのまま使っている。準決勝第一試合と同じ2点減点ケース。

金風や水面を揺らすバイク音 あねご
水面行くあめんぼの足先光る みちる
色足袋や女神輿の総大将 あねご
大将は隣の親父秋祭 みちる
湯の宿や隣へ蒲団引き寄せる あねご

 互いに善戦したものの減点の影響もあり、得点はみちるさんが大きく優勢で決着。最終戦は6分1秒を残し、二代目龍淵王の座に輝いた。
 「間もなく退職し愛媛を離れてしまうから、やれるだけのことはやっておきたかった」とみちるさん。いずれ開催を目論む龍王対決にはぜひ愛媛に戻り腕を奮って欲しい。



目次に戻る


百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2013年度 第三期 3回目


「風船」マイマイ


数の子の皮剥くときの眉間かな
小市民的ふくら雀が精米所
カラカラと爪切り受けの去年の爪
吾と君の視線の交点にでこぽん
麗しく三日の魚肉ソーセージ
第二芸術論大根のほろと煮え
風邪の日の熱を測るという娯楽
水仙の花茎が長過ぎてどうにも
陽に溶けつ寒鴉河口に集まりぬ
海は静かに天狼の余罪とは
風船を放せば君は楽になる
落ちた椿よ楽観主義者(オプティミスト)の見る空よ


大分在住の友人に麦焼酎「兼八」をもらった。お盆に会ったとき、「これが旨いんよ」と話していたのを憶えていて、わざわざ取り寄せてくれたのだ。やっぱり旨い。熊本君ありがとう。




「冬のサイダー」大塚迷路

一月一日大器晩成への一歩
点は線線は面へと初日の出
あらたまの猫が洗える己が顔
本降りを告げて賀客の帰りけり
歩幅なぞあとで調整効く二日
後朝の雪長靴を履いた猫
言い訳たらたらマスクはまだ白い
夜の奥深海魚めく鏡餅
(前書き:大滝詠一さんが亡くなった日)
冬のサイダー  ドーナツ盤に
 泡が飛んだ泡が飛んだ泡が飛んだ
大根の重石公民館便り
木守柿今年またこの土地で生く
爪先をととんと突きて春隣


やっぱり大器晩成だと思う。
今は言えないが根拠はある。
言いたいけれど今は言わない。




「恋かも知れない」行広遊人

初日の出待つてゐる間の庭巡り
午年の貌の並びて馬屋窓
白煙の海へ消えゆく五日かな
こんなにも遠く離るる若菜摘
いにしへの音の聴こゆる薺打
長調の短調となり雪降り積む
雪嶺へ向かつて歩む老年期
恋かも知れない雪上にひと型
オーロラのごとくに冬の翡翠は
冬野道聲の行進してゆきぬ
闌干は凭るるところ鴨の群
釣人の人を呼びたる四温かな


今年の抱負
1:湯治 2:句集上梓 3:身辺整理




「御焦」谷さやん

雪の夜は中也旅にはゆで卵
まぶしさの鰤のはらみを箸に割く
焼芋の皮に名前を書いておこ
紙屑とかがめばちりぢりの冬日
読初の挿絵の猫の髭八本
廃屋と見まがふ裏戸福寿草
湯たんぽの湯に顔洗ふ夜明け前
マンホールの水音を踏む寒さかな
寒林に手紙の一行紛失す
手袋のかはりの缶コーヒーを買ふ
遠雪崩ドリアの御焦こさげれば
永き日の皿にハニートーストの余白


1958年生まれ。句集『逢ひに行く』で、宗左近俳句大賞受賞。坪内稔典/谷さやん共編『不器男百句』(創風社出版)。評伝『芝不器男への旅』(創風社出版)。




目次に戻る



読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2014年1月号 〜 2014年3月号 2/3回目)


 銀の口 たま

回廊や朱の剥落の冴え返る
椿の悲鳴に湿るや仏陀の目
故郷は朧かの伝説の町
春暁や置きていきたるすみれ色
恋猫の通い路なるやロンド橋
紙風船銀の口あり紅すこし
ヒヤシンス神父と尼僧すれ違う
蛤や夜半の厨に海の唄
ミモザミモーザこわき黄の迫りくる
囀りや壊れたピアノ窓際に


2010年「ザ いつき組」に初投句。現在は「自由律」に投句です。ちょっとした事にも感動。好奇心が湧いてくる俳句の世界。これからもアンテナをめぐらして楽しく華のある日々にしたいと思います。



 眠そうな兎 鞠月

寒昴煌々陣痛促進剤
冬蝿や蕊より褪めてゆく造花
杭として土に埋まる木虎落笛
桃色の手袋の子やはり迷子
息吐いてドア開くバスの淑気かな
とろりとろり三日の離乳食を煮る
東京に住むこときっと無くて薺
眠そうな兎ゆるゆる耳を閉ず
焚火起こして弁当の飯を掘る
水仙や海から風という鑢


高知県出身、愛媛県在住。5歳と1歳の二児の母。2010年10月、土曜カルチャーに飛び込む。きょろきょろしながら歩く癖が俳句を始めて長所に変わりました。宇宙大好き理系人間。



 若水 樹朋

折紙の音より硬し落葉踏む
玻璃に映るは電線と鴉と冬
水風呂にかすかな油膜年惜しむ
ゆく年や鏡の顔の不均衡
初明り音なき海に砂洲の影
若水のふふみてのちの硬さかな
大鈴のぐわらんぐわらん初社
駅伝の吐く息つながりて狗日
寒月や直線のみの裁断図
潮の香のしみ入りて白野水仙


1944年生まれ。松山市北条在住。定年退職後は、樹木医をしながら、好きな樹木を相手にして楽しんでいます。俳句は六十の手習で始めました。今は土曜カルチャーにお世話になっています。



読者が選ぶ人気俳人!
「100年の旗手」連載者推薦募集

 今求められているのは、読者が読みたいと思う俳句作家。「100年の旗手」は、連載する俳人を、編集室ではなく、読者が選ぶコーナーです。
 「この人の作品集を読んでみたい」と気になる俳人を、1人3名まで推薦してください。その中から、推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行います。
 あなたのお勧めの俳人を是非推薦してください。

 推薦の方法

「この人の作品集を読んでみたい」という人を3名まで選んで(自薦は不可)、その俳号と活動場所(句会、誌面等)、推薦者ご自身の俳号(本名)、住所、電話番号を明記して、100年俳句計画編集室「作品集推薦」係へ送ってください。ハガキ、FAX、Eメールで受け付けています。Eメールの場合は件名を「作品集推薦」としてください。また、専用のインターネット投稿フォーム(http://www.marukobo.com/100kishu/)でも受け付けています。※投稿フォーム利用の場合を除き、推薦は他の投稿等とは分けてください。

締切 2月末日

 現在連載している3名の方以外なら、一度連載された方も含め、どなたでも推薦できます。
 今回連載を行った3名の作品集の感想もお待ちしています!


目次に戻る



百年琢磨
 小指の痛み 平敷武蕉

「米塚」 樹朋

冬耕の黒き土塊の呼吸せり
引き抜きてだいこの歪みみずみずし

 豊かな収穫をもたらす大地への感謝。農耕の現場に立ち会う者の充足感が臨場感をもって伝わる。「闘牛の湯気立つ背中しぐるるや」と合わせ、しっかりした観察の目が生きている。


「金のヒール」 たま

冬帽子ロシヤ大使の顔四角
まちわびてポインセチアになりました
金のヒール葱さげてつまずく

 厳冬に被る防寒用の冬帽子。大使の顔も厳しく尖る。北方領土問題に厳しく対峙するロシアの姿勢を示している。
 待たされてムラムラと胸に湧き上がる様々な思いをポインセチアの形状と赤で表現した。ポインセチアは猩猩花とも呼ばれる。猩猩には狒狒と大酒飲みの意味がある。待たされて怒り心頭、顔が真っ赤になるほどに自棄酒をあおったか。
 金のヒールに葱は似合わない。案の定、つまずいたざあますではないか。諧謔が絶妙。


「消えるまで」 鞠月

短日の小指に傷あって不便

 かつて沖縄の政治リーダーが「小指の痛みは全身の痛み」という名言で、沖縄問題に無関心な国と本土人に訴えたことがあるが、はて、どれだけの国民が沖縄の現実に痛みを感じているのであろうか。

水が均す千鳥の足跡と地球

 水は小さな千鳥の足跡を均すだけではない。時に大津波となって大地を均す。東日本大震災では甚大な街並みが津波に浚われ、跡には、荒涼とした更地が広がった。世界各地で異常気象によって大津波が発生し、地球が均された。怖い句だ。

消えるまで白息は私の一部

 寒い日、口から吐き出された白息は、たしかに消えるまでは身体の一部であるかに思える。目に鮮やかに見えるから。しかし、消えたあとは……。


平敷武蕉
1945年、沖縄県生。著書『沖縄からの文学批評』。俳句評論集『文学批評は成り立つか』で第三回銀河系俳句大賞を受賞。俳句誌『天荒』編集委員。文学同人誌『非世界』編集責任者。


目次に戻る



新 100年の軌跡


2013年度 第二期
第5回


包みの日 川又 夕

薬指重ぬる契り冬燈
首筋へ星の鎖の添ひて雪
琉球のはじまりの蒼冬の月
冠に酔へば純白室の花
凍蝶や婚姻届なほ薄く
画数のおほき名字や日脚伸ぶ
湯豆腐や懐剣肋骨に触れず
楪や色打掛の裾の紅
下腹へと海抱く春の将来図
十年の片恋バレンタインデー
太腿は色めく主張春浅し
弟の髪質の似て草の萌ゆ
くちびるの隙間を埋めるやうに東風
乳房より離れざる熱フリージア
衣擦れの如月二十三日よ


川又夕
1987年愛媛県生まれ。愛媛県立今治西高校、同志社大学卒業。10年前より俳句甲子園に3年連続出場。第2回NHK学生俳句チャンピオン決定戦優勝。NHK松山放送局勤務の傍ら、1月1日に句集『嫁入り支度』上梓。




勢力図 若狭昭宏

数の子や一年経てば違ふ人
輪唱の如氷壁の光りけり
白鳥や寝静まりたる保育室
凍解の毎に人間らしき像
呼び返す名の見つからぬ余寒かな
節分の欠けたる豆も数へけり
金縷梅や臍の緒を入る箱に名を
唇の近き素描や梅ふふむ
満天星の花や包囲の勢力図
シャーペンの中もまじなふヴァレンタイン
長閑さや缶一杯の護謨人形
接骨木の花こつと触る自鳴琴
山笑ふ獏の欠伸か吃逆か
外海を知る巣燕の船渠かな
縞馬の春を幾多に割きたまへ


若狭昭宏
1985年12月8日生、広島県出身。安芸南高校より第6回俳句甲子園出場。俳句Webマガジン「スピカ」2013年8月連載。




謎解き 瑞木

衣擦れの如月二十三日よ 川又 夕
 調べたところによると、二月二十三日は二、二、三の語呂合わせで「包みの日」。京都ふろしき協会が制定したらしい。なるほど京都のふろしきから和服の衣擦れへと発想が広がっていったというわけか。題名の「包みの日」をヒントに謎解きをするように味わった俳句であった。新しい言葉を季語として使ってみようという試みは楽しいが、歴史的事実を背景に持つ「八月十五日」や、世間に定着した「母の日」などと比べると、言葉の弱さが一目瞭然という感じだ。新しい言葉が季語として成り立つのは、なかなか難しそうだ。

長閑さや缶一杯の護謨人形 若狭昭宏
 大人になった作者が、幼い頃に集めて遊んでいたおもちゃを久しぶりに見つけて懐かしく思うひととき。護謨人形のカラフルさと春の陽射しが似合っている。
縞馬の春を幾多に割きたまへ 若狭昭宏
 縞馬の「春」を「割く」という句なのだが、私の頭の中では縞馬そのものが白と黒の境目から木片パズルのようにバラバラに割れて空中に漂っていった。ダリの絵のようなシュールな世界を楽しませてもらった。


1963年生まれ。愛媛県八幡浜市日土町在住。第2回選評大賞最優秀賞。



春の予感 キム チャンヒ

琉球のはじまりの蒼冬の月 川又 夕
 本土では、ひたすらに冷たく感じる冬の月の蒼色。しかし、琉球では「はじまりの蒼」となる。ただ冷たいだけではなく、裏に秘めた熱もこの蒼にはありそう。

くちびるの隙間を埋めるやうに東風 川又 夕
 肌で感じるよりも、唇で受け止める東風の方が、繊細に受け止められそう。隙間を風で埋めたい心情なら、なおさら。

白鳥や寝静まりたる保育室 若狭昭宏
 取り合わせとしてはシンプル。しかし、白鳥の大きく優雅な姿から、保育室に眠る子どもの小さな吐息が聞こえてきそう。白鳥の姿こそが、ゆりかごのようにも感じられる。

節分の欠けたる豆も数へけり 若狭昭宏
 年の数だけ食べる節分の豆。欠けたものを省いてしまいそうだけれど、それまで数に入れたという優しさ。子どもの頃は、食べられる数が少なかったので、絶対ちゃんとした豆しか数には入れなかったように思う。思いの外年を取っちゃったのか!? 若狭君。


1968年生まれ。本誌編集長。


目次に戻る



超初心者から中上級者まで楽しめる
100年投句計画

 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天地人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選、並選を選んでいます。今回の先選者は、阪西敦子さんと加根兼光さん。後選者は、関悦史さんです。

 「へたうま仙女」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は杉山久子さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。

 「詰め俳句計画」は、マイマイさんによる、二つのフレーズに合う季語を投稿するコーナーです。季寄せや歳時記さえあれば、全くの俳句初心者でも挑戦できます。
(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)
写真:白鯨


選者三名による雑詠俳句計画


先選者 加根兼光

 雑詠欄を担当させていただいて半年が過ぎたがその間みなさんの句や選から学ばせていただくことも多く、改めてたくさんの方々の句と向き合うことの大切さを感じている。ただ常々思っていることは選者という目線ではなく、作家同士として対等にみなさんの句と向き合いたいということ。さらにこの欄に投句いただく方々の中に私自身が注目している作家が何人もいることも嬉しいことだ。これからも真摯に句と向き合いたいと思う。



冬ざれの桟橋竜のごとく鳴く あらた

 荒涼たる冬である。桟橋はもちろん海や湖や川へと突き出たものであるが、必ず陸と繋がっている。決してそこから動く訳でもなく、船が着くのを待つ。
 しかし冬の嵐の中では時として離れたい衝動に駆られたように身を捩り声を上げる。荒ぶる竜のごとき咆哮である。
 だが尾を陸に繋がれた竜は水へと放たれることはない。鳴き声は空と陸と水を駆けるが、竜は桟橋として繋がれたまま嵐の静まるのを待つ。



少年に鋼の匂い冬薔薇 藍人
 鋼のように鍛えられた少年がいる。鋭い眼光としなやかな体。作者は彼に「匂い」を感じ取った。すれ違っただけの一瞬の緊張を表現したのだろう。冬薔薇のような微香、そして人を傷つけるに十分な棘も持っている。

猪のぬるい血を吸うアスファルト 空
 「ぬるい血」であるからまだ死を迎えていない猪がそこに居る。撃たれてヨロヨロ舗装路にたどり着いたか事故にでも遭ったか。アスファルトの上で迎える死は猪と人の隣接した今の生命の在り様を適確に描いている。

冬籠電波に消えた歌謡曲 紗蘭
 寒さを逃れ籠る部屋に鳴るラジオ。流れるのは懐かしさを湛えた歌謡曲。うっかり聞いていて、あっと曲に気付いた瞬間、電波の向うに音は消えていった。「消えた」という過去形は消えた歌手へのオマージュかもしれない。

橙の色あざやかに神の国 一心堂
 「あざやかに」が言い過ぎと感じる向きもあろう。だが冬景色にある橙のコダックイエローは確かにあざやか。「神の国」への展開が一気に景を拡げた。この神の国は橙の鮮やかさをしっかりと受け止めてくれるのだろうか。

人に息解体さるる黒鮪 ソラト
 釣り上げられたまだ跳ね回る黒鮪であろう。息の根を止めるように解体されてゆく血の赤さ生々しく見えるのは「息解体さるる」というゴツゴツとした言葉があるから。肉はやがて人のものとなり鮪の息は消えてゆく。

抱卵や山雪どけの音に満ち ターナー島
 春を抱くように卵を抱いた鳥は間もなく生命の春を迎える。山はそれを祝福するかのように雪解けの雫、光、風に満たされる。山に満ちた雪解けの音たちは、やがて鳥たちの奏でる春の声へと語り継がれるのである。



風花や瞼あること思い出す 藍人
極月や無名の人が弾くソナタ 幸
啄木鳥のこだま残して峪の空 ほろよい
鳩のむくろ沈め冬の波しづか 一走人
ジャズの譜の十二小節冬銀河 てん点
冬眠や地下六階の乗車口 八木ふみ
聖堂に6歳の君冬銀河 魔心地
ポロックの混沌霙ささる音 野風
こめかみを揉みほぐしをり漱石忌 省三
駅へ急ぐ人みな無言冬の雨 哲白
寒林は青き湖底に捕らわれて カシオペヤ


先選者 関悦史

 動画投稿サイトのyoutubeで最近、戦後から高度成長期くらいのドキュメンタリー映像がまとめて上がってきまして、『潤滑油』とか『ガソリン』とかを面白がって見ています。当時の工場や稼働中の機械のアップが、ざらついた深い感触のフィルム映像に収められていて、そこになぜか、やたら不穏で不安感をそそる現代音楽風BGMと無感動なナレーションが着き、ウルトラセブンや怪奇大作戦を思わせる怪しい懐かしさがえも言われず。



リュックから葱のはみ出す漢かな 杉本とらを

 一見どうということもない句なのに浮上してきてしまったのは、言い方がもたついていなくて(つまり思いや感動を詰め込もうとしていなくて)、それでいて組み合わせの微妙な違和感から立ち姿が鮮やかに思い浮かぶせいでしょう。リュックは店内の通路などで背負っていられると邪魔なもので、傍からは気になるのですが当人は気がつかないことが多い。刺さっているのが葱というのも何かヘンで、武張った「漢」との対比が利いています。



風花や瞼あること思い出す 藍人
 何か物音がして自分の存在を不意に意識するという句は多い。風花を見ている句も当然ながら少なくない。いかにもはかなげな風花にぶつかられて、その感触から肉体を意識したところに独創性と希薄な情感があります。

十人のうち八人が頬被り 大塚迷路
 こういうどうでもいいことを手柄顔にならずに掬うというのは俳句に極めて向いているのに、なかなか出来ないことでもあり、あっさりしたナンセンスさがなかなかです。絵柄として軽い不気味さがある点もいい。

きゅるきゅると工事現場の冬の蝶  あきさくら洋子
 「きゅるきゅると」は工事中の機械が立てる音のはずで、冬の蝶から立つ音ではないはずなのに、語の流れからはそういうイメージが浮上してきて、機械のような「冬の蝶」という軽い奇妙さが出てくるのが妙味。

ポロックの混沌霙ささる音 野風
 ポロックが塗料を垂らし歩いて制作した画面には、乱舞する線とともに多くの隙間もあります。それと霙の音との取り合わせは、出来上がった作品への賛美に終わらず、そこから身体性も引き出せて批評たりえています。

寂寞と冬日孔雀の冠に ターナー島
 寂びて、華やかで格調もある句です。「冠に」の限定があるせいで、一読そんなにはっきりと全体像が浮かぶわけではなく、そこは弱いといえば弱いのですが、好意的に見ればそのギリギリの薄さに味がある気もします。



もろもろの安請合ひのおでんかな みちる
啄木鳥のこだま残して峪の空 ほろよい
クリスマスケーキに指の跡2つ ふーみん
綻びず一年過ぎし障子かな 小市
仕舞湯の柚子に数多の爪の跡 てん点
話半分に聞き牡丹鍋くたくた 不知火
餅花の粉のつきたる背広かな しんじゅ
鳰潜れば潜れ出れば出よ コナン
まるまりし猫のかたちに毛布かな 青柘榴
寒林は青き湖底に捕らわれて カシオペヤ



後選者 阪西敦子

 着物強化月間中である。といっても、機会が重なったので、着てゆく機会を増やすだけのこと。すっかり忘れている着物や帯や帯締めや帯揚げの多いことと、似合う着物が変わっていることに驚く。時々、季題にも同じことを思う。


特選句
木陰より光連れ出す冬の蝶 緑の手
 木陰には特に光はない。光を連れ出すこともできまい。暗がりから現れた冬蝶がことさら明るく、それを光を連れ出したとみたやさしい詩心。

ひた走る子らに十二月の陽ざし 八十八
 何をしているのか。もう、子どもたち自身もそれを忘れるくらいに走ることにぼっとうする姿が見える。それにふさわしいのは最も低く最も貴重な十二月の日ざし。

着ぶくれて行商の荷の高く高く あおい
 着ぶくれてとしてその着ぶくれの引き起こすこもごもを描く句は多い。この句は、そうではなくその傍らの持ち荷を描く。空も空気も人もよく見える。


並選句
ペプシ飲む明るき色や春スキー レモングラス
柊や緑の闇に花こぼれ のり茶づけ
白息のあやうき胸のふきだまり 青萄
臼起ししたくも搗き手居らぬなり ヤッチー
ながながとひとはのこしてやまのいも 迂叟
佇まい良き家に住む膝毛布 はまゆう
ちびちびと氷柱の溶ける二階かな 朗善
日に向けて翅開けをり冬の蝶 樹朋
冬の日のさくさく響く菜包丁 和音
バス停の待ち人はみな冬帽子 和音
石段の崩れていたり冬至寺 こぼれ花
侘助がちょこんと座る茶室かな れんげ畑
冬蝶を見つけて吾の頬ゆるむ 輝女
光持てよせる波あり冬ぬくし 空山
大根の面倒をみる鍋の中 かのん
雪吊や刈込まれたる空明し 蓼蟲
夢殿を覗いてをりぬ冬木の芽 もね
寒夕焼お好み焼きの宙返り 元旦
スキップの児は実石榴を指さして お手玉
老犬のとぼとぼ歩く師走かな ぴいす
イルミネーションの疲れて眠る師走かな おせろ
渋滞の高速道路へ冬の雷 七草
和菓子屋のぼんの新作春隣 うに子
父遺す銀貨幾枚冬木立 青蛙
東は晴れて時雨の雲が飛ぶ まんぷく
生き死にの話に霙降り始む ポメロ親父
冬暖簾御菜は人情勝男武士 ちろりん
まんまるのおしりふりふり冬の鳥 アンリルカ
啄木鳥の一穴へ目の定まりぬ 人日子
眠れない花火そのまま冬桜 親タカ
滄海の風に荒ぶる冬北斗 北伊作
クンゼと呼ぶ太い榾くべる四角から エノコロちゃん
しづけさに音の加はる朴落葉 鯉城
良きこともいくつかありてクリスマス 松ぼっくり
朝焚火「悲」の文字薄き仁王門 明日嘉
旧館の二階は辞書部冬夕焼 さち



関悦史(せきえつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。

加根兼光(かねけんこう)
1949年大阪生。俳句集団「いつき組」組員。第9回俳句界賞受賞。



目次に戻る


へたうま仙女


文 杉山久子

 あけましておめでとうさん。……からもうだいぶ経ったので皆さんフツーのへたうま生活に戻ってることでしょう。今年もよろしゅう。

木の葉雨胸突坂にふたりだけ 未々
 どんな二人か知らないけど、畳みかけるような空間設定で切迫感と緊張感を演出した技がニクイわ。

 葉っぱといえばこんな句も

舞い上がる木枯葉っぱ犬は追う たっ君
 まだ若い犬かしら? 動くものに目がないのね。風に煽られる度に右往左往してる姿が人間から見るといじらしいっていうか。「木枯葉っぱ」の切羽詰まった語順に一定でない躍動感が。

 犬といえばこんな句も
数へ日に首輪をもたぬ犬がいる ひでこ
  さっきの犬が「動」ならこっちは「静」。首輪を持ったほうがいいのか持たないほうがいいのか、もしかして犬といいながらそれは人間のことでは?などと深遠なことを思わせる句は迷わず追放。

あと六十年生きるつもりの冬至風呂 ケンケン
 湯に浸かってしみじみ闘志を燃やしているんだけど、冬至風呂というのがいかにも俳人。六十年という中途半端さがなんとも絶妙で、そういうこと考える「人間」て仙女から見るとちょっといじらしいっていうか。好きだけど追放。

マスクする本当はさし歯抜けました 柊つばき
 くすっ。そんな告白、せっかくマスクで隠してるのに。あなたの正直さには参るわ。先月は腹痛で今月は歯の治療。お大事に!

 マスクといえばこんな句も
 
もう誰も拾ってくれぬマスクかな 小木さん
 こっちは道端とかに落ちたままマスク本来の力を発揮できなくなっているマスク。イジケ具合が境涯俳句の新たな分野を開拓する小木さんの面目躍如?

受話器より白菜鍋の煮えてくる 河合郁
 親切に考えると、受話器越しに鍋の煮えてる音や鍋を囲んでわいわいやってる様子なんかが聞こえてきて、「何鍋?」「白菜鍋」というような会話があったりということかしらね。「煮えてくる」っていう臨場感溢れる表現がまるで受話器から煮えあがった白菜が迫ってきそうな勢いで……ごちそうさん。

 鍋といえばこんな句も

湯豆腐を掬いながらの打ち明け話  台所のキフジン
 実は結構深刻な打ち明け話なのかもね?湯豆腐を掬いながらさりげなく切り出すところに微妙な心理が読み取れて、豆腐の白き揺れが切ない。さすが「台所の」キフジン、美味そうな上に上手い。追放。

 次も白さが美しい一句

馬鈴薯の湯気ほろほろと雪のよう  KIYOAKI FILM
 ほろほろの湯気とともに馬鈴薯のほろほろほくほくも伝わってくる。美味しそう、食べたいって思わせる食べ物俳句は罪よね。涎が落ちる前に追放。

御破算で願いましては晦日蕎麦 大阪野旅人
 この一年のダメダメだったことは御破算になるよう願って豪快にすすりたい蕎麦。年末商戦の蕎麦コーナーのキャッチコピーにぴったりよ。蕎麦を食べる前にはつい唱えてしまいたくなる一句だわね。抜群のリズムも愛しちゃったわ。泣く泣く追放。

 あわわわわ、新年早々追放句続出。ちょっと目を放すとみんなうまうまになっちゃって困るわ。午年だからって、上手馬にならなくていいのよ。あくまで下手馬で駆けるのよ。来月は手綱を引き締めるわよ!



杉山久子(すぎやまひさこ)
1966年生まれ。第二回芝不器男俳句新人賞。句集『春の柩』、『猫の句も借りたい』『鳥と歩く』。


目次に戻る


自由律俳句計画


選者 きむらけんじ

 野球やサッカーや柔道や陸上なんかをやってた人とはいままで知り合いになったけど、棒高跳びをやった人と知り合いになったことはない。スポーツ用品店で見たことはないが、あの棒いったいどこで売ってるのか。あの棒持って試合に行く時どうやってるのか。電車とかバスとかに持ち込めないし、タクシーも無理だろう。海外に行くときなんか飛行機には乗るだろうが、空港までどうしてるのか。まさか折りたたみ式でバッグ入るということはないだろう。家にも置けないし、だいたい値段はいくらなのか……とか考えると棒高跳びは結構つらいスポーツのような気がする。しかしネットで調べればこんなことすぐわかるのか……なんか面白味のない世の中だな。



銭湯の煙突太い冬至 あきさくら洋子

 日照時間のいちばん短い冬至……おそらく曇天、鉛色の重たい空に立つ煙突はあくまで寒々としている。しかしその煙突の下には湯気いっぱいのあたたかい湯船があり、ゆったり湯に浸かる人の至福の情景がある。普通の煙突ではなく、「煙突太い」という確信的な言い切りが、冬至の空に立つ寒い煙突という単純な光景を越えて、その先の人の暮らしの暖かさまでつなげる強さを持ったと思う。秀句は、言葉を越えたところにあるということか。



どうしようもない姫路の姉に金をくれてやる  小木さん

 こういう句は、まさに自由律らしい。有季定型の句には出せない味わいがある(味わいというのかどうかは別として)。一歩踏み外せばただのぼやきになるところを、ギリギリで成立していると思う(これがむつかしい)。作者と姉の抜き差しならぬ関係に、姫路という現実の地名が、なおリアリティを感じさせて強い。

蒔くあての無き春種を買ふ 七草

 蒔くあての無いとは、どういうことなのだろうか。重い病気なのか、どこかへ転勤になるのだろうか。とにかく先の希望が無いのに、希望の象徴のような春種を買ってしまった……完結しないドラマを見てしまったような気になる句です。

冬の苺の喰ひちらかされた白い腹が俺を睨む  みちる

 長律の自由律句で二十七文字ある。俳句は省略の文学というが、自由律の場合でも、基本は一息で詠めるぐらいが不文律としてある。この句の場合、「冬の」は必要なのか、「俺を睨む」は必要なのか……とか考えるべき点もあるが、このままでもなかなかのインパクトを持って迫ってくる。

あきらかに北国へゆく群れである うに子

 群れは鳥だろうか、ひょっとして出稼ぎが終わって国へ帰る人たちだろうか(群れとは言わないか)。「あきらかに」という断定の言葉と、「ある」という結びが句の背筋を伸ばし凛としたものにしている。季語は無いが定型句。これでよいのかもしれないが自由律へもっと転がせないか。

谷へ降る雪ほど急ぐ心 朗善

 なんだか分からないが、心の底から切羽詰まって急いでいるらしい。とにかく「谷へ降る雪」ほど急いでいるのだ。この急ぎ加減に意表を突かれる。深い谷へ落ちていく雪、雪、雪……風に煽られ奈落の底へおちていくように。なにかしら恐ろしいような急ぎ方、急ぐ心が情景と重なります。



母の痺れた手で切った沢庵漬 のり茶づけ
淋しい年寄りだ愚痴が無い 三重丸
痕跡を残さず泣く 大塚迷路
雪こんなところに自動販売機 あらた
冬薔薇も愛の花かしらこんなに痛い 空
蜜柑が転がった私も転ぶ 空山
餅花の赤強すぎないか しんじゅ
ハチマキをして年賀状 柊つばき
ピカドンの落ちたる海の生きてゐる牡蠣 鯉城
もう捨てる煮凝りだってあいつの箸も好物も  台所のキフジン


並選
軍手、手紙入りの牡蠣届く ケンケン
活き活きと雪の鈴に場所 KIYOAKI FILM
居酒屋二階突然煙煙 レモングラス
寒椿ぽろりサラリーマンの首ころり 藍人
木枯が四回転半の着地 ヤッチー
顕信を読む秋の雨 迂叟
暖炉のある鮨屋に来てをる 朗善
あの暑さを恋しと思う厳冬 幸
留守番なのに冬の雷 河合郁
くしゃみして髭取れる 和音
石鎚石鎚白粉塗って大旦 輝女
寒夕焼一足飛びに故郷 一走人
生きることをあきらめきったわけじゃない冬の鹿  緑の手
笹鳴きに亡き姉にしか話せぬことを  あきさくら洋子
さよならロッカー小春の修了式 紗蘭
雨の刺す年の瀬たたずむ ふーみん
記憶は修正されるの冬の月 かのん
雪だ 小市
裸木の間のコンテナ船は近い もね
冬三日月ヘルニアに眉しかめ 元旦
石榴さけたよ笑わば笑え お手玉
寒い夜は急げ急げあの店へ 一心堂
ジャンパーのファスナ―に噛まれる ソラト
眼を過ぎる寒菊の白ペダル緩める まんぷく
もう使わぬ布団粗大ゴミに 不知火
冬ざれの関係を引きずったまま ポメロ親父
焚火するヤッホヤホホホ山賊の歌 しんじゅ
わたくしの成立になんと多くの犠牲 ちろりん
骨盤の笑い転げて腰痛寒し コナン
うちの中のバラ冬薔薇の中の海 親タカ
冬雲の輝き白色ワセリンの輝き 北伊作
一回きりアイソン彗星蒸発す エノコロちゃん
水曜のコラム空白天野さん ひでこ
雪かぶりルビーの実を灯す 松ぼっくり
薄氷にうっちゃられ泥かぶる たま
冬田荒れ放題の国 青柘榴
元旦飲酒運転農道にパトカー ザッパー
空真っ青銀杏天突く瑞応寺 カシオペヤ
ソチの雪ん子 あおい



きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「層雲」同人。写俳エッセイ『きょうも世間はややこしい』(象の森書房)、句集『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)他。特技 妄想、泥酔。


目次に戻る



詰め俳句計画


出題 文 マイマイ

今月の問題
 次の(  )の中に共通する冬の季語を入れて下さい。
(  )の袋小路が待っている
(  )の地へ(  )の新しく

蜻蛉の袋小路が待っている
蜻蛉の地へ蜻蛉の新しく
 緑の手さん。前句など美しいのですが残念ながら秋の季語です。級外。

水洟の袋小路が待っている
水洟の地へ水洟の新しく
 親タカさん。後句のリフレインがリアルすぎて嫌。丁寧な描写が仇になることも……。7級。魔心地さんは聖樹。光景は美しいですが字足らずでリズムが問題。同じく7級。KIYOAKI FILMさんは初霰。これは字余り。字足らずほどではないがやはり避けたい。6級。

角巻の袋小路が待っている
角巻の地へ角巻の新しく
 北伊作さん。前句、変。後句、角巻の名産地? 6級。蓼蟲さんは寒紅。前句色っぽいが空恐ろしい。後句は寒紅工場?? カシオペヤさんは狩猟場。前句、臨場感があるが、後句の「新しく」がわからない。ポメロ親父さんの年越も同様。5級。河合郁さんの寒灯は後句、「新しく」が少し苦しいが暗くなって点灯したところを詠んだのかとやや納得できた。前句、美しい。4級。台所のキフジンさんは雪吊。前句は意外性もあり美しい。後句の「新しく」も生きている。問題は「地へ」のところ。雪吊は春にはずすものなのでこの「地」は地面のことではなくその地域のことを指すのだろうか。エノコロちゃんは風垣。後句、毎年仮に建てることが多いので「新しく」がまさに実感。コナンさんは雪掻。藍人さんは雪踏。いずれも身体感覚を伴った季語で雪国の雰囲気が出ている。後句、やってもやっても終わらない感じは表現できている。しかしいずれも「へ」という方向を示す助詞が機能していないのが惜しい。「へ」は「に」にしたいところ。3級。

オリオンの袋小路が待っている
オリオンの地へオリオンの新しく
 牛後さん。前句、袋小路なのに雄大。後句が謎。オリオンの地って何処? 5級。おせろさんは雪雲。袋小路と季語の行き詰まり感が作者の心情か。後句雪雲が次々押し寄せるのはわかるが、「地へ」のところにやや違和感。4級。れんげ畑さんは雪原。前句、何も無いところをあえて袋小路と言ったところに詩を感じる。ただ後句、「新しく」がわからない。3級。たっ君は流氷。知床岬を想像すればまさに流氷の袋小路。そうでなくても最果ての地に来た実感はある。後句も流氷が接岸しさらに押し寄せてきているようで壮観。2級。

寒暁の袋小路が待っている
寒暁の地へ寒暁の新しく
 元旦さん。前句、夜明けの色が魅力的。後句、リフレインの効果がどうか。ケンケンさんの玄帝は冬を擬人化した季語。前句、助詞を一工夫したくなる。後句、玄帝の交代劇? 4級。迂叟さんは玄冬。一走人さんは厳冬。レモングラスさんは厳寒。後句さらに厳しい寒さがやってくるようで迫力がある。3級。

水仙の袋小路が待っている
水仙の地へ水仙の新しく
 のり茶づけさん、あらたさん、鞠月さん。前句、行き詰まり感はあるものの香りが救い。後句、「へ」が生きていない。水仙の次々咲き出る感じをだすには「を」ではないか。幸さんは梅。前句、明るさもあり好き。後句、梅は香りや形の繊細さに特徴のある花なので、リフレインがあまり生きていない気がした。3級。

梟の袋小路が待っている
梟の地へ梟の新しく
 大塚迷路さん。動物はお一人だけでした。前句、言葉遊びのようでいて、夜の森も一種の袋小路なのかもと思わせる面白さがある。後句は新入りの梟? 3級。

大雪の袋小路が待っている
大雪の地へ大雪の新しく
 小市さん。この場合時候の大雪よりも雪の傍題の大雪と思ったほうがいいだろう。特に後句、ずっしりとのしかかるような圧迫感を感じる。2級。空さんの粉雪は逆にかわいらしい感じ。後句、地球をデコレーションしているような美しさがある。1級。やのたかこさん、まんぷくさんは空風。ヤッチーさん、人日子さんは北風。うに子さんは木枯。ほろよいさんは木枯し。瑞木さんは木枯らし。前句、とにかく寒い。後句も風だけに方向を示す「へ」の助詞が生きてくる。同じく1級。

風花の袋小路が待っている
風花の地へ風花の新しく
 朗善さん、輝女さん、あきさくら洋子さん、ひでこさん、大阪野旅人さん。前後句ともに美しい。初段。青柘榴さんは切干。打って変わって庶民的な季語。後句、乾いた切干をいったん地面に下ろし、新しく薄くした大根を干す作業だろう。匂いまで漂ってきそう。同じく初段。


今月の正解
山茶花の袋小路が待っている
山茶花の地へ山茶花の新しく
 小木さん、未々さん、ちろりんさん。後句「へ」の助詞が最大に生きるのはやはりこの季語でしょう。二段。


4月号掲載分の問題(2月20日締切)
 次の(  )の中に共通する春の季語を入れて下さい。
おむすびのこれぞさんかく(  )
(  )裾野を縫って這う電車



マイマイ
2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人。第一回大人コン「多面体」にて優秀賞受賞。句集『翼竜系統樹』マルコボ.コムオンラインショップにて販売中。将棋推定初段。棋友募集中。



【100年投句計画】投句方法
 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可)、俳号(なければ本名の名前のみ)、本名、電話番号、住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。
ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙女」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、2月20日(月)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがきFAXでも投句できます。


さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(俳句ポスト365のページ参照)


目次に戻る


Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.7


pale light on canal
drinking with Dutch friends, leafless
trees looking for sun

色の無き運河に冬日探す木々


(直訳)
運河に青白き光
オランダの友と酌み交わす
枯木が太陽を探している



We are in heaven with Rembrandt,Vermeer,and Van Gogh in Amsterdam. Our life-long friends are here and are taking good care of us.

アムステルダムにて、レンブラント、フェルメール、そしてゴッホの本物と、至福の時を過ごす。生涯の友達がここに居り、最高のもてなしをしてくれる。

※ 訳者から一言。オランダの親友の助っ人を務めたニック。青白き運河とは、太陽も青ざめるほどの二日酔いの朝の情景です。(朗善)




ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2013年7月より山梨へ移住。


目次に戻る



JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第35話
モントルー アレキサンダー ライヴ

観衆の求めるジャズに春が来る チャンヒ

 79年早春、残り少ないキャンパスライフの大半をジャズ喫茶で過ごした。ジャズ喫茶「ブルーノート」で聴いたモンティ アレキサンダーのピアノが、その記憶を鮮明にしてくれている。
 その日、「ブルーノート」のカウンター席には珍しく女性客が数人並んで座っていた。店はほぼ満席で必然的に僕は女性の隣に座ることとなった。彼女たちは、この店のルールを心得ており、話すときは小声で話した。注文したコーヒーが僕の手元に運ばれ、マスターが次のレコードに針を落とすとスピーカーから軽快でクリアなピアノトリオの音が飛び出してきた。それは文句なく楽しく美しい。ピアノの音作りが上手いレーベル「MPS」の手柄も大きいと思った。
 その時、隣の女性が僕に声を掛けてきた。

ぱふぱふと春をはきだしている譜面 ま

 「よくこの店には来るの?」おいおい、大学生活最終場面でこの展開かよ!! 女からナンパ!? と妄想が勝手に膨らもうとした時、彼女が言った。「白方君でしょ」と。7年ぶりに会う中学の同窓生だった。聞けば地元国立大学教育学部の特音に学び、卒業して4月に東京へ嫁いで行くのだそうだ。曲はA面2曲目、シンガー=ソングライターのモーリス アルバートが書いたポップのヒットナンバー「フィーリングス」となった。
 「このアルバム素敵よね。私はジャズをあまり聴かないけど、これは好きだな」と彼女は言った。その横顔は、ぽっちゃりでお転婆な中学の頃の面影は無く、シャープな美人顔だった。僕はお祝いに、モンティ アレキサンダー トリオのこの人気盤「モントルー アレキサンダー ライヴ」をプレゼントすることを約束して店を後にした。
 「ブルーノート」は当時、松山市内の通称ロープウェイ街のビルの2階にあり、後に三越松山店の一角に移転するが間もなく閉店。レコードの数が多く新譜を積極的に紹介してくれる店だった。

掻きならす熱演の後の煮こごり 千栄子

 「煮こごり」とは、ゼラチン質の多い魚や肉などの煮汁が冷えてゼリー状に固まったもので、冬の季語である。が、これをJAZZ句で使うところが面白い。オスカー ピーターソンの影響を受けているのは明らかだが、モンティーが弾き出すサウンドとフレーズは、この上なくオンリーワンだ。生まれがカリプソの本場、カリブ海のジャマイカ島でラテン系白人、しかもクラシック ピアノで鍛えられたピアニストという経歴を聴けば納得の煮こごり的個性派である。

人肌の余韻留めておくピアノ 蛇頭

 「人肌」だけでエロ句呼ばわりされたのは心外だったが、モンティーの「しっとり感」を称賛した句。ベースのレイ ブラウンとギターのハーブ エリス、大御所二人との共演盤、ドラムレス トリオの「トリオ」で味わっていただこう。



http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


目次に戻る



ラクゴキゴ


第35話
『二番煎じ』
〜 火事と喧嘩は江戸の華 〜

あらすじ
 真冬は大火事も多く発生するということで、町内で自身番を置いて、商家のだんながそれぞれ交代で夜の見廻りをすることに。
 寒いからさぼろうとしても、廻り同心が目を光らせているのでそうもいかない。
 あるだんながこんなことを提案する。「二組に分かれて、一組は見廻り、もう一組は番小屋で酒でも飲みながら待機をしよう。」
 見廻りに出た組の方は、みな慣れてないし、あまりに寒いものだから懐から手も出したくないので、適当にやりすごし、ドタバタしながら戻ってくる。
 やっと火にありつけ、早速酒を飲もうとするが、誰かが「ここをどこだと思ってるんです? 自身番ですよ、役人が見つけたら大事になりますよ!」と言うが、あくまでもそれはたてまえで、“薬”を煎じて飲んでいたということにしようと、土瓶のお茶を捨てて、“薬”を入れて沸かし、酒盛りが始まる。
 そこで出されたのが、誰かが持ってきた猪肉。土鍋もちゃんと準備しており、それをつまみながら派手な酒盛りは続く。
 同心がそれを聴きつけ、「ここを開けろ!」とやってきたので皆びっくり、土瓶と鍋をかくしたものの、バレていた。
 「あれは何だ、何かかくしたな?」
 「風邪よけに煎じ薬をひとつ。」
 同心はニヤッと笑い、「ならば、わしにも薬を一杯飲ませろ。」
 同心はぐいっと飲み、「さっきの鍋のようなものを出せ。」
 もう一杯、もう一杯と結局全部同心が飲み食いしてしまう。
 「すみませんが、もう煎じ薬がございません。」
 「ないとあらば仕方ない。拙者は一回りまわってくる。その間に二番を煎じておけ!」



 だめだだめだ、手書きで原稿を書いてるんですが、まず「煎じ」という字が出てこなかった。そして「喧嘩」の「嘩」も。
 いかんですねえ、ケータイやパソコンで漢字変換に慣れてしまうと、どんどん忘れていってますねえ。
 さ、この噺。
 「寒い」「火事」「熱燗」「薬喰い」など、冬の季語のオンパレードのような噺です。
 皆さんも経験があろうかと思いますが(下戸の方ゴメンナサイ)、体の芯まで冷えきって家に帰ったとき、熱燗の最初の一口がどれだけ幸せを感じるものか。
 「生き返ったー!」と叫びたくなります。
 そして、熱々の鍋物をふうふう言いながらいただく。この噺にはそんな二つのシーンが出てきますので、観ている方はのどを“ゴクッ”と言わせてしまいます。
 僕は猪鍋が苦手なんですが、この噺だけは別で、ハフハフ言って食べてる鍋の、ネギがくたくたに煮えてる様子など、観てるとたまらなくなります。
 もともと江戸の小噺で、花見の季節の物語だったようですが、上方へ移り、冬の夜廻りの噺に変えたそうです。
 ちなみに、登場人物に「宗助」さんがいますが、この人物から高座名をもらった噺家さんがいらっしゃいます。
 人間国宝桂米朝師のお弟子さんで、桂宗助さん。

薬喰い自慢話の続きをり


目次に戻る



新聞記事に隠された俳句を発掘する
クロヌリ俳句


黒田マキ


北西の風やや強く雨か雪
(愛媛新聞より)

目や鼻の凸凹増えて12月
(2014年1月6日朝日新聞より)

初日の出60人近くが出馬する
(愛媛新聞より)


目次に戻る


お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第16回 「シアターねこ」という劇場

(承前) 前号紹介の『はい、奥田製作所。』に出演されていた、馬淵真季さんという女優さんは、学生時代に誘われて松山のアマチュア劇団の芝居に出演したことがあるそうなんです。が、その劇団には、私の妹も手伝いに入っていたことがあったのでした。まさか、東京で活躍している女優さんと、地方でうずくまっている私に、そんな接点があろうとは。縁というのは不思議なものです。

橘は色づき絡まる縁もあり

 その劇団はもうありませんが、そんなアマチュア、セミプロ、学生、シニア劇団等の地方劇団が、松山(周辺)には、二十程はあるようです。そのうちの多くの劇団の拠点になりつつあるのが、「シアターねこ」という劇場(http://theaterneco.main.jp/)です。所謂、公共ホールの多くが、千人規模のものであるのに対し、多くの劇団が公演や練習の場として切望していた百人規模の劇場として、NPO法人シアターネットワークえひめを母体に、2012年5月24日に設立。「地域の芸術文化の振興をめざし、舞台芸術の舞台芸術の創造発信を応援」(リーフレットより)するため、貸し館事業による演劇やダンス、音楽、詩の朗読、落語、等の公演や映画の上映などに留まらず、演劇人の育成を図るための、ワークショップや戯曲講座、試演会。「アートを通して」の「地域交流」(同右)のための講演会、勉強会や文化祭などなど、様々な企画を行っています。2013年の6月には、1周年を記念した『ねこ誕』というイベントも開かれました。
 松山城のほぼ麓です。お近くにお寄りの際など、機会があれば覗いてみては? 何か面白いことがやっているかも。あと、俳句関係のイベントを企画されている方。こちらも、会場候補に加えてみていただければ幸いです。

霙の夜ノラネコらにも眠るとこ

 さて、三月の市民劇場の公演は、グループる ばる公演『片づけたい女たち』(3月25日(火))マスコミでも活躍する、松金よねこ、岡本麗、岡田美也子の三人芝居。ぜひ、お楽しみに。



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。


目次に戻る



百年歳時記


第9回 夏井いつき

蓮根掘る水蒼穹へ試し撃つ 田中憂馬
 「蓮根掘る」作業の大きな特色となっているのが、ホースの水圧で泥を動かす「水」の存在です。ゴム長、ゴム手袋で全身を鎧い、蓮田に降り立ち、作業用のホースを手にした男が、まずはその「水」を頭上の「蒼穹=青空」へ放った、という場面。「蓮根掘る」という作業を俳句にしようとすると、どうしても視線が下に行きがちなのですが、そこを裏切ってくれているのも小気味よいですね。
 動詞「掘る」、複合動詞「試し撃つ」で7音を占めていますが、「水」「蒼穹へ」という二つの要素が良い位置に配置され、鮮やかな効果を発揮しています。冷たい青空の下、「蓮根掘」の人物の何気ない動作を、見事に活写した作品です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』11月29日掲載分)

子どもらの空へと予鈴霜柱 七七子
 「子どもらの空」と語ることで、その「空」の下にいる「子どもら」が動き出します。「へ」という助詞の効果で「予鈴」は空に向かって響きわたります。勿論「予鈴」の一語が、学校という場面やこれから授業が始まる状況をさりげなく伝えていることは言うまでもなく、言葉の経済効率も抜群です。最後に「霜柱」という季語が目に飛び込んできた瞬間、冬の朝の冷たい空気、痛いような青空、その空に響く予鈴の澄んだ音、「あ、あと五分だ!」と走り出す子どもたちの声が、一気に立ち上がってきます。
 やがて国語の本を読む声や音楽室の歌声が聞こえてくる頃には、「霜柱」の小さな光は冷たい青空に吸われるように溶け始めます。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』12月6日掲載分)

冬眠の獣空には狩の星 笑松
 「冬眠の獣」と表現するだけでは、あまりにも様々な獣がイメージされますから、一瞬曖昧な言葉だなあと思うのですが、一句の魅力は後半の語りによって引き出されてきます。
 「冬眠の獣」で意味が切れた後に出現する「空には狩の星」という措辞は雄大です。こう畳みかけることによって、狩猟の対象となる獣たちは今すやすやと眠っているよと一句は語りかけます。冬眠の獣たちが眠っている間は狩も行われず、地球上は美しい静けさに満ちているというわけです。「狩の星」は射手座でしょうか。季語「冬眠」によって頭上の星座の清浄を表現し、それによって「冬眠」の静けさと安らぎを表現する、見事な発想の作品でありました。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』12月6日放送分)

大鷲に引きちぎられたように月 マイマイ
 頭上にはちょっと歪な形をした「月」があるだけです。それを見上げている作者は、昼間見た「大鷲」の姿を重ね合わせます。「大鷲に引きちぎられた」は一種の比喩ですが、どちらが主たる季語であるかというと、「大鷲」だと考えたいですね。「大鷲」の猛々しさを「月」の姿を借りて表現した一句だと読ませて頂きました。
 試みに「〜ような月」と変えてみましょう。「ような」は、口語の助動詞「ようだ」の連体形ですから、そのまま「月」に掛かりますが、掲出句「ように」は連用形ですから下五「〜月」の下に隠された「在る」等の用言を示唆します。この1音の差が「大鷲」という存在を明確に見せるかどうかの重要な鍵。実に的確な選択です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』12月20日放送分)

あの世まで見えそうな空田を起こす 種村聖巴子
 「あの世まで見えそうな空」という比喩に驚きますが、下五「田を起こす」によって、晴れ渡った農村のいかにも春らしい空が見えてきます。季語の力とはこういうものなのかと惚れ惚れ致します。
 あの世ってのは、空の上にあるらしいが、それが見えそうなほどの上天気ではねえか、と見上げる麗かな空。「田」を耕す年月を見守り続けて下さったお天道様。今年も無事に耕せる喜びを噛みしめれば、「あの世」が少しずつ親しいものにも思えてきます。
 作者は秋田県の方だそうです。みちのくの爆発的な春へと続く、まだ早春の空は格別の美しさであろうと想像します。滋味深い一句との出会いが、みちのくの春への憧れを広げてくれます。
(第56回全国俳句山寺大会 高野ムツオ、夏井いつき特選)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


目次に戻る



句集の本棚





『象の耳』嘴朋子 著

 著者の第二句集。
  たてがみの量感を以て麦熟るる
  全身で親を待ちたる燕の子
  脱ぐやうに解く肩車梅日和
  潮に乗り吾子の水着の花咲いて
  雛の日の転がりさうな手鞠寿司
 深い愛情をもって身近な対象を見つめる作者。日々の生活の充実をうかがわせる句が多く並ぶ。
  落ち着かぬががんぼと居て独りの夜
  濁声の鴉や臘梅毀しさう
 かと思えば不安感を映し出す句も現れる。
  鶏のとさかくすみて冬隣
  短日のナース小さく風切つて
  濠端をひた走る人冬に入る
 季語が活きていて動かない、俳句の面白さを味わわせてくれる秀逸な句も多い。
  一陽来復宥めつつ象の耳
(書評:亜桜みかり)

ふらんす堂(2012年初版)
定価 2400円(税別)
全180ページ



『土雛』田口紅子 著

 『水橋』『火輪』『木筆』に次ぐ文庫サイズの全330句からなる第四句集。
 〔空〕
  天上へたよりたづさへ揚雲雀
  虹二重向かう側にも誰かゐる
 〔雛〕
  くれなゐはいにしへのいろ土雛
  ぽつかりと花の奈落となりし谷
  枯るるもの蘆原に音生みにけり
 〔遊〕
  北窓を開け龍太忌と思ひけり
  黒といふはなやかな服初ざくら
  エレベーター地中へ十二月八日
 〔水〕
  水面より空のはじまる大旦
  大鷹に信濃の空をあけ渡す
 「天地の声、言葉の声を聴きとめたい」と願う作者は、日常を言いすぎる事なく美しく立ち上がらせる。帯文を鷹羽狩行。栞を村上護。くれなゐをパラフィン紙に包む装丁を君嶋真理子。
(書評:恋衣)

ふらんす堂(2013年初版)
定価 1619円(税別)
全128ページ



『無量』五十嵐秀彦 著

 一読、最初に選んだ句は、
  空壜の中に雪降る夜の軋み
  三鬼の忌他人ばかりの靴ならび
  鰐を飼ふ青年教師夏休
  蝸牛檻なき獄を侵しゆく
 二度目に選んだ句は、
  うしろ手に菫隠してゐたりけり
  氷下魚裂くつまらぬ顔は生まれつき
  ほんたうのことは言はぬよ牡蠣啜る
  泣きながらおでんばかりを食ふな君
  てのひらに穴ありいつの日か吹雪く
 そして三度目。
  秒針の速度牡丹雪の速度
  胴太くつめたくをりし白蛾かな
  肉塊の淋しき西日射す柩
 こうして並べてみると、最初の選はみちる好み、二番目の選は気分転換、三度目は重厚、ということになろうか。ちなみに、最後の三句はすべて黒田杏子氏の「『無量』に寄せて」で推薦された20句の中に入っていた。俳句集団〔itak〕代表。
(書評:みちる)

書肆アルス(2013年初版)
定価 2000円(税別)
全200ページ



このコーナーで紹介した句集は、100年俳句計画編集室にて閲覧できます。


目次に戻る



まつやま俳句でまちづくりの会通信


第35回 文と写真 暇人

mhmの年末

 昨年12月17日、mhmの定例会が行われました。年末とあって、いつもより参加者が多く盛況でした。議題は、まる裏パンフレット広告と、まる裏キャッチフレーズについて。
 まずはパンフレット広告についてですが、営業にあまり慣れていない会員が頑張って広告を集めてきました。まる裏の広告は、企業から句会グループ、そして出場チームと幅広いのが特徴です。皆様に支援をいただき、おかげさまで昨年を上回る広告をいただくことができました。本当にありがとうございました。集まった広告費はチケット代と共に「まる裏俳句甲子園」の運営費とさせていだきました。まる裏俳句甲子園は来年も行う予定ですのでご支援宜しくお願いします。
 次に、まる裏キャッチフレーズ決定の件です。この日までに集まったのは22作。応募の整理をした私以外は作者を知らない状態の選考で、最終候補となったのが『「お父さん、どこ行くの?」「ちょっと裏まで。」』と『出るなら裏でしょ!』の二作品。「お父さん…」の作品が実は有力候補だったのですが、女性達が強い……もとい、多い定例会参加者の中で、「じゃ、お母さんはどうなの?」という意見もあり、最終的には「出るなら裏でしょ!」に決まりました。このキャッチフレーズの考案者はしんじゅさんでした。
 この頃になると喉の渇きと時計が気になっていました。そうです、この日はこの後、忘年会が開かれたのであります。
 忘年会の会場は、すっかりおなじみ、唐揚げとビールが旨い「みゅんへん」です。mhmメンバーは一部を除き酒豪揃い。ビールはもちろん、ワインもかなり飲んでおりました。詳細は本当に酔っ払ったので覚えておりませんが、某釣り初心者の編集者には熱々ぶりを見せつけられたり、みんなからは恋愛についてかなりだめ出しを受けたりと散々だったことを報告させて頂きます。ちきしょー!
 忘年会も終わり私は帰路についたのですが、キム氏はさらに広告獲得のため、JAZZ句会でおなじみのバーへ。一緒について行ったのは、かなりのワインを飲んだと思われる奉行様と野風様。この後どうなったのか、はてさて……。
 いよいよ次号は「まる裏俳句甲子園」の報告の予定ですが、出来ればfacebookやメールで今回のまる裏についてご意見を頂き、それを元に記事にしたく思います。皆様のご協力をよろしくおねがいします。 

次回は「2014まる裏俳句甲子園報告記」をお届けします。


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


目次に戻る



俳句の街 まつやま
俳句ポスト365


協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


優秀句
平成25年12月度


【霜柱】
《地》 
霜柱の農大を突っ切れば近い 初蒸気
霜柱立ちてすがやか地鎮祭 うに子
霜柱みとめてはいるにじり口  いっちょう
飛び込み営業噛みつく霜柱  ドクトルバンブー
霜柱踏んで労働基準局 ちびつぶぶどう
霜柱跨ぎ離るる寡婦の家 蘭丸
「じゅうりん」てどう書くのだか霜柱  カリメロ
霜柱ワシコフの足十六文 猫ふぐ
霜柱巨大インコの居る花屋  クズウジュンイチ

《天》 
子どもらの空へと予鈴霜柱  七七子


【室咲】
《地》 
室の花ミシンの音が日におどる  あつちやん
加湿器に少し霞める室の花 登美子
的を抜くダーツの音や室の花 みなと
室の花奥より客の埋まりきて 大塚迷路
室咲の不穏に並ぶショーケース 七七子
室咲や首へ貼り付くフェイクファー  カリメロ
消灯のロビーに吾と室の花 てんきゅう
室の花夜の秘書室を知っている 奈津
水つぽく腐つて室咲きの仕舞ひ 初蒸気
室咲がくたばりやがる歌舞伎町 蘭丸

《天》 
シャガールの年譜の長し室の花  樫の木


【枯野】
《地》 
富士といふ突起枯野の地平線  ポメロ親父
巨船めく枯野の縁の工場群 甘えび
枯野端せり上がったる墓三基 花屋
臍帯の小川の在りて枯野かな  クズウジュンイチ
枯野行く我をうかがう目玉あり 睡花
何処までが私何処からが枯野  めいおう星
笛吹いて枯野になつたつもりかよ  とおと
枯野など何度渡つて来たことか  今野浮儚
滑稽なことに枯野はそこに在る 猫ふぐ
かれのさんスープをどうぞさむいでしょ  ひろしげ6さい

《天》 
鉄筆で描く枯野のすさまじき  麦太朗


【橙】
《地》 
橙や神の名知らぬ御札棄つ 初蒸気
神鏡に映り込みたる橙よ 吾平
橙の刺のつよさよ鬼子母神 ゆらり
橙よ産んでみたしや一人でも  松蔭 眞由美
橙も男も座して腐りけり 蘭丸
橙をかかへその僧海より来し 緑の手
三寸の橙子規を慰める 小市
食べれんことないけどと橙売り 猫ふぐ
だいだいをうまとこっそりとりかえる  ひろしげ6さい

《天》 
橙あまねく清貧に甘んず  もね



2月の兼題

投句期間:1月30日〜2月5日
紅梅【初春/植物】
梅の紅色系の品種で、艶やかな色をしている。白梅の持つ、より気品のある印象に比べ、若々しい華やぎの印象が強い。

投句期間:2月6日〜2月12日
風光る【三春/天文】
よく晴れた春の日に、やわらかな風が吹きわたる様子。春になると陽光が強くなり、吹く風もキラキラと輝いて見え、景色がまばゆく感じられる。

投句期間:2月13日〜2月19日
ぶらんこ【三春/人事】
ゆさわり、ふらここ、ぶらんこ、と時代と共に名称が変わってきた。鞦韆という呼び名は、中国北方民族のものが中国に伝わって呼ばれた名だといわれる。

投句期間:2月20日〜2月26日
春菊【三春/植物】
食用に栽培されるキク科の二年草。羽状に深く切れ込みの入った葉は、多肉で柔らかい。若芽を浸し物や煮物で食べる。


《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


目次に戻る



一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成25年12月度


【冬眠】
冬眠や力を抜くと丸くなる ポメロ親父
冬眠の指反り返り守宮の手 みいみ
とろとろと足す冬眠の亀の水 さち
冬眠の蝙蝠の夢「ヒトニナル」 恋衣
冬眠のカエルお日さま呑んだ夢 ほろよい
冬眠や泥に溶けたるイボガエル 富士山
冬眠の右足裏が痒いぞよ 冬井いつき
冬眠を覚まさぬように引く野菜 あねご
冬眠や石くれ蹴れば音かすか  宇和島風花会 野地菊
神木の洞冬眠の蛇の息 菜々枝
冬眠を守る木霊のいる気配 ターナー島
冬眠の星は穴ぽこだらけかな やのたかこ
まさかの冬眠ボイラー室に死角とは  日暮屋

《天》
冬眠の獣空には狩の星  笑松


【寒林】
寒林は雲突き上げて雲送る むすびめ
寒林の楔の雨に打たれおり  宇和島風花会 山百合
迷い込むその寒林の明るさへ マイマイ
寒林が夜を引っ掻いている音よ  だんご虫
寒林や獣の声の乾くころ 花菜
寒林に向かい十二神像咆哮す 七草
寒林を統べるタクトのごとアーム 野風
冷ゆる原子炉寒林なんと暖かし 菜々枝
寒林に入り青蝶の死に遇いぬ 黒やぎ
寒林を抜けてエル グレコの聖母 流星

《天》
寒林に入り爪痕が目の高さ  樫の木


【鷲】
あの鷲はあの山までを統ぶる鷲 笑松
鷲急降下す重加速度のg 未来コオロギ
臓物を食らうて鷲の影の濃し 鯛飯
名は嵐日がなうとうと檻の鷲 菜々枝
鷲の手に掴まれそうな島のあり 甘泉
大鷲やシュプレヒコール上がる島  八木ふみ
逆光の鷲や帆布は風はらむ さち
震災千日望郷の空に鷲 逆ベッカム
哀悼や鷲は翼を閉じたまま だんご虫
鳥葬に神使となりて鷲の群れ  てんきゅう

《天》
大鷲に引きちぎられたように月  マイマイ


【社会鍋】
電飾の青の淋しや社会鍋 てんきゅう
社会鍋ゆらゆら賛美歌のビブラート  さち
慈しみ深きを奏で社会鍋 ポメロ親父
傷だらけの拡声器置く社会鍋 みいみ
ニュースではここら辺りに社会鍋  不知火
被災地の電光ニュース社会鍋  ターナー島
社会鍋吸殻ひとつ拾いけり どうだ
社会鍋荒野に月のあるごとし 朝日
社会鍋聖書に新と旧のあり 日暮屋
社会鍋マリアの像の足光る もね

《天》
マンデラの訃報聞きたり社会鍋  またた


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

2月2日
堅雪【初春/地理】
春の暖気で溶けかかった積雪の表面が、夜間の冷え込みで堅く凍った状態になったもの。

入学試験【初春/人事】
高校や大学、また私立や国立の小中学校などで、主に2月頃に、入学者選抜のための試験が実施される。

2月16日
二月尽【初春/時候】
陽暦の2月が終わってゆくこと。平年ならば2月28日、閏年ならば2月29日。陰暦に則った他の同様の季語が去りゆく季節への感慨であるのに比べ、忙しかった2月を振り返りつつ、春への期待感をあらわす季語である。

雛市【仲春/人事】
かつては雛人形や雛祭用の調度品を売る市が賑わったが、人形専門店や百貨店などでの販売が主流になると見られなくなった。


《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


目次に戻る



100年俳句計画 掲示板


 組長&編集長&組員さんの出演執筆一覧

NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  2月25日(火)11時40分〜

あいテレビ(TBS系列、全国)
 『プレバト!!』
   木曜 19時〜20時49分
※組長がゲストの俳句ランキングづけで〈隔週〉出演予定! 放送日番組欄を要チェック!

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FM愛媛
 バニラビーンズの俳句っちゃお〜!
 毎週日曜日深夜0時〜0時30分
※夏井いつきが俳句指南で出演
※FM大分でも毎週月曜21時〜放送中

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「「白魚/春めく」2月2日〆
   「いぬふぐり/白酒」2月16日〆
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)、住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。


執筆
松山市の俳句サイト「俳句ポスト365」
http://haikutown.jp/post/
 毎週水曜締切/翌週金曜結果発表

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」
※ 毎週日曜発刊タブロイド判8ページ

愛媛新聞(キム チャンヒ)
 「ヘンデス俳談」2月1日(最終回)

愛媛新聞(夏井正人)
 「今さら始める釣り入門」
※木曜日不定期掲載




句会ライブ、講演など

福岡県博多高校句会ライブ
 2月1日(土)

しまなみ海道句会ライブツアー(冬編)
 2月3日(月)
 ※菊間、遍照院で節分厄除の催しなど
申込先
 0898-52-3333(せとうち観光社)
 http://www.oideya.gr.jp/irodori/140203/index.htm

今治市吉海支所人権句会ライブ
 2月7日(金)

松山市勝山幼稚園句会ライブ
 2月10日(月)

今治国際ソロプチミスト「俳句キッズわくわくコンテスト」表彰式
 2月16日(日)13時30分〜15時
 今治市民会館2F大会議室

五十崎俳句凧審査会
 2月21日(金)

松山市堀江小学校句会ライブ
 2月24日(月)

第6回日本俳句研究会 研究発表大会
 2月28日(金)受付13時15分〜
 松山市立垣生小学校
  詳細お申込↓
 http://info.e-nhkk.net/?eid=1350290
 三浦和尚先生の公開授業、夏井いつき組長の教員研修など盛りだくさんの内容です。



目次に戻る



魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

お詫び

 本誌2014年1月号の「自由律俳句計画」において、天の句の表記の誤りがありました。

誤 アンパンのいない冬ははじめて
正 アンパンマンのいない冬ははじめて

 大塚迷路さんの句の「アンパンマン」が「アンパン」になってしまっていました。申し訳ございません。
 選評の内容、評価共に「アンパンマン」として解釈されてはおりますが、編集の最中に「マン」が抜け落ちて「アンパン」となった模様です。大変失礼致しました。



2013年12月号「選評大賞」

ふづき 「選評大賞2013」ご受賞の皆さま、おめでとうございます。皆さんの名文に、ただただ感心するばかり。森本樹朋さん、鯛飯さん、樫の木さん、深〜い評をありがとうございました。凹んだときは、この評を読んで元気を出そうと思います。
編 句の作者であるふづきさんより。選評大賞最終選考には残念ながら残らなかったものの、他にも様々な方の作品へと選評が寄せられていました。書いて楽しい読んで嬉しい。

100年の旗手へ

空 哲白さん、100年の騎手、毎月楽しく、なつかしく読ませて頂きました。土曜カルチャーへの再登場を、一同首を長くしてお待ちしています。
編 句会の仲間の活躍は嬉しいですね。100年の旗手感想募集中。

クロヌリハイク

元旦 「クロヌリハイク」最高です。どうしたら、こんな面白いこと思いつくのでしょう。
編 読者投稿とか募集したら応募あるだろうか……。

小市民?

うに子 自由律を考えようとしても五七五に……。型破りなことのできない小市民気質がちょっと悲しい年の瀬です。
編 小市民的ボヤきは自由律と相性良さそうなイメージ。そのラインでどう?

モデルがいる?

あねご 年末にあるところでそのお方に遭遇しました。お顔を拝見した瞬間にマガジンの「お芝居観ませんか?」のコーナーにあるイラストの顔ソックリで思わず「猫正宗さんじゃ!」と声をあげたくらいソックリ! イラストと猫正宗さんはどちらが先にできとったんやろ?
編 卵が先か鶏が先か。お芝居を観に行くついでに猫正宗さんも探してみよう!

去年今年

KIYOAKI FILM 年の夜、大晦日の夕方に入ろうとしています。2014年の入り口、僕は詩を書く、心構えであり、ヘタウマ俳句にしか、身をなりたてられない、情けなさ、極まれり。幸いにも、2014年、1月1日、句集出版出来て、ありがとうございます。お世話になりました。これからも、宜しくお願いします。
編 先ほどから年末、年の瀬という単語が出てきてますが、今回紹介のお便りの多くは12月20日投稿時に送られたもの。KIYOAKI FILMさんは年末に句集を仕上げるという大仕事を達成されました。上梓おめでとうございます!

一心堂 今は時代も変わり正月も随分様変わりしたように思えますが、私が子供の頃はクリスマスプレゼントなんぞなくても大晦日には母が一年に一回?買ってくれる新しい下着で新年を迎えたものです、その下着の心地よさ嬉しさ父母の優しさ想いは今でも忘れません。
編 浪花節やねぇ。父母を想って酒場で一献、てなもんで。

輝女 楽しみにしていた忘年会も終わってあっという間に一年が過ぎてしまいまた新しい年に頑張らねばと思いはしているのですが、目下ウィンドウズXPのセキュリティが終わるというのでパソコンを買い替えたら勝手が違って毎日奮闘しております。ちゃんと送れているのでしょうか……。皆様お風邪など召されませんように!
編 投稿に関してはGoogleが開ければ概ね問題なく使えるかと。新しいパソコン大変かと思いますが、気長に手懐けてやって下さい。

投稿が……

杉山久子 先月投句したのに載ってなくてがっくりでした。詰め俳句正解だったのに〜(泣)はっと気づいて今月は投句フォームから。今年もどうぞよろしく。「龍淵王決定戦」皆さん凄いです!
編 ご迷惑をおかけしております。お便りを確認後すぐに迷惑メール等を大捜索しましたが見つからず……。投稿フォームからお送り頂けると正常に届く確率がぐっと上がりますので、ぜひお願い致します。

大胆な提案

北伊作 欧州理事会議長ファン=ロンパイ氏の記事楽しく興味深く拝読致しました。欧州でも俳句が作られているのですね。嬉しい事です。さてそのファン=ロンパイ氏に漢字の俳号はどうでしょうか……「風庵論俳」なんてどうでしょう。
編 新聞をはじめ各種媒体で報じられたファン=ロンパイ氏来松。「鬼怒鳴門(キーン ドナルド)」的発想? しかし大胆な提案だ……。


100年俳句計画誌上編集会議

編 本誌も十年目を迎え、様々なご意見を参考にしながらリニューアルをはかっていきたいと思っています。このコーナーでは、皆様のお便りを紹介しながら、さらにご意見を集めつつ、誌面に反映させてゆきます。
 沢山のご意見をお待ちしています。

今月の提案、相談
複数人要約 各種原稿を送った際に「受け取りました」の一報を必ず頂きたいです。メールばかりで時代が変わったのかとも思いますが、ぜひ、よろしくお願いします。


 ご意見ありがとうございます。たしかに過去対応を失念していたことも多くございました。申し訳ございません。
 本文編集時である2014年1月20日現在、メールでお送り頂いた原稿に対しては原則「原稿拝受」のご連絡をお送りしております。今後一層対応に力を入れていく所存ですので宜しくお願い致します。


編集室 この欄への提案、質問、要望、その他は、100年投句計画投稿時のフォームに書き添えてお送り下さい。また、メールでの投稿も可能です。メールで送る際は件名を「魚のアブクへ」としてお送り下さい。
メールアドレス magazine@marukobo.com



目次に戻る



鮎の友釣り

187
俳号 樹朋

天玲さんへ 俳壇賞の予選通過おめでとう御座います。書道に、俳句に、家事に全力投入されている姿には頭が下がります。

俳号について 私が樹木医をしている事を知ったいつき組長が、俳号は「樹木医」にしなさいと言はれたのですが、それは商標登録されていて使えません。それで樹木と朋友になりたい願望を込めて樹朋としました。
 樹木医は、天然記念物の樹木とか公園の樹木等を、診断したり治療したりするのが主な仕事です。それは年に数件なので、個人的な奉仕活動として、桜の老木の子孫を残すための接木をしています。今までに二十数か所の子桜をお届けしましたが、体が動く間は続けよう思っています。

次回…鞠月さんへ 次回は、二児の育児に奮闘中の鞠月さんお願いします。土曜カルチャーの先輩で、「100年の旗手」の同期生です。


目次に戻る



告知


2月9日(日)愛媛マラソン吟行会

 今年も愛媛マラソン吟行会を行います。
 マラソン部蛇頭部長をはじめ、ねこ端石さん、鉄人さん、一走人さん、ほろよいさん、ドンキーコングさん、匠磨さん、キム編集長が参加予定(編集室把握情報)。応援は当日参加も可能ですが、事前に登録していただくと、事前に連絡が出来、大変助かります。
 多数の参加お待ちしています。

壮行会
(当日午前8時:愛媛新聞社前集合)
 出発前の選手へオレンジハチマキ配布式と激励

主な応援ポイント
  1 平田交差点付近(往復)
  2 パルティフジ夏目店前(往復)
  3 ゴール地点(堀之内)
 ※各応援ポイントでは句会旗、手旗などで、応援します。
 ※移動方法、防寒対策など各自宜しくお願いします。
 ※情報はマルコボ通信やメルマガ、朧庵などで随時アップします。

100年俳句計画マラソン部
参加フォーム(ランナー&応援)
http://marukobo.com/marathon/



100年俳句計画大お花見大会
日時:3月30日(日)8時〜20時
場所:道後公園内(松山市)
参加費:300円(場所代など)
開催時間中ならば、いつ来ていつ帰ってもOK!
食べ物、飲み物は各自ご持参下さい。
雨天の場合も道後公園内のどこかで決行!



100年俳句計画投稿締切カレンダー

2/20(水)
 100年投句計画
http://marukobo.com/toukou/
 魚のアブク
 100年の旗手推薦募集

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


目次に戻る

編集後記


 去る1月11日、「夏休み句集を作ろう!コンテスト(「子どもコン」)」の表彰式を開催した。入賞をして喜びいっぱいに参加している子どももいれば、最優秀賞を逃して悔しがっている姿もあり、夏の俳句甲子園に参加する高校生と同じように、子ども達が全力を尽くして「子どもコン」に挑んでいたのだと、改めて思った。
 そんな中、「子規博特別賞」を受賞した野村颯万くんのお母さんから頂いた手紙が、とても心に残った。野村家での俳句の出会いは、颯万くんのお姉さんが通っていた小学校で、校長先生に貰った「子どもコン」の応募冊子。真っ白なその冊子に、悪戦苦闘しながら取り組むことで、新聞に俳句を投稿したり、句会ライブに参加したりして、家族や周りの方々も俳句にとりつかれていったとのこと。
夏休みの1句ではなく、40句を苦労して作ったからこその達成感が、子ども達にとってかけがえのないものになったと綴られていた。
 また、小学生にも満たない颯万くんが句集を応募できたのは、お母さんが丁寧に子どもの言葉を拾って、褒め続けたとのこと。
 子ども達をしっかり受け止め、見守る大人がいて、初めて未来に繋がるのだと実感した。
(キム)


目次に戻る

次号予告 (196号 3月1日発行予定)


次回特集
第12回高校生以外のためのまる裏俳句甲子園
結果報告!
キャッチコピー「出るなら裏でしょ!」(考案:しんじゅ)



HAIKU LIFE 100年俳句計画
2014年2月号(No.195)
2014年2月1日発行
価格 600円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子