100年俳句計画1月号(no.194)


100年俳句計画1月号(no.194)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
体内の春 ひなぎきょう


特集1
新春対談 ハイクライフマガジン『100年俳句計画』はこうなる!


特集2
生まれてから現在までの代表三句による 代表句集2014


特集3
俳句対局 第二回龍淵王決定戦



好評連載


作品

百年百花
 谷さやん/行広遊人/大塚迷路/マイマイ


100年俳句計画作品集 100年の旗手
 樹朋/たま/鞠月


百年琢磨 しなだしん

新100年への軌跡
 俳句/若狭昭宏/川又夕
 評/とりとり/桜井教人


選者三名による雑詠俳句計画
関悦史/阪西敦子/加根兼光


へたうま仙女/杉山久子

自由律俳句計画/きむらけんじ

詰め俳句計画/マイマイ



読み物
Letter from spider garden/ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
ホンヤクサイホンヤク/翻田訳蔵
お芝居観ませんか?/猫正宗
百年歳時記/夏井いつき
mhm通信/暇人

読者のページ
俳句ポスト365
一句一遊情報局
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




表紙リレーエッセー


体内の春
ひなぎきょう

 Iターンで愛媛に居を定めて33年、毎年この時期になると、真冬の畑でハコベやオオイヌノフグリ、ホトケノザなどの春草が青々と繁り続けていることに感動する。夜の間に凍てついても、日中のわずかな陽の光で生き生きと柔らかによみがえるのだ。
 それらの青草をたくさん食べている我が家の200羽ほどのニワトリたちは、飲み水も凍る1月半ば頃、かすかな春の兆しにいち早く反応して産卵率が上り始める。厳寒の朝、濡れ濡れと産み落とされたばかりの卵は温かくまろやかな命そのものだ。
 その卵を食べ、旬の野菜を食べながら、私の裡で春を迎える準備が整ってゆくような気がする。
 胎児がゆらゆらとまどろむように、今、春は冬の体内で育ちつつあるのだろう。


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特集1
新春対談

ハイクライフマガジン『100年俳句計画』はこうなる!




 昨年末、衝撃の宣言によって終了した「放歌高吟」。その真意と今後の本誌『100年俳句計画』の方向性を、キム編集長と夏井いつき組組長に「一句一遊」のディレクターであるやのひろみさんを交え行った。結論はいかに。


今後も俳句に関わる様々な分野について発信をしてゆく(キム)



キム チャンヒ(以下、キム) 先月号の「放歌高吟」を読んで、マガジンの今後に不安に感じている読者がいらっしゃるようなので、今回その意図をはっきりしようと、この企画になりました。
やのひろみ(以下、やの) 動かないと変わらないのでね(笑)。
キム 今回は、やのさんに一読者として、あるいは、ラジオ番組『一句一遊』の送り手として、疑問に思うことなど聞いてもらえたらと思っています。
やの 『一句一遊』が始まって、12年なんです。干支一回り。
キム へー、スゴイですね。
夏井いつき(以下、夏井) ありがたいことです。そういう意味では、ひろみちゃんも俳句の種まき運動の非常に中核に近いところで手伝ってもらっていると思っています。
やの 中核じゃないですよ! 私は俳句を作れないので。
キム 中核でしょうよ。
夏井 いつき組の初っぱなの活動の大事な部分に、『一句一遊』という番組は抜き差しならない形で存在してますからね。
やの そう言って頂くと、担当制作者としては嬉しい。最初全然投句がこなかったですからね。
夏井 ほんとに。
やの 一読者として、一番聞きたいところは、この雑誌を作っている人たちの目指している方向は、何なのかというところ。
キム まず2012年1月号で、雑誌名を『いつき組』から『100年俳句計画』に変えました。それは、この雑誌の目的が、単に優れた俳句作家を生み出したいというだけではなく、俳句を使った観光やまちづくり、福祉 医療、教育 文化への活用など、扱う分野が非常に広くなってきた。
やの つまり、『いつき組』という名前では収まりきれなくなったということですか。
キム はい。だから、俳句に関わる様々な分野について発信をしてゆくという点においては、今後も変わることはありません。そこでまずは全ての要である、新しい俳句作家を生み出す仕組みを作ろうとしています。
やの もともとこの雑誌は、俳句を楽しむ人たちの広場という設定でしたよね。
キム はい。そういう広場であるなら、夏井いつきという一人の選者によって、俳人を押し出してゆくという形は相応しくないと思い、2006年6月号から読者の人気投票で連載者を決める「100年の旗手」の連載を始めました。そして更なるスキルアップの場として、2011年に松山市教育委員会と共催で「大人のための句集を作ろう!コンテスト」(以下「大人コン」)を開催し、翌年にはその選考会員による「百年百花」の連載も始めました。一つ一つステップを踏むことで、次の世代の俳人がだんだんと育まれているところです。まずこの雑誌が、新しい作家の芸術性の高い作品を発表する場となってはじめて、観光 まちづくり、福祉 医療、教育 文化など、俳句を使った幅広い活動も広く支持されると思っています。

「いつき組」と「100年俳句計画」との関係を棲み分けした方が、皆の頭も整理がつく。(夏井)



夏井 今、読者に混乱を招いているのは「100年俳句計画」という活動の志と、「いつき組」というかつて誌名でもあった集団と、志の名前であったはずの『100年俳句計画』という雑誌、それを出版しているマルコボ.コムという会社との関係。「100年俳句計画」という志でマルコボ.コムという会社が、俳句を使って観光やまちづくり、福祉 医療、教育 文化など、様々な事業を取り組むとき、その中心に「いつき組」という結社(のようなもの)があると思う方が沢山います。「100年俳句計画」という志の活動を、いつきさん達が会員集めに派手にやっていると思われてしまい、志を純粋に受け止めてくれる俳句の世界の方は、少ないですね。むしろ、俳句をやらない方の方が、この志をす純粋に受け止めて下さる。
やの ちゃんと受け止めてくれない方の声は、無視できないのですか。
夏井 無視しても構わないのだけれど、逆に「いつき組」と「100年俳句計画」との関係を棲み分けした方が、みんなの頭も整理がつくと考えました。この雑誌、俳句のことだけを語っている雑誌じゃないんですよね。俳句を使った人生雑誌みたいな。(笑)
キム そうですね。
夏井 そういうところでこの雑誌が活動をしようとしているのに、普通の俳誌と同じような見方をされると、またそこで齟齬が起こってきて……。もっと分かりやすい話でいうと、普通の俳誌って、購読することは、その俳誌の主宰に弟子入りするのとイコールなんですね。他の結社で勉強されている方が、「100年俳句計画」という志に賛同して雑誌を購読始めると、クレームがつく場合もある。
やの そういう誤解を手っ取り早く取るには、夏井さんが距離を置くのが一番いいということですか?
夏井 そういう側面もあるということですね。一番の理由はここでやることが、あまりにも多岐に渡り始めたので、俳句作品を作ったり、俳人を育てたりする、純粋な俳句の部分だけを育ててゆく機関として、俳句集団「いつき組」が外にでようと。
やの マルコボ.コムと俳句集団「いつき組」が一緒に、「100年俳句計画」という志を掲げる両輪になり得るということですか?
夏井 そのとおりです。マルコボ.コムは俳句を使った社会貢献会社みたいなものなので、俳句を作ることにだけに特化した会社ではない。
やの それが目的ではないということですね。
夏井 そう。さっきキムさんが言った、育ってきた人にどう活動して貰ったり、どんなステージに立って頂いたら、その人たちが生き生きするだろうという思いを、俳句作品のことだけではなくて、「100年俳句計画」という志の中で、適材適所提案していきたいということです。

句集シングルという形で自分が表現したい作品を発表できる。(夏井)



キム 去年は沢山の試行錯誤をしながら、句集スタイルという新しい考え方の句集を作りました。
夏井 こういう形で句集を出版するのは、今までにないスタイル。
キム 去年の春に登場した句集スタイルによって、20種類以上の句集を世に送り出しました。去年3月号の特別企画でも述べましたが、句集スタイルを使えば、俳句作家はいつでも自由に、自分の作品を世に問うことができる。一生に一度しか作れない句集とは違って、斬新な挑戦も出来るし、失敗してもまたチャレンジできる。これって、俳句の世界を変えるかもしれない、かなり画期的な企画だと思う。
夏井 「放歌高吟」をやめると、自分の作品を発表する場がなくなってしまうのに、そこを踏ん切る気になったのは、句集シングルという形で如何様にでも自分が表現したい作品を発表できると思ったから。年間二冊ぐらいは作品を出してゆけるし、それがまた新しい文化として、広くアピールできたらカッコイイよね。

この雑誌を「みんなのもの」にしたい(キム)



やの これからマガジンは、どのようになっていきますか。
キム シンプルにこの雑誌をみんなのものにしたいと思っています。
やの それはよく分かります。みんなのものにするために、2014年はどんなことをやりますか。
キム まつやま俳句でまちづくりの会の活動や大垣市で取り組んでいる俳句の事業などを、より広く紹介してゆこうと思っています。また、福祉の現場で行われている句会を紹介しながら、俳句が人の心にどのように作用してゆくのかを、丁寧に伝えてゆくこともしたい。俳句初心者が楽しく俳句の歴史を学べるページも企画中です。また、愛媛マラソン吟行会も、「俳句ポスト365」と連動させ、今までとは全く異なるスケール感で、進化させてゆきますよ。
やの うん、うん。
キム またこの雑誌を信じてスキルアップして来た方に対する誌面も、マガジン化200号の頃をめどに作ってゆきたい。いつきさんの蒔いた種を、皆がここに集まって未来に向けて育ててゆく、ハイクライフマガジンを目指します。
夏井 「俳句を使って何ができるか」という命題に、あらゆるジャンルで挑むマガジンに育って欲しいし、その試みや成果をお伝えしてゆくこともこのマガジンの使命だと考えて欲しい。
やの 大きな役割ですね。期待しています。


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特集2

生まれてから現在までの代表三句による代表句集2014



 俳句マガジン「100年俳句計画」192号、193号にて募集した「代表句三句」をまとめました。
 各自、生まれてから2013年11月30日までに作った俳句の中から代表句を三句選び、送って頂きました。
 掲載順番はコンピュータでシャッフルし、ランダムにしてあります。
 各コメント中の数字(1.2.3.)はそれぞれ、一句目、二句目、三句目を示しています。



 むめも(59)
淋しさに名前をつける半夏生
海の日があるなら空の日は今日ぞ
金秋や一角獣に触れて恋
初めての代表句です。百年の旗手に参加させていただいた幸運と、リンダさんと州麻子さんと空さんに感謝の3句を選びました。

 睡花(50)
春愁や亀にも臍があるという
ガラス戸の音は小鳥のねだる音
烏瓜が夕空をすうて夜になる
昨年はなかなか気持ちが俳句に向かわず! そんな昨年の句から選びました!

 浜田節
夭逝の友の墓石に花の雨
初蝶の翅しばらくは風のまま
もう風のままにはならぬ夏の蝶
俳句と出会って十年、今年はまだ初期の作品の中から選んでみました。これからの人生も俳句を楽しんでいきます。

 逆ベッカム(57)
百舌鳥鳴けばどこまでもどこまでも空
風に聞くジャスミンのこと妻のこと
風は椿をささえているのかもしれぬ
空 風の俳句が好きなようです。

 こぼれ花(65)
土佐刃物いよいよ青し天高し
無口なる猫と満月眺めをり
さらさらと砂のこぼれて終戦日
1.ねんりんピックで特選を頂きました。やっぱり今年はこの一句でしょうね。変化の激しい1年でしたが2014年は明るい話題がありますように。

 れんげ畑(62)
開帳に合わせて予約旅の宿
石段や金刀比羅宮の秋高し
波紋あり元を辿れば目高なり
1.一句一遊に投句した句です。2.松山市俳句ポスト365に投句した句です。3.教室で投句した句です。

 青柘榴(56)
ゴシックの影連れ歩く大暑なり
そこそこの知り合いと食う穴子飯
冷奴日本一の低き山
一つ入れ替えて、しっくりする感じです。

 ぴいす(48)
この肩に静かにつきし毛虫かな
仏飯の湯気まっすぐに夏の朝
稲刈りを終えし田んぼに犬放す
何気ない毎日の中で、近くにある自然や動物達とのふれあいの中で、感じるままに句を作り続けたいと思います。

 あらた(53)
初夢は起承転転転転と
父の日の上座に犬の座りをり
父と子の高さの違ふ夏の空
今年、気に入った三句です。

 小木さん(60)
どうせ死ぬきっと死ぬ妻似の金魚
しかたなく妻のかわりに飼う金魚
頬白の無職の人の家に来る
俳句のようなものを始めて苦節三十年。いまだ「俳句」に到達できず。俳句ポストに出した「俳句」をとりあえず代表句にします。

 そお(6)
あとなんぼんぬけたらにゅうがくしきですか
はつゆきを口あけてまつにちようび
おつきさまかがやきながらねているの
おねえちゃんにまけないぞ。

 親タカ(56)
コスモスの背丈下枝のランドセル
冬蝶のギザギザポロポロ立っている
自転車に乗り左手は春の風
つくづく、自分は齢「小学五年生」、いくつになろうと。将来何になろうかなあ……と。その人らしいその年令を仲間うちでは「生涯年齢」と呼ぶ。

 ほろよい(64)
境内にでんと大鍋小豆粥
寒食の竈に尖る塩の山
咲くように皿に鰆の奉書焼
今年も一句一遊の句。食べ物の季語でまとめてみました。

 美和(51)
日本に鬼の伝説日雷
ヒロシマと片仮名書きをして晩夏
寄せ書きの色とりどりに卒業す
今年の紅葉は昨年に比べて色鮮やかに思います。毎年、毎年、芽吹いて、紅葉して、落葉して……。そういった季節の移ろいが年を重ねるにつれて、より鮮やかになっていくように思います。

 八十八(57)
スケートを報じニュースの華やげり
桜満開声太き人着任す
今宵五隻連れて鵜舟の下りけり
1.一句一遊初めての天。2.雑詠俳句計画地入選。3.まつやま俳句ポスト365地入選。

 未悠(13)
紙飛行機なら行けるあの夏の海
革命の終わり赤い赤いポピー
凍星を閉じ込めサクマドロップス

 七草(63)
夏の夕母は何処へ帰ると云ふか
みしみしと睡蓮生まるる午後
縫ひて絞り縫ひて絞りて初時雨
母への一句と 「自由律俳句計画」「俳句ポスト365」で 初の天を頂いた二句です。もっと俳句を楽しめるようになりたいと思います。

 はるを(72)
島影に消ゆるタンカー春浅し
水神の祠荒れたり霙降る
ゆうすげの花に重なる伊予絣
いい句が作れませんが「100年俳句計画」に元気をもらって頑張っています。三句目は「第六回えひめの俳句大賞」で入選をいただきました。

 ケンケン(42)
元旦の十キロマラソン完走す
新年度俳句つづける意志固め
人溢れをる大阪の街薄暑
毎年、元旦から走って「健康維持」を目標にして、春が来るたびに、新年度も俳句をがんばろうと思います。

 柊つばき(64)
百年の宿にきこえる三光鳥
講釈は長し母の尺取嫌い
さきなます母はさかな屋二十年
最近のんびりしすぎて、なかなか俳句が出来ませんが、三句とも一句一遊に出した句です。

 鍛冶屋(48)
豆ごはんあした補助輪外そうか
小綬鶏に呼ばれようとも鎌止めず
湯豆腐や日本に新島噴き上がる

 もんきち(57)
除夜の鐘神社もうでに猫つれて
ストーブの上でピザ焼く四日かな
愛犬の目をつぶらせる冬の雨
2013年1月、19年連れ添った愛犬を見送りました。

 紗蘭(15)
中心の不透明なる氷菓食む
スプーンの中の世界の日永かな
帰国する朝五時冬天の匂い
1.雑詠欄で天に選ばれた句。2.俳句ポストで初めて地に選ばれた句。3.中学校最後の句集の題にも選んだ、留学先から日本に帰ってきた時の気持ちを詠んだ句。昨年もたくさんの人に支えられた感謝の年でした。

 西条の針屋さん(52)
返信の遅きと覗く春の窓
水鉢に浮かぶ故郷や夏の月
一人居の内定通知寒の薔薇
昨年の代表句から2句替えました。今回も「たんぽぽ句会」に出した俳句です。

 亜桜みかり(52)
落下するやうに桜の空へ鳥
ワタクシノ秋思ノタマゴトリオトス
星静か船首深秋へと傾ぐ

 鞠月(36)
ドロシーも魔女も蜜柑を喰う楽屋
しばし持つ懐炉赤子に触るるまで
戦意無きこと告げ蜘蛛を追い立てる
自分が気に入っていて、しかも人様に評価をしていただける句というのはなかなか無いものなので、そういう句を代表句として選んでみました。

 杉本とらを(53)
ゴム長のタップダンスや梅雨晴間
お袋の前では外すサングラス
風呂桶の大波小浪浮いて来い
1.晴れ間が嬉しくて、タップダンスの真似事する、子供?大人かな? 2.どんなに意気がって、カッコつけてもお袋にはかなわない…。3.風呂桶にばしゃばしゃ波を立てて、子供に帰ります。

 すな恵(47)
雪積もる巣らしきものの名残にも
銀漢や鍵は裸にしてかへす
その雲を失ひながら秋天は

 まっことマンデー(62)
ハーレーのドッドドドドド花の風
夏近し十一匹の母強し
熱気球ぷあぷあと鷹鳩と化す

 めいおう星(55)
ほととぎす星は研磨に出しました
夜盗虫もの喰ふ音の満つる星
金魚水葬手折りて流す野の花も
なかなか進歩が見られません。三句中二句がカムバック句となってしまいました。

 樹朋(69)
給油待つギリシャの巨船大南風
吾亦紅絵皿に残る妻の色
青墨の淡きを宿す深雪かな
いずれも、ホームグランドの「土曜カルチャー」で、昨年好評を戴いた句です。

 魔心地(43)
子に切られ身を硬くする夏野菜
制服に容姿追いつく雲の峰
名の読みを正せぬままに茗荷の子
ライバルはこども達。脱付き人!

 てんきゅう(55)
五色幕風蹴り上げて御開帳
合歓咲くや皇后様にある愁眉
天空の墓目印は烏瓜
2013年に【天】をいただいた3句です。1.と3.は一句一遊、2.は俳句ポストです。とても充実した一年になりました。感謝です。

 小市(63)
ベランダで腹見せ蝉の大往生
何匹の蟻を踏んだか六十歳
溶けてなほ抱き合つている雪の像
蝉の句は、はじめて句会に参加した時(2007年)に作ったもの。蟻の句は「金子兜太卒寿記念講演会」で入選したもの。兜太さんから「この句の作者は奇妙な人なんでしょうね」というお言葉をいただきました。

 猫ふぐ(56)
まず猫の舌に木枯吹くという
ゆあんと枝跳ね上がり赤い椿が落ちた
淋しさは皿に林檎というかたち

 杉山久子(47)
かほ洗ふ水の凹凸揚羽来る
糸とんぼ糸のからだをかさねをり
傘の柄のつめたしと世にゐつづける

 蓼蟲(66)
きさらぎの曇り重たしかうもり塚
春光や影の動かぬ風見鶏
朝凪や鳴門は旅の途上なる
俳句ポストで天を頂いたのを機に総入れ替えした。いずれも旅の寸景である。

 レモングラス(66)
椎茸を干し薬膳となす漢
八朔や小豆飯蒸せ鬱払へ
指笛はパーマ屋ゆんた棕櫚の花
昨年一年を思いおこせる句を選びました。

 八木ふみ(57)
休校のピアノへ誘ふ夏の蝶
法師蝉事件を背負ふ銀杏の木
初蝶の光寄せ来る能舞台
昨年作った三句です。1.金子兜太先生の特選。2.黒田杏子先生の特選。3.一句一遊の天。

 香(69)
黄沙降る曖昧模糊の列島へ
夕顔の千年の香の衰へず
島々のどつしり重き秋思かな
1.2009年2月国際俳句フェス筑紫磐井先生の特選、2.第5回道後俳句塾黒田杏子先生の特選、3.2006年島(中島)サミット八木先生の特選を頂きました。どの句もその時の私の思いが入っていて大切にしたい句です。

 山野遊造(73)
家訓の弐頭寒足熱頭巾脱ぐ
福達磨東京証券取引所
布団干す仁丹平型体温計
己の脳味噌を使わない句です。短冊に書くときには手を使います。

 てん点(65)
スカーレットは憧れだつた鰯煮る
星の入東風真珠は揺れて生まれたる
日日草点字タイプのベルちさし
俳句を始めて間もなく5年。初めて選んだ「生まれてから現在までの代表句三句」です。

 KIYOAKI FILM(36)
イエス信ずマントルよりも熱い暑い
全身にアイシャドーつけたい
受難週ぼくも祈れば月のうえ
句+日常=五七五七七以上、五七五七七以内=五七五暮らすyZ=五七五 KIYOAKI

 あきさくら洋子(65)
お話は伺いました栗羊羹
霜降や心の溶ける明日を待つ
バッタにはバッタの都合跳びません
今年のお気に入り三句です。

 渡辺瀑(53)
海からの雪優駿の静養舎
虎落笛に雑じりて強き硫黄臭
降りそそぐ木霊や眠き袋角
あれれ、2013年に発表した句は2〜3句しかないではないか。今年は句会だけではなく、表に出なければいけないのかもしれない。

 一心堂(54)
砲台を灼きて馬関の波荒らし
北吹いて海鳥白き石となる
海薫る鯵の醤油を弾く夜
昨年も俳句のおかげで楽しい一年を過ごす事が出来ました、念願の松山行きも果たせ今ではすっかり松山にハマっています。組長はじめ皆様今年も宜しくお願い致します。

 久乃(28)
命日を忘れてはねる雪うさぎ
シャガールの青き性欲星月夜
ふくろうふくろう頭痛薬の苦き昼
昨年は衝撃的に俳句がダメだった。

 ひまわり(12)
被爆地や幼き記憶葉月潮
避難放送とわになりやまぬ冬
君と犬抱き合って夏の死
原爆の被害を受けた方にささげます。

 とりとり(56)
汗の子のきょうの冒険聞いてやる
ごきぶりでなければ美しい茶色
震災記念日水がこんなに重いとは
去年は更年期のせいもあって、こころが俳句から離れていきそうでしたが、なんとか踏みとどまった感じです。さて今年は?

 お手玉(79)
猟期終るあの湧き水の美味しこと
氷室開けば百年臭き匂いかな
初時雨揺るるなゆるるな蔓橋
1.2.は一句一遊の、3.は俳句ポストの金曜日に選んでいただきました。

 一走人(63)
歯並びの馬鹿正直に白い秋
嘘つきの魚座B型白うさぎ
嘘少し混ぜて無月の文を書く
今年は嘘と本当でまとめてみました。

 省三(84)
天空も冷たかるべし山ざくら
山ざくらのこまかきひかり魂しづめ
八十路も半ばとなり
花木槿ふぐりのかるくなりしかな
従来の二句に加え、三句目は新しい句柄の句を作ってみました。

 しんじゅ(58)
男衆の鰯のように戦死した
いりこ干す歯科巡回の船着きぬ
被災地の犬貰ひたる初桜
『松山はいく』のガイドとなり3年となりました。3.は『わんこはいく』というイベントの思いでの一句です。

 加根兼光(64)
花びらを吹く息青きほど細し
鳥類に小さき頭蓋日雷
雪深し私に聞こえにくき耳
恋衣さんのお陰で大きな季語、雪、花、月、そして鳥という競詠が出来たことは昨年の幸せな成果だった。そこから生まれた句集スタイルが2月1日に出る。新しい一年が新しい句を生む年であることを期して。

 ぱむだ(44)
ホットクのぬくみ釜山の長閑かな
塩引きの鮭の尾の身の辛さかな
我が子にはみどりと付けん夏木立
「俳句の缶づめ」や「俳句ポスト365」で上位に採っていただいたもの三作です。しばらくぶりに一つ入れ替わりました。自称「昼休み俳人」として,これからもゆっくりがんばります。

 のんの(8)
色あせた水着ターンはまっすぐに
飛行機雲右が私の夏の空
星ばかりさがし三日月横向いた
楽しんで俳句をよんでいます。

 柊ひろこ(61)
春昼を牙だるき狼でゐる
狼がモーツアルトの名の中に
狼疾や外套を着て彷徨へる
子供の頃、シートン動物記の『狼王ロボ』が、TVアニメ『狼少年ケン』が、大好きでした。飼い犬にチッチとポッポという名前をつけたぐらい……。

 都築まとむ(52)
夫いつか踊子草に跪く
富士山の黙や那由多の蟻を飼う
東京や眠りの浅き瑠璃蜥蜴
1.今まで夫を詠んだ句はあまりなかった。夫へ祝 就農の一句。2.百年百花の連載は楽しかった。蟻の句は50句くらい詠んだ。3.句集Styleで句集を出した。2013年は実りの多い年だった。

 笑松(57)
蓮の実や水豊かなる王の国
国若し町に蝿取リボン増ゆ
ステテコや日本の明日を信じなさい
「100年の旗手」連載の機会を与えていただき、構成の奥深さや、新たな気づきに触れることができました。いろいろなテーマで俳句を楽しみたいと思っていますが、今回は、繋がりを少し意識して選んでみました。

 ヤッチー(65)
寒凪や息子に譲る渡し船
襟巻の狐己の尻尾噛む
男かも知れぬ銀座の雪女
1.第二回瀬戸内 松山写真俳句コンテスト課題句部門で最優秀賞をいただいた句は宝物です。2.3.は冬の季語から選んだお気に入りです。

 キム チャンヒ(45)
冒険に出ようぜ小鳥が来てしまう
街の落葉がすべてハートのA
音楽の溢れ地球は蜂の星
三句読まれただけで、その作者が誰なのかを知られてしまう、そんな俳句作家を目指して。

 空(58)
踏みて来し草に薄荷の混じるらん
砂粒や春草挟みゐし手帳
有明を月草のあを点り初む

 山の雪(71)
老優の指さす先に烏瓜
黒豆の臍光りおる蒸饅頭
猟期終え今日は農夫の目に戻る
1.は映画の1シーンとして思い浮かんだ句、2.は家で作るおやつを思い出して作った句、3.は東北にいるまたぎの生活を思い出して鋭い目と優しい目を対比させて作りました。

 朗善千津(54)
包丁を研いで夫の雪を待つ
断食の一日蝶々を眺めをり
富士を見ずに帰りし人や花の雲
雪に喜び、蝶に癒され、富士山を包む雲を楽しむ。今年もそんな一年にしたいです!

 夏井いつき(56)
かつて龍でありし山ざくらと聞きぬ
重力を離るるさびしさに蝶は
この団栗ドナルドキーン氏に似たり
句集シングル『蝶語』『龍尾』から一句ずつ。さらに、できた瞬間から愛してしまった一句を加えて、今年の代表句とします。表現することの楽しさにこんなにワクワクした一年は、久しぶりでした。

 人日子(67)
蟻の道我もと言ふ勿れ
青芝に犬放たれて空を追ふ
班長の歯磨き早いキヤンプかな

 権ちゃん(64)
茶柱の斜めに沈み冬に入る
カタカナの雨が降ります目高の子
ひらがなの風が吹きます花蜜柑
毎年オロオロと3句選んでいます。「これが代表句です」と胸を張って言える句を目指して精進します。

 あおい(56)
朝まだき屋根付き橋の雀の巣
桜狩両手に遊ぶ沢の水
小満やたふたふ満つる瓶の水

 野風(58)
明滅の北辺にまた花林檎
心臓へ鳥影降つてくる薄暑
月今宵神事のごとく出汁を引く
今年は思いがけず百年の旗手を拝命し、代表句の一句を入れ替えられる幸運を得ました。感謝。

 だりあ(71)
春の月もぐらの罠の濡れてゐる
夕焼や海に遊んで畑にも
せはしきは寡黙なる指大根蒔く
相棒の助手である畑での三句です。

 だいあ(10)
ふうわりと春日傘飛ぶ良いウワサ
春すべてキャッチしそうな大きな巣
山ありが古地図の中に迷いこむ
キムさんの絵を二枚ももらえて、素敵な一年でした。

 藤実(37)
まづ光のびて生まるるしやぼん玉
水仙の丘のうねりの果てて墓
毛糸編むドヴォルザークの星空に

 カシオペア(65)
茶の花のポタリと落ちて裏表
虎が雨おべろこ谷の五輪塔
生き様を大樹にからみ葛の花
金曜日に残った句と句会で五点句になった句をあげてみました。

 なゝ(53)
けふはどうかしてゐる鞦韆こぐ
錦秋を拡げ着陸アナウンス
太刀魚の銀は傷つきやすきいろ

 まほろ(37)
新涼や影の下地に塗る紫
桔梗の折鶴ほどに尖るかな
初星や連結解かれゆく列車
ここ何年か代表句の入れ替えがありませんが、三句とも、年月を経た今でも自信を持って出せる、まさに代表句。

 州麻子(53)
もし父が真冬の杉であつたなら
折鶴の胸はからつぽ春の星
翅汚し合うて秋蝶つるみけり
昨年は俳句以外の創作活動に一定の評価をいただいた。でも、俳句やってなかったら小説書くなんてこともなかっただろう。俳句は世界を広げてくれる。

 十亀わら(35)
椿まで息を止めあう遊びかな
比喩捨てて青き菫を摘みにゆく
夏きざす子はさびしがる語をもたず
昨夏、ほにゃほにゃ泣きながら次女が生まれた。二歳の長女は、私にまとわりつきながら「だっこしてほしいの」とねだる。さびしいと言わない小さな身体。小さな指。日差しが眩しい。

 香奈(30)
熱の子に春満月は歌うだろう
帝王切開の痕に台風触れゆけり
あにいもうとぶらんこ一つしかないの
昨年、句集シングル『線路とぶらんこ』を出すことが出来ました。そこからの三句です。いつか、句集アルバムを出せるよう、今年もあせらず楽しくいきたいと思います。

 松ぼっくり(73)
開帳に集ふ善男善女の手
ばら寿司を問へば即座に鰆てふ
霜降の街灯鎌のごとく痩せ
句は一年をふり返って選びました。私にとって俳句の学びは今なお遙けき道程です。今年もどうぞよろしくご指導の程お願い致します。

 駝楽(55)
こだわりも箪笥に仕舞えるような春
船虫と日に一便の船を待つ
じじばばとじじばばがいて七五三
オフィスが東京の深川にあり、通りすがりの芭蕉の座像に週に何度かご挨拶しています。俳句との縁を感じるひとときです。

 エノコロちゃん(58)
浮塵子湧く弔いの列行くあたり
父葬送る夜の浮塵子のさわぎだす
山の風谷風川風ちんちろりん
1.2.「一句一遊」連続投句実に7年1ヵ月半目で初天をいただいた句。今も読み返して10年の介護と亡父を思い出してしまいます。組長はじめみなさんの温かさがとても嬉しかったです。3.「一句一遊」15金から3年5ヶ月ぶりに第16金に選んでいただいた一句です。

 ふづき(52)
アコーディオンひらいてとじて鳥の恋
たんぽぽや猫の柩は紙の箱
医師へ胸開けアネモネに黒の蕊

 ちとせ(25)
タバコ吸う前にただただバナナ剥く
芯固き香草粥や初時雨
セロリ噛む思春期通り過ぎ大人
昨年1年というか、9月からのんびり作句が楽しくなりました(笑)。

 三瀬あき(45)
ゆれてゆれてカーテンは春潮
耳の水こぽんとあふれ原爆忌
落ちた落ちた恐竜の尾に月落ちた

 雪花(62)
筍の溶岩のごと噴きこぼる
古椅子は尻の形に山眠る
朝凪や海は沖から目を覚ます

 鯉城(77)
十二月八日時計の螺子を捲く
喜怒哀楽すべて健全はだかんぼ
亀の鳴く群を写真に写しけり
1.俳句界 大串章特選、宮坂靜生 角川春樹 橋爪鶴麿佳作。2.愛媛新聞 小西昭夫特選。3.愛媛新聞 小西昭夫特選。

 ふーみん(41)
満ち潮のぬるき水飲む鯊を釣る
金木犀の奏でる音はフォルテ
冷たき風の走る丘にいる猫

 台所のキフジン(58)
今年からキャンドル隊へ昇格す
夏に入る君傍らに居らずとも
短夜の深夜映画や外は雨
1.一昨年の12月音俳句で最優秀に採っていただいた句です。2.俳句界で特選をいただきました。3.俳句あるふぁ2次予選通過の句です。

 正人(27)
排気筒ふるはせ野焼見てをりぬ
刃を吸うて水蜜桃の輝くよ
夢捨てる感触冬虹へ放つ竿
昨年から二句残留で一句チェンジ。三句目は愛媛新聞「今さら始める釣り入門」掲載用に作った句のお蔵入り。2014年は釣り人を目指す一年だ!

 コナン(64)
父の舟乗るという子も卒業す
女は狩りに出よ極月の空へ
月が出ている人生はケセラ セラ
私の残りの人生はこの句の如く。

 緑の手(58)
若鮎の水脱ぎ捨てるごと昇る
肺が万緑に吸いつくされていく
金糸雀色の嬰のしやつくり秋うらら
選者3名の選句で特選に取っていただいた句、初めて作句した自由律俳句や、ほとんど作れない孫の句から選んでみました。俳句を愛し続けていきたいです。

 みちる(65)
はこべらやいつしか妻が来てをりぬ
人類の最後のひとり日向ぼこ
ゑのころや某月某日行方不明
1.は今までのうちで好きだという人の多かった句。2.は本格的SF句と自認している句。3.はなぜか手放せない句。

 ザッパー(54)
てふてふもピカソの鼻もまがりをる
徳利も爺もごろごろ松の内
溺れても夏が好き
最近は動物ネタで作句するとギャグっぽくなってしまう。

 理酔(52)
虚ろなる鮫の目玉よ愛国よ
鉄路煌々春夜の握り飯
桐一葉すと身を起こす夜の猫
1.は小泉政権下で幹事長だった現首相の面を見ていて咄嗟に出来た句です。俳句に政治的なメッセージは不必要とは思いますが、当分はずせない予感がします。

 太郎(66)
流れ星若き不器男の清き文字
水筒の小さな磁石初燕
俳句を勉強し始めて十五年になります。一句一遊と組長がいらっしゃらなければここまで来れなかったと思います。改めて感謝します。

 千子(55)
しゃぼん玉空咳一つ嘘三つ
あれがオリオン座君の指ばかり見る
結願を踏みしめる足鷹渡る
なかなか新しい句ができません。もう足ぶみ状態です。

 ポメロ親父(55)
なほ首を振る蚕の見ゆる繭の中
流し目の上手な象にやるバナナ
石鎚は切り立ち霜降の朝だ

 元旦(55)
唇を寄せて嘘つく薔薇と薔薇
原爆忌死は生よりも永く在り
空にピンホールカメラか朧月
去年の代表句集でエラそうなことを書いたバチが当たったのか、鳴かず飛ばずの一年。研鑽もせず月並み句ばかり。過去の句で失礼します。角川春樹さん、池田澄子さん、小島健さん、小倉書道教室の嬉乃さんありがとう。

 おせろ(52)
鰭酒を美味いと思ふ齢かな
豆の花ふわりと揺るる昼下がり
ぽこぽこと珈琲たてる良夜かな
受験の一年です。投句は休まないと決めていたので季語と向き合う時が自分になれる一時でした。俳句ありがとう。

 輝女(64)
冬晴るる空を洗つたやうな青
海に散る桜は貝になりました
秋天を映して海の碧く碧く
今年は私の好きな句を選びました。空とか海とか花とか大好きです!

 蛇頭(57)
待ち人のあるかのように熟柿在る
身の丈を生きる愉しさ花キャベツ
群衆の中の淑気とジャズの嘘
最高の通信教育を体験させてくれた「100年の旗手」から2句。これにお正月用のジャズ句を添えてみた。

 旧重信のタイガース(42)
太陽のごときクロッシェレースかな
霜降や朝に降りたる紅き星
猟期終わる今年もヤツは現れず
俳句を始めて、まだまだ一年半。少しずつ水曜日にも組長に拾っていただいてます。一句目は、水曜日採用句。二句目も、最近水曜日に採用された句。そして、三句目は、丁度一年目のご褒美の『天』を組長から戴いた一句です。

 もね(59)
探梅や活断層に日の柱
この山が力士の生家蕨餅
階段のきしきし朧なる湯殿

 鯛飯(62)
冷そうめん明日ラオスへ発つ人に
耳深きまで十六夜のサキソフォン
小春日の鳥のくちばしから滴

 更紗(55)
たちまちに桜の国の人となる
夏隣水飲むように君といる
秋の雷いざや男児を産みに行かん
1.またまた遠路花見大会へ。2.祝婚!組長ご長女ご長男。3.この男児のおかげで俳句に出会えてよかった〜。

 ともぞう(59)
松茸はマツモトキヨシに売ってます
かぼちゃの日楽しい事は夫が居る
何も言わない軍港の桜

 マイマイ(47)
いつだって来たまえ胡瓜召したまえ
炎昼の迷子の影が僕だった
雪止んだか耳鳴りは音叉のように

 幸(65)
鈍色のいつか薄紅色に春
ひたすらにひとりあやとり花の昼
天井に止まる風船遠かりし
代表句といえるかどうか疑問ですが、春の明るさ、喜び、そして思い出を詠んだ句を選びました。

 南行ひかる(59)
花びらのひとつひとつにくちづけす
風花のたがいにふれず地にきゆる
くる人もゆく人も風すすき原
俳句、松山、いつき組からかなり遠ざかってしまいました。はやく松山移住しいつき組の皆さんと俳句三昧したいものです。

 瑞木(50)
フランス語のやうにアネモネ咲いた
こんなにも桜蘂降る別れとは
佐保姫に小さく光る宝玉を
俳句対局、龍天王決定戦より三句。



俳号一覧


むめも
睡花
浜田節
逆ベッカム
こぼれ花
れんげ畑
青柘榴
ぴいす
あらた
小木さん
そお
親タカ
ほろよい
美和
八十八
未悠
七草
はるを
ケンケン
柊つばき
鍛冶屋
もんきち
紗蘭
西条の針屋さん
亜桜みかり
鞠月
杉本とらを
すな恵
まっことマンデー
めいおう星
樹朋
魔心地
てんきゅう
小市
猫ふぐ
杉山久子
蓼蟲
レモングラス
八木ふみ

山野遊造
てん点
KIYOAKI FILM
あきさくら洋子
渡辺瀑
一心堂
久乃
ひまわり
とりとり
お手玉
一走人
省三
しんじゅ
加根兼光
ぱむだ
のんの
柊ひろこ
都築まとむ
笑松
ヤッチー
キム チャンヒ

山の雪
朗善千津
夏井いつき
人日子
権ちゃん
あおい
野風
だりあ
だいあ
藤実
カシオペア
なゝ
まほろ
州麻子
十亀わら
香奈
松ぼっくり
駝楽
エノコロちゃん
ふづき
ちとせ
三瀬あき
雪花
鯉城
ふーみん
台所のキフジン
正人
コナン
緑の手
みちる
ザッパー
理酔
太郎
千子
ポメロ親父
元旦
おせろ
輝女
蛇頭
旧重信のタイガース
もね
鯛飯
更紗
ともぞう
マイマイ

南行ひかる
瑞木


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特集3
全酒類卸山澤商店&クリビオ杯

俳句対局 第二回龍淵王決定戦


前篇

俳句対局とは、囲碁や将棋の対局戦を模した、一対一の句合わせ対決の句会。昨秋開催の第一回大会から四季が巡り、再び「龍淵に潜む」季節が訪れた。俳句対局第二回「龍淵王決定戦」の模様をお届けする。
文 正人


10月27日 対局開始
 第二回「龍淵王決定戦」に出場した俳人は、大隈みちる、久保田牡丹、恋衣、高須賀あねご、蓼蟲、藤田夕加の6名。各々の装いも美しく、試合へ挑む意気込みが伺える。着物はいいなあ。会場が華やぐ。
 審査を担当したのは、毎年夏に行われる「俳句甲子園」でも審査員を担当する3名。夏井いつき、桜井教人、そして初代龍淵王である加根兼光(敬称略)。
 試合に先立ち、試合の流れとルールの説明。過去数回に渡る開催でルールの改良が重ねられているが、今回使用したルールは以下の通りだ。

1 トーナメントの組み合わせで、各対戦の先手後手を決める。
2 まず先手(黒)が、その場で出された席題(俳句)から一漢字あるいは一単語をいただき、制限時間内に俳句を作る。
3 後手(白)は、先手の作った俳句から同様に頂き、俳句を作る。
4 それぞれ、3句まで繰り返す。
5 審査は全ての俳句に10点満点で点を付け、その俳句点と残り時間による追加点の合計によって行う。点数の大きい方が勝ちとなる。
※決勝戦のみ4句勝負。

 作句には一定のルールがあり、これを破ってしまうと作句点が減点されてしまう。最も基本的なルールが2の部分。前の句から一漢字または一単語を頂いていなかった場合、最大5点の減点が科される。減点を回避しながら、いかに句を佳く 早く作れるかが勝負の分かれ目だ。
 くじ引きで対戦組み合わせを決め一回戦の開始。なお、最初の席題の句は正岡子規の俳句から頂いている。

 1回戦 第1試合
先手 蓼蟲 × 後手 高須賀あねご
草花を画く日課や秋に入る 子
日課終へて朝の冷き靴をはく 蓼
朝顔や地面にまける小銭入れ あ

 第一試合を戦う二人が座につき、試合が始まった。凛々しい二人の姿を見つめる会場。スーツ姿の蓼蟲さんがいなせだ。
 先手一句目、兼題句から「日課」をそのまま頂いての一句。後手は先手の句の「朝」の漢字一字を頂いて仕上げた。両者基本的な俳句対局のルールはOK。あとは速度と句の善し悪しで勝負が決まる。

小銭入れ落して哀し年の暮 蓼
哀愁のパパのため息吐く波止場 あ
波止場には老夫婦の立つ初時雨 蓼
病窓にひびく雨音台風禍 あ

 俳句対局公式戦での持ち時間は一句あたり2分間なのだが、二人して作句速度が随分速い。特訓をしてきたという両者、その成果を存分に発揮している。
 審査員による採点の結果、作句点は小数点まで同じの18.5点。時間はお互いに3分台を残した。時間点は、残り時間の分の桁がそのまま加算される。ということはお互いの得点は21.5点の同点! 一戦目でここまで伯仲するとはなあ。
 最終判定は互いが残した時間の秒数差。蓼蟲さんが3分41秒を残したのに対し、あねごさんが残したのは3分29秒! 12秒だけ蓼蟲さんの方が早かったのだ! 一回戦第一試合はわずかな差で蓼蟲さんが勝利を掴んだ。

 1回戦 第2試合
先手 恋衣 × 後手 大隈みちる
枝豆ヤ三寸飛ンデ口ニ入ル 子
猫じやらしひとつを口に入レテミル 恋
ひとつひとつを試してみるか放屁虫 み
その昔試されていた龍淵に 恋
昔男橋をわたりぬ冬の虹 み
橋の上高く高くや雁渡し 恋
高らかにファンファーレ鳴り雲の峰 み

 第2試合は今大会に最も情熱を注ぐ二人の対戦となった。龍淵王決定戦を見据えて事前練習会を企画した(本誌2013年10月号連載記事参照)のがこの二人。つまり一番練習を積んできた人たちなわけで――
 試合が始まると研鑽の成果がこれでもかと発揮された! 先の連載で作句速度の練習について書いたが、まさかここまで磨き上げる人たちが現れるとは思わなかった。その速度たるや、一句平均所要時間約24秒という記録を叩きだした。短冊に句を書き付けて相手に渡すまでを含めてこの時間。なんでこんな速度で俳句が考えられるんだ!?
 時間点は互いに4点を獲得。俳句点で一手先行したみちるさんが準決勝へと駒を進める結果となった。

 1回戦 第3回戦
先手 久保田牡丹 × 後手 藤田夕加
小刀や鉛筆を削り梨を剥く   子
小刀を研ぐ音冬の迫る音 牡
三連符八分音符と轡虫 夕
三行詩添え麗らかに墓一つ 牡
美辞麗句並べたる女無花果か 夕
辞書ばかり並ぶ書店や日の盛り 牡
小鳥来たる日曜の朝爪を切る 夕

 第三試合は若者対決。今春に開催した第一回龍天王決定戦での久保田牡丹さんの活躍は記憶に新しい。対する藤田夕加さんは用意万端で試合に臨む。第一回龍天王決定戦で優勝した瑞木さんの知恵を活かし、手元に殿様ケンちゃんの絵で見る季寄せの拡大コピーを持ってきていた。なるほど、一目で季語を選んで時間短縮を図る計画なわけだ。
 第一、第二試合とは打って変わって慎重な滑り出し。一句に一分はかけて、じっくりと作る(それでも早いが)。結果、第三試合で勝利を収めたのは久保田牡丹さん。一句目、今大会初の審査員全員が8点をつけた句から始まり、二句目では9点をつける審査員も。品質が勝利に結びついた。

 一回戦を終え、各自の獲得点を見てみよう。作句点の合計は、三句計23点を記録した久保田牡丹さんが首位。次点で21.2点のみちるさん、20.3点の恋衣さんと続く。作句点と時間点の合計ではみちるさんが25.2点で一位。二位の久保田牡丹さんが25点。みちるさんが時間点で勝負をひっくり返した形だ。三位にはこちらも恋衣さんが24.3点でつけている。
 さあ、勝負はどう展開していくのか。次回、敗者復活戦を経て準決勝へと進んでいく。
(後篇に続く)


愛媛新聞 1月3日(金)
「俳句対局 第二回ヘンデス俳談杯」
 愛媛新聞で好評連載中の「ヘンデス俳談」。1月3日(金)の紙面にて、投稿者有志による新年俳句対局を掲載。第三試合の若者二人も登場。



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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2013年度 第三期 2回目


「呼び出し」谷さやん

つはぶきのあかるさ前撮り日和かな
頂上があれば山なり冬苺
冬あたたか寝ころべば虫ブンと飛び
木を嗅いでゐる綿虫もわたくしも
すたすた歩く冬の夜空を呼び出され
文庫本になるまで待つか靴に風花
うしろから被せてもらふ冬帽子
手の斑かなし冬帽子かぶるとき
昼の火事順番待ちの椅子低し
セーターのマイク置くたび水を飲む
デモ鳴り止む硝子のクリスマスなり
捨印の方がきれいにクリスマス


1958年生まれ。句集『逢ひに行く』で、宗左近俳句大賞受賞。坪内稔典/谷さやん共編『不器男百句』(創風社出版)。評伝『芝不器男への旅』(創風社出版)。




「雪の鳥」行広遊人

朝方の体を透る冬の雨
賀状書くお皿の縁の欠けてをり
鴨の群れ二度も立たせて仕舞ひけり
鳥の声枯木の山の筒抜けに
山眠ることばだんだん少なくし
冬景色てふもののあり動かざり
極月の上り下りの人の列
抱擁や冬日まみれの人と犬
冬ざるる風より軽きほんだはら
立つ人の海の中とも見ゆ寒暮
祈りたる形に冬の花わらび
寂しさや杉の林に雪の鳥


2013年私の三大ニュース。1.ピロリ菌除菌 2.コルセット装着(腰痛の為) 3.第三回大人コン応募




「焔の芯」大塚迷路

小春日の眺めて厚き靴の底
煉瓦はひとつずつ積まれ十二月
動かざることの寒鯉たる動き
冬眠を容れ一山の一樹かな
雪来るか焔の芯に置く薬缶
枯野原玩具は電池はずされて
きみは冬蜂と呼ばれているんだよ
股座を掴まれ大根卸される
念のため二ツ入替えたる柚子湯
風花をまた見ちまったもんだから
目合のあと冬の炉を考える
水に水重なり合うて除夜の川


ここらで一発大逆転!といつも思っている。大逆転されたことはある。大器晩成だといつも思っている。長生きせんと大変だこりゃとぞ思ふ。




「別の母」マイマイ

側溝の水無き凹み十二月
さすらいの金の落葉と思う掃く
凩やヒヤリはっと報告書に捺印
須らく冬眠ネズミ目ヤマネ
冬の日を歪め金管吼え猛る
足元へ鴨の口より来し波紋
くちびるは記号そこから白い息
むはむはと聖樹に置いた脱脂綿
鱈鍋や君と僕とに別の母
去年今年貫くテトリスの長棒
あらたまの尻をサドルに弾ませて
梟やみずうみ蒼き眠りのなか


久しぶりに名古屋から次兄が帰ってきて兄弟三人が揃った。食事の後カラオケへ。兄弟でカラオケは初めてで照れくさかったが、思いのほか楽しかった。特に長兄の美声には驚いた。「だって○○兄ちゃんは学園祭で歌っとったんだもんね」知らなかった!




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読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2014年1月号 〜 2014年3月号 1/3回目)


 米塚 樹朋

大北風や濃鼠の海つれ来る
闘牛の湯気立つ背中しぐるるや
冬耕の黒き土塊の呼吸せり
引き抜きてだいこの歪みみずみずし
鮟鱇のどつと溢るる腸の華
湯豆腐のぽこりぽこりとひとりごと
目力の衰へ隠す冬帽子
阿蘇の米塚冬の夜の星を産む
朱の扉ゆるりと開く初日影
初夢を志功菩薩の舞ひ来る


1944年生まれ。松山市北条在住。定年退職後は、樹木医をしながら、好きな樹木を相手にして楽しんでいます。俳句は六十の手習で始めました。今は土曜カルチャーにお世話になっています。



 金のヒール たま

シチューにブロッコリーあげる怪気炎
冬帽子ロシヤ大使の顔四角
まちわびてポインセチアになりました
龍の玉夕日いま哀感の赫
金のヒール葱さげてつまずく
冬の蝶色なき地下に検査室
竈猫ほろほろ甘き夢をみる
冬すみれ忘るる事のそれも幸
交番にシャチハタ押して雪催
大寒や息づくものの井の底に


2010年「ザ いつき組」に初投句。現在は「自由律」に投句です。ちょっとした事にも感動。好奇心が湧いてくる俳句の世界。これからもアンテナをめぐらして楽しく華のある日々にしたいと思います。



 消えるまで 鞠月

肩で押すシネマの扉冬に入る
かしゅかしゅと切る小春日のフランスパン
短日の小指に傷あって不便
水が均す千鳥の足跡と地球
甲板の薄き水打つ夕霰
マフラーや拍手引き継ぐ雨の音
残る客はひとりとひとり冬の雨
消えるまで白息は私の一部
蛍光灯ちちんと点いてなお冴ゆる
電話切ってここは雪無き地であった


高知県出身、愛媛県在住。5歳と1歳の二児の母。2010年10月、土曜カルチャーに飛び込む。きょろきょろしながら歩く癖が俳句を始めて長所に変わりました。宇宙大好き理系人間。



読者が選ぶ人気俳人!
「100年の旗手」連載者推薦募集

 今求められているのは、読者が読みたいと思う俳句作家。「100年の旗手」は、連載する俳人を、編集室ではなく、読者が選ぶコーナーです。
 「この人の作品集を読んでみたい」と気になる俳人を、1人3名まで推薦してください。その中から、推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行います。
 あなたのお勧めの俳人を是非推薦してください。

 推薦の方法

「この人の作品集を読んでみたい」という人を3名まで選んで(自薦は不可)、その俳号と活動場所(句会、誌面等)、推薦者ご自身の俳号(本名)、住所、電話番号を明記して、100年俳句計画編集室「作品集推薦」係へ送ってください。ハガキ、FAX、Eメールで受け付けています。Eメールの場合は件名を「作品集推薦」としてください。また、専用のインターネット投稿フォーム(http://www.marukobo.com/100kishu/)でも受け付けています。※投稿フォーム利用の場合を除き、推薦は他の投稿等とは分けてください。

締切 1月末日

 現在連載している3名の方以外なら、一度連載された方も含め、どなたでも推薦できます。
 今回連載を行った3名の作品集の感想もお待ちしています!


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百年琢磨
 現実と心象と しなだしん

「小春」 てんきゅう

冬苺潰して森の眠り解く
 俳句で「冬苺」といえば、冬に赤い実をつけるバラ科の常緑の蔓性小灌木を指し、温室栽培の「冬の苺」とは区別する。この句は「冬苺」を潰して森の眠りを解くと詠う。なべて色を失くした森の中で冬苺の「赤」が滲みだす。

寒卵割る音空の青む音
 「寒卵割る音」は現実。「空の青む音」は心象で詩的表現である。「寒卵」と「空」の遠近の対比でもあり、寒卵の温みと、ひりひりとした寒晴の空の冷たさとの対比にもなっている。だがこの句の良さは事象も感傷も「音」に集約されていることだろう。

寒燈に御魂の如きガラス吹く
 硝子製作の場面だろうか。「御魂の如き」は焼かれた硝子の玉が膨らんでゆく様を比喩したものだろう。「寒燈に」と集中するか、「寒燈や」と切って広がりを持たせたせるかは、好みが分かれるところかもしれない。


「僕の昭和」 蛇頭

鮟鱇鍋赤坂見附下車十分
 鮟鱇は「西のふぐ、東のあんこう」と称される冬の魚。「赤坂見附」は東京メトロの主要駅で、元々は江戸城の「三十六見附」の一つ。見附とは、城の外郭で外敵の侵入を発見するための警備の城門のこと。この句はすべて漢字表記で出来ていて、忘年会などの会合の伝言のような成り立ちで、遊び感覚の句。

情事めくマイルスを聴け冬ひばり
サックスの鈍き光の啼く枯野
 「ジャズさん」と呼ばれるという作者。一句目の「マイルス」は「ジャズの帝王」と称されたトランペット奏者「マイルス デューイ デイヴィス三世」だろう。ジャズは何故か、空気の冷たい「冬」がよく似合う。「情事めく」も、二句目の「鈍き光の啼く」という措辞も、ジャズを愛する作者ならではの表現だろう。


「柊の花」 哲白

槇の実のほのかに甘し人遠し
 「槇」はマキ科の常緑針葉高木で、庭木や防風林として植栽される。秋に成る実は二段の串団子のような形状で、上の灰色の部分は種、下の赤くなるのが実。地域によってはよく食されるようだが、俳句ではあまり見かけない。作者の秋の感慨が「人遠し」に現れている。
うすらびや柊の花ついと落つ
 「うすらび」がひらがな表記のため、一読、春の「うすらひ」に見えてしまった。だがこの「うすらび」が柊の花が咲く頃の、冬の陽ざしをよく表していて、鼻先が冷たくなるような気がする。

畦道に座る猫の背暮早し
 猫の「座る」とはうずくまっているわけではなさそうだから、人の蹲踞のような状態だろうか。「暮早し」から冬の夕暮れの光が想像される。


しなだしん
1962年新潟県生まれ、新宿区在住。「青山(せいざん)」同人、俳人協会会員。句集に『夜明』『隼の胸』。


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新 100年の軌跡


2013年度 第二期
第4回


予想図 若狭昭宏

餅つきの男となりぬ島の旅
大釜のぐつと重たし初旦
目に見えぬ疵を濁して初手水
日の丸を海より揚ぐる二日かな
祝膳の起こして大き牡蠣の腹
鳥の餌を吹いては探る三が日
今近くまで来たからと初電話
弁当の主張激しき四日かな
本家より炭の欠片を土産とす
乳呑子の離れさうにもなき五日
初夢は呼吸の仕方四肢の有る
はや六日竿の置かれし防波堤
春待つや口どけ悪きチョコレート
人日の顔より手足出る絵かな
侘助や完成予想図の補足


若狭昭宏
1985年12月8日生、広島県出身。安芸南高校より第6回俳句甲子園出場。俳句Webマガジン「スピカ」2013年8月連載。




もう一つのいい句の日 川又 夕

寒椿薬指より娶られぬ
蔦枯るる指の境の舐めらるる
受話器より肩へと溶くる無や蒲団
姫はじめ疵なら肌の内に在る
鼻先の触れさうでゐて嫁が君
御降や背筋のなだらかに果つる
舞初の二の腕を餌にしてとりこ
身八口乳房ゆたかになり手鞠
若水や「  」知ればすべて夢
黒髪を受け継ぐやうに初みくじ
寒卵破線書き足す相関図
駆引きに足絡ませて冬銀河
人妻のヴェール従へ雪の花
春待ちて婚礼衣装隠しをり
入籍のためらひ睦月十九日


川又夕
1987年愛媛県生まれ。愛媛県立今治西高校、同志社大学卒業。10年前より俳句甲子園に3年連続出場。第2回NHK学生俳句チャンピオン決定戦優勝。京都 神戸を経て、現在NHK松山放送局勤務。




それぞれの新年 とりとり

 若狭さんの「予想図」は新年を意識した面白い構成でした。「もう一つのいい句の日」の川又さんは、今回も色っぽいですね。 

はや六日竿の置かれし防波堤 若狭昭宏
 「六日」と「竿の置かれし防波堤」が絶妙だと思いました。お正月と日常の境界。「はや」は不要かも。

侘助や完成予想図の補足 若狭昭宏
 どんな完成予想図のどんな補足なのか想像がひろがります。和風の豪邸の設計図かなとか。季語「侘助」が面白い働きをしていますね。

寒椿薬指より娶られぬ 川又 夕
 おそらくはエンゲージリングをはめた薬指。寒椿のような控えめな喜びと身の引き締まる思いが交差することでしょう。冬の空も見えてきます。

鼻先の触れさうでいて嫁が君 川又 夕
 鼻先の触れそうなのは、鼠と鼠? それともあなたとわたし? 童話のような可愛らしさですね。


1957年生まれ。三重県在住女性。第1回選評大賞優秀賞。



未来予想図 桜井教人

今近くまで来たからと初電話 若狭昭宏
 メールではなく電話にした理由に思いを馳せる。平易な口語表現の軽さと言葉の向こうにあるものとの対比が楽しい。等身大のよろしさを思う。

侘助や完成予想図の補足 若狭昭宏
 何の完成予想図なのだろう。補足する理由はなんだろう。仕事も人生も予想通りにはならない。侘助の清楚さから、誠実さと少しの哲学を感じる。

蔦枯るる指の境の舐めらるる 川又 夕
 連体形の併用の是非は問われるかもしれないが、ある種ぞっとするくらいリアリティーが強い。季語とその他の言葉を意味で結ぶと詩が消えると言われるが、この作者の季語の選択は、読み手に挑戦するがごとく斬新である。このしたたかさを熟成させながらも失わないでもらいたいと願っている。

寒卵破線書き足す相関図 川又 夕
 学校の授業でも社会の研修でも今は相関図を作成する。がんじがらめになった相関図の中を生きて行くには、寒卵を食べるしかない。
 俳句甲子園後の活動の在り方が今問われている。二人とも愛媛県内を拠点に、俳句活動や俳句甲子園に関わっている。まさに俳句甲子園後の未来予想図をこの二人が描いている。大人として彼らに負けてはいられない。


1958年生まれ。愛媛県今治市在住。おでんを食べ比べしている。俳句歴9年、競馬歴20年。


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超初心者から中上級者まで楽しめる
100年投句計画

 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天地人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選、並選を選んでいます。今回の先選者は、阪西敦子さんと加根兼光さん。後選者は、関悦史さんです。

 「へたうま仙女」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は杉山久子さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。

 「詰め俳句計画」は、マイマイさんによる、二つのフレーズに合う季語を投稿するコーナーです。季寄せや歳時記さえあれば、全くの俳句初心者でも挑戦できます。
(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)
写真:白鯨


選者三名による雑詠俳句計画


先選者 阪西敦子

 昨日の夜から降るといっていた雪が降らなかった。夜は句会だったので、雪なら荷物になるから傘を持っていなかった。雨になったので会場のお店で傘を借りた。返さなくていいと言われるので、家にはここの店で借りた傘がほかにも一、二本。台風で都内の列車の運休が相次いだときも神田にあるこの店へ集まった。集まった者で句会をしてやり過ごし月を見上げて帰った。雪が降れば店の前で雪合戦をした。クリスマスイブに賑わう世間からも避難した。居酒屋万能。



象の子が遊びに出ない冬日向 もね

 象の子は、日向にいるのか。古池に蛙は飛びこんだかレベルの大問題。遊びに出ないで日向にいる、日向へ遊びに出ない、どちらとも取れるが、後者ととった。引っ込み思案なのか、餌の時間なのか、檻の方が暖房が利いていて実は暖かいのか、理由もよくわからないけれど、出てきて遊んでくれることを期待している視線の前には、きらきらとして影に欠けることのない冬日向が広がる。出てこない象によって冬日向が描き出される。



あの人に嘘はつけない毛糸編む 迂叟
 嘘はつけない。つい本心を見抜かれてしまうのか、ついてはいけない気になるのか。毛糸など編んだら、余計に本心は明らかになってしまう。嘘をつけないのではない、本当は知られたい。ありがちなセリフが「毛糸編む」によって陰翳を深める。

冷たき風の走る丘にいる猫 ふーみん
 走っているのは猫ではなく冷たき風。確かに冷たい風は、生き物めいている。寒さの中を冷たい風が走り、それに触れる感触がある。猫はそこにいる。猫もまたひやりとして、風のように走り、立ち止まってこちらを見る。

木枯らしやはずかしそうにうどん食ぶ ぴいす
 木枯らしの中、うどんを食べることになって、嬉しいことは嬉しいのだけれど、なかなか恰好のつくものではない。恥ずかしそうに食べる。もじもじとした人へまた風が寄せる。寒い、うれしい、はずかしい、寒い、うれしい……連続の中の一瞬の実感。

冬うらら花の形のペンダント 瑞木
 花をモチーフにしたアクセサリーは数知れず。それはもう単に形と化していて、花をつけているという意識もそんなにはない。そんなペンダントがふと、花であったことを思い出す。冬うららの無意識の軽やかさが何気ない一事に宿っている。

島結ぶ橋のたもとの蔦紅葉 カシオペヤ
 その橋は島と島とを結ぶ。越えるのは流れではない、海だ。橋の中でも、海を越える橋というのは、何かスケールが少し違う。ふたつの別の陸をつなぐからだ。その元に蔦紅葉。別の陸へきてはじめて目にした別の陸に根を下ろすもの。橋と陸と結んでいるようでもある。



村中が喪服の冬の日なりけり 朗善
対岸の焚火風なき空へ泌む 野風
白壁へ枯蓮映る民藝館 てん点
紅葉且つ散る狛犬の歯の欠けて 緑の手
冬の雷好きでいたいから出てゆく 空山
冬夕焼誰かに何か叫びたし 省三
冬うららブルーベリーを食べて居り 未貫
時雨るるや出雲より来るお札売り あい


先選者 加根兼光

 初めての会社が大阪の十三近くにあり、先輩やスタッフとよく安い居酒屋やバーに行った。その会社も随分前に無くなりはしたが、今でもその頃の先輩やスタッフと数ヶ月に一度は「十三会」と称して飲むことがある。
 その頃の店もほとんど閉めてしまった今も健在なのが「十三トリス」。ここでは一番安い「トリハイ(トリスハイボール)」から始まり徐々に上に上がるのだが最近は「角ハイ」止まり。さて今年も十三忘年会に行くか。



第二宇宙速度で蓑虫は飛べる 鞠月

 蓑虫は地球の重力圏を脱する高速で飛ぶという。普段あのようにゆっくりとしか動かないのはそのエネルギーを蓄積するためである。
 蓑の中に肢体を隠しているのはそのことを悟られないため。蓑虫は地球外生命体かもしれない。しかし太陽の重力圏を出ないのは地球を愛するためなのか。そう夢見ながら蓑虫は長い冬を眠る。やがて春を迎えた蓑虫は地球脱出に向かっての準備を始める。第三宇宙速度で太陽圏も飛び出すのかもしれない。



星ひとつ冬三日月に従いぬ のり茶づけ
 冬の三日月が上がる頃の空は充分暗い。宵の明星も漆黒の空に大きく輝く。しかしその光はあくまで細い月に従うためのモノである。冷たく尖り行く月の光と共に星もまた光を尖らせ冬の闇を突き刺しながら月と共にある。

ダン族の仮面に歯ある空也の忌 てん点
 アフリカのダン族の面の僅かな歯に注目した。おそらく木彫りの黒みを帯びたであろう口元は何かを呟くようでもある。市聖空也の忌と取り合わされたときに地を這う如く教えを伝えて歩いたであろう日々をも思うのである。

冬鵙や夜の深さを鳴くという 一走人
 冬の鵙は静かに鳴くのだ。高音を発することも無い。ただ冬の深まりと寄り添うように。長い夜の深さを鳴くのだという。その声に耳を傾けていると、「泣く」ようではないか、と。それも冬の夜の長い長い闇の一節である。

満月は闇のかき穴かもしれぬ 春告草
 大きな満月でさえ空の闇に比べれば小さな掻き穴。いや闇を間違って掻きむしったから出来た穴なのかもしれぬ、と。夜とは闇が支配する国である。光は存在すべきものではなく、掻き傷から洩れる血のようなものである。

おんぶ子泣けり極月の波の音 ターナー島
 背の子は止むこと無く泣く。哀しみがそうさせるのでは無い。ただ泣く。泣き声の届く先は極月の波。波音は激しく泣き声と競いつつ高まる。共に止まずにあるのは年の極まる今だから。子と波は声を合わせて泣き続ける。



狼の移ろい易き音程よ あきさくら洋子
対岸の焚火風なき空へ泌む 野風
巡礼へ届け冬天のコーランよ 七草
秋の水足裏に砂の記憶かな ほろよい
鮭の川光の雲の湧く所 ほろよい
立冬の低き噴水モネの庭 ソラト
寒月や青きインクで書く手紙 一心堂
起点無き波たどり着く小春凪 不知火
立冬や空ごと磨く南窓 八木ふみ
出迎へもオーバーも無き出所かな 浜田節
綿虫を追ひかけ歳をかさぬるか 省三
(前書き 女川2013)
復興の鐘や秋刀魚の火の弾け 哲白



後選者 関悦史

 昭和十九年、東南海地震が発生しました。死者 行方不明者が千人を超える大災害でした。しかしこの地震を知っている人は、古くからの愛知県民以外あまり多くはないでしょう。戦時下のことであり、戦意高揚につながらないからと「秘密」に指定され、報道されなかったためです。生存者たちも被災体験を口外することは「スパイ行為」として固く禁じられました。当然救助はどこからも来ませんでした。何が秘密とされたかの一例です。


特選句
焼き芋を売つてゐる女子サッカー部 もね
 「焼き芋」と「女子」だと普通に連想が働いてしまう範囲内なので、食べているだけだと句にならない。「サッカー部」と「売っている」で急にリアルで清新になりました。文化祭か何かの光景でしょうか。

婆を呼ぶ移動スーパー冬の雲 青蛙
 わりとありふれた光景のはずですが、こういう生活感のある、地に足のついた句が意外と出て来ない。「冬の雲」はどこにでも着きそうですが、一句に立体感と、いい意味での重さを与えています。

切り口を黄色に濡らす栗羊羹 松ぼっくり
 頭の中の情緒先行ではない、物に即した写生の句。強いて難をいえば下五で止まりきらないので、どこかにはっきり切れを入れた方がいいかとは思いますが、「栗羊羹」一物の句としては鮮やかな中七です。


並選句
新海苔のおにぎり三つ平らぐる 杉本とらを
縄跳びに夢中100回軽々と レモングラス
尿管の結石じりり川涸るる 笑吉
灯を点けて待つ人となる暮の秋 のり茶づけ
石段に木の葉降り積む夕べかな れんげ畑
空澄むやモップ片手に見る富岳 小市
モノノフの貌して死ねよ冬の蜂 藍人
木枯を逆流させる滑り台 ヤッチー
寒中水泳コンクリートの荒さかな 紗蘭
久延毘古の神の出番や豊の秋 迂叟
山茶花の花びら落つる湯桁の湯 富士山
小夜時雨近江商人通り過ぐ 幸
言い訳の引出し増ゆる老いの冬 樹朋
五十銭飴知っている冬桜 あきさくら洋子
晩秋のはじける音やけもの道 はまゆう
地下足袋の無言の衆や松手入 蓼蟲
狂気持て余し銀杏剥いている 鞠月
冬の虹神父祈るをふと止めて みちる
鰤起こし番屋に祭る大神 かのん
真白なるリボンのごとく霜柱 朗善
投函す手折る小枝はストーブへ 野風
小さき手にぎり温まる寒き朝 ふーみん
玄帝や木彫りの厨子の静かなる 七草
こと終へて指でなぞる白障子 あらた
瞬きのなきにんぎやうの眼の暮秋 緑の手
きつつきや勤勉そうなキスをして 一走人
次の日やふやけし柚子の捨てどころ 大塚迷路
鯨幕神と相撲の秋の日に 小雪
電飾に引きずり出されオロオロ冬 魔心地
膝下へいくタックルや冬構 ソラト
凩やジャズの流れる拉麺屋 一心堂
ドレッシング二本買い足し冬に入る 不知火
蒸し饅頭心もまるうなりにけり お手玉
冬紅葉眼下に青き燧灘 八十八
シーソーの影をけりけり暮の秋 八木ふみ
鴎外に耽る夜鹿の声しみる 妙
椋鳥の大群に核心は無い ポメロ親父
締め小屋の讃岐三白秋の風 輝女
悴みて掴みそこねし五円玉 うに子
坂道を駆け上がる児の息白し ぴいす
遷宮を終えて一献神在月 おせろ
みな海向くテトラポットの冬 空山
秋麗や人皆サタンに恋しおり まんぷく
鷹渡る大山祇は一ノ宮 亜桜みかり
出迎えの仲居の列へ冬満月 しんじゅ
大霜や吾の記憶の歪み知る ちろりん
バザーまで5分足らずや初時雨 コナン
秋の昼やさしい世界はここにある アンリルカ
七五三祝う子なき村もう十年 エノコロちゃん
秋澄むやピアノ講師の白い服 人日子
初時雨獄舎の丘はまだ緑 浜田節
人拒む谷白白と鷹渡る 北伊作
アカギレヲコラエテニギルペンイタシ  サキカエル
身ごもりし事の三度よ神の留守 親タカ
馬追ふや万葉の里に満あり 未貫
障子開け生きていること確かむる 鯉城
しぐるるやゴッホの杉の蹲る 哲白
差し入れのおでんに弾む入れ歯かな カラ嵩ハル
青レモン切りて部屋ぢゆう島の海 春告草
天のぞむ天狗の鼻も冬仕度 西条の針屋さん
冬ぬくし刻を忘れし大時計 あい
冬うらら先をくるんと巻いた髪 瑞木
バイパスに分断されし冬田かな 青柘榴
赤まんま群れて子鬼のかくれんぼ ひなぎきょう
藁の香の鉄塔づたい山登る ターナー島
海峡のさざ波尖る秋日かな 明日嘉
雷一閃冬の始まりか 理酔
豊島の天までみかん空青し カシオペヤ
むかしみちとある道標や冬の空 さち
岩戸山古墳茶の花日和かな あおい



関悦史(せきえつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。

加根兼光(かねけんこう)
1949年大阪生。俳句集団「いつき組」組員。第9回俳句界賞受賞。



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へたうま仙女


文 杉山久子

 も〜いくつ寝ると……の時期、今年やりのこした事はないかしら。へたうま道に邁進の皆さん一年間ご苦労さん。お歳暮代わりのへたうま句有難く頂戴したわよ〜。

新米や兄弟姉妹米でした KIYOAKI FILM
 空前絶後の米米ワールドにわくわくしちゃったわ。お歳暮は米が一番有難い。あ、なにげに五七調になってしまいましたわ。おほほ。

とぎ汁に米のまざりし一葉忌 ひでこ
 同じ米でも一葉の小説を彷彿とさせるわびさび美しい世界はどうなのよ。迷わず追放。

大便やしたくてたまらん花畑 KIYOAKI FILM
 「お花畑に行く」という隠語とかけたのかしらね?花畑が綺麗で遠慮してるのか?KIYOAKI FILMのが肥やしになるのかどうかはわたしの仙力をもってしても判断できません。許すから勝手に早よしてくれ。

二学期は腹いたばかり続いてる 柊つばき
 打って変わってこんな繊細な人もいるのよ。同時投句「友の名がテレビに出たよ秋の暮れ」って詠むくらいだからきっと優しい人だわね。あなたこそ早くトイレへ。いや、これは内科か心療内科へ急ぎゴー。

 なんと米と便で始まった今月のへたうまコーナー。食べたら出す。自然の摂理にのっとってスムーズに行いましょうね。

神の旅朝日俳壇まず開く 元旦
冬銀河汀子兜太の☆の無く 元旦
 新聞俳壇をダイナミックにまた大胆に詠んじゃったわね。汀子兜太が元気な内は神も安心して留守できるというものね。

聞き分けのよさそうな鴨に限つて 小木さん
言いなりになる鴨だけを連れ回す 小木さん
 詠んでるのとは裏腹に小木さんの好みは前句の方の鴨と見た。いいカモにならないようご用心あそばせ。……って要らぬ世話か。

鵙の贄乾く山河やシーベルト 大阪野旅人
 「贄」の意味を深く考えさせられる社会性俳句の力作。追放。

秋冷やたすき繋ぎて伊勢路駆け たっ君
 ご当地駅伝いろいろあれど、今年遷宮で人気爆発の伊勢路を疾走する姿はご当人も応援する人にもパワーを与えたんじゃ?きれいにまとめる技を身につけたとは、追放。

香の移るマフラー巻きて帰りけり 未々
 誰の香? どんな香? と想像させる。恋にも句にも上級者の香が。追放。

真暗なる海の底より冬苺 台所のキフジン
 冬苺の小さな赤がぼんやりと浮かぶ幻想的な世界を描いて仙女を惑乱させるとは。追放。

美しききりんのまつげ冬に入る ひでこ
 あのわさわさしたきりんの睫毛が静かで優しげな時間へ誘う。追放。

 さて、今年の最後を飾る清々しい一句をご紹介。

生きること楽しと思う十二月 ケンケン
 「へたに」ひねらないのは俳句にも体にもよろしい。

 皆さん、去年今年貫くへたうまの道を来年もご一緒に。お餅食べ過ぎちゃだめよ。



杉山久子(すぎやまひさこ)
1966年生まれ。第二回芝不器男俳句新人賞。句集『春の柩』、『猫の句も借りたい』『鳥と歩く』。


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ

 ローリング ストーンズの来日公演が二月からはじまる。平均年齢69歳。ミック ジャガーには、ひ孫ができるらしい。しかし最近の彼の映像みたら、Tシャツからのぞく腹はちょっと割れている。きょうはヒザが痛んで動きまわるのツライわいとか、思い切り跳びはねたら軽い尿モレおこしたとか、しょっちゅう歌詞忘れるとか、部分入れ歯無くしたとか、グルコサミン切れてるとかはないのだろうか。彼のステージを想像するとそんなことばかり考えてしまう。死ぬときは、悪魔を憐れむ唄歌いながら老衰とか……。



アンパンのいない冬ははじめて 大塚迷路

 アンパンマンの作者やなせたかしさんが亡くなられてから、そこそこの数のアンパンマン関連の句に出会ったけれどこれが一番。アンパンマンのその生みの親がなくなって、なんか寂しい……的なストレートすぎるアプローチではおそらく句にはならない。むしろやなせたかしの存在自体を一切封印することでアンパンマンそのものに強い人間性を与えている。困っている人にはわが身をちぎって与えるという特異な正義の喪失に、あらためて向きあう意志まで感じさせてくれる。



銀漢の水自動販売機に買ふ 迂叟

 夜空を見上げれば銀漢=天の川が輝いている。あの天の川の水ほど清く爽やかなものはない……。その水を想いつつ目の前の水を買う、まさしくこれが天の川の水であるように。銀漢と夜の自動販売機が不思議に響き合います。

団栗が落ちていたら拾ふ ポメロ親父

 典型的な短律の句。落ちているのは団栗以外考えられない。無駄を削りとってぎりぎりのところで成立している分、その他の思念は読み手にある程度委ねられると思う。拾っているのはどんな人なのか、その人にどんな背景があるのか……上手に読めばじわっと味わい深い

胎児となっていく寒月の中の自分 緑の手

 夜中にひとりでいて、まわりは静寂と闇。ふと見上げれば寒月が浮かんでいる。張りつめたような空気のなかじっとしているとやがて胎内回帰していくような妙な感覚にとらわれて行く……もちろん帰るの母なるあの寒月。詩情感あふれている。(「の自分」はいらないと思いますが)

二人でいても寒い時は寒い 空山

 その通り、なんの文句もありません。と思わずツッコミたくなるような潔さがあります。そこに諧謔、ユーモアを感じる。それは「咳をしても一人(放哉)」、「うごけば、寒い(夢道)」という自由律の代表句をちゃっかり手玉にとって平然としているからかもしれないけど。

枯れ薄吹かれるだけの吹きさらし  エノコロちゃん
 「吹かれるだけの吹きさらし」という表現が上手いと思う。しかしこの句はりっぱな有季定型の句。これはこれで置いておいて、不規則に転がすことで面白くなるのかを探るのも自由律の句作の楽しみ方です。「吹かれるだけ吹きさらされて薄枯れ切る」でも良いような。もっとインパクトあるの考えてください。



山から転げ落ちそうな満月だ 子狐萬浪
父来ているか仏壇が鳴った のり茶づけ
光速に追いついた夏の果て 紗蘭
山びこの抜け出せぬ冬青空 朗善
フェンス縫う蔦の明日は墜ちる葉となるか  緑の手
いやおうなしに冬眠する亀のいて 一走人
訳者異なる源氏物語借りて落葉 不知火
烏瓜電柱にのぼる お手玉
助手席の白菜にもベルト表示出され うに子
熟柿吸う口のまわりを舐め回す コナン


並選
我儘な妻と干し芋を焼いてをるよ 子狐萬浪
おもちゃ みたいな脂肪日照り  KIYOAKI FILM
曇天に龍が潜んでいる ケンケン
骨まで冷える気合いで乗るバイク 小市
冬の虫返答こつちから 小木さん
神の留守に仏が出張る 藍人
一人目も二人目も産んだ十一月初旬 ヤッチー
あんまんも今はレンジでチンをする 富士さん
脱脂粉乳今牛乳の給食 幸
あゝ罪をおかすな芋よ あきさくら洋子
冬の水は水色じゃない 鞠月
心まで裸になるやうな月だ みちる
雪虫の便りはてはてどんな虫 かのん
毛布蹴飛ばし優雅に踊る踊る子 ふーみん
凍星の海へ高速道よ翔べ 七草
男もマスクも使い捨て あらた
小春日にほどけゆく吐息 一走人
蕎麦の哲学書に止まっている梟 もね
三日月の顎に吊るされてやがる ソラト
通過列車捲き込むは冬の蜂 元旦
独身に戻る初時雨の日 妙
比叡山鐘のひと撞き五十円 輝女
ほいと酒ひと嫌いなる我が神と まんぷく
裏口に猫戻って母さんの火遊び しんじゅ
犬の散歩最大の敵はまくなぎ ちろりん
吊り橋から蹴落す団栗ひとつ 北伊作
枯むぐらの時計三十分早める 親タカ
年々に短くなった誕生日 柊つばき
早早に帰らずを決め大晦日のサイレン  カラ嵩ハル
竜巻多発ドロシーは何処に ひでこ
冬晴れにエアー喫煙記憶の中の煙を吐く  台所のキフジン
三回忌の涙秋風に乾く 松ぼっくり
十二月の蛇口より督促状 たま
猫を撫でてやるためのストーブ 青柘榴
フォークリフト倒れて冬蠅の三匹 ザッパー
食い飽きたものを食う 理酔
台風の根こそぎ橋を流しけり カシオペヤ
瓦礫に根付けどんぐりの木 あおい



きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「層雲」同人。句集『鍵の穴』(文芸社)、『鳩を蹴る。』(プラネットジアース)、『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)。特技 妄想、泥酔。


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詰め俳句計画


出題 文 マイマイ

今月の問題
 次の(  )の中に共通する新年の季語を入れて下さい。
髭剃機充電中の(  )
(  )蒲鉾の端繋がって

髭剃機充電中の除夜の鐘
除夜の鐘蒲鉾の端繋がって
 蓼蟲さん。実にいいのに惜しい。歳時記を見ると冬の季語になっています。朗善さんは寒禽、野風さん、コナンさんは凍蝶、まんぷくさんは木枯らし、春告草さんは凩、大塚迷路さんは綿虫、輝女さんは風花、エノコロちゃんはオリオン、親タカさんははつゆき、台所のキフジンさんは枯づる、理酔さんは空風。どれも冬の季語。大阪野旅人さんのみざくろは秋の季語。KIYOAKI FILMさんの冬コーヒーは季語?? いずれも級外。11月号の締め切り期日に誤植があり、その影響で12月号の問題と間違って投稿された方もおられたのでは? 改めてお詫び申し上げます。

髭剃機充電中の初空
初空蒲鉾の端繋がって
 ケンケンさん。わざわざ4音でリズムを崩す意図がわかりません。初御空としてリズムを整えたい。7級。うに子さんは初芝居。前後句ともシチュエーションがよくわからなかった。ほろよいさんは小豆粥。蒲鉾は入らない気がしますが……。5級。

髭剃機充電中の初鏡
初鏡蒲鉾の端繋がって
 だりあさん。前句は合っていますが、後句がどうか。4級。ヤッチーさんは初仕事。前句かなり手早い初仕事か。後句、仕事としては杜撰? 俎始という季語もあり微妙。同じく4級。小木さんの年賀状、カシオペヤさんの初便りは、後句薄い縁で繋がっているのか。前句はそういうこともあるかなという感じ。3級。おせろさんの笑初も前句がやや弱いが、後句はいかにも正月らしい。小市さんの雑煮膳、未々さんの雑煮椀、幸さんの年の酒も同様。あきさくら洋子さん、ちろりんさん、青柘榴さんは寝正月。前後句ともに無聊な感じが出ている。同じく3級。ひなぎきょうさんは福笑ひ。前句、福笑いと髭剃機の微妙な距離感が句に諧謔味をもたらしている。2級。みちるさん、元旦さんは姫始。あえて解説はしないが、前後句ともに合っている。同じく2級。瑞木さんの初烏は何気ない光景と烏のバランスがちょうどいい。1級。

髭剃機充電中の松の内
松の内蒲鉾の端繋がって
 人日子さん、たっ君。前句、正月7日間充電しっぱなし? 後句、期間が長すぎて焦点が定まらない。5級。のり茶づけさん、七草さんは三が日。期間が短くなった分受け入れやすいが、後句やはりぼんやりしている。3級。レモングラスさん、一走人さんのお元日は、その点後句の出来事がスナップ写真のように切り取られている。「お」の丁寧さも逆に可笑しい。1級。鞠月さんは初日の出。ひでこさんは初明り。後句、蒲鉾の紅白の色合いともあいまって目出度くて良い。同じく1級。

髭剃機充電中の年男
年男蒲鉾の端繋がって
 魔心地さん。前句めでたさと情景のギャップが面白い。後句は普段料理をやりつけない男が無骨に包丁を使うさまが浮かんできて可笑しかった。れんげ畑さんは年始客。後句はサザエさん的きまりの悪さ。前句、半分髭を剃ったところで充電が切れてそこへ年始客が……、とちょっとしたドラマが想像されてクスリと笑わせられた。初段。


今月の正解
髭剃機充電中の去年今年
去年今年蒲鉾の端繋がって
 迂叟さん、 あらたさん、不知火さん、妙さん、ポメロ親父さん、北伊作さん、サキカエルさん、カラ嵩ハルさん。こんなに正解を言い当てられるようでは……。易し過ぎましたね。1級。


3月号掲載分の問題(1月20日締切)
 次の(  )の中に共通する春の季語を入れて下さい。
ボタ山に雨降る(  )かな
ジオラマや(  )の主は留守



マイマイ
2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人。第一回大人コン「多面体」にて優秀賞受賞。句集『翼竜系統樹』マルコボ.コムオンラインショップにて販売中。将棋推定初段。棋友募集中。



【100年投句計画】投句方法
 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可)、俳号(なければ本名の名前のみ)、本名、電話番号、住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。
ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙女」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、1月20日(月)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがきFAXでも投句できます。


さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(俳句ポスト365のページ参照)


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.6

concerts are finished
shoeshine and lots of flowers
next year please be kind

靴光り花香りたる弾き納め


(直訳)
コンサートの幕が降りた
光る靴と 溢れる花束
来年よ どうぞお手柔らかに



Happy new year!

明けましておめでとうございます!(Nick)

たくさんのコンサートに恵まれ、ニック大満足の去年でした。山で英気を養い、春から新たなコンサートに挑戦します。今年もよろしくお願い申し上げます。(朗善)



ナサニエル ローゼン チェロリサイタルin 松山
開催決定

ナサニエル ローゼン(チェロ)
花岡 まり子(ピアノ)

2014年4月7日(月)19時開演
松山市民会館中ホール
大人3500円
学生1500円(80枚限定)
★チケット発売は1月上旬予定




ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第34話
堤宏文スペシャルビッグバンド

赤ジャケのドラムの連打がお年玉 投槍

 余りにもエネルギッシュなので「百歳は確実だよね」なんて言葉が仲間内で囁かれ始めた矢先、堤さんが交通事故に遭ってしまった。これでマミコン(堤さんの俳号)さんも普通の人になっちゃう、と思っていたら「堤宏文スペシャルビッグバンド」の話が舞い込んできた。話を持ち込んだのはNKPビッグバンドを率いる小林直人さん。堤さんは、この誘いに最初「後遺症の俺を殺す気か!?」と思ったそうだ。しかし、これが良かった。
 NKPに日和佐富美彦さん率いるクラッシュ ジャズオーケストラが合流。愛媛大学軽音楽部ソリューションのバリトンサックス、山根彩果さんと松山大学軽音楽部ソアレのテナーサックス、前田樺奈さんが参加。堤トリオのピアノ、渡部由紀さんとベースの吉岡英雄さんの全面支援。愛娘、麻実子さんのゴーサイン。こうなると後遺症どころの騒ぎではない。堤さんは愛媛松山オールスター ビッグバンドのドラマーとして、勝負服の赤ジャケットを纏うこととなった。御歳七十二。

火事だ!喧嘩だ!sing sing sing みちる

 「keeping Count!」とカウント ベイシーを前面に出したコンサートだったが、ファーストステージはグレン ミラー、デューク エリントン、ベニー グッドマン等のナンバーで楽しんでもらった。そのグッドマン楽団の十八番曲、ジーン クルーパ張りの堤さんのドラムに誘発され、飛び出した大爆笑句がこれ。しかも詠手が、いつも冷静沈着なあの俳人だなんて。みちるさんは「嵐を呼ぶ男」やったんや!!

冬天へ欠けたシンバル炸裂し 光海
 今回の一番人気句。ドラマーは気に入ったシンバルがひび割れしたら、その部位を上手く切り取って愛用する。堤さんも「割れてもいいじゃん!! ジルジャン!!」と言って叩き続けている。

あらたまの波動のごときドラムかな  神楽坂リンダ

 セカンドステージの一曲目が「ザ ヒーツ オン」。テンポが240以上とはドラマー泣かせだが、決まった時の快感は格別らしい。その波動はブラスアンサンブルとテナーサックス ソロを鼓舞し続ける。

ベイシーのジャズに昴は息をする チャンヒ

 田丸真裕さんのピアノが見事にベイシーだった。高橋直樹さんのベースと、このバンドの正にフレディー グリーンだった矢野元さんのギターが堅実なリズムを刻んでくれた。トランペットはミュートプレイで痺れさせてくれた横山俊昭さん、男勝りのソロを聴かせてくれた田中千尋さん、教え子の前で株を上げた今村薫さん。トロンボーンの薬師寺学さんと畠山顕治さん、森山由香里さん、段ノ上真由美さんのハーモニーが際立っていた。アルトサックスは華麗な音色の棟田彩香さんと木下由花さん。由花さんは持ち替えのクラリネットでも唸らせてくれた。そして、初代専属歌姫のSHIHOさんが抜群の歌唱力を披露してくれた。

ワンモアタイムワンモアワンス春近し 蛇頭

 アンコールナンバーは「パリの四月」。ワンモアワンスのクリスマス ヴァージョンが春を予感させてくれた。



http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


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ラクゴキゴ


第34話
『かぜうどん』
〜 演技力が問われる噺 〜

あらすじ
 真冬の夜、北風がぴゅ〜っと吹きつける中、うどん屋は今日も店(屋台)を引いて歩く。
 ある家の中から声が。「はよ行かな、うどん屋行ってしまうで。」と子供に言っているようだ。期待して待つが、どうもうどんの注文が来ない。おかしいと思ってその家を訪ねてみると、「子供が寝る前におしっこせなあかんので、うどん屋の店の灯の明るさでやらそうと思てただけや。」と言われる始末。
 次はぐでんぐでんに酔っぱらった男にもからまれ、結局うどんは売れない。
 ここはあかん、別の場所でと移動すると、バクチをやっている連中から大量の注文が入る。
 注文しに来た男は、かすれたような声。なぜかと言えば、バクチをしている身、大声ではバレてしまうので小さな声でうどん屋に話していたのであった。
 うどん屋も事の次第を理解し、小さなかすれたような声で返した。
 「うまかった。またおいでや。」
 この一言にうどん屋は喜び、またこの付近に明日来てみようと思う。
 するとまた一人の別の男が小さなかすれたような声でうどんを注文しに来る。
 うどん屋、「またバクチかな?」と期待し「十杯ですか?」と訊くと「いや、一杯でええねん。」
 他の者にはあとで食わすのかとまた期待しつつ一杯を作り渡すと、実にその男、うまそうに一杯のうどんを平らげた。
 またかすれたような声で「うどん屋、おおきに。うまかったで。」
 うどん屋も小声で「ありがとうございます。」
 男「うどん屋。」
 うどん屋「何です?」
 男「おまえも風邪引いてんのか?」



 えー、オチおわかりいだけましたでしょうか?
 前半はバクチをしているためわざと小さなかすれたような声で話す男、そして後半は本当に風邪を引いてかすれてしまった男。
 この二者の描き分けが難しいところです。
 演者によっては、オチの部分に「おまえも、(ゲホッ)風邪引いてんのか?」と、咳を入れたりして分かりやすくするやり方もあります。
 11月号のうどん そばの時にも書きましたが、この噺を聴いたあとも、無性にうどんが食べたくなります。
 最近のインスタント麺、本当にすごいですね? 特に袋麺はラーメンもそうですが、うどんもかなりのレベルです。
 ラジオで、日清のどん兵衛のコーナーをやっていますので、毎週新商品やリニューアル品の試食が出来るのですが、毎週驚きの連続です。
 湯を入れただけでこんなのが出来るの?と、技術力の高さに舌を巻くばかり。
 ただ、寒風吹きすさぶ外でわざわざ自分で作ったインスタント麺を食べる人はなかなかいないと思います。
 そこで久しぶりに食べてみたいのは、松山市内を軽トラで走ってうどんを売ってた「たぬきや」。今はもう見かけません。大学生の時くらいまではあったのにな。
 「ダルマラーメン」は今でもあるようですが。
 「たぬきや」、復活を切に望みます!!

格好など言うておられぬ風邪の日は


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ホンヤクサイホンヤク


翻田 訳蔵

俳句歴1年? のど素人俳人、翻田訳蔵がネット上の翻訳ソフトを使って、名句を翻訳、再翻訳し、そこからインスパイアされた(パクッた)句を発表していこうという馬鹿馬鹿しくも実験的で図々しいコラムです。


今回の俳句
 引くときの綱のほそさよ猿廻し 原石鼎

エキサイト翻訳(英→日)

A rope when pulling ほそさよ猿廻.

 エキサイト翻訳はほんとに諦めがいいですね。半分訳していません……。
 では、再翻訳

ほそさよ猿廻を引く場合のロープ。

 猿回しをする際、ロープについて誰かに助言をしてもらったのでしょうか? とにかくロープは「ほそさ」のようです。

 続いてGoogle翻訳(英→日)

Sarumawashi'm fineness of the rope when the draw

 「Sarumawashi'm」??? 最後の「'm」は「am」の縮約形でしょうか???

 再翻訳

ロープのSarumawashi'm細かさときドロー

 結局「Sarumawashi'm」の謎は解けませんでした……。

 最後に、Yahoo!翻訳(英→日)

I Rope のほそさよ monkey mawashi when it goes down

 Yahoo!は中途半端に日本語を残しますね。
 では、再翻訳

それが下がるとき、のほそさよ猿まわしをロープで縛ってください

 何かが下がる時に、誰かが「のほそさ」さんに猿回しをロープで縛るようお願いしていますね。
 それでは、この3つを受けて一句。

 猿廻しのほそさときどきドローかな 翻田訳蔵


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お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第15回 『はい、奥田製作所。』

劇団銅鑼公演、作 小関直人、演出 山田昭一、出演 鈴木瑞穂、横手寿男、他、2013年11月18日、ひめぎんホール(県民文化会館)サブホール

10ミクロン感じ取る指落葉焚

 職人気質の社長 竹夫が倒れた。息子の鉄彦は、借金まみれの町工場を、かつてクビになった大企業流の、人員整理やコストダウンなどで乗り切ろうとするが、職人たちの離反、取引先の信用失墜等を引き起こす。一方、夢に挫折し自暴自棄になっている鉄彦の息子 登、妻と母の確執といった家庭の問題からは目を逸らしている。しかし、少年時代の思い出や、実際にものづくりに関わることなどで、多くの人に支えられていることに気づき、もう一度、昔ながらのやりかたに立ち返り、家族とも向き合う。そして、登は職人としての第一歩を踏み出す。
 と書いておきながら、必ずしも町工場や父子の話だけではない、というのは、事前セミナー学習会で来松した、作者 小関直人氏の言葉。そしてまさにその通りの、人と人との絆や働くことと生きることの意味を描いた芝居でした。

約束は楪守れぬ時あれど

 全てがうまく転がっていってしまう展開は、都合がよすぎるとも感じたのですが、それでもいいか、と思えたのは、役者さん達が本当に気持ちのいい人達なんだろうなあという空気が伝わってきたからでした。尤も、それも公演前日の役者さん達との交流会での印象が含まれていたのかもしれませんが(笑)。
 作品は作品そのものだけで鑑賞しなければならないと考える方には眉を顰められる観方かもしれません。わかります。私にもそんな潔癖なところがあるのです。しかし、そういうことも全部ひっくるめて作品なのかも、と思うゆるい部分もあったりします。読者諸氏にもありませんか? 歴史的背景やエピソード、もしくは句集の装丁から、その俳句に興味を持ったり、句会とか俳句甲子園なんかで、作者の人柄ごと作品が好きになったり……。



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。


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百年歳時記


百年歳時記


第8回 夏井いつき

天空の墓目印は烏瓜 てんきゅう
「天空の墓」の一語で、私の脳裏には新居浜市別子銅山の奥深い山中にある墓=ラントウバの光景がありありと蘇ってきました。「卵塔場 乱塔場 蘭塔場」とも書くこの墓は、元禄7年(1694)の大火災で亡くなった百数十人を祀っています。ラントウバの写真は拙著『森になった街』にも掲載してありますが、旧別子が見渡せる切り立った岩山の上にコの字型の石積みをした墓所です。
 風の吹き荒ぶ「天空の墓」、石積みに絡みついた「烏瓜」。その赤はラントウバに眠る魂たちの声かもしれないとも思われます。「烏瓜」は、この赤を「目印」に逢いに来い逢いに来いと、ゆらりゆらり「天空」の風に揺れているに違いありません。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』11月8日放送分)

縫ひて絞り縫ひて絞りて初時雨 七草
 「縫ひて絞り」とは絞り染めの作業工程でしょう。縫い具合によって絞り具合によって変化していく紋様を脳内に描き出しつつ、一針一針根気強い作業が続きます。「縫ひて絞」る白布の色、進み行く針の動き、「縫ひて絞」る工程が終わった後の藍染めの色、藍の匂い、時雨の匂い、降っては止む銀色の時雨。それらの光景が「初時雨」という季語によって鮮やかにモンタージュされていく手法に感嘆します。季語というものがここまで豊かな力をもって、季語とは関係のないフレーズを際立せるのだという事実に唸ります。
 染め上がった紺色の地に、花咲く白い紋様。「初時雨」の匂いは、藍の匂いかもしれないと、そんなことも感じた作品でした。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』11月15日掲載分)

枯むぐら我等は笑ひつつ亡ぶ くろやぎ
 一読後の不穏な心持ちは、「枯むぐら」の蔓に引っかかっている幾万の顔を想像させます。その顔の一つ一つが笑っているとは、なんと怖ろしい光景か……と鳥肌が立ちます。
 子規句の「枯むぐら」に降る「あたゝかな雨」は、次なる再生を促し約束する雨です。「我等は笑ひつつ亡ぶ」を個体の死と読めば、子へと繋いでいく命のイメージを掬いとることもできますが、掲出句が想起させるのはもっと暗い未来、つまり「我等」という人類がいつか「笑ひつつ亡ぶ」日が来るかもしれないという啓示とも読めます。「我等は笑ひつつ亡ぶ」という詩語が宣言する真実を、季語「枯むぐら」が優しく怖ろしく突きつけているようでもあります。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』11月22日掲載分)

広州の喧騒の朝蒸饅頭 とうへい
晴天へ湯気の飛びつく蒸饅頭  ドクトルバンブー
 前句、「広州の喧騒=コウシュウ、ケンソウ」という音の響きが佳いですね。「朝」の一字がポンと入ることで「蒸饅頭」の湯気がありありと見えてくる効果もあります。中国の朝の光景は、まさにこのような屋台が並びます。勢いの良い中国語の挨拶も飛び交っているに違いないと、映像が生き生きと再生されていく一句でした。
 後句、まずは「晴天」の青を描き、「へ」という方向を示す助詞がポンと入ってからの展開が実に巧い。そして「湯気の飛びつく」という描写のなんと新鮮なことか! 蒸し器の蓋を取った瞬間の映像がそのまま言葉になって飛び出してきたような鮮やかさです。最後に「蒸饅頭」という季語をもってくる語順も効果的な一句でした。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』11月22日放送分)

冬北斗アフガン荒野に水が来た 松ぼっくり
 「国境でボランティア活動をする中村哲医師に送る一句」という前書きのついた作品です。中村哲さんとは、パキスタンやアフガニスタンで三十年にわたって、病人、貧しい人、弱い人のために、医療や開拓、民生支援などの活動をしている方で、福岡アジア文化賞を受賞されているのだそうです。「アフガン荒野に水が来た」はまさに、その活動の一場面なのでしょう。
 「アフガン荒野に水が来た」という口語の語りが、諸手を挙げて喜ぶ現地の人たちの心を代弁した率直さ。柄杓の形をした北斗七星=「冬北斗」がついに「アフガン荒野」に「水」を運んできてくれたよ!という雄大な発想から生まれた賛辞の一句に、大きな拍手を贈りましょう。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』11月29日放送分)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第34回 文と写真 暇人

まる裏審査員

 あけましておめでとうございます。mhm通信も話題困窮の中無事三度目の年越しを迎えました。これも読者の皆様のおかげだと思っております。今年も宜しくお願いいたします。
 今回は気になる「まる裏」の司会者 審査員についてお伝えしていきましょう。
 司会者は前大会でもスムーズな進行をしてくださいました板倉卓人さんにお願いしました。今年も句会ライブで組長との掛け合いを楽しんでいただけるのでは。
 審査員は、前回優勝チーム「三日月T」からお一人、夏井いつき組長、松山東高等学校俳句部顧問の森川大和先生、前回に引き続きfacebookによる一般投票、そしてあとお一人は皆様ご存じのある方にお願いしました。
 時は2013年11月26日のmhm定例会、審査員の最後のお一人の選定に頭を悩ませていました。そこにあねご代表による大胆な提案があり、キム氏がある方に電話をかけました。依頼を受けた方は「『俳句甲子園』も生で見たことないのに審査なんてできない」と躊躇されていたのですが、そこは百戦錬磨のキム氏、長時間に渡る説得の結果審査員を引き受けていただけることとなりました。
 その方とは、「100年投句計画」内の「へたうま仙女」としておなじみの杉山久子氏です。へたうま仙女の選評と同じようにまる裏の審査でも切れ味の良さを感じさせてくださるのではないでしょうか。
 まる裏俳句甲子園はいよいよ1月12日(日)松山市立子規記念博物館にて開催となります。受付は9時30分から、予選開始は10時です。当日は受付の混雑が予想されますので、時間に余裕を持ってお越しください。3人1チームでのエントリーとなります。
 エントリー料は前売り1000円、当日1500円です。観戦のみの場合は500円となります。会場にお越しになれない方は昨年同様facebookにて情報を随時配信しますので是非チェックしてください。
 翌日13日には「ギヤマンに出会ふ吟行会」を行います。ガラス工芸鑑賞やおいしい昼食などもあります。松山はいくによるガイドも魅力的。どうぞmhmが提供する濃厚な新年の俳句デイズにご参加下さい。

追伸 … mhmfacebookへの「いいね」登録をお忘れ無く!


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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俳句の街 まつやま
俳句ポスト365


協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


優秀句
平成25年11月度


【鵙】
《地》 
千の鵙鳴きをり万の贄求め 樫の木
鵙鳴きて我の気配を消されたる 舞
鵙晴や熊の燻製炙る小屋 杉本とらを
肉汁のじうとしたたり鵙の声 笑松
鵙の空きっちりたたむ鯨幕 たま
鵙猛る小鉤がうまくおさまらぬ あねご
鵙やむや紙を離るる筆の先 安
あのときも鵙は警告呉れていた こま
百舌鳥告げよ王様は裸であると 鞠月
ヒッチコックヒッチコックと鵙笑う  花屋

《天》 
鵙鳴いて神宿りたる巨石かな  桜井教人


【鵯】
《地》 
鵯の嘴漱ぐ水甘からん ハラミータ
墓石の色の鵯ばかりかな ぐわ
鵯の潜り抜けたる枝の波 不知火
撃つても撃つても鵯の次から次  ポメロ親父
鵯鳴くや木霊に遠慮することなく  マーペー
何事の起こる日ひよの大騒ぎ 金子加行
ひよ啼くや訃報はいつも後ろから  ぼたん
カメラおろしぬ鵯と風の音  神楽坂リンダ
北京語のざわめく路地や鵯の鳴く 理酔

《天》 
ひよどりのあれは青き実食みし声  とおと


【初時雨】
《地》 
太陽を粉々にして初時雨 てんきゅう
芯固き香草粥や初時雨 ちとせ
初時雨匂天神町上ル ぐわ
ステッキを銀座に求め初時雨  薄暮の旅人
半過去で語るセーヌの初時雨 野純
スクリューの鈍い金色初時雨  松本だりあ
初時雨揺るるなゆるるな蔓橋 お手玉
共にゐてさみしき獣初しぐれ とおと
初時雨ほらまたすぐに時計見る 猫ふぐ

《天》 
縫ひて絞り縫ひて絞りて初時雨  七草


【枯葎】
《地》 
きんいろはかなしい色ね枯葎 すな恵
あの鳥もあの鳥も枯葎へと 吾平
枯葎より少年が次々と じろ
枯葎まだ少年のボールたち ミル
枯葎給水塔のそびえ立つ 富士山
枯葎風に酸味の残りたる ハラミータ
枯葎の家にて夢を紡ぎ居る 空
あの先が事件の家よ枯葎 軌一
カピカピの平凡パンチ枯葎 天宮風牙

《天》 
枯むぐら我等は笑ひつつ亡ぶ  くろやぎ


【蓮根掘る】
《地》 
蓮根掘るエンジン音となにか鳥 ぐわ
ねこそぎてふ痛快蓮根ゆみなりに 野風
抜けば沈む抜けば沈むと蓮根掘る  みちる
蓮掘ればぐいと河童が引き戻す 三重丸
蓮根の寝ているうちに掘ってやれ  ドクトルバンブー
掘れども掘れども痩せた蓮根ばかりなる  とおと
折れ口のひやりと白き蓮根掘る  カリメロ
畦に鍬刺して上がりぬ蓮根掘り  杉本とらを
有能な社員の蓮根掘る休暇 江

《天》 
蓮根掘る水蒼穹へ試し撃つ  田中憂馬



1月の兼題

投句期間:12月26日〜1月8日
霜【三冬/天文】
地表の温度が零度以下になると、土や草を濡らしていた露が小さな結晶となって、白く見える。目にするのは早朝だが、実際には夜のうちに起こる現象。

投句期間:1月9日〜1月15日
葉牡丹【晩冬/植物】
ヨーロッパ原産のアブラナ科の多年草。キャベツの観賞用品種で結球せず、花の無い冬の園芸用として広く栽培されている。

投句期間:1月16日〜1月22日
節分【晩冬/時候】
本来は立春 立夏 立秋 立冬それぞれの前日の総称だったが、次第に立春の前日のことを指して言うようになった。陽暦では2月3日頃にあたる。

投句期間:1月23日〜1月29日
二月【初春/時候】
寒明け 立春を迎える時季であり、厳しい寒さが残る中にも、日差しや生命感など、どことなく春めいた気配を感じるようになる。


《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成25年11月度


【鷹渡る】
鷹渡る灯台守の鷹日誌 樫の木
鷹渡る轟ともの言う桜島 ポメロ親父
露わなる倒木の峰鷹渡る 江刺のカナ女
山峡の小さき天球鷹渡る 富士山
鷹渡る三千年の御神木 権ちゃん
斎田にはじまる神事鷹渡る あねご
鷹渡る神のお山の澄み渡る  まっことマンデー
鷹渡る空は破壊に汚れたまま 紗蘭
鷹渡る原発を問う社説かな 野薊
灰色のフクシマの空鷹渡る 糠漬大将
楔もて切り出す石や鷹渡る 鯛飯
鷹渡る金色の目に百の島 ターナー島

《天》
鷹渡る砲台跡に草の波  こでまり


【烏瓜】
失うは緑の重み烏瓜 樫の木
夕暮れのひかり記憶す烏瓜 無窮花
烏瓜が夕空を吸い夜になる 睡花
烏瓜灯りて猿田彦の神 ターナー島
老優の指差す先に烏瓜 山の雪
かと言って住むことはなき故郷に烏瓜  日暮屋
烏瓜見せて始める二時間目 八十八
烏瓜眠らぬ子ども脅す唄 あねご
烏瓜赤しセシウム含有す ちろりん
烏瓜プルトニウムの火の粉かな どうだ

《天》
天空の墓目印は烏瓜  てんきゅう


【初時雨】
光るもの沈みし川を初時雨 緑の手
水笛の中のさざなみ初時雨 鯛飯
初時雨悲しみごとの皿洗う 下駄女
亡き人の話も尽きて初時雨  ひなぎきょう
山頭火の托鉢三昧初時雨 大阪野旅人
初時雨人気途絶えし献花台 烏天狗
象の背を硬く濡らして初時雨 山百合
去る猫の影は藍色初時雨 みいみ
乗船券取る手渡す手初時雨 殻嵩はるお

《天》
その昔旅は死に似て初時雨  やのたかこ


【蒸饅頭】
黒豆のへそ光りおる蒸饅頭 山の雪
肉汁の波状攻撃蒸饅頭 まーぺー
蒸饅頭ふっくら花の咲くごとく 日々草
ビーナスの乳房のごとき蒸饅頭 どうだ
そうは言ってもまずは参拝蒸饅頭 妙
参拝を終えて目当ての蒸饅頭 不知火
貧乏を面白がりて蒸饅頭 やのたかこ
陳さんの顔今日もあり蒸饅頭 たま
ボランティア十名かかりっきりの蒸饅頭  太郎
タイマーぶち切って火傷なら慣れている蒸饅頭  日暮屋

《天》
広州の喧騒の朝蒸饅頭  とうへい
晴天へ湯気の飛びつく蒸饅頭  ドクトルバンブー


【冬北斗】
野生馬の背の青きや冬北斗  風花会 山百合
冬北斗獣の声のひとしきり  エノコロちゃん
冬北斗静かにセロの弓たわむ 鯛飯
詩になる前の言葉こぼるる冬北斗  めろめろ
習作のキリンの瞳冬北斗 ちいち
青函トンネル掘った男や冬北斗 あねご
冬北斗活断層は海にいる どうだ
冬北斗モスクの町の静かなれ  てんきゅう
鶏剥いで手のひら乾く冬北斗  ターナー島
満載の二トンの果実冬北斗 さち

《天》
冬北斗アフガン荒野に水が来た  松ぼっくり


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

1月5日
御形【新年/植物】
春の七草のひとつ。キク科の二年草で、母子草(春季)のこと。野や畑に自生し、春には黄色の球形の花が茎の先に固まって咲く。

ずわい蟹【三冬/動物】
クモガニ科の蟹。日本海沿岸や房総半島以北の寒流域に分布する。山陰地方では松葉蟹、北陸地方では越前蟹と呼ばれる。

1月19日
足温め【三冬/人事】
足を乗せて暖をとるための器具。蓋をした火鉢や、湯たんぽ、行火などのほか、近年では電気を利用する足温器がある。

海苔掻【初春/人事】
浅海に海苔粗朶やネットを仕掛け、胞子を付着させて発芽 生長させた海苔を、掻き取って収穫する。


《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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100年俳句計画 掲示板


 組長&編集長&組員さんの出演執筆一覧

NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  1月14日(火)11時40分〜
  1月28日(火)11時40分〜

あいテレビ(TBS系列、全国)
 『プレバト!!』
   木曜 19時〜20時49分
※組長がゲストの俳句ランキングづけで〈隔週〉出演予定! 放送日番組欄を要チェック!

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FM愛媛
 バニラビーンズの俳句っちゃお〜!
 毎週日曜日深夜0時〜0時30分
※夏井いつきが俳句指南で出演
※FM大分でも毎週月曜21時〜放送中

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「成人の日 探梅」1月5日〆
   「毛布 節分」1月19日〆
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)、住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。


執筆
松山市の俳句サイト「俳句ポスト365」
http://haikutown.jp/post/
 毎週水曜締切/翌週金曜結果発表

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」
※ 毎週日曜発刊タブロイド判8ページ

愛媛新聞(キム チャンヒ)
 「ヘンデス俳談」毎月第一土曜日 兼題「三寒四温」 締切 … 1月21日(金)


句会ライブ、講演など

新居浜市立大生院中学校句会ライブ
 1月10日(金)

第7回句集を作ろうコンテスト表彰式
 1月11日(土)13時30分〜
 子規記念博物館 講堂

第12回まる裏俳句甲子園
 1月12日(日)9時30分〜
 子規博講堂

西予市立中川小学校句会ライブ
 1月24日(金)

第3回JR松山駅周辺まちづくりシンポジウム」
 1月26日(日)14時〜16時30分
 国際ホテル松山
 ※パネリストとして出演

内子町立参川小学校句会ライブ
 1月30日(木)

博多高校句会ライブ
 2月1日(土)



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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

お詫び 

編 本誌2013年12月号において、下記の間違いがありました。

「選評大賞2013」(2ページ)作品番号6番の作者が間違っている。

 誌面では作者が更紗さんになっていますが、正しくは三月さんの作品となります。大変失礼を致しました。
 誌面編集の段階で作者名が入れ替わってしまったようです。この誤記による審査、評価等への影響は一切ありませんが、お二方を始め、読者の皆様には大変ご迷惑をお掛けいたしました。重ね重ね申し訳ございません。
 今後こういった事の起こらぬよう、編集室一同一層注意を重ねて誌面の制作を行っていく所存です。
 以下に正しい作者名を付した作品を再掲載致します。


選評大賞2013
 入選作品

三月 6
 月涼しテトラポッドの底へ影 かのこ

 テトラポッドは波殺し。防波堤付近に無造作に積み上げられ「転落危険」の警告がある。
 渚の美しさを損なう無機質な人工物なのに心惹かれるのは何故だろう。近寄ってその暗い空隙を覗き込んでしまうのは何故だろう。
 夏の月が海岸一帯を明るく照らしている。
 引き潮の時刻、穏やかな波の音。昼間の炎熱のさめた防波堤に立つと、夜の海が心地よい風を運んでくる。太古から輝く月と現代の建造物とが調和して美しい世界を垣間見せる。
 テトラポッドに差し込む月明かり。自分の影が底へ届いたその時、ふいに心の封印が解けてしまった。過ぎた悲しみが呼び覚まされる。それを優しく包み込んでくれるのは頭上の涼しい月だ。今夜来てよかったと月を仰ぐ。



12月7日「大忘年会」報告

しんじゅ まっことマンデーさんの忘年会の扮装? コスプレ? 毎年あねごと頭悩ましております。年々ハードルが上がって困ります。私達の一年分の悩みと頑張りに一票下さい。これを皆様が読んでいる頃には次年度のコスプレが決まっていて悩み始めているころかも。
編 今年はデーモン閣下、って来年も!?

はじめまして

青萄 はじめてお便りします。2009年3月より「写真俳句」サイトでブログを開始、2013年4月「松山市俳句ポスト365」の存在を知る。そこで夏井いつきの選句 選評を目にし、衝撃を受け、即俳句ポストへ投稿。また12月に意を決し、俳句マガジン「百年俳句計画」購読申し込み、その際に見本誌を頂戴し、この俳句宇宙空間の不思議さに魅せられる。分類としては高齢らしい(ちなみに61才の)未熟者ですが、後半に伸びるタイプ?と勝手に信じております。2014年から、どうぞ皆さまよろしく引き回しの程お願い申します。
編 後半に伸びる男や冬麗(挨拶句献上)


100年俳句計画誌上編集会議

編 本誌も十年目を迎え、様々なご意見を参考にしながらリニューアルをはかっていきたいと思っています。このコーナーでは、皆様のお便りを紹介しながら、さらにご意見を集めつつ、誌面に反映させてゆきます。
 沢山のご意見をお待ちしています。今月は番外的お悩み相談。回答者を別にご用意いたしました。

今月のお悩み
元旦 二十四節季というのが、どうもピンときません。特に「立春」「立夏」「立秋」「立冬」です。なかでも「立秋」。8月上旬の真夏、どう考えても秋を感じることができません。テレビで言い訳のように「暦の上では秋ですが」などと言われても……。これって今の暦にあてはめるからですか? でも、そもそも二十四節季は、太陽暦という噂も聞くし。1か月ずれると、少しはピンとくるような気はしますが。何だかよく分からず、使いにくい季語なのです。(お悩みコーナー)

夏井いつき 私も初学の頃は、二十四節気の季節感のズレに対して懐疑的な思いをもっておりました。が、長年季語と付き合うようになって、かそけき季節の声が聞こえ、見えにくい季節の変化が少しずつ感知できる体になってきたように思います。
 八月に入ると、太陽は少しずつ濁り始めます。お盆を過ぎるその濁りの上に、上澄みが生まれ始めます。この時期を「秋暑」というのだなあと、季節折々の妙味を楽しんでおります。

編集室 この欄への提案 質問 要望 その他は、100年投句計画投稿時のフォームに書き添えてお送り下さい。また、メールでの投稿も可能です。メールで送る際は件名を「魚のアブクへ」としてお送り下さい。
メールアドレス magazine@marukobo.com



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鮎の友釣り

186
俳号 天玲

西条のユーホ吹きさんへ ぜひ! いつき組バンド結成して演奏を聴かせてください。

つれづれ 昨年は、句会にいっこも行けなかったいろいろあった俳句もろくに作れなかった。しかしそんな諸々のストレスは大忘年会で一気に放出しました。俳句のつながり、心のオアシスです。
 息子の大根(小5)に俳句の種を播いたつもりが、いまいち俳句愛が育ってきません。
 でもいつき組イベント愛はかろうじて育っているのでまあ、いいか。

次回…樹朋さんへ はやくも「100年の旗手」にご登場とは! 楽しみにしてます。


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告知


無料インターネット句会参加者募集
1月9日(木)より受付開始

俳句を増産したい方のための象さん句会
 「百年百花」や「100年の旗手」など、本誌に作品集を連載される「俳句を増産したい方」を中心に、毎週5句出しで4週間行う「本気モード全開」の句会です。もちろん一般参加も可能です。

20代のための週末俳句活動句会、略して週活句会
 俳句甲子園出身の方や、大学のサークルで俳句をやっている方など20代の俳人を中心とした句会です。この句会から「100年への軌跡」連載者も輩出します。また、交流の場としても楽しめます。

どちらも1月9日(木)
一般募集開始
詳しくはブログマルコボ通信まで
http://info.marukobo.com/



100年俳句計画投稿締切カレンダー

1/20(月)
 100年投句計画
http://marukobo.com/toukou/
 魚のアブク
 100年の旗手推薦募集

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


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編集後記


 新春対談あり、代表句集あり、俳句対局ありのギュウギュウ詰め48ページ。去年の5月号から表紙も二段重ねにし、無理矢理ページを増やしてきたけれど、さすがに今月号は記事が溢れそうだった。
 それもこれも、対談で語ったように、俳句作品だけを語る雑誌ではなく、俳句で人を元気づけたり、街を元気にしたり、未来の社会を豊かにしたり、そんなことを目指している雑誌だからに他ならない。
 そんな様々な活動を一つの雑誌にまとめるのは、そもそも無理な話で、「100年俳句計画」という志を目指す雑誌と、芸術性の高い俳句作品を目指す雑誌とは、別々に分けた方が良いという意見もある。
 しかし僕は、本当に優れた芸術作品は、例えば、ピカソの「ゲルニカ」やジョン レノンの「イマジン」などように、未来の人類にとって指針となる考え方や生き方を提案するものであると思っている。そして、そういう作品の志と、「100年俳句計画」という志とは、ずれることなく、一つの雑誌に存在させることが出来るとも思う。
 この雑誌が新しい俳句作家を生む土壌となり、その作家達が未来の人類に向けて作品を送り出すとき、本当に未来が変わり始めるのだと思う。
(キム)


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次号予告 (195号 1月1日発行予定)


次回特集
第7回「夏休み句集を作ろう!コンテスト」結果発表
 小 中学生達が40句の句集を作り、装丁を含め応募する作品賞の結果を発表します。

俳句対局 第2回 龍淵王決定戦 後編


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2014年1月号(No.194)
2014年1月1日発行
価格 600円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子