100年俳句計画9月号(no.190)


100年俳句計画9月号(no.190)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
露草とマルチーズ 菜々枝


特集
殿様ケンちゃんとじいが答える俳句質問箱
文 キム チャンヒ



好評連載


作品

百年百花
 樫の木/朗善千津/亜桜みかり/柊ひろこ


放歌高吟/夏井いつき

100年俳句計画作品集 100年の旗手
 むめも/かのこ/睦


百年琢磨 津川絵理子

新100年への軌跡(最終回)
 俳句/紫音/久保田牡丹
 評/都築まとむ/キム チャンヒ


選者三名による雑詠俳句計画
関悦史/阪西敦子/加根兼光


へたうま仙女/杉山久子

自由律俳句計画/きむらけんじ

詰め俳句計画/マイマイ



読み物
Mountain Cabin Dispatch/ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
ホンヤクサイホンヤク/翻田訳蔵
お芝居観ませんか?/猫正宗

句集を作るドキュメント
俳句対局道場/正人
百年歳時記/夏井いつき
mhm通信/暇人

読者のページ
俳句ポスト365
一句一遊情報局
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




表紙リレーエッセー


露草とマルチーズ
菜々枝

 去年の九月中旬だったと思う。散歩の途中露草の群生に出会った。その鮮やかな紺瑠璃に息をのみ、思わずそこに屈み込んでしまった。徳富蘆花の「花ではない、あれは色に出た露の精である」という言葉がふっと浮かんで来た。即納得。露草を見つめていると、だんだん雑念が消え、心が澄んでゆく。
 突然知らない小犬が私の膝に体をこすりつけて来た。手入れのゆきとどいたまっ白なマルチーズ、頭に赤いリボンをつけている。紺瑠璃と純白、どちらも美しい。やがてマルチーズはご主人さまに抱かれて行ってしまった。
 それまで気づかなかったのだが、まわりには気持よさそうに色々の秋草が風に吹かれていた。全部少しずつ摘んで帰って籠に活けてみた。なかなか風情があってよい。
 今年もまた、露草の季節がそこまで来ている。まちどおしい。


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特集

殿様ケンちゃんとじいが答える俳句質問箱


文 キムチャンヒ


 俳句に関する質問を先月号にて募集を行いました。その結果、届いた質問は1通。それでは記事が成り立たないので、編集室にて質問を大々的に水増ししてお届けします。
 ちなみに、殿様ケンちゃんとは、「夏休み句集を作ろう!コンテスト」のキャラクターです。

Q1
俳句って何ですか?(季語太郎)

ケンちゃん それにしても、質問が1通とは……。
じい 我々に質問することが思いつかなかった、というか、我々への信頼が無いということでしょうな。
ケンちゃん 事実が重い。
じい 気を取り直し、最初の質問に答えましょう。
ケンちゃん 編集室が適当に水増しした割には、いきなり壮大な質問だな。壮大すぎるので、じいが答える。
じい えっ、そう来ますか……。えっと、季語の入った五七五のリズムの詩を俳句と言います。
ケンちゃん じゃ、季語が入っていないのは、俳句じゃないのか。
じい それがそうとも限りません。季語が入ってない俳句は、無季の俳句と言います。
ケンちゃん じゃ、季語はいらないじゃん。五七五で俳句でいいじゃん。
じい 無季の俳句というのもありますが、一般的には季語を入れますし、また、同じ五七五で表現する詩でも、季語を使わない川柳というのもあり、元を辿れば俳諧から分離し……。
ケンちゃん なんだかはっきりしないなぁ。じゃ、作者が「俳句です」って言えば俳句ってことで、いいんじゃない?
じい ら、乱暴な。……でも確かに、五七五の詩を俳句として提示されれば、季語を味わって読んで欲しいということになりますし、同じ五七五の詩でも川柳として提示されれば、季語を一つの単語として読んで欲しいということになりますね。無季の句も、一つ一つの単語を、季語を読み解くように味わってほしいという狙いがあるとも言えます。また、あまりに既存の俳句と異なる作品は、時間の経過と共に整理されてゆくでしょうし、取りあえず作者が俳句と提示すれば俳句ということで良いような……。
ケンちゃん はい、質問1終わり。

Q2
夏が過ぎて秋になってるのに句会に夏の句を出してもいいんですか?(みゆう)

ケンちゃん 秋の句会に夏の句を出しても気にしない人もいれば、それを理由にけちょんけちょんに言う人もいるかもしれないし、いろんな句会があるので、そんなことは句会のメンバーとよく話し合って決めてよ。質問2終わり。

Q3
兼題、お題、席題の違いってなんですか?(季語太郎の母)

ケンちゃん 季語太郎の母って、無理やりだなぁ。
じい 「兼題」は「兼日の題」、すなわち、期日までの題という意味で、句会の前に出される題のことです。それに対して、その場で出される題を「席題」といいます。
ケンちゃん ボクは使い分けるのが面倒なので、全部「お題」。
じい ご勝手に。

Q4
結社ってなに?(三凡君)

ケンちゃん 結社に入ったことがないから分からないなぁ。どこでもいいから入ってみて、感想を教えて。
じい 殿、そんな無責任なことを言ってはいけません。そもそも結社というのは、同じ目的で集まった団体のことを言います。俳句結社なら、俳句を目的に集まった団体のことです。
ケンちゃん なんだ、俳句の団体なら、ボクも入っちゃおうかな。
じい 俳句入門のために、まず結社に入る方が多いようです。ほとんどの結社には、その結社でどんな俳句を目指すかを決める中心人物、主宰と呼ばれる人がいます。結社に入ることで、主宰と師弟関係になる場合がほとんどなので、「俳句を教えて貰うならこの主宰」と思う結社を選ぶのが得策です。
ケンちゃん スポーツクラブみたいに、近いところで選んじゃダメなの?
じい ダメな決まりはありませんが……。
ケンちゃん なんとなく結社誌の表紙が格好いいところで決めちゃダメなの?
じい それでも別に問題ないのですが……。
ケンちゃん 試しに入ってみて、気に入らなければやめて、また他のところに入ってみて、気に入らなければやめて、また他に入って、結局辞めて一番最初に入っていたところに戻ったりしちゃダメなの? あるいは、色々なところに重複して師弟関係を結ぶのはいけないの? あるいは……。
じい もう勝手にやって下さい。どんな人間関係になっても知りませんよ!
ケンちゃん じい、そんな無責任なこと言わないでよ。
じい ……では最後の質問。

Q5
よく「頭で作ったような俳句」という評がありますが、「頭で作ったような俳句」と「そうではない俳句」ではどこがどう違うのですか?(悩めるふじみん@脊髄反射で作句できたら良いのに)

じい 唯一読者から届いた質問がこれです。
ケンちゃん あ、分かった! コンピューターがランダムに単語を選んで俳句を作るソフトのことを言っているんだな。人間が作った俳句が、「頭で作ったような俳句」で、コンピューターが作った俳句を「そうではない俳句」。以上、解決。
じい そんなことではないと思います。俳句には写生を重んじた歴史があり、「頭で作ったような俳句」というのは、季語の現場に基づいていない、頭の中の想像だけで作ったような俳句をそういうのだと思います。
ケンちゃん でもその俳句が、実際に見た光景かどうかなんて、ワカンナイよ。
じい ま、その俳句が人を感動させるかどうかは、そこに描かれていることが「真実」かどうかではなく、そこに「真理」があるかどうかだと思います。
ケンちゃん 「どうか」が多すぎてよくワカンナイ。
じい 要するに「頭で作ったような俳句」というのは、「もっともらしいけど、ちょっと嘘くさいな」ということ。逆に「嘘くさいけど、もっともだな」と思う俳句はそう言われない訳で、その「もっともだな」というところが真理な訳で……。
ケンちゃん 読者からの質問が一通しか来なかった理由が分かった気がするよ。  (おしまい)


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2013年度 第二期 2回目


「光 闇」樫の木

夏蝶の風に放てる羽化の熱
朝風に涼しき妻の額かな
時々は猫の引っ掛かる網戸
夏蝶はワルキューレ光に騎す
渇くかわく夏蝶の翅ひらくたび
夾竹桃ぽつぽつ灯る夕餉の窓
樹の洞の深みに太る蟻の闇
後悔は増える百日紅咲くように
蛇の眼の赤い荒野に囚われる
蝉の屍の薄き硝子のごと砕け
ザリガニでザリガニを釣る原爆忌
水鳥の水尾つらなりて秋に入る


1965年、松山市生まれ。大分県在住、家具職人。妻と猫二匹と陽気に暮らす。俳句歴7年。合唱歴35年。




「また」朗善千津

野を跨ぐ脚ほつそりと秋の虹
明月ややや短めのフェルマータ
蟋蟀のあまた鳴きをる理髪店
柴又の鰻の噂してゆきぬ
戦争と平和また読む渡り鳥
馬たちの背に令嬢と秋の花
富士薊バスを待たせて恋をせよ
団栗の独楽立ち上る掌の皺に
店主また瓢箪細工してをるか
マタマタと二輪タクシー止まる秋
三椏や五六人ずつ登山口
露の戸を叩けばマタイ受難曲


引っ越し完了。ニックはコンサートに向けて準備万端。私は来年のまる裏俳句甲子園予選突破へ向け特訓中。




「メロンの蔕」亜桜みかり

込み入つた話冷製パスタ巻き
缶底より涼しきホワイトアスパラガス
野心たりメロンの蔕を切落とす
水みちて眠気を誘ふ金魚玉
夏野なつ野いちばん戦がないのが薊
万緑や離島の溜池に小島
左舷に寄るな大暑の渦を見たくとも
炎帝や砂に埋もるる縄太き
おのころ島神に仕ふる鵜の棲める
この大樹にして青蔦のなすがまま
夕涼や鳩は円陣ほどきゆく
遠郭公村境なる魔除札


愛媛県松山市生まれ。天秤座。ホームは今治三日月句会。趣味は卓球、絵手紙、そして健康情報収集。




「九月また」柊ひろこ

深宇宙のぞくしづけさ蟻地獄
西日射す窓の聖母子嵌め殺し
のうぜんのゆたにたゆたにちりはつる
晩夏病む薔薇の腐敗が身にうつり
起立して挽歌斉唱敗戦忌
不覚にも秋の風鈴鳴りにけり
たまゆらの水蜜桃を掌
火衰へラピスラズリの爽気かな
黄金のビザンティン光かなかなかな
朝顔のつぼみ錐なす夜なりけり
紺にして紫であり黒葡萄
塔二つ瀑布となりし九月かな


2005年俳句と遭遇。2008年「銀化」入会、2011年同人。長く人間をやらせていただいております。俳句に安住してしまわないようにせねば。




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放歌高吟


婆娑羅
夏井いつき

怒声折りたたみてハンカチの白し
炎天は鉄の削れてゆく匂い
日傘巻き締むれば凶器めける黒
あおられて日傘は風よりもひかる
冷製若どり避暑地のサンドウィッチOH!
フランスの船やパセリのほの苦し
腕木式潮流信号雲の峰
盆波や軍艦島の影くろぐろ
海藻の婆娑羅と臭う盆の村
鉄パイプ三百本を積む残暑
秋蝉の胸の潰れて濡れにけり
塩の名は「渦の花」とや厄日来る


 かれこれ二十年以上前の話になるが、当時開催していたサラリーマン句会「さのじの会」は、転勤族を中心とした句会だった。最初は私のマンションの部屋が会場だった。夜七時、自分のための飲み物と食べ物を提げた背広姿の男たちが、三々五々と集まってくる。仕事をなんとか切り上げ、会場までの電車の中でなんとか五句をヒネリ、男たちは意気揚々と乗り込んでくる。
 到着した者から勝手に飲み出すので、全員揃う頃にはかなり喧しい状態になっている。句会が始まると、ヤジと合いの手が飛び交う。爆笑に次ぐ議論で句会がちっとも前向いて進まない。結局のところ、毎回午前様になってしまうのが常だったが、月に一度のその句座は、次の一ヶ月を乗り切る活力の源でもあったように思う。
 メンバーが次第に増えて、句会は市内中心部の飲み屋で行われるようになったが、「さのじの会」の雰囲気は全く変わらなかった。社会的地位の高い人たちが多かったようだが、句座は俳号だけの付き合い。清々しいことこの上ない句座であった。
 当時のメンバーが一気に転勤してしまう時期が来て「さのじの会」は自然消滅していったが、「東京俳句の穴〜通称ロマンチカ」という名の東京句会には、当時のメンバーが今も出入りしている。
 そんな「さのじの会」元メンバーの一人に、ひょんなことで再会した。松山市で行われる全国知事会に出席するため当地を訪れた長野県知事阿部守一氏。彼の俳号は、その名も「ガバナー」だ。
 「師匠が、この俳号付けてくれたおかげで、知事になっちゃったかな?!」と笑うガバナー氏。「えーアタシが付けたんやった?」と記憶をたぐるが、まあ、誰彼なく無責任な俳号を付けてきた過去の実績があるので「そうやったかな、あはは!」と笑ってごまかすしかない。
 「あの句座は実に放埒で、それが何より楽しかった」「まさに放埒、まさに婆娑羅な連中!」と互いに昔を懐かしむ。
 「婆娑羅」とは【遠慮なく、勝手に振る舞うこと。またはそのさま】をいうが、伝統 権威 常識に対して自由奔放に立ち向かいつつ、派手で喧しくて、でも風流を解する心は持っている……と説明すれば、そのニュアンスは想像して頂けるか。
 「あの婆娑羅な仲間たちとの再会を長野の地で目論まないか?!」という話で盛り上がる。いつか、必ず!という楽しみがまた一つ。




夏井いつき公式ブログ「夏井いつきの100年俳句日記」

http://100nenhaiku.marukobo.com/


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読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2013年7月号 〜 2013年9月号 3/3回目)


 金秋 むめも

歳時記を枕に猫の夏深し
木天蓼や正しいオトナの作り方
星祭り時間薬の効く頃に
有りの実を供え祈りの鈴ひとつ
笑われて風船蔓の萌黄色
一翼の旅するこころ雁渡し
貴腐ワイン彗星に澄む琥珀色
明け方の流星群を見る方法
朝刊は未明に届く大花野
金秋や一角獣に触れて恋


初めての投句は6年前、「俳句の缶づめ」でした。趣味は俳句ですってまだまだ恥ずかしくて公言できない、でも「いつき組」組員ですとは声を大にして言いたい、そんな松山の、猫好きアラ還女です。



 風の色 かのこ

峰雲へ漕ぎ出せヨーホ海賊船
青岬子等の背びれの光りたる
遠泳の一列光の網を解く
デネブより葉書の届く夏休み
月涼しテトラポッドの底へ影
蓮の花水より出でて風の色
噴水のシンコペーション石の街
向日葵の空へピアノを開け放つ
宇宙より大兜虫飛来せん
晩夏の月シーラカンスの独り言


小学校勤務。息子たちの出場した俳句甲子園の観戦で、俳句に魅せられました。小学生といっしょに、俳句のある生活を楽しんでいる毎日です。



 八月 睦

星の咆哮百日紅は眠る
夜光虫溺れる指の夜想曲
たゆたゆと喜雨のボンボンベッドかな
夏掛のさらりと老いてゆきにけり
内科医の笑ふ眼ループタイ涼し
電話鳴る休憩室パイナップル匂ふ
蜩や体育倉庫の粉だらけ 
八月のぐにゆりと犬の腸に虫
砂蹴つて念仏踊榊燃ゆ
増え過ぎた鹿は撃たれて神の山


むつみ。八幡浜市在住。ホームはさえずり句会。熱いことが大好きな感動屋。日々の感動や想いを素直に詠むこと、そしてそれが誰かに伝わることが目標。



次回10月号〜12月号連載者決定

 5月から7月末までの期間、「この人の作品集を読んでみたい」という気になる俳人を、1人3名まで推薦していただきました。
 その中から推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行い、次回10月号〜12月号までの連載を行うメンバーが決定いたしました。

 蛇頭さん
 哲白さん
 てんきゅうさん

 3名の方には10月号から、作品集を連載していただきます。
 お楽しみに!

随時推薦募集中

 次々回連載者の推薦も募集しております。集計期間は6月末までとなります。集計は累積ではなく、毎回新たに集計しています。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。


読者が選ぶ人気俳人!
「100年の旗手」連載者推薦募集

 今求められているのは、読者が読みたいと思う俳句作家。「100年の旗手」は、連載する俳人を、編集室ではなく、読者が選ぶコーナーです。
 「この人の作品集を読んでみたい」と気になる俳人を、1人3名まで推薦してください。その中から、推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行います。
 あなたのお勧めの俳人を是非推薦してください。

 推薦の方法

「この人の作品集を読んでみたい」という人を3名まで選んで(自薦は不可)、その俳号と活動場所(句会 誌面等) 推薦者ご自身の俳号(本名) 住所 電話番号を明記して、100年俳句計画編集室「作品集推薦」係へ送ってください。ハガキ FAX Eメールで受け付けています。Eメールの場合は件名を「作品集推薦」としてください。また、専用のインターネット投稿フォーム(http://www.marukobo.com/100kishu/)でも受け付けています。※投稿フォーム利用の場合を除き、推薦は他の投稿等とは分けてください。

締切 10月末日

 現在連載している3名の方以外なら、一度連載された方も含め、どなたでも推薦できます。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。


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百年琢磨
先月号の「100年の旗手」に寄せて

 子鹿の眼 津川絵理子

「ジャンプ」 睦

蚊を打つて血縁薄き墓に水
 「蚊を打つて」によって、血縁薄い墓に参ることのやるせない思いが出ている。蚊から血縁の連想なのかもしれないが、「血縁薄き」と言いながら、血の繋がりを強く意識しているようだ。

日焼子の渡る橋から日の暮れて
 日焼子を詠んでいるけれど、昔子供だった頃の自分と重ねているような。「日の暮れて」が郷愁を誘う。

白々と月下美人の起動せり
 月下美人の作り物めいた感じが「起動せり」に表れている。その他〈雲の峰立つ二桁の背番号〉にも惹かれた。野球なのだろうか、その辺には詳しくないけれど、背番号の「二桁」がパッと目に飛び込んできて、印象的である。


「空の日」 むめも

緑陰のこむら返りを耐えるのみ
 なぜ緑陰なのか、こむら返りはたまにあることながら、句にすると不思議な感じがする。本人は痛みに耐えて苦しんでいるのに、遠くからだとただ涼しげに緑陰に憩う人に見える。そのギャップ。

淋しさに名前をつける半夏生
 上十二は具体的ではないのだが、半夏生の季節感が合っている。どこか淋しさに通じるからだろうか。

海の日があるなら空の日は今日ぞ
 海の日からの発想で、面白い句と思った。空の日を勝手に作っているのだが、「今日ぞ」と思えるくらい晴れ渡った気持ちの良い天気なのだろう。


「野の雨」 かのこ

宛先は小児病棟かたつむり
 よく読めば寂しさが感じられる内容なのだが、「かたつむり」がそれだけに終わらせない。物語がありそう。

児等の手へ一人ひとつの枇杷あかり
 子供たちへ枇杷の実をひとつひとつ手渡してゆく。大事そうに渡していく様子が「枇杷あかり」に表れている。「あかり」というだけあって、とてもあたたかそうな色だ。子供たちを大切に思う気持ちが感じられる。

雨の渓いよいよ黒き子鹿の眼
 黒い眼を詠んで、雨に濡れそぼつ子鹿の可憐さが際立つ。可愛いだけではなくて、自然の中で生きる子鹿の哀れさも。


津川絵理子
1968年生れ。「南風」所属。句集『和音』。平成19年、俳人協会新人賞、角川俳句賞受賞。


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新 100年の軌跡


最終回


未完 紫音

空蝉や選ばれぬよう隠れをり
老鶯や神社の番で行き遅れ
午時花咲く完結しない完結編
今だけは傘ささず行く青時雨
大学の九十分と蝸牛
交代で顔出す幼児片かげり
萍や目の前の目に映るひと
新盆や祖父の戒名難しく
朝顔の後ろ姿を見てなくて
B5 35行の青買う処暑
思い出と指紋のついた紫苑かな
秋雨に溺れたままの油性ペン
無防備な象に林檎を投げるかも
初秋刀魚身をほぐされてアタマホネ
ピーマンの苦味で過去を消してみる


紫音
1990年生まれ。松山市在住。2011年から俳句甲子園実行委員会所属。2012年2月、俳句を始める。2013年3月、松山大学法学部卒業。




木星の色 久保田牡丹

潮騒にゼリーの震へたるテラス
雨か汗か分からぬほどに走りけり
半夏雨ランプは黄色なればこそ
熱帯夜音なく地球回りけり
夕焼にまぶされてゐる百葉箱
あをぞらを指して海月の育ちけり
さまざまの訛飛び交ふ夏の海
日光といふ雨受くる日傘かな
傘さして傘買ひに行く半夏生
保育園ジャングルジムの灼けにけり
捕まへて木星の色なる田螺
空梅雨のダム山肌の威を正す
星受くる蓮の真白きかたちかな
足裏に小石際立つ夏野かな
まづかたちこはして蠅を殺めけり


久保田牡丹
1991年生まれ。松山中央高校出身。「どんな人にも分かりやすい俳句」を目指して頑張っています。よろしくお願いします。




かたち 都築まとむ

思い出と指紋のついた紫苑かな 紫音
 「指紋のついた紫苑」とは何だろう? 野に咲いたままの紫苑ではなさそう。摘まれて萎れてしまった紫苑か。「思い出」も萎れた紫苑のように乾いていくのか。このセンチメンタルに詩を感じた。

無防備な象に林檎を投げるかも 紫音
 「林檎を投げるかも」で今手の中にある林檎の感触を得た。動物園の象は無防備。その象に林檎を投げてみたくなる衝動。これは餌としての林檎ではなくて、凶器としての林檎と読んだ。林檎ごときで象をいじめるなんてことはできはしないのに。

星受くる蓮の真白きかたちかな 久保田牡丹
 「真白きかたち」の蓮の花は「星受くる」にふさわしい。明け方開く蓮は、消えていこうとする星たちを受け止めるために開いていくのだ。美しい光景と時間を詠んだ句。

まづかたちこはして蝿を殺めけり 久保田牡丹
 蝿叩きで打たれた蝿は一瞬で死んでしまうものだと思っていたが、本当は「かたちこはして」しまわれた後ゆっくりと死んでいくのかもしれない。叩かれた蝿自身が死を受け入れられずにそこに転がっている。


1961年愛媛県八幡浜市生まれ。自分の句歴11年に驚くばかり。第3回選評大賞優秀賞。



あをぞらを指して キム チャンヒ

 どんな俳句を作っても、結局自分を映す鏡となってしまう。その鏡には、今までの自分ではない姿を映したいのだけれど、それがなかなか難しい。

朝顔の後ろ姿を見てなくて 紫音
 朝顔の後ろ姿をしげしげ見たところで、新しい発見があるとも思えない。しかし、そんなことが気にかかる不安定な気分こそが、ひょろひょろと伸びる朝顔らしい。
B5 35行の青買う処暑 紫音
 単なるノートではなく、「B5 35行の青」。学校や職場で指定されているのか、あるいは自分の拘りか。その青いノートに記される新しい文字を想像すると清々しい。

あをぞらを指して海月の育ちけり 久保田牡丹
 小さな細胞だったころの海月を想像したことがなかった。海水浴では迷惑な存在の海月も、こういわれると愛おしくなる。「あをぞら」の表記も透明感があって優しい。
傘さして傘買ひに行く半夏生 久保田牡丹
 誰の傘を買いに行っているのかは定かではないが、母親の傘を借りて息子が自分の傘を買いに行っていると読むと可笑しい。多少状況が違っても、こういうこと、誰にもあるよなぁ。


1968年生まれ。松山市出身。本誌編集長。


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超初心者から中上級者まで楽しめる
100年投句計画

 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天 地 人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選 並選を選んでいます。今回の先選者は、阪西敦子さんと加根兼光さん。後選者は、関悦史さんです。

 「へたうま仙女」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は杉山久子さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。

 「詰め俳句計画」は、マイマイさんによる、二つのフレーズに合う季語を投稿するコーナーです。季寄せや歳時記さえあれば、全くの俳句初心者でも挑戦できます。
(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)
写真:白鯨


選者三名による雑詠俳句計画


先選者 関悦史

 猛暑が続いていますが、今朝はちょっとだけ気温が下がり油蝉が鳴いていました。蝉は暑くなりすぎると鳴かないとの説があり、じっさい私も四十度近い高温のときに全く鳴いていないのに気がついたことがありました。そのせいもあって「あ、今朝はせいぜい三十度前後か。涼しいな」などと感じてしまいましたが、これはもう明らかに感じ方が変です。そのうち季語のイメージも「蝉」イコール「涼しい」に変わってしまうのかもしれません。



流し目の上手な象にやるバナナ ポメロ親父

 「流し目」が単なるアイコンタクトを超えて、浮世絵に描かれた白象のような細められた目をも思わせ、利口な動物というだけではない、親しみ深い妖怪変化とでもいったイメージまでが浮上してきて、餌をやるというだけのことから非日常的なコミュニケーションの愉楽と、応答があるということの根源的な満足感を引き出しています。下五は一見象よりバナナを中心にしてしまう措辞に見えますが、「バナナやる」の報告に落ちることを防ぎつつ象を邪魔しない適切なバランスを作っています。



浜昼顔一輪砂の城の上 紗蘭
 砂の城は浜昼顔が伸びてくるまで持つものでもないから、この一輪は誰かが摘んで置いたものでしょう。動詞 形容詞のない落ち着いた作りで、砂の城に不意に咲いた巨花のような浜昼顔の清新さが捉えられています。

仏飯の湯気まっすぐに夏の朝 ぴいす
 夏はお盆もあり、終戦日もありで先祖が近しくなる時季でもあります。亡くなったばかりの人へのお供えではないでしょう。乱れのない「まっすぐ」な湯気と「夏の朝」が心の平穏と爽快感を帯びた充足を思わせます。

憤怒する形や香水の拡散 緑の手
 目には見えない匂いの広がりを「形」で捉えて、赤外線センサーとか別の生物の知覚のような変なリアリティを出しています。「憤怒」が形の形容と、香水の不快感とを一息に横断していて、俳句ならではの言い方。

水替えて金魚より水ばかり見る 大塚めろ
 金魚もきれいに見えているはずですが、一仕事終えた後の満足感を味わうために見るのは、金魚よりもむしろ水。おかしみとともに水の透明感と涼感、中を泳いでいるのに鑑賞してもらえない金魚の実在感も出ています。

白南風やキスをしたがる若者は 鯉城
 晴れやかな南風と若いカップルなので意外性はないはずなのに生きた感じがあるのは「している」ではない「したがる」の手柄でしょう。「は」から上五に返って若者は白南風であるという詩的飛躍も含んでいます。



サフィニアのあなたがそばに羅を 藻川亭河童
椎茸を干し薬膳となす漢 レモングラス
神戸にてフランス餡パン買う文月 小雪
ドッドッド心音高き吾子の夏 幸
牛乳を一気に飲むや山茂る 迂叟
夕立や校区に残る村境 鞠月
変ですねなぜか松の木に風鈴 お手玉
夏の風邪待合室の椅子固し ほろよい
夕立に彼の白髪がまず濡れて 匠磨
半分は島に隠れて遠花火 空山
完熟のトマトがふたつ気だるき日 ターナー島


先選者 阪西敦子

 大人たちも夏休みに入った。普段、冷房の効いているところで働いていると、家は暑い。でも、やっぱり夏休みの暑さは嬉しい。冷夏というよりはよい。で、この暑さは残暑である。まだ、暑いのだけれどさみしい。



水替えて金魚より水ばかり見る 大塚めろ

 水を見ることはなかなかに難しい。無色透明だし、動かない。一方金魚は赤いし、ひらひら目を引く。それでも何か、水ばかり見てしまうということは、ある。「水替えて」にさしたる意味はなくて、見ている水は鉢の中の水ですよというぐらいのことで、あまり脈絡なく、ただただ金魚鉢への怪しい固執を味わいたい。焦点が合わないままにしておく心地よさというのがある。この句の流れなどもそれにうまくマッチしているとも言える。



木犀を見上げてをりぬ遅刻の子 迂叟
 そんなことだから遅刻をするのだと、おっしゃるだろうか。しかしまあ、すでに遅刻しているのだし、よいではないか。そもそももう彼の意識の中には、守るべき時間はない。木犀の登場とはそのようなものだ。

ひとすぢの光を渦として糠蚊 牛後
 ふーんと飛んでいる糠蚊が光の筋の中に入って、その羽が光を含む。すこし生活のことを離れた糠蚊の一瞬。そんな姿もあってよい。

大荷物提げて夏休みに入る 八十八
 小学生であれば上履や割烹着や植木鉢やなにか、大人であればなんであろうか。休みに読もうとしていた本か、あるいはし残した仕事か。後者は大変お気の毒だけれど、それでも休みへの意気込みはある。

仏飯の湯気まっすぐに夏の朝 ぴいす
 夏の朝は昼の暑さに体力をとっておくためか、静かで空気が均質な気がする。丁寧に炊きたての最初のご飯を仏前に供えて、その湯気へ視線が向いた。久々の故郷かもしれないし、祖先を思ったのかもしれない。

青芝に犬放たれて空を追ふ 人日子
 ひとであっても青芝はうれしい。嗅覚の優れた犬ならばなおさら刺激され、興奮するだろう。その無条件の青芝の喜びを、空を追うととらえた。駆けだすスピード、跳躍の大きさ、青芝の広さが同時に見える。



汗臭きウルトラマンに抱かれし子 藍人
ホスピスの廊下いっぱい星祭 こぼれ花
鳩の後ついて行く子や風薫る れんげ畑
酒蔵は風の遊び場蔦青葉 更紗
宴席へ夏の海より来し漢 更紗
総身の鉛のおもさ昼寝覚 省三
我が闇に光入れんと蛍狩 人日子
夏の月悲しみのことを考える アンリルカ
初秋の匂い五合目より葉書 さわらび
真下から見上ぐ飛行機南風 瑞木



後選者 加根兼光

 気になる人がいる。有名であったり無名であったり年上であったり若かったり。仕事を一緒にしている人や呑みにいく人や時に気にくわない人や。なぜだか、それは気になる人。だから今日も会いに行ったり電話をしたり、時に怒ったり反対したり。気になる人と気になることをするために今日も生きているはず。俳句ではどうか。実は気になる人は一人なんだけど、差しさわりがあるから言わない。


特選句
機関車の吠えた余韻や夏の雨 紗蘭
 咆哮の残り香が雨に吸い込まれ消えて行く。

街灼ける都市高速の高さから 不知火
 高速の俯瞰からビルや豆粒の人まで灼ける。

鬼百合や獄舎の丘は町はづれ 浜田節
 人影も無い丘に立つ獄舎を見守る百合の赤。

冷奴そりの合わないはす向かい まるにっちゃん
 はす向かい。角と角突き合す訳にもいかん。

のばす手の遙かなる先夏の空 アンリルカ
 小さい自分と雄大な空が青くも痛過ぎる。

碧天へ指笛烈し慰霊の日 哲白
 止むことの無い鎮魂と青すぎる沖縄の空。

朝に踏む槿瑞々しく潰る 理酔
 生体のまま踏み躙る残酷な朝。そして足裏。

夏帽子折って畳まば夜が来る 恋衣
 仮想で畳む夏帽子の人の夜への渇望なのか。

ほたるほたる最後は流されつつ光る さち
 終焉まで光るままでいる蛍としての定め。


並選句
一国を烏頼りの如き夏 KIYOAKI FILM
這い出づる音は空耳蝉の穴 はまゆう
ゴキブリが溢れた母の炊飯器なのに たかこ
花合歓や夕日まみれの猫の髭 もね
擬宝珠や母の電話のぶつきら棒 蓼蟲
ゴキブリのはらわた出して歩きをり 小市
隧道を数えて村へ竹落葉 富士山
悲しみのやうに炎日続きけり みちる
簪は翡翠と決めし夏衣 幸
道の真中を耕耘機芒種なり 樹朋
梅漬くる妻のおゐどの艶めかし ヤッチー
日の盛り欠伸上手な赤子抱く かのん
軽トラ全開ペアの麦藁帽 あらた
短夜を紡ぐ編み込むジャズピアノ のり茶づけ
独航といふ水馬のやうなもの 牛後
水無月や高層ビルの避雷針 権ちゃん
秋蝶や遅延証明鋏痕 てん点
次の客来るまで空梅雨の話 鞠月
玄海の雲の果てなる夏野かな 一心堂
翼竜の翼広げて夏木立 ほろよい
まとわりつく黒揚羽十一番大吉 一走人
雲の峰橋脚の島動かざる 八十八
高三の補講の窓に大西日 八木ふみ
夏草や社員章貼るふるき家 青蛙
夏蝶の必ずやって来る時間 和音
あの頃を飲めば逆光ラムネ玉 犬鈴
梅雨明ける憎らしいほど青い空 輝女
工房の窓の北向き守宮鳴く 樫の木
風蘭や離れて継がぬ親の職 樫の木
気だるげに昇り始めし夏の月 おせろ
日盛りを来て石垣の里に風 魔心地
戦好きとは炎天の赤絵の具 桜井教人
羅や償ひはなほ遠くあり 桜井教人
木彫の少年の目に夏果てる てんきゅう
夏蝶と風を探してゐる夕べ てんきゅう
セロ弾きの背に秋思めく硝子窓 七草
星空へ赤を散らしている金魚 紅紫
花柘榴いまだ咲きおり実を成して まんぷく
誰が為にタンバリン鳴らす秋初めて しんじゅ
夏雲の水掃くごとく尾根越えて 野風
身に余る獲物飛び込む蟻地獄 大塚めろ
夏の月アンモナイトは眠り解く 浜田節
潔く晴れて男の山開 コナン
三つ指をついて出迎へ心太 なづな
初蝉の音なく消えてゆく右手 今比古
ナツアカネ来て産みたての空泳ぐ ちろりん
白昼のもの音絶えし夾竹桃 省三
パパイヤのカクテルグラスにある夕凪 親タカ
水馬雲の欠片の水たまり 北伊作
十三は短かい命天の川 サキカエル
熱帯夜みどりの冬にあこがれる エノコロちゃん
岩清水掬めばひっそり神の森 哲白
お別れの人と最後の葛饅頭 むらさき
二等船室ひろびろと捨団扇 カラ嵩ハル
炎帝やベースボールの道険し 西条の針屋さん
田植え機に一声かける出入口 青柘榴
じゃんと蝉塩ふりかけるゆで卵 ターナー島
能面となる木片や晩夏光 さわらび
月の豆弾いて一人缶チューハイ 明日嘉
蟷螂の笑いもせぬが泣きもせぬ カシオペア
うたた寝のページをめくる扇風機 恋衣
ほたるほたる最後は流されつつ光る さち
広縁の開け放ちたるゴーヤ風 あおい



関悦史(せきえつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および『ホトトギス』生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 2010年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に『ホトトギスの俳人101』『俳コレ』など。

加根兼光(かねけんこう)
1949年大阪生。俳句集団「いつき組」組員。第9回俳句界賞受賞。



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へたうま仙女


文 杉山久子

しぶき浴び透ける水着やバニラの香り  ふーみん
 こんなにも堂々と水着への期待感を詠んだ句を知りません。そしてなんといってもこの句の凄いところは「バニラの香り」字余りに驚きと更なる興奮が出ています。視覚から入り、意外な嗅覚との融合が一層恍惚の世界へと誘います。水着は白ね。

 なぜか最近時々丁寧口調になってしまう仙女です。まあ相変わらず暑いので気にしないように。

名人の詰め碁物言う扇子かな だなえ
 名人は扇子使いもお手のもの。ある時は優雅にある時はピシリと扇子を自在に使って相手を揺さぶる? キム編集長描くところの詰め俳句のマイマイ氏の姿を思い出してしまったわ。

冷房と熱気まぜこぜ店の前 元旦
 商店街など歩くとよく経験することだけど、「まぜこぜ」の生き生きした表現がリアルかつ類を見ないわね。

携帯は洗濯機の底夏あざみ 柊つばき
 やっちゃったわね。ご愁傷さま。しかし夏薊のくっきりした強さに開き直りの肯定感が出ていて……あなたはもう大丈夫。

転居先不明で戻る蛇の衣 小木さん
やっとこさ緑陰出たと思ったら 小木さん
 蛇の衣を送るのは嫌がらせかそれとも相手に「お金持ちになって欲しい」という思いやりか? どっちにしてもトホホな姿が笑えるわ。この並んだ二句、順番を逆にしたらなんだかいい感じじゃない?

午前五時きのふの木槿拾ひけり 未々
 映画の出だしのような美しい映像を思わせる。何故午前五時? 何故拾う? などと無粋なことは言いっこなしよ。

夏めくや口説かれ上手になってみる ケンケン
 勝手になってくれ……(と言いたいのをぐっとこらえて)
「この作者は普段は、というか春、秋、冬は非常に自制心の強い人です。スリーシーズンに押さえつけていた願望が夏の到来とともに解放されたのですね。自分の気持ちに正直に! 俳句はそれが一番です」

青林檎噛みしむ美味さ車椅子 たっ君
 正直といえばこちらも。思わず「美味しい」と心から感動したのでしょう。同時投句の
夕焼や妻と歩いた渡月橋 たっ君
 は昔の思い出でしょうか。今青林檎の美味しさを全身で味わっている句と合わせて読むとゆらゆら美しい句に見えてきます。

退屈な鳥ぬらしている夕立 ひでこ
 この鳥は夕立を喜んでいると思われます。退屈からほんの少し解放されて。十七音に余裕が感じられます。「追放」が目の前ですぞ。ご用心。

覚えなき着暦二件木下闇 洋子
 一件ならもしかして間違いか?と。しかし二件となると自分にかかってきたのは確実です。待てずに二回目をかけたことを思うといよいよ執拗さを感じます。木下闇の場面効果もあり、ちょっと背筋が寒くなりますね。昔「着信アリ」とかいうホラー映画もありましたっけ。涼しくしてくれてありがとう。

 ということで、今月は追放者を一人も出さないという快挙!
 猛暑にもかかわらずへたうまの道を驀進の皆さん、苦しゅうない近う寄れ。



杉山久子(すぎやまひさこ)
1966年生まれ。第二回芝不器男俳句新人賞。句集『春の柩』、『猫の句も借りたい』『鳥と歩く』。


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ

 海外のスポーツ選手などのコメント訳見ていると、「〜を誇りに思う」と言う表現がよく出てくる。しかし日本語では多分「〜自分にとってはとてもよかったと思う」くらいのニュアンスが妥当で額面通りでは大仰すぎるのではないだろうか。しかしこういう海外映像で育った若い日本選手が、先日臆面もなく「〜を誇りに思う」などとインタヴューで応えていた。日本人にとって「誇りに思う」はもっと別次元にあると思うのだが……。そんなことが気になるのはオッサンの証拠なのだろうか。



炎暑の町折れ曲がり番地なし たま

 「町折れ曲がり」という表現がよく効いていると思う。町が折れ曲がっておれば、さわやかで気持よいわけがない。暑苦しい町の暑苦しい時間の停滞がイライラするぐらいみごとに想像できる。おまけに番地が見当たらないのである。もし家を探しているとすれば、これほどのクソ暑さを感じる状況はないだろう。「町折れ曲がり番地なし」は、すべて炎暑に帰結して無駄がない。景や状況を拡大するのではなく、逆に凝縮、圧縮した力強さがこの句にはあると思う。




終戦忌こんなところに黒子 鞠月

 戦後70年近く……。終戦の日はもはやそれぞれの人の胸中に深く静かに沈澱しているとすれば、声高に終戦の日を叫ぶことだけが終戦忌ではないだろう。終戦の日と思わず見つけてしまった黒子。その距離感とか因果関係は第三者には解りはしないが、そこには戦争を自身のなかで整理消化しきった人が持つ穏やかな余白が感じられる。不思議な魅力がある句です。

オブラートがついて離れぬ夏 幸

 先日オブラートを買ったらいちご味だった。いちご味だろうとマグロ味だろうと、オブラートはひっつくのだ。微熱でもあって多少汗ばんでおれば、間違いなくひっつく。ひっついて離れないのだ。オブラートに夏をみつけたところがエライのだ。

蝉が死ね死ね死ねとうるさい 匠磨

 この投げやり感漂うところが、自由律ならではの魅力といえば魅力かもしれない。そう言われれば蝉の鳴き声は「死ね死ね死ね……」に聞こえる気もする。蝉に怒っているふりをして実際はもっと違う何かに怒っているのかもしれない。そこが人間くさくてやや滑稽で、ついでに人となりまで類推できる……まさに自己をみごとに表現できている句だと思う(実際はどんな方か存じあげませんが)。

間口三間青田かな あらた

 「間口三間」と言えば京町屋を思い浮かべる。しかし素直に解釈すれば、京町屋に青田はない。地方に行けば間口三間くらいの狭さの小さな昔のお店とかがあって、そのまわりには青田が広がっている……そう考えればまだまだ気持ち良い風景が浮かんでくる。なにしろ「間口三間」と「青田」しか要素がない。余計なことを言いすぎてないことが想像をかきたててくれるのだろう。まさに読み手に委ねられた句とも言えます。

儂はプロじゃから炎昼も穴掘る ポメロ親父

 怒りとか嘆きとか人の生の気持をストレートに表現したい時、自由律は向いていると思う。しかしヘタすればただのボヤキなることを覚悟しなければならない。この句は半分は炎昼に怒っているのだ。と同時に半分はプロの気概を誰かに訴えているのだろう。炎昼もだが、むしろその誰かに訴えたい精神の状況が暑苦しいのだ。「穴掘る」という行為のシンプルさで余計際立っていると思う。



大夕立なぐられている蛙 今比古
雨の降りかたなど忘れて夏の空 緑の手
われは真水の湧き出る泉 ケンケン
歩行者へむき出しのカンナ咲いてゐる みちる
1年を折り返す日に晴天を賜る まんぷく
喪の軒に燕くる 迂叟
川に水無く人の海に溺れる だなえ
日焼けが剥けても黒い しんじゅ
二弦を張り替えたような虹が消える 大塚めろ
永遠の別れにふざける 理酔


並選
全身にアイシャドーつけたい  KIYOAKI FILM
天気予報はっきり雨と言わんかい 藻川亭河童
世界は饒舌に日本は寡黙になる夏 藍人
アリストロメリア口中の飴 たかこ
夕焼けに銭湯の煙 もね
植木屋が来て金魚鉢に蓋をする 蓼蟲
夏風を巻き込む旅客機エンジン 紗蘭
生き延びていきのびてゴキブリ 小市
土用とて鰻食わずともよし 洋子
ラスベガスの噴水はダンサー ヤッチー
粉々にされる前のまくなぎ 牛後
可視光線浴び夏蝶となる 権ちゃん
ただお前がいい 一心堂
両替機修理中ひまわり咲いてます 一走人
耳の穴に蚊が 和音
玄関にあげはのとまっている夜 輝女
捨て猫の兄弟が取っ組合う食堂裏 樫の木
冷房から冷房へとショッピング 元旦
心太どっちつかずは罪なこと 空山
水着形の日焼け脱げない しんじゅ
梅熟るる臓器提供カード 親タカ
怯まぬ白であるヒメジョオンである 北伊作
弁当忘れただけのメール 柊つばき
蟻の行列まだはじまりと終わりを知らぬ  エノコロちゃん
ひまわりのまんなか凹む 小木さん
立泳ぎ海の美容体操かな むらさき
死ぬなよ銀次大西日の犬小屋 カラ嵩ハル
向日葵の花びらあんがいやわらかい  台所のキフジン
大社夏木立をそよぐ歴史 松ぼっくり
どっちの顔も中途半端で半夏生 青柘榴
温泉の湯煙で田植えが見えない ザッパー
金魚は困った顔ができない 瑞木
浅川マキの嘆息 理酔
議員さん選挙の時だけ汗をかく カシオペア
桃葉湯ひたひた天然痘の注射痕 桔梗



きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「層雲」同人。句集『鍵の穴』(文芸社)、『鳩を蹴る。』(プラネットジアース)、『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)。特技 妄想、泥酔。


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詰め俳句計画


出題 文 マイマイ

今月の問題
 次の(  )の中に共通する秋の季語を入れて下さい。
地下街を抜け(  )で待つ
(  )や航跡うねりつつ


 出題の意図としては「7音の季語求む」という感じだったのだが、そのためか珍答続出。アウト、セーフの線引きに悩む今日このごろ……。

地下街を抜け夏の蝶で待つ
夏の蝶や航跡うねりつつ
 匠磨さん。さちさんは白南風。迂叟さんは打ち上げ花火。いずれも夏の季語。残念、級外。分かり易いアウトでした。

地下街を抜け銀河行く船で待つ
銀河行く船や航跡うねりつつ
 藍人さん。後出の妻迎舟のことでしょうか? 私の持っている歳時記にはこの記載はありませんでした。級外。今比古さんは秋蝉の前。親タカさんは名月の前。これを許すと音合わせをいくらでもやれてしまう。厳しく級外。一走人さんの新涼の空も微妙。迷った末に級外。

地下街を抜け満月で待つ
満月や航跡うねりつつ
 藻川亭河童さん。景は見えるのだが字足らずでリズムが悪い。7級。不思議なことに私とリズムの合わない人が今月多数。おせろさん、野風さん、コナンさんは銀漢。七草さんは夏の果て。未々さん、カラ嵩ハルさんは宵闇。蓼蟲さんは七夕。レモングラスさんは十六夜。幸さんは秋天。空山さんは秋口。しんじゅさんは流灯。洋子さんは秋の燈。エノコロちゃんは秋の灯。同じく7級。KIYOAKI FILMさんは秋の海。小市さん、カシオペアさん、ちろりんさんは天の川。サキカエルさんは秋の宿。これらは5音だが、やはりリズムが厳しい。7級。大阪野旅人さんは終戦記念日で8音。やはり、リズムが問題。7級。亜桜みかりさんは精霊舟。緑の手さんは銀杏並木。瑞木さんは二百十日。これらは6音で字足らず感が強い。7級。輝女さんの色無き風も6音なのだが、定型に近く感じた。「色無き」と「風」の間を軽く切って読むことで、前句は下五が決まり、後句は中七に読めるからだろう。内容もフレーズとつかみどころの無い季語が合っている。4級。では7音ならリズムが解決かというと……。

地下街を抜け六道参りで待つ
六道参りや航跡うねりつつ
 翔ちゃあちゃん。前句は句またがりのリズムで読めるが、後句のリズムはぎくしゃくしている。内容的にも厳しい。7級。青柘榴さんは切子燈籠。前句面白い情景。後句がどうか。6級。ケンケンさん、鞠月さん、みちるさん、魔心地さん、ポメロ親父さんは秋の初風。あらたさん、ふづきさんは秋の夕焼け、だなえさん、元旦さん、だりあさんは秋の夕焼。樫の木さんは水草紅葉、理酔さんは満天星紅葉。それぞれ景が見えて面白いが後句のリズムはやはり気になる。5級。みんな7音なのだが……。今回5 2で切れて読めるかどうかがリズム的には重要のようだ。

地下街を抜け蛇穴に入るで待つ
蛇穴に入るや航跡うねりつつ
 小木さん。リズムが良くても内容がどうでも良い訳ではありません。7級。

地下街を抜け仲秋の月で待つ
仲秋の月や航跡うねりつつ
 ほろよいさん。歳時記に「仲秋」「月」それぞれの記載はありますが、「仲秋の月」では載っていませんでした。グレーゾーンですが秋の月の変形として一応セーフと判定しました。名月を連想させますがそうは言ってないのが良いのか悪いのか……。4級。たっ君は十八夜月。れんげ畑さんは上弦の月。しっかり月の形が見えた方が個人的には好み。3級。富士山さん、北伊作さんは真夜中の月。これは歳時記的には真夜中に上がり始める月で名月からかなり経過した欠けた月のこと。ヤッチーさん、大塚めろさん、のり茶づけさん、人日子さん、台所のキフジンさんは十六夜の月。どちらも「真夜中」「いざよ(う)」という月にかかる別のイメージが句の情感をより膨らませている。2級。

地下街を抜け星合の空で待つ
星合の空や航跡うねりつつ
 牛後さん。音合わせでアウトにしようと思ったら、ちゃんと歳時記に載っていました。前後句ともに七夕のロマンチックな情景。1級。

地下街を抜け妻迎舟で待つ
妻迎舟や航跡うねりつつ
 妙さん。七夕を踏まえつつ、もう一捻り加えてあって面白い。初段。

地下街を抜け色変えぬ松で待つ
色変えぬ松や航跡うねりつつ
 笹百合さん。前句、「松」で「待つ」って……。それは、まあ、良しとして、地下街の人工的な空間と松の緑との対比が面白い。後句は島々を抜けていくフェリーを思い浮かべた。色変えぬ松が鮮やか。初段。


今月の正解
地下街を抜け鵲の橋で待つ
鵲の橋や航跡うねりつつ
 たかこさん、なづなさん。よくぞたどり着いて下さいました。二段。


11月号掲載分の問題(9月20日締切)
 次の(  )の中に共通する秋の季語を入れて下さい。
専守防衛用の(  )二つ三つ
(  )の尖り求人情報誌



マイマイ
2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人。第一回大人コン「多面体」にて優秀賞受賞。句集『翼竜系統樹』マルコボ.コムオンラインショップにて販売中。将棋推定初段。棋友募集中。



【100年投句計画】投句方法
 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可) 俳号(なければ本名の名前のみ) 本名 電話番号 住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。
ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙女」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、9月20日(金)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがきFAXでも投句できます。


さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(俳句ポスト365のページ参照)


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Mountain Cabin Dispatch


ナサニエル ローゼン(訳:朗善)
山梨で暮らす世界的チェリスト ナサニエル ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.2

Early morning dew
Quiet walk with happy dog
Two deer, motionless.

朝露の果てに佇む鹿二頭

(直訳)
朝早い露のなか
元気な犬と 静かな散歩
鹿が二頭! 微動だにせぬ



I am preparing for a concert tour. We are going from Hong Kong to Tokyo and then to Seoul and Pusan. There is excitement everywhere, so I must remember to keep calm and eat slowly.

 コンサートツアーの準備に明け暮れる日々。僕らは、香港を皮切りに、東京、ソウル、釜山と回る。
どこでも舞い上がっちまうだろうが、心して冷静を保つんだ。それからゆっくり食べること。

訳:朗善



ナサニエル ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2013年7月より山梨へ移住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第30話
「ブルー シティ」 鈴木勲

盃に迷う五線譜水田雨 圭酔

 僕がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリの「JAZZ BLEND」は、今年度末で10周年を迎える。そのキッカケとなった「Kの酔っぱらうまで」って番組が凄かった。キャスターのK氏はシナリオなしのぶっつけ本番、生放送の最中に酒が飲めることを条件に番組を引き受けた。毎週月曜日の午後10時スタートで、一応夜中の2時頃を終了としたが、話が弾めば朝まで飲んで語った。メートルが上がれば過激な話題もバンバン飛び出し、アシスタント役のO女性事務局長をハラハラとさせた。クレームも度々局に寄せられ「そもそも何で番組中に飲んだくれるんや」というリスナーに「そういう番組なんです」と局長は開き直った。
 我が国の放送コードの枠を十分にはみ出したこの番組のレギュラー ゲストに、何と僕が抜擢されてしまった。40半ばのオッサンが、社会貢献を使命とする職場へ徹夜状態の二日酔いで出勤するという不条理が許されるのか? と迷う間もなく飛んできた殺し文句がK氏の「付き合ってくれる日は、あんたのジャズのレコードを思う存分かけてあげるから」で、以来月1回の今治通いが始まった。

地平までベースが唸らせて銀河 チャンヒ

 成り行き任せだけど一本筋は通ってる。通るがかなり危ない。と、何ともジャズっぽい番組のオープニングで流す曲は、鈴木勲のセカンド アルバム「ブルー シティ」のB面「プレイ フィドル プレイ」と決めた。スラム スチュアートが書き下ろした哀愁のメロディーを鈴木は「ダー、ダダッダー」と口ずさみながら弓で弾き、これに井野信義のベースが絡む。日本のブルーノートと称されたレーベル「スリー ブラインド マイス」を象徴する重厚で黒いサウンドだ。

夏帽を目深にベーシストの指は 藤実

 今ではラヂバリの伝説となったこの番組を「月に1回だけ俺のジャズ番組にしてやろう」という僕の目論見は、K氏の個性と語りに見事打ち砕かれてしまった。しかし、それを哀れに思った局長は、僕のために週1回約1時間の枠を何と再放送付きで確保してくれた。これが「JAZZ BLEND」誕生の裏話である。
 このJAZZ俳句は小島のり子トリオのライヴで詠まれた。したがってジャケ句ではないが、レコード・ジャケットに写っている鈴木の帽子はニューヨークの生活にも慣れ、やがて日本で開花する若き日の彼の才能を包み込んでいるかのようである。

哀しさを歌うギターや秋の蝶 蛇頭

 「ブルー シティ」の成功は、鈴木のサウンドとリーダーシップが共演者を大いに鼓舞した結果だと僕は思っている。ダブル ベースのフロントで菅野邦彦のピアノと渡辺香津美のギターが哀感と力感、そして華やかさを交互に押し出してくる。

月光の海の底へと右の指 兼光
「ブロー アップ」はジャズ ディスク大賞の日本ジャズ賞に輝いた鈴木の初リーダー アルバムである。ファースト アルバムが今回のサブタイトルとはややこしいけれど、僕はこの句をA面の1曲目「アクア マリーン」の雰囲気で味わった。神秘的な鈴木のオリジナル ナンバーである。



http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


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ラクゴキゴ


第30話
『田楽喰い』
〜 貴方も「ん廻し」に挑戦!! 〜

あらすじ
 金の無い若い男たち、酒を呑みたいことだけは一人前。なんとか金を遣わずに呑める算段を考えるが、どれも成功しそうにないことばかり。
 兄貴分の家に酒樽が届いたのをみつけ、そこで呑めないものかと相談する。兄貴は見かねて「よし、酒は何ぼでもある。ただ肴は田楽だけや。近所の豆腐屋が田楽屋を開店させたんや。」
 田楽屋は試しにどんどん焼いて持って来るという。
 ただ、何の趣向も無しに呑み喰いするのはつまらんということで、『ん廻し』をやろうということになる。『ん廻し』というのは、言葉の中に『ん』が一つ入ったら田楽を一本、二つなら二本取って食べられるというルール。
 ある男「それはワシよういわんで。」
 兄貴「おまえ、一本持っていき。」
 男「なんで?」
 兄貴「よういわん……の『ん』や!」
 こういう具合に『ん廻し』が始まった。
 「れんこん」…二本
 「人参大根」…三本
 まぬけな男が「野菜を言うたらええねんな。ほな『きゅうりん』で一本や。」「きゅうりやがな。ムリヤリつけてもあかんで」「たまねぎん……こいもん……かぼちゃん……無いなあ。」「おまえ無いのばっかり言うてんのやがな。」
 中にはこんな強者も。
 「『先年神泉苑の門前の薬店、玄関番人間半面半身、金看板銀看板、金看板根本万金丹、銀看板根元反魂丹、瓢箪看板灸点』と、四十三本もらおか。」
 そしてついに火事の描写をする者も。
 「うー、かんかんかん、半鐘がジャンジャンジャン、どんどん田楽持ってこいよ。喰いながらやるで。うー、かんかんかん、ジャンジャンジャン、火事が大きいさかいなかなか済まんぞ。うー、かんかんかん、ジャンジャンジャン……」
 届いたばかりの田楽を口にしたが「なんやこれ! 生やけやないか!」
 兄貴「火事やさかい、あんまり焼けん方がよかろぉ。」



 「田楽喰い」とも、「ん廻し」とも呼ばれます。噺の時間の伸縮が自在ですので、五分でやろうと思えば出来、二十分にもなります。
 また、この噺の前半を「寄合酒」として独立させて演る方法もあり、それはそれでまた別の噺として面白いストーリーです。
 日常会話には限りなく『ん』が使われるので、現代の言葉も取り入れて演じる噺家さんも多く、ここらあたりはその人のセンスがうかがわれるところ。
 僕の大好きな桂雀三郎師は、男が「かぼちゃ」を出した時に、「かぼちゃなら別の言い方があるやろ。呼び馴れてるのが。」「とうなす」「ちがうがな。『ん』が二つも入ったやつがあるやろがな。」「えー、二つも、えー何や何や。」
 ここで噺を聴いている者は頭の中に『なんきん』が思い浮かんでいるわけですが、雀三郎師は見事に男にこう言わせます。
 「あー、わかったわかった!! パンプキン!!」
 初めてこの件を聴いたとき、ひっくり返りそうになりました。
 みなさんもぜひ「ん廻し」をやりながら呑んでみて下さい。きっと悪酔いするはずです。
 さて。豆腐に木の芽味噌を塗って焼く田楽。わがふるさと大洲では初夏の味として今でも食べられております。
 新大豆で作られた新豆腐の田楽、これはこれでうまそう。もちろん、新酒をちびりとやりながら。

看板に「田舎風」とあり新豆腐


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ホンヤクサイホンヤク


翻田 訳蔵

俳句歴1年? のど素人俳人、翻田訳蔵がネット上の翻訳ソフトを使って、名句を翻訳、再翻訳し、そこからインスパイアされた(パクッた)句を発表していこうという馬鹿馬鹿しくも実験的で図々しいコラムです。


今回の俳句
 名月やどちらを見ても松許り 正岡子規

 「ばかり」は漢字で「許り」と書くのですね。勉強になります。では、さっそく、エキサイト翻訳(英→日)から

It is 松許り whichever it sees [ a bright moon or ].

 「松許り」訳しませんでした……。Wordでこの原稿を書いておりますが「入力ミス?」と校正チェックが入るほどですから、翻訳ソフトもお手上げなのでしょう。
 では、再翻訳

それは、どちらを見ても、松許りです[明るい月、あるいは]。

 お! なんか、惜しいような。けれど、「あるいは」……なんなのでしょう?

 さて、Google翻訳(英→日)は「松許り」をどう訳してくれるでしょうか?

In other Matsumoto even look at either harvest or

 「Matsumoto」? 「月」はどこへ?
 再翻訳

他の松本でもどちらかの収穫を見てみたり、

 ちなみに「harvest moon」だと「中秋の名月」だそうです。なぜ「moon」を省略してしまったのでしょうか?
「見てみたり、」……なんなのでしょう?

 最後に、Yahoo!翻訳(英→日)

To see beautiful moon and both; and pine り

 「り」だけ残しました。
 では、再翻訳

美しい月と両方とも見ます;、そして、松り

 それでは、この3つを受けて一句。

 まっもとでっきもみたぃししゅうかくもみたぃしぃ 翻田訳蔵 


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お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第12回 『ハムレット』
[劇団東演公演、作 ウィリアム シェークスピア、翻案 演出 美術 ワレリー ベリャコーヴィッチ、出演 南保大樹、能登剛、豊泉由樹緒、他、13年7月10日、ひめぎんホール(県民文化会館)サブホール]

 デンマークの王子ハムレットは、前国王たる父が、叔父によって殺され、王位を簒奪されたことを、父の亡霊に告げられる。苦悩に揺れつつ復讐を誓うハムレット。彼の意思と狂気は、彼へ思いを寄せる少女オフィーリア、現国王の王妃に納まっている母、そしてさらに多くの人を巻き込んだ悲劇へとなだれ込んでいく。

夜霧には父の御霊か我が影か

 簡素な空間に、吊り下げられた数本の巨大な円筒。照明が仕込まれたそれは、地を揺るがすような音響とともに、ある時は佇み、ある時は揺られ、携えられ、その影と光の変化によって、場面を変え、心情を描写し、空間そのものに緊張感を生み出します。
 役者達もまた、その抽象的な舞台に埋没しないために、あるいは、挑むかのように、一種様式化された独特な所作や、群舞や舞踏のような動作を交えながら縦横無尽と奔走。それとともに物語も加速され、一気呵成、スペクタクルに駆け抜けていきます。『ハムレット』はシェークスピアの戯曲では最長のものであり、本公演も三時間になんなんとするものでありながら、その時間を感じさせないものでした。その疾走感は、「演劇界のスフィンクス」とも呼ばれる本作の、謎や余韻さえも置き去りにする勢い! それが本舞台を、現代的で理解しやすいものとしていたと同時に、物足りないものを感じた人もいたようです。

留まるか露と消えるか蚯蚓鳴く

 ただ、やはりそこには、舞台でしかできない表現と、それが生み出す感動があったのだと思います。その分野で出来ることを突き詰めた表現の面白さと力強さを感じることができた公演でした。



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。


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マガジン化10年目記念?
句集を作るドキュメント


最終回 キム チャンヒ

 この連載も今回で4回目。ここまでで決まったことは、以下の通り。
 1、本の大きさ、ページ数と句数。
 2、本のタイトル、以上。
 リストにするとあまりにも進んでいないのがまるわかりで、自分でもドキドキしてしまう。
 しかし大丈夫。「連載その2」で紹介した句集制作システム(仮)が、今回本領を発揮する(はず)。
 まずは、以前に分類した句集に使えそうな句510句を、一覧でプリントアウトする。一度ざっと読み、全体を把握する。やはり、紙に印刷したものは、パソコンの画面とは違い、頭の中にすっと入ってくる。本のタイトル『COSMOS』を頭の片隅に置き、自分にとって象徴的な俳句を数句選び、それを元に章見出しを決めることにした。そして立てたのが、以下の7章。数字の後の言葉が仮の見出しで、括弧の言葉が章のテーマ。

1.闇(静寂)
2.夏の月(親子)
3.金魚(生死)
4.天使(希望)
5.蜂の星(ファンタジー)
6.人間の名前(人間)
7.冬の季語(俳句の挑戦)

 今度は、この章立てに沿って、510句の俳句の仕分けをする。
 印刷した俳句の一覧を見ながら、句集制作システム(仮)に、一句ずつ1〜7の数字を入力してゆく。数字を入力すると、後は各章ごとに自動的に分類した一覧ができあがる。その一覧から更に、俳句を選んでゆくことで、最終的に各章の中身を作り上げる仕組みだ。
 分類を進めてゆく過程で、どれにも当てはまらない俳句もあれば、いくつかに当てはまる俳句もあり、このシステムはまだまだ未完成だなと感じつつ、それでも現在順調に分類中。あとは、それら俳句の並びを整えて完成というところまで来た。
 また、表紙についても現在検討中。レコードのジャケットのように、作者の写真を表紙にしたいと思っているのだけれど、恥ずかしい結果となりそうで、まだ踏ん切りが付いていない。『サラダ記念日』は作者が表紙だったし……。完成品をお楽しみに。
 最後に、句集を作る作業でつくづく感じたことは、至極当たり前のことではあるが、俳句は一句一句それぞれ別々に味わうのが基本だということ。
 章立てや前後の俳句のイメージに左右されず、俳句を作ったときの衝動を、読者にダイレクトに伝える手段は、句集という方法以外にもあるかも知れない。また、小さく思える句集スタイルのサイズが、俳句を入れる器として案外と相応しい気もする。
 いずれにしても、今後の企画に活かせてゆけたらと考えている。


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俳句対局普及プロジェクト 俳句対局道場


第3回「俳句対局失敗集」
ナビゲーター 正人


「俳句対局道場」は俳句対局という遊びを楽しむためのコーナーです。

前回のおさらい
 俳句対局は“席題句から一漢字あるいは一単語をいただき、制限時間内に俳句を作る”ゲーム。
 俳句対局で高得点を得るには俳句の質も勿論ながら、作句速度も重要な要素。投稿作品を元に、作句時間短縮に役立つかもしれないいろんな発想法を見ていきました。さて、時間点の次のお題は?

俳句対局の勝敗は点数制で決まります。点数に作用する要素は作品点、時間点、減点の三つ。今回は難敵の減点についてご紹介。


新版 減点ルール公開
 昨秋の第一回龍淵王決定戦、今春の龍天王決定戦、ともに減点が試合の趨勢に大きな影響を与えました。(バックナンバー参照)
 新しく整備されたルールでは減点のペナルティを大きく緩和。一度うっかり失敗しても、その句以外で奮戦すれば充分巻き返せるように数値を再設定しました。
 作句ルール逸脱の程度により1点〜5点の減点を行います。

減点1 前の句の表記を変えて頂いてしまった。
減点2 前の句の季語の一字を季語として使ってしまった。
減点5 前の句から漢字または自立語を頂いていない。


例句で見る俳句対局失敗集
 前回への投句を元に、減点の具体例を見ていきましょう。元句に対して失敗例の句を作りながらご紹介していきます。


減点1の場合

症状をカルテに刻み込む大暑 紗蘭
 ↓ 「刻」で作ろうとして……
花野原リュックにゆれるじこくひよう

 例えば『「刻」の一字を取って「時刻」にしよう』と思いついたとします。が、土壇場で時間がない! またはうっかり漢字を忘れちゃった! こういう場合に「刻」の字を書き換えてしまってアウト、というケース。漢字はあらかじめ覚えておくか、辞書の類を手元に用意しておきましょう。

症状のひとつ花火が好きになる まとむ
 ↓ 「ひとつ」で作ろうとして……
食卓に一つつきりの桃を食む

 こちらはひらがなを漢字に書き換えちゃったケース。自立語「ひとつ」で作ろうとしたものの、つい勢いで漢字で書いちゃってアウト。急いで書く勢いってコワイ。


減点2の場合

水蜜桃硬しピーターパン症候群 さち
 ↓ 「群」一字で作ろうとして……
水無月や胴で息つく牛の群

 減点2のケースが最も起こりやすいです。原因は様々なのですが、ありがちなケースとして「他の語をとって作ってたら、気付かないうちに季語からも一字が入っていた」が挙げられます。これは特に「秋の○○」みたいな季語で起こりがち。「秋の海」とか「秋風」とか……「秋」を避けて安心してたら「風」も入っててあえなくアウト! なんて事よくあります。使いやすいだけにうっかりが恐ろしい季語です。

これはもう水母を抱きて帰る道  大塚めろ
 ↓ 「水」で作ろうとして……
秋の水下駄屋の庭に通さるる

 これは少々特殊なケース。季語「水母」の字面がトラップになります。「みず」とも「はは」とも読まない特殊な読みのために、字面の漢字一字を取ったら実は季語の一部だった……というケース。なかなかにクセ者です。
 ちょっと横道にそれますが、減点2に絡んだ厄介なケースの一つに季重なりの句が想定されます。季重なりを成立させるのは難しいため、作品点は低くなってしまう可能性が高いです。が、季重なりの句から一字あるいは一単語を頂かないといけない次手は大変です。どちらの季語に近づいても危険だから……じゃあどの単語とればいいの!? と。裏技的ではありますが、そんな攻め方もあります。たとえばこんな句を出したら相手はとってもイヤかも……

秋の水たゆんぱふんと金木犀


減点5の場合

 いきなり減点5? そうです。ここはルールがキビシイのです。俳句対局は「前の句から一字または一単語を頂き、即興で作る」のが原則。前の句からなんにも頂かず作っちゃうとゲームとして成立しなくなっちゃいますからね。事前に作っておいた句を即出しして時間点を稼ぐ、なんてことができないようにする意味もあります。

みつ豆や呆けた顔を隠し持つ 実峰
 ↓ なにもいただかない例句???
空蝉やこりやあどうしたもんだらう

 減点3の例示、どうしたもんだか。『切れ字の「や」をとって作りました!』みたいなケースが考えられるかな? しかし「や」は助詞。自立語ではないからアウトなのです。「に」とか「を」も同様ですね。

虹渡る小さく小さくなりし祖母 魔心地
 ↓ 「渡」で作ろうとして……
やまじ吹く漁船は湾を渡りゆく
 ↓ 完成! と思いきやこんなミスが……

 減点3のケース、もう一個ありました。推敲している最中に頂いた文字や言葉が消えてしまう場合です。「渡」の一字を頂いて作ってるんだけど、待てよ、こう推敲した方が「やまじ」の強い風と似合うかもなんて推敲しちゃってNG。

 ↓ 推敲してたら「渡」が「唸」に
やまじ吹く漁船は湾を唸りゆく


遅れてきた一通
食ひものの饐へるや母の痴呆症 正人
 ↓ 
豆腐すでに饐える覚悟の昼蛙 今比古
 (作句時間 4〜5分)
今比古 正直4〜5分かかりました。漢字の読み方を辞書で確かめたり……。これはアリ!? 対局はやはり素手??

 ハガキが遅れて到着したために先月号でご紹介できなかった今比古さん。俳句対局は辞書 歳時記の持参は可としています。ただし句帳 ネタ帳の類はNG。事前に句を作り置きできちゃうとフェアじゃないですからね。また、漢字などを調べてる間も時間は経過するのでその辺はご注意を!


減点を避けるコツ

 減点が起こるのはずばり作句のルールを守れなかった時。逆にいうと、作句ルールさえ守っていれば減点をくらわずにすむんです。
 前の手を見てどの語が安全か考えてみて下さい。そのシミュレートを繰り返すことで減点の危険は大きく減らすことができます。練習しながら「あー! やらかした!」なんて失敗するのも意外と楽しいですよ。ぜひ一度お試しあれ。


次回予告「実録!! 俳句対局」
 公式戦さながら、俳句対局のプレ試合を行い、その模様を掲載します。第二回龍淵王決定戦に先駆けての一戦。空気感を掴んで、ぜひ本戦観戦への足がかりにして下さい。



第二回
俳句対局龍淵王決定戦
開催決定

 昨秋開催の第一回に続き、第二回龍淵王決定戦を開催致します。詳細は順次公開して参ります。

日時 10月27日(日)午後〜(予定)
場所 松山市二之丸史跡庭園内観恒亭
 *出場が決まった方は、当日はスーツや着物にてお越し下さい。観覧のみの方は、服装の指定はありません。
問い合わせ先 『100年俳句計画』編集室



※俳句対局作句ルール
1:使用する季語はいつの季語でも構わない。(傍題可)
2:前の句から頂くのは、漢字、または、自立語。
3:前の句の表記のまま頂く。表記を変えてはいけない。(カタカナ表記の場合は、カタカナで)
4:前の句の季語、および季語の一部を季語として頂くのは、不可。



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百年歳時記


第4回 夏井いつき

 有名俳人の一句を紹介鑑賞するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月ご紹介していきます。

日日草点字タイプのベルちさし てん点
 1行32マスの「点字タイプ」には「後6字打てますよ、と知らせるベルが付いている」のだそうです。作者は、日々「点字」に接している方なのでしょう。行の最後を知らせる「ベル」が小さく鳴ると、次の行に移るための操作をし、新しい行に移ると、再び点字を打つ速度をあげてゆく。一連の操作のアクセントのように「点字タイプのベル」は小さな音をつないでいきます。
 「日々草」は、初夏から晩秋まで次々に花をつけるということでこの名がありますが、「点字」を打っていく作業も一つ一つ積み重ねてゆく行為。「点字」に打ち直されていく言葉は、「日々草」の一花一花のようにさまざまな色合いで紡がれていくのでしょう。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』7月19日掲載分)

金魚水葬手折りて流す野の花も めいおう星
 かつて水中をたゆたうように泳いでいた「金魚」は今、ただの美しい色として水面に浮かんでいます。上五「金魚水葬」は、死んだ金魚を掌に載せそっと水に放つまでのささやかな時間を追体験させてくれる、冷たさ。泳がなくなった「金魚」がゆっくりと流れに乗る瞬間、水に煽られる鰭、美しく濡れた鱗、見開かれたままの目。そんな小さな映像の断片が、浮かんでは消えていきます。
 「手折りて流す野の花」に表現される弔意は、「も」という助詞によって、「野の花」自身が生贄として捧げられたかのような印象を獲得し、オフィーリアの物語めく「水葬」という言葉の魅力は、「金魚」という美しい生き物に永遠のゆらめきを与えます。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』7月26日掲載分)

ここからがオクラの尻尾けなげなり 神楽坂リンダ
 「ここからがオクラの尻尾」だという「ここから」とは一体どこから?という思いを誰もが持つのが、この句の楽しさ。
 「オクラ」を切っていくと、可愛い星形の断面が幾つも幾つも現れます。次第に細くなる莢の先端に向かって切り続けていくと、星形も次第に小さく小さくなっていきます。星形の断面がついになくなるところを、作者は「ここからがオクラの尻尾」と決めたのでしょう。まな板にある極小の星の形を眺め、なんと「けなげ」であることかと感嘆する作者のまなざしの、なんと優しいことでしょう。
 「オクラ=星」の類想句は多々ありますが、「星」の一語を使わずして無数の星形の断面を見せてくれた、健気な一句であります。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』8月9日掲載分)

風じゃなくあれは熱砂の迫る音 大塚めろ
踝熱砂にめり込ませ国がない 日暮屋
 季語「熱砂」には、日本ではない炎熱の異国を思わせる響きがあります。「風じゃなくあれは」と言われ耳を欹てたとたん、後半「熱砂の迫る音」という措辞が読者を襲います。熱い砂嵐が次第に近づいてくるかのような緊迫感。耳の奥にまで熱い砂粒が押し寄せるかのような想像的肉体感。炎熱の砂漠へと読者を否応なくワープさせる迫力に、一瞬眩暈がした一句です。
 かたや、後句の呟きにも強い戦慄を覚えます。「熱砂」にめり込ませた「踝」の熱。その砂の感触は過酷なまでに生々しいのに、俺たちの「国」はどこにもない!という憤りと怒りと悲しみ。「国がない」の一語に、戦火の国の荒涼たる「熱砂」が滾り立ちます。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』7月26日放送分)

すててこや日本の明日を信じなさい 笑松
 戦後の荒廃から立ち上がった日本という国を支え、発展させてきたのは、「すててこ」を穿いた企業戦士のお父さんたちでした。そんなお父さんたちの時代の象徴でもあった白い木綿の「すててこ」は、オジン臭いカッコ悪いものとして一度は廃れ、さらに今はカラフルな男女兼用「すててこ」が流行する時代となりました。
 リストラ、倒産、ワーキングプア、懸命に働く人間が報われない時代に腹も立つけどさ、このまま終わる「日本」であっちゃならないよ。もう一度「日本の明日」を信じてさ、色物でも柄物でもいいよ、涼しい「すててこ」穿いて、俺たちもう一暴れできるんじゃねー?!って一句は、日本中のオジサンに捧げる応援歌ってヤツだな。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』8月2日放送分)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第30回 文と写真 暇人

松山城歳時記化計画〜激暑〜
 前回に引き続き松山城歳時記化計画の報告です。8月初旬、まもなく立秋を迎えるというのに連日猛暑の松山、そんな時期にしかも日中に今回の定点観測が行われました。参加者は前回よりは少なめでしたが10数名参加を頂きました。中には東京からはるばるやってきた笑松さんの姿も。
 いつも通り東雲口から出発、このときは「油照」。早くこの行事を終わらせたい、「ビール」で喉をうるおしたい、誰もがそう思ったに違いありません。しかし今回もそうはいきませんでした。
 今回は森本樹朋さんの案内の下、樹木を中心に定点観測を行いました。様々な木々について教えていただきましたが、松山城の木々は、鳥たちによって運ばれた家樹、人為的に(勝手に)植えられた物でほとんどしめられているとか。元々はげ山のため、寿命が長いものでも数百年程度だと話されていました。
 道中、「空蝉」「竹落葉」「蝉取り」「風鈴」など、mhmの松山城季語マスターになりつつある野風さんが声を上げていました。暑さにやられて歩くのがやっとの私とは違います。そんな暑い松山城でしたが途中「縁陰」となる所があり「涼し」さを感じました。
 途中、数年前に崖崩れで愚陀佛庵が倒壊したあたりに来ると下に見えるのは松山のビジネス街から高速道路そして山までの景色。愚陀佛庵の再建は難しいのかなという話をしながら上へ。
 前回多くの野鳥を見かけた天守閣石垣周り、今回は餌となる「蛾」やそれを追う鳥を見ることは出来ませんでした。代わりに石に刻まれた様々な刻印を多く見かけました。この刻印は石工組頭のサインと言われ、複数のグループが石積み作業に関わっていることから責任を明確にするため付けられたとされています。
 無事ゴール地点まで登った我々。後は打ち上げのビールが楽しみなメンバーと体調不良や犬の散歩を理由に帰宅するメンバーに分かれて松山城を後にしたのでした。

 ここで残念な報告をしなければなりません。以前mhmの「句碑巡り」等のイベントでたびたび訪れた宝厳寺が8月10日火災に遭い全焼しました。多くの方がこの様子を目撃したとか。私自身も下見を合わせて何度も足を運んでいる宝厳寺だけあって残念でなりません。


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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俳句の街 まつやま
俳句ポスト365


協力 松山市

「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!

http://haikutown.jp/post/


優秀句
平成25年7月度


【夏の空】

《地》
ペンギンを返す段取り夏の空 吾平
腹の子のしゃっくりかしら夏の空 逸子
夏空や三試合目の水を撒く めろ
父さんがいつもせんたく夏の空  難波小2年 渡部愛梨
夏の空水原の豆腐瑞みずし 笑酔
夏の空山羊を届けに二里歩く 公毅
未帰還機マダ帰投セズ夏ノ空  根子屋@地上ニ戦、絶エヌ限リハ
夏空や昼から酔うて寡婦の身は  神楽坂リンダ
夏の空まみれの鳥が目の高さ 佐藤文香
飛行機雲右が私の夏の空 のんの
夏空をいざ蹴り上げん詠み上げん 紗蘭

《天》
デコトラに七つのミラー夏の空  ハラミータ


【合歓の花】

《地》
みずうみはかっぱのうたげ合歓の花  竹春
三日月の遠心力や合歓の花 めいおう星
猫の髭動かぬ合歓の花の夕 もね
ねむの花妻は東の空より来 みちる
合歓の花一錠分の夜が明ける 十六夜
花合歓や生きるも死ぬもハルシオン  はまゆう
致死量のマシマロぶつけ合歓の花  カリメロ
メリーさんのひつじの色の合歓の花  吾平
わたくしは美眠家である合歓の花 花屋

《天》
合歓咲くや皇后様にある愁眉  てんきゅう


【夏野】

《地》
オホーツクの夏野に叫ぶことも旅  美杉純
なだらかな夏野に牛を撒いてある  ポメロ親父
犀のごと眠る夏野の火砕岩 樫の木
埋め戻す遺跡夏野へ眠れ眠れ 不知火
犬の死を覆いつくして夏野なり 逸子
ロケツトの焦げる匂ひの夏野かな  みちる
人に鳩尾太陽に夏野 めいおう星
鍵盤を強打し現れる夏野 笑松
空き缶一つあれば夏野に暮るるまで  四万十太郎

《天》
予後の眼に夏野の匂ひ飽くるまで  妙


【日々草】

《地》
日々草千秋楽に五分の星 四万十太郎
日々草星のひしゃくで蒔きました  猫ふぐ
スナックの昼あく扉日日草 すな恵
日々草女ばかりの喫煙所 天宮風牙
校章の日々草は輝きぬ おはぎ
日々草父は研究所の所長 ひで
くたびれて酒飯女日々草 理酔
阿部定の声なき笑ひ日日草 吾平
転職の行くに任せよ日々草 醉風

《天》
日日草点字タイプのベルちさし  てん点


【金魚】

《地》
金魚とは言えぬ大きさかもしれぬ  不知火
この貌はたぶん眠つてゐる金魚  神楽坂リンダ
金魚の入つた盥流れてきて糶場  ポメロ親父
蘭鋳の自慢しあつてゐるはずが  亜桜みかり
生ぬるき腹持つ金魚放ちけり じろ
病んだ腹白く膿ませてゐる金魚  カリメロ
降格の辞令金魚は藻にひそみ ふづき
いはくあるヤマトホテルの金魚たち  松本だりあ
出目金の向き変はるとき夕暮るる 舞
翻る金魚の尾びれこそ淫乱 理酔
長生きの月夜の金魚だからあげる  緑風佳
どうせ死ぬきつと死ぬ妻似の金魚  小木さん

《天》
金魚水葬手折りて流す野の花も  めいおう星


9月の兼題

投句期間:8月29日〜9月4日
秋の雷【初秋/天文】
初秋の頃、地表では残暑が続くものの、上空では太平洋高気圧の勢力低下により北方の寒気が入りやすくなることで、大気が不安定になり、雷が起こることがある。

投句期間:9月5日〜9月11日
秋分【仲秋/時候】
二十四節気の一つ。太陽の黄経が180度に達したとき。太陽は真東から昇り真西に沈み、昼夜の長さがほぼ等しくなる。

投句期間:9月12日〜9月18日
秋高し【三秋/天文】
澄み切った秋空の様子。大気が澄んで晴れ渡った空は、高く感じられる。「秋高塞馬肥」など、中国古典に由来する言葉。

投句期間:9月19日〜9月25日
秋祭【三秋/人事】
秋季に行われる、神社の祭礼。地方によってその様式は様々であるが、主にその年の五穀豊穣を神々に感謝して祝う。

《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成25年7月度


【氷菓】
ご褒美の氷菓を選ぶのに夢中 恋衣
子の氷菓もう溶けてきて垂れてきて  八木ふみ
一張羅危うし二歳の持つ氷菓  殻嵩はるお
十キロを完歩のしるし氷菓子 てん点
校則を破り氷菓を舐める防波堤 樫の木
洋館の氷菓かすかに月の味 だんご虫
氷菓舐めすれ違いたる牛臭う  ターナー島
氷菓崩す匙や戦闘めく昼 たま
ヒーローショー終えて氷菓の楽屋かな 桜井教人
嗚呼この色水が氷菓だったとは  めろめろ
影焦げるような真昼の氷菓売  のり茶づけ
喧騒や天安門の氷菓売 鍛冶屋
氷菓売る脳天焼かれ爆心地 日暮屋

《天》
氷菓舐め人夫筋肉輝かす  菜々枝


【パリ祭】
美しき地図持つ街やパリー祭 風
パリ祭や女らは胸開け放ち むすびめ
パリ祭の花飾られておりロバの小屋  烏天狗
眠らない小さなパン屋パリー祭  宇和島風花会 さくら
星屑の跳ねるペリエやパリー祭  宇和島風花会 山百合
パンを浸すスープ酸っぱきパリー祭  樫の木
ピエールと安酒交わすパリ祭日 またた
ドビュッシーは切なくパリ祭は雨  てんきゅう

《天》
パリ祭や赤き川なる溶鉱炉  マイマイ
パリ祭や欠損したる鳩の趾  あねご


【穴子】
釣り上げてヘッドランプの穴子かな  逆ベッカム
カンテラに飛沫照らして穴子釣り  カンナ
穴子釣る夜の裂け目より白き腹  ターナー島
音なしの未生の闇の穴子かな 釈然
雲湧くや穴子大きくなっていく  マーペー
海底の穴子の記憶月の色 ロミ
星食って盥に眠る大穴子  宇和島風花会 花水木
そこそこの知り合いと食う穴子飯  (俳号不明)
丼にのしかかりおる穴子かな 笑吉
穴子天一本これ見よがしにはみ出ている  日暮屋
目の前に見える本州穴子丼 あねご

《天》
不思議そうな顔して穴子割かれけり  紫水晶


【熱砂】
熱砂めらめらタンカーとすれ違う 野風
廃船に熱砂水なき河口かな ターナー島
喘ぎつつ熱砂吸い込むラジエター  ほろよい
震動に弾む熱砂の削岩機 和吉
プラントへ続く熱砂の地平かな 笑松
倒れ込む熱砂アウトのホイッスル 妙
ライフセーバー熱砂の旗を奪い合う  たかこ
打楽器の響き天まで夜の熱砂 風
燃えるような熱砂に開く砂の薔薇  あやね
恐竜は睡る熱砂の何億年 流星
踝熱砂にめり込ませ国がない 日暮屋

《天》
風じゃなくあれは熱砂の迫る音  めろめろ


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

9月1日
裂膾【三秋/人事】
包丁を使わず指でさばいた鰯に、薄く塩をふって酢でしめたものを、茹でた分葱などと酢味噌で和える。

良夜【仲秋/天文】
月が明るく美しい夜のことだが、俳句では旧暦8月15日の名月の夜に限って言う。


9月15日
初潮【仲秋/地理】
旧暦8月15日の大潮の満潮。「葉月潮」の発音が転じたとも言われる。

小鳥【仲秋/動物】
仲秋から晩秋にかけて日本に渡ってくる小鳥の総称。


9月29日
葛【三秋/植物】
マメ科の蔓性多年草。葉の表は緑色、裏は白色を帯びている。夏の終わりから秋に紅紫色の花を房状につけるが、詩歌では葉を中心に詠まれる。

栗羊羹【晩秋/人事】
渋皮を取った栗の実や、それを粉にしたものを入れて作る羊羹。


《参考文献》『カラー版 新日本大歳時記』(講談社)


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100年俳句計画 掲示板


 組長&編集長&組員さんの出演執筆一覧

テレビ/ラジオ
NHK総合テレビ(愛媛県域)
「それいけ!俳句キッズ」
  8月31日(土)15時05分〜16時
 出演:愛媛県内の小学生30名、夏井いつき、金子貴俊、テツ&トモ、オジンオズボーン、チキチキジョニー

NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  9月10日(火)11時40分〜
  9月24日(火)11時40分〜

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FM愛媛
 バニラビーンズの俳句っちゃお〜!
 毎週日曜日深夜0時〜0時30分
※夏井いつきが俳句指南で出演
※FM大分でも毎週月曜21時〜放送中

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「爽やか 鳥威し」9月1日〆
   「菊日和 秋高し」9月15日〆
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名) 住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム チャンヒのイラストポストカードが贈られます。


執筆
松山市の俳句サイト「俳句ポスト365」
http://haikutown.jp/post/
 毎週水曜締切/翌週金曜結果発表

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」
※ 毎週日曜発刊タブロイド判8ページ

愛媛新聞(キム チャンヒ)
 「ヘンデス俳談」毎月第一土曜日 兼題「薄」締切 … 9月24日(火)


イベント

宇田喜代子 黒田杏子の道後俳句塾
 9月7日(土) 8日(日) 松山市立子規記念博物館
 俳句指導、吟行会、懇親会と盛りだくさんの二日間!
 お問い合わせ 申込  089ー931ー5566

愛媛新聞「俳句の月」審査会
 9月12日(木)13時30分〜

済美平成4年生句会ライブ
 9月27日(金)14時30分〜



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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

特別企画(?)執筆者のお便り
睦 9月号の100年の旗手、送付します。いよいよ最終月になってしまいました。おかげで熱くて素晴らしい体験ができました。組長はじめ推薦していただいた方や関わってくださった皆さんに感謝です。ありがとうございました。まだまだ暑い日が続いています。俳句甲子園ももうすぐですね。忙しいと思いますが、みなさん本当にお身体ご自愛下さい。3ヶ月間、ありがとうございました。よろしくお願いします。
編 今月は各種原稿を担当していただいた皆様が原稿送付時に送ってくださったお便りを紹介してみます。睦さん、旗手の三ヶ月お疲れ様でした! 達成記念にサザンの復活ライブに行ったとか。羨ましい!

亜桜みかり キム編集長さま「百年百花」の原稿です。一点お願いがあります。五句目の「戦がない」の「戦」に「そよ」とルビをお願いします。やっと2回目……後2回……猛暑をいかにくぐり抜けて秋の句を詠むかに挑戦したいと思います(苦笑)。では、よろしくお願いいたします。
編 ルビ振ったりする時はこんな感じで承ってます。十二句作り、構成も考え……うう、過酷。残り半分の連載、楽しみにしております!

まとむ 8月も暑そうですね。うっかり布団を干して長い間日に当ててしまったので、熱がこもり暑くて昨夜は眠れませんでした(泣)。眠れない間に書いてたら、早くに評釈文ができあがりました(ラッキー)。ということで100年への軌跡評釈文です。よろしくお願い致します。
編 怪我の功名ならぬ過剰日照の功名(語呂が悪い)。「お陽様の匂いの評釈」みたいなキャッチコピーつけたら感じ良くない? で、完成した評釈文の行き先がこちら↓。

紫音 今回の原稿は、最初の五句の一文字目を左から読むと師匠の名前(大五郎)になる、という仕組みにしました。タイトルをラストということで「完結編」にするか、三句目の意味から「未完」にするかで悩みましたが、本名が未紗ということもあって後者にしました。今までこういった原稿をつくったことがなく最初は不安でしたが、前述のように迷いながらつくっていく過程が大変楽しかったです。このような機会を与えて下さり、ありがとうございました。また、毎回原稿が遅くなりご迷惑をおかけしましたが、最後まで本当にありがとうございました。今後とも様々な場面でお世話になると思いますが、どうぞよろしくお願い致します。
編 今期最終回を迎えた新 100年への軌跡より紫音さん。大五郎さん、弟子の粋なリスペクトに気付いてました? 紫音さんは句集Style第二期作品『週活句会句集WHAT』にも作品が収録されてます。今後もご活躍期待してます!

西条の針屋さん 骨折入院中。9月号が届く頃には退院と思います。7月末に異常な暑さのため転倒して左手首を骨折してしまいましたが、無事に(8月10日)ギブスも取れて、後 2週間位で完治の予定です……。なかなか痛みで俳句にも気が入らず「鮎の友釣り」の原稿を書いた位でした。いつもは治療する側が、される側になって改めて勉強になりました。「俳句甲子園全国大会」も行けず残念ですが参加する高校生、そして実行委員会のみなさん頑張って下さい! 病院の中から応援しています。
編 痛みに耐えて鮎の友釣りの原稿を寄せてくれた西条の針屋さんに感涙! 鮎友のお花見っぽい写真がなおのこと涙を誘います。快癒をお祈りしております!

ある意味芸術「クロヌリハイク」
あねご あねごだす。クロヌリハイク、ツボにはまりました。意外な句ができそうなワクワク感があります。怒られそうですが、明日の朝刊でやってみたいと思います。
編 どんなのできたか気になりますね。アブクに送ってつかあさい。

キム チャンヒ句集『COSMOS』
杉山久子 句集をつくるドキュメント、試行錯誤様子がよく解ります!! みなさんの参考になりますね。そして素敵なタイトルになりましたね。楽しみにしています。
編 鋭意製作中!!

もうすぐ俳句甲子園
小雪 先日俳句甲子園を見に行きました。みなさんの対戦を見ていると、時間があっという間に過ぎました。私もそんな心に残るような作品をつくりたいです。
編 7月20日締切の投稿に寄せてということは時期的に考えて地方大会でしょうか。8月の本番も楽しいですぞ!

質問 お願い メッセージ
しんじゅ 先日、ネコ水(私のブログ)で、俳句ポスト365の字が小さくて読みづらいとの話が出ました。実は私も以前よりそのような感想を持っていて、それゆえ読まないこともありました。私の怠け者の性格と思っていましたが、同じように感じる人が多いです。
編 大きくできるか検証してみます。さしあたりパソコンでご覧になっている方は見たいページを開いた状態でCtrlキーを押しながら+キーを押してください。画面が拡大表示されるので文字も大きく見えます。何度か繰り返して丁度いい大きさに調整してください。戻す時は+のかわりに−を押すと小さくなります。(※個人の環境によるのでこの通りに動作しない場合もあります。ご了承下さい。)

KIYOAKI FILM 「大人の句集コンクール」に送りたいのですが、本名名義で、新聞等に載った俳句は送っていいのですか? 普通に考えると、いけない気がします。教えてください。
編 問合せた結果「なぜいけない理由があるのだ」とのこと。別名でも自分で作った句ですからOK。

匿名 季語付きスケジュール帖を利用させていただいております。もし来年もこの計画があるのであれば、週の始めが日曜日、週末が土曜日になるようにしていただきたい。(アブク掲載不要)
編 掲載しないとお答えできないので名前だけ匿名にしました。日曜始まりか月曜始まりかは好みが分かれるところ。俳句イベントが土日に連続することが多いことや、44 45ページ句会カレンダーとの連動もあり、スケジュール帖も同様の月曜始まりになってます。申し訳ありませんがご了承下さい。

更紗 東北の被災地に仮設図書館をつくる活動をしている「みんなのとしょかんプロジェクト」が本を集めています。料理本や手芸 編み物などの実用書、写真集、絵本、児童書、ノンフィクション、ビジネス書 、文庫本、小説(ハードカバーのもの) 、専門書等。90年代以降の状態の良いものをお願いします。もちろん現金や図書カードや商品券なども喜ばれそう。お問い合わせ 送り先は 〒326-0035 栃木県足利市芳町26 みんなのとしょかん係 川端さま宛。電話は0284-43-8913です。
編 小さなことからこつこつと。まだまだ頑張ろう日本。


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鮎の友釣り

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てっぺいさんへ 友釣りしてくれて有り難うございます。

俳号の由来 俳句を始めようとしたときに「たんぽぽ句会」に誘われて、行った時に、仕事で「針屋さん」をやっているので現在の俳号としました。

今後の俳句 今だに上手く俳句が詠めず悩んでいますが、「一句一遊」や「お花見」「忘年会」などで楽しませてもらっています。

写真 何年か前に道後公園に行った時のものです。

次回…ぽぽんたさんへ 一昨年に「きさいや広場」であった「句会ライブ」で声をかけてくれ有り難うございました。これからもよろしくお願いします。


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告知


マラソン部始動
今年も(エントリーできた人は)走ります!

 すっかり年中行事となった愛媛マラソン吟行会。まずは、100年俳句計画ランナーとして参加される方を募集します。
 今年は一般参加の方は全て抽選となりますので、各自エントリーをして下さい。
 マラソン部への登録は昨年同様、左記アドレスにて受け付けます。
 多数の参加、お待ちしております。

マラソン部登録ページ
http://marukobo.com/marathon/

エントリー期間 8月28日〜9月9日
愛媛マラソンホームページ
 http://ehimemarathon.jp/
開催日 2014年2月9日




マルコボ.コムオンラインショップマガジン化10年目突入記念企画
HAIKU LIFE 100年俳句計画
企画別ワンコインバックナンバー集発売中

本誌は2013年6月号で、マガジン化してから10年目に突入しました!
マルコボ.コムオンラインショップでは10年目突入記念として、テーマ別のバックナンバーのお得なセット販売を行っています。

編集室のオススメセットは……?

14:チャレンジ企画
 他ではおそらくなかなかお目にかかれないであろう前代未聞の企画を、本誌では提案し、実際に挑んできました。
 「ジェットコースターに乗りながら俳句を詠めるのでしょうか?」という素朴(?)な疑問が寄せられれば、早速、当時まだ閉園前だった松山市の梅津寺パークへ赴いてみたり。
 「北条の鹿島には、句碑がたくさんあるんですよー」という情報を聞きつければ、ただ句碑をめぐるだけではなく、その句碑の俳句にみんなで(勝手に)付け句をつけてまわろうという“攻め”の姿勢の句碑めぐりを考えてみたり。
 その場で出された席題の句を短時間で詠めるだけひたすら詠むことを繰り返す、谷さやんさん主宰の「句会という名のラブワゴン」。ただでさえ集中力を要するこの句会を、拡大版として6時間にもわたって、しかもインターネット中継なんかまでやりながら開催してみたり。
 ……編集室は今日も元気です。 (まほろ)

収録内容
2005年6月号:人間はジェットコースターに乗りながら俳句を作れるか?
2008年6月号:鹿島の句碑に付け句をつけよう!/新句碑めぐり
2009年6月号:6時間18題の席題句会に挑戦!6時間耐久ラブワゴン


16:マニア必見! 万愚節新聞
 「4月といえば、エイプリルフール(万愚節)だよねー」ということで、マガジン化して以降の毎月4月号で恒例記事となっていたのが「万愚節新聞」。海外を中心としたマスコミ各社や国内外の様々な企業などが、4月1日になると冗談のニュースやイベントを用意するというアレを、本誌でもやってみたワケです。
 どんなウソ記事を書こうかと、初めは編集室でネタを考えていましたが、回数を重ねる中で、読者の皆様からも記事のアイデアを募集したり、ついにはホンモノの新聞記者さんにまで協力していただいたり、そしてもちろん記事に登場していただいた方々のご快諾もあったりと、荒唐無稽な新聞記事は、様々な方々のご協力により生まれました。
 「万愚節新聞」の記事は、全てウソ 冗談ですのでご注意を……。 (まほろ)

収録内容
2005年4月号:万愚節新聞
2006年4月号:万愚節新聞
2007年4月号:万愚節新聞
2008年4月号:万愚節新聞
2009年4月号:万愚節新聞
2010年4月号:万愚節新聞


全27セット 各500円
但し、合計金額が3000円未満の場合は送料別途
お求めはhttp://shop.marukobo.com/まで




HAIKU LIFE 100年俳句計画
第3回
大人のための句集を作ろうコンテスト
作品募集

主催 マルコボ.コム 共催 朝日新聞社 松山市教育委員会(予定)

 第三回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」(通称「大人コン」)の作品募集がスタートしました。
 「大人コン」は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』が開催する俳句コンテストです。
 共催 朝日新聞社 松山市教育委員会(予定)

「受賞作品が句集になるってホントですか」
 最優秀賞作品は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』の付録冊子として読者諸氏に広く読んで頂きます。付録とはいえ、お洒落なデザインの句集だと評判です。
 受賞者には一切の金銭的負担をかけず、読者にとっても安価な句集をどんどん生み出していきたいという志を一つの形にしたのが、この企画なのです。

「俳句マガジンを購読してないんですが、コンテストへの応募はできますか」
 どなたでも応募できます。購読の有無は一切関係ありません。勿論、応募は無料です。

「審査は誰がするのですか」
 本コンテストの受賞者は、「大人コン」選考会員の投票によって決まります。「大人コン」選考会員は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』購読者の内、各総合誌等の俳句賞受賞者あるいは最終選考に残った実績のある人たち等によって構成されます。第二回の有資格者は三十二名。年々選考会員数は増えていくことになります。
 多くの目利きの力を借りて「百年先の未来に残したい作品と作家」を見い出し顕彰していくことが「大人コン」の目的。我こそは!という皆さんのご応募を、心からお待ちしております。

既作新作を問わず81句の作品集を募集。
最優秀賞作品は句集にし、本誌付録として配布します。

募集要項

応募資格
15才以上(高校生以上)の方なら、本誌購読の有無に関係なく、どなたでも応募できます。

応募方法
1:Eメールでの応募の場合
応募用のエクセルファイルに必要事項を全て入力し、Eメールの添付ファイルにして、応募して下さい。
応募用ファイルのダウンロード先
http://81ku.marukobo.com/

2:郵送の場合
B4判四百字詰め原稿用紙に81句とその表題、俳号、本名、年齢、住所、電話番号を必ず明記して応募して下さい。

締め切り 2013年12月10日(火)必着

賞 賞状および応募作品による句集20冊
*賞品句集は縦横135mm 36ページとなります。句集は本誌付録として配布します。

発表 本誌2014年4月号誌上(予定)

送り先
〒790-0022 愛媛県松山市永代町16ー1
有限会社マルコボ.コム
月刊俳句マガジン『100年俳句計画』編集室Eメール:81ku@marukobo.com




100年俳句計画投稿締切カレンダー

9/20(金)
 100年投句計画
http://marukobo.com/toukou/
 魚のアブク
 100年の旗手推薦募集

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


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編集後記


 7月号の取り合わせの特集に引き続き俳句入門特集。最近俳句初心者の読者向けの記事が少なくなった反省から企画したのだが、読者から届いた質問が一つだけだったということもあり、読者の需要に応えた特集になったかどうか多少不安。
 質問が少なかったのは、本誌もマガジン化して10年目となり、実力のある俳人がぞくぞくと登場するようになった表れでもある。そんな読者が楽しめる誌面作りとは、なんて日々考えてはいても、その答えは正直分からない。分からないのだから、自分が面白いと思うことをするしかないのだとも思う。
 というわけで今月号の特集は、殿様ケンちゃんとじいの姿を借りて、自分の思う俳句の世界を描いたつもりである。例えば「俳句って何ですか?」という問いに対する答えは、俳句の決まり事(と思っていること)に対する反発でもある。現在の俳句のルールが答えならば、俳句に新しい考え方やルールを提案することだって答えである。そういう事を目指すことだって、作家の役目だと思う。
 もちろん本特集は、一つの考え方にしか過ぎない。むしろ読者自身が自分の答えを考えるきっかけになれば嬉しく思う。
(キム)


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次号予告 (191号 10月1日発行予定)


次回特集
第16回俳句甲子園レポート


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2013年9月号(No.190)
2013年9月1日発行
価格 600円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子