100年俳句計画7月号(no.188)


100年俳句計画7月号(no.188)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
酔芙蓉 あおい


特集
取り合わせでわかる俳画入門
文&イラスト キム・チャンヒ



好評連載


作品

百年百花
 蜂谷一人/都築まとむ/十亀わら/鈴木牛後


放歌高吟/夏井いつき

100年俳句計画作品集 100年の旗手
 かのこ/睦/むめも


百年琢磨 しなだしん

新100年への軌跡
 俳句/紫音/久保田牡丹
 評/桜井教人/とりとり


選者三名による雑詠俳句計画
関悦史/阪西敦子/加根兼光


へたうま仙女/杉山久子

自由律俳句計画/きむらけんじ

詰め俳句計画/マイマイ



読み物
Letter from spider garden/ナサニエル・ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
ホンヤクサイホンヤク/翻田訳蔵
お芝居観ませんか?/猫正宗
句集を作るドキュメント
俳句対局道場/正人
百年歳時記/夏井いつき
句集の本棚
句集スタイル製作レポート

読者のページ
俳句ポスト365
一句一遊情報局
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




表紙リレーエッセー


酔芙蓉
あおい

 初夏のころ、50センチ程の切り株から10数本の枝が、真っ直ぐに空へと伸び始める。
 上部には掌上に三〜七裂した葉をつけぐんぐんと、梅雨が明けるころには4メートル程にもなる。短期間で伸びた幹は柔らかく、薄緑色の大きな葉は風によく戦ぐ。
 日中の温度が増々高くなるこの時期は、午後にもなると家の前の道路も煉瓦塀も、照り返しの熱でどれほどになっていることか……。家との間に茂っているこの酔芙蓉が、いくらか遮ってくれているのは確かである。
 頂上には初秋に咲かせる蕾を沢山育んで、少しずつ膨らみを増している。早朝に咲かせる純白の花、午後には淡紅、夕方には紅色と変化し翌朝しぼむ。一日花だからこそ尚美しく感じてしまうのかもしれないなどと考えながら、今日もこの木を眺めている。
 足元には、やはり同じく葵科のハイビスカスが、今日一日の命を美しく輝かせている。


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特集

取り合わせでわかる俳画入門


文&イラスト キム・チャンヒ

 俳句に親しんでいない人から「俳句は難しい」という言葉をよく聞く。そこで何が難しいのかと尋ねると、「俳句は意味が分からない」と返答される場合が多い。俳句が難しく意味が分からない理由は、
 その1、季語など単語の意味が分からない。
 その2、文語や歴史的仮名遣いが分からない。
 その3、「取り合わせ」が分からない。
というのが、主なものだ。
 理由1と2は、知識の問題なので、歳時記や文法の本を読んだりすれば、(自分の努力次第でいずれ)理解できる。しかし、やっかいなのは3の取り合わせ。取り合わせは、学校で習った散文の仕組みとは異なる構造のため、言葉でストンと理解するのは難しい。
 ならば言葉で説明するのではなく、例えば取り合わせの仕組みで描く俳画を使って説明すれば上手くいくのではないか、というのが、今回の企画である。句会ライブなどで即興俳画を描く際、取り合わせの方法で俳句に画を合わすことが多いからだ。

 今回俳画にする俳句は、今治のFMラヂオバリバリで放送中の番組、「今治五七五の俳句チャンネル」にて「天」の句として紹介されたもの。この番組は、今治五七五実行委員会のメンバーが投句を選評を交え紹介し、最後に「天」の句を決定して発表している。今回に限らず、「天」の句には、僕が葉書サイズの俳画を描いて賞品としてお送りしている。

 さて、俳画にする俳句を決めたら、早速画を描く準備。
 画材は何だっていい。決まりはない。今回は乾くのが早いサインペンと筆ペンで、画仙紙でできた葉書を用意した。

 まずは一句目。

夕暮の木蓮白鍵の重さ もろ

 これぞ取り合わせの極意の句。「夕暮れの木蓮」と「白鍵の重さ」というフレーズが、文章として繋がっているのではない。で、どんな意味の句として読めるのか? 俳句の意味が分からないと、画は描けない。
 僕は取り合わせを、「Aというフレーズ」と「Bというフレーズ」との共通点を読者に発見させる技だと思っている。その共通点が当たり前だと「取り合わせが近い」ということになり、共通点が見いだせないと「取り合わせが離れている」ということになる。既成概念では共通点がなさそうなのに、新しい概念でAとBを提示し、読者がその概念に納得すると取り合わせは成功ということになる。
 「夕暮の木蓮白鍵の重さ」という句の場合は、どんな共通する概念で取り合わされているのかを考える。そこがこの俳句の言いたいことだとも言える。
 まず考えたのが「白色」。存在感のある「白い物体」。共通する概念は一つとは限らない。「重たい気分」や「肉体的な負荷」など。ま、俳句の鑑賞に正解などないので、ここは自分が思ったままで構わない。
 俳画は、俳句に詠まれた内容をそのまま画に起こしても面白くない。それは、先ほどの取り合わせと同じで、俳句に直接登場しないもので、その俳句と共通するイメージを伝えると、それを読み解く読者の脳を喜ばすことができる。
 「夕暮の木蓮白鍵の重さ」という句の場合、重たい気分の空気を感じてしまう人の肉体を描けば上手くいくのではないかと考え、白鍵の重さを感じているであろう人の手を描いた。
 できあがった作品は、「白鍵の重さ」に近すぎる気もするが、微妙な指先の表情によって、「夕暮れの木蓮」の繊細なイメージに歩み寄れたと思う。

 では次の句。

四畳半に鶯餅を向き合わせ 春生

 「鶯餅」が早春の季語。「四畳半」と「鶯餅を向き合わせ」という言葉で、登場人物(恐らく二人)の描写をしている。この句の面白みは、その登場人物の関係を想像すること。四畳半なので、学生だろうか。引っ越してきたばかりなら親子かも知れないし、そうでなければ恋人同士かも知れない。俳画には、そんな二人の存在を表せるものを描けばいい。
 鶯餅が向きあっているなら、湯飲み茶碗もそうしてていい。描いてみると、向きあうというよりかは、寄り添っているようになっちゃったけど、ま、いいか。

父の舟乗るという子も卒業す 浦島花子

 「舟」という字から、この父は漁師だと思った。この句は、父の小さな舟と卒業した子の果てしない未来との両方を描いている句として読んだ。広い海の中に小さな舟と小さな島を描けば、広い世界や未来を表現できると思った。

釣舟の手を振りあうて春の波 木苺

 設定は違えど、この句も鶯餅の句と同様、「手を振りあう」間柄がこの句で言いたいところだと読んだ。すれ違う鴎が挨拶するとは思えないけど、そんな場面ならこの句に合いそう。春の海の日常的で穏やかな感じも表現できる。

春の朝きしむキリンの紙模型 野風

 この句は読み進めてゆく時の展開が面白い。このおかしみを別のもので表現できないかと考えたが、結局僕なりの「きしむキリンの紙模型」を描くことで、おかしみを表現する方が、伝わりやすいと判断した。

青空に並べるように干鰈 百嘉

 この句は、季語「干鰈」の一物仕立ての句。実際に干鰈を干しているところは、見たことが無く、写真を頼りにその状況を想像する。干鰈が並べられる海辺の青空は、ひたすら広く、その隅っこには、蝶だって並べられるように見えるかも知れない。あれっ、鴎の絵と構図が似てしまったな。

ぶかぶかの長靴はいて潮干狩り スミ

 「ぶかぶかの長靴はいて」と「潮干狩り」との取り合わせで立ち上がる人物像が、この俳句の言いたいところ。
 ぶかぶかの長靴の持ち主を、勝手に子どもと断定。その子が使っているバケツを勝手に赤色と断定。

葉桜となりて静かな日曜日 越智美礼

 葉桜となる前の日曜日は、お花見のシーズンで何かと騒がしい。葉桜となって、静かな日曜日が訪れたという意味の句だと読んだ。花の時期が過ぎ、葉桜となり、改めて平凡で静かな日曜日に気づく。そんな日曜日は、家でソファーに寝転んで、テレビでも観ているのでは? 葉桜の日曜日は、街中の人たちがそんな風に過ごしているのでは? そう思い、テレビアンテナの乱立した町の屋根を描いた。

風薫る萌える草原ユーレイティ きみ団子

 「ユーレイティ」の意味が分からなかった。ネットで検索すると、ヨーデルの歌に出てくるフレーズらしい。草原に持って行け、楽しい雰囲気を盛り上げる楽器、アコーディオンを描くことにした。


燕の子郵便受けに足す名まえ 花涼

 季語が「燕の子」なので、「郵便受けに足す名前」 は、誕生した子どもの名前だとして読んだ。燕の子と郵便受けの側にあり、小さな子どもの存在を連想させるものは、玄関先の花壇。背が低くて、沢山の花を付ける、サルビアがピッタリだと思い取り合わせた。
 様々な例から、俳画の楽しみは画の巧さだけを味わうものでないということが分かっていただけただろうか。
 実は俳画は、取り合わせの方法を理解できれば、画が下手でも成り立つ表現方法でもある。
 例えば最後の俳句を「親の子への愛情」として味わえば、こんな簡単な方法で俳画にすることもできる。


 取り合わせさえ分かれば、誰だって俳画を楽しめる。多少画が下手でも俳句が補ってくれるし、多少俳句が下手でも画が補ってくれる。
 今回の特集をきっかけに、沢山の方が俳画に挑戦してくれたら嬉しく思う。



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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2013年度 第一期 4回目


「巴里祭」蜂谷一人

はつなつの指は電気を帯びてをり
白百合と革命の旗ひるがへる
旅人の像を追越す夏燕
梅雨に入るぽわんぼわんと古ピアノ
糸よりもレース明るく編まれゆく
卵産む金魚卵を喰ふ金魚
どくだみに室外機よりひとしづく
パピヨンの耳羽ばたいて南風
背のあきしサマードレスの前が海
昇る間に少し太つて夏の月
肉を噛むあぎとダリアの散り始む
二人とも最後は水に巴里祭


B型、蠍座。句画集『プラネタリウムの夜』。2005年より毎年1回のペースで俳句と画の個展を東京で開催。小動物と塔の画多数。




「蟻」都築まとむ

ジャムふつふつ蟻の近づき来る夜を
蟻の足湿る砂丘を越えて来て
大蟻はワイルドターキーの匂い
鉱脈は走る蟻の尻光る
閉山の鉄路を跨ぐ蟻の道
故郷を捨つるつもりの蟻払う
卵運び終え蟻塚静もりぬ
跣なる聖母マリアや蟻集う
天蓋や蟻の触覚禍々し
蟻よ蟻空の深さを知らずとも
考える蟻の黒頷く蟻の赤
富士山の黙や那由多の蟻を飼う


1961年愛媛県八幡浜市生まれ。2001年秋ごろ南海放送ラジオ「一句一遊」に投句をはじめる。生き物を詠むのが癖。天気予報をやたら見るのも癖。




「生きてゆく硬さ」十亀わら

パセリ散らす指ひんやりと躊躇して
風のなき夏野に死すという禁忌
糸蜻蛉いつより母の手を取らず
夜には夜の匂いに沈む李かな
傘の骨どこまで歪む桜の実
熱帯魚いつか空ごと爆ぜてみよ
枇杷すするいのちに色のあることも
枇杷売りの女の首のタンバリン
螢夜の抽斗開けてしまうとは
生きてゆく硬さ素足のぶらんぶらん
夜のメロン戒名不要と囁けり
金魚掬うどの子も親に背を向けて


1978年、松山市出身。第7回俳句界賞。wara_2013@yahoo.co.jp(2013年末までのアドレスです)感想お聞かせいただけると嬉しいです。




「霽れの蝌蚪」鈴木牛後

乾きゆく水の昏さに蝌蚪生まる
綺羅綺羅と雨降るやうに霽れの蝌蚪
蝌蚪たりし塊からびたる窪み
桜前線牧の真上をとほりゆく
母の日に売りし二トンの牛の乳
見やうとしてかんばの花を見てをりぬ
雲海へ牛の尿は高きより
新緑にみごとな牛を見に行かう
草刈機をんをん音におほはれて
夏草に山羊を放つといふちから
百馬力かつ万蝉力のトラクター
谺して郭公とほく牛帰る


1961年生まれ。北海道の片田舎で牛飼いをしている。第一回大人のための句集を作ろう!コンテスト最優秀賞。




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放歌高吟


芒種
夏井いつき

首夏の夜を臭う食肉市場なり
ギイと鳴く蝙蝠の胸薄っぺら
オオキンケイギクのざわめく夜の底
代掻の轟きに水さわぎだす
卯の花のきらきらどこへでも行ける
孕みたる目高の金色に怯ゆ
富士山が見える日泰山木咲いた日
ぎいちゅるぎいちゅる青梅にくる鳥の名は
軌道はるけし芒種の石に鉄の錆
野の水に星の匂える芒種かな
芒種いま夕星細くしてたしか
セリヌンチウスよ芒種の酒を注ぎたまえ


 「芒種」という時候の季語に初めてお目にかかったのは、『藍生』遍路吟行で岩屋寺に行った夜。有志で開いた鍛錬句会にて、大先輩の山口都茂女さんが出された席題がこの季語だった。
 「ぼうしゅ」と言われて、漢字すら浮かばなかった。手持ちの歳時記を引いてみると【イネやムギなどの芒のある作物の種を播く時節】と解説してあったが、まず「芒」が分からない。が、籾のトゲトゲした感じかな……と漠然と思った。後で調べてみて【イネ科植物の外花穎の先端が細長く伸びて剛毛状の突起となった部分】といったような情報を手に入れるわけだが、その場では未知の季語。ひたすら唸るしかなかった。

ごんごんと芒種の水を飲み干せり

 辛うじてひねり出したのがこの一句。出題した都茂女さんが誉めて下さったのが嬉しかったが、句会が終わった後も、この季語が何ものだか全く分からないままだった。都茂女さんが発音する「ぼうしゅ」という響きがいかにも崇高に感じられ、その日から気になって仕方ない季語となった。
 この日の昼間、私は第一句集『伊月集・龍』の序文を黒田杏子先生から頂いた。その序文にはこんな一節がある。

 いよいよあすは第四十五番海岸山岩屋寺にゆく。国民宿舎岩屋荘に泊まって、幹事の夏井いつきさんをはじめ、各地から参集する仲間と前夜句会が予定されている。

 ここに書かれている「前夜句会」が、まさに前述の句会であり、私が初めて「芒種」という季語と出会った場だ。杏子先生の序文の最後に記されている日付は「平成十一年五月」。すでに十四年の月日が流れていることに驚く。
 あの日以来、近寄りがたい季語として敬遠してきた「芒種」に、百年俳句塾の仲間たちと共に挑んだ。ほんの少し「芒種」という季語の尻尾に触れたような気がした。嬉しい感触だった。都茂女さんの「ぼうしゅ」という発音がありありと耳に蘇った。フランス語のような、くぐもったみちのくの響きだ。かの美しい響きに誉められたような気がした今年の芒種への感慨。




夏井いつき公式ブログ「夏井いつきの100年俳句日記」

http://100nenhaiku.marukobo.com/


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読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2013年7月号 〜 2013年9月号 1/3回目)


 野に放つ かのこ

夏は来ぬ光の児等を野に放つ
はつ夏の花かごのごと通学帽
夏蝶来音楽室は野原なり
毛虫毛虫体操隊形に開け
夏の子を登らせてをり大欅
いざ飛ばむ正義の味方の天道虫
隊列の目高みそらの色もてり
百本の光を編むやあめんぼう
八方へでんぐり返り児等の夏
団子虫集まれ夏野のホイッスル


小学校勤務。息子たちの出場した俳句甲子園の観戦で、俳句に魅せられました。小学生といっしょに、俳句のある生活を楽しんでいる毎日です。



 遠雷 睦 

片眼無き猫は夏服嗅ぎに来て
抜糸する指の湿つてゐる薄暑
上瞼を裏返されて蚊の匂ひ
抜きし歯の根の生き生きと初蛍
半夏生皮は静かに鞣されて
万緑に全力で立つ生家かな
晴天の十薬かわく廊下かな
すれ違ふ人ゐてジャズは夏カモメ
遠雷や気泡の太るカンパーニュ 
夕焼と酸素ボンベを脱ぎにけり


むつみ。八幡浜市在住。ホームはさえずり句会。熱いことが大好きな感動屋。日々の感動や想いを素直に詠むこと、そしてそれが誰かに伝わることが目標。



 リボンの騎士 むめも 

猫のため息ひとつ夏蜜柑ふたつ
ベランダの簀の子を磨く夕薄暑
鈴蘭やなくしたものは時間だけ
約束は5時渋滞のアマリリス
まほろばは大和の神の初蛍
籐寝椅子オリズルランの延び放題
跳ね上げた泥の若さや夏木立
ユスリカや心の所在問うてみる
オリーブの花散りばめて知恵は白
夏の雲リボンの騎士は母になる


初めての投句は6年前、「俳句の缶づめ」でした。趣味は俳句ですってまだまだ恥ずかしくて公言できない、でも「いつき組」組員ですとは声を大にして言いたい、そんな松山の、猫好きアラ還女です。



読者が選ぶ人気俳人!
「100年の旗手」連載者推薦募集

 今求められているのは、読者が読みたいと思う俳句作家。「100年の旗手」は、連載する俳人を、編集室ではなく、読者が選ぶコーナーです。
 「この人の作品集を読んでみたい」と気になる俳人を、1人3名まで推薦してください。その中から、推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行います。
 あなたのお勧めの俳人を是非推薦してください。

 推薦の方法

「この人の作品集を読んでみたい」という人を3名まで選んで(自薦は不可)、その俳号と活動場所(句会・誌面等)・推薦者ご自身の俳号(本名)・住所・電話番号を明記して、100年俳句計画編集室「作品集推薦」係へ送ってください。ハガキ・FAX・Eメールで受け付けています。Eメールの場合は件名を「作品集推薦」としてください。また、専用のインターネット投稿フォーム(http://www.marukobo.com/100kishu/)でも受け付けています。※投稿フォーム利用の場合を除き、推薦は他の投稿等とは分けてください。

締切 7月末日

 現在連載している3名の方以外なら、一度連載された方も含め、どなたでも推薦できます。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。


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百年琢磨
先月号の「100年の旗手」に寄せて

感覚と詩心 しなだしん

「旗三つ」 笑松

香水の瓶ある白き洗面台
 一連の作品からヨーロッパの旅吟とも想像した。中世ヨーロッパでは入浴を嫌ったため、香水は体臭消しとして発達した。入浴を嫌ったのは、風呂に入ると病気になりやすいと信じられた為らしい。この句の香水はどんな色か分からないが、「白い洗面台」はどこか素朴で清楚な感じがして「香水」の句として新鮮である。

山麓の町は新樹の海の先
 やや材料が多すぎる感があるが、この句は「新樹の海」をどう解釈するかだ。新樹の森を「海」と比喩したのか、実際に海があって海には新樹は映り込んでいるのか。いずれにしても、ヨーロッパの雪の残る山脈を思うと、清々しい空気が感じられる。


「心臓へ」 野風

花は葉にフランスパンにある塩味
 フランスパンにほのかな塩味を感じた作者。葉桜の時期は気持ちのいい陽気が続く頃だが、逆にどこかアンニュイでセンチメンタルな気分になったりもする。塩味はそんな感覚の象徴でもあるかもしれない。

ポピー咲くスタッカートに過ぐる風
 スタッカートは一音符ずつ切る、歯切れのよい演奏もしくは歌唱。ポピーの色や形は、どこか半音ずれたような感じがある。作者はポピーを揺らす風に、跳ねるような感覚を持ち、スタッカートと表現した。気持ちもうきうきする季節。

心臓へ鳥影降つてくる薄暑
 目の前を鳥の影がよぎって、はっとすることは割合あることだが、「心臓へ」「降る」は心象としても、斬新な詩心だ。鳥ではなく影としたことで、「薄暑」の頃の明るい光が感じられる。


「ぶっちぎり」 日暮屋

ラストだ飛魚ターンに賭けてみる
 昭和40年代に放送された競泳をテーマにしたスポ根ドラマ「金メダルへのターン」。「飛魚ターン」は、そのドラマの中でターンのとき空中を飛ぶという奇想天外な技。筆者もこのドラマをリアルで見ていた世代である。詠いぶりから主人公に成りきって泳ぐ必死さが感じられる。

ボルト1000本締め上げくたくたの夏服
 ボルト千本を手動で締めるのは尋常な作業ではない。汗と油で汚れているのは服だけでなく、体や顔もだろう。「くたくた」には男の大きな達成感も見えている。


しなだしん
1962年新潟県生まれ、新宿区在住。「青山」同人、俳人協会会員。句集に『夜明』『隼の胸』。


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新 100年の軌跡


第4回


残 紫音

昼過ぎの白磁に残るパセリかな
母の日やカーネーションの横の花
夏の雲何か落としてゆきそうに
鳥になり空から見たき青野かな
靴底の小石の青し夏の川
手の甲に数字七桁ビール飲む
ハンカチの珈琲染みを避けて拭く
夏服や絆創膏の跡消えず
着ぐるみの中の人などいない夏
可愛いと綺麗は違うアマリリス
蛇花火上目遣いをしたくなる
炎昼やヘッドフォンから漏れる音
子ども無き子乗せ自転車夏の昼
日焼子や一年付けたストラップ
皆は夕焼見て我は車窓見て


紫音
1990年生まれ。松山市在住。2011年から俳句甲子園実行委員会所属。2012年2月、俳句を始める。2013年3月、松山大学法学部卒業。




簡単に 久保田牡丹

メーデーの鳩いつせいに膨らみぬ
五月雨の止みたまごかけごはんかな
卯の花の頃は眼鏡の似合ふ頃
師の耳の赤鉛筆の夏めきぬ
すべり台夏の月だけ乗つてゐる
銀色の日傘くるりと回し海
簡単に済ます四迷の忌の夕餉
夏雲や引越先にある匂ひ
昼寝覚放り出したるままの四肢
むくむくとパセリの育ち盛りかな
紫陽花へケンケンパーに行きにけり
次の風来るまで夏の草止まれ
方位磁針こはれて薔薇を指してゐる
補助席が大好き少女夏の海
ナイターの終はりて星の甦る


久保田牡丹
1991年生まれ。松山中央高校出身。「どんな人にも分かりやすい俳句」を目指して頑張っています。よろしくお願いします。




手の甲に 桜井教人

 異動に伴う疲れがピークに近づくのを感じ、二日ほどゆっくり休んだ。身体も心も急に軽くなった。俳句も同じである。頑張ろうともがくほど悪循環に陥ることが多々ある。その点今回は両作品とも力の抜き具合が絶妙であった。読んでいて無理がなく、とても心地よかった。

昼過ぎの白磁に残るパセリかな 紫音
 白磁とパセリの色の対比が鮮やか。その上に、昼過ぎと残るという時間的な情報が加わる。色の鮮やかさと時間のけだるさとのアンバランスが妙にマッチしている。

手の甲に数字七桁ビール飲む 紫音
 ビールが注がれたグラスをもつ手に書かれた七桁の数字。携番、誕生日いずれも違う、いったい何の数字だろうかと想像は膨らむ。しかし、いくらビールを飲んでもその後二次会に行ったとしても、手の甲に書かれた大切な情報は必要な時に使われるのである。

師の耳の赤鉛筆の夏めきぬ 久保田牡丹
 赤鉛筆を耳に挟む人(職業)が即座に二つくらい浮かんだ。たぶん私が時々見ているのとは違う方だろう。師の一文字が以下の言葉を鮮やかに生かしている。

夏雲や引越先にある匂ひ 久保田牡丹
 単なる匂いだけでなく、その雰囲気全てを包括しているのかも知れない。引っ越しに伴う不安感は人間の五感をさらに鋭くさせることだろう。夏雲の映像からやわらかく降ろしてくる手法がよい。


1958年生まれ。愛媛県今治市在住。愛車は黒のVOXY、走行距離約8万km、もうすぐ初車検。第3回および第4回選評大賞入選。



実感の句 とりとり

昼過ぎの白磁に残るパセリかな 紫音
 夏の昼過ぎの倦怠のなか、一点輝くパセリ。焦点のしぼられた緑が美しいです。

手の甲に数字七桁ビール飲む 紫音
 新入社員を思いました。手の甲にまでメモをして必死で働いたあとのビールは美味しいでしょうね。

炎昼やヘッドフォンから漏れる音 紫音
 あるある感満載。暑苦しさマックスですね。

メーデーの鳩いつせいに膨らみぬ 久保田牡丹
 うららかなメーデーの日。鳩たちがいっせいに膨らんで、その一瞬のあと飛び立っていく。鳩たちの集団行動がなんとなくメーデーと響きあって、面白い構成だと思いました。

すべり台夏の月だけ乗つてゐる 久保田牡丹
 誰もいない夜の公園で、昇ってきた月がすべり台の上に見えるのですね。童心にかえったような楽しい一句でした。

次の風来るまで夏の草止まれ 久保田牡丹
 夏草のざわめきは、人を不安にさせます。せめて次の風が来るまで、草のざわめきも心のざわめきも、止まって欲しいものですね。

 今回おふたりとも、背伸びしない実感の強い句が多く、好感を持ちました。


1957年生まれ。三重県在住女性。第1回選評大賞優秀賞。


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超初心者から中上級者まで楽しめる
100年投句計画

 「100年投句計画」は、読者の投句コーナーです。

 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天・地・人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選・並選を選んでいます。今回の先選者は、阪西敦子さんと加根兼光さん。後選者は、関悦史さんです。

 「へたうま仙女」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。担当は杉山久子さんです。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。

 「詰め俳句計画」は、マイマイさんによる、二つのフレーズに合う季語を投稿するコーナーです。季寄せや歳時記さえあれば、全くの俳句初心者でも挑戦できます。
(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)
写真:白鯨


選者三名による雑詠俳句計画


先選者 阪西敦子

 加根さん同様、移動時間が長いので、基本的にこちらの選も選評も通勤電車の中で行う。この一月の窓の景色はめまぐるしい。ちょっと見ぬ間に稲が育ったり、栗が花をつけたり、蓮が伸びて来たり。蓮田が見えれば関さんの町だ。



薫風や船から見える島の木々 れんげ畑
 「薫風」は、草木が旺盛な季節を迎えて香り高くなる、その香りを運ぶものだと思っていた。だから、薫風やと切り出されて、船の上にいるとは思ってもみなかった。驚きました。しかしどうか、島が島とわかって、山が山とわかって、森が森とわかって、木が木とわかるときになれば、風は薫るのかもしれない。ふと変わった風向きに、それを捉え、島の夏を知り、と思ううちにも、木々は更に明瞭になり、船着が近い。



余花の寺うどんの匂ひ漂ひ来 樹朋
 まだ花の残る寺といって、花の減った分だけは空いていて、そこを埋めるようにうどんの湯気が通う。団子や、煎餅や、蕎麦や、お好み焼や、焼きそばや、綿あめや、クレープやというとんがったものでなくうどん。

薔薇かかへ息はづませて隣の子 未貫
 はっとする一景。一輪であっても華やぐ薔薇の花を抱えるほど持ってきた隣家の子。走ってきたのか、息が弾んでいる。動詞を重ねて、ともすれば説明になりがちな句を、省略が何か劇的で新鮮なものにしている。

黒犀の尿真白なる立夏かな 緑の手
 「真白なる」は病気ではないだろう。その勢いのよさと、あたりの明るさ。黒犀とのコントラストはちょっときつすぎるきらいもあるけれど、どちらにしても爽快で何気ない立夏。

マンションを探りに来たか初燕 コナン
 マンションをかすめる初燕なのだけれど、ちょっと可笑しい。巣をつくるところを探るのはまったく通常の営みであるのだけれど、「マンションを探る」とは少し人間らしくも響く。新たな共生のはじまり。



白カラー咲くや束の間の来客 かのん
新聞紙広げ立夏の理髪店 のり茶づけ
チューリップ自転車を漕ぐ音が雑 紅紫
青蛙財布の中は八百円 ぴいす
嫉妬深くて炎昼のふくらはぎ 犬鈴
艶やかに塩の滲み込む胡瓜かな 大塚めろ
水中に入りて激しき鯉のぼり 青柘榴
少年や主食の如く冷し瓜 カラ嵩ハル
海女の足空より離れ沈みゆく 人日子



先選者 加根兼光

 俳句甲子園の京都大会を終え金沢に移動の車中に電話。よく仕事をするCM演出家でベーシストでギタリストのSさん。ボクがLP時代から聴いているストーンズのライブのギターの話。ジョン・レノンで有名なエピフォンの音がこのころのキース・リチャードのプレイで聴かれると。最近はエピフォンがお気に入りでストーンズをやっているらしい。年頭にギターを真面目にと思ったがまだケースの中に眠るまま。そろそろ弦でも張り替えるか。



蜂の巣へスプレー缶の冷えにけり ソラト
 大きな蜂の巣。その蜂の巣へ殺虫スプレーを缶が冷え切るまで激しくかけている。助詞の「へ」が蜂の巣に向かって近づく缶と噴射する勢いをさらに効果的にする。缶が冷えることを言っているだけで巣の大きさや居るであろう蜂の凶暴さまで受け手に伝えることが出来るのは助詞と語順の勝利。もちろん冷えてゆく缶を持つ素手も見える。蜂は春の季語ではあるがこの句からはますます凶暴になる夏の蜂を思い描く句である。



灯台を傾げてきたる初燕 迂叟
 この句も語順がいい。灯台を傾げるとは何かと思わせ、それが下五の季語「初燕」に出会った瞬間、燕の目線に置き換わる。「きたる」としたことで飛来する燕を迎える作者の位置も描かれる。空撮をしているような視界の広がりのある句だ。

青大将の渡りきるのを待つてゐる ポメロ親父
 幅の広い、広域農道などを想像した。蛇の大きさ、ゆっくりとした速度。待っているのは耕運機か田植え機。悠々と道を渡る大きな青大将にイラつくこともなく、ヌメッとした肌や細かい鱗まで眺めて草むらに消えるのを待っている。今日の農作業を考えながら。

艶やかに塩の滲み込む胡瓜かな 大塚めろ
 「艶やかに」を言い過ぎと判断するかは微妙だが胡瓜の内部へと塩が行き渡る様を「艶」で表現できた。胡瓜の深い緑の奥に塩が静かに浸透するとき胡瓜は内部からさらに艶を発するごとくに輝く。それは成長とともに蓄えた太陽の艶でもある。

椅子の背に負わせるリュック街薄暑 マイマイ
 ビルを眺めながら歩く。疲れを癒す如くカフェの椅子に辿り着く。肩から外したリュックを座る椅子に背負わす。椅子はなで肩でなくいかり肩でなくてはならぬ。きっと古い木の椅子の喫茶店。ドーナツも注文するかなと。

海女の足空より離れ沈みゆく 人日子
 海女は高い呼吸音を残し潜水を始める。獲物は鮑か海胆か。海底に辿り着くためには勢いが必要。その足は空を蹴るように海中へ。「空より離れ」の言葉が広い空から海へと海女とともに移動するカメラの動きのようである。



葉桜や借り直したる随筆集 紗蘭
新聞紙広げ立夏の理髪店 のり茶づけ
チューリップ自転車を漕ぐ音が雑 紅紫
虻の野となって小さき石に座す ほろよい
夏木立はみ出してくる旅行生 八木ふみ
サイダーあふり長男は秘密主義 瑞木
薫風やコロコロ笑ふ紙コップ あおい
指で拭く接眼レンズ初燕 北伊作
庭に咲くスミレ残して草を引く サキカエル
若葉風鉄にも薄き削り屑 浜田節



後選者 関悦史

 最近駅の近くに大きい古本屋ができて、外に出たときはほぼ毎回こことブックオフを覗いています。最近の掘出物は『双書・20世紀の詩人21フランシス・ポンジュ詩集』や清水徹『廃墟について』、それと自分が生まれた頃に出ていたハヤカワSFシリーズの眉村卓『時のオデュセウス』『虹は消えた』、ロバート・シルヴァーバーグ『いばらの旅路』などなど。


特選句
紫陽花や勝手口より地域猫 もね
 まだあまり耳慣れない「地域猫」ですが、言葉の新奇さが俗に流れ過ぎず、現代の生活実感と結びついています。不意の幸のように入ってきた猫に、紫陽花の湿った重さが実体感と空間のまとまりをもたらしています。

しづもるとはなんじやもんじやの咲きみつる  亜桜みかり
 なんじゃもんじゃ(得体の知れない木の総称ながら、概ねひとつばたごを指す)のもっさりと密集して咲く白い花はまさに「しづもる」という言葉を体現したかのよう。「しづまる」では語感上成り立たない句です。

颯爽と行くトラクター聖五月 青柘榴
 聖五月はカトリックのマリアの月。「颯爽と行くトラクター」は滑稽味の強い言い方ですが、「聖五月」と結びつくと、マリア信仰以前の大地母神信仰をも連想させ、機械農耕ならではの情趣が拾えている気がします。


並選句
草矢うつ今日はあいつの誕生日 小市
五月雨や縁側のないわが家なり 小市
高速を降りて立夏の形無く 紗蘭
一条の木漏れ日滲む山躑躅 蓼蟲
まっ白きつつじでありぬ許されよ 幸
君の背に唇残す更衣 藍人
仄暗き胸の谷間や巴里祭 藍人
牡丹咲く空一面の青さかな れんげ畑
柿の苗植ゑよ猿蟹合戦せよ たかこ
くさいきれ古墳にありしロマンかな 迂叟
田水張る農家一軒水の中 樹朋
君の忌の風つかむ夜卯月かな 洋子
夕涼み 時には変な声の犬 みちる
殴られて娼婦が薔薇となる夕べ みちる
被写体の海月時間を静止する 和音
亀の子に贔屓してやる餌百円 和音
あでやかに薔薇は待ちをり剪らるる日 うに子
わすれゆく人をゆるして新樹光 うに子
殻散らす烏餌食のピース豆 かのん
家系図の名の面白き曝書かな 古殿七草
北国の蜜柑の花や水玉に 未貫
バタ足の海月に触れし膝頭 のり茶づけ
塹壕の土匂い立つ薄暑かな 匠磨
夕暮れの蝙蝠型に切り取らる 匠磨
春の夜の栄養材の空の尻 紅紫
麦秋の海旋回の着陸機 もね
青鞜の歩幅をあわす車椅子 ほろよい
選択の是か非か不明母子草 一走人
古民家や百年吹きし若葉風 元旦
レッスン室の厚き扉や五月闇 亜桜みかり
梅味のものばかり買い込んで夏 空山
夏の海黒き鉄鎖の輝けり 一心堂
夏蝶の羽音を聞きし君なるや 青蛙
タカラジェンヌのポスター変える聖五月 ぴいす
豆の花ふわりと揺るるひるさがり おせろ
新築の園舎に木の香風青し 八十八
湯煙の通りや風は常盤色 八木ふみ
舌打ちの舌赤くして大西日 犬鈴
投函の音しなやかに春日傘 緑の手
狛犬のおかっぱ頭青葉照る てん点
手水鉢底に守宮の白き腹 輝女
制服に容姿追いつく雲の峰 魔心地
絶え間なく散る錐もみの竹落葉 ポメロ親父
黒南風やめでたしめでたしの続き 鞠月
噴水や魔法解けたり掛ったり 大塚めろ
青蜥蜴シャルドネ色の風といて てんきゅう
母と子の背丈近づく薔薇の園 雨月
小満や息子殴りし左腕 まんぷく
清潔な風ついばめば新緑に なゝ
蝙蝠の洞穴へ星裏返る ソラト
尺蠖が指でスマホをスクロール マイマイ
糶り市の一段落や夏つばめ ターナー島
正気危ふし滝殿の奥暗し 瑞木
薫風にさざ波の立つハイボール 理酔
青嵐来て企画書をぶん投げる 理酔
亀鳴くや切手の糊の不味いこと あらた
カタカナのソとンの違い新入生 あらた
高台に夜明とふ駅桜東風 春告草
ねこやなぎ天使の卵のびつしりと 春告草
湯の町に傷癒えぬ碑や終戦忌 松ぼっくり
風清か自分に贈る薔薇を摘む あおい
ループ橋空へ一気に若葉風 野風
柿若葉肺ふかぶかとみつる風 哲白
極みよりぱっと咲き飛ぶ天道虫 カラ嵩ハル
葱坊主ショートカットで登場す 鯉城
蚕豆や水軍の裔こんな顔 鯉城
逝く人のありて薺の花白し 人日子
大百足虫騒然となる通夜の席 北伊作
手向けらるお地蔵さんにも春の花  エノコロちゃん
植木鉢ずらすと出たり雨蛙 サキカエル
ブラバンのドレミファソソソ蔦若葉 コナン
花水木背高く長女の記念の樹 むらさき
蝸牛鳴くなこんなにも青い星 浜田節
六月の風は気まぐれ髪を切る なづな
同性婚異議ありにけり女王蜂 三竜
水打つて鯉のもみ合ふ立夏かな 省三



関悦史(せきえつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および「ホトトギス」生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 201年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に「ホトトギスの俳人101」「俳コレ」など。

加根兼光(かねけんこう)
1949年大阪生。俳句集団「いつき組」組員。第9回俳句界賞受賞。



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へたうま仙女


文 杉山久子

 きむけんさんの特技が私の特技とほとんどかぶってることに不思議な安堵感を覚える……いや、複雑な気分の今日この頃。梅雨の晴れ間を思わせるような清々しいへたうま句は出たかしら。

元気ある午前のうちに投句せよ ケンケン
 清く正しい投句者はこうでなくちゃ。栄えある第一回「投句心構え大賞」受賞。(今、創設)

もう四十まだ四十の初老です ケンケン
 いいリズムで行ってたと思ったら、下五で絶妙の落とし。ケンケンお帰り! しかし何年生きてるかわかんないくらい生きてる仙女から見たら、人間って可愛いこと考えてるのね〜。

はつなつの盥がおちてきて痛い 藤実
 ドリフのコントか?(若い人は知らない?)きっと金盥ね。「はつなつの」のちょっとした高揚感と「痛い」のストレートな表現、痛いのに「にへら」と笑ってる表情が見えて愛してしまったわ。

左からテキトーに混ぜ夏料理 藤実
 テキトーなカタカナづかい……つか、全部がテキトーで、「夏料理」の季語が持つ美しさをテキトーに超越、斬新な味付けが食欲をそそる?

ベッカム引退真夜中の苺ミルク 逆ベッカム
 逆ベッカムならやっぱこの話題は詠まないとね。ベッカムは仙女もファンだったわ(あの声を聞くまでは)。まあそんなことはどうでもいいんだけど、スターの引退にお酒じゃなくてこんな乙女なスイーツをぐるぐるやってるところ、またそれが真夜中なのが泣かせるわ(時差があるからだけかもしんないけど)。

七匹の猫飼う家や若葉寒 ひでこ
 七匹も猫がいる家訪問してみたいにゃ……という個人的趣味はさて置き、若葉寒のひんやり感が不気味といえば不気味。七匹の子山羊みたく可愛い顔してやること残忍な猫が揃ってるのかもね。ぶるぶる。

たこさんのウインナー詰め運動会 ふーみん
 「たこさん」という無邪気なおかずの呼び名に運動会のうきうき感が伝わるわね。ちょと詰めが甘いけど。かにさんも詰めて欲しいのよね。

夏燕百パーセント守ります 小木さん
 夏燕に対して宣言してるのか(だったらいい家主ね)、政治家の公約か? 根拠のない百パーセントが夏燕のスピード感と相まって切なくなるわ。

ニンゲンは百合に失礼ばかりする 親タカ
 確かに確かに。しかし他のものにも失礼ばかりしてるんじゃないかしら?


 以下追放〜。

病む薔薇のくづほるちから咲ききつて  神楽坂リンダ
ひらきたるまま眠りをり夜の薔薇  神楽坂リンダ
 寝るとき閉じる器用なのもいるようだけど、ひらきたるままは薔薇らしいわね。病む薔薇も薔薇になりきってるかのような愛情を感じる。へたうまの道は険しいのよん。

葉に落ちる音が先降る緑雨 山ぐるぐる
 雨粒より音の方が先に到達していると鋭く観察。「緑雨」という着地に、眼が洗われそうでまずいわ。

五月晴れ園外保育胸に笛 たっ君
 園児たちの胸に揺れる笛だけ描いて、晴れ渡った空に響く賑やかな声まで聞こえてくるじゃない。

母の袖かたく握りてラムネのむ 未々
 たぶん小さい子だわね。感情的なことは言ってないけどこの子のどきどきが伝わってくるわ。かつてこんな子だった大人の自分が思い出してたりしてもいいわね。迷わず追放。

風光るフェリーデッキの鬼ごっこ だなえ
 んんんん〜いい光景だわ。って感心さしてもらっちゃ困るのよね。へたうま永住宣言したくせに、こんな巧いの作られちゃ困るわ。修行して早く戻ってらっしゃい。

(ツ……)
五月闇スニーカーにて忍び込む 親タカ
 五月闇に乗じて家宅侵入かい? しかも靴のまま。足跡からは身元がばれないくらい出回ってる大量生産スニーカーか? って感心してる場合じゃないわよ。へたとかうまいとか追放とか以前に通報!



杉山久子(すぎやまひさこ)
1966年生まれ。第二回芝不器男俳句新人賞。句集『春の柩』、『猫の句も借りたい』『鳥と歩く』。


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ

 子供のころはスポーツといえば野球だった。いまやスポーツといえばサッカーになりつつある。世の趨勢というか、人並みには興味はあるのだが五体満足の人間がなぜ手を使ったらいけないのか、その根本部分で、未だにどーも納得がいかない……。(因みにラグビーファンであります)



肺が万緑に吸いつくされていく 緑の手
 フツーなら万緑の中に身を置いて、木々から溢れ出る精気を吸う……というような立ち位置になるところだろう。しかしそんな生易しい万緑ではないのだ。なにしろ頭で万緑を感じるのではない。肺が万緑を感じ、逆に肺が万緑に吸い尽くされるというのである。ヘタすれば万緑の中で万緑に精気を吸いとられて窒息しかねないほど、オソロシイ万緑ということだろう。理屈を越えたところに、この句のインパクトがあるように思う。なぜか篠原鳳作の名句「しんしんと肺碧きまで海のたび」を彷彿とさせる。褒めすぎか……。



壇蜜のグラビア卯の花腐し 元旦
 大して美人でもない(スミマセン)のに、その妖艶さが受けているのでしょうか壇蜜は。なんだか腐って崩れる一歩手前の熟成しきった雰囲気の壇蜜と季語「卯の花腐し」の、いわば二物取り合わせが秀逸。これ以上のマッチィングはないように思います。春の長雨の中に壇蜜を立たせておけば、多分卯の花は絶滅します。

夏の空いつもどこかに音 北伊作
 よく考えれば春も秋もそれなりに空には音があると思うが……俳句は理屈ではない。夏の空には、いつもなにかしら音がしているような気がするのである。大げさに言えば「発見」ということか。夏は窓を開けておくことが多い分、飛行機音とか、鳥の鳴き声とかどこかの夫婦喧嘩(これは空ではないか)とか、それだけいろんな音が聞こえやすいということかもしれないけど。なんだか茫洋と景が広がる……。

破廉恥に星座を組む 藤実
 夜空を見て星座がわかる人は尊敬する。子供のころ白鳥座も蠍座も何度指差してもらってもわからなかった。いまだにわからない。なのに破廉恥なカタチに星座を組めるとは。「露の夜や星を結べば鳥けもの(鷹羽狩行)」という句があるが、破廉恥に組むほうがよほど創造力がいるだろう。

二人静を一人で見ている ケンケン
 二人と一人の対比が全て。たった十一文字しかないのでよけい際立つ。作者の狙いもそこにあると思う。きれいに収まった佳句といえる。逆に一人静を二人で見てたらどうなのよ……とツッコミたくなるというのは、その句が魅力を持ってるということだろう。

視界の隅を擽る蛇 みちる
 擽るのである。それも視界の隅を……。どういう状況なのか不思議な句なのだ。たとえば畑仕事の最中、誰かに道を訊かれている時に蛇が視界を横切ったのだろうか。それとも夢の中の精神世界のことなのか。「隅を擽る」という表現が、句自体をやや奥行のあるものにしていると思う。「視界の隅を蛇が擽る」でもよかった。



瞑想する日は回転寿司 みちる
蟻を見つけた程なく何かの死骸も 匠磨
ほととぎすの声が捻れる まとむ
昼の虹見るヒロシマの空 空山
無いものは無い春なれど独り也けり 輝女
コーヒーゼリー夜に満つ ソラト
肋骨を舐める 理酔
生まれたて尺蠖のしゃっくり ポメロ親父
夕日が綺麗でオカマ掘る 大塚めろ
糸トンボの首を見たくてそっとひっぱる カラ嵩ハル


並選
一寸身震い 空 霞 KIYOAKI FILM
コーヒーは甘い方がいい五月 小市
心労を沈めた水槽の海月 紗蘭
蛍火のトンネルの向こうあなたがいる たま
タンポポの絮飛ぶビッグバン 迂叟
選りすぐりの立夏青空のっぺらぼう 洋子
八つ当たり薔薇にするんじゃなかった 和音
ああこの空は祖父が飛んだ夏空だ 匠磨
熱帯夜西条秀樹のベストアルバム 元旦
蕾の堅さうな檸檬の花は今 亜桜みかり
鯉のぼり泳ぐ泳ぐ臓物は風 輝女
夏兆すあいという字が書けません まんぷく
海苔に抱きしめらるる誠実な白飯 なゝ
鯰の腹白く翻る マイマイ
何が悲しいってオタマジャクシに足が 瑞木
初夏の蛇に睨まれた ザッパー
旅をするオオアサギマダラという蝶が好き ひでこ
ついでのついででいい 小木さん
庭芝もふかふか足元に五月来ぬ むらさき
字余りのようにジャングルジム若葉風 親タカ




きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「層雲」同人。句集『鍵の穴』(文芸社)、『鳩を蹴る。』(プラネットジアース)、『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)。特技・妄想、泥酔。


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詰め俳句計画


出題・文 マイマイ

今月の問題
 次の(  )の中に共通する夏の季語を入れて下さい。
雨粒の次々割れて(  )
千年の杉の根(  )抱いて


雨粒の次々割れて夏が来て
千年の杉の根夏が来て抱いて
 ケンケンさん。後句爆笑。この強引さむしろ好きです。1級。因みにこの場合の季語は夏来る。「歳時記を開けば誰でも解ける」がこのコーナーのコンセプトですので、季語をアレンジ(語尾を変化させたり動詞をくっつけたり)された場合は有段とはしないことをルールとして提示しておきます(副題はOK)。まんぷくさんは蝉の子。蝉は季語なのですが蝉の子は私の持っている歳時記には載ってなかったので一応級外としておきます。エノコロちゃんのアスパラガスも春の季語でした。残念。級外。

雨粒の次々割れて夏の雨
千年の杉の根夏の雨抱いて
 れんげ畑さん、空山さん。後句は詩的なのだが、前句雨がかぶるのは損。カラ嵩ハルさんの半夏雨、瑞木さんの虎が雨も同様。山ぐるぐるさんの夏の月は雨と月の並立に無理がある。ちろりんさんの夏の雲も前句、雨と雲のイメージが近く、言いたいことが絞られていない感じ。6級。人日子さんの青時雨は実際の雨ではなく雫が青葉から滴るものだが、前句やはりイメージの重なりが気になる。野風さんは梅雨の蝶。この季語は「梅雨」が説明的になりやすいので難しい。だりあさんの梅雨きのこも同様。5級。青柘榴さん、親タカさんの苔清水は後句面白い光景だが、前句因果関係が分かりすぎるか。4級。古殿七草さんははたた神。前句、雷を言いかえることで雨とのイメージの近さがあまり気にならない。後句はちょっとびっくり。3級。

雨粒の次々割れて青嵐
千年の杉の根青嵐抱いて
 のり茶づけさん、理酔さん。後句意外で面白い。前句、青嵐は雨を伴わないように思うのだが……。4級。みちるさんは黄雀風。南東の風でこの風が吹くと海の魚が雀になってしまうという言い伝えが中国にあるとのこと。合っているとは思えないが勉強させてもらったので3級。一走人さんは青葉闇。前句、闇の一字が利いている。後句、青葉の季感は落葉樹の方が強いので杉との取り合わせはやや損か。同じく3級。ほろよいさんは五月闇。こちらのほうが杉とは合っている。ひでこさんの聖五月は前句美しい。後句は神聖なイメージで繋がっている。たかこさんは原爆忌。前句、悲しみや空恐ろしさも感じられる。後句、やや強引だが、全てを包み込む杉の根なのかもしれない。2級。

雨粒の次々割れて花山葵
千年の杉の根花山葵抱いて
 北伊作さん。前後句ともに清涼感があって美しい。3級。洋子さんはおじぎ草。前句、雨粒に当たって葉っぱがお辞儀をしている様が見えるようで可笑しい。後句おじぎ草は耐寒性が弱く日本では一年で枯れるので現実にはなさそうだが、光景としては面白い。2級。

雨粒の次々割れて蝉時雨
千年の杉の根蝉時雨抱いて
 輝女さん、てんきゅうさん。後句は臨場感があるが、前句、雨が止まないと蝉は鳴かないので無理がある。5級。小市さんはでんでん虫。亜桜みかりさんは蝸牛。後句、かわいらしくて好き。前句はつきもの過ぎて意外性が無い。匠磨さんは兜虫。これは前句、逆に季語とフレーズの関連性が見えない。4級。魔心地さん、鞠月さんは青蛙。これも雨とつきものだが、あのラミネートコートされたような体表面を思うとフレーズが生きてくる。3級。笹百合さんは雨蛙。前句、雨が重なっているが、敢えてそうすることで詩になっている。2級。藤実さん、大塚めろさん、小木さんは蟻地獄。前句、雨粒の命の時間と蟻の命の時間というようなものを考えさせられた。後句はシュール。1級。

雨粒の次々割れて蝉の殻
千年の杉の根蝉の殻抱いて
 元旦さん、迂叟さん。前句、雨粒と蝉の殻の質感の対比が楽しい。後句、悠久の時間と繰り返される命の営みが同時に句中に表現されている。初段。ポメロ親父さんは山椒魚。前句、あの粘膜でできたような体表で山椒魚はきっと雨を喜ぶのだろう。後句、井伏鱒二さんの小説では山椒魚は閉じ込められてしまうが、ここでは杉の根に抱かれている。おなじく初段。


今月の正解
雨粒の次々割れて苔の花
千年の杉の根苔の花抱いて
 蓼蟲さん、未々さん、雨月さん、サキカエルさん。前句のクローズアップ&スローモーション、後句の大小の対比。二段。


9月号掲載分の問題(7月20日締切)
 次の(  )の中に共通する秋の季語を入れて下さい。
地下街を抜け(  )で待つ
(  )や航跡うねりつつ



マイマイ
2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人。第一回大人コン「多面体」にて優秀賞受賞。句集『翼竜系統樹』マルコボ.コムオンラインショップにて販売中。将棋推定初段。棋友募集中。



【100年投句計画】投句方法
 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可)・俳号(なければ本名の名前のみ)・本名・電話番号・住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。
ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙女」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。また「雑詠俳句計画」は欄へ寄せられた二句を各選者が選ぶ形式です。各選者に個別に投句を行うのではない点にご注意下さい。

それぞれ締切は、7月20日(土)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがきFAXでも投句できます。


よくある間違い
「三句投句している。」
 旧雑詠欄「くらむぼんが笑った」と混同し三句投句される方がいらっしゃいます。各コーナーへの投句はそれぞれ二句までとなっておりますのでご了承下さい。

さらに多くの投句をしたい方へ
 松山市が運営する『俳句ポスト365』など、無制限に投句を受け付ける場もございます。ぜひご活用下さい。(俳句ポスト365のページ参照)


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Letter from spider garden


ナサニエル・ローゼン(訳:朗善)
松山市在住の世界的チェリスト ナサニエル・ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.15 世界初!日英混合「Hai句」

4WD
chews hot road and spits out
いっただきます

暑き道噛んで吐き出す四駆かな

(直訳)
四輪駆動
暑い道路を噛んで吐き出す
いっただきます



We bought a car: big, black, and loud. It will help us move our boxes and reach our new mountain home. The owner`s manual is in the glove compartment and will stay there until my kanji is sufficient to read it.

 僕らは車を買った。大きくて、黒くて、うるさい。家財道具を積んで、山中の新しい家まで走るのに役立ちそうな車だ。
オーナーズマニュアル(取扱説明書)は、ダッシュボードの小物入れの中にある。僕がそれを読むに足る漢字を身につけるまで、そこにあるだろう。

訳:朗善



ナサニエル・ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2011年より松山市在住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第28話
「ハイノロジー」 日野皓正

ハイノロジー元カレの胸汗光る 俊坊

 この句が東京の俊坊さんから届いた時、じぇじぇじぇこれや!!と唸った。月一で既に63回を数える我がJAZZ句会の歴史を追っても、これほど瞬発力のある句は珍しい。日本のジャズLP中で驚異的な売り上げを記録した「ハイノロジー」。当時の日野の勢いやカッコ良さだけじゃなく、ガツンとドラマが込められている。ジャズ者なら解かるアルバムの強烈な印象が、後の12音とよく響き合っている。

灼熱の唇はマイルスを追う 蛇頭

 日野のジャズトランペッターとしての快進撃は63年の「銀巴里セッション」直後に始まる。64年、白木秀雄クインテットに参加。ベルリン・ジャズフェスティバルへの出演で世界のジャズ界から注目を浴びた。67年、「アローン・アローン・アンド・アローン」でアルバム・デビュー。ピアニストの菊地雅章と共に日野=菊地クインテットでも活動した。
 一方、日野の敬愛するマイルス・デイヴィスは、63〜64年にピアノのハービー・ハンコック、ベースのロン・カーター、ドラムスのトニー・ウィリアムス、テナー・サックスのウェイン・ショーターをグループに迎え入れ第2期黄金クインテットを確立。68年には8ビートのリズムとエレクトリック楽器を導入した「マイルス・イン・ザ・スカイ」を発表。69〜70年には70年代以降のクロスオーバー、フュージョンブームの先駆けとなった名作「イン・ア・サイレント・ウェイ」と「ビッチェズ・ブリュー」を発表している。
 日野のアルバムづくりは、この時代のマイルスにもろ影響されていると僕は思っている。「ハイノロジー」の1曲目「ライク・マイルス」は、その象徴的オリジナル・ナンバー。

真夏のドライブがクロスオーバーの時代 チャンヒ

 日野は75年から活動の拠点をアメリカに移す。70年代後半からはフュージョン分野にも進出。マイルスの路線とは違ったポップ感覚も披露した。
 この句は、その代表格である「シティ・コネクション」のジャケットを切り取った、いわゆるジャケ句である。パナマ帽を被ったニューヨーク人、日野皓正の表情が示すとおり、彼の自信とリラックスに満ちた名作。

吹きつのるトランペットの白夜かな 神楽坂リンダ

 日野は、このアルバムでトランペットを吹いていない。ペットより音の丸いコルネットやフリューゲル・ホルンで雰囲気を出している。しかし、この句の白夜はペットの輪郭を柔らかく包んでくれている。僕はA面の2曲目、ヴォーカルと日野のフリューゲルの共演「ステイ・イン・マイ・ウェイキン・ハート」のイメージで味わった。



http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


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ラクゴキゴ


第28話
『酢豆腐』
〜 「ちりとてちん」と似てる? 〜

あらすじ
 夏の暑さの盛り。
 ひまな若いものが寄り集まって、一杯呑もうかと、暑気払いの相談をしているが、なにせ金が皆無い。
 そうしているうちに、一人が昨日の豆腐の残りがあったのを思い出し、与太郎に聞いてみると、この暑い中、一晩釜の中に入れて保存してあるとのこと。
 案の定、腐ってカビが生え、すっぱい匂いがして食べられるものではない。
 そこへ通りがかったのが、キザな横町の若旦那。この人、通人ぶった言動が嫌われている理由である。
 いいところにいいヤツが来たと、だまして腐った豆腐を食べさせようと相談がまとまり、「若旦那、どうぞおあがんなさい。」
 あいさつも「おや、こんつわ。」と変わった言葉づかいの若旦那。
 女はほっちゃおかないとか、さぞモテるんでは……などと皆でおだて、若旦那も調子にのってノロケはじめる。
 「ところであなたは通な方だが、夏場はどんなものを召しあがります?」と水を向けたところ、「人の食わないものを食ってみたい」と言う。
 こりゃあいいと腐った豆腐を差し出し、「舶来品のもらいものなので私たちにはよく分からない。どうぞ若旦那に。」と見せると、腐った豆腐は強烈な匂いを発しているので若旦那もじんわり断ろうとする。
 しかし逃がすものではない。若旦那も引くに引けず「この目にピリッとくる、目ピリなるものがオツでげすなあ〜」などと言いながら口に流し込んだ。
 「食っちまったよ、若旦那。これは何てえものです?」
 「こりゃ“酢豆腐”でげすなあ」
 「うまいね、酢豆腐だとよ。たんと召し上がれ。」
 「いや、酢豆腐はひと口にかぎりやす。」



 数年前、NHKの連ドラ「ちりとてちん」がヒットしましたが、上方の噺に「ちりとてちん」というのがあり、これも腐った豆腐を嫌われ者に食べさせる、といった内容です。
 「酢豆腐」とよく似ているのですが、話の味付けがちがっており、どちらもそれなりに笑える爆笑落語です。
 (ちなみに「ちりとてちん」のオチは、腐った豆腐の味をきかれ、「ちょうど豆腐の腐ったような味ですわ。」です。)
 実は元々小噺だったものを初代柳家小せんが落語として完成させ、その後初代柳家小はんが改作し(これが「ちりとてちん」)、上方へ移されて広まったと言われています。
 「ちりとてちん」は後に東京へ“逆輸入”され、今では東京では「酢豆腐」と「ちりとてちん」は別の演目として寄席に上がっています。
 最近は冷蔵庫の普及で、水屋に食べ物を置いておくようなことも少なくなりました。僕が子供のころはまだ水屋の中に何か入れたままになってて、ばあちゃんが「ありゃ、いけん、これもう饐えてしもた。」と残念そうに言っていたことを思い出します。
 「飯饐える」は夏の季語ですが、飯よりも豆腐よりも、饐えてしまった食品で最悪なものは?
 ズバリ、カレーです。
 カレーを一晩鍋のまま放置し、次の日「さあ食べよう」とふたを開けてみて腐っていたときの、あの衝撃。
 見た目も匂いも、今思い出しただけでムカムカしてきます。オエッ。
 そうだ、新作落語で「カレーが腐った」シチュエーションを演ってみましょうか。

原稿の二行が書けず飯饐える


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ホンヤクサイホンヤク


翻田 訳蔵

俳句暦0年のど素人俳人、翻田訳蔵がネット上の翻訳ソフトを使って、名句を翻訳、再翻訳し、そこからインスパイアされた(パクッた)句を発表していこうという馬鹿馬鹿しくも実験的で図々しいコラムです。


今回の俳句
 この闇のあな柔かに蛍かな 高浜虚子

 この句のポイントは、感動詞の「あな」をどう訳すかですかね。まずは、エキサイト翻訳(英→日)から

 あな in this darkness -- isn't it a firefly softly?

 「あな」を訳しませんでした……。思い切りがいいです。
 では、再翻訳

 この暗さの中のあな -- それは柔らかにホタルではありませんか。

 「ありませんか」は言い方によっては押し切られて逆らえない感じがありますよね。

 さて、お次はGoogle翻訳(英→日)

I wonder if firefly in softness of this dark hole

 再翻訳

 私はこの暗い穴の柔らかさでホタルかしら

 「あな」はやはり「穴」に訳されています。「私はホタルかしら?」と自問しているのでしょうか?

 最後に、Yahoo!翻訳(英→日)

Is a loss of this darkness a firefly soft?

 「あな」を「loss(ロス)」と訳しています。
 再翻訳

 この暗闇の損失は、柔らかいホタルですか?

 「暗闇の損失」とはなかなか文学的ですね。「柔らかいホタルですか?」と聞かれても、「……ですかねぇ……」と返事するのがやっとでしょう。

 それでは、この3つを受けて一句。

 この暗闇の損失は柔らかいホタルです 翻田訳蔵 


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お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第11回 『音楽劇 わが町』
[俳優座劇場プロデュース公演、作・ソーントン・ワイルダー、演出・西川信廣、出演・土居裕子、原康義、瀬戸口郁、13年5月21日、ひめぎんホール(県民文化会館)サブホール]

 ほとんど何も無い簡素な舞台。観客は、進行役(舞台監督)によって本作へと導かれていきます。70年前の作品にもかかわらず、日本でも盛んに上演されており、松山でも'09年に地元劇団により『道後・わが町』として上演。本公演の特徴は「音楽劇」。宇和島出身の土居裕子さんの瑞々しい歌声が印象的でした。

神・地球・わが町・莢隠元の筋

 さて本作は、一幕では「何も特別なことは起こ」らない町、グローヴァーズ・コーナーズの詳細な説明に始まり、そこで生きる二組の家族の「日常生活」を、二幕では、その二組の家族の娘と息子、エミリーとジョージの「恋愛と結婚」を描きます。そして、第三幕、ここでは、「死」が描かれます。産褥で死んだエミリーは、進行役(舞台監督)に懇願し、十二歳のある日に帰っていきます。そこで彼女(と観客)は、生の世界・何気ない日常は、全てが素晴らしく、意味に満ち溢れていることを知ります。しかし、同時に、あまりにも早く流れ去る時間の中、生きている間はそのことに決して気づけない事も知り、それに耐え切れず、死の世界へと帰っていきます。
 本作は、生きていることの、そして、何気ない日常の素晴らしさを描いた作品と解釈されることが多いようです。それは間違いではありませんが、しかしそれだけでは無いように思うのです。その理由は、本稿では書ききれませんが、私には、生と同じくらい死にも意味があり、つまり、生と死は等価である。そんな風に問いかけられた様に思うのです。
 エミリーが尋ねます。生きている時に人生を理解できる人間はいるのかと。進行役はいないと答えた後、暫くしてつけ足します。「聖者とか詩人とかはあるいはね―いくぶんは」
 俳句を作る人(の一部)も、あるいは、そうなのかもしれません。

永遠を待ちし銀河の星々と



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。


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マガジン化10年目記念?
句集を作るドキュメント


その2 キム・チャンヒ

 前回、句集を句集スタイルサイズでページ数はその倍の72ページ、全180句程度のものにすること決めた。10数年間に作った4300句の中から、句集に使えそうな俳句を選び、分類し、並べ替える作業が待っている。さて、どうやってそれを進めるか。
 10年ほど前は、総合誌などに応募する作品を作る際、使えそうな俳句を短冊に書き写し、それを並べ替えながら30句なり50句なりの作品に仕上げていた。書き写す短冊には、俳句だけではなく、春・夏・秋・冬・新年など、季節も書き添えておくと、並べるのが効率的に行えるのだが、そもそも俳句を短冊に書き写すのが効率的ではなく、エクセル(表計算ソフト)に作った俳句と季節を入力していくようになってからは、必要な俳句(季節も含む)だけを縦書きに印刷して、それらを短冊に切り、同様に並べるて作品集を作るようになった。
 しかし、手書きの短冊もパソコンで印刷した短冊も、短冊でアナログに並べ替えをしたものは、最終的に再度入力をして作品集にしなくてはならず、これまた面倒に感じてきた。特にパソコンで入力したものを、再度手入力する作業は、何とも非生産的。
 それで最近は俳句を短冊に印刷しないで、直接パソコン上で並べ替えをしている。作品集に使えそうな俳句をエクセルからワード(ワープロソフト)に移し、縦書き表示で作品集全体を見渡しながら、コピー&ペーストを繰り返して作る方法だ。並べ替えが完了した瞬間に作品も完成し、つまらない再入力作業をしなくて済む。しかし、俳句を入れ替えるのに、コピー&ペーストを繰り返すので、気がつかない間に同じ句を二度入れてしまうという、単純で忌々しいエラーを起こしやすい。どうにか簡単にできないか?
 とここまで原稿を書いてて、自分はなんて怠け者なのだと、情けなくなってきた。ここは初心に返り、十数年間の俳句4300句を短冊に印刷して作品集を作ろうか、と一瞬だけ考えたがすぐ却下。
 不便に感じていることがあるならば、それを便利にすることこそが、発明であり社会貢献なのだ!と自分に言い聞かせ、エクセルを使った新たなるソフト作りを始めることにした。上手くできれば、大人コンの応募用に配布もできるし……。
 まず俳句と季節を入力したシートを用意。次に、1:入力した俳句に通し番号を付ける。2:全体の俳句の中から、使えそうな俳句に「●」を付ける。3:「●」を付けた俳句を、内容ごとに使いたい章の番号を入力する。
 1〜3の作業をすると別のシートに、「●」の付いた俳句だけを、章ごとに分けて、春夏秋冬の季節順に並べることができる。
 その中から、別のセルに俳句の通し番号を入力することで、作品集を作ろうと考えている。重複して選んだ俳句には、「エラー」が表示されるようにもした。
 そして現在、4300句から「●」を付けた510句を抽出。あとは、章立てして、並び替えるだけだ!?


つづく


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俳句対局普及プロジェクト 俳句対局道場


第1回「俳句対局の句はこんな風に作る」
ナビゲーター 正人


 読者のみなさんこんにちは。俳句対局公式実況司会の正人です。名乗った者勝ちです。
 さて、新企画「俳句対局道場」は俳句対局という遊びを楽しむための種々の企画をお届けするコーナーです。
 企画の発端はこの春に龍天王決定戦で優勝した瑞木さんのおたより。

瑞木 「俳句対局の俳句ってどんな風に作るの?」と聞かれるけど、言葉で説明してもわかりにくいようで…実際に自分で作った方がわかりやすいのかな?と。(編集室要約)

 たしかに俳句対局のルールは一見複雑。しかし原則は意外と単純です。

原則
「席題句から一漢字あるいは一単語をいただき、制限時間内に俳句を作る。」

 基本はこれだけ。つまり俳句対局的俳句の作り方とは、限られた時間の中で言葉のパズル的連想ゲームをして一句をスゲー勢いで仕上げるという知的ゲームなのであります。
 対局相手の句の一部を使って作る仕組は事前に句を準備できないようにするため。いわば試合時のズル防止。
 他にもこまごまと作句ルールはありますが(欄外参照)この辺は習うより慣れろの精神です。一度読んだらまずは作ってみる!!
 「そう言われてもどう発想していいかもわからないし……それに時間制限なんて無理!」って方はまずは時間制限なしでの挑戦をオススメ。気楽に連想ゲームを楽しむつもりで最初の一歩を踏み出してみましょう。頁末尾に投句のお誘いありマス。

ケーススタディ
「頭の中はこんな感じで動いてます」

 俳句対局の公式戦では一句あたりの持ち時間は二分間。この短い時間、頭の中ではどんなことが起こっているのか? 発想の一例として脳内スパークの全容を赤裸々に大公開。

柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺 子規
 (制限時間二分・兼題句=子規)

思考回路 ※( )内は開始後経過時間
 まず、季語から一字を取るのはアウト。季語は「柿」だから、この一字さえ除外すればOK。(2秒)最初に目についたから「食」の漢字一字を起点に作ってみよう。「柿食う」で季語じゃないよね? うん、大丈夫なはず。(10秒)
 う〜ん原句の通り「食べる」動きのままだとなんとなく芸がないからヤダ。(20秒)音を変えて「食物」とか…(31秒)…いや、生々しい言葉が好みなんで「食いもの」にしよう。(37秒)さて季語は? 食い物系?(42秒)いや、食い物から発想して「饐える」でどうだ。(48秒)たしか「飯饐える」って季語があったはず。多少使い方にアレンジ入るけど「食い物の饐える」で。許容範囲内だろう。(51秒)でもこのままだらっと一句続けると「饐える」のピリッと感が出ないな…(73秒)…よし、詠嘆で一回切ろう。(80秒)
 時間ヤバいな。(81秒)取り合わせ、取り合わせ何にしよう…飯、飯系で放置しそうな(87秒)…母、母なら饐えさせるな。(91秒)母の特徴付けが欲しい…飯を饐えさせそうな…(97秒)…げげ、残り時間23秒!? こんな感じでどうだっ。

食ひものの饐へるや母の痴呆症 正人
 (残り時間 17秒)


次回予告 【投句締切7月10日(水)】
 「食ひものの饐へるや母の痴呆症」を兼題に、俳句対局ルールに則って作られた句を募集します。投稿句は次号で紹介。お便りや野次も歓迎ヨ。

※件名を「俳句対局道場」とし、俳号・本名・電話番号・住所・時間制限に挑戦した方は所要時間を明記し、magazine@marukobo.comまで。投稿フォームからの場合は通常のお便りの末尾に「俳句対局道場」と書き添えて送信。このコーナーだけ先に投句するのもOK。

※俳句対局作句ルール
1:使用する季語はいつの季語でも構わない。(傍題可)
2:前の句から頂くのは、漢字、または、自立語。
3:前の句の表記のまま頂く。表記を変えてはいけない。(カタカナ表記の場合は、カタカナで)
4:前の句の季語、および季語の一部を季語として頂くのは、不可。



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百年歳時記


第2回 夏井いつき

 有名俳人の一句を紹介鑑賞するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月ご紹介していきます。

子規の熱静かに冷ませ夏蜜柑 たかこ
 日々の病床にて食べた物を克明に記録した「子規」ですが、そのリストに「夏蜜柑」があったか否かは不勉強にして知りません。が、こんな一句に出会うと、その病床に明るい黄を発する故郷の「夏蜜柑」があったに違いないという確信めいた気持ちが生まれます。
 「熱」に魘され、血を吐き、膿を出す凄まじい闘病生活の中、子規の大きな喜びは食べる事でした。菓子パンを幾つも食べ、鰹の刺身に舌鼓を打ち、白いご飯を噛む。今日一日を生き抜いた証を、子規は食べた物を記すという行為で確認していたのかもしれません。
 「子規の熱静かに冷ませ」という祈りの言葉と「夏蜜柑」の酸っぱさが哀しい癒やしとして広がる、深い味わいの一句です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』5月20日掲載分より)

レースは黄ばみ妻を愛妻と呼びぬ 西条のユーホ吹き
 夏の季語「レース」といえば、金属製のかぎ針で細い糸を編み上げていくさまが思い浮びます。レースのテーブルクロスやピアノカバーは優雅な生活を思わせ、レースのカーディガンやワンピースを着た女性の優美もまた、この季語が内包する印象です。
 そんな季語の本意を裏切り、「レースは黄ばみ」といきなり語り出す一句は、後半の措辞によって鮮やかに展開していきます。
 「妻」が編み「妻」が纏った「レース」が黄ばんでゆく月日を共に過ごし、ワタクシは今、彼女を「愛妻」と呼んでいるよと語る夫のなんと優しい視線。真っ白なレースの似合う新妻を眩しげに見つめていた頃の若々しいまなざしも、ほのぼのと想像されます。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』5月31日放送分より)

夫いつか踊子草へ跪く 都築まとむ
 「踊子草」とは美しい名前ですね。【葉の付け根に淡紅色または白の唇形をした花が輪生する】様子が笠をつけて踊る人に似ていることからこの名が生まれた、と歳時記には解説してあります。
 「夫」と野山を散歩した折の点描でしょうか。この花はなんだろう?それは踊子草よ、この花によくその名をつけたものだなあと語り合ううちに、夫が「踊子草」の傍らに跪いていることに気づきます。「踊子草」に近づき触れるための「跪く」という行為に、妻の心はハッと動きます。この人はこんな優しい表情でものを見つめる人だったんだという思いが、「いつか」というささやかな時間の表現によって静かに広がってきます。長く愛唱したい作品です。
(俳句マガジン『100年俳句計画』6月号「百年百花」より)

心臓へ鳥影降つてくる薄暑 野風
 まず飛び込んでくる「心臓へ」という措辞に、目を奪われます。「へ」は方向を示す助詞ですから、心臓に向かって何かが突き刺さるかのような印象が、一瞬脳裏をかすめるのです。
 が、そこから一句の世界を瑞々しい臨場感へと切り替えるのが、「鳥影降つてくる」という措辞です。心臓へ向かって飛び込む「鳥影」は、読み手の心に激しい羽ばたきを再生します。いきなり起こる羽ばたきの音は、読み手の「心臓へ」まさに届くのです。
 さらなる巧みは「降つてくる」という措辞。飛び立つ「鳥影」のひかりは、日に日に眩しさを増す「薄暑」のひかりです。季語「薄暑」を肉体感覚として追体験させる鮮やかな手法に脱帽の一句。
(俳句マガジン『100年俳句計画』6月号「100年の旗手」より)

四万六千日僕だけを見て 磨湧
 初めてこの句をみたのは、句会の席ではなかったかと思います。清記用紙を一読して、何をぬかすか!どんな季語の使い方や!と一顧だにしなかった記憶があります(笑)。
 「四万六千日」とは、観世音菩薩の縁日でこの日にお詣りすると四万六千日分の功徳があるという超弩級の夏の季語。「僕だけを見て」というたった一つの願いを抱いてお詣りにくる姿はけなげと言えばけなげだけど、四万六千の「僕」が口々に「僕だけを見て」と増殖してくるかのようで唖然とします。バニラビーンズが歌う番組主題歌の歌詞として有名になった一句ですが、今となってみれば案外本意は外してないのかも……と、思い直している次第です。
(句集『苺ミルク』より)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


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句集の本棚





『カルナヴァル』金原まさ子 著

 本書は祭のような句集になったと著者は語る。著者が深く心に留めていたのは、誰かが作った句の中七下五。「人の終わりは火の祭」。著者の催す祭はどんな祭なのか。
  世の終り田螺わらうときにっと
  菜の花月夜ですよネコが死ぬ夜ですよ
  緑陰に入る堕天使のくるぶしよ
 著者の句にはある種の道徳や不道徳、清濁を飛び越えた面妖な魅力がある。感じた事の心象風景を練り上げ、言葉を紡ぎ、句として形而下へ起こす。その強さ妖艶さ、また、晩年で開眼した腐女子的な官能性を本書で感じてもらいたい。
 著者の百年余りの人生における最新にして、恐らくは最終となる第四句集。
  ヒトはケモノと菫は菫同士契れ
  別々の夢見て貝柱と貝は
 1911年東京生まれ。
(書評:匠磨)

草思社(2013年初版)
定価 2000円(税別)
全125ページ



『小島健句集』小島健 著

  裸子の尻の青あざまてまてまて
 鮮やかに家族風景を切り取る手腕。しかし小島氏の句作はそれだけには止まらぬ。
  枯蓮の中敗蓮の匂ひけり
 角川春樹氏に「永遠の今」を言い止めたと絶賛されたこの句。読み解くには、「枯蓮」と「敗蓮」という二つの季語の違いをはっきりと知らなくてはならぬ。
  寒鯉のごつとぶつかり煙るかな
  白鳥の首やはらかく混み合へり
 的確な写生。表現の秀逸。ところで一見ヌーボーとした次の句はどうか。
  茸山とは毒茸あるところ
 一読ハッとさせられる句である。
 「俳句は男の文芸」と唱え、カルチャー講座は俳句の脆弱化を招くと論じる角川春樹氏が、巻末に刺激的な解説をほどこしている。なお、句集『蛍光』以後の句作は「わがまま」と作者は自解する。どこがそうなのか考えてみるのも一興。
 「河」同人。俳人協会幹事。
(書評:みちる)

ふらんす堂(2011年初版)
定価 1200円(税別)
全98ページ



『さくさくさくらミルフィーユ』秋尾敏 著

 絵本の編集者であり、脚本家でもある著者の第一句集。かなの多用が新鮮で、絵本を読んでいるようにやさしい気持ちになれる。こんなにも柔らかな言葉を持つ国に生まれたのだと改めて感じる句集である。
  竹の子がほめてほめてと伸びてゆく
  街でチューしたら銀座の椿咲く
  いい年にしたいね風邪をなおそうね
 ふっと言葉が口をついて出てきた、そんなつぶやきの句も多く、そこには現代を生きて、自分を生きている人の真実がある。
  どの道もさくさくさくらミルフィーユ
  どこいくの浴衣をとりに実家まで
  せつないっていいことばだねほんと冬
  試験前心をかばに身をぞうに
 表紙と中のイラストを堀内誠一氏。「船団の会」会員。
(書評:なぎさ)

創風社出版(2013年初版)
定価 1500円(税別)
全94ページ



このコーナーで紹介した句集は、100年俳句計画編集室にて閲覧できます。


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だれもが句集を出版できるかたち
句集スタイル製作レポート



句集Style第1期募集にて制作された方の、句集制作を終えての感想を紹介します。


「線路とブランコ」と私 山澤香奈

 出産・育児で「社会」から切り離されてしまったように勝手に思っていた私を繋ぎとめてくれていたのは俳句でした。
 子どもと向き合う中で「可愛いだけじゃない吾子俳句」を詠みたいという思いが自分なりに芽生えていました。そして子を詠むことの難しさを痛感しました。うちの子かわいい、なんてことばかりを詠んでも面白くない。大体、子育ては楽しいことだらけなんてことないじゃないか!育児書の嘘つき!そう思いつつ、子ども達との日々を詠んだ句をこうして形にすることができました。
 「句集シングル」としたのには、いつか「句集アルバム」を出版しよう、という決意の表れでもあります。いつの日か皆様に私の句集アルバムを手に取っていただけるよう、今は子と格闘しながら句を詠む、これが私の現状であります。


句集シングル『線路とぶらんこ』 山澤香奈
二人の子どもと格闘する毎日。そんな子育てやその周辺を詠んだ51句。



十年俳句ライフ マイマイ

 第1回「大人のための句集を作ろうコンテスト」で優秀賞に選んでいただいたのが、句集を作るきっかけでした。ラジオに投句を始めてから約十年。駄句を作り続けてまいりましたが、こうして並べてみると一句一句に、詠んだときのいわば思い出のようなものが染み付いていて、感慨深いものがあります。
 俳句を通じてたくさんの人と繋がることができ、自己を表現することの楽しさを知ることができました。自分は小心者で嘘が下手なのですが、俳句では大きな嘘を堂々とつくこともできます。日常の小さな発見が楽しくなりました。勤務先に現れた青い鳥、包丁で葱が鳴ったこと、行きつけの店の金魚、妻との会話に出てきたクダラナイ語呂合わせ、ベランダで鳩が産んだ小さな卵、そんな些細な出来事を少しずつ俳句の形で表現できればと思っています。
 鳥の背の空より青し夏来る


句集『翼竜系統樹』 マイマイ
母を亡くした時の連作「守宮」と新作を含む「翼竜系統樹」の全82句。



仕様:135mm×135mm、36ページ、オンデマンド印刷、表紙PP加工
定価:各735円(税込・送料別) マルコボ.コムオンラインショップにて発売中
http://shop.marukobo.com


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俳句の街 まつやま
俳句ポスト365



「俳句ポスト365」は松山市が運営する俳句の投稿サイトです。
毎週新しい兼題が発表されます!
(毎週水曜締切、翌々週月曜結果発表)

http://haikutown.jp/post/


大いなる「創作」の場『俳句ポスト365』
夏井いつき


「選は創作なり」
 高濱虚子の言葉です。選句という行為によって、虚子は沢山の個性ある俳句作家を育てました。それはまさに「創作」と呼ぶべき豊穣な実りです。
 「選」とは、より的確に句意を解釈し、より深く鑑賞することから発生する行為です。誰もが気づかない作品の魅力を豊かに味わってみせることも、広い意味での「創作」かもしれません。読み解き選ぶ行為が、多くの魅力的作家を育てる。これら一連の行為を虚子は「創作なり」と断定したのです。

 その一方で「選を受ける」ことに懐疑的な考え方もあります。選者に認められることが第一義になってしまうのはいかがなものか。一人の選者の価値観を絶対視することが、階層や地位を尊ぶ態度を助長するのではないか。様々な選者の様々な価値観に触れ、表現者としての自立を目指すべきではないか。
 創刊十年目に突入した月刊俳句マガジン『100年俳句計画』は、この考え方へ向かって大きく舵を切りました。『いつき組』という俳誌名を捨てる決断に続き、組長という名の唯一絶対の選者を仰ぐ結社誌ではない証として、意欲満々! 面舵いっぱいの誌面改革を断行しました。

「選は学びなり」
これは、高知まほろば句会の三竜さんから教えられた言葉です。本誌における一連の選句欄リニューアルへの率直なご意見に、私は頭を殴られる思いがしました。「私ら読者の、誰の選を受けたいかという気持ちは置き去りですか? 選は学びです! 誰から学びたいか、という私らの欲求は無視されるんですか?」
 私たちの100年俳句計画は百年後の未来を考える志であるはずなのに、「唯一絶対の選者の評価に固執する歪んだ欲求」を警戒する余り、「選は学びなり」という真っ当な意欲の存在を知らず知らずのうちに念頭から退けていたこと、猛省しています。
 月刊俳句マガジン『100年俳句計画』は、目指す水平線に向かってすでに舵を切りました。見据えた未来への展望は揺らぎません。
 が、幸いなことに、夏井いつき個人として「選は学びなり」という言葉を受け止める用意があり、場があります。ラジオ番組『一句一遊』、松山市公式サイト『俳句ポスト365』は、初心者の第一歩から自立した表現者を目指す鍛錬まで、各々の意欲に応じた「学び」ができる類い希な場です。大虚子の足元にも及びませんが、この二つの場をお借りして、夏井いつきなりの「選は創作なり」を実践していきます。本誌「百年歳時記」の連載は、その志をささやかながら形にしたもの。気長に書き続けていくつもりです。
 広い裾野があるからこそ、美しい山ができる。裾野には裾野の「学び」、五合目には五合目の「学び」があります。「選は学びなり」という組員諸氏の意欲がある限り、私は「選」という名の「創作」を続けます。さらに広大な裾野とさらに高く美しい山を創るための「創作」。その活動もまた100年俳句計画という壮大な創作の一部となるに違い有りません。


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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成25年5月度


【うりずん】
うりずんの雨は大地を起こす撥 ドクトルバンブー
うりずんやガジュマル色に膨らむ島 菜々枝
うりずんや突きん棒漁の銛を研ぐ 蕃
深海は光の渦にうりずん来 一走人
うりずんの光の海へ降下する 妙
うりずんうりずん三枚肉を縛る糸 マイマイ
うりずんの夜めく口中の黒飴 あねご
うりずんの雨に輝く牛二千 風
うりずんや水牛の引く海青し 風花会・なでしこ
うりずんや緑かすかに山羊の乳 日暮屋

《天》
うりずんの水滴真珠になりたがる とうへい


【粽】
笹の香に噛み付くように粽食う もね
粽結うこと習わねば嫁がれず ポメロ親父
昭和なら八十八年粽解く 妙
正面に健やかな山粽食む 菜々枝
兄よりも勝気な妹や粽食む もも
粽の葉なめるな兄を泣かせるな だんご虫
笹粽弟子と語らう根岸の家 かのん
粽蒸す過疎の老人クラブかな 風花会・山百合
粽蒸す日々老斑を身に増やす ターナー島
戦争の小さき足音粽食む 瀑
粽巻く祈りの鶴を折るごとく ドクトルバンブー
何事も土佐は大振り粽食ぶ 風

《天》
エコーには男子のしるし粽食う さち


【三光鳥】
三光鳥光はすべからく注ぐ 瀑
三光鳥歌う森は光の海だったのか 烏天狗
呂宋より渡り来たるか三光鳥 よもだ
この島は玉砕の島三光鳥 風花会・竜胆
百年の宿に聞こえる三光鳥 野市のアンパンマン
バーディの拍手三光鳥の森へ 八十八
余白には三光鳥の尾を描く 無窮花
星落ちる三光鳥の森深く 華緒
三光鳥また鳴いた星近づいた ドクトルバンブー
隕石は燃えて地上へ三光鳥 藤実

《天》
牛を追う父に加勢の三光鳥 苺のばあちゃん


【小満】
小満の風を浴び立つ開拓碑 風
小満や山吐く息の濃く甘く ひなぎきょう
小満や間近に鳩の白き胸 ターナー島
小満の鳩のほろほろほろ着地 マイマイ
小満や鶏の目は金色 流雲
小満やチンパンジーの涙見た 花粉症
小満や赤き体液こぼし羽化 さち
小満の如雨露に千倍希釈液 妙
小満の星屑ひろう舟の櫂 亜桜みかり
小満の月はほんのり薄緑 ジャム
小満や千代に八千代にひかり降る 藤実

《天》
小満やたふたふ満つる瓶の水 あおい


【レース】
レース編む光の飛沫透しけり ロミ
逆光やレースの人の腕長し だんご虫
握手する長手袋のレースごと 不知火
病みてやややさしき色のレース編む ターナー島
レースはたはた積木のような家並ぶ 蓼蟲
校長が諭すソファーのレースかな 日暮屋
レース編む麗子先生左利き 恋衣
モナ・リザの曖昧な眉レース編む 松山はいく・ねこ♪
黒いレースのドレス着て李香蘭 ポメロ親父
レース手袋噛んではずして引金を引く あねご
レース纏うや対岸はヨーロッパ さち

《天》
レースは黄ばみ妻を愛妻と呼びぬ 西条のユーホ吹き


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

7月7日
穴子【三夏/動物】
アナゴ科の海魚。沿岸の砂泥底に生息。ウナギに似ており、全長60センチ〜1メートル程にもなる。すし種や天ぷらにされる。

熱砂【晩夏/地理】
海浜、川原、砂丘などで、太陽の直射熱により裸足では踏み込めないほどに灼かれた砂。


7月21日
すててこ【晩夏/人事】
男性用の下穿き。主に目の粗い白地で作られており、膝下あたりまでの長さで、ゆるみがある。

氷室【晩夏/人事】
冬に取った天然氷を夏まで貯蔵しておく場所。『日本書紀』にはすでに氷室の記述があり、4月から9月にかけて、各地の氷室より宮中に氷が献上されていたという。現在でも、一部の地域に氷室が残されている。



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100年俳句計画 掲示板


 組長&編集長&組員さんの出演執筆一覧

テレビ/ラジオ
NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  7月2日(火)11時40分〜
  7月16日(火)11時40分〜
  7月30日(火)11時40分〜

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FM愛媛
 バニラビーンズの俳句っちゃお〜!
 毎週日曜日深夜0時〜0時30分
※夏井いつきが俳句指南で出演
※FM大分でも7月1日から毎週月曜21時枠でスタート!

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「夏服・熱帯夜」7月7日〆
   「金魚・朝凪」7月21日〆
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)・住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム・チャンヒのイラストポストカードが贈られます。


執筆
松山市の俳句サイト「俳句ポスト365」
http://haikutown.jp/post/
 毎週水曜締切/翌週金曜結果発表

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

ジュニア愛媛新聞スマイル!ピント
 「集まれ俳句キッズ」
※ 毎週日曜発刊タブロイド判8ページ

愛媛新聞(キム チャンヒ)
 「ヘンデス俳談」毎月第一土曜日 兼題「日傘」締切 … 7月23日(火)


句会ライブ/講演など

広島県至誠中学校句会ライブ
 ・7月4日(木)

今治市美須賀小学校合同句会ライブ
 ・7月5日(金)

全国知事会議 愛媛県開催プレイベント
 ・7月7日(日)

ERA中国・四国全国大会
 ・7月10日(水)ひめぎんホール

済美平成中等教育学校1年生
 ・7月17日(水)

第8回香美市生涯学習推進大会
 ・7月20日(土)12時30分〜
 ・保健福祉センター香北(アンパンマンミュージアム隣)
 ・対象 香美市住民(近隣市町村含む)

地蔵まつり句会ライブ in 正観寺
 ・7月24日(水)15時〜


イベント

NHK俳句キッズ地方ブロック大会
 南予…7月20日(土)13時〜 内子座
 中予…7月21日(日)13時〜 愛媛県美術館
 東予…7月28日(日)13時〜 新居浜科学博物館

今治観光協会主催いまばり彩吟行バスツアー(3回シリーズ第1弾)
 松山発〜しまなみ潮流体験〜句会ライブ
 ・7月22日(月)
  夏井いつき&キムチャンヒ出演
※ 以下はチラシ文書き起こし。
夏井いつきと行くしまなみ海道句会ライブツアー
 夏・秋・冬の3回とも参加された方にはプレミアムグッズ進呈。
松山在住の俳人夏井いつきさんと、俳人でもあるイラストレーターキム・チャンヒさんと共にしまなみ海道を吟行し、句会ライブを行い、上位入賞句はキムさんが絵にしてくれます。
その後、村上水軍の本拠地のあった能島周辺を潮流観測船で巡ります。最高の日・最高の時刻に設定したこのツアーでは、最大10ノットと言われる急流を体験していただきます。

道後公園「湯築城跡」駐車場(8時集合、8時30分出発)〜今治駅(10時)〜今治北IC〜来島海峡大橋〜亀老山(10時45分)〜宮窪(12時・能島水軍にて昼食)〜潮流体験(13時〜)〜村上水軍博物館(14時〜16時・句会ライブ)〜大島南IC〜来島海峡SA〜今治北IC〜JR今治駅(17時)〜道後公園「湯築城跡」駐車場(18時30分)

松山発着/大人5800円 小人(小学生以下)5300円
今治発着/大人5500円 小人(小学生以下)5000円
※最少催行人員20名



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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

「俳句王国がゆく」 in 小諸
山ぐるぐる 先日、小諸の俳句王国がゆくを見に行ってすごいことが起きました。この句のどこがよかったのか客席にも聞いてみましょうって、マイクがつつつーっと私に! え? ええ? あわあわしながらもやっとこ言ったら、なんといつき組長に、あなたが素晴しいって! うるうるふるふるでしばらく思い出しにまにまがとまりません、かなり気持ち悪い人になっています。ありがとうございます。
編 6月16日(日)に放送された「俳句王国がゆく」の収録時のお話。現地の参加者に話を聞けるのがライブのいいとこですよね。

五月飾兜の行方
古殿七草 和田人形店様のご好意により、五月飾用兜を戴き、長崎の孫の初節句に良い記念となりました。有り難うございました。
編 先月号の魔心地家に引き続き七草さん。子ども心には兜はすごい嬉しいアイテム。

新誌面への質問・要望と回答
幸 投句の返信メールが来ないことと、投句内容の確認の仕方がよくわからず、戸惑っています。
編 6月中旬現在、投句内容を返信する機能が追加されています。前回のアブクで「確認配信は難しいかも」と書きましたが、機能拡張を利用して解決できました。メールアドレス入力欄にアドレスのみを入力してあれば確認メールが送信されます。ただし、アドレス以外の余分な囲み記号(<>など)や、人名などを書いてしまうと確認メールが返せなくなってしまうのでご注意下さい。

迂叟 俳句の欄をもう少し長くしてください
編 投稿フォームの入力欄のことでしょうか? 対処してみますが、技術的な問題で解決できない可能性もあります。暫定的には「投稿する俳句をパソコン・携帯電話などのメモ帳に入力する → コピー → 投稿フォームに貼り付ける」というようにすれば入力内容が確認し易くなるかと思います。

うに子 先月くらむぼんフォームからの投句届いたのかなと思いながらの投句です。今月はこのフォームちゃんと見つけられました。ぼちぼち夏を追いかけていきたいです。
編 新フォームからの投稿ありがとうございます。編集の手間が半分以下になるため大変助かっております。5月号で終了した旧雑詠コーナー「くらむぼんが笑った」では三句1セットでの投句でしたが、新雑詠コーナー「雑詠俳句計画」では二句1セットでの投句となっております。また、雑詠俳句計画はコーナーに寄せられた投句を三人の選者が選ぶというスタイルです。関さんに二句、阪西さんに二句、といった内容ではありませんのでご注意下さい。……と、たまにある間違いを網羅してみました。体感的に理解するためにも新フォームのご利用を強く推奨しております!! 詳しくは31ページ参照!!

新しくはじまって
元旦 自由律俳句、なかなかツボが分からず苦戦しています。
編 今回は壇蜜でグーだったようです。

青柘榴 マイマイさん、再登板ありがとうございます。また鍛えて下さいませ。
編 今月は割と正解者がいる模様。目指せ有段。

だなえ 杉山様よろしくお願い致します。マイマイ様詰め将棋パラダイスの懸賞問題の初手のように皆目見当がつきませんでした。残念。
編 調べてビックリ、そんな雑誌もあるのですね。だなえさん実は結構な将棋ファン?

大塚めろ 新しい紙面、楽しみです。門戸を広げるのには大賛成です。俳句の世界の蛸壺、鎖国性をずっと危惧しています。私たちには帰るところがあるんですから、もっと他の世界に首を突っ込んで、どうにも抜き差しならなくなりましょう。命までは取られません(恐らく)。
編 ありがとうございます。色々とお叱りを受ける向きもありますが、皆様に納得して楽しんでいただける誌面を作っていけるよう努力して参ります!

表現に挑む
まとむ やっとやっと梅雨らしくなってきました。緑雨がきれいです。農を生業にするようになったのと、俳句を知ったことで雨の日がとても好きになりました。梅雨の間に予定していることも多数。ウキウキです。さて、百年百花連載最終月となりました。組長が『蝶語』を作られると知ったときに、私は「蟻」でやってみたいと思うようになり、蟻ばかりを詠み続けた1ヶ月でした。自己満足ではありますが、この4ヶ月の中で一番気に入った作品になりました。百年百花を連載させていただきありがとうございました。よろしくお願いいたします。
編 今月号の百年百花に寄せて都築まとむさんより。珠玉の「蟻」一二句は圧巻の一語!! 尖った表現欲求がサイコーに格好良い。

はじめまして
小市 「音俳句」をきっかけに『100年俳句計画』を購読するようになりました。はじめての投稿です。どうぞよろしくお願いいたします。
編 よろしくお願いします。俳句の広場を楽しんで頂ければ幸いです。

それぞれの生活
ケンケン 最近、平成生まれの「俳句甲子園」出身者が周りに多いので私もがんばろうと思います。
編 滋賀県在住のケンケンさん。若者からの刺激でさらに強くなる?

輝女 この冬は風邪を引かずに済んだと思っていたら今頃になって風邪引いて声が出なくなって困りましたが熱もなく食欲もあるので病人って感じではありませんでした。やっと治ってヤレヤレです。暑かったり肌寒かったり変な天気ですから皆様ご用心!
編 プチ夏風邪が流行中? 編集室の周りにもちらほら……。

月刊・桃ライス通信
桃ライス (前略)新作の路面電車の作品は、音楽をニックのCDを使わせてもらいます。(中略)そして、にこちゃん堂の展示会、マガジンや通信での告知ありがとうございます。土曜日、松山の火曜カルチャーのごうさんが来てくださいました。ごうさん、転勤族で、奈良にも居たらしく、当時のママ友たちと来られていました。
編 個展に続き、律川エレキ監督が今度はメガホンを取りました。題して「エレキ映画祭〜身内に捧げる愛の作品集」。本職(?)は映像作家との噂の律川エレキ。6月17日(月)限定の公開だったとか。内容が気になる……。


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鮎の友釣り

181

俳号 青蛙

柊つばきさんへ 僕も仕事の都合で句会に行けないことが度々ありますが、やはり皆さんと会えるのはいいものです。マンデーさんに「無理をせず来れる時に来る。大事なことです」とお声がけ頂きほっとしたことがあるので、その言葉をお届けします。

俳号の由来 初めてまほろば句会に参加した時、俳号はと聞かれ、とっさに。暑さ寒さにつれ、度々上着を脱ぎ着するので、妻に「あんたは変温動物のカエルみたいや」と言われていたためでしょうか。

好きな俳句 芥川の「青蛙おのれもペンキぬりたてか」と、組長の「遺失物係の窓のヒヤシンス」をまず第一に。あと誓子とか白泉、楸邨も好きですが、なかなか遠い人たちです。

写真 バリ島土産のカエルの成長の大皿等です。

次回…てっぺいさんへ 期間限定の俳号は意味はなんだったんでしょうか?


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告知


第16回俳句甲子園全国大会レポーター募集!

 いよいよ夏本番。今年で16回目を迎える俳句甲子園の季節がやってきました。全国大会出場チームも決まり、否応なく期待が膨らみます。
 そこで、高校生の戦いを熱く熱く伝えるべく、レポーターを募集します。定員は1人から12名まで。
 我こそはという方、お申し込みを待ってます!

日時 8月24日(土)9時〜16時ごろまで
場所 大街道特設会場
定員 12名まで
申込締切 【7月31日(水)】
問合せ・申し込み
 ハイクライフマガジン『100年俳句計画編集室』
 電話 089ー906ー0694




マルコボ.コムオンラインショップマガジン化10年目突入記念企画
HAIKU LIFE 100年俳句計画
企画別ワンコインバックナンバー集発売中

本誌は2013年6月号で、マガジン化してから10年目に突入しました!
マルコボ.コムオンラインショップでは10年目突入記念として、テーマ別のバックナンバーのお得なセット販売を行っています。

1:一物仕立ての定義セット(3冊・発売中)←一物の句を論理的に分類できる、前代未聞の画期的な企画
2:子どもと俳句を作ろうセット(4冊・発売中)←5歳の子供も俳句が作れますっ!
3:大連風聞セットA・B(各6冊・発売中)←『子規365日』に掲載されたエッセイのオリジナル。写真も美しい。
4:俳句で表現しよう!アラカルト(4冊・発売中)←俳句作家に目覚めたあなたに捧げるセット
5:編集長渾身の企画!(3冊・発売中)←俳句で恋は生まれるか!? 俳人に画力は必要か!?
6:俳句と句会を楽しむ150ちょっとの方法(3冊・発売中)←ひとりで俳句をでやっている人必読!
7:まる裏俳句甲子園セットA・B(A:4冊,B:3冊・発売中)←まる裏未体験の方は是非
8:○○な俳句(4冊・発売中)←「戦争と平和の俳句」「笑える俳句」「恋の俳句」「泣ける俳句」、付録もあります!
9:カルチャー教室的セット(5冊・発売中)←俳人のための「絵手紙入門」「書道入門」「英語haiku入門」等。
10:ワタシにもできる100年俳句計画(2冊・発売中)←俳句で人を豊かにする様々な方法。
11:“季語”あれこれ(3冊・3月7日発売予定)←季語の仕組みと楽しさが分かる3冊!
12:チャレンジ企画(3冊・3月14日発売予定)←ジェットコースターで作句したり、6時間ぶっ続けで句会をしたり。
13:夏休み句集を作ろう!コンテスト(5冊・3月21日発売予定)←どれを読んでも大抵の大人の俳人は反省します。
14:マニア必見! 万愚節新聞(6冊・3月28日発売予定)←毎年信じちゃう人がいた名物企画!
15:俳句を並べよう! 作品集を作ろう!(4冊・4月4日発売予定)←俳句の整理方法から句集作りまで。
16:代表句セットA・B(各4冊・4月11・18日発売予定)←それぞれたった3句の代表句でも人生が見えてきます。
17:編集長選 企画倒れ特集(5冊・4月25日発売予定)←やってみなければどれだけ下らないかも分からない!
18:まちめぐり(4冊)←めぐるめぐる季節はめぐる、まちもめぐる。
19:闘う俳句! チャレンジスポーツ俳句(3冊)←俳人だって走れるんだもん!
20:ファミリー俳句(4冊)←家族に俳句があれば、ちょっと幸せ。
21:俳句甲子園A・B(各5冊)←俳句甲子園に歴史あり。
22:俳句米プロジェクト 田んぼに行こう!(4冊)←俺たちの一年間。田んぼの季語体験。
23:いつき組選評大賞(5冊)←俳句は「詠む」だけじゃない! 俳句を「読む」力が試される公募企画。


各セット500円
但し、合計金額が3000円未満の場合は送料別途
お求めはhttp://shop.marukobo.com/まで




無料インターネット句会
リピーター続出!
7月4日(木)参加者募集開始

 ハイクライフマガジン『100年俳句計画』が運営しておりますインターネット句会「象さん句会」&「週活句会」の2013年4thシーズンの参加者を募集します。
 どちらの句会も参加無料。それぞれエントリー開始から定員まで、先着順で参加出来ます。

俳句を増産したい方のための
象さん句会

「百年百花」や「100年の旗手」など、本誌に作品集を連載される「俳句を増産したい方」を中心に、毎週5句出しで4週間行う「本気モード全開」の句会です。もちろん一般参加も可能です。


20代のための
週末俳句活動句会、略して
週活句会
 俳句甲子園出身の方や、大学のサークルで俳句をやっている方など20代の俳人を中心とした句会です。この句会から「100年への軌跡」連載者も輩出します。また、交流の場としても楽しめます。

どちらも2013年7月4日(木)一般募集開始
詳しくはブログマルコボ通信まで
info.marukobo.com




HAIKU LIFE 100年俳句計画
第3回
大人のための句集を作ろうコンテスト
作品募集

主催 マルコボ.コム 共催 朝日新聞社・松山市教育委員会(予定)

 第三回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」(通称「大人コン」)の作品募集がスタートしました。
 「大人コン」は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』が開催する俳句コンテストです。
 共催 朝日新聞社・松山市教育委員会(予定)

「受賞作品が句集になるってホントですか」
 最優秀賞作品は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』の付録冊子として読者諸氏に広く読んで頂きます。付録とはいえ、お洒落なデザインの句集だと評判です。
 受賞者には一切の金銭的負担をかけず、読者にとっても安価な句集をどんどん生み出していきたいという志を一つの形にしたのが、この企画なのです。

「俳句マガジンを購読してないんですが、コンテストへの応募はできますか」
 どなたでも応募できます。購読の有無は一切関係ありません。勿論、応募は無料です。

「審査は誰がするのですか」
 本コンテストの受賞者は、「大人コン」選考会員の投票によって決まります。「大人コン」選考会員は、月刊俳句マガジン『100年俳句計画』購読者の内、各総合誌等の俳句賞受賞者あるいは最終選考に残った実績のある人たち等によって構成されます。第二回の有資格者は三十二名。年々選考会員数は増えていくことになります。
 多くの目利きの力を借りて「百年先の未来に残したい作品と作家」を見い出し顕彰していくことが「大人コン」の目的。我こそは!という皆さんのご応募を、心からお待ちしております。

既作新作を問わず81句の作品集を募集。
最優秀賞作品は句集にし、本誌付録として配布します。

募集要項

応募資格
15才以上(高校生以上)の方なら、本誌購読の有無に関係なく、どなたでも応募できます。

応募方法
1:Eメールでの応募の場合
応募用のエクセルファイルに必要事項を全て入力し、Eメールの添付ファイルにして、応募して下さい。
応募用ファイルのダウンロード先
http://81ku.marukobo.com/

2:郵送の場合
B4判四百字詰め原稿用紙に81句とその表題、俳号、本名、年齢、住所、電話番号を必ず明記して応募して下さい。

締め切り 2013年12月10日(火)必着

賞 賞状および応募作品による句集20冊
*賞品句集は縦横135ミリメートル・36ページとなります。句集は本誌付録として配布します。

発表 本誌2014年4月号誌上(予定)

送り先
〒790-0022 愛媛県松山市永代町16ー1
有限会社マルコボ.コム
月刊俳句マガジン『100年俳句計画』編集室Eメール:81ku@marukobo.com




100年俳句計画投稿締切カレンダー

7/10
・俳句対局道場(「俳句対局道場」ページに詳細)
http://marukobo.com/toukou/
magazine@marukobo.com

7/20
・100年投句計画(P.22)
http://marukobo.com/toukou/
・魚のアブク(P.42)
・100年の旗手推薦募集(P.12)

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


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編集後記


 2008年、俳句部のメンバーと共に「俳句における一物仕立ての定義」をまとめた際、次は「取り合わせ」について調べてまとめたい、という思いがあった。
 それから約5年。取り合わせの俳句の場合は、一物仕立ての俳句とは異なり、パターンを分類して探求するよりも、最も基本的な仕組みを提示した方が良いと思うようになった。それは、取り合わせの技法は、方程式のようなもので、その本質さえ知れば、二物衝撃の俳句だろうが、軽い取り合わせの俳句だろうが、複数の要素を複雑に組み合わせた取り合わせだろうが、読み解くことが可能だからだ。
 そこで今回の特集は、俳画を解説することで取り合わせの仕組みを優しく伝えることにした。俳句の初心者には、その仕組みを楽しく理解して貰えればいいし、中・上級者にとっては、方程式の新しい使い方を編み出すヒントになれば有り難い。
 アインシュタインの方程式から、様々な理論物理学者が新しい宇宙の姿を予測するように、芭蕉の「取り合わせ」から、21世紀の俳人が新しい俳句の地平を切り開く姿を想像すると、俳句雑誌を作る仕事っていいなとしみじみ思う。
(キム)


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次号予告 (189号 8月1日発行予定)


次回特集
mhm主催 現在進行中
松山城歳時記化計画
たぶんその1



HAIKU LIFE 100年俳句計画
2013年7月号(No.188)
2013年7月1日発行
価格 600円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子