100年俳句計画6月号(no.187)


100年俳句計画6月号(no.187)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
花柄の傘 あい


特集
フランス菓子 ル・コアン デザミ杯
俳句対局 龍天王決定戦



好評連載


作品

百年百花
 都築まとむ/鈴木牛後/蜂谷一人/十亀わら


放歌高吟/夏井いつき

100年俳句計画作品集 100年の旗手
 笑松/野風/日暮屋


百年琢磨 津川絵理子

新100年への軌跡
 俳句/久保田牡丹/紫音
 評/樫の木/都築まとむ


選者三名による雑詠俳句計画
関悦史/阪西敦子/加根兼光


へたうま仙女/杉山久子

自由律俳句計画/きむらけんじ

詰め俳句計画/マイマイ



読み物
Letter from spider garden/ナサニエル・ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
句集を作るドキュメント
百年歳時記/夏井いつき
句集の本棚
句集スタイル製作レポート
一句一遊情報局
mhm通信/暇人

読者のページ
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




表紙リレーエッセー


花柄の傘
あい

 梅雨の頃になると思い出すことの一つに、近所のYさんの事がある。八十半ばの方で、きれいに年を重ねてこられた雰囲気があった。
 ご主人を見送った後ずっと一人住まいで、庭木や折々の花の世話は勿論、日々の買い物も隣町の商店まで足を延ばし、雨も厭わず花柄の傘を差して膨らんだリュックを背にしゃきしゃき帰ってくる姿を何度も目にしていた。
 持病があったが、一病息災が口癖で老人会の催しにも顔を出すなど前向きな暮らしぶりだったのに、二年前入院し数か月で他界されてしまった。
 泣き言を口にせず、明るく生きておられたことを今さらのように振り返って惜しまれてならない。
 先日、Yさん宅を通りかかったら、紫陽花の青花が垣根の間から見えた。


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特集

フランス菓子 ル・コアン デザミ杯
俳句対局 龍天王決定戦


文 正人

平成二十五年 四月 二十一日
 俳句対局とは、囲碁や将棋の対局戦を模した、一対一の句合わせ対決の句会。昨秋開催した「俳句対局龍淵王決定戦」と対になるタイトルマッチを開催した。その名も「龍天王決定戦」。実力者揃いのトーナメント戦を制して“龍天王”の称号を手にするのは誰か?


進化した俳句対局
 俳句対局の実施はこれが三度目。第一回である「龍淵王決定戦」ではルールの穴が多々発見され混迷を極めた。(本誌2013年1月号および2月号参照)
 その反省を生かして実施されたのが愛媛新聞紙上「ヘンデス俳談」新年号での企画「俳句対局・ヘンデス杯」。20代の若者による白熱した試合を経てルールはさらに磨かれていった。同時に試合形式も変化し、先手後手を入れ替えての二戦制ではなく、一戦四句での試合となった。

 以上の経緯を踏まえ、龍天王決定戦で使用したルールは以下の通り。

1 トーナメント組み合わせにて、各対戦の黒白を決める。
2 まず先手(黒)が、その場で出された席題(俳句)から一漢字あるいは一単語をいただき、制限時間内に俳句を作る。
3 後手(白)は、先手の作った俳句から同様にいただき、俳句を作る。
4 それぞれ、四句まで繰り返す。
5 審査は、全ての俳句に10点満点で点を付け、その俳句点と残り時間による追加点の合計によって行う。点数の大きい方が、勝ちとなる。
※決勝戦のみ三句勝負。先手後手を入れ替えての二戦制とする。

 最も問題になるのは作句ルール。特記事項を設け、試合は以下の規定に則るものとした。

特記事項
一 使用する季語は当季以外の季語でも構わない。(傍題可)
二 前の句から頂くのは、漢字、または、自立語。
三 前の句の表記のまま頂く。表記を変えてはいけない。(カタカナ表記の場合は、カタカナで)
四 前の句の季語、および季語の一部を季語として頂くのは、不可。
五 右記の作句ルールから外れた句を作ってしまった場合、該当句の得点を0点とし試合を続行する。
六 全ての作句を終えた時点で残り時間による加点を行う。加点は1分につき1点。秒以下は切り捨てとする。


対局開始
 「龍天王戦」に挑む俳人は六名。
 龍淵王戦で惜しくも敗れ、雪辱戦に燃える瑞木さんと烏天狗さん。俳句甲子園OBOGである久保田牡丹さんと川又夕さん。それぞれさえずり句会とぶんぶく句会から刺客として放たれた井上さちさんとほろよいさん。いずれ劣らぬ実力者である。
 審査はNPO法人俳句甲子園実行委員会のメンバーである板倉卓人さん、第十五回俳句甲子園にて審査員も務めたあねごさん、夏井いつきさんの三名が行った。

 試合会場は松山城二の丸史跡庭園・観恒亭。純日本風・畳敷きの広間に集まった対戦者は大会規則(?)により全員正装済み。赤い毛氈の上に誂えられた対局席には短冊とタイマー。試合を待つ選手たちの表情には程よい緊張感が伺える。
 まずは組合せ抽選。くじ引きの結果、一回戦は以下の取り組みとなった。

 第一試合 川又夕 × 烏天狗
 第二試合 瑞木 × 久保田牡丹
 第三試合 井上さち × ほろよい

 なお各自の持ち時間は一戦あたり8分である。即吟で時間点を稼ぐか、長考して秀句に仕上げるか? 時間の配分も腕の見せ所だ。

一回戦 第一試合
先手 川又夕 × 後手 烏天狗
蝶飛ブヤアダムモイブモ裸也 子規
薫風やアダムとなりたがる噂 川又夕

 席題に使われる句は全て正岡子規の俳句です、と説明しての第一試合。いきなりカタカナだらけの句を引き当ててどよめく会場。しかし川又夕さんひるむことなく作句。2分ほどで仕上げ、作句順は烏天狗さんへ。後手注目の一句目、会場のスクリーンに句が映し出された瞬間、違った意味で会場がどよめいた。

うわさ話コロコロ転がるいぬふぐり 烏天狗

 なんと「噂」を「うわさ」と表記を書き換えてしまったのだ! いきなりの作句ルール逸脱! 短冊の確認を行ったところ、漢字を書こうとして失敗しぐりぐりと塗りつぶしたあとが……これは情状酌量の余地有りとしてもいいんじゃないの?

春ショール愛に転びて水を抱く 川又夕
羊水の袋は琥珀おぼろ月 烏天狗
藤棚や知りたがる肌琥珀下げ 川又夕
春愁い死産の山羊のぬれし肌 烏天狗
風船や空の底より山羊の夢 川又夕
シャボン玉羊におんぶする小山羊 烏天狗

 審査員三人&大会委員長キム・チャンヒが緊急審議を行う傍ら、試合は続行。烏天狗さんは昨日生まれた山羊の子を題材に秀句を繰り出し巻き返しを図る。
 互いに四句を作り終えたところで審議の結果が出た。結果、「表記を書き換えてしまった場合、該当句の点数を半分として扱う」という新ルールが誕生。このルールを適用した結果、得点は……川又夕【28.2点】烏天狗【28.8点】! おお! 烏天狗さん、不利を跳ね返し僅差の勝利!

一回戦 第二試合
先手 瑞木 × 後手 久保田牡丹
おとつさんこんなに花がちつてるよ 子規
こんなにも桜蘂降る別れとは 瑞木
空つぽの子宮や窓へ雪降りて 久保田牡丹
手をあてて入園の子の熱をみる 瑞木
両の手に掬ふ海鼠の温みかな 久保田牡丹
木の芽風市長候補の大きな手 瑞木
雲の峰市長の声の透きとほる 久保田牡丹
臓物の透けて白子の干されけり 瑞木
心臓をそのまま夏の夜に預け 久保田牡丹

 第二試合は俳句対局経験者同士の試合。瑞木さんは龍淵王決定戦での準優勝者。対する久保田牡丹さんはヘンデス杯での優勝者。好カードに観客も熱が入る。
 一句目で7.6点をつけた瑞木さんに対し、久保田牡丹さんは7点をマーク。以降全くの同点で競り合いながら、0.6点のリードを守りきった瑞木さんが勝利を掴んだ。最終得点は瑞木【29.2点】久保田牡丹【28.6点】。作句点も時間点も全く互角。拮抗した名勝負に観客から大きな拍手が起こった。

一回戦 第三試合
先手 井上さち × 後手 ほろよい
春惜しむ宿や日本の豆腐汁 子規
豆の花甘えん坊の警察犬 井上さち
警察に呼び止められて余寒かな ほろよい
犬の名を呼べば春野を駆けて来る 井上さち
馬の名はセバスチャンなる春の山 ほろよい
白髪となりし名馬や桜東風 井上さち
黒髪のゆらりとゆれて桃の花 ほろよい
漆黒の就活スーツ春寒し 井上さち
就活の髪ととのわぬ山笑う ほろよい

 二回戦が無事に終わり、第三試合。じっくり時間をかけて作句する井上さちさんに対し、素早く仕上げていくほろよいさん。順調に進むかと思われた矢先、ほろよいさんの四句目が「春野」と「春の山」で繋がってしまい0点に。「名」の一字もとっていただけに惜しい!と会場中がうなった。
 時間点を4点と大きく稼いだもののこの失点が響き、第三試合は井上さちさんが【30.9点】を獲得し勝者となった。

敗者復活戦
ある時は月にころがる田螺哉 子規
春雷や柱時計のつくる今日 川又夕
学校をなつかしむ日の時鳥 久保田牡丹
ある時は化面の男春日傘 ほろよい

 敗者復活戦は一句のみでの勝負。席題句に対し三人同時に作句、最も作句点の高い者が再びトーナメントに復帰できるシステムだ。制限時間はわずか二分。
 この頃になると観客もすっかりルールを飲み込んでいる。「“月”と“田螺”が季語だからそれ以外の言葉を足がかりにした方が安全だ」「使いやすいのはなんといっても“時”の一字だろう」など縁側の将棋観戦の風情。わいわい言っている内に三句が出揃い、審査員が得点をつける。
 結果、勝利を掴んだのは8点をつけた久保田牡丹さん。「時」の一字から「時鳥」という季語に持ってきた機転に会場大拍手。

準決勝戦 第一試合
先手 烏天狗 × 後手 瑞木
春寒く痰の薬をもらひけり 子規
薬草の白き十字架どくだみの花 烏天狗
春寒し顔色悪き薬剤師 瑞木
悪るさして帰る小山羊のみじかき尾 烏天狗
水温む山羊のお乳の青臭き 瑞木
青麦の明日へ明日へと背伸びする 烏天狗
盲目の魚ゐる海や春三日月 瑞木
うりずんや海は幾度産まれたか 烏天狗
春の星孤独を愛し海亀は 瑞木

 昼食と一時間の休憩を挟み、再開の準決勝第一試合。初戦を勝ち上がってきた二人の対戦。コンスタントに高得点を稼ぐ瑞木さんに対し、立ち上がりが弱めとなってしまった烏天狗さん。三句目の送り仮名は「悪る」でいいのか……?
 時間点を1点多く獲得したもののトータルでは一歩及ばず、【31.6点】を獲得した瑞木さんが勝者となった。

準決勝戦 第二試合
先手 井上さち × 後手 久保田牡丹
朧月どこまで川の長いやら 子規
長き長き血統書名しゃぼん玉 井上さち
星に名を付けつつ焼酎をすする 久保田牡丹
星朧消印はイスタンブール 井上さち

 準決勝第二試合。さえずり句会からの刺客・井上さちさんに挑むのは敗者復活戦を勝ち上がった久保田牡丹さん。
 個々の句の得点が高い上にハイペースな一戦。一句一分足らずの試合運びにして三句目、最高9点をつける審査員も。

印鑑を押し損ねたる子規忌かな 久保田牡丹
大南風くっきりとある蔵書印 井上さち
青嵐馬の局部は大きくて 久保田牡丹
きうきうと青き幼虫鳴く良夜 井上さち
立春の風や木椅子の湿る夜 久保田牡丹

 激戦を制したのは井上さちさん。なんと時間点も含めた獲得点数は【34.9点】と、今大会での一試合累計点数トップをたたき出した。(注…裏表戦となる決勝戦は除く)ちなみに今大会二位の記録がこの試合で敗れた久保田牡丹さんの【32.5点】なのだから、いかにハイレベルな試合かがわかるだろう。


初代龍天王決定!
 選手の体力を考慮し10分の休憩を挟んだあと、いよいよ決勝戦。この試合に勝ったものが初代・龍天王となる。
 決勝は片面三句ずつの二回勝負。片面あたりの持ち時間は一人6分となる。両面合計12分の長丁場だ。

決勝戦 表
表 先手 瑞木 × 後手 井上さち
故郷はいとこの多し桃の花 子規
故郷の手紙は長し春炬燵 瑞木
長江や夏の小さな博物館 井上さち
博識の人の白髪黄楊(つげ)の花 瑞木

 三句目までを順調に消化したところで井上さちさんが長考に入る。ここでまさかの悲劇が起きた。

ドイツ語のような浜の方言黄水仙 井上さち

 「黄楊の花」と「黄水仙」が繋がってしまっている! まさかここで!? 予想外の事態に選手も審査員も会場も全員が悲鳴をあげた! このケースは一回戦第三試合とおなじく、該当句を0点句として取り扱われてしまう。こうなると単純な得点だけでの挽回は非常に厳しいか?

フランス語のやうにアネモネ咲いた 瑞木
フランスへ送るふるさとの焼酎 井上さち

 動揺しながらも試合は続行。時間点も含めた表面の得点が公表され、最終の裏面へと続く。

決勝戦 裏
裏 先手 井上さち × 後手 瑞木
藤の花長うして雨ふらんとす 子規
花の雨国際小包がもどる 井上さち

 先手と後手を入れ替えての一句目。「雨」の一字をとっての一句……ん? 「花の雨」?! 「藤の花」の「花」と重複している!

天地無用中国から若布着く 瑞木
龍天に登るポケットにカンロあめ 井上さち
花冷えや痰切り飴を練り上げる 瑞木

 四句目を出したところで瑞木さんもお手つき! 「あめ」を「飴」と表記を変えてしまっていた。このケースは一回戦第一試合と同じく、該当句の作品点が半分になる。

練あんの小さな光春の山 井上さち
佐保姫に小さく光る宝玉を 瑞木

 ついに龍天王決定戦最後の一句が出揃った。全力で戦った二人はかなりお疲れの様子。一日を戦い抜いた両者に会場から今日一番の拍手が送られた。
 集計の結果、勝利を掴んだのは瑞木さん。【46.7点】を獲得し、初代龍天王の座に輝いた。奇しくもさえずり句会の句友同士の対決となった決勝戦。優勝・準優勝の賞品であるマカロンを抱えて帰った二人は後に句会のみんなとおめでとう会を開いたとのこと。


俳句対局の今後
 龍天王決定戦は春にちなんでの大会。次の秋には第二回龍淵王決定戦を開催する予定だ。
 現在、次回開催に向けさらなるルールの整備、特に減点に関する仕様の整備を進めている。今大会では非常にいい勝負ながら、減点によって勝負が決してしまう場面があった。減点をもっと軽くし、不慮の事故があっても引き続きいい勝負ができるような仕組を考えたい。
 また、タイトル戦以外にも気軽に遊べるような催しも計画している。まだ生まれたばかりのイベントである俳句対局。多くの方に遊んでいただき、楽しんでいただければ幸いだ。


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2013年度 第一期 3回目


「金属音」都築まとむ

睡眠薬残る脳天新樹光
蜜柑の花強し蕊も花弁も
鉄線はむつかしいこと言うたはる
骨密度上昇あめんぼ日和なり
夫いつか踊子草に跪く
ががんぼの渇き煉瓦は要塞に
あの嶺を越えれば海や夏の蝶
鉱石や蜥蜴はひかる腹を擦る
正露丸陀羅尼助丸五月闇
ででむしの背中の筋のかたくなな
冷房や青虫逃がす窓がない
大蜘蛛の脚は軽金属の音


1961年愛媛県八幡浜市生まれ。2001年秋ごろ南海放送ラジオ「一句一遊」に投句をはじめる。生き物を詠むのが癖。天気予報をやたら見るのも癖。




「うすつぺら」鈴木牛後

木の根明く先に逝きたるひとびとに
冴返る鴉の口に紅きもの
あたたかや牛には牛の時流れ
残雪の果てのひとつを踏みつぶす
狐ゐて春日のなかに尾を置いて
春満月ひと声あげて牛産みぬ
この道はすべて足跡土の春
春鹿の尻の跳ねゆく牧野かな
鳥帰るわがにんげんのうすつぺら
ちちははは墓にふきのたうは蕗に
見上ぐればおほかたは空夏来る
蕗の薹残雪青い空立夏


1961年生まれ。北海道の片田舎で牛飼いをしている。第一回大人のための句集を作ろう!コンテスト最優秀賞。




「不在票」蜂谷一人

五月来る色とりどりの電話メモ
蚕豆の莢より豆のまぶしさう
アイロンは船白シャツの海に澪
三越がよろし包装紙の兜
縄跳びの技はハヤブサ青葉風
馬跳びや耳の後ろの日焼けせる
水筒の蓋の磁石や青嶺指し
鎧めく古城ホテルの扇風機
瀧に棲むものに名のあり呼びにけり
不在票あり家の中まで蟻の列
五徳より炎はみ出す緑の夜
冷酒を一献エドモン・ダンテスに


B型、蠍座。句画集『プラネタリウムの夜』。2005年より毎年1回のペースで俳句と画の個展を東京で開催。小動物と塔の画多数。




「眩んだか」十亀わら

夏蜜柑誰かが辞表出す朝も
生き急ぐように立夏のむすび食う
きっぱりと白き腹見せ鯉幟
夏きざす子はさびしがる語を持たず
花水木影をちぎって影の花
言い淀むことか若葉に眩んだか
薔薇咲くやパンに差し込みゆくナイフ
咲き満ちて薔薇は己をしぼりけり
母の日の玄関に挿す紙の花
地下街の透明階段夕薄暑
豆飯を炊くための日でありにけり
落日の気配に牡丹首立てて


1978年生、愛媛県松山市出身。2000年詩学新人。2005年第7回俳句界賞。詩集『燃える野』(詩学社)。




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放歌高吟


立方体
夏井いつき

立夏という立方体の野のひかり
風の村と呼ばれ桜の実のさかり
河骨の咲けば水くすぐったくて
百本のオールを薫風に運ぶ
水門や芒種の太陽が痒い
よく鳴りし草笛を水葬に付す
給食は豆飯校訓は勤勉
校舎より見ゆる泉の名を知らず
ヘラクレスの手斧のごとき夏燕
詩人への手紙に薔薇のことその他
パレードの馬嘶くや聖五月
そはレモンの花か青空香る日の妻よ


 NHK『俳句王国がゆく』の公開収録で長野県小諸市を訪れた。

 小諸なる古城のほとり
 雲白く遊子悲しむ

 『千曲川旅情の歌』の歌詞となった島崎藤村の作品にも詠まれている小諸は、高濱虚子が戦時中に疎開した地としても知られている。俳人として訪れたい地の一つが、小諸ではないかと思う。
 公開収録前日のロケや当日の愉快に満ちた会場の様子は、6月16日のオンエアーを観て下さい!というしかないが、実はワタクシ、小諸を訪れるにあたって心密かな企みを抱いていた。
 『俳句王国がゆく』は、俳句バトルを繰り広げる出演者の皆さんが主役であり、且つその町の魅力が主役となるべき番組なので、今回ワタクシが仰せつかった主宰なんて立場は置物の猫みたいなもの(笑)。吟行には同行するが、俳句を提出する必要もないロケは、申し訳ないほどの気楽さ。だからこそ、虚子の『小諸百句』にちなみ、己にも小諸百句というちょっとした負荷をかけてみるのも面白いなと思い立った。
 『小諸百句』とは、虚子が当地滞在中の句をまとめた作品。その虚子にあやかり、多作多捨のトレーニングを虚子ゆかりの地でやるなんぞは、さぞ気合いが入るに違いない!と思ったまでの試みなのだ。
 そんなこんなの意気揚々、いざ百句!とペンを握ると、雪をいただく日本アルプス、八ヶ岳の光景に目を奪われ、猛々しい浅間山の山容に息を飲み、しばし呆然。こりゃ、いかん……と己を奮い立たせつつ、ペンを握り直すこと幾度。八重桜が咲き、なんじゃもんじゃの花は細い蕾。鈴蘭は小さな花を揺らせ、風に翻る若葉は立方体のひかりを放つ、小諸。目に入ったものを次々に文字にしていく静かな興奮を楽しんだ。
 この原稿を書いている今日、小諸〜東京の旅からやっと松山に戻ったところで、まだ句帳の整理をしてない。が、百句かそれに近い句数は書きとめられたのではないかと思う。いつか私なりの句集シングル『小諸百句』が発表できる日が来るかもしれないが、そのためには別の季節の別の小諸を味わいに、彼の地に通わねばならぬ。人生の小さな夢がまた一つ。これもまた俳人的シアワセってやつなんだな、きっと。




夏井いつき公式ブログ「夏井いつきの100年俳句日記」

http://100nenhaiku.marukobo.com/


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読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2013年4月号 〜 2013年6月号 3/3回目)


 旗三つ 笑松

夏浅し大河を上る貨物船
自転車を堤に置いて夏の川
街囲う城壁の上栃の花
石畳下りて獅子像ある泉
石楠花や天使の昇る姿して
教会にカノンの調べ五月雨
香水の瓶ある白き洗面台
山麓の町は新樹の海の先
噴水の先にはためく旗三つ
デカンタのワイン金色日除け伸ぶ


わらいまつ。松山赴任中に、俳句といつき組に出会う。現在、東京在住。YouTube「いつき組大忘年会2011」映像の1分56秒付近で笑っています。



 心臓へ 野風

花は葉にフランスパンにある塩味
春の底爪に施す翅の色
ハナコトバ恋に酔ふ藤シカウシテ
行く春のうぶ毛をあたる理髪店
手伝ひの子のはきはきと柿若葉
ポピー咲くスタッカートに過ぐる風
心臓へ鳥影降つてくる薄暑
モナリザに髭の生えたる芒種かな
ががんぼの孤独愛する隅の席
香水の夜へ脈打つ小瓶かな


買った大根を包んだ新聞の教室案内に導かれ2011年1月、木曜カルチャーに入門。カルチャーでは、その時組長から賜った京子二号を名乗っています。



 ぶっちぎり 日暮屋

ラストだ飛魚ターンに賭けてみる
みつ豆たべる番長の初デート
やせ馬のあばらへし折り雹が降る
ボルト1000本締め上げくたくたの夏服
ヒキガエル手足のばして思いっきり死んでいる
足首回せばどこぞ骨泣く半夏生
糸トンボの影見たことあると嘘をつく
短夜をクイーッと泣かすコップ酒
パイナップル売りが来たしかもアフロで
ぶっちぎりで来てアンカーが平泳ぎとは


1959年2月生まれの野村町出身。ラジオ番組への投句をきっかけに塾や句会へも出かけ俳句を楽しむ。吟行の旅好きで、ギター、自転車、写真、蕎麦等とにかく多趣味。毎日浴びるほどの酒を飲む。



次回7月号〜9月号連載者決定

 2月から4月末までの期間、「この人の作品集を読んでみたい」という気になる俳人を、1人3名まで推薦していただきました。
 その中から推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行い、次回7月号〜9月号までの連載を行うメンバーが決定いたしました。

 かのこさん
 むめもさん
 睦さん

 3名の方には7月号から、作品集を連載していただきます。
 お楽しみに!

随時推薦募集中

 次々回連載者の推薦も募集しております。集計期間は6月末までとなります。集計は累積ではなく、毎回新たに集計しています。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。


読者が選ぶ人気俳人!
「100年の旗手」連載者推薦募集

 今求められているのは、読者が読みたいと思う俳句作家。「100年の旗手」は、連載する俳人を、編集室ではなく、読者が選ぶコーナーです。
 「この人の作品集を読んでみたい」と気になる俳人を、1人3名まで推薦してください。その中から、推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行います。
 あなたのお勧めの俳人を是非推薦してください。

 推薦の方法

「この人の作品集を読んでみたい」という人を3名まで選んで(自薦は不可)、その俳号と活動場所(句会・誌面等)・推薦者ご自身の俳号(本名)・住所・電話番号を明記して、100年俳句計画編集室「作品集推薦」係へ送ってください。ハガキ・FAX・Eメールで受け付けています。Eメールの場合は件名を「作品集推薦」としてください。また、専用のインターネット投稿フォーム(http://www.marukobo.com/100kishu/)でも受け付けています。※投稿フォーム利用の場合を除き、推薦は他の投稿等とは分けてください。

締切 6月末日

 現在連載している3名の方以外なら、一度連載された方も含め、どなたでも推薦できます。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。


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百年琢磨
先月号の「100年の旗手」に寄せて

神々の法螺 津川絵理子

「泣いていい」 日暮屋

柏餅ペロンと剥いで老けてゆく
 柏餅といえば端午の節句に食べるので、どちらかと言えば瑞々しいイメージがあるが、自らの老いと対比させたところが却って新鮮。「ペロン」が物悲しい。

新緑の山ごと背負い男来る
 リュックか何か背負っている男がやってくる。こちらからだと背景の山を一緒に背負っているように見える。新緑の山の明るさと、荷物を背負う男の力強さが響きあう。

母の日に子のない妻と海に居り
 母の日の句としてはありきたりな感じがするものの、妻へのまなざしを通して夫婦のありようがさり気なく語られる。


「蝶生るる」 笑松

春三日月あれは鬼の目おそろしや
 春三日月が鬼の目に見えたのだろうか。「おそろしや」まで言わなくてもよいと思うが、春という季節にデモーニシュなものを感じた点に共感した。

神々の法螺吹き比べ山笑う
 神話や民話にありそうな内容と、「山笑う」の取り合わせが面白い。かなり人間臭い神様だが、神様が吹く法螺話はさぞ壮大なものだろう。大らかな気分が伝わってくる。

人いずこ野原に千の風車
 現実のものとは思われない、不思議な光景だ。人はどこにも居なくて、生まれる前の、或いは死後の景なのではないか、などと想像が広がる。


「CURIOSITY」(好奇心) 野風

春の風邪金平糖に生えし角
 作者は角が生えていると表現したが、金平糖のあの「つぶつぶ」、普段は意識することも少ないのではないだろうか。春の風邪をひいて物憂い気分でいるからこそ、見えてくるものもあるのだ。

蠅生るらららアトムの正義感
 こんな風に言われると、アトムのあの屈託のない笑顔が少々押しつけがましい感じがするから不思議だ。皮肉の効いた句で、「蠅生る」と相俟って滑稽味がある。

アネモネの笑つて醒める白昼夢
 笑って醒める白昼夢、明るいけれどどこか虚しさが漂う。それとアネモネの持つ気だるさが響きあう。「アネモネや」と切ったほうが良いのでは。


津川絵理子
1968年生れ。「南風」所属。句集『和音』。平成19年、俳人協会新人賞、角川俳句賞受賞。


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新 100年の軌跡


第3回


大黒柱 久保田牡丹

ポケットのどれも角張る花見かな
エイプリルフールの大黒柱善し
春の野をところ構はず水走る
落花跳ね上げて通勤ラッシュかな
三百円分のおやつへ春嵐
春暑し巨象は糞もまあ立派
原色の星を育てて春の闇
席を取り合ふ子たんぽぽ取り合ふ子
パトカーのまつたり進む花曇
恋煩ひを湛へて春の空の紺
首も脚も尾も強き馬朧月
先生の影を乱して水温む
蝶を手放せば大人となれるはず
伊予柑のところ膨らむエコバッグ
朧夜の休耕田の匂ひけり


久保田牡丹
1991年生まれ。松山中央高校出身。「どんな人にも分かりやすい俳句」を目指して頑張っています。よろしくお願いします。




グレー 紫音

緑でも青でもなくて春の海
春陰や飲むふりをした赤ワイン
春の雨五分遅れの電車乗る
春昼や鈍いマウスを急がせて
セダンから猫の手伸びて長閑なり
陽炎や赤白帽のゴムの味
なんとなく春大根をL字にす
スカートの色迷いたる春の夜
灰皿の影に灰落ち紫木蓮
若草や名刺渡す手やや震え
花疲れストッキングの下の痣
春障子昼間の猫の軌跡かな
足音を息で消しゆき花曇
目の合わぬ鏡の自分花の冷
アイロンを置いた部屋出て新社員


紫音
1990年生まれ。松山市在住。2011年から俳句甲子園実行委員会所属。2012年2月、俳句を始める。2013年3月、松山大学法学部卒業。




色色な春 樫の木

春暑し巨象は糞もまあ立派 久保田牡丹
 眼の前でぼとぼとと落下する巨象の糞です。「まあ立派」の諧謔味が晩春の開放的な気分と合っています。

席を取り合ふ子たんぽぽ取り合ふ子 久保田牡丹
 電車の中でしょうか。破調のリズムがはしゃいで片時もじっとしていない子等の様子に合っています。

伊予柑のところ膨らむエコバッグ 久保田牡丹
 ぼこっと膨らんでいるエコバッグから布地の薄い質感、伊予柑の重量感・存在感が伝わってきます。

緑でも青でもなくて春の海 紫音
 冬の海は灰色で、夏の海は青色で、春の海は?と言えば緑でもなく青でもなくて、曖昧な所が春らしいです。

陽炎や赤白帽のゴムの味 紫音
 赤白帽は小学生の体育の帽子です。陽炎が立つ校庭を見ていて記憶が甦ったのだと思いますが「ゴムの味」とは!脳の回路は思わぬ場所に繋がるものですね。

花疲れストッキングの下の痣 紫音
 ずっと正座をしていたのでしょう。帰宅してストッキングの下の痣に気付いたことが花疲れを濃くします。


1965年愛媛県生まれ。大分県在住の家具職人。第5回選評大賞優秀賞。



感慨 都築まとむ

春暑し巨象は糞もまあ立派 久保田牡丹
 当たり前のことにいちいち驚くのが俳人だ。巨象の糞は象のそれよりも当然立派だろう。「まあ立派」と言い放つ気持ち良さ。「春暑し」は、今ここに共に生きている感慨でもある。

蝶を手放せば大人となれるはず 久保田牡丹
 大人になるとは、いろんな物を捨ててゆくこと。大事なものを手放したとき何かを得ることもできる。この蝶は何かの暗喩。蝶を手放したとき作者は何を獲得するだろう。

陽炎や赤白帽のゴムの味 紫音
 小学三年生の体育の時間、私は泣きながら赤白帽のゴムを噛んでいた。何故泣いていたのかは思い出せない。赤白帽のゴムはしょっぱかった。「陽炎」の中に置き去りにされたあの時の自分を見たような気がした。

灰皿の影に灰落ち紫木蓮 紫音
 「灰皿の影に灰落ち」の観察眼が確か。「灰落ち」は「灰落つ」と切って視線を紫木蓮へ飛ばす方が効果的か。「影」「落」「紫」という言葉に作者の心情を読みたい。


1961年愛媛県八幡浜市生まれ。自分の句歴11年に驚くばかり。第3回選評大賞優秀賞。


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超初心者から中上級者まで楽しめる
100年投句計画

 今月号より、投句のコーナーを一新しました。
 「選者三名による雑詠俳句計画」は、雑詠句の選句欄です。投句の中から先選者二名が、それぞれ天・地・人の句を選び、先選より漏れた句の中から、後選者が特選・並選を選んでいます。今回の先選者は、関悦史さんと阪西敦子さん。後選者は、加根兼光さんです。

 「へたうま仙女」は、ヘタな句を褒め、巧い句を追放する、世の選句欄とは真逆のコーナーです。どんなにヘタな句でも褒めてくれるので、自分の俳句に自信のない方、何はともあれ褒めて欲しい方に最適(?)。今回より杉山久子さんが担当します。

 「自由律俳句計画」は自由律俳句の選句欄です。自由律俳句に挑戦することで、自由律俳句ならではの楽しさを味わうと共に、有季定型の俳句との思わぬ共通点も見えてきます。選者は、きむらけんじさん。

 「詰め俳句計画」は、マイマイさんによる、二つのフレーズに合う季語を投稿するコーナーです。季寄せや歳時記さえあれば、全くの俳句初心者でも挑戦できます。
(投句方法は「100年投句計画」コーナー末尾参照)
写真:白鯨


選者三名による雑詠俳句計画


先選者 関悦史

 はじめまして。今回からしばらく選句を担当させていただきます関悦史です。ゴールデンウィークの間やたらに冷え込んでいたのが急に暑くなって、日本はもう実質二季の国なんじゃないかと。皆さま体調ご注意を。



オーオーと母呼ぶ赤子春の昼 幸
 とりわけて珍しくもない素材で、季語も大まかなのに捨てがたい。俗化しやすい吾子俳句、孫俳句と一線を画せているのは、「自分の子」という関係が句に持ち込まれていないせいかもしれません。「オーオー」という分節化されない母音のみの発語の原始性と、それが母への呼びかけであると直観する、つまり赤子に内側から共感する視点が共に「春の昼」に包まれ、生命そのものの神秘性に大らかに触れた句となっています。



春大根抜いて頬ずり都会の子 八木ふみ
 よそから来た子の農作業を見ている句。この子にとっては珍しい貴重な体験で、その歓びを寄り添い過ぎも突き放し過ぎもせずに描いている距離感が絶妙です。「都会の子」の頬の柔らかさで春大根の鮮度が際立ちます。

春雷やキリマンジャロの酸味立つ 茶卓
 特別なことをしている句ではありませんが、春雷との取り合わせが、薄暗く、不穏な気配が迫り、感覚が研ぎ澄まされる中でのコーヒーの黒さと香気を引き立てています。春雷の響きがコーヒーに乗り移ったかのような。

春の鹿目と心臓がすり寄れり 親タカ
 一頭の鹿の目と心臓ではないでしょうから、語り手、もしくは別の鹿の心臓に頭をすり寄せているのでしょう(寄って「来る」という要素はないので後者か)。判然としないところも含めて温血動物の存在感が生々しい。

ナンバーの5を6にする毛虫かな サキカエル
 車のナンバープレートか何かでしょうが、毛虫がついて別の数字に見えてしまう。談林調とでもいうべき作風ではありますが、ごくそっけない言い方で、面白さを強調していない、品を失わないナンセンス句。

春疾風疵は膨らみつつ治る 鞠月
 「膨らみつつ治る」がひとつの発見。「春疾風」が、身内にひそむ自然治癒能力の旺盛さや、疵を作ってしまうような生命のやや過剰な活発さを暗示はしますが、意味でベタ付きになる前に駆け抜けたような姿の句です。



グラバーの魚譜大皿の初鰹 七草
クールベの海広がれり夏館 さわらび
目借時織部の皿の幾何模様 省三
群れてこそ輝く少女春の雨 うに子
風に色あれば二万のチューリップ 桜井教人
まだ鳴かぬ亀をカフカと命名す 瑞木
入学すクラスに五人同じ姓 ちろりん
飛花落花評価数値化効率化 桜井教人
海峡を船ゆつくりと春の月 人日子
神棚に徳用マッチ昭和の日  迂叟



先選者 阪西敦子

 ♪ちっちゃな頃からホトトギス、阪西敦子と申します。空気を吸うように俳句をはじめ、どうしても必要なものとして暮らしてきました。俳句以外では存在できないもの、それ以外の何も目指さないものが好きでなりません。関さんは通勤経路にお住まい、加根さんはエリアは違いますが長距離通勤仲間です。どう近くてどう遠いのか、みなさんの句に揺さぶられるたのしい時間となりそうです。



自転車を春三日月に並ばせて 朗善
 春の三日月は、秋のそれよりもさらに見つけられにくい。それを、ふと見つけて、自転車を並ばせてみる。すごくたわいのない衝動なのだけれど、余計に弾んだ気持ちがクリアに伝わってくる。同時に自転車を並ばせたことによって、なんとなく三日月もまたげるもののような気がしてくるから不思議である。弾んだといわずに弾んだ気持ちを、乗り物といわずに乗れそうな感じを、並ばせるだけでその行く先を思わせるところが楽しい。



人形を抱く人形春深し 更紗
 ただでさえ春の柔らかさや暗さなどを包む人形だが、春にもすこし倦む頃となってよく気を付けると、その人形はさらに人形を抱いている。なにかその永遠に続く恐ろしさに、春の深まりが描かれている。

行く春の指に湿りし傷テープ 更紗
 傷テープが湿ってしまうことはもはや宿命のようなもので、春夏秋冬いつだってそうなのだけれど、行く春の句として詠んでしまえば確かに行く春なのだろう。「残り」でなく「湿り」とした踏み込みが句の実を支える。

桜満開声太き人着任す 八十八
 歓迎会の花見だろうか。なんだかごちゃごちゃして、よく顔は見えないけれど、あいさつの声が太い。歓迎する中にも揶揄の気持ちが見えるのは満開のめでたさならでは。桜満開の間抜けなところをうまく引きだす。

花冷えのずん銅鍋にぐいと寄る しんじゅ
 例えば底から掬わなければならないことがあって、あるいはこれから持ち上げるのか、ずん銅鍋に体ごと近づく。これだけでこわばった体の様子も暖かな料理も思わせる。花冷えという燗の温度があるのは、また別の話。

朧夜のとくとく伸びる羽化の羽 さち
 「とくとく」とは、本来、液体に使われるもの。羽化の羽にそれを思ったのは作者の偏見のない実感だろう。句自体は実感でありながら、朧の月光をつぎ込まれてゆくかのような倒錯もあって心地よい。



あれこれの気持ちまざりて藤の花 青蛙
さえずりの風押し返す青き闇 一走人
ふやけている箱にまっ黒な子猫 樫の木
花びらのまだ筏とは呼べぬほど 雨月
風に色あれば二万のチューリップ 桜井教人
はじめての町まづのぼる花の城 うに子
群れてこそ輝く少女春の雨 うに子
夕風に骨透き通る干鰈 のり茶づけ
潮流のごとく雲行く干鰈 ソラト
ナンバーの5を6にする毛虫かな サキカエル
咲く場所を決めてどくだみここに咲く 恋衣



後選者 加根兼光

 面白い企画に参加できることになったなあ。それも第1回目の役割が関さん・阪西さんの選外の句から選ばせていただくという。これはいい。真面目なことを言えば「選は創作」だから自分の句を作るようにオリジナリティとリアリティのある選と選評を書かなければと考えている。それも「100年俳句計画」の精神に則り100年後に残したいと思う句を選べればそれに越したことはない。どれだけ読む方に届くか。直球勝負にしたい。


特選句
若鮎の水脱ぎ捨てるごと昇る  緑の手
 若鮎の遡上を見事に描写した。普通は水の中を泳ぐのであるがこの鮎は己が泳ぐ水を「脱ぎ捨てる」ような速さで行くという。春の速い流れを逆行するのであるから脱ぎ捨てるくらいに速いのだろう。「脱ぎ捨てる」という複合動詞、「昇る」という動詞の止めもこの句の体感速度を上げるのに効果を発揮する。きっとこの若鮎のような生気を放つ作者を想像するのである。

春燈や鏡をまねて紅をひく 犬鈴
 まず「鏡をまねて」という不思議な表現に惹かれる。鏡に映るのは自分自身であるはずなのにそれを真似るとはどういうことか。魔法の鏡のように違う世界を見ているのかあるいはほんの少しの時差が存在して近未来の自分を見ているのか。それは全てが春灯の薄明りの元で起こる事である。ひかれる紅の艶も春灯に妖しく輝く。

号泣のおほかた無邪気春の昼 なゝ
 「号泣」という強い言葉を句頭に置きながら、なんとも気楽な言い方に見えるが「春の昼」という季語と会う時、季語の持つ明るさだけではない茫漠とした春の不安感が上五中七の言葉に跳ね返り、「おほかた」の「無邪気」以外のものに行き当たる。作者は「おおかた無邪気」と言いつつ実は号泣の底に在る暗闇を見つめているのかもしれない。それは「おほかた」というある種何気なく置かれた言葉の効果だと思う。

花の天使風とびこえてとびこえて アンリルカ
 花を離れ花びらとなった瞬間にそれは花の天使となる。羽根を与えられ自由を与えられた天使たちは風をも飛び越えるがごとく飛翔する。「花の天使」と言い放つことで生まれる開放された詩の空間が魅力的。「とびこえてとびこえて」と平仮名書きの繰り返しも言葉の更なる先に視線を誘う。それは空なのか海なのか街なのかあるいは人なのか。「花の天使」の行先を見たいと思う。

息吐いて吐いて春愁はたぶん気体 瑞木
 息を吐ききって息苦しくなってそれでも残ったものは肺の中に溜まった「春愁」。だから春愁は気体なのだと身体で実感したのだろう。ほんとうは春愁を肺の中から掴み出し白日の下に曝したいのだが春愁は肺に居続ける。「たぶん」というある種曖昧な表現が春愁という春のあやふやな不安感を言い当てていて、いい。


並選句
夏浅しセピアに草木染める沼 紗蘭
飛行機雲のふたつに分けて春の空 ぴいす
小さくても浅蜊の香り潮汁 おせろ
うぐいすはいつも七時に鳴いてます 洋子
行く春や電子レンジは認知症 もね
葛餅をゆつくり掬ふ老いの恋 レモングラス
海猫のなれなれしくも目に殺意 猫ふぐ
五月雨やこころ澄むとき濁るとき 柳葉魚
いかやうにもなりませうみどりのちゆうりつぷ 緑の手
頬白鳴く蛮国の民躍る 一心堂
春燈に影絵の指を翳しけり ヤッチー
燕飛ぶ見渡す限り青い空 れんげ畑
藤寝椅子胸に和綴じの本を置く みちる
人溢る名残の桜吉野山 かのん
亀なくや今日考えた十の嘘 茶卓
跡継ぎの生まれる報せ初燕 こぼれ花
いぬふぐり踏まねばならぬ作業靴 たかこ
延縄は五島六橋鰆船 逆ベッカム
蛍烏賊の腸こぼすなと古女将 蓼蟲
巻尺のまきとれぬまま暮るる春 幸
達筆や紙魚の走りし年貢帳 さわらび
春宵や魔物出づればそれもよし 樹朋
星々が軒ににじんで春の園 ほろよい
恋猫来猫弔ひし夜の窓に 樫の木
男からにげて白木蓮を抱く 犬鈴
アフタゾロン沁む遅日の口内炎 亜桜みかり
利き腕の指休ませる日の長閑 魔心地
雨後の筍喰はれてたまるかと伸びる ポメロ親父
新緑へ一歩踏み出す二人かな 八十八
句ヲ伴ニ桜前線北上ス 元旦
亀鳴くや父の遺したロレックス 八木ふみ
花種を蒔きしところへ名札差す 輝女
茎立の黄花も白も夕日色 空
鼻を馬酔木に後ろからタンバリン 希望峰
ピストルの不発五月の運動会 希望峰
あく抜きの鍋さめやらぬ菜種梅雨 のり茶づけ
誘惑の捨てられてゐる海市かな なゝ
花冷えの真間の継橋紅き橋 まんぷく
春深し何とも耳の痒きこと 空山
張替えて網戸ぷくんと息をする 大塚めろ
ヨーチンの染みる思い出昭和の日 ちろりん
落し角掲げてありぬ伯父の家 エノコロちゃん
薄紙のごと吹かれゐる白牡丹 省三
春の昼さっきまでいたひこうき雲 アンリルカ
しだれつつ花何ものをも寄せつけず むらさき
初蝶の瑠璃に光や酒屋敷 香
裏山に風の憑きいるなずな粥 ターナー島
散会の相図ギネスの紳士めく 野風
兄ちゃんの押す三輪車春の川 青柘榴
藤の花うすむらさきの傘買いに しのたん
白群の空の隅より夏来る 恋衣
談合は喫茶フラワー蝶の昼 さち
パラサイトシングル装う蚕かな 西条の針屋さん



関悦史(せきえつし)
1969年茨城県生。「豈」同人。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞。第11回俳句界評論賞。2011年第一句集『六十億本の回転する曲がつた棒』刊行。翌年、第3回田中裕明賞。共著『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』(以上、邑書林)、『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』(以上、草思社)他。雑誌「現代詩手帖」俳句時評欄担当(2012年1月〜)

阪西敦子(さかにしあつこ)
1977年神奈川生まれ。1985年より作句、および「ホトトギス」生徒児童の部へ投句、2008年より同人。「円虹」所属。 201年、第21回日本伝統俳句協会新人賞受賞。共著に「ホトトギスの俳人101」「俳コレ」など。

加根兼光(かねけんこう)
1949年大阪生。俳句集団「いつき組」組員。第9回俳句界賞受賞。


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へたうま仙女


文 杉山久子

 へたうま仙人が昼寝してる間の留守を頼まれたへたうま仙女よ。輝くへたうま句を待ってるわよ。油断して巧い句なんか作ったら「追放」という名のお仕置きよ。

キラキラと光りて若葉ソヨソヨと ふーみん
 素直なカタカナ表現のサンドイッチが若葉の瑞々しさを言いえてるわね〜。初々しさが◎よ。

輪になってソーダ水しゅわわわわ 藤実
 わに始まりわに終わる、友達の輪的幸福感に満たされるエターナルリング。軽やかな擬音語が生かされきっていてなんとも私好みだ輪。

四月一日からあこがれの無職   小木さん
 卓越した季語使いには唸らされるわね。仙界に定年なし。小木さんめ、羨ましいぞ。

春暁の死闘称える潮汁 だなえ
風光る納竿梨割りの頭 だなえ
 作者は釣人かしら? 二句並べてみると、大物との壮絶な闘いの後の豪快で美味しそうな浜飯の様子が臨場感満点だわね。

漢方はサクラにとつて食前酒 片山ナース
 サクラって誰? つうか季語のサクラ?漢方って養命酒のことかしらん? などと読者に考える隙を与えない大掴みさは大物の証。そろそろ私も寝酒の準備でもしようかしらね。だなえが釣った魚もあることだし。霞は食べ飽きたから。

美しや一年暮らし桜咲く 小犀
 大掴みの大物といえばこちらも負けてないわよ。キレキレの投げやり感がお見事。危うく五色の雲を踏み外すところだったわ。

蛍烏賊ちゅるんと飲み込む地球人 山ぐるぐる
 恐るべし地球人。他の宇宙人が怖がるわよ。いいわいいわ、怖がらせとき。


烏賊……じゃなかった、以下追放。

無精卵溶いてまだらに夏が来る マイマイ
 この絡めとられるような気だるさはジャズ俳句にぴったり……て巧くてけしから〜ん。ターンテーブルで廻っとき。

樽酒に細魚焙るや暮の春 未々
庭の韮若葉朝餉の卵とじ えつの
 ささやかながら滋味あふれる暮らしに俳人ぽく自足してるところ、仙女の出る幕がなくなるじゃん。追放!

新星の爆発ありて鳥交る 小市
 雄大な命の営みを十七音に納めるなんて三億光年早いのよ〜。

同じ木の桜蕊ふる一周忌 ひでこ
 思い出の木の傍に佇む作者。桜蕊降るなんてしみじみ美しい感慨にこっちまで浸らせるなんて、追放。

口下手な私、俳句を愛してる ケンケン
長く長く生きてみたいと海を見る ケンケン
 へたうま界のホープと密かにファンだったのに自由律になったら水を得たのかしら? きむけんさんの所に投句してもよいわよ。でも仙女のことも忘れちゃイヤよ。


以下追放一歩手前

なにもない日常と言う春サボテン 豊原清明
 春サボテンの効き具合にやられそうになったわ。

風光る逆さ鳳凰屋根瓦 たつ君
 うららか且おっと思える光景ね〜。

初蝶の頼りない子の旅立つ日 カシオペア
 この子の行く末を心配しそうになったけど、なんとか追放を免れたわね。

 じぇじぇじぇじぇ。思わず北の海女になったわ。のっけからこんなに追放者と追放者候補を出してしまったわよ。来月からは本気を出してちょうだい。頼んだわよ。



杉山久子(すぎやまひさこ)
1966年生まれ。第二回芝不器男俳句新人賞。句集『春の柩』、『猫の句も借りたい』『鳥と歩く』。


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自由律俳句計画


選者 きむらけんじ

 「絶滅危惧種」的自由律俳句に、投句してくれる人なんかいるのかいな?という不安でぶるぶる震えておりましたら、みなさん気をつかってたくさん投句いただいて、どもありがと。
 この際調子に乗って「世界遺産」を目指したいなと……。なんのこっちゃ。



毛虫焼いている昨日猫が死んだ 樫の木
 「毛虫焼いている」という自らが殺す命と、「昨日猫が死んだ」という仕方なく奪われる命とが、妙なバランスで交差している。この一見何の関係もなさそうな二つの事象の間にある、ビミョーな余白あるいは不安定感こそこの句の生命線なのではないかと思う。さらに言えば、この余白あるいは不安定感こそが自由律句の魅力であり力なのではないかと思う。完成度の高い句は他にもっとあるけれど、完成度=句の力ではない。言葉は悪いが自由律句の場合、どんな手を使ってでも誰かの心に届かせる、そこを考えなければ有季定型の句に勝るはずはないのである。



ゆあんと枝跳ね上がり赤い椿が落ちた 猫ふぐ
 「ゆあん」が効いていると思う。実際に椿が落ちる瞬間を見たことは無いが、落ちる瞬間に枝が跳ね上がって反動をつけてから落ちる……という経緯をこの「ゆあん」という言葉が視覚化している。冷静に考えてみれば、椿がこんな歌舞伎役者のような大そうな落ち方をするとは思えないが、そんな小さい考えを押さえつけるだけのインパクトがある。

風のない日の風鈴でいる 柳葉魚
 きれいな、ある意味典型的な自由律句。それなりの人生を経て、いまは自ら積極的に行動を起こすということもなく淡々とした境地に達した人のこころの在り様が、たった十四文字のなかに過不足なく表現されている。多分この句を定型にすると言いすぎになるような気がする。短いのも自由律の巧妙。

魚を裏返してもまだ見られている 牛後
 そう言われれば、なるほど!なのだ。そこに「発見」があれば、小細工の必要はない……自由律句の特権かもしれない。魚を見るのではなく見られているという視点に、すでに非凡さがあると思う。この俳人、牛を見ても魚をみても、やはりただ者ではないのである。

春寒の猫が重たい しんじゅ
 俳句は十七文字の省略の文学……というのなら、この句は十二文字しかない。これだけでりっぱに俳味があると思う。肌寒い日のぼんやりとした時間、動きたくはないがそうもいかない……しかしこの猫膝の上でじっとしたままそろそろ重たいな的アンニュイな情景がみごとに想像できる。(誤解のないように言いますが短いほど自由律句は良いと言っているのではありません)

ランドセルから金曜日の土筆 瑞木
 「金曜日の土筆」という表現が上手い。たぶん土曜か日曜にランドセルの中をチェックしてみれば、金曜の放課後に道草した時の土筆が出てきたというのだろう。しかしそんなことは一言も言ってない。「金曜日の土筆」ですべて想像できる。これがお父さんの鞄から飲み屋の請求書では俳句にならん(スミマセン)。



うそついた影が歩き出す 柳葉魚
行く春に髪切って爪伸ばす ヤッチー
気がつけば救急車が来ている みちる
旅はいつも水を見てゐる影を見てゐる 蓼蟲
川面に鼻 藤実
日向ぼこまみれの指を洗はむ なゝ
「先だって」と言って全部過去 大塚めろ
落ちたがらない白い椿 小木さん
女王の横顔貼ってエアメール ひでこ
たまたま桜を見上げたら猿 ザッパー


並選
歯が痛い朝の音かな 豊原清明
行く春を追う気があるのなら 紗蘭
芭蕉になれず顕信めざす ケンケン
撮りたい人と撮られたい花 洋子
開き切ったるチューリップ午後の教室 迂叟
英語で悪態をつく傘の骨 朗善
冬銀河爆ぜて一億光年の彼方より 一心堂
サブリナパンツ穿き夏闊歩 ヤッチー
花の下あやしてあやして泣かせては のり茶づけ
こうもりや眼球の独り言 川又夕
ぺちゃんこな雨の日のコイノボリ 樫の木
最敬礼してエンジン休める春ボート 亜桜みかり
波頭を蹴る マイマイ
ステテコで朝飯飲み薬貼り薬 ポメロ親父
舗道の水溜まりが靴を拒む春 牛後
桜の直下日本人となる私がいる 元旦
春寒むの塀の上の猫碧眼 まんぷく
アマリリス気弱さをせめないで 空山
踏青のどこまでも地雷原 ソラト
痒いのに届かん手 大塚めろ
なのはなの束ばらすは一種の暴力 親タカ
自然に生きてる……わかることは不自然 ちろりん
ノンアルコールビールでもほろよいになれる下戸の我 エノコロちゃん
様々な人生背負う待合所 カシオペア
肩には触れず肩の花びらつまみ上げる 瑞木
歩道の白線まで鹿尾菜 さち
ありがとう聞くさみしさ たま
サンドウィッチに春がいた ザッパー
途中下車無効蜃気楼へ 桔梗



きむらけんじ
1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。自由律俳句結社「層雲」同人。句集『鍵の穴』(文芸社)、『鳩を蹴る。』(プラネットジアース)、『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)。特技・妄想、泥酔。


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詰め俳句計画


出題・文 マイマイ

今月の問題
 次の(  )の中に共通する季語を入れて下さい。
(  )や飛び立つ鳩の尻白く
ジェット機はいま(  )のただ中へ


渦風や飛び立つ鳩の尻白く
ジェット機はいま渦風のただ中へ
山ぐるぐるさん。渦風を歳時記で探してみましたが、見つかりませんでした。渦風は季語だよという方おられましたらご一報ください。級外。

薇や飛び立つ鳩の尻白く
ジェット機はいま薇のただ中へ
 大塚めろさん。後句は墜落?! 他にも不時着としか思えない情景が……。レモングラスさんはやまもも、鞠月さんは青桐。キャー!! 7級。元旦さんの花影は墜落とまでは言わないが後句少し無理がある。6級。

オレンジや飛び立つ鳩の尻白く
ジェット機はいまオレンジのただ中へ
 又太さん。後句シュールな情景です。あまり「墜落」と感じないのは「時計仕掛けのオレンジ」を思うからでしょうか。みちるさんは涅槃図。牛後さんは鞦韆。どれもアリエナイ組み合わせでどうしたらいいか。藤実さんは雨乞い。後句はタイムスリップ? しかし、まあみんなまとめて7級。

春雷や飛び立つ鳩の尻白く
ジェット機はいま春雷のただ中へ
 更紗さん、たっ君。迂叟さんは雷雲。どちらも後句、劇的過ぎて辞世の句になりかねません。くわばらくわばら。6級。

青東風や飛び立つ鳩の尻白く
ジェット機はいま青東風のただ中へ
 ポメロ親父さん。前句「白」に対して青の字を持ってきたのは面白い。が後句ジェット機では青東風の実感は得にくいのでは。5級。ほろよいさん、親タカさん、空さんは黒南風。この黒はもう少し実感できそう。4級。

春興や飛び立つ鳩の尻白く
ジェット機はいま春興のただ中へ
 サキカエルさん。前句フレーズが季語の説明っぽくなっているのが残念。後句もぼんやりしている。5級。台所のキフジンさん、たかこさんは春愁。後句が詩的。だが、最後の助詞を「へ」ではなく「を」にしたい。3級。

母の日や飛び立つ鳩の尻白く
ジェット機はいま母の日のただ中へ
 魔心地さん。前句は鳩の白さが生きている。後句、「ただ中」の臨場感と季語がそぐわない気がした。4級。朗善さんはメーデー。前句、一場面を切り取っていて鮮やか。後句、昭和の時代なら「ただ中」の実感があったかも。のり茶づけさんは六月。後句、時候の季語と合わせるのは面白いが、具体的な映像がないのは少し損か。3級。人日子さん、さちさんの清明は前句すがすがしさがフレーズとよく合う。2級。

五月雨や飛び立つ鳩の尻白く
ジェット機はいま五月雨のただ中へ
 エノコロちゃん。破綻はないがプラスαの何かが欲しい。カシオペアさんは淡雪。「ただ中」の臨場感に対して季語の柔らかさが少し損な気がする。5級。輝女さんの雲海は後句が素晴らしい。が、前句の鳩と合わない気がする。ちろりんさんは炎昼。後句ちりちりと焼けるような日差しが感じられて良い。4級。洋子さんの炎天はより高さが表現されている。蓼蟲さん、青柘榴さんの夏空は素朴だが爽やかで好き。猫ふぐさん、雨月さんの朝焼、妙さんの夕虹、一走人さんの春光。いずれも美しい。3級。瑞木さんは梅雨晴。後句雨の中から急にジェット機が抜け出したのが感じられる。だなえさんは梅雨明け。まだ梅雨が明けていない所から梅雨明けした所へ飛ぶと「ただ中」の実感が得られるかもしれない。2級。小木さんは青梅雨。青の一字が入ることで前後句ともぐっと引き締まった。しんじゅさん、ひでこさんの陽炎、れんげ畑さん、樫の木さん、しのたんさんの夏雲、ケンケンさんのつちふる、いずれも後句臨場感があり前句も「白」が生きる展開。亜桜みかりさん、ひなぎきょうさんの新緑、野風さんの万緑は、後句大きな景で生命力も感じられて良かった。1級。

巴里祭や飛び立つ鳩の尻白く
ジェット機はいま巴里祭のただ中へ
 ヤッチーさん。ぎんなんさんはパリ祭。前句、祭と白が良く響き合っている。後句は正直少し大げさかとも思うが、機上の作者の喜びが伝わってくるようで好きだった。初段。


今月の正解
麦秋や飛び立つ鳩の尻白く
ジェット機はいま麦秋のただ中へ
 正解者なし。麦秋は時候の季語でありながら景がはっきりと見えるところがミソ。初段。


8月号掲載分の問題(6月20日締切)
 次の(  )の中に共通する夏の季語を入れて下さい。
哲学や指に(  )日和
(  )吟遊詩人越境す



マイマイ
2003年11月頃よりラジオに投句を始める。割と生活派俳人。第一回大人コン「多面体」にて優秀賞受賞。句集『翼竜系統樹』マルコボ.コムオンラインショップにて販売中。将棋推定初段。棋友募集中。



【100年投句計画】投句方法
 件名を「100年投句計画」とし、投句先(複数可)・俳号(なければ本名の名前のみ)・本名・電話番号・住所を明記してお送り下さい。投句はそれぞれ二句まで、詰め俳句は季語を一つのみお送り下さい。一つのEメールまたは一枚のハガキに各コーナーの投句をまとめて送っていただいても構いません。
ただし、「選者三名による雑詠俳句計画」と「へたうま仙女」は、選択制(どちらか一方のみ投句)となります。

それぞれ締切は、6月20日(木)

投稿ページ http://marukobo.com/toukou/
投稿アドレス magazine@marukobo.com
はがきFAXでも投句できます。


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Letter from spider garden


ナサニエル・ローゼン(訳:朗善)
松山市在住の世界的チェリスト ナサニエル・ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.14

Goodbye dear spiders
Hello Fujiyama
New webs for our new life.

引越してまた新しき蜘蛛の巣を

(直訳)
さようなら 蜘蛛たち
こんにちは 富士山
我らが新しき人生に 新しき巣を



We are moving to Lake Yamanaka. We will have a new adventure to add to our lives. July is the month for moving. It will be hot and we will be patient.

 山中湖村に移ることになった。我らが人生の書に、新たな冒険の章が書き加えられる。七月が、引越し月だ。暑くて、大変だろうがね。

訳:朗善



ナサニエル・ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2011年より松山市在住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第27話
「銀巴里セッション」 内田修

全休符弾け螺旋の底に夏至 蛇頭

 銀座四丁目の交差点から新橋方面に歩くと、左手にヤマハがある。それを通り越し、最初の角を左に曲がると、うっかりすると見過ごしてしまうほど遠慮がちなネオンで「銀巴里」とある。螺旋状の階段を地下に降りていくと、壁面に飾られたシャンソン歌手のポートレートが否応なしに目に入ってくる。地下一階に降り立つと、薄暗い中に意外と広い店内が見える。正面にステージ、反対側にカウンターがしつらえてあり、椅子席がぎっしりと並べられている。およそ100席ある。今は無きシャンソン喫茶「銀巴里」では、当時「フライディ・ジャズ・コーナー」が定着し、さらに深夜のセッションも再開していた。(『ドクターJAZZ〜内田修物語〜』発行・東京キララ社 より抜粋)
 三輪明宏や金子由香利などの日本を代表するシャンソン歌手を輩出しただけではなく、三島由紀夫や寺山修司などの文化人が愛した店としても有名な「銀巴里」が今回の舞台である。

銀巴里に溢れる梅雨の新しく チャンヒ

 63年6月26日深夜、特別なセッションが「銀巴里」で行われた。過ちを償うため、社会復帰施設への入所が決まったギターの高柳昌行を送り、社会復帰を果たしたドラマーの富樫雅彦を温かく迎える歓送迎セッションである。当時、高柳は日本ジャズギタリスト界の頂点に君臨しており、若き富樫も既に天才ジャズドラマーとして名声を博していた。この二人とともにアルバム「銀巴里セッション」にクレジットされている出演者は、日野皓正(トランペット)中牟礼貞則(ギター) 宇山恭平(ギター) 菊地雅章(ピアノ) 山下洋輔(ピアノ) 金井英人(ベース) 稲葉国光(ベース) 山崎弘(ドラムス)で司会が相倉久人、そして録音を担当したのがこのセッションの仕掛人でもあるドクターJAZZこと内田修である。内田は岡崎の自宅から当時最新鋭のテープレコーダー、ソニーの「777」を持ち込み録音する傍らでビール片手にカメラマンもこなした。

明け急ぐドラムへ雨は銀の粒 マイマイ

 金井のベースが闇の中、不規則な鼓動のように響く。休符に何かを語らせようとしているのか?なんて深読みすると肩透かしを食らう。フリージャズ系のミュージシャンは存外適当で楽器の調子を確認するついでによく思わせぶりな音を出す。だが、高柳が「グリーンスリーブス」のメロディーを爪弾きだすところでゾクッとするのだから演出としては成功なのだろう。続く菊地の奏でる「ナルディス」は知的でいい。唸り声も……、まあいい。「イフ・アイ・ウア・ベル」の日野がキラキラ輝いている。更に凄いのが富樫である。「長い間、楽器に触れもしなかった富樫が、お聴きのような素晴らしいプレイをしている。僕にとって、この富樫がどんなに励みになったかわからないくらいだ。僕もここ当分ギターに触れることはできないだろう。しかし、必ず、退歩することなしに進歩して、皆さんの所に帰ってきます」と高柳が称賛した。僕には“退歩”が“逮捕”にも聞こえるのだが……。

アルバムの僕は日永を笑ってる みゆう

 大胆にも僕は初参加のみゆうさんに「ジャケ句ってのがあって、LPジャケットの図柄をネタにするのもアリですよ」と進言した。すると期待どおりの句を詠んでくれた。歴史的な音源を記録した内田の笑顔がいい。



http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


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ラクゴキゴ


『里帰り』
〜 娘のために父が起こす殺人事件? 〜

あらすじ
 ある日、田舎の老夫婦のところへ三年前嫁いでいった娘が突然帰ってきた。理由をきくと、姑のいびりに耐えかねて家を出てきたという。ご飯の炊き方などちょっとしたことでぐちぐち言われると言うが、父は「そんなんでも、お前の夫を産んで立派に育ててくれた人だから大切にしなくては」と諭し、夫のもとへ帰るように言う。それが嫌な娘は、「帰ったら即姑を殺す」と言い放ち、そこまで娘が追いつめられていると父は理解し、それならと、ロージンバックほどの大きさの袋に入った白い粉を渡す。この粉は「たった一舐めしただけで、人間は即死し、さらに遺体からは何の毒物も検出されない」という夢のような毒薬だという。
 ただし、すぐ殺すと嫁と仲が悪かったというわけでバレるから、一年はがまんして、仲の良い嫁姑を演じてからにしろと言い、夫の元へ帰す。
 一年後、娘が再び実家に帰ってきた。「そろそろ殺したか?」と父が尋ねると、なんでも一年間仲の良いフリをするはずが本当に仲良くなってしまい、その結果夫とも仲睦まじくなり、妊娠三ヶ月を迎えているらしい。もう殺意も消えてしまい、今は「世界一仲の良い嫁姑」と言われているという。
 父は、実はあの粉はただのうどん粉だったと明かし、心配していた本心を語る。
 娘は父の想いに感謝し、「もし途中で我慢できなくなって、うどん粉で姑を殺そうとしていたらどうなっていたの?」と父に訊くと「そりゃもちろん手打ちだろう。」



 今は亡き春風亭柳昇師の新作落語です。
 柳昇師は高座の始めに必ず「わたくしは春風亭柳昇と申しまして、大きなことを言うようですが、今や春風亭柳昇と言えば、我が国では……わたし一人でございまして」とツカミの決まり文句をおっしゃってました。
 そこからもうふわふわと、つかみどころのない柳昇ワールド。この人にしか出せないようなポンチ絵のごとき世界。好きだったなあ。
 古典落語もしないことはないのですが、「結婚式風景」とか「課長の犬」「日照権」など、昭和の生活を描いた新作がお得意で、その新作の世界を受けついでおられるのが「笑点」でもおなじみの、お弟子さん・春風亭昇太師であります。
 さてこの「里帰り」、原話はフランスにあるらしいのですが、さすがにフランス語で「うどん粉」と「手打ち」のシャレはあるはずもなく、うまく作られたものだと思います。
 子供を思う父の親心、そして娘の訴えがこちらにも伝わり、柳昇落語の中では珍しくジーンとくるものがあります。
 新宿の末広亭で柳昇師の高座をよく拝見しましたが、今はもう見ることが出来ません。
 でも今の時代はネットでかつての名演を見たり聴いたりすることが出来ますので、ぜひ検索してホワッとした柳昇ワールドを体験してみて下さい。

父の日のけつねうどんのあげ甘く


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マガジン化10年目記念?
句集を作るドキュメント


その1 キム・チャンヒ

 数年前から、自分の句集作りを計画していたのだけれど、なかなか思うように進められず、気がつけば、俳句雑誌の編集長になって10年目。今を逃すと、完全に句集作りのきっかけ失いそうなので、思い切って、雑誌で進捗情報を報告すれば、否応なく作らざるを得ないと思い、ドキュメントを連載することになった。
 句集作りは、まずは自分が今まで作った俳句を整理するところから始めるはずだ。そう思い過去の俳句を改めて取り出す。10年近く前から、作った俳句は全てエクセルに入力しているので簡単。ファイルを開いてみると、4300句以上ある。整理ったって、方針を立てないと無理だと気づく。まずは、どんな句集にするかを考えることにした。俳句を入れる本の仕様を先に決めれば、中身も決まってゆくに違いない。
 まず最初に決めたのは、組長の『梟』とは違う大きさの本にするということ。せっかく作るなら、『梟』とは違った装丁の提案がしたい。
 それならばと最初に考えたのが、句集シングルの仕様。こんな小さな句集でも、デビューできるのだという一つの見本になればいいと思ったからだ。でも、10年近く雑誌の編集長をしてて、第一句集としてデビューするには、余りに句数が少ない気がしてきた。あくまで、句集シングルなので、作るならアルバムサイズにしたい。
 アルバムならばと、次に考えたのが、LPレコードサイズの句集。大きなサイズで自由に俳句を配置した句集なんて、かっこいいんじゃないか。サイズが大きい分、1ページに入れる句の数も多くできるし、それならば、ページ数が少なくて済む。意外と費用も少なくて済むかも知れない。ところが、レイアウトをしてみると、これが意外と難しい。レイアウトとしてカッコイイ俳句の大きさと、本を開いて読むときの距離がうまく取りづらいのだ。改めて、俳句は行で読むのではなく、面で読むものだと思った。俳句を伝えるには、本が大きすぎてもいけない、なんて、当たり前か。
 そうこうしているうちに、句集スタイルの企画が本格的にスタート。そしてはたと気づく。句集スタイルのページ数を倍に増やせば、そのままアルバムになるのではないか? 36ページで81句掲載できるところが、倍の72ページにすれば、180句くらい掲載できる。ちょっとボリュームは小さい気もするが、案外読みやすい本になるかも知れない。
 かかる費用も、句集スタイルを参考にすれば、数十部しか印刷しないので、そんなにかからない。足りなくなったら、こまめに増刷すればいい。句集の出版の仕方の提案になるかも知れない。
 本の大きさとページ数が決まったところで、4300句を前に再び途方に暮れるのであった。

つづく


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百年歳時記


第1回 夏井いつき

 有名俳人の一句を紹介鑑賞するページは世に数々あれど、「市井の逸品」とも呼べる一句を取り上げ鑑賞する記事はそんなに多くありません。
 百年先に残したい佳句秀句奇々怪々句を見いだし、皆さんと共に味わおうという連載は、名づけて「百年歳時記」。夏井いつきの目に触れた様々な作品を毎月ご紹介していきます。

桜狩轟く滝のところまで そも
 主たる季語は「桜狩」ですが、「滝」も大きな時空を持つ夏の季語。このような季重なりが堂々と成立することに驚きつつも、「桜狩」という季語の現場の実感が季重なりというタブーを越え、読者の心にありありと像を結ばせるのだと、気持ちよく理解できます。
 「桜狩」とは、山中に咲く桜を探しに行くこと。その過程を楽しみ、桜を見つけた瞬間を喜ぶことこそが、この季語の本意だと考えます。真っ白に咲く桜を探し歩いていると、真っ白に溢れ「轟く滝」が目に入ってくる、その瞬間の感動が「桜狩」という過程の喜びとして、読者の心に飛び込んできます。下五「ところまで」の余韻もまた「桜狩」という季語の醍醐味に呼応します。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』4月12日放送分より)

うりずんの水滴真珠になりたがる とうへい
 「うりずん」とは【陰暦二月から三月、麦の穂の出る頃】だとものの本には書かれております。沖縄地方独特の季語ですから、晩春とはいえ若夏の明るさに満ちた季節が想像されます。
 ものみな緑に潤いはじめる季節「うりずん」の「水滴」とは、朝の露でしょうか、雨上がりの雫でしょうか、渚の飛沫でしょうか。「うりずん」という季節の光を弾きつつ結球する「水滴」の一つ一つは、海の「真珠」になりたがっているのだよ、という発想のなんと美しいことでしょう。折しも、夏かと見まがう沖縄の底抜けに明るい海は、天然の真珠を育む海でもあります。「真珠になりたがる」とつぶやく言葉もまた、詩として美しく結球する一句です。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』5月3日放送分より)

エコーには男子のしるし粽食う さち
 一瞬「エコー」って何?と思うのですが、「男子のしるし」という言葉が目に入ったとたん、それが超音波診断の画像であることが分かります。黒い画像の中にぼんやりと浮かぶ白い胎児。指さされている部位には、言われてみればなるほどと識別できる「男子のしるし」が見えているというわけです。
 「男子」は「おのこ」と読んでもよいのですが、「だんし」と読ませてもらいました。母としての愛情、婚家の嫁としての思いも込められているかのような「男子のしるし」という措辞の、なんとも誇らしくなんとも可愛い中七! 来年の端午の節句を思いつつ食べる「粽」の香りの、なんとも爽快な今日であります。
(ラジオ番組『夏井いつきの一句一遊』5月10日放送分より)

安達太良へ筍飯を握りけり 竹春
 「安達太良」という地名の持つ悠々たる響き。「あだぁたぁらぁ」のア音が大空へ広がるかのような韻律であることは勿論なのですが、大らかな句の姿を支えているのは、方向を示す助詞「へ」の効果ではないか、ということにはたと思い至りました。
 山へ向かって? 山へ行く? 一体、どういう意味の「へ」かと思いきや、後半「筍飯を握りけり」とくる展開が実に巧いですね。
 山開きの日の握り飯か、はたまた初物への感謝を捧げる握り飯か。「へ」という助詞は、さまざまな方向に読み手の思いを広げます。筍を育ててくれる山は、毎日拝む美しい故郷の山。下五「握りけり」の詠嘆もまた、いかにも美味そうな「筍飯」の実感です。
(松山市公式サイト『俳句ポスト365』5月13日掲載分より)

ショーパブのワイングラスの闘魚かな 杉本とらを
 「闘魚」とは【キノボリウオ科の淡水魚。全長6センチくらい。体は長楕円形で側扁し、青緑色。雄は闘争性が強い】と大辞泉には解説してあります。路上で瓶に入れて売られているのを見たことがありますが、【野生下では、干上がりそうな水溜りに生息している事もある】ほどの生き抜く力を持っている魚なのだそうです。
 華やかな「ショーパブ」、卓上に飾られた「ワイングラス」、そのグラスの水に泳ぐ「闘魚」。見慣れない魚の退廃的な美しさは、グラスの触れあう音の中で夜を生きる人々のようでもあります。ましてや「闘魚」と名づけられた猛々しい季語の本性を思えば、一句の奥に息づく暗がりが静かに牙を剥いているかのような感触。
(パイオニア公式サイト サウンドラボ『音俳句』4月30日掲載分より)


*百年歳時記は、南海放送ラジオ『夏井いつきの一句一遊』や
 松山市公式サイト『俳句ポスト365』(http://haikutown.jp/post/
 などに投句された俳句を紹介します。


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句集の本棚





『橋朧 ふくしま記』永瀬十悟 著

  風はらむ丘の新樹ぞ仰がるる
 序句森川光郎にはじまる全408句。第一章 ふくしま は、角川俳句賞受賞。
  無事ですと電話つながる夜の椿
  陽炎の中より野馬追の百騎
 第二章 2011年夏より12年冬
第二章の1 少年の日の沼を探しにゆく夏野
第二章の2 鰯雲海へ行かうと一決す
第二章の3 松明あかし雨を力に炎立つ
第二章の4 植樹式百年先の木を描く
第二章の5 倒木に杳かな時間泉鳴る
第二章の6 あかあかと乳首山に銀河濃し
第二章の7 約束の白鳥来たり空の紺
 第三章 震災前の福島の春夏秋冬
第三章の1 うららかや百葉箱を塗り直す
第三章の2 天牛の触角動き沼しづか
第三章の3 刃を入れてあをぞら滲む林檎かな
第三章の4 十二月八日小さな句会あり
 A6判句集を全力で読んで欲しい。
(書評:恋衣)

コールサック社(2013年初版)
定価 1500円(税別)
全271ページ



『熊野曼陀羅』堀本裕樹 著

  金色の海老根の群るる浄土かな
  葉ずれみな言の葉となる五月かな
  はがねなす神の杉なり走り梅雨
  法悦や巌も大樹も苔の花
  羽抜鶏鳴くや果無山脈へ
  神となす巨岩灼けゐる響きかな
  秋の尿きらきらと健次の忌
  金秋の箔打ちにけり熊野川
  紀の国の水澄みて杉澄みまさる
  天狗来よ千年の杉しぐれつつ
  凍滝を背骨としたる御山かな
  蝶凍てて空の起源の蒼さかな
 先祖代々受け継いできた熊野の血脈。その熊野の霊性高き力を一句一句に宿し、壮大な曼陀羅図として一巻となす。序文を哲学者、宗教学者の鎌田東二。帯文を小説家の中上紀。「梓」同人。第2回北斗賞受賞作品を大幅加筆、再編成。
(書評:藤実)

文學の森(2012年初版)
定価 1714円(税別)
全184ページ



『悪の種』秋尾敏 著

 1頁3句、見開きで6句ごとに小見出しをつけた形で一貫した本句集。例えば、
   悪の種
  悪の種あり晩秋を曲がる川
  黄落期石の時間と結び合う
  転生へ刈田の風を呑む大樹
  蚯蚓鳴く自分は誰であってもよい
  青春のままに波立つ芒原
  影は斜めに魂は竹の春
というように。読者はそこに、ある明確な意志の力を認めることができる。その力はときには人を息苦しくさせる。例えば、
  蛞蝓の道を予言として国家
  将軍と冬将軍と日本海
等はその感が深い。しかし、跋文によって作者の力の由来を知るとき、読者は次のような句とともに、深い共感を得ることであろう。
  葭の笛より文学を志す
  秋風吹いても青二才でいる
 軸俳句会主宰。
(書評:みちる)

本阿弥書店(2012年初版)
定価 2500円(税別)
全172ページ



このコーナーで紹介した句集は、100年俳句計画編集室にて閲覧できます。


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だれもが句集を出版できるかたち
句集スタイル製作レポート



句集Style第1期募集にて制作された方の、句集制作を終えての感想を紹介します。


たくさんの自分を残せた喜び 磨湧

 第1回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」最優秀賞の牛後さんの『根雪と記す』を拝見させていただき、このような形で句集を作れるなら私も挑戦してみたいと思いました。
 完成した『苺ミルク』は、私のイメージを忠実に再現していただきました。思い通りの句集ができとても感動しました。
 これらの俳句は全て過去の私の破片です。私にとって句集を作ることは破片を拾い集めること、つまり過去の自分を組み立てるということです。この句集を作ることで、また一人磨湧を作り上げることができました。
 小学生の頃から合わせると7人の磨湧がいます。すべての磨湧が本物です。こんなにたくさんの自分をこの世に残しておけるのも、句集のおかげです。これからも磨湧は増えていく予定です。


句集『苺ミルク』 磨湧
中学卒業記念句集。FM愛媛「バニラビーンズの俳句っちゃお」主題歌句集ほか、新作も収録。全41句。



一生の宝物の一つ 松本京子

 母を天国へ見送って、心がぽかんとなった時、思ったこと、感じたことをノートに書き留め始めていました。幼い頃、娘の頃、母になってからの事、家族のことなどなど。
 そのうち、この詩らしきものを活字に残したいという夢が芽生えました。
 数年経って最近のこと、マルコボ.コムの「句集スタイル」に出会ったのです。「詩でも良いですか」と尋ねますと、「大丈夫」との返事。
 数回のやり取りで、パソコンに「最終校正です」と詩集の概要が送られてきました。以心伝心と言うのでしょうか。表紙、構成が私の思っていた通りのものでした。出来上がり、受け取った時は感激しました。家族は勿論、親戚の人達、友人の方々にも読んで頂き、嬉しい感想を聞くことが出来たのです。
 私の一生の宝物が一つ増えました。


詩集『おばあちゃんの魔法の苺』 ・松本京子
亡き祖母・母、親戚、知人へ書きとめていた思いを綴った14編の詩集。作者は俳号だりあ。



仕様:135mm×135mm、36ページ、オンデマンド印刷、表紙PP加工
定価:各735円(税込・送料別) マルコボ.コムオンラインショップにて発売中
http://shop.marukobo.com


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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成25年4月度


【寒食】
うちぬきの水清くして寒食す もろり川
寒食の竈に尖る塩の山 ほろよい
寒食や風の住み着く火消し壷  ターナー島
寒食や押し戴くは竈護符 そも
寒食や鳳凰は竈に眠る 緑の手
寒食や生類の目に火の記憶 めろめろ
寒食や波打つように缶切って マイマイ
寒食やぴくんと縮む喉仏 ジャム
寒食の白昼みづのにほひして 藤実
寒食や澄んで白磁の恐ろしき 野風

《天》
太陽飲むごとく寒食の生卵  ドクトルバンブー


【桜狩】
神社よりやや北北東桜狩 ちろりん
桜狩一茶の道をやや逸れて 風
桜狩あの老木に会いに行く 伊佐
桜狩山神様に会うつもり しんじゅ
近づけば道を失う桜狩 南亭骨太
弘法の見下ろす空や桜狩 笑吉
三門の龍も見ている桜狩 さつき
見下ろせば小さな町よ桜狩 花水木
桜狩両手にあそぶ沢の水 あおい
遊山箱の窓はひょうたん桜狩 てん点

《天》
桜狩轟く滝のところまで  そも


【鰆】
襷せよ馬鮫魚ひとりで捌くなら  亜桜みかり
鼻筋のぴんと通れる鰆かな 朗善
大鰆嫌味なような目をしたり  宇和島風花会・ぼたん
月の海のごとく鰆の紋しずか  ドクトルバンブー
鰆漁播磨の空の明るさよ 朝日
味噌漬けの鰆を提げて斑鳩へ 樫の木
魚偏に春の刺身を二人前 だんご虫
ばら寿しを問へば即座に鰆てふ  松ぼっくり
白味噌をもらい鰆の切身買う 七草
到来の鰆白味噌少し焦げ  松山はいく・ねこ♪
銀のほのと焦げたる鰆かな 更紗

《天》
咲くように皿に鰆の奉書焼  ほろよい


【新社員】
新社員朝は靴からやってくる 人日子
新社員硝子の箱に吸い込まる 菜々枝
新社員スーツの匂い皆同じ まーぺー
そのスーツ宇宙よりも濃し新社員  冬井いつき
岡岡井岡田岡本新社員 だんご虫
アオヤマもハルヤマもいて新社員 蕃
食堂の黒きかたまり新社員 もね
新社員群れて音無き社食かな  ターナー島
早々に酒豪の噂新社員 蓼蟲
一日のこれほど長き初出社 てんきゅう
新社員一千人CEOの英語かな 太郎
骨を埋めに来た新社員に骨がない  日暮屋

《天》
襟章に青空映し新社員  樫の木


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

6月9日
線菊【仲夏/植物】
バラ科の落葉低木。枝の先に五弁の小花が傘状に群がり咲く。山野に自生するほか、観賞用としても植えられる。

夜振【三夏/人事】
川岸に松明、篝火、電灯などを灯して、鯉、鮒、鮎、鰻などの魚を寄せ、網で捕まえる。


6月23日
氷菓【三夏/人事】
氷菓子の総称。アイスキャンデー、アイスクリーム、シャーベットなど、その種類は多岐にわたる。

パリ祭【三夏/人事】
7月14日、フランス革命記念日。1789年に起こった革命により、市民は王や貴族による圧政から開放された。パリをはじめ、フランス全国で祝う。「パリ祭」という言葉は、映画『7月14日』の邦題『巴里祭』に由来する。



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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第28回 文・写真/暇人

第2回 女川町の桜を復活させよう!チャリティー句会ライブ
 mhmでは昨年に引き続き、今年もチャリティー句会ライブを「100年俳句計画 大お花見大会」の場所をお借りして開催しました。
 100年俳句計画の大お花見大会といえば朝8時から夜8時までの12時間にわたる花見。今回私暇人も初の12時間滞在に挑むことに。
 朝8時、集まったのはスタッフを含めて10名。まだこの時間は寒い。しかし例年より早めに咲いた桜はもう満開できれい。さすがにここで「酒」とはいかず、組長差し入れのパンを食べながら荷物の到着を待つ。
 朝9時になるとようやくmhmスタッフが次々到着し、昼からの句会ライブに向けての準備が進む。今年も、しんじゅさんがママを勤める「純喫茶・恋猫だった頃」がオープン。珈琲と引き替えにカンパをいただく。受付は私めが担当。昼からの句会ライブの投句料+カンパを集めまわる。
 途中「大人のための句集を作ろう!コンテスト」表彰式への移動で一時閑散となるが、その後は人が増え始め、ブルーが目立っていたシートは参加者で埋まっていった。
 午後1時、いよいよ句会ライブがスタート。今年も兼題は「桜」。投句締切はライブスタートまで。満開の桜を眺めながら俳句が出来たのでは……。酒も入って益々冴え渡る組長の選による面白かった・気になる俳句を紹介。そして昨年好評だった、あねご代表と新婚正人による5句ずつの句合わせ。

桜散り情けなくぼくは手を洗う 道楽
さくらさくらいうこときかぬやつばかり 山澤香奈
被災地の犬貰ひたる初桜 しんじゅ
何も言わない軍港の桜 ともぞう
黙祷やさくらさやさや降り続く  マイマイ
よその子も大きくなって花の座に 阿昼
桜散る光の記憶失くしては 桜井教人
夜の桜襤褸の人を寝むらせて 樫の木
さくらさくら倒れる時も前向きに 空
この花に集いて朝のカツサンド みゆう
たちまちに桜の国の人となる 更紗

 今回もあねご代表が受け持った俳句が多く選ばれましたが終盤新婚パワーで正人氏も巻き返し。愛の力は偉大だ。
 最終的に会場の支持を受けたのはまさかのあの方の俳句。

何も言わない軍港の桜 ともぞう

 ともぞうさん、昨年末の大忘年会あたりから俳句の調子がいい。これもある意味「愛」の力か。
 今年もこの会場、いや日本、いや世界のどこかで桜を楽しんでいる人たちの共感できる俳句が選ばれたのではないかと。
 句会ライブと「純喫茶・恋猫だった頃」のカンパを合わせて、72,585円となりました。皆様の温かい気持ちはmhmを通じて女川・桜守りの会に寄付させて頂きました。本当にありがとうございました。
 一役を終えたスタッフは肩の荷を下ろしたわけではなく、今回は20時終了まで花見を楽しみつつ、スープの提供やキムさんによる即席似顔絵ブースなど提供させていただきました。(この辺から私、記憶が曖昧です)皆様楽しんでいただけたでしょうか。
 mhmでは4月から新たな活動をスタートさせています。次号以降もこの場やfacebook、ブログを通じて報告できればと思います。


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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100年俳句計画 掲示板


 組長&編集長&組員さんの出演執筆一覧

テレビ/ラジオ
NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  6月4日(火)11時40分〜
  6月18日(火)11時40分〜

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FM愛媛
 バニラビーンズの俳句っちゃお〜!
 毎週日曜日深夜0時〜0時30分
※夏井いつきが俳句指南で出演

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「鯵・夏木立」6月9日〆
   「香水・夏の海」6月23日〆
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)・住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム・チャンヒのイラストポストカードが贈られます。


執筆
松山市の俳句サイト「俳句ポスト365」
http://haikutown.jp/post/
 毎週水曜締切/翌週金曜結果発表

Pioneer Sound Lab. 音俳句(最終回)
http://pioneer.jp/soundlab/
 結果発表 6月1日から1日1句
      6月30日が最優秀句
5月15日投句締切分をもって最終回となります。ご愛顧ありがとうございました。

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

愛媛新聞
 「集まれ俳句キッズ」毎週土曜日

愛媛新聞(キム チャンヒ)
 「ヘンデス俳談」毎月第一土曜日 兼題「夏の風」締切 … 6月25日(火)


句会ライブ/講演など

朝日新聞ひととき会総会句会ライブ
 ・6月2日(日) 15時〜
 会場… 大和屋本店

広島県建設国民健康保険組合健康講話
 ・6月9日(日)13時30分〜

芭蕉元禄事業学校句会ライブ(大垣市)
 ・6月13日(木)西小学校
 ・6月14日(金)安井小学校/南小学校
 ・6月15日(土)教職員向け指導者講習会

創立50年記念総会読書推進大会講演
 ・6月28日(金)13時〜
 ・場所 … にぎたつ会館
 ・演題「絶滅寸前季語〜この愛すべき季語の世界〜」
 お問い合わせ … 愛媛県図書館読書グループ協議会事務局 089-941-1441

子規ジュニア養成講座「ジュニア俳句教室句会ライブ」
 ・6月30日(日)9時30分〜

松山市立子規記念博物館4階講堂
 お問い合わせ … 子規博 089-931-5566


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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

俳句対局「龍天王決定戦」
瑞木 龍天王決定戦、お世話になりました。俳句対局という催しが整っていくのをリアルに体験できて本当に幸せだなと思います。忘年会で龍淵王対龍天王戦を、との素晴らしいアイデアを即座に断ってしまい、まことに申し訳ありませんでした。でも、今年は成り年なんです! 代わりとはいきませんが、観覧者がもっと楽しめるアイデアをひとつ思いつきました。その日作られた俳句の中から一番好きな俳句を選んで投票ってのはどうでしょう? 句会ライブのときも句に投票できるときのほうが楽しいですもの。主催するほうは煩雑でしょうが……。()
編 龍天王・瑞木さんより。忘年会で龍王戦を企画してたのですが蜜柑の収穫時期と重なり断念。とほほ。なお現在、誌面で俳句対局絡みの連載を検討中。暫しお待ちを。

句会ライブで絵をゲット!
魔心地 きさいや句会ライブでは、だいあが「人」。魔心地家にもキムさんの絵がやって来ました! オイラも頑張らないと(笑)。()
編 4月14日はきさいや広場4周年記念の句会ライブでした。縁起の良い魔心地一家、左ページもご一読。

新誌面はじまりました。
たま 自由律俳句は始めてです。これから勉強していきたいと思います。()
だなえ へたうまコーナーに永住しているだなえです。杉山様よろしくお願い致します。()
エノコロちゃん 待ってましたあ〜。「マイマイの詰め俳句」復活おめでとうございます、とってもうれしいです。()
マイマイ マガジン化10周年おめでとうございます。ところで私マイマイはホントに棋友募集中です。()
編 リニューアル楽しんでって下さい! 片や投稿フォームへの質問も。

フォームからの投稿で……
れんげ畑 携帯電話で入力しようとしたら、投句フォームが崩れていて出来ませんでした。今までどおり携帯電話からもフォームで投句出来るように対応してください。()
未々 今月からは確認のページが示されないのと確認配信もなくなったのですね。ちょっと不安になって推敲しなおしました。()
編 新しい投稿フォームではGoogleドキュメントの機能を利用しています。前者については機種にもよりますが、フォームの形をいじるなどして対処を試みる予定。フィードバック頂けると幸いです。後者は基本的に「回答を記録しました」と表示されればOKなのですが……Googleドキュメントの仕様上確認配信は難しいかも。申し訳ないです。

最後の大漁旗「風光る」
瑞木 「風光るるとかまとかに穴開けて」が楽しくて好きです。()
編 先月号なゝさんの大漁旗に寄せて。一見「るとかまとか」という固有名詞に思いがちだけど、実は「“る”とか“ま”とか」なんですよね? なるほど、穴が開いてる!

五月飾用兜プレゼント結果発表
北伊作 此度は五月人形プレゼントに御協力を賜り誠に有難うございました。魔心地様、鞠月様、七草様それぞれの方々に無事お引渡する事が出来ました。
編 心のこもった応募に感激した北伊作さんより4月号掲載の兜は魔心地さんに、他の二名様にもそれぞれ兜が贈られました。おめでとうございます! 応募に際し、魔心地家では第一回かぶと句会が開催されたとのこと。

おりがみのカブトあふれる春休み のんの
踊る弟五月人形笑う だいあ
かぶとみてラジオたいそうなつのあさ そお
武具飾るまずは姉より強くなれ 魔心地

俳人に捧げる愛の言葉展2
桃ライス (前略)ついでといってはずうずうしいのですが、展示会のチラシ(上下はわざとに断ち切りしています)も添付しちゃいました。マルコボ通信とかで載せてもらえたら有難く………。低姿勢。
編 せっかくなので誌面で紹介してしまいましょう。律川エレキこと大塚桃ライス(バラしちゃった)個展「俳人に捧げる愛の言葉展2」開催です。

もろもろの情報
日時 4月22日(月)〜6月23日(日)
場所 ごはんCafe にこちゃん堂
 〒630-8343 奈良市椿井町45(近鉄奈良駅4番出口より徒歩5分)
電話番号 0742-26-2614
ホームページ http://nicochandou.net/
店舗営業時間 11時〜15時(ラストオーダー)火曜定休(水曜日は不定休)

初雪盃第5回「蔵の宴」2013〜小島のり子Jazz flute trio Tour〜
蛇頭@キム・チャンヒとの会話より抜粋 町をあげての(?)大イベントになってしまいました。
編 6月30日(日)愛媛県砥部町の酒「初雪盃」の蔵元で開催される予定だった「小島のり子トリオ&JAZZ句会」が、あれよあれよと話が大きくなり表題の催しとして開催されることとなりました。2012年11月号で小島のり子トリオ・プライベート・ジャズ・パーティ&JAZZ句会の様子をお届けしましたが、雰囲気はあんな感じ。詳細は以下。酒とジャズと俳句の集いにぜひご参加下さい!

もろもろの情報
日時 6月30日(日)13時〜18時
場所 協和酒造株式会社(伊予郡砥部町大南400番地 初雪盃蔵元)
目的・内容
 砥部の『酒』を砥部の『器』で飲み、『食』『音』(JAZZ)と『句』(JAZZ俳句)とともに味わう。今回はそんな会。砥部の酒蔵にて。
 ※古川千栄子バーテンダーのオリジナルカクテル「Looking Up To The Sky」or「First Snow」の発表・試飲
 ※初雪盃の紹介・試飲(協和酒造株式会社提供)
ライブ&句会タイムスケジュール
 14時 小島のり子トリオ1st Stage
    小島のり子(フルート)
    田口悌治(ギター)
    鈴木克人(ベース)
 15時 小島のり子トリオ2nd Stage
 ※小島のり子オリジナル曲「Looking  Up To The Sky」(初雪盃)の発表
 16時30分〜18時
  第64回JAZZ句会(希望者のみ)
  テーマ『酒』『器』『食』『音』『句』
主催 蔵の宴実行委員会   (協和酒造株式会社・JAZZ句会・株式会社 砥部焼 千山)
協力 100年俳句計画・菜好み
参加費 3,500円(チケット事前購入制)
定員 60名
申込方法 JAZZ句会主宰(白方)090-2828-8657 or 初雪盃蔵元090-7786-2716(谷口)まで問合せ。
申込〆切 定員になり次第or平成25年6月25日(原則当日券は無し)


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鮎の友釣り

180

俳号 柊つばき

由来 柊 → 椿。人生も冬から春になれるようにと。両方漢字だとかたいので椿をひらがなに。

こぼれ花さんへ これからもステキな俳句を作って下さい。いつまでも若くてステキです。

行きたい 今、身体がきつくて行けてないまほろば句会に行きたいです。組長や組員のみんなにあうと気持があたたかくなり「来てよかった」といつも思ってました。俳号しか知らなくてもステキな仲間です。

写真 抱いている子は今年高校一年生です。

次回…青蛙さんへ とてもシャイな方だと思いました。これからも自分らしい俳句を作って下さい。


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告知


6月29日 ボウリング大会開催

 6月29日は、愛媛新聞カルチャースクールの合同ビアガーデンの日ですが、このビアガーデンのスタートまで、カルチャースクールに関係ある人も関係ない人もボウリングして打ちあがろう、という企画です。ボウリングで一汗流した後のビヤガーデンは最高です!もちろん「お酒は飲めない」っていう方もボウリングだけの参加もOK!俳句友達が大勢集まる貴重な交流会、みなさん参加してみませんか?

日時 6月29日(土)14時〜16時30分

場所  ファーストボウル(予定)
【松山市大街道2丁目※現地集合】

参加費 1500円(靴レンタル代込み)

問合せ・申し込み
 (有)マルコボ.コム
 電話 089-906-0694
 ※当日の飛び入り参加はできません。必ず事前にお申込ください。

申込締切 【6月24日】

※ボウリング終了後、17:30からはカルチャースクールのビアガーデン(いよてつ高島屋)に合流して打ち上げも行います。(会費3200円予定)




マルコボ.コムオンラインショップマガジン化10年目までカウントダウン企画
HAIKU LIFE 100年俳句計画
企画別ワンコインバックナンバー集発売中

本誌は来たる2013年6月号にて、マガジン化してから10年目を迎えます。
そこで、マルコボ.コムオンラインショップにて、10年目までのカウントダウン企画として、バックナンバーのセット販売を行っています。

1:一物仕立ての定義セット(3冊・発売中)←一物の句を論理的に分類できる、前代未聞の画期的な企画
2:子どもと俳句を作ろうセット(4冊・発売中)←5歳の子供も俳句が作れますっ!
3:大連風聞セットA・B(各6冊・発売中)←『子規365日』に掲載されたエッセイのオリジナル。写真も美しい。
4:俳句で表現しよう!アラカルト(4冊・発売中)←俳句作家に目覚めたあなたに捧げるセット
5:編集長渾身の企画!(3冊・発売中)←俳句で恋は生まれるか!? 俳人に画力は必要か!?
6:俳句と句会を楽しむ150ちょっとの方法(3冊・発売中)←ひとりで俳句をでやっている人必読!
7:まる裏俳句甲子園セットA・B(A:4冊,B:3冊・発売中)←まる裏未体験の方は是非
8:○○な俳句(4冊・発売中)←「戦争と平和の俳句」「笑える俳句」「恋の俳句」「泣ける俳句」、付録もあります!
9:カルチャー教室的セット(5冊・発売中)←俳人のための「絵手紙入門」「書道入門」「英語haiku入門」等。
10:ワタシにもできる100年俳句計画(2冊・発売中)←俳句で人を豊かにする様々な方法。
11:“季語”あれこれ(3冊・3月7日発売予定)←季語の仕組みと楽しさが分かる3冊!
12:チャレンジ企画(3冊・3月14日発売予定)←ジェットコースターで作句したり、6時間ぶっ続けで句会をしたり。
13:夏休み句集を作ろう!コンテスト(5冊・3月21日発売予定)←どれを読んでも大抵の大人の俳人は反省します。
14:マニア必見! 万愚節新聞(6冊・3月28日発売予定)←毎年信じちゃう人がいた名物企画!
15:俳句を並べよう! 作品集を作ろう!(4冊・4月4日発売予定)←俳句の整理方法から句集作りまで。
16:代表句セットA・B(各4冊・4月11・18日発売予定)←それぞれたった3句の代表句でも人生が見えてきます。
17:編集長選 企画倒れ特集(5冊・4月25日発売予定)←やってみなければどれだけ下らないかも分からない!
以下、順次発売予定

各セット500円
但し、合計金額が3000円未満の場合は送料別途
お求めはhttp://shop.marukobo.com/まで




句集スタイル作品好評発売中

・句集シングル『蝶語』/夏井いつき
新作の蝶の俳句だけで編んだ30句。全ての句にナサニエル・アンド・千津ローゼンによる英訳付き。

・句集『苺ミルク』/磨湧
中学卒業記念句集。FM愛媛「バニラビーンズの俳句っちゃお」主題歌句集ほか、新作も収録。全41句。

・詩集『おばあちゃんの魔法の苺』/松本京子
亡き祖母・母、親戚、知人へ書きとめていた思いを綴った14編の詩集。作者は俳号だりあ。

6/1発行分
・句集『翼竜系統樹』/マイマイ
母を亡くした時の連作「守宮」と新作を含む「翼竜系統樹」の全82句。

・句集シングル『線路とぶらんこ』/山澤香奈
二人の子どもと格闘する毎日。そんな子育てやその周辺を詠んだ51句。

・句集『万華鏡』/三瀬未悠
小学六年間「夏休み句集を作ろう!コンテスト」に応募した俳句の中から、学年ごとに並べた87句。




100年俳句計画投稿締切カレンダー

6/20
・各種投句&投稿(P.25)
http://marukobo.com/toukou/
・魚のアブク(P.42)
・100年の旗手推薦募集(P.16)

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


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編集後記


 新しい投句欄「100年投句計画」はいかがだっただろうか。個人的には、それぞれ選者のキャラクターが明確で、読むだけでも楽しめる誌面になったと思っている。
 俳句を始める最初の興味は、自分の俳句がどう評価されるかということ。単純に雑詠欄で、自分の俳句が上位に選ばれると嬉しいもの。選者に選ばれるために、次回も投句し、その結果に一喜一憂する。
 しかし、選ばれることだけを励みに俳句を作り続けると、いつの間にか俳句に対してさもしい楽しみ方しかできなくなってくる。
 今月号からの投句欄、特に「選者三名による雑詠俳句計画」は、誰が一等賞というわけではない。それぞれの選者の読み解き方によって、俳句の見え方が変わり、評価も変わる。そんないろいろな価値観によって、俳句をよりよく読み解くヒントを味わって欲しい。
 選ばれるために、それぞれの選者に合わせて俳句を作るのも一つの楽しみ方かも知れない。でも、初心者から脱出するには、選ばれるために俳句を作るのではなく、読者を楽しませるために俳句を作るようにならないといけないと、僕は思う。そんな価値観の投句欄になれば嬉しい。
(キム)


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次号予告 (188号 7月1日発行予定)


次回特集
取り合わせでわかる俳画入門



HAIKU LIFE 100年俳句計画
2013年6月号(No.187)
2013年6月1日発行
価格 600円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子