100年俳句計画3月号(no.184)


100年俳句計画3月号(no.184)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
春を告げる梅の花 濱田省三


特集1
mhm通信スペシャル まる裏報告記2013


特集2
だれもが句集を出版できるかたち「句集スタイル」というスタイル



好評連載


作品

百年百花
 森川大和/津田美音/高橋白道/杉山久子


100年俳句計画作品集 100年の旗手
 ふづき/香雪蘭/蓼蟲


百年琢磨 津川絵理子

雑詠道場 くらむぼんが笑った

初学道場 へたうま仙人

放歌高吟/夏井いつき

新100年への軌跡
 俳句/原/岡戸游士
 評/樫の木/都築まとむ


読み物
Letter from spider garden/ナサニエル・ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
本家 慶弔俳句帖/桃ライス
お芝居観ませんか?/猫正宗
一句一遊情報局
句集の本棚


読者のページ
選句&投句欄 ザ・句会
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




表紙リレーエッセー


春を告げる梅の花
濱田省三

 春の代表的な花といえば桜であり、その華やかさに人々は魅かれる。
 俳句で花とだけいえば、桜の花を指すとされていることからも、それはうかがうことができる。
 一方、私の好みとしては、耳たぶがつめたくなる早春の空気の中で、清楚な香りと、凜とした立姿を見せる梅の花、特に白梅に魅かれてやまない。
 八十も半ばとなり、持病を抱え、弱気になっている私に対し、凜とした立姿の白梅に向うと、省三君、何を弱気になっているのか、しっかりしろと、気合を入れられているように思い、何とか早く気力をとりもどしたい。
 紙数の関係で、私の句集の中から、白梅の句を挙げさせて頂く。

白梅やひかりのごとき鳥の声
白梅のおのが光に冷めゐたる
張りつめし天白梅のひらきそむ


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特集2 mhm通信スペシャル

まる裏報告記2013
第25回 文・写真 暇人 ゲスト執筆 雪花



 今年で第11回を数える「高校生以外のためのまる裏俳句甲子園」、通称「まる裏」。
 今年は29のチームが参加。激戦を制して優勝を勝ち取ったのは、「三日月T」チーム(桜井教人・西連寺ラグナ・亜桜みかり)でした。
 今月はmhm通信を拡大し、大会の運営に当たったmhmメンバーによる報告記をお送りします。


■mhm×facebook まる裏俳句甲子園 暇人

 脳内で本番のシミュレーションをしただけで、当日の朝を迎えた。少し早起きをし当日の道後の様子を撮影した後は子規記念博物館へ。
 講堂にて起動の遅いノートパソコンを立ちあげて、早速メインとなるモバイル回線をチェックすると、心配したとおり電波状況があまり良くない。テザリング可能となった携帯電話も3Gしか使えない。ただそれでもインターネットは使えるのでまずは一安心。
 受付開始時刻が近づいたため受付へ。一般受付はおなじみSさんと美人社長が担当。私は広告受付に。毎年何か問題が生じる受付だが今年は大したトラブルは発生せず終了。
 いよいよ、午後からの本戦に出場する8チームを決める予選の句会ライブに突入。エントリーは29チーム。中には最強俳句キッズ集団や、俳句甲子園OBOGメンバーの姿も。今年の司会は、「俳句王国」で司会を務めていたことでもおなじみ、板倉卓人氏。
 予選の席題は「はい」の読みが入った句。仮名でも漢字でもOK。5分間の作句時間が鍵を握る。
 facebookでは若干のタイムラグは発生しながらも、会場の様子を随時発信。ただ、相も変わらず通信状況が不安定。
 投句が出揃ったところで、組長と板倉卓人氏による「まだまだ俳人(1点)」「まあまあ俳人(2点)」「そこそこ俳人(3点)」「あんたは俳人(4点)」の4段階仕分けへ。元俳句王国司会者と毒舌俳人の組み合わせは、観ていて面白く、かつテンポ良く進んでいき、「あんたは俳人」には8句が出揃った。
 その中から最優秀句(5点)に選ばれたのは、チロリンさんの「ふくしまも片仮名となり灰の雪」。
 その後、チームの合計得点順およびトランプによる抽選で本戦に進出する8チームが選出された。

本戦進出チーム
10点
 恋満ちる渚
  (恋衣・みちる・なぎさ)
 ガラポン
  (美香・なゝ・ソラト)
9点
 チームじゃこ天
  (かのこ・更紗・めろ)
 ぴとり
  (ピアノフォルテ・とりとり・理酔)
 さえずりパー組
  (天玲・睦・まとむ)
 さえずりグー組
  (さち・ふじばかま・瑞木)
8点(抽選により2チーム進出)
 三日月T
  (桜井教人・西蓮寺ラグナ・亜桜みかり)
 こねこのとも
  (ともぞう・小木さん・ねこ端石)

 残念ながら最強俳句キッズ軍団はここで脱落。来年こそはぜひ午後からも姿を見せて大人を負かしてほしい。
 休憩時間前に発表された本戦の兼題は、一回戦「伊佐爾波神社」、準決勝戦「結」。そして決勝戦の兼題は例年どおり「雪」。締切の12時半まで当日撮影の伊佐爾波神社の様子がスクリーンに映し出される。果たして良句は出来たのかどうか?
 さてfacebookのほうでは着々と「イイネ」を押してくださるメンバーが増加。ありがたい反面、本戦で実施するfacebook上での企画の結果が上手く反映されるか心配に。アタフタしている間に午後の部の開始時間に。

 13時、午後の部開始。4人の審査員紹介に続いて、残り一枠の審査員がfacebook審査員であることが紹介される。前々回のmhm通信で案内できず、急遽定期購読者向けに作成したチラシとブログとで発表した、あのやり方をいよいよ実践に。旗揚げ役は代表のあねご様に託すことに。
 本戦、まずは一回戦がスタート。facebookに対戦両チームの俳句を掲載して投票を募る。しかし何故か投票結果が反映されない。何故?と思った所でタイムアウト。仕方なくあねご代表に事情を説明して旗を託す。出鼻をくじかれた形だが、その後はなんとか改善。リアルタイムに近い形で結果が反映されるようになった。
 facebookでの投票には「クエスチョン」という機能を使った。どちらがいいか選んでいただくと選んだ方の得点棒が伸びる、結果が視覚的にわかるシステムだ。掲載した俳句は現在でも残っているので、今からでもどうぞ一度お試しを。
 途中からは、正人副代表の実況援護も受けてますますfacebook上は賑わう。
 「ぴとり」対「こねこのとも」の試合は、居酒屋で試合をやっているのかと勘違いさせられるほどの、表の俳句甲子園ではあり得ない面白さで、「今のところ会場の盛り上がりっぷりは間違いなく最高の一戦でしたよ」とコメントも。
 そんなこんなで準決勝戦の組み合わせは……

 さえずりパー組 対 ガラポン

 ぴとり 対 三日月T

 この頃にはようやく段取りにも慣れ、時々途切れる回線を復調しながら、試合の模様をfacebookで配信。投票システムにも次第に慣れてきた。
 準決勝の試合の結果、決勝戦は

 ガラポン 対 三日月T

 という、徳島勢と愛媛東予地区勢との対決となった。
 決勝戦の前に、俳句甲子園の第16回大会より公募となったポスターデザインの受賞作品発表と表彰式が行われた。表彰のために登壇したのは、第16回大会より俳句甲子園実行委員長を務めることになった三津浜わたる氏。その後、俳句甲子園一般ボランティア委員長の竜胆さんによる、募金とボランティアへの協力のお願いがあって、いよいよ決勝戦へ。
 先鋒戦は三日月Tが勝利。facebook上でも三日月Tへの投票が多かった。続いて中堅戦。facebook上では三日月Tが優勢だが……結果は三日月Tの勝利! 三日月Tチームの連勝で、優勝が決まった。おそらく東予勢がまる裏を制したのは始めてではないか、とのこと。
 facebookとずっと向き合った一日が終わる。始まる前には、以前の「三津浜吟行会」での反応の低さから心配をしていたが、やってみると意外にも反応が多く、都合で会場に来られなかった方からも感謝の言葉が寄せられた。
 ただ、記事を作っていく上では、もう少し詳細に様子を伝えられていたらと後悔する面もあり、来年度同じ試みを行う場合はもう少し工夫が必要。今年度よりさらに参加者みんなで盛り上げる「まる裏」、そしてmhm×facebookでありたい。
 会場に足を運んで下さった皆様、facebookで参加された皆様、本当にありがとうございました。



■スタッフ体験記 雪花

 私は今年からmhmのメンバーとして『まる裏俳句甲子園』に関わる事になった。俳句やfacebookについてはベテランに任せて、新人スタッフとして関わった事・感想を書きたいと思う。
 スタッフの集合は8時半。mhmのメーンイヴェントの始まりである。慣れない広告を取りにパン屋に行った人も、酒場に通った人も……今日一日皆に楽しい俳句三昧をしてもらう為である。
 私の朝の仕事は弁当係。大声で弁当注文を取る。以前、本戦進出チームには弁当が出ると誤解された事があり、あねご会長がマイクで注意してくれる。発注してある数に対してどれ位注文があるか不安だったが、予定数の注文があり、ほっと一安心。
 会場ではチームの紹介が始まっていて、これがまる裏の楽しみの一つとなっている。ラジオやマガジンで名前だけは知っている人も顔が分かって「オオッ!」と。今年のスターはトリオパンジーズの三ばあちゃん! 来年も待っています。
 今年のまる裏の変化は、司会がやのひろみさんに代わって板倉卓人さんだった事である。やのさんと組長の楽しい掛け合いが聞けないのは寂しいが、パリッとジャケット姿の板倉さんの声で読まれると、俳句もなんと格好良く聞こえる事か。予選審査では組長にバッサバッサと落とされそうなところを、板倉さんにやさしく拾って頂き「板倉さんありがとう」の人も少なからずいたのではないだろうか。
 午後の仕事はタイムキーパー。俳句甲子園のボランティアで経験済みだが、スタッフの人数が足らず一人で務めることになり、責任重大である。ディベートを聞きたいが、聞き入ってタイムを忘れたりすると大変なので我慢、我慢で時計を睨み付ける。
 まる裏を終えて印象に残ったのは、優勝チーム三日月Tの「ぴとりチームと戦いたい。勝ちたいと頑張ってきた。」の言葉。残念だったのは、午前に比べて午後の観客数がちょっと減った事である。一日がかりで大変だとは思うが、俳句甲子園にはない大人の生活や経験があっての句やディベート。ぜひ一日楽しんでほしいと思う。反省会ではチケットの印刷の事などが話し合われ、すでに来年に向けて準備が始まっている。今年の経験を生かし、来年も『まる裏俳句甲子園』を楽しくする為の手伝いをできたらと思う。



■取り組み一覧
【一回戦 席題「伊佐爾波神社」 】

一回戦 第一試合
× 紅 恋満ちる渚
  (恋衣・みちる・なぎさ)
○ 白 さえずりパー組
  (天玲・睦・まとむ)

 先鋒戦
○ 巫女の手の雨の匂いや破魔矢受く
× 秋祭終えて神輿は己が位置

 中堅戦
× 大寒の伊佐爾波神社見上げけり
○ 石段の丸き空白毛皮靴

 大将戦
× ためらわずきざはしおりる孕猫
○ 御降りや巫女ののぼっている脚立

一回戦 第二試合
× 紅 チーム じゃこ天
  (かのこ・更紗・めろ)
○ 白 ガラポン
  (美香・なゝ・ソラト)

 先鋒戦
× 一歩ずつ近づく空や冬木立
○ 果てなきと思ふもの果つ初神籤

 中堅戦
○ 紺青の狛犬の眼や春浅し
× 門前の商家に氷柱売られをり

 大将戦
× 春近し絵馬に触れたる絵馬の角
○ 石段は長し淑気はたちまちに


一回戦 第三試合
○ 紅 ぴとり
  (ピアノフォルテ・とりとり・理酔)
× 白 こねこのとも
  (ともぞう・小木さん・ねこ端石)

 先鋒戦
○ 忘れたき業や枯葉踏む階段
× 坂道や定年まであと三ヶ月返り花

 中堅戦
× 伊佐爾波の社のたうつ虎落笛
○ かわほりや夢乃家遊郭朝日楼

 大将戦
○ 湯けむりに風花とける神社かな
× 初詣できる事はお願いしない


一回戦 第四試合
○ 紅 三日月T
  (桜井教人・西蓮寺ラグナ・亜桜みかり)
× 白 さえずり グー組
  (さち・ふじばかま・瑞木)

 先鋒戦
○ 吉を引くための白息吐ききつて
× 寒の石段登る事実婚解消

 中堅戦
× 耳朶の痒き火照りや初神くじ
○ 鳴りにくき神社の鈴や寒に入る

 大将戦
○ みつしりと冷ゆ石段の巫女の髪
× 石段を登る御利益初手水

【順決勝戦 席題「結」 】

準決勝戦 第一試合
× 紅 さえずり パー組
  (天玲・睦・まとむ)
○ 白 ガラポン
  (美香・なゝ・ソラト)

 先鋒戦
○ 人日の結果の枝を剪り落とす
× 指先のさぐる虚空を結ぶ雪

 中堅戦
× 結い上げて襟巻のこそばゆきかな
○ 一同礼結氷期のはじまりに

 大将戦
× 結氷や温め直す鍋の乳
○ 湯気立てて我生まれたり結氷期

準決勝戦 第二試合

× 紅 ぴとり
  (ピアノフォルテ・とりとり・理酔)
○ 白 三日月T
  (桜井教人・西蓮寺ラグナ・亜桜みかり)

 先鋒戦
× 結氷や薪投げ込むドラム缶
○ 冬銀河気動車重き連結音

 中堅戦
× 新巻や男結びを裁つ鋏
○ 結論は吊革越しの枯木星

 大将戦(披講のみ)
× 結び目を解こうともせず懐手
○ 結審の日の地下鉄や冬帽子

決勝戦 席題「雪」

× 紅 ガラポン
  (美香・なゝ・ソラト)
○ 白 三日月T
  (桜井教人・西蓮寺ラグナ・亜桜みかり)

 先鋒戦
× 銃身に触れ雪片の消へ去りぬ
○ 雪の野や鳥死ねば鳥喰ひに来る

 中堅戦
× 朝の雪からだが少し余りけり
○ 雪の夜の銅貨の錆びる匂いかな

 大将戦(披講のみ)
○ 雪泥濘んで大根おろしのくに
× 粉雪やグランドピアノの深眠り



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特集2

だれもが句集を出版できるかたち「句集スタイル」というスタイル


文 キム・チャンヒ


■はじめに
 先月号の「句集スタイル」の広告は、とても大きな反響がありました。それは「だれもが句集を出版できるかたち」というキャッチコピーの表すとおり、一冊の本として句集を出版することを、他人事ではなく自分のこととして考えることのできる企画だからだと思います。「数十年俳句を続けて、数十万円から百万円以上の費用を作者が負担し、一冊の句集を作る」という既存の句集の作り方に対して、それとは全く異なる句集の作り方として期待されているように思います。

■句集のあるべき姿とは
 一般に句集は、数百部程度しか印刷されません。句集は売れないからです。売れないので、俳句作家が自ら句集制作のお金を工面し、出版社に発注をし、場合によっては自ら売りさばき、それでも売れ残った句集の在庫を作者が抱えるのが常識となっています。句集を出版しても、その制作費を回収できないために、別の仕事で得た収入が句集に費やされます。俳句の出来不出来にかかわらず、その作家の俳句以外での収入が多いか少ないかによって、その俳人の句集が世に出るか出ないかが決まるのが現状です。
 果たしてこういう状況が、豊かな俳句の文化を創る上で、望ましい姿だろうかと疑問を持っていました。
 そこで本誌で企画したのが、「100年の旗手」です。読者による推薦・投票によって、人気のある俳人を育てて、本誌から輩出しようという連載です。ある俳人に500人のファンがつき、その俳人の句集をみんなが買ってくれれば、その俳人は自腹を切らずに句集を発表し続けることができます。多くのファンによって、句集を経済的に支える環境が整えば、もっと健全で多様な俳句の文化を育めるのではないかと考えました。
 2006年6月にスタートした「100年の旗手」は連載から約8年が経ちました。80名近くの俳人が連載をし、現在では、様々な場で活躍をしています。しかし、その中に500人のファンを抱える俳人がいるかと問われれば、もう少し時間を下さいと言うしかありません。「100年の旗手」の次のステージ、「百年百花」の連載が成熟し、俳句作家の新作を待ちわびる読者が育つまでは、もう暫くかかると思われます。

■句集シングルという発想
 しかし、そんな彼らの作品を句集として世に送り出すことも、私たちの大切な仕事です。「100年俳句計画」という精神のもと、500部以上売り切る作家を沢山輩出したいという目標を諦めるわけではありませんが、全く別のアプローチから句集を生み出す方法が必要だとも考えました。
 そこで思いついたのが「句集シングル」という発想です。「シングル」とは、LPレコードに対してシングルレコードのこと。つまり、薄くて小さく、それでいてその形式に意味がある新しい句集の形。ミュージシャンがいきなりアルバムではなく、シングルレコードでデビューするように、俳人がデビューできる最低限の句集の形を提示できれば、作者や読者の負担が少なく、句集を流通させることができるかも知れません。
 そもそも数百部句集を作って、売ることもままならず知り合いに配っているのが現状なら、最初に30部しか作らなくても、需要に応じて増刷ができれば、その句集の社会的な影響に差異はないのではないかと考えました。
 また逆に、人気の句集がすぐに絶版となってしまう現状もあります。最初に数百部しか印刷していない上に、増刷に数十万円かかってしまうのが、その理由です。全体の需要が小さいため、作者も出版社も、増刷によるリスクを背負うのは困難です。作った句集を欲しいと思った人がいつでも買える仕組みを作ることも必要だと考えました。そしてできることなら、100部に満たない部数を売るだけで、作家が制作費を回収できる仕組みにしたいと思いました
 それを解決するには、初期費用と増刷費用を限りなく小さくすればいい。そこで、初期費用の目標を数万円と定め、数十部制作できる仕組みを模索しました。本を小さく薄くすればいくらでも制作費を安くはできます。しかし、それでは句集を買う側の物欲を満たしません。様々な試作品を作り、たどり着いたのが、タテ135ミリ×ヨコ135ミリ、36ページという形です。

■『根雪と記す』の反響
 果たして、この小さな句集が世の中に受け入れられるだろうか? まずは、実際に作って世に問うべきだと思いました。
 そして開催することになったのが、「大人のための句集を作ろう!コンテスト(以下「大人コン」)」。最優秀作品に、この小さな句集の形を採用し、付録として読者全員に配布することにしました。
 第1回「大人コン」の最優秀賞『根雪と記す』(鈴木牛後)は、素晴らしい作品集でした。その作品を入れる器として、この小さな本が本当に相応しいかどうか心配でした。
 しかしその心配は無用でした。多数の方から、「牛後さんと同じ仕様で句集を出したい」という要望を受け、実際に、愛南町のひよこ句会の参加者15名の句集ボックスや松本だりあさんの『海に遊んで』など、この新しい小さな句集の発行を行いました。
 小ロットの印刷は、割高になりがちですが、まとめて印刷することで、コストを下げることができます。
 そこで、同じ大きさ、同じページ数の句集を、半年に一度まとめて印刷することで、「だれもが句集を出版できるかたち」が完成しました。

■新しい句集文化の提案
 この仕組みを使えば、誰もが句集を出すことができ、マルコボ.コムオンラインショップにて、全国どこからでもその句集を手に入れることもでき、人気のある句集となれば永遠に増刷することができます。
 つまり作家は自由に本の形で句集を世に送り出せるということ。そしてその使い方に決まりはありません。自分の想い出をまとめるだけではなく、新たな俳句の挑戦を本にして世に問うことができます。それが例え失敗に終わっても、いくらでも新たにチャレンジできる仕組みが「句集スタイル」です。
 多くの方に「句集スタイル」を体験していただけたら嬉しく思います。


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2012年度 第三期 4回目


「羅然」森川大和

卒業や惜しまずメロンパン焼いて
春鴎の羽の銀色日和かな
ものの芽のひかりにふれたがる日なり
すいすいと寝釈迦の足裏の魚群
二百年泣き続けたる涅槃絵図
浅春や夜を押し返す仏の掌
数万の稚魚の生簀や冴返る
剥がされて春雷留めいる鱗
片栗の地にふれていた蕾の泥
菜の花の見渡すかぎり鋤くつもり
木にふれて鳴る木の記憶春の滝
滝底へ気泡どれにも春空充つ


1982年生まれ。第二回俳句甲子園団体優勝、個人最優秀賞。第一句集『ヤマト19』(マルコボ.コム)。愛媛県立松山東高等学校俳句部顧問。




「立春大吉」津田美音

成人の日のチャーシューのぺらんぺらん
長き名の希臘王や青鷹
冬銀河よその神話も不道徳
隣国や焚火育てる日本海
本件は冬靄のまま出航す
村長の決断高野豆腐五瓲
噴煙のサイレン鶴のさわぐさわぐ
丸刈りの五人石狩鍋たぎる
呉越同舟節分の貴賓室
立春大吉君のえくぼをつくる僕
赤飯の訳淡雪の拾う陰
葉脈を乞う蒼天の余寒かな


香川県さぬき市生まれ。松山市在住20年目。現在小学4年生を受け持つ教員。専門は音楽。
俳号 ピアノフォルテ




「問診」高橋白道

一茶忌や長蛇の列に俄雨
たご蛙自然に出来た岩の穴
アルミ箔ごとに焼芋半分こ
縄跳をしつつ方向変るかな
スモツグの校庭国旗掲揚す
公園の時計正確青写真
主婦のフレームに洗濯挟みかな
息白し使はぬ資格持つてをり
糸のこが思ひ通りに日脚伸ぶ
電熱器予備実験の成功す
職歴の同じ二人や昼炬燵
問診の始りマスク外しけり


1954年生。愛媛県出身。
生物、特に昆虫が好き。




「きつかけ」杉山久子

春星のむかふはことごとくぬれて
きさらぎのかの日踏まれしままの影
猫の足跡バレンタインの日の雪に
バーコード読み取り損ねたる余寒
下萌やらららのところのみ歌ふ
土踏まずそだてむとゆく土筆摘
春の雪フランスパンの上に果て
トイレットペーパーももいろ鳥雲に
囀りを聴かむききみみずきん欲し
白酒をすすめてくるる右大臣
春月や足湯あがりの脚ゆらゆら
ぶらんこを降りるきつかけみつからぬ


1966年生まれ。第二回芝不器男俳句新人賞。句集『春の柩』、『猫の句も借りたい』『鳥と歩く』。




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読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2013年1月号 〜 2013年3月号 3/3回目)


 ひらいてとぢて ふづき

春星を盗る手へ金の紙つぶて
湯にたゆたふ乳房に月のおぼろかな
帯をとく楽屋紅梅大壺に
手鏡に伏せる台本ヒヤシンス
アコーディオンひらいてとぢて鳥の恋
卵溶く春セーターの肘上げて
電話切られてチューリップひらきすぎ
デージーや象の献花へ子らの列
死ねば皆善いひと草団子ころん
八代の系図つばきの蔵に鍵


松山生まれの松山育ち。2007年9月土曜カルチャー入門。二匹の飼い猫のせいで我が家はジャングルのように成りはてましたが、困ったときの句材になってくれています。



 花の雨 香雪蘭

冬の月グラスの縁にひっかかる
虫の穴三つセーター着替えけり
猪撃ちのしっぽ短き犬に餌
足入れてみる鎌風の砂ぼこり
自販機の横の陽だまり小試験
骨密度測る北窓を開く
春めいて奥歯二本を治療中
娘には甘えぬ父や建国記念の日
青ぬたを全て平らげ有識者
英雄の妻は眠らず花の雨


写真部所属。表紙写真も二年間担当。皮肉屋?と思われるふしもあるが実は「平穏無事」がモットー。現在は、山裾の野生児でいたかったのに突然都会に連れて来られた「狼少年ケン」のような心境。早く森に帰って安穏とした生活に戻りたい……。



 きさらぎ 蓼蟲

山腹の白煙猛し節分会
正門のシンメトリーや春日影
春光や影の動かぬ風見鶏
雪残る楼門赤き吉備路かな
春雨や七堂伽藍の砂に滲む
きさらぎの曇り重たしかうもり塚
啓蟄や紆余曲折がありまして
身勝手を言ふ母とゐて草の餅
影映す位牌の余白春燈下
後の名は無量なりけり涅槃西風


焦土ノ余燼未ダ燻ブリヤマヌ頃、伊豫ノ國西條ニ生ル。長ジテ東京ニ遊学スルモ学ヲ遠ザケ遊ニ親シム。一勺ノ酒ヲ分ケ合フ友ヲ得ルモ今ヤ亡ク、一日一合ノ酒ト味噌ト少シノ麦酒ヲ友トシ日夜句作ニ呻吟ス。



次回4月号〜6月号
連載者決定

 10月から12月末までの期間、「この人の作品集を読んでみたい」という気になる俳人を、1人3名まで推薦していただきました。
 その中から推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行い、次回4月号〜5月号までの連載を行うメンバーが決定いたしました。

 野風さん
 日暮屋さん
 笑松さん

 3名の方には4月号から、作品集を連載していただきます。
 お楽しみに!


随時推薦募集中

 次々回連載者の推薦も募集しております。集計期間は3月末までとなります。集計は累積ではなく、毎回新たに集計しています。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。


読者が選ぶ人気俳人!
「100年の旗手」連載者推薦募集

 今求められているのは、読者が読みたいと思う俳句作家。「100年の旗手」は、連載する俳人を、編集室ではなく、読者が選ぶコーナーです。
 「この人の作品集を読んでみたい」と気になる俳人を、1人3名まで推薦してください。その中から、推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行います。
 あなたのお勧めの俳人を是非推薦してください。

 推薦の方法

 「この人の作品集を読んでみたい」という人を3名まで選んで(自薦は不可)、その俳号と活動場所(俳句の缶づめ等)/推薦者ご自身の俳号(本名)/住所/電話番号を明記して、100年俳句計画編集室「作品集推薦」係へ送ってください。ハガキ/FAX/Eメールで受け付けています。Eメールの場合は件名を「作品集推薦」としてください。また、誌上句会インターネット投稿フォームでも受け付けています。(アクセス場所は誌上句会コーナー末を参照してください。)なお、投稿フォームの場合を除き、推薦は他の投稿等とは分けてください。

締切 3月末日

 現在連載している3名の方以外なら、一度連載された方も含め、どなたでも推薦できます。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。


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百年琢磨
先月号の「100年の旗手」に寄せて

いつもの光景に詩がある 津川絵理子

「待春」 蓼蟲
テーブルに荒野ありけり年暮るる
 家のテーブルだろうか。毎日そこにあるものだから気にも留めないのだが、いつもの光景に荒野を見た、というところに詩がある。年の瀬にふと感じる孤独を思わせる。

待春や古き醫院の隷書体
 ときどき隷書体で書かれている看板を見かけることがある。個性的な書体の看板なので、建物全体もどことなく個性的でおしゃれな感じがする。春を待つ気持ちの明るさと響き合う。

朝風や枯山吹を明るうす
 なんでもない朝の風景でありながら、ものを見る眼の確かさを感じた。作者の心象風景でもあるのだろう。


「なづななづな」 ふづき
木枯へ鎖骨を楯として進む
 鎖骨を楯として、の見立てが面白い。そして実感がある。風に向かっていく時に、それを受け止める形の鎖骨の存在を意識する。他の風ではなくて木枯というのが、この句に合っていると思う。鎖骨の固さや骨の白さが木枯と響きあうからだろうか。

象の耳ひなたにひらく御慶かな
 象の耳がはたはたと動いている。それを「ひなたにひらく」と表現した。心が温かくなるような光景である。御慶と相俟って、めでたく明るい印象。

なづななづな猫とはなれてすわる猫
 互いの距離を測りながら少し離れているのが猫という動物のありようなのだ。「なづななづな」がほのぼのと温かい。


「ゆらしたる」 香雪蘭
スノーチェーンと誇らしげな軍手
 スノーチェーンと軍手の取り合わせは作業の光景を思わせるが、手に嵌めた軍手なのか、「誇らしげな軍手」が生き生きと働く手を表現していて面白い。

交番の椅子に破魔矢の二本かな
 なぜこんなところにあるのだろう、誰のものなのか、と想像を掻き立てられる。交番と破魔矢の意外な取り合わせ、何か物語がはじまりそうである。

新春作家放談ゆらしたるピアス
 新進作家の座談会なのか。ちらりと見えるピアスが若々しい。誰もが思い思いに話して活気があるのだが、「ゆらしたる」に気怠さも感じられる。


津川絵理子
1968年生れ。「南風」所属。句集『和音』。平成19年、俳人協会新人賞、角川俳句賞受賞。


読者の感銘句

三月 「テーブルに荒野ありけり年暮るる」蓼蟲。「非通知着信角折れてゐるカーペット」ふづき。「病院の迷路の果ての冬日向」香雪蘭。年末年始の句群、楽しませていただきました。


*その他お便りは、ブログ『マルコボ通信』にて、掲載します。



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 雑詠道場は、「くらむぼんが笑った」か「へたうま仙人」か、どちらかへ3句1セットでの選択投句となります。選が厳しい「くらむぼん」に挑戦するか、必ず一人一句以上選評付きで載る「へたうま仙人」を相手に“巧すぎるのでへたの聖地追放”を目指すか。その選択も楽しんで頂けたらと思います。


雑詠道場 くらむぼんが笑った


夏井いつき選


今月の天
鮫の尾の如く持ち上がれる氷 人日子
 「鮫の尾」から始まる一句は、「鮫」という冬の季語の世界を想起させつつ、中七へ。「〜如く」という比喩で読み手の脳波を揺すりつつ、「持ち上がれる」とは一体なんぞやと思った瞬間、一語の季語「氷」が出現する。なんともまあ、してやられた感満載の一句だが、読み終わってみれば比喩を使った一種の写生として、この場の情景がありありと立ち上がってくる手法が鮮やか。
 虚の季語「鮫」の青灰色の背、白い腹、灰色の海の冷たさは、「如く」という比喩表現をジャンピングボードとして、別の光景へと展開する。氷海あるいは氷湖にて、こんな「氷」を確かに見たかのような追体験をした読者の脳は、嬉々たる詩的満足を覚える。


今月の地
アンモナイトのようなタルトや春浅し とりとり
 まる裏俳句甲子園で松山を訪れた折の吟行句のようだ。「松山城にて」の前書きのある同時投句「甲冑を着るも厚着と言うべきか」の俳味も愉快だが、掲出句「アンモナイトのようなタルト」の比喩も楽しい。季語「春浅し」が取り合わせられた二語のイメージを明るく包括する。

大中小の蒲団干されぬ海の町 春告草
ましぐらにかたまり降るや寒雀 省三
 前句「海の町」を吟行しての一句か。「大中小」という大きさを提示するだけで「蒲団」という季語の光景が描けるのだなあ。冬の陽射しと潮の匂いのする蒲団もいいなあ。
 後句、自宅前の定点観測もまた吟行だ。「寒雀」のさまを「ましぐらにかたまり降るや」と描写できるまで、作者はどれだけの時間を過ごしたのだろう。「降る」の一語の力が見事。

千代紙の赤だけ使ふ日永かな 藍人
タンカーの赤に恋した鯨の子 てんきゅう
 同じ「赤」を使った二句だが、趣きは随分違う。「日永」の気分を「赤だけ使ふ」という行動に託した前句に対し、後句は絵本のような世界。「タンカー」の「赤」という色の美しさに魅せられた「鯨の子」は、どんな冒険を重ねるのだろうか。

死はひとり星澄む刻の冬木立 哲白
 自分の「死」を想起しているのか、誰かの「死」を目の当たりにしての感慨か。「星澄む刻の冬木立」という情景描写の向こうに美しく深い心理的静寂がある。

ホルマリン臭き作業衣雪もよひ 雨月
降る雪や歯根の歪むレントゲン 桜井教人
 「ホルマリン」「レントゲン」のようなカタカナ語を取り合わせた二句。「〜臭き作業衣」の嗅覚的描写が「雪もよひ」の気配を際立て、「歯根の歪む」という視覚的描写が「降る雪や」の詠嘆を支える。

冬麗の金串に刺す牛の心臓 ふづき
霜咲くや肉塊を吊る競りの鐘
 食肉市場にての二句か。中七下五の描写に対して取り合わせる季語の効果が見事。「冬麗」は「金串」と「心臓」を輝かせ、「霜咲くや」は「肉塊」と「鐘」の質感の違いを際立たせる。


餅間や五臓六腑にヘリの音 紅紫
火事あとのほのかに温きトラロープ  大塚めろ
 前句「餅間」は【大正月と小正月の中間。正月8日から14日までをいう】と辞書には解説してあるが、年末に搗いた餅がちょうど無くなるので、この頃にもう一度搗いたりもする。餅を食べ続けてきた「五臓六腑」に「ヘリ」の爆音は重くずっしりと響く。
 後句「トラロープ」は黄色と黒の縞々のロープのことらしい。「火事」という季語を、立入禁止のロープに残る温度で表現した点に工夫がある。

一度なら瞬き二度なら春塵 有朱
 何かが光ったような気がしたけど、「一度なら」ただの「瞬き」、でも「二度なら」それは「春塵」ですよ、という詩的断定が魅力。対句のリズムをうまく使った一句でもある。

霜の土手向かい来る長靴男 青柘榴
 「霜の土手」という場、「向かい来る」という動作、「長靴男」という強引な人物描写。「霜」を踏みしめるザクザクという音も近づいてくる。ぶっきらぼうなリズムにも力がある。

しばし持つ懐炉赤子に触るるまで 鞠月
 「しばし持つ」で何を持っているのかと思えば「懐炉」。寒い戸外から戻ってきた親と「赤子」とのささやかな時間が、こんな季語で切り取られた一句。子育ての現場も俳句の種の宝庫だなあ!


今月の人(じん)
鷹翔ちて波立つ空の無音かな  神楽坂リンダ
等圧線のまたぐ大陸海鼠噛む
火事消して昂り消せぬ詰所かな うに子
雪ふりてつどふ二十歳のかたき空
ひえびえと白き名刺を交換す 朗善
県知事の声を背中に初仕事
天井の翳りのひとつ冬の蝿 じろ
毎日が日向の冬田つづきけり
マフラーの固し記者発表の席 木琴
冬鴎やつらなんにも考えちゃいない
オリオンを蹄に大鵬逝きにけり さち
オーロラの生るる狐の尻尾より
空港の匂ひ連れ帰るマフラー 桜井教人
冬いちご光残して見舞辞す
蝋梅の透けて風なき義士の墓 こぼれ花
ペチカ燃ゆすでに本音の見えており
伊勢海老を飾り漢方製作所 ほろよい
りんご飴ぱりんと齧りお元日
高架下資材置き場の冬の蜂 ポメロ親父
がぢがぢにとことん枯れ果てて芭蕉
一番に明日帰る子の布団干す 不知火
履き物を借りて葱抜く一掴み
水餅をひらりと掬い恙なし ターナー島
大根を拍子木に切り恢復期
行平に清少納言の小豆粥 亜桜みかり
マスクはづすや校内合唱コンクール
寒夜の楽団要石としてチェロ 樫の木
霊山に雪婚の二人に風清し
坂下る銀輪の荷へ火事明り 緑の手
北海の鳥の眼太し柳葉魚群る
立春の四肢の震える麒麟の子 北伊作
自転車のリムに山茶花の憂鬱
中天に石を蹴つたる寒さかな 省三
用足しの尿きらきらと淑気かな
春きざす真珠筏の入江にも なづな
如月のギヤマン細工瑠璃深し
耳よりも少し冷たき耳飾り 権ちゃん
手をかざす薬師の壺や冬日向
波間より船迫り上がる鮪漁 みちる
賞味期限なきウイスキヰ雪しんしん
初蝶や母の膝うへ肩のうへ てん点
みんな口開いています梅日和
春風やおどるおもちゃに立ち止まる  迂叟
竹薮に生れて椿の二十年 大塚めろ
てっぺんのうそつき烏に雪が降る  ぎんなん
牛乳の膜が喉ゆく四日かな とりとり
また月を寒々噛んで兵士かな 親タカ
寒夕焼切り絵のごとく銃持つ兵 哲白
熊見た話ステーキに刺すフォーク 雨月
元気かと走り書あり寒卵 カシオペア
欠けはじむ月をみてゐる雪うさぎ  てんきゅう
便箋を千切る一枚ほどの雪 野風
炭をつぐ観音水のふくふくと あおい
清張の深みに嵌る炬燵かな 人日子
伯林は雪かと短波ラジオ消す 鞠月
蟹越えに日射しはあれど片しぐれ 三竜
巫女の踏む静かなる舞枇杷の花 コナン
ポン菓子の音の一発寒つばき 浜田節
しぐるるやこつくりさんのよく当る  鯉城
口笛のロックンロール三日過ぐ 未貫
マスク投げ打ち窓口の五時 しんじゅ
冬波にゆらぐバックミラーごしの雲  一走人
巫女の衣を干して六日の社務所裏 ふづき
避寒せるサムイ島にて稲荷寿司 青蛙
永き日や指名手配の写真× もね
冬日直に当たりてものみへぬ雑多な裏  紅紫
声かけるこの手袋の持主に のり茶づけ
舶来の手袋眺め雑貨店 和音
冬晴の波の如くに諭されり 蓮睡
冬晴に繋がれているアドバルン 一心堂
獏枕夫が離れてゆくといふ よひら
猟期終え草立ちなおる獣道 お手玉
山茶花をこころに灯す帰り道 まんぷく
春めくや息を吸い込むアコーディオン  まくわ
大寒や一番空気の澄むところ  ゆまるばたこ
月の輪を持ちし熊なりいっそ哀し  古殿七草
いいことあった日の冬夕日はでかい  空山


今月の並選
無念なる帰国の棺へ冬のバラ 郁
夜間飛行冬満月へ向かう旅
成人日世界に少年兵士あり
大寒に甦る名企業戦士 かのん
日脚伸ぶひとりなわとび女の子
巳年明く母の孤独に寄り添ひて
蝶番の片方はずれ鶏つるむ さわらび
断捨離の本開くなり着ぶくれて
駒を打つ父在りし日の障子かな
北吹くや一人乗る地震体験車 あらた
悪い気はしないけれども毛糸編む
それぞれの事情抱へて雪は降る
形見なる母の冬服小さかり ゆき
春を待つ隣のみよちゃん呼びに行く
握らせし吾子に三粒の福の豆
昂りをもて余しおり手毬唄 えりぶどん
マフラーの上からなら締めてもいいよ
羽布団をんなのうへに降り積もる
初日の出嬰の一歯を見つけたり 八木ふみ
足なえの曾祖母に会えり冬の虹
冬暖し嬰のやんちゃをほめる婆
新年や顔に書かれている決意 八十八
かけ声をかけてふとんを出でにけり
たすき受け走る右手に冬の海
甘噛みの耳朶の味して冬苺 元旦
降る雪や君の背骨を目でなぞる
寒椿落ちてシーツの捩れかな
バケットを買って帰るよ春の夜 ペプチド
雪見つつたべてしまひぬおかき餅
あんぱんを食べてしまった春の雪
湯豆腐や期限間近を道づれに カラ嵩ハル
我生くる水仙皆を驚かす
日脚伸ぶ庭に天使の現はるる
歓声と炎と灰とどんど焼 樹朋
雪吊や雪無き枝の縄揺るる
大寒や白磁の壷のモニュメント
御仏の胎は暗闇陽炎へる レモングラス
失せし数珠香炉に置かれ寒の明け
大寒や炎の尖る和蝋燭 すえきち
風邪の子の特別メニュー盆に乗せ
擦り減りし靴また履きて山笑ふ ちろりん
体脂肪知りて羽織りし春ショール
竜の玉青き星座のひとしづく 鯉城
太陽を称へる言葉初日の出
木枯らしや耳をふさいで夜を急ぐ 有朱
火星でもきっと言うだろ青踏むと
おほかたの予想裏切る春一番 もね
笹鳴や午後の紅茶にミルク添え
モーツァルトの短調寒風つのる 青蛙
人の日や天地となれる日を待たん
紅き月黒き雪雲連れ去れり 青柘榴
雨降って味も素っ気も大晦日
全てなくして生きんとす冬の月 松ぼっくり
冬の空港記憶なくせし師の背なか
風花の信号待ちの二分間 のり茶づけ
母在れば何時でも娘藪入す
白鷺の悴みて思ふ事ありや 古殿七草
天主堂出で春浅き海を見ぬ
冬帽子魔法使いの見習い中 浜田節
丸き風とらえて獄の梅真白
枯芙蓉琴一式よさようなら えつの
成人の日大丸跡地にユートピア
白足袋の汚れをよそに顔を塗り  四万十のおいさん
火事がためお七は恋に目覚しか
自分自身のやうに愛せるか雪礫 しんじゅ
パワースポットのごと猫は炬燵へ
あの人に嘘はつけない龍の玉 迂叟
人日やたったひとりの大浴場
寒山やだれかに見られているような 親タカ
だれもかれも何処かに消える初天神
稜線の険し冬雲動かざる 春告草
淑気満つ日付変へたる秒針よ
鴛鴦の息殺す日もあるさうな あおい
源平の鄙びた湯宿燗の酒
釣り人の一人冬空ひとりじめ 一走人
降りしきる雪チビッコマラソン佳境
吾がための反貧困や桃の花 未貫
社問研てふヘルメット去年今年
愛情に負担はあるか子安貝 三竜
禅寺のケヤキの門扉松かざり
春近し給湯室に出る人事 藍人
カステラの底のザラメに日脚伸ぶ
冬終わる息子供養の涅槃像 ぴいす
空白む犬と待ちたる初日の出
紅や半音高し始業の音 西条の針屋さん
冬の海三角波を重ねおり
冬草は風と踊りて道の端 アンリルカ
音楽とともにきたるは冬の精
あの人の遺言なのか春一番 魔心地
帰宅メール返事は買物表の冬
ほんにまあ菊戴の愛らしく エノコロちゃん
北風を背中で押して前進す
冬満月流るる雲の白く見え 輝女
おしゃべりをする人形と春炬燵
元日の塾の帰りを待つ車 蓮睡
鯱の尾びれにゆるみつばくらめ
風花や白馬に消えし友の声 一心堂
しんしんと雪降る夜の寝息かな
独り居や葉のなき枝に風の花 よひら
湯婆がくまの着ぐるみ纏ひけり
福寿草咲けば私の誕生日 お手玉
おままごと福寿草はたまご色
東北の春はきらいと友の言う ぎんなん
大根の切らるる音もいさぎよし
誇らしげに三輪車こぐ冬帽子 空山
折り合いが付いたら帰る冬の海
小包に土の香りや春近し まくわ
調律の春のピアノに触れるたび
椿落つ明日私は旅に出る ゆまるばたこ
あなたまで届くだろうか冬の星
寒晴の探鳥ひとりよそ見して 亜桜みかり
結願の納経終えし冬菫 カシオペア
昏昏と枯蟷螂の白昼夢 てんきゅう
額を突く雪白となる境界線 野風
映画館の闇出で街の淑気かな 樫の木
四日切る肉にくいこむ白き糸 うに子
ジュピターの水の衛星淑気満つ 緑の手
松かさの開閉左右する湿度 人日子
金縷梅に差し替えられた明の星 北伊作
線香の先に風花三回忌 コナン
春光やだんだら坂の天の門へ なづな
素話の強き訛や榾明り 哲白
歩く背を少し屈めて寒に入る 権ちゃん
自動ドア誰もが踏んで行く真冬 朗善
遠火事や補助線引いて消して引く 雨月
木菟の眼の裏返る刻アリス祭 みちる
春愁や細胞診の針三たび てん点
初雀は柿吾はコーンポタージュ 紅紫
今年また姉さんの雪とける こぼれ花
小寒の空星たちの物語 ほろよい
落ちてくる雪の重さに似た涙 和音
海にまた穴のありけり冬怒濤 じろ
唇にカスバの女寒の月 さち
悪童の石に壊るる初氷 鞠月
大根の忘れたころに味の染む 大塚めろ
黒ボクといふ土巨き大根抜く ポメロ親父
艶やかな葉に寄り添いし枇杷の花 まんぷく
着ぶくれてなおも小さい母の老い 不知火
椿落つ遥か未来の潮騒へ 神楽坂リンダ


ちょっくらアドバイス講座

元旦 一句の中で新旧混在というのは、相当難しい技だとは思いますが、句によって使い分けるというのはありなのでしょうか。と、常々悶々としていたら、「ザ・句会」での組長の句にぶち当たりました。いつもは、新仮名を使っておられるのに、今回は「蝦蛄仙人掌一鉢あれが詫びだつたといふか」という句です。(中略) 今月の組長の句を見て、また新旧の仮名遣いで悶々としそうです(笑)。そんなことウジウジせずに、思うがままに新旧両刀使えばいいのかもしれませんがね。いつか特集のネタにでもしてください。

 まず、元旦さんの質問の冒頭「一句の中で新旧混在というのは、相当難しい技だとは思いますが」についてですが、歴史的仮名遣い(旧仮名)と現代仮名遣い(新仮名)が一句において併用されることはありません。どちらの仮名遣いを使うかは、作者が主体的に選択すべき問題ではありますが、一句の中で混在することはあり得ないのです。句歴が長い人の中にも、表記(仮名遣い)と文体を混同しているケースをよくみかけます。以下、二つの違いを記しておきます。

1:「文語」「口語」は文体の違いであり、「歴史的仮名遣い」「現代仮名遣い」は表記の違いです。

 例 「○○に似ている」ことを表現する助動詞の場合
 文語 「ごとし」
口語 「ようだ」
 
 例 口語「ようだ」を二つの仮名遣いで書き分けてみると…
 歴史的仮名遣い 「やうだ」
 現代仮名遣い  「ようだ」

2: 表記(仮名遣い)と文体は全く違った概念なので、次の組み合わせが考えられます。

 文語+歴史的仮名遣い
 文語+現代仮名遣い 
口語+歴史的仮名遣い
 口語+現代仮名遣い

3:一句における「文語」「口語」の混 在は許容されがちですが、「歴史的仮名遣い」「現代仮名遣い」の混在は作者の不勉強を曝け出すものです。

 本誌20ページ、今月の「放歌高吟」には文語口語の句が入り混じっていますが、試みに歴史的仮名遣いで書いてみました。この違いが頭の中で整理できない人も多いかもしれませんが、ひとまず勉強がてら、ご参照下さい。元旦さんのご提案の通り、いつか特集として解説する機会があればいいですね!



【雑詠句募集】
投句三句/俳号(本名)/〒住所/電話番号と、「○月末日締切分」を明記して、編集室「くらむぼんが笑った」または「へたうま仙人」宛にお送りください。
締切は毎月末日《必着》です。
※末日を過ぎたものについては、翌月分とさせていただきます。
※ひと月に複数の投句があった場合は、一番最後に届いた投句のみを有効とさせていただきます。同一内容での二重投句はご遠慮ください!
 投句は誌上句会宛のハガキ&メールとは別でお願いします。
雑詠専用Eメールアドレス zatsuei@marukobo.com
インターネットや携帯電話からも投句できます。
http://www.marukobo.com/kuramubon/


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初学道場 へたうま仙人


原案:大塚めろ
文責:編集室

 さまざまな卒業の季節、みなさまいかがお過ごしかの? へたうまの世界もなかなか熾烈ぢゃが、決して卒業を目指さず、究極のへたうま魂を体に染み込ませて下され。
 今月ものけぞる佳作の襲来ぢゃ。

カスタードクリーム春の色やと定めたい KIYOAKIFILM
わしと言う鷲でなければかすとなれ KIYOAKIFILM
 果てしなく突き進む孤高の句にたじろいでおるぞ。潔すぎるのか情けなさ過ぎるのか、全くへたうまの職人ぢゃ。

湯築掘水凍りつつ梅開く 小犀
冬の朝踏みしめ走る石手川 小犀
 リアルな報告かたぢけない。地元密着タウン誌的句が泣かせるぞ。どの地名を入れても成り立つ所が眼目ぢゃ。

初釣りや所問い合う神の浦 だなえ
 釣れている場所を聞いているのか、釣仲間の所在を聞いているのか、どちらにせよ、初釣と神の浦がめでたいぞ。

不満など言はじ皿には梨一つ ケンケン
マラソンで汗の滴る平和とか ケンケン
 季節をものともしないこの姿勢には頭が下がるぞ。へたうまの中のへたうまの領域に、ついに足を踏み入れたの。

気がむけば猫てかいおる日向ぼこ 柊つばき
 いかにもな日向ぼこでほのぼのぢゃ。迷惑そうな猫の顔がさらに日向ぼこぢゃ。平和の一極集中でずるいぞ。

そしてまた勝手に思い込むマスク 小木さん
綿虫と思ったら雪であります 小木さん
 時間の経過がようわかるぞ。「そしてまた」「思ったら」の以前の行動がおかしくもあり、哀しくもあるぞ。

白椿染まるを忘れ闇に咲く おせろ
 闇にぼーぅと開いている白椿が妖艶ぢゃ。果たして何色に染まりたかったのか、今度椿に直接聞いてみて下され。



 以下、全て追放!

焚火の輪ジャンバーに焦げ跡ひとつ たっ君
 焚火もままならぬ世ぢゃが、焦げ跡が郷愁を呼ぶのう。焚火の輪の人たちの顔が鶯餅に見えてくる風追放ぢゃ!

病院の跡地鎮める春の雪 未々
 「鎮める」が少し饒舌ぢゃが、病院の跡地と春の雪との出会いにビビっと来るとは隅に置けん。下萌風追放!

厳寒の息さらさらと音がする ひでこ
 乾燥した息がダイヤモンドダストのように輝いておるのう。こんな色彩と音が溢れる句は龍天に登るか風追放!

風花や頑張り賞をあげましょう 洋子
 頑張り賞は自分自身へのご褒美かのう。明るくてそれでいて儚い風花への投影は、山の向こうは春ふう追放!


 あらま、今月も追放者を出してしもうた。ワシとした事が……。ま、出したものはしょうがない。不幸にも追放の皆様は、他のステージに入学されても、この場で培ったへたうま精神をいかんなく発揮し、更に究極の句を作ってくだされ。遠慮は禁物ぢゃ!
 皆様、くれぐれも油断召されるなよ。


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放歌高吟


春へ春へ
夏井いつき

春ショールたたみ診察室2へと
尿溜める袋に春寒の凝る
流感や宇宙の色の水薬
水菜しやりしやり息うつくしくいたしませう
白魚におくれて水の笑ひけり
白魚跳ねた地球自転をふと忘れた
まだ笑はざる山脈がその奥に
梅はみな青銅色に咲きたがる
神と鳥のみ知る島の芽吹きかな
幾万羽のブリキの海猫が発てる音
(前書き:NHKラジオ第一放送『オトナの補習授業』終了 / シンガーソングライター谷村奈南さんへ)
春へ春へリズムの走り出す速度
(前書き:俳優勝村政信さんへ)
言霊を従へ春のハムレット


 二年間続いた番組『オトナの補習授業』(NHKラジオ第一放送)の最終回は「俳句」。最初の一年は、声優古谷徹さん・シンガーソングライター熊木杏里ちゃんと、二年目は俳優勝村政信さんをナビゲーターとして、シンガーソングライター谷村奈南ちゃんと共に愉快な時間を過ごした。心に残る楽しい仕事であった。
 最後の収録のスタジオ。勝村さんが怪しい髭を生やしている。「なにそれ?」と尋ねると、今芝居をしているのだという。そう言われてみると、勝村さんの芝居にも、奈南ちゃんのコンサートにも行ったことがないなあと思う。偶々その夜のスケジュールが空いていたので、軽い気持ちで切り出す。「今夜の芝居、行けばすぐチケット買えるってわけにはいかんのよね?」すると、奈南ちゃんも言う。「私も観たい!」
 俳句オバサンの要望に動いたというよりは、奈南ちゃんの微笑に突き動かされたに違いないが、「ううーむ」と唸っていた勝村さん、無理してくれたんだなあ……追って「チケットなんとかなりました!」との電話が入る。おおおー、と喜び勇んで渋谷文化村シアターコクーンへ繰り出す。
 『祈りと怪物〜ウィルヴィルの三姉妹』の演出が蜷川幸雄さんだと知ったのは、劇場に貼ってあるポスターを見て。勝村さんがドン・ガラスという悪党爺の役であることを知ったのは、パンフレットを買ってから。突然の観劇吟行は、めくるめく興奮となって押し寄せてきた。

 蜂たちの合唱隊(コロス)うぉんうぉんコロス殺す
 神の木の芽吹きてことごとく金色
 粛清や冬のダチュラは歌わない
 荒星に剥き出されたる女の尻
 その青き髭や木枯色の襤褸

 四時間半の熱狂。頭の中を飛び回るナイフのような詩片。終演の興奮に魘される人波に押されつつ、私たちも歩き出した。「お兄さん、徒者ぢゃなかったね」と私。「はい、凄いです……私、もっともっともっとやらなきゃ」と呟く奈南ちゃん。
 最後の「木枯色」は、悪党ドン・ガラスに捧げる一句。表現という怪物と格闘し続ける凄みは、春へ春へと季節を動かす大きな力にも似ている。倦むことのない表現への切望。祈りのごとき感情。渦のような欲求に、脳髄がじんじんと悦ぶ。




夏井いつき公式ブログ「夏井いつきの100年俳句日記」

http://100nenhaiku.marukobo.com/


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新 100年の軌跡


第6回


冒険の口笛 原

蛇穴に足を取られて一歩あと
誰も皆アメンボなりや春の泥
おもちゃ箱目指せ、唱えて一の午
花冷えに小指の爪の透き通る
飛び石のド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、復活祭
春橙に影の円舞の広くなり
くもくもに目尻を下げて山笑ふ
ゆっくりとおかっぱ蒸して春炬燵
ポポポってこの指とまれ葱坊主!
寝ころんで土踏まずの上に山吹
春眠にしみじみと根の伸び渡る
逆剥けにちちんぷいぷい木の芽和え
犬を飼いたいと泣く子に風船を
真夜中にホウレンソウの進化して
チェリーベアふたつ揺らして風光る



俳号「原」。愛大俳句研究会所属2回生。短歌歴は4年。俳句歴は1年目。




狩 岡戸游士

網の目の如く夜川の水涸れず
幾瀬より寄る大寒の気配かな
冬城の漆喰壁や鉄パイプ
腰曲げて足かきむしる寒の猿
無垢なるは茎太きまで蕪一つ
頭から湯冷めするとや農家族
垂直に振って飛ばせるアイスホッケー
水鳥の首の長さに持ち場あり
電柱の錆や湿地に寒肥やし
隣り合ふままに実となる藪柑子
葉の裏に光燻る冬苺
鰓どれも正して潤目鰯焼く
枯野にも風吹くところ立つところ
押せるまま越す雲根や冬の浜
見ることもなく猪の狩られゆく


岡戸游士
1993年生まれ。愛媛県松山市中島出身。中学生の時に興味を持ち始めて以来、のんびりと続けています。現在は愛大俳句研究会を中心にのびのびと活動させてもらっています。




「独創」と「独善」 樫の木

飛び石のド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、復活祭 原
 「復活祭」はキリスト教の祝日ですが同時に春の到来を祝う気分があります。上昇音程から、飛び石を飛ぶうちに段々に勢いが付く様子、明るい気分が見えます。

逆剥けにちちんぷいぷい木の芽和え 原
 「ちちんぷいぷい」の明るさが良いです。木の芽和えの香りの元の山椒は漢方薬でもあります。子供に木の芽和えを食べさせようとする母親を想起しました。

葉の裏に光燻る冬苺 岡戸游士
 「光燻る」が巧みな表現です。小さな冬苺の茎や葉にあるうぶ毛が光を捉えているのですが、日の光がまだ強くはないので白く淡い輝きなのでしょう。

鰓どれも正して潤目鰯焼く 岡戸游士
 「襟を正して」のようで面白い表現です。硬い表現から鰯は生や開きではなく丸干しで、真直ぐに並べられているのでしょう。「潤目」の字面にペーソスがあります。

 今回の作品は正直なところ分かりにくい句や表現が多かったです。が、お二人には「独創」を求め、「独善」に陥らず、どんどんチャレンジしてもらいたいと思います。


1965年愛媛県生まれ。大分県在住の家具職人。第5回選評大賞優秀賞。



表題 都築まとむ

 原さんの「冒険の口笛」とは楽しさを予感させる表題。

ポポポってこの指とまれ葱坊主! 原

 下五の後の「!」初めて見る俳句だ。そうだ、冒険だ。「ポポポ」は葱坊主の並ぶ様子。それを見た時思わず口をついて出た言葉が「この指とまれ」なのだろう。作者が葱坊主自身になったかのような俳句。どの葱坊主にとまろうか……。すっかり作者の術中にはまってしまった。冒険の口笛が聞こえた気がした。

見ることもなく猪の狩られゆく 岡戸游士

 岡戸さんは表題が「狩」なのでこの句を核にしたかったのだろう。「見ることもなく」の少し説明的なところが惜しまれる。知らないところで、相当数の猪が狩られている事実を知ってしまった作者。「猪の狩られゆく」この表現が詩的。狩られゆく猪に思いを馳せる。作者にとって猪とはどんな存在だったのか。血なまぐさい「狩」を、物語のような俳句に仕上げるとは……。作者の新しい一面を見たような気がする。


1961年愛媛県八幡浜市生まれ。自分の句歴11年に驚くばかり。第3回選評大賞優秀賞。


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Letter from spider garden


ナサニエル・ローゼン(訳:朗善)
松山市在住の世界的チェリスト ナサニエル・ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.11

Happy wedding plans
Doves mate for life, I am told
Is winter still here?

春を呼ぶなかれ比翼の鳩たちよ

(直訳)
幸福な結婚の計画と
生涯の伴侶を見つけた鳩たちよ
私は問いたい
まだもう少し冬だよね?



We try to stay warm and keep our blood flowing. Chizu and I run our dog Kabochan up to the top of Hoshioka Mountain, meeting strangers and breathing good air. We want to ski a lot before the snow disappears. Physical training is a big part of our life: cello, ballet, swimming, and Japanese language. Is all of that physical?

われわれは務めて、血のめぐりをよく暖かく過ごす。たとえばチヅと僕は、星岡山の頂上まで、犬のかぼちゃんを走らせる。そこで色んな人に会い、よい空気を吸う。
雪が解ける前に、出来るだけたくさんスキーに行きたいな。 肉体訓練は、僕らの生活の大部分を占める。チェロ、バレエ、水泳、日本語の勉強さえ、皆身体にいいものだよね?

訳:朗善



ナサニエル・ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2011年より松山市在住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第24話
「亡き王女のためのパヴァーヌ」 ザ・L・A・4

 松山の地元大学のゴルフ部に所属したことで、我がジャズ道が始まった。学生ゴルファーのバイトといえばキャディーなのだが、お坊ちゃまタイプの部員は少なかったので、移動はもっぱら郊外電車だった。大きなキャディーバッグを背負って車両に乗り込む。客と車掌の目を気にしながら送迎車が待つ某ゴルフ場の最寄り駅へ。18ホールのバイトが終わるとコースに出て無料で練習ラウンドができた。

貝寄風や冷めやすき吾のマグカップ ねこ端石

 バイトの後によく立ち寄ったのがジャズ喫茶「エイティエイト」である。部の先輩にジャズ好きが多く、僕たちは自然にジャズに親しんだ。店は松山市駅前の雑居ビル4階にあり、エレベーターホールにはキャディーバック放置可的スペース。広い店内では適度な音量と分厚いカップに注がれたコーヒーがゴルフ場の紫外線に晒された身体を癒してくれた。

タンポポを踏んだ音符が飛び散った マイマイ

 店のオーディオ装置は“適度な音量”にしておくにはもったいない代物で、各ユニットは全てJBL製。低域はバックロードホーンに38センチメートルウーハーを埋め込み、高域がツィーター2405、特に中域の“蜂の巣ホーン”とドライバー375の組み合わせが凄かった。
 だが「ダイレクト・カット盤試聴会」の日は、この装置の実力を露わにしてくれる数少ない機会だった。76年に我が国のジャズ・レーベル「イースト・ウィンド」が果敢に挑んでくれたレコーディングは、ディスク製作過程からテープを省いて原盤に直接音を刻み込むという究極のアナログ再生である。
 僕が入店した時、ターンテーブルに乗っていたレコード盤は「ザ・ペンタゴン」。ごりっとしたクリフォード・ジョーダンのテナーサックスが、クリアに響くピアノトリオの中から浮き上がってくる。レイ・マンティーラが叩くコンガも生々しく、確かに夢の原音再生に一歩も二歩も近づいた感がこのレコードにはあった。
 そして、さらに驚いたのが次のアルバム「亡き王女のためのパヴァーヌ」である。シェリー・マンのドラムスがドスパシッで、レイ・ブラウンのベースがドゥンディンと。バド・シャンクのフルートがフォーヒュリルで、ローリンド・アルメイダのアコースティック・ギターがティントゥロン、と音の粒子が飛び散った。

風光る孔雀の羽根に波の色 ドクトルバンブー

 演奏は「ザ・ロサンゼルス・フォア」。孔雀のジャケットが演奏とシンクロしていて秀逸である。この典型的ジャケット句は5曲目、ボサノヴァのWAVE(波)を引用し、隠し味としている。

家路遥かに早春アフタービート 蛇頭

 孔雀の姉妹盤として、L・A・4のダイレクト・カッティング第2弾「家路」がある。聴きものは、やはりドヴォルザークのタイトル曲だ。この曲は作者が3年間のアメリカ滞在中に書いた。で、黒人霊歌の影響を受けているという説がある。室内音楽的雰囲気から突然ジャズ・リズムに変わるところのスリル感は、さすが名手L・A・4!!と唸らせてくれる。が、素材(曲)の黒さも大いにこれを後押ししてくれている。



http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


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ラクゴキゴ


第24話 文/俳句 らくさぶろう

『宿替え』
〜 愛すべきあわてもの 〜

あらすじ
 あわてものの夫としっかりした妻。今日はその夫婦の引越しの日。夫は大きな風呂敷を広げ、「これがあったら何でも持っていけるぞ。」と意気込み、妻にあれこれと口で指図をする。
 こたつのやぐらから漬物の石、裁縫箱やらオマル、竹とんぼまで風呂敷に包み、さあ出発と思ったが荷物はビクともしない。
 「竹とんぼを取ってくれ」「オマルを取れ」と言うが何を取ってもビクともしない荷物、よく見れば荷物と家の敷居を一緒にくくってしまっていたようだ。
 大さわぎしつつも何とか新しい家にたどり着いたものの、家にはほうきをかける釘がないので釘を打ってくれと妻にたのまれる夫。
 「偉そうに言うてもオナゴや、釘の一本もよう打たん……」とおさまった調子で釘を打つが、いらぬことをペラペラとしゃべりながら打ったもので、釘の頭まで壁へ打ち込んでしまう。おまけに打ったのは八寸もある瓦用の釘だった。
 隣家に釘の先が出ているのは間違いないので妻に怒られながら隣家にあやまりに行くが、「お宅へ釘が出てませんか?」と飛びこんだ家は、隣ではなく向かいの家。
 今度はちゃんと隣家に行き、さがしてみたら、なんと仏壇の観音様の首のすぐ横から釘が出ているではないか。
 隣家の主はびっくりして「あんた、これ見てみなはれ!」
 男は「うわ、こまった……」
 主「何が?」
 男「明日からここまでほうきをかけに来んならん。」



 上方では「宿替え」、江戸では「粗忽の釘」と題して演じられる噺です。
 にぎやかなあわてものの男が登場し、笑う場面も多いのでよく寄席に出てきます。
 上方では、故桂枝雀師が大爆笑落語に仕上げて演じておられました。
 口ではエラそうなことを言いながらも、根っからのあわてものの男が嫁さんに叱られつつ展開する噺を、オーバーアクションを交えてドタバタ劇が30分強。観てる方も涙が出るほど笑わされ、私も生で観たことがありますが、一席終わったら笑い疲れするほどでした。
 ただ、テレビで放送があったとき、途中で風呂敷をくくる帯のシーンを枝雀師は噺に入れ忘れ、後で持ち上げようとする時に自分で気付き、「あんた、さいぜん(先程)風呂敷に帯かけるの忘れたんとちがうか?」と妻にセリフとして言わせ、爆笑を誘ったのを観たことがあります。
 ひょっとしてあれ自体演出だったのか?と、うがった見方もできますが、どっちにせよ枝雀落語のすごさを見せつけられた一席でした。いやあ、この主人公のあわてものの男は、私の好きなキャラクターベスト5に入りますねえ。何ともいえないかわいらしさがあるというか。結局、男なんてエラそうなこと言いながら奥さんの手のひらの上で転がされてるくらいの方がうまくいくんでしょう。

引っ越しの蕎麦がのびてる猫柳


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本家慶弔俳句帳帖 第54回


文 桃ライス

「美人は飽きられません」
 「美人は3日で飽きる」という伝説を覆す調査結果が出た。
 ネット情報によると、戦略PR会社のブルーカレント・ジャパンが、10代〜50代の男性256人を対象とした調査を行い、 その結果「美人は3日で飽きる」が都市伝説だったとの結論を発表した。
 調査によると、どの年代の男性も美人好きな人が圧倒的に多く、 「美人」は14.44年飽きられず、「ブサイク」は7.06年で飽きるのだという。そして、メイクが上手で素肌のケアができていない“美人ブサイク”が3.37年で飽きられるとし、 メイクが下手で素肌が綺麗な“ブサイク美人”は 10.15年飽きられないのだという。

ふらここやお次の人と代わりなさい


「駆け落ち夫婦は、永遠に飽きません」
 80年以上前に駆け落ちしたカップルが、「米国で最も長く結婚している夫婦」に選ばれた。
 ネット情報によると、アメリカのジョン・ベターさんとアンさんは元々結婚するはずではなかったという。彼女の父親は別の男性とアンさんを結婚させる予定でいた。が、2人は親に反対されたまま駆け落ちして結婚をした。
 80年以上経った今も、2人は一緒に幸せに暮らしている。そしてこのたびキリスト教系の団体『Worldwide Marriage Encounter』によって 「米国で最も長く結婚している夫婦」に認定された。
 2人は米紙ニューヨークデイリーニューズに、「いくつかのシンプルなルール以外に結婚生活を長続きさせる秘訣はない」と語った。
 ジョンさんは「日々を満足して、身の丈に合った暮らしをしているだけです。流れに逆らわない事ですよ」と語った。
 ジョンさんは101歳、アンさんは97歳。フェアフィールドの海岸の家に住んでいる。5人の子供、14人の孫、16人の曾孫に恵まれた。

春雨や反対の人もう居ない


桃ライス…自分のことをワシとよぶ婦人グループ会員


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お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第九回 『ミュージカル楽園』
[京楽座公演、作・演出・ジェームス三木、出演・中西和久、渋沢やこ、井上思麻、金井修、他、'13年1月22日、ひめぎんホール(県民文化会館)サブホール]

エノケンのとんぼも斯くや寒の月

 さて、昭和初期に活躍した喜劇王エノケンを知っておられる方は、本誌読者にはどのくらいいらっしゃるのでしょう? 無論、私だって大して知りゃしません。それでも私にとってこの芝居は、随分、懐かしいものでした。
 というのも、(残念ながら私は観ていないのですが)やはり昭和初期を舞台にした『上海バンスキング』という芝居がありました。(松山市民劇場では1983年に上演)その劇中歌を収録したLPが家にはあり、私が多感な頃(笑)出演者の吉田日出子が歌う当時のジャズが一日中流れていたのでした。そのLPが奏でていたのと同じ曲―『私の青空』『ダイナ』『月光価千金』―が、歌詞こそ違え、本作でも歌われていたのです。成る程、魔都上海では吉田日出子がやや物憂げに、東京一の繁華街浅草では中西和久がアチャラカに、同じ歌を歌っていたのだなあと、時空の混線した感慨を抱いたりして……。エノケン率いる劇団カジノ・フォーリーの踊り子達のラインダンスの足が揃ってなかったりも御愛嬌、当時はこんな感じで盛り上がってたのかなっと、微笑ましく観てしまいました。(上から目線!?)
 こんな観方は邪道かもしれませんが、何、構やしません。劇中、新劇の雄・千田是也との悶着のくだり件が、エノケン(=中西)の「純粋芸術でなく大衆芸能でいくのだ」という宣言なら、より時代やら個人の思い入れやらとかと懇ろなのが大衆芸能じゃないかしら、とか思ったりもするもので。(単純すぎかな。)
 さて、本稿は、本作のパンフに掲載されていた句の引用で締めたいと思います。往時の面影が少しは偲ばれるのではないでしょうか。

新緑のカジノフォーリーレビューかな 久保田万太郎



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。次回公演は表紙裏の広告をご覧ください。



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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成25年1月度


【注連飾】
翻筋斗打つ縄をなだめて注連飾 亜桜みかり
どう見ても幾分長き注連飾 不知火
あばら家を許して清き注連飾 まっことマンデー
注連飾水面たいらに船溜まり 亀
まだ潮の匂いのつかぬ注連飾 紅紫
鋼切る機械に小さき注連飾 鍛冶屋
注連飾太し納車のバンパーに ほろよい
吉日を待つや納戸の注連飾 野風
注連飾朝の点呼の消防署 樫の木
注連飾明けゆく沖にほのめく金 菜々枝

《天》
注連飾つけて閉ざせる仕込み蔵 カナリヤ


【小豆粥】
塩加減決まらぬ小豆粥こぼす 亜桜みかり
小豆粥ほほえむように炊き上がる なでしこ
参拝の列にふるまう小豆粥 ポメロ親父
境内にでんと大鍋小豆粥 ほろよい
参拝を終え大鍋の小豆粥 烏天狗
境内の鹿の集まる小豆粥 山野遊造
石鎚の御札供える小豆粥 ばくだん
小豆粥神と食する朝餉かな 釈然
小豆粥ゆんべの酒の吐息かな 伊佐
地球儀の日本の色の小豆粥 もも
木と紙の家こそ佳かり小豆粥 菜々枝

《天》
小豆粥天狗の鼻の伸びる夢 マーペー


【鶏初めて交む】
透きとおる朝刊の音鶏初めて交む 釈然
鶏初めて交む朝の足音やってくる 西条の針屋さん
空無音や鶏初めて交む 桜里
音澄み行き鶏初めて交む マーペー
鶏初めて交み新月尖りおり 日暮屋
水汲むや鶏交み初む朝ぼらけ 七草
鶏初めて交む空に飛行船 理酔
鶏の初めて交む薬酒飲む 笑松
水は低きへ鶏初めて交む 野風
鶏初めて交む地の裏では戦 伊佐
鶏初めて交むコーランの混じる風 さち
鶏初めて交む砂金のごとく川の星 ドクトルバンブー
鶏初めて交む峰々は白衣光り 菜々枝

《天》
鶏初めて交む勤行静かに響きあう 藤実


【スケート】
まず転ぶこと教わりてスケートす たかこ
スケートの輪にいる父の手を離し まくわ
吾子入れてスケート場の流れだす さわらび
白髪の滑り出づスケート軽し のり茶づけ
皇太子スケート場に現れ 大洲・山百合
スケートの上手初恋は過去形 睦
スケートリンク青春ノイズだらけ 殻嵩はるお
PTA会長作のスケート用リンク さち
校庭リンクスケートの靴の百 あおい
スケートの貸し靴硬く重く濡れ ちいち
スケートの終わりて駄馬のごと我ら 樫の木
スケートはラフマニノフを刻みけり 藤実
スケートを舞ひ終ゆ祈るかたちにて 更紗

《天》
スケートを報じニュースの華やげり 八十八


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

3月3日
土佐水木【仲春/植物】
マンサク科の落葉低木。高知県に自生することからこの名がある。ミズキ科の水木とは異なる品種。

嫁菜飯【仲春/人事】
野菊の一種である嫁菜の若芽を茹でて細く切り、薄塩で炊いたご飯に混ぜたもの。

3月17日
暖か【三春/時候】
季節が春になったことで感じられる、温暖な陽気のこと。季語としては、季節の移ろいに関わらない恒常的な暖(温)かさのことはいわない。

寒食【仲春/人事】
古く中国では、清明節の前日を「寒食節」として、火気を用いず、冷たいものを食べた。

3月31日
桜狩【晩春/人事】
桜の花を求めてたずね歩くこと。

鰆【晩春/動物】
サバ科の海水魚。体長は1mほどで細長く、背面に青褐色の斑紋がある。


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句集の本棚





『女のうしろで』らふ亜沙弥 著

 203句すべてが恋の句だと思われる。バレンタインデーに熟読。恋とは無縁。
 あの時の顔
  いのこずちつけて男の一泊す
  むらさきの袋に男をしまう夏
 しっぽが生えて
  道元の話いつしかになる
  どうだっていいじゃないかと鵙猛る
 揺らしてごらん
  真ん中はきっと淋しいパイナップル
  忘年会皿に残りし骨五本
 女ですもの
  昼顔や第一夫人は憎むべし
  どくだみを抜けというから抜いている
  夏の星私の中の散らかって
 句集のカバーの女という字が「ナク」に見えてきた。命がけの恋を知っている人は幸せ。むらさきに染まる。
(書評:恋衣)

火の会(2012年初版)
定価 2000円(税別)
全140ページ



『だぶだぶの服』大石雄鬼 著

 まずタイトルが巧み。肩の力を抜いてうんうんと頷きながら読みすすむ。
  舟虫の化石にならぬため走る
  怪獣のなかから夏風邪の男
  厨房に胴のみ見えてゐる子規忌
  下半身省略されて案山子佇つ
 自分も作者の目となってその景を見ているような一体感につつまれる。
  青年のやうな茎から曼珠沙華
  月出でて内気な急須ありにけり
  ががんぼのふつと埃になりかかる
  自転車を嫌がる向きにして晩春
 「事実の追及による面白さ、独自の発想による面白さ」が両立している句の連続。
  夏痩せて小学校のなかとほる
  夏痩せてメリーゴーランドと沈む
 だぶだぶの服を着てあちこち歩いてみたくなった。「陸」編集長。
(書評:更紗)

ふらんす堂(2012年初版)
定価 2400円(税別)
全198ページ



『乗船券』金子敦 著

  カステラの黄の弾力に春立ちぬ
  夏に入るがつんと堅き花林糖
  のりたまをざくざく振つて豊の秋
 食べ物の句が沢山並ぶ句集である。カステラのぽよんとした弾力に、花林糖の黒くて甘い歯応えに、のりたまの海苔と卵の黄色に、遠足の前の晩みたいにテンションが上がる。
  しやぼん玉弾けて僕がゐなくなる
  虹の根をこれから掘りにゆくところ
  流星の尾をまへに渚まで
  月の船の乗船券を渡さるる
 しゃぼん玉が弾けるたび写っている僕が消える切なさ、虹の根や流星の尾をまえに行こうとする冒険心、手にした月の船の乗船券。大人ならではのワクワク感が読者にも伝わって楽しい。「出航」所属。第四句集。
(書評:なぎさ)

ふらんす堂(2012年初版)
定価 2190円(税別)
全193ページ



このコーナーで紹介した句集は、100年俳句計画編集室にて閲覧できます。


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選句&投句欄 ザ 句会


 このコーナーは読者による誌上句会。先月号に掲載された投句への、選句&選評(互選)を掲載しています。不肖編集室一同も参加しています。

第181回兼題
 「SF」をテーマに
 出題者 むめもさん

 今月の互選『鰯の歯ぎしり』

11点句
ぜぶら、瑞木、こ、たま、キミミキ、もんきち、雪花、青蛙、雨月、理酔、兼光選
征服をたくらむカリフラワーである とりとり
  ぜぶら  命がけで「カリフラワー」になろうとするその姿は、春を待つ私に、愛と希望と勇気をくれる。ふふっ、この句は貰ったぜ。ごめんねルパン。
  瑞木  勢いのついたカリフラワーの太り方は確かに恐い……。
  こ  しめじとえのきだけも、いっしょに征服準備中みたいで、こまったな。
  たま  カリフラワーって脳の形! していると思いません。スーパーより世界征服? なかなかユニークですね
  キミミキ  カリフラワーは何星から来たのか。征服を企んでいるかと思うと、サラダを食べるとき、カリフラワーが憎憎しいです。
  もんきち  こんな見近なところにSFの世界があったなんて驚きです。カリフラワーのモコモコが不気味に世界を征服しようとしている。作者の新鮮な視点に一票。
  雪花  そうか。あのなまっ白くて凸凹したカリフラワーは征服を企んでいたのか。どうりで好きになれない奴だ。
  青蛙  「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」の吸血植物を彷彿とさせる句ですね。オードリー2は濃緑の化け物でしたが、白い花球から血が滴り落ちる図を想像すると、怖いですね。
  雨月  ムクムクと巨大化するカリフラワーが想像されて面白い。
  理酔  カリフラワーは大好きな冬の野菜だが、あの姿形に不気味さが漂う、まるで脳ミソの肥大した宇宙生物の様ではないか! 奴らは野菜のふりをして地球征服を企んでいるのだ。だから食っちまおう、むしゃむしゃ。
  兼光  いやあ困った。「SF」がテーマなので何かのSF小説や映画を想像もしたが結局SFってフィクションなのだから何でもありか……と。この句はカリフラワーが宇宙人の頭を想像させもするし、「征服」と言う言葉からSFの古典を想像させもする。まあ所詮SFだから。と分からない選評。

9点句
コナン、えつの、柊つばき、KIYOAKI FILM、迂叟、元旦、むめも、よひら、チャンヒ選
ひょっとして私がクローン雪達磨 めろ
  コナン  もしかして私もクローン? そんなことはないか。雪達磨とクローンがとってもいい感じ。
  えつの  言葉の使い方が面白いです。
  柊つばき  世の中真実がわかりません。でも知らないでいることが幸せなこともあるのです。
  KIYOAKI FILM  実に面白い。発想が柔らかで好きです。
  迂叟  雪達磨を見ていて、つい自分が誰かのクローンではないかと……? ありそうななさそうな面白い話ですね。
  元旦  ん、あちこち、不細工な奴がいるぞ。間抜け面だけど、どっかで見たことあるような顔じゃないか? あいつは俺か? いや俺があいつか? ……ん、もう昼か。やけに暑いぞ。汗びっしょり。ヤバイ、体が融けてきたぞ。あ……ぁ……
  むめも  楽しい句がいっぱいで迷ったのですが…クローンは自身がクローンて知らないよね…そのシュールな発想が恐くて好きです。
  よひら  小さい頃、ひょっとして私以外の人はみんな宇宙人かも……と真剣に考えてました。親も妹も友達も……。もしかして私がクローン!? 懐かしく思い出しました。
  チャンヒ  小説にいろいろなジャンルがあるように、俳句にも「SF俳句」があっていい。なので、単にSFを素材にしているだけの句は無視。俳句的なセンスを持ちながら、ちゃんと「SF俳句」として成立しているこの句に一票。

8点句
遊人、松ぼっくり、朗善、たかこ、一走人、南骨、駝楽、三月選
人類の最後の一人日向ぼこ みちる
  遊人  臨場感あり、SFの世界であって欲しいと願うばかりです。
  松ぼっくり  とても静かな日に、ひとりで日向ぼこ等していると、ふとこうした空想に耽る気分、共感します。まさにSFですね!
  朗善  猫主宰の句会も好き、近づいて来る雪だるまも怖くて迷ったが、これはやっぱうまい。日向ぼこってこんな感じだ。
  たかこ  とても寂しい日向ぼっこですね。お腹もぺこぺこかもしれない。それでも何もかも達観している感じもします。
  一走人  誰もいなくなった地球で、あの頃はよかった。同級生の○○ちゃんは星になったのだろうか? それとも海の底深く転生のチャンスをうかがっているのか、と思わせるような一句。
  南骨  SFにありそうな情景であり、どこかとぼけている。
  駝楽  そういえばどこかリアルにありそうで、何とも言えない、ぞーっと感に惹かれました。
  三月  もし自分が人類最後の一人だったら……誰しも想像したことがあるのでは。何か非現実な自分を鳥瞰する感覚が「日向ぼこ」にはあると思う。

5点句
ちろりん、ひでこ、親タカ、魔心地、こまりやま選
昼間より窓辺に近き雪だるま 更紗
  ちろりん  夜になるとこちらへ移動している。ホラーでしょうか? ファンタジーでしょうか? または実感としてありそうです。
  ひでこ  人恋しい雪だるまです。とてもファンタスティック。
  親タカ  雪だるまって駆動力あるからね、メルヘン的えすえふ!
  魔心地  目をこすり、首をひねりながら、何度も外を確認。雪だるまへの情がそう感じさせるのか。はたまた……。
  こまりやま  雪だるまさん動いた? 窓からお家をのぞく雪だるまを想像してほのぼのしました。

四万十のおいさん、ケンケン、ゆき、牛後、青柘榴選
忘年会誰も名前を知らぬ人 朗善
  四万十のおいさん  一昔以前は大忘年会ばかりで、この句状態は日常茶飯事、いやぁお世話になりましてお持ち帰りも、アハハ、久し振りに思い出させてくれました、感謝乾杯
  ケンケン  ある意味、ミステリアスですね。
  ゆき  とっても怖いなあと思いました。異次元の世界。夢であってほしいと現実だったら思うでしょうね。おみごと。
  牛後   本当に知らないならSF(というよりホラー?)だが、知ってるけど知らないというならかなりわびしい。どっちなのか気になります。
  青柘榴  誰とは、その他大勢のことなのか、たった一人のことなのか、自分の立ち位置で変わってしまう。前者の場合、発狂しそうになるであろう。後者の場合、さざ波のようにヒソヒソ話が、これもゾッとする。

4点句
真日瑠、ソラト、お手玉、空山選
手袋の片われいつも旅に出る すな恵
  真日瑠  いつも片方の手袋が消えるということですが私は手袋は宇宙に旅に出たのかなーとおもいましたっ。
  ソラト   来世でめぐり合うこともありなむ的な。
  お手玉  それはダメです片われなんて。手袋でも足袋でも必ず一つに纏めておいて下さい。
  空山  私の場合は靴下くんが雲隠れします。

鞠月、めろ、あき、破障子選
雪はやがて最後のロボット兵士を 猫ふぐ
  鞠月  胸に迫ってくるものがあり、この前後のストーリーを読みたくなりました。きっと哀しい物語なんだろうな。終わりを「ロボット兵士を」とぶっつり切ったことが、とても効果的だったと思います。
  めろ  ついにロボット兵士までも……という事は人間はとっくにいない世界……きっと黒い雪の世界なのでしょう。
  あき  どんなに科学が進歩しても宇宙の摂理には飲み込まれてしまうという物語。この難しいテーマで詩もありなおかつ季語「雪」が見事です。
  破障子  過去も現在も未来も冬将軍が一番強いということで、SFにつきもののカタルシスが美しい一句です。

くう、カラ嵩ハル、しのたん、安選
ドアを開ければ若き日の母と梅 チャンヒ
  くう  私も若き日の凜と清々しい母に逢いたいです。梅の香が切なく心にキュッと泌みました。
  カラ嵩ハル  どこでもドアか、タイムマシーンか、はたまた別の星か? 会ってみたい人がたくさんいる。
  しのたん  亡くしてわかる事が多いけど、こうなったらいいなと思う、温かい嬉しい楽しいと想う扉が欲しいですね。
  安  梅が、若き日の母のいるSFの世界に連れていってくれるのでしょうか。凛とした姿、香り、風情も伝わってきます。

3点句
西条の針屋さん、明日嘉、和音選
メーテルを乗せし列車や冬銀河 輝女
  西条の針屋さん  まさに見たい夢ですね。
  明日嘉  分かりやすく、きれいな映像が浮かんだのでいただきました。
  和音  実はアニメ自体は一度も見たことはありませんが、わかりやすく、すっきりSFを表現されていると思いました。

カシオペア、レモングラス、多久美選
火星まで行ったり来たりのお正月 洋子
  カシオペア  火星まで行ったり来たりしてみたい! 宇宙人の友達も出来るかな。
  レモングラス  宇宙から見る地球の美しさを宇宙飛行士から聞く度に思う、宇宙で実感したいものだとおもう、句のように日常化すればなあ。
  多久美  最近では正月は海外でという家庭がありますが、近い将来正月は宇宙でという家庭があるかも知れませんね。

紫水晶、ほろよい、一心堂選
氷海や月より下ろす縄梯子 雨月
  紫水晶  囁くような波、ぱりぱりと凍る月の光。かすかに揺れる縄梯子。絵になりますね。できれば、やなせたかしさんに、『詩とメルヘン』の表紙風に、描いてほしいなあ。
  ほろよい   氷の海に月光……冷え冷えとした感じと縄梯子から降りて来そうな宇宙人の感じがよくあっていると感じました。
  一心堂  とても幻想的で好きな句です、ひょっとして流氷の下に居るクリオネは月の生物だった…色々想像して楽しませて頂きました。

清流子、洋子、輝女選
オリオンへ行く約束のプロポーズ 浜田節
  清流子  半世紀前ごろの村々にあった。全手動のパチンコ屋、映画館を思い出しました。
  洋子  いいなあ、次回は私もそんなプロポーズ受けてみたいわ♪
  輝女  結婚したらオリオンに連れて行くなんてなんてロマンティックな殺し文句! 即、ハイと言ってしまいそうな……。

ぐみ、まほろ、正人選
いそぎんちゃくの空想科学的な赤 いつき
  ぐみ  いそぎんちゃくにSFを感じるなんておもしろいなあと思いました。
  まほろ  不自然なまでに感じる色をしている種もあるが、その色を「空想化学的」と表現することで、色だけでなく、あの見た目も手伝って、SFの世界から飛び出してきた存在のように思えてくる。
  正人  たしかにあの色はSFっぽい。「らしさ」という意味ではこれもSFをテーマにしてると言える……のか!?

2点句
ぎんなん、れんげ畑選
柿熟れて猿蟹合戦始まれり お手玉
  ぎんなん  考えてみれば、昔話はほとんどがSFの世界かもしれませんね。空想できるのは人間の特権。優しく楽しいSFがいいですね。
  れんげ畑  お伽話の世界が眼前に繰り広げられるのではないかと思うと、ワクワク、そして少し怖いような気がします。

人日子、ターナー島選
SFの煤の臭ひや弥生尽 樹朋
  人日子  年度末の感情をよく表しています。
  ターナー島  謎めいた所へ踏み込む時の、ゾワゾワとする煤の臭いに共感。4月尽ではなく、春が尽きる感じの「弥生尽」なのが良い。

浜田節、さかえ選
満月はかごめかごめの輪の中へ ケンケン
  浜田節  幼い頃の思い出か。「SF」といふテーマから想像すると、小さい子供達のつなぐ手の輪にだんだんと満月が大きくなっていく様な。いやこれはSFでなくても、とても素適な一句ですね。
  さかえ  かごめの唄をうたいながら輪の中へ一人入れて回って遊んだ昭和初期の想い出です。

亜桜みかり、ペプチド選
理科室にラベンダーの香残りをり 八木ふみ
  亜桜みかり  まさに私にとっての初SF……タイムトラベラーですね。
  ペプチド  ラベンダーの香りに出会うたびに、時をかける少女に会えそうな気持ちにさせてくれる。

1点句
星冴ゆるタイムトラベル二十四時 ぐみ
  八木ふみ  SFと言えばタイムトラベル。星空に時空間を移動した感じがします。

「SF」やローマ字読めぬ木ノ葉髪 さかえ
  信野  私も同じです。手をつなぎましょう。

あの角であなたは消えた枇杷の花 青柘榴
  杉山久子  とんでもないカリフラワーや里帰りが地球と火星の行き帰りというのも笑えたが、子供の頃見ていたNHKの「少年ドラマシリーズ」の世界を彷彿とさせるようなこの切ない系の「枇杷の花」にやられた。

可能大UF紛れる流星群 生糸
  たっ君  UFがいるはずと考えて見上げた流星群の中にやはりUFが……! 可能大の空を、もしかしたら、また明日もUFが見られるかもしんない!

冬の草宇宙船へとハイヒール だりあ
  権ちゃん  ハイヒールを履いて宇宙船に乗り込む日ももうすぐでしょう。

ゆく年やタイムマシーンは故障中 犬鈴
  逆ベッカム  タイムマシーン……永遠のテーマですよね。100年いや30年後の句会ライブ……組長がんばっているのかな。

愛猫が主宰の句会冬館 破障子
  藍人  ハインラインの「夏への扉」に出てくるピートでしょうか。けんかっ早いピートが主宰する句会なんて想像するだけで楽しくなっちゃいますね。しかも、冬館だなんて。いい!

渚にて霜夜の火星年代記 元旦
  いつき  上五「渚にて」の効果がイマイチ説明できないのだが、「霜夜」と「火星年代記」という二つ言葉の出会いに惹かれた。美しい言葉の火花。

願い事しないでほうき星食べた ぜぶら
  空  あらあ、食べちゃったんですか。さすが好奇心旺盛な俳人魂。で、どんなお味でした?

こたつ猫SFよりは時代劇 もんきち
  ポメロ親父  現実世界の中でSFを捉えている視点に感心しました。

UFOを見たのは本当夏祭り 柊つばき
  八十八  同じような体験があります。UFOを見たことを家族に告げたら、「酔っぱらっていたけんよ。」と一笑に付されました。間違いなくUF0だったと思っています。

冬の月覗けば我の後頭部 空
  猫ふぐ  一読してくだらないと思ったが、じんわりと恐ろしさが迫ってきた。

SFは20世紀に置いてきた レモングラス
  おせろ  小説より奇怪な事の起こる今日この頃。SF小説の出番はないのかも知れません。宇宙へ夢膨らませた20世紀が懐かしいですね。

冬月や未来の我の手紙来る のり茶づけ
  未々  いやー、怖いです。その手紙、読みたいような、読みたくないような。やはり、読まずにおきましょう。

E・Tもアトムも好きな寒卵 しのたん
  不知火  よい子が好きな寒卵。もちろんガッチャマンやウルトラマン達も外せません。

猿人の抛りし骨や冬山河 南骨
  蓼蟲  映画「2001年宇宙の旅」のオープニングで一部の猿人が拾った骨を武器にする。そして武器を持ったものが勝つ。戦争をやめない人類に対するキューブリックの皮肉だろう。そこに句想を得た作者に脱帽。

風呂吹や死ねぬ人間出現す 権ちゃん
  樹朋  寿命がきても死ねぬ人間の出現は、まさに超SFです。考えただけでも恐怖です。それに風呂吹大根を取り合わせたことで救われました。俳味を感じます。

寒鴉9と 3/4 番線 逆ベッカム
  みちる  存在しないはずの9と4分の3番線からは、実は異次元の世界へ向かう列車が発車する。そのホームでは、寒鴉が不気味な声をあげている……というSF的シチュエーションを詠んだ句であることが即座に分かりました。

冬銀河の釣り人猫バスで帰る むめも
  七草  ファンタジーですね。猫バスの窓から、釣った星をそっと撒いて、綺麗な流れ星を見せて欲しいですね。

現代こそまるでSFクリスマス ぎんなん
  まんぷく  キリストが人々を導いた頃からみれば我々はまさしく空想科学の世界を生きている。しかし、こころを病む人が増えているのは何故? そんな事を考えさせられる句です。

銀漢や途中下車する宇宙船 多久美
  だりあ  宇宙船であちこち星巡りをしたいです。銀漢の季語が最適。

引き出しに宇宙人飼う春の宵 迂叟
  ザッパー  笑った(笑笑笑)。

冬晴れの四次元ポケット干す日向 不知火
  てんきゅう  科学がいかに進もうと、宇宙がいかに近づこうと、日常のチマチマした楽しみは手放したくないですね。

今月の無点くん
青写真アトムの世界すぐそこに おせろ
寡黙なるネモ船長の冬帽子 理酔
火星には火星の小さき日向ぼこ 牛後
12月待っても来ないウルトラマン たかこ
冬麗の背の鱗の待つ島へ 兼光
24時パラッドクスQ炬燵の巣 キミミキ
猿の惑星票を数える暮の秋 西条の針屋さん
念ずればどこでもドアや去年今年 未々
ETの指とわがゆび冬燈 ターナー島
月あかくサンタが街へやってくる こてぞう
パラレルワールドは寒月の向こう側 瑞木
ポインセチアSF映画は3D エノコロちゃん
銀河丸窓宇宙ねずみをつまみ上げ 三月
SFの小説読んで冬りんご 真日瑠
寒昴ジューンベヌルはいかに見て  四万十のおいさん
火星発真赤なマーチ降誕祭 一走人
恐竜の背にまたがりて月二つ 青蛙
狛犬に跨り噂の月旅行 魔心地
風邪寝より目覚めてみれば蟻の街 杉山久子
照紅葉宇宙船から眺めたし えつの
中空にうかぶヤマトや初御空 ほろよい
魔法とは高度な科学冬萌へり 正人
御神渡耳を澄まして読む左京 松ぼっくり
巨大人型兵器に馬力星の冴ゆ まほろ
冬空にエイトマンの声聞こえるか まんぷく
待ち合わせ場所はプルート星冴ゆる よひら
うち上がる魚の泪と荒星と 亜桜みかり
初富士の噴煙拝む車窓かな 駝楽
眠りの船を熾したり冬銀河 ペプチド
同級会ウラシマ効果の花競ふ 蓼蟲
頭垂れ洗って頂戴冬北 KIYOAKI FILM
裸木のプロファイルしてSF作家 親タカ
星凍てて障子一重の未来かな ちろりん
大寒の惑星に降り立てば猿 もね
解きあかすメビウスの明日冬銀河 山ぐるぐる
宇宙人となりし現し世冬銀河 七草
時間よ止まれミクロの旅へ大銀河 コナン
就活の基本は火星冬銀河 ザッパー
年の空スターウォーズの永遠に 人日子
天凍つる生命の今やビーカーに たま
時駆ける少女も熟女に冬すみれ 藍人
アトム号月面経由オリオン行 カラ嵩ハル
どこでもドア妻と漕ぎ出す冬銀河 八十八
冬銀河爆ぜて千億光年の彼方より 一心堂
地の奥の白き世界や枯木星  まとむ
振振の分析R2−D2 あき
五万回廻るシナリオ今朝の冬 紗蘭
狐火燃ゆ独りは恐し貞子見る カシオペア
冬籠り笑ひ貌しか映らぬ鏡 遊人
冬北斗アトムに教えらるる事 雪花
今朝はドラえもんの吐く息も白い ポメロ親父




第182回兼題
「婚」の字を含んだ句 または 「婚」をテーマに
出題者 朗善さん

1 既婚者の欄に印や桜草
2 堅く契りし仲なのに春の虹
3 花菜漬結婚記念日忘れをり
4 鳥雲に教会騒然掠奪婚
5 臘梅や五十路超えたる角隠し
6 婚礼を生業とし冬に入る
7 婚礼前夜荷にしのばせる雛あられ
8 許婚位置決めかねし置炬燵
9 婚礼の門出祝うや梅開く
10 淡雪や桜色した角隠し
11 バリィさんの求婚ダンス春を呼ぶ
12 太き眉揃ふ弥生の婚の宴
13 節分や鬼も内なり新家庭
14 婚儀果つ春塵のロールスロイス
15 堂々と婚衣なびかせ飛ぶや春
16 ×1に二度の婚あり春霞
17 未婚晩婚何も変わらじ除夜の鐘
18 婚の字で出来る熟語や冴返る
19 葬祭に連なる文字や蝶生る
20 恋猫や婚前交渉死語となり
21 婚約の遠き日開く桜漬
22 婚前のアスパラガスでありにけり
23 結婚てふ薔薇抱く胸に棘の傷
24 婚活後薔薇一輪に込めし愛
25 すれちがふ婚礼家具の春リボン
26 五万回廻るシナリオ今朝の冬
27 神社にて婚衣をまとう寒すずめ
28 秋天の神の御前の契り哉
29 書初に婚といふ字を書いてみる
30 雉鳴きて妻問ひ婚の朝の来ぬ
31 婚姻の予約百通春手紙
32 その魚の婚姻色の青こそ春
33 婚活や春告鳥の声遠く
34 甥っこの婚に歯ぎしりねこやなぎ
35 風花や胸にたためる祝婚歌
36 銀婚の夫のみたてや春日傘
37 相撲部屋あげて婚活福は内
38 婚活し芽生え嬉しや春兆し
39 就活も婚活もせず夢を追い
40 晩婚や束ねて春の霞草
41 銀婚のヴェールいっぱいの春日
42 頬白が鳴くいつからが晩婚か
43 裏山に婚羽を拾ふ不器男の忌
44 春夕焼空に婚咽色ありぬ
45 風光る結婚式の招待状
46 啓蟄や二つの人生合わさりて
47 街コンで巡り会う春揺れている
48 宣誓書読み上ぐねこやなぎふくらみぬ
49 花嫁の父の孤独や春の風邪
50 風花や何事もなく結婚記念の日
51 婚の荷に祖母の着物のちゃんちゃんこ
52 麗かや婚の荷届く大安日
53 ひと月の経ちし婚家や亀の鳴く
54 風鳥や婚衣拡げる春の恋
55 婚活の成功したらし猫の恋
56 婚活や咳のひとつはイエスノー
57 朝朗ら結婚したいティディベア
58 婚活というはやりもの春の雪
59 離婚した男ばかりが春炬燵
60 バラ咲いて婚前胸の痛みけり
61 祝婚歌の高らか菜の花蝶と化す
62 婚の荷のほどかれぬまま春の宵
63 春の日に飛び立つ勇気水けって
64 一度なら夜這ひといふ手も山笑ふ
65 結婚のドレスは手縫い桃の花
66 春炬燵未婚の欄に太き丸
67 晩婚のニュース解説ふきのとう
68 婚約を切り出せぬままなごり雪
69 ちぎるとふきもちのゆくへ落椿
70 婚家には婚家のにおい春浅し
71 婚活の動機単なる冬嫌い
72 確認は指輪の名前花鎮め
73 冬の豊後水道悪阻のハネムーン
74 合わせれば160歳婚の春
75 結婚離婚再婚そして春が来た
76 嫁ぎ娘の部屋に残さる紙ふうせん
77 冬銀河ダイヤモンド婚まで数え
78 将来が気になる手相結婚線
79 婚外と但し書ある猫の恋
80 蝶二羽が菜の花巡りハネムーン
81 晩婚化スマホが夫と春火鉢
82 梅の香や結婚式招待状
83 春ショール婚姻色の女たち
84 初夢や年の差婚が泡と消え
85 婚礼の一行すすみ百千鳥
86 寒中の肩さらしあふ披露宴
87 鬼役は晩婚の母蕪食む
88 神々の乱婚の譜や春の潮
89 雛祭赤線足した結婚線
90 新婚やぐわと鍋噴く雪催い
91 霜柱とけゆく午後や結婚す
92 ふりそでの婚活おとめ冬椿
93 巣立鳥また新婚になる二人
94 遅刻常習の彼の朗報六月婚
95 晩婚のきつねとたぬき梅ふふむ
96 ひかり増す空に耀く祝婚歌
97 銀婚式前に離婚よ梅咲いた


マガジン化10年目突入と「ザ・句会」終了のお知らせ
 本誌は2013年6月号をもってマガジン化10年目に突入します。10年目の誌面リニューアルに伴い「ザ・句会」は終了、新たな誌面をお届けしていく予定です。より刺激的に投句を楽しんでいただける仕組を用意していますのでお楽しみに!!



めざせ!大漁旗(180号〜185号)
 誌上句会「ザ 句会『鰯の歯ぎしり』」では、選んでくれた人の数をすべて集計し、半年間で最も点数の多い方が「大漁旗」を獲得します。大漁旗を得た方は「最新十句」を本誌誌上にて発表することができます。

〈参加方法〉
 1 「今月の投句」から好きな句を選ぶ。(選句)
 2  その句の感想を書く。(選評)
 ※1〜2、俳号(本名)、〒住所、電話番号を明記して、編集室「ザ 句会」宛にお送りください。一人一句まで。選句は番号と俳句を共に記入して下さい。
  番号はお間違えなく!

  今回の締切は3月7日(木)必着です。
 Eメール宛先 kukai@marukobo.com
 インターネットや携帯電話から下記の場所にアクセスしていただくと、専用のフォームを使って簡単に投句&選句ができます。
 http://www.marukobo.com/kukai/


【現在の捕れ高】

18点
なゝ

15点
とりとり

14点
みちる

12点
いつき
権ちゃん

11点
めろ
親タカ

10点
更紗
空山

9点
瑞木
あき
チャンヒ
猫ふぐ

8点
カラ嵩ハル


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100年俳句計画 掲示板


 組長&編集長&組員さんの出演執筆一覧

テレビ/ラジオ
NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  3月12日(火)11時40分〜

NHKラジオ第一(四国四県域)
 「四国おはようネットワーク」内『俳句ネットワーク』
  3月23日(土)7時43分〜50分
投句受付中!
夏井いつき生電話出演

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FM愛媛
 バニラビーンズの俳句っちゃお〜!
 毎週日曜日深夜0時〜0時30分
※夏井いつきが俳句指南で出演

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「鶯餅・卒業」(3月3日〆)
   「石鹸玉」(3月17日〆)
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)・住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム・チャンヒのイラストポストカードが贈られます。



執筆
松山市の俳句サイト「俳句ポスト365」
http://haikutown.jp/post/
 毎週水曜締切/翌週金曜結果発表

Pioneer Sound Lab. 音俳句
http://pioneer.jp/soundlab/
  ウェブサイト上に組長の選評が毎日一つ発表されます。投句も受け付けています。

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

愛媛新聞
 「集まれ俳句キッズ」毎週土曜日

愛媛新聞(キム チャンヒ)
 「ヘンデス俳談」毎月第一土曜日 兼題「亀鳴く」締切 … 3月19日(火)


句会ライブ/講演など

西条市市民大学卒業記念講演会
 3月3日(日) 午後1時開場
  講演1時45分〜3時15分
  西条市丹原文化会館
講演「100年俳句計画〜俳句を知れば世界が変わる」
※参加は無料ですが入場に整理券が必要です。
お問合せ/西条市中央公民館0898ー65ー4030

玉野市立八浜小学校句会ライブ
 3月8日(金)

写真俳句コンテスト表彰式
 3月16日(土)14時
 松山市子規記念博物館4階講堂
  森村誠一講演会・表彰式トークショー(森村氏&夏井いつき)
 参加費無料

道後温泉まつり協賛道後吟行会
 3月20日(水・祝)10時集合
  13時句会(椿湯2階会議室)
  参加費 1000円


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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

夏休み句集コンに寄せて
ぎんなん 2月号 子どもたちの感性と作句の能力にびっくり!!! 恥ずかしくなりました〜〜。
えつの 「夏休み句集を作ろうコンテスト」、俳句も装丁もすばらしいです。感心しました。
編 俳句好きな子ども達の一つの目標として認知されつつある「夏休み句集を作ろう!コンテスト」。同様にNHK「それいけ!俳句キッズ」なども新たな目標になりつつありますね。句集コン常連の小学生が出演してたりします。未来が楽しみ。

龍淵王決定戦・後篇。次回は?
大塚めろ 龍淵王決定戦、かなりハードル高そう……でも、高い高いと思っていても低くはなってくれません。自分の足で踏んづけないと、永遠に高いままです。とは言えども躊躇躊躇の春浅し、です。
編 遠慮なくずずいとお踏み下されませ。次回龍天王のお知らせは47ページ参照。挑戦者来たれ!!

今年の写真部
瑞木 今年の写真部のお題は富澤赤黄男さんの句ですね。母校・川之石小学校には赤黄男さんの句碑があります。有名な虎の句と並んで小学生にもわかりやすい蟻の句が並んでいるのがチャーミングです。
編 読者の何割かは作者名の後半読めないんじゃないかと予想。「富澤赤黄男」と読みます念のため。

俳句の質問
うに子 季節ひとめぐりして日常に季語があふれてるのを実感できました。ところで新年の季語は一月のいつまで使えるのですか?
編 む、難しい質問。地域によって正月の期間の長短がありますし一概には言えないのかも? こういう質問こそ季語のおじさんに答えて欲しい。

俳句の質問 その2
元旦 いまだに悩んでいます。歴史的仮名遣いか、現代仮名遣いかを。多くの俳人は、旧仮名で詠む人が多いようです。いろいろな言い分があるようですが、なかなかストンと胸に落ちるようなものはありません。旧仮名をルールだとバッサリ言う人もいれば、旧仮名の時間、空間、視覚からの魅力を言う人もいます。確かにふわっとした時空を感じることがあります。じゃあ、そうじゃない句の場合、どうするのとツッコミたくなります。自分自身はどうなのかと言えば、今は新仮名を使っています。旧仮名は、どこか借り物の言葉で、自分の言葉では無いような気がするからです。その一方、句によっては、旧仮名を使ってみたい、その方が句の雰囲気を伝えられるような気がすることもあります。(以下略)
編 この質問の続きは18ページで解説されてます。仮名と文体については2009年6月号にて一度特集しましたが、再度まとめ直す特集をやってもいいかもしれませんね。ちなみに2009年6月号はワンコインバックナンバー集企画の第5弾に含まれています。お求めの際はマルコボ.コムオンラインショップまで。

ザ・句会の誤記
洋子 二月号は「婚」をテーマにとなっていて、婚を使わずに作句して、PC投句しょうと開けたら「婚」の入った句になっていて……あれれ? 結局作りかえましたがどちらでもよかったのかしら……?
編 多くの方からご指摘いただきました。大変申し訳ございません。本来は「「婚」の字を含んだ句」でしたが、今回は「婚」を含んだものも「婚」をテーマにした句もOKとさせていただきます。ご迷惑をお掛けいたしますが、以上を了承の上選句頂ければ幸いです。

俳人カルトクイズ
だなえ 一月は休みごと中島へ釣行しました。メバルやホゴは煮付け、小さいものは唐揚げにし、アジは刺身、塩焼き、一夜干し、ツミレにし、鯖は酢締め、味噌煮、潮汁にして美味しく頂いております。俳句は上手くなれませんが、今年もどうぞよろしくお願い致します。
編 設問1 文中に登場する魚および料理で季語に該当するものを○で囲みなさい。(配点30点)

エノコロちゃん バードウォッチングしてて頭のてっぺんの黄色いメスちゃんがチョーかわいかったよー。かわいすぎでしたよー。
編 設問2 文中で示される野鳥に該当する可能性のある鳥の名前を全て挙げなさい。(配点70点)……冗談でクイズ仕立てにしたけど本当にわかる人いるんだろうか……。

出会い
北伊作 本日(一月二十六日)市内電車の中で100年俳句計画2月号熟読中の女性を発見!! 組員さんでしょうか? 新しい読者でしょうか。どんどん仲間が投句が増えれば嬉しいですね。
編 有名人の目撃報告みたい。ともあれお手にとって頂けるのはありがたい限りです。

山百合 賀状の余りでごめんなさい。最新号いただきました。ありがとうございます。宇和島の実家の母の影響でラジオに投句を始めました。読むことも聞くこともなじみがなかった俳句ですが、四ヶ月余り、素直に楽しんだり悩んだり苦しんだりしてます。ちょっと頭が良くなるかもと(はぁと)。この句集をかたわらに言葉の嵐を感じてます。ありがとうございました。さて、いつき様。旧姓大本優子です。体に気を付けて頑張って下さい。ラジオのあなたの声でププッと笑って一日力を抜いてやってますヨ。ありがとう!
編 組長いわく高校の同級生だとのこと。ラジオや雑誌、お付き合いいただければ幸いです!


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鮎の友釣り

177

俳号 三竜

久乃さんへ あの折には全く存じませんでしたが、およろこび申し上げます。「まほろば句会」へまたご一緒においで下さい。

俳号の由来 「努力すれば三流になれる。才能があれば二流になれる。一流になるには華が要る」。亡くなった俳優・川谷拓三が好きだと語っていた言葉です。私もこのことばに感動するところがあって「努力して、せめて三流ぐらいにはなりたい」と思ってつけた名前です。

俳句をはじめたきっかけ 地元の句会で、あまり点の入らない句を詠んでいましたが、浜田節さんに誘われて「まほろば句会」に参加しました。
 組長は、私の句を完璧に読み切ってくれました。凄い人が居るもんだと驚くと共にしびれました。その快さがクセになって離れられなくなっています。

次回…浜田節さんへ 私がここまで俳句にのめりこんでいるのは自分の句を理解してくれる人に出逢えたからです。「まほろば句会」を紹介してくれたことを感謝しています。


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告知


号外
第二回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」
最優秀賞は門田なぎささんの『兎抱く』に決定!

昨年募集を行った第二回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」には、四十一作品の応募がありました。
二十二人による大人コン選考会員の審査により、門田なぎささんの『兎抱く』が最優秀賞に決定しました。また優秀賞は、桜井教人さんの『四神眠れる野』、大塚めろさんの『水いつか』、都築まとむさんの『軍手噛む』、瑞木さんの『沈まぬ桃』、すな恵さんの『秋天』、三津浜わたるさんの『ヒロヒト』の六作品に決まりました。
来たる三月三十一日(日)午前十時より、松山市立子規記念博物館にて表彰式を行います。(観覧自由)
また、詳しい審査結果などは、四月号にて発表します。
最優秀作品は、四月号の付録句集として配布されます。




「俳句対局龍天王決定戦」出場者募集(4/21開催)
俳句対局とは、囲碁や将棋の対局戦を模した、一対一の句合わせ対決の句会です。トーナメント戦で対戦を行い、優勝者「龍天王」を決定します。
出場観覧問わず、多数の参加、お待ちしております。

日時 4月21日(日)9時30分〜受付 10時開始・午後3時終了予定
場所 松山市二之丸史跡庭園内観恒亭
出場&観覧費 1000円(弁当込み)*入園料は別途
出場&観覧定員 30名(先着順)
 *出場が決まった方は、当日スーツや着物にてお越し下さい。観覧のみの方は、服装の指定はありません。
賞品 優勝・準優勝に賞品あり
問い合わせ先 『100年俳句計画』編集室 magazine@marukobo.com




マルコボ.コムオンラインショップマガジン化10年目までカウントダウン企画
HAIKU LIFE 100年俳句計画
企画別ワンコインバックナンバー集発売中

本誌は来たる2013年6月号にて、マガジン化してから10年目を迎えます。
そこで、マルコボ.コムオンラインショップにて、10年目までのカウントダウン企画として、バックナンバーのセット販売を行っています。

1:一物仕立ての定義セット(3冊・発売中)←一物の句を論理的に分類できる、前代未聞の画期的な企画
2:子どもと俳句を作ろうセット(4冊・発売中)←5歳の子供も俳句が作れますっ!
3:大連風聞セットA・B(各6冊・発売中)←『子規365日』に掲載されたエッセイのオリジナル。写真も美しい。
4:俳句で表現しよう!アラカルト(4冊・発売中)←俳句作家に目覚めたあなたに捧げるセット
5:編集長渾身の企画!(3冊・発売中)←俳句で恋は生まれるか!? 俳人に画力は必要か!?
6:俳句と句会を楽しむ150ちょっとの方法(3冊・発売中)←ひとりで俳句をでやっている人必読!
7:まる裏俳句甲子園セットA・B(A:4冊,B:3冊・発売中)←まる裏未体験の方は是非
8:○○な俳句(4冊・発売中)←「戦争と平和の俳句」「笑える俳句」「恋の俳句」「泣ける俳句」、付録もあります!
9:カルチャー教室的セット(5冊・発売中)←俳人のための「絵手紙入門」「書道入門」「英語haiku入門」等。
10:ワタシにもできる100年俳句計画(2冊・発売中)←俳句で人を豊かにする様々な方法。
11:“季語”あれこれ(3冊・3月7日発売予定)←季語の仕組みと楽しさが分かる3冊!
12:チャレンジ企画(3冊・3月14日発売予定)←ジェットコースターで作句したり、6時間ぶっ続けで句会をしたり。
13:夏休み句集を作ろう!コンテスト(5冊・3月21日発売予定)←どれを読んでも大抵の大人の俳人は反省します。
14:マニア必見! 万愚節新聞(6冊・3月28日発売予定)←毎年信じちゃう人がいた名物企画!
15:俳句を並べよう! 作品集を作ろう!(4冊・4月4日発売予定)←俳句の整理方法から句集作りまで。
16:代表句セットA・B(各4冊・4月11・18日発売予定)←それぞれたった3句の代表句でも人生が見えてきます。
17:編集長選 企画倒れ特集(5冊・4月25日発売予定)←やってみなければどれだけ下らないかも分からない!
以下、順次発売予定

各セット500円
但し、合計金額が3000円未満の場合は送料別途
お求めはhttp://shop.marukobo.com/まで




だれもが句集を出版できるかたち
句集スタイル

 「句集スタイル」は、全く新しい句集作りの提案です。
 複数の句集を半年ごとに一括で制作することにより、低価格を実現しました。増刷も簡単に行え、作った句集をマルコボ.オンラインショップにて販売*することもできます。
 はじめての句集としてはもちろん、卒入学の記念や、グループでの出版など、様々にご活用下さい。
*販売は当編集室にて校正を行った作品のみ対象

句集スタイル価格表
仕様:135mm×135mm、36ページ、オンデマンド印刷、表紙PP加工

基本料金(30冊セット):20,000円(税別)
(専用ホームページより、Excelファイルをダウンロードいただき、表紙のデザイン、色、俳句、あとがき等の必要事項を入力して頂き、そのファイルを送っていただくことで、お申し込み及び入稿とします。)

オプション料金 *全て税別
・裏表紙画像加工料:5,000円(裏表紙一面に写真を掲載した場合)
・校正料:10,000円
(文字校正及び仮名遣いなどをチェックします。編集室にて校正した作品のみ「100年俳句計画」のロゴを付加します。)
・テキストデータ入力料:7,000円(デジタル入稿でない場合。俳句、あとがきなど)
・オリジナルデザイン料:25,000円〜
・増刷費:12,000円(30冊ごと)

2月1日(金)第1期受付開始(4月末日納品予定分)
専用ホームページ http://marukobo.com/style/




無料インターネット句会 3月7日(木)参加者募集開始!

ハイクライフマガジン『100年俳句計画』が運営しておりますインターネット句会「象さん句会」&「週活句会」の2013年2ndシーズンの参加者を募集します。
どちらの句会も参加無料。それぞれエントリー開始から定員まで、先着順で参加出来ます。

1:俳句を増産したい方のための象さん句会
「百年百花」や「100年の旗手」など、本誌に作品集を連載される「俳句を増産したい方」を中心に、毎週5句出しで4週間行う「本気モード全開」の句会です。もちろん一般参加も可能です。

2:20代のための週末俳句活動句会、略して週活句会
俳句甲子園出身の方や、大学のサークルで俳句をやっている方など20代の俳人を中心とした句会です。この句会から「100年への軌跡」連載者も輩出します。また、交流の場としても楽しめます。

どちらも2013年3月7日(木)一般募集開始
詳しくはブログマルコボ通信まで http://info.marukobo.com/




100年俳句計画大お花見大会
日時:3月31日(日)8時〜20時
場所:道後公園内(松山市)
参加費:300円(場所代など)
開催時間中ならば、いつ来ていつ帰ってもOK!
食べ物・飲み物は各自ご持参下さい。
雨天の場合も道後公園内のどこかで決行!




100年俳句計画投稿締切カレンダー

 
 2/28(木) くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 zatsuei@marukobo.com

 3/7(木)
  100年の旗手感想
  ザ・句会
   kukai@marukobo.com
  魚のアブク

 3/31(日)
 くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 100年の旗手推薦募集

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


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編集後記


 まる裏俳句甲子園を運営している「まつやま俳句でまちづくりの会(以下mhm)」は、2008年5月に立ち上げた市民団体。松山市内に住む本誌読者を中心に、俳句に関する様々な活動を行っている。あねご会長のもと毎月の定例会での議論も熱く、今年度も様々な企画を検討中。
 その一つが「松山城歳時記化計画」。月に一回程度、松山城のお城山を散策し、その時々に出合える季語をデータベース化しようという企画。植物や野鳥に詳しい俳人の力をお借りし、何年がかりかで完成できればと考えている。
 もう一つが「まちかど句会」の開催。松山市民でも「句会」ということばの敷居の高さは半端ではない。しかし、俳句の楽しみの大きな部分を占めているのが句会。そこで、通りすがりの人が見て楽しむ句会を企画中。俳句を作ることは出来なくても、好きな俳句の良いところを褒めるのは意外と簡単。そんな場所が松山市内にあれば、まちの魅力がもっと高まるのではないかと思っている。
 まる裏俳句甲子園に限らず、俳句を愛する一般市民が集まれば、まちの風景だって変えることができる。そんな夢みたいことを実現する会がmhmなのだ。
(キム)


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次号予告 (185号 4月1日発行予定)


次回特集
第二回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」結果発表
主催 (有)マルコボ.コム
共催 朝日新聞松山総局・松山市教育委員会(松山市立子規記念博物館)
協賛 日本俳句教育研究会

表彰式
 2013年3月31日(日)AM 10:00〜
 松山市立子規記念博物館にて



HAIKU LIFE 100年俳句計画
2013年3月号(No.184)
2013年3月1日発行
価格 600円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子