100年俳句計画12月号(no.181)


100年俳句計画12月号(no.181)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
俳句との出合い 青蛙


特集1
いつき組選評大賞2012


特集2
オリンピックイヤー最終企画
いつき組的秋季大運動会開催〜出るか俳人記録!?〜



好評連載


作品

百年百花
 杉山久子/高橋白道/津田美音/森川大和


100年俳句計画作品集 100年の旗手
 のり茶づけ/稲穂/空

百年琢磨 津川絵理子


雑詠道場 くらむぼんが笑った

初学道場 へたうま仙人

放歌高吟/夏井いつき

新100年への軌跡
 俳句/岡戸游士/原
 評/都築まとむ/樫の木


読み物
Letter from spider garden/ナサニエル・ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
本家 慶弔俳句帖/桃ライス
勝手にエロ俳句/高田順三
一句一遊情報局
mhm通信

読者のページ
選句&投句欄 ザ・句会
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
マルコボショッピング
編集後記
次号予告




表紙リレーエッセー


俳句との出合い
青蛙

 平成15年夏、仕事で著名な方々をお呼びする講演会を担当し、講師のお一人が黒田杏子先生でした。学校で習って以来、俳句とは無縁でしたが、黒田先生が紹介された句に目を開かされました。俳句とはこんな世界も表現できるのかと。
 そこで本屋で目にとまった本が『無敵の俳句生活』……。
 それから通信教育を受け、さて次は? と思っていた平成20年、妻が新聞に句会の案内が載っていると教えてくれました。我が家に程近い会場、それなら試しに、と行ってみたのが「まほろば句会」。組長とまっことマンデーさんとの出会いでした。
 俳句の存在に気付かせてくれた黒田先生に組長も師事していたとか。全くの偶然ですが、何か縁を感じずにはいられません。
 今日は立冬。季節や自然を意識的にみるようになったのも、俳句のおかげです。


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特集1

いつき組選評大賞2012


 毎年恒例の選評大賞も、今回で6回目。連載中の「100年の旗手」に掲載された360句の中から好きな俳句を選び、20文字×15行(計300文字)の書式の中で、選評という創作に挑む企画である。
 今回の応募総数は22点。例年通り審査は、詩人・堀内統義氏、愛媛大学教育学部教員・中西淳氏、俳人・夏井いつきの3名にて行われた
 回を重ね、応募作品の読み物としての質が上がるのと比例して、選評に求められるものも進化し、過去5回の開催で、最優秀賞を獲得したのは、たった一人(第2回の瑞木さん)。
 読み応えのある入選作品をじっくり味わっていただくと共に、最優秀賞の行方も期待して読み進めていただきたい。 
(進行は編集長)


 審査の方法

 審査は、各投稿作品に1〜22番までの番号を振り、作者無記名で行った。
 各審査員が事前に推薦する作品を選び、議論によって、入賞作品及び優秀作品を決定した。
(文中、応募者の名前の後にある番号は、審査に使用した番号) 

 入選作品

蓮睡 20

 蛍来よ忌中の紙を剥がす背に まりん

 一読した後、上五の「蛍来よ」に戻って読み手に訴えかけてくる。さらに「背」の描写が、読み手それぞれの記憶を呼び起こす。
 人の死を一層感じて考え込んでしまうのは、少し落ち着いたときではなかろうか。たとえ葬式が終わっても、香典返しの準備や四十九日までは毎日拝む、など、何かと忙しい。
 剥がす背の人の気持ちを思うと、なるだけ自分が側にいて励ましたり、一緒にいて楽しい時間を過ごしたい。けれど、力になれるかどうかわからないし、自分にも生活がある。
 せめて、蛍、蛍よ、あの背に来てくれないか。そして一人で辛さを抱え込んでしまう時間を、少しでも減らしてくれないか。そんな作者の想いが蛍への呼びかけに詰まっている。

編 複数人が選んだ作品から見ていきましょう。20番は三人とも選んでいます。
中西 もう一人この句で書いている方がいたんですけど、僕は20番の方がよりよく書けていると評価し、こちらを残しました。誰の背に蛍が来て欲しいと言っているのか? この人は「紙を剥がす人」の背に来て欲しい、と読んでいるんですよね。そして作者はその人の姿を客観的に見ている。その捉えかたが面白くていただきました。自分の姿を客観視して詠んでいる可能性もあるんですけど……。
夏井 20番は第三者の背中と見ていますが、もう一つの読みの可能性として自分自身の背中を客観視している可能性もあります。両方の読みの可能性を提示してくれると、鑑賞としてもう一歩深みが出たかもしれません。
堀内 通り一遍な思いではある。しかし死者やそれを送り出す者の思いに寄り添っているのは強く伝わってきました。
夏井 後半がもう少しコンパクトに語れるような気がしますね。前半で言ってる具体的な内容に対して、8行目以降が同じような内容をゆるゆると語っているようで勿体無い。ここをもっと効率的に語れたら、もう一つの読みについても展開できたかも。


瑞木 2

 原爆忌色あるものを贄として まりん

 原爆忌、平和公園は毎年花束で埋めつくされる。赤・黄・オレンジ・ピンク・葉っぱのグリーン。白い公園に「色」があふれる。
 「色」とは「物が形とともに備えている普遍的な属性」のこと。この世に存在するすべての物は、それぞれの「色」を持っている。
 しかし「原爆」はその「色」までも吹き飛ばしてしまった。私たちはその瞬間を知っている。たとえ本や映像を通しての経験であったとしても、私たちは目の前の「色」が無くなったあの悲劇の瞬間を知っているのだ。
 目の前に供えられた贄を「色あるもの」と表現された時、私たちの「色なき」記憶はまざまざと甦る。そして永遠に受け継がれていくのである。

編 夏井さんと堀内さんが選んでいます。
堀内 原爆忌という社会性をもった句に向かい合っている姿勢を評価しました。「その瞬間」がもたらした惨状なんかも書いてほしかったけど。
夏井 三段落目までは好意を持って読んだ。原爆なんて大きなテーマのものをたった三〇〇字で書こうとするのはとても難しい。中七に的を絞って書いていく構成には工夫があった。こういう書き方しかできないかもしれないな、と納得。しかし四段落目「贄を」の表現とそれに続く書き方にひっかかった。「贄を」なら「表現する時」だろうし、「表現された時」なら「贄が」になるんじゃないのか?と。あれ?と思っているうちに「そして永遠に〜」と結論を端折るようにして終わっちゃう。最後に失速した印象。
編 四段落目をどう展開させるのか、落しどころを見つけるのが非常に難しい句ではあります。「色あるもの」とはなにか?「贄」とはなにか? 考えるべき点が多い。
中西 私はむしろ「贄」について説明しなきゃいけなかったんじゃないかという気がしますね。色で持ってくるならば平和公園に限らずあらゆるものでいいだろうし、出だしが少し唐突に感じてしまった。
夏井 構成の工夫はあると思うんだけどね。計画性はあったし、やろうとする方向性もあるんだけど。着地がやっぱり難しいんだね。


三月 9

 少年の腰の鍵束信長忌 まりん

 街角ですれ違った少年の後ろ姿だろうか。着崩したストリート系の服装、無頓着な髪型、鍵をじゃらつかせ周囲を観察しながらの闊歩。あんな少年だったのかもしれない。時空を超えた感覚をもたらすのが下五の「信長忌」だ。 「少年」「腰」「鍵束」の順に並んだ名詞が鍵束にピントを絞るのがいい。無数のアイデアを持つ寵児はその鍵で新しい扉を次々に開けていった。「信長忌」の句は初めて見たが他の誰の忌日よりこの内容にふさわしい。
 信長の忌日は一五八二年六月二日。本能寺での非業の最期や比叡山を焼き討ちした非情な行為。それよりもこの句は「うつけ」と呼ばれた奔放な青春期の信長をあざやかに蘇らせてくれる。それが瑞々しく楽しい。

堀内 六行目から九行目のはじめくらいまでの解釈と展開が非常に面白かった。ただこの作品も最後の一文にひっかかりました。「瑞々しく」でいいのだろうか?
夏井 全く同意見。たったこれだけの字数しかないから難しいのはわかるんだけど……。俳句としては材料が多すぎるくらいの句なんだけど、「信長忌」が動かない理由をこんな展開で納得させてくれる点はお見事でした。
編 九行目半ばから十行目の「初めて見た」のくだりはいらなくないですか? ここがなければもう少し書けるし、歯切れもよくなります。
夏井 加えて小さな残念を言うなら七行目。「絞るのがいい。」の「のがいい」もいらないね。といいつつ、私この選評は惜しい部分もあれど高く評価してます。
中西 僕は2段落目がわからなくて選外に。8段落目の「その鍵」。指示語のせいで主語が信長なのか、少年なのかはっきりしなくなる。ダブらせてるんだろうというのはわかるんだけど、僕の中でうまくイメージが重ならなかった。
夏井 一段落目四行目で「あんな少年だったかも」と伏線は張ってありますし、続く五行目で「時空を超えた感覚を〜」とあるから、私は中西先生の言うような内容は気にならなかった。中盤の展開から、最後に「うつけ」という単語で現代の少年と信長を、時代を超えて重ねた押さえにも意表を突かれた。
編 むしろ問題となる最後の数文字「それが瑞々しく楽しい」をなくす方がいい?
夏井 「〜あざやかに蘇らせてくれる。」で終わりってこと? それはそれで最後にもう一声!と思っちゃうだろうねえ。忌日の季語って実際の季感というよりは連想力みたいな力じゃないですか。信長忌を連想力で読み解くとこういう読みも出現してくるのか、と納得した一作だった。


鯛飯 14

 象の耳はたりはたりと雪来るか 舞

 冬の象舎の前に一気にワープさせられた。目の前で象がゆっくりと耳を動かせている。視線の背後では、象の色をした雪雲が太りながら近づいて来る。象舎の匂いも、身体を包む冷気も、リアルに我が五官に迫ってくる。
 雪雲と象しか登場しないこの句にリアリティを与えているポイントの一つは、「はたりはたり」というオノマトペだ。これによって「象の耳」の動きが映像を結ぶ。二つ目は、続いて出現する、つぶやくような「雪来るか」。「雪催」という天文の季語を使わず、心情に傾いた表現に言換える事によって、雪の前の不穏な空気感を読者に共有させる。「象の耳」の動きが雪を呼んで来るような、そんな錯覚を楽しむことが出来る一句である。

夏井 かなり好感。一行目はいらないけど。一段落目で動きやその場の空間、二行目で句のリアリティとオノマトペ、さらにこの傍題を使った効果。的確にポイントをおさえて語られています。小さな違和感は十五行目「楽しむことが出来る」の一文。この句は押し寄せてくるようなリアリティで勝負する句だと思うので、「楽しむ」の言い方に多少引っかかるものがありました。
堀内 僕もかなり好きな選評でした。本当に丁寧に解釈をされてますよね。きちんとこの句をよく読んでるのが伝わってきて、好感を持ちました。たしかに夏井さんのいうように「楽しむ」にはひっかかりがありましたが。昨今の世の中を見渡すと安易な言葉に思えてね。
中西 僕はチェックからは漏れてたんですが、改めて読んでみると本当に丁寧でいい選評ではありますね(笑)。一行目の「ワープさせられた」に抵抗があって落としてたんですけど。あと、三、四行目の「雪雲が太りながら〜」あたりのくだりを「はたりはたり」とリンクさせながら説明するともっとリアリティが出たんじゃないかと思いました。
夏井 たとえば一行目を「冬の象舎、目の前で象がゆっくりと耳を動かす。」くらいで始めれば、読者も「動かす」で同時にワープできるんだよね。一行目で先に作者がワープしちゃってるから、読者に取り残され感があるんだろうね。
編 以前の選評大賞では「俳句にあわせた文体を」という意見も出ていました。この句は言葉をそぎ落として「はたりはたり」だけで映像を描こうとしてるんですよね。それに対して、選評では六〜七行目「リアリティを与えているポイントの一つは」みたいな語りのまどろっこしい部分が見受けられます。
夏井 そういう意味では細かいところでもっと無駄をなくせる部分があるんですよね。さっき言った二行目の件や編集長の言う部分もしかり、十一行目「天文の季語を使わず」を「天文の季語でなく」としたり、続く十二行目「言い換える事によって」を「言い換える事で」としたり。小さく積み上げていける部分はまだあると思います。しかしこの選評が言わんとしていること、句の本質というか、読みの上で絶対に押えるべきポイントは的確に押えて語られています。選評の一つのスタイルとして、こういうタイプは一つ残していいと思う。
中西 ちょっと横道にそれますが……。「五官」という語が使われていますが、この字の場合は身体の器官をさす場合に使うようですね。
堀内 身体性に比重を置いた言葉なんですよね。句の世界の精神性が、読み手の身体性に重なって迫ってくるっていう。
中西 「五官」とまで言う必要があるか少し疑問は残りますけど。
夏井 目で見たときの動きや、雪雲が迫ってくる動き、象の臭い、寒気、そういうものをひっくるめて「五官」に迫ってくるというなら違和感はないと思う。「はたりはたり」はかすかな聴覚でもあるでしょうし。
堀内 もう一つ余談だけど、辞書で調べると「はたりはたり」は予想外の場面に出くわす、みたいな意味でも使うみたい。ちょっとおかしいよね(笑)。


更紗 17

 銀漢や鍵は裸にして返す すな恵

 幾度となく通った彼のマンション。郵便受が並ぶエントランス。ここに来るのも今日が最後、そう決心してやって来た作者。
 彼の部屋の鍵にぶらさげていたキーホルダーは昨夜全部はずした。真珠のストラップ、くいだおれ人形のミニチュア、フェイクファーの尻尾。決別の儀式のように、粛々と。すっかり裸にした鍵を郵便受に落とす。ガチャッと音が響いた瞬間、作者の心にも鍵が下りた。数々の思い出も封印された。建物を出て夜空を見上げる作者の目に銀漢が濡れている。
 この「銀漢」という季語の選択、「鍵」という小さいながらも大事なものとの取り合わせ、突き放したような語感。終わった恋に対する作者の哀しみは思いのほか深いようだ。

堀内 この句も20番と同じく、二人が選んで書いてましたね。この17番の作品は、鍵への具体性・細部の想像力がよく読みこまれていて面白かった。
夏井 俳句を丁寧に読み解いていく書き方もあれば、この句のように自分の体験をリアルに物語っていく書き方もあるなあ、としみじみ思いました。真珠のストラップからくいだおれ人形のミニチュア、この辺のリアリティが句にとって非常にいい効果を持ってますね。読者が一瞬感じるこの句のささやかな謎は「鍵は裸にして」ってどういう意味?ってことなんです。すぐにその意味がわかって、次々と物を外していくうちに、読者は外していく小道具が一緒に過ごした時間や思い出と繋がっているに違いない、と読んでいるうちにその先を想像し始める。三段落目の語りが非常に楽しませてもらえましたね。終わりの一文の収め方もリアリティがありました。
中西 私はお二人とは逆に、この句について書いたもう一人の方の選評を取ってました。物語としての選評と、解説としての選評、私は後者を取ったんですよね。まとまりが感じられたので。
編 どちらの方も句意を恋愛的なものと捉えて選評を書いてます。字面だけなら恋愛以外に引っ越しの可能性も出てくるかと思いますが。
中西 一般的には恋愛読みが強くなるんじゃないかなあ。
夏井 たしかに字面だけみると可能性は否定できないけど「銀漢」だからねえ。季語のイメージや「裸」の一字が及ぼす効果は馬鹿に出来ないと思う。
堀内 この人は自分の書き方のスタンスを決めて、それに沿ってしっかり組み立てた。だからこそ語りに奇妙に納得させられたんだろうね。
夏井 決めたスタンスに対して文体が沿ってるのはポイント大きい。違和感がないんだよね。名詞止めで淡々と状況を語って、自分の動きを重ねていく。選評自体が映像になっているような作品だった。十一行目「銀漢が濡れている」としてみたり、「涙」みたいな安易な表現を避けようとしてるのも良かった。文章力が高い方なんでしょうね。


神楽坂リンダ 18

 どの窓も馬が顔出す大西日 ターナー島

 不思議な魅力のある句だ。この句の馬はサラブレッドの競走馬だと思うが、厩舎に窓があったか?「どの窓も」と言うほどたくさんの窓が?その是非は気にせず味わいたい。
 書かれている通りに読むと、たくさん窓がある建築物があり、どの窓も馬が顔を出している。そこに大西日があたり、毛並みの良い馬の顔がつやつや輝いている。馬の顔を一番きれいに見せるのは朝日でもなく日中の日差しでもなく、西日なのだと思えてくる。住宅地の窓という窓から、校舎の窓という窓から、ビルの窓という窓から馬が顔を出し、大西日があたっているのだ。増殖する窓と馬。ダリの絵を思わせるシュールな光景だ。それは偏に「どの窓も」という謎の言葉の力による。

編 この句は堀内先生が推しています。
堀内 一段落目は余分だと思うけどね。「その是非は気にせず味わいたい。」。なら書くなよ、と(笑)。でも十行目の終わりから十三行目あたりまでの展開はすごく惹きつけられた。ここだけで選びましたね。こういう部分をもっと書いて欲しかったな。詩として面白かった。
夏井 そのイメージはたしかに面白かった。俳句の選評というよりはこの人自身の詩にしたらいいんじゃないかと思う。「増殖する窓と馬」、アッパーカットもらいました(笑)。
編 一位には推し辛いタイプの選評。完全スルーか、なんらかの賞はあげるのか?
夏井 面白いけど、ただ選評として見た時にはアウトかなあ、という気持はあるんですよ。この句を読み解いていった時、厩舎や乗馬クラブだと読むのが妥当だろうと思うので。毎年比較対象として話題にあがるんですが、第3回の優秀賞になったそこらさんの「眠る竜」の選評がありますよね。
編 空想・物語系の選評では毎年必ず比較されますね。
夏井 妥当な読みから逸脱するんなら、そこに腹を括らないといけないと思うんですよ。そういう意味で、この選評における頭の四行は絶対にあってはならない段落。いきなりのっけから全然別の空間に読者を連れて行かないと難しい気がする。しかし、十行以降から「〜シュールな光景だ。」までの展開にはやられましたね。悪い夢見たような気分にさせられました。これを一推しにする堀内さんはさすが詩人(笑)。
編 十五行目「謎の言葉」と言ってますけど、作者が無理矢理謎にしちゃった感。
中西 僕は取れなかった。最初の一段落と本来の読みから外れていった先への距離感がありすぎて、ついていきにくい。後半の要素だけでいくなら面白いと思うんですが、前半に綺麗な世界を語ったフレーズがあることを考えると……。
夏井 作者が知りたいよね、誰がこんなこと考えるんだろう(笑)。
編 捨てるには忍びない一作。読んでて面白いのはやっぱり重要ですね。正しいだけではダメ。
夏井 かといって面白いだけでもダメだろう、とも思うんですよ(笑)。今回は部分的に「この側面が良かった!」みたいなのを各審査員が推す一作とかを選んでもいいかもしれませんね。

 最優秀賞決定!!

編 ここまでに紹介された作品は全て入選。これらの中から最優秀賞・優秀賞を選んでいきます。まずは上位三作品を選び、さらにその中から最優秀賞に値する作品があるかどうか議論していきましょう。
夏井 私は14番、17番を推します。考えるとするなら9番をいれるかいれないか……。6作品しかないから、どれか二つを選ぶなら14番と17番ですね。
堀内 僕は9番と17番。
中西 14番と20番。20番は三人の中では僕が一番推してましたので。とはいえ、上位にぜひ!というほどではないのです。
堀内 20番はみんなの目に留まる一定の力はあるんだけど、抜きん出た部分がなかった印象。
編 9番、14番、17番が上位に。バランスとしてはこの中から最優秀賞を出して、他二編を優秀賞とするのが理想的。個別に見ていきましょう。
夏井 三つの中なら私は17番一推し。9番と14番はどちらも最後の一単語に近いまとめ、「楽しい」と「楽しむことが出来る」にそれぞれひっかかってる。17番はそういうひっかかりを覚える部分がなくて、審査原稿にチェックを全然いれずに読めたんだよね。
中西 9番は夏井さんの指摘に加えて、少年でなく信長に焦点があっているところが僕は気になった。少年の姿がこの句の主眼じゃないかと僕は思うので、もうちょっと少年の可能性や魅力について述べても良かったんじゃないかなあ、と。
夏井 季語が信長忌だから、私は逆に目の前に居る少年が信長に重なって信長が前に出てくる読みをしないといけないと思う。だから私はあまり気にならなかった。9番で気になるのは最後の一文と「初めて見た」のくだりくらいかな。
堀内 そうそう。鍵がじゃらついてる映像の表現なんかはなかなか面白いよね。
編 毎年恒例「最後が気になる」論争がまた出てきました。
夏井 そういう意味では17番は稀有なんですよ。少なくとも、「ここが気になる」みたいな印をつけずに、しかも楽しみながら読みとおせた作品はここ数年なかったんです、本当のところ。これ以上のものを最優秀賞に求めるのは酷だなあ、という思いはあるんですが……。
堀内 この三つの中なら僕も17番を推す。ただ18番の議論にも出てたけど、第三回優秀賞になった竜の選評の存在が大きすぎるんだよね。「優秀賞だったあの作品を上回る面白さを持っているか?」と僕らはつい考えちゃう。あれと比べるともう一味欲しい、と思ってしまう。
編 個人的にはそろそろ最優秀賞出して欲しいんですけど……。さしあたり9番と14番は優秀賞でよさそう。17番を最優秀にするかどうかだけが問題です。
中西 逆にどういうものを最優秀賞にするのか、その姿を今一度考える必要がありそう。方向性としては17番は物語系・句の世界に没入する系の選評です。17番は物語系の中ではわかりやすい選評でしたね。物語系の極致にいる「竜」の選評とは違って独自の世界ではないので。
夏井 「竜」は選評としてあまりにも特殊だったから、あそこにラインを引くのはある意味危険なのかもしれない。「これくらいでも充分やれてますよ」というラインを引き直す意味でも、これに最優秀を与えてもいいのかもしれないし……。
堀内 17番はきちんと押さえてるんだよね。導入も最後のところも。中盤で盛り上がりもあってね。まとまりすぎてはいるけど、本当に面白かった。
編 選評というものが、俳句を元に情報を増幅させて、読者を楽しませつつ納得させつつ新しいものを見せるものであるならば、この作品はかなり理想のラインにきてるのでは。
堀内 この選評のいいところは理屈や知識で読み解いてないところ。自分の想像力や感性で十七音を読み解いてる。
夏井 竜の選評はあの句の世界があったからこそできたものでもある。そういう意味ではこの句の中にある世界はこの選評の通りですからね。「竜」みたいな壮大なものが出てこようはずはないし、これでいいのかもしれない。
堀内 エラーもないし。
夏井 一つの評価軸としてエラーがないというのはあってもいい。
編 小道具の選択も的確。取り合わせに出したものが相手との関係や持ち主の人格も想像させてくれる。
中西 「鍵が下りる」という表現が実際にあるのかどうか、そこだけ少し気になってるんですが……。
夏井 私はそこは詩の言葉として受け止めました。「銀漢が濡れている」みたいな表現もありますし、詩の言葉として受け止めるための伏線のようなものかなと。
堀内 「心にも〜」と続く形だし、伝えるべき内容は伝えてます。問題ないんじゃないかな。
編 新しい評価軸として「ほとんどエラーがない」ってのは入れましょう。「最低限エラーがなく、その上でオリジナルの文体があり、なおかつ面白いもの」が最優秀賞の条件。新たな線引き、こんなところでいかがですか?
一同 異議なし。
夏井 象の耳だって信長だって、もうちょっと文章整えたらすぐこれに達するだけの力は充分にある。手の届かない最優秀でなく、一年頑張れば手の届く最優秀賞だったかと思います。来年が楽しみ。


最終結果

最優秀賞
更紗

優秀賞
三月
鯛飯

入賞
瑞木
神楽坂リンダ
蓮睡

*各賞の表彰は、いつき組大忘年会にて行います。


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特集2

オリンピックイヤー最終企画

いつき組的秋季大運動会開催〜出るか俳人記録!?〜


レポート らまる

 マラソンにはじまり、どろんこバレー、ボウリング、オリンピック観戦即吟など、数々のスポーツイベントが続いた2012年の締めくくりはやっぱりこれ「秋季大運動会」。
 それは10月28日(日)15時30分〜、北条体育館(古い方)、総勢32名の参加で行われた。遠くは四国中央市からまるにっちゃん一家が、そしてなんとN?K現役アナウンサー永松さんを引っ張り込みリレーの実況中継をさせるという無茶振りもあり。

準備に余念なし

00.班分け(じゃんけんで紅白2チームに分かれる。スポレク本部長きとうじんさんの組み合わせ采配で最後まで勝敗がわからないみごとな力配分に)

紅組…わたる、いつき、ともぞう、紫音、瀑、らまる、正人、みゆう、烏天狗、佐莉、福ちゃん、蛇頭、魔心地、のんの、香雪蘭、まるにっちゃん

白組…きとうじん、toku229、桜井教人、亜桜みかり、ねこ端石、チャンヒ、大五郎、りんたろう、しんじゅ、ちはる、兼光、更紗、永松隆太郎、なぎさ、だいあ、樹朋
(敬称略・登録順)

01.選手宣誓(みゆうによる、世界平和を盛り込んだ宣誓に拍手喝采)
02.準備体操(更紗さんによるバレエダンス用ストレッチ@プロ仕様。これが一番体に堪えたという噂が…)


競技開始

1.玉入れリレー(という名のバスケドリブル&シュート。運動神経あるなしが一目瞭然!?)
2.だるまさんが転んだ(ことに笑えました)
3.季語食い競争(パン食い競争の季語版。ちなみに今回は焼き芋、林檎、蜜柑、新豆腐をご用意)
4.綱引き(教人&みかり夫婦調達の本物の競技用綱は圧巻。結果は引き分け)
5.ビニール投げ槍(棒状の浮き輪みたいなのを投げる。無理です飛びません)
6.俳人リレー(チーム戦。前走者が1周している間に席題句を即吟。詠み終えたら走るを繰り返す。リレー後、句合わせ対決による加点もあり)
7.フォークダンス!(オクラホマ・ミクサー超簡単バージョン。久しぶりのフォークダンスに多少甘酸っぱい気分の大人たち。Shall we ダンス?)


抱腹絶倒の大人の遊び!?

 各競技ごとに点数を重ねた結果、勝敗は540対510で紅組の勝利! リレーでの大逆転が肝か。それにしても、笑い転げ、俳句も詠み、けがも事故もなく、ほどよく全力をつくしと、俳人らしくきっちり遊んだ2時間でした。おそらく2年後に開催予定です、みなさまこんな抱腹絶倒の体験ぜひとも次回はご一緒に。個人的にはだるまさんが転んだにリベンジするぞ!



公式記録ビニール投げ槍
・男子の部
1位 … 11.86メートル(大五郎)
2位 … 10.0メートル(蛇頭)
3位 … 9.86メートル(烏天狗)

・女子の部
1位 … 7.90メートル(亜桜みかり)
2位 … 7.73メートル(更紗)
3位 … 7.50メートル(しんじゅ)

俳人リレーの俳句
あの短時間の作句でこんな秀句が!

席題【猿酒】
ほうたいに土のにおいや猿酒 わたる

席題【露】
露の小さきほどのやる気のなさ りんたろう

席題【流れ星】
海鳴りの声聞く耳や流れ星 なぎさ

席題【通草】
あけびわれず心も少しわれて ねこ端石


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2012年度 第三期 1回目


「冬の虹」杉山久子

ゴリ押しの人のごと木枯一号
凩の記憶あたため耳朶は
はにかんでゐて豹柄のイヤーマフ
紅葉散る鏡の裏に闇がある
座布団に猫のぬくもり初時雨
輪切大根この世とやらを透かし見る
SPの背の鉄壁や返り花
冬鴎あふれアルゼンチンタンゴ
冬霧にぬれし小石を土産とす
ヨーグルトかたまるまでを冬の虹
初雪やむかし切符のかたかりし
アコーディオンカーテンしづか枇杷の花


1966年生まれ。第二回芝不器男俳句新人賞。
句集『春の柩』、『猫の句も借りたい』『鳥と歩く』。




「豊年」高橋白道

初猟のニュースに写る檀信徒
お土産に出来る太さの櫟の実
豊年や駅の入口三倍に
豚草の効き目の違ふ二人かな
太閤忌役者にカメラ追ひ付かず
偉い人奇麗な人や赤い羽根
アハハハはウハハハになり秋の昼
木天蓼や故郷の同じ老僧と
ぬくめ酒百寿に届く銀の杯
リューマチの指が干柿揉んでをり
障子洗ふ御仕舞に足も洗ふ
障子貼り今年はプロに任しけり


1954年生。愛媛県出身。
生物、特に昆虫が好き。




「露天計」津田美音

龍淵に血の気の多き頃を過ぎ
フラスコの首を掴むや龍田姫
古典の日紅茶は四角錐の香よ
巻尺をきいきゅと唏かせ秋惜しむ
瓢の笛一日挙手せぬ児を帰し
では上を向いて歩こう黄落期
初時雨燐寸の擦れぬ児は多数
文字盤を拭い冬灯の露点計
諸君決起せよ雑炊を完食せよ
紛糾や口あんぐりと鯨缶
手袋のままリコーダー吹く放課後
風呂敷の折り目正しき寒北斗


香川県さぬき市生まれ。松山市在住20年目。現在小学4年生を受け持つ教員。専門は音楽。
俳号 ピアノフォルテ




「虚」森川大和

月代や鳥を放てる沖の黙
月一つ破れて落ちてきた前史
偶作や月の上らずなる陸も
月の象糞ひと一人ほどさらし
満月や頸巻いて伏すキリンの巨
月ほどの水を汚している良夜
魚河岸を浄める夜半の月明り
月光の膨れて消えるとき一音
猫鳴いて船団迫りけり月へ
月の窓とてあり空のこっちが虚
ふいに涙月の欠けゆく加速加速
月落ちる水平線の擦り切れて


1982年生まれ。第二回俳句甲子園団体優勝、個人最優秀賞。第一句集『ヤマト19』(マルコボ.コム)。愛媛県立松山東高等学校俳句部顧問。



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読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2012年10月号 〜 2012年12月号 3/3回目)


 冬の金魚 のり茶づけ

アリスアリス天に召します兎の名
片方は陽当たらぬ道石蕗の花
受け取りて冷たき本と手のありぬ
水槽に吾が目と冬の金魚かな
冬茜傷乾くまで帰らない
石炭や烈火の怒りしまう箱
白菜のあっけらかんとまっぷたつ
凩が五人の客を連れ入り来
氏素性まるく煮込んでおでん酒
梟やホーホー低く鳴く五臓


松山の片隅で食堂(飲み屋)の女将をしています。知っていますか? 女将って結構孤独な稼業です。俳句と知り合ってから人生楽しくなりました。だからこれからもマイペースでこつこつと……。



 祈り 稲穂

ヒロシマの朝の祈りや火焔菜
冬近し田の神送る膳支度
立冬の風は鈍色にがよもぎ
枝打の鉈を納めて冬はじめ
小太鼓のてととで終る里神楽
仏間へと案内されたり大火鉢
寒昴還暦新規就農者
霜月の影絵の狐躍り出す
難産の牛の目ん玉冬きざす
雪虫を解き放ちたる牧の朝


子規山脈の裾野で、俳句の種まきを始めうん年目、気づけば周りにたくさんの句友、たくさんの俳句の息子、娘たちに生きる勇気をもらっているような今日この頃。なんだか妙に居心地良くなってきたりして。



 らうらうと 空

琥珀なる一億年の秋思かな
最果ての胡桃の家の子であらん
奥州の錦木の赤ほどの赤
極楽鳥花冬立つ朝をらうらうと
水鳥を数へて日々を過ごしけり
兵のやうに枯葉ざくざく踏み進む
天智も天武もこの土踏みし冬の鳥
回廊の柱くろぐろ冬の海
見上ぐれば万の蓮の絵冬の廟
迎春の花売る若き手の荒れて


東京の巣鴨生まれ。大学で知り合った夫のふるさと愛媛に来て30年。花の種苗会社勤務、花の生産を経て、今は花屋を経営しています。でも、本当は栽培もせず、売買もせず、道端の花を見て「まあ、きれい。」というのが好き。



次回1月号〜3月号
連載者決定

 7月から9月末までの期間、「この人の作品集を読んでみたい」という気になる俳人を、1人3名まで推薦していただきました。
 その中から推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行い、次回10月号〜12月号までの連載を行う組員が決定いたしました。

 香雪蘭さん
 蓼蟲さん
 ふづきさん

 3名の方には1月号から、作品集を連載していただきます。
 お楽しみに!


随時推薦募集中

 次々回連載者の推薦も募集しております。集計期間は12月末までとなります。集計は累積ではなく、毎回新たに集計しています。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。


読者が選ぶ人気俳人!
「100年の旗手」連載者推薦募集

 今求められているのは、読者が読みたいと思う俳句作家。「100年の旗手」は、連載する俳人を、編集室ではなく、読者が選ぶコーナーです。
 「この人の作品集を読んでみたい」と気になる俳人を、1人3名まで推薦してください。その中から、推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行います。
 あなたのお勧めの俳人を是非推薦してください。

 推薦の方法

 「この人の作品集を読んでみたい」という人を3名まで選んで(自薦は不可)、その俳号と活動場所(俳句の缶づめ等)/推薦者ご自身の俳号(本名)/住所/電話番号を明記して、100年俳句計画編集室「作品集推薦」係へ送ってください。ハガキ/FAX/Eメールで受け付けています。Eメールの場合は件名を「作品集推薦」としてください。また、誌上句会インターネット投稿フォームでも受け付けています。(アクセス場所は誌上句会コーナー末を参照してください。)なお、投稿フォームの場合を除き、推薦は他の投稿等とは分けてください。

締切 12月末日

 現在連載している3名の方以外なら、一度連載された方も含め、どなたでも推薦できます。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。



百年琢磨
先月号の「100年の旗手」に寄せて

干柿を揉む 津川絵理子

「月草」 空
孕む埴輪の笑み豊かなる良夜かな
 読んで幸せな気持ちになる。埴輪って笑っているのだろうか。きっとそう見えるのだろう。良夜だから。

明け方のむすび五百個秋祭
 むすび五百個とはすごい数だ。それをまだ暗いうちから用意しているのだ。収穫を感謝する秋祭らしい光景。明け方の静けさの中にあっても、祭はもう始まっているのだ。

お不動さんの硬き火炎の秋気かな
 硬き火炎、光背の迦楼羅炎のことだろう。リアルに炎を表現しているが、やはり木は木だ。しかし、硬質な炎という把握は面白い。そこに秋気を感じ取ったところが手柄。


「柿の秋」 のり茶づけ
コスモスを揺らしているは猫と猫
 コスモスの下に猫が居る。だから花が揺れているのだ。しかも猫は一匹ではない。コスモスの花から視線が下へ下へと降りてゆくように、この句も上から下へと展開してゆく。その似た感じが面白い。

兄病めば母も病むなり柿の秋
 親子の情愛と哀しさが表れている。例えば「姉」とするよりも、兄のほうがしっくりくる。それほど深刻な病ではないのだろうけれど。柿の秋が合っている。

留守宅の干柿揉んで帰ります
 留守宅は家族や親戚の家なのだろう(他人の家だったら変わった味わいの句になる。それも良い)、早く甘くなるようにと、親切心から干柿を揉んでいる。「干柿揉んで帰ります」という慎ましやかな物言いが、小さな親切にぴったり。


「影踏む」 稲穂
小鳥来るピカの記憶の水飲場
 かつての原子爆弾の記憶が水飲場に刻まれている。〈小鳥来る〉は一見ミスマッチだが、「ピカの記憶」を際立たせる。

カヲナシとすれ違ひたる月天心
 カヲナシは「千と千尋の神隠し」のカオナシなのだろうけれど、「カヲナシ」という言葉の響きだけでも不思議な生き物を想像する。それと月の夜にすれ違う。ほのぼのと、でも少し怖い世界。

冬近し鰐食らはんか食らはんか
 昔の食らわんか船から呼ばれているようだ。「食らはんか」のリフレインが賑やかな場を想像する。「鰐」の異質な感じが、「冬近し」に響いてどこか物哀しい。


津川絵理子
1968年生れ。「南風」所属。句集『和音』。平成19年、俳人協会新人賞、角川俳句賞受賞。



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 雑詠道場は、「くらむぼんが笑った」か「へたうま仙人」か、どちらかへ3句1セットでの選択投句となります。選が厳しい「くらむぼん」に挑戦するか、必ず一人一句以上選評付きで載る「へたうま仙人」を相手に“巧すぎるのでへたの聖地追放”を目指すか。その選択も楽しんで頂けたらと思います。


雑詠道場 くらむぼんが笑った


夏井いつき選


今月の天
その雲を失ひながら秋天は すな恵
 「その」という連体詞で始まる一句。なるほど季語は「秋天」ながら、「その雲」と指さすことで、実は「秋雲」を描いてみせる、というのが作者の意図に違いなかろう…と思ったが、いやいや熟読玩味してみればそんな底の浅い作品ではなかった。
 「その雲」とは秋の巻積雲。筋雲の一つ一つは、端っこのあたりから密やかに薄れ「秋天」の青さに溶ける。中七の「失ひながら」という描写は「秋天」の本意へ肉薄する措辞。「秋天」は「その雲」を失いながらその青を純化させ、やがて移ろう季節の力によって、「秋天」自身をも失っていく。切れの無い型が、失われていく時間の永遠なる循環を思わせる、実にしなやかな作品であった。


今月の地
鱗のやうな肋骨のやうな雲流る ちろりん
 「鱗雲」という秋の季語を分断するアイデア、巻積雲の形状に対する率直な比喩、「鱗」「肋骨」と生物を連想させる言葉に対する下五の変化球。作者の意図と読むか、作者の童心と受け取るか、いずれにしても楽しませてもらった作品だ。

狐火やひそと老人あやす声 さわらび
 「ひそと老人あやす声」が、生ぬくい吐息の如く伝わってきた。「狐火」という虚の季語の魅力を十二分に味わわせてくれた一句だ。

カンテラや夜気露となる川港 蓼蟲
通夜帰り露含みたる砂利を踏む
 「夜気」が「露」となろうとする未明の陰影、夜の「露」の幽けき気配の感触。季語の実景実感を、丁寧に言葉を選びつつ表現しようとする姿勢が、たしかな二句を産んだ。

秋の朝のひかりを湛えたるシンク  空
 前半はよくある措辞だが、後半「湛えたる」という動詞の行き着く先が「シンク」であるという新鮮! 「秋の朝のひかり」の新しい味わいに脱帽する。

子も親も銀杏もうたふ校歌かな うに子
 「子も親も」歌うことができる「校歌」を持つ母校には、大きな「銀杏」があるのだろう。今頃は、その「銀杏」も「うたふ」ように金色の葉を落としているのだろう。

余った月光すべり台をすべる 犬鈴
秋風のかたちを拾ふ紙袋
 「すべり台」に差すのは「余った月光」、拾った「紙袋」は「秋風のかたち」、この感知こそが詩だと思う。十七音を満たす作者の感性に共感する。

ごみ置き場追われカラスは月食べに  魔心地
 「ごみ置き場」を追われた「カラス」。あの「カラス」は「月」を「食べに」行ったのだよ、という絵本の先を読んでみたくなった一句。

キヨスクに見出し聳ゆる秋の暮 元旦
 「キヨスク」の本棚に並ぶ週刊誌だろうか、新聞各紙だろうか。「見出し」が「聳ゆる」かのようだという措辞に実感がある。季語「秋の暮」が、大仰な動詞をどっしりと受け止める。

鶏頭の繊維に孵化の肌触り 蓮睡
冬雲やリコーダーは大腿骨の白さ  北伊作
 「鶏頭」に「孵化」の触感があるといい、「リコーダー」は「大腿骨の白さ」に似ているという二者二様の感覚。「鶏頭」「冬雲」それぞれの季語の手触りに説得力がある。

柿は吊るして履歴書は火に焼べて  鞠月
熟れ柿や放置車両の崩れゆく 青蛙
 「柿」を吊すことと「履歴書」を火に投ずること、「柿」が熟れていくことと「放置車両」が崩れていくこと。似ても似つかない二つのことの共通点をあげるところに詩は生まれる。これが俳句の「取り合わせ」という技の妙味だ。


今月の人(じん)
秋冷の船名を言ひ見送りぬ 亜桜みかり
水の秋河馬は短き尾を跳ねて
秋雷のしきりや灘の生一本 ターナー島
秋口の水ためている壺と臼
ビール王たりし生家の金木犀 もね
キャンパスの濡れて明るき楓かな
草の穂や水を含んだ求人誌 不知火
合鍵を預かる生家秋夕焼
水澄みて湖底に白き花のあり 一心堂
鬼薄錆びし鉄路の風に揺る
選挙カー過ぎて清しく銀木犀 空
瀬音きしきし吊橋揺らしゐる無月
立冬に届く封書の固き口 依里
余命とは医師のペン先冬ざるる
秋風にさらし立体駐車場 じろ
秋晴の港の軽き排気音
大西風に背押され行く波の黙 一走人
向かい合う山羊の鈴の音曼珠沙華
十三夜レモン色なる膝の水 さち
秋空を見上げる新入りのアシカ
黒竹の艶しづみたる雁の秋 省三
ずんずんと引き入れらるゝや芒原
生物の房事の真上なる無月 緑の手
物忘れしさうな顔をして糸瓜
落鮎の影して青き河後森 ほろよい
旭光に鵙猛り合う御神木
ビニールの傘に降りたる秋の声 犬鈴
露しぐれ一生に会ふ人の数 うに子
放棄田やカーブミラーに結ぶ露 蓼蟲
団栗どんぐり一人が好きは嘘ぢやない  すな恵
蟷螂のゆらゆら樗の木高し こぼれ花
母のため息セイタカアワダチソウ  逆ベッカム
仰向けに倒れてみせる枯蟷螂 みちる
冬の星湯玉型なる釘隠し 和音
杭深く深く打ち込む厄日なり えりぶどん
深秋や2B擦れし母の文 てん点
べつたら漬提げて一駅歩こうか  松ぼっくり
ニット帽目深ミラノの焼き栗売り ゆき
鵯の嘴をはみだす白き翅 神楽坂リンダ
鵙きちきち鉄塔は雲引っ掻けて 鞠月
秋麗や青を吸い込む島と海 八木ふみ
澄み渡る秋と夏川りみの歌 八十八
味噌汁はぬるめが夜学子の好み 木琴
コスモスや村上春樹持って待つ 実峰
後悔の甘い甘い柿を供える 磨湧
レモン切る心半分切るように 藍人
退屈な時間喜ぶ紅葉かな 権ちゃん
石波止の先端浸る望の潮 樹朋
放課後の校庭のいろ茄子の花 紅紫
秋茄子の爆ぜるや種の百粒ほど お手玉
秋天の眼下に前方後円墳 輝女
酔い醒めにとぷとぷ寄せる金木犀  しんじゅ
胴抱かば弦は過ぐ秋の震え 大塚めろ
教室の窓覆ひたる糸瓜かな 人日子
やせこけた秋の蚊瓶の水を飲み  アンリルカ
夜霧の窓エンディングノートを書く  えつの
露踏んで橋の向かふは見知らぬ町  なづな
田に放してやりぬ病犬 コナン
敬礼は出所の祝ひいわし雲 浜田節
黒猫のぽつりと路上冬日向 哲白
黒猫の抜き足秋の昏捉ふ 野風
焼きいもの転がって止まる影と黙  親タカ
椿の実に太陽風の届きけり 樫の木
霧たちて温泉郷を平にす 春告草
骨壷の無残に軽し暮の秋 カシオペア
里相撲見にきし紅葉まだ早し 朗善


今月の並選
熱燗や面白きこと思い付く カラ嵩ハル
のらのらと呼べば三匹小春凪
乗り換えの屋根の途切れや頬被り
し忘れる事の多しや冬近し 空山
秋時雨ビニールハウス行ったり来たり
晩秋の帰国を告げるエアメール
月代や二人の夕餉を思案中 ぎんなん
ドビッシーの調べ無月の風に乗る
秋の声あなたに書きたき文のあり
十三夜合わせるピースあと一つ  西条の針屋さん
足音のあと追いかける秋の風
虹の森色なき風の駆け抜けり
流れゆく星は宇宙のちりだとか 紗蘭
子音一つ落として消えた秋の声
弔いに染まる楓を植えにいく
祖母と云ふ名前貰ひし小春かな 七草
布団より我を見つむる小さきあり
ぶり大根靴音高く帰りけり
雪月花花鳥風月今日の月 鯉城
走る走る孫はどんじり運動会
妻女らも黙つてお食べ秋なすび
締切の時刻迫るや湯冷めして カシオペア
幼子の数珠玉落としまた拾う
よったりのてんでに坐わる花野原 野風
足長きシャンパングラスそぞろ寒
黒き朽木白き菌に雨雨 樫の木
コスモスやもうチビなんて呼ばせない
トンネルの合間合間や蜜柑の黄 朗善
ふらふらと線路へ出たり秋の蝶
晩秋の雨粒時を押し進め 青柘榴
コンバイン藁籾除去し定位置へ
下車すれど揺れ通しなり寒北斗 さわらび
帰り花空よりことば降りて来よ
月代やオムニバス的夢のあと 逆ベッカム
風木戸を打つとき熟柿落ちるとき
今日の月アイヌの古老ゆるぎなし ゆき
村芝居化粧ののりのまだらなる
塩厚うして蓋となす冬隣 神楽坂リンダ
木洩れ日を背にのせゐたる小げらかな
指先へ選手宣誓天高し 八木ふみ
給料日まで三日痩せ秋刀魚食う
これといふ約束はなし鰯雲 八十八
天高し論語唱ふる児童ゐて
熟柿や加減を知らぬ叔母の口 木琴
秋高し三毛猫はみけシャムはシャム
柿好きの遺影はいつも笑いおり 実峰
早朝の案山子の衣装変える婆
涙まで干からびさせて案山子かな 磨湧
コスモスを食らいつくしたモノクローム
柏黄葉窓飴色の喫茶店 みちる
足音の吸ひ込まれしや冬の月
街灯の間隔長し秋の暮 和音
講釈の多い板前松茸飯
冬天に大師一飲み明けの星 レモングラス
小春日や赤いドレスの声空へ
小望月散歩しながら星もをり ペプチド
家族皆深煎ごまのドレッシング
橙とリブステーキと赤ワイン Blanca
ぬる酒をグイと飲み込み明日が来る
木犀や昨日の夢に銀の雨 まんぷく
秋暮るる愚をみる為に生まれ来て
誕生会無口で食べる蟹の山 サキカエル
三日前確かに有った柿ドロン
荒れた巣に秋太りして女郎蜘蛛 三竜
木犀や今日から熱いお茶にする
少年と五匹の鴨の会話なり 信野
少年の胡瓜の絵はがき届きたり
お母さんと叫びし少女鳥渡る 未貫
鈴虫とおしやべりしよう君亡き夜
村一の八方美人秋桜 こぼれ花
魔女ばかり集う食卓神の留守
足袋に熱帯びて神楽の夜ならん 蓮睡
稲束を我が子のやうに抱く我が子
碧眼のヒッチハイクや空高し 青蛙
幼老の出番や村の運動会
ふかふかの右手差し出す秋のサル  えりぶどん
両腋にはさめるだけはさむ秋茄子
逆光の笑みの幽し冬隣 てん点
冬晴や社へ延びる鎖金
秋暑しみすず通りの人まばら 松ぼっくり
みすずの実家単線尽きし街夕焼
菊の香や集団登校引率す 藍人
蟷螂は修羅の貌して祈るかな
行く秋の夕陽の中に父の椅子 権ちゃん
晩秋の十人乗りの渡し船
臭木の実追越し車線交はりぬ 樹朋
犬連れて携帯電話刈田道
えのころ草風を宥めてをりにけり 紅紫
ハロウィンの館のごとき製麺所
列車待つ読書の少女鳳仙花 魔心地
団栗もなき山里の未亡人
重荷負う駅ロッカーの秋思かな 元旦
秋深し何処の駅もポスト待つ
柿落葉色の深さを楽しめり お手玉
にごり酒くみて星ふる夜なりけり
秋の夜の明るき星の名を知らず 輝女
櫨紅葉遠回りして帰る道
青蜜柑爪立ててから島の女 しんじゅ
熟田津に船乗れもせず露に月
視聴率三%後の月 大塚めろ
行く秋やお買い物券出ましたよ
小春日や電話の歩く銀座街 迂叟
エプロンに夏痩せ隠す店の先
流星の一つは棚田細水へ 今比古
頬の向きかえてしばらく後の月
垣根越へ枝先重き石榴かな 人日子
百人の百人にある秋思かな
誇りもつ秋の薔薇とて人恋し アンリルカ
お恵みのおひさま浴びて秋初め
補聴器のしかと伝えし秋太鼓 ちろりん
陽の落ちてキンエノコロの金の意味
老い二人今治港の十三夜 えつの
月あかりハーモニカの音にさそわれて
白露やこの道行かば神の峰 なづな
お遍路の笠の内なる小春かな
秋の薔薇秘密めいたる路地の店 北伊作
露地抜ける十一月の影法師
(前書き 子象)
婿入りの砥夢に秋天一つやる コナン
捨てがたし布の草履や文化の日
大安の納車完了星月夜 浜田節
蓑虫の秘密が風に揺れてゐる
行雲や木犀の香のいづこより 哲白
冬晴や紫電一閃蜘蛛の糸
単線の赤いレールへ残る虫 親タカ
りんごの赤少しまといて熟女かな
頂点のかしげて月見団子かな 春告草
セザンヌに描かれるなら柿を剥く
ねむらない羊運動会前夜 ほろよい
水澄むやシャックリ止めるための術 不知火
白光の透きとほりたる芋の露 省三
居待月産院の椅子安まらず 鞠月
鰯雲パンダは食べる寝る食べる さち
揺れる灯に咽ぶ胡弓や風の盆 一心堂
猿酒やひよんなことから腐れ縁 もね
南へと大きく流れ鯖雲は じろ
寂しさと割と友達初時雨 依里
芒より小さき母の言い訳 すな恵
秋茄子を買い満潮の橋わたる ターナー島
鰯雲明日待つ園の万国旗 一走人
秋祭り若嫁の腹めだちぞむ うに子
無花果の緋色血の色朽ちぬ色 緑の手
野分中厨にひびく掛時計 亜桜みかり



【雑詠句募集】
投句三句/俳号(本名)/〒住所/電話番号と、「○月末日締切分」を明記して、編集室「くらむぼんが笑った」または「へたうま仙人」宛にお送りください。
締切は毎月末日《必着》です。
※末日を過ぎたものについては、翌月分とさせていただきます。
※ひと月に複数の投句があった場合は、一番最後に届いた投句のみを有効とさせていただきます。同一内容での二重投句はご遠慮ください!
 投句は誌上句会宛のハガキ&メールとは別でお願いします。
雑詠専用Eメールアドレス zatsuei@marukobo.com
インターネットや携帯電話からも投句できます。
http://www.marukobo.com/kuramubon/


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初学道場 へたうま仙人


原案:大塚めろ
文責:編集室

 寒うなったのう。みなさまはお変わりはありませぬか? 師走になり、なにかと気忙しいとは思うが、そんな時こそへたうまぢゃ。困った時のへたうま! へたうまは御町内を救うかもしれんぞ。ま、なにはともあれ今月も堪能してくだされ。

運動会ムカデ競争せ〜のでゴー たっ君
 Oh! これこそ、へたうまの極意ぢゃ! 見よ、この躍動感を! 臨場感を! 跳躍感を! なかなかやるではないか!

奏でるは蟹のハサミかいわし雲 だなえ
 この五光年先的表現に腰が抜けたぞ。只者を超越した只者ぢゃ。只者の中の只者ぢゃ。愛してしまったぞ。

コスモスにそば降る雨の無人駅  どんぐりばば
 コスモスは雨にも似合うのう。「そば降る」は「そぼ降る」の入力ミスかも知れぬが、秋の新蕎麦は美味いぞ!

秋日和野菜に覆いかけしかな 柊つばき
 寒暖の差が激しいこの時期は野菜の管理も大変ぢゃ。こんな愛を感じる句は誠にほのぼのとして良いのう。

おふくろは猪肉焼いてよく食べる  豊原清明
 なんと達者な母上ぢゃ。硬い猪肉なんのその。獅子奮迅のリアルさが報告調をぶっ飛ばしておるぞ。良いのう〜。

定型を破ってみたい秋の夜 ケンケン
 成る程、秋の夜長はつい考えるのう。定型が身についたら破りたくなるのが常ぢゃ。さあ、どうしたもんかのう。

秋の雨仲間四人でいいかんじ 小木さん
 三人では微妙なかんじぢゃが、四人は割り切れるからいいかんじ。秋の雨がそれを裏切る感じで、いい感じ〜。

温泉が湧くまで掘ろう竹の春 ポメロ親父
 地球の反対側に出ても掘り続けるんぢゃろうな。竹の秋が皮肉たっぷりぢゃ。徹底的に曲った臍は実に立派ぞ。
今日もまた会えると期待す金木犀  ゆまるばたこ
 胸がきゅんきゅんするぞ。遠くから香ってくる金木犀が甘く切ないのう。「期待す」の正直さが絶妙なヘタ味。

稲刈りの輪の広がりぬ土日かな おせろ
 田んぼから色々な声が聞こえていた一昔前の風景が目に浮かんだぞ。下五ヘタ風味の「かな」にうっとりぢゃ。


 以下、全て追放!

山間の動物の墓曼珠沙華 ぴいす
 動物への感謝にしみじみぢゃ。一際赤い曼珠沙華に包まれた墓の静寂に引き込まれるような句は……追放ぢゃ!

無駄なもの捨てて咲くだけ曼珠沙華  髪くろ子
 呟くような作者の決意が潔いのう。俳句にも通じる言葉に姿勢が正された……なんて思わせる句は、追放ぢゃあ!

鶏頭に見張らせといて独居する 今比古
 鶏頭に睨まれたら誰も手出しはできん。作者の余裕をも感じさせ釣針のように妙に引っ掛かかる句は、追放!

定まらぬ方位磁石の暮れの 洋子
 揺れながらも磁石はいつか向きたい方を向いておる。不思議ぢゃ……なんて、ワシを感慨に浸らせる句は、大追放!

トーストの蜂蜜ざらつく寒露かな 郁
 舌に感じる寒露がしみじみするのう。トーストの焦げ目まで見えるこんな句は、おしくらまんじゅう的追放!

ひと言を言い間違えて芋嵐 すえきち
 あるある感たっぷりぢゃ。「芋嵐」で救われるあたりが通好みの演出ぢゃ。こんな句は煤払い的追放ぢゃあ!

本棚の本あふれだす小春かな ひでこ
 知性と生命感があふれておるのう。小春を本棚にみる感性は、目貼りが完璧な部屋的追放〜〜!

暮れ早しアップ半ばの部活の子 未々
 授業が終わっての日の短さを部活の子に感じるアンテナが俳人ぢゃ。さりげないこんな句は冬茜的追放ぢゃ!

彼女は鎌鼬にやられたといふ よひら
冬立つやスコーンと地球を蹴り飛ばし
 タイプのまったく違った句柄なんぢゃが、季語が生きておるのう。こんな腕利きな句は、木枯し一号的追放!

 今月もたくさんの追放者を出してしもうたぞ。まったくもって大人げない事甚だしい。
来月が思いやられる昨今ぢゃが、どうか油断召されるなよ。


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放歌高吟


蒲団
夏井いつき

ゴムボートぶよぶよ初冬臭き湾
百の口さらして冬の蛸壺は
鴨の目のほそし日暮は紫煙色
歌詞おもいだせずマフラーぐるぐる巻く
首に鍵みみに木枯一号か
蟷螂の枯色に海猛りだす
むらさきにしぐれて断崖の垂直
蜜柑山の裏兵隊の墓ばかり
冬の松ぼっくり空とは真っ青な死地か
情死せる蒲団第三展示室
綿臭き蒲団軍馬のごと重し
ミイラ包むようなこんな蒲団に寝よというか


 先日の愛南町『トレッキング・ザ・空海』の参加者の中に、大塚めろさんの顔があった。彼は、ご存じ本誌雑詠道場にて今年度の「ヘタウマ仙人」をつとめる人気作家。急勾配の遍路道を歩きながら、めろさんは同行する人たちと軽やかにおしゃべりしている。何の話題かと耳をすませば、読書の話だ。「年齢のせいか脳みそのせいか、どんな小説を読んでもすぐ忘れるんで、何回でも愉しめるんですよ」と笑うめろさん。
 あはは! ワタシもそうだワ、と会話に入りたいのだが、なんせ大変な傾斜の上り坂、肺が飛び出そうな状態で登ってるもんだから、話しができない。口をきいたとたん心肺機能が低下し一歩も歩けなくなりそうな気がする。めろさん等の後ろ姿を目で追いかけながら、昨夜読みかけで伏せた本のことを思う。どこまで読んだっけなあ?
 ここ最近の誘眠本は、永遠の愛読書池波正太郎著『剣客商売』だ。何度読んだかしれないが、一編一編の筋をだいだい忘れてるので、何度でもワクワクする。年齢のせいか、夜中に目が覚めて眠れなくなる時も、下手に眠ろうとせず読みかけの『剣客商売』を手にする。江戸の地名を脳内古地図でナルホドあの辺りかと確認し、独特の人物描写を脳内モンタージュ写真で再生し、ゆっくりと愉しむ。なんといっても文章の味が絶品だから、飽きるはずもない。
 じわりと思い出してきた。昨夜読んだくだりには、主人公秋山小兵衛の息子大治郎の新妻三冬が、(同い年の)義母はるに「蒲団の手入れ」の教えを請うシーンがあった。「米が飯に変じる」ことすら知らなかった男装の女剣士・三冬が少しずつ家事を覚えていく成長を微笑ましく思う。そして「蒲団の手入れ」つまり季節の変わり目に綿を入れたり出したりして厚さを調節した時代があったことを思う。「蒲団」が冬の季語として生きてきた経緯を思う。季語という言葉が持つ時代の厚みを思う。
 急勾配の遍路坂は尚も続く。ずっと先を歩いていたはずのめろさんが、爪先だって木の洞を覗いている。ゼエゼエ息を吐きつつ近づき「何?」と問うと、ニヤッと笑って「猿酒探し」との答え。全くこの人ときたら、俳人人生を腹一杯満喫してるよ、と愉快になる。笑うと息が苦しいから笑うのを我慢しつつ、果てしなく続く遍路坂の先を見上げる。梢には冬の団栗。光る赤い実。落葉を踏む音。頂上はまだまだ遠い。




夏井いつき公式ブログ「夏井いつきの100年俳句日記」

http://100nenhaiku.marukobo.com/


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新 100年の軌跡


第3回


風吹いて 岡戸游士

朽ちし木の苔にて探る茸狩
やや寒し山の端の角くっきりと
戸板にも古きの木目秋木目
干柿を縦に割くこと難ならず
砂利道に沿うて山茶花珠のまま
張る脚や鋏引き締む枯蟷螂
風吹いて糸瓜実のなる季節かな
橡の実を平たく積みし売物件
真先に栗飯の栗抜かれたり
ぽつぽつと根元開きし刈田後
夕波のはねて鰯の如く去る
秋大気挟みてのぼる無人島
高音を目尻の先に秋の風
柱頭を反りたき曼珠沙華しをれ
雲に寄す月輪郭をはみだして



1993年生まれ。愛媛県松山市中島出身。中学生の時に興味を持ち始めて以来、のんびりと続けています。現在は愛大俳句研究会を中心にのびのびと活動させてもらっています。




冬と彩 原

人恋わば殺むるこころ帰り花
蝋梅や白の釦のすべすべと
背伸びするブーツの踵 冬菫
花八つ手秘密ばかりを飲み込んで
葉牡丹や隣の人はいつ帰る
一歩進むための勇気 雪中花
寒菊の震えるほどに青い朝
吾子の手を滑り落ちたる竜の玉
あたたかい茶が恋しいと石蕗の花
ゆっくりと右手に枇杷の花の色
厳しさの加速するごと冬桜
冬薔薇かたくななことは美しい
ふと足にじゃれつくポインセチアかな
室咲きや病身の子の翳す糸
洗えども冴えぬものもあり寒椿


岡戸游士
俳号「原」。愛大俳句研究会所属2回生。短歌歴は4年。俳句歴は1年目。




反れば勇気 都築まとむ

 岡戸さんは写生句を目指しているのか。どの句も光景が見える。その中でこの句が面白いと思った。

柱頭を反りたき曼珠沙華しをれ 岡戸游士
 曼珠沙華というとピラピラした蘂に気を取られるが、確かに柱頭なるものがあった。真ん中でまっすぐ立つはずの柱頭は実は「反り」たいのだ。しかし曼珠沙華は「しをれ」てしまった。「柱頭を反りたき」なので、作者自身が曼珠沙華なのかもしれない。
 全体を通して助詞の「て」の多用が気になった。散文的になったり、句が緩んだりする。そこに「切れ」を入れると句の印象が変わるはず。(実は私も実験中)

 原さんは今回すべて植物の季語で臨んだ。表題に使われている「彩」とは花のことか。
 色んな場面の「彩」を見せてもらった。

一歩進むための勇気 雪中花 原
 十二音一気に読み下した「勇気」のあとの余白が効いている。読み手はここで一度深呼吸をして踏み出したくなるはず。そのあと「雪中花」を置くことで、水仙の匂いが一気に体のすみずみまで行き渡る。冬の寒さをもろともせず咲く水仙は、一歩進むための勇気の象徴のようだ。


1961年愛媛県八幡浜市生まれ。自分の句歴11年に驚くばかり。第3回選評大賞優秀賞。



観察と感覚 樫の木

岡戸游士さん:対象の仔細な観察に好感を持った。

干柿を縦に割くこと難ならず 岡戸游士
 干柿を縦に割るのは難しくない(そして横に割くのは難しい)というような事柄を真面目に取り上げるのは俳人ぐらいではなかろうか。視点がユニークである。

柱頭を反りたき曼珠沙華しをれ 岡戸游士
 曼珠沙華は花の散った暫く後に葉が出てくる。花を「柱頭」と見立てた表現が新鮮。「反りたき」と擬人化することで自分に近い存在とし、花に寄り添っている。

原さん:十五句すべてが植物の季語で感覚的な句群。

蝋梅や白の釦のすべすべと 原
 「蝋梅」の花は蝋で作られたように見える。「白い釦」は貝釦を思った。黄色い蝋梅の花の柔らかさと白い釦の硬くすべすべした感触とが好対照を成している。

寒菊の震えるほどに青い朝 原
 「寒菊の震えるほどに」は寒菊が風に揺れる様子とも厳しい冷え込みの比喩(寒菊の擬人化)とも取れる。
 その瞬間を「青い朝」だと捉える感覚が鋭い。青は冷たさを感覚的に表現し、また青い空も連想させる。


1965年愛媛県生まれ。大分県在住の家具職人。第5回選評大賞優秀賞。


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Letter from spider garden


ナサニエル・ローゼン(訳:朗善)
松山市在住の世界的チェリスト ナサニエル・ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.8

Sumo in autumn
Wrestlers grapple, but I sit
on floor with back pain.

相撲見て腰を痛めて里の秋

(直訳)
秋の相撲
力士たちは取っ組み合う
ぼくは背中の痛みと共に床に座ってるけど


Our new puppy, Kabochan, is making our life exciting, I like to think.But it is also a big mess. He is loveable but uncontrollable, and we have been told about The Three Main Things:
  1. Patience
   2. Patience
    3. Patience

 我が家にやってきた子犬のかぼちゃんが、ぼくらの生活を一新したって感じ。けど、めちゃくちゃにもなった。愛すべき存在なんだが、手がつけられなくてね。ふたりで三つの大事な約束をした。一に我慢、二に我慢、三四がなくて、五に我慢って。

訳:朗善



ナサニエル・ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2011年より松山市在住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第21話
「Lady In Satin」高橋知己カルテット

 いつだったか「元旦の1曲目はこれに決めているのだ」と友人Tがレコードを持参し自慢した。アルバムはジャズドラマー古澤良治郎の「キジムナ」で、曲は「エミ(あなたへ)」。しかし、既にこの曲をレコードが擦り切れるほどに聴いていた僕はリアクションに窮した。

外は雪音符ゆるりと積もりけり 藤実

 ギタリストのTと同様に僕も気に入っている爽やかで、ちょっぴり切ない「エミ」のテーマは、廣木光一のギター、大口純一郎のピアノ、向井滋春のトロンボーン、大徳俊幸のキーボード、そして高橋知己のテナーサックスへと引き継がれる珠玉のアドリブソロ群の序章としても秀逸である。この古澤が作曲したテーマと日本人じゃないとこの味は出せない的な(ちょいと演歌が入ってるのかな?)高橋のソロに誘発され、生まれて初めて採譜という作業に挑んだ。レコードを繰り返し聴き、音程をとり、リズムを確認しながら音符を小節に落としてゆく作業には手こずったが、何とかやり遂げた。

これぞジャズ茶立虫と文男ちゃん  みしん

 茶立虫を“あずきあらい”と読んだ瞬間に“文男ちゃん”が活きてくる。今年9月25日、松山市総合福祉センターで開かれた高橋知己カルテットのコンサートの目玉は“featuring渡辺文男”だった。そう彼は“ナベサダ”こと渡辺貞夫の実弟である。「そのドラミングは日本のビ・バップの歴史そのもの」などと賛辞が贈られる超ベテランドラマーであり、今回のツアーでもその職人芸を存分に披露してくれた。
 ただ、みしんさんはジャズミュージシャンのプレイぶりを、しばしば人気アニメ・キャラクター等に見立てることがあるので要注意なのだ。“釜爺”とか……。

Lady In Satin 声は荒星まで届く  むうん

 「レディ・イン・サテン」はビリー・ホリデイの晩年のバラッドの名唱を収めた名盤である。麻薬に耽溺し、つぶれた声を魂で補うかのように歌うビリーが痛々しい。が、皮肉なことにこの絶妙なバランスが聴く者に感動を与えてくれるのだろう。チャンヒさんも僕も荒星との取り合わせにノックアウトされた。“レディ”はビリーへの敬意が込められた愛称である。

流星のビリーにサックスを泣かす  チャンヒ

木管のため息交じる冬木立 大頭

 「B・ホリデイの歴史的名作のカバーという斬新な企画! 歴史を深く吸収した上で、高橋知己達は見事に独自の歌心を展開。天国のレディにも聴かせたい、渋く光る一品!」と紹介され、昨年リリースされたアルバムが「Lady In Satin」である。松山のコンサートと同様に元岡一英のピアノと小杉敏のベースがサイドを固めレコーディングされた。信頼のおけるピアノトリオに寄り添われ、晩年のビリーの苦悩を代弁するかのように歌うトモキのSAXが切ない。

感傷に切り込むサックス冬銀河 蛇頭




http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


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ラクゴキゴ


第21話 文/俳句 らくさぶろう

『池田の猪買い』
〜一つの唄が大事な演出〜

あらすじ
 冷え気に悩むある男、いつも頼りにしている甚兵衛さんのところに相談に行く。
 甚兵衛さん、「それなら猪の肉を食べたらどないや。昔から“薬喰い”ちゅうて、うまいもんやで。」と猪の肉をすすめられる。
 「どこなら買えるか?」と尋ねると、「ここらへんのは古い肉や、買うなら新しい、とれとれの肉を池田まで行って買うのがええ。」と教えられ、池田に住んでいる猟師の六大夫さんを紹介してもらう。
 次の日、人に尋ねながらてくてくと池田まで行くとチラチラと雪が舞うような寒さ。なんとか六大夫さんの家を探し当て、六大夫さんにこう頼む。
 「どうせなら新しい肉が欲しい。これから山へ猪を撃ちに行ってもらえまへんか?」
 あまりの突然な申し出に六大夫さん、いったんは断ったものの、男が「雪がチラチラしてまっせ。こんな日は猟が立つ。」と言ったことから、「ほんなら行こか。」と腰を上げ、犬を連れて山に行くことに。
 ちょうどうまいこと、つがいの猪を見つけ、狙いを定めようとする六大夫さんの横で男はごちゃごちゃと騒ぎ立てるものだからうまく定まらず、とりあえず一発弾を発する。
 倒れている猪のそばまで行き、男は「この猪は新しいか?」ととんでもないことを言い、ムカッとした六大夫さん、猪を鉄砲の台尻で叩いたところ、実はこの猪は実際に弾が当たったわけではなく鉄砲の音にビックリして気絶していただけなので、そのはずみで目を覚ましてトコトコと歩き始めた。
 それを見た六大夫さん、
 「どうじゃ客人。あのとおり新しい。」



 ある意味、上方落語の見本とでもいえるような噺で、ハメモノも入るし見台という道具(演者の前に置いている机のようなもの)も使うし、大阪の地名や橋の名前などもバンバン出て来ます。
 主人公の男が思い込みが激しいやつで、「とにかく新しい猪の肉じゃないと!」という気持が強いので「これから山に撃ちに行こう!」とか、倒れている猪を見て「これ新しいか?」と訊いたりします。
 で、あのオチになる訳です。
 にぎやかな大阪の街から山の方へ歩いていくと雪がチラチラと降り始め、ここに三味線や太鼓(ボン……ボン……と雪が降るように静かに打つ)が入ると本当に演者の周りには雪が見えてくるようなシーンになります。
 そして、道を教えてくれるお百姓が登場するのですが、ここでそのお百姓が唄うのが伝承歌のような一節。
 「もはや明方なあ〜もう来はしょまい〜背戸で狐が“コン”と啼くよお〜」
 この唄がここに入ることで、田園風景に奥行きが広がり、唄が大事な演出のひとつだとあらためて感じます。
 ストーリーには関係のないと思われる数十秒が実はアクセントとして効いている、ということ。
 こんなこと人生の中にもありませんか?


薬喰おまへアホならわしはバカ


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本家慶弔俳句帖 第51回


文 桃ライス

洗濯機でマヨネーズを使いきろう
 マヨネーズや歯磨き粉を完全に使い切る器具が開発された。
 ネット情報によると、開発したのは熊本県西原村の経営コンサルタント原川修一さん(55)。洗濯機の遠心力を利用して容器の中身を取り出しやすくする器具「もったいなか」を編み出した。
 「もったいなか」は、スライド式で伸縮し、長さ調節が可能。「もったいなか」にマヨネーズ等の容器を取り付け、 洗濯槽に固定させる。 そして「脱水」で回転させると、使い残しの中身を寄せることができるという。
 油分の少ない低カロリーマヨネーズが容器の壁にこびりつき、じれったい思いをしたのが開発のきっかけ。試行錯誤を重ね、約半年かけて完成させた。特許を取得し、ネット販売している。大中小の3サイズで1200円〜1700円。ほとんどの全自動または2槽式洗濯機に使える。 斜めドラム型には使用不可。
 「高価な医薬品や化粧品には利用価値が高いのでは。“もったいない精神”の強い人に使ってほしい」と原川さん。
 ネット上では、「きったねぇなー」とか「洗濯機じゃなくて冷蔵庫で逆さにしとけよ」とか「電気代がもったいなか〜」等と呆れられている。

初雪や廻る廻るキューピーちゃん


江戸時代の物価
 日本刀や浮世絵、遊郭・吉原での“太夫の 揚げ代”などといった 、江戸時代に販売・流通していたものの値段を、現代の貨幣価値に換算した「江戸時代の物価表」がネット上で話題になっている。
 ネット情報によると、蒐集家・上田定緒氏が代々蒐集した古美術品資料を紹介するサイト「Teio COLLECTION」上で公開されているもの。同表では、江戸時代前 ・中・後期頃に流通していた金・銀貨、銭の貨幣価値や、当時に販売された商品やサービスの対価が、現代の貨幣価値に換算すると幾らになるのかを紹介している。
 表に記載された項目には、木綿生地や草鞋、番傘などの日用品や、握り鮨、豆腐、納豆、酒などの食品から、銭湯の入浴代、一般的な日本刀の値段、歌舞伎・芝居の見料、宝くじの当せん金、大工の手間賃など幅広く網羅しており、中には避妊薬や吉原への身売り代、不倫の示談金などといったものまで記載されている。例としてそのうちの幾つかを紹介しておくと、草鞋は1足248円、握り鮨は1貫132円、酒(中級酒)は1升2063円と、現在とほぼ同程度。ちなみに吉原への身売り代は娘の場合で330万円、妻の場合は528万円、不倫の示談金は1回あたり49万5千円だそうだ。

春星忌ポイント貯めてちょんまげ代


桃ライス…自分のことをワシとよぶ婦人グループ会員


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高田純三の勝手にエロ句解釈


最終回

昼頃にもどりてたたむふとんかな 小林一茶
 彼女と一夜を過ごしたふとんでしょうか。朝寝坊した二人。仕事へ向かう彼女を急いで駅まで送り、無職の男は街をぶらついて部屋に戻る。ふとんが乱れたままの六畳一間。ふとんに温もりはもうないが、隠微な香りはまだ濃厚にのこっている。ふとんをたたもうとすると、避妊具のゴムがぽろり。昨夜の激しい情事が脳裏にプレイバックして、ふとんにうずくまる男。そんな情景を詠んだ神田川チックな一句でございます。

東西南北より吹雪哉 夏目漱石

 冬の雪山。急に天候が悪化し、なんとか古い山小屋にたどり着いた男女。外は雪が吹き荒れております。男女は裸になって抱き合い、体を温めあう。いつしか東に向いたり西に向いたり南に向いたり北に向いたりしながら、お互いの体を弄り合うのでありました。エロ漫画等でよくあるシチュエーションではございますが、これがなかなかそそられる情景でございます。一夜明けるとすっかり良い天気になっており、二人は恥らいながら下山するのでありました。


 この稿も今回で最終回ということでございます。短い間でございましたが、ご愛読ありがとうございました。編集部のほうへは様々なご意見が寄せられていたようでございますが、私のような日陰者に少しばかりか光を与えてくれた編集部のみなさまに感謝しております。
 今後は再び地下にもぐり、みなさまがたの句をひっそりとエロく鑑賞させていただく所存でございます。では、ごきげんよう。

高田純三(たかたじゅんぞう)
物心がついて以来、日々エロい事ばかり考え続け、ついに俳句にエロスを感じる境地にいたる。名句を勝手にエロく解釈しては妄想に浸っているただのエロおやじ。


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一句一遊情報局


一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成24年10月度


【葡萄酒醸す】
葡萄酒を醸す時間の並ぶ棚 たかこ
醸さるる葡萄酒のこえを聞く夜更け  さわらび
選曲はボレロ葡萄酒濃く醸す  ドクトルバンブー
葡萄酒醸すソフィア・ローレン似の妻よ  もも
葡萄酒醸すギリシャの神の多情かな  太郎
葡萄酒を醸す乳房のたわわたわわ みえ
葡萄酒醸す焼印は深紅 流雲
葡萄酒を醸すや富士を眼前に 恋衣
再会のころは葡萄酒醸すころ 笑松
葡萄酒を醸す文明起源説 ほろよい
葡萄酒醸すあまた蔓めく古代文字 野風

《天》
太陽を寝かせつけ葡萄酒醸す  殻嵩はるお


【芙蓉の実】
父さんに六人の姉芙蓉の実 あねご
父に父と呼べる人なく芙蓉の実  冬井いつき
黒猫の番するバーの芙蓉の実 しんじゅ
書き写す奥の細道芙蓉の実 もも
芙蓉の実駅舎は木霊たちのもの  だんご虫
芙蓉の実淋しき象の鎖鳴る もね
朽ちながら減り行く瓦礫芙蓉の実  あおい
芙蓉の実きれいな灰をもらいたし  まーちゃん
胸の鬼暴れる芙蓉の実が割れる  ドクトルバンブー
はじければ化石の色よ芙蓉の実 竜胆

《天》
芙蓉の実ひとつが魂の重さ  樫の木
芙蓉の実無残に軽しつぶすつぶす  紫水晶


【月代】
月代の湯殿へ白き石踏んで 恋衣
月代や仏間に猫の鈴の鳴る うさぎ
月代や湿りをおびし猫の背よ  冬井いつき
月代や籾殻なおも燻りて 朗善
月代や右は故郷ジャンクション 日暮屋
月代や浜に淋しき蟹の穴 伊佐
月代の海の慟哭つつみけり はなみづき
月代や葡萄色なるインコの眼 さち
月代の色を宿せし貝の裏 華緒
月代や中大兄皇子の履 ちいち
開幕を待つ月代の椅子の千 ふづき

《天》
月代の古木霊降る音のして  ひなぎきょう


【浅漬大根】
浅漬大根山が近くに見える朝  漢詩人鉄化面
浅漬の大根山は星の里 ほろよい
浅漬の大根透ける昼の月 睦
浅漬大根食べきってから来る返事  不知火
結婚が浅漬大根連れて来た 日暮屋
晩婚の浅漬大根ほろ苦し 稲穂
浅漬大根齧る音が男を詰る 冬井いつき
浅漬大根やんわり責める朝帰り あねご
大根浅漬今朝桜島小噴火 樫の木
日本語を習い浅漬大根食い 朗善

《天》
古事記千三百年大根浅漬をポリポリ  西条のユーホ吹き
一日の家出浅漬大根かな  洋子


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

12月19日
初霜【初冬/天文】
その冬になって初めての霜。早い地域では10月、遅い地域では12月と、地理的条件やその年の気候によって時期は変動する。

頭巾【三冬/人事】
寒さを防ぐために、頭を覆うようにして被るもの。現代では使われることは少ない。

12月23日
注連飾【新年/人事】
清浄な地を縄を引き渡して区別したことが起源で、新年に民家の門口に、禍が入らないようにと飾るようになった。

小豆粥【新年/人事】
正月15日に行われる年占行事で、小豆を混ぜた粥の炊き上がり方で豊凶を占う(粥占)。粥には餅(粥柱)を入れ、食すると厄が払われるとされる。


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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第22回 文/写真 暇人

第11回まる裏俳句甲子園直前情報
 いよいよまる裏まであと一ヶ月と少しとなりました。今回を含め、2回に渡ってまる裏最新情報をお伝えしていきます。
 まずは、昨年最も問い合わせが多かった、チケットについてご案内を。
 以前は、エントリー参加でも観覧するだけでも、前売り1000円(当日1500円)をいただいていましたが、もっと観覧しやすい値段設定をしようということで、前回より、チケットは三種類(当日券を含めると五種類)となりました。
 まずは「エントリー券」……はじめからまる裏に参戦する目的の方はこちらのチケットをお求め下さい。前売り1000円(当日1500円)です。当然「雪」の句は作っておいて下さい。そうそう。チケットはわかりやすく色分けしてありまして、このチケットは赤色となっています。
 続いて「入場券」……俳句なんかよう作れん、見学だけで、という方はこちらを。前売り・当日ともに500円ですが、前売りで購入していて、やっぱり参戦したくなった、という方は、プラス500円を支払っていただくことでエントリーできます。こちらのチケットは黄色です。
 最後に、問い合わせが多い「当日精算入場券」……本誌を定期購読されている方などにお配りしているチケットです。が、残念ながらこの券はタダ券ではございません。このチケットを提示しても、500円を支払わないと入場できません。でも、このチケットをよく見て下さい! エントリーされる方は、当日料金で1500円かかるところが、なんとなんと前売り料金の1000円でエントリー出来るのです。500円もオ・ト・ク! そんなチケットは青色となっております。

 最後に、まつやま俳句でまちづくりの会からの悲痛なお願いです。
 このまる裏俳句甲子園、毎年あっぷあっぷで運営をしております。実は「坂の上の雲フィールドミュージアム活動支援事業」の支援も今年度で終了し、来年度は開催自体難しい状況に追い込まれる可能性があります。
 来年度の開催見通しを付けるためにも、今年度の収入実績が必要となります。つまり皆様によりいっそうのご支援を頂きたいのです。
 ぜひとも、パンフレットの広告費で支援を頂けないでしょうか? 小枠で3000円、大枠で5000円。ロゴなど入れたい方はプラス2000円となっております。広告を提供してくださった方には、まる裏俳句甲子園のエントリー券を広告費の金額分差し上げます。この広告は、企業・団体・個人を問いません。例えば「猫の留守番相手募集」や「俳句仲間募集中」なんかでも。まる裏参加のついでに広告を載せませんか? 締め切りは12月24日。お申込は事務局(mhm_info@e-mhm.com)まで。
 なお、チケット購入費や広告費の余剰金は「俳句甲子園実行委員会」に寄付されます。


次回は「第11回まる裏俳句甲子園直前情報2」の予定です。


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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選句&投句欄 ザ 句会


 このコーナーは読者による誌上句会。先月号に掲載された投句への、選句&選評(互選)を掲載しています。不肖編集室一同も参加しています。

第179回兼題
 「家族」をテーマに
 出題者 ふづきさん

 今月の互選『鰯の歯ぎしり』

7点句
信野、人日子、さかえ、カシオペア、りんたろう、蓮睡、魔心地選
じいちゃんのひざが好きです七五三 権ちゃん
  信野  家族のほほえましい様子が浮かんできます。じいちゃんがいいですね。
  人日子  小生の孫達もよくひざに座ります。本当に可愛いものです。
  さかえ  じいちゃんのひざに座りたく取り合いをする子供達。大家族ならではの茶の間の景ですね。
  カシオペア  三世代同居の仄々とした暮らしが見えます。家族が見えます。いいな〜。
  りんたろう  和の文化の中に、温かみがあります。
  蓮睡  お孫さん三人に囲まれているおじいちゃんを想像しました。周りには、その奥様や、お孫さんの親御さんも見えて、大家族で集まっているように思えました。テーマを大きく感じられたので、頂きます!
  魔心地  じぃちゃんの膝、オイラの特等席だったなぁ。じぃちゃんのヒゲの感触も懐かしい……。

5点句
浜田節、しのたん、だりあ、むめも、チャンヒ選
左官屋も大工も親子天高し 更紗
  浜田節  この頃は親の跡を継ぐなんてめずらしい。ましてや左官や大工はなおさらだ。親子で仕事のできる幸せが天高しの季語に表われている。
  しのたん  たまにはケンカもあるけど、受け継がれていく職人技。くつろげる家が建ち、この家に住む家族もうらやましいですね。天高しがいいです。
  だりあ  親の仕事を継いだ子供たち。素晴らしい親子へ空はどこまでも青く高く。
  むめも   あるある〜ほのぼのと昭和の香りがします。
  チャンヒ  昔の家族らしい家族の姿は、職人の世界にしか残っていないかも知れない、と思わされた。それも幻影か?

エノコロちゃん、たっ君、明日嘉、牛後、雪花選
鶏頭や家族といふ血どくどくと たま
  エノコロちゃん  家族の俳句。どの句もいい句ばかりであったかくなり、一句に絞るのはなかなかむづかしかったですが、何回も何回も読んでいてこの句が最後まで心に残りましたので一票です。家族と言ふ血はどくどくとこい〜〜いですよね。それだけにあったかいです。
  たっ君  家族に流れる血を鶏頭という季語で表現し、流れる様の表現もすごいと思いました。
  明日嘉  鶏頭と血どくどくに家族の絆の生々しさを感じました。
  牛後   寺山修司の世界のようで惹かれました。
  雪花  どくどくと言う表現が胸に響きました。赤いひだひだの鶏頭が続いていく家族の血とひきあいます。

4点句
こてぞう、洋子、ザッパー、八十八選
どんぐりのような会話して家族 親タカ
  こてぞう  どんぐりのような会話をしてみたい。
  洋子  どんなにか楽しい会話でしょう♪ コロコロと笑いあう仲良し家族が思い浮かびました。
  ザッパー  うーむ♪ どんぐりとは(笑)。
  八十八  大勢のにぎやかで温かい会話が聞こえてくるようです。

コナン、柊つばき、樹朋、更紗選
三匹を五人で分ける初秋刀魚 瑞木
  コナン  お父さんが威張っていたなつかしい頃。でっかくお父さんが一匹、後はお母さん子供達が半身づつ。初秋刀魚が物語っていると思います。
  柊つばき  わが家は四匹を八人で分けます。たいへんです家族が多いのは……。
  樹朋  三匹を五等分するにはどうすればよいか、はたと考え込んでしまいました。他の句を読んでいる時もそれが気になってしかたがありません。どうも作者の意図にはまってしまったようです。
  更紗  三匹を五人でという数字のリアリティ、俳諧味。家族というテーマにふさわしい句と思った。わいわい言いながら頭を寄せてつつき合っているのか、お父さんは一匹丸ごとかもしれないな〜なんて想像するのも楽しい。

ぎんなん、えつの、もんきち、輝女選
首都圏の娘に米やら蜜柑やら 八十八
  ぎんなん  我が家も同じく娘に送り、私にも未だに母から届きます。変わったものが入っているわけではないのですが、まるで玉手箱を開けるような気分になります。繰返しの「やら」にほんわりとやさしさを感じます。
  えつの  東京に住む娘さんに、愛情いっぱいのふるさとの香りをつめ込んで送る母親の姿が目にうかびます。
  もんきち  まるで私のことを言われているようで、思わずとってしまいました。
  輝女  親心ですねぇ。私も東京にいた頃母からいろんな物の入った小包(まだ宅急便が無かった)を送ってもらいました……が、現ナマの方がエエのにと思ったりする罰当りな娘でした。

依里、空、八木ふみ、正人選
姉だけに桃剥く叱りすぎたから 鞠月
  依里  心地よいばかりが家族ではなくて、この句の姉娘に対する母親の深い愛が姉だけにそっと桃をむいてあげる。それは、叱りすぎたから。胸がきゅんとなる句です。
  空  姉は妹ができた瞬間から、ずっと姉で、いつも叱られる側。ついつい叱る母も、冷静になるとかわいそうになる。もものせつない甘さがぴったりです。
  八木ふみ  兄弟げんかをしたとき、ついつい上の子の方を強く叱ってしまったときがあります。気持ちがよくわかります。
  正人  後半の微かな罪悪感が優しい。

Sg374、瑞木、青柘榴、亜桜みかり選
おでん食べたいと思ってたらおでん 猫ふぐ
  Sg374  家族あるある。
  瑞木  こういう幸せが一番嬉しい。
  青柘榴  おでん食べたいなあ。そんな日の夕食がおでんだった。それだけなのに、不思議な意志疎通いや、『愛』を感じます。
  亜桜みかり  シンプルさの中に家族が浮かび上がってくるところが良い。口語の語りも似合っている。

3点句
まるにっちゃん、ペプチド、ぐみ選
子にもなり親にもなりし秋彼岸 未々
  まるにっちゃん  無理して親孝行するのではなく、自然な親子関係を自分の子供に見せていればよいと思う。先祖代々家内安全!!
  ペプチド  彼岸に家族が集まり、お墓参りなど、その時には子にも親にもなる立場が実感されますね。
  ぐみ   私も親になったり子になったりしています。

藤実、桔梗、なゝ選
銀漢へ家族は舟を乗り換えた あき
  藤実  ファンタジーの世界が良い。楽しい旅になりそう。
  桔梗  天の川には、大切な人がいるのだ。ここにいる家族は、ともに決断の舟に乗った。と言う宣言が格好いい。銀漢へ宣言し、一同は銀漢へ巡り逢う旅に出るのだ。
  なゝ  ほのぼのと暖かくもない。せつなく悲しくもない。静かな決意と確かな同意があるように思える。

西条の針屋さん、ほろよい、元旦選
返信は五回に一度青みかん 不知火
  西条の針屋さん  里から届くみかんに暖かい親心を感じます。たまに返す返信メールは家族ならではの照れくささでしょうか?
  ほろよい  「家族」を匂わすフレーズはないのに家族を連想するのはやっぱりみんなそうなのかな?
  元旦  いや〜ご明察。遠くに住む愚息も息しているのかどうか。ま、男ってのはこんなものでしょうね。かく言う自分もいまだにこんな調子です。親から見れば、いくつになっても頼りない青いみかんのままなのかもしれません。

実、ソラト、駝楽選
二人暮しに慣れずおでんは余る 空山
  実  ついつい作りすぎるのがおもしろい。
  ソラト  家族という人間関係は必然的に変化するものであり、また変わらない中核を維持し続けるものであることを、十分に表現されている。
  駝楽  日常の一コマを感じました。でもおでんは食べたいという。

逆ベッカム、まとむ、あき選
家族という器よ秋草のさまざま いつき
  逆ベッカム  子も親もそれぞれの人生と思っています。まさに家族という器があればこそでしょうが……。
  まとむ  「家族という器」がいいなぁと思いました。秋草のように、いろんな生き方の家族がいて、それでもひとつ器の中で……みたいな感じでしょうか。秋の乾いた空気もそれぞれが自立した家族みたいなが感がありました。
  あき   家族の数だけ器の数も。秋草がしみじみ。

2点句
紗蘭、兼光選
焼芋と父が待っていてくれた駅 カラ嵩ハル
  紗蘭  自分の知らないところで家族がしていた思いやりの気持ちが伝わってくる句だと思いました。
  兼光  焼芋を持った父が改札にいた。手の中の新聞紙に包まれた焼芋の温かさがいっそう感じられた。久しく降り立ったその駅にもう父はいないのだろう。そうだ焼芋屋を探そう、と思っているのだろうか。

不知火、もね選
軽鴨のまづ親が行き子が続く 樹朋
  不知火  かわいらしい光景ですね。中七が特に好きです。
  もね   微笑ましいですね、これこそが家族です。

ゆき、山ぐるぐる選
どの窓も秋、世界が家族ならば チャンヒ
  ゆき  静かな過ごしやすい秋を楽しめない国や人々に思いを馳せている、スケールの大きな句。しみじみと感じ入りました。深い祈りと平和への強い希求が見事に表現されている。
  山ぐるぐる  窓ひとつひとつにそれぞれの家族があるけど、世界が家族ならば、というのは願いではなくて、そうだって確信にきこえる。自分の何世代前までを考えるとみんなが家族になるんだろう? 今年の山の紅葉はとても美しいです。

レモングラス、蓼蟲選
後の世もともにあそばむ花野にて 藻川亭河童
  レモングラス  いいですねえ。麗しい夫婦愛と私はみました。
  蓼蟲  後の世もともに飲みたき友がゐた。

たかこ、南骨選
とうさんの横にかあさん豊の秋 めろ
  たかこ  まあこれが理想です。姑が言ってました。おとうさん(舅)と二人で一人だからと。二人で専業農家を一生懸命やってました。舅が亡くなって二度目の米作りを今年しました。舅が空から見ているような気がします。
  南骨   開き直ったような単純さに惹かれた。「豊の秋」は確信犯っぽい。「家族」なんて簡単には詠めないよ。

ふーみん、お手玉選
鈴をふるような声持つ孫帰省 しのたん
  ふーみん  確かに子供の声は凄く高いのを鈴に例えるのはなるほどと言う感じです。屈託のない声が聞こえて来ますね。
  お手玉  久しぶりに帰省されたのは可愛いお孫さんでしょう。鈴をふるような声、私も聞きたいです。

清流子、権ちゃん選
焼秋刀魚箸の運びも親ゆずり ぎんなん
  清流子  先祖代々見よう見まねで受継がれですか。
  権ちゃん  まったくその通りで納得の一句です。きれいに食べる方ですか、汚い方ですか(笑)

ちろりん、よひら選
薄紅葉父似の小指子に孫に 八木ふみ
  ちろりん  季語は動きそうだけど小指と子と孫のポイントが絶妙! これぞ「家族」という感じです。
  よひら  私の短い小指は母から受け継ぎ娘へと引き継がれています。娘の狭い額は父(夫)から……家族です。

遊人、キミミキ選
コスモスや母が旧姓で呼ばれて なゝ
  遊人  母の人生に思いをはせる一時。コスモスが優しい。
  キミミキ  母が旧姓で呼ばれた時というのは、秘密を垣間見たような、ドキッとした瞬間。家族が知らない母の顔を見たのでしょうか? ミステリアスです。

ぜぶら、青蛙選
秋深し親子喧嘩の傍に猫 杉山久子
  ぜぶら  「ふむふむ、ほうほう、まあね。」と傍で見守る猫のことを思うと、「親子喧嘩は気長にやってくれたまえ!」という訳にはいかぬ。軽く楽しく早めの仲直りでお願いします。
  青蛙  秋深しとすると、深刻なのでしょう。けれど、ニャーと鳴く猫の声でとどまれるところもある気がします。

七草、空山選
母さんが笑えばわたしも笑ふ秋 ぜぶら
  七草  年老いて痴呆も混じり出した親の何気ない笑顔は、介護する子どもの胸に灯を点し幸せな笑顔をもたらします。
  空山  わたしは母を介護している人かもしれないし、母さんの大好きな少女かもしれない。母さんの存在は大きい

1点句
ネガフィルム透かし見ている夜長かな  逆ベッカム
  すな恵  なんのネガだったろう?と覗きこんだフィルムに映る家族の懐かしい光景、飽くことのない時間を過ごす夜長の豊かなイメージがよいです。

白桃やほどよき妻の乳房かな 藍人
  ひかるん  白桃のような奥様、うらやましいですぁ。

夫と息子のつきぬ話や木の葉髪 雪花
  多久美  最近は親子の会話が薄れてきている、こんな会話がいきかう家庭っていい雰囲気の家族だと思います。

鬼となる母への道や曼珠沙華 よひら
  藍人  鬼子母神も安達ヶ原の鬼婆も恐ろしいけれど母性の究極の姿。真っ赤な曼珠沙華を踏みつつ行く姿は何やら凄絶で美しくすらある。

シャンプーは個別の我が家文化の日  ゆりかもめ
  豊原清明  文化の日という季語が俳句を感じさせる。シャンプーに若さを感じ、面白い。

父と子の別れに秋気澄みゆけり 牛後
  未々  日本の男たちは多くを語らない。父と子、言葉にせずとも別れを惜しむ姿が目に浮かびます。遺される子の想いに胸打たれます。

月を見る悲しきことも歌にして ポメロ親父
  一走人  何か悲しい事があると、何となく夜空をながめます。月や星に語りかけなぐさめられている。又明日からもがんばろうと。

寝顔みるために起きます秋うらら すな恵
  安  私もそうです! 寝顔最高!!

天高く眠る我が家の青い鳥 山ぐるぐる
  希  青い鳥は幸せの鳥だから、幸せが早くきてほしいと待っているのかな、と思いました。

又一人連れて来るなり赤とんぼ 人日子
  まほろ  体が真っ赤に染まった蜻蛉との出会いには、不思議と心が躍る。そんな赤とんぼを誰かに見せたいという気持でもあり、また同時に、いつの間にか何匹も集まっていた赤とんぼの群れを表しているようでもある。

買い替えた夫婦茶碗や末の秋 ほろよい
  おせろ  子育てをおえて第二の夫婦二人の生活の始まりに夫婦茶碗を新しくして新たな歴史を作るのでしょうか 末の秋がいいと思いました。

秋うらら家族の揃ふ写真館 みちる
  カラ嵩ハル  時間差こそあれ、秋うららも、家族の構成もいずれ変化を余儀なくされることだろう。だから尚のこと、この暖かで満ち足りた平穏な一瞬がいとおしい。

独身は独身として秋刀魚焼く ソラト
  松ぼっくり  よく分かります、私の娘もおそらくそうしているのだと思いますので……早くいい人が見つかるといいですね!

おほかたは天の家族や秋の虹 遊人
  生糸  虹が出たら、誰かに教えてあげたい。けれど、そういう家族は天から見ている。私もだんだんそんなさびしい立場になって行くんだな。

家族七人おでんの大鍋笑いいる 信野
  樹  ぼくんちも7人家族で、ご飯の時はいつも笑って食べているので、同じ気持ちになりました。

兄ちゃんとイガイガささったくりひろい 実
  和音  兄ちゃんという表現に兄妹の仲良しな雰囲気が伝わります。じゃれあいながら栗を拾う姿が浮かび、秋の明るい日差しの中に笑い声が聞こえてきそうです。

嫁姑天秤担いで秋行けり まるにっちゃん
  今比古  今も昔も女は、家族の為、自分の為に働いて、無心に秋を深めている。だが、天秤担ぐって実際わかるかなあ……。

重力に加速してゆく布団かな 蓮睡
  ポメロ親父  高層階のベランダから落花して行く布団を見下ろしている作者が見える。

林檎赤々家族がひとりふえました まほろ
  みちる  林檎の真っ赤な色が生まれたばかりの赤ちゃんを連想させる。いかにもほほえましい。

秋澄むやグレンフィディッチへと氷 正人
  いつき  これを家族の句として投句するのは勇気やな(笑)。GLENFIDDICH(グレンフィディック)を「グレンフィディッチ」と呼ぶ年配の一人として、家族からプレゼントしてもらいたい銘柄の一つですワ。

薄命の血の流るるや帰花 蓼蟲
  ひでこ  さびしくてはかない句ですが下五に強さを感じます。

家族みな総出で月をうばいけり お手玉
  たま  仲良し家族がみえます。僕の月私の月と言いながらお団子でも食べているのでしょうか……月をうばって決まり!

嫁が来て笑いの増える豊の秋 コナン
  ケンケン  理想的でうらやましい家族像ですね。きっと毎晩、家に帰るのが楽しいのかもしれません。

家族てふ単位つくれず年暮るる 輝女
  破障子  毎年、今年の目標は「結婚」という知人がおります。その彼のこの一年も目標達成できずじまいで暮れようとしています。でも、電撃成就があるかも、なんて白昼夢が貪れるのも今の内と、励ましてやろう。

はじめから同居おでんの具の九種 まとむ
  ターナー島  「はじめから」が効いている。2人だけの生活を諦めての事か、それとも婚家に気に入られての事か? 多分後者だろうが、おでん具九種が作者を優しく包んで、読者をほっこりとさせてくれる。

暇そうな菊人形の家族かな 朗善
  めろ  家族の菊人形があるのか? あればあったで、なかなかシュールですが、何はともあれ家族というのは暇そうなのが一番です。波乱万丈な家族は大変です。

つられ出る子の戻さるる運動会 亜桜みかり
  杉山久子  お兄さんお姉さんの奮闘に思わず体が動いてしまった小さい子供。運動会の興奮と賑わい、臨場感ありあり。

今朝摘みしえひめみかんはフクシマへ  ちろりん
  親タカ  そう、これこそが家族を意図したもの。ザブトン十枚!

リレーして家族で繋ぐ未来夏 サキカエル
  平平  家族でバトンをつなぎ未来につながっていくのが良いと思った。祖父→親→子→孫

子の部屋の褪せしポスター天の川 だりあ
  朗善  カーペンターズやジョプリンのレコードジャケット思い出す。窓から見える天の川が懐かしい。

断ち切れぬ絆の海や秋暑し 松ぼっくり
  まんぷく  まだ暑い日が続く秋の海を見ていると、命を育み、そして又奪いもする海と生物との深い絆について自ずと思いが至るのは良く理解できます。

今月の無点くん
デパートも祭り囃子も秋半ば ペプチド
新米を家族で食べるうれしさよ こまりやま
冬だのう眠ってナンボの我が家かな 豊原清明
命令は父の特権鵙日和 浜田節
さんま焼く匂い隣は大家族 もんきち
昏昏と妻赤唐辛子になる えりぶどん
亡き兄のきりなき言葉金木犀 唐草サ行
亡き父の海戦記録読む夜長 一走人
寡黙なる夫酌みかわす雪見酒 レモングラス
DSの五台秋の夜「モンハン」す 柊つばき
孫作る肩叩き券敬老の日 キミミキ
秋の夜にまちが絵探しファミリーで 平平
食卓を囲む笑顔や春の宵 多久美
秋ともし生まれ来る人送る人 元旦
我先に食卓に付く秋渇き 生糸
子守唄囲むや里の芋煮会 西条の針屋さん
運動会父のリベンジ家族愛 こてぞう
爽やかや川の字に立ち南無大師 清流子
風の盆娘も孫も踊りのワ たっ君
栗飯の後に手渡す降圧剤 むめも
好々爺になりきる夫や栗ごはん えつの
猫二匹話ふくらみゆく夜長 青柘榴
消しゴムのだんだん縮む母縮む ケンケン
長男かぶれて銀杏の山ほど ザッパー
栗飯やみんな揃って食卓へ さかえ
親子なり同じ本見てなく蚯蚓 安
膝小僧抱く者多し秋の風 洋子
鰯雲増えて減りたる飯茶碗 青蛙
メニューから家族平和の秋チョイス 魔心地
時雨るるやそこそこの愛さえあれば もね
我を見ゆ星一つ生れ九月尽 明日嘉
子に草の名前をつける今朝の秋 兼光
ちゃぶ台の消えて久しき夜半の秋 ゆき
名前には最後にIある虫の声 ぐみ
秋高し父の形見の靴かるし 南骨
ひとはだといふもうれしき御櫃入 破障子
家族だから心配だから秋夕べ エノコロちゃん
戒名に誰も慣れずや天高し 桔梗
嬰児や畳の影つかみて秋 七草
妻にして母にはあらず毛糸編む ターナー島
にらめっこして似て笑う秋夜長 駝楽
家族といふ絆や我にオケラ鳴く まんぷく
姉さんのお下がり貰ふ猫じやらし 藤実
ばあちゃんの煮物ほおばる運動会 おせろ
色鳥や双眼鏡を奪ひあふ とりとり
大試験DNAを吹き飛ばせ 三月
残されし家族の絆秋深し カシオペア
初時雨ドアから入れて家の人 今比古
朝顔や寮母のまるで似ていない 紗蘭




第180回兼題
「好きな植物名をいれて一句」をテーマに
出題者 空さん

1 微笑みに微笑み返すれんげ草
2 蝦蛄葉仙人掌一鉢あれが詫びだつたといふか
3 つゆくさはやさしき人の好む花
4 強き香を放ちて黙す吾木香
5 茶湯座敷侘助一輪壁に添う
6 水仙は谷風の吹く方へ向く
7 野菜苗を買った葉牡丹はこの次に
8 いろがみに溶ける秋桜ラヴレター
9 パンジーの真ん中こびとのワンピース
10 小柄なる母の遺影や沈丁花
11 我が庭と言わんばかりの石蕗の花
12 七歳のすずらんの香を忘れない
13 地の同じところは指さずゑのこ草
14 石榴裂けけりピカソの横顔かと
15 日に透けて百日紅咲く牛の胴
16 山茶花が好きだと言った人は空
17 ひまわりの百万本に埋もれたし
18 赤ままを歌え腹はふくれずとも
19 恋文や花柊のこぼれざる
20 転がってまだついてくる落葉かな
21 子が巣立つ寂しさ嬉しさ冬苺
22 解散の合図にポインセチア置く
23 フィリピンでバナナを育てお酒買う
24 この島にコンビニは無い竹の春
25 まゆちゃんがくれたから好きまゆみの実
26 シクラメンつやつやしているピンク色
27 自惚れと恥じらいの間の水仙花
28 荒磯の風爽やかに石蕗の花
29 冬の虹ローズピンクの紅をひく
30 艶聞も熟女ならではアマリリス
31 無常なりセロリ齧って天に吠え
32 クマザサ揺れて初雪の滑り台
33 猫じゃらし負けるが勝ちと言う家訓
34 紫は高貴な色ぞ花菖蒲
35 母さんとスプーンで食べる熟柿かな
36 喧嘩した口で檸檬を齧っている
37 水汲みのみづの零れて草の花
38 ノラネコに取られた冬菫を思う
39 デイケアの妻を待ちをりサルスベリ
40 秋桜やいちめんに咲く自衛隊
41 愛と思ふ冬のダリアを抱へきて
42 そこここに金木犀に逢いしまち
43 コスモスや頭の悪さ身に合いぬ
44 ゐのこづちきれいな色の夢を見る
45 山茶花や授業は苦手古文なり
46 マツフグリ見上ゲコツコツツツク鳥
47 人知らぬほくろのありか月下美人
48 手のひらの厚く大きく冬薔薇
49 私をね優しくなでるもみじたち
50 夜な夜なに鼻のヒクヒク金木犀
51 岩手より愛媛に届く大りんご
52 木犀の花了へし路風すぎぬ
53 落葉松の枝の明るき冬の鵙
54 十字架の墓石傾く秋桜
55 帰り花不幸せそうにするなよ
56 着ぶくれて椿三十郎を観る
57 オナモミを投げ合う子らに未来あり
58 薄紅葉小枝を卓に誕生日
59 エキストラ主役夢見てかすみ草
60 白粉花の乳吸うて遊ぶ路地
61 パンジーの植え替え終えて日向ぼこ
62 祖父送る右手に白き秋桜や
63 白木蓮の高きは荒星はげまさん
64 青空に貼りついているハイビスカス
65 シクラメン八個並べしバースデー
66 向日葵の中に屍投げ入れよ
67 鶏頭のゴワゴワ乾く恋をして
68 手を離る用心深き青蜜柑
69 相席ノピアス縦ノリ俺モネギ
70 あとづさるキャッチボールや銀杏散る
71 柊の花より刺を愛しけり
72 寒いのになぜだか赤いもみじの葉
73 旧来の友に再会シクラメン
74 半世紀前の校庭花樗
75 足蹴などされるもんかと猫じゃらし
76 野仏と分かつおむすびお茶の花
77 ゼロ戦の空もくれんの涙かな
78 桔梗紋掲げ裏切りし枯野
79 女教師の大根二つうずみけり
80 訪ね人のポスター古りぬ花は葉に
81 クリスマスローズ夢見る母となりにけり
82 三十万の向日葵の目のどよめけり
83 烏瓜赤ければまた泣けてきて
84 サルビアやメロスの頬につたう汗
85 虹の森君と出逢いし曼珠沙華
86 節制す侘助の咲くあひだなら
87 信念は貫いてこそ黄水仙
88 捨てられて青い目光る猫じゃらし
89 カノン聞く出窓のひかり冬薔薇
90 ころがった肩掛け鞄アケビ取り
91 手折らんとて頑固一徹花芒
92 始まりは十六年前嵯峨の菊
93 幸せを纏う感覚キャベツの葉
94 紫は不良の色です冬薔薇
95 青蜜柑嫁もだんだん好きになる
96 水仙や勝手口より宣教師
97 大トリはナギナタコウジュ藤色に
98 爪噛めばさくら色なる秋思かな
99 日照雨降る谷間の湖の青紅葉
100 地につきし小さき人生福寿草
101 「沈黙」の海めがけ水仙の立つ
102 幸せにかたちがあれば冬苺
103 その胸に指のピストル冬薔薇
104 実石榴も弾けぬままぞ生きよ友
105 子は知らぬpの匂い美味し銀杏や
106 人参のスティック思案ほど囓る


次回兼題「SF」をテーマに 出題者 むめもさん
次々回兼題「婚」の字の入った句 出題者 朗善さん

【兼題の扱い方】
季語「xx」 … 副題含む季語を入れる。
「xx」をテーマに … 内容に沿って詠む。
「xx」の字の入った句 … 単語そのものを詠み込む。



めざせ!大漁旗(180号〜185号)
 誌上句会「ザ 句会『鰯の歯ぎしり』」では、選んでくれた人の数をすべて集計し、半年間で最も点数の多い方が「大漁旗」を獲得します。大漁旗を得た方は「最新十句」を本誌誌上にて発表することができます。

〈参加方法〉
 1 「今月の投句」から好きな句を選ぶ。(選句)
 2  その句の感想を書く。(選評)
 3 「次回兼題」の一句を書く。(投句)
 ※1〜3、俳号(本名)、〒住所、電話番号を明記して、編集室「ザ 句会」宛にお送りください。一人一句まで。選句は番号と俳句を共に記入して下さい。
  番号はお間違えなく!

  今回の締切は12月5日(水)必着です。
 Eメール宛先 kukai@marukobo.com
 インターネットや携帯電話から下記の場所にアクセスしていただくと、専用のフォームを使って簡単に投句&選句ができます。
 http://www.marukobo.com/kukai/


【現在の捕れ高】

16点
なゝ

8点
カラ嵩ハル

7点
権ちゃん

6点
瑞木
たま
親タカ
八十八

5点
更紗
コナン
あき
ぎんなん
牛後
猫ふぐ


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100年俳句計画 掲示板


 組長&編集長&組員さんの出演執筆一覧

テレビ/ラジオ
NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  12月4日(火)11時40分〜
  12月18日(火)11時40分〜

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「オリオン・柚子湯」(12月9日〆)
   「大晦日・風花」(12月23日)
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)・住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム・チャンヒのイラストポストカードが贈られます。



執筆
Pioneer Sound Lab. 音俳句
http://pioneer.jp/soundlab/
  ウェブサイト上に組長の選評が毎日一つ発表されます。投句も受け付けています。

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

愛媛新聞
 「集まれ俳句キッズ」毎週土曜日
 「秋の花まる俳句キッズ」12月8日(土)紙面掲載

愛媛新聞(キム チャンヒ)
 「ヘンデス俳談」毎月第一土曜日 兼題「寒卵」締切 … 12月19日(水)

朝日新聞
 第6回 夏休み句集を作ろう! コンテスト結果発表 12月11日(火)紙面掲載


句会ライブ/講演など
玉野市八浜小学校句会ライブ
 12月6日(木)

愛南合同句会ライブ in 内海中学校
 12月14日(金)

垣生小学校句会ライブ
 12月21日(金)


イベント
いつき組大忘年会
 12月1日(土)

写真俳句コンテスト
 キム・チャンヒによる、写真俳句 の入門・スキルアップ講座の開講
 12月2日(日) 10時〜18時 【吟行旅行含む】
 松山市内(宮島・広島・呉〜松  山エリアの移動含む)
※公式HP http://matsuyamahaiku.jp/contest/

NHK『それゆけ俳句キッズ』句会ライブショー
  12月23日(日・祝) 正午開場
  13時開演 15時30分終演(予定)
  松山市立子規記念博物館講堂
出演 … ブロック大会を通過した約30名の小学生、夏井いつき、テツandトモ、オジンオズボーン、チキチキジョニー
ゲスト … 堀ちえみ
※観覧希望申し込み NHKプラネット四国 089-921-1163


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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

お詫び
 先月号22ページ掲載の「句集の本棚」『水の唄』の紹介記事にて以下の誤植がありました。

誤 匠磨
正 蓮睡

 原稿執筆者の名前が別の方の名前に置き換わってしまっていました。正しくは蓮睡さんによる執筆です。大変失礼致しました。


文武両道の二大イベント!
瑞木 俳句対局龍淵王戦ではお世話になりました。終わってみれば、なんとも楽しい半日でした。なんか、すき放題やってきてしまったなと言うのが反省です。季語だらけの句を作ったり、対局中に審査員に自分の句を解説したり……あと、漢字に自信がなくて電子辞書を使った時間がもったいなかったので、日頃から漢字の練習を心がけたいと思います。次回は龍天杯でしょうか。楽しみにしております。
編 10月21日(日)に開催された俳句対局・龍淵王決定戦。俳句で闘う新たな形のイベントとして今後も開催していく予定。「龍天に昇る」頃の龍天杯をお楽しみに! なお、来月号では龍淵王決定戦の様子を特集記事にてお届けする予定です。

魔心地 運動会、めっちゃ楽しかったです〜。俳句は散々でしたが、競技では赤組勝利に貢献できたと思います。2年後、4年後と言わず、毎年やるべき!
編 10月28日(日)には約7年ぶりの大運動会が開催されました。親子で参加していた魔心地さんは縦横無尽に大活躍! エンジョイ&エキサイティングな一日のざっくりした様子は9ページ特集にて!

目から鱗の……
藍人 先月号の特集「俳句の整理術」の牛後さん。早速私もエクセルで始めることにしました。縦書きにするには、縦書きにしたいところをドラッグして、ツールバーのフォント名の前に半角で@を入れてEnterキーを押すと画面上で文字が90度回転しますので、それを印刷すると、あ〜ら不思議縦書きの文書になりますよ。
編 !! ……!? ……!!!(試して驚愕)

大漁旗へ感想&獲得の弁
杉山久子 ゆきさん大漁旗おめでとうございます。
 囲まれた 愛ではなくて赤とんぼ
 つづれ織り銀糸沈めて秋の昼
 思い切りのよさと繊細さに共感です。

ゆき 大漁旗獲得十句のチャレンジをさせていただきありがとうございました。次の挑戦を目指していきたいと思っております。
編 次は大人コンでしょうか。引き続き力作お待ちしておりますぞ!

締切過ぎてました!
元旦 大失敗です。選評大賞の締め切りを間違えてました。いざ応募と思い確認したら、とっくに過ぎておりました(涙)。ちなみに麿湧さんの「吸入器一生パジャマで生きていく」で、応募するつもりでした。残念、来年は気をつけます。しょんぼり。
編 ガーン!! 昨年非常に味のある選評を書かれていただけに残念! 今年はついに二人目の最優秀賞が誕生し、次回の盛り上がりが期待されます。来年こそはぜひ!

今年の忘年会のお題は?
輝女 大忘年会のはがきが今日届きました。事前投句のお題難しすぎ〜! 私、人生只今奮闘中! 負けたと思ったことも、勝ったと思ったことも無いのですがどうすりゃいいですか?
編 お題は〔人生において「勝ったな」または「負けたな」と思った出来事を詠んだ俳句〕。難しいと評判。さあ、どんな句が出揃いますやら楽しみです。

くざともの声
うに子 「くざとも新人紹介」お世話になりました。裾野でゆっくり季節を楽しみながらついていきたいと思います。
編 先月号「くざとも」で紹介のうに子さん。ちなみに同時紹介のダンボール看板さんは大忘年会に参加されるそうです。いよてつ高島屋でダンボール看板さんと握手!

先月号のアブクにて
更紗 ボツ覚悟でお願いした「句集の本棚」貸し出し、ご快諾ありがとうございます。早速お願いしちゃいます〜!
編 貸し出しと同時に「句集の本棚」の原稿執筆もお願いしました。Win-Winの関係ってやつ?

11月号放歌高吟「水澄む国」
山ぐるぐる 水澄む国を読んで涙がでました。あー書ききれない!
編 書ききれないもやもや感も俳句になったり。

組員の生活
エノコロちゃん いよいよ今年も11月に突入!! カレンダーもうすくなり、ペラペラと北風にゆれています。こちら県境の山の中は、朝方は冷え込むようになり、5℃ほどとひやいです。スタッフみなさまもかぜなどひかないように気をつけて下さいね。
編 あっという間に冬らしくなりました。山の方はもう雪も降りそう。

柊つばき 孫二人ベッドがいいと買いました。でも冬は寒いので、桃華のベッドの下にこたつをおきました。兄もいるといいだし今からこたつぶとんを作ります。
編 作るの!? 季語「冬支度」の現場の臨場感ありあり。

ゆまるばたこ 最近、職場の友人とお題を出しあって俳句を作り、批評し合ってます。自分でも気づかなかった作品の一面が分かり、すごく面白いです。
編 まさに職場句会ですね。句会続けてると友人の人となりがさらに見えてくるのも楽しい。

紗蘭 先月、体調の悪かった寮母さんが亡くなりました。自分をいつも支えてくれていた方だったのでとても悲しいですが、俳句は伝えにくい気持ちを伝える事が簡単にできるのだなと思いました。
編 鎮魂だったり感謝だったり。俳句にすることで伝えられる気持は意外と多いのかもしれません。

駝楽 通勤で江東区深川の界隈に通っています。芭蕉の像が通りにあるベンチに腰かけていたりします。
どんぐりばば 鬼北の出目駅は無人駅です。この地方はよく雨が降ります。南海放送は雑音の中、聞いてます。
編 脳内吟行ができそうな二通。片や「冬うらら」、片や「冬の雨」な感じ。寒くなってきたから気をつけて!


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鮎の友釣り

175

俳号 朗善

むめもさんへ 友釣ってもらって光栄です。句友っていいもんですね。ただの友達じゃなくて、ときにライバルというのが、わくわくします。

好きな言葉 「ソルト&ペッパー」そぞろ歩くカップルの前方に支柱とか出てきて、つないだ手を離さねばならぬ時に唱えるおまじない。切っても切れない縁だから、別れてもまた会うという願掛け。

好きな俳句 「いくたびも雪の深さを尋ねけり 子規」子規庵にガラス障子が入ったのは明治32年。その三年前、明治29年の作。畳の寒さ、布団の温さ、息の白さ、火鉢の炭、呼ばれる女たちの手の赤さなど、雪の日の美しさが、おせちの重箱みたいに詰まった句。

次回…久乃さんへ 「松山はいく」のプリティー担当。これからもよろしくです!


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告知


生まれてから現在までの代表句募集!

1月号特集は、毎年恒例、皆さんからの自選三句を掲載した「代表句集」です。沢山の方の参加をお待ちしております。

募集内容
 あなたの生まれてから現在までの代表句三句(一人一俳号まで)
 代表句についてのコメント
  ※コメント全体で100字以内厳守
 お名前、俳号(ふりがな)、年齢、住所、電話番号を必ず明記の上、宛先・件名を「代表句集2013」としていつき組編集室までお送り下さい。

※俳号と俳句には、よみがなを付けてお送り下さい。年齢は鑑賞の参考とするため句集に掲載させていただきます。御了承下さい。

専用ホームページ
http://2013.marukobo.com

締切 11月30日(金)必着
なお、応募対象はハイクライフマガジン『100年俳句計画』定期購読の方のみとさせていただきます。ご了承下さい。




年の初めの一大イベント
第11回 高校生以外のためのまる裏俳句甲子園

日時:2013年1月13日(日)13時から本戦
場所:松山市立子規記念博物館
主催:まつやま俳句でまちづくりの会
共催:松山市教育委員会
平成24年度『坂の上の雲』フィールドミュージアム活動支援事業

本誌定期購読者に同封しております「当日精算入場券」があれば前売券と同額の1000円にてエントリーできます。
※入場のみの場合は500円の入場料が必要です。




100年俳句計画投稿締切カレンダー

 
 11/30(金) くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 zatsuei@marukobo.com

 12/5(水)
  ザ・句会
 kukai@marukobo.com
  100年の旗手感想
  魚のアブク

 12/31(金)
 くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 100年の旗手推薦募集

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


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マルコボショッピング


マルコボ.コムオンラインショップマガジン化10年目までカウントダウン企画

企画別ワンコインバックナンバー集発売!

 本誌は2013年6月号より、マガジン化してから10年目を迎えます。
 そこで、マルコボ.コムオンラインショップにて、10年目までのカウントダウン企画として、バックナンバーのセット販売を行います。
 俳句について深く理解できる「一物仕立ての定義」セットや、組長の旅のエッセイと貴重な写真を掲載した「大連風聞」セット(全12冊2セット)、毎年恒例だった「万愚節新聞」セット(全6冊2セット)など、12月6日から半年間にわたって、毎週1セットずつアップしていきます。

  12月6日発売 一物仕立ての定義セット(3冊)
  12月13日発売 子どもと俳句を作ろうセット(4冊) 
  12月20日発売 大連風聞セットA(6冊)お得!

各セット500円
※但し、合計金額が3000円未満の場合は送料別途

12月21日発送までのご注文には、もれなくオリジナルクリスマスカードをプレゼント

詳しくはマルコボ.コムオンラインショップまで
http://shop.marukobo.com/


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編集後記


 気がつけば、もう師走。そして半年後の来年6月号で、本誌がマガジン化してから、10年目を迎える。
 僕が編集長になったのは、そのマガジン化したときから。その頃僕が俳句雑誌に抱いていた感想は、「陰気で毎号同じ顔をしている」ということ。それは恐らく、普遍的な俳句の真理を探究する雑誌の姿勢がそうさせているのだろうし、過去の俳句を継承し、こつこつと俳句作品を記録してゆくことは、俳句の芸術性を高めてゆく上で、重要な仕事でもあるとも思う。
 しかし本誌ではあえて、「新しい号が届いたら一ヶ月前の号の内容が古びてゴミとなってしまう俳句雑誌」を目指した。かつてストーンズの作品に対して、「最高作は最新作」という言葉が使われていた。新作が登場するたびに、過去の作品が煤けて見える、そんな雑誌になればという想いがあった。
 この十年、どうしようもないものも含め様々な企画を行ってきたが、改めてバックナンバーを読み返すと、意外と面白い記事がある。
 今月号の選評大賞はもちろん、運動会の記事も、数年後に振り返ってみれば、何かしらの一歩になっているかも知れない。
(キム)


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次号予告 (182号 1月1日発行予定)


次回特集
俳句対局 龍淵王決定戦
生まれてから現在までの代表句2013 など


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2012年12月号(No.181)
2012年12月1日発行
価格 600円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子