100年俳句計画11月号(no.180)


100年俳句計画11月号(no.180)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
変わるとき こまりやま


特集1
大人コンに向け俳句整理術&構成術


特集2
小島のり子トリオ Private Jazz Party & JAZZ句会



好評連載


作品

百年百花
 山澤香奈/松本だりあ/桜井教人/きむらけんじ


100年俳句計画作品集 100年の旗手
 空/のり茶づけ/稲穂

百年琢磨 平敷武蕉


雑詠道場 くらむぼんが笑った

初学道場 へたうま仙人

放歌高吟/夏井いつき

新100年への軌跡
 俳句/原/岡戸游士
 評/マイマイ/瑞木


読み物
Letter from spider garden/ナサニエル・ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
本家 慶弔俳句帖/桃ライス
お芝居観ませんか?/猫正宗
一句一遊情報局
句集の本棚

読者のページ
選句&投句欄 ザ・句会
大漁旗
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
くざとも
鮎の友釣り
告知
マルコボショッピング
編集後記
次号予告




表紙リレーエッセー


変わるとき
こまりやま

 私には冬眠癖がある。春から夏の間は自分でも不思議なくらい陽気で活動的なのだが、秋分の日を境にだんだんんとからだは重くなりこころはさみしさや物悲しい気持ちになりなかなか晴れない。そんな自分が嫌でずっと変わりたいと思ってきた。そして今自分が大きな変化の中にいるような気がしている。弱い自分を受け入れて一歩踏み出すとき。それは良い変化のはずなのがとても怖い。今までの自分のままの方が楽でいつものパターンにおちいりそうな自分がいる。そんなとき朝日に染まるピンクの蓮華岳や庭に咲く秋明菊を見たり毎日ちいさな素敵なもの喜びを見つけて写真を撮ったりメモするようにしている。それが自分を励ましてくれるから。花が日に透けてなんとも素敵に輝いている様子を見たときの気持ちを俳句にできたらなと思う。世界はいつもひらかれているから感じる心を持ってひらいていきたい。勇気を出して。


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特集1

大人コンに向け俳句整理術&構成術




 俳句を作ったまま、整理しないでおくのは、穴の空いたポケットに小銭を入れているようなもの。俳句は、自分だけの「財産」なのだから、せめてなくさないように、しっかり管理しておきたい。
 本特集では、「第2回大人のための句集を作ろう!コンテスト」に向けた、読者からの俳句の整理方法と、俳句の構成術を紹介する。
(構成 キム・チャンヒ)


俳句の整理術


鈴木牛後さんの場合
 エクセルで管理

 俳句の整理には今はエクセルを使っています。当初は、「俳句帳」というパソコンソフトを使っていたのですが、「分類」が一句にひとつしか適用できず、たとえば句会に出した句を“くらむぼん”に出すというように、複数の投句先があるときに不便なのでやめてしまいました。同じ句を同じ句会に連続して出したり、メンバーが重複しているメール句会に同一の句を出したりと、いろいろ失敗して考えた結果辿り着いたのがエクセルでした。
 エクセルでは、縦軸に俳句、横軸に投句先を設定し、交点のセルには投句した年月を書き込みます。そして、選者の選に入った句や句会で高得点を頂いた句にはセルに色をつけておきます。こうすれば、あとでコンテストに出すときなどに句を抽出しやすくなります。
 ワークシートは、「12年発表句」「12年未公開句」「12年未投句」というように分けておきます。ほとんどのコンテストは条件が未公開句なので、発表句を除外することができます。
 欠点は、俳句を縦書きにできないことです。俳句は横書きのときと、縦書きのときでは雰囲気がまるで変わります。誰か縦書き用エクセルを作ってくれないかな。

キム ワタクシ(キム)も牛後さんとほぼ、同じ方法で、管理しています。少し違うのは、入力している項目が、「日付」「俳句」「季節」「投句先」「備考」の5項目だけにしている点です。



すな恵さんの場合
 Evernoteで管理

 とにかくずぼらなので、今までも句帳のようなものを作りかけては放り出してきました。
 そんな私が出会った、「Evernote」というサービス。 スマートフォンやパソコン、どこからでも開ける電子的なメモ帳です。以下、私が俳句の整理に、「Evernote」を使おうと思った理由です。

1.テキスト・写真・Web、いろいろなかたちで記録できること。
 メール句会や俳句の缶づめのメールマガジンなら、もらったそばからノートとして保存。「一〇〇年俳句計画」もテキストでダウンロードできるので活用させていただいてます。「オトナの課外授業」などの結果は、該当ホームページをまるごとコピーできる専用のソフトで保存しています。雑誌など紙の媒体ならば、そのページをぱしゃりと写メして画像で保存。ノートなどに書き散らかした句案も同様にします。
 私は普通の句会には参加していないのですが、句会の記録なども写メでなら気軽に保存できそうですね。 (あとでスキャナーで綺麗に撮ろうなどと思っていると絶対に面倒くさくなるので、とにかく速攻ぱしゃりです、私の場合。)
 また、例えば道を歩いているときに句のアイデアが浮かんだけど、ああ立ち止まってメモできないよ〜ドラえも〜ん!というときには、音声メモでも記録できます。

2.タグがつけられる。
 タグとは各ノートにつける付箋紙のようなもので、例えば私は、自分の句が載っているものには「発表句」、また投稿前の句案メモなどには「草稿」というタグをつけています。

3.パソコンからもスマホからも、同じデータを見ることができる。
 ここが、肝心かもしれません。 年末の「大人のための句集を作ろう!コンテスト」には、手書き応募を除けば、パソコンからエクセルファイルに句をまとめなければなりませんが、なんと! 毎日スマホからせっせとEvernoteに放り込んだノートのおかげで、 私の作った句はほとんどすべてパソコン机から動くことなく見ることができるのです! はずなのです!(去年は大変でした…)
 ここで役立つのが、2でつけておいたタグ。 発表句、草稿それぞれのタグで検索すれば、すぐに今年作った句が拾いあげられる筈。

キム Evernoteはインターネット上にデータを保存する、クラウドといわれる代表的なサービス。ワタクシは、Dropboxというサービスを使って、先ほどのエクセルのデータを保存しています。 パソコンやスマートフォンを使うのが面倒な方は、Gmailやyahooメールなど、フリーのメールサービスのアカウントを作って、そこに俳句をメールで送ることで、携帯電話だけ俳句の保管や検索ができます。携帯電話を落としても、データが無くならない利点もあります。



俳句の構成術


キム・チャンヒの場合
 「百年百花」を例に

 俳句は一句独立で読むものだけれども、一句だけで発表することはあまりない。数十句程度にまとめられて発表することが多く、それぞれの俳句を魅力的に読者に届けるには、俳句を作る技術とは別の技術が必要である。
 俳句を並べる方法は、2008年4月号特集「愛媛大学俳句研究会 俳句を並べよう! 作品集を作ろう!」に詳しく掲載されている。そこから引用すると、俳句を構成する手順は以下の通り。

1.作品集に使えそうな俳句を、季節ごとにできるだけ沢山集める。
2.その中から、特に作品集に使いたい句を、季節ごとに数句選ぶ。
3.2の句から、作品集の最初の句と終わりの句を選ぶ。
4.3の最初と最後の句の間を、2の句で埋め、その2の句の間を、1の句で埋めて行くことで、構成する。
5.タイトルを付けて完成。

 読者は、俳句の順番を、時間の経過として読む傾向がある。従って、季節が逆行したり、時間が逆行したりすると、読みにくい作品集となる。
 また、俳句を並べる際に、ストーリーで繋がないのも、一つのコツ。それぞれの俳句の読みを限定してしまう可能性が高いからだ。
 例えば、今年4月号の「百年百花」に掲載した作品集「気配」の出だしは、次のようなイメージの連鎖で繋いでいった。
 
ブランコを離せば飛べる空だった
↓不安を帯びた過去の「空」と「悪夢」のイメージ
菜の花にいつも迷子になる悪夢
↓「悪夢」や「穴」の満たされないイメージ
ドーナツの穴ほど軽薄な日永
↓「ドーナツ」と「アヒル」の明るさや大人の幼さ
春の日のアヒルと友達でいるさ

 それぞれの俳句で言いたいことを、俳句の「取り合わせ」の感覚で繋ぐと、それぞれの俳句の余白を読者が埋めてくれる。
 「大人コン」の場合は、81句と多いので、同じようなイメージを連ねすぎると、読者が飽きてしまう。季節毎などで、雰囲気を転換させると、魅力的な作品集になる。



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特集2

小島のり子トリオ Private Jazz Party & JAZZ句会


Written by Masahiro Shirakata(俳号・蛇頭)


 “こじのり”こと小島のり子との出会いは一昨年の6月のこと。僅か2年余りで標題の催しが実現してしまった。

 秋の風フルート弾きの爪のうぶ 蓮睡

 満月はフルーティストに恋をした 大頭

 打ち上げにでも出ない限り、僕はライヴ後のミュージシャンに声を掛けたりはしない。案外うぶなのだ。が、こじのりに対しては違った。決め手は“日本酒”と“連句”つながり。前者はこじのりの二枚のCDで明らかだが、後者は彼女のオリジナル曲「藤のかげ」のMCで分かった。で、名刺交換、メール交信、とトントン拍子に話が進んだ。

 楽器持ち男女三人秋遍路 投槍

 熱く熱く月抱く君よジャズの海 てんきゅう

 昨年はマミコンこと堤宏文氏と僕(蛇頭)の共同プロデュースによるこのトリオのPrivate Jazz Party、これにJAZZ句会をくっつけた。ライヴ会場は風光明媚な海岸線高台に座する某ドクター所有の豪華別荘「M.Project」。で、今回はJAZZ句会主催の同Party+第55回JAZZ句会とした。

 天高しベース地を這うビルの角 日暮屋

 壁に床に君に私にジャズさやか 猫正宗

 9月23日(日)、会場は市内中央2丁目にある「ロフティ白方」3F。16畳のフローリングにコンクリ打ち放し風の壁とロフト仕様の中二階に続く階段。豪華さに欠けるが小洒落てはいる。この空間で淑女紳士50名が弾けてくれた。

 秋麗やカクテルグラスにあるくびれ 藤実

 フルートを水に割らずに聴く残暑 みちる

 小さな厨房を隠すバーカウンターの前にスタンドチェアーが2席ある。ここはいつき組の重鎮、神楽坂リンダさんと更紗さんの指定席とし、「修業させて下さい」と謙虚に協力してくれたTORADITIONAL BAR OLD NEWの女性バーテンダー古川千栄子さんのカクテルを存分に楽しんでもらった。

 秋鯖の残り香フルートの倍音 朗善

 猿酒呑むのに合うは小島JAZZ 暇人

 ミュージシャンや俳人たちの胃袋を満たすのは山形名物の芋煮と秋田名物いぶりがっこ、旬のサンマは塩焼き、これに土佐は清水鯖の刺身といきたかったが、今回は鰹のタタキとした。そして酒、酒、酒。

 腸にベースの重さ色なき風 マーペー

 フルートのまっすぐ秋の日を反射 ねこ端石

 遂にジャズライヴが始まる。澁谷盛吉のベースとこじのりのフルートはアンプを通さない生音。客は固唾をのんだ。そして喝采した。

 日の欠片摘んでベースに散る枯葉  ドクトルバンブー

 ベース奏者の何くちずさむ十三夜  神楽坂リンダ

 ノーブルなフルート・ソロの後に華麗な田口悌治のソロが始まる。これに澁谷のベースが渋く絡む。極上のインタープレイ!! まるで会話の様と眺めていたら本当に澁谷は何か呟いていた。

 新婚に未だ憂いのある葡萄  チャンヒ

 フルートに指沿はせては月を飛べ 藤実

 2ndステージでサプライズがあった。新婚の熟年夫婦を寿ぎ主催者からブーケが贈られた。そしてFly me to the moonがトリオからプレゼントされた。

 コスモスの路地を抜ければ笛のおと こじのり

 爪弾いてああそうだよぉ良夜更く むうん

 ジャズライヴが終わり句会も終盤。路地裏からまどろむような秋風が……。仕上げは、やはりキム・チャンヒの即興俳画である。藤実さんの月の句が描かれた。


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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2012年度 第二期 4回目


「マシュマロ」山澤香奈

ピアノピアノピアノ草の花ピアノ
御屋敷の庭に虫籠朽ちている
太陽への道を探している鶏頭
帰郷してこの道猪が出るの
読み終えてさみしき本よ椋鳥よ
名刺入れ・ライター・スマホ・赤い羽根
弁当の中に九分九厘林檎
秋の日や子のベレー帽落っこちそう
マシュマロの中の秋思に辿り着く
栄養ドリンク喉に張り付く鰯雲
病の子一人金木犀の窓
お祈りの言葉は風に草の実に


1983年生まれ。愛媛県の岩城島出身。子育て奮闘中。最近、好物が乾き物ばかりだと気が付きました。




「ギンガホンコン」松本だりあ

秋の薔薇ナンの厚さの確かなる
荘の鍵こつんと掛けて秋の海
ギンガホンコンの喫水線へ秋夕日
鉈豆は薄桃色にくだかれて
背を撫でて朝露へ置く馬の鞍
人参もじやがいもも芽の独り立ち
芒折るは折るは男の意気地とや
秋の蝶銃砲店へ迷ひなく
鹿の角の切り口太陽へさらす
ゆく秋のはと観光の大看板
秋冷やバンドネオンの息深く
蝋燭は兎のかたち星月夜


1942年生まれ。双子座。
句集『ダリア』(編集アトリエまる工房)。




「もみづれる」桜井教人

太子死後より初萩のより白し
銀漢の匂へる伊予の風土記かな
星ひとつ滅びゆく間の曼珠沙華
小鳥来る歯科医の話す標準語
月待つて姫皇子の名の停留所
後の月源氏三代にて滅ぶ
林檎割く刃は血の色を知らざりき
紅葉鮒水は光を従へて
数学を好きになる本鷹渡る
ページ繰る音一斉やもみづれる
引つ越す子には花の名を教ふべし
馬の背や秋の光は束にせよ


1958年生まれ。愛媛県出身。「日本俳句教育研究会」会員。




「水は澄み」きむらけんじ

月褒める人は余命を知らず
椅子蹴り倒して男戻らぬあるいは戻れぬ
居酒屋の借りた傘がひん曲がっている
ムンクの叫びより叫んで別れた
指差されたので仏像になる
笑っておれば婆さんとあんぱん食うはめに
どうしたものか隣の柿に手がとどく
綱引き引きずられる人生のように
鳥一羽わけあって高い空行く
公園の隅に四五人地球防衛軍
神のご加護などなくて鍋洗う
やや恨んだままに水は澄み


1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。
自由律俳句結社「層雲」同人。句集『鍵の穴』(文芸社)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)、『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)。特技・妄想、泥酔。




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読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2012年10月号 〜 2012年12月号 2/3回目)


 月草 空

着信音が谷の無月を脅かす
月草の群れて廃墟の別荘地
孕む埴輪の笑み豊かなる良夜かな
曼珠沙華よりも小さな祠あり
小啄木鳥こつこつ堂宇に修行中の札
明け方のむすび五百個秋祭
お不動さんの硬き火炎の秋気かな
秋天へ金蹴散らかし獅子踊る
神木の御幣鴇色秋夕焼
蟹淵へ吸わるるごとく紅葉散る


東京の巣鴨生まれ。大学で知り合った夫のふるさと愛媛に来て30年。花の種苗会社勤務、花の生産を経て、今は花屋を経営しています。でも、本当は栽培もせず、売買もせず、道端の花を見て「まあ、きれい。」というのが好き。



 柿の秋 のり茶づけ

龍田姫北向きて吹くトランペット
コスモスを揺らしているは猫と猫
秋虹の半分消えて観覧車
毎夜毎夜の月のごと客を待つ
蟋蟀と鉢合わせする勝手口
相続の話女の芋煮会
兄病めば母も病むなり柿の秋
種採りや巾着袋十個ほど
留守宅の干柿揉んで帰ります
爆音や刈田の空を軍用機


松山の片隅で食堂(飲み屋)の女将をしています。知っていますか? 女将って結構孤独な稼業です。俳句と知り合ってから人生楽しくなりました。だからこれからもマイペースでこつこつと……。



 影踏む 稲穂

龍潜む己斐町二丁目あたりかな
小鳥来るピカの記憶の水飲場
われからの鳴くや被爆樹一万本
秋夕焼ずんずん歩む街は影
カヲナシとすれ違ひたる月天心
浮塵子湧く朝の静寂を食らふごと
しけ寒の牛舎を巡る官用車
すさまじや山に二本の風の穴
冬近し鰐食らはんか食らはんか
ヒロシマの影踏む鬼も冬支度


食育の種まき職人をクビになった日、ラジオから聞こえた組長の声にしびれてから始まった俳句ライフ。今や歳時記を見ない(ここ大事!)日のない季語のおじさん!に。



読者が選ぶ人気俳人!
「100年の旗手」連載者推薦募集

 今求められているのは、読者が読みたいと思う俳句作家。「100年の旗手」は、連載する俳人を、編集室ではなく、読者が選ぶコーナーです。
 「この人の作品集を読んでみたい」と気になる俳人を、1人3名まで推薦してください。その中から、推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行います。
 あなたのお勧めの俳人を是非推薦してください。

 推薦の方法

 「この人の作品集を読んでみたい」という人を3名まで選んで(自薦は不可)、その俳号と活動場所(俳句の缶づめ等)/推薦者ご自身の俳号(本名)/住所/電話番号を明記して、100年俳句計画編集室「作品集推薦」係へ送ってください。ハガキ/FAX/Eメールで受け付けています。Eメールの場合は件名を「作品集推薦」としてください。また、誌上句会インターネット投稿フォームでも受け付けています。(アクセス場所は誌上句会コーナー末を参照してください。)なお、投稿フォームの場合を除き、推薦は他の投稿等とは分けてください。

締切 12月末日

 現在連載している3名の方以外なら、一度連載された方も含め、どなたでも推薦できます。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。



百年琢磨
先月号の「100年の旗手」に寄せて

ヒロシマの月 平敷武蕉

「水の熱」 稲穂
毛見人のどぶどぶ歩み入る田靴
 いま時、毛見人などいないと思うので、ここは、作物の出来具合いを厳しい目で慎重に検分している様を切り取っているのであろうか。

蚯蚓鳴くヒロシマ日記に引く朱線
 秋の夜、虫の音を聞きながら地獄の被曝体験の手記を読む作者の鎮魂の気持ちが静かに伝わってくる。地底から聞こえる蚯蚓の鳴き声は死者の声である。

月渡る被爆瓦の眠る川
 「月渡る」は歳月の経過。長い歳月を経ても変わることなく死者の霊を照らし続ける月の神々しさを称えている。背後に、地獄の記憶を忘れ、今また原発再稼働に走る人間のあざとさへの批判がある。


「秋麗」 空
初秋のサイダー瓶の仙人草
花びらを吹いて片寄す菊の酒
お鈴の音水澄む音と聞きなして
 一句目、初秋、サイダー、仙人草とさわやかなる事物を揃え、次第に大から小へと視点を絞ったのがいい。二句目、秋はお酒が美味いとか。きっと泡盛ではなく清酒なのでしょう。三句目、山の湖畔か。湖の水も空気も澄みきっている。さて、水の澄む音はどんな音であろうと、ふと思ったとき、それはころころと転がる鈴の音のようなものであるに違いないと決めると、妙に納得できたのである。


「良夜」 のり茶づけ
先頭のやがてわからぬ踊りの輪
秋晴に干せば家族のにおいかな
立ち上るコスモス母の底力
灯を消して良夜と気付く流し台
 一句目、人々の思い思いに踊っている祭の様子が動的に捉えられていて、詩情がある。二句目、平和な家族のぬくもりが伝わる。三句目、細く弱そうなコスモスだが、どんなに強い風を受けてもまた立ち上る姿は、決してへこたれない母にも似て頼もしい。四句目、一日の店仕舞いか。「灯を消して」としたのがいい。いずれも平穏な日常の一こまをよく切り取っている。国の裏切りとオスプレイ飛来で、空も心も引き裂かれる沖縄であっても、本当は皆、そうありたいのだ。


平敷武蕉
1945年、沖縄県生。著書『沖縄からの文学批評』。俳句評論集『文学批評は成り立つか』で第三回銀河系俳句大賞を受賞。俳句誌『天荒』編集委員。文学同人誌『非世界』編集責任者。



読者の感銘句

三月 「毛見人のどぶどぶ歩み入る田靴」稲穂。「花びらを吹いて片寄す菊の酒」空。「灯を消して良夜と気付く流し台」のり茶づけ。感銘句です。爽やかな秋の句群、楽しませて頂きました。

蓮睡 表題句に呼応して。感銘・共鳴句。「月渡る被爆瓦の眠る川」稲穂。瓦にまだ熱が残らざるを得ない。 「お鈴の音水澄む音と聞きなして」空。水澄むの本意を、上五とタイトル・表題句が昇華させている気がしました。「先頭のやがてわからぬ踊りの輪」のり茶づけ。一番上手かった人に、皆踊りを覚えて追いついて。きれいな輪に。(蓮睡)


*その他お便りは、ブログ『マルコボ通信にて、掲載します。




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 雑詠道場は、「くらむぼんが笑った」か「へたうま仙人」か、どちらかへ3句1セットでの選択投句となります。選が厳しい「くらむぼん」に挑戦するか、必ず一人一句以上選評付きで載る「へたうま仙人」を相手に“巧すぎるのでへたの聖地追放”を目指すか。その選択も楽しんで頂けたらと思います。


雑詠道場 くらむぼんが笑った


夏井いつき選


今月の天
月今宵神事のごとく出汁を引く 野風
 「月今宵」と詠いだし「神事の」と続けば、読み手は誰しも中秋の名月にまつわる神事が始まるのだと思い込む。ところがどっこい、この句の愉快は、中七の比喩が意外な下五を引っ張り出すどんでん返し。「出汁」?! と驚くままに再度読み直せば、「出汁を引く」行為の静かな緊張は確かに厳かですらあるよと、深い納得を覚える。
 「出汁を取る」という言い方が一般的ではあるが、「出汁を引く」には【旨味を引き出す】という意味もあるそうな。料理人それぞれに「出汁を引く」秘技があるとも聞く。一つ一つが正確に執り行われる「出汁を引く」手順は、まさに「神事」のごとく進み、香しき「出汁」は今宵の「月」のように澄み切っているに違いない。


今月の地
青空の音なく深し鷹柱 神楽坂リンダ
 「鷹柱」とは、【渡りの際などに上昇気流に乗って複数の鷹が竜巻状に旋回上昇をする状態】を指す秋の季語。「青空の音なく深し」の描写の確かさが読者の目にありありと「鷹柱」を見せてくれる。

曼珠沙華ひそかに飼へる庁舎かな  しんじゅ
 「曼珠沙華」を植えたわけではないが、知らぬ間に生えている状態を「ひそかに飼へる」と表現した点が巧い。それが「庁舎」という場所であることが、尚更の「ひそか」な実感。

颱風や詰所に燻し銀の盾 てん点
 「詰所」「盾」の二語から警備員のそれを思い浮かべた。「颱風」の近づいてくる夜だろうか。「燻し銀」の色をした「盾」の存在がどこか不穏でもある。

秋の灯のぱちんとついて暗くなり 朗善
秋の夜のとろ火の鍋を聴いている 犬鈴
 何気ない場面を描いているだけだが季語「秋の灯」「秋の夜」がシンプルな実感をもって立ち上がる。
 前句「灯」が「ぱちん」と点くのは当たり前だが、「〜ついて暗くなり」は「秋の灯」をリアルに素描している。後句、「夜」の「とろ火の鍋」に目新しさがあるわけではないが、「聴いている」に秋の思索の表情が見える。

鶏頭を太らせ隣国の怒り 依里
 「鶏頭」は実に様々な印象を持つ花だが、この場合は一種ふてぶてしく、油断ならない印象。「太らせ」から一転、時事へ舵を切る間合いもまた、油断ならない一句。名詞止めが腹にドスンとくる。

のうぜんの枯れ果て口紅を使ふ 紅紫
 赤の混じったオレンジともいうべき「のうぜん」の花の色は、見る者に強い印象を与える。その花が「枯れ果て」た後、作者は淡々と「口紅を使ふ」と己の姿を描写する。その口紅が「のうぜん」色であろうことは容易に想像がつく。朽ちない「のうぜん」がここに一花。

秋水を糾ふごとし鯉の水尾 すな恵
 【禍福は糾える縄のごとし】という諺もあるが、縄ではなく「秋水を糾う」という表現に心が動く。ましてやそれが「鯉の水尾」によってなされるものだと分かれば、尚更に鮮やかな「秋水」である。

画用紙に秋がどかんと現れる 八十八
 写生大会だろうか。各々の画用紙に様々な「秋」が描かれ、その中の一枚にはいかにも「秋」らしい景物が「どかん」と在るよ、という実感だと受け止めた。「現れる」の言い切りも気持ちいい。

金糸雀色の嬰のしやつくり秋うらら  緑の手
赤ん坊の寝息匂える無月かな 鞠月
 赤ちゃんの句はいつ読んでも優しくて心地いい。前句「金糸雀色」という比喩の優しさと愉快、後句「寝息」が匂うという母の実感。下五に置かれた「秋うらら」「無月」の季語が、一句の世界を慈しむがごとく包んでいる。


今月の人(じん)
旧跡を留むる山や鷹渡る 神楽坂リンダ
方円を満たすがごとき秋思かな
鍬浸す水へ生家の秋燈 緑の手
法師蝉啼きしだきゐる木偶の頸
露の玉背中に乗せて蜘蛛走る 朗善
親不孝通りを抜けてけふの月
若き人逝く百合はだめ菊はいや 木琴
母のれば舟はくるりと月を向く
そこそこの白桃そこそこの家柄  えりぶどん
焼きたてといふ仄軽きさつまいも
垂れ下がる糸瓜のやうに動けない 紗蘭
アルパカのまつげに爽やかをのせて
満月に誘われて猫出奔す こぼれ花
草の戸を閉じて花野の人となる
神木の空押し上げて椋鳥来 ほろよい
届きくる水琴窟の音も良夜
コスモスの境界線や借農地 コナン
満月や貨物列車は十二両
蓮の実の飛んで鋼の花托となる 省三
仏足石の濡るゝがごとき良夜かな
犬のゆく道がわが道草の花 とりとり
栗を剥く眉間にしわを寄せぬよう
天金の埃をぬぐふ震災忌 ふづき
歯の麻酔切れ始む鳳仙花ぷちん
秋の灯や言ひたきことは追伸に うに子
道聞かるる我も旅人 花野ゆく
花野原ひとりでゐるとすれ違ふ なゝ
どの花野にもこのボタン落ちてゐる
台風の過ぎて古代の貝を吹く 実峰
秋刀魚買う任侠物の予告あり
宿帳に月齢表のある葉月 もね
跡形もなきサティアンや曼珠沙華
追伸に無心のありし枯芙蓉 迂叟
ペン皿に夕日の残る百日紅
秋天を呑み込むごときカルデラ湖 なづな
夜明けまでラジオの時間ちちろ虫
海峡の渦に残してきた秋思 魔心地
秋茄子の尻うへにして浮かびたる すな恵
青蜜柑コンチクショウとばかり剥く  猫ふぐ
発つ街は真鍮の色十三夜 鞠月
雁渡し漁港の錆の軍手かな さわらび
褪せゆくに癩のごときや曼珠沙華 みちる
喪の儀式海一枚を大夕焼 松ぼっくり
天高く玉入れの籠支えし子 よひら
霧のわく山荘に寄り語り合ひ  レモングラス
冬瓜の白さを淡く淡く煮る 不知火
林檎擂るあのころの母戻らんか ゆき
色町の句碑の周りの芒哉 輝女
赤灯台秋の大潮八ノット 権ちゃん
人体に五臓六腑といふ花野 藍人
獣への供物のごとき案山子かな ソラト
橋脚に揺らぐ光や秋暑し 一走人
隠しごとそれだけですか曼珠沙華 洋子
ワカサギは海の雫という噂 和音
草紅葉映して重き水の色 依里
裸眼さらして新月を吸ひにけり 犬鈴
秋麗のスタツカートで喰ふ饂飩 しんじゅ
看板の余白の白き秋の夕 紅紫
夫に人事異動や秋刀魚が焦げる 空山
秋蝶の落ちて広がる海の青 一心堂
街路一つ向こうに通う秋の風 青蛙
夕暮れは淋しからずや草の花 お手玉
秋の日の温きサドルや小市民 蓼蟲
どこまでも遠く背中と金木犀 磨湧
どんぐりのきれいに落ちて雨の道 じろ
七夕の笹の沈める河口かな ターナー島
来し方やどこを取りても草の花  ひなぎきょう
絵はがきを栞代わりに林檎剥く  亜桜みかり
ゆく雲や秋草ほどのあてもなし 今比古
残月や古文書にある絵空事 野風
満月の海原息を潜めたる 浜田節
自転車の真正面からいわしぐも ぎんなん
園児らに腹まで見られキリギリス 北伊作
草の実や世界に散るやなゆたほど ちろりん
サスペンスドラマの金魚赤と黒  鯉城


今月の並選
大阿蘇を雲のあそべる花野かな 一心堂
さやけしき天守の風に吹かれをり
隣国へ許可なく入る野分かな 八木ふみ
コスモスや園児の鼓笛聞きたがる
栗南瓜「花嫁」とある箱に入れ
21時妻恋ふ虫の律儀さよ 哲白
かなかなに夕日にまみれ児ら奔る
白壁に濃き人影や秋夕日
松手入思案の前に手が動き 樹朋
嬉々として砂浴びするは秋雀
木の上に熟柿すすりし日の遠く
人らしき細胞目覚む星月夜 カラ嵩ハル
農夫と赤蜻蛉ひときわ忙しい
アンパンマン列車だコスモスの乱舞
赤赤赤赤赤白赤曼珠沙華 柱新人
新涼の母の手さする夕間暮れ
膝小僧眺めて宿の夜長かな
申し込み用紙六枚書き秋思 じろ
初秋のジャズの弾ける打放し
補助輪の二台と出会う鰯雲 不知火
初秋刀魚きれいに食うて決心す
明け方の夢の残像蚯蚓鳴く さわらび
こめかみにとどまる頭痛後の月
自叙伝の2部届きたる神無月 レモングラス
旅先の写真こもごも小春かな
眠り得ぬ指先夜這星を追ひ よひら
紅葉かつ散る逝く人のありてなを
伊佐爾波に太鼓響きて蟷螂跳ぶ 七草
恙無き温泉の街暮らしや秋に入る
団栗を条件反射のごと拾ふ 輝女
身ひとつで色なき風に吹かれけり
一点の曇りなき空秋愁 一走人
円やかに年老いし母冬すみれ
名月やポケット探れば一円玉 空山
野分雲むかえる準備できてない
絆とふ呪縛石榴の裂けにけり ソラト
走つても走つても赤蜻蛉の土手
永久と言ふ色鉛筆や漆の実 唐草サ行
引くこともあるかも知れぬ月の弓
幸運の遺伝子香る今年米 むめも
猫じゃらし自己責任の不適切
秋空へ一途に向かう滑走路 Blanca
秋の暮トランペットの音の一つ
電源を切っても切っても桔梗かな 磨湧
水溜まり自分を見つける赤まんま
台風が1番恐い母や逝く カシオペア
月白の遺影やさしく微笑むや
新米や一家一年六袋 青蛙
野分して主不在のポストかな
名月に届けや我のおけら節 まんぷく
温め酒あぶり鰯をコンビニで
紫の花野ふわふわ駆けぬける お手玉
鬼の子のゆるりと糸の強さかな
秋晴れや五人せっせと剪定す 青柘榴
溢蚊の止まれる腕の重きかな
秋の夜と銀座若菜のおつけもの ペプチド
人寄りてさんじゅうまるの秋の鯖
爽やかやレンタルサイクル回収中 権ちゃん
デジカメに入りたくない秋あかね
衝撃の衝突秋蝶のダイブ 和音
姑と仲良いつもり秋なすび
秋彼岸忘れ形見の猫の鳴き ぴいす
秋晴れや賑わう海峡レストラン
ひとつひとつ終止符打つや秋に入る  オレンジ日記
二年目もせっせと水に浸けぎんなん
駆け出しのゴッホ展向日葵を観ず かのん
火の神をうならせ秋の夜の集い 八十八
ぶどう五個めぐるじゃんけん師も交じる
車椅子秋風頬に手は車輪 たっ君
案山子祭モデルは五輪選手なり
虫の音のバトンつなぎて戸口まで  ひなぎきょう
木の実降る希望は核の中に在る
青棗身をめぐらせば灘青し ターナー島
秋の芽や刻きて潮の動きだす
うちぬきの映る灯りや秋祭 西条の針屋さん
鳥渡る届かぬ愛に笑み返し
衣被今さら聞けぬ裏事情 亜桜みかり
吹きこぼしたる秋茄子の御御御付け
鬼の血を隠して歩く冬隣 大中博篤
またデジャブ プールに・全身を・浸ける
流星の一つは棚田細水へ 今比古
頬の向きかえてしばらく後の月
満月や幸せなんてこんなもの 浜田節
ポケットのレモン告白はこれから
モノクロのアルバム開けて母の秋 ぎんなん
泣きたければ泣いてもいいよ赤蜻蛉
雨空に帰燕の群れの乱舞して エノコロちゃん
顔洗う秋水に知るいつのまに
獺祭忌歯科へ急ぎの車椅子 えつの
手ひねりの花器に土産の花蒲
石垣の反りて秋空青深し 北伊作
おさがりが嫌で泣いた子ねむの花
山相手に詩吟する人鷹渡る 三竜
ピザ配達バイクの乙女曼珠沙華
秋の香の迷ひこむ窓クモ二匹 アンリルカ
鬼花とよばれうつくし彼岸花
起立礼号令なしに今や秋 ちろりん
青臭き我が文字のある秋詩集
夕凪や千畳並ぶ瀬戸の海 人日子
街路樹の椋鳥抱へ眠りけり
楽しくば声出し笑へ猫じやらし 鯉城
飲み頃やずいと出でたる望の月
泣き止まぬ喪服の方へ赤とんぼ 木琴
山門の鬼瓦抜けくしゃみひとつ 魔心地
やはりコスモスを無視する黒揚羽 猫ふぐ
鎖骨浮く女無月の闇に佇つ みちる
髪一本なびかすほどの秋の風 紗蘭
謝れば済む話でもなき溽暑 松ぼっくり
しどろもどろに断りて古酒舐める 鞠月
林檎もぐ子等の眼の揺れにけり てん点
割り印の押しそこないし秋暑し ゆき
秋思飼ふ心の深きところにて 藍人
席取りのチーフとティッシュ敬老日 ほろよい
猫バスの光放てる夜長かな もね
名月や引っくり返す月見うどん えりぶどん
秋の風へんろ石饅頭詰め込んで 洋子
やんわりとギリシア神話の秋を吸う 依里
掛け違ふボタンの穴を秋の風 犬鈴
小鳥来る渚まで押す車椅子 ふづき
爽籟の岩の泡間に生まれたし しんじゅ
消えさうな根元でありし曼珠沙華 紅紫
近道のはずが迷ひて夕月夜 うに子
花首が洗面器いつぱい曼珠沙華 蓼蟲
秋分の熊がしやつくりしてをりぬ すな恵
萩散るや尻尾を残す野良の猫 実峰
白木槿昨日散ったか白のまま コナン
ぶら下がる烏瓜一つ旅にあり 省三
封切らぬままの一通秋の暮 なづな
年ごとに子どもの増ゆる案山子かな とりとり
大花野飛び立たぬやう四隅に石 なゝ
終戦の母の記憶の曼珠沙華 逆ベッカム



【雑詠句募集】
投句三句/俳号(本名)/〒住所/電話番号と、「○月末日締切分」を明記して、編集室「くらむぼんが笑った」または「へたうま仙人」宛にお送りください。
締切は毎月末日《必着》です。
※末日を過ぎたものについては、翌月分とさせていただきます。
※ひと月に複数の投句があった場合は、一番最後に届いた投句のみを有効とさせていただきます。同一内容での二重投句はご遠慮ください!
 投句は誌上句会宛のハガキ&メールとは別でお願いします。
雑詠専用Eメールアドレス zatsuei@marukobo.com
インターネットや携帯電話からも投句できます。
http://www.marukobo.com/kuramubon/


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初学道場 へたうま仙人


原案:大塚めろ
文責:編集室

 秋深し。みなさまいかがお過ごしかの? 爽やかな季節を満喫してますかのう? 今月も濃ゆい句を送ってもらって恐縮ぢゃ。さあ、へたうまの世界を心ゆくまで彷徨ってくだされ。


詳しくは誰も知らない茸狩り ポメロ親父
 喰える茸のある場所は教えてもらえないし、まったくもって茸狩りとは正体不明の神秘な行事ぢゃのお??

扇風機の掃除して羽根折つてしまつたよ 天玲
 掃除くらいで折れてしまうほど使い込んだんぢゃな。句の善し悪しはさておき、扇風機に変わって礼を言うぞ。

古酒抱いて胸の痛みぞカウンセラー
鼻づまり薬局美女や秋時雨 豊原清明
 薬局美女は美人局に字面が似んでもないが、いろいろ理由をつけて通う作者の根性に敬服ぢゃ。「秋時雨」も「古酒」も二句合わせて切な過ぎるぞ。

女郎花たとへば阪神ファンの人 ケンケン
 女郎花と阪神カラーはショートしてしまうが、思わず詩の芽生えをほのかに感じてしまうんぢゃな。うんうん。

飼猫の身がまえておる秋のはえ 柊つばき
 「秋のはえ」ごときに野良猫はかまっておれん。「秋のはえ」のノロノロ加減と飼猫の相性がベタでええのお。

ポケットに携帯のなく秋の風 おせろ
 季語から、携帯がない訳が想像できるぞ。そのベタな関係が美味しいの。携帯依存症候群(?)にはなるまいぞ。

秋祭り半纏似合ふ人でした 未々
 似合うというシチュエーションはいろいろあるが、半纏とは恐れ入ったぞ。口語で淡さが倍増ぢゃ。好物、好物〜。

水澄みて刃を持てる句詠みたし 元旦
 全くもって同感ぢゃ! 読み方を大いに誤らせる妖刀のような句、その辺に落ちとらんかいのう。怪作を待つぞ。

銀の海を越えてきたと鹿は言う ゆまるばたこ
 日本画の世界ぢゃな。メルヘンに溺れず、鹿の存在をとらえておるのう。手練れの技か、素人のヘタ味か。この作者、暫し様子をみるとするかのお。


以下、全て追放!

傷痛むひとりのときは月といる ひでこ
 「月といる」とは、また言い得て妙な表現ぢゃのう。月光に包まれて傷が癒えるのを待つ獣の姿と重なったぞ。感情移入過多を差し引いても、山粧う的追放ぢゃ!!

芒野のみぎとひだりにヒトがゆく 親タカ
 提示されているのは、右と左の人だけの情景だけなんぢゃが「芒野」の一文字で画面がガラッと変わるのう。こんなさりげないテクニックには付いてゆけん。天高く追放ぢゃ!

鱗粉の散る夜の海図秋めきぬ だなえ
 夏ほど元気のない蛾。それでも落とす燐粉の先の海図。まさに「秋めき」た情景ぢゃ。海図を浮かび上がらせる電燈の明りまで見えるこんな句は、冷まじく追放ぢゃ!

 今月もなかなかに力作が揃ったのう。さらに豊の秋を満喫して、へたうまの険しい道を邁進してくだされ。来月もくれぐれも油断めされるでないぞ。


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放歌高吟


水澄む国
夏井いつき

青とはこれか華北の水の澄みにけり
桃売が来て婚礼のことをいう
ことことと荷車ことことと秋雲
シタールを抱く人梨を運ぶ人
あの暗い家の匂いのする石榴
灰色の鳥の数千秋の暮
無月いま風の器として故郷
有事の夜鶏頭は耳ひからせる
議事堂という秋灯の聳えけり
モニカさんの国の石榴と戦争と
泪色の野菊に触るることなかれ
ことごとく水澄む国の民として


 9月28日付朝日新聞の一面に載っていた村上春樹さんの文章「魂の行き来する道筋」を読んで、唸った。
 東アジアの国々に起こっている領土をめぐる問題が文化交流に様々な影響を及ぼしていることに心を痛めた村上さんは、その種の問題が国民感情の領域に踏み込む危険性を指摘。その荒々しく排他的な感情を「安酒の酔いに似ている」と表現する。
 「安酒の酔いはいつか覚める。しかし魂が行き来する道筋を塞いでしまってはならない。その道筋を作るために、多くの人々が長い歳月をかけ、血の滲むような努力を重ねてきたのだ。そしてそれはこれからも、何があろうと維持し続けなくてはならない大事な道筋なのだ」
 東日本大震災が起こった時も、竹島や尖閣諸島の領土問題に揺れる今も、心を覆う不安と不穏の感情に捕らわれ、何か表現しないではいられない衝動に駆られてきた。震災直後の「放歌高吟」には、私の吐き出さないではいられない思いが、虚の世界を彷徨ってきたかのような句として綴られている。それら一句一句が言葉として結球する過程は、救いと祈りの時間でもある。
 震災直後から様々な俳句誌において、災害に遭っていない人間が震災を詠むことの是非を問う特集が組まれたが「詠んでもよい」「詠むのはけしからん」的議論には違和感を持つ。どんな立場の人間であろうが、あの未曾有の震災を前に心がおののかない人はいないし、反日デモの目を覆わんばかりの暴力に動揺を感じない人はいない。
 なぜ、私達は俳句を作るのか。それは自分の心を表現することで、波立ち止まぬ悲しみや不安をなだめ、ほのかな喜びを確かめ、他者とその感情を共有することで、心がゆっくりと救われていくからだと思う。
 ならば、生きて在る心に映る様々な不安や不穏を十七音詩として詠むことに躊躇する必要はない。心を吐くことが目的であるのだから、上手下手を気にすることもない。偶々それが人の心を打つ一句となっていれば、作品は作品として自ら歩き出す。戦争前夜かもしれぬ不安や、今なお心に残る傷を、私達は純白の繭を吐くように詠んでいけばいい。
 ただ、表現者の一人として「魂の行き来する道筋」については心していよう。村上さんのいう「安酒の酔い」の如き感情を心に育てない私でいよう。水澄む国の一人として、美しい旗を掲げていこう。




夏井いつき公式ブログ「夏井いつきの100年俳句日記」

http://100nenhaiku.marukobo.com/


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新100年への軌跡


第2回


臨戦態勢 原

マニキュアを蹴散らせより善い秋のため
鬼灯のちりちり焦げる午睡かな
秋深し満天の空に銃痕
重陽のミイラは発射の時を待つ
流星や海老の背中の白く冷え
雑音を食い尽くしたか酔芙蓉
爪紅やピーナッツチョコの誘爆
鬼もまだ指を触れずに初紅葉
月経にとろとろ眠れ姫林檎
蓑虫やお前のちちは天に飛ぶ
人影の細くさざめく花木槿
墓石の裏の一匹鉦叩
シャーペンを振り下ろす空 鵙日和
稲妻に白熱灯の断末魔
貝割れ菜頷くより善い秋のため



俳号「原」。愛大俳句研究会所属2回生。短歌歴は4年。俳句歴は1年目。




鉄塔 岡戸游士

鉄線のたわみにひとつ狭霧かな
後輪の秋風割いて登校す
秋気澄む路面電車のゆき隠れ
水澄むや魚群は狭く留まれる
流軸のくぼ捌かれて秋の海
秋雨の傾き充ちて墓白し
秋水や坑道の鎖短し
蝦蔓は柵越え鉄路開け入らず
啄木鳥や濡れし手を張る炭坑夫
秋の川盛りて平面流始かな
秋川の曲がり支流に引きずらる
秋澄むや河面のあぶらみづみづし
血膨れの秋の蚊ぬっと出でにけり
たくたくと見もせでとろろ汁注ぐ
秋の暮同じかたちの店覗く


岡戸游士
1993年生まれ。愛媛県松山市中島出身。中学生の時に興味を持ち始めて以来、のんびりと続けています。現在は愛大俳句研究会を中心にのびのびと活動させてもらっています。




繊細さと骨の太さ マイマイ

流星や海老の背中の白く冷え   原
 海老の背中との取り合わせが面白い。「冷え」としたことで、急に自分自身の「冷え」として感じられるから不思議だ。流星もまた「冷え」ている。

雑音を食い尽くしたか酔芙蓉   原
鬼もまだ指を触れずに初紅葉   原
 酔芙蓉は街中の雑音を食い尽くすように、純白から赤へそして萎んでいく。一方、森の奥には作者だけが見たであろう、ひっそりと赤くなる紅葉。小さな物語が季語を浮き立たせる。

秋気澄む路面電車のゆき隠れ   岡戸游士
水澄むや魚群は狭く留まれる   岡戸游士
 「ゆき隠れ」がうまい。路面電車が曲がって消えて澄んだ空気の中に作者が残される。水澄むは元来川などの淡水を指すものだが、この句では私は海を思った。ダイナミックな視点が面白い。

啄木鳥や濡れし手を張る炭坑夫  岡戸游士
 啄木鳥のドラミングが響く。トロッコの潜る奥では炭坑夫もまた地を穿つ轟音を響かせているのだ。


1966年愛媛県生まれ。2003年頃からラジオに投句を始め現在に至る。第2回選評大賞優秀賞。



よい秋に 瑞木

重陽のミイラは発射の時を待つ  原
 生きている者が健康と長寿を願う重陽の節句と、霊魂不滅の信仰から加工保存されているミイラ。おもしろい組み合わせである。「風の谷のナウシカ」に出て来る巨神兵を思い出した。彼はミイラではないが。

爪紅やピーナッツチョコの誘爆  原
 「ピーナッツチョコの誘爆」というフレーズに惹かれた。食べだしたら止まらなくなるピーナッツチョコは確かに危険の匂いがする。鳳仙花の実が熟して弾ける様子と「誘爆」という言葉はちょっと近い気か。

水澄むや魚群は狭く留まれる   岡戸游士
川の中流あたりのイメージ。日土小学校の横を流れている川を橋から見下ろせば、ハヤの群れがちょうどこんな風に見える。いつまでも見飽きない大好きな光景だ。

秋澄むや河面のあぶらみづみづし 岡戸游士
こちらは海に近い川幅の広い河のイメージ。水に浮いて漂う油の光る様子を「みづみづし」と言えるのは、なるほど春でも夏でも冬でもなく、秋の光景だなと納得した。


1963年生まれ。愛媛県八幡浜市日土町在住。第2回選評大賞最優秀賞。


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Letter from spider garden


ナサニエル・ローゼン(訳:朗善)
松山市在住の世界的チェリスト ナサニエル・ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.7

Night bus to Tokyo
Cricket says kind good morning
Hooray, no jet lag

東京へバスで着いたり朝の虫

(直訳)
東京行きの夜行バス
コオロギが、おはようを言ってるみたい
いいね!時差ボケもなし


New experiences greet me in Tokyo. On the main walking street of Harajuku I watch an informal parade of youth fashion on a pleasant Sunday afternoon. In a concert hall I am part of a variety show at which Masters of Make-Up are painting faces and beautiful dancers are wearing costumes from Arabia and Ancient Japan. And then there is our music. Bach and Schumann seem to go very well after belly-dancing. What fun.

 東京で、さらに新しい経験が僕を待ってた。
日曜の午後の原宿通りをさ、若い子たちが素敵にお洒落して練り歩いてた、パレードみたいに、そしてコンサート会場で、僕はなんと、ファッションショーみたいなのに出演してた。カリスマメイキャップアーティストはモデルの顔を彩り、美しいダンサーたちはアラビア風の衣装や着物をまとってた。その後に僕らの出番があったんだ。バッハとシューマンはすごくいけてたなあ、ベリーダンスの後では特に! 楽しかったよ。

訳:朗善



ナサニエル・ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2011年より松山市在住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第20話
「小島のり子トリオ」

 “こじのり”こと小島のり子の実力は、まず年間約二百本のライヴを熟すってところに顕著だ。ユニット構成もデュオ、トリオ、カルテット、ちょっと大きめのコンボと多彩で、無伴奏ソロも聴かせてくれる。ホームグランドの関東圏域においては正に日替わりセッション。恐ろしくユーズーの利くフルーティストなのである。
 そんな彼女が、じっくりとジャズと向き合えるのは案外、小島のり子トリオで巡る地方ツアーかもしれない。

横笛に添って名月渡ります いしき

 その象徴的なアルバム「ソングス・フォー・マイ・セイク」が昨年、彼女の楽歴に加わった。セイクの綴りはSAKE=酒。CDのオビには“日本酒の味わいと銘柄を音で綴った「名酒シリーズ」第二弾!”と記された。第一弾は以前「JAZZ者俳句ノート」で紹介した「Lush Life」=飲んだくれの人生。共にその土地の水と米と麹が醸し出す名酒の味わいに、こじのりが触発され描いたオリジナル曲満載の力作である。

唇は秋思の音を吐き出しぬ 更紗

 この二枚のアルバムのライナーノーツで賛辞を贈っているのは岩浪洋三氏である。残念ながら今年10月5日に他界してしまったが、氏はジャズ月刊誌「スウィング・ジャーナル」の元編集長でジャズ評論家としても輝かしい業績を残した。松山市出身であり僕にとっては大学の大先輩でもある。もう20年も前になろうか、ジャズマンを描き続ける大洲市出身の画家、久保幸造氏の個展を応援するため岩浪氏がコメンテーターとして来松。企画と展示は松山市内の大手スーパーであり、僕は担当者の依頼で自前のオーディオ機器とレコードを持ち込み、ミーハー気分でBGMを流した。役得で氏のジャズ談議に加わることもできた。そんな思い出がある。
 その岩浪氏がこじのりのニューアルバム「Songs for My Sake」に「解りやすくて親しみやすい曲ぞろいなので、オリジナル曲だが、スタンダード・ナンバーのように聴くことができる。演奏もグルーヴィーにスイングしていて楽しい。―中略― アルバムが発売されたなら、是非ジャズのライヴ・ハウスで、彼女推薦の日本酒を飲みながら演奏を聴いてみたい。またそのときは彼女のうんちくを傾けた日本酒の解説も聞いてみたい」と言葉を寄せた。まったく同感である。僕は哀愁を帯びたジャズ・ワルツの「雪譜/Snow Notes」が特に好きで、四六時中口遊んで過ごす日もある。果たして生前に岩波氏の願いは叶ったのだろうか? 合掌。

深秋の弦は歓喜のリフ&リフ 蛇頭

 こじのりの一番お気に入りのギタリストは断然田口悌治である。プライベートでもパートナーであるベースの澁谷盛良は別格としても、一番彼女のセッションに登場するミュージシャンは田口であろう。誠に上手いギタリストである。“上手い”はテクニックとか指の速さとかだけではない。僕は彼のアドリブ・ソロにあるストーリー性が好きだ。単に技任せの独りよがりな音を弾き出すのではなく、彼は自身の思考や感性の中に散りばめられた無数のフレーズを瞬時に融合しドラマティックに連結させる。聴き手はそこに魅せられる。共演者も同様に。
 そんな彼の集大成の一つが「モーメント・ノーティス」だ。ジョン・コルトレーンの曲で始まりコルトレーンの曲で終わるというアルバム構成に彼の意気込みと自信が読み取れる。




http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


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ラクゴキゴ


第20話 文/俳句 らくさぶろう

『目黒のさんま』
〜寄席の帰りは居酒屋へ?〜

あらすじ
 ある殿様が目黒まで遠乗りに出かけたが、お供が弁当を忘れてしまった。みな腹を減らしているところへ、今まで嗅いだこともない美味しそうな匂いが漂ってきた。殿様が何の匂いかと尋ねるとお供は「これは下衆庶民の食べる“さんま”という魚を焼く匂いでございます。決して殿のお口に合う物ではございません。」と答えた。
 殿様は「こんなときにそのようなことを言っていられるか。」と言い、お供にさんまを用意させた。さんまをただ炭火に突っ込んで焼かれたものだったが、殿様にとっては初めて口にする非常に美味なるものであった。
 さんまが大好きになってしまった殿様、それからというものさんまが食べたくてしようがなくなる。
 ある時、家来に「余はさんまを所望する」と申しつけたが、城内にそのような大衆魚があるはずもなく、急いで買ってくることに。
 買ってはきたものの、さんまは脂も多く、骨ものどにささってはいけないので料理担当の者は脂をすっかり落とし、骨もすべて抜いてしまう。もう元の形では出せないのでつみれのようにして椀物として殿様に出すことに。
 日本橋の魚河岸から取り寄せた新鮮なさんまではあるが、こんな形で出されたのでは苦味もうまみもどこへやら……。殿様、あの時とは全くちがう出し方だといぶかしみながらも一口食べるとこれが味も先の物とは全くちがって不味いしろもの。
 びっくりして殿様、「これはいずれで求めたさんまだ?」
 「はい、日本橋魚河岸で求めてまいりました。」
 「ううむ、それはいかん。さんまは目黒に限る。」



 なるほど、海とは無縁の目黒でさんまという取り合わせの面白さのオチです。
 落語は場所設定が比較的しっかりしている場合と、ボンヤリしている場合がありますが、この噺は、「殿様が目黒のどこでさんまを食したか?」ということは、今でも色々と楽しみながら語られているようです。そのあたりは実際はっきりさせなくてもあーだこーだと論じるのが面白いとこなのでしょう。俳句の背景にも似たところがありますね。
 さて「時そば」を聴いた後は客はそばを無性に食べたくなり、帰りはそば屋がにぎわうとか、お酒の話なら寄席から出たその足が居酒屋に向くとか、これは私も実際に体験した事があります。ま、どっちにせよ寄席の後は呑みに行くことには変わりない私なのですが。
 この「目黒のさんま」を聴くと、やはりジュージューと焼けたさんまを肴にうまい日本酒をやりたくなります。頭の中では大根おろしやすだちもぐるぐる回り、腹はキュウと音を立て。また日本酒の銘柄まで二つ三つ浮かんでは消え消えては浮かび。
 しかしちょっと変わっている私は、後で殿様が食したさんまのつみれの椀物もなんとなくそれはそれでおいしそうで、このメニューをいっぺん出してくれる店はないものか?と考えてしまうのです。
 うちの店でやってみようかしら?


お向かいも隣もうちも秋刀魚かな


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本家慶弔俳句帖 第50回


文 桃ライス

笑わないと開かない冷蔵庫
 ソニーが開発した「笑わないと開かない冷蔵庫」がグッドデザイン賞ベスト100を受賞した。
 笑顔が体にもたらす影響・効用を再認識することで、人が幸せな気分になれるインターフェイスデザインを目指して開発され、近未来の生活に潤いと活力を与えるとして、その先進性が高く評価された。
 この冷蔵庫は、扉の前で笑顔をつくるとスムーズに開けることができる。ということは、笑いながら怒るという竹中直人の場合は、顔が笑ってるから開くわけだ。ということは、夫が呑んで夜中に帰宅し、「雑炊を作れ」と言われても「笑えないから冷蔵庫が開きません」と嫁は拒否できるわけだ。嫁も冷蔵庫も冷たいってことよ。

大根の輪切り五センチ貸出中


伝説のうどんラーメン
 ラーメンマニアから 「伝説のラーメン屋」といわれている店が名古屋にある。 約50年ほど前に創業したその店は『大丸』といい、午前2時頃に開店し明け方には閉まるという。
 早く行きすぎると店主に「並ばないでください。待たないで他の店で食べてください。申し訳ないです」と追い返されるので、2時頃から並ぶのが無難だという。
 午前2時〜2時半頃に開店する。店主から声がかかると、ようやく店内に入ることができ、 席が6つしかないため6人だけが着席できる。ほかの客は外で呼ばれるまで待つ。メ ニューはラーメン(550円)のみ。
 ラーメンは基本的に大盛りで、肉と野菜が山のように盛り付けされている。野菜はまったく味付けされていないので、カウンターにある醤油や唐辛子、コショウなどをかけて食べる。
 サービスとして、ラーメンにうどんを混ぜて食べることができる。うどん(無料)はカウンターに丼に入った状態で置かれているので、うどんを混ぜたい人は自分で入れる。そこに焼きそばの粉末ソース(無料)をかけてもいい。以前はうどんのほかに蕎麦やきしめんもあったらしいが、現在はうどんのみである。

ひと文字の先青々と午前二時


桃ライス…自分のことをワシとよぶ婦人グループ会員


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お芝居観ませんか?


文&俳句 猫正宗

第七回 『怪談 牡丹燈籠』
[人形劇団プーク公演、原作・三遊亭円朝、脚色・川尻泰司、潤色・演出・井上幸子、出演・佐藤達雄、柴崎喜彦、山越美和、他、‘12年9月21日、ひめぎんホール(県民文化会館)サブホール]

花燈籠夜毎の美女の幽けきや

 松山市民劇場初の人形劇。お馴染みの?に留まらない筋立ては、いつか、らくさぶろう氏に書いていただくとして(オイオイ)、それよりは、本作で気付かされた人形劇の魅力(愉悦)について書くべきでしょう。 本稿に収まる範囲で書くなら、大きく二つ。
 一つは、人ではない人形が、羽織や草履を脱ぐ、障子を開け閉めする、といった行動をとることへの、意外性から来る驚き。もう一つは―先程とは矛盾しますが―人形が、まるで生きている様に感じられること。障子の隙間から初めて会った新三郎を窺うお露。恥ずかしさにうつむきながらも、時折、上目遣いでそっと見る。上気した頬。高鳴る鼓動。いやいやいや、本作の人形は、そんな精巧なものではありません。頬も染めなけりゃ、上目遣いもなし。それでも私には、そんな風に見えて仕方がなかったのです。
 それらを成さしめていたのは、人形と共に舞台上に存在していた人形遣いの技術の高さと、彼らと人形との一体感(遣い手と人形、併せて一人の役柄)。それに加えて、人形同士の関係性が正しく切り結ばれていたからではないかと思うのです。それゆえ、それぞれの存在が独りよがりのものとならず、彼らの心が見えてくる。いえ、実際はその逆で、関係性の間にこそ心というものは生じ、それが依代たる人形に宿るのかもしれません。
 案外、人の心もそんな風に、「私」と「あなた」の間に生まれて、降りてくるものだったりして……。(ん?取り合わせってのも、もしかして、そういうことなのかしら?)

釜蓋が開きて人形にも御霊



このコーナーでは、松山市民劇場例会にて公演された芝居を紹介します。次回公演は表紙裏の広告をご覧ください。



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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第21回 文/写真 暇人

mhm×Facebook、二大吟行会
 先月号はまたもや誌面の都合で休載でした。決してサボっていたわけではありませんので。
 mhmの今年の目玉はFacebookとの融合です。Facebookを使うことでイベントの情報共有ができたり、その場にいなくてもリアルタイムでイベントに参加できます。
 まずはFacebookの説明から。
 大人のSNS「Facebook」を開始するには、パソコンや携帯でFacebookのページにたどり着いて登録をするか、スマートフォンならFacebookアプリを利用する方法があります。
 登録の時にメールアドレスとパスワードが必要ですが、携帯からでも書き込みを行おうと思われる方は携帯のアドレスで登録することをお勧めします。スマートフォンをお使いの方は出来るだけアプリをインストールして利用することをお勧めします。
 無事登録できたら、次は「まつやま俳句でまちづくりの会」を検索して下さい。「グループ」と「ページ」が見つかります。まずは「ページ」に行って頂き「いいね!」ボタンをクリックして下さい。すると、自分のニュースフィールドにmhmの記事が出てくるようになります。次に「グループ」にも行って、今度は「参加する」をクリックして下さい。ここではmhmで行っている同時進行吟行に参加出来ます。投句の際は「コメントする」から投句して下さい。その際には俳号もお忘れなくお願いします。また、先日の三津浜俳句フォトミュージックの様子なども詳しく紹介してますので、ぜひご覧ください。
 解りにくい方は、mhm事務局まで問い合わせて頂ければと思います。
 この試み、実は「まる裏俳句甲子園」でも行います。貴方の参加が勝運を分けるかもしれません……。

 さて、ここからは習うより慣れろの実践編。
 現地吟行+Facebook吟行をこの秋二カ所で行いました。


 9月22日、 「松山・白石の鼻巨石群調査委員会」のイベント「2012白石の鼻フェスティバル」内で行われた「夕日の鑑賞会」、そのイベントにmhmも「インターネット吟行会」で参加。当日参加できなかった私でしたが、キム事務局長がイベントの様子をFacebookに試行錯誤しながら掲載してくださり、それを見て一安心。

 観測ポイントは滑ります秋思 雪花
 秋の海背にしてあねごの挨拶 暇人

 前回の三津浜吟行にも参加してくれたみやこさんを始め、あねご代表もなんとかFacebookに投句していました。この白石の鼻の現場、キム事務局長がFacebookに「この亀石は人工的に組み合わされたと考えるのが自然らしい。この小さな穴を冬至の太陽がすぎる。昔の人が積み上げたのならかなり神秘的。そんな人類の神秘に一句募集中。」と。

 亀石の窓明かりなく秋の暮れ  みやこ

 残念ながら当日の天候は曇り空、期待していた夕日が見られず……。でも現地に行かれていた方はそれなりに楽しまれていた様子が写真と投句から伝わってきました。

 巨石過ぐ安芸へと続く秋の海 稲穂
 日没は見えぬ秋の舟虫鳴くばかり  しんじゅ
 秋陰や岩抱く岩へ投げる竿 あねご


 10月6日、松山地方祭前夜。銀天街〜大街道に至る間に祭りの風景を探し、それを俳句にしていこうという吟行会。参加者は輝女、雪花、ペプチド、しんじゅ、游士、比呼、チャンヒ、暇人(敬称略)。
 道後から移動中のしんじゅさんを待つ時間、随時通りかかる子ども神輿などを、報告を添えながらFacebookに。移動中のしんじゅさんも、ちゃんと投句をしてくれました。

 声すれど追いつけられぬ秋祭  しんじゅ

 銀天街に入ると目に入ったのは周囲に張り巡らされた「神札」、実のところ銀天街に入ってからしばらく、それしか祭りらしき風景に巡り会えず、それでも途中で何とか「本番を待つ神輿」や「子供用の法被」を見かけてFacebookへ。

 明日を待つ神輿二体の空き店舗  あねご
 秋祭り並びし法被三世代 みやこ

 なかなか祭りらしき風景に出会えないまま銀天街を過ぎると大街道。此処でも途中までは出会えなかったのですが、しばらくすると祭りらしき音が聞こえてきました。六区子供会の神輿です。

 金色の鳥に三日月降り注ぐ 正人

 気がつけば大街道一番町口に。さて懇親会をどうしようかと考えていると現れたのは「居酒屋華々」の美人店長。店長の魅力に負けたキム事務局長はじめ一部のメンバーは居酒屋へと消えたのでした。


mhmメンバーもまだFacebookを使い始めたばかりで慣れないことばかりですが、これからもFacebookの仕組みを生かしたイベントを開催していきます。ぜひご参加ください。


次回は「第11回まる裏俳句甲子園直前情報」の予定です。


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)またはFacebook(http://www.facebook.com/mhmhaiku)まで。


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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成24年9月度


【新豆腐】
ひと箸やみどり一瞬新豆腐 たま
神棚とまず爺さまに新豆腐 ぽぽんた
僧侶みな美声なりけり新豆腐  岡田よしはる
また聞かれ新豆腐だと釣りわたす 甘泉
入れて行け新豆腐街の水はまずい  ドクトルバンブー
十五円握らされたり新豆腐 逆ベッカム
満州の話となりぬ新豆腐 太郎
暁の星の匂いよ新豆腐 なでしこ
玄海を叩き起こして新豆腐 さつき
花町のおけさしゃんしゃと新豆腐  きとうじん
湯治場の自炊部に新豆腐買う マーペー
橋上に水神様や新豆腐 樫の木

《天》
住職の入寺祝いや新豆腐  あねご


【白露】
白露一日農具の整備して暮るる  ポメロ親父
鈴を振るように白露の着信音 とりとり
スカーフに包む白露の缶コーヒー  めろめろ
病棟の色なき窓へ白露かな 冬井いつき
白金の白露の月となりにけり 伊佐
太陽に悲しみ二つ白露かな しんじゅ
押し込めば撥ねる白露の空気入れ  マイマイ
白露なり犬の鎖に光溜め ターナー島
刃物研ぐ白露の水の真珠色 ラグナ
筆置いて白露の墨に水を足す ふづき
明日発つ白馬を繋ぐ白露の夜 緑の手
切り岸に羽根散らばっている白露  樫の木

《天》
たましいが定位置にある白露かな  ミズスマP


【溢蚊】
溢蚊の風に負けたる着地かな アキト
溢蚊の漂いて白壁に果つ 七草
溢蚊をシャワーの水に流しけり 太郎
溢蚊を帳簿の隅に閉じにけり 更紗
溢蚊や寝て一畳の宿を得て 風
溢蚊の一膳飯に寄る羽音 ターナー島
焼香に立つや溢蚊のひよひよ さわらび
溢蚊を窓に逃がして月命日 不知火
溢蚊の潜むトイレの季寄せかな 日暮屋
溢蚊の火の無き炉辺に止まりけり 恋衣
溢蚊の浮きたる水へ猫の舌 ふづき

《天》
溢蚊や出雲阿国に謎多し  逆ベッカム


【田守】
田の守りを人に任せて置けぬ性 青柘榴
田守五日目鳥に言葉のあったとは  ふづき
裏年といえど父祖の地山田守る 太郎
北極星の不動を共に田守座す 海田
空砲のごとき声何か追う田守 菜々枝
拾い読む去年の雑誌田守小屋 不知火
潮の香の匂う棚田を守りけり 一走人
田守して空の高さを確かめん 人日子
朝蜘蛛を逃がすや田守小屋は晴れ  ドクトルバンブー
遠鳴きや昨日田守の追うた鹿 日暮屋
千代姉は田守の兄にお茶を持ち  カナリヤ
十八の田守に逢いし頃の祖母 妙

《天》
あと三晩守れば刈り入れすべき田へ  ポメロ親父


※ 掲載の俳句は、有志によって朧庵(http://575sns.aritani-mahoro.com/)の掲示板「落書き俳句ノート」に書き込まれたラジオの聞き書きをもとに活字化したものです。俳句ならびに俳号が実際の表記とは異なっていたり、同音異義語や類音語などで表記されてしまっている場合がありますのでご了承ください。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

11月11日
生姜掘る【初冬/人事】
新生姜は夏場に収穫されるが、根生姜は秋から初冬にかけて充分に肥大したところを収穫する。新生姜に比べ、繊維質で辛味が強い。

むささび【三冬/動物】
リス科の哺乳類。夜行性で樹上に棲む。前後肢の間に発達した飛膜があり、木から木へ滑空する。

11月25日
湯ざめ【三冬/人事】
冬場の入浴後、温まっていた身体がすぐに冷えてしまい、寒さを感じること。

星の入東風【初冬/天文】
陰暦10月頃に吹く北東風のこと。畿内や中国地方で、船人たちが呼び習わした。この星とは昴のことで、伊勢や伊豆などでも似たような言い習わしがある。


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句集の本棚





『永遠が咲いて』鳴戸奈菜 著

 「永遠が咲いて」。この表題が気になって手に取った句集でした。
 永遠が咲く、永遠に咲くなら分かるけどと思いつつ、表題となった句
  永遠が咲いているなりモネの池
 モネの池、睡蓮、永遠というつながりなのだろうか。
 この句には季語が無いけれどちゃんと季節の花である睡蓮を感じることが出来る。こんなやり方もあるのかと知らされた。
 著者があとがきで新作五十句ずつを発表する機会を与えられ、ふと生まれた句や実験的な句でも大胆に収められたと言うように大胆で妖しくはかない句集であると思った。
  生まれたから死ぬわけでホトトギス
  山笑うきっと大きな喉仏
  またの名を夜と告げ去る雪女郎
(書評:輝女)

現代俳句協会(2012年初版)
定価 1500円(税別)
全147ページ



『はじまりの樹』津川絵理子 著

  真清水を飲むやゆつくり言葉になる
 著者の第二句集は確かな観察とものごとの機微をとらえる感受性がしっかりとした言葉で表現されている。
  サルビアや砂にしたたる午後の影
  ひらめくや冬の林檎を割るごとく
  風鈴を鳴らさずに降る山の雨
  如月ややがて落ちくる紙吹雪
 きらきらと空に舞う紙吹雪を思う。この紙吹雪にもやがて終わりがくるのだと思うと少し寂しい。
  貝寄風や柱まぶしく家の建つ
  あぢさゐの風湧く数となりにけり
  すこしづつ皮余らせて大蛇老ゆ
  大波をかぶる下から泳ぎだす
  夏料理舌にすひつくものをみ
 静謐な言葉の運びが心地よい一冊である。「南風」。
(書評:藤実)

ふらんす堂(2011年初版)
定価 2190円(税別)
全175ページ



『水の唄』豊田都峰 著

 水の唄はカバー・タイトルの色、カバー裏のデザインから既に始まっています。
  日のかけら水に掬へば夏はじめ
 俳句は、涼やかな写生句から始まります。
  春光をまきちらしゐる湖の鳥
  内侍塚椿の一花のせるほど
  春雨の靄となりゆく藪あたり
  藪かげの一村こめて春の雨
 見開きのページの右記四句は、四小節の様で、見開き毎に世界が広がります。
  野末まで晴れ佐保姫の領巾なる雲
 五感や第六感・リズムを使って描く水の還流に、作者の想いを感じました。
  神奈備をまん中にして初御空
 時折目を引くのが、足を使って歴史や神仏等を描かれた句です。心を穏やかにして頂きました。「京鹿子」主宰。
  阿修羅祈る春日にまがふ散華あび
(書評:蓮睡)

文学の森(2011年初版)
定価 2667円(税別)
全221ページ



このコーナーで紹介した句集は、100年俳句計画編集室にて閲覧できます。


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選句&投句欄 ザ 句会


 このコーナーは読者による誌上句会。先月号に掲載された投句への、選句&選評(互選)を掲載しています。不肖編集室一同も参加しています。

第178回兼題
 「銀」の字の入った句
 出題者 不知火さん

 今月の互選『鰯の歯ぎしり』

14点句
鞠月、南骨、樹朋、ゆき、蓼蟲、みちる、雪花、青柘榴、ポメロ親父、お手玉、あき、いつき、まほろ、正人選
太刀魚の銀は傷つきやすきいろ なゝ
  鞠月  以前水族館で生きている太刀魚を見た時、その銀色の輝きに感動した覚えがあります。でも、売られている太刀魚には傷が付き、その輝きは失われてしまっているんですよね。写生としてリアルでありながら、詩情もある素敵な句だと思います。
  南骨  巧いこと言いましたなあ。紛れもなく太刀魚です。
  樹朋  釣り上げたばかりの太刀魚は銀色に輝いています。銀色の中に微かに淡紅や緑色も交錯し、生命感に溢れた銀色です。それが持ち返ると単なる銀色の魚になり、擦り傷もついています。まさに傷つきやすき色です。
  ゆき  本当は傷つきやすいのは、太刀魚ではなくて自分。どうかそっとしておいてほしいという声が聞こえてきそうな繊細な句だと思いました。そして太刀魚の鮮やかな銀が対比として浮かび上がります。
  蓼蟲  優しい眼差しに魅かれた。だが、かつてラメの原料となつた美しくも傷つきやすいその銀の皮は寿司種にもなるのだ。松山市の寿司店Hでは、程良く身が残るやうに削ぎ軽く焙つて握る。美味絶妙。
  みちる  言われてみればその通り。そこに、太刀魚独特の美味さがありそうな気がしてくる。「いろ」は漢字の方が良くはないか?
  雪花  リアリティがあり銀が一番綺麗でした。傷になると味がおちてしまう太刀魚をそっと扱っている様です。
  青柘榴  確かに、触ると悪いような素晴らしい太刀のごとき銀色ですよね。
  ポメロ親父  太刀魚の銀色に辿り着いて、傷つきやすい色と言い止めたのが素晴らしい。
  お手玉  釣りの太刀魚は銀色に光ってまぶしいばかりです。でも箱の角に当たったりして少しづつ見にくくなりますが傷つきやすきいろ、この表現がお上手です。
  あき  銀色の中にある脆さとか傷つきやすさをこのような形で提示してくれた作者に一票。
  いつき  取り合わせの妙で兼題「銀」を楽しませてくれる句は色々あったが、一物仕立てで「太刀魚」の肌の質感や色合いを率直に描写する視点に好感を持った。
  まほろ  銀色の持つ繊細なイメージを、あの体表が銀色でぬらぬらとした太刀魚で表現したのが見事。句の後半の平仮名のたどたどしさが、その繊細さを演出する。
  正人  生々しく蘇る太刀魚の横腹。色への把握の仕方が魅力。

6点句
杉山久子、とりとり、朗善、なゝ、だりあ、兼光選
説明のチョーク銀河をかき回す カラ嵩ハル
  杉山久子  切り口の面白さ。銀河の創造主になったような。
  とりとり  先生の熱弁が見えておかしいです。秋には天文の授業が似合いますね。
  朗善  黒板に描かれた銀河をかき回すチョークの動きから、本物の銀河を感じさせる、ぐるぐるのリアル生まれてる。
  なゝ  こんなアイテムによっても銀河はかき回される。
  だりあ  理科の授業で宇宙の講義中なのか。銀河の説明でごりごりとチョークで黒板の図をなぞっているのか。面白い句。
  兼光  一瞬黒板を前にした先生の指先を思った。描かれた銀河をグルグルとかき回す様になぞる。そうすると何故か黒板の銀河がまるで本物の銀河のように動き出す。黒板は宇宙であるのだ。

4点句
カシオペア、信野、もんきち、権ちゃん選
爽やかや百歳といふいぶし銀 コナン
  カシオペア  百歳にもなれば一言一言に重みがあり、ほんに燻し銀の様でありがたい事です。
  信野  おじいちゃんかな。おばあちゃんかな。いいですね。皆あとにつづきましょう。
  もんきち  100歳を越えてなお元気で自分のできることを当たり前にしていた祖父のことを思い出しました。
  権ちゃん   100才の爽やかないぶし銀いいですねぇ。

ぜぶら、破障子、魔心地、不知火選
ちひろ読むチョコの銀紙はぎながら さかえ
  ぜぶら  銀ホイルが苦手なボクは「猫ちゃんのちゃんはいらない」のように決して「銀ホイルちゃん」とは言わない。しかし、ちひろ読む君が「この銀紙ちゃんかわいい」と言ったとしたら……許しちゃうぜ。
  破障子  一見無季ですが、10月生まれの娘“ちひろ”がおります故、私的には秋の句。当時ちひろ美術館の近所に在住。あの絵のようにつぶらだった娘の目もマスカラとつけまつ毛でバッチリ。絵本の落書きみたい。
  魔心地  岩崎ちひろと板チョコの組み合わせ、納得です。いつき組にも、こういうシチュエーションが似合う可愛らしい女性いらっしゃいますよね!ね?
  不知火  自分も覚えがあるような。

藤実、もね、一走人、チャンヒ選
月白や水銀は微熱に還る 犬鈴
  藤実  「還る」がうまい。光の層が何枚も見える感じ。
  もね  微熱に戻った安堵感と月白の期待感が不思議と気に入りました。
  一走人  月白と水銀の取り合わせが面白かったです。不可解だけど気になってしょうがない一句でした。
  チャンヒ  「微熱に還る」というだけで、硝子の体温計に使われている水銀であることがわかる。そして、「月白」という季語と中七下五の奇妙なリズムによって、その体温計が微熱に戻るまでの物語を様々に想像させてくれた。

親タカ、亜桜みかり、めろ、ソラト選
アイロンの銀の航跡小鳥来る とりとり
  親タカ  まるで金子みすずの家事の一場面のよう。語感がその時代を映し出して。
  亜桜みかり  アイロンを銀の船と見たところが良い。季語の「小鳥来る」が素敵な取り合わせで、軽やかな音楽が聞こえてくるようだ。
  めろ  アイロンがけに航跡を発見するとは只者ではありません。ましてや銀色とは。その航跡を追って小鳥が来る情景が、まぶたから離れません。
  ソラト  季節ごとに違う素材や色彩の衣類小物を伸ばしてゆく、その作業のなかでの小鳥来るの感慨が確からしい。

藍人、青蛙、よひら、桔梗選
銀幕に夏の引っ掻き傷がある 牛後
  藍人  映画館のデジタル化によって次第にフイルム映画が駆逐されつつある。フィルムが切れて繋ぐ間中断するという懐かしい現象も遠い過去か。夏の引っ掻き傷とは何やら思わせぶりであるが、ノスタルジーを感じる。
  青蛙  朧気な記憶ながらも「八月の濡れた砂」の鮮烈なラストシーンを思い出しました。
  よひら  歳を経ると人は涙もろくなる。銀幕に苦い思い出を見つけた時、自然と涙が頬を伝う。サラッと引っ掻き傷としたのが良いと思う。
  桔梗  銀幕の言葉の斡旋がいい。引っ掻き傷がつくとしたら、夏が動かない。詩になっている。

3点句
柊つばき、さかえ、藻川亭河童選
恋文は銀河に流してしまい候 ぎんなん
  柊つばき  いいですね。宇宙は大好きです。私は流さずにもっていたいです。
  さかえ  恋文にも候文が入っていたのでせうか。一番楽しい想い出流さず胸にしまっておきましょう。
  藻川亭河童  書斎を片付けていたら四十数年前の恋文が大量に出てきた。艶めかしい口紅の痕がまだ鮮やかに残っていた。家内が大切に天袋に仕舞い込んでいた。一年間ほぼ毎日、往復書簡の遠距離恋愛であった。 歌手:由紀さおりさんは、歌の中で、「朝に夕に 貴男様をお慕い申し候。拙き文を読まれし後は焼いて欲しく候。」と、言ってるが、流したり、焼いたりするには余りにも激しい青春の熱源の塊の存在だから私らにはできなかった。二人があの世に逝った時、子どもたちが幼稚園の時の絵や作文と一緒に仕舞ってあるから、見つけて話題になればいい。候=(そろ)と詠みたい。

浜田節、ケンケン、まとむ選
飛車角歩金銀王手放屁虫 一走人
  浜田節  功みでとてもおもしろい句だと思う。形勢不利となると、そうか。放屁虫の季語がきいていると思う。
  ケンケン  全部漢字ばかりなのが印象的です。下五がユニークで独創的と思いました。
  まとむ   銀の中で一番きれいでない季語の句を選びました。放屁虫の形も将棋の駒に似ています。

2点句
しのたん、むめも選
鬼の子や天につながる銀の糸 安
  しのたん  そうかもしれない。鬼の子としたことで納得しました。
  むめも  糸の先が見えない蓑虫に遭遇したことがあります。天につながってたんですね。

逆ベッカム、更紗選
冷ややかに水銀の銀昇りゆく 兼光
  逆ベッカム  涼から冷への気温の変化か、人の心の冷たさか……。対照の水銀がアナログ的に変化するところが妙。いずれにしても、こんな良い季節に風邪など召さぬよう。
  更紗  水銀体温計で銀が昇るとは熱が高いこと。それを逆に冷ややかという季語を用い、銀のイメージとも掛け合わせた表現に一票。体温計を睨む真剣な眼差しが見えるようだ。

明日嘉、三月選
秋晴の生家小さし銀の匙 瑞木
  明日嘉  生家のキッチンの引き出しに眠っている銀の匙が大きなきれいな秋の空と響きあっているように思いました。
  三月  昭和な句。「秋晴の」としたことで生家が目の前に見えてきました。「銀の匙」が作者の幸せな子ども時代を想像させてくれます。

こてぞう、八木ふみ選
曽祖父の一ドル銀貨月触るる もね
  こてぞう  うちにもあるかな。一ドル銀貨。
  八木ふみ  銀貨を月にかざして曾祖父を偲んでいる光景が浮かび上がりました。

えりぶどん、蓮睡選
鮭のぼる銀の裸身のフラメンコ みちる
  えりぶどん  上流で産卵のため遡る鮭の姿はまさしくフラメンコのよう。ギターとカスタネットの軽快かつリズミカルな男が聴こえてきそうです。
  蓮睡  鮭の気迫が、飛び跳ねる映像として見えました。裸身のフラメンコ、という描写がより鮮明に。そういえば、外国にはヌードのミュージカル?があるそうです。とても芸術的らしいですよ。(VIP専用らしい?)

西条の針屋さん、牛後選
水澄みて銀貨の旅のなほつづく 杉山久子
  西条の針屋さん  爽やかな旅ですね。気持ち良い季節なのでどこまでも旅が出来そうです。
  牛後  トレビの泉に投げ入れられた銀貨を思った。あの銀貨も寄付されるそうで、その後も銀貨の旅はずっと何年も続くのだ。

紗蘭、たま選
新涼を掬いし今朝の銀の匙 浜田節
  紗蘭  銀の匙の句は幾つかあったけれど、「銀の匙」、「新涼」と「今朝」のイメージが合っていていいと思いました。
  たま  掬いしはスープのいろか。リビングの雰囲気か。銀の匙で受け止めてとても美しい句だと思います。

サキカエル、実選
猫の子やしっくりいかぬ銀の鈴 多久美
  サキカエル  何度も何度も鏡の前で自分の姿を首かしげながら見ている猫の子の様子が思い浮かぶ面白い句です。
  実  ねこは鈴をつけているけどまだ小さい猫の子だから鈴が大きくてしっくりこないんだなあと思いました。

駝楽、ペプチド選
銀輪を駆れば来島瀬戸は秋 八十八
  駝楽  瀬戸内の風景が想い出されました。
  ペプチド  自転車の聖地しまなみ海道でサイクリングをすると秋の爽やかさと自分の力で前へ進むことを体感できる空間の力が伝わってきて共感。

今比古、ちろりん選
敬老日バターケーキに銀の粒 あき
  今比古  ケーキといえば昔はもち、バターケーキ。憧れの詰まった、シックなメロウな味だった。銀の粒がキモ!!
  ちろりん  あの仁丹のような不味な玉ののったバターケーキ。まぎれもなく昭和ですね。“老”の日にぴったり。

瑞木、七草選
シャガールのふたりが消えた銀河かな ひでこ
  瑞木  そういえば飛んでらっしゃいましたね。
  七草  シャガール好きです。三日月の浮かぶシャガールブルーの夜空に、浮遊する抱き合った二人が、目に浮かびます。

人日子、平平選
ふところに銀の匙もつ鰯雲 親タカ
  人日子  小生も雲を見るのが好きでよくボーッと見ています。鰯雲が食事をしていると思うと面白い!
  平平  銀の匙のまんがをいつも持ち歩いているなんてよほどすきなんだなあと思ったから。

ターナー島、すな恵選
B面の銀の迷路をナメクジラ 明日嘉
  ターナー島  A面よりB面、ナメクジの金ではなく銀の足跡、そしてさ迷う弱者との関係が、じわりと感性に訴えかけてくる。「うしろ姿の幸せばかり」を共感する。
  すな恵  B面が効いている。月の裏側を思いました。カタカナ表記も、ウルトラ怪獣みたいで、マクロ化した映像がうかび面白い。

えつの、ほろよい選
十六夜や銀の指輪と置手紙 クローズ
  えつの  物語性の感じられる内容です。「いざよい」だからさびしく悲しい別れの場面でしょうか?
  ほろよい  ユーミンの「ルージュの伝言」の世界。

こまりやま、安選
銀色の空をはがれて秋しぐれ 依里
  こまりやま  秋のセンチメンタルな気持ちが空の表現にあらわれている気がします。空をはがれてがいいです。
  安  この秋しぐれのもの寂しさは、あの銀色の空をはがれて落ちてきているからなのか! その発想にキュンときました。大好きな句です。

レモングラス、たかこ選
野分めく夜や水銀体温計 まほろ
  レモングラス  懐かしい水銀体温計を脇にはさんで何思う、子供のころの熱っぽいけだるさを思い出しました。
  たかこ  水銀体温計のレトロな感じが野分という季語に似合っていると思いました。

1点句
けんかして銀木犀の降る夜道 八木ふみ
  松ぼっくり  銀木犀の匂いは金木犀に比べると穏やかですので、けんかも歩いている内に忘れるほどのものかもしれませんね。誰しも身に覚えがあるような風景!

特休で山芋掘りの銀行家 ザッパー
  遊人  はじめ特急と読み違いをしていた。員でなく家の趣味が山芋掘りとは! 行先はふるさとなのだろうか。

銀杏まだ青しAKB48 逆ベッカム
  ザッパー  先日、石鎚山系の無人の神社で銀杏を山ほど拾いました(笑)

裏切りの銀三十枚ユダの虫 洋子
  たっ君  銀三十枚で裏切ったとは……? 今なら〜どの程度の価値観が持てるでしょう?

金の鯉へ銀の鯉寄る秋の昼 だりあ
  ゆりかもめ  しっとりした秋の風景が感じられます。

もつれ糸のほぐれし思ひ大銀河 松ぼっくり
  生糸  最近の国内外のもめ事。みんな空を見上げ、大きな心で解決。そんな願いがこもった句。

まち歩き先々で逢う銀やんま ペプチド
  エノコロちゃん  こちらでも、夏からずぅ〜っと今も、夕方うす暗くなっても低く高く独特の飛び方をする銀やんまを見ます。「逢う」と親しみを込めている所に共感致しましたので一票です。よかったです。

銀漢や悪意に満ちた地上かな 豊原清明
  まんぷく  喰うか喰われるかの世界の頂点に居る我々人間は他の生き物から見れば悪意の塊りでしょう。それら凡てを天は優しく包み込んで呉れていると天の川を見上げると思う事があります。

星流る知らせや銀座線車内 桔梗
  山ぐるぐる  魔法のような句です。なぜか東京メトロ銀座線ならありえる、丸ノ内線や有楽町線では無理だと思います。

銀舎利を高めに盛りて今朝の秋 おせろ
  洋子  まさに食欲の秋ですね。太らないように気をつけましょう。

ふる里の鰯群れたる銀の海 一心堂
  多久美  鰯の大漁句今年は鰯は安いかな?

銀漢や受精行う海の底 えりぶどん
  ぐみ  広い広い天体と海の底の生命の神秘を感じました。

つむぎ織銀糸沈めて秋の昼 ゆき
  おせろ  つむぎ織に金糸は似合わない控えめだけど他には紛れない銀糸が紬にスパイスをきかせてる。秋の昼が穏やかさが出ていいと思った

出自疑はれ銀杏睨みをる 正人
  元旦  投句一読この句に引っ掛かりました。何だか諺みたい。いかんいかん、ほかの句にせねばと思いつつ、頭の中をぐるぐる駆け回り、この句に戻って来てしまいます。意味はよく分からないのに、とほほ。ギブ・アップです。

見上ぐれば地球飲み込む銀河かな ふーみん
  輝女  昔、まだ学生だった頃、夏休みに行った与論島で見た天の川を思い出しました。

金打ちへ捨て身の銀や桐一葉 青柘榴
  カラ嵩ハル  桐一葉にも金に対する銀のようにえい! と覚悟があるようで面白い。

折り紙の銀乱反射する月光 紗蘭
  まるにっちゃん  幼少の頃、金・銀の折り紙は最後に折る子供だった。丁寧にアイロンかけてでき上がった作品がキラキラ光っていたのを思い出す!

恋舞いて銀色夏生夜長の詩 Blanca
  キミミキ  秋の夜長に、ため息をつく姿。詩がスパイスとなり。切ないですね〜。

会えなくてごめん月夜の銀ぎつね 山ぐるぐる
  猫ふぐ  月夜の山歩きは楽しい。会えなくて残念でした。

長き夜や銀座裏にギムレット たま
  未々  「あなたにはギムレットが似合うね」とささやいた紳士がいました。背筋を伸ばした女に似合う甘くて強いギムレット。アルコールが弱いワタクシ、情けないです。

銀の雨映す鏡台秋深し 亜桜みかり
  ぎんなん  外は秋の雨。鏡台の前に静かに座している美しい人。何だか谷崎の小説を思い出し、いろいろ想像してしまいました。

大西日金波銀波の双海駅 ほろよい
  清流子  スケールの大きな一句お見事。

秋来たる銀のフォークでスパゲティ ぐみ
  豊原清明  秋はスパゲティと合う。銀のフォークとは好き。

そう言えば銀婚記念日栗おこわ 不知火
  コナン  まったく同感。知らぬ間に過ぎていました。栗おこわいいねえー金婚式に期待しましょう。

猫じゃらし無くしたものは銀の鈴 猫ふぐ
  唐草サ行  銀の鈴といえば東京駅の待ち合わせを思いだしました。なんとも素敵な取り合わせ!

銀匙の掬う至福や熟柿食う 和音
  空山  同感!です。

今月の無点くん
銀ぶらはとうに死語なり秋の暮 藍人
軽銀の銀婚記念宵月夜 破障子
秋の夜の銀の燭台悔い深し 蓼蟲
銀の湯船をカトレアの香で満たす ポメロ親父
金色の風銀色に秋遍路 清流子
秋彼岸父賜りし銀時計 未々
月涼し銀の粉さへ撒ひており 今比古
シルバーの高騰ニュース銀河の夜 権ちゃん
殿からの銀の盃古希祝ひ レモングラス
銀環に古墳三百秋深む 春告草
女優なり銀杏絨緞颯爽と 生糸
あと一歩銀メダルシブし行く夏や エノコロちゃん
芋の露古代ガラスの銀化玉 たかこ
白を銀黄色を黄金に良夜かな まんぷく
銀紙に包む味覚や秋祭り 西条の針屋さん
銀むくのスワトウメード蜘蛛の糸 都
汗光るなでしこジャパン銀メダル 平平
露の夜玉なす前の銀世界 樹朋
銀世界まぁだだよ今夏の延長戦 しのたん
秋の風居住者一人の銀波荘 柊つばき
オリンピック銀を取るのもすごいこと オパール
水銀燈現し世照らす夜長かな 七草
桐一葉細き手首の銀時計 雪花
新涼や転がって来る銀のすず 遊人
とんがって銀の鎖や敬老日 ゆりかもめ
こだわりて銀色グッズ揃う夏 サキカエル
銀漢や師匠似顔のハンチング 藻川亭河童
弔いの言つひに出ず冬銀河 大中博篤
吾の上に玉兎銀蟾音も無く 紫音
銀もくがねもけふの濁り酒 すな恵
飛車角の縁台将棋銀と歩と 輝女
人の世や銀河の果てに色無き風 よひら
銀輪や秋風背負いバンク跳ぶ ちろりん
銀色の月の調べや夜のうみ こまりやま
銀色の鈴虫、哀しすぎるのは チャンヒ
百台の放置自転車月は銀 鞠月
銀翼の眼下別れし竜田姫 元旦
かぶりつく銀鱈味醂秋の雨 理酔
初恋の銀チョコパンや秋の声 唐草サ行
銀婚式助手席いつも秋茜 まるにっちゃん
表彰の銀のカップやすぎし春 信野
生活が必死か銀河高くあれ ソラト
雨上がり西日に輝く燻し銀 キミミキ
銀天街拡幅来たる夏に向け 魔心地
九月の銀ホイルグチャグチャのボコボコ ぜぶら
銀漢に銀のピアスを置いてくる 迂叟
鈴懸の実上へ上へと銀のさじ えつの
日焼せし肩甲骨の銀色に 朗善
音の無き悲鳴ながるる銀河かな 三月
風鈴列車は銀河で終点なり たっ君
銀不服新米食うて目指せリオ お手玉
銀時計目指して今日も夜食かな 駝楽
鰯雲きらきらきらり銀メダル こてぞう
日銀の銀杏IEONの金木犀 いつき
銀行の鈴虫鳴くや融資席 人日子
撫子や曾祖母の名は小銀とか 青蛙
銀竹のヌーンヌーンと泣く夜かな ケンケン
鈴虫の羽根震わせて銀の鈴 カシオペア




第179回兼題
「家族」をテーマに
出題者 ふづきさん

1 ネガフィルム透かし見ている夜長かな
2 デパートも祭り囃子も秋半ば
3 新米を家族で食べるうれしさよ
4 どんぐりのような会話して家族
5 左官屋も大工も親子天高し
6 白桃やほどよき妻の乳房かな
7 冬だのう眠ってナンボの我が家かな
8 夫と息子のつきぬ話や木の葉髪
9 命令は父の特権鵙日和
10 鬼となる母への道や曼珠沙華
11 焼芋と父が待っていてくれた駅
12 シャンプーは個別の我が家文化の日
13 さんま焼く匂い隣は大家族
14 父と子の別れに秋気澄みゆけり
15 三匹を五人で分ける初秋刀魚
16 昏昏と妻赤唐辛子になる
17 亡き兄のきりなき言葉金木犀
18 亡き父の海戦記録読む夜長
19 軽鴨のまづ親が行き子が続く
20 月を見る悲しきことも歌にして
21 寡黙なる夫酌みかわす雪見酒
22 どの窓も秋、世界が家族ならば
23 DSの五台秋の夜「モンハン」す
24 鶏頭や家族といふ血どくどくと
25 孫作る肩叩き券敬老の日
26 秋の夜にまちが絵探しファミリーで
27 寝顔みるために起きます秋うらら
28 天高く眠る我が家の青い鳥
29 又一人連れて来るなり赤とんぼ
30 食卓を囲む笑顔や春の宵
31 秋ともし生まれ来る人送る人
32 買い替えた夫婦茶碗や末の秋
33 秋うらら家族の揃ふ写真館
34 後の世もともにあそばむ花野にて
35 我先に食卓に付く秋渇き
36 首都圏の娘に米やら蜜柑やら
37 子守唄囲むや里の芋煮会
38 運動会父のリベンジ家族愛
39 爽やかや川の字に立ち南無大師
40 独身は独身として秋刀魚焼く
41 風の盆娘も孫も踊りのワ
42 栗飯の後に手渡す降圧剤
43 好々爺になりきる夫や栗ごはん
44 子にもなり親にもなりし秋彼岸
45 猫二匹話ふくらみゆく夜長
46 おほかたは天の家族や秋の虹
47 消しゴムのだんだん縮む母縮む
48 長男かぶれて銀杏の山ほど
49 栗飯やみんな揃って食卓へ
50 家族七人おでんの大鍋笑いいる
51 親子なり同じ本見てなく蚯蚓
52 とうさんの横にかあさん豊の秋
53 兄ちゃんとイガイガささったくりひろい
54 膝小僧抱く者多し秋の風
55 鈴をふるような声持つ孫帰省
56 銀漢へ家族は舟を乗り換えた
57 焼秋刀魚箸の運びも親ゆずり
58 返信は五回に一度青みかん
59 鰯雲増えて減りたる飯茶碗
60 断ち切れぬ絆の海や秋暑し
61 重力に加速してゆく布団かな
62 林檎赤々家族がひとりふえました
63 秋澄むやグレンフィディッチへと氷
64 嫁姑天秤担いで秋行けり
65 家族みな総出で月をうばいけり
66 メニューから家族平和の秋チョイス
67 嫁が来て笑いの増える豊の秋
68 姉だけに桃剥く叱りすぎたから
69 時雨るるやそこそこの愛さえあれば
70 おでん食べたいと思ってたらおでん
71 我を見ゆ星一つ生れ九月尽
72 子に草の名前をつける今朝の秋
73 家族てふ単位つくれず年暮るる
74 ちゃぶ台の消えて久しき夜半の秋
75 名前には最後にIある虫の声
76 薄紅葉父似の小指子に孫に
77 コスモスや母が旧姓で呼ばれて
78 秋高し父の形見の靴かるし
79 ひとはだといふもうれしき御櫃入
80 はじめから同居おでんの具の九種
81 二人暮しに慣れずおでんは余る
82 家族だから心配だから秋夕べ
83 戒名に誰も慣れずや天高し
84 嬰児や畳の影つかみて秋
85 家族という器よ秋草のさまざま
86 暇そうな菊人形の家族かな
87 妻にして母にはあらず毛糸編む
88 にらめっこして似て笑う秋夜長
89 家族といふ絆や我にオケラ鳴く
90 薄命の血の流るるや帰花
91 姉さんのお下がり貰ふ猫じやらし
92 つられ出る子の戻さるる運動会
93 今朝摘みしえひめみかんはフクシマへ
94 秋深し親子喧嘩の傍に猫
95 ばあちゃんの煮物ほおばる運動会
96 色鳥や双眼鏡を奪ひあふ
97 リレーして家族で繋ぐ未来夏
98 大試験DNAを吹き飛ばせ
99 子の部屋の褪せしポスター天の川
100 じいちゃんのひざが好きです七五三
101 残されし家族の絆秋深し
102 初時雨ドアから入れて家の人
103 朝顔や寮母のまるで似ていない
104 母さんが笑えばわたしも笑ふ秋


次回兼題「好きな植物名をいれて一句」をテーマに 出題者 空さん
次々回兼題「SF」をテーマに 出題者 むめもさん

【兼題の扱い方】
季語「xx」 … 副題含む季語を入れる。
「xx」をテーマに … 内容に沿って詠む。
「xx」の字の入った句 … 単語そのものを詠み込む。



めざせ!大漁旗(180号〜185号)
 誌上句会「ザ 句会『鰯の歯ぎしり』」では、選んでくれた人の数をすべて集計し、半年間で最も点数の多い方が「大漁旗」を獲得します。大漁旗を得た方は「最新十句」を本誌誌上にて発表することができます。

〈参加方法〉
 1 「今月の投句」から好きな句を選ぶ。(選句)
 2  その句の感想を書く。(選評)
 3 「次回兼題」の一句を書く。(投句)
 ※1〜3、俳号(本名)、〒住所、電話番号を明記して、編集室「ザ 句会」宛にお送りください。一人一句まで。選句は番号と俳句を共に記入して下さい。
  番号はお間違えなく!

  今回の締切は11月5日(月)必着です。
 Eメール宛先 kukai@marukobo.com
 インターネットや携帯電話から下記の場所にアクセスしていただくと、専用のフォームを使って簡単に投句&選句ができます。
 http://www.marukobo.com/kukai/


【現在の捕れ高】

14点
なゝ

6点
カラ嵩ハル

4点
とりとり
コナン
さかえ
牛後
犬鈴

3点
一走人
ぎんなん


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大漁旗獲得記念! 最新十句



 174号〜179号の「ザ 句会」にて累計点数の最も多かったゆきさんの大漁旗獲得を記念しまして、最新十句を掲載します。
 今回の十句に対しての感想をお待ちしております。寄せていただいた感想は、次号に掲載します。

良夜 ゆき

一日にため息三つ秋暑し
秋の風思いつきりの深呼吸
囲まれた 愛ではなくて赤とんぼ
秋桜弛まぬ人と少しゐて
つづれ織り銀糸沈めて秋の昼
漆黒の葡萄渡され終わる恋
セザンヌの林檎のにぶく光りだす
クレヨンの折れて哀しき無月かな
語り部と呼吸あわせし虫の闇
ゆるやかに吾子抱く良夜遥かなり


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100年俳句計画 掲示板


 組長&編集長&組員さんの出演執筆一覧

テレビ/ラジオ
NHKラジオ第一
 「大人の補習授業」
  11月13日(火)21時5分〜21時55分

NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  11月6日(火)11時40分〜
  11月20日(火)11時40分〜

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「水鳥・大根引」(10月28日締切)
   「綿虫・ブロッコリ」(11月11日締切)
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)・住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム・チャンヒのイラストポストカードが贈られます。



執筆
Pioneer Sound Lab. 音俳句
http://pioneer.jp/soundlab/
  ウェブサイト上に組長の選評が毎日一つ発表されます。投句も受け付けています。

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

愛媛新聞
 「集まれ俳句キッズ」毎週土曜日

愛媛新聞(キム チャンヒ)
 「ヘンデス俳談」毎月第一土曜日 兼題「小春」締切 … 11月20日(火)


句会ライブ/講演など
ふるさとふれあい塾 in 松山大学
 10月31日(水)

愛知江南市古知野中学句会ライブ
 11月2日(金)

西条市禎瑞小学校句会ライブ
 11月9日(金)

はぴかちゃん歯いく大賞句会ライブ
 11月11日(日)13時40分〜
  いよてつ高島屋8Fスカイドーム
  司会 やのひろみ
※大賞句を当日句会ライブ形式で決定します。

済美平成句会ライブ
 11月14日(水)

神奈川県立保土ヶ谷高校修学旅行句会ライブ(キム編集長)
 11月14日(水)

南予教育を考える集いでの講演会
 11月16日(金)

愛南トレッキングザ空海
 11月18日(日)

高知県芸術祭閉幕式典 特別講演会
 11月25日(日)

今治美須賀小学校合同句会ライブ
 11月29日(木)


イベント
写真俳句コンテスト
 キム・チャンヒによる、写真俳句 の入門・スキルアップ講座の開講
 11月4日(日)・11月10日(土)・11月17日(土)・12月2日(日) 10時〜18時 【吟行旅行含む】
 松山市内(宮島・広島・呉〜松  山エリアの移動含む)
※公式HP http://matsuyamahaiku.jp/contest/


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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

The Girl met Jazz
紗蘭 今年からドラムを習い始め、学校のジャズバンドに入ってからJazz俳句のコーナーをおもしろく感じるようになりました。これからも楽しみにしています。
編 タイムリーなことに今月号特集はJAZZ句会。「JAZZ俳句ターンテーブル」と併せてお楽しみ下さい!

表紙写真家・香雪蘭
香雪蘭 木琴様。表紙写真を褒めていただいてありがとうございます。素敵な夏休みをお過ごしのようで、ただただうらやましく……。偶然とはいえぴったんこになったのは、私の写真も木琴さんのエッセーも10月のイメージだったからでしょうか。選んだのは編集長のお手柄?ですけどね(とごまをすりつつ……)。もうあと1回なので(いつものように)渾身の一枚が送れたらいいなあと思ってます! 写真部の応援もよろしく〜。
編 表紙写真家の任期満了まであと1月の香雪蘭さんより。毎月の力作ありがとうございます! 次の表紙写真家はザ・句会の写真を撮影して下さっているどんさんです。写真部の面々への応援よろしく!

「新・100年への軌跡」感想
蓮睡 岡戸游士さん感銘句。
 夏の海浸るロープの見え隠れ
 枕ごと壁に張り付く昼寝かな
 紺野さん。
 秋晴れのむこうに神様の衣
 糸瓜忌やシャツのほつれの細くゆれ
 お二人とも、半年間せっかくの機会を楽しんで下さい! 読者の皆様、「100年の旗手」の応援と並んで、「新・100年への軌跡」への感想や応援もよろしくお願いします。(経験者は語る!)
編 前身である「100年への軌跡」第五期で連載を担当した蓮睡さんより。感想がなによりの栄養剤。

カンソウトドキマシタ
元旦 「ホンヤクサイホンヤク」爆笑です。前衛的な句になりますね。次は何の句を訳してくれますか。
編 地味に人気コーナーになりつつある予感。

へたうま生活
不知火 へたうま仙人様 かねてより仙人様のファンで、やっと勇気を出して投句しましたのに、永久追放とは。くらむぼんで修行してきます。
 へたうま仙人に追放され残念!!でした。(ぎんなん)
編 ほぼ毎月追放され続けてる人もいますしあまり気にかけないでいいんぢゃないでしょうか。

プリーズ・リクエスト
更紗 いつも「句集の本棚」を読ませていただき、マルコボさんで手にとって読める方をうらやましく思います。松山は遠い〜! 組長句会で返却する約束で貸し出ししていただけないでしょうか。
編 承知しました。貸し出し希望の方はmagazine@marukobo.comまで件名を「句集の本棚貸し出し希望」としてご連絡下さい。

俳句甲子園にこんな賞が
えつの 「俳句甲子園」サントリー地域文化賞受賞おめでとうございます。いつき先生や竜胆さん達の御努力の成果です。
編 サントリー地域文化賞は、サントリー文化財団が地域文化の発展に貢献した個人または団体を顕彰する賞です。あらゆる形で俳句甲子園を応援して下さる全ての方の努力の賜物ですね。サントリー財団HPにて関連動画公開中。

句会もいろいろ
ケンケン 大阪句会のみなさん、お元気ですか? 次回の句会が待ち遠しいですね。他の句会にもいつかは参加してみたいです。
編 大阪句会のケンケンさんより。最近ではインターネット句会「象さん句会」にも出没中。

ソラト われわれ夫婦と長女夫婦それに二女の現在五名にて、Φ句会というのをツイッター上で毎月やっています。
編 こちらはツイッターでの句会。アカウントを検索すると出ました出ました。ちょっと面白そう。

お見舞い申し上げます。
まとむ いつもお世話になっています。八年ぶりに怪我(踵骨折)をして、ゆっくり療養しています。この際なので、読みたかった本を片っ端からやっつけ、作った俳句の整理をし、床の拭き掃除を念入りにし、充実したギプス生活を送っています。生涯こんなにのんびりしたのは初めてかも?
編 お見舞いといいつつ充実のギプス生活のご様子。なんと第2回「大人コン」作品も仕上げて送って下さいました。蜜柑の収穫が本格化する前の完治を祈りつつ〜。

はじめての投句
ゆまるばたこ 今月こそはと思い続けて、ようやく初投句です。句歴の浅い未熟者ですがよろしくお願いします。
うに子 先日の木曜カルチャーではお世話になりました。こんなひよっこでもいいのでしょうか?
魔心地 雑詠道場は初投句です。仕事でR196→しまなみ海道→今治市内とバスで走っている間に一人悠々句会と称してノルマ10句を詠んだうちの3句です〜。
むめも マガジン初投句です。くらむぼんかへたうまか迷いますー。ドキドキ……。
編 雑誌に初投句な方からコーナーに初投句な方まで。お気軽に楽しんでってください!

第2回「大人コン」迫る
洋子 季語付スケジュール帳のおかげで、下手なりに30句出来ますので3句選ぶのが大変です。けれど、選句作業は楽しいですね♪
編 雑詠への3句のお話ですね。ぜひ第2回「大人コン」へも参加していただきたい! 選句、楽しいですよ♪ 詳しくは裏表紙参照。

組員の生活
柊つばき 色の白さがとりえだったのに〜孫の体育祭に行って色が真黒に。今皮がはげています。もう元にもどらないのかも。
編 10月28日にはいつき組的秋季大運動会も開催。この雑誌が届く頃には参加者も嘆いてる?

南骨 中秋の名月は浦戸湾遊覧船から観る予定でしたが、台風接近で中止。残念。
ザッパー 現在石鎚山系で鹿の生息調査をするために、山肌を駆けずり回っています。某有名渓谷でトリカブトの巨大群生地を発見した時には驚きました! 句材の宝庫です♪
駝楽 久しぶりに四国入りしました。空路で高知上空を、鉄路で高知から阿波・瀬戸大橋と駆け抜けましたが、良い天気に恵まれ、車窓を満喫しました。
編 陸海空制覇な感じでなんかスゴイ! 俳人は行くよどこまでも!!


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くざとも

毎月たくさんの句会が各地で開催されています。それぞれの句座にそれぞれのカラーと名物キャラあり!! というわけでこのコーナーでは、句会の紹介とともに、句会の人気者、そして期待のニューフェイスを紹介していきます。

人気者
まほろば句会
俳号 ダンボール看板

 ほやけんよ月曜カン組季語かぶり

 竹林寺句会ライブで五台山への登り道、大きなカーブを抜けた途端、ダンボール看板が立っていました。愛媛からのバスツアーの組員さんもブッ飛んだあの看板! あれから6年の歳月が流れ、当地では伝説の男となりつつありました(笑)。
 組長ブログで組長の句を広報へ載せたいとの書き込みを見つけ、香南市広報課に出向きコンタクトに成功。以後、まほろば句会に参加して頂いています。若さとエネルギーで句座を盛り上げる期待大です。毎回の選評が面白く、これからの活躍が楽しみです。良い声の持ち主で、歌を聞きたいと思いますが未だ叶っていません。組長は句会で「ダンボ君」と呼んでいますが、象のイメージが強く、フルネームで呼ぶようにしています。
 因みに私の旗の制作、活動はあの看板を超えたいとの思いから始まったものです。
(文・まっことマンデー)


新人
愛媛新聞カルチャー教室 俳句のある生活を楽しみたい人のための俳句入門
俳号 うに子

 木曜カルチャーは、個性豊かな面々の活気と才気に溢れています。
 十月で丸一年のうに子さんは、長浜双海線を車で又ある時は、八幡浜からJRで教室に通っています。

1 俳句を始めたきっかけ
 新しいことを学び変わりたかったから。錆びた五感を目覚めさせるには俳句がいいかと思いました。

2 変わったこと
 日常は俳句の種に溢れていることを実感。風も海も人も毎日、変わっていることを見過ごしていました。

3 俳号の由来
 向田邦子の生き方や作品に惹かれ邦子もじりで。unicoはイタリア語で「私らしく」という意味もあるそうです。

4 カルチャーの魅力
 季語や初めて知る言葉、たった十七音で気持ちを汲み取ってもらえる俳句に感動しました。組長はじめ先輩方の鋭い指摘や感想に毎回、パワーをもらっています。
(文・野風)


句会の開催日程等詳細は句会カレンダーのページをご覧下さい。


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鮎の友釣り

174

俳号 むめも

空さんへ 積極的な空さんのおかげで続けられてます。どこまでも憑いて……いや、ついていきます〜。

俳号の由来 本名が「眞実(まみ)」なので「まみむめも」。

二度目のチャンス 十数年前に州麻子さんに誘われた時は「えー俳句なんて私には無理ーっ」と思いました。5〜6年前に俳句に興味津々の空さんを州麻子さんに紹介したのがきっかけで今はのらりくらりと俳句ライフを楽しんでいます。

出没先 土曜カルチャーとぶんぶく句会に探鳥会、俳句の缶詰と今月からはマガジンデビュー等々。

写真 うちのナナちゃんです。

次回…朗善さんへ 朗善さんのブログの軽快な語り口のファンです。またぶんぶく句会でお会いできたら嬉しいです。


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告知


生まれてから現在までの代表句募集!

1月号特集は、毎年恒例、皆さんからの自選三句を掲載した「代表句集」です。沢山の方の参加をお待ちしております。

募集内容
 あなたの生まれてから現在までの代表句三句(一人一俳号まで)
 代表句についてのコメント
  ※コメント全体で100字以内厳守
 お名前、俳号(ふりがな)、年齢、住所、電話番号を必ず明記の上、宛先・件名を「代表句集2013」としていつき組編集室までお送り下さい。

※俳号と俳句には、よみがなを付けてお送り下さい。年齢は鑑賞の参考とするため句集に掲載させていただきます。御了承下さい。

専用ホームページ
http://2013.marukobo.com

締切 11月30日(金)必着
なお、応募対象はハイクライフマガジン『100年俳句計画』定期購読の方のみとさせていただきます。ご了承下さい。




12月の第1土曜日は恒例の……!!
いつき組大忘年会のお知らせ

 毎年12月の第1土曜日は「いつき組大忘年会」の日。今年も盛大に開催致します。抱腹絶倒まちがいなし。たくさんのご参加をお待ちしています。

日時
 平成24年12月1日(土)18:30〜21:00(受付18:00〜)

場所
いよてつ高島屋9F ローズホール
愛媛県松山市湊町5丁目1−1
089-948-2111(代表)

会費
・大人 6,500円
・大学生以下 4,000円
・小学生以下 2,500円

参加申込締切
11月16日(金)必着!

参加方法
 忘年会参加希望の旨と、〒住所・氏名・俳号・会費区分(大人/大学生以下/小学生以下)・連絡先電話番号を明記して、ハガキ、FAX、Eメール、または電話にてお申し込み下さい。ご家族等複数でお申し込みの場合は、代表の方の〒住所・連絡先電話番号に加え、全員の氏名・俳号・会費区分をお知らせ下さい。

【投句・投稿に添えてのお申込はお控えください。】
※受付対応が遅れる場合があります。

 お申し込みをいただいた方には順次、受付完了をお伝えするハガキを郵送いたします。
※締切までにお申込いただいた方で、11月22日(木)までにハガキが届かない方は、お手数ですがマルコボ.コムまでご連絡ください。

問い合わせ・申し込み先(有)マルコボ.コム
〒790-0022 愛媛県松山市永代町16-1
TEL 089-906-0694 FAX 089-906-0695
E-mail magazine@marukobo.com




100年俳句計画投稿締切カレンダー

 
 10/31(水) くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 zatsuei@marukobo.com

 11/5(月)
  ザ・句会
 kukai@marukobo.com
  100年の旗手感想
  魚のアブク

 11/30(金)
 くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 100年の旗手推薦募集

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


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マルコボショッピング


マルコボ.コムのショップ店長まほろがアナタにオススメする逸品!
オンラインショップでは様々な商品を取り揃えて皆様のご来店をお待ちしています。


『句画ポストカードブック 夜警』
句+画:蜂谷一人
10cm×14.8cm/全22枚 1700円(税込)
※数に限りがございます。

*蜂谷一人句画集『プラネタリウムの夜』とのお得なセットもご用意しております! 詳細はオンラインショップへ!

オンラインショップ商品カテゴリ:本

コメント
絵はがきとして使うもよし!作品集として鑑賞するもよし!
 『俳句マガジンいつき組』で表紙絵を担当していたこともある蜂谷一人さんの絵と俳句のポストカード全22枚が、そのまま一冊に綴じられています。22枚それぞれに独特のタッチ・幻想的な色使いの絵と、絵に添えられた俳句が一句ずつ。句画作品集としても大変魅力的です。



マルコボ.コムオンラインショップ
http://shop.marukobo.com/




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編集後記


 本誌の創刊当時は、「楽しくなくちゃ俳句じゃない」というのが、キャッチコピーだった。そして、今月号の特集で紹介したジャズ句会はまさに、それを実現した企画。美人バーテンダーの作るオリジナルカクテルを飲みながら、間近でジャズライブを楽しみ、最後に句会でミュージシャンと競演をした。俳句を通じて、こんなに夢のように楽しい時間が過ごせるなんて、思いもしなかった。
 数年前、俳句の先輩から「砂を噛むような気持ちで俳句を作っている」という言葉を聞いて、とても驚いたことがある。僕にとっては、俳句を作ることも、絵を描くことも、マンガを描くことも、デザインをすることも、文章を書くことも、何らかの創作することは、苦しさよりも楽しさの方が勝っている。大体、苦しいだけならやらない。俳句に関わる人のほとんどが、そういう思いだと信じていた。
 先日開催した「俳句対局龍淵王決定戦」も、全く同じ精神の企画。対局という形で、真剣に俳句に挑むことだって、「俳句を楽しむ」方法だと思う。
 キャッチコピーは「100年俳句計画」に置き換わっても、本誌のその精神は全く変わっていない。
(キム)


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次号予告 (181号 12月1日発行予定)


次回特集
100年俳句計画選評大賞2012など


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2012年11月号(No.180)
2012年11月1日発行
価格 600円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子