100年俳句計画7月号(no.176)


100年俳句計画8月号(no.177)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
句集 じろ


特集1
スポレク企画第2弾 どろんこバレー体験吟行


特集2
ボウリング大会吟行



好評連載


作品

百年百花
 きむらけんじ/桜井教人/松本だりあ/山澤香奈


100年俳句計画作品集 100年の旗手
 まりん/大五郎/ターナー島

百年琢磨 平敷武蕉


雑詠道場 くらむぼんが笑った

初学道場 へたうま仙人

放歌高吟/夏井いつき

新100年への軌跡
 俳句/希望峰/宮下航
 評/マイマイ/瑞木


読み物
私たちの100年俳句計画
Letter from spider garden/ナサニエル・ローゼン(訳:朗善)
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
本家 慶弔俳句帖/桃ライス
勝手にエロ句解釈/高田順三
まつやま俳句でまちづくりの会通信/暇人
一句一遊情報局
句集の本棚

読者のページ
選句&投句欄 ザ・句会
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
くざとも
鮎の友釣り
告知
マルコボショッピング
編集後記
次号予告




表紙リレーエッセー


句集
じろ

 句集『東京松山』を出すことができた。Webやツィッターでも暖かい感想をいただき、幸せな気分の数ヶ月であった。句集を作ってみて分かったことがいくつかある。その一つが、句を作り始めた以前の記憶も含め、句集がひとつの自分史になっていることだ。幼い頃からの自分が見たこと感じたことの記憶が、ここ十五年間の作品に日記のように現れている。句として出来たのは最近だが、そこには紛れもなく大昔の自分もいるということで、貴重な自分のメモリーなのだ。子どもの頃、学生の頃、若手社会人の頃、おっさんの頃などのメモリーがあちこちの句にある。転勤はいつも夏だった。神戸からフェリーで、軽四で松山観光港へ上陸した最初の勤務。東京から高速道路を走り通して着いた二度目の勤務。当時まだ自分に俳句はなく、眩しく輝いていた大街道のアーケード。今そこに俳句甲子園がある。


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特集1
スポレク企画第2弾

どろんこバレー体験吟行


文・俳句 マイマイ


 6月17日朝、小雨の降る中を私マイマイと妻の藤実はどろんこバレーに参加するため、さる伊予鉄の駅へと歩いていた。一昨年は自家用車で参加したのだが、今年は打ち上げで飲みたかったので電車に乗ることにしたのだ。

梔子の花を通って急ぎけり
のったりのたり電車水田の空を行く
六月の風に車掌の一礼す

 終点の郡中港駅で降りてJRに乗り換える。徒歩2分、待ち時間は30分。

陸橋に登れば下を夏燕

 一両の電車に乗り込めば、同じく参加予定の方々が既に席を占めている。さっそく話に花が咲く。

六月の鏡とならぬiPad
ゴーグルのどろんこバレー仕様なる
梅雨に濡れるありふれた鳥で人で

 そして電車は海へ。次第に空も明るくなってきた。景色を堪能しようと俳人達は右へ左へ。

梅雨晴間もうあの島は山口県
車窓より見下ろす泰山木の花
人乗らず降りずカンナの駅無人

 空はどんどん明るくなり時折日差しも見られるようになったころ、伊予白滝駅に到着。出迎えの方々の車に乗せて頂いて瀑さん邸へ。邸には今日の出場者や応援の人達が集まって賑やか賑やか。
 まずは腹拵え。瀑さん、そして奥様、毎回お世話になります。

カレー喰う先ず内臓を灼くための
勝利祈って辣韮漬の荒々し

 カレーと辣韮をお代わりし、着替えが終わったころ組長も到着。俳句集団いつき組青嵐(精鋭)・薫風(いわゆる二軍)2チームのメンバーも揃っていざ出発。会場までは徒歩10分程度。

小判草姫小判草鳴らしけり
真相や蛍袋を揺らす指

 会場の田んぼにはネットが張られ、白線代わりの苗も植えられて試合開始を待つばかり。

移り気な風に蝸牛の寡黙
どろんこバレー泥に並んで開会式
植え直して下さい早苗踏んだ人

 我らが薫風チームの最初の試合はCコート3試合目。青嵐チームもBコートの3試合目なので応援出来ないのが残念。さあ時間まで恒例の猪鍋でも頂きますか。「さっきカレーお代わりしたのに」と妻のツッコミ。

卯の花やキミの別腹幾つある
梅雨晴れてぜんざいの餅伸びる伸びる
唐黍に前歯開幕戦の笛

 どろんこバレーの特別ルールで何点取っても取られても10分間はとにかく闘い続ける。みるみる泥にまみれていく出場者達。

歓声と悲鳴と泥と夏の雲
飛び込んで泥の笑顔となりにけり

 さあ、いよいよ出番。3分程度は練習の時間があるのだが、全然ボールが繋がらない。足が動かない。相手チームはというと、トス、スパイクって、そ、それはひょっとして普通のバレーでは? そして開始の笛。

どろんこバレー足は地球に繋がれて
苦笑爆笑泥田に伏すは味方ばかり

 どんどん点差が開いていく。相手コートにボールを返す確率は、きっと味方が触った回数に反比例するだろう……。とにかくボールが来たら相手コートに返す。そして相手のミスを祈る。それしかない!

だんだん愉しい泥にまみれる
夏蝶の笑うがごとく過ぎゆけり

 終了の笛。ダブルスコアにて敗北。薫風チームが泥だらけなのに対して、相手チームはあまり汚れていない。ふふふ、どろんこバレーを本当に堪能したのは我々の方ですよ、とは負け惜しみの弁。

万緑や泥なる身体ごと洗う

 さて青嵐チームの方は野獣パワーを発揮して、見事勝利したとのこと。

 ということでいろいろありまして……。

 最終結果発表!
 我らが薫風チームは0勝3敗。青嵐チームは不戦勝を含む2勝1敗でしたが、決勝トーナメントには進めず。
 私マイマイはハッスル賞のメロンを頂きました。ご馳走様でした。

勝利とはきっとメロンの二つ割り

 勝ってないけど……。

写真・瀑、兼光



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特集2

ボウリング大会吟行


文 キム・チャンヒ


 むうんさんの提案で急遽決まったボウリング大会吟行。あまりに急だったので、紙面での告知は間に合わず、年間購読者にはチラシで、そうでない方には、メールマガジンでお知らせした。
 大会当日は、毎年密か(?)に有志で行われている愛媛新聞カルチャー教室のビアガーデン大会の日。一汗流したあとのビールを楽しみに、集まった参加者は18名。
 まずは、2ゲームの個人戦。参加者をくじ引きで4レーンに振り分ける。くじ引きにもかかわらず、何故か3レーンは男ばかり。しかも、きとうじんさん、瀑さん、烏さん、まるにっちゃん、正人君と暑苦しい。
 久しぶりにボウリングをする人がほとんどだったので、静かにスタート。ゲームが進むにつれてスペアやストライクが出てきて、その都度歓声が上がる。

二の腕の日焼け眩しきストライク むうん

 男ばかりの3レーンが妙に騒がしい。ここの男達だけボールを転がさずに投げている!

十五ポンド投げつけて梅雨蹴散らすか 烏

 1ゲームが終わったところで、腕の不調を訴える人が続出。しかしまだまだゲームは続く。

指二本離れ酷暑の転げ出す 兼光

 2ゲームが終了したところで、参加者はばて気味。最後は点数の高い人と低い人とが、順にペアになってのチーム戦。チーム力が均等になるかと思いきや、個人戦の2ゲームでポンコツになっている人も結構いて、明暗を分けることに。
 個人戦では男性の部はまるにっちゃんが、女性の部では、たった一人事前に練習をしてきた野風さんが優勝。

プレッシャーはねのけころがる夏一番 まるにっちゃん
9フレのよもやターキー心太 野風
 
 また、個人戦で意外と振るわなかった瀑さんと正人君のペアが、本領を発揮してチーム戦で優勝した。

青嵐のごとき男と手を組まん 正人

 思いの外盛り上がったので、来年もやろう。

夏雲に今日が歴史の始まる日 チャンヒ



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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠
2012年度 第二期 1回目


「シャツの穴」きむらけんじ

ざんねんな父よシャツ前後ろ
エレベーターで目が合っただけの別れ
話とはそういうことかタバコもみ消す
叱られながらゼムピン伸ばしちゃった
先生が最初はビールと言ったじゃないか
マサイの戦士はスゴイと言いて祖母眠る
気をつけの姿勢で眠って嫁はない
鼻の管抜いてやる満天の星
団子虫遠投して意味はない
マラッカジン飲むシャツの穴に風
耳朶の大きい人に賛成してしまった
顔見知りの高橋君は野良犬をしている


1948年生まれ。第一回尾崎放哉賞他。
自由律俳句結社「層雲」同人。句集『鍵の穴』(文芸社)、『鳩を蹴る』(プラネットジアース)、『昼寝の猫を足でつつく』(牧歌舎)。特技・妄想、泥酔。




「ますぐには」桜井教人

男来る初夏の風強ければ
灯心草落書のごと生きにけり
旅鞄には収まらぬ卯波かな
東国より獅子に似し顔セルを着て
校長に借りしままなる夏帽子
海に出て山よりの風待つことも
夕立や罪糺されてゐるごとく
突然は星の数ほど青葉木菟
ますぐには飛べぬ蛍ややはり捕る
滴りのやうに別れよ師は替へよ
炎天や駅前どこも似て非なり
国境の決め方牛の冷し方


1958年生まれ。愛媛県出身。「日本俳句教育研究会」会員。




「消息」松本だりあ

お手伝ひさんの消息を聞く梅雨の港なり
さみだれる海へ一途にトランペット
白南風や肺の写真に花の影
水ねむれ風ねむれ合歓の花醒めよ
鳥の浴びる水のゆらぎや夏の朝
突然の金魚の不在日雷
何某の妻と呼ばるる蚊食鳥
甘藍刻む恋文を書くやうに
吾の呼吸揚羽蝶へと近づけし
潮満ちて漁舟三十ノットの夏
グラスの凹みへ指を夏潮荒ぶ
灯台の銀の梯子を旱星


1942年生まれ。双子座。
句集『ダリア』(編集アトリエ まる工房)。




「携帯が邪魔」山澤香奈

瓜漬けてポケットの携帯が邪魔
Tシャツの背にも胸にも子を泣かす
飴にある渦巻模様大南風
喧嘩も出来ずぱらぱら目高へ餌
捕食者の目で夏雲見ておりぬ
怒りとは夏の風船ばんと打つ
ゴミ分別表に香水は載ってない
ビール瓶林立させて夫婦かな
月星の涼しきを目に病の子
天牛の飼い方を問う電話かな
素麺も何かの虫も流れ行く
八月や手にしゃらしゃらとレンズ豆


1983年生まれ。愛媛県の岩城島出身。子育て奮闘中。



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読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2012年7月号 〜 2012年9月号 2/3回目)


 ゆれる闘魚 まりん

街の灯は孤独にゆれる闘魚かな
波静か臆病そうに梅雨の月
凌霄の花の悲鳴の届く窓
日雷挑むがごとき帆の白さ
あの虹を忘れぬうちに買う絵筆
蟻の道死を受け入れるまで待てず
冷ややっこ頼りにならぬ神ばかり
向日葵の元気を避けて裏門へ
手風琴抱きしめて閉ず片かげり
サルビア見てただけ右耳が熱い


広島から嫁いで早幾歳。あるときは今治三日月句会の重し(?)役。あるときはラジオバリバリの「俳句チャンネル」のちゃかし役。あるときは今治五七五実行委員会の下足番。楽しく元気に下手の横好きやってます。



 黒ビール 大五郎

土用入仏壇に置く通信簿
四半期の業績は好し鰻食ふ
社会科の教師辣韮漬けにけり
商談を纏めた夜の黒ビール
サイダーや記憶は泡のやうな色
くじびきの客になりたる浴衣の子
やはらかくて黒くてバナナかなしくて
クロールの息継ぎ出来ぬ子や空や
節電やみんみん蝉の笑ひたる
鉛筆を削る我鬼忌のナイフかな


東京都あきる野市出身。松山に来て十八年、すっかり松山を気に入って永住を決意。営業の仕事の傍ら、俳句を作る豊かな日々を送っています。妻一人、息子一人、娘一人の四十二歳男性です。



 蟇の声 ターナー島

杉山の夏霧うごく朝の膳
老鶯の声澄み白き骨ひろう
荒彫りの木仏の匂い源氏虫
蝉の森少年のシャツひかり過ぐ
海平らなり夏蝶の数知れず
石笛の穴まんまるし土用東風
いただきの一樹に吹かれ蛇の衣
雲が雲追って夏越しの夜のはじめ
つばめの巣三つ灯ともる集会所
居残りの明かりがひとつ蟇の声


団塊の世代。エッセイ・短歌・川柳・詩との相性は良いが、感性に乏しい私にとって俳句は苦手。愛媛新聞「へんろ道」友の会会員。近未来に「愛媛の随筆大賞」を獲るのが、目下の夢。



読者が選ぶ人気俳人!
「100年の旗手」連載者推薦募集

 今求められているのは、読者が読みたいと思う俳句作家。「100年の旗手」は、連載する俳人を、編集室ではなく、読者が選ぶコーナーです。
 「この人の作品集を読んでみたい」と気になる俳人を、1人3名まで推薦してください。その中から、推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行います。
 あなたのお勧めの俳人を是非推薦してください。

 推薦の方法

 「この人の作品集を読んでみたい」という人を3名まで選んで(自薦は不可)、その俳号と活動場所(俳句の缶づめ等)/推薦者ご自身の俳号(本名)/住所/電話番号を明記して、100年俳句計画編集室「作品集推薦」係へ送ってください。ハガキ/FAX/Eメールで受け付けています。Eメールの場合は件名を「作品集推薦」としてください。また、誌上句会インターネット投稿フォームでも受け付けています。(アクセス場所は誌上句会コーナー末を参照してください。)なお、投稿フォームの場合を除き、推薦は他の投稿等とは分けてください。

締切 9月末日

 現在連載している3名の方以外なら、一度連載された方も含め、どなたでも推薦できます。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。



百年琢磨
先月号の「100年の旗手」に寄せて

日常の中の発見 平敷武蕉

「知恵の輪」 大五郎
童貞のように海月を愛しをり
 身体全体が透きとおって海中を泳ぐ海月はいかにも清らで処女性を帯びている。だから近づく異性もまた童貞のように優しく愛するのである。清潔なエロチシズムをうまく切り取っている。

玉の汗長男だけが叱られて
 同じように暴れ回り汗をかいても、年嵩の長男だけが叱られ、妹や弟は許される。日常よく目にする理不尽な光景に潜むおかしさをうまく捉えた。句の向こうで子どもたちのやんちゃな様子が躍動している。ただ、子だくさんの昔は長男は大事にされ、叱られるのはいつも二男だった。二男はおらず妹だけとなれば叱責の対象が長男に集中するのかも。期せずして少子化の世相を写し取っている。


「白日」 ターナー島
指入れてみる白日の蝉の穴
 何の変哲もなく過ぎゆく日常のように見えるが、目を凝らせば変化は起こっている。庭先の樹木の辺りに目をやるといつの間にか小さな蝉の穴が開いている。気付かないところで命の営みは確実に継続されているのだということを発見したときの心のときめき。そっとその穴に指を入れてその命の営みを確かめてみる。

どの窓も馬が顔だす大西日
 西日がさし窓に樹の影が長く映っているさまを「馬が顔出す」とした比喩と擬人化がおもしろい。


「蛍」 まりん
守宮横切る娼館の飾り窓
 飾り窓を守宮が横切るということからして、古びた侘しい娼館を想起させる。それはまたそこに住まう娼婦のみじめな現在と未来を映し出すものとなっている。一匹の守宮の位置と動きでそれが示されたところにこの句の良さがある。

少年の腰の鍵束信長忌
 電車の中か、腰に鍵束を下げた少年が立っている。さて少年はそれらの鍵を何に使うのか。それは少年の未来を切り開く鍵となるであろうか。信長は天下統一をめざした苛烈な戦国武将として知られるが、どこで鍵を差し違えたのか道半ばで倒れた。信長忌、少年の鍵が気になる。


平敷武蕉
1945年沖縄県生まれ。著書『沖縄からの文学批評』。俳句評論集『文学批評は成り立つか』で第三回銀河系俳句大賞を受賞。俳句誌『天荒』編集委員。文学同人誌『非世界』編集責任者。



読者の感銘句

三月 感銘句です。「夕焼けが好きで孤独が大嫌ひ」大五郎。「水底に日のゆらぎいる麦こがし」ターナー島。「少年の腰の鍵束信長忌」まりん。タイトルから10句を読み解くのも楽しみです。

瑞木 「かき氷溶けて知恵の輪解けなくて」大五郎。「南吹く日なりぎょろ目の鐘馗さま」ターナー島。「看護婦に預けるピアス晶子の忌」まりん。自己紹介文も、それぞれ読みごたえあって楽しかったです。




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 雑詠道場は、「くらむぼんが笑った」か「へたうま仙人」か、どちらかへ3句1セットでの選択投句となります。選が厳しい「くらむぼん」に挑戦するか、必ず一人一句以上選評付きで載る「へたうま仙人」を相手に“巧すぎるのでへたの聖地追放”を目指すか。その選択も楽しんで頂けたらと思います。


雑詠道場 くらむぼんが笑った


夏井いつき選


今月の天
空腹の狼とゐる夏休 鯉城
 「空腹の狼」というと『赤ずきんちゃん』『七匹の子やぎ』などの童話をすぐに思い出す。が、この句のカラクリの全ては、下五の季語「夏休」に託されている。夏季休暇で里帰りした息子か、(狼は群れをなして行動するから)手に負えないほど元気な孫たちを想像してもいい。彼らの健全な胃袋はすぐに「空腹」を訴え、眼前に饗される食物をみるみるうちに平らげる。その健康的な食欲に圧倒される作者にとって、彼らは眩しいほど健康的な「狼」なのだ。
 下五「夏休」という季語が出現したとたん、「空腹の狼」が比喩の言葉であったことが理解される。この瞬間の愉快が、「夏休」という時間の明るさ眩しさと相俟って、読者の心を躍らせるのだ。


今月の地
へっという顔で蜻蛉は死してあり  大塚めろ
 あっけない「死」はどこにでも転がっているが、立ち止まりマジマジと見つめ、「へっという顔」で死んでいるよと断定してみせるのが、この作家の特性にして才能。いつか我が身にも、「へっ」ここで終わりかよ、という具合に「死」が訪れる。この人ならば、その瞬間をも飄々と詠んでしまうに違いない。

回忌終へ百日紅の花拾ふ 蓼蟲
 何回忌とは書いてないが、「〜終へ〜拾ふ」という行為に、亡くなって一年あるいは三年ぐらいの「回忌」ではないかと思わせる静かな悲しみが感じとれる。「百日紅」の花は、乾いた涙のようにふるふると手より零れる。

河骨のまっ黄原発再稼働 空
 「河骨」の花は可憐にして素朴だが、水面に咲き溢れる「まっ黄」は静かなシュプレヒコールであったか。後半「原発再稼動」の措辞が重い現実として読み手の心にどすんと届く。

降り方を考へてゐるハンモック 犬鈴
 乗る時はなんとか攀じ登ったものの、「ハンモック」の中に体を深く沈めてみると、今度はどうやって降りたらよいものかと「考へ」始める作者。「ハンモック」の素直な実感が可笑しい一句。

灼けしハンドル逃げ込むガジュマル下 ふーみん
 運転しているうちにさらに灼けてきた「ハンドル」か、日向に駐車してた車を日陰に動かすところか。後半「ガジュマル下」という表現が舌足らずではあるが、破調の勢いに現場証明が感知される。

蝿払ふ手に当たりたる蝿の羽根 すな恵
 確かにこういう瞬間ってある。打つつもりではなく、「払ふ」つもりの「手」にありありとあたる「羽根」の感触。いっそ打てばよかったと、俄然打つ気になってみると、今度は一向に当たらなかったりするものだ。

さくらんぼスカウトされしころの夫 えつの
 「夫」の若い頃の思い出を語る句はさまざまあるが、「スカウトされしころ」の措辞が具体的にして明確。ハンサムにして魅力ある人物に違いないという想像が一気に膨らむ。季語「さくらんぼ」が憧れをもって見つめていた妻の乙女心を思わせ、可愛くも秀逸な選択。

アマリリス刈り倒されて河に波 瑞木
イエス等知らぬと答ふアマリリス 北伊作
 前句は、光景としての「アマリリス」。丈と嵩のある植物が「刈り倒され」た後の視界を、「河に波」と描写できるところがこの作家の地力。
 後句は、心理を表現する「アマリリス」。「イエス」は(答えの意ではなく)基督と読んだ。神なんて知らないと嘯く心を、「アマリリス」の暗い花蕊に暗示させ得るのが、この作家の底力。

水無月や勢いのある尿を採る コナン
死顔に似て明易の家族かな 錫樹智
 前句、中七下五の率直な描写のリアリティーに慄く。季語「水無月」の感触は、(自分の尿ではなく)介護の現場を想像させる。
 後句、「明易」の未明ふと目が覚めて、傍らで寝ている「家族」の顔をまじまじと見る。その顔を「死顔に似て」と感じとる作者の客観的感受。日常の片隅にある光景に、虚を衝かれた一句。

再縁と定めしらたま記念の日 緑の手
 かつて『サラダ記念日』という歌集があったが、こちらは「しらたま記念の日」とくるから愉快。ある程度の年齢の再婚カップルが並んで「しらたま」を突いているさまは目出度くも楽しい。お幸せに!


今月の人(じん)
陰謀の正体浅蜊の半開き えりぶどん
六月の雨音肺に溜まりゆく 
正気には戻らぬやうに白薔薇 なゝ
父の日の深きみづうみ色のパンツ 
向日葵の炉心すべてが集まれり ソラト
逃げこみし路地の空いつぱいの虹
前かごにはぐれ蛍と塾かばん 雨月
天の川大事なことは文字にする
守護神の羽ある獅子や月に吼ゆ 輝女
真実の口は暑さを呑み込んで
三尺寝ひとりの宙のひろさかな 省三
白百合の蒼きばかりに白きかな
鳥は風が見えると百日紅の噂 緑の手
蓮の葉を零るる涙だつた水
眼病の子猫車を避けずをり 樫の木
母の剥く父退院の日のバナナ
白靴に真っ青な紐通す朝 恋衣
雨の日は鳴かぬと決めし蟇
風鈴や悲しきことに空の青 逆ベッカム
やまももの熟れ落つ平和沖縄忌
春愁やつぶやいている角砂糖 迂叟
肌脱の父を憎みし十五かな みちる
裸電球に鰭整へて鶏魚の死 松ぼっくり
遠雷や耳かき一杯の純情 あらた
朝刊の膨らんでおる残暑かな さわらび
なまぬるき記憶の中の砂糖水 ゆき
あじさいに吾とか時差とか異国とか  大塚めろ
天窓に夏の星降るラブホテル 一心堂
葱坊主嫌われ役を引き受けた 空山
大南風ゼンマイ式の天球儀 不知火
窓際の今は蛍のいない籠 ほろよい
風の来て昼の音して冷索麺 じろ
白靴や生まれ変わったように履く 一走人
万緑やくらくらくらとかずら橋  ポメロ親父
梅雨晴れのビルの窓拭き無表情 八木ふみ
休診の続く医院のびわたわわ 八十八
老鶯や雲の重たき岬寺 蓼蟲
命日を酒ぶらさげて月見草 空
したたかや海月へらへら漂えり 権ちゃん
筆記体ほどく薫風通りけり 犬鈴
水無月へ吸いこまれゆく霊柩車  のり茶づけ
時の日の監視カメラの追ふ明日 うに子
清水の灼けし舞台やみくじは凶 ふーみん
サングラスかけて訪なふ旧居かな 未貫
火を借りてスポニチひらくアロハシャツ  ふづき
夏木立鳥の砂浴ぶ穴五つ てん点
虹消ゆや自転車で来し豆腐売り 青蛙
くたくたの夜を引き裂く時鳥 もね
桜の実ぽとりジャム瓶開かぬ今日 紗蘭
なす漬けや色鉛筆で描く子ら ペプチド
青嵐猫は毛玉を吐くところ すな恵
カラオケに誘ったは俺つゆの夜 三竜
噴水の一筋だけは破調なり 蕃
カスマグサ哀しき中間管理職 ちろりん
薔薇の香は醜さをただ切り裂いて  アンリルカ
玉繭の闇より白さ生まれけり 人日子
左足上げて蛙に道譲る サキカエル
空に鯉金魚は花に泳ぐかな 鯉城
朝礼やアガパンサスの競い立つ 哲白
守宮とは昨年からの仲だから 浜田節
鬼がわら眼深くに茄子の花 なづな
海の日の種痘の跡のなき腕よ 春告草
パナマ帽晴天なれど波高し 瑞木
広重の美し雨のごと藺草刈る 野風
潮風の届く餌台夏の星 亜桜みかり
来客にまず見せに行く甲虫 和音


今月の並選
一瞬の狂気や蜈蚣切り刻む さわらび
シーグラス小箱にしまい休暇果つ
教師の後ろ跳ねてくる夏帽子 まくわ
止めどなき涙吸い込め額の花
万緑や犬高々と足をあげ あらた
心太否が応でも年はとる
欄干の梅雨雫始動する街 かのん
初々し二日月燃ゆ夏至の夜
麗しき生き物の色黴の青 樹朋
建売に省エネ看板夏来る
黴の人古文書にみる定書 迂叟
チューリップ開ききったる午後の教室
苦瓜の密林超えてけふもまた 藻川亭河童
無量寿のつつじの群青泳ぎきる
梅天や水星に水無くなりぬ みちる
抱きしめてやりたし夏の水の音
羅をまとひ巡るは茶器の里 レモングラス
身代わりの駝鳥の眼ソーダ水
犬小屋の虚ろに住まう五月闇 紫水晶
一鳴きを遺言に犬逝く南風の夜
夾竹桃終わりあること知らないか ゆき
インデックスとじこめられし夏の闇
実直に寡黙に生きよ冷奴 柱新人
男梅雨室内干しの生乾き
分身の術習得したし冷奴 空山
捕虫網持ちて帰省の船の客
雨背負い葉を食む毛虫右左 Blanca
蜘蛛の子や遊ぶ先にはもみじの手
胸の闇六月の月に問うてみる まんぷく
紫陽花に行く先告げず家を出る
白靴や私の心は晴れもよう お手玉
猿のように兄の木のぼり百日紅
桜桃忌気圧の谷の底の底 元旦
ワイパーも不意を突かれし驟雨かな
祈祷書の内に銃あり夏至の雨 不知火
総督の帽子まるく尖って夏
でで虫のつまみ鈍色五月闇 ほろよい
かみちぎる爪の切れ端金魚玉
紅の薔薇一輪とキャンパスへ じろ
門を入り玄関先まで薔薇の道
梅雨晴れの海に吐息を百二百 一走人
枇杷熟るる屋根朽ちかけし水車小屋
一寸蚕豆五寸の莢を丸焼きに ポメロ親父
青鷺はただその時を待つて居る
老鶯や一言多い母の言 八木ふみ
金文字のベネチア海図の風入れ
噴水の強弱高低喜怒哀楽 八十八
梅雨入りや仕事ほったらかしのまま
百合抱え米寿の母の立ち話 権ちゃん
雨兆すその日暮らしの蝸牛
軽トラも轢きたくはなし蟇 のり茶づけ
人憎めば血濁るそうなひややつこ
万緑に染まぬ原子炉あらふ雨 うに子
六月の二の腕しろきナースかな
工事中旗持つ人の梅雨入かな 未貫
雲の峰登れば届く神の國
質草の金ぴか肩へ蛾の粉落つ ふづき
キー抜けばコインの落ちる蜘蛛の夜
捨てられぬ重荷ありしか桜桃忌 洋子
五月雨や昔のことなど紐解いて
みちのくの御霊屋閑か揚羽蝶 てん点
すかし橋腰かがむ子へ夏の潮
梅雨晴間碁打つ童子の小さき手 青蛙
玄関にあらら蜘蛛の囲捕らえられ
六月の風もろともに食らふ山羊 もね
ぎざぎざの葉に桎梏の青蛙
類似する傘五月闇に浸けた傘 紗蘭
明日へ向く河鹿小石の哲学論
ストローの転がっている夏座敷 錫樹智
荒梅雨のジーンズを干す独身寮
途すがらそぼふる雨に杜若 ペプチド
短髪のとまと焼く君そこにをり
代々の労苦一手に代掻機 青柘榴
雨模様あっ傘忘れたアガパンサス
汗を拭く母の背中の灸跡 和音
水海月やさしい嘘をつきはじむ
紅の花俄悪女の身につかず こぼれ花
でで虫や独り暮らしの母のこと
風呂黴を落して終る月曜日 コナン
寝不足の胃に容赦なき暴れ梅雨
蛍狩り夕べの道とは反対に エノコロちゃん
風鈴のきょう一日はよく鳴る日
キョーチクトー午後の楽しい妄想と 親タカ
はつなつのカタクリきな粉はったい粉
藁屋根の家紋十の字夏落葉 北伊作
キャラメルが隅に一粒夏カバン
すずめ蜂巣づくり固くお断わり 三竜
蝌蚪よなぜそんなに慌てて逃げるのか
ステッキは軽く傘寿の半ズボン 蕃
北向きの間借りの三畳なめくじら
蜜柑の花香りは光と街包み アンリルカ
鈴蘭や森の精かと見まごうて
一村の一色なるや麦の秋 人日子
主なき山畑三畝芒種かな
早苗田や明けの霊峰ひとり占め 哲白
地震止まず木下闇ゆく小さき傘
緑陰を作ってくれるそんな人 浜田節
出席に丸つけて出す五月晴
幼児の蛍呼ぶ唄向こう岸 えつの
時鳥お願い地蔵の頬を撫で
桑の葉の大きく揺れて夏の果 なづな
出迎えの鷺草そよぐ旅の宿
夏帽子女ざかりかつば広し 炉草
夏風や心地よさアルッの妻へ
暗き空逆さ眼鏡や雨蛙 西条の針屋さん
基地の町行き先告げぬ金魚の尾
心太超特急で胃に落っる カシオペア
夏落葉必死に生きた母病めり
夏蓬白きフェンスを見失ふ 春告草
水張りて村いつせいに湖となり
反省の色は何色七変化 野風
コンクリートの森天牛の客死して
芝犬と作務衣の僧や夏の宵 亜桜みかり
新古車の折り込み広告缶ビール
ビール注ぐ高まる鼓動手の震え 都
離れ住む虞美人草が目に映り
なんじゃもんじゃ見上げて遂に解らざり  松ぼっくり
魚拓とるやう唇押さへ大暑 えりぶどん
片陰に征服されし街の黙 大塚めろ
夏の月胸像の影より尻尾 なゝ
河骨の泥に埋まる拳かな ソラト
捲る書の指の重たき梅雨入かな 一心堂
黄蜀葵辞書引きながら読む句集 雨月
大理石密告箱や半夏生 輝女
丸窓の透かし硝子や枇杷すする 蓼蟲
小さき池輝く目高放ちたり 空
脱水の片寄る音や熱帯夜 犬鈴
ビール注ぐ喉大いに鳴りて今日は晴れ  ふーみん
瞬けば線香花火落ちて闇 逆ベッカム
マンモグラフィーばりと剥がるる夏の乳  すな恵
原発や再稼動して半夏生 ちろりん
髪洗ふ後ろ姿のあやふかり 省三
大欠伸吸い込んだ蚊にむせている サキカエル
起立礼坊主頭や青嵐 鯉城
人波や天花粉の香に振り返る 瑞木
暗転を待ちてfineの梅雨の海 樫の木
緑陰のベンチを鳩と譲り合う 恋衣



【雑詠句募集】
投句三句/俳号(本名)/〒住所/電話番号と、「○月末日締切分」を明記して、編集室「くらむぼんが笑った」または「へたうま仙人」宛にお送りください。
締切は毎月末日《必着》です。
※末日を過ぎたものについては、翌月分とさせていただきます。
※ひと月に複数の投句があった場合は、一番最後に届いた投句のみを有効とさせていただきます。同一内容での二重投句はご遠慮ください!
 投句は誌上句会宛のハガキ&メールとは別でお願いします。
雑詠専用Eメールアドレス zatsuei@marukobo.com
インターネットや携帯電話からも投句できます。
http://www.marukobo.com/kuramubon/


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初学道場 へたうま仙人


文責:大塚めろ

 いやー、暑いのう。俳句をつくるどころではない暑さぢゃのう。無理をせず、この過酷な夏を乗り切りましょうぞ。さて、今月も力作、力技が揃ったぞ。とくとご覧あれ。

磨きたい大人の前歯好きな蝶 豊原清明
 どこで切るのじゃ? ワシ的には「大人の前歯」が「好きな蝶」と読みたい。作者の脳の構造に興味を覚えるのう。

蛍出た下駄つっかけ一人抱えて カラ嵩ハル
 誰を抱えているのか? 子か、妻か、爺さんか?「蛍」を待ちに待った感がいかんなく発揮されて、たまらんのう。

はっきりしない人ねゴーヤーかじる  ケンケン
 「ゴーヤーかじる」に哀愁を感じるのう。ほろ苦さに震える……後姿の時雨てをるぞ。齧りっぷりが泣かせるぞ。

ゆっくりと大きくなあれ夏の月  今比古
 「大きくなあれ」と言われているのは、「夏の月」か? 女の腹か? 女の呪いか?訳の分からぬ妖しさが、儂の好みぢゃ。

十人のジュースじゃんけんねむりぐさ   渡部五龍
 「じ」の繰り返しのリズムが軽やかぢゃ。が、なぜ「ねむりぐさ」? あ、原材料か?……して、それは美味いのか?

先回りするつもりだな梅雨の蝶  小木さん
 夜の蝶が先回りしていたらいろいろ複雑ぢゃな。しかも梅雨ってのも湿っぽいな。弱腰な男の呟きに心が震えるぞ。

天井から給食カレーを見る蜻蛉  オレンジ日記
 考えようによっては不気味な風景ぢゃのう。蜻蛉の複眼に写る複眼の数のカレーの黄色が、なんとも魅力ぢゃのう。

行儀よく風も入りて夏座敷 ぎんなん
 季語「夏座敷」には風の要素も含まれておるが、わざわざ「風」を重ねて語る愚直に、涙がちょちょ切れるのう。

どっからきたんやこんなにも金蝿   猫ふぐ
 その多さに気持ち悪がる前に、どこから来た? とあきれたり不思議がったりする作者こそ、俳人の鑑。天晴れぢゃ!

小雨ふるそれでも老鶯やってくる  柊つばき
 そして良い声で鳴いてくれるんぢゃの。日記の如き散文口調が、ヘタウマ風味の真骨頂ぢゃ。浅そうで深いぞ。


 以下、追放!

梅雨空へ男拳を突き上げぬ 七草
 拳を突き上げるには様々な理由があるのぢゃろうて。梅雨空に突き上げる男の拳、カッコ良すぎて食えんのお!

料理人は法科出身夾竹桃 ゆりかもめ
 「法科出身」に意外性とかすかな批判精神が見え隠れするのう。こんな気の利いた取り合わせは、追放ぢゃ!
隣家よりみどりごの声初夏の風  未々
 初夏の風景の視覚とみどりごの声の聴覚と、風の香りの臭覚が三位一体となって清々しい! な〜んて句は追放。

ナミビアの白南風連れし大リュック 郁
 壮大ぢゃの。白南風で膨らんだ大リュックの圧倒的な存在感が眩し過ぎて、痛い。儂を「ナミビア」に連れてけッ!

梅雨弾くドラムシンバル弾く車庫  だなえ
 ドラムが発する音は空を翔け、梅雨明け間近の雷になるのかもしれんのう。こ、こんなドラマーな一句、つ、追放!

らんちゅうの尻尾のような服を着て  ひでこ
 琉金や土佐錦ほど派手でなく、和錦ほど控えめでなく、「らんちゅう」はちょうど良い塩梅の句……なんぞは追放ぢゃ!

ソフトクリーム底から吸へばそばへ降る  神楽坂リンダ
 「そ」の頭韻を踏んでるところなんぞ憎いのう。「底から吸う」限定が痛快過ぎて、こんな句は即追放ぢゃ!

吠える能力を棄てた犬と紫陽花 理酔
 能力を棄てるのは罪ぢゃ。こんな句をわざわざ儂のところに送ってくるのはもっと罪ぢゃ! とっとと追放ぢゃ!

 今月もどうぢゃったかのう。みなさん三句ずつ送って下さるのぢゃが、紙面の都合で一句ずつしか載せられん。載せざるを得ないような、腰を抜かすほどヘタな句をどんどん送って下され。皆様、油断召されるな!


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放歌高吟


虹二重
夏井いつき

青き棘濡らして青し朝の雷
焦点のほのかに朝虹の余白
とこしえや枇杷実る大河のほとり
太陽の鼻っぱしらを黄金虫
町長の鳥打ち帽や山開き
夏空の青に老いたる峰ならん
鎖場は右や滴る岩場行く
洞穴の深きへ滴れる無音
独語聞きとれず滝しぶきの白し
ゆらぎつつ粒子が虹となる瞬間
虹二重野は創世のごとき青
ゆっくりとたたみて夕虹のつばさ


 石鎚山に登ったのは何年ぶりだろう。前回は「いつき組」石鎚登山吟行と銘打ち、皆で登った。土小屋からのルートで登ったのはあの日が初めてだった。見事な快晴だった。
 あの日、「鎖を登ってみるかな」とポピーが声をかけてくれたが自信がなく、普通の登山道を這うように頂上まで登った。いざ頂上に着くと、柵の向こうにさらなる岩場があり、その突端を目指す人たちがいる。あれが天狗岳だという。行かねばなるまい!と柵を乗り越えたら、「組長一人で行かすわけにも行くまい」と、草心さんの声。急傾斜の恐ろしい岩を、一緒に這い上ってくれたことを思い出す。
 今年の石鎚山頂は、雨と霧に覆われていた。ぐっしょりと濡れた体に熱い飴湯が嬉しかった。記念写真を撮った。「今年も一緒に来れたね、ポピー」と、のりちゃんが写真を取り出す。「草心さんにも見せたかったけん」と、烏くんが胸ポケットから写真を取り出す。二枚の写真を胸の前に掲げ、カメラの前に並ぶ。
 私は、もう一人の仲間の笑顔を胸に掲げる。埼玉の山の風さん、六月二十六日に亡くなったことを奥さまが知らせて下さった。突然の訃報だった。
 何年か前に、千の風に乗るとか乗らないとかって歌が流行った時、なんちゅーロマンチックにしてセンチメンタルな歌詞や、と気恥ずかしく思ったが、草心さんが「爽やかな風が吹いたら僕やと思うて下さい」という言葉を残してほんとに風になってしまって以来、それもありやなあ、と思い始めた。
 今年の石鎚山頂は時折強い風も吹いた。この風は、三人のオジサン俳人が、ずぶ濡れの私たちを見てゲラゲラ笑ってる風かも、と思うと笑えた。大好きな親しい人たちがみな風になっていくのなら、いざ自分が風になることも、そんなに怖れることではないように思えてきた。
 雨上がりの野の空に、大きな虹二重が掲げられる。風が吹き上がる。いい風だ、明るい風だ、親しい風だ。生きていくことを励ましてくれる風だ。




夏井いつき公式ブログ「夏井いつきの100年俳句日記」

http://100nenhaiku.marukobo.com/


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新 100年の軌跡


第5回


砲丸 希望峰

玄関にどつとトマトの段ボール
服選ぶ時を惜しまず夏季講座
時の日の扉開けば聖歌来る
ネルソンの命に噴水打ち上がる
稲妻や五指黒鍵を押し潰す
黒鍵に天道虫の凭れをり
連弾の手の交差して虹ふわり
シンセサイザー海の日の光を散らす
アカペラに濁音のある夏の夜
さういえばこれが名刺よ木下闇
波に消ゆる文字消えてよし花薊
ひきあげる巨船に落ちてゐる日傘
木葉木菟サムライばかり知れ渡る
夕顔や耳の重たきピアス取る
香水やなぜ砲丸を投げてゐる


希望峰
1990年生まれ、兵庫県神戸市出身。16歳より俳句を始め、現在はスウェーデンに留学中。俳句と教育が結びつく研究をしています。




ヒマワリ 宮下航

油照背骨歪な形して
日焼子の目玉ばかりが潤ひぬ
肋骨のやはらかきこと夏の月
ヒマワリよ急に黙らないでくれ
街を捨て水母は海へ還りたる
静寂の夏ピペットの吸ひ込めり
喧騒の夜や紫陽花の膨張す
ひらひらとカレーを喰らふ桜桃忌
列島膨らむオランダ獅子頭
入梅や濡れては困るものもなし
水清し野薔薇そろそろ起きなさい
地球より落つこちさうな燕の子
炎天や首刈り族の逆襲
朝顔の根元に退屈を埋める
蚯蚓鳴く世の中悪い人だらけ


宮下航
宇和島東高校弁論部で俳句と出会う。現在は、愛大俳句研究会で活動中。




日傘とヒマワリ マイマイ

連弾の手の交差して虹ふわり 希望峰
 連弾という室内の景から、虹へとワープする。「交差」という一瞬を切り取ってあるからこそ、ファンタジーへの展開が鮮やかに決まる。

ひきあげる巨船に落ちてゐる日傘 希望峰
 沈んでいった人々それぞれに一つずつの物語がある。最後に日傘を置くことで、読者がそれを落としたであろう一人の夫人に思いを馳せて、想像を膨らませることができる。

日焼子の目玉ばかりが潤ひぬ 宮下航
 「潤ひぬ」がうまい。「焼」の漢字と好対照をなして効果的。誰もが見たことのある景だけに「目玉ばかり」をピックアップしてこの動詞を持ってきた作者に脱帽するしかない。

ヒマワリよ急に黙らないでくれ 宮下航
 ヒマワリに人の気配を感じることがある。たぶんその背の高さや少し俯いたような姿が人に似ているからなのだろう。十七音に一音足りないのが、不安感を増幅させる効果を生んでいる。


1966年愛媛県生まれ。2003年頃からラジオに投句を始め現在に至る。第2回選評大賞優秀賞。



夏の夜 瑞木

ネルソンの命に噴水打ち上がる 希望峰
イギリス海軍の名提督、南アフリカの黒人解放運動家。ネルソンという名前には英雄のイメージが濃い。そんな英雄の名を持つネルソン君の命令で打ち上がったかのようなタイミングで豪快な噴水が。気持ちのいい一句だ。

アカペラに濁音のある夏の夜 希望峰
美しい歌声は最高の楽器だと思う。アカペラで上手に歌える人に憧れる。濁音の持つちょっとした湿り気、重さ、暗さが、夏の夜のイメージと重なる。

日焼子の目玉ばかりが潤ひぬ 宮下航
日焼けの害が問題視されるようになり、真っ黒に日焼けした子を見なくなった。この句で思い浮かぶのは昭和の子ども。肌の黒とのコントラストで際立つ目の輝きを目玉が潤っていると表現したところが面白い。

喧騒の夜や紫陽花の膨張す  宮下航
夜の喧騒を飲み込んで紫陽花が膨張していくというのは面白い発想だと思う。しょっちゅう雨に濡れているせいか紫陽花には重たいイメージがある。個人的には「喧騒の夜や紫陽花膨張す」と、句またがりでも五七五のリズムに乗せてもらったほうがしっくり読めます。


1963年生まれ。愛媛県八幡浜市日土町在住。第2回選評大賞最優秀賞。


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私たちの100年俳句計画


俳句を使った試みをされている様々な分野の方を紹介します

第6回
大垣市教育委員会文化振興課主任指導主事
早野 普文
俳号 もへじ

現在の仕事について
 大垣市では、今年の4月、「奥の細道むすびの地記念館」がオープンしました。紀行文学作品「奥の細道」全体を取り上げた類のない施設となっています。
 わたしは、記念館のオープンと同時に課内に設置された「俳句担当係」に配属されました。芭蕉や俳句を通して豊かな文化が行き渡り、当館が長く市民の誇りとなるよう務めることは光栄なことですが、責任も強く感じています。

教員の立場から見た俳句の可能性
 岐阜県で多く採用されている国語の教科書では、小3年生から中3年生まで季節の変わり目ごとに有名な俳句(俳諧)が散りばめられ、音読や暗唱ができるようになっています。俳句は、日本語の美しさや奥深さを学ぶのにふさわしいものと位置づけられています。
 ただ、俳句づくりとなると、急に身構えて、作り方が恭しく示されています。俳句は発見や感動を言葉の感覚を大切にしながらつくられるものですが、それは普段から楽しく俳句づくりをする中で磨かれるものです。
 それに俳句は、仲間の目に触れて大きく弾みだすものだと思います。その意味で、句会による「伝え合う力」の育成も魅力です。
 俳句で子どもにどんな力がつくのかがさらに広く認識されれば、学校でますます広がっていくでしょう。俳句手帳を片手に、学校で句会を開くのが当たり前ということも十分あってよいことです。

松山に来てみて
 6月下旬、松山を訪れました。少し変な言い方ですが、松山は様々な流れが明るい気がします。訪れたときは雨が降っていましたが、それもいいかなという気になってくる。それは、松山城、アーケード、道路などのスケールが大きいからだろうと考えていました。ところが、松山市役所の方と話をする中で、「他のやっていないことをやろう。」「気持ちよく帰ってもらえれば、また松山に来てもらえる。」と伺い、事業の先進性への自負、おもてなし文化の真髄を垣間見る思いでした。つまり誇りあるまちづくりに向けたエネルギーのスケールが大きいのです。松山の明るさは「人のちから」そのものでした。

今後は
 まずは大垣で、芭蕉や俳句に対するイメージを変えていきたいです。
 人間、松尾芭蕉はユーモアセンスにあふれ、食べ物の好き嫌いも悩みもありました。俳句が暗くて難しいという印象は、芭蕉の作られたイメージから生まれているのかもしれません。
 また、子どもに俳句を楽しく指導し、句会もできる人材を多く育成していきたいと考えています。
 それにはわたし自身がさらに俳句づくりや句会を楽しめるようになりたいですね。うちの課内では句作がじわりと流行っていますが、例えば「夜の句会」を開けば、いつもの飲み会もちょっと違った心地になれそうです。(笑)
 俳句は時代に合わせて成長する文学です。大垣から楽しい俳句の扉を開けていく力をつけていきたいですね。


奥の細道むすびの地記念館
〒503-0923 岐阜県大垣市船町2-26-1
電話 0584-81-4111(784) または、0584-84-8430
大垣市ホーム-ページ http://www.city.ogaki.lg.jp/


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Letter from spider garden


ナサニエル・ローゼン(訳:朗善)
松山市在住の世界的チェリスト ナサニエル・ローゼンのHAIKUとエッセイ


No.4

Shimanami Bridge,
spider web of God? Of course
not, only of man.

神の架けし蜘蛛の巣のごとき橋渡る


We rode our bicycles over the big bridge and ate a happy lunch of fresh seafood prepared at our table. What could be better?
The air was clear, the sun was hot, and we returned home smiling and sleepy.

 自転車でしまなみ海道を走って、素敵なランチをしたよ。新鮮な海の幸を、テーブルの上で(七輪で焼いて)食べたんだ。これ以上いいものがどこにある?
風は透き通り、太陽は熱かった。僕らはごきげんに疲れて、家に戻った。

訳:朗善



ナサニエル・ローゼン
Nathaniel Rosen
1948年カリフォルニア生まれ。
1977年アメリカ、ヌーンバーグコンクール優勝を機に米国内デビュー。ピッツバーグ交響楽団の首席チェリストに就任。
翌年、第6回チャイコフスキー国際コンクールでアメリカ人初のチェリストとして金メダルを受賞、以降世界的名手として広く知られるところとなる。
2011年より松山市在住。


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第17話
「いつか王子様が 」
ベン・シドラン

いつか王子が月夜の16ビート チャンヒ

 なんか変なヴォーカルだな、と閑散とした店内を眺めていたら、突如空気が変わる。16ビートのSomeday My Prince Will Come!? フランク・チャーチルがアニメ映画「白雪姫」のために書き下ろした曲。今やりっぱなジャズ・スタンダードだ。

月白やサックス間延びするように むうん

 リズム・セクションが刻む歯切れ良いビートにテーマが乗っかる。ブラス・セクションがリードしてサックスが絡む。「王子さまァー」って何かおねだりしてる感じ。確かに間延びしてるよね、むうんさん。でも僕には仄かな予感があった。この間延びのアンサンブルが、やがて起こる衝撃を演出する仕掛けではないのかと。

ベン・シドランのように来い!初秋 暇人

 なんて嘘、そんな感性など持ち合わせないが、衝撃はやって来た。「マスター、今のソロはマイケル・ブレッカーじゃないですか!?」図星だった。コルトレーン派のフレージングと金属音。しかも熱い、録音が最近っぽい、あたりが判断の根拠だったろう。が、当時そんなテナーサックスを吹くミュージシャンはブレッカーしか知らなかったというのが本音。

ジャズもロックも流星のピアノ チャンヒ

 ベン・シドランの歌は好みじゃないけれど、ロック・テイストのピアノは心地よい。ブレッカーも兄のランディとザ・ブレッカー・ブラザースを結成してロックしてたもんな。シドランとのセッションは十分頷ける。アルバムは「ザッツ・ライフ・アイ・ゲス」。シドランのオムニバス盤だ。なぜか16曲目の「いつか王子様が」だけが「ベン・シドラン・ライヴ at モントルー」からピックアップされた。

グルーヴは乙女の鼓動星月夜 猫正宗

 この16ビートの王子さまは僕のフェイバリット・ナンバーなのだから、と記憶にある京都市の四条と河原町を手掛かりに初めて聴いたワンショットバーと日時を自宅PCで追跡調査した。
時刻は星月夜くっきりの大人の飯時だったからPM8〜9時ってところだろう。都合で出場できなくなった友人に代わり出場したウォークラリー。会場は高野山。前日入りした宿坊のごま豆腐が超美味だった。大会名は確か「スポレクわかやま」。あったあった、和歌山県の「県民の友」平成2年9月1日号に「いよいよ開幕」と。ウォークラリーは10月14日(日)高野山周辺とその他2ヵ所。成績は散々だったけどチームメイトの女子達は当時確かに乙女だった。その夜、彼女たちと訪れた店は、残念ながら特定できなかった。

夜鷹呟くようにマイルスのミュート 蛇頭

 で「いつか王子様が」がジャズ・スタンダードとなったのは何時からか? アルバムではデイブ・ブルーベック・カルテットの「デイヴ・ディグズ・ディズニー」という説もあるが、やはりマイルス・デイビスの「いつか王子様が」が有力である。聴きどころはハンク・モブレイとコルトレーンのソロ。完全にモブレイは脇役となっているが、やや輪郭のくっきりとしないそのフレーズに、むしろ歌心を感じているファンも多いに違いない。

花ダリア左眼下の泣きぼくろ みしん

 おおっ!! 久々のジャケ句であるな。




http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


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ラクゴキゴ


第17話 文/俳句 らくさぶろう

『遊山船』
〜見台(けんだい)の上手い使い方〜

あらすじ
 大阪・船場あたりの裏長屋に住む喜六・清八という二人の男。
 浪花橋まで夕涼みにやってきた。川には屋形船や茶船がにぎやかに行き交っている。
 その中の一つの屋形船では、芸者や舞妓、幇間らを引き連れた客がごちそうと酒を楽しみながら宴会の真っ最中。その様子を橋の上から眺めていた喜六が清八に尋ねる。
「きれいなおなごが乗ってるなあ、あれは何や?」
「あれは芸州や。」
「芸州ちゅうことは広島の人か?」
「ちがうがな、芸者のことを芸州と呼ぶねん。客のことはキャー、全部大阪の粋言葉、シャレ言葉で、縮めて言うねん。」
「はー、ほなら芸者はゲーで舞妓はマー、たいこもちがターで仲居がナー、お前がアーでわしがホー。」
「何しょうもないこと言うとんねん!」
 二人のやりとりがしばらく続いたのち、川上の方から稽古屋の連中が乗った船が近づいてくる。この船がまた三味線太鼓のお囃子鳴り物でにぎやかなこと。
 ふとその船を見ると碇の模様の浴衣を着た美女が一人、なんとも艶やか。
 清八が「よ、本日の秀逸! さてもきれいな碇の模様!!」と大きな声をかけるとその美女は、
「風が吹いても流れんように。」
と上手い返しをしてきた。
 それを聞いていた喜六、家に戻って女房に同じように言わせようと企む。
「たしか、うちにも碇の模様の浴衣があったやろ、あれ着て船に乗れ!」
「ボロボロの浴衣はあるけど、うちのどこに船があんねん!」
「船はないけどタライに入れ!」
「あほなことができるかいな!」
 しかし無理やり浴衣を着せてタライに入れ、喜六は屋根に上る。そこから見ると女房はちゃんとタライに座っている。そこで喜六、
「さてもき……き……きれいとはよう言わんなあ。ま、ええわい! さってもきたない碇の模様!!」
と言うと嫁も粋なもので、
「質に置いても流れんように。」



 これは上方落語ならではの演目で、もっちゃりした二人のやりとり、ハメモノ(三味線や太鼓を生で演奏する)など、江戸に置き換えてやるのは不粋でしょう。
 上方落語には道具として見台という、講義で使う釈台のようなものが使われるものもありまして、この噺はこれが絶対必要。なぜなら喜六・清八の二人が川の上の橋の欄干にひじをついて話しているシーンがあり、見台がとても上手く使われる噺の代表のようだからです。
 浴衣の袖からせんすで風を入れながら話す演出はいかにも夏の暑さを表現していますし、あらすじには書いていませんが、橋にはカチワリを売る氷屋やスイカ屋、びわ湯売りとたくさんの物売り、また大きな花火も登場して演出効果は最大です。
 ぜひこの噺も生の舞台で見ていただきたいと思います。
 僕が印象に残っているのは、残念ながら若くして亡くなられた桂吉朝師の大阪の独演会です。
 吉朝師は愛媛大学落語研究会が学祭で開催していた寄席に、何度もゲストとして来られ、僕も打ち上げ等何度か御一緒させていただきました。
 大阪まで出かけ、独演会でこの噺を聴いて「何とも風情があって、粋な高座だなあ。」と感動したものです。
 オチもきれいに決まる噺で、僕の大好きな夏の噺であります。


孫弟子の十人になり遊山船


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本家慶弔俳句帖 第47回


文 桃ライス

四人家族で電気代五百円
 東京都あきる野市に住む東さん一家の電気料金は一ヶ月五百円という。
 ネット情報によると、家族構成は夫(37)、妻(32)長女(5)、長男(2)の四人暮らし。築五十年の木造二階建で暮らす。
 一家は、長男が布おむつを使わなくなった昨春から、洗濯機を使っていない。昨年10月に冷蔵庫を被災地支援で送って以来、電気料金(基本料金込み)は月500円台に落ちた。冷蔵庫と洗濯機なしの生活だ。
 妻は「冬は家の中も寒く、お肉もお魚も傷みませんでした」と笑う。夏は、野菜を水に漬けて保存。肉や魚は買ったらすぐに調理するか、塩こうじなどに漬け、夕方には調理する。食材は、近所のスーパーで二〜三日に一回程度買うほか、家庭菜園でとれた野菜と庭で飼う二羽のウコッケイの卵。
 ご飯は毎晩、翌日の昼の分まで鍋で炊き、おひつで保存。お昼はチャーハンにするなど火を通す。
 洗濯は風呂の残り湯をたらいに入れて手洗い。掃除は、箒と雑巾。家事は日があるうちに済ませ、夜は太陽光で充電したソーラーランタンを使う……等々。
 もうここまでしたら、基本料金がもったいないので電気は止めたほうがえぇよ。

涼み台五七五より五五五


岡山弁は『け・こ・し・て』だけで伝えられると判明
 ネット情報によると、岡山弁ほど合理的な方言はないという。たった四文字「け・こ・し・て」だけで会話が成立してしまうと言うのだ。
 まず基本形として、「けー」(これ)と「してー」(〜してください)。この2つの単語を組み合わせると「けーしてー」(これしてください)と言う意味になる。これらを応用し様々な「け・こ・し・て」を組み合わせた岡山弁をつくり上げることができる。以下、ネットからの具体例。
『けーこけー、してー(これ、ここに、してください)』
『けー、こけー、しててー(これ、ここに、捨ててください)』
『けー、こけー、けーしてーてー(これ、ここに、返しておいてください)』
おぉ、確かに四文字しか使われていない。ならば、幾通りも配列し、奥深い日本語を作り上げてゆきたいよ。

此処け此処小コケシこけてシシこけて


桃ライス…自分のことをワシとよぶ婦人グループ会員


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高田純三の勝手にエロ句解釈


その2

蛸壺やはかなき夢を夏の月 松尾芭蕉

 夏の月のもと、蛸壺に捕らえられた蛸。その見る目のはかなさを詠んでいるとされております。懸命なる読者の皆さま方なら蛸壺が何の隠語かもうお分かりかと思います。極上の蛸壺のとりこになってしまった男のはかなさ。この世のものとは思えない、夢のような蛸壺。とりこになって昇天してみたいものでございます。天国を味わった夏の夜、蛸壺から開放され、とぼとぼと歩くネオン街、見上げると月がぽっかり、財布はからっぽ。これ以上のはかなさがありましょうか。しかし、男は神秘なる蛸壺を求めて風俗街をさまよう。なぜなら、そこに蛸壺があるから。ちなみに、蛸のオスは8本の触腕のうち1本の先端が生殖器になっておりまして、これがメスの体内に挿入されることで受精が成立するそうでございます。

刻々と天日くらきいづみかな 川端茅舎

 泉が夏の季語。こんこんとわく泉に、刻々と日がかげってゆく様を描いた俳句。ふと2001年公開、今村昌平監督「赤い橋の下のぬるい水」を思い出した次第でございます。失業中の男がホームレスから能登半島の赤い橋のたもとの家に宝物があると聞き、お宝探しの旅に出かけます。その赤い橋のたもとの家には、老女と、美しい女が住んでおりました。しかもこの女、体の中に水が溜まる奇病の持ち主でございました。それを放出するには、万引きをするか、セックスをするかのどちらかしかありません。男は、後者の方法につきあうためセッセと女の元に通い始めます。女は水を噴水のように放出し、その水が赤い橋の下の川に流れ込み、魚が飛び跳ねる。そんな素敵なファンタジー映画でございます。ご縁があればぜひご覧くださいませ。

高田純三(たかたじゅんぞう)
物心がついて以来、日々エロい事ばかり考え続け、ついに俳句にエロスを感じる境地にいたる。名句を勝手にエロく解釈しては妄想に浸っているただのエロおやじ。



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まつやま俳句でまちづくりの会通信


第19回 文/写真 暇人

Facebook×mhm
 最近「Facebook」の文言を耳にしてないでしょうか。Facebookとはインターネット上のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の一種で、特徴としては他のSNSと違い本名で登録し、現実の人格で多くのユーザーと交流する……大人のSNSと言われています。そのFacebookにmhmも5月4日から公式ページ(http://www.facebook.com/mhmhaiku/)を立ち上げて情報を流してきました。
 そして今年度、mhmの各種イベントでは、Facebook等(TwitterやYouTube)と連携した活動を展開する事となりました。その利用方法とあねご代表へのレクチャーを目的に先日勉強会が行われました。
 当日はまちづくり事業に詳しい前田眞(ペプチド)さんに参加していただいて、イベントとFacebookをどう絡めていくかを検討しました。
 一つは、各種イベント当日、Facebookに立ち上げている「まつやま俳句でまちづくりの会」グループにて、まず写真を投稿し、その写真に添える俳句をグループに参加している皆様に投句していただくというもの。後日それをイベントの模様を紹介するスライドショーとしてYouTube等に掲載していきます。もう一つ、「まる裏俳句甲子園」の決勝トーナメントでの活用も考えています。
 そこでお願いです。Facebookに登録されてない方は登録していただき、「まつやま俳句でまちづくりの会」を検索。まつやま俳句でまちづくりの会グループ(http://www.facebook.com/group/mhm575/)を見つけたらグループに参加して下さい。
 この仕組みを利用したイベントの第一弾として、8月5日、「三津浜俳句フォトミュージック」が午前10時より三津浜で行われます。当日は朝10時にアート蔵前(三津の渡し近く、西性寺の南隣)に集合。松山はいくのガイドと一緒に三津浜吟行を行います。去年の経験からかなり暑いことが予想されますので暑さ対策をしっかり行って下さい。午後からは「三津浜アート蔵劇場」にて吟行句とその日の写真を組み合わせてのスライドショーを河野多映さんのライブ演奏と共に上映します。夜は花火を観ながら打ち上げの予定です。詳しくはブログ&Facebookにてお知らせします。なお当日その模様の写真をFacebook内mhmグループにて掲載します。その写真に添える俳句を考えて投句して下さい。投句の際は「俳句」に「俳号」を忘れぬよう投句願います。
 mhmでは「白石の鼻吟行会」(9月22日)、「松山地方祭吟行」(10月6日)でも同様の試みを行う予定です。またそれ以外でもなんらかの企みがあるかもしれません。


次回は「大人の夏休み、三津浜俳句フォトミュージック」(予定)


mhmでは、ひきつづき松山市内外問わず会員および役員を募集中です。原則、毎月最終週の火曜日19時からマルコボ.コムにて会議がおこなわれます。偶数月は懇親会も開催! 興味のある方は事務局(mhm_info@e-mhm.com)まで。


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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


金曜日優秀句
平成24年6月度


【釣忍】
荷ほどきの新しき空釣忍 八木ふみ
入船の汽笛の近し釣忍 蕃
釣忍売りの夫婦の気長かな そも
小道具として買い求め釣忍 ポメロ親父
釣忍店の名づけに立ち会いぬ すえきち
釣忍日に日に小さくなる隣家 だんご虫
釣忍父は町内将棋王 ラグナ
表札の一刀彫や釣忍 きとうじん
月曜は離れへ医者来釣忍 ふづき
透析や窓に悔しき釣忍 イーちゃん

《天》
馬の骨に嫁ぎて永し釣忍  伊佐


【仲夏】
総会を終えて仲夏の昼の酒 ポメロ親父
風重し仲夏の青い防除薬 妙
中殿の幣の動かぬ仲夏かな 山野遊造
当て布のジュッと仲夏の音させて 不知火
仲夏なり鉄の匂いの雨が降る  ターナー島
仲夏のラジオ陽水という狂気 伊佐
夏半ばじわりと濁る筆洗い 釣鐘娘
どぶどぶどふ仲夏の水の息をする 朝日
アスファルトの泥痕が右に曲がる仲夏  日暮屋
仲夏の画廊けだるきシャンソン繰り返し  菜々枝
茶を聴けば仲夏の清き匂いかな 藤実

《天》
川で魚畳で人の死ぬ仲夏  一走人


【鵜】
鵜とはまあ短き名前海広し 八十八
波の来て突慳貪に鵜に当たる 朝日
波よりも小さき海鵜の潜きかな 恋衣
つかの間の夕日よ濡れ鵜あたためよ  ひなぎきょう
鵜の視線は遠く流刑地を見ているのだろうか  西条のユーホ吹き
一番星飲み込み鵜のくねる首 はなみづき
船べりも鵜も月光に濡れている マイマイ
つながれて鵜は水中の光の矢 ほろよい
またたけば水底すべる影なる鵜  冬井いつき
日蝕や襤褸のごとき鵜の翼 鯛飯
日食を滅亡の日と鵜は思う あべかわもち

《天》
鵜へ黒き波寄す全炉停止中  ふづき


【薬降る】
紫は魔除けの色よ薬降る なでしこ
薬降る頓服の赤呪術めく 野風
薬降る百済の屋根の美しき反り 天玲
舞殿の風のまねくや薬降る たま
難読の雨乞石に薬降る 山野遊造
新墓のひときわ白し薬降る 烏
薬降る近道墓を真っ二つ あねご
切れぬ包丁を詰りつつそういえば薬降るよと  冬井いつき
薬降る今日もラットの百裂かれ ふづき
薬降る北斗のひしゃく傾けて 殻嵩はるお
良寛の老いらくの恋薬降る もも
無医村の森緑青の薬降る 菜々枝
薬降るサナトリウムの雨量計 八木ふみ

《天》
薬降る空明るくて呼気吸気  藤実


【いさき】
いさき釣る夜の水面に星の雨 南亭骨太
陸へ揚がりしいさきの背びれ月に閉づ  松ぼっくり
落ちそうな月に驚くいさきの群れ 菜々枝
地震過ぎていさきの縞のひずみけり  松山はいく・ねこ♪
いさき釣り右舷五人の五郎丸 ユアミーゴ
黒潮は矛やいさきの鰭は盾  ドクトルバンブー
掴めば跳ねる反骨の伊佐木の尾 樫の木
黄昏に捌くいさきの腸ぬくし よもだ
鶏魚捌く当家家訓に則つて みかりん
美しきいさきは山の父に焼く そも
いさき食う窓のすべてを海にして  ミズスマP

《天》
早朝の祭祀に添えるいさきかな  無窮花



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

8月5日
俳句甲子園【初秋/人事】
高校生が同校5人一組のチームで、俳句の作句力と鑑賞力を競い合う大会。8月に愛媛県松山市で全国大会が開催される。

初嵐【初秋/天文】
陰暦7月末〜8月半ば頃に初めて吹く強い風。やがて来る台風(野分)を予感させる。

8月19日
八月大名【初秋/人事】
農家にとって、稲が実り収穫を待つばかりとなる陰暦8月は、あまり労働を必要としない農閑期であり、気候も良いことから気楽で開放的な気分で過ごせる。

新豆腐【初秋/人事】
新しく採れた大豆から作られる豆腐。甘みを感じるなど風味が良く、特に賞味される。


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句集の本棚





『星の呼吸』 佐藤郁良 著

 帯文を読み、カバー・表紙に見入り、目次。原石・喫水線・星の呼吸・測量船・松しんしん・白磁の道・遡上・巨船ゆく。
 一呼吸おいて、俳句全三五五句へ。
  日本は大き水甕田を植うる
  底冷や取つ手のごとき耳ふたつ
  代田いま星の呼吸をしてをりぬ
  受験子の鉛筆こんなにも尖る
  理不尽な余白合格発表板
  狩野派の松しんしんと底冷す
  富士山を大縄飛に入れてやる
  教師らに夜の赤ペンや啄木忌
  一杯の冬至の水の重さかな
 短冊に写した一句一句が、語り始める。
 今宵は、星の呼吸を諳んじベランダへ。
 装丁を中原道夫。帯文を櫂未知子。
 「あえて言えば、難解よりは平明、感覚や理知よりは叙情を」目指す作者の「海図」に続く第二句集。
(書評:恋衣)

角川書店(2012年初版)
定価 3000円(税別)
全205ページ



『森は聖堂』 花谷清 著

 著者は物理学者。科学者としての客観的な立ち位置と詩情のバランスが新鮮。
  やや白き素数ちりばめ冬木立
  影深むまで見つめたる薔薇の白
 目は観察の目であり、目を向けられるとき景は静かに息づく。
  直前に最も乱れ独楽止まる
 まるで凝視されたことで独楽が止まってしまったようにも感じてしまう。
  虫籠に入り学名で呼ばれたる
  ときに波ときに光へ消えて鳰
  人体は多面体なりいなびかり
 景物の把握は至ってクール。一歩引いた視線が詩を生む。
  水蜜桃の全きまでの擬対称
  曲りたる時間の外へ蝸牛
  真夏日の森は聖堂鳥睡り
 序文に和田悟朗。「藍」副主宰。
(書評:藤実)

角川書店(2011年初版)
定価 2667円(税別)
全216ページ



『背番号』興梠隆 著

 著者の第一句集。
  食卓は椅子に囲まれ鳥の恋
  わが影を遠く地に置く露台かな
  神の視座とは全ナイター見下ろせる
 高い位置からの俯瞰が面白く、平明な描写を抜けて句が立ち上がるような仕掛けが読者を楽しい気持ちにしてくれる。
  ぶらんこの子の顔が飛ぶ日暮かな
  貝寄風や象に褒美の角砂糖
  土壁の中に竹ある朧かな
 土壁の中に組んである竹を思うともやもやしてくるそのもやもや感。
  花の世の迷子の涙拭く係
  いつの世の竹の匂ひの香水か
 ここでは迷子も竹の匂いもリアリティがあり、近しいものとして感じられる。
 軽妙な俳諧味と明るさに出会える一冊である。「街」同人。
(書評:藤実)

角川書店(2012年初版)
定価 2381円(税別)
全153ページ



このコーナーで紹介した句集は、100年俳句計画編集室にて閲覧できます。


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選句&投句欄 ザ 句会


 このコーナーは読者による誌上句会。先月号に掲載された投句への、選句&選評(互選)を掲載しています。不肖編集室一同も参加しています。

第175回兼題
 「窓」の字の入った句
 出題者 かのんさん

 今月の互選『鰯の歯ぎしり』

11点句
人日子、エノコロちゃん、親タカ、清流子、信野、カラ嵩ハル、しのたん、すな恵、和音、桃林、めろ選
麦秋をぱらぱらめくる汽車の窓 明日嘉
  人日子  電車は速くなりました。ぱらぱらめくるがいいですね。
  エノコロちゃん  ローカル線の汽車の旅、いいですね。あこがれます。北海道を想像しました。広い広い麦畑の中を通ってゆきます。ぱらぱらめくる……がいいですねえ。一票です。
  親タカ  「ぱらぱらめくる」はひらがな表記も相まって、汽車の窓のアナログさが好ましい。麦秋が似合いすぎだけど許そう。作業着である「合わせ」を着た女が乗る汽車だね。
  清流子   窓がぱらぱらめくるには参りました。
  信野  進む度にぱらぱらめくると言われた所が好きです。自分も汽車にのっている気持ちがします。
  カラ嵩ハル  手元の雑誌のページも、汽車の窓の麦秋も、途切れ途切れに勝手にめくれてのーんびりしていて実にええ窓やなあ。
  しのたん  こんな詠み方表現が出来る詩人がうらやましい。この感性分けて欲しいです。兼題の窓を生かしてます。旅に出たくなりました。
  すな恵   ぱらぱらめくるがいい。汽車の速度、旅の気分、想像できる。
  和音  汽車の窓を本の一頁にみたてたという視点に一票です。さらに、ぱらぱらめくるという表現に広大に続く麦畑の美しい鬣色が次々と見え、麦畑を縫うようにゆっくり走る汽車が浮かんできました。
  桃林  列車は南行きか北行きか、車窓は麦秋となった。二毛作だと次は青田が日ごとに増してくる。
  めろ  とてもシンプルに風景が描写されて、窓いっぱいの麦秋の金色が鮮やかです。

5点句
七草、元旦、まんぷく、ソラト、兼光選
万緑や窓は内側から開く 遊人
  七草  生命力溢れる万緑の外界。じっと待ってても誰も窓を開けてはくれないよ。
  元旦  一面の緑。でも、それは窓越しの風景。窓枠の広さしか緑は見えません。溢れる緑の世界を感じるには、窓を開けて外に乗り出すことです。その窓は外から誰かが開けてくれるものではありません。自らの手で開くのです。
  まんぷく  その通りだと思います。心の窓も自分が内側から開かなければ美しい緑にも感動することは出来ないでしょう。
  ソラト  当たり前だが万緑への方向に必然がある。
  兼光  万緑に向かって音もなく開かれゆく窓。内側からとしたことで心の窓も同時に開かれゆくかのよう。

4点句
生糸、駝楽、たま、こまりやま選
窓際に無力ぶら下げ半夏生 七草
  生糸  蒸し暑い梅雨にうらめしく外を見ている、自分の姿と重ねてしまう。
  駝楽   脱力系の気分を感じることができました。
  たま  さだまらない自分の心。小雨も降っているかもしれません。半夏生が効果的ですね
  こまりやま   空から毒が降ってくる日。一年のちょうど真ん中の日。無力かもしれないけどそれでもあきらめたくない。

桔梗、ゆき、輝女、安選
病む人と見上げる窓や遠花火 未々
  桔梗  二人で静かに見上げる窓。窓というフレームの向こうに花火。こちらに二人。通いあう心をじんと感じる一句。
  ゆき  病む人と視線を同じにして窓から見上げる遠花火。しみじみとした優しさの溢れる句。積み重ねてきた二人の時間が愛おしく感じられる。
  輝女  母と二人で妹の所(彦根)に行った折、母が転んで骨折、入院、まさにこの句のとおり病室の窓から琵琶湖の花火を見たことを思い出しました。
  安  心にすっと入ってきた句です。「遠花火」という季語にうまく気持ちが託されていると思います。

南骨、だりあ、亜桜みかり、空選
天窓に鳥の影待つ桜桃忌 杉山久子
  南骨  消極的な姿勢が桜桃忌に合うていると思います。
  だりあ  太宰の生家、斜陽館へ行ったとき天窓を見た。天窓と鳥ではなく影と言ったところが「桜桃忌」とよく響きあっている。
  亜桜みかり  桜桃忌という季語がよく利いている。いつ現れるとも知れない鳥の影を待つ天窓という切なさも素敵。
  空  青い空を小さく切り取った天窓を、切なく見上げている作者は病床なのでしょうか。美しい理想を追うには、苦しすぎる太宰の世界とリンクします。

杉山久子、青蛙、なゝ、あき選
窓ガラス一つも割らず卒業す たかこ
  杉山久子  否定形がくすりと笑える拡がりをもたらす効果を発揮。
  青蛙  若い頃はやんちゃでしてと少し斜に構えた言い方があり、“共犯幻想”もあったけれど、そうでない生き方も。何も派手なことはなくても、青春は“闘い”だし、卒業しても斗うことはあるよね。
  なゝ  あの歌の本歌取りで。大多数のそれぞれが複雑な思いを抱く卒業。でも晴れやかにすっきりともしている。
  あき  卒業の代名詞として歌われましたね〜。しかし多くの人がこっち派(割らない派)なのでして、それをあえて言っちゃうお茶目ななとこに一票。

ザッパー、ほろよい、ふーみん、チャンヒ選
このビルも水底となる窓若葉 青蛙
  ザッパー  八ッ場ダムはどうなっているのでしょうかね?
  ほろよい  ダムの底に沈む町のビルなのか、津波に飲み込まれるビルなのか? いずれにしても今この瞬間は若葉に包まれる窓。緑が目にしみます。
  ふーみん   ダム建設でしょうか。寂しさあり、でも今から育つ若葉の緑、色の対比が素敵です。
  チャンヒ   ダムに沈む町を想像した。窓は「内側」があっての窓なのだという発見。

3点句
えりぶどん、まとむ、樫の木選
窓に火蛾ぶつかる夜の長電話 兼光
  えりぶどん  火蛾の体当たりの様子にはいつもながら驚く
  まとむ  固定電話を使っていたころの光景と読みました。昔は蛾も家の中を飛び回っていました。長電話も懐かしさを感じます。
  樫の木  電話の相手は恋人であろうか。窓にぶつかる火蛾の一途さにあわれさを感じる。

今比古、さかえ、鞠月選
封筒の窓のセロファン夏の風 とりとり
  今比古  たぶんこの窓は居並ぶ句の窓の中、最も小さい。でも夏の風を確かにはらんで写実の極み!
  さかえ  夏は涼しさが一番。封筒にもすかしあり。このアイデアはどんな人の発想なのかと思う。
  鞠月  「窓」の単語から封筒の窓という発想に持っていったことにまず脱帽。そしてあのペラペラのセロファンが、夏の風に吹かれるとなぜか涼やかに感じられますね。

たかこ、迂叟、山ぐるぐる選
朱夏の底窓の向こうを深海魚 ポメロ親父
  たかこ  夏休みの図書館の窓を想像した。木下闇のほの暗さ、時々こぼれてくる木漏れ日のきらめき。その中をゆっくりと泳ぐ深海魚。静かで幻想的な風景だと思った。
  迂叟  水族館の景色でしょうね。窓ガラス一枚隔てた向こうに全く別の世界がある。そこは朱夏の炎熱も届かない静かで暮らし易い世界なんでしょうね。
  山ぐるぐる  青い春の次が朱い夏と知った時、とてもうれしかった。朱夏の幅はすごく広くて、深海魚も見えるんだ。なんだかまだ知られていないいろんなものを発見できそう。

西条の針屋さん、樹朋、大阪野旅人選
上野発窓は修司と缶ビール 逆ベッカム
  西条の針屋さん  今の季節はまず旅行……。田舎に向けて走る列車の友は修司の本と缶ビールさえあれば……。
  樹朋  若い頃、仕事の関係で上野発の東北本線を何度か利用しました。その時の旅の友が、作者と同じく愛読書と缶ビールでした。窓枠の下の小さな棚にその二つを置いて旅の始まりです。懐かし〜い。
  大阪野旅人  上野駅13番14番線ホーム発みちのく行列車の窓修司の本とカンビール。なんとなく大震災を思わせます。(われに五月)?(空に本)?でしょうね。

雪花、魔心地、Blanca選
天窓を額縁とする夏の月 のり茶づけ
  雪花  暑い一日の終り、ふと見上げた天窓から射し込む月。ほっと一息つけるような句です。
  魔心地  月を独占している感じが羨ましい。我が家にも天窓はありますが、天窓があるロフトは物置状態で、天体観測とは参りません(泣)。
  Blanca  ゆっくりとした時間を感じ、惹かれました。

2点句
ぎんなん、渡部五龍選
代数のクラスの窓辺夏の空 ソラマメの母
  ぎんなん  今のようにエアコンなどない教室。暑い夏、開け放した窓からしばしば入る風は気持ちよかった。眩しい夏の空。高校の教室が鮮やかによみがえりました。
  渡部五龍  きっと数2B(今は違うのかなあ)が得意なんだろうなあ〜っ。

明日嘉、蓼蟲選
朧月窓辺に白き空きベット 迂叟
  明日嘉  不安感の中で窓から見える朧月に祈るような思いが感じられました。
  蓼蟲  身寄りの無い友人を時々見舞つてゐた。次第に空きベッドが増えて、やがて四人部屋に彼一人となつた。その次、彼のベッドも空いていゐた。朧月のはかない光を受けて空きベッドが悲しみを誘ふ。

KIYOAKI FILM、みゆう選
クイーンは笑む五月雨が覆う窓 鞠月
  KIYOAKI FILM  クイーンと五月雨の取り合わせが面白い。
  みゆう  「五月雨が覆う窓」という発想が面白いと思いました。

もんきち、じろ選
パソコンを切って蛍の窓となる まとむ
  もんきち  パソコンという科学の賜と蛍という自然の賜の取り合わせが面白い。それも、パソコンを切った途端に蛍の窓が浮かび上がったところがお見事。
  じろ  場面転換があざやか。

青柘榴、しゅん選
窓に来る日々太り行く守宮かな コナン
  青柘榴  我が家の1階と2階の窓には、毎年来る守宮がいます。来ないと、気になるのです。
  しゅん  実感と共感で選びました。毎日見ていると慕わしさもひとしおです。

猫ふぐ、三月選
どの窓もはみ出している大西日 えりぶどん
  猫ふぐ   懐かしい光景。学生時代を思い出しました。
  三月  大西日という季語にビルやマンションの立ち並ぶ景が浮かびます。

おせろ、唐草サ行選
窓越しのキスはモノクロ半夏生 藍人
  おせろ  窓越しのキスはモノクロで青春の思い出がよみがえる気がします。今はすべてを見せるので想像する楽しみがなくて残念です。
  唐草サ行  まさに初恋でしょう。モノクロてそのままでいいですね。

藍人、権ちゃん選
野茂あけし窓やダルの熱き夏よ たま
  藍人  サッカーではキング・カズが世界への道を切り開き、野球では野茂がトルネードで窓をこじ開けたんですよね。こんな窓があったかと意表を衝かれました。
  権ちゃん   野茂がいてこそ。熱い夏になるといいなぁ。

浜田節、ペプチド選
七月のこころの窓を開け放つ しゅん
  浜田節  梅雨も終り、カラリとした七月の青空、そんな気持ちになれそうです。
  ペプチド  熱くて暑い夏にある内なる燃えるような思いを外に出す時が来たよというように窓を開け放つという言葉の強さとの取り合わせが活きているように思う。

破障子、一走人選
そうめんを窓にピシッと性善説 親タカ
  破障子  性善説を支持する君がどうして窓に素麺を叩きつけるに至ったのか謎は尽きない。そもそもその行為は善なのか悪なのか。茹でた素麺が皆ガラスにくっつくように、人はみな澄んだ心を持って生れてくるのか?
  一走人  素麺のゆで加減を見るために窓にピシッとあてたのでしょうか? 素麺と性善説の取り合わせがユニークで好きな句でした。

瑞木、ゆりかもめ選
窓口に美人そろえて夏は来ぬ ひでこ
  瑞木  人間、顔じゃないけど、誰だって美人が好きよね。
  ゆりかもめ  まさに先日、歯科医院が開業したので行ったところ目にした光景です。

1点句
車窓より見渡す限り麦の秋 カシオペア
  サキカエル  去年も今年も今治へ遊びに行く途中西条で私も見渡す限りの麦畑。コガネ色に熟れて刈り頃だった。走っても走っても麦畑、車を止めてしばらく眺めました。

地下鉄の窓や夏の月はどこか 犬鈴
  紗蘭  地下鉄だから月が見えないのは当たり前だけれど、それを「どこか」と聞いているところがいいと思いました。

窓を打つ訪問者有りかなぶんか 生糸
  洋子  時々窓にコツンと音がしてビックリします。そっか、訪問してくれたのはかなぶんだったのね。優しい気持になりました。

能古島虹追いかける船の窓 こてぞう
  もね  陽水の能古島の片想いが甦ってきます。今も虹を追っている船窓にバイタリティを感じます。寅さんのような純粋さもあるかな。

シャガールのまる窓過る晩夏光 ゆき
  コナン  「オシャレ」吹き抜ける風も素敵なんだろうな。

過去行きの寝台列車や天の窓 西条の針屋さん
  藻川亭河童  銀河鉄道の景が浮かびます。中七の切れ(や)が強烈に二物衝撃・配合の役を果たし、いつでも心の通じる「天の窓」への飛躍を具象化しているように見えます。これが山小屋の天窓で明り取りからのふたりの幻想だったら凄くロマンチックですね。多分、信仰の暗い谷に差し込むひとすじの光を取り込む「天の窓」でしょう。

温泉の窓に翡翠のミニガエル さかえ
  ぜぶら  本物のようでもあり、置物のようでもあり、その視線をグッと近づける。すこしの警戒心もない軽やかな感じがいいね。

海の日の電車の窓にヘリ探す 亜桜みかり
  いつき   ヘリコプターの爆音の行方を「探す」動作に佳い意味での既視感=共感がある。「海の日」の明るさと、遭難事故か取材かを想像させる「ヘリ」の存在が響き合う。省略しての「ヘリ」という言い方は許容の範囲内か。

丸窓の臥龍山荘青葉風 輝女
  えつの  臥龍山荘の霞月の間の床脇の丸窓はすばらしい演出です。青葉風がぴったりです。

小窓には蛍火ひとつまたひとつ 和音
  柊つばき   母の初盆の年、窓に一匹蛍が止っていました。母が会いに来たのだと思い泪が出ました。

閉ぢられし木棺の窓菊零る 蓼蟲
  まるにっちゃん  窓から連想されるもので一番つらく悲しい……以上。

あの窓とこの窓結ぶ遠花火 みちる
  牛後   同じ花火を見ながら、恋人と電話で話している、という景を想像した。遠花火を頂点とした三角形のシンメトリックな美しさを思う。

金雀枝の揺れてフランス窓便り 瑞木
  理酔  フランス窓便り、りぼんですな、田渕由美子の連作三編ですな。アタシャ、おうみなえこ(漢字忘れた)さんのエピソードが好きでした。

窓開けてより雲が峰つくりけり 桜井教人
  まほろ  雲の峰=入道雲は、誰かに観られるために作られているかのような、造形物としての魅力を感じることがある。

牛窓のフェリー乗場の大夕焼 もね
  一心堂  以前、牛窓には毎年行っていました、前島へのフェリー乗り場、瀬戸内海に沈む夕日、懐かしく思い出しました。

汚れてる窓を蝸牛が昇る チャンヒ
  多久美  汚れた窓より綺麗な窓のほうが蝸牛も感じよく窓を昇るのではないかと思うのですが、蝸牛にとっては汚れているほうがここちいいのでしょうね。

窓枠にはまらぬ女性よ夏帽子 洋子
  ちょっと横道  のびのびとした枠にはまらない、枠にはまって欲しくない女性いますよね。夏帽子がこの女性の躍動を感じさせてくれます。

大南風二階に兄の部屋の窓 ソラト
  正人   視線に共感。帰郷だろうか。真っ先の認識が「兄の部屋の窓」というのが住み慣れた我が家を感じさせる。スケールの大きい季語が○。

窓という窓に硝子の無く青蔦 いつき
  犬鈴  廃墟と生命力あふれる青蔦の対比がいいですね。

スカイツリーの壁とも窓とも透けて夏 大阪野旅人
  みちる  最新の句材を、くっきりと目に浮かぶように詠んだところが素敵です。

紫陽花や空瓶ならぶ窓の内 南骨
  ポメロ親父  窓の外側からの中を見る視点の句は少なかった。発想の勉強になりました。

これからは守宮のための窓ガラス 浜田節
  とりとり  よく来たね。これからこの窓ガラスは君の場所だよ、いつでもおいで。優しい句ですね。守宮の嫌いな人には支持されないかもしれないけどね。

仙人掌の花や讃美歌揺るる窓 ふじばかま
  ちろりん  教会の窓に鮮やかな、そして派手なサボテンの花。意外なとりあわせですが、景が浮かびました。

夏の陽に白く膨れる朝の窓 半角
  こてぞう  昔、ラジオ体操に行っていたころの眩しい太陽を思い出しました。

窓に乗る放浪癖の天道虫 Blanca
  レモングラス  誰かも放浪癖があるのでしょうか、このところ天道虫を見ないです、どこを彷徨っているのやら。

全開の窓抜け空へ夏燕 八木ふみ
  松ぼっくり  夏燕の飛行する軌跡までも描けるようで、とても清々しい句です。

ジューンブライド色ガラスの天窓 柱新人
  春告草  情景が浮かび明るく幸せな雰囲気が感じられ好きな句です。

独房の窓の格子へくる蛍 三月
  未々  どこで間違ったのか独房で一人正座する身になった罪びとを想って蛍に身を変え逢いに来る人。蛍を凝視する人。切なさが胸に迫ります。

302号室の窓には富士の大夕焼 樫の木
  かのん  「窓」の句ありがとうございました。たくさんの窓に出会えました。佐倉市の社宅308号室の出窓から、正に富士山の大夕焼を眺めたのが懐かしく、いただきました。

夏至や夏至窓という窓開け放て まほろ
  ひでこ  夜中を吹き抜ける風は真夏へむかうのでしょう。気持のいい句です。

五月の窓にムーミンとミイがいる ぜぶら
  都  子供の頃ムーミンのミィに憧れていたためそのせいか選ばせていただきました。

挨拶は出窓に置いた枇杷七つ ザッパー
  漫歩  アニメーションの一こまを見ているようでした。ビワは優しい木の実だからでしょうか。

今月の無点くん 
お〜いビール冷えたビールを窓から手 権ちゃん
船窓へ降り満ちてゆく梅雨の星 だりあ
月見ず月なり月写入る窓 旧重信のタイガース
白川郷窓の灯りや冬深し 人日子
七月の窓には不十分な空 あき
日雷天使の羽根の届く窓 稲穂
牛窓で見た空ずっと忘れない ケンケン
雨の香や見上ぐる窓辺花ざくろ まんぷく
梅雨入りに窓友になる一人の日 しのたん
合歓咲いて窓いつぱいの虹の珠 唐草サ行
窓開けて夕陽に乾杯缶ビール 清流子
百物語窓から見えるグラウンド みゆう
四階の病室の窓梅雨晴れ間 エノコロちゃん
雨蛙窓にへばりて類を待ち 多久美
深闇の螢火追ひて窓開く 波留夫
丸窓に鬼灯の花おさまらぬ レモングラス
夏至の夜の窓に投げ込まるる爆竹 正人
夜の風鈴夢の窓開く絵本かな 漫歩
マドンナのまどろむ窓辺ねむの花 駝楽
麦の秋観光列車の大窓 えつの
風鈴や窓にあなたがいるようで 猫ふぐ
美しくない車窓天道虫の死 紗蘭
窓口のあの娘の窓を開く夏 魔心地
飾り窓小満ニンフの貌をして 海田
窓あけて薫風すいこむおはよう山 こまりやま
天窓を開け夜空の青葉木菟 しんじゅ
学窓のチャイム流れる田植かな ゆりかもめ
曇る窓もたれる君と夕立かな ふーみん
糸瓜の花もっとも近く子規の窓 ちょっと横道
頬杖の図書室窓の薄暑光 ほろよい
丸窓の宇宙船でも更衣 桃林
窓枠の外れて落ちて梅雨に入る 朗善
窓に似たおいさんおつたお花畑 破障子
玻璃窓に緑雨走れり聖五月 一心堂
大窓は磨き上げらる若葉晴 雪花
若葉風掛け声響く窓の下 もんきち
開いてる窓すべる蠅見る私見る蠅 山ぐるぐる
天窓を狙いすまして降る夏日 青柘榴
窓明り金環日食見て仲夏 まるにっちゃん
凌霄伸びよ君待つ出窓まで 烏
猫がカラス見張る窓に夕立雲 紫音
アイスティー甘し車窓越しに空 不知火
初夏の風朝日さす窓来て唄ふ 信野
窓口に赤子置き去る虎が雨 けら
南風窓開け放ちたる時に 一走人
同窓会タイムスリップ木の芽降る オパール
ハンカチをつまんで洗ふ窓みしり すな恵
まどみちおの詩蜜柑むくたび思はるゝ 松ぼっくり
日向りの見ゆる新築丸き窓 ちろりん
五月雨やがたがた鳴りし窓ガラス 豊原清明
窓辺へと声投げつけて夏の朝 まくわ
よく見れば車窓の隅に青蛙 サキカエル
なんとなく窓を通して夏木立 ペプチド
窓枠をすきまなく埋め夏木立 今比古
窓軋むあばら家なれど蛍見ゆ カラ嵩ハル
新緑の出窓に大きなスヌーピー 柊つばき
牛窓は白似合う海ヨット行く 元旦
窓の切り取る空青し夏燕 樹朋




第176回兼題
「眩しい句」をテーマに
出題者 雪花さん

1 地下道を出るや夾竹桃の赤
2 長まりて日食仰げば風薫る
3 褌の初々しさよ荒神輿
4 歩は軽く初ランドセル桜東風
5 雨上がり斜陽背にして虹を見る
6 夕焼の犯人燃えながら墜ちる
7 初夏の金麦のひとキラキラす
8 帰省子の包みをほどく汽車の旅
9 夏の夜を来てすぐ去りし対向車
10 日盛りやひらきて貝のしづかなる
11 向日葵やミニスカートから生足
12 噴水の流れて戻らざる光
13 トンボ玉かざして夏をとじこめる
14 ストロボや逝く夏に落とした記憶
15 朝の陽にダイヤモンドに芋の露
16 網膜に焼き付くあの日アゲハ蝶
17 マウンドへまっすぐに行く白き靴
18 水眼鏡はずせば見える明日の空
19 すれ違う少女の笑顔夏制服
20 延命をことわり老父胡瓜もぐ
21 キャピキャピの声へごろ寝のサングラス
22 蜘蛛の囲のキラリ王冠のかたち
23 レンズ越し水着モデルの射る目線
24 球児等の決意の頭夏旺ん
25 噴水のこぼすひかりをてのひらに
26 炎天へサイレン主将泣き崩る
27 惜しげなき少女の素肌梅雨明ける
28 クリニック青少年等の夏の脚
29 捨てたのは安住の闇だった火蛾
30 沖からの虹の直径四国ほど
31 汗の子の瞳キラキラ初安打
32 太陽くわつとプールの底は青く塗られ
33 黴の椅子「吐け!」と刑事が怒鳴る眼前の電灯器
34 春爛漫笑顔はじけるおさげ髪
35 滝壷の泡としぶきのきらきらと
36 ゼブラゾーン日傘のひとのクラビクラ
37 過ぐる日の少年駆ける夏野かな
38 朧なる眼底検査ただ眩し
39 居るだけでただ居るだけで夏の星
40 待伏せて「わー」っと来光驚かす
41 夏至の朝亀石金の卵産む
42 夏館けふも窓辺に立つ少女
43 赫赫たる陽に射られしや砂日傘
44 スペシューム光線見上ぐ夏の夜
45 花は葉に千の金環映しけり
46 朝つゆできらめくドレス着たスギナ
47 学生の美脚涼しき過不足なし
48 地を揺らす追い山眩し博多節
49 火の鳥の羽を休める泉かな
50 夏蝶やそんなにひるがへらなくても
51 歩調取る乙女の行進五月晴れ
52 透明のラムネA玉取り出せず
53 闘魂の白球跳ねる熱き夏
54 乳首吸ふ吾子の瞳や草田男忌
55 新緑へまた1cm沈む村
56 羅や眦をさく歯科の椅子
57 白き歯が笑みから零る夏はじめ
58 前列の剃頭揺れて夏兆す
59 LED夜店の金魚まぶしかろ
60 白壁の街に太陽こそ真夏
61 炎天を弾く車の後走る
62 校門の梔子の白眩しき日
63 色眼鏡たるには色の淡きかな
64 カナブンの光背負って次の空
65 朝の五時金色朝日眩し眩し
66 滴りてダイヤはいらぬと言い放つ
67 炎昼や象に踏まるるサングラス
68 死にそうな金魚の鱗きらきらす
69 勝ち進むビーチバレーの地区予選
70 カーネーション捧げ持つ子の笑顔かな
71 噴水の陽と戯れて子を包む
72 禿頭が床屋跳び出す梅雨晴間
73 長々と純白ドレス秋惜しむ
74 ビッグバンを見てきたような夜のヒマワリ
75 網膜の印画紙に焼く雲の峰
76 結願の笑顔と涙合歓の花
77 夏山や巫女の針先静かなる
78 すいか食む乳歯二本の眩しさよ
79 町中が金環食に汗かきし
80 君の背の下着の透けし更衣
81 連れ添うて見慣れし横顔蝉の声
82 二の腕も焦げて眩しき青春だ
83 さわさわと黄金まぶしく麦の波
84 ウルトラマン変身氷菓突き上げる
85 吊るされた舞台照明旱星
86 眩しさは苦手蛍の里に住む
87 聖夜の恵比寿バカラ大シャンデリア
88 遺骨抱き下車する母や夏の雲
89 ビニールハウスの屋根反射する汗の玉
90 木漏れ日の似合ふ夏服あつらえる
91 六月の花嫁連れて来た息子
92 夏来る平仮名ばかりの俳句たち
93 美少女の飛込み台に息ととのふ
94 道をしえ影なき道に我の影
95 あこがれの君と真下に夏の海
96 夏空や白球に込めたる希望
97 母ちゃんの金歯は光る飯はすえる
98 立葵より高くなる父の背に
99 上向きのライトに吠える夏の雨
100 投げ上げて炭酸水の空きらきら
101 閃光のあと無人なる薔薇の庭
102 噴水の弾け冒険始まりぬ
103 行動が思想そのもの青胡桃
104 待ちかねしバスに手を振る夏少女
105 リンゴ酢で脳みそ洗い梅雨明ける


次回兼題「オリンピック」をテーマに 出題者 八木ふみさん
次々回兼題「銀」の字の入った句 出題者 不知火さん

【兼題の扱い方】
季語「xx」 … 副題含む季語を入れる。
「xx」をテーマに … 内容に沿って詠む。
「xx」の字の入った句 … 単語そのものを詠み込む。



めざせ!大漁旗(174号〜179号)
 誌上句会「ザ 句会『鰯の歯ぎしり』」では、選んでくれた人の数をすべて集計し、半年間で最も点数の多い方が「大漁旗」を獲得します。大漁旗を得た方は「最新十句」を本誌誌上にて発表することができます。

〈参加方法〉
 1 「今月の投句」から好きな句を選ぶ。(選句)
 2  その句の感想を書く。(選評)
 3 「次回兼題」の一句を書く。(投句)
 ※1〜3、俳号(本名)、〒住所、電話番号を明記して、編集室「ザ 句会」宛にお送りください。一人一句まで。選句は番号と俳句を共に記入して下さい。
  番号はお間違えなく!

  今回の締切は8月5日(日)必着です。
 Eメール宛先 kukai@marukobo.com
 インターネットや携帯電話から下記の場所にアクセスしていただくと、専用のフォームを使って簡単に投句&選句ができます。
 http://www.marukobo.com/kukai/


【現在の捕れ高】

14点
いつき
とりとり

13点
ポメロ親父
のり茶づけ

11点
明日嘉

10点
しゅん
ひでこ

9点
杉山久子
迂叟
蓼蟲

8点
山ぐるぐる
松ぼっくり


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100年俳句計画 掲示板


 組長&編集長&組員さんの出演執筆一覧

テレビ/ラジオ
NHK総合テレビ(愛媛ローカル)
 「えひめ おひるのたまご」内
 『みんなで挑戦!MOVIE俳句』
  8月28日(火)11時40分〜

NHKラジオ第一オトナの補習授業
 7月31日(火)

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。

10周年記念特別番組『垣根なき17音〜楽しくないと俳句じゃないぜ〜』再編版
 あの特集が再編再放送!
 8月12日(日)12時〜12時59分

FMラジオバリバリ俳句チャンネル
放送時間 … 月曜 17時15分〜17時30分
再放送 … 火曜 7時15分〜8時
 兼題「秋簾・蟷螂」(8月5日締切)
    「天の川・秋の風」(8月19日締切)
  mail fmbari@dokidoki.ne.jp
  FAX 0898-33-0789
※必ずお名前(本名)・住所をお忘れなく!
※各兼題の「天」句にはキム・チャンヒのイラストポストカードが贈られます。



執筆
東名高速フリーマガジン「高速家族」特別号&夏号Vol.30

Pioneer Sound Lab. 音俳句
http://pioneer.jp/soundlab/
  ウェブサイト上に組長の選評が毎日一つ発表されます。投句も受け付けています。

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

朝日新聞朝刊
 歌壇俳壇「うたをよむ」コラム
  8月6日(月)掲載予定

愛媛新聞
 「集まれ俳句キッズ」毎週土曜日

愛媛新聞「ハタダ帰省俳句」入賞作品掲載
  8月15日(水)

愛媛新聞(キム チャンヒ)
 「ヘンデス俳談」毎月第一土曜日 兼題「梨」締切 … 8月22日(水)


句会ライブ/講演など
新居浜国語同好会句会ライブ講習会
 8月2日(木)

松山青年会議所主催「ことばのちから」プロジェクト句会ライブ
 8月5日(日)

NHK松山放送局「俳句王国がゆく」わくわくトーク&句会ライブ
 8月11日(土)

第15回俳句甲子園全国大会
 8月18日(土)〜19日(日)


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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

育つ俳句の種
まとむ 「句会ライブアラカルト」興味深く読みました。ふじばかまさんと町内の学校に句会ライブをしに行きはじめて4年。昨年から町外へも出かけるようになって俳句の種まきがどんどん広がっています。いつ行ってもどこへ行っても、子どもたちの反応に泣きそうになります。(おばさんは涙もろい……)
編 俳句の種まき活動お疲れ様です! そういう世代の子ども達が俳句甲子園に出場する日が来るのが待ち遠しいですね〜。

安 毎週土曜日の夜、親子サークルで集会所に集まって活動しているのですが、実はその中でミニ句会もしています! 6月号の「魚のアブク」を見てびっくり! 和音さんがラヂバリの投句を勧めてくださったんですね!! ありがとうございます!!親子でとても楽しんで投句させてもらってます! ミニ句会では、こどもたちの個性豊かな発想や素直な表現にいつも元気をもらいます。それだけでなく、お互いの句に対する意見も大人顔負けで、ずっと私が下手ながら司会をやっていたのですが、最近は、こどもたちが順番で司会もするようになりました。これがまた面白い!! 新しい発見の連続!! 皆さんにお見せしたいくらいです!
編 見てみたい! 司会もできるなんて末恐ろしいやら頼もしいやら。いろんなご縁がありますなあ。

平成の名句600
元旦 角川『俳句』7月号の大特集「極めつき! 平成の名句600」読みました。組長の平成俳句という命題に対しての切り口というと語弊がありますが、向き合う姿勢に共感しました。俳句の種まきなどの取り組みからの選句は、当を得たものと思います。タイトルにも使われている「未来もう来ているのかも蝸牛」の句。俳句甲子園からもうすぐ1年なんですね。
編 平成生まれの俳人たちが生み出す数々の名句たち。読んだらちょっと唸らされますよ。

ザ・句会で大当たり
山ぐるぐる 7月号を開いた時の驚きったらありませんでした! え? ええ? ドドドッカーン! まぐれを大切にします、本当にありがとうございます。
編 7月号で7点を獲得した山ぐるぐるさんより。ドッカーン!と大当たりすると気持ちいい。

くらむぼんに挑戦!
紗蘭 6月号、くらむぼんでの「地」ありがとうございました。これからも1日1句のペースをキープしながら俳句を作っていこうと思います。
編 「春愁を与えた苗は育たない」という句でした。一日一句の中で生まれた句だと思うとまた味わいが。

洋子 へたうま仙人さんに追放されて名誉なこと? 今回はくらむぼんチャレンジャーです。
編 しばらく挑んで「やっぱりへたうまがいいなあ」と思えばしれっと戻るのもあり。結構、自由です。

へたうま仙人にコンニチワ
渡部五龍 くらむぼんに相手にされないので仙人に衣更。
へたうま仙人 誰でもウェルカムぢゃ!

猫ふぐ へたうま仙人さんへ。へたでも愛しい俳句なので、選評から外れた句も載せて欲しいです。へたな並みでお願いします。
編 誌面の分量的になかなか難しいのです……申し訳ない。

北海道生まれの俳句集団
牛後 北海道で、俳句集団【itak】(イタック)という超結社の活動が始まりました。ブログをご覧いただけばうれしいです。http://itakhaiku.blogspot.jp/
編 itak[イタック]とはアイヌ語で「言葉」の意味なんだそうです。素敵な名前!

一句一遊・釣人かく語りき
だなえ 6月号の一句一遊情報局の兼題「いさき」を読みまして。鱸はフィッシュイーターですので口が大きく、ガバッと開く構造を持ちます。次に、尻鰭から尾鰭の付け根までの尾部が長い魚です。そのためか、背鰭が二つの山に分かれているように見えます。胸鰭は、いさきの方に切れがあるように見えます。以上、フィッシュイーターとそうでない魚を同列に置くのはいかがでしょう。また、言うまでもなく、黄褐色の縞があるのは、幼魚、若魚で成魚の多くは暗褐色です。〔後略〕
編 参考文献以上の情報をどうも。ミスター釣人らしいコアな訂正情報でした。釣人歳時記が書けそうな勢い。

俳号が変わりました。
都 以前の俳号がソラマメの母でした。
編 改めまして都(みやこ)さんです。よろしくお願いします。

組員の生活
うに子 よく降りますね。この夏が水不足・電力不足になりませんように……。
まんぷく もうすぐ梅雨明けです。元気で夏を乗り切りましょう。
エノコロちゃん 毎日毎日じとじとよくふりますねー。カビが生えそうですねー。気をつけて下さいねー。
編 梅雨の過ごし方も十人十色。夏はどう過ごすんだろう。

大塚めろ 大草刈(夏の季語)をしました。マスク(冬の季語)をしなかったので、鼻が詰まって目からは涙が止まりません。ビール(夏の季語)を飲んで素麺(夏の季語)をすすったら少し調子が良くなりました。次からは気をつけます。
輝女 6月の木曜カルチャーの前に10人ほどでベェネツィア展に美術館吟行に行って来ました。入口に守護神の羽のあるライオンがいてなかほどに真実の口という大理石で出来た密告用投書箱っていうのがありました。映画のローマの休日に出てくるのとよく似てました。ベェネツィアってなかなか面白そうなところで行ってみたくなりました。
駝楽 竹瓦温泉に浸かり、臼杵石仏にお会いしてきました。瀬戸内も目の前でした。
編 こちらは吟行(?)ネタ三本。身近も楽しい、出先も楽しい。

柊つばき 年をかさねてくると、別れが多くなります。出逢いがとても大事に思えてきます。
編 出逢いが大事っていう前向きさがいいですね! 次のお便りはそんな出会い(?)ネタ。

すな恵 あのう、エノコロちゃんさんはもしかして男性なのですか? 女性だと思っていましたが……。
編 というわけで、エノコロちゃんにお便りです。「6月25日にめでたくも57才になってしまいましたぁ〜」とはエノコロちゃん今月の弁。さて、性別はどちら? 来月号でエノコロちゃんからのお返事が届く……かも?

編 先月「私たちの100年俳句計画」に登場された春告鳥さんより、緑道公園(宮崎県)に設置した「色紙のある風景」の写真が届きました。


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くざとも

毎月たくさんの句会が各地で開催されています。それぞれの句座にそれぞれのカラーと名物キャラあり!! というわけでこのコーナーでは、句会の紹介とともに、句会の人気者、そして期待のニューフェイスを紹介していきます。

人気者
三日月句会
俳号 えつの

 今治三日月句会は今年六月に十年目の扉を開きました。個性派揃いのメンバーの中でアイドルと聞かれて真っ先に思い浮かべるのはえつのさんです。
 平成11年秋、今治小学校の句会ライブで組長とだりあさんに巡り会い、マガジン「いつき組」27号から購読、29号から投句開始。そして三日月句会開始と同時に参加。現在は地元の小学校の俳句タイムにて年四回活動されています。
法華寺さんでの句会ではいつも一言一言を大切に心のこもった温かい選評をされます。ちょっぴり法話の雰囲気も(笑)。えつのさんに選評されると一気に句が輝き始めます。そして素敵な句にはうなずきながら拍手を。次回はこんな選評をしていただきたいなとか、自分もこんな風な選評をしたいなと思っているメンバーも多いはずです。
 今治五七五句会ライブでは、ちょっと大きめなスタッフジャンパーを着込んで大活躍。不定期に開催される吟行句会にもとびきりの笑顔で参加されています。
(文・亜桜みかり)


新人
大阪で生まれた句会や堺筋
俳号 蓮城&稲荷&ひで&吾平(あいら)&ローストビーフ

 変わり者? いやいや個性的な方々の多いことで有名な「大阪で生まれた句会や堺筋」ではあるが今回ご紹介する5人は実は正統派である。というのも全員が俳句甲子園出身者という血統書付の人たち。むかって左端の蓮城くんとその隣の稲荷くんは洛南高校、真ん中のひでくんは松山東、この三人はいずれも現役大学生。右端の吾平ちゃん、その隣のローストビーフくんは吹田東の出身で社会人俳人。この若い俳人たちがおじさん・おばさんの心をいつも鷲掴みにしてしまうというのがこの句会。この日も彼らの個性的な句や俳句甲子園並みの選評にいちいち「ほーっ」「へーっ」の連続。句会後の食事会ではまるで親子か爺婆との会話となるが、そこでも若者たちは終始話題の中心にいる。あ、違った、この日はローストビーフくんは後半スヤスヤ。やはり社会人はお疲れですね。そして今年も俳句甲子園にはきっと後輩の応援に松山に現れることでしょう。さあ、彼らと暑い松山をもっと熱くしましょう!
(文・兼光)


句会の開催日程等詳細は句会カレンダーのページをご覧下さい。


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鮎の友釣り

171

俳号 不知火(しらぬい)

八木ふみさんへ 木曜カルチャーの理性、ふみさん。いつも連れて行ってもらってありがとうございます。楽しい企画をしていただいて、木カルを続けられます。

俳号の由来 秋の季語の「不知火」ではなく柑橘のデコポンです。生産者です。

俳句との出会い実家の母を見ていて、いつかは俳句をしてみたいとは思っていました。単身赴任中だった夫ポメロ親父が、ひとりで俳句を始めていて、宇和島句会ライブに家族で初参加しました。八年経った今は、義母お手玉と兼題など俳句の事があれこれ話題になります。

写真 デコポンです。

次回…ふづきさんへ 以前に句会を御一緒して以来、ふづきさんの句が気になっています。また機会があれば、よろしくお願いします。


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告知


今年もやります!選評大賞2012
選句の対象となる句
・「100年の旗手」掲載句
 (2011年10月号〜2012年9月号)
・ その中から、心を打たれた俳句を1句選んで、選評をお寄せ下さい。

記載事項
・掲載句1句(掲載号、作者名を必ず明記)
・選評 20字×15行(300字)以内厳守
・俳号、本名、住所、電話番号(必ず明記)

締め切り 10月14日(日)必着

応募先 100年俳句計画編集室まで、ハガキ・封書・FAX・メールでお送り下さい。
 ※送付の際、件名・タイトルに「選評大賞2012」と明記下さい。
 ※ご応募の際、他の投稿とは別にお書き頂きますよう、よろしくお願いいたします。

 お送り頂いた選評は、編集部で審査し、大賞を決定します。皆さまの選評、お待ちしております。




100年俳句計画投稿締切カレンダー

 
 7/31(火) くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 zatsuei@marukobo.com

 8/5(日)
  ザ・句会
 kukai@marukobo.com
  100年の旗手感想
  魚のアブク

 8/31(金)
 くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 100年の旗手推薦募集

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


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マルコボショッピング


マルコボ.コムのショップ店長まほろがアナタにオススメする逸品!
オンラインショップでは様々な商品を取り揃えて皆様のご来店をお待ちしています。


『芝不器男への旅』
著:谷さやん
2310円(税込)
発行:創風社出版(2012年4月発行)
四六判 234ページ・上製本ハードカバー
ISBN978-4-86037-169-2 C0095

オンラインショップ商品カテゴリ:本

コメント
俳人・芝不器男の生涯をたどる旅
 若くして散った、現在の愛媛県北宇和郡松野町出身の俳人・芝不器男。著者は俳句を始めて間もない頃に彼の作品に出逢って惹かれ、やがて、俳誌『船団』で「響き合う二人・不器男と梅子」と題した連載を行うことに。その全15回の連載をまとめたのがこの本です。ゆかりの地、ゆかりの人を訪ね、芝不器男本人について、そして彼の周りに居た人たちについて、豊富な資料写真とともに丁寧に書き著された一冊です。



『行かねばなるまい』
著:杉山久子
1260円(税込)
発行:創風社出版(2011年6月発行)
四六判 180ページ・ソフトカバー
ISBN978-4-86037-161-6 C0095

オンラインショップ商品カテゴリ:本

コメント
親近感たっぷりの文体で綴る徒歩遍路紀行文
 俳句新聞『子規新報』で連載されていた「お遍路は風まかせ」が一冊の本になりました。興味本位から四国遍路に出たという著者。しかも徒歩で……。その経緯や準備の様子からすでにドタバタ劇の様相で始まる文章と、要所に挿し込まれる素敵な俳句の数々。その流れにあっという間に引き込まれていきます。この本のプロデュースならびに装丁を行ったのが、本誌「慶弔俳句帖」の挿絵でもお馴染みの、律川エレキ。ページの隅には、表紙画担当の流水彩子によるパラパラ漫画が添えられているという遊び心も……。



マルコボ.コムオンラインショップ
http://shop.marukobo.com/



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編集後記


 今年はオリンピックイヤーということで、あるときは計画的に、またあるときはなし崩し的に様々な企画を行っている。
 特集で紹介したどろんこバレーやボウリング大会の他にも、オリンピックの開会式やなでしこジャパンの試合を、マルコボ.コム事務所で観戦する企画や、10月28日には「俳人オリンピック」と題した、スポーツ大会も計画中。
 俳句とスポーツと言えば、正岡子規が野球にのめり込んでいたことを思い出す。スポーツに集う仲間と俳句に集う仲間。一見交わらないように思えるけど、健康な体にこそ、健康な心が宿るなら、俳句の仲間とスポーツをすることは、何と素晴らしいことだろうと、運動嫌いの僕でも最近思う。
 全ての企画を本誌に紹介できればいいのだけれど、思いつきで急遽企画が進むことも少なくない。
 そこで本誌読者には、「メールマガジン」の登録と、ブログのチェックをお願いしたい。特にメールマガジンでは、イベントの紹介や、各種投句の締切の案内、句会の案内など、本誌を120%楽しむための情報が、毎週送られる。要チェックですぞ。
(キム)


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次号予告 (178号 9月1日発行予定)


次回特集
今あらためて「震災忌」考

 季語「震災記念日」(震災忌)は、大正12年9月1日に関東一円をおそった関東大震災の犠牲者の霊を弔い記念する日です。
 昨年の東日本大震災や、1995年の阪神・淡路大震災の記憶もまだ確かな現在、改めて「震災記念日」という季語を、様々な視点で捉え直すことで、今後起こりうる災害(や事件)の日の「季語」と、どう向き合い、どう付き合うべきかを考察します。


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2012年8月号(No.177)
2012年8月1日発行
価格 600円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子