100年俳句計画4月号(no.173)


100年俳句計画4月号(no.173)

注意
これは視覚障がい者の100年俳句計画年間購読者のためのテキストファイルです。
通常の著作物と同様、許可無く複製/転載することを禁止します。





目次


表紙リレーエッセー
鼻歌と花粉症 錫樹智


特集
第一回 大人のための句集を作ろう!コンテスト 結果報告




好評連載


作品

百年百花
 加根兼光/キム チャンヒ/理酔/渡部州麻子


100年俳句計画作品集 100年の旗手
 みちる/緑の手/朗善


初学道場 へたうま仙人

雑詠道場 くらむぼんが笑った

放歌高吟/夏井いつき

新100年への軌跡
 俳句/希望峰/宮下航
 評/桜井教人/とりとり


読み物
私たちの100年俳句計画
JAZZ俳句ターンテーブル/蛇頭
ラクゴキゴ/らくさぶろう
本家 慶弔俳句帖/桃ライス
高田純三の勝手にエロ句解釈
一句一遊情報局/有谷まほろ&一句一遊聞き書き隊

読者のページ
選句&投句欄 ザ 句会
100年俳句計画掲示板
魚のアブク
鮎の友釣り
告知
編集後記
次号予告




表紙リレーエッセー


鼻歌と花粉症
錫樹智

 鼻歌とは、口を閉じて鼻から出す息だけで歌う歌のことである。では、鼻がつまっていると鼻歌は歌えないのかな、と思って鼻に息が行かないようにしてやってみたら、やはりできなかった。ということは、この花粉の季節、鼻歌を歌う人が減るのでしょう。町が鼻歌で満ちる日は祝福するべきなのね。
 ところで私は、どうやって鼻に息が行かないようにできたのか。
 鼻の穴は奥の方では喉に開いていて、この鼻の奥の穴を軟口蓋と呼ばれるのどちんこの付け根の粘膜でぺったりと覆ったのであった。これがうまくできないと鼻歌が歌えないだけでなく、呼吸と飲食がごっちゃになり、むせたり、鼻に牛乳などが逆流して痛い目にあったりするのである。今から昼飯であるが、自分に備わったこの能力に感謝しながらいただくことにする。


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特集

第一回 大人のための句集を作ろう!コンテスト 結果報告



 第一回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」(主催 マルコボ.コム、共催 朝日新聞/松山市教育委員会)は、81句作品集を公募する企画。昨年末の締め切りに応募された作品は60作品。本特集では、全受賞作品および、本企画立案の過程と、審査の方法、審査結果を報告する。


「コンテストの経緯」 編集長 キム チャンヒ

 去年の1月号で本誌の名前を『100年俳句計画』に変更すると宣言した時から、誌面に新しい作家の発表の場が必要だと考えていた。その一つが、今月号からスタートした「百年百花」であり、もう一つがこの「大人のための句集を作ろう!コンテスト」である。
 各俳句総合誌をはじめ、各所でまとまった作品集の募集はある。そんな中、『100年俳句計画』らしい俳句賞とはどんな企画だろうと、ずっと模索をしていた。
 そこで思いついたのが、最優秀賞を句集にすること。その句集によって作家がデビューを出来るような物にしたい。当初の企画では、できあがった句集を、「句集シングル」と名付け販売し、配布する方法を考えていた。音楽の世界では、アルバム以外にシングルでデビューする方法もある。俳人だって、いきなり数百句の作品ではなく、「句集シングル」で世に出ることだって可能じゃないかと思ったからだ。
 しかし、「句集シングル」という発想は面白いが、句集を販売したのでは、沢山の方の手に渡らないかも知れない。句集を手にする人が少ないと、その作家を応援してくれる人が少なくなってしまう。それでは意味がない。
 そこで思い出したのが、プリンスが2007年に発表した「Planet Earth」というアルバム。このアルバムは、イギリスの新聞『デイリー メール』の日曜版の付録として無料配布された。そう、『100年俳句計画』の付録にして配布すれば、沢山の人に手にとって貰える。
 以前、本誌では読者から募集した俳句をもとに『戦争と平和の俳句集』や『恋の俳句集』として本にして付録にしたことがある。今回もそれと同様のことだ。
 付録にすることを踏まえ、尚かつ毎年応募できる作品の数として、子どものコンテストの約倍、81句に設定した。ちなみに、80句でないのは、一ページ三句で装丁しているためである。
 応募内容や副賞の句集の仕様が決まり、あとは応募作品の審査方法。当初僕が個人的に考えていたのは、第一回は編集室内だけで決め、その後順次、このコンテストの受賞者を増やす方法。しかしこの方法だと、本誌の内輪の賞だと揶揄されかねない。それで出た案が、予選は本誌編集室で行い、最優秀賞は本誌読者で且つ各俳句総合誌などで最終選考まで残ったメンバー、各賞受賞者等が決める方法。本誌の誌面などで告知し、選考会員該当者を募ったところ、23名が審査に関わることになった。
 編集室にて予選審査をする際、予選通過の作品数は十作品にしようと、漠然と決めていた。しかし、「この作品を残すならこの作品も」という事態が続出。最終的に「単に巧い俳句を選ぶのではなく、作家の個性が際だつ作品を選ぶべき」という視点で選び直し、八作品に絞った。
 そして、その八作品(もちろん俳句のみ)を選考会員(もちろん当コンテストに応募し予選通過をした方は除く)に配布し、審査、集計した結果、牛後さんの『根雪と記す』が最優秀賞となった。
 今回の選考会員は同時進行で企画していた「百年百花」の連載メンバーとなる。こちらの方も、ご期待いただきたい。



 作品番号 9番

『根雪と記す』鈴木牛後


立春の春といふ字の飛びさうな
寒明の飛び散る乳のほの甘き
地球儀の地軸の向きにヒヤシンス
春の日を南北に振る犬の尾ぽ
歯車の濡れて動かぬ雪解かな
初蝶は牛舎の隅の暗きより
静脈の青き乳房や春の水
かげろふに濡れて仔牛の生まれ来る
あけてゐるだけの呉服屋あたたかし
雑巾をミシンの進む日永かな
牛乳に溶く春光の五千粒
蘖の突つついてゐる牛魂碑
野に出でて空気を吸ふといふ遊び
春塵に艶めく五星紅旗かな
サイネリア地球の隅に暗き国
我が牧は四十町歩揚雲雀
花冷の詩を刻みゆくシュレッダー
行く春のいつか何かに使ふ箱
はつなつの少年ならば飛べるはず
制服はオイルの匂ひ薄暑光
故郷とは水溜まりなり遠郭公
麦秋や臍のあたりに手の記憶
牛啼いて誰も応へぬ大夏野
雷神に山羊一匹の立ちどほし
抱くやうに廻すハンドル濃紫陽花
蜘蛛潰す音次の日もそこにある
牛死して高く掲げる夏の月
待ち人の待ち人とゐてかたつむり
風鈴に隣る電撃殺虫器
まだ誰も踏んでゐない俺の夏草
畜生と言はれて牛の眼の涼し
日盛りの尻の犇めく駐輪場
糸蜻蛉墓石は聖書ひらくかたち
零したる軽油たちまち虹捕ふ
海の日の晒されてゆく旗の赤
牛糞を吸うて汚れぬ夏の蝶
刻印のやうに盛夏のサイレンは
家族より歯ブラシ多し夏の果
牛百頭餌を待ちゐる残暑かな
冷やかに朝は睫毛を分け入らむ
笑はれて笑ひかへしてゑのこ草
バックミラーの破片のひとつずつに月
秋澄みて牛に涙のやうなもの
梨剥きしナイフ梨より甘からむ
満月や牛の数だけある怖れ
小鳥来るやがては廟となる倉庫
懐に地虫かくまふ捨案山子
秋桜や駅より見ゆる次の駅
鬼やんま逃がしてよりの男かな
水澄めり空を映せば空澄めり
ぐりりと踏む牛の落とせし鬼胡桃
みづうみに林檎の沈む透明度
羽化の記憶失せて秋蝶暮れ泥む
灰皿に山成す昭和暮の秋
牛の眼の空を湛へて牧閉す
冬来れば冬のかほなる牛を飼ふ
時雨るるや遊具は鉄として売られ
牛の尻並べ勤労感謝の日
根雪と記し農作業日誌閉づ
冬の日を貯へシラカンバは白し
牛の背を払ひて了る煤払
数へ日の束ねるものと解くもの
初御空白き牧野に立ちて仰ぐ
長靴に雪の入りたる御慶かな
冬鹿の吾を離さぬ眼の黒き
猫の吐瀉物跨ぎストーブの点火
白菜の外葉の溶けるほど待てり
寒暁の家畜車犬の声浴びて
雪に兎の足跡踏んで朝刊来
人に首空に月ある寒さかな
蹴られたる凹みアルミ戸凍てにけり
鼠入る雪野へ続く換気口
乳搾る明けのオリオンやはらかく
二階まで来て長靴の雪落ちぬ
手を振れりフィヨルド色のコート着て
鎖鳴る音ばかりなり深雪晴
セーターをなほ毛だらけにして牧夫
牛の息ふしゆうふしゆうと白く伸ぶ
甲冑魚のごとくに雪の底にゐる
牛舎の窓開けて四温を招き入る
待春や乳飲む牛は眼を張つて


作者プロフィール
1961年生まれ。2008年暮れより俳句を始め、2009年より「俳句の缶づめ」に参加。北海道の片田舎でほそぼそと牛飼いをしている。




 作品番号 2番

『春帽子』とりとり 


忘れ物です赤ちゃんの春帽子
春の霜駅から五分なんて嘘
猫の仔の足かけて鳴くダンボール
おおいぬのふぐりと呼ばれ小さく咲く
百貫の牛の歩みや水温む
鳴く亀と言われて甲羅押されても
瓶に棲む胎児標本ぼたん雪
デコポンのたんこぶほどの憂いかな
春の日の針穴と糸すれちがう
決心や春のキャベツをきゅっと巻く
地球儀のようなたこ焼き桃の花
ロシア語で歌うラジオや鳥雲に
永き日の連結を待つ列車かな
犬の鼻よりぬれている春の土
ぶらんこをねじらせてまだ帰らない
春の野に両手ひろげて飛ぶかたち
満開のさくらのなかを救急車
麦秋や息子の歌のしゃがれ声
保育器はあかるき宇宙聖五月
森の字のかたちに茂るパセリかな
はつなつの注射の犬のキュンと鳴く
先生の待ってくださる薔薇の門
泣くのなら今がいいかも苺煮る
母の日のきりんの二重瞼かな
教卓に青き地球儀更衣
入梅や煮られて赤き深海魚
父の日の象のしっぽの泥だらけ
降りてゆく卯波のなかの空港へ
梅雨深し古新聞に飛ばす爪
白シャツの子ら並ばせて校医なり
なんとなくハミングする日メロン買う
祝祭のようにサイダーあふれだす
海の日のレゴブロックの無人島
爆弾のような雨粒蟹走る
夏服のポケットのなき軽さかな
郭公の思わぬ近さカフカ読む
夏料理ただごとならぬ苦さなり
病院のなかの迷路や熱帯魚
遠雷や突然終わるセロテープ
なるようになるよポンポンダリア咲く
ごきぶりでなければ美しい茶色
あっぱっぱ脱がれてドーナツのかたち
すねている息子へ弱の扇風機
捕虜として灼けるジャングルジムのなか
夏休み地図を押さえる石熱し
夏休み男の子みな棒が好き
汗の子のきょうの冒険聞いてやる
ももいろの水母に会いにゆくところ
まず犬に顔なめさせる帰省の子
ポケットの砂裏返す夏の果
秋暑し隅まで赤き日本地図
緋のカンナ咲かせ独居の砦かな
ブラウスの糊のばりばり生身魂
新涼や骨のきれいなレントゲン
崩れゆく二百十日の積み木かな
風呂の湯のエメラルド色台風来
芋虫ののびるまえにはちぢむなり
月代を来てやわらかき銀の猫
百歳はみんなわがまま栗きんとん
ラ フランス父の客人よく笑う
コンパスの正しき円や秋つばめ
ビニールの袋に秋刀魚曲がりけり
何百の骨あるわたしすすき原
折りたたむ手紙の軽さ小鳥来る
黄落やおさなき魔女の手をひいて
水に来る鳥 人 ボート 秋の蝶
爪先の痛みしんしん霙降る
鉄橋はハープのかたち都鳥
しみったれた山茶花の咲く家でした
ストーブやげらげら笑う微熱の子
階段の底に冬日の溜まりたる
手袋の片方編んでそれっきり
生命線ほめあっている火鉢かな
マフラーをゆっくりはずす試験場
白セーター子羊役にせりふ無く
くしゃみするこの世に生まれ二時間後
暖房のごうごう夜間診療所
冬シャツのしたの冬シャツ聴診す
左手に胡桃握らせたい右手
福寿草なんて綺麗な胃のかたち
口開かぬ成人の日の帆立貝


作者プロフィール
1957年三重県生まれ。三重県松阪市在住。女性。2005年より俳句を始める。ホームグラウンドは「俳句の缶づめ」「大阪で生まれた句会や堺筋」。




 作品番号 5番

『羊水』此花 悠 


日輪の方より来たり初燕
頬白の声咲く朝はみすゞの日
春愁よりゆふむらさきを抽出す
陽炎をスライスしたるオブラアト
沸沸と空輸の栄螺滾る夜
海へ出て蝶の記憶のギガバイト
芝ざくら水の上にも咲きたくて
千年の慟哭雉の眼光に
夜汽車てふ鉄のヴィヨロン春の夜叉
飛花落花回転木馬の子な消えそ
蛙らに水の花咲く山雨かな
着信の耳朶発光す五月闇
百環の虹をくぐりて団地古る
薔薇を来て超音波にて女児と知る
白花水木赤花水木金魚病む
ほととぎす星は研磨に出しました
ゆふ蛍人に幽かな水掻き痕
あぢさゐをほぐさば水の屑ばかり
河鹿笛水うつくしく村古りて
青畳の下のぢごくを均す蛇
朝焼けを来てどさと置く売り荷かな
飛魚の風切り羽根のむずむずす
またの名を恐竜博士日焼の子
あをあをと海を待たせて大昼寝
羊水をゆさぶりのぼる磴炎暑
夜盗虫もの喰ふ音の満つる星
アルゼンチンタンゴの夜を蚊の太る
あの火の見櫓は夕焼け観測所
夕焼けの致死量を知る少年期
蜥蜴の死すこしはなれて尻尾の死
始祖鳥の裔漆黒の天使魚は
日雷ピアノは沈黙の大器
かはほりに飛沫くや金星硫酸雨
向日葵の打たれし頬のあるごとく
プールサイド最後の乳歯ぐらぐらす
夜濯ぎや人語を解す猫と星
鶉をらず鶉の窪みひとつある
八月の朝がほガガーリンブルー
複眼のひとつひとつの秋の空
天高くジャックの墜ちてきさうな日
とんぼ等は寄るとさはるとメロスのこと
花むくげ今朝ははつきり話す母
画の前に来てはたと止む秋扇
赤き実は木木のたくらみ小鳥来る
流星へ螺旋階段みな未完
鹿鳴くや大仏殿に雲の湧き
十月の街は水盤かも知れぬ
禁忌多く蠍買はれて行く月夜
夜のペットショップは少し月へ浮く
山彦が海彦を喚ぶ紅葉かな
ただ中にゐてただ遠し天の川
小さき手に恒星のごと青き梨
鰯雲篩へば砂金のやうな星
ずぶずぶと暮れてゆくかな鶏頭花
どの露を鳴らさばかの山のうごく
秒針のつぶやき秋の果つるらし
地下街にツケ利く呑み屋憂国忌
雑踏や今日二の酉と誰か言ふ
南海の市や舳先に鮫の肉
返り花歌ふことだけ覚えてた
水槽の魚木枯しの夢を見る
小夜時雨拾はなかつた子犬たち
雑炊や競馬新聞鍋敷きに
白息やその山脈みの名を問へば
初氷みな割り歩く登校子
海へ雪舌に吸ひつく飴の穴
水鳥の今朝のゐのちのしぶきかな
大壺に映ゆる人出や年の市
風花に立つや風花とは知らず
咳きやぐんしゆうゆるやかにうごく
國恋へば湯の混みあへる大晦日
去年今年望郷ぢよんがら殷殷と
明星を前へ前へと初詣
鼻さきに星屑つけて嫁が君
見物に犬も雑じれる猿回し
四日には発つ子の前へ将棋盤
双生の如くに父と雪嶺と
少年か狐狸か一村雪明かり
狐火に海山迫る星ざんざ
太陽を焼き切つてゐる鷹の舌
冬眠の多産黒点活動期

作者プロフィール
1958年生まれ。愛媛県松山市出身。東京都在住。母が投句を始めた縁で俳句を作るように。ひょんなことから「俳句の缶づめ」を知り、いつき組の一員となって現在に至る。




 作品番号 20番

『出過ぎ』大塚めろ


手品師のネタ本拾う大晦日
新札に折目をつけるお元日
つむじみな同じかたちや歌留多取り
霜柱ところによって朝帰り
くしゃみして直ぐその分の息を吸う
着ぶくれて銀座二丁目三丁目
当初より目つきの悪しき福達磨
手袋や所定の場所に指各自
雪合戦技もへちまもなかりけり
帰り花このアングルにちょっと邪魔
たまゆらの風花地球三丁目
鴛鴦のやや失敗の着地かな
白鳥の陸に上がりて立ちくらみ
葱畑国家は平均点を言う
寒灸そろりそろりと死ぬ話
考える人が歩けば春が来る
春立つや耳かきのとき耳傾げ
落椿よくもまあこのタイミング
あとかたを少し残して剪定す
のりしろをはみ出る糊や二月尽
水温む笠智衆似の電信棒
啓蟄や商店街の坪単価
軽く会釈して我々は残る鴨
愛余り過ぎて蛙の目借り時
恋猫の内弁慶でありにけり
世が世なら美男の部類さくらさく
ブランコは昭和六十四年贈
出汁巻の残る重箱花疲れ
村中の犬の名言えるしゃぼん玉
風船にきのうの息のまだぎうぎう
風薫る針穴写真器「完璧号」
一括りに青葉若葉と言われけり
筍や都道県別長寿表
走り梅雨訳あり洗濯機の届く
父の日に二千円札使いけり
半夏生冷凍ピザが吐く怠惰
七月の清潔すぎるレストラン
煌煌と貧乏神を売る夜店
短夜や三つの辻に占師
ニセモンと思えば負けよ書を曝す
あっぱっぱ正義が勝ったりする映画
片方は蛍袋の中にある
水面下のことはさておき蘆茂る
もう一度大仰に振る鰻筒
噴水の使い回しの飛沫浴ぶ
叱られて仕事帰りの泳ぎかな
泳ぎ方だんだん思い出している
浮いてくるまで生きている浮いてこい
獅子唐の片面ばかり焼き上がる
向日葵やなんだか面接の気分
なにかこう得した気分キャベツに芯
さきほどの尻尾の主の蜥蜴かな
尺取のへのへのへのへのへで止まる
映写機のからからからから四十雀
油断してでんでん虫に囲まれる
ありありと蟻道の跡赤新聞
カルピスを五倍薄める水晩夏
シュレッダーに蠢く八月である
おしなべて消極的に秋立てり
秋茄子やのめりと剥がす化けの皮
口々に月の悪口言いにけり
焼き過ぎて秋刀魚の腹の奥読めぬ
縄張りは棚田五枚の新案山子
逃げ切ったと思う飛蝗の肩の息
きちきちやさて今からの着地場所
日の暮れて正気に戻る桔梗かな
虫時雨すぐに順番つける癖
新藁をつけて助役の通勤車
藷蔓を元校長と引きにけり
菊を伐り出過ぎたまねをしたきかな
山粧う三代前は筏乗り
三人が居て三人が秋をいう
自販機の時々しゃべる文化の日
遺言に猿酒の項無かりけり
悶着もあったでしょうに雁の列
煎餅の五方に割れて十二月
オリオンにざわとにんじん畑かな
するとすると霜夜の声は誰の声
街角に同じ着信音聖夜
出し抜けに歳暮最後の客とされ
大晦日出過ぎたシャンプーを戻す


作者プロフィール
1956年、父と母のあいだに生まれました。みんな父親と母親から生まれたんだ、と思うと、世の中まんざら捨てたもんじゃないな、と最近思います。




 作品番号 31番

『椿の家』十亀わら


水鳥のまだ濃くなつてゆく体
牡蠣焼きて鉄の刃に日の愁ふ
百獣のたてがみみ山眠る
羚羊の右臀部より枯れゆけり
石蕗に待ち伏せをして怒るとは
白鳥の窪みよ修羅場といふところ
誰か死ぬ真冬のダリア日和かな
冬茜ほどのパスタをからめをり
靴箱に靴ある孤独セロリむ
綿虫や天運をなほ信じねば
梟の木にふくろふの増えゆけり
版ずれの椿のありし日短か
衝動やポインセチアに金の蕊
かつて産みし仔かも知れずに水鳥は
あすといふ日を裸木の抱きしめる
初春のくろがねの蓋伏せにけり
新春の温水プールとは深し
謎解けぬままに七草粥を吹く
冬の拍手のやうに閉ぢてゆく鉄扉
求愛のくちばしを打つ雪の檻
産まねば風花に不純のまじりたる
ジャムパンや世界たとへば春を待て
千枚のコピー雪解の窓に置く
野火走るちからに詩の間に合はず
火を焚きて指さびしがる春祭
冴返る白馬の中の白馬かな
金のティーサーバー熱き雪解かな
混沌の近似値信ずるにミモザ
鷽鳴きて校舎の崩れはじめけり
左折して春一番へ加速する
送球の白さに春の雪降るよ
あの屋上からも椿は見えぬはず
希求するかたちに春の鉄塔は
一丁目椿の家の人らかな
さへづりの本気に近き空の色
椿まで息を止めあふ遊びかな
三鬼忌の一番偉い人と寝る
天窓にてふてふ夢とおんなじに
三春の水底ビー玉のころん
花すもも顔のあちこち触れてゐる
クレソンクレソンさびしかつたよ
この歩幅では春風に愛されぬ
夜桜の匂ひにシンバルケース置く
朧夜を失ふためのイヤリング
夫眠る躑躅そんなにひかるなよ
花吹雪赤き電車を横殴り
春闘の青年と目の合ふ二秒
麦は穂に日は白鍵に響きけり
豆飯の豆を数へて新婚期
麦秋や傷つきやすき夫の靴
アパートの夜の羽蟻の掲示板
明日返す本を抱へる水馬
梅雨寒し職員室の前に旗
兄と来て誓子の螢見失ふ
奔放な鼻もてあます夏薊
蠅ひとつ打てば終はるのかも知れぬ
夏菊の空なりたくさん皿買うて
こんなにも袋小路の熱帯夜
炎昼の赤き新潮文庫かな
幅跳びの砂匂ひたる原爆忌
初秋の櫓の暗みより乾きゐし
鶏頭の影より出でて影に入る
なぜ口は動くのだらう終戦日
白木槿咲くや議論は熾烈にて
夕月や舌に母音の重たかり
むくげむくげ電車炎上したる夢
詩はいつも少し不自由大豆煮る
夜の怒り桃はひしひし剥かれしに
露草やみんな濡れたるやうな爪
野分凪ぐ窓よピアノの始まりぬ
発熱の胸をしづめて芒原
月光の駅舎に靴は濡れてゐし
桔梗一輪人を打つとき目を閉ぢよ
闇夜かな稲穂ぎしぎし光りあふ
日輪にくづれてゆきぬ紅葉山
家督なき隣家に揺るる熟柿かな
秋澄むや火急に運ぶものあまた
前文を迷ひぬ月のかかる山
無花果の木に弟の居なくなる
蘆火燃ゆ指は哀しき棒であり
ちちははの風土しづかに石榴割る


作者プロフィール
1978年松山生まれ。
大学で受けた組長の講義をきっかけに、「いつき組」へ。
第七回俳句界賞。東京在住。




 作品番号 32番

『生きてゐるしるし』相原しゅん


かげろふに燃ゆるうさぎの耳のうら
啓蟄の花壇の柵を直しけり
穴出づる蛇よ火星に炎立つ
観劇や山は雪崩の頃かしら
考へるために歩くよ春の風
涅槃図の端に正座をしてゐたり
はるぢをん水も手紙も船で来る
こでまりの弾む風なり子を宿す
玄関に声あり春炬燵と答ふ
桃咲くや四十人の名を覚え
永き日の水残りたる犬の皿
さみどりのひかりあかごのなきそむる
燕の巣ありとのみ記す日誌かな
空青く新茶の為の水を汲む
あうたうきといふくちびるのかはきかな
サングラス頭痛は青色となりぬ
ソーダ水見つめてみんな他人なり
滝音の滝を離れてより響く
長身の神様が呼ぶ夕立かな
虹消ゆるまで我が指を栞とす
紫陽花や蛍光ペンは濡れてゐる
砲丸の凹みを避けて蟻の列
誰よりも濡れて水鉄砲日和
よそ見する整列の子と向日葵と
夏空や飛込台のホイッスル
母の顔父の顔して帰省かな
水を買ふ時代に生まれナイター観る
冷房や同じ映画を借りて来し
紙マッチ擦れば近づく夏の果
反戦の落書きの壁熱砂吹く
八月をきれいに洗ふための水
何もなき日々鶏頭は怒る花
物分かりよく秋の蚊の出て行けり
昼の湯へタオルぶらぶら鶉鳴く
店頭の西瓜叩かれどほしなり
秋の川見てゐるだけのずる休み
しやらと揺れたり子の握る猫じやらし
高跳びのバー震へたる鰯雲
菜を間引く実習帽の後向き
梨食うてより身中を水の音
柳散る公衆電話なき町に
蛇穴に入りし竹林七賢図
流星や生徒代表謝辞草稿
三つ褒め一つ叱つて秋の風
新米を研ぐ水の香の立ち上る
月明や海にもありし国境
末枯野かくもしづかに濡れにけり
演題の余白多かり冬隣
ピラカンサス七つの海を列挙せよ
先生は二階石蕗咲くこと告げに
雪虫を追ふによろしき日和かな
叱られし子も交じりくる落葉焚
寒夕焼歩測百歩の狂ひなし
短日の音をしまつてをく身体
有閑やひゆるひゆる数へ日の薬缶
何をするはずだつたかと蜜柑むく
ストーブに当たり始めてよりの仲
簡単に生きて海鼠が噛み切れぬ
闇汁のまづ箸先を嗅ぎにけり
疑ひの濃くなるばかり毛糸玉
わたくしといふ虚構あり日記果つ
新玉のホテルに開くマタイ伝
雪下ろす合間合間の礼者かな
福耳の三代笑ふ初写真
松過ぎの自問自答や胡麻を煎る
泣くまいとしてあるものに冬のばら
遠火事や蛍光灯の点滅す
ほんたうはうさぎになりたかつた雪
冬天や指笛の鳴る指の欲し
見送りしフェリーのくぐる冬の虹
星の名を持つ少年の息白し
朝霜や教師の顔となる途中
習作の半紙千枚寒明ける
冴返る水の笹掻き牛蒡かな
火の匂ひさせて男は麦を踏む
クロッカス卵を抱いてゐるやうな
腕立て伏せ百回建国記念の日
猫やなぎ声はゆつくり風となる
ロッカーの名札を剥がす春の雪
花杏抱いてゐる子のまた欠伸
噛みちぎるレタスが生きてゐるしるし


作者プロフィール
1977年愛媛県西条市生まれ。愛媛大学在学中に「俳句創作論」の講義で、夏井いつき氏と俳句に出会う。句会の楽しさから俳句にはまり、現在に至る。




 作品番号 35番

『多面体』マイマイ


もらわれて子犬のいない毛布かな
石蕗咲いて岬に鐡のにおいけり
人の日のパンチをぶん殴って穴
強敵は駒音たてぬちゃんちゃんこ
日常のもやもやお湯割のゆらゆら
スコーン崩れやすく冬暖かし
白木蓮の置かれる空の昏さかな
卒業やジャングルジムの上の月
雀の鉄砲ぎっしり軍隊ポロネーズ
花アケビちぎってもう街に帰らぬ
桃咲いて鶏は平たく死んでいる
聞けば本当になる虎杖折っている
行く春の行列サーカスの冥さへ
脱酸素剤藤の夜の熱帯びて
失職の日の羽蟻の太き腹
母笑う腹水レモン色のこと
薫風をごろんと離婚暦ひとつ
そう、もう鉄線の花がねえ
五月のひまわり母死にゆくを待つソファー
明け初むる窓に守宮の美しき
玉葱の臭いと二日目のシャツと
死亡診断書と母連れ帰る麦の道
百合よ百合よ柩よ百合よ百合よ母よ
時鳥熱きかけらの母を拾う
六月の衝動猫を抱き上げる
十薬や母を愛してやまぬ庭
空蝉のごとく遺品のコルセット
梅雨晴や寺に小さき滑り台
菩提樹の花の下とは眠かろう
月曜の新聞薄し朝曇
蹄鉄ひとつ極暑に鳴らすものとして
半月の沈む重さやダチュラ咲く
炎昼の迷子の影が僕だった
立ちのぼる油煙脳焼く唐辛子
むくげ見たむくげ落ちているのも見た
椋鳥の群のぐにゅぐにゅぐにゅ磁力
葛の花貼り付くガードレールの熱
時給九百円の子規忌の髭を剃る
秋空はビルの硝子かもしれず
遅番や金木犀の荒ぶ街
ポケットにきのうのどんぐりが乾く
赤まんまばあちゃん山羊の頭突き来る
ちゃんぽんのもやしのひげの夜長かな
立冬やゴム手袋に吹き込む息
水底の落葉の銀の気泡かな
申し送りにマスク着用義務のこと
風に当たらぬ山茶花から咲いた
俯せて洗う小春の車椅子
ホースから小春の水の柱かな
ガウス平面上に凩記述せよ
鰤捌く赤き軍手の疾さかな
地下街の泉に揺らぐクリスマス
オムツ交換三十一床冬銀河
金星は空の破れ目初氷
風花やカップに混ぜるとろみ剤
こめかみの脈動、初星の痛み
湯たんぽや想うこころの端っこに
人死ぬる日の水仙のむせかえる
雪嶺や少女のごとく歌わんか
饒舌な鶯餅であることよ
青空や風のミモザの真下まで
引き抜くべき菫と目があっている
ボウロください百六歳の春の日に
河口まで菜の花明かり月明かり
春風の類型として電車過ぐ
エイプリルフールみな上を向く粉薬
麗らかやホースはみどりなる塒
花屑を踏んでらいおんバスが来る
ばら寿司の山は弥生の紅生姜
人に恋蜂に金雀枝あるのです
助手席の君の帰る日花の風
人待てば藤の名残をつたう雨
凧糸や空はこんなに力持ち
洗われて五月の山の近さかな
目測を小さく裏切る蛍の灯
夏蜜柑剥く唐突に正義感
初夏の太陽、海は多面体
桐の花降るローマ史の伏せしまま
青嵐剥がれし爪の下に爪
羽黒蜻蛉は羽黒蜻蛉に夢中です
百合開くまでタンバリン鳴らそうか


作者プロフィール
1966年2月15日生まれ。2003年11月頃ラジオに投句を始める。2007年6月、いつき組の皆様に祝福されて、藤実と俳句結婚式を挙げる。




 作品番号 38番

『海峡都市』理酔


寒明や海鳴り目指す裸馬
薄氷を踏みて卑弥呼の神憑り
竜天に昇る紅夜の花屋かな
払暁の出社命令猫の恋
どしゃぶりに閉じ込められし雛祭
黄砂来る海峡都市に生まれけり
ぼるねおの歌を聞かせろつばくらめ
むしり喰う流刑の島の干鰈
椿落つその激痛を知らぬ海
君が蒔く花の種買う昼下がり
鉄路煌々春夜の握り飯
北窓開く包帯に血の乾く
鳥帰る海に背いて犬の群
桜餅つまめば通夜の明けにけり
若鮎やつめたき光ごと掴む
月孕む蛤あぶく吐きにけり
やみそうにないので二人で花を見る
接岸開始逃げ水の逃げる逃げる
空き缶に煙草落して喧嘩凧
戦争の続報を聴くこどもの日
白薔薇や今宵肉喰う人となる
孫君の花アカシアの話聞く
鯰喰う夜の蛮酒の仄紅し
そうかここは青梅の路だったのか
嘴にもがく蜥蜴の声を聴く
晴天を誉めて始まる田植かな
桜桃忌錆の浮きたる観覧車
短夜の売り付けられし天使魚
食った気がしないゼリーを誉めている
罵声飛ぶ鬼灯市の朝かな
パリ祭や甘き雨降る操車場
星雲や熊襲の国の泉ぼご
メス重き鳴滝塾の簾かな
虫干や掛軸の猫居なくなる
地下足袋を脱いだ形の旱かな
夏の山背負いて氷屋の轍
死期近き雌犬に汗舐められる
雷の匂いに目覚む赤子かな
今朝虹を仰いだ夜の広場かな
白靴も乳房も夜にさらしおり
太陽の賛歌カンナの酒を酌め
敬礼の美しき人桐一葉
側溝に猫の流れて鳳仙花
鈴虫やヌードの街のタバコ売り
絶唱を葉月の空に置いて来る
子規の忌の未だ明けやらぬ植物園
野兎生息分布図朝の月
あの燕関帝廟に帰るのか
星月夜降ろし忘れし社旗の下
被曝地や翅に熱帯ぶ秋の蠅
台風の雨のしょっぱき知覧かな
ホウと鳴く魚出て来る秋の水
鶏頭の群れて野犬の近寄れず
しゃっくりの酒場に喰らう鰯かな
北辰斜に射せば猿酒薫りだす
かりがねやロシアのひとのなはターニャ
ふらんすの旗を拾いし運動会
柿を食む面会室の二人かな
丸めれば銀紙は星文化の日
立冬の海とも知らずはぐれ犬
茶の花の眩しく白き棄村かな
ストーブやちりちり臭う綿埃
オリオンの生まれし夜を飛び立ちぬ
虚ろなる鮫の目玉よ愛国よ
カムイ伝俺は誰だと問う冬日
空風や酒場の壁を枕とす
ポケットの昨夜死んだるホッカイロ
湯豆腐をぼたぼた落し泣いている
焚火背に船の還るを待つ老父
鮮血や鮪は海をぶちまける
若水や手押しポンプの腹に龍
読初やミズイカ炙る手の熱し
嫁が君母の生まれし島の歌
キヲスクの牛乳御用始かな
機関より異常音松過ぎの海
冬薔薇パブロピカソの手は太し
風花やアコルデオンが歌を吐く
ラグビーの勝鬨遠き埠頭かな
不敵とは吹雪の夜のドラムソロ
水仙を銀河の端に活けており
海峡を撃てば枯野の犬となる


作者プロフィール
1960年生まれ。性別「男」。年齢「51歳」。国籍「日本」。出生地「下関市」。所在地「福岡市」。賞罰「無し」。身体的特徴「内臓完全逆位」。




第一回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」選考結果および選後評

夏井いつき

 最後まで予断を許さないデッドヒートを繰り広げたのが、「根雪と記す」「春帽子」「多面体」の三編。会員投票僅差にて、第一回最優秀賞を射止めたのが「根雪と記す」だった。
 選考会員の評を集約する形で、最終選考に残った八編に触れてみたい。

最優秀作品一編
「根雪と記す」鈴木牛後(北海道)
 牛を飼うという生活のリアリティーに圧倒される。命と共に暮らす現場にある音、匂い、手触り、息遣いが読み手の五感を刺激する。牛だけではなく、犬、鹿、蝶、猫、兎、鼠、山羊、かたつむり、地虫など生きるものへの眼差しも深く、一句一句が博物誌のように楽しくもある。労働、風土、作者の人生がどっしりと臭うように迫ってくる実力派の作品として高い評価が集まった。

優秀作品七編
「春帽子」とりとり(三重県)
 好天型の発想力と等身大の柔らかな感性。一句一句がミネラルウォーターのような透明感と滑らかさをもって、乾いた心に浸透してくる。〈詩〉と〈俳〉の分量のバランスがよく、俳句と縁のない人にまで届く普遍的なエネルギーをもった作品で、既存の俳句賞とは一線を画して『ハイクライフ100年俳句計画』がこの作品を選ぶ意味は大きい等、熱烈な支持も寄せられた。

「多面体」マイマイ(愛媛県)
 この賞の一番の特徴「句集としての面白さ」という点から評価すれば、次々にページをめくっていく楽しさが一番感じられる作品。定型に囚われず自由な表現を試みた結果、破調、字余り等が半数近くもあるが、句集全体に独特のリズムがあり、構成の巧さに感服する。卒業、失職、離婚、母の闘病等を順に織り込むことで時間の大きな流れを表現した点も魅力、との声多数。

「羊水」此花悠(東京都)
個性的な比喩に詩情が満ちる。詩の世界を自由に泳ぎ回るかのような表現が非常に新鮮。不思議な身体感覚をもっているが、言葉が良いスパークを起こしていて魅力的。「百年後に残したい作品」を選ぶ本コンテストの趣旨において、百年後も色褪せない力を持つ作品はこれだとの絶賛の評もあった。

「出過ぎ」大塚めろ(愛媛県)
 飄々と生き、人を食った物言いをし、読者を裏切り、時には世間をチクリと刺す、大人のイタズラの如き作品群。意表を衝く発想、比喩を使いつつも、季語の本意を外さない手腕に玄人ファンが食いつく。

「椿の家」十亀わら(東京都)
 独特の詩の世界にさまざまな色がふんだんに詠み込まれている。虚と実の世界を自在に行き来する詩性。語感の強い言葉が並んでいるにもかかわらず落ち着きとあたたかさを感じる大人のポエム、との熱烈な支持も。

「生きてゐるしるし」相原しゅん(愛媛県)
 日常と非日常の配分が良いバランスで構成された作品群。震災後の危うき時代にこそ共有したい作品ではないか、との感動の評もあった。

「海峡都市」理酔(福岡県)
 風土と作者がずしりと座り、抜き差し難い迫力の八十一句。句集を意識した構成に一工夫あればさらに生きたのではと惜しむ声も。


 八編の選外ではあるが、次の二編が最後まで、最終選考決定議論の対象となったことを附しておきたい。

「けものたるもの」ソラト(徳島県)
「子規以後」町田美香(徳島県)

 前者は荒削りが魅力な作品群ながら一句一句の出来に愕然たる落差があること、後者はこの作家にしか詠めない世界観を持つ作品群にもかかわらず同じ句が二句あり実質八十句の応募であったことが重ね重ね惜しまれた。捲土重来を期待したい。



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百年百花


大人コン選考会員4名による4ヶ月間競詠2012年度 第一期 1回目


「悲しみは」 加根兼光

アスパラガス青白き日の始まりぬ
クランケは末黒野に手を拾い上げ
春の駒柵の切れ目にばかり行く
水行三日牡丹の緋の咲かず咲かず
夜蛙の星降るままに濡れている
眠りの森の美女たちはふらんどへ
ワルツワルツワルツワルツ水の春
ゲットバックの次は野薊なぐること
鳥帰る先尖りたる墓標かな
ミモザ咲く母の生まれた街を出て
悲しみはすみれ踏みつけたら終る
激しさのただ降り止まぬ遅桜


1949年生、大阪出身。
第9回俳句界賞受賞。




「気配」 キム チャンヒ

ブランコを離せば飛べる空だった
菜の花にいつも迷子になる悪夢
ドーナツの穴ほど軽薄な日永
春の日のアヒルと友達でいるさ
春の日のテーブルクロスの白の闇
呟きは虚しい夜のチューリップ
仔猫抱き世界の終わりと同じこと
恋人のように仔猫を突き放す
偽善者となり蒲公英の絮を吹く
春空を突き刺す街中のクレーン
不自由は自由─春禽を見逃すな
壁の皹からも白蝶の気配


1968年生、愛媛県出身。『100年俳句計画』編集長。




「飛花落花」 理酔

紅梅や海底トンネルまで二秒
君の気紛れ淡雪を連れてきた
鳥帰る眼下岡本太郎の塔
西行忌浮浪者となる予感あり
フェンスの向こう側だけ土筆土筆土筆
生き生きと蠢く春の馬糞かな
春星や悪い酒がもっと呑みたい
土手っ腹に風穴雪柳に犬
俺の「あっ」を考えている春日傘
溺れないくらいに浮いて春の月
サクラサクラ幾度平和を思ったか
出漁の力拳や飛花落花


1960年生まれ。性別「男」。年齢「51歳」。国籍「日本」。出生地「下関市」。所在地「福岡市」。賞罰「無し」。身体的特徴「内臓完全逆位」。




「出棺」 渡部州麻子

水仙や刃よりも針の恐ろしき
初蝶の重さ炎の重さかな
ヒヤシンスあけがたは人逝きやすし
出棺す春の雪しづくへ夕日
裏返りながら春水奔りけり
淋しさは滲みやすくて昼蛙
紅梅が恋人だつたこともある
噛み殺すあくび磯巾着ひらく
こんなにも芽吹いてくすぐつたいだらう
うつうつと神々老いぬ雲雀東風
蝶の影落ちてたなざらしの帽子
春陰や造花真つ赤にショールーム


1960年生。第8回俳句界賞受賞。句集『黒猫座』。



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読者が選ぶ人気俳人!

100年俳句計画作品集 100年の旗手


(2012年4月号 〜 2012年6月号 1/3回目)


 花見虱 みちる

蓬髪に花匂はせる春の雪
大試験鉄の扉を閉ざし
はこべらやいつしか妻が来てをりぬ
鱗粉の残る中指春の宵
中年は愛す伊勢佐木三鬼の忌
階上の電話鳴る鳴る木瓜の花
春疾風線香すでに火の柱
酒の虫ぞろりと動く春満月
川端の顔なし地蔵目刈時
花見虱潰し俳諧人生論


 1948年尾張生まれ。2001年から伊予に単身赴任。俳句は2006年から土曜カルチャーで勉強中。組長のエネルギーに魅力を感じています。尊敬する俳人は蛇笏。自分を捨てず自分の殻を破るのが目標。カワイイ俳号ですが男です。



 神話 緑の手

貝殻の鍵墜ちた春星が砕けた
初蝶の影を忘れて来し朝か
薔薇の芽やヴィナスの髪の伸びる音
囀を受くる百でも足りぬ耳
揚ひばり神話の峰を目指したる
啓蟄まかりこすそれにしても雨
恋めきて蝶の黒紋ラメめきて
陽炎の飛沫にひかる定川
鼻尖は光の春に近づきぬ
コンドルは遙か反戦めいて春


 愛すべき俳句と巡りあい、5年目になろうとしています。
それ以上に素晴らしい沢山の句友との出会いに心から感謝している毎日です。



 砂漠より電話 朗善

朝寝して東西南北見渡せり
さへづりや瞬きをして青年は
花椿落ちてはねたる水しぶき
陽炎の石段伸びてゆくばかり
春風や線路の草をまたぎつつ
黒猫の辺りいちめん草古りて
いつまでも虻の離れぬふくらはぎ
銅像と二人つきりや春の雲
大砲の隣に座る桜かな
砂漠より電話くれたる花の夜


 松山はいくガイド。夫は、チェリストのナサニエル ローゼン。今一番やりたいことは、Beglarianの「Of Fables, Foibles and Fancies」(チェロとナレーションの曲)を翻訳して、ニックと共演すること。



読者が選ぶ人気俳人!
「100年の旗手」連載者推薦募集

 今求められているのは、読者が読みたいと思う俳句作家。「100年の旗手」は、連載する俳人を、編集室ではなく、読者が選ぶコーナーです。
 「この人の作品集を読んでみたい」と気になる俳人を、1人3名まで推薦してください。その中から、推薦の多かった方に、編集室より原稿依頼を行います。
 あなたのお勧めの俳人を是非推薦してください。

 推薦の方法

 「この人の作品集を読んでみたい」という人を3名まで選んで(自薦は不可)、その俳号と活動場所(俳句の缶づめ等)/推薦者ご自身の俳号(本名)/住所/電話番号を明記して、100年俳句計画編集室「作品集推薦」係へ送ってください。ハガキ/FAX/Eメールで受け付けています。Eメールの場合は件名を「作品集推薦」としてください。また、誌上句会インターネット投稿フォームでも受け付けています。(アクセス場所は誌上句会コーナー末を参照してください。)なお、投稿フォームの場合を除き、推薦は他の投稿等とは分けてください。

締切 3月末日

 現在連載している3名の方以外なら、一度連載された方も含め、どなたでも推薦できます。
 また、今回連載を行っている3名の方への感想もお待ちしています。よろしくお願いします。



百年琢磨
先月号の「100年の旗手」に寄せて

それぞれの感覚と具体性 しなだしん

「木の芽風」 舞
冴返る道玄坂のとつかかり
 渋谷道玄坂は坂下交差点から坂上交番前交差点までの三百mほどの坂。渋谷109辺りから傾斜が強くなる。坂下は海抜二十、坂上は三十一で、その差は十一m。坂下で道玄坂を前にし、凍て戻りを感じた作者。「とっかかり」という柔らかい語感がこれからの春を思わせる。
ぼこぼこのトタンを踏んで猫の恋
 最近ではあまり見かけなくなった「トタン」は、亜鉛メッキ鋼板の、主に建築資材として使われているもので、語源はポルトガル語の「Tutanaga」らしい。「踏んで」から屋根を想像する。「ぼこぼこ」の古びたトタン屋根は猫の恋の場面として相応しい。

「さらば春の鹿」 磨湧

木蓮の見つめる斜め前も雨
草の芽に見つめられたる午前二時
 「見つめる」という語彙を使った二句。前句の木蓮が見つめるのは雨。木蓮を擬人化して見つめていると詠んでいる。木蓮の花の向きを少しずらすことにより、作者自身の存在を感じせている。
 二句目は二通りの解釈が可能だ。一つは午前二時という時間が「草の芽」に見つめられているという読み。もう一つは見つめられているのは作者で、その時間が午前二時、というもの。普通に考えると後者の句意だろうか。いずれにしても「午前二時」という時間を含めて様々な想像が広がる。

「嘘をつきそうな」 凪太
淑気あるバス停の名は学校町
 「淑気」という季語を「ある」とした俳句ははじめて見たかもしれない。作者は敢えて「淑気あるバス停の名」と一気に読ませたかったのだろう。「学校町」には現在も学校があるのかは不明だが、そのバス停の名にシンパシーを感じた作者であろう。

春愁は二人を印象派にして
 「印象派にする」というのは春愁の本意として的を射ていると思う。逆に的を射過ぎた感もあるが、この句を支えているのは二人という真実味だろう。

蛤のこれから嘘をつきそうな
 蛤が嘘をつきそうなのは、きっと蛤がちろりと舌を出したせいだろう。「これから」という措辞が蛤に対峙した作者の心持ちを顕している。


しなだしん
1962年新潟県生まれ、新宿区在住。「青山(せいざん)」同人、俳人協会会員。句集に『夜明』『隼の胸』。



読者の感銘句

三月 感銘句です。「春の泡とけてロイヤルミルクティー」舞。「梅が香と勝手に開いた玄関と」磨湧。「蛤のこれから嘘をつきそうな」凪太。三ヶ月楽しませていただきました。

一走人 「フェルメールの青を見にゆく二月かな」舞。「朝食はパンにルートを挟む雨水」磨湧。「蛤のこれから嘘をつきそうな」凪太。が好きでした。

真鍋龍一 「フェルメールの青を見にゆく二月かな」舞。ゴッホの黄色、ゴーギャンの茶色、ルノワールの黒。確かにフェルメールは青色が素晴らしい。特に「真珠の耳飾の少女(青いターバンの少女)」は2月という感じがする。なぜか。うかれ猫が現れる前という意味。そういう雰囲気がむんむん。



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初学道場 へたうま仙人


文責:大塚めろ

 雑詠道場は、「くらむぼんが笑った」か「へたうま仙人」か、どちらかへ3句1セットでの選択投句となります。選が厳しい「くらむぼん」に挑戦するか、必ず一人一句以上選評付きで載る「へたうま仙人」を相手に“巧すぎるのでへたの聖地追放”を目指すか。その選択も楽しんで頂けたらと思います。


みなさんのところの桜はどうですかの? この時期は意味もなくそわそわするのう。
 それぞれのMy桜が今年も満開でありますようにぢゃ。

犬と並んでなんとなく初東雲 天玲
 「なんとなく」と言われたら、初東雲のおめでたさも半減ぢゃが、それがかえって嘘がない作者の新年かもしれんのう。犬の白い息が見えて来そうぢゃ。

カタカナの雨が降りますもう春だ  ケンケン
 「もう春だ」のさりげない置き方が、句に色を付けておる感じがするのう。やがて、春のはじめのカタカナの雨から、春爛漫のひらがなの雨へと変わってゆくのぢゃろうなあ。

貝塚に踊る埴輪や春隣 迂叟
 埴輪と春隣との遠くて近い感じがなんとも良いハーモニーを醸しておるなあ。ましてや踊る埴輪の様を想像すると、貝塚に埴輪がある不思議さも相まって、一気に古代に気持ちが飛ぶのう。

片栗の花語りだす野辺の坂 未々
 片栗の紫色の花に出会うと、本当に語りかけられているようで花に耳を近づけたくなるのう。片栗の声を聞き取る作者がそこに佇んでおるようぢゃ。ただ、「語りだす」の代わりに花の様子を他の言葉で言ったほうが、情景がもっとわかりやすくなるかもな。

大樟の木々の間に間に冬晴るる 輝女
 連立している大樟が壮観ぢゃなあ。その間に見える青空のなんとまぶしい事か。「葉桜の中の無数の空さわぐ (篠原梵)」をさらに大きくしたような情景にうっとりぢゃ。 

商談の成立血尿と春眠 和音
 あまりにリアルで思わず(ご苦労であった)と抱きしめたくなったぞ。この血尿と春眠の度肝を抜くドッキングに共感できる人も、今の世の中多いじゃろうのう。とにもかくにも血尿が「春眠」で救われたわい。

あの頃も嫌いだったと春の夢 実峰
 今の方が「あの頃」よりも、もっと嫌いになっておるんぢゃろうな。心の移ろいと時の移ろいと儚い春の夢が三竦みのようで切実ぢゃ。で、何が嫌いなんぢゃ?

庭仕事済みて身にある余寒かな  ゆりかもめ
 因果関係が少しわかりすぎるみたいぢゃが、余寒を「身にある」と感じた繊細さに唸ったぞ。手入れの行き届いた、こじんまりとした庭が目に浮かんだぞ。

ホースからぬる〜り氷柱息止まる  オレンジ日記
 冷え込んだ日の朝の少し気温が上った時間帯、蛇口を開けたホースの先はまさにこんな感じぢゃな。ホースの先からにょろっと出る溶けかけた氷は確かに蛇かミミズのようぢゃ。作者の驚き様がおかしいぞ。

冬晴れや風の音のみ保育園 柊つばき
 人の気配がせず風の音のみの保育園とはなんともさびしい風景ぢゃな。明るい「冬晴れ」が、何か大きなものを暗示しているようぢゃ。

春の夕夫婦茶碗をおろしたり かのん
 特別な日でも特別な夫婦茶碗でもないのに、なんとなくおろす気になったのは春の夕だからぢゃな。でも、大切にとっていた茶碗であることは「おろしたり」でよくわかるぞ。ふふ。

春の風笑う声あり足湯あり ペプチド
 リズムがなんとも良いのう。笑い声がする方を見ると湯気が上る足湯がある。笑顔と春の風が、本当に心地よいのう。

宵の星ひとつうまれて冴えかえる  ひでこ
 日が暮れるにしたがってひとつ、またひとつとひかりを増していく星を「うまれて」と表現したところが詩人ぢゃのう。ぶり返した寒さが余計に星を輝かせているようぢゃ。

春霞抜けて墓標の黒く立つ 松ぼっくり
 焦点の合わない霞を抜けたところにくっきりと立つ墓標。その存在が圧倒的ぢゃ。まるで異空間に迷い込んだみたいぢゃ。

土筆摘む背を音もなく大河往く  松ぼっくり
 小景と大景のバランスの良さが、広がりをもって眼前に現れるのう。いろいろな要素が少し入り過ぎている気配はするが、悠久の自然のおおらかさが気持ちいいのう。

自画像を描かねばどこかにいく二月  親タカ
 「どこかにいく」で明確に切れていたら「二月」の効用がおおいにあると思うんぢゃが、このままでは(二月がどこかにいく)ともとれる。そうしたら、ちょっと二月が漠然としてくる。これは作者の意図する事かもしれんが、ここらあたりが非常にもったいない気がするのはワシだけぢゃろうか? それにしても、俳句の内省的なまたひとつの面をうまく表現しておるのう。 

登校の黄色い傘や百千鳥 ぎんなん
 傘を差しているという事は雨が降っているという事。雨のときに百千鳥? という気がせんでもないが、黄色と百千鳥の取り合わせが特に鮮やかぢゃ。子供たちの黄色い声も聞こえてきそうぢゃ。

同化した巣箱の穴はひとつだけ  小木さん
 いかにまわりの景色に同化している巣箱とはいえ、穴があるという現実を提示する事により、巣箱自体の存在がほのかに滲み出てをるのう。存在は孤独の入り口かもなあ。

ものの芽の心あとからついてくる  小木さん
 ちょっとしたタイムラグの妙ぢゃなあ。ものの芽のはやる気持ちが、待ちに待った春を過不足なく表しておるのう。

梅林を進めば万華鏡の中 コナン
 梅の一輪一輪がきらきら光るさまを「万華鏡の中」とはうまい発見ぢゃ。これが「桜」だったらちっとも面白くないんぢゃが、そのあたりを十分に吟味した斡旋ぢゃのう。万華鏡の一番奥では、梅の精がどんな顔をして我々を待っておるんぢゃろうなあ。


 今月もお付き合いいただき恐縮ぢゃ。いろいろなタイプの句が集まってきて、大いなる刺激を与えてもらいましたぞ。来月もよろしくおたのみ申しますぞ。


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雑詠道場 くらむぼんが笑った


夏井いつき選


今月の天
のどやかにアラビア糊の泡伸びる  錫樹智

 「のどやか」は「のどか」と同じ形容動詞ナリ活用の語幹、「のどやかに」はその連用形だ、などという硬い説明は野暮だよねと言いたくなるような実に長閑やかな作品である。
 意味は簡単明瞭。半透明の容器に入っている「アラビア糊」を使おうと、容器の腹の辺りをぐっと押すと、閉じ込められている「泡」がぐにゅ〜んと伸びたというただそれだけの映像だが、季語「長閑」をこんなふうに表現できた可笑しみに、頷かざるを得ない。よくよく考えてみると「アラビア糊」という商品名も摩訶不思議な長閑やかさ。「泡伸びる」のリアリティーも、伸びやかなア音オ音の多用も、すべてが季語に収斂されていく天晴れな手際の一句である。


今月の地
雛あられのなかに飛行石の欠片 なゝ
薄氷を見たときくらゐ驚いて
 色とりどりの「雛あられ」の中には「飛行石」の欠片が入ってるのよと平気で嘘がつけ、「薄氷」を見つけた時(にはあんなに喜ぶくせに、あの時)くらい「驚いて」よとヌケヌケ甘えられる。いやはや、なんと愛すべき可愛いオトナだろう!

啓蟄の鱗じみたるエスカレータ ソラト
いびつなる梅まつたうな性欲
 「エスカレータ」に乗れば、それが「啓蟄」の日の穴からでてきた「鱗(をもった生き物)」のように思え、「いびつなる梅」の縺れた雄蕊雌蕊を見れば「まつたうな性欲」のあり方について考え始める。いやはや、なんと愛すべきヘンなオトナだろう!

頭より落下の椿翻る 恋衣
 「頭より落下」で、一瞬、共に落下するような追体験を味わうが、次の瞬間「椿」であることが分かると、落ちて翻った「椿」からあたかも我が身が幽体離脱したかのような錯覚に陥る。そのような読みの体験が、この句の真っ当な愛し方かと思う。

愛の日の月やしゅるしゅるしゅるとケトル  ふづき
 「愛の日」はバレンタインデーのこと。「愛の日」の「月」はほのかに色づき、「ケトル」は愛の歌をうたうごとく「しゅるしゅるしゅる」と鳴り始めるのだ。

縞深き春三日月の砂丘かな 大五郎
 「縞深き」は最後の「砂丘」にかかっていく形容。「春三日月」をかかげた「砂丘」は己の襞を影としつつ広がっている。「かな」の詠嘆の美しさを味わいたい一句。

橋渡るまでは雲雀と分かつ空 すな恵
 「雲雀」と「空」はあまりにもありがちな素材だが、「雲雀」と共有していた「空」が「橋」を渡ることで別の空となっていくという感覚に共感する。絵本の一ページを見せてもらったような一句だ。

恋猫が未完の夜をひた走る 大中博篤
 「恋猫」と「夜」もまたありがちな素材だが、「未完の夜」という措辞が詩語へと変容する。「ひた走る」の語感もまた「未完」の感触と響き合う。

春の水なら臍の緒は生きられる 牛後
 こう断定されると、そうに違いないと思えてくるのが詩としての力。「春の水」に浸してやれば「臍の緒」はどっくんどっくんと脈打ち始めるかもしれないという詩的妄想は、ホラーめいたものではなく、「春」という季節の明るい確信のようにも感じられる。

春光や水口に鎌置いてある 空
 「水口=水を引き入れたり、放出したりする口」に「鎌」が置いてあるだけの光景だが、季語「春光や」が一句の世界にあまねく及び、迸る水や鎌の刃をいきいきと匂わせてる。

廃屋のまだ人臭し枇杷の花 ターナー島
 「まだ人臭し」という感覚に共感する。「廃屋」の片隅に転がっている汚れた洗面器や欠けた茶碗に「人」の臭いを嗅ぎ取ってしまうのだろう。地味な「枇杷の花」だが、上五中七の光景を受け止めて揺らがない。


今月の人(じん)
中指はカスタネットに春の雪 なゝ
断定のためだけに濃き春コーヒー  ソラト
阿蘇噴くや落花は角へたてがみへ  ふづき
一ドルのコインや軽し菠薐草 大五郎
ビルにかげろう少年つひに帰れずに  大中博篤
春星に噎せてゐるなり野天風呂 錫樹智
春霰スーパーカブ号は負けぬ  ポメロ親父
大試験スープを入れた魔法瓶 みかりん
吸入器こぽこぽしゆーと春の雲 雨月
ホッキョクグマ浮かぶよ春の雲の如  さち
燕来る磁石の北は青い色 猫ふぐ
幾程のデシベル浴びて落椿  西連寺ラグナ
原発三基双眼鏡に蜃気楼 北伊作
初音聞く獄舎の丘の小糠雨 浜田節
春の雪補修工事といふ夜勤 不知火
春愁や終わりを知らぬ砂時計 こぼれ花
走る走る皆かざぐるま回すため  西原みどり
春浅きホーム少女のけんけんぱ 蓼蟲
土器はまだ地層に眠る百千鳥 大塚めろ
鎌鼬地下の迷路を這う鉄路 元旦
韜晦の過ぎて栄螺にあるみどり すな恵
スポンジの膨らむ呼吸春めける 犬鈴
くぢら死すもつとも大きなくぢら死す  桜井教人
複数の声を蕗の薹の見上ぐ 青柘榴
脳天に鍼刺す気配春の雨 鯛飯
咲き初めし梅の香強き曇り空 じろ
白波や鳥休ませて春の砂洲  神楽坂リンダ
立ち尽くす女追い抜く春の風 権ちゃん
百千鳥ここが霊園分譲地 もね
わが死後も雛の髪は濡れ羽色 さわらび
菜の花や横綱牛の通る道 鯉城
工房の鉋屑積む雪が積む 人日子
わつと声を梅百蕾の湧き立てる 省三
薄氷の境界線の定まらず 蕃
春休みの児ら魔女になる庭箒 なづな
ミモザ鳴く咲きたいけれど開かない  えつの
トロンボーンひびくロビーや今朝の春  哲白
雨上がりの土手は百の香春の犬 空
シャボン玉赤子をひょいと裏返す 藍人
定刻にまだ余裕梅が香かすか 樹朋
雪の夜の母の日記のけふ生きる  カシオペア
早春の鉛筆匂う楽譜かな まくわ
このバスは初めて見たわ沈丁花 磨湧
囁いているような夜の温室 のり茶づけ
紅色の深さ計れぬ猫の恋 りんご
凍返る青菜をゆでる湯のかおり 今比古
春潮へ旋回のパラグライダー ほろよい
春光の海春光をはねかえす 一走人
なにかうずうずしてゐるうぐいすもち  えりぶどん
春疾風深夜便よりエリントン  レモングラス
百千鳥内耳迷路の深く深く きうい


今月の並選
白骨や無人の町に忘れ雪 西連寺ラグナ
春潮や今だ帰らぬ家族を待つ
春浅し修正インク盛り上がる 不知火
朝東風に着港告ぐるアナウンス
横長のきな粉の袋鶯笛 みかりん
貝寄風や寄港を告げるアナウンス
提げきたる鶏冠赤し六の花 ターナー島
白菜の刃を弾きける反抗期
楽屋入鼻緒に春の雪のせて 雨月
鳥帰るいひわけばかりしてるまに
月朧吉原遊女評判記 さち
手話の人の発する声や春の風
薄氷や浄土寺の柴犬が鳴く 恋衣
劉生の自画像が見るマティスの絵
三寒の路地に四温を連れし猫 牛後
原石に手を触れないで愛の日の
ストーヴの赤真夜中のラヂオ こぼれ花
固めたる決意のやうな豆を撒く
鼻歌がへんちくりんだ朧月 ポメロ親父
草あそび大根茎立つ気配して
春なのに春なのに中島みゆき 猫ふぐ
金子みすずはロックだよおぼろ月
唐傘の骨を数えて春寒し 大塚めろ
春の日を草に遊びて草を忘れじ
哀しみのがつんと残り二月尽 西原みどり
春愁や一人で乗つてみるシーソー
三月や古書店匂ふ昼の雨 蓼蟲
闘牛の終へて優しき黒眼
寒晴や富士車窓より今朝の富士 元旦
大蒜や貴婦人も煤煙を吐く
ヒコーキを折って北窓ひらきけり 犬鈴
まはるフラフープ春の昼がにほふ
生まれたてなる春光を教室に 桜井教人
瞑りゐてなほ瞑りゐて初音かな
武家屋敷跡の静かや水草生う 鯛飯
言い逃れ出来ぬ証拠ぞ鶯餅
まだ少し早いねと言ひ梅祭り じろ
なめらかなエンジン音や寒の明
嘘あまた重ねてラナンキュラスかな  神楽坂リンダ
料峭のダムに段畑透けて見ゆ
鶯の歌といつしか峠越え 青柘榴
高速の通行止めや二月尽
幼にもため息ありし春の雨 権ちゃん
早春の湖水ざわざわ騒ぎ出す
春三日月ならば眠らせてくれる もね
球根の皮押し上げて雨水かな
龍天に登りてよりの鬱気分 さわらび
囃されて野火駆け上がる真昼かな
立春やジャングルジムの天辺へ 人日子
梅咲いておそろしきもの隠しけり
子と生まれ親と生き継ぎ鳥雲に 省三
一山のけぶらひゐたる野梅かな
読み終へし藤沢周平春浅し 蕃
岩海苔を掻く女らの佐渡の海
食卓の一人に広し花の冷え なづな
早春の文したためて青インク
はらからにまた先立たれ紙雛 哲白
野仏のしづかな笑みや春を待つ
春浅し小便臭き地下通路 北伊作
階段に座って電話春の昼
白魚の跳ねて光の透きとほる 浜田節
迎春花別れの朝となりにけり
愚痴一つ北窓開き捨てにけり 柱新人
料峭やごめんと言えぬままの距離
仔馬の脚くにやりと曲る早春譜 みちる
太郎も花子も手に取るお玉杓子かな
立ち並ぶ老舗の春や古町駅 ぼたん
野々山は四温ひと夜の蕾かな
北窓開く斜め懸垂せし宵に 子狐萬浪
トマトジュースどろりざらりと春愁
まだ咲かぬ梅の下にて田舎寿し 青蛙
子ヤギとて頭突きを知りて草萌ゆる
光年の荒星の風届きけり 春告草
冬天を四角に切りし書庫の窓
鳥雲に存外近きジェット音 野風
ヒヤシンス教会の椅子ならぶカフェ
明日こそ引導渡す春炬燵 あらた
草萌ゆる言葉あふるるあふるる
木の芽時電池交換する時計 紗蘭
二次元のつぶやき春の雪が降る
鳥交る東の谷に光差す 西条の針屋さん
春風や天を切り裂くシャトルの音
鵙の声のびきつている霜の朝 炉草
時雨るるやこれから渡る島晴れて
子守柿一途に朱を守りけり 遊子
住職の長い説法星月夜
山茶花を見あぐる空に星ひとつ まんぷく
花八手うるわしきもの見え難し
春寒や眠れぬ夜の独りごと お手玉
土筆摘む子供にかへる八十路かな
春の三日月東京の壁0℃  八木ふみ
トランポリンの子躱しおりしゃぼん玉
春雨を口実にして長居かな 八十八
「前へ倣え」響く余寒の体育館
春の雪着床するやうに降る 紅紫
人身事故聞き慣れている春の雪
春潮やスッピンの訳知っている  き花こすもす
薄氷や走りて通るルイヴィトン
早春やピアノ連弾迸る むらさき
晴れ上り眩し冬海の斜長橋
雑談の終わらぬ日なる雨水かな 真鍋一
縄跳びの風に揺らるるミモザかな
ゆっくりと寒空に溶けうる煙 サキカエル
節分の朝のつららのバカデカイ
陽だまりの俳句の坂道黄水仙 三竜
紅梅の氷雨を割りて薫りけり
吐き出した空のあり北窓を開く 唐草サ行
サウダージまぶれまぶれとぼたん雪
湯を注ぎ作る吸い物雛祭り 狸穴けら
北窓を開き飛び立つ妻のいて
寒見舞いうんとぬくうにおってよと書く  エノコロちゃん
真夜中に目が覚めるほど猫の恋
曇天の日の輝きや愛の日の 未貫
核脱すほっとしているレモンかな 豊原清明
月おぼろ隠花植物はぐくみぬ 藍人
突然の別れの朝の白椿 カシオペア
余寒なほ尾びれ静かな熱帯魚 まくわ
気分屋を振り回したといぬふぐり 磨湧
桃の節句百本の巻き寿司巻くバイト  のり茶づけ
ほどほどに忘れるもよし杉の花 りんご
杉間より雲生まれ出づ那智の春 樹朋
古銅花器堅い蕾の水仙よ えつの
文机に舌切雀牡丹の芽 錫樹智
エスコートされてデッキの春帽子 ほろよい
淡雪や子の胸少しふくらみて 一走人
立春やチキンライスに国旗さす えりぶどん
赤城嶺の裾に牛ゐる春の雨 すな恵
春板塀の濡れてくろぐろ春の古湯 空
三日月小野小町のかすれ声 大五郎
春三日月にレタスサラダを盛りました  きうい
春寒や県境わたる高速船 鯉城
受験の子重き卵を一撃す 今比古
ババロアにチェリーふるへる蝶の恋  ふづき


雑詠道場番外編「くらむぼんが困った」

質問受付中。
 雑詠道場番外編「くらむぼんが困った」では読者からの質問を受け付けています。俳句に関する質問その他、お答えできる範囲で回答致します。質問は投句の際にお便りとしてお書き添え下さい。 



【雑詠句募集】
投句三句/俳号(本名)/〒住所/電話番号と、「○月末日締切分」を明記して、編集室「くらむぼんが笑った」または「へたうま仙人」宛にお送りください。
締切は毎月末日《必着》です。
※末日を過ぎたものについては、翌月分とさせていただきます。
※ひと月に複数の投句があった場合は、一番最後に届いた投句のみを有効とさせていただきます。同一内容での二重投句はご遠慮ください!
 投句は誌上句会宛のハガキ&メールとは別でお願いします。
雑詠専用Eメールアドレス zatsuei@marukobo.com
インターネットや携帯電話からも投句できます。
http://www.marukobo.com/kuramubon/


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放歌高吟


緋色
夏井いつき

神輿庫の鉄扉桜の芽のつつん
春の蚊の軌跡のほのとうすみどり
無くなった松の話も長閑にて
春の空くだけフルーツポンチかな
太陽の輪っか蛙が蹴る輪っか
銅鑼の鳴る空鳥々の交る空
潮湯匂えば椿また椿また
落ちて弾んで椿法楽たるひかり
鶯は緋色に鳴いてみたからん
哀憐や貝寄風に色ありやなしや
春の鹿振り向くはるかなる津波
蝶ふえてゆくしずけさの渦巻ける


 第一回『大人のための句集を作ろう!コンテスト』の結果が今月号にて発表の運びとなった。最優秀賞一編、優秀賞七編についての選考評は本誌11ページにまとめたが、『大人コン』選考会員からの選評に添えられたコメントを読むだけで、最終選考通過八編といかに真摯に対峙して下さったかが分かる。

「それにしても、近頃まれに見る「苦渋の選択」でした。どの作品も十分100年後に残したいものではありましたが、涙をのんで選びました。これほど力のある作品(しかもまとまって)を作る仲間がいる幸せもまた噛みしめています。」

「どの作品も読んでいて楽しい!! また読みたい、何度でも読んでしまう。」

「まず、選考を始めてすぐに、なぜ自分の作品が落ちたのかがわかりました。どの作品も佳いので迷いに迷いました。仕方が無いので、すべての作品のすべての句に点数をつけ合計点を出しました。しかし同点の作品がでてしまい、さらに悩みました。」

「八編を読ませて頂き、素晴らしい句群に感動しました。次回選の機会がありましたら、より良い選評をと心に誓いました。」

 選考会員という名の読み手を、ここまで迷わせ、迷うことを楽しませ、もっともっと良い読み手になりたいと切望させる。己の作品が、他者の心に、そのような感動体験を引き起こすことは、表現者として最高の快感、最大の悦びだ!

 元来、俳句は民衆の詩であった。和歌の雅を離れ、猥雑な俗のエネルギーから産み落とされたのがこの短詩系文学だ。数人の有名俳人が選ぶ俳句賞の価値はいうまでもないが、市井の俳人百人の目利きを侮るべきではない。いや、だからこそ選べる作品もあるに違いないのだ。
 詩を作る行為、俳句という17音詩で己を表現したい衝動は、鶯として緋色に鳴いてみたいと望むことに近いのかもしれない。市井に生きる百人の目利きたちを悦ばせるためにも、私たちは、自分にしか鳴けない色で、俳句という17音詩を謳歌しようではないか。




夏井いつき公式ブログ「夏井いつきの100年俳句日記」

http://100nenhaiku.marukobo.com/


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新 100年の軌跡


第1回


語彙は弾 希望峰

北欧の声歌うよう春待ちぬ
捻られる肉の繊維や春浅し
変わらない天気大蒜潰される
ものの芽やぺらぺら告げる旅行譚
紅梅のこっそり意思を疎通せり
世界中の紐しゅるしゅるとバレンタイン
蝌蚪掬う電気スタンド細すぎる
ヒヤシンス雑巾絞る人に寄せ
交差する燕舳先は変えぬまま
鰊群来教授の部屋の紙そわそわ
レタスに一瞥迷彩柄ズボン
キャンパスは入口だらけ桜貝
水温む指で数える語彙は弾
さくらさくらポテトチップスに棘
春の闇椅子さかさまにして帰る


希望峰
 1990年生まれ、兵庫県神戸市出身。16歳より俳句を始め、現在はスウェーデンに留学中。俳句と教育が結びつく研究をしています。




春だから 宮下航

心房に水の音あり朝桜
春満月染色体は距離を取る
チョコレートのようなフレーズ春だからです
右目玉ビュレット左目玉春
石段やたぶん毒茸なのだろう
おかずLライスSS秋来る
飼い犬の肉球弾む夕紅葉
鈴虫や出っ歯の男ぼやきたる
新食感なる菓子食いてちゃんちゃんこ
寒オリオン探すや草食系男子
氷柱に宇宙海月の化石かな
脛椎に小言溜まるや雪催
老犬の睫毛撓むや六花
どの棚も開いてをりぬ晦日蕎麦
初春や新種深海微生物


宮下航
 宇和島東高校弁論部で俳句と出会う。現在は、愛大俳句研究会で活動中。




真説ゆとり世代 桜井教人

 「ゆとり世代」という言葉を揶揄的に使う輩がいるが、本来そうではない。知ること、覚えることよりも、考えること、表現することを重視する新学力観に評価されるようになったのがゆとり世代である。この世代の真の実力を両作家が発揮してくれることを期待している。

水温む指で数える語彙は弾 希望峰
 見知らぬ言語文化に身を投げ出されたとしたら、語彙はまさに弾と化すだろう。そればかりではなく、俳句の世界でも語彙は弾である。しかし、この弾に死ぬほど打ち抜かれてみたいと思っているのは、私一人だけではないはずである。
春の闇椅子さかさまにして帰る 希望峰
 誰も居ない教室の景が見える。どう逆さまにするのだろう、なぜ逆さまにするのだろうと想像させられてしまう。深々とした春の闇の教室に取り残されているのは、さかさまに置かれた作者のこころだと思えてきた。
初春や新種深海微生物 宮下航
 中七下五の漢字表記、その堅苦しそうなイメージに比して、口に出して読むとイ音の多用による音の響きがとても心地よい。その絶妙なアンバランス感が面白い。他の句にも理系、中でも生物学系を思わせる語があり、作品としてある種の雰囲気を形成している。


 1958年生まれ。愛媛県今治市出身。中学校社会科教師。「いつき組」所属「日本俳句教育研究会」会員。



のびやかな荒削り とりとり

水温む指で数える語彙は弾 希望峰
 「語彙は弾」という概念的な言葉を「指で数える」という具体的なもので支えて、さらに「水温む」という皮膚感覚を加えたため「語彙は弾」が生き生きしてきました。たしかに語彙はわたしたちの武器ですね。

 「語彙は弾」は「北欧の声歌うよう春待ちぬ」にはじまって「春の闇椅子さかさまにして帰る」までが、無理なく並べられてまとまっており、全体的に北欧の研究室の空気がそこはかとなく感じられるところに好感を持ちました。

春満月染色体は距離を取る 宮下航
 核分裂中の染色体ですね。理科の教科書にあったおぼろげな像が、春満月と響きあいます。なんだか春満月も分裂中に見えてきたりして。

 「春だから」は十五句で一年を表現していますが、四句目から五句目で春から秋になりちょっとついて行くのが大変な気がしました。しかし全体に若さと荒削りな魅力があります。既成概念にとらわれず、今の自分の身の回りを五七五にのせようという勢いがいいなと思いました。


 1957年生まれ。三重県在住女性。


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私たちの100年俳句計画


俳句を使った試みをされている様々な分野の方を紹介します

第2回
松山市観光産業振興課 主査
中島敏喜(俳号 哀愁パパ)

俳句を使った観光プラン
 松山は市内電車が市内を周遊できる形で軌道が敷設されている非常にコンパクトなまちです。歩いて巡るには丁度いい、松山ならではのまち歩きとして、どんな要素を入れたらいいかということで取り入れたのが俳句でした。道後温泉と松山城といったような、いわゆる物見見物だけが魅力の観光ではない。たった一度、数日もしくはほんの数時間の滞在で、どんな体験をして帰っていただけるかが非常に重要で、それに一番効果を出すことが出来そうなのがこの俳句というコンテンツかなあと思っています。

俳句が残す人との思い出
 人との交流というのが観光においても一番のキーワードになっています。
 ひとつ象徴的な事例として、道後の周辺を散策し、一句詠んでみるというところまでを、ガイドが手ほどきして巡るコース。その際、日本酒のラベルにその句を書き、オリジナルのお土産として持って帰ってもらいます。このコースに参加された方は、最初は「俳句詠むの? 詠んだことないんだけど……」という感じから入る人が多いのですが、実際最後に俳句を詠むと、それを非常に大事に松山の思い出として、あとからも語っていただけるものになっているようです。松山という土地で出会った人やガイドとの交流が蘇ってくるのだと思うんですよ。飲んだ後も瓶は捨てないだろうから、ずっと残りますよね。人に伝えるということにおいては、俳句=コミュニケーションツールであるといえるでしょう。

俳句を使った新しい取り組み
 写真俳句は、俳句に興味がなくても写真から俳句を鑑賞してもらい、松山のことを知ってもらうきっかけに繋がるのではないでしょうか。ポップな写真なら若年の方も入りやすく、年齢を下げられるのではないか、そういうしくみとしても、これはいいのかなあと思います。
 また、『EU英語俳句コンテスト』というものがあります。ここで俳句のまち松山が日本とEUとの国際交流の架け橋として、その役割を果たしているのですが、これをしっかり根付かせて、欧州=世界が認める俳句のまち松山を目指しています。
 加えて、『瀬戸内/松山構想』では、海外からのお客様に、エーゲ海にも劣らないといわれている瀬戸内という風光明媚な景観と、俳句のまち松山という魅力ある場所として紹介し、「瀬戸内」をテーマに観光あるいは俳句をきっかけとして、より多くの方に松山を訪問していただきたいです。(談)


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JAZZ俳句ターンテーブル


文/白方雅博
(俳号/蛇頭)

第13話
時の過ぎゆくままに

春愁ふナイトクラブの紫煙かな  てんきゅう

 ダグの階段を降りるとピアノの音が聴こえて来た。仄暗い部屋にカーメンの声が響いた……。アルバム「カーメン マクレエ アローン〜ライヴ アット ザ ダグ」のオビの文句に誘われヴォリュームを上げた。73年11月21日夜、新宿ダグ店内に響くグラスの音。カーメンの第一声は、ため息にも似た「嗚呼」。彼女は自ら弾くピアノにバースを絡め、やがてテーマへ。歌はハーマン フップフェルド作詞作曲の「アズ タイム ゴーズ バイ」。紫煙の方舟に至福の時が訪れた。

朧夜に黒人がまた弾かされて チャンヒ

 1月のJAZZ句会で「明後日モロッコの旅に出ます」と、光海さんが言ったので今回のテーマが決まった。「みやげ噺とフォトに期待してのテーマ設定ですよ」とプレッシャーのメールを入れたら空港の光海さんが返信してくれた。「テーマがAs time goes byとは憎いですね。イングリッド バーグマンがSamにPlay itと言って弾き語りさせるくだりは、印象的です。カサブランカも行きます」と。
 もう一人、このシーンの思い出を語ってくれたメンバーがいた。東京から投句してくれる俊坊さんである。「As time goes byは小生にとっても誠に思い出深い曲です。学生の頃、銀座の名画座でカサブランカを見て、イングリッド バーグマンの美しさに魅せられました。未だに私が好む唯一の外国人女優が彼女なのです。この曲をバックに、彼女と黒人サムとの会話のシーンが瞼に焼き付いています。ジャズと映画の結びつきも切り離せないものなのでしょうね」と。

黒き門雪虫の背に時過ぎぬ 俊坊

 その俊坊さんが、こんな素敵な句を詠んでくれた。黒き門とはリック(ボガード)とイルザ(バーグマン)の思い出のシーンで映し出されるパリの凱旋門のことか? 雪虫は冬の季語だけど、まあこの際良しとしよう。生きとし生けるものの背に等しく時は過ぎて行くのである。

春星にサハラの闇の深し深し 光海

 モロッコ〜カサブランカ〜サハラ、そしてドバイの旅から帰って来た光海さん。満天の星空が夜明け前の真っ青な空に変わる時、キャラバンが砂漠の朝焼けの中を……。と、書きかけて気が付いた。カサブランカはモロッコの中、モロッコはサハラの中。サハラ、サハラと言ってもいささか広すぎる。光海さんから頂いた掲載の写真の空の青は、カラーでお伝えしたかった。

デックス忌愛するほどに辛くなる 蛇頭

 As time goes byのオリジナル コンピレーション アルバムを作っていて気が付いた。この曲、ヴォーカルものの名演は多いけれど、インストルメンタルものの名演が意外と少ない。その中で「マンハッタン シンフォニー」の冒頭を飾るデクスター ゴードンのパフォーマンスは出色の出来栄え。デックスは彼の愛称で4月25日が忌日。これを我がJAZZ句会は季語とした。

陽炎や哀しい嘘の君を抱く みしん

 “愛するほどに辛くなる”と蛇頭の取り合わせについては如何なものかと思うけど、僕が大好きなデックスと映画カサブランカ全体に流れるムードとの取り合わせは悪くないと思ってる。が、この句にゃ参った。今回のJAZZ句会の一番人気句。



http://www.baribari789.com/

「JAZZ俳句ターンテーブル」は、筆者がナビゲーターを務めるFMラヂオバリバリ(今治78.9MHz)の番組「JAZZ BLEND」の第2週に特集します。放送は毎週水曜日の深夜23時〜24時。再放送は日曜日の25時〜26時。


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ラクゴキゴ


第13話 文/俳句 らくさぶろう

『百年目』
〜大作の存亡の危機??〜

あらすじ
 ある大きな店の一番番頭、治兵衛、まあそれは堅物として通っており、毎日後輩の番頭や丁稚に説教をつづけている。
 ある朝、丁稚にうるさく説教したのち、「ちょっと外出してきます」と店を出た。外で待っていたのは、幇間の一八。
 実はこっそり入り浸っている芸者や幇間連中を引きつれて、花見にくりだそうという趣向だった。
 内緒で借りている小さな店の二階で、とっておきの高い着物に着替え、屋形船に乗り込んで川から花をめでようということになる。
 見つかってはいけないと、船の障子をしっかり締め、花も見えぬまま宴が始まる。
 酒が進むと大胆になり、扇子を首にしばりつけて三味にあわせて陽気に騒ぎ出してしまう。
 店の旦那というと、おかかえの医者、玄伯をお供にこれまた花見にやってきている。
 玄伯が治兵衛に気付き、「あれはお宅の番頭はんでは?」と言うが旦那は「堅い番頭にあんな真似は出来ん。」と取り合わない。
 そのうち、二人は土手の上で鉢合わせ。びっくりした治兵衛は気が動転し「お久しぶりでございます…」と妙なあいさつ。
 さあこんな姿を見られたらこれはもうクビになると、いっそ夜逃げでもしようかと一晩中悶々として生きた心地のしない治兵衛。
 そこへ旦那からお呼びがかかる。びくびくして行ってみると意外にもやさしく説くように語る旦那。
 天竺の栴檀の大木と、南縁草の話を始めた。栴檀は南縁草を肥やしにして生き、南縁草は栴檀の下ろす露で繁殖する。
 持ちつ持たれつで、家では私、店では番頭さんが栴檀で若い者が南縁草。南縁草が枯れたら栴檀のおまえも枯れ、私も同じこと。厳しいのはいいが、もう少しゆとりを持ってやれとやんわり諭される。
 ところで昨日はお楽しみやったなと話が変わったので番頭は「とうとうきたか」と思ったが、「金を使うときは思い切って使うものや」と逆にほめられる結果となる。
「それにしてもおかしなあいさつやったな。お久しぶりでございますとは。何であんなこと言うたんや?」
「ええ、こらもう百年目やと思いました。」



 落語の最後の部分を“サゲ”または“オチ”といいますが、これが「?」で終わるときがあります。
 古い言い伝えや伝統芸能の有名なセリフ等がオチをつけている場合、「今の何やったんやろ?」と首をかしげながら思っていることがあります。
 この噺は「ここで会ったが百年目」という言葉が使われているオチなのですが、果たして今の若い人達にどれだけ理解できるでしょう?
 愛媛大学落語研究会の現役メンバーにアンケートをとってみたらほぼ100%「わからん」と言うのではないでしょうか。
 こういうことがよくあるので噺家さん達はオチの工夫をよくされています。
 「うまい!」と思うオチもあれば、「本来のオチの方がよかったな」と苦笑いしてしまう時もあります。
 ただ、この噺に関してはどうにも変えようが無いのではないでしょうか?
 それだけ、名作でもあり、大作ということです。
 上方では何といっても人間国宝、桂米朝師の十八番として演じられておりました。
 番頭が丁稚に説教する場面と遊びに興じる場面の描き分け、またその番頭をちくりとまた優しく諭す旦那の描写。「米朝でなくては」というような上質の舞台でありました。
 もう御高齢ですので50分近くかかるこの大作はもちろん本人は演じられませんが、お弟子さんや他の一門の後輩へきちんと伝承されていますし、これからも伝わることでしょう。
 オチの部分がたとえ分からずとも、消えてしまうような噺ではない! というのは確かなこと。
 いっぺん聴いてみて下さい。途中の花見のシーンはまるで桜の花々の中にいるような気になりますよ。

本性の表れ出づる花見かな


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本家慶弔俳句帖 第43回


文 桃ライス

銀座に二本の大行列
 東京銀座のアップルストアで、タブレット型多機能端末「iPad」の新機種が発売され、いち早く手に入れようとするファンが長蛇の列を作った。
 新型機は、50インチフルハイビジョンテレビを上回る解像度の「レチナディスプレイ」や、日本語で入力が可能な音声認識機能を新たに搭載した。
 一方、同じく東京銀座の中央通り沿いに、ユニクロで世界最大規模となる銀座店をオープンした。
 開店前には子供からお年寄り、外国人まで約1000人が行列。店内の混雑を避けるため、入店規制が行われた。
 今のところワシにiPadは必要ないけど、脇から小刀や缶切りがスライドして出てきたり、温度調節が可能で、座ると暖かい座布団になったりとか、あとワンステップ上の機能があればぜひ欲しい。そして、近場のユニクロで買ったTシャツについては「銀座で買いました」と見栄を張るよ。

ふるさとの銀座通りや朝桜


粋な調香師
 俳句を香りづくりにいかす調香師がいる。
朝日新聞によると、その人の名はジャンクロード エレナさん(64)。ブルガリ、カルティエなど一流ブランドの香水を手がけ、2004年からエルメスの専属調香師になった。理想の香水は「簡素で想像力をかきたて、一瞬をきりとるもの」。それは俳句に通じるという。
ジャンクロードさんは、1970年代にフランスで流行したヌーベル キュイジーヌで皿の上の「空白の美」に魅せられ、以来、日本文化に造詣を深める中で俳句に出会ったという。
 匂いから想像力を発揮することを「俳句的表現」と語るジャンクロードさん。万が一、彼と吟行する日が来るかもしれない。「あ〜薫風だわ〜」と感じていても、案外それは隣を歩くジャンクロードさんから漂う新作「薫風」かもしれない。

モナリザの瞬きの間に春の風


桃ライス…自分のことをワシとよぶ婦人グループ会員


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高田純三の勝手にエロ句解釈


その1

春風や闘志いだきて丘に立つ 虚子

 季語は「春風」。大正二年、当時の新傾向俳句に対する虚子の意志を詠んだ句として有名。春は進学、就職の時期。「やるぞ!」という闘志を持った若者の姿の句とも読めます。もちろん、中年の姿と読んでもかまわない。というのが一般的な解釈でございます。しかしながら、やはり「春」といえば、春画や春本のように、男女の愛欲や性欲を表す言葉でございます。そして、「丘」とはこんもりと盛り上がった女性の下腹部あたりをさしているのではないかと思われます。セックスがしたくてしたくてたまらない若者が、ベッドに横たわっている全裸の女性のかたわらで「やるぞ!」と闘志を抱いて猛々しく立っている。そんな情景が浮かんでくる甘酸っぱい青春の一句ではないでしょうか。

春や昔十五万石の城下哉 子規

 季語は「春」。明治二八年、子規が東京から一時帰省したときに読んだ句。子規の松山に対する懐かしみや愛情を感じるこの句は、松山を代表する句として、JR松山駅や子規記念博物館南側遊歩道に句碑があります。「万石」(まんごく)という言葉の響きや「下(しも)」という漢字がエロティックな妄想に拍車をかけてくれます。春はやはり恋愛の季節で、愛欲や性欲が旺盛になる時期であります。一石は大人一人が一年に食べる米の量に相当いたします。十五万人の男女が生活していたお城下も夜ともなれば、隠微な空気が漂い、十五万人の男女がエッチをしている。そんないにしえのおおらかな風土に思いを馳せて詠んだ一句に思えてなりません。

高田純三(たかたじゅんぞう)
物心がついて以来、日々エロい事ばかり考え続け、ついに俳句にエロスを感じる境地にいたる。名句を勝手にエロく解釈しては妄想に浸っているただのエロおやじ。



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一句一遊情報局


有谷まほろ & 一句一遊聞き書き隊
協力 南海放送


 今回は、番組に寄せられたお便りとそれに対する夏井いつき組長の遣り取りをご紹介。

貌鳥や朝日眩き雨上がり 八十八
八十八 朝起きたら、外はうっすらと雪化粧。雪の上には鳥の足跡も。雪はあっという間に溶けましたが、朝日に輝いてとても眩く美しかった。そこで下五を「雪上がり」としようかと思ったんですが、季重なりで組長に破って捨てられるに違いないと思って、雨にしました。

夏井 確かに、雪にしたら季重なりにはなるんですけれども、「貌鳥や」って、この得体の知れない鳥を強く打ち出しているわけですから、季重なりになってもいい、自分の感動に正直になったほうがいいですよ。例えば、

 貌鳥や雪止む朝の眩かり

としたら、雪の止んだ朝に貌鳥かもしれない鳥の声が聞こえたとか、そこに足跡があったかもしれないとか、考えてもらえますよ。「足跡」っていう言葉をどうしても入れたかったら、

 貌鳥の足跡雪の上に朝

とかいう言い方にして「足跡」を入れることもできるしね。
 自分の感動には正直になったほうがいいと私は思います。たとえ“破って捨てられる”と思ってもね。
(※3月1日放送より)

妙 私は句を読むこと、自分の考えをまとめて喋ることが、なかなかうまくできません。句を読むことに必要なことって、どんなことですか。

夏井 句を読むことに必要といったら、作者の感動の焦点がどこにあるのかを推理するっていうことなんですね。
 その推理を楽しむんですけれども、自分勝手に推理したんでは駄目なんです。手掛かりはそこにある十七音の言葉しかないわけですから、言葉の小さな違いとか、何故この人はこの言葉を選んだんだろうとか、そういうところを丁寧に丁寧に分析して読み取ってあげるっていうことですね。
(※3月5日放送より)


まほろの 兼題雑感

「巣箱」は動物の季語でありながら、動物そのものではなく、営巣や、人間との関わりを中心に据えた季語。
「ごんずい」という、言葉の響きもどこか面白く、また見た目も独特な魚。ぜひ一度、どんな魚なのかを、その目で見てから句作してみてください。
「桜まじ」は、桜のイメージが手伝って、優しく、また、どこか切ない印象を演出します。「まじ」は、単独では夏の季語ですので念のため。
「田螺和」……三十代半ばの私ですが、食卓に田螺が上ったことはなく……夏井いつき組長に「ジャンボ田螺は違うよ!」と念を押されました(笑)。
さすが夏井いつき組長! 酒にまつわる季語「新酒火入れ」の登場です。リズムを整えづらい場合は「煮酒」などの傍題もあります。
「袋角」、毛で覆われた鹿の若い角の映像が確かに浮かびます。血管がビッシリ通っているらしく、なんでも、感覚がとても敏感なんだそうです。



※ 「落書き俳句ノート」を除く、朧庵(SNS)の利用、閲覧には登録が必要です。パソコン用のメールアドレスがあれば、無料で簡単に登録できます。


夏井いつきの一句一遊
南海放送ラジオ(愛媛県 AM1116kHz)
毎週月〜金曜 午前10時放送
週替わりの季語を兼題に、要努力の月曜日から優秀句の金曜日へと、紹介される俳句のレベルが上がっていきます。最優秀句「天」を目指せ!

投句の宛先は
〒790-8510 南海放送ラジオ 「夏井いつきの一句一遊」係
Eメール ku@rnb.co.jp

こちらからも番組へ投句できます!
http://www.marukobo.com/media/


投句募集中の兼題

4月1日
巣箱【三春/動物】
木の穴を巣とする野鳥を保護したり観察したりする目的で、それぞれの鳥に合わせて、あらかじめ穴を開けた、営巣のための主に木製の箱をかけておく。

ごんずい【晩春/動物】
ゴンズイ科の海産硬骨魚。体長約30cmのナマズ型。岩礁に棲み、胸鰭の鋭い棘を動かして鳴く。春に幼魚がごんずい玉という群れを作る。

4月15日
桜まじ【晩春/天文】
桜が咲く頃に吹く、暖かく湿った南風のことで、主に広島、山口、宮崎など南国での呼称。

田螺和【三春/人事】
田螺を茹でて中身を抜き出し、腸を取って洗い、だし汁と醤油で薄味に煮た後、山椒味噌で和えたもの。

4月29日
新酒火入れ【三夏/人事】
新酒は微生物を多く含むので、貯蔵のために加熱し、貯蔵桶に移す。夏を過ぎる頃には、芳醇な古酒となる。

袋角【初夏/動物】
雄鹿の、生えはじめの若い角のこと。柔らかな毛の生えた皮膚に包まれている。秋までには伸びきって、皮膚が剥がれ落ち骨化した立派な角となる。


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選句&投句欄 ザ 句会


 このコーナーは読者による誌上句会。先月号に掲載された投句への、選句&選評(互選)を掲載しています。不肖編集室一同も参加しています。

第171回兼題
 「竜」を含んだ句
 出題者 烏天狗さん

 今月の互選『鰯の歯ぎしり』

7点句
ぜぶら、カシオペア、不知火、輝女、いつき、兼光、正人選
黄砂しきりそろそろ竜が目覚めたか あき
  ぜぶら  黄砂が飛んで来ると反射的にやだなあって思うのに、例えばお茶の葉に熱々のお湯を注いで待つ時にこの句を言われたとしよう。きっと、本当に竜が現れるのではないかとわくわくするよ。
  カシオペア  春一番が吹くと中国から黄砂が飛んできます、中国は竜の国、春が来れば竜も目を覚すでしょう。
  不知火  眠れる竜を起こす物は何か。一度目覚めた竜の勢いは止まる事を知らない。
  輝女  黄砂が降るのは竜が目覚めた印であるという発想が気に入ってしまいました。
  いつき  中国という竜が目覚める現代。黄砂激しき世界情勢。
  兼光  黄砂の中に竜の姿が見えるようだ。
  正人  ダイナミックな発想と把握が好き。

6点句
遊人、西条の針屋さん、のり茶づけ、西原みどり、安、こまりやま選
朧月竜の寝息の白き渦 ほろよい
  遊人  朧月の光景ならば見える様な気がします。
  西条の針屋さん  竜の吐いた寝息は夜空も曇らせるほどの力があるのでしょうか??
  のり茶づけ  もうろうとした朧月を竜の寝息の渦だなんて、なんてメルヘンなんでしょうか。でもそこはかとロマンチックな春の夜です。そんな想像も素敵です。
  西原みどり  朧月って、幻想的です。白く淡くぼんやりと霞む月と、竜の寝息という取り合わせは、スケールが大きくてドラマチックですね。
  安  朧月が竜の寝息なんて、すごくファンタスティックな発想で好きです。
  こまりやま  おぼろ月夜を竜の寝息に見立てたところが想像力をかきたてられます

5点句
今比古、ケンケン、紗蘭、桜井教人、めろ選
竜天に登る試食の宇宙食 ゆりかもめ
  今比古  中国三千年の厚みを秘めたフレーズと、今代表のレトルトフーヅのドッキング!?ですね。
  ケンケン  まだ食べた事がないのでぜひ一度、食べてみたいです!
  紗蘭  「竜天に登る」と「宇宙食」の取り合わせがいいと思います。
  桜井教人  難解な季語に投げ出された非日常的な日常。宇宙食を初めて食べたときの触感はまさに春のイメージだった。けっこう美味しかった。ただ、竜は多分食べないだろうと思う。
  めろ  そう言われれば、宇宙食を作っている会社もあるんですよね。試食品を食べる係の人も、毒見しながら宇宙に思いをはせているのでしょうか?

4点句
カラ嵩ハル、たま、もね、とりとり選
踏みつける子らは恐竜春の泥 諒和
  カラ嵩ハル  どうしてせんでもええことして、新の靴を汚すんぞな、もう。ヘソかく竜馬も面白かった。
  たま  小さい生き物に子供は恐竜かもしれません。純粋な残酷性は大人になるための通過点でしょうか! 春の泥がきいています。
  もね  春の泥にとって、子どもたちは恐竜ってのが、何ともメルヘンで好きでした。
  とりとり  ありさんから見たら、こんな感じかもしれませんね。

ぎんなん、しゅん、諒和、まほろ選
草の芽のぐんぐん竜田揚日和 杉山久子
  ぎんなん  若草がぐんぐん伸びる様子と子どもたちが竜田揚げをもりもり食べる姿が重なって、楽しい句でした。
  しゅん  おにぎりと卵焼きも詰めてピクニックに出かけましょう。楽しい一日になりそうです。
  諒和  いろいろな「竜」があって楽しい。「竜田揚げ日和」とは面白いですね。空腹を覚えつつ頂きました。
  まほろ  前半のフレーズの影響か、竜田揚を次々と頬張る育ち盛りの子どもの映像が浮かんだ。

すな恵、牛後、なゝ、月乃雫選
早春や竜に乗りこよ求婚は たま
  すな恵  東京マラソンのあとにもプロポーズしてる人がいましたが、やるならここまでやらんかい!と言える人に憧れます。
  牛後  求婚は竜に乗ってくるくらいの勢いじゃないとできそうにない。しかも、早春という一年でもっとも勢いのある季節の力を借りて。
  なゝ  白馬の王子様ではなくて、やっぱりこうでなくては。待ち受ける女性の強さが際立っていて素敵。
  月乃雫  ダイナミックでもあり、お伽噺みたいでもあり、春早い気分と似合っていて素敵な一句。

猫ふぐ、大阪野旅人、じろ、ゆりかもめ選
竜の落し子傾いて春愁ひ 錫樹智
  猫ふぐ  ハマりすぎの感じもしますが、最初に発見したあなたはえらい!
  大阪野旅人  竜の落し子の貌は愁い貌ですね。可愛いですね。
  じろ  竜の落し子に春愁の能力があると言われると、否定できないことが分かった。発見。
  ゆりかもめ  直立に泳いでいるといえどもどこか傾いている姿が春愁いに良く合っている。

浜田節、朗善、祐子、チャンヒ選
ぼろぼろの恐竜事典冬の雷 雨月
  浜田節  冬の雷が一瞬幼い日のことを思い出させたのだろう。恐竜と冬の雷、何となく新鮮な取り合わせを感じた。
  朗善  冬の雷に照らされた図書館の片隅が見えてくる。
  祐子  恐竜辞典をぼろぼろになる迄使いこむなんて本当に恐竜おたく?
  チャンヒ   少年が科学に目覚めた瞬間の雷と読んだ。

親タカ、コナン、十色、のび太選
桜餅ツッパリ竜二も老いにけり のり茶づけ
  親タカ  小学校時の友人、リュージ。ブイブイいわしてた彼も今ごろは桜餅に頬をゆるめる御人だろうな。
  コナン  さらりと言っているが竜二の一生が見えてきます。桜餅がおもしろさを加味。
  十色  「竜二」という名前に何故かとてもリアリティを感じてしまって一票。元ツッパリも桜餅の似合う好々爺になってしまったのだろうか。
  のび太   竜二、男前な名前ですねぇ! 季語が効いてます。桜餅を自嘲気味な苦笑いを浮かべつつかじっている竜二さん、昔より、今の方がかっこええかも。

3点句
生糸、大五郎、子狐萬浪選
つまみたる竜頭ちりちり春隣 すな恵
  生糸  高校入学の時初めて腕時計を親に買ってもらい、うれしかった事を思い出す句です。
  大五郎  電池式の時計なので、竜頭を巻くことはあまりありません。ただ年に5回、小の月から大の月に変わる時、日付を合わせるために、巻いています。二月から三月に日付を変えている実景として頂きました。
  子狐萬浪  竜頭の句が三句ありましたが、「ちりちり」が竜頭らしくて好きでした。

オパール、えつの、だりあ選
春待つや竜宮城は復旧中 和音
  オパール  震災後の東北を思うと胸が痛みます。竜宮城がとても気に入りました。希望が沸いて来ました。
  えつの  竜宮城も津波で流されたのでしょうか。一日も早く復旧して下さい。魚達が待ってます。
  だりあ  春になると竜宮城も修復され、楽しい日々がすごせましょう。震災の町々もこうなりますように。

人日子、えりぶどん、りんたろう選
竜の子を産みたる朝の霞かな 漫歩
  人日子  竜は霞の中で出産! メルヘンチックでいいですネ。
  えりぶどん  命をこの世に産み落とすという偉業、しかも竜。朝の霞で雰囲気がなんとも言えぬ。
  りんたろう  ほのぼのした感じがいいです。

しのたん、瑞木、ゆき選
火を吐かぬ竜は菫を愛しけり いつき
  しのたん   天に昇らず優しい(菫が大好きな)竜もいてほしい。絵本の中の主人公のような竜、大人も子供も楽しめるような物語を思い浮かべます。
  瑞木  竜と菫の取り合わせが好きです。
  ゆき  竜と菫の組み合わせがなぜか説得されてしまう不思議な句。火を吐かぬ竜、悲しみがあるような。愛される菫の可愛らしさもある。

ソラト、あき、迂叟選
竜骨に戦の匂ひ春の浜 だりあ
  ソラト  それは戦の匂ひであるといふ断定が春といふ季節の本意を照らし出しているやうだ。
  あき  竜骨に激動の過去。今はただ穏やかな春の浜があるのみ。
  迂叟  海底にあった竜骨に、今尚戦争の禍が残っているとは……。

2点句
青柘榴、魔心地選
竜の口浄めの水よ遍淨院 しのたん
  青柘榴  お寺の竜の口からのお浄めの水、何番札所だっただろう? 気合いをいただき、次の札所へ向かった歩き遍路の日々を思い出しました。
  魔心地  今年、後厄ですが、前厄からずっと厄除けに行っていないので、こちら頂いて、厄落とし、厄落とし♪(笑)

お手玉、しんじゅ選
ごらんあれが竜飛岬の春の月 のび太
  お手玉  とても美しい景色が見えてきました。
  しんじゅ  やっぱり日本人ですね〜昭和演歌の女王石川さゆりちゃんのメロディーがこの句を読んでいたら浮かんできました。これで決まり!

樹朋、三月選
春風のからから土竜脅しかな 猫ふぐ
  樹朋  土竜脅しの風車が春風に吹かれ、カラカラと音を立てながら回っている長閑な風景が目に浮かびます。私も土竜の被害に困って、捕獲器を埋めているのですが、一向に入りません。土竜脅しの方が有効かも知れませんね。
  三月  土竜脅しってあるんですね。春風がそれを吹き、からからという音が土に響く、それを土中のモグラが聞いているという三重構造。春ですね〜。

柊つばき、炉草選
父は竜母は虎年兎飼ふ 遊人
  柊つばき  兎は子供? でしょうか。我が家には虎年の息子と娘の子の虎年、兎年の孫がいます。
  炉草  作者は兎年か、いやこんな荒ら荒らしい家庭にこそやさしい兎を飼おう。

ちろりん、かのん選
竜の如「肱川あらし」海へ出る すだれ
  ちろりん  小生も見ました。実景が素直に身に浸みたのでこの一句に投票。
  かのん  残念ながら「肱川あらし」を実際に見ていません。映像と友人の話だけですが、ありありと海に向かう竜が見えました。

豊原清明、漫歩選
はじまりはあなたのせいよ竜の玉 ペプチド
  豊原清明  口に出して読むと、語感がとてもいい。
  漫歩  どこかそう言われても嫌じゃないのは竜の玉だから。

ほろよい、まんぷく選
名は竜子干支は寅年福笑 コナン
  ほろよい   寅年の女は強いよ、まして「竜子」さんなら……「肝っ玉母さん」でしょう(笑)。リズムも良いし楽しい句です。
  まんぷく  福笑いの様な顔の寅年の竜子さんと一度、飲みたいものです。きっと生きてゆく力を貰えそうです。

1点句
陽炎や土竜でありし吾が前世 破障子
  柱新人  「陽炎」と「土竜」に作者の人生の奥ゆかしさと深さを感じました。ちなみに私の前世はバルタン星人です。

龍天に登り天女をそそのかす ひかるん
  ザッパー  『そそのかす』に笑った。(笑)

龍天に登り竜馬は海を向く 不知火
  犬鈴   力みなぎる句ですね。天と海の対比が壮大です。

パフという名の竜のいた町に春 正人
  藍人  竜は年をとらないけれどジャッキーは年をとる。大人になってもうパフが見えなくなったのか。そんな町にも春が来る。静かな悲しみと澄んだ風景が、童話の世界を思い出させてくれる。

飛竜頭の真ん中へこむ春立つ日 えりぶどん
  空  揚げたてのまるまるしたガンモドキが、さめるにつれて、真ん中からへこんでくる。おいしそうな春の匂いがする。

春一番エルマーと竜ひとっ飛び かのん
  有花  エルマーが出てくるとは思わなかった! 実は大好きなんです!

恐竜のヒィギュアに追われる初夢をみた  まんぷく
  サキカエル  逃げても逃げても恐竜に追っかけられる初夢。翌朝はぐったりしてませんでしたか? お疲れ様でした。想像しただけで私も疲れました。

竜の玉他人より三倍生きる術 あねご
  半角  竜って、とてつもない力を授けてくれそうな気がしますよね。

本マグロ跳ねて竜飛に春の雪 ザッパー
  りんご  まるで竜飛岬にいる様な勢いのある風景が見えてきました。そして波、風、雪まで感じしばらく楽しみました。

竜神よみずほの国を頼みます 未々
  さかえ  みずほの国にほのぼのとしました。

麗らかな竜のお腹にある宇宙 チャンヒ
  レモングラス  竜も春にはゆったりと仰臥してお腹をみせて昼寝をしているんですね、どんな宇宙が秘められているのか興味津々です。

竜の巣はどこにあるのさ雪女 柊つばき
  みちる  上五中七が雪女のセリフでしょうが、まったく突飛な組み合わせが愉快です。雪女は竜の卵で熱々のオムレツでも作るのでしょうか。

朧月飼ひ馴らしたる銀の竜 瑞木
  和音  朧月に飼い慣らした銀の竜が現れるとは、素敵な光景です。朧月と銀の竜がとても幻想的に響きあっています。

竜馬も見しか立春のこの海を しゅん
  もんきち  立春の海に向かって立つ竜馬像。その凛々しい姿が今の作者の心の有り様とだぶって見えます。何か決意を秘めているような……。失意の中から這上がろうとする強さを感じました。

恐竜を一億年見冬の月 ちょっと横道
  元旦  龍ではなく竜でないといけない句の中から。栄華を誇った恐竜。その営みを夜の闇の中からじっと見つめてきた月。しかし陸の王者も絶滅。それでも凍えた空には、変わらぬ月が浮かびます。恐竜と人類が重なるようです。

竜天や鳩とことこと坂上る 権ちゃん
  ちょっと横道  竜と鳩の対比がおもしろくて、思わず頂いてしまいました。坂上るとしたことで、竜天に跳ね返りました。

飲み干せるどんぶりの底春の竜 ソラト
  すだれ  思いがけないところに現れた竜が良かったです。

道草や春竜胆とランドセル 逆ベッカム
  清流子  朝は駆け足、帰りは日暮れまでと、遠い昔の通学路、思い出しました。

誰も気づかず竜の玉竜の玉 西原みどり
  蓼蟲  竜の玉、立派な名前だが竜が追ふにしては余りに小さく地味だ。最初戸惑つたリフレインは、その控へめな佇まひに対する作者の想ひだらう。

竜族の王の末裔たる余寒 桜井教人
  千子  竜のヒゲのふるえる様子が余寒の言葉で映像となりました。

春竜胆小声で足りる大阿蘇野 唐草サ行
  松ぼっくり  今回のテーマから大阿蘇をイメージしたのは、偶然にも私と同じでしたが、こちらの句が段違いに優れています、脱帽です。

恐竜のしっぽの骨に春の雨 とりとり
  杉山久子  さっくりとした詠みぶり。春の雨のあたたかさにほっこり。

竜の玉心ゆくまで遊ばれよ ぜぶら
  信野  竜の玉の句が私を入れて九句ありました。私も遊び心でしたので、気持が同じかなと思っていただきました。

朝青竜ジンギスカーンと野を走る ケンケン
  ひでこ  果しなく広大なモンゴルの草原を駆ける二人の巨人がみえるようです。

竜の髭ほどの緑や雪解ける 空
  エノコロちゃん  自分と同じ感性の(竜の髭)にどうしても目がいってしまい、105句中、3句。そのうちの2句の中から、この一句に一票です。「〜ほどの緑や」がうまいと思いました。線形のあの細い葉っぱが雪を解かすとも、読めますね。

雪の大阿蘇竜峰を飛ぶ空翔る 松ぼっくり
  ペプチド  竜の持ってるダイナミックな動きを共感できる句です。

長男に竜の一文字春立ちぬ 浜田節
  ポメロ親父  奇を衒わず、辰年なのでありかなと、季語の斡旋も適度でよろしいと思います。

梅一輪願いはひとつ青竜寺 清流子
  未々  四国遍路のおり、36番札所の青竜寺さん、200段の階段を南無大師遍照金剛と口で小さく唱えながらも、ひとつの願いを心に秘めて登りました。

亀鳴くや竜舌蘭の液体に 狸穴けら
  破障子  竜舌蘭が出てきたのはこの句だけでしたね。カラカラに渇いたところへテキーラを盛られたら、亀さんも鳴き声くらいあげるだろうなあ。先に咳き込むかも、いずれにせよ動物虐待ぢゃ。あの甘い臭いが春らしいといえばそうかも。

竜骨座地平すれすれ春隣 ひでこ
  一走人  竜骨座は中国名「老人座」と言い、主星のカノープスはシリウスについで明るい恒星だとか。春隣と「老人座」の取り合わせが良く調和していると思いました。

今月の無点くん 
竜も龍もおなじものぞとりゅうの玉 輝女
陽の差して地にわだかまる臥竜梅 ポメロ親父
冬空や冷気の中を爆ぜる竜 駝楽
正月や干支にドラゴンいる不思議 りんご
初東雲竜と一緒に登らうか 人日子
春雷の竜目覚めるや兵馬俑 カシオペア
縦横無尽の土竜や山笑ふ もね
如月や目玉ぎょろりと雲竜図 十色
修司忌や母彷徨へる竜飛崎 子狐萬浪
独眼竜スープひとくち牡丹雪 天玲
人災の竜天へ吐く原発機 大阪野旅人
笑ってる賀状の竜の角はV えつの
竜浸して縁あをいろに春の水 果樹
春雷を閉じ込む滝を欲しけり しんじゅ
竜笛の奥より生れし春の風 まほろ
竜童の辿る港の冬薔薇 元旦
歌合戦冠二郎の歌うのぼり竜 お手玉
露けしや恐竜のみる空の青 迂叟
春光を纏う御手水竜の髭 まくわ
黄金週間ブルースリーの三部作 ちろりん
球春や今年も竜は爪を研ぎ 西条の針屋さん
竜踊る赤ランタンの春節へ みちる
竜胆や籠いっばいに感謝の日 刻舟
毀家の縄の囲や竜の玉 蓼蟲
春霜の最中の土竜塚の夢 めろ
竜の舞う祈りたるごと冬神楽 ぎんなん
恐竜のたまご愛の日のお返しは 月乃雫
永き日に竜の子プロのアニメ見て 柱新人
竜の玉昔の子女の弄びもの 信野
夢持って熱く翔びたい今年こそ こまりやま
春霰や龍をみごもる夢をみて 三月
玉竜の青玉ポンと突き鉄砲 サキカエル
真っ直ぐに切下げ竜馬死す 雅裕
竜の玉日々いっぱいを抱えてる 今比古
行く春の指や竜頭を巻き終へる 犬鈴
竜の髭目立たず地味に辰年も エノコロちゃん
春の夜の竜頭の音がどこからか じろ
かつて竜の玉がみんなの原子核 親タカ
音にしっぽ生えたる竜や温む川 青柘榴
鳴き竜の眼居ゆるむや梅香る 紫水晶
竜巻や人知及ばぬ三寒四温 山野遊造
綿虫四文字熟語竜頭蛇尾 小木さん
遠眼鏡二重にみえる竜の玉 橘三拍子
子の手から躍る竜の字元旦や 安
懐手して臍をかく竜馬かな 藍人
年新た内なる竜の育てかし 政敏
息白し電気の前で竜巻に ノムケン
竜の絵をめくれば松や初暦 未貫
翼竜の住みし穴より花薊 兼光
竜の玉まけばカワセミ色の空 一走人
早春の川竜のごと白く涸れ 朗善
竜ヶ洞おののくばかり水の音 さかえ
注目度百パーセントの竜の玉 き花こすもす
おかえりと朱色の竜の金のひげ レモングラス




第172回兼題
「動物を詠んだ句」をテーマに
出題者 牛後さん

1 猫二匹したがえる子は春を待つ
2 蛇穴を出でて動物園生まれ
3 みずいろの猫の目雪解まぶしかろ
4 水温むキリンは五分だけ眠る
5 野良となり被爆の牛や青き踏む
6 豪快に象糞落とす春隣
7 黒ヒョウの檻の空白春深む
8 わらべ等のあと追うチワワ春うらら
9 亀鳴くや河馬のメガネはズレている
10 春の宵そぞろ歩きの猫二匹
11 キリン舎の窓よりキリン朧月
12 朧夜に檻に入れられみんな動物
13 春が来る象の耳には聞こえるか
14 黒牛の睫毛の長し春の山
15 耳ダンボ春の足音象に聞く
16 囀りや名のみの季節襟立てて
17 黒柳徹子はパンダ万愚節
18 湯気立ててつるんと馬の生まれたる
19 春雨に遊ばれている犬二匹
20 雀の子急いで渡れ青信号
21 日曜のプードルなんで尿にする
22 牛魔王討つ石猿に黄砂降る
23 立てかけた傘だけしらふ猫の恋
24 猫の子の天竺にさへいけさうな
25 乳母車わんちゃん二匹日向ぼこ
26 堂々と番犬の前孕み猫
27 春近し猫が尾立て闊歩する
28 亀鳴くや涙の純度わかるかな
29 シマウマになれるだろうか春の雲
30 垂直に登りし先は燕の巣
31 硫黄泉跳ねる蛙の思案顔
32 猫の恋ねこなで声とはこのことか
33 黒猫の目に春灯を見失ふ
34 同じ名の猫飼ふ家や雪柳
35 長閑さやなれるものならナマケモノ
36 雷蔵の円月殺法猫の恋
37 モグラ穴通って春がやって来た
38 啓蟄や皆さん象のほうを見て
39 春ざれや人相悪き猫のいて
40 猿学を究めし夢の大朝寝
41 花冷や目合わせちまった捨犬と
42 これから一歩一歩や蛇穴を出る
43 何侍る変色龍かや吊し雛
44 愛犬のロンと出かける小春かな
45 若草やうずくまり反芻の牛
46 猿の子の手には届かず春疾風
47 ゴリラ歩いてくる春がやってくる
48 杉の花猫の治療費五万円
49 猫の恋やロミオとジュリエットの仕組
50 流し目の猫のっそりとひな祭り
51 尾を立てて霞へ伸びる塀を猫
52 陽炎を大蟻喰がなめつくす
53 ふるたびに菜の花ゆらすしっぽかな
54 ぬりたてのペンキを知らず青蛙
55 直立の猿や桜の花の下
56 犬二匹見送りに出る春未だ
57 朧夜のきりんの睫毛にためる水
58 鳥帰り鳥やってきて春つげる
59 春駒や高峰秀子まだ死なぬ
60 弟は王様ペンギン山笑う
61 さえずりさえずり猫の耳ぴくぴく
62 ゴリラ舎の壁に森の絵春うれひ
63 亀鳴くや麒麟の首は長きまま
64 亀鳴くや野菜もしっかり食べなさい
65 春光に吹かれて丸くなる羽毛
66 野良猫の寄らず離れず目借時
67 走りたいときもあろうにナマケモノ
68 朝どれのさよりそのまま炭火焼
69 春愁やゆるり眼を閉ずオオトカゲ
70 まんまるの冬眠ヤマネのみる夢は
71 ユニコーンの影かもしれぬ春の月
72 猪の振りむくときのなにもかも
73 春愁は河童の沼に置いていけ
74 クレーンの倒る倒れず鳥帰る
75 ほどほどの志なり亀鳴けり
76 柴犬の吠え癖路地に春動く
77 裸電球にぎらり出産牛の汗
78 春眠をまたあの犬にじゃまされて
79 着ぶくれて私のシンはどこへやら
80 遠蛙チャンネル権は父になく
81 春鹿にしずかに囲まれて怖い
82 希望とは子馬に名前付けること
83 春の日のカバの前にて待ち合わせ
84 恋猫の気持ち二宮金次郎
85 青葉食む夢食むバクのモノトーン
86 さまよえる恋の旅路やうかれ猫
87 孕み猫そんな目をしてゆくところ
88 トイプードル名前はモップ日向ぼこ
89 春愁やキリンの貌の迫りきて
90 傷口をなめる陽だまり猫の恋
91 顔見せず山頭火てふ屋敷蛇
92 春の川こんなところに亀二匹
93 鳥交るもう振られまい日吉ミミ
94 蹴春を待ちたる砥部のウォンバット
95 カバの尻そろりとなでし春の風
96 さわがにが川を横切る寒い朝
97 名を問わず駆寄る子犬木の芽晴
98 羽ばたきの空を見つめし子猫かな
99 カピバラの憎めない顔花粉症
100 山羊の子の乳房一撃山笑ふ
101 アルマジロのたりとほどけ春の昼


次回兼題「本、書籍」をテーマに 出題者 すな恵さん
次々回兼題「鳥」を含んだ句 出題者 まくわさん

【兼題の分類】
季語「xx」 … 副題含む季語を入れる。
「xx」をテーマに … 内容に沿って詠む。
「xx」を含んだ句 … 単語そのものを詠み込む。



祝!大漁旗
獲得点数 20点(167号〜173号)
次号、あきさんの大漁旗獲得記念十句を掲載します。

〈参加方法〉
 1 「今月の投句」から好きな句を選ぶ。(選句)
 2  その句の感想を書く。(選評)
 3 「次回兼題」の一句を書く。(投句)
 ※1〜3、俳号(本名)、〒住所、電話番号を明記して、編集室「ザ 句会」宛にお送りください。一人一句まで。選句は番号と俳句を共に記入して下さい。
  番号はお間違えなく!

  今回の締切は4月8日(日)必着です。
 Eメール宛先 kukai@marukobo.com
 インターネットや携帯電話から下記の場所にアクセスしていただくと、専用のフォームを使って簡単に投句&選句ができます。
 http://www.marukobo.com/kukai/



【最終捕れ高】

20点
あき

19点
半角

17点
いつき
みちる

15点
すな恵

13点
ほろよい

12点
杉山久子
錫樹智

11点
すだれ
諒和

10点
瑞木
鞠月
猫ふぐ


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100年俳句計画 掲示板


 夏井いつきの出演執筆一覧

テレビ/ラジオ
NHK Eテレ
 新番組「俳句王国がゆく」
  4月8日(日)15時〜16時
ゲスト … 女優/田丸麻紀さん
司会 … 博多大吉さん、塚原愛さん
※1回目の主宰は夏井いつき。公開収録愛媛県松前町。組員・鉄人さんも出演!

NHKラジオ第一放送
 「オトナの補習授業」
  4月17日(火)21時5分〜
    ※放送曜日が火曜日に変更!
  兼題「ぶらんこ」(傍題可)
  投句締切 … 4月1日(日)24時
※詳しくは裏表紙広告をご覧下さい。

南海放送
ラジオ「夏井いつきの一句一遊」
 毎週月〜金曜日 10時〜10時10分
※ 投句募集中の兼題や投句宛先は、「一句一遊情報局」のページをご参照下さい。


執筆
Pioneer Sound Lab. 音俳句
http://pioneer.jp/soundlab/
  ウェブサイト上に組長の選評が毎日一つ発表されます。投句も受け付けています。

テレビ大阪俳句クラブ選句
http://www.tv-osaka.co.jp/haiku_club/

愛媛新聞
 「集まれ俳句キッズ」毎週土曜日

愛媛新聞(キム チャンヒ)
 「ヘンデス俳談」毎月第一土曜日 兼題「桜」締切 … 3月28日(水)


イベント
大花見大会&大人コン表彰式
 4月1日(日)8時〜20時
 道後公園内(愛媛県松山市)
 開催時間中ならば、いつ来ていつ帰ってもOK!
 第一回「大人のための句集を作 ろう! コンテスト」表彰式も 同日開催! (10時〜 子規記念 博物館にて)
※詳しくは奥付のお知らせをご覧下さい。


句会ライブ/講演など
きさいや広場3周年記念「夏井いつきのきさいや句会ライブ」
 4月15日(日)13時〜14時30分
  ※兼題発表は当日10時から。
 場所…道の駅 みなとオアシス うわじま きさいや広場(愛媛県 宇和島市弁天町1ー318ー16)
 出演 夏井いつき、キム チャンヒ
 問合先 0895ー22ー3934

松前町神崎塾開講式句会ライブ
 4月21日(土)
 場所 … 松前町神崎地区集会所


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魚のアブク


読者から寄せられたお便りをご紹介
お便りお待ちしています!
100年俳句計画編集室「魚のアブク」宛、もしくは互選や雑詠欄への投句に添えてお寄せください。

編=編集スタッフ

特集「ミニ句集」を作った!!
のび太 3月号で紹介されたソフトを使った、お友だち自作のミニ句集をいただきました。手のひらサイズのかわいいやつでした♪
州麻子 ミニ句集、作ってみました。楽しいです〜! データ提供、ありがとうございます。猫の句ばかり48句の『猫まち』です。プリンターがボロなので、今ひとつ印刷がきれいじゃないのですが。製本テープで仕上げたらいいかも……明日、画材屋さんに行こうかな。
編 さっそくミニ句集を作って下さった方々が!! 一冊の本に仕上がると充実感がありますね。ちなみに州麻子さんが改良を加えて綺麗になった版の『猫まち』がこちら。

新システム開始「雑詠道場」
元旦 システムが変わってちょっと戸惑いますが、楽しみでもあります。「へたうま仙人」か「くらむぼん」どっちを選ぶか迷いますね。自分で選択するのって難しいです。で、今回は載る確率が極めて低いほうへ挑戦。
青蛙 どちらに投句するか、なかなか迷うのう、であります。
編 迷うのもまた楽し、であります。投稿の際はどっちのコーナーへの投句か、書き添えをお忘れなく!

「ザ 句会」のあれやこれや。
犬鈴 前回、まさかの7点句にびっくりです。ますます、作句が楽しくなりました!
編 点が入ると素直に嬉しい。誌面で紹介しきれなかった喜びの声等々はブログ「マルコボ通信」で随時紹介中!(こっそり宣伝)

元旦 本誌のほうに『「動物を詠んだ句」をテーマに』と書かれてありましたので悩みました。動物が詠まれた句のことを詠むのかと思ったからです。例えば芭蕉や一茶の蛙の句のことをテーマにするという、二重構造になっているのかと考え、一時はそれで作ろうとしていました。しかし出題された牛後さんのことを思えば、それは考え過ぎだと気づき、シンプルに動物を詠んだ句を作ることにしました。って、結局作ったのが、動物のことだか何だか分からない句でしたけど……。
編 迷った末の決め手は牛後さんの人柄!? 今月号の特集、及び句集を読んで判断して頂きましょう。

NHK「それいけ! 俳句キッズ」
魔心地 「それいけ! 俳句キッズ」楽しかったです。テレビ放映も楽しみ。小1の娘は、すでに私を超えたとのウワサも……(汗)。
編 先月号の「月刊句会ライブ報告」でもお伝えしたNHK「それいけ! 俳句キッズ」。魔心地さんの〔父を超えた〕娘さん、のんのちゃんも参戦してました。皆様、放送はお楽しみいただけましたか?

飲み明かせ! アンダーサンテ40
大五郎 アンダーサンテ40盛り上がりました。定期的に開催する予定ですので、今回来られなかった49歳以下の方、次回はぜひお越し下さいね。
編 俳句集団いつき組、世代別交流会40代以下の部「アンダーサンテ40」。次の開催は5月だか6月だか? 詳細は朧庵などでお知らせ。

月に何句くらい作ってる?
ふづき 周りの皆さんに刺激され、今月からせめて20句以上作ろうと決意したのに、先週から花粉症に泣いています。言うは易し、行うは難し……。
編 月に20でも結構大変な気が……。

紗蘭 今月から「季語付きスケジュール帳」を使って毎日俳句作っています。3ヶ月100句も夢じゃない!
編 毎日一句+雑詠道場+ザ 句会、それぞれ個別に作れば3ヶ月で約100句か……スゴイな!

めろ 今年から、ボツになったり気にくわなかった句をこまめに残しています。今まで寡作だと思っていましたが、まあなんと、月に120句程度作っていました。私にとってこれは驚くべき多さでした。内容のことはどこかに置いといて、たいしたもんだと酔いしれました。
編 お三方の比較が面白かったので三連続で掲載してみました。みんな揃ってたいしたもんだ!!

俳号が変わります。
樹朋 「政敏」改め「樹朋(じゅほう)」にしました。よろしくお願いします。
編 なんだか格好良い! 宜しくお願いします。

俳号が戻ります。
なゝ (俳号戻しました。)
編 括弧付けがなんだかかわいい! よろしくおねがいします。

草心さんを偲ぶ
桜井教人 悲報というにはあまりに……。草心さんから受けた大きな恩。これから何十年かかっても返せそうにありません。しかし、いつかそのうち再び会う日が来たとき、「お前にしてはまあまあようやった」と言ってもらえるようがんばりたいと思います。
編 俳句甲子園にも大変熱心にボランティアをして下さっていた草心さん。心からご冥福をお祈り致します。

各地の句会とその周辺の生活
ケンケン 4月から、坪内稔典氏のいる佛教大大学院の国文学専攻の学生で、研究テーマは「正岡子規」です。俳句も上手になるようにがんばりますので大阪句会のみなさん、よろしくお願いいたします!
編 大阪句会からの(?)近況、ケンケンさんより。部活はもちろん俳句部?

唐草サ行 楓組も85回目! 恒例のれいざん新酒祭り吟行を阿蘇にて企画しました。いよいよ春です。
編 こちらは熊本楓組より。先月号アブクでは熊本城マラソンに参戦予告してましたが、今度は新酒吟行とは! アクティブで何より。

お酒飲むなら。
編 「ラクゴキゴ」&「季語を呑む」でお馴染みのらくさぶろうさんが飲み屋を始めるとの情報が入って参りました! 屋号は『旨酒惣菜
 とみなが』。コンセプトは“大人の隠れ家のような店”“自分が行きたい空間”とのこと。3月22日(木)オープンです!
※旨酒惣菜 とみなが
 〒790-0002 松山市二番町一丁目9-2 第五アークビル1F南
 電話番号:090-5275-5156 営業時間:午後6時〜午前1時(年中無休)


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鮎の友釣り

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俳号 まくわ

すな恵さんへ 釣って頂いてありがとうございます。俳缶ですな恵さんの事を知り、いつも意識して読ませて頂いてます。これからもSNS等おつきあいよろしくお願いします。

俳号の由来 地元のスーパーでまくわ瓜を発見して以来その金色の手の平におさまる甘い匂いが気に入って、そこからひらがな三文字だけとってみました。

俳句との出会い なぜか気まぐれにだした公募に入選し、そのころ偶然見つけた俳缶に投句、俳句で救われたり癒されたりうれしい事が起こったりで続けていてよかったなと思うこの頃です。写真は時々訪れる大宰府天満宮の飛梅です、ちょうど満開でした。

次回…かのんさんへ 昨年のおらぶ俳人の会で初めてお会いしてまだ慣れてない私に親切にして頂き有難うございました。句会ライブもご一緒できて嬉しかったです、良い思い出になりました、また機会があれば句座をご一緒したいです。


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告知


チャリティー句会ライブ in 大お花見大会

2011年3月11日、東日本大震災。被災地への募金活動としていつき組でも何かしよう!ということで昨年の大お花見大会ではニックことナサニエル ローゼン ミニリサイタルが行われました。
今年の大お花見大会のイベントはチャリティー句会ライブ。集まった募金は被災地女川地区「桜守りの会」へ送られます。
女川町の町花は「さくら」。そして、「何年か後にはさくらの名所になって、たくさんの人に来てもらいたい」との志を掲げ、地元住民の方が植樹を行っていらっしゃいます。花見の際にはぜひこちらの句会ライブにもご参加いただければ幸いです。

チャリティー句会ライブ in 大お花見大会
 日時 4月1日(日)午後1時頃〜
 場所 道後公園内(愛媛県松山市)

※集まった募金は愛媛県社会福祉協議会を通じて女川桜守りの会へ寄付させていただきます。



今年もやります!
毎年春の恒例 いつき組スポレク部大お花見大会2012

日時 2012年4月1日(日)8時〜20時
場所 道後公園内(愛媛県松山市)
開催時間中ならば、いつ来ていつ帰ってもOK!
※食べ物、飲み物は各自ご持参下さい。
※ゴミは各自でお持ち帰り願います。
※チャリティーミニ句会ライブあり。
雨天の場合の情報は当日、ブログ「マルコボ通信」(http://info.marukobo.com/)でお知らせいたします。
当日の連絡、問い合わせは、スポレク部本部長きとうじん(090-2821-6520)まで。



100年俳句計画投稿締切カレンダー

 
 3/31(土) くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 zatsuei@marukobo.com

 4/8(日)
  ザ 句会
 kukai@marukobo.com
  100年の旗手感想
  魚のアブク

 4/30(月)
 くらむぼんが笑った&へたうま仙人
 100年の旗手推薦募集

 応募先
  〒790-0022 松山市永代町16-1
  (有)マルコボ.コム内
    100年俳句計画編集室
  FAX 089(906)0695
  E-mail magazine@marukobo.com
 宛先/件名に、どこのコーナー宛かお書き添え下さい。俳号/ご本名/住所/電話番号もお忘れ無きよう、よろしくお願いいたします。
 ※ページの都合上お便りを全て掲載できない場合がございます。ご了承下さい。


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編集後記


 特集の「大人のための句集を作ろう!コンテスト(以下大人コン)」は、多くの方の協力を得て実現をした。特に共催をいただいた松山市教育委員会(松山市立子規記念博物館)と朝日新聞松山総局のご協力のおかげで、来る四月一日表彰式を行い、朝日新聞にてコンテストの結果が発表される。他にも、今回審査を行うために結成した大人コンの選考会員メンバーや句集の仕様に関わって下さった方々など、この場を借りてお礼を言いたい。
 本誌の名前を『100年俳句計画』にしてから四号目、ようやく目指していた形になってきた。
 「大人コン」以外にも、選考会員四名が競詠を行う「百年百花」、大学生二名の半年間競詠、毎年の選評大賞の受賞者が評する「新100年の軌跡」ほか、どっぷり俳句漬けの今号。他にも、恐らく賛否両論の「勝手にエロ句解釈」や「へたうま仙人」まで、俳句初心者から俳句の頂上を目指す方まで、たっぷり楽しめる誌面になったのではないかと思っている。
 今年は他にも、オリンピックイヤーということで、スポレク企画も目白押し。その他新企画もあり、まだまだ目が離せないですぞよ!
(キム)


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次号予告 (174号 5月1日発行予定)


次回特集
スポレク企画いよいよスタート
マラソン吟行会&ゴルフ吟行会


HAIKU LIFE 100年俳句計画
2012年4月号(No.173)
2012年4月1日発行
価格 750円(税込)

編集人 キム チャンヒ
発行人 三瀬明子